車両用制駆動力制御装置および車両用制駆動力制御方法
【課題】エンジンブレーキ作動中に、ドライバがアクセルペダルを踏んだ時の駆動力段差を低減する。
【解決手段】車速および車両の横旋回度合に基づいて、車両の減速度を求めて、求めた減速度を実現するために必要なエンジンブレーキトルクを算出する。算出したエンジンブレーキトルクの絶対値がエンジンブレーキトルク上限値より小さくなるように制御するとともに、車両の横旋回度合が大きいほど、エンジンブレーキトルク上限値を小さくする。
【解決手段】車速および車両の横旋回度合に基づいて、車両の減速度を求めて、求めた減速度を実現するために必要なエンジンブレーキトルクを算出する。算出したエンジンブレーキトルクの絶対値がエンジンブレーキトルク上限値より小さくなるように制御するとともに、車両の横旋回度合が大きいほど、エンジンブレーキトルク上限値を小さくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制駆動力を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーナリング時に、自動変速機の変速比が下限レシオより小さくならないように制限して、コーナリング時におけるエンジンブレーキ性能を確保する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−210456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、横加速度や操舵角が大きいほど、エンジンブレーキ力が大きくなるように制御するので、エンジンブレーキ作動時にドライバがアクセルペダルを踏んだ時の駆動力段差が大きくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用制駆動力制御装置および車両用制駆動力制御方法は、目標減速度を実現するために必要なエンジンブレーキトルクの絶対値がエンジンブレーキトルク上限値より小さくなるように制限するとともに、車両の横旋回度合が大きいほど、エンジンブレーキトルク上限値を小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による車両用制駆動力制御装置および車両用制駆動力制御方法によれば、エンジンブレーキ作動中に、ドライバがアクセルペダルを踏んだ時の駆動力段差を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施の形態−
図1は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置の構成を示す図である。第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置は、制御コントローラ1と、エンジン制御ユニット(ECM)2と、AT制御ユニット(ATCU)3と、ブレーキ制御ユニット(BCU)4と、ヨーレートセンサ5と、車輪速センサ6と、舵角センサ7と、電子制御スロットル8と、自動変速機(AT)9と、ブレーキアクチュエータ10と、ナビゲーションシステム11とを備える。なお、ここでは、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両は、駆動輪が前輪のみである前輪駆動車として説明する。
【0008】
エンジン制御ユニット2は、制御コントローラ1から入力されるエンジントルク指令値に基づいて、電子制御スロットル8を制御することにより、エンジントルクを制御する。特に、ドライバがアクセルペダル(不図示)を離した(閉じた)場合には、電子制御スロットル8を全閉(もしくは全閉近傍)にする制御を行う。ブレーキ制御ユニット4は、制御コントローラ1から入力されるブレーキ油圧指令値に基づいて、各車輪に設けられているブレーキアクチュエータ10を制御することにより、車両の制動力を制御する。
【0009】
AT制御ユニット3は、通常制御時は、アクセルペダル開度および車速に基づいて、自動変速機9の変速段を制御し、後述するカーブ走行時には、制御コントローラ1から入力される最終目標変速比に基づいて、自動変速機9の変速段を制御する。なお、ここでは、自動変速機9を有段変速機として説明する。
【0010】
ヨーレートセンサ5は、車両のヨーレートを検出して、制御コントローラ1に出力する。車輪速センサ6は、各車輪の速度を検出して、制御コントローラ1に出力する。舵角センサ7は、ハンドルの舵角を検出して、制御コントローラ1に出力する。
【0011】
ナビゲーションシステム11は、GPSユニット(不図示)や地図データベース(不図示)などを備え、GPSユニットによって検出される自車位置と、地図データベースに格納されている地図データとに基づいて、自車両が走行している道路を特定し、各種情報を制御コントローラ1に出力する。制御コントローラ1に出力する各種情報には、例えば、車両前方に存在するカーブ路までの距離や、カーブ路の曲率半径の情報が含まれている。なお、道路の距離や曲率半径の情報は、地図データベースに格納されている地図データに含まれている。
【0012】
図2は、制御コントローラ1の内部で行われる各種処理を説明するためのブロック図である。制御コントローラ1は、内部で行う処理機能上、ヨーレート算出部100と、目標車速算出部101と、目標減速度算出部102と、目標変速比算出部103と、変速比上限算出部104と、最終目標変速比算出部105と、エンブレ推定部106と、減算部107と、減速度ブレーキ油圧変換部108とを備える。
【0013】
ヨーレート算出部100は、車輪速センサ6によって検出される車輪速と、舵角センサ7によって検出される舵角とに基づいて、既知の方法により、車両のヨーレートを算出し、算出したヨーレートと、ヨーレートセンサ5によって検出されるヨーレートのうち、大きい方の値を出力する。目標車速算出部101は、ヨーレート算出部100から出力されるヨーレートに基づいて、車両の横加速度が所定の横加速度以内になるように、目標車速を算出する。
【0014】
ただし、カーブ路に進入する場合には、ナビゲーションシステム11から入力される、カーブ路の入口までの距離およびカーブ路の曲率半径の情報に基づいて、カーブ路を走行する際の車速目標値(カーブ路車速目標値)を予め求めて、カーブ路の入口に到達するまでの間に、車速がカーブ路車速目標値と一致するような車速目標値を求める。この場合の車速目標値は、車両がカーブ路の入口に近づくにつれて、カーブ路車速目標値に向けて徐々に減少する値となる。
【0015】
目標減速度算出部102は、車両の実車速と、目標車速算出部101によって算出される目標車速との差ΔVに基づいて、車両の目標減速度を算出する。この目標減速度は、車速差ΔVが大きいほど大きい値である。なお、車速は、車輪速センサ6によって検出される車輪速から求める。
【0016】
目標変速比算出部103は、自動変速機9の目標変速比を算出する。図3は、目標変速比算出部103が目標変速比を算出する手順を示す図である。目標変速比算出部103は、目標減速度と、自動変速機9の目標入力軸回転数(エンジンの目標回転数)との関係を定めたデータ30を保持している。図3に示すように、目標減速度(目標減速度の絶対値)が大きいほど、目標入力軸回転数も大きい。まず、目標減速度算出部102によって算出される目標減速度と、上述したデータ30とに基づいて、目標入力軸回転数を求める。続いて、求めた目標入力軸回転数を車速で除算し、所定の係数Kを乗ずることにより、目標変速比を求める。所定の係数Kは、タイヤ半径や、ファイナルギア比等に応じた値である。
【0017】
変速比上限算出部104は、後述する方法により求めた、ヨーレートと変速比上限値との関係を定めたデータ40を保持している。このデータ40では、図4に示すように、ヨーレートが大きいほど、変速比上限値は小さい。変速比上限算出部104は、ヨーレート算出部101から出力されるヨーレートと、上述したデータ40とに基づいて、変速比上限値を求める。
【0018】
ヨーレートと変速比上限値との関係を定めたデータ40の求め方について説明しておく。まず、異なるヨーレートの値に応じて、第1の変速比上限値を求める。第1の変速比上限値は、異なるヨーレートの値に応じて、図示しないエンジンが燃料カットの状態におけるエンジンブレーキ減速駆動力と、タイヤ横力との合力が所定のタイヤ摩擦限界値(タイヤがスリップしない限界値)を超えないという条件の下で算出される変速比の限界値である。
【0019】
続いて、異なるヨーレートの値に応じて、第2の変速比上限値を求める。第2の変速比上限値は、異なるヨーレートの値に応じて、所定のスロットル開度(アクセルペダルオフ時に、ドライバがわずかにアクセルペダルを踏んでしまった状態を想定した開度)を開いた時の正の駆動力と、タイヤ横力との合力が所定のタイヤ摩擦限界値を超えないという条件の下で算出される変速比の限界値である。
【0020】
