説明

量子井戸デバイスにおける平行伝導を改善する装置及び方法

平行伝導を改善する量子井戸デバイスを提供する方法及び装置の実施形態が主に記載される。その他の実施形態についても、記載及び特許請求される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の製造分野に関し、これに限定するわけではないが、特に、リーク電流の整合を提供するPN(positive−negative)接合超格子を有する量子井戸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
量子井戸トランジスタを備える様々な電子デバイス及び光電子デバイスは、例えば、シリコン基板上に形成されたエピタキシャル成長されたヘテロ構造を含み、トランジスタチャネルにおける非常に高いキャリア移動度を提供している。これらのデバイスは、非常に高い駆動電流性能を提供できるため、低消費電力及び高速論理回路への適用を可能にしている。しかしながら、量子井戸を有するP型の金属酸化膜半導体(PMOS)は、量子井戸を有するN型の金属酸化膜半導体(NMOS)と比較して、トランジスタのチャネルにおける移動度が低い。量子井戸を歪ませることによって、PMOS量子井戸の移動度を高めることができるが、平行伝導の量が増えてしまい、OFF状態でのリーク電流の劣化につながるという欠点がある。
【0003】
以下に記載する本発明の側面及びそれに付随する利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することによって明らかとなるであろう。図面において、特に指定されていない限り、同様な参照番号は、同様な要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】PN接合超格子を有する量子井戸構造を形成するのに使用される製造プロセスの一実施形態を示したフローチャートである。
【図2】基板上のPN接合超格子を有する量子井戸構造の断面図である。
【図3】ゲート電極及びゲート絶縁スペーサを含む非平面量子井戸デバイスの等角図である。
【図4】変調ドープされた非平面型トランジスタを含む中央演算処理装置(CPU)を備えるシステムを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
様々な実施形態において、量子井戸デバイスにおけるPN接合の超格子を組み込む装置及び方法が記載される。以下の説明では、様々な実施形態が記載される。しかしながら、当業者であれば、様々な実施形態は、1以上の特定の詳細事項がなくとも、又は、その他の置換及び/又は付加的な方法、材料又は要素を追加しても、これら様々な実施形態を実施可能であることは理解できる。また、本発明を不明瞭にしない目的から、他の場合においては、周知の構造、材料、又は動作の図示又は詳細な説明を省略している。本発明の特徴を十分に理解できるよう説明することを目的として、特定の数字、方式及び設定が記載されている。しかしながら、これらの特定の詳細事項がなくとも、本発明を実施可能である。図面に示されている様々な実施形態は、例示に過ぎず、必ずしも実寸で描かれていない。
【0006】
明細書全体にわたって使用されている「一実施形態」、「ある実施形態」との言葉は、少なくとも本発明の一実施形態が、実施形態に関連した特定の特徴、構造、材料又は特徴を含むことを意味するが、必ずしも全ての実施形態が、これら特定の特徴、構造、材料又は特徴を含むことを意味しない。したがって、本明細書中の様々な箇所で使用されている「一実施形態」、「ある実施形態」という表現は、必ずしも同一の実施形態を示していない。さらに、特定の特徴、構造、材料又は特徴は、好適な態様で、1以上の実施形態において組み合わせられてもよい。様々な付加的な層及び/又は構造が含まれていてもよく、及び/又は記載された特徴は、別の実施形態においては省略されてもよい。
【0007】
様々な動作が、本発明を理解するのに最も有効な態様で、複数の別々の動作として記載される。しかしながら、説明の記載順は、これらの動作が必ずしもその順番で実行されなければならないと解釈されることを意図していない。特に、これらの動作は、必ずしも説明された順番で実行されなくてもよい。記載された実施形態とは異なる順番で、説明された動作が実行されてもよい。様々な更なる動作を実行してもよく、及び/又は説明された動作を、別の実施形態において省略してもよい。
