説明

車両速度制御システム

【課題】途中で曲率が変化するカーブにおいても、適切に車両の速度を制御する。
【解決手段】曲率が変化するカーブをナビゲーション装置2により自車両の進行方向に検出し、制御点設定部10によりそのカーブ上に複数の制御点を設定する。こうして設定された制御点ごとに、曲率算出部11により曲率値を求めると共に、自車両の目標横加速度を目標横加速度設定部12により設定する。この曲率値と目標横加速度に基づいて、当該カーブを走行する際の自車両の目標速度を目標速度算出部13により算出し、算出された目標速度に基づいて、車両制御部16により自車両の速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行状態に応じて車両の速度を適切に制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が道路を走行中にカーブに差し掛かると、そのカーブ形状に基づいてカーブを通過する際の車両の適正速度または適正横加速度を求め、現在の車両速度が適正速度を超えている場合、または、現在の車両速度でカーブを通過した時に発生する横加速度が適正横加速度を超えている場合には、警報出力やブレーキングを行うことにより車両の速度を制御する装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−316600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される装置は、カーブに差し掛かったときには車両の速度制御を行うが、カーブ通過中には車両の速度制御を行わない。したがって、たとえば入口から出口にかけて徐々にカーブがきつくなるような場合は、入口側の緩いカーブ形状に合わせて車両の速度制御を行うと、途中でカーブがきつくなって曲がれなくなり、逆に出口側のきついカーブ形状に合わせて車両の速度制御を行うと、減速しすぎてユーザに違和感や苛立ち感を生じさせることになる。このように、特許文献1に開示される装置では、途中で曲率が変化するカーブにおいて適切に車両の速度を制御できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による車両速度制御システムは、自車両の進行方向に存在するカーブであってその途中で曲率が変化するカーブを検出するカーブ検出手段と、カーブ検出手段により検出されたカーブの曲率変化を求める曲率変化取得手段と、曲率変化取得手段により求められたカーブの曲率変化に応じて、当該カーブを走行中に自車両の速度を制御する速度制御手段とを備えるものである。
請求項2の発明は、請求項1の車両速度制御システムにおいて、カーブ検出手段により検出されたカーブを自車両が走行する際の目標横加速度を設定する目標横加速度設定手段と、曲率変化取得手段により求められたカーブの曲率変化と、目標横加速度設定手段により設定された目標横加速度とに基づいて、当該カーブを走行する際の自車両の目標速度を算出する目標速度算出手段とをさらに備え、速度制御手段は、目標速度算出手段により算出された目標速度に基づいて自車両の速度を制御するものである。
請求項3の発明は、請求項2の車両速度制御システムにおいて、目標横加速度設定手段は、当該カーブのうち少なくとも一部の区間において一定の値となるように目標横加速度を設定するものである。
請求項4の発明は、請求項2または3の車両速度制御システムにおいて、目標横加速度設定手段は、当該カーブへの進入時または当該カーブからの脱出時のうち少なくともいずれか一方において一定の割合で増加または減少するように目標横加速度を設定するものである。
請求項5の発明は、請求項2〜4いずれか一項の車両速度制御システムにおいて、設定された一定の巡航速度で自車両を走行させるオートクルーズ手段をさらに備え、速度制御手段は、目標速度算出手段により算出された目標速度と、オートクルーズ手段において設定された巡航速度のうち、いずれか小さい方の速度に基づいて自車両の速度を制御するものである。