最後に、異なるヨーレートの値ごとに算出した第1の変速比上限値および第2の変速比上限値のうち、小さい方の変速比上限値を選択し、ヨーレートと変速比上限値との関係を定めたデータ40を作成する。
【0021】
最終目標変速比算出部105は、目標変速比算出部103によって算出された目標変速比と、変速比上限算出部104によって算出された変速比上限値とを比較して、小さい方の変速比を最終目標変速比とする。最終目標変速比算出部105はまた、最終目標変速比に基づいて、自動変速機9の目標変速段を求めて、AT制御ユニット3に送信する。AT制御ユニット3は、自動変速機9の変速段が目標変速段と一致するように制御する。
【0022】
エンブレ推定部106は、最終目標変速比算出部105によって求められた最終目標変速比に基づいて、図示しないエンジンが燃料カット状態にある場合のエンジンブレーキ駆動力を求める。すなわち、自動変速機9の変速段が最終目標変速比に応じた目標変速段に制御されている場合のエンジンブレーキ駆動力を算出する。
【0023】
減算部107は、目標減速度算出部102によって算出される目標減速度から、エンブレ推定部106によって算出されるエンジンブレーキ駆動力に応じた減速度を減算することにより、ブレーキアクチュエータ10を作動させるために必要な減速度を求める。
【0024】
減速度ブレーキ油圧変換部108は、減算部107で算出された減速度を実現するために必要なブレーキ油圧指令値を求める。ここでは、減速度とブレーキ油圧指令値との関係を定めたデータを予め用意しておき、このデータと、減算部107で算出された減速度とに基づいて、ブレーキ油圧指令値を求める。求めたブレーキ油圧指令値は、ブレーキ制御ユニット4に送信される。ブレーキ制御ユニット4は、ブレーキ油圧指令値に基づいて、ブレーキアクチュエータ10を制御する。
【0025】
図5は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によって行われる処理内容を示すフローチャートである。車両が起動すると、制御コントローラ1は、ステップS10の処理を開始する。なお、制御コントローラ1内部の各部100〜108で行われる処理のうち、既に説明した処理の詳細な内容の説明は省略する。
【0026】
ステップS10では、車両の各種情報を取得する。車両の各種情報には、舵角センサ7によって検出される舵角、車輪速センサ6によって検出された車輪速に基づいて求められる車速、および、ナビゲーションシステム11から入力されるカーブ路の入口までの距離およびカーブ路の曲率半径が含まれる。
【0027】
ステップS10に続くステップS20では、ヨーレート算出部100において、車両のヨーレートを算出して、ステップS30に進む。ステップS30では、目標車速算出部101において、ナビゲーションシステム11から入力されるカーブ路の入口までの距離およびカーブ路の曲率半径の情報と、ヨーレート算出部100で算出されるヨーレートとに基づいて、目標車速を算出して、ステップS40に進む。
【0028】
ステップS40では、目標減速度算出部102において、車輪速センサ6によって検出された車輪速に基づいて求められる車速、および、目標車速算出部101によって算出された目標車速に基づいて、車両の目標減速度を算出して、ステップS50に進む。ステップS50では、目標変速比算出部103において、目標減速度算出部102によって算出された目標変速比を算出して、ステップS60に進む。
【0029】
ステップS60では、変速比上限算出部104において、ヨーレート算出部100で算出されたヨーレートに基づいて、変速比上限値を算出して、ステップS70に進む。ステップS70において、最終目標変速比算出部105は、目標変速比算出部103によって算出された目標変速比と、変速比上限算出部104によって算出された変速比上限値とに基づいて、最終目標変速比を算出して、ステップS80に進む。
【0030】
ステップS80において、エンブレ推定部106は、自動変速機9の変速段が最終目標変速比に応じた目標変速段に制御されている場合のエンジンブレーキ駆動力を算出して、ステップS90に進む。ステップS90では、ブレーキ油圧指令値を算出する。このため、減算部107は、目標減速度算出部102によって算出される目標減速度から、エンブレ推定部106によって算出されるエンジンブレーキ駆動力に応じた減速度を減算することにより、ブレーキアクチュエータ10を作動させるために必要な減速度を求める。減速度ブレーキ油圧変換部108は、減算部107で算出された減速度に基づいて、その減速度を実現するために必要なブレーキ油圧指令値を求める。
【0031】
ステップS90に続くステップS100において、最終目標変速比算出部105は、算出した最終目標変速比に基づいて、自動変速機9の目標変速段を求めて、AT制御ユニット3に出力する。また、減速度ブレーキ油圧変換部108は、算出したブレーキ油圧指令値をブレーキ制御ユニット4に出力する。
【0032】
図6(a)は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両がカーブ路に進入する際の制御タイミングチャートを示す図である。また、図6(b)は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載しない従来の車両がカーブ路に進入する際の制御タイミングチャートを示す図である。図6(a)、(b)ともに、上から順に、走行道路と車両との位置関係、車速の時間変化、変速比の時間変化、アクセル角の時間変化、ハンドル舵角の時間変化、および、制駆動力の時間変化をそれぞれ示している。制駆動力の時間変化の図では、タイヤがスリップしない制駆動力範囲をハンチングで示している。
【0033】
まず始めに、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載しない車両の挙動について説明する。自動変速機9の変速段が5速に制御されて走行している場合に、ナビゲーションシステム11から、カーブ路までの距離およびカーブ路の曲率半径の情報が入力されると、目標車速算出部101は目標車速を算出し、目標減速度算出部102は、目標減速度を算出する。この目標減速度をエンジンブレーキにて実現するために、図6(b)に示す例では、自動変速機9は、5速から、4速、3速、2速とシフトダウンしている。自動変速機9を2速までシフトダウンさせることにより、大きなエンジンブレーキ力を得ている。図6(b)に示す例では、カーブ路の入口地点bに到達しても、十分な減速力が不足しているため、カーブ旋回中も、自動変速機9は2速でホールドされている。
【0034】
カーブ路旋回中に、例えば、ドライバが減速しすぎと判断して、アクセルペダルをわずかに踏んでしまうと、エンジンの燃料カットが解除される。この場合、自動変速機9が2速に設定されているので、大きな駆動力が発生する。従って、アクセルペダルが踏まれる前に発生していたエンジンブレーキ駆動力(負の駆動力)と、アクセルペダルが踏まれた時の駆動力(正の駆動力)との差、すなわち、駆動力段差が大きくなる(図6(b)の丸印d参照)。
【0035】
カーブ旋回時には、タイヤがスリップしない制駆動力範囲も狭くなっている(制駆動力のハンチング部分)ため、図6(b)に示す例では、ドライバがアクセルペダルを踏んだ時の駆動力段差が大きくなることにより、タイヤがスリップしない制駆動力範囲を超えてしまっている。その後、ドライバがアクセルペダルを戻して、車両がカーブ路の出口cにさしかかると、ドライバは徐々にアクセルペダルを踏んで、車両を加速させていく。
【0036】
続いて、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両の挙動を図6(a)を用いて説明する。この場合、カーブ路の入口地点bに到達するまでの制御は同じである。すなわち、車両がカーブ路の入口に近づくにつれて、エンジンブレーキで車両を減速させるために、自動変速機9は、5速から2速までシフトダウンしている。
【0037】
第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置では、変速比上限算出部104において、変速比の上限値を算出している。この変速比上限値は、車両のヨーレートが大きいほど、小さい値である(図4参照)。すなわち、車両が旋回状態に入り、車両のヨーレートが大きくなると、変速比上限値が小さくなるので、最終目標変速比算出部105で算出される最終目標変速比も小さくなる。図6(a)に示す例では、カーブ旋回時に、最終目標変速比が小さくなることにより、自動変速機9の変速段が2速から3速、4速へとシフトアップしている。
【0038】
ここで、図6(b)に示す例と同様に、カーブ路旋回中に、ドライバがアクセルペダルをわずかに踏んだ場合、自動変速機9が4速に設定されているため、2速に設定されている場合に比べて、発生する駆動力は小さく、従って、駆動力段差も小さい(図6(a)の丸印d参照)。従って、図6(a)に示すように、車両に発生する駆動力は、タイヤがスリップしない制駆動力範囲を超えておらず、前輪はスリップすることなく、カーブ路を走行することができる。
