説明

AKAP−PKA相互作用の非ペプチド阻害剤

本発明は、タンパク質キナーゼA(PKA)とタンパク質キナーゼAアンカータンパク質(AKAP)との相互作用を調節し、特に阻害する非ペプチド分子に関するとともに、該非ペプチド化合物、または例えば抗体やキレート剤等のような、該非ペプチド化合物を標的とする認識分子を含む宿主または標的生物に関する。本発明は更に、特にcAMPシグナル経路の異常に伴う疾病の治療のための医薬品に関する。該疾病としては特に、尿崩症、筋緊張亢進、膵性糖尿病、十二指腸潰瘍、ぜんそく、心不全、肥満、AIDS(後天性免疫不全症候群)、浮腫、肝硬変、統合失調症、その他の疾病が挙げられる。本発明は更に、新規性を有する分子の使用に関する。
本発明の一は、表Aによる非ペプチドタンパク質キナーゼA/タンパク質キナーゼAアンカータンパク質分離剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質キナーゼA(PKA)とタンパク質キナーゼAアンカータンパク質(AKAP)との相互作用を調節し、特に阻害する非ペプチド分子に関するとともに、該非ペプチド化合物、または例えば抗体やキレート剤等のような、該非ペプチド化合物を標的とする認識分子を含む宿主または標的生物に関する。本発明は更に、特にcAMPシグナル経路の異常に伴う疾病の治療のための医薬品に関する。該疾病としては特に、尿崩症、筋緊張亢進、膵性糖尿病、十二指腸潰瘍、ぜんそく、心不全、肥満、AIDS(後天性免疫不全症候群)、浮腫、肝硬変、統合失調症、その他の疾病が挙げられる。本発明は更に、新規性を有する分子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
外部からのシグナルを受けて該シグナルに応答する細胞の能力は、細胞が生存し機能を発揮する上で根本的に重要である。シグナルは、受容体によって検出され、細胞応答に変換される。該細胞応答には、常に化学プロセスが含まれる。
【0003】
多数のシグナルと更に多数の反応が存在する可能性があるので、多数のシグナル経路が必要とされる。考えられるシグナル経路の1つは、cAMP依存シグナル経路である。該cAMP依存シグナル経路は、例えば神経伝達物質またはホルモン等の細胞外シグナルによるGタンパク質共役型ヘプタヘリカル膜貫通受容体の活性化によって生じる。該シグナル経路に関する最良の調査例は、β−アドレナリン受容体システムである。該システムにおいて、Gタンパク質共役型β−アドレナリン受容体(GPCR)は、アドレナリンまたはノルアドレナリンによって活性化される。β−アドレナリン受容体は、サブタイプであるベータ、ベータ、ベータに分化される。これらのサブタイプは、組織分布やリガンド親和性の点で異なる。
【0004】
このように活性化された受容体がシグナルをヘテロ三量体であるグアノシン三リン酸結合タンパク質(GTP結合タンパク質またはGタンパク質)に伝達すると、続いて該ヘテロ三量体グアノシン三リン酸結合タンパク質は結合GDPをGTPに置換し同様に活性化される。
【0005】
GTP結合に続いて、三量体はアルファサブユニットとベータ−ガンマサブユニットとに解離する。両サブユニットは、アシル化により膜に結合する。各サブユニットは、自己のエフェクターの活性化と阻害とを行うことができる。
【0006】
Gタンパク質は、固有GTPase活性を有する。これによって結合GTPを開裂しGタンパク質を再び非活性化することができるので、アルファサブユニットとベータ−ガンマサブユニットは三量体を再形成することができる。したがって、Gタンパク質は、分子スイッチの機能を担う。Gタンパク質は、複数の種類に分類される(G、G、G、Golf)。これらのサブユニットは、様々なエフェクターの活性化または阻害を行うことができる。上記エフェクターの例としては、Ca2+チャンネル、Kチャンネル、ホスホリパーゼC−ベータ、アデニル酸シクラーゼ(AC)が挙げられる。
【0007】