【0008】
異なるバンドギャップを有する少なくとも2つの材料を含むエピタキャシル成長させた量子井戸を実装することにより、平面マルチゲートトランジスタの性能を改善することができ、この場合、量子井戸は、バッファ層に埋め込まれた又は隣接したPN接合超格子を使用することによって整合され、量子井戸を基板から効率的に分離することができる。好ましくは、バンドギャップ材料は、シリコン(Si)及びゲルマニウム(Ge)のようなIV族元素から形成されるが、III−V族又はII−VI族系の材料を使用してもよい。III−V族系の材料は、少なくとも1つのIII族元素と少なくとも1つのV族元素とを有する成分からなる化合物である。II−VI族系の材料は、少なくとも1つのII族元素と少なくとも1つのVI族元素とを有する成分からなる化合物である。量子井戸と基板との間に複数のPN接合を含むPN接合超格子を採用する利点としては、複数のPN接合を使用することにより、複数のPN接合のうちの少なくとも1つが、無欠陥となり、量子井戸を基板から電気的に絶縁する確率を高めることができることである。
【0009】
従来のシリコンを基本とする製造機能と互換性を有する製造工程を使用して、PN接合超格子を有する量子井戸をバッファ層内に又はバッファ層に隣接して形成することができれば、半導体デバイス製造分野における進歩であると言える。PN接合超格子の使用により、量子井戸を含む同様なデバイスと比較して、平行伝導を大幅に低減することができる。例えば、量子井戸を有するP型ドープされた金属酸化膜半導体(PMOS)デバイスは通常、量子井戸が歪められていない限り、移動度が低くなってしまうという問題がある。しかしながら、歪み量子井戸を有するPMOSデバイスは、大量の平行伝導が発生し、寄生層を通じたリーク電流が発生し、OFF状態のリーク電流が大幅に劣化してしまうという問題がある。
【0010】
量子井戸デバイスにおける平行伝導を改善する実施形態が、図1及び図2に例示されている。図1には、PN接合超格子を有する量子井戸構造を形成するのに使用される製造プロセスの一実施形態を示したフローチャートが示されており、形成される整流された量子井戸200は、平面又は非平面量子井戸デバイスとして実施されてもよい。要素100において、シリコンベースのPN接合が、基板上に形成される。シリコンベースのPN接合は、図2における整流された量子井戸構造200のSiPN接合210に対応する。
【0011】
SiPN接合210及び整流された量子井戸構造200におけるその他の層は、分子線エピタキシー法(MBE)、液相エピタキシー法(LPE)、化学気相成長(CVD)法、超高真空化学気相成長(UHCVD)法、有機金属化学気相成長(MOCVD法)、又は原子層エピタキシー(ALE)法のうちの1以上を使用して、基板205上に形成される。基板205は、好ましくは、バルクシリコンによって構成され、別の場合には、埋め込みシリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板(図示せず)であってもよい。これに替えて、基板205は、ゲルマニウム、アンチモン化インジウム、テルル化鉛、ヒ化インジウム、リン化インジウム、ヒ化ゲルマニウム、又はアンチモン化ガリウムのような、シリコンと組み合わせられても組み合わせられなくてもよい、その他の材料によって形成されていてもよい。基板205が形成される材料として、少数の例しかここでは記載されていないが、半導体デバイスを構築可能な基礎となる材料であれば、いかなる材料も本発明の範囲及び精神に含まれる。
【0012】
本実施形態において、SiPN接合210は、基板205上に形成され、SiPN接合210のP型ドープ部分207は基板205上に又は隣接して成長され、SiPN接合210のN型ドープ部分209は、P型ドープ部分207上に又は隣接して成長される。SiPN接合210の厚みは、約500オングストローム(Å)から10,000オングストローム(Å)の間の大きさである。SiPN接合210は、基板205とSiPN接合210との間の界面における結晶格子との整合又は厳密な整合を提供するシリコンを含む。P型ドープ部分207は、典型的には、ボロンが、5.0E16(atoms/cm)から1.0E19(atoms/cm)の範囲の濃度でドープされたシリコン、より好ましくは、2.0E17(atoms/cm)から8.0E17(atoms/cm)の範囲の濃度でドープされたシリコンである。しかしながら、別の実施形態では、P型ドープ部分207は、ガリウム(Ga)又はインジウム(In)といった別のIII族元素でドープされていてもよい。N型ドープ部分209は、典型的には、リン(P)、ヒ素(As)又はアンチモン(Sb)でドープされたシリコンであり、ドープ濃度は、1.0E16(atoms/cm)から1.0E19(atoms/cm)の範囲、より好ましくは、2.0E17(atoms/cm)から8.0E17(atoms/cm)の範囲である。
