説明

運転支援システム

【課題】車両がカーブを安全な速度で通過できるように支援する運転支援システムを提供する。
【解決手段】カーナビゲーション装置により自動車の現在の位置座標と進行方向が検出される。ナビゲーション制御部は、自動車の進行経路に存在するカーブを検出し、カーブ情報をシステムコントローラに入力する。速度算出部はカーブ情報に基づいて目標速度を算出する。自動車の速度が目標速度より大きい場合は、スロット機構部及び自動変速機を制御して自動車を目標速度以下まで減速させる。車載カメラで前方のカーブが撮像されると、画像データから障害物の検出が行われる。障害物が検出されると速度算出部は、障害物情報とカーブ情報に基づいて最適速度を算出し、自動車の速度が最適速度より大きい場合にはスロット機構部及び自動変速機を制御し、自動車を最適速度以下まで減速させる。よって、障害物の存在するカーブでも安全に通過できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車が安全にカーブを通過できるように支援する運転支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)を用いて車両の現在位置を探索し、液晶モニタ(LCD)などの表示装置に道路地図とともに車両の走行状態、目的地までの進行経路等を表示する車載用のナビゲーションシステムが普及している。ナビゲーションシステムは、車両の現在位置、進行方向、および地図情報に基づいて、例えば、急カーブ等に近づくと運転者に対して音声やLCDへの表示によって警告を行うものが一般的である。
【0003】
また、特許文献1では、ナビゲーションシステムからのカーブ情報と車両の速度情報に基づいて、カーブに進入する前に車速が大きすぎると判定した場合には、運転者への警告と車速の減速制御を行っている。また、特許文献2では、車両の屋根やトランクに温度センサを設置し、この温度センサからの温度情報をナビゲーションシステムに提供し、路面凍結の恐れがある場合にはカーブの手前で運転者に警告を発している。
【特許文献1】特開平8−202990号公報
【特許文献2】特開平10−236244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、車両が走行する道路には、マンホールの蓋や白線などの路面に比べて摩擦係数の低い障害物が存在する。さらに、高速道路や橋などには、障害物として道路と道路を繋ぐ金属製の繋目(以下、道路の繋目という)が存在することがある。このような障害物が存在するカーブに速度が大きい状態で車両が進入すると、この障害物が原因で横滑りを起こす危険性がある。しかし、特許文献1及び2では、カーブに障害物が存在するか否かの検出を行っていない。そのため、カーブ情報や凍結の有無の情報だけで判定された速度で障害物の存在するカーブに進入した場合、障害物が原因で横滑りを起こす危険性がある。
【0005】
本発明の運転支援システムは、上記問題を解決するためになされたものであり、車両がカーブを安全な速度で通過できるように速度の制御を行うことで、安全運転を支援する運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、本発明の運転支援システムは、車両の現在位置および進行方向を検出し、この現在位置、進行方向と地図情報に基づいて目的地に車両を経路誘導するナビゲーションシステムを搭載した車両が、カーブを安全に通過できるように支援する運転支援システムにおいて、車両の速度を検出する速度検出手段と、前記ナビゲーションシステムによって逐次に得られる現在位置、進行方向、および地図情報に基づいて、車両の進行経路に存在するカーブの態様に関するカーブ情報を抽出するカーブ情報抽出手段と、車両に搭載されており、この車両の前方を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された画像データに基づいて、前記カーブを車両が通過する際の安全性を損なう障害物を検出して、障害物情報を出力する障害物検出手段と、前記カーブ情報および前記障害物情報に基づいて、前記カーブを安全に通過できる最適速度を算出する最適速度算出手段と、前記最適速度検出手段によって検出された速度および前記最適速度を比較して、前記速度が前記最適速度より大きい場合に、前記最適速度以下に車両を減速させる減速制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