複数の変異形で発生する膜酵素同様に、アデニル酸シクラーゼはGalphasによって刺激される。これは、ATPを二次メッセンジャーであるcAMPに変換する。cAMPは、細胞質ゾル中で自由に拡散可能であり、様々なエフェクターを活性化させることができる。該エフェクターとしては、cAMP結合において開閉する環状ヌクレオチドゲート(CNG)陽イオンチャンネルと、いわゆるEPAC(cAMPによって活性化された交換タンパク質)であるグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)のファミリーとがある。後者は、Rasのサプレッサーとして働く小単量体TGPaseであるRap−1、Rap−2とを調節化する。cAMPがEPACに結合すると、構造変化が生じて、GEF領域が露出され活性化される。このようにして、抑制効果は終了し、RasをGEF機能によって活性化できる。Rasは、様々なシグナルによって活性化されたMAPキナーゼ(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ)シグナル経路に関係する(例:増殖または分化を誘発するサイトカインに基づく)。
【0008】
更に、cAMPは、cAMP−応答エレメント結合タンパク質(CREB)による遺伝子発現に影響を及ぼし得る。CREBは、DNAのcAMP−応答エレメント(CRE)に結合するので、転写因子として作用する。
【0009】
ただし、最も広範に説明され最良の特徴付けがなされたcAMPのエフェクターは、cAMP依存タンパク質キナーゼ(PKAまたはAキナーゼ)である。不活性状態において、タンパク質は2つの調節サブユニット(R)と2つの触媒サブユニット(C)とから成るヘテロ四量体の形態をとる。該結合状態において、触媒サブユニットは不活性である。細胞内cAMP濃縮によって次に刺激が生じると、2つのcAMP分子は各Rサブユニットに結合する。このようにして誘発された構造変化の結果として、触媒サブユニットは放出されてから、Ser残基及びThr残基における近隣の標的タンパク質をリン酸化することによって、構造変化ひいては機能変化をも引き起こす。標的タンパク質の認識は、コンセンサス配列によって行われる。
【0010】
多くの様々な細胞外刺激がcAMP−PKA経路に集中するという事実を考慮すると、またPKAは広範な基質特異性を有する酵素であるという事実から見ると、どのようにしてこの多様な刺激が様々な特定の細胞応答を誘発することが可能なのか疑問が生じる。
【0011】
cAMP−PKAシグナル経路における特異性に対してまず寄与するのは、RサブユニットとCサブユニット(それぞれRIアルファ、RIベータ、RIIアルファ、RIIベータ、Cアルファ、Cベータ、Cガンマ、PrKX)である。これらは、細胞の種類によって、様々なイソ型で存在し、凝集を経て機能的に異なるPKAイソ型になる。一般にRIサブユニットは、RIIサブユニットに比べてcAMPへの親和性が高い。Rサブユニットは、ホモ二量体とヘテロ二量体との両方を形成することができるので、高い親和性を有する多くの組合せを実現することができる。
【0012】
更に、局所的面は、シグナル経路の特異性において重要な役割を果たす。cAMPは、Gタンパク質共役型受容体近隣の特定の部位におけるACによって生成される。細胞質ゾルにおける自由拡散は、cAMPを加水分解しアデノシン一リン酸を形成するホスホジエステラーゼ(PDE)によって制限される。このようにして、細胞外刺激は、PDEによって局所的に活性が制限されたcAMP領域内に位置するPKA四量体のみを活性化する。
【0013】
キナーゼアンカータンパク質(AKAP)は、上記のような活性の領域内のみならず、リン酸化される基質近隣においてもPKAをアンカリングする重要な機能を担う。
【0014】
AKAPタンパク質は、現在のところ約50のタンパク質から成るファミリーであり、個々のAKAPタンパク質はそれぞれ有意な配列相同性はないものの、同様な機能を有する。AKAPタンパク質は、PKAのRサブユニットに対する結合領域の特性によって規定される。この保存モチーフは、14〜18のアミノ酸から成る両親媒性アルファヘリックスであって、その疎水性側はPKAの疎水ポケットと相互作用する。
【0015】
疎水ポケットは、二量化RサブユニットのNターミナスによって形成される。Nターミナスは、逆平行状に凝集し、2つのヘリックス−ターン−ヘリックスモチーフから4つのヘリックス束を形成する。Nターミナスに最も近い各サブユニットのアルファヘリックスは、AKAP結合に必要な疎水ポケットを形成する。一方、Cターミナル方向の束状構造のアルファヘリックスは二量化が可能である。アルファヘリックスに寄与するアミノ酸とは別に、更にNターミナルのアミノ酸の側鎖はAKAPタンパク質との相互作用に関係する。