請求項6の発明は、請求項2〜5いずれか一項の車両速度制御システムにおいて、自車両の先行車両を検出する車両検出手段と、車両検出手段により検出された先行車両に追随して自車両を走行させる追随走行制御手段とをさらに備え、速度制御手段は、目標速度算出手段により算出された目標速度と、追随走行制御手段により先行車両に追随して走行するときの自車両の走行速度のうち、いずれか小さい方の速度に基づいて自車両の速度を制御するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、途中で曲率が変化するカーブにおいても、適切に車両の速度を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施形態による車両速度制御システムのブロック図を図1に示す。この車両速度制御システムは、自車両の前方を走行中の先行車両を検出し、その検出結果に応じて自車両のブレーキやアクセルを制御することにより、先行車両がない場合は一定の巡航速度で自車両を走行させると共に、先行車両がある場合は、車間を一定に保った状態で先行車両に追随するように自車両を走行させる。このような車両の走行制御は、一般にACC(Adaptive Cruise Control)と呼ばれている。さらに、自車両の前方にカーブが存在する場合は、そのカーブに応じて自車両のブレーキやアクセルを制御し、カーブを通る際に適切な速度となるように自車両を走行させるものである。
【0008】
図1に示す車両速度制御システムは、車両速度制御装置1、ナビゲーション装置2および車両検出装置3を有している。車両速度制御装置1は、制御点設定部10、曲率算出部11、目標横加速度設定部12、目標速度算出部13、オートクルーズ制御部14、追随走行制御部15および車両制御部16によって構成される。車両速度制御装置1におけるこれらの各構成は、たとえばCPUが実行するプログラムにより実現される。
【0009】
ナビゲーション装置2は、GPS(Global Positioning System)信号を受信したり、あるいは車両の進行方向や速度を検出したりすることにより自車位置を検出し、DVD−ROMやハードディスクなどに記録された地図データに基づいて、検出された自車位置周辺の地図を画面表示する。また、目的地が設定されるとその目的地までの推奨経路を探索し、各種の画像表示や音声出力を用いて、探索された推奨経路に従って自車両を目的地まで誘導する。
【0010】
さらにナビゲーション装置2は、検出した自車位置と地図データに基づいて、自車両が走行している道路の進行方向における道路形状を判別することにより、自車両の進行方向に存在するカーブを検出する。自車両の進行方向に存在するカーブを検出したら、そのカーブの位置や形状を表すためのカーブ情報を車両速度制御装置1に対して出力する。たとえば、ナビゲーション装置2においてカーブを検出した時刻と、自車両の位置を基準にして表したカーブの各構成点の座標値とが、カーブ情報としてナビゲーション装置2から車両速度制御装置1へ出力される。なお、地図データにおいて道路の形状は、ノードと呼ばれる点、および必要に応じてノード間に設定される形状補間点と呼ばれる点の座標値によって表されており、これらの点を構成点として自車両の進行方向に存在するカーブの形状が表されている。
【0011】
車両検出装置3は、自車両の先行車両を検出し、その検出結果を先行車両情報として車両速度制御装置1へ出力する。車両検出装置3には、たとえば車両の前方に設置される赤外線レーダやミリ波レーダなどが用いられる。また、自車両の前方を撮影するためのカメラと、そのカメラの撮影画像を用いた画像抽出処理によって先行車両を抽出する画像処理装置とを用いて、車両検出装置3を実現することもできる。
【0012】
上記のナビゲーション装置2から出力されたカーブ情報は、車両速度制御装置1において制御点設定部10に入力される。また、車両検出装置3から出力された先行車両情報は、追随走行制御部15に入力される。
【0013】
制御点設定部10は、ナビゲーション装置2からカーブ情報が入力されると、そのカーブに対して複数の制御点を設定する。この制御点において、後で説明するようにカーブの曲率が求められると共に自車両の目標横加速度が設定されることにより、カーブを通る際に適切な速度となるように自車両が制御される。
【0014】
曲率算出部11は、ナビゲーション装置2により検出された自車両の進行方向に存在するカーブの曲率変化を求める。このとき、ナビゲーション装置2からのカーブ情報に表される自車両の進行方向のカーブ位置およびカーブ形状に基づいて、制御点設定部10により設定された各制御点においてカーブの曲がり具合を示す曲率の値をそれぞれ算出することにより、そのカーブの曲率変化が求められる。曲率算出部11により算出された各制御点の曲率値は、目標速度算出部13へ出力される。
【0015】