また、前記撮像手段によって前記カーブの撮像が行われる前に、前記カーブ情報に基づいて車両が前記カーブに進入する際の目標速度を算出する目標速度算出手段を備え、前記目標速度と前記速度検出手段によって検出された速度とを比較して、前記目標速度より前記速度が大きい場合には、車両を前記目標速度以下に減速させるようにしてもよい。また、前記減速制御手段が車両を減速させる際に、運転者に警告を発する警告手段を備えてもよい。また、車外の温度を検出して温度情報を出力する温度検出手段、または車外の湿度を検出して湿度情報を出力する湿度検出手段のうち少なくとも一方を備え、前記最適速度算出手段は、前記温度情報および前記湿度情報のうち少なくとも一方を用いて前記最適速度を算出することが好ましい。また、前記減速制御手段は、前記車両に搭載されたエンジンのスロットル開度の制御、または前記車両に搭載された自動変速機のシフトダウン制御のうち少なくとも一方を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の運転支援システムは、車両の現在位置および進行方向を検出し、この現在位置、進行方向と地図情報に基づいて目的地に車両を経路誘導するナビゲーションシステムを搭載した車両が、カーブを安全に通過できるように支援する運転支援システムにおいて、
車両の速度を検出する速度検出手段と、ナビゲーションシステムによって逐次に得られる現在位置、進行方向、および地図情報に基づいて、車両の進行経路に存在するカーブの態様に関するカーブ情報を抽出するカーブ情報抽出手段と、車両に搭載されており、車両の前方を撮像する撮像手段と、撮像手段によって撮像された画像データに基づいて、カーブを車両が通過する際の安全性を損なう障害物を検出して、障害物情報を出力する障害物検出手段と、カーブ情報および障害物情報に基づいて、カーブを安全に通過できる最適速度を算出する最適速度算出手段と、この最適速度検出手段によって検出された速度および最適速度を比較して、速度が最適速度より大きい場合に、最適速度以下に車両を減速させる減速制御手段とを備えたので、不慮の障害物がカーブに存在しても車両はカーブを安全に通過できる。
【0009】
また、撮像手段によってカーブの撮像が行われる前に、カーブ情報に基づいて車両がカーブに進入する際の目標速度を算出する目標速度算出手段を備え、目標速度と速度検出手段によって検出された速度とを比較して、目標速度より速度が大きい場合には、車両を目標速度以下に減速させたので、カーブの直前で急減速を行うことがない。よって安全にカーブを通過できる。また、減速制御手段が車両を減速させる際に、運転者に警告を発する警告手段を備えたので、車両が過速度であることを運転者に知らせることができる。また、車外の温度を検出して温度情報を出力する温度検出手段、または車外の湿度を検出して湿度情報を出力する湿度検出手段のうち少なくとも一方を備え、最適速度算出手段は、温度情報および湿度情報のうち少なくとも一方を用いて最適速度を算出したので、濡れた路面や凍結した路面などの滑り易い路面状態でも安全にカーブを通過できる。また、減速制御手段は、前記車両に搭載されたエンジンのスロットル開度の制御、または前記車両に搭載された自動変速機のシフトダウン制御のうち少なくとも一方を行うので、確実に減速が行われ、カーブを安全に通過できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の運転支援システムを搭載した自動車5の運転席部分を示す説明図である。運転支援システム2は、自動車5の速度と、カーナビゲーション装置6によって逐次に得られる現在位置、進行方向、地図情報に基づいて抽出されるカーブ情報と、車載カメラ15によって撮影された前方画像から検出された障害物情報とに基づいて、自動車5がカーブに進入する速度の判定を行い、カーブを通過する際に自動車5が安全性を損なう危険がある場合には減速制御を行うものである。
【0011】
運転席部分には、カーナビゲーション装置6が設けられている。カーナビゲーション装置6は、例えばダッシュボード7内に収納された本体部10及びスピーカ11と、ダッシュボード7上に取り付けられた液晶ディスプレイ12と、GPS衛星からの信号を受信するGPSアンテナ13とから構成されている。また、ダッシュボード7上には、自動車5の前方を撮影する撮像手段である車載カメラ15が設けられている。
【0012】
図2は、自動車5に搭載された運転支援システム2の電気的構成を示すブロック図である。運転支援システム2は、システムコントローラ20、メモリ21、カーナビゲーション装置6、車載カメラ15、画像処理部22、速度センサ23、減速制御部24、変速制御部26、自動変速機27などから構成されている。