【0016】
RIサブユニットとRIIサブユニットのNターミナル部分は、配列によって異なるので、AKAP結合特異性は多様である。大部分のAKAPタンパク質は、RIIサブユニット(K(ナノモル範囲))に結合する。この場合、低親和性AKAPタンパク質と高親和性AKAPタンパク質とに分かれる。1〜50nMのK値を有するAKAP−Lbc/Ht31であるAKAP79、AKAP95は、高親和性AKAPタンパク質に含まれる。エズリン/ラジキシン/モエシンのタンパク質ファミリーに含まれるAKAPタンパク質は、低親和性を有するAKAPタンパク質に含まれる(Kd値はミクロモル範囲)。更に、両方のRタイプに結合する二重特異的AKAPタンパク質(D−AKAP)もいくつか存在する。AKAPCE(シノラブディスエレガンス由来)、AKAP82、PAP7(末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)(付随タンパク質7))、hAKAP220のみが、現在既知であるRI特異的AKAPタンパク質である。AKAPタンパク質の他の特徴的な領域は、各AKAPタンパク質を特定の細胞内コンパートメントにアンカリングするいわゆる標的領域である。
【0017】
PKAと細胞下構造の他に、AKAPタンパク質は、他のシグナル分子と、PDEやホスファターゼ等のcAMP−PKAシステム内の重要な酵素とを結合することができる。加水分解による後者の逆リン酸化反応によって、刺激効果を終了させることができる。このようにして、AKAPタンパク質は、シグナルの開始と終了とに必要なすべてのタンパク質が集合可能である基質の近くで骨格を形成する。AKAP固定PKAによる基質リン酸化反応によって、原則として拡散しているAC由来のcAMPシグナルは空間・時間的に集中する。
【0018】
AKAPタンパク質は、多くの細胞プロセスに大いに関係している。考えられる形態の1つは、細胞内におけるAKAPタンパク質の局在化である。したがって、イオンチャンネルAKAPタンパク質、細胞骨格関連AKAPタンパク質、ミトコンドリア関連AKAPタンパク質が存在する。他の考えられる形態は、AKAPタンパク質の組織特異的発現によるものである。
【0019】
細胞内の信号伝達経路に対するAKAPタンパク質の重要性を実証するため、3つのAKAPタンパク質、すなわちグラビン、AKAP79、AKAP18の機能について以下更に詳細に説明する。
【0020】
グラビンはアクチン関連AKAPである。重合アクチンは、細胞骨格の重要な成分である。グラビンは、多価足場タンパク質として働き、アクチンだけでなく、PKAとCa2+依存タンパク質キナーゼ(PKC)とに結合する。この合成物は、アゴニストによる刺激に続くβアドレナリン受容体(上記参照)の脱感作において重要である。静止状態において、グラビン合成物は受容体に結合する。例えばアドレナリン結合等による受容体の活性化によって、cAMPが形成される(上記参照)。グラビンアンカーPKAは、グラビン自体をリン酸化するその触媒サブユニットを放出し、リン酸化は初期に結合を推進する。アゴニストによる刺激が継続すると、グラビンも、同様にアンカリングされているPKCによってリン酸化される。該リン酸化によって、グラビン合成物は受容体から解離する。代わりに、マウス二重微小2(MDM2)ユビキチンリガーゼに結合するβ−アレスチンアダプタータンパク質が受容体に結合する。MDM2触媒ユビキチン化は、βアドレナリン受容体システムの脱感作によるプロテアソーム分解とエンドサイトーシスのための受容体を特徴付けるものである。
【0021】
AKAP79は、海馬におけるシナプス可塑性の調節に関係するイオンチャンネル関連AKAPである。PKAの媒介により、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾリルプロピオン酸(AMPA)受容体によって誘発されたNaまたはCa2+のフラックスが増大する。AMPA受容体は、固有Ca2+/Kチャンネル機能を有する。該増大は、リン酸化によってグルタミン酸受容体の活性を調節することによって達成される。AKAP79は、AMPA受容体付近でPKAをアンカリングする機能を担う。このため、AKAP79は、Nターミナル基本領域を有するので、ホスファチジルイノシトール−4,5−ビスリン酸膜脂質への結合が可能となる。受容体に対するAKAP79の結合は直接行われず、むしろ、AKAP79は、受容体に順に結合する膜結合グアニル酸キナーゼタンパク質(MAGUK)に結合する。