なお、ナビゲーション装置2において、自車両の進行方向のカーブが検出されたら、制御点設定部10により設定された各制御点における曲率値を算出し、その算出結果をカーブ情報に含めて送信することとしてもよい。このようにすれば、曲率算出部11を省略することができる。さらに、ナビゲーション装置2において自車両の進行方向に検出されたカーブを構成するノードまたは形状補間点を制御点として用いることとすれば、制御点設定部10を省略することもできる。
【0016】
目標横加速度設定部12は、ナビゲーション装置2により検出された自車両の進行方向に存在するカーブを自車両が走行する際の目標横加速度を設定する。すなわち、ナビゲーション装置2によって検出されたカーブを自車両が走行すると、そのときの車速とカーブの曲率によって定まる横加速度が車両に生じることから、横加速度が大き過ぎると車両がカーブを曲がり切れなかったり、乗員が車両内で横方向に押し付けられて不快に感じたりする場合がある。このような状況を避けるために車両速度制御装置1は、カーブを走行する際に目標とすべき適切な横加速度を目標横加速度設定部12により設定し、設定された目標横加速度に合わせて車両の速度を制御しながら車両を走行させる。
【0017】
目標横加速度設定部12における目標横加速度の設定は、制御点設定部10により設定された制御点ごとに行われる。目標横加速度設定部12によって設定された各制御点の目標横加速度は、目標速度算出部13へ出力される。
【0018】
目標速度算出部13は、曲率算出部11により求められたカーブの曲率変化と、目標横加速度設定部12により設定された目標横加速度に基づいて、当該カーブを自車両が走行する際の目標速度を算出する。このとき、曲率算出部11によって算出された制御点ごとの曲率値と、制御点設定部10によって設定された制御点ごとの目標横加速度から、目標速度が算出される。すなわち前述のように、カーブの走行中に自車両に生じる横加速度は車速とカーブの曲率によって定まるため、各制御点の曲率値と目標横加速度によってカーブを曲がる際の自車両の目標速度を算出することができる。目標速度算出部13によって算出された目標速度は、車両制御部16へ出力される。
【0019】
オートクルーズ制御部14は、運転者によってオートクルーズ走行がセットされている場合に、予め設定された巡航速度を車両制御部16に対して出力する。この巡航速度に従って車両制御部16が動作することにより、一定の巡航速度で自車両を走行させることができる。なお巡航速度の値は、不図示のオートクルーズ設定スイッチを運転者が押したときの自車両の走行速度によって設定される。オートクルーズ走行がセットされていない場合、オートクルーズ制御部14は巡航速度の出力を行わない。
【0020】
追随走行制御部15は、車両検出装置3から出力される先行車両情報に基づいて、その先行車両に追随して自車両を走行させるときの追随速度を算出し、車両制御部16に対して出力する。この追随速度に従って車両制御部16が動作することにより、先行車両に追随して自車両を走行させることができる。なお、車両検出装置3によって先行車両が検出されていない場合、追随走行制御部15は追随速度の出力を行わない。
【0021】
車両制御部16は、目標速度算出部13から出力される目標速度、オートクルーズ制御部14から出力される巡航速度、または追随走行制御部15から出力される追随速度のいずれかを状況に応じて選択し、選択したいずれかの速度に基づいて自車両のブレーキ操作量やアクセル操作量を算出して、その算出結果に応じて、ブレーキ制御信号またはアクセル制御信号を自車両に対して出力する。このようにすることで、状況に応じて目標速度、巡航速度または追随速度のいずれかに従って自車両を走行させることができる。なお、どのような状況のときにいずれの速度に従って自車両を走行させるかについては、後で詳しく説明する。
【0022】
以上説明したように本発明の一実施形態による車両速度制御システムは、自車両の進行方向に存在するカーブを検出し、検出されたカーブの曲率変化を求めると共に目標横加速度を設定して自車両の目標速度を算出する。この目標速度に従って、カーブを走行中に適切な速度で自車両の速度制御を行う。
【0023】
次に、カーブの曲率変化を求めると共に目標横加速度を設定して自車両の目標速度を算出する具体的な方法について、図2の例により説明する。図2は、自車両の進行方向に存在するカーブの一例を示している。この図では、自車位置マーク20によって示される位置を自車両が走行しており、その進行方向にはカーブ21が存在する。カーブ21は途中で曲率が変化しており、徐々にカーブがきつくなるような形状を有している。すなわち、直線から緩やかにカーブした後、先に進むにつれて徐々にカーブがきつくなり、最後には再び直線に戻る。