【0039】
第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によれば、車速および車両の横旋回度合に基づいて、車両の減速度を求め、求めた減速度を実現するために必要なエンジンブレーキトルクを算出するとともに、算出したエンジンブレーキトルクの絶対値がエンジンブレーキトルク上限値より小さくなるように制御する。この時に、車両の横旋回度合が大きいほど、エンジンブレーキトルク上限値を小さくするので、エンジンブレーキ作動中に、ドライバがアクセルペダルを踏んだ時の駆動力段差を小さくすることができる。これにより、コーナリング時に、ドライバがアクセルペダルを踏んでしまった場合でも、車両のアンダーステア等の発生を防止することができる。
【0040】
特に、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によれば、車両の横旋回度合が大きいほど、変速比上限値を小さくすることにより、エンジンブレーキトルク上限値を小さくする。これにより、エンジンブレーキ作動中に、ドライバがアクセルペダルを踏んだ時の駆動力段差を小さくすることができる。
【0041】
−第2の実施の形態−
図7は、第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置の構成を示す図である。第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両は、前輪および後輪が共に駆動輪である4輪駆動車である。第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置は、図1に示す第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置の構成に対して、4WDコントローラ12および4WD駆動力配分器13をさらに備える。
【0042】
制御コントローラ1Aは、後述する方法により、車両がカーブ路を走行する際の後輪の目標配分比を演算する。4WDコントローラ12は、制御コントローラ1Aによって演算された後輪の目標配分比に基づいた前後輪駆動指示を4WD駆動力配分器13に送信する。また、実際の後輪の駆動力配分比を制御コントローラ1Aに送信する。4WD駆動力配分器13は、4WDコントローラ12から入力される前後輪駆動指示に基づいて、前輪および後輪の駆動力配分を制御する。
【0043】
図8は、制御コントローラ1Aの内部で行われる各種処理を説明するためのブロック図である。制御コントローラ1Aは、図2に示す制御コントローラ1の構成に加えて、目標4WD配分比算出部109を備える。目標4WD配分比算出部109は、ヨーレート算出部100によって算出されるヨーレートに基づいて、後輪の目標配分比を演算する。具体的には、ヨーレートが大きいほど、後輪の目標配分比が大きくなるようにする。目標4WD配分比算出部109によって算出された目標配分比は、4WDコントローラ12に送信される。
【0044】
4WDコントローラ12は、実際の後輪の駆動力配分比を制御コントローラ1Aの変速比上限算出部104Aに送信する。変速比上限算出部104Aは、ヨーレート算出部100によって求められるヨーレートと、4WDコントローラ12から入力される実際の後輪の駆動力配分比とに基づいて、変速比上限値を求める。
【0045】
図9は、変速比上限算出部104Aが変速比上限値を算出する手順を示す図である。変速比上限算出部104Aは、ヨーレートおよび後輪の駆動力配分比と、変速比上限値との関係を示すデータ90を保持している。このデータ90では、図9に示すように、ヨーレートが小さいほど、また、後輪の駆動力配分比が大きいほど、変速比上限値は大きい。例えば、同一のヨーレートであっても、後輪の駆動力配分比が大きくなるほど、変速比上限値は大きくなる。
【0046】
すなわち、車両のヨーレートが大きいほど、変速比上限値は小さくなるが、上述したように、車両のヨーレートが大きいほど、後輪の目標配分比は大きくなるので、図9のデータ90を用いて求められる変速比上限値は、2輪駆動車の場合(第1の実施の形態)の変速比上限値と比べて大きくなる。
【0047】
図10は、第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によって行われる処理内容を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートの処理と同一の処理を行うステップには、同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。車両が起動すると、制御コントローラ1は、ステップS10Aの処理を開始する。
【0048】
ステップS10Aでは、車両の各種情報を取得する。車両の各種情報には、舵角センサ7によって検出される舵角、車輪速センサ6によって検出される車輪速に基づいて求められる車速、ナビゲーションシステム11から入力されるカーブ路の入口までの距離およびカーブ路の曲率半径、および、実際の後輪の駆動力配分比が含まれる。
【0049】
ステップS20において、ヨーレート算出部100が車両のヨーレートを算出すると、ステップS200に進む。ステップS200では、目標4WD配分比算出部109において、後輪の目標配分比を算出して、ステップS30に進む。ステップS30からステップS50の処理は、図5に示すフローチャートのステップS30からステップS50の処理と同一である。
【0050】
ステップS50に続くステップS210において、変速比上限算出部104Aは、ヨーレート算出部100によって求められるヨーレートと、4WDコントローラ12から入力される後輪の駆動力配分比とに基づいて、変速比上限値を算出する。変速比上限値を算出すると、ステップS70に進む。ステップS70からステップS90までの処理は、図5に示すフローチャートのステップS70からステップS90までの処理と同一である。
【0051】
ステップS90に続くステップS220において、最終目標変速比算出部105は、ステップS70で算出した最終目標変速比に基づいて、自動変速機9の目標変速段を求めて、をAT制御ユニット3に出力し、減速度ブレーキ油圧変換部108は、ステップS90で算出したブレーキ油圧指令値をブレーキ制御ユニット4に出力する。また、目標4WD配分比算出部109は、ステップS200で算出した後輪の目標配分比を4WDコントローラ12に出力する。
【0052】
図11は、第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両がカーブ路に進入する際の制御タイミングチャートを示す図である。カーブ路の入口地点bに到達するまでの制御は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によって行われる制御と同じである。すなわち、車両がカーブ路の入口に近づくにつれて、エンジンブレーキで車両を減速させるために、自動変速機9は、5速から2速までシフトダウンしている。
【0053】
第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置では、車両が旋回状態に入ると、最終目標変速比算出部105で算出される最終目標変速比が小さくなるので、自動変速機9の変速段が2速から3速、4速へとシフトアップしている。これに対して、第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置では、車両のヨーレートが大きいほど、後輪の駆動力配分比を大きくし、後輪の駆動力配分比が大きくなるほど、変速比上限値を大きくしている。従って、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置に比べて、車両旋回時の最終目標変速比が大きくなる。図11に示す例では、自動変速機9は、4速までシフトアップせずに、3速で旋回している。これは、エンジンブレーキ制動力を後輪に配分することにより、前輪のスリップ限界までの余裕度が大きくなり、より大きいエンジンブレーキ力を発生させても、車両挙動が安定するからである。また、状況によっては、カーブ路での減速をエンジンブレーキのみで行うことができるため、ブレーキアクチュエータ10による摩擦ブレーキの作動頻度を低減させることができる。従って、ブレーキアクチュエータ10の耐久性が改善し、燃料カット頻度の向上による燃費向上を実現することが可能となる。
【0054】
第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によれば、4輪駆動時においてエンジンブレーキトルク上限値を小さくする割合を、2輪駆動時においてエンジンブレーキトルク上限値を小さくする割合より小さくするので、エンジンブレーキを有効に活用することができる。これにより、摩擦ブレーキの作動頻度の低減や、燃料カット頻度の向上による燃費向上を実現することができる。