【0022】
AKAP18は初め、15kDAまたは18kDAサイズの膜結合タンパク質とされた。この場合AKAP18は、Ca2+チャンネルのCターミナスと直接相互作用しながら、上皮細胞の側底細胞膜や、プラズマ細胞膜上のLタイプCa2+チャンネル付近の骨格筋細胞においてPKAをアンカリングする。
【0023】
このタンパク質は81のアミノ酸から成り、PKA結合両親媒性ヘリックスとNターミナルミリストイルとプラズマ細胞膜上のPKA−AKAP合成物をアンカリングするパルミトイル脂質アンカーとを含む。AKAP18とCa2+チャンネルとの間の相互作用は、ロイシンジッパー状モチーフを含むチャンネルのアルファ1サブユニットのCターミナル領域を介して生じる。このように、PKAは、アルファ1サブユニットにおける重要なリン酸化部位の近くに位置付けられる。これによって、特異的リン酸化が可能になる。リン酸化は、チャンネル開確率を増大させる。
【0024】
更なる研究によって、複数のスプライシング変異体がAKAP18遺伝子から出現することがわかった。このため、上記AKAP18タンパク質は、AKAP18アルファ(またはAKAP15)とも呼ばれる。この他のスプライシング変異体は、AKAP18ベータ、AKAPガンマ、AKAPデルタである。
【0025】
AKAP18ベータは、104のアミノ酸から成り、アルファ変異体と同じ膜結合領域を含む。23のアミノ酸を含む追加領域は、タンパク質を、極性上皮細胞における頂端プラズマ細胞膜に方向付ける。AKAP18ベータの機能は、現在までのところ不明確である。
【0026】
大部分のAKAPタンパク質とは異なり、326のアミノ酸から成るAKAP18ガンマは、可溶性細胞分画にも局在化する。マウス卵母細胞において、AKAP18ガンマは細胞核でPKA−RIサブユニットをアンカリングする。これは、転写調節に関係することを示している。
【0027】
AKAP18デルタは、353のアミノ酸を含むタンパク質である。そのRII結合領域は、アルファ−ガンマ変異体の該領域とほとんど同一である。AKAP18デルタは、AKAP18ガンマと大きく相同するタンパク質である。AKAP18デルタは、アクアポーリン−2(AQP2)水路が細胞内小胞から腎集合導管細胞の頂端プラズマ細胞膜へ転位すること(下記を参照)に関係するAKAPタンパク質の探索中に発見された。AKAP18デルタは、AQP2含有小胞に局在化することが実証されている。
【0028】
更に、その分布は、AQP2の分布と非常に似ている。また、引き続き起きる腎細胞の適切な刺激によって、AQP2とともにプラズマ細胞膜に転位するので、AQP2転位に関係すると推測される。
【0029】
AQP2転位は、抗利尿ホルモンであるアルギニン−バソプレッシン(AVPまたはADH)によって誘導される。ホルモン形成と血流内に分泌されるその分泌物は、血液の浸透圧を常に監視する視床下部の浸透圧受容器によって制御される。例えば生物の水分摂取量が減少した結果として浸透圧が増大した場合、AVPが合成されて血流に分泌される。
【0030】
AQP2再分布の開始シグナルは、腎集合導管の主細胞の側底膜側においてAVPがバソプレッシン受容体(V2R)に結合することによってなされる。GPCRであるV2受容体は上記シグナルカスケードを作動させるので、cAMPの形成が増大する。
【0031】
cAMP結合によって引き起こされる構造変化の結果として、AKAP18デルタによってAQP2含有分泌小胞にアンカリングされたPKAは、近隣に位置するAQP2水路をリン酸化するその触媒サブユニットを放出する。該リン酸化によって、小胞が頂端プラズマ細胞膜に輸送されて融合がなされる。
【0032】
このようにして、膜の透水性が増大し、増大した水量は集合導管の頂端膜の他方側に位置する一次尿から再吸収可能である。したがって、シグナルチェーンの初期刺激の影響が弱められる。
【0033】