【0024】
ナビゲーション装置2によってカーブ21が検出され、そのカーブ情報が車両速度制御装置1に出力されると、車両速度制御装置1は初めに、制御点設定部10において制御点の設定を行う。たとえば図2に示すように、カーブ21の始点から終点の間にP1〜P7の制御点を等間隔で設定する。ナビゲーション装置2から出力されるカーブ情報が表すカーブ21の位置と形状に基づいて、このような制御点が設定される。なお、各制御点は必ずしも等間隔に設定する必要はない。たとえば、カーブの曲率変化が大きい部分には、きめ細かい速度制御を行うために狭い間隔で多数の制御点を設定し、曲率変化の少ない部分には、広い間隔で制御点を少なく設定することとしてもよい。
【0025】
上記のようにして制御点が設定されたら、次に曲率算出部11において、設定された各制御点におけるカーブ21の曲率をそれぞれ求める。その様子を図3のグラフにより説明する。図3は自車位置を基準としたカーブ21の曲率変化の様子を表したグラフであり、横軸は自車位置からの距離、縦軸は曲率の大きさCをそれぞれ表している。ナビゲーション装置2から出力されるカーブ情報が表すカーブ21の位置と形状により、このような曲率変化の様子が表される。このグラフに示される曲率が大きいほど、カーブがきついことを表している。図3の曲率変化の様子からも、カーブ21は途中で曲率が変化しており、徐々にカーブがきつくなっていることが分かる。
【0026】
図3のような曲率変化を有するカーブ21に対して設定されたP1〜P7の各制御点において、曲率C1〜C7がそれぞれ求められる。なお、最初の制御点すなわちカーブの始点に当たる制御点P1における曲率C1と、最後の制御点すなわちカーブの終点に当たる制御点P7における曲率C7の値は、共に0である。このように、途中で曲率が変化するカーブについては、複数の制御点を設定することによって少なくとも二つ以上の異なる値で曲率を算出することにより、その曲率変化が求められる。以上説明したように、P1〜P7の各制御点について曲率C1〜C7がそれぞれ算出される。
【0027】
上記のようにしてP1〜P7の各制御点について曲率C1〜C7が算出されたら、次に目標横加速度設定部12において、各制御点における自車両の目標横加速度を設定する。その様子を図4のグラフにより説明する。図4はカーブ21に対して設定される目標横加速度を表したグラフであり、横軸は自車位置からの距離、縦軸は目標横加速度の大きさGをそれぞれ表している。
【0028】
図4に示す目標横加速度は、次のようにして設定される。最初の制御点P1から所定の傾きΔGiで目標横加速度を増加させ、予め定められた所定の値Gcとなったら、目標横加速度をその所定値Gcに固定する。制御点P6において曲率C6が所定のしきい値以下となったら、そこから最後の制御点P7まで一定の傾きΔGoで目標横加速度を減少させる。これにより、制御点P1〜P7における目標横加速度G1〜G7がそれぞれ設定される。なお、制御点P1における目標横加速度G1と制御P7における目標横加速度G7はいずれも0であり、制御点P3〜P6における目標横加速度G3〜G6はいずれも一定値Gcである。
【0029】
以上説明したように、カーブ21への進入時は一定の割合ΔGiで増加し、カーブ21からの脱出時は一定の割合ΔGoで減少するような目標横加速度を設定することにより、自車両にカーブ21をスムーズに走行させることができる。なお、カーブ21への進入時またはカーブ21からの脱出時のいずれかのみ、このように目標横加速度を設定することとしてもよい。また、カーブ21の途中の区間では一定の値Gcに目標横加速度を設定することにより、自車両がカーブ21を走行するときに乗員が感じる遠心力を一定とすることができ、その結果、乗員の乗り心地を向上することができる。
【0030】
なお、上記で説明した目標横加速度の設定方法は一例であるため、他の方法により目標横加速度を設定してもよい。たとえば、一旦曲率が減少した後に再び増加するようなカーブに対しては、途中で曲率がしきい値以下となった場合であっても、目標横加速度を減少させずにそのまま一定の値を設定することが好ましい。また、短い直線道路を挟んで連なる二つ以上のカーブに対しては、これらを一つのカーブとして扱うことにより目標横加速度を設定することとしてもよい。この他にも、様々な方法により目標横加速度を設定することができる。