【0013】
図1及び図2に示される要素110において、接合間バッファ層215が、SiPN接合210上に形成される。接合間バッファ層215の形成は、SiPN接合210を汚染物質に晒すことなく、インサイチュで実行してもよい。一実施形態において、接合間バッファ層215は、結晶格子不整合を最小限にする又は取り除くのに十分な厚みである、約1,000Åから10,000Åの間の厚みを有するシリコンゲルマニウム(SiGe)の均一層によって形成される。別の実施形態においては、接合間バッファ層215は、SiPN接合210の格子サイズと、隣接して位置するSiGePN接合220の格子サイズとの間の遷移を提供するような、SiGeの傾斜層によって形成される。接合間バッファ層215に、SiGeの傾斜層を使用することにより、結晶格子不整合に起因するSiGePN接合220における欠陥を低減又は取り除くことができ、基板205からの絶縁性を強化することができる。この実施形態において、接合間バッファ層215を構成するSiGe傾斜層は、連続的に傾斜しており、SiPN接合210の界面においては、Geの濃度が約20原子量%(at wt %)であり、SiGePN接合220の界面では、Geの濃度が約80原子量%(at wt %)にまで上昇する。別の実施形態では、接合間バッファ層215を構成するSiGe傾斜層は、段階的に傾斜しており、SiPN接合210の界面ではGe濃度が低く、SiGePN接合220の界面ではGe濃度が高くなるように、接合間バッファ層215の厚み方向に沿って相対的に急激に且つ不連続にGe濃度が変化する。
【0014】
図1の要素120に記載されるように、SiGePN接合220が、接合間バッファ層215上に形成される。SiGePN接合220のP型ドープ部分207は、接合間バッファ層215上に又は隣接して成長され、SiGePN接合220のN型ドープ部分209は、P型ドープ部分207上に又は隣接して成長される。形成されるSiGePN接合220とSiPN接合210との組み合わせで、PN接合超格子が形成される。SiGePN接合を採用することにより、リーク電流を抑える、又はリーク電流が接合間バッファ層215に到達するのを防ぐことができる。しかしながら、図1及び図2に示されるPN接合に、更なるPN接合(図示せず)を追加して、基板205からの絶縁性をさらに高めるPN接合超格子を提供してもよい。
【0015】
SiGePN接合220の厚みは、約500Åから10,000Åの間の範囲である。SiPN接合220は、SiGe化合物を含み、SiGePN接合220と、図2に示されたSiGeバッファ層225のような隣接する層との間の界面における結晶格子の整合又は厳密な整合を提供する。P型ドープ部分207は、典型的には、ボロンが、5.0E16(atoms/cm)から1.0E19(atoms/cm)の範囲の濃度でドープされたSiGe、より好ましくは、2.0E17(atoms/cm)から8.0E17(atoms/cm)の範囲の濃度でドープされたSiGeである。
【0016】
図1及び図2に示す要素130において、上部バッファ層を、任意で、SiGePN接合220上に形成する。この実施形態において、上部バッファ層は、40原子量%から80原子量%の範囲の濃度のGeを含む、より好ましくは、65原子量%から75原子量%の範囲の濃度のGeを含むSiGeバッファ層225である。SiGePN接合220の形成は、SiGePN接合220を汚染物質に晒すことなく、インサイチュで実行されてもよい。一実施形態において、SiGeバッファ層225は、約1,000Å未満の厚みを有するシリコンゲルマニウム(SiGe)の均一層によって形成されるが、実施形態はこの点に関して限定されない。別の実施形態では、SiGeバッファ層225は、SiGeの傾斜層で形成されており、それにより、SiGeバッファ層225と隣接する層との間の界面及び界面付近における格子欠陥を低減又は取り除いている。