AKAP18デルタだけでなく、他のタンパク質もAQP2小胞に関わっているが、これら他のタンパク質はAKAP18デルタと違って、プラズマ細胞膜に到達しない。これは、AKAP18デルタによって小胞膜にアンカリングされたPKAが、AQP2リン酸化にとってだけでなく、例えばプラズマ細胞膜への輸送プロセスを調節するリン酸化にとっても必要である可能性を示している。この種の機能は、LタイプCa2+チャンネル関係AKAP79についても実証されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
上記のとおり、PKA結合領域の両親媒性ヘリックスを模した合成ペプチドによって、PKAのAKAPタンパク質への結合を阻害することが可能である。上記の阻害性ペプチドは、AKAPタンパク質によるPKA区画化の生理学的意義を解明する上で重要な役割を果たすが、これらのペプチドには不利な点がある。ペプチドは、特に安定しているわけではなく、たとえば合成において費用がかかる。AKAPタンパク質は、多くの細胞プロセスにおいて特異性を示し組織特異的に発現するので、AKAPタンパク質は新しい医薬品にとって興味深い標的である。ただし、AKAPタンパク質は新しい物質を開発する前に標的として検証しなければならない。結果として、AKAPタンパク質とPKAとの間の相互作用は、動物モデルにおいて除去される必要があり、次にヒトモデルにおいても除去される必要がある。しかしながら、ペプチドは、試験動物に投与することはできない。その理由は、ペプチドは胃腸管において分解するからである。AKAP機能の研究の他の重要なモデルは、細胞培養モデルである。ただし、膜透過性を保証するため、ペプチドは細胞培養で使用する場合アシル化しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0035】
立体障害の結果として、またはより適切に相互作用する(疎水性)アミノ酸側鎖によって、従来技術のペプチドは、完全AKAPタンパク質よりも調節PKAサブユニットの疎水ポケットに対してより強固にドッキングする。このようにして、AKAPタンパク質によるPKA区画化を除去する生理学的効果を実験にて試験することができる。
【0036】
最初に導入され現在まで最も頻繁に使用されているアンカーペプチド阻害剤は、22〜24のアミノ酸から成り、Ht31AKAPタンパク質のPKA結合領域由来であり、AKAP−Lbcとしても知られているHt31ペプチドである。
【0037】
生物情報学の方法とペプチドアレイスクリーニングを使用した。これにおいて、まず様々なAKAPタンパク質から計算したRIIサブユニットのコンセンセス結合部位からアミノ酸を体系的に置換して、結合実験用ペプチドをセルロース膜に結合させた。より強い阻害効果を有するペプチドであるAKAPIS(シリコン内で)を生成することができた。2つのアミノ酸側鎖の位置が修正された結果として、RIIサブユニットと追加の疎水性相互作用が実現可能な17merが存在し、これはその立体構造を安定化させる追加の塩橋を形成することができる。
【0038】
高親和性AKAPタンパク質内に含まれるAKAP18デルタのRII結合領域を発端とすると、さらに高い親和性を有する阻害性ペプチドを発生させることができた。特にこれらは、低用量が可能であり、ペプチドの非特異的効果がより表れにくいという利点を有する。
【0039】
ここで、AKAP18デルタとRIIとの結合領域を含む25merのすべてのアミノ酸を、1つずつ、すべての種類の他の生体アミノ酸で置換した。高親和性を有するペプチドを根幹として、疎水ポケットにおけるペプチド結合の構造モデルに基づく更なるアミノ酸置換を行った。ただし、更に親和性を増大することはできなかった。結果として得られたペプチドは、その特異性と、AKAP−RII結合の広範阻害剤としての生物学的機能とについて試験した。
【0040】
驚くべくことに、表Aによる非ペプチド分子はPKAとAKAPとの阻害剤または分離剤として、またはPKAアンカリングをブロックする物質として使用可能であることが分かった。非ペプチド阻害剤は、新しい活性物質のリード構造でもある。一方では、該物質は、インビトロ実験においてPKAアンカリングをブロックする新しいツールである。他方では、該物質は新しい種類の医薬品の基礎である。この新しい種類の医薬品とは、従来の医薬品とは異なり、酵素や受容体の活性よりもむしろタンパク質間の相互作用に影響を及ぼすものである。