【0031】
上記のようにして各制御点P1〜P7における自車両の目標横加速度G1〜G7が設定されたら、次に目標速度算出部13において、カーブ21を走行する際の自車両の目標速度が算出される。その様子を図5のグラフにより説明する。図5はカーブ21に対して算出される目標速度を表したグラフであり、横軸は自車位置からの距離、縦軸は目標速度の大きさVをそれぞれ表している。
【0032】
図5に示す目標速度は、図3に示す制御点P1〜P7における曲率C1〜C7、および図4に示す制御点P1〜P7における目標横加速度G1〜G7に基づいて算出される。具体的には、以下に示す式(1)に基づいて制御点P1〜P7における目標速度V1〜V7を算出し、算出された目標速度V1〜V7の間を所定の補間アルゴリズムを用いて補間することにより、図5のグラフが求められる。なお、式(1)においてkは定数であり、その値は、自車両のサスペンションの減衰特性やタイヤの空気圧、路面状態などによって決まる。
V=k・(G/C)1/2 ・・・(1)
【0033】
以上説明したようにして、カーブ21について曲率が求められると共に目標横加速度が設定され、その曲率および目標横加速度に基づいて自車両の目標速度が算出される。こうして算出された目標速度が目標速度算出部13から車両制御部16に出力されることにより、カーブ21に応じて自車両の走行速度が制御される。
【0034】
上記の車両速度制御システムにおいて、車両速度制御装置1により実行されるフローチャートを図6に示す。ステップS10では、ナビゲーション装置2において自車両の前方にあるカーブが検出されることにより、ナビゲーション装置2からカーブ情報を受信したか否かを判定する。カーブ情報を受信した場合は、次のステップS20へ進む。
【0035】
ステップS20では、制御点設定部10により、ナビゲーション装置2から受信したカーブ情報に基づいて、検出された自車両前方のカーブに対して制御点を設定する。これにより、図2の例では制御点P1〜P7がカーブ21に対して設定される。ステップS30では、曲率算出部11により、ステップS20で設定された各制御点におけるカーブの曲率を算出する。これにより、制御点P1〜P7において図3に示す曲率C1〜C7が求められる。
【0036】
ステップS40では、目標横加速度設定部12により、ステップS20で設定された各制御点における自車両の目標横加速度を設定する。このとき、前述したような設定方法により、カーブへの進入時は一定の割合で増加し、カーブの途中では一定の値を維持し、カーブからの脱出時は一定の割合で減少するように目標横加速度を設定する。これにより、制御点P1〜P7において図4に示す目標横加速度G1〜G7が求められる。
【0037】
ステップS50では、目標速度算出部13により、ステップS30で算出されたカーブの曲率およびステップS40で設定された自車両の目標横加速度に基づいて、カーブを走行する際の自車両の目標速度を算出する。これにより、制御点P1〜P7において図5に示す目標速度V1〜V7が求められ、図5のような目標速度が算出される。こうして算出された目標速度は、目標速度算出部13から車両制御部16へ出力される。
【0038】
ステップS60では、車両制御部16により、オートクルーズ制御部14から出力される巡航速度に基づいて、自車両がオートクルーズ走行中であるか否かを判定する。オートクルーズ走行がセットされることによってオートクルーズ制御部14から巡航速度が出力されている場合は、自車両がオートクルーズ走行中であると判定してステップS70へ進む。一方、オートクルーズ走行がセットされておらずオートクルーズ制御部14から巡航速度が出力されていない場合は、自車両がオートクルーズ走行中でないと判定してステップS80へ進む。
【0039】
ステップS70では、オートクルーズ制御部14から出力された巡航速度と、目標速度算出部13から出力された目標速度とを比較し、目標速度が巡航速度よりも小さいか否かを判定する。目標速度が巡航速度よりも小さい場合はステップS100へ進み、目標速度が巡航速度以上である場合はステップS110へ進む。なお、ナビゲーション装置2において自車両の前方にカーブが検出されていないため、目標速度算出部13から目標速度が出力されていない場合は、ステップS70を否定判定してステップS110へ進む。
【0040】