【0055】
特に、第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によれば、後輪の駆動力配分比が大きいほど、変速比上限値、すなわち、エンジンブレーキトルク上限値を小さくする割合を小さくするので、前輪の駆動力状態に応じて、適切な変速比を設定することができる。また、車両の横旋回度合が大きいほど、後輪の駆動力配分比を大きくするので、車両の横旋回度合が大きいほど、変速比上限値を大きくして、エンジンブレーキを有効に活用することができる。
【0056】
本発明は、上述した第1および第2の実施の形態に限定されることはない。例えば、上述した第1および第2の実施の形態では、自動変速機9が有段変速機であるとして説明したが、無段変速機であってもよい。自動変速機9が無段変速機の場合、最終目標変速比算出部105は、算出した最終目標変速比をAT制御ユニット3に出力する。
【0057】
ヨーレート算出部100は、車輪速センサ6によって検出される車輪速と、舵角センサ7によって検出される舵角とに基づいて、既知の方法により、車両のヨーレートを算出し、算出したヨーレートと、ヨーレートセンサ5によって検出されるヨーレートのうち、大きい方の値を選択して出力したが、別の方法により、出力するヨーレートを選択してもよい。また、ヨーレートセンサ5によって検出されるヨーレートを常に用いるようにしてもよいし、ヨーレート算出部100によって算出されるヨーレートを常に用いるようにしてもよい。
【0058】
目標車速算出部101が目標車速を算出する方法も、上述した方法に限定されることはなく、例えば、道路の路面μ(摩擦係数)を考慮して、目標車速を算出することもできる。
【0059】
なお、上述した第1および第2の実施の形態では、目標変速比を変速比上限値で制限することによって、エンジンブレーキトルクを制限したが、最初に目標エンジンブレーキトルクを算出し、算出したエンジンブレーキトルクがエンジンブレーキトルク上限値より小さくなるように制限してもよい。この場合、エンジンブレーキトルク上限値は、車両の横旋回度合が大きいほど、小さくなるようにする。
【0060】
特許請求の範囲の構成要素と第1および第2の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、ヨーレートセンサ5が横旋回度合検出手段を、制御コントローラ1が目標減速度算出手段、エンジンブレーキトルク算出手段、エンジンブレーキトルク制限手段、および、エンジンブレーキトルク上限値変更手段を、AT制御ユニット3がエンジンブレーキ制御手段をそれぞれ構成する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する上で、上記の実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係に何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置の構成を示す図
【図2】制御コントローラの内部で行われる各種処理を説明するためのブロック図
【図3】目標変速比算出部が目標変速比を算出する手順を示す図
【図4】ヨーレートと変速比上限値との関係を示す図
【図5】第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によって行われる処理内容を示すフローチャート
【図6】図6(a)は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両がカーブ路に進入する際の制御タイミングチャートを示す図、図6(b)は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載しない従来の車両がカーブ路に進入する際の制御タイミングチャートを示す図
【図7】第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置の構成を示す図
【図8】制御コントローラの内部で行われる各種処理を説明するためのブロック図
【図9】ヨーレートおよび後輪の駆動力配分比と、変速比上限値との関係を示すデータ
【図10】第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によって行われる処理内容を示すフローチャート
【図11】第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両がカーブ路に進入する際のタイミングチャートを示す図
【符号の説明】
【0062】
1…制御コントローラ、2…エンジン制御ユニット(ECM)、3…AT制御ユニット(ATCU)、4…ブレーキ制御ユニット(BCU)、5…ヨーレートセンサ、6…車輪速センサ、7…舵角センサ、8…電子制御スロットル、9…自動変速機(AT)、10…ブレーキアクチュエータ、11…ナビゲーションシステム、100…ヨーレート算出部、101…目標車速算出部、102…目標減速度算出部、103…目標変速比算出部、104…変速比上限算出部、105…最終目標変速比算出部、106…エンブレ推定部、107…減算部、108…減速度ブレーキ油圧変換部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制駆動力を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーナリング時に、自動変速機の変速比が下限レシオより小さくならないように制限して、コーナリング時におけるエンジンブレーキ性能を確保する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−210456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、横加速度や操舵角が大きいほど、エンジンブレーキ力が大きくなるように制御するので、エンジンブレーキ作動時にドライバがアクセルペダルを踏んだ時の駆動力段差が大きくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用制駆動力制御装置および車両用制駆動力制御方法は、目標減速度を実現するために必要なエンジンブレーキトルクの絶対値がエンジンブレーキトルク上限値より小さくなるように制限するとともに、車両の横旋回度合が大きいほど、エンジンブレーキトルク上限値を小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による車両用制駆動力制御装置および車両用制駆動力制御方法によれば、エンジンブレーキ作動中に、ドライバがアクセルペダルを踏んだ時の駆動力段差を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施の形態−
図1は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置の構成を示す図である。第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置は、制御コントローラ1と、エンジン制御ユニット(ECM)2と、AT制御ユニット(ATCU)3と、ブレーキ制御ユニット(BCU)4と、ヨーレートセンサ5と、車輪速センサ6と、舵角センサ7と、電子制御スロットル8と、自動変速機(AT)9と、ブレーキアクチュエータ10と、ナビゲーションシステム11とを備える。なお、ここでは、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両は、駆動輪が前輪のみである前輪駆動車として説明する。
【0008】
エンジン制御ユニット2は、制御コントローラ1から入力されるエンジントルク指令値に基づいて、電子制御スロットル8を制御することにより、エンジントルクを制御する。特に、ドライバがアクセルペダル(不図示)を離した(閉じた)場合には、電子制御スロットル8を全閉(もしくは全閉近傍)にする制御を行う。ブレーキ制御ユニット4は、制御コントローラ1から入力されるブレーキ油圧指令値に基づいて、各車輪に設けられているブレーキアクチュエータ10を制御することにより、車両の制動力を制御する。
【0009】
AT制御ユニット3は、通常制御時は、アクセルペダル開度および車速に基づいて、自動変速機9の変速段を制御し、後述するカーブ走行時には、制御コントローラ1から入力される最終目標変速比に基づいて、自動変速機9の変速段を制御する。なお、ここでは、自動変速機9を有段変速機として説明する。
【0010】
ヨーレートセンサ5は、車両のヨーレートを検出して、制御コントローラ1に出力する。車輪速センサ6は、各車輪の速度を検出して、制御コントローラ1に出力する。舵角センサ7は、ハンドルの舵角を検出して、制御コントローラ1に出力する。
【0011】