【0017】
図1及び図2に示す要素140において、下部バッファ層230が、SiGeバッファ層225上に形成される。この実施形態において、下部バリア層230は、Geの濃度が40at wt %から80at wt %の範囲であるSiGe化合物から形成されている。下部バリア層230は、10ナノメートル(nm)から50ナノメートル(nm)の間の範囲の厚み、より好ましくは、10nmから30nmの間の厚みにエピタキャシル成長される。
【0018】
図1及び図2に示される要素150において、デルタドーピング層235が、下部バリア層230上に形成される。デルタドーピング層235の形成は、下部バリア層230のエピタキシャル成長を一時的に中断し、下部バリア層230の表面をドーピング元素の原子の流れ、又はドーピング前駆体の流れに晒すことによって行われる。デルタドーピング層235の形成により、良好に画定された狭いドーパント層を提供することができ、高いピーク濃度、及び、1つの原子層と同程度に狭い幅を有するドーピング分布を実現できる。デルタドーピング層235の厚みは、5Åから300Åの範囲であり、より好ましくは、5Åから20Åの範囲である。デルタドーピング層235の形成に使用される材料としては、ボロン(B)、リン(P)、ヒ素(As)及び/又はアンチモン(Sb)が挙げられる。
【0019】
デルタドーピング層235を形成した後、図1の要素160において、スペーサ層240を形成する。スペーサ層240は、下部バリア層230を形成するのに使用された材料と同じ材料で構成することができるが、本実施形態はこの点に関して限定されない。例えば、スペーサ層240は、スペーサ層を覆う層及び隣接する層との格子整合を改善すると考えられる材料によって形成されてもよい。スペーサ層240は、デルタドーピング層235の形成に使用されたドーパントソースを終結し、下部バリア層230の形成に使用されたエピタキャシル成長を再開させることによって形成されてもよい。このように形成されたスペーサ240は、実質的にドーピング原子を、デルタドーピング層235の領域に閉じ込める。図2に描かれている積層構造は、下部バリア層230、デルタドーピング層235及びスペーサ層240を含み、デルタドープされたバンドギャップの大きな積層構造245となっている。
【0020】
図1の要素170において、図2の狭いバンドギャップ層250に対応する狭いバンドギャップ材料を含む量子井戸層が、スペーサ層240上に形成されて、狭いバンドギャップ材料が、バンドギャップの大きい材料に隣接して形成される。本実施形態では、バンドギャップの狭い層250は、Geによって形成されるが、この点に関して実施形態は限定されない。これに替えて、バンドギャップの狭い層250は、InSb又はGaAsで形成されてもよい。バンドギャップの狭い層250の厚みは、5nmから100nmの間の範囲であり、より好ましくは、20nmから40nmの間の範囲である。
【0021】
図1の要素180において、上部バリア層255を任意で、バンドギャップの狭い層250上に形成することができる。図2の上部バリア層255は、一実施形態では、エピタキシャル工程を使用してSiGeにより形成される。しかしながら、上部バリア層255は、InAIAs、AIGaAS、AIInSb及びInPのような相対的にバンドギャップの大きい別の材料で形成されてもよい。上部バリア層255の厚みは、所望のバリア特性を提供するように選択的に設計され、一実施形態では、10nmから60nmの範囲、より好ましくは、15nmから30nmの範囲であってもよい。
【0022】
整流された量子井戸構造を、様々な実施形態において採用してもよく、例えば、変調ドープした平面型トランジスタ(図示せず)、又は、図3に示すデカルト座標系のX、Y、Z軸に沿って描かれる非平面型トランジスタのような実施形態において採用してもよい。この実施形態においてバンドギャップの狭い層250を露出させるべく、図2の上部バリア層255が浸食される。バンドギャップの狭い層250は、当業者に知られたドライエッチング及び/又はウェットエッチング技術を使用して上部バリア層255をエッチングすることによって露出される。使用される特定のドライエッチング及び/又はウェットエッチングシーケンスは、バンドギャップの狭い層260に大きな影響を与えることなく上部バリア層255をエッチングするよう、選択的になっている。
【0023】