ステップS60が否定判定されてステップS80へ進んだ場合、ステップS80では、車両制御部16により、追随走行制御部15から出力される追随速度に基づいて、自車両が先行車両に追随して走行中であるか否かを判定する。車両検出装置3によって先行車両が検出され、追随走行制御部15から追随速度が出力されている場合は、先行車両に追随走行中であると判定してステップS90へ進む。一方、先行車両が検出されておらず追随走行制御部15から追随速度が出力されていない場合は、追随走行中でないと判定してステップS130へ進む。なお、ステップS80で追随走行中ではないと判定されてステップS130へ進んだ場合は、自車両がオートクルーズ走行中でもなければ先行車両に追随走行中でもないため、運転者のブレーキ操作やアクセル操作に応じて自車両の速度制御が行われる。
【0041】
ステップS90では、追随走行制御部15から出力された追随速度と、目標速度算出部13から出力された目標速度とを比較し、目標速度が追随速度よりも小さいか否かを判定する。目標速度が追随速度よりも小さい場合はステップS100へ進み、目標速度が追随速度以上である場合はステップS120へ進む。
【0042】
ステップS100では、車両制御部16により、目標速度に応じた車両速度の制御を行う。すなわち、目標速度算出部13から出力された目標速度に基づいて自車両のブレーキ操作量やアクセル操作量を算出し、その算出結果に応じてブレーキ制御信号またはアクセル制御信号を自車両に対して出力する。このように、自車両前方のカーブに対して算出された目標速度が巡航速度または追随速度よりも小さい場合は、車両制御部16において目標速度が選択され、目標速度に応じて自車両の速度が制御される。ステップS100を実行したらステップS130へ進む。
【0043】
ステップS110では、車両制御部16により、巡航速度に応じた車両速度の制御を行う。すなわち、オートクルーズ制御部14から出力された巡航速度に基づいて自車両のブレーキ操作量やアクセル操作量を算出し、その算出結果に応じてブレーキ制御信号またはアクセル制御信号を自車両に対して出力する。このように、自車両前方のカーブが検出されていても目標速度が巡航速度以上である場合は、車両制御部16において巡航速度が選択され、巡航速度に応じて自車両の速度が制御される。ステップS110を実行したらステップS130へ進む。
【0044】
ステップS120では、車両制御部16により、追随速度に応じた車両速度の制御を行う。すなわち、追随走行制御部15から出力された追随速度に基づいて自車両のブレーキ操作量やアクセル操作量を算出し、その算出結果に応じてブレーキ制御信号またはアクセル制御信号を自車両に対して出力する。このように、自車両前方のカーブが検出されていても目標速度が追随速度以上である場合は、車両制御部16において追随速度が選択され、追随速度に応じて自車両の速度が制御される。ステップS120を実行したらステップS130へ進む。
【0045】
以上説明したように、自車両前方のカーブに応じて算出される目標速度に従って自車両の速度を制御する場合は、オートクルーズ時の巡航速度や先行車両に追随走行しているときの追随速度よりも小さい範囲で速度制御が行われる。すなわち、算出された目標速度と、設定された巡航速度または先行車両への追随速度のうち、より小さいほうの速度に基づいて自車両の速度が制御される。このようにすることで、カーブ走行中に自車両の走行速度が不必要に上がってしまうことを防ぎ、安全性を確保することができる。
【0046】
ステップS130では、ナビゲーション装置2によって検出されたカーブを自車両が通過したか否かを判定する。既にカーブを通過したと判定した場合は、図6のフローチャートを終了する。まだカーブを通過していないと判定した場合はステップS60へ戻り、上記のような処理を繰り返す。
【0047】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果を奏することができる。
(1)ナビゲーション装置2により、自車両の進行方向に存在するカーブであってその途中で曲率が変化するカーブを検出し、検出されたカーブの曲率を曲率算出部11により求める(ステップS30)。そして、求められたカーブの曲率変化に応じて、当該カーブを走行中に車両制御部16により自車両の速度を制御する(ステップS100)こととした。このようにしたので、途中で曲率が変化するカーブにおいても、適切に自車両の速度を制御することができる。
【0048】