【0013】
自動車5のダッシュボード7内には、システムコントローラ20、メモリ21、画像処理部22、減速制御部24が設けられている。システムコントローラ20は、運転支援システム2の各部を統括的に制御している。メモリ21には、各種制御プログラム、データ、障害物を検出するための各種データなどが格納されている。
【0014】
カーブ情報抽出手段であるカーナビゲーション装置6は、ナビゲーション制御部31、スピーカ11、LCD(液晶ディスプレイ)12、GPSアンテナ13、大容量記憶装置32から構成されている。ナビゲーション制御部31は、GPSアンテナ13を介して複数のGPS衛星(図示せず)からリアルタイムでGPS信号を受信し、このGPS信号から現在の走行している位置座標、進行方向などの情報を逐次に検出する。
【0015】
大容量記憶装置32は、例えば、地図データが記憶された記憶メディアがセットされるCD−ROMドライブ、DVD−ROMドライブ、ハードディスクドライブなどである。ナビゲーション制御部31は、検出された自動車5の位置座標に基づいて大容量記憶装置32から現在の現在位置付近の地図データを読み出し、LCD12に地図画像を表示し、さらに表示された地図画像の上に自車両の位置を示すアイコンを重ねて表示する。
【0016】
さらに、ナビゲーション制御部31は、現在の位置座標、自動車5の進行方向、地図データから自動車5の進行経路に存在するカーブのカーブ情報を抽出し、システムコントローラ20に入力する。なお、カーブ情報としては、例えばカーブの曲率やカーブの道幅である。また、ナビゲーション制御部31がシステムコントローラ20にカーブ情報を入力するタイミングは、例えば自動車5がカーブの60〜80m手前まで接近した際に入力する。なお、カーブ情報の入力タイミングは適宜に設定することが好ましい。
【0017】
警告手段であるスピーカ13は、ナビゲーション制御部31に目的地が入力された際に、目的地までの経路を案内する音声を出力する。さらに、詳しくは後述するが、自動車5の進行経路に存在するカーブに対して自動車5が過速度であり、運転支援システム2によって減速が行われる場合には、運転者に警告を行う警告音や音声を出力する。
【0018】
車載カメラ15は、撮影レンズの光軸を前方の走行車線に向けてダッシュボード7上に固定されている。車載カメラ15は、撮影レンズの背後に配置されたCCD撮像素子や、CCD制御部、信号処理回路などから構成されており、撮影レンズを透過して形成される被写体の光学像を撮像信号として検出する。検出された撮像信号は、信号処理回路で一定レベルまで増幅され、ホワイトバランス調節、Γ補正などの信号処理が行われた後、デジタル画像データに変換される。車載カメラ15は、自動車5の走行中に一定の間隔で撮影を行っている。車載カメラ15によって撮影された画像データは、画像処理部22に順次入力される。
【0019】
障害物検出手段である画像処理回路22は、車載カメラ15によって撮影された画像データに基づいて、自動車5が走行する路面上にマンホールの蓋、白線、道路の繋目等の
道路のアスファルトより低摩擦で滑り易い障害物が存在するか否かの検出を行う。例えば図3は、自動車5の前方のカーブ35を撮影した画像がLCD12に表示されものである。この画像34には、カーブ35に障害物であるマンホールの蓋37が存在する。
【0020】
画像処理回路22は、メモリ21に予め記憶されている障害物の情報(例えば、マンホールの蓋37の形状データや、色データなど)を参照し、周知の画像認識技術を用いてマンホールの蓋37がカーブ35に存在するか否かを検出する。画像処理回路22がマンホールの蓋37を検出した際には、画像処理部22はナビゲーション制御部31がシステムコントローラ20にカーブ情報を入力することに同期して、マンホールの蓋37の障害物情報をシステムコントローラ20に入力する。なお、障害物としては、白線、道路の繋目、水溜りなどが予め設定されており、メモリ21にはこれら障害物を検出するための形状データ、色データなどが予め記憶されている。
【0021】
速度検出手段である速度センサ23は、自動車5が走行している時の速度をリアルタイムで検出する。例えば、速度センサ23は、単位時間当たりの車輪回転数とタイヤ径とから自動車5の速度を検出している。この検出された速度は、システムコントローラ20に順次に入力される。
【0022】