ナビゲーションシステム11は、GPSユニット(不図示)や地図データベース(不図示)などを備え、GPSユニットによって検出される自車位置と、地図データベースに格納されている地図データとに基づいて、自車両が走行している道路を特定し、各種情報を制御コントローラ1に出力する。制御コントローラ1に出力する各種情報には、例えば、車両前方に存在するカーブ路までの距離や、カーブ路の曲率半径の情報が含まれている。なお、道路の距離や曲率半径の情報は、地図データベースに格納されている地図データに含まれている。
【0012】
図2は、制御コントローラ1の内部で行われる各種処理を説明するためのブロック図である。制御コントローラ1は、内部で行う処理機能上、ヨーレート算出部100と、目標車速算出部101と、目標減速度算出部102と、目標変速比算出部103と、変速比上限算出部104と、最終目標変速比算出部105と、エンブレ推定部106と、減算部107と、減速度ブレーキ油圧変換部108とを備える。
【0013】
ヨーレート算出部100は、車輪速センサ6によって検出される車輪速と、舵角センサ7によって検出される舵角とに基づいて、既知の方法により、車両のヨーレートを算出し、算出したヨーレートと、ヨーレートセンサ5によって検出されるヨーレートのうち、大きい方の値を出力する。目標車速算出部101は、ヨーレート算出部100から出力されるヨーレートに基づいて、車両の横加速度が所定の横加速度以内になるように、目標車速を算出する。
【0014】
ただし、カーブ路に進入する場合には、ナビゲーションシステム11から入力される、カーブ路の入口までの距離およびカーブ路の曲率半径の情報に基づいて、カーブ路を走行する際の車速目標値(カーブ路車速目標値)を予め求めて、カーブ路の入口に到達するまでの間に、車速がカーブ路車速目標値と一致するような車速目標値を求める。この場合の車速目標値は、車両がカーブ路の入口に近づくにつれて、カーブ路車速目標値に向けて徐々に減少する値となる。
【0015】
目標減速度算出部102は、車両の実車速と、目標車速算出部101によって算出される目標車速との差ΔVに基づいて、車両の目標減速度を算出する。この目標減速度は、車速差ΔVが大きいほど大きい値である。なお、車速は、車輪速センサ6によって検出される車輪速から求める。
【0016】
目標変速比算出部103は、自動変速機9の目標変速比を算出する。図3は、目標変速比算出部103が目標変速比を算出する手順を示す図である。目標変速比算出部103は、目標減速度と、自動変速機9の目標入力軸回転数(エンジンの目標回転数)との関係を定めたデータ30を保持している。図3に示すように、目標減速度(目標減速度の絶対値)が大きいほど、目標入力軸回転数も大きい。まず、目標減速度算出部102によって算出される目標減速度と、上述したデータ30とに基づいて、目標入力軸回転数を求める。続いて、求めた目標入力軸回転数を車速で除算し、所定の係数Kを乗ずることにより、目標変速比を求める。所定の係数Kは、タイヤ半径や、ファイナルギア比等に応じた値である。
【0017】
変速比上限算出部104は、後述する方法により求めた、ヨーレートと変速比上限値との関係を定めたデータ40を保持している。このデータ40では、図4に示すように、ヨーレートが大きいほど、変速比上限値は小さい。変速比上限算出部104は、ヨーレート算出部101から出力されるヨーレートと、上述したデータ40とに基づいて、変速比上限値を求める。
【0018】
ヨーレートと変速比上限値との関係を定めたデータ40の求め方について説明しておく。まず、異なるヨーレートの値に応じて、第1の変速比上限値を求める。第1の変速比上限値は、異なるヨーレートの値に応じて、図示しないエンジンが燃料カットの状態におけるエンジンブレーキ減速駆動力と、タイヤ横力との合力が所定のタイヤ摩擦限界値(タイヤがスリップしない限界値)を超えないという条件の下で算出される変速比の限界値である。
【0019】
続いて、異なるヨーレートの値に応じて、第2の変速比上限値を求める。第2の変速比上限値は、異なるヨーレートの値に応じて、所定のスロットル開度(アクセルペダルオフ時に、ドライバがわずかにアクセルペダルを踏んでしまった状態を想定した開度)を開いた時の正の駆動力と、タイヤ横力との合力が所定のタイヤ摩擦限界値を超えないという条件の下で算出される変速比の限界値である。
【0020】
最後に、異なるヨーレートの値ごとに算出した第1の変速比上限値および第2の変速比上限値のうち、小さい方の変速比上限値を選択し、ヨーレートと変速比上限値との関係を定めたデータ40を作成する。
【0021】
最終目標変速比算出部105は、目標変速比算出部103によって算出された目標変速比と、変速比上限算出部104によって算出された変速比上限値とを比較して、小さい方の変速比を最終目標変速比とする。最終目標変速比算出部105はまた、最終目標変速比に基づいて、自動変速機9の目標変速段を求めて、AT制御ユニット3に送信する。AT制御ユニット3は、自動変速機9の変速段が目標変速段と一致するように制御する。
【0022】
エンブレ推定部106は、最終目標変速比算出部105によって求められた最終目標変速比に基づいて、図示しないエンジンが燃料カット状態にある場合のエンジンブレーキ駆動力を求める。すなわち、自動変速機9の変速段が最終目標変速比に応じた目標変速段に制御されている場合のエンジンブレーキ駆動力を算出する。
【0023】
減算部107は、目標減速度算出部102によって算出される目標減速度から、エンブレ推定部106によって算出されるエンジンブレーキ駆動力に応じた減速度を減算することにより、ブレーキアクチュエータ10を作動させるために必要な減速度を求める。
【0024】
減速度ブレーキ油圧変換部108は、減算部107で算出された減速度を実現するために必要なブレーキ油圧指令値を求める。ここでは、減速度とブレーキ油圧指令値との関係を定めたデータを予め用意しておき、このデータと、減算部107で算出された減速度とに基づいて、ブレーキ油圧指令値を求める。求めたブレーキ油圧指令値は、ブレーキ制御ユニット4に送信される。ブレーキ制御ユニット4は、ブレーキ油圧指令値に基づいて、ブレーキアクチュエータ10を制御する。
【0025】
図5は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によって行われる処理内容を示すフローチャートである。車両が起動すると、制御コントローラ1は、ステップS10の処理を開始する。なお、制御コントローラ1内部の各部100〜108で行われる処理のうち、既に説明した処理の詳細な内容の説明は省略する。
【0026】
ステップS10では、車両の各種情報を取得する。車両の各種情報には、舵角センサ7によって検出される舵角、車輪速センサ6によって検出された車輪速に基づいて求められる車速、および、ナビゲーションシステム11から入力されるカーブ路の入口までの距離およびカーブ路の曲率半径が含まれる。
【0027】
ステップS10に続くステップS20では、ヨーレート算出部100において、車両のヨーレートを算出して、ステップS30に進む。ステップS30では、目標車速算出部101において、ナビゲーションシステム11から入力されるカーブ路の入口までの距離およびカーブ路の曲率半径の情報と、ヨーレート算出部100で算出されるヨーレートとに基づいて、目標車速を算出して、ステップS40に進む。
【0028】
ステップS40では、目標減速度算出部102において、車輪速センサ6によって検出された車輪速に基づいて求められる車速、および、目標車速算出部101によって算出された目標車速に基づいて、車両の目標減速度を算出して、ステップS50に進む。ステップS50では、目標変速比算出部103において、目標減速度算出部102によって算出された目標変速比を算出して、ステップS60に進む。
【0029】
ステップS60では、変速比上限算出部104において、ヨーレート算出部100で算出されたヨーレートに基づいて、変速比上限値を算出して、ステップS70に進む。ステップS70において、最終目標変速比算出部105は、目標変速比算出部103によって算出された目標変速比と、変速比上限算出部104によって算出された変速比上限値とに基づいて、最終目標変速比を算出して、ステップS80に進む。
【0030】
ステップS80において、エンブレ推定部106は、自動変速機9の変速段が最終目標変速比に応じた目標変速段に制御されている場合のエンジンブレーキ駆動力を算出して、ステップS90に進む。ステップS90では、ブレーキ油圧指令値を算出する。このため、減算部107は、目標減速度算出部102によって算出される目標減速度から、エンブレ推定部106によって算出されるエンジンブレーキ駆動力に応じた減速度を減算することにより、ブレーキアクチュエータ10を作動させるために必要な減速度を求める。減速度ブレーキ油圧変換部108は、減算部107で算出された減速度に基づいて、その減速度を実現するために必要なブレーキ油圧指令値を求める。
【0031】