狭いバンドギャップ層250、及び図2のデルタドープされたバンドギャップの大きな積層体245の一部は、図3に示すようにマルチゲート本体320を形成するべく、パターニングされる。バンドギャップの狭い層250を、フォトリソグラフィ及びエッチング技術によってパターニングし、実質的に同じ長さの3つのゲートを有するトライゲートデバイスを生成する。別の実施形態では、バンドギャップの狭い層250は、実質的に同じ長さを有する2つのゲートを備える(図示せず)狭いfinFET構造を形成するべくパターニングされる。デルタドープされたバンドギャップの大きい積層体245の一部がパターニングされて、凹部領域が形成される。この実施形態において、図2の下部バリア層230、デルタドーピング層235及びスペーサ層240の一部は、バンドギャップの大きな構造305を形成するために取り除かれて、バンドギャップの大きな構造305に隣接する絶縁領域315の形成のための凹部が提供される。マルチゲート本体320の形成の間に、バンドギャップの大きな構造305は、デルタドープされたバンドギャップの大きい積層体245をパターニングすることによって形成され、積層体は、変調ドープされた非平面型トランジスタの活性領域として機能する。
【0024】
バンドギャップの大きな構造305は、大きなバンドギャップ基材厚み310を提供するべくパターニングされ、大きなバンドギャップ基材厚み310は、バンドギャップの大きな構造305全体の厚みとほぼ同じであってもよい。これに替えて、大きなバンドギャップ基材厚み310はゼロであってもよく、絶縁領域315が、直接SiGeバッファ層225に隣接してもよい。絶縁領域315は、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコン窒酸化物、又は高誘電率の材料といった誘電体によって形成されてもよい。絶縁領域315を形成するのに使用される材料としては、例えば、酸化ハフニウム、ハフニウム酸化シリコン、酸化ランタン、酸化ランタンアルミニウム、酸化ジルコニウム、ジルコニウム酸化シリコン、酸化タンタル、酸化チタン、バリウムストロンチウムチタン酸化物、バリウムチタン酸化物、ストロンチウムチタン酸化物、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル酸鉛スカンジウム、及びニオブ酸鉛亜鉛が挙げられる。絶縁領域315は、従来の蒸着法を使用して形成することができ、例えば、従来の化学気相成長(CVD)プロセス、低圧CVDプロセス、又は物理的気相成長(PVD)プロセスによって形成されてもよい。好ましくは、従来の原子層CVDプロセスが使用される。
【0025】
マルチゲート誘電体層330が、マルチゲート本体320及び絶縁領域315上に形成され、マルチゲート誘電体層330は、酸化シリコン又は高誘電率材料のうちの少なくとも一方を含む。高誘電率材料は、酸化ランタン、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウムストロンチウム、又は酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つを含む。マルチゲート誘電体層330は、マルチゲート本体320上に共形の層として、当業者に周知の方法を使用して堆積され、例えば、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、高密度化学気相蒸着法(HDCVD)、分子有機化学気相成長法(MOCVD)、原子層成長法(ALD)又はスパッタリングを使用して、堆積される。
【0026】
共形の仕事関数金属層335は、所望の厚みで、マルチゲート誘電体層330の上に形成される。仕事関数金属は、既知の仕事関数を有する金属であり、エレクトロンボルト(eV)の単位で表される金属が元来有する性質である。一実施形態において、仕事関数金属層330は、窒化チタン、窒化タンタル、又はその他の遷移窒化金属のうちの少なくとも1つを含む。仕事関数金属層の厚みは、マルチゲートデバイスの目標とする閾値電圧(Vt)の関数である。一実施形態において、仕事関数金属層は、方向性に感度を有する物理気相成長(PVD)プロセスを使用して形成される。
【0027】