システムコントローラ20には、速度算出部20aと速度判定部20bが設けられている。目標速度算出手段である速度算出部20aは、ナビゲーション制御部31からカーブ情報が入力されると、このカーブ情報に基づいて、自動車5がカーブに進入する目標となる目標速度を算出する。また、自動車5がカーブ35に接近し、車載カメラ15によって撮像されたカーブ35の画像データに基づいて検出された障害物情報が画像処理回路22から入力されると、最適速度算出手段でもある速度算出部20aはカーブ情報および障害物情報に基づいて、マンホールの蓋37(障害物)の存在するカーブ35を安全に通過できる最適速度を算出する。
【0023】
速度判定部20bは、速度算出部20aによって算出された目標速度とこの目標速度が算出された時の自動車5の速度との比較を行い、この速度が目標速度よりも大きいと判定した場合には、第1減速信号を減速制御部24に出力する。また、自動車5がカーブ35に接近し、速度算出部20aから最適速度が算出された際には、速度判定部20bは最適速度とこの最適速度が算出された時の速度とを比較し、この速度が最適速度より大きいと判定された際には、第2減速信号を減速制御部24に出力する。
【0024】
減速制御部24は、速度判定部20bから入力される第1減速信号または第2減速信号に基づいて、スロットル機構部25および自動変速機27を選択的に制御する。減速制御部24は、減速量に応じてスロットル機構25に設けられたエンジンのスロットル(絞り弁)の開閉量を制御する。これにより、スロットルが閉じられるとエンジントルクが低下し、エンジンブレーキがかかるので自動車5は減速する。
【0025】
また、減速制御部24は自動変速機27のシフトダウンを制御する。例えば、減速制御部24は、減速量に応じて自動変速機27のギアを5速から4速のように1速分シフトダウンさせたり、5速から3速のように2速分シフトダウンさせたりすることで自動車5を減速させる。このように、減速制御部24は、減速量に応じてスロットル機構部25及び自動変速機27を適宜に組み合わせて自動車5の減速を行う。なお、スロットル機構部25による減速量に比べ、自動変速機27による減速量の方が大きい。
【0026】
さらに、システムコントローラ20は、速度判定部20bから第1減速信号または第2減速信号が出力されると、ナビゲーション制御部31に警告信号を入力する。ナビゲーション制御部31は警告信号を受けると、スピーカ11から自動車5を減速させる旨を運転者に警告する音声を出力させる。
【0027】
上記構成による作用について図4に示すフローチャートを用いて説明する。自動車5が走行を開始すると、カーナビゲーション装置6によって自動車5の現在の位置座標、進行方向が検出される。さらに、車載カメラ15によって図3に示すような前方画像34の撮影が開始される。
【0028】
カーナビゲーション装置6は、この位置座標及び進行方向の情報と地図データに基づいて、自動車5の進行経路に存在するカーブ35を検出し、このカーブ35に関するカーブ情報をシステムコントローラ20に入力する。このカーブ情報に基づいて、自動車5がカーブ35に進入する目標となる目標速度が算出され、この目標速度と検出された自動車5の速度とを比較して、自動車5の速度が目標速度より大きいか否かが判定される。
【0029】
自動車5の速度が目標速度より大きいと判定されると、スピーカ11から減速を行う旨の警告音声が出力される。これにより、運転者は自動車5が過速度状態であることを知る。そして、減速制御部24は減速量に応じてスロットル機構部25および自動変速機27を制御し、自動車5を目標速度以下となるまで減速させる。また、自動車5の速度が目標速度より小さい場合には、運転支援システム2による減速は行われない。
【0030】
自動車5がカーブ35に近づき、車載カメラ15によってカーブ35の画像が撮像されると、この画像(図3参照)から障害物(マンホールの蓋37、白線、道路の繋目、水溜りなど)の検出が行われる。例えば、カーブ35でマンホールの蓋37が検出された際には、システムコントローラ20にはマンホールの蓋37の障害物情報が入力され、カーブ情報と障害物情報に基づいて、カーブ35を安全に通過できる最適速度が算出される。そして、この最適速度と自動車5の速度を比較して自動車5の速度が最適速度よりも大きいか否かの判定が行われる。
【0031】
自動車5の速度が最適速度より大きいと判定された場合には、再びスピーカ11から減速を行う旨の警告音声が出力される。そして、減速量に応じてスロットル機構部25および自動変速機27が制御され、自動車5が最適速度以下となるまで減速される。また、最適速度と自動車5の速度とを比較した際に、自動車5の速度が最適速度以下の場合には、運転支援システム2による減速は行われない。このように、カーブ情報に基づいて目標速度を判定するだけでなく、カーブ35を撮像した画像からマンホールの蓋37等の障害物の検出を行い、最適速度を算出して自動車を減速させたので、カーブ35を安全に通過できる。