(2)ナビゲーション装置2によって検出されたカーブを自車両が走行する際の目標横加速度を目標横加速度設定部12により設定し(ステップS40)、曲率算出部11により求められたカーブの曲率変化と、目標横加速度設定部12により設定された目標横加速度とに基づいて、目標速度算出部13により、当該カーブを曲がる際の自車両の目標速度を算出する(ステップS50)。こうして算出された目標速度に基づいて、車両制御部16によりステップS100において自車両の速度を制御することとした。このようにしたので、カーブの形状に応じた最適な速度で自車両を走行させることができる。
【0049】
(3)ステップS40において目標横加速度設定部12により目標横加速度を設定する際には、カーブのうち途中にある少なくとも一部の区間において一定の値となるように目標横加速度を設定することとした。このようにしたので、自車両がカーブを走行するときに乗員が感じる遠心力を一定とすることができ、その結果、乗員の乗り心地を向上することができる。
【0050】
(4)また、ステップS40において目標横加速度設定部12により目標横加速度を設定する際には、カーブへの進入時またはカーブからの脱出時のうち少なくともいずれか一方において一定の割合で増加または減少するように目標横加速度を設定することとした。このようにしたので、自車両にカーブをスムーズに走行させることができる。
【0051】
(5)自車両がオートクルーズ走行中であるか否かを判定し(ステップS60)、オートクルーズ走行中である場合は、目標速度算出部13により算出された目標速度とオートクルーズの巡航速度を比較し(ステップS70)、いずれか小さいほうの速度に基づいて自車両の速度制御を行う(ステップS100、S110)。このようにして、オートクルーズの巡航速度よりも小さい範囲で自車両の速度を制御することとしたので、カーブ走行中に自車両の走行速度が不必要に上がってしまうことを防ぎ、安全性を確保することができる。
【0052】
(6)自車両が追随走行中であるか否かを判定し(ステップS80)、追随走行中である場合は、目標速度算出部13により算出された目標速度と追随速度を比較し(ステップS90)、いずれか小さいほうの速度に基づいて自車両の速度制御を行う(ステップS100、S120)。このようにして、先行車両に追随して走行するときの自車両の走行速度よりも小さい範囲で自車両の速度を制御することとしたので、上記と同様にカーブ走行中に自車両の走行速度が不必要に上がってしまうことを防ぎ、安全性を確保することができる。
【0053】
なお、上記の実施の形態では、ナビゲーション装置において自車両の進行方向に存在するカーブを検出し、そのカーブに関する情報をナビゲーション装置から車両速度制御装置へ出力することにより、車両速度制御装置において目標速度を算出し、自車両の速度を制御する例を説明した。しかし、このような処理や制御を全てナビゲーション装置において実行するようにしてもよい。すなわち、通常のナビゲーション機能に加えて、自車両の進行方向に存在するカーブに応じて自車両の走行速度を制御する機能をさらに有するナビゲーション装置により、本発明を実現してもよい。
【0054】
また、上記の実施の形態では、先行車両がない場合は一定の巡航速度で自車両を走行させると共に、先行車両がある場合は車間を一定に保った状態で先行車両に追随するように自車両を走行させるACCにおいて、本発明を適用した例を説明した。しかし、本発明は他の走行制御においても適用することができる。たとえば、ISA(Intelligent Speed Adaptation)と呼ばれる高度な速度制御や、LKS(Lane Keep System)と呼ばれる車両が走行中のレーンを維持するシステム、COP(Corner Overshoot Prevention)と呼ばれるコーナリング時の速度制御などにも、本発明を適用することができる。
【0055】
さらに、本発明を通常の走行中にも適用可能である。すなわち、運転者の運転操作によって自車両の走行速度が制御されているときに、自車両の進行方向に存在するカーブに対して目標速度を算出し、自車両の走行速度が算出された目標速度を上回る場合は、目標速度に従って自車両の走行速度を制御することもできる。なお、この場合は自車両の走行速度を制御する代わりに、運転者に対して警告を行うようにしてもよい。
【0056】
以上説明した実施の形態や各種の変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。
【0057】