ステップS90に続くステップS100において、最終目標変速比算出部105は、算出した最終目標変速比に基づいて、自動変速機9の目標変速段を求めて、AT制御ユニット3に出力する。また、減速度ブレーキ油圧変換部108は、算出したブレーキ油圧指令値をブレーキ制御ユニット4に出力する。
【0032】
図6(a)は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両がカーブ路に進入する際の制御タイミングチャートを示す図である。また、図6(b)は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載しない従来の車両がカーブ路に進入する際の制御タイミングチャートを示す図である。図6(a)、(b)ともに、上から順に、走行道路と車両との位置関係、車速の時間変化、変速比の時間変化、アクセル角の時間変化、ハンドル舵角の時間変化、および、制駆動力の時間変化をそれぞれ示している。制駆動力の時間変化の図では、タイヤがスリップしない制駆動力範囲をハンチングで示している。
【0033】
まず始めに、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載しない車両の挙動について説明する。自動変速機9の変速段が5速に制御されて走行している場合に、ナビゲーションシステム11から、カーブ路までの距離およびカーブ路の曲率半径の情報が入力されると、目標車速算出部101は目標車速を算出し、目標減速度算出部102は、目標減速度を算出する。この目標減速度をエンジンブレーキにて実現するために、図6(b)に示す例では、自動変速機9は、5速から、4速、3速、2速とシフトダウンしている。自動変速機9を2速までシフトダウンさせることにより、大きなエンジンブレーキ力を得ている。図6(b)に示す例では、カーブ路の入口地点bに到達しても、十分な減速力が不足しているため、カーブ旋回中も、自動変速機9は2速でホールドされている。
【0034】
カーブ路旋回中に、例えば、ドライバが減速しすぎと判断して、アクセルペダルをわずかに踏んでしまうと、エンジンの燃料カットが解除される。この場合、自動変速機9が2速に設定されているので、大きな駆動力が発生する。従って、アクセルペダルが踏まれる前に発生していたエンジンブレーキ駆動力(負の駆動力)と、アクセルペダルが踏まれた時の駆動力(正の駆動力)との差、すなわち、駆動力段差が大きくなる(図6(b)の丸印d参照)。
【0035】
カーブ旋回時には、タイヤがスリップしない制駆動力範囲も狭くなっている(制駆動力のハンチング部分)ため、図6(b)に示す例では、ドライバがアクセルペダルを踏んだ時の駆動力段差が大きくなることにより、タイヤがスリップしない制駆動力範囲を超えてしまっている。その後、ドライバがアクセルペダルを戻して、車両がカーブ路の出口cにさしかかると、ドライバは徐々にアクセルペダルを踏んで、車両を加速させていく。
【0036】
続いて、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両の挙動を図6(a)を用いて説明する。この場合、カーブ路の入口地点bに到達するまでの制御は同じである。すなわち、車両がカーブ路の入口に近づくにつれて、エンジンブレーキで車両を減速させるために、自動変速機9は、5速から2速までシフトダウンしている。
【0037】
第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置では、変速比上限算出部104において、変速比の上限値を算出している。この変速比上限値は、車両のヨーレートが大きいほど、小さい値である(図4参照)。すなわち、車両が旋回状態に入り、車両のヨーレートが大きくなると、変速比上限値が小さくなるので、最終目標変速比算出部105で算出される最終目標変速比も小さくなる。図6(a)に示す例では、カーブ旋回時に、最終目標変速比が小さくなることにより、自動変速機9の変速段が2速から3速、4速へとシフトアップしている。
【0038】
ここで、図6(b)に示す例と同様に、カーブ路旋回中に、ドライバがアクセルペダルをわずかに踏んだ場合、自動変速機9が4速に設定されているため、2速に設定されている場合に比べて、発生する駆動力は小さく、従って、駆動力段差も小さい(図6(a)の丸印d参照)。従って、図6(a)に示すように、車両に発生する駆動力は、タイヤがスリップしない制駆動力範囲を超えておらず、前輪はスリップすることなく、カーブ路を走行することができる。
【0039】
第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によれば、車速および車両の横旋回度合に基づいて、車両の減速度を求め、求めた減速度を実現するために必要なエンジンブレーキトルクを算出するとともに、算出したエンジンブレーキトルクの絶対値がエンジンブレーキトルク上限値より小さくなるように制御する。この時に、車両の横旋回度合が大きいほど、エンジンブレーキトルク上限値を小さくするので、エンジンブレーキ作動中に、ドライバがアクセルペダルを踏んだ時の駆動力段差を小さくすることができる。これにより、コーナリング時に、ドライバがアクセルペダルを踏んでしまった場合でも、車両のアンダーステア等の発生を防止することができる。
【0040】
特に、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によれば、車両の横旋回度合が大きいほど、変速比上限値を小さくすることにより、エンジンブレーキトルク上限値を小さくする。これにより、エンジンブレーキ作動中に、ドライバがアクセルペダルを踏んだ時の駆動力段差を小さくすることができる。
【0041】
−第2の実施の形態−
図7は、第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置の構成を示す図である。第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両は、前輪および後輪が共に駆動輪である4輪駆動車である。第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置は、図1に示す第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置の構成に対して、4WDコントローラ12および4WD駆動力配分器13をさらに備える。
【0042】
制御コントローラ1Aは、後述する方法により、車両がカーブ路を走行する際の後輪の目標配分比を演算する。4WDコントローラ12は、制御コントローラ1Aによって演算された後輪の目標配分比に基づいた前後輪駆動指示を4WD駆動力配分器13に送信する。また、実際の後輪の駆動力配分比を制御コントローラ1Aに送信する。4WD駆動力配分器13は、4WDコントローラ12から入力される前後輪駆動指示に基づいて、前輪および後輪の駆動力配分を制御する。
【0043】
図8は、制御コントローラ1Aの内部で行われる各種処理を説明するためのブロック図である。制御コントローラ1Aは、図2に示す制御コントローラ1の構成に加えて、目標4WD配分比算出部109を備える。目標4WD配分比算出部109は、ヨーレート算出部100によって算出されるヨーレートに基づいて、後輪の目標配分比を演算する。具体的には、ヨーレートが大きいほど、後輪の目標配分比が大きくなるようにする。目標4WD配分比算出部109によって算出された目標配分比は、4WDコントローラ12に送信される。
【0044】
4WDコントローラ12は、実際の後輪の駆動力配分比を制御コントローラ1Aの変速比上限算出部104Aに送信する。変速比上限算出部104Aは、ヨーレート算出部100によって求められるヨーレートと、4WDコントローラ12から入力される実際の後輪の駆動力配分比とに基づいて、変速比上限値を求める。
【0045】
図9は、変速比上限算出部104Aが変速比上限値を算出する手順を示す図である。変速比上限算出部104Aは、ヨーレートおよび後輪の駆動力配分比と、変速比上限値との関係を示すデータ90を保持している。このデータ90では、図9に示すように、ヨーレートが小さいほど、また、後輪の駆動力配分比が大きいほど、変速比上限値は大きい。例えば、同一のヨーレートであっても、後輪の駆動力配分比が大きくなるほど、変速比上限値は大きくなる。
【0046】
すなわち、車両のヨーレートが大きいほど、変速比上限値は小さくなるが、上述したように、車両のヨーレートが大きいほど、後輪の目標配分比は大きくなるので、図9のデータ90を用いて求められる変速比上限値は、2輪駆動車の場合(第1の実施の形態)の変速比上限値と比べて大きくなる。
【0047】
図10は、第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によって行われる処理内容を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートの処理と同一の処理を行うステップには、同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。車両が起動すると、制御コントローラ1は、ステップS10Aの処理を開始する。