【0032】
また、上記の運転支援システム2に温度センサ、及び湿度センサを設け、これらセンサからの情報を用いて目標速度および最適速度の算出をおこなってもよい。この場合の運転支援システム2の電気的構成を示すブロック図を図5に示す。なお、上記実施形態を同一の構成部材には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0033】
例えば、自動車5の天井やバンパーの裏側などには、温度センサ41、及び湿度センサ42が設けられている。温度センサ41は、車外温度の検出を行い、この検出した温度情報をシステムコントローラ20に入力する。湿度センサ42は、車外湿度の検出を行い、この検出した湿度情報をシステムコントローラ20に入力する。システムコントローラ20は、入力された温度情報から路面が凍結しているか否かを判定し、湿度情報から路面が雨などで濡れているか否かを判定する。システムコントローラ20にカーブ情報が入力されることに同期して、温度センサ41からの温度情報および湿度センサ42からの湿度情報がシステムコントローラ20に入力される。なお、温度センサ41、湿度センサ42の設置場所は、エンジンやマフラー等の温度に影響されない場所であればよい。
【0034】
図6に示すように、自動車5が走行を開始すると、カーナビゲーション装置6によって自動車5の現在の位置座標、進行方向が検出される。この位置座標、進行方向、及び地図データに基づいてナビゲーション制御部31は進行経路に存在するカーブ35の態様に関するカーブ情報を抽出し、システムコントローラ20に入力する。速度算出部20aは、カーブ情報、温度情報、および湿度情報に基づいて目標速度を算出する。この時、温度情報から路面が凍結していることや、湿度情報から路面が濡れていることが判定されると、路面が乾いている時に比べて目標速度は小さく算出される。
【0035】
そして、目標速度と自動車5の速度とを比較し、自動車5の速度が目標速度より大きい場合には、スピーカ11によって警告を行った後に、減速制御部24は減速量に応じてスロット機構部25および自動変速機27を制御して、自動車5が目標速度以下となるまで減速させる。自動車5の速度が、目標速度より小さい場合には、減速は行われない。
【0036】
自動車5がカーブ35に近づき、車載カメラ15によって撮影されたカーブ35の画像(図3参照)から障害物の検出が行われ、例えばマンホールの蓋37が検出された際には、システムコントローラ20にマンホールの蓋37に関する障害物情報が入力される。速度算出部20aは、カーブ情報、温度情報、湿度情報、障害物情報に基づいて、カーブ35を安全に通過できる最適速度が算出される。そして、この最適速度と自動車5の速度とを比較して自動車5の速度が最適速度よりも大きいか否かの判定が行われる。
【0037】
自動車5の速度が最適速度より大きいと判定された場合には、再びスピーカ11から警告音声が出力され、自動車5は最適速度以下となるまで減速される。また、最適速度と現在速度とを比較した際に、自動車5の速度が最適速度以下の場合には、自動車5は減速されず現在速度のまま通過する。このように、温度情報および湿度情報に基づいて、路面状態を考慮して目標速度および最適速度を算出し、自動車5を最適速度以下となるように減速させたので、乾いた路面よりも滑り易い凍結した路面や濡れた路面でも、自動車5はカーブ37を安全に通過できる。
【0038】
また、上記実施形態では、湿度センサ42の湿度情報に基づいて、路面が濡れていることを検出したが、これに限らず、車載カメラ15によって撮影された前方画像34から雨や、水溜りなど路面36が濡れていることを検出してもよい。
【0039】
また、自動車5の減速制御としてスロットルの開閉量の制御、及びシフトダウン制御によって自動車5を減速させたが、これに限らず、ブレーキを制御して自動車を減速させてもよい。
【0040】
また、障害物として、マンホールの蓋、白線、道路の繋目等を例に挙げたが、これに限らず、自動車5がカーブを通過する際に安全性を損なうような落下物、人物、動物などを検出してもよい。
【0041】
上記実施形態では、カーブ35を撮影する前にカーブ情報から目標速度を算出し、自動車5を目標速度以下に予め減速させたが、目標速度の算出および減速を行わずに、最適速度の算出だけを行い、この最適速度以下に自動車5を減速させてカーブ35を通過させてもよい。この時、カーブ35にマンホールの蓋37等の障害物が検出されない場合は、カーブ情報に基づいて最適速度の算出が行われるものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の運転支援システムを搭載した自動車の運転席部分の構成を示す斜視図である。