例えば、ポリシリコンであるマルチゲート電力340及びハードマスク345が、仕事関数金属層335上に形成される。マルチゲート電極340及びハードマスク345は、当業者にとって周知の一連の堆積、リソグラフィー及びエッチングプロセスによって形成される。マルチゲート電極340は、ドープされる又はドープされず、ハードマスク345は、窒化シリコン又は酸窒化シリコンを含んでもよい。ゲート絶縁スペーサ350は、次に続く処理の間に、マルチゲート電極340、仕事関数金属層335及びマルチゲート誘電体層330を保護する。この実施形態において、図3の非平面型トランジスタは、基板205へのリーク電流によって生じる電流を整流することによって平行伝導を改善するべく構成される。SiPN接合210及びSiGePN接合220を含むPN接合超格子の適用により、基板205へのリーク電流に起因する平行伝導を大幅に低減させることができる。
【0028】
図4は、変調ドープされた平面及び/又は非平面型トランジスタを含む中央演算処理装置(CPU)を備えるシステムを示している。ここでは、データを、変調ドープされた非平面型トランジスタを含む中央演算処理装置(CPU)410で処理するための通信システム400が、一実施形態に従って図示されている。通信システム400は、CPU410を有するマザーボード420、及び、バス440に結合されたネットワーキングインターフェース430を含む。より具体的には、CPU410は、先に記載した変調ドープされた非平面型トランジスタを含んでもよく、及び/又はその製造方法を含む。用途に応じて、通信システム400は、その他の要素を更に含んでもよく、これに限定されるわけではないが、例えば、揮発性及び不揮発性メモリ、グラフィックスプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、暗号プロセッサ、チップセット、大容量記憶装置(ハードディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)等)が挙げられる。これらの要素のうちの1以上は、上述した濃度が傾斜して分布するゲルマニウムを多く含むシリコンゲルマニウム領域、及び/又はその製造方法を含んでもよい。様々な実施形態において、通信システム400は、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯端末、タブレットコンピュータ装置、ラップトップコンピュータ装置、デスクトップコンピュータ装置、セットトップボックス、エンターテイメント制御装置、デジタルカメラ、デジタルビデオレコーダ、CDプレーヤ、DVDプレーヤ、又はその他のデジタルデバイス等であってもよい。
【0029】
本発明の複数の実施形態が、例示及び説明を目的として提示された。本発明の完全な記載を提供すること、又は本発明の正確な形式の開示に限定することを意図していない。説明及び特許請求の範囲に含まれる、左、右、上、下、上に、下に、上部の、下部の、第1、第2等の言葉は、説明することのみを目的として使用されており、これに限定されると解釈されるべきではない。例えば、基板又は集積回路のデバイスの面(又は能動面)は、相対的な垂直方向の位置を称して基板の"上面"と称されるが、基板は、実際にはあらゆる方向に向けられる場合があり、この基板の"上面"は、標準的な地球座標系を基準として、"下面"よりも下側に位置する場合もあるが、この場合も含めて"上面"であるとしている。また、(特許請求の範囲を含めて)本明細書で使用されている"〜上に(on)"という言葉は、特に記載がない限り、第1層が直接第2層の上に存在する又は直に接触していることを指しているのではなく、第1層と第1層の上の第2層との間に、第3層又はその他の構造が存在してもよいことを指す。本明細書に記載された物品又はデバイスの実施形態は、複数の位置及び方向に配置された状態で、製造、使用又は出荷することができる。
【0030】
上述の教示を背景として、多くの変形及び改良が可能であることは、当業者にとって明らかである。当業者であれば、様々な均等物の組み合わせ及び代替が存在することが理解できる。したがって、本発明の範囲は、詳細な説明によって限定されることを意図しておらず、添付の特許請求の範囲によって限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料を含む基板と、
前記第1材料を含み、前記基板上に設けられた第1PN接合と、
前記第1材料及び第2材料を含み、前記第1PN接合上に設けられたバッファ層と、
前記第2材料を含み、前記バッファ層上に設けられたデルタドープされたバンドギャップの大きい積層体と、