【0041】
すべてのこれらの分子は、PKA−AKAP間の相互作用に関する非ペプチドブロッキング剤または分離剤である点で共通している。これらは、従来技術では開示されていない。すべてのこれらの物質は、PKAアンカリングをブロックするために使用することもできる。本明細書で請求した化合物は、AKAP−RII合成物の特異的阻害剤を提供する。驚くべきことに、本発明による物質の化学的特性や物理的特性によって、細胞培養、動物モデルだけでなく、霊長類やヒトの分野において直接使用することが可能になる。これにより、初めて、AKAPタンパク質の機能についてインビボで研究することが可能になる。今日まで、従来技術においてAKAPタンパク質の機能に関するインビボ研究は論じられていない。このインビボ適合性は、本発明によるすべての化合物の共通特性である。
【0042】
すべての新規性のある化合物が新しい構造成分を示すものではないが、このことは、本明細書の内容に単一性の欠如が存在することを意味するものではない。本明細書で請求した代替化合物は、共通の特性または効果を有する。
【0043】
本発明の他の態様では、本明細書で請求した好ましい化合物は、驚くべきことに多様な共通の生理化学的特性を示す。該特性によって化合物は医薬品として非常に有用になる。該特性は、大いにLipinski's Rule(いわゆるRule of Five)に適合しているからである。本発明による化合物の上記共通の生理化学的または構造的な特性は、分子量150〜600g/mol、好ましくは190〜300g/molを有し、分配係数logPが10以下、好ましくは8以下、より好ましくは1以上5以下であって、最大10個の水素結合供与体と最大10個の水素結合受容体とを有し、可溶度値logSwが−400〜0であって、原子結合数値が0〜7であって、AKAP18デルタ−RII相互作用が好ましくは少なくとも40%分阻害されるという特性である。この構造的な共通特性全体の結果として、PKAとAKAPの効果を阻害することと、PKAアンカリングをブロックすることが機能的関係を有するようになる。したがって、共通生理化学的特性は、任意の特性全体を意味するものではなく、化合物の良好なインビボにおける適切性を可能にし特徴付ける特許請求項の範囲にあるいわゆる「共通のフィンガープリント」を示す。特に好ましい態様では、本発明の分子は、PKAの調節サブユニット、特にRIアルファまたはRIIアルファ及びRIIアルファまたはRIIベータにそれぞれ結合する。本発明の分子は、使用する種に基づいて、AKAP、好ましくはAKAP18、より好ましくはAKAP18デルタおよびPKAの改良、阻害、または分離を可能なものにしている。簡単な通常試験を使用して、当業者は、本発明による分子を標的とする認識分子を容易に生成することができる。例えば、該認識分子は、抗体、キレート剤、錯化剤、または従来技術で周知の他の構造体であってよい。該認識分子は、その標的が既知なら(この場合は分離剤)、容易に生成される。例えば、分離剤は補剤とともに生物に投与されることにより、既知の方法によって収集可能な抗体が形成される。これらの認識分子、または本発明の分子を使用して、該生物を新規性のある分子または認識分子と接触させることによって、AKAP−PKA相互作用を組織特異的におよび/または細胞特異的に改良した生物を提供可能になる。
【0044】
好ましい分離剤は、以下の特性を有する。すなわち、logP値が9、8、7、6、5未満、好ましくは4、より好ましくは3、特に好ましくは2未満である。水素結合供与体および/または水素結合受容体が最大で10、9、8、7、6、好ましくは5、特に好ましくは4、3および/または2である。および/または原子結合数が特に1、2、3、4、5、または6である。および/またはlogSw値が350、300、250、200、150、100、または50である。及び分子量が150〜550、150〜500、150〜450、150〜400、または150〜350である。
【0045】
分離剤は、好ましくは最大6個の水素結合供与体、および/または最大4個の水素結合受容体、および/または1以上5以下の分配係数logPを有する。
【0046】