【図2】運転支援システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】車載カメラによって撮影された前方画像を説明する説明図である。
【図4】運転支援システムによる減速制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】温度センサ及び湿度センサを備えた運転支援システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】温度センサ及び湿度センサを備えた運転支援システムによる減速制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
2 運転支援システム
5 自動車
6 カーナビゲーション装置
11 スピーカ
12 LCD
15 車載カメラ
20 システムコントローラ
22 画像処理部
23 速度センサ
24 減速制御部
35 カーブ
37 マンホールの蓋
41 温度センサ
42 湿度センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置および進行方向を検出し、この現在位置、進行方向と地図情報に基づいて目的地に車両を経路誘導するナビゲーションシステムを搭載した車両が、カーブを安全に通過できるように支援する運転支援システムにおいて、
車両の速度を検出する速度検出手段と、
前記ナビゲーションシステムによって逐次に得られる現在位置、進行方向、および地図情報に基づいて、車両の進行経路に存在するカーブの態様に関するカーブ情報を抽出するカーブ情報抽出手段と、
車両に搭載されており、車両の前方を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像データに基づいて、前記カーブを車両が通過する際の安全性を損なう障害物を検出して、障害物情報を出力する障害物検出手段と、
前記カーブ情報および前記障害物情報に基づいて、前記カーブを安全に通過できる最適速度を算出する最適速度算出手段と、
前記最適速度検出手段によって検出された速度および前記最適速度を比較して、前記速度が前記最適速度より大きい場合に、前記最適速度以下に車両を減速させる減速制御手段とを備えたことを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
前記撮像手段によって前記カーブの撮像が行われる前に、前記カーブ情報に基づいて車両が前記カーブに進入する際の目標速度を算出する目標速度算出手段を備え、
前記目標速度と前記速度検出手段によって検出された速度とを比較して、前記目標速度より前記速度が大きい場合には、車両を前記目標速度以下に減速させることを特徴とする請求項1記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記減速制御手段が車両を減速させる際に、運転者に警告を発する警告手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の運転支援システム。
【請求項4】
車外の温度を検出して温度情報を出力する温度検出手段、または車外の湿度を検出して湿度情報を出力する湿度検出手段のうち少なくとも一方を備え、
前記最適速度算出手段は、前記温度情報および前記湿度情報のうち少なくとも一方を用いて前記最適速度を算出することを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記減速制御手段は、前記車両に搭載されたエンジンのスロットル開度の制御、または前記車両に搭載された自動変速機のシフトダウン制御のうち少なくとも一方を行うことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の運転支援システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−106170(P2007−106170A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296711(P2005−296711)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】