【0048】
ステップS10Aでは、車両の各種情報を取得する。車両の各種情報には、舵角センサ7によって検出される舵角、車輪速センサ6によって検出される車輪速に基づいて求められる車速、ナビゲーションシステム11から入力されるカーブ路の入口までの距離およびカーブ路の曲率半径、および、実際の後輪の駆動力配分比が含まれる。
【0049】
ステップS20において、ヨーレート算出部100が車両のヨーレートを算出すると、ステップS200に進む。ステップS200では、目標4WD配分比算出部109において、後輪の目標配分比を算出して、ステップS30に進む。ステップS30からステップS50の処理は、図5に示すフローチャートのステップS30からステップS50の処理と同一である。
【0050】
ステップS50に続くステップS210において、変速比上限算出部104Aは、ヨーレート算出部100によって求められるヨーレートと、4WDコントローラ12から入力される後輪の駆動力配分比とに基づいて、変速比上限値を算出する。変速比上限値を算出すると、ステップS70に進む。ステップS70からステップS90までの処理は、図5に示すフローチャートのステップS70からステップS90までの処理と同一である。
【0051】
ステップS90に続くステップS220において、最終目標変速比算出部105は、ステップS70で算出した最終目標変速比に基づいて、自動変速機9の目標変速段を求めて、をAT制御ユニット3に出力し、減速度ブレーキ油圧変換部108は、ステップS90で算出したブレーキ油圧指令値をブレーキ制御ユニット4に出力する。また、目標4WD配分比算出部109は、ステップS200で算出した後輪の目標配分比を4WDコントローラ12に出力する。
【0052】
図11は、第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両がカーブ路に進入する際の制御タイミングチャートを示す図である。カーブ路の入口地点bに到達するまでの制御は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によって行われる制御と同じである。すなわち、車両がカーブ路の入口に近づくにつれて、エンジンブレーキで車両を減速させるために、自動変速機9は、5速から2速までシフトダウンしている。
【0053】
第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置では、車両が旋回状態に入ると、最終目標変速比算出部105で算出される最終目標変速比が小さくなるので、自動変速機9の変速段が2速から3速、4速へとシフトアップしている。これに対して、第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置では、車両のヨーレートが大きいほど、後輪の駆動力配分比を大きくし、後輪の駆動力配分比が大きくなるほど、変速比上限値を大きくしている。従って、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置に比べて、車両旋回時の最終目標変速比が大きくなる。図11に示す例では、自動変速機9は、4速までシフトアップせずに、3速で旋回している。これは、エンジンブレーキ制動力を後輪に配分することにより、前輪のスリップ限界までの余裕度が大きくなり、より大きいエンジンブレーキ力を発生させても、車両挙動が安定するからである。また、状況によっては、カーブ路での減速をエンジンブレーキのみで行うことができるため、ブレーキアクチュエータ10による摩擦ブレーキの作動頻度を低減させることができる。従って、ブレーキアクチュエータ10の耐久性が改善し、燃料カット頻度の向上による燃費向上を実現することが可能となる。
【0054】
第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によれば、4輪駆動時においてエンジンブレーキトルク上限値を小さくする割合を、2輪駆動時においてエンジンブレーキトルク上限値を小さくする割合より小さくするので、エンジンブレーキを有効に活用することができる。これにより、摩擦ブレーキの作動頻度の低減や、燃料カット頻度の向上による燃費向上を実現することができる。
【0055】
特に、第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によれば、後輪の駆動力配分比が大きいほど、変速比上限値、すなわち、エンジンブレーキトルク上限値を小さくする割合を小さくするので、前輪の駆動力状態に応じて、適切な変速比を設定することができる。また、車両の横旋回度合が大きいほど、後輪の駆動力配分比を大きくするので、車両の横旋回度合が大きいほど、変速比上限値を大きくして、エンジンブレーキを有効に活用することができる。
【0056】
本発明は、上述した第1および第2の実施の形態に限定されることはない。例えば、上述した第1および第2の実施の形態では、自動変速機9が有段変速機であるとして説明したが、無段変速機であってもよい。自動変速機9が無段変速機の場合、最終目標変速比算出部105は、算出した最終目標変速比をAT制御ユニット3に出力する。
【0057】
ヨーレート算出部100は、車輪速センサ6によって検出される車輪速と、舵角センサ7によって検出される舵角とに基づいて、既知の方法により、車両のヨーレートを算出し、算出したヨーレートと、ヨーレートセンサ5によって検出されるヨーレートのうち、大きい方の値を選択して出力したが、別の方法により、出力するヨーレートを選択してもよい。また、ヨーレートセンサ5によって検出されるヨーレートを常に用いるようにしてもよいし、ヨーレート算出部100によって算出されるヨーレートを常に用いるようにしてもよい。
【0058】
目標車速算出部101が目標車速を算出する方法も、上述した方法に限定されることはなく、例えば、道路の路面μ(摩擦係数)を考慮して、目標車速を算出することもできる。
【0059】
なお、上述した第1および第2の実施の形態では、目標変速比を変速比上限値で制限することによって、エンジンブレーキトルクを制限したが、最初に目標エンジンブレーキトルクを算出し、算出したエンジンブレーキトルクがエンジンブレーキトルク上限値より小さくなるように制限してもよい。この場合、エンジンブレーキトルク上限値は、車両の横旋回度合が大きいほど、小さくなるようにする。
【0060】
特許請求の範囲の構成要素と第1および第2の実施の形態の構成要素との対応関係は次の通りである。すなわち、ヨーレートセンサ5が横旋回度合検出手段を、制御コントローラ1が目標減速度算出手段、エンジンブレーキトルク算出手段、エンジンブレーキトルク制限手段、および、エンジンブレーキトルク上限値変更手段を、AT制御ユニット3がエンジンブレーキ制御手段をそれぞれ構成する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する上で、上記の実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係に何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置の構成を示す図
【図2】制御コントローラの内部で行われる各種処理を説明するためのブロック図
【図3】目標変速比算出部が目標変速比を算出する手順を示す図
【図4】ヨーレートと変速比上限値との関係を示す図
【図5】第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によって行われる処理内容を示すフローチャート
【図6】図6(a)は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両がカーブ路に進入する際の制御タイミングチャートを示す図、図6(b)は、第1の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載しない従来の車両がカーブ路に進入する際の制御タイミングチャートを示す図
【図7】第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置の構成を示す図
【図8】制御コントローラの内部で行われる各種処理を説明するためのブロック図
【図9】ヨーレートおよび後輪の駆動力配分比と、変速比上限値との関係を示すデータ
【図10】第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置によって行われる処理内容を示すフローチャート
【図11】第2の実施の形態における車両用制駆動力制御装置を搭載した車両がカーブ路に進入する際のタイミングチャートを示す図
【符号の説明】
【0062】