上記の実施の形態では、カーブ検出手段をナビゲーション装置2、曲率変化取得手段を曲率算出部11、速度制御手段を車両制御部16、目標横加速度設定手段を目標横加速度設定部12、目標速度算出手段を目標速度算出部13、オートクルーズ手段をオートクルーズ制御部14、車両検出手段を車両検出装置3、追随走行制御手段を追随走行制御部15によってそれぞれ実現することとした。しかし、これはあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係には何ら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態による車両速度制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】自車両の進行方向に存在するカーブの一例を示す図である。
【図3】カーブの曲率変化の様子を表したグラフである。
【図4】カーブに対して設定される目標横加速度を表したグラフである。
【図5】カーブに対して設定される目標速度を表したグラフである。
【図6】本発明の一実施形態による車両速度制御システムにおいて実行されるフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1:車両速度制御装置 2:ナビゲーション装置
3:車両検出装置 10:制御点設定部
11:曲率算出部 12:目標横加速度設定部
13:目標速度算出部 14:オートクルーズ制御部
15:追随走行制御部 16:車両制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進行方向に存在するカーブであってその途中で曲率が変化するカーブを検出するカーブ検出手段と、
前記カーブ検出手段により検出されたカーブの曲率変化を求める曲率変化取得手段と、
前記曲率変化取得手段により求められたカーブの曲率変化に応じて、当該カーブを走行中に自車両の速度を制御する速度制御手段とを備えることを特徴とする車両速度制御システム。
【請求項2】
請求項1の車両速度制御システムにおいて、
前記カーブ検出手段により検出されたカーブを自車両が走行する際の目標横加速度を設定する目標横加速度設定手段と、
前記曲率変化取得手段により求められたカーブの曲率変化と、前記目標横加速度設定手段により設定された目標横加速度とに基づいて、当該カーブを走行する際の自車両の目標速度を算出する目標速度算出手段とをさらに備え、
前記速度制御手段は、前記目標速度算出手段により算出された目標速度に基づいて自車両の速度を制御することを特徴とする車両速度制御システム。
【請求項3】
請求項2の車両速度制御システムにおいて、
前記目標横加速度設定手段は、当該カーブのうち少なくとも一部の区間において一定の値となるように目標横加速度を設定することを特徴とする車両速度制御システム。
【請求項4】
請求項2または3の車両速度制御システムにおいて、
前記目標横加速度設定手段は、当該カーブへの進入時または当該カーブからの脱出時のうち少なくともいずれか一方において一定の割合で増加または減少するように目標横加速度を設定することを特徴とする車両速度制御システム。
【請求項5】
請求項2〜4いずれか一項の車両速度制御システムにおいて、
設定された一定の巡航速度で自車両を走行させるオートクルーズ手段をさらに備え、
前記速度制御手段は、前記目標速度算出手段により算出された目標速度と、前記オートクルーズ手段において設定された巡航速度のうち、いずれか小さい方の速度に基づいて自車両の速度を制御することを特徴とする車両速度制御システム。
【請求項6】
請求項2〜5いずれか一項の車両速度制御システムにおいて、
自車両の先行車両を検出する車両検出手段と、
前記車両検出手段により検出された先行車両に追随して自車両を走行させる追随走行制御手段とをさらに備え、
前記速度制御手段は、前記目標速度算出手段により算出された目標速度と、前記追随走行制御手段により先行車両に追随して走行するときの自車両の走行速度のうち、いずれか小さい方の速度に基づいて自車両の速度を制御することを特徴とする車両速度制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−331580(P2007−331580A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166043(P2006−166043)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】