前記デルタドープされたバンドギャップの大きい積層体上に設けられたバンドギャップの狭い層と
を備える量子井戸デバイス。
【請求項2】
前記第2材料を含み、前記バッファ層上に設けられた第2PN接合を更に備える請求項1に記載の量子井戸デバイス。
【請求項3】
前記第1材料はシリコンであり、前記第2材料はゲルマニウムである請求項2に記載の量子井戸デバイス。
【請求項4】
前記第1PN接合は、2.0E17 atoms/cmから8.0E17 atoms/cmの範囲の濃度のボロンでドープされたP型ドープ部分を更に有する請求項1に記載の量子井戸デバイス。
【請求項5】
前記量子井戸デバイスは、平面型トランジスタである請求項2に記載の量子井戸デバイス。
【請求項6】
15ナノメートルから30ナノメートルの範囲の厚みを有する上部バリア層を更に備える請求項2に記載の量子井戸デバイス。
【請求項7】
前記バンドギャップの狭い層は、20ナノメートルから40ナノメートルの範囲の厚みを有する請求項2に記載の量子井戸デバイス。
【請求項8】
基板と、
前記基板上に設けられたPN接合超格子と、
前記PN接合超格子上に設けられたデルタドープされたバンドギャップの大きな積層体と、
前記デルタドープされたバンドギャップの大きな積層体上に設けられたマルチゲート本体と
を備える非平面型トランジスタ。
【請求項9】
前記PN接合超格子の第1PN接合と第2PN接合との間に、バッファ層を更に備える請求項8に記載の非平面型トランジスタ。
【請求項10】
前記第1PN接合はシリコンを含み、第2PN接合はゲルマニウムを含む請求項9に記載の非平面型トランジスタ。
【請求項11】
前記第1PN接合は、N型ドープ部分を有し、
前記N型ドープ部分は、リン(P)、ヒ素(As)及びアンチモン(Sb)からなる群から選択されるドーパントでドープされている請求項9に記載の非平面型トランジスタ。
【請求項12】
前記マルチゲート本体上に設けられる仕事関数金属と、
絶縁領域とを更に備える請求項9に記載の非平面型トランジスタ。
【請求項13】
前記仕事関数金属上に設けられたマルチゲート電極を更に備える請求項12に記載の非平面型トランジスタ。
【請求項14】
前記マルチゲート本体は、Geの濃度が40から80原子量%の範囲である請求項13に記載の非平面型トランジスタ。
【請求項15】
基板上に第1PN接合を形成する段階と、
前記第1PN接合上に第1バッファ層を形成する段階と、
前記第1バッファ層上に第2PN接合を形成する段階と、
前記第2PN接合上に第2バッファ層を形成する段階と、
前記第2バッファ層上に、デルタドープされたバンドギャップの大きな積層体を形成する段階と
を備える方法。
【請求項16】
前記第1PN接合は、2.0E17 atoms/cmから8.0E17 atoms/cmの範囲の濃度のボロンでドープされたP型ドープ部分を更に有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記デルタドープされたバンドギャップの大きな積層体上に、バンドギャップの狭い層及び上部バリア層を更に備える請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記上部バリア層は、15ナノメートル(nm)から30ナノメートル(nm)の範囲の厚みを有する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バンドギャップの狭い層は、20ナノメートル(nm)から40ナノメートル(nm)の範囲の厚みを有する請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記デルタドープされたバンドギャップの大きな積層体は、ゲルマニウム(Ge)を含む請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−520580(P2012−520580A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500818(P2012−500818)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/025845
【国際公開番号】WO2010/107571
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】