1…制御コントローラ、2…エンジン制御ユニット(ECM)、3…AT制御ユニット(ATCU)、4…ブレーキ制御ユニット(BCU)、5…ヨーレートセンサ、6…車輪速センサ、7…舵角センサ、8…電子制御スロットル、9…自動変速機(AT)、10…ブレーキアクチュエータ、11…ナビゲーションシステム、100…ヨーレート算出部、101…目標車速算出部、102…目標減速度算出部、103…目標変速比算出部、104…変速比上限算出部、105…最終目標変速比算出部、106…エンブレ推定部、107…減算部、108…減速度ブレーキ油圧変換部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の横旋回度合を検出する横旋回度合検出手段と、
車両の目標減速度を算出する目標減速度算出手段と、
前記目標減速度算出手段によって算出される目標減速度を実現するために必要なエンジンブレーキトルクを算出するエンジンブレーキトルク算出手段と、
前記エンジンブレーキトルク算出手段によって算出されるエンジンブレーキトルクの絶対値がエンジンブレーキトルク上限値より小さくなるように制限するエンジンブレーキトルク制限手段と、
前記エンジンブレーキトルク制限手段によって制限された後のエンジンブレーキトルクが発生するように、車両を制御するエンジンブレーキ制御手段と、
前記横旋回度合検出手段によって検出される車両の横旋回度合が大きいほど、前記エンジンブレーキトルク上限値を小さくするエンジンブレーキトルク上限値変更手段とを備えることを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用制駆動力制御装置において、
車両の速度を検出する車速検出手段をさらに備え、
前記目標減速度算出手段は、前記車速検出手段によって検出される車速、および、前記横旋回度合検出手段によって検出される車両の横旋回度合に基づいて、前記目標減速度を算出することを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用制駆動力制御装置において、
前記エンジンブレーキトルク制限手段によって制限された後のエンジンブレーキトルクでは、前記目標減速度算出手段によって算出される目標減速度を実現することができない場合に、前記目標減速度を実現するために、前記エンジンブレーキとは別の車両ブレーキを作動させる車両ブレーキ制御手段をさらに備えることを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用制駆動力制御装置において、
エンジンの出力トルクを車両の駆動輪に伝達する際の目標変速比を算出する目標変速比算出手段をさらに備え、
前記エンジンブレーキトルク上限値変更手段は、前記横旋回度合検出手段によって検出される車両の横旋回度合が大きいほど、前記目標変速比算出手段によって算出される目標変速比を制限するための変速比上限値を小さくすることにより、前記エンジンブレーキトルク上限値を小さくすることを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両用制駆動力制御装置において、
前記エンジンブレーキトルク上限値変更手段は、4輪駆動時において前記エンジンブレーキトルク上限値を小さくする割合を、2輪駆動時において前記エンジンブレーキトルク上限値を小さくする割合より小さくすることを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用制駆動力制御装置において、
前記エンジンブレーキトルク上限値変更手段は、後輪の駆動力配分比が大きいほど、前記エンジンブレーキトルク上限値を小さくする割合を小さくすることを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用制駆動力制御装置において、
前記横旋回度合検出手段によって検出される車両の横旋回度合が大きいほど、後輪の駆動力配分比を大きくする駆動力配分比制御手段をさらに備えることを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項8】
車両の横旋回度合を検出し、
車両の目標減速度を算出し、
算出した目標減速度を実現するために必要なエンジンブレーキトルクを算出し、
車両の横旋回度合が大きいほど、エンジンブレーキトルクの絶対値を制限するためのエンジンブレーキトルク上限値を小さくし、
前記エンジンブレーキトルクの絶対値が前記エンジンブレーキトルク上限値より小さくなるように制限し、
制限後のエンジンブレーキトルクが発生するように、車両を制御することを特徴とする車両用制駆動力制御方法。
【請求項1】
車両の横旋回度合を検出する横旋回度合検出手段と、
車両の目標減速度を算出する目標減速度算出手段と、
前記目標減速度算出手段によって算出される目標減速度を実現するために必要なエンジンブレーキトルクを算出するエンジンブレーキトルク算出手段と、
前記エンジンブレーキトルク算出手段によって算出されるエンジンブレーキトルクの絶対値がエンジンブレーキトルク上限値より小さくなるように制限するエンジンブレーキトルク制限手段と、
前記エンジンブレーキトルク制限手段によって制限された後のエンジンブレーキトルクが発生するように、車両を制御するエンジンブレーキ制御手段と、
前記横旋回度合検出手段によって検出される車両の横旋回度合が大きいほど、前記エンジンブレーキトルク上限値を小さくするエンジンブレーキトルク上限値変更手段とを備えることを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用制駆動力制御装置において、
車両の速度を検出する車速検出手段をさらに備え、
前記目標減速度算出手段は、前記車速検出手段によって検出される車速、および、前記横旋回度合検出手段によって検出される車両の横旋回度合に基づいて、前記目標減速度を算出することを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用制駆動力制御装置において、
前記エンジンブレーキトルク制限手段によって制限された後のエンジンブレーキトルクでは、前記目標減速度算出手段によって算出される目標減速度を実現することができない場合に、前記目標減速度を実現するために、前記エンジンブレーキとは別の車両ブレーキを作動させる車両ブレーキ制御手段をさらに備えることを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用制駆動力制御装置において、
エンジンの出力トルクを車両の駆動輪に伝達する際の目標変速比を算出する目標変速比算出手段をさらに備え、
前記エンジンブレーキトルク上限値変更手段は、前記横旋回度合検出手段によって検出される車両の横旋回度合が大きいほど、前記目標変速比算出手段によって算出される目標変速比を制限するための変速比上限値を小さくすることにより、前記エンジンブレーキトルク上限値を小さくすることを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両用制駆動力制御装置において、
前記エンジンブレーキトルク上限値変更手段は、4輪駆動時において前記エンジンブレーキトルク上限値を小さくする割合を、2輪駆動時において前記エンジンブレーキトルク上限値を小さくする割合より小さくすることを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用制駆動力制御装置において、
前記エンジンブレーキトルク上限値変更手段は、後輪の駆動力配分比が大きいほど、前記エンジンブレーキトルク上限値を小さくする割合を小さくすることを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用制駆動力制御装置において、
前記横旋回度合検出手段によって検出される車両の横旋回度合が大きいほど、後輪の駆動力配分比を大きくする駆動力配分比制御手段をさらに備えることを特徴とする車両用制駆動力制御装置。
【請求項8】
車両の横旋回度合を検出し、
車両の目標減速度を算出し、
算出した目標減速度を実現するために必要なエンジンブレーキトルクを算出し、
車両の横旋回度合が大きいほど、エンジンブレーキトルクの絶対値を制限するためのエンジンブレーキトルク上限値を小さくし、
前記エンジンブレーキトルクの絶対値が前記エンジンブレーキトルク上限値より小さくなるように制限し、
制限後のエンジンブレーキトルクが発生するように、車両を制御することを特徴とする車両用制駆動力制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−267587(P2008−267587A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115366(P2007−115366)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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