本発明の特に好ましい実施態様では、新規性のある分離剤は、AKAPとPKAサブユニットとの相互作用を少なくとも80%阻害する。相互作用の阻害性が測定可能な適切な方法は、当業者にとっては周知である。例えば、Ht31ペプチドを使用してAKAP−PKA結合の阻害を達成する方法を説明・開示した多くの文献が存在する。しかしながら本発明においては、阻害とは、2つの分子間の影響を受けない相互作用ではなく、AKAPとPKAとの相互作用の任意の改良形態を意味する。AKAPとPKAとの結合の阻害が好ましいものの、本発明によればAKAPとPKAとの相互作用を増大させることも望ましい。
【0047】
特に好ましい分離剤は、表Aに示した。表Aに記載の分離剤は、AKAPとPKAとの相互作用を阻害するだけでなく、標的生物における非常に良好な吸収につながる生理化学的特性を有するので、cAMP依存シグナル伝達の不安定や異常によって誘導された疾病を治療することができる。当業者ならば、現在の技術をもとに該疾病を熟知しているであろうし、どの種類の疾病が該当するか分かるであろう。周知の疾病とは例えば、尿崩症、膵性糖尿病、肥満、浮腫、慢性閉塞性肺疾患、AIDS、統合失調症、肝硬変、心不全、冠状動脈性心臓病、筋緊張亢進、および/またはぜんそくである。ただし、cAMP依存シグナル伝達における異常によって引き起こされた疾病についてはこれらの限りではない。下記の他の疾病は、本発明に記載の医薬品を用いた治療に対し大変効果のある疾病の中にも含まれている。
【0048】
本発明による他の好ましい分子は、表Bに示した。こららの好ましい化合物は、共通する生理化学的特性を有する。該特性によって、ヒトまたは動物の身体の外科的および/または治療的処置において、及びヒトまたは動物の身体に対して行われる診断方法において、医薬的に許容可能なキャリアを任意選択的にともに使用して、該化合物を使用することが可能になる。有利なことに、化合物はLipinskiらによるRule of Fiveに適合する物質特性を有する(Lipinskiら、Adv. Drug Deliv. Rev. 46, 3-26 (2001))。
【0049】
本発明の他の好ましい実施形態は、表Cから選択される分離剤に関する。表Cに記載の好ましい化合物は、良好な膜透過性を有する。これにより、化合物はインビボで容易に使用可能である。すなわち、特に医薬品としてPKAアンカリングをブロックし、またはAKAP−PKA相互作用を調節し、特に阻害する。
【0050】
本発明による有利な分子は、表A、Bおよび/またはCに開示されている。その生理化学的特性(すなわち、低分子量である特性、有利な分配係数、可溶性、原子結合数値を有する点、最大10個の水素結合受容体、特に実質的には最大7個、好ましくは6個、より好ましくは5個の水素結合供与体を含む特性)によって、これらの医薬品は、標的生物(好ましくはヒト、または霊長類、ラット、マウス等の試験動物)等のインビボシステムでの予防、治療、フォローアップ、および/または診断において非常に有用である。他の好ましい分離剤は、表Dに開示している。
【0051】
本発明の他の好ましい実施態様では、新規性のある分離剤は、一般式Iを有する。ここで、メソメリズム相互交換が生じる(R2とR3は相互交換可能とみなされる)。
式I
【化1】

式中、Xは非水素原子、好ましくは硫黄原子である。Rはアルキル残基またはアリール残基、好ましくは1−ナフチルメチル残基である。RとRは水素原子またはアルキル残基またはアリール残基であり、RとRは好ましくは2つの水素原子、2つのメチル残基、1つのベンジル残基と1つのメチル残基、または1つのベンジル残基と1つのtert−ブチル残基である。特に好ましくは、RとRは2−チアゾリジニル残基とメチル残基またはtert−ブチル残基であるか、または1−ナフチル残基と、イソプロピル残基、シクロヘキシル残基、ベンジル残基、またはメチル残基である。したがって、本発明は、薬剤または医薬活性物質としての使用に用いられる一般式Iによる化合物にも関する。本発明の他の好ましい実施形態は、本明細書に開示した疾病の治療用の一般式Iによる化合物の使用にも関する。
【0052】
本発明の他の好ましい実施態様では、新規性のある分離剤は、一般式IIを有する。ここで、R〜Rは上記式Iと同じ意味を有する。
式II
【化2】

【0053】
比率1/5は、Rに隣接する窒素の塩基性に依存する。有利なことに、R残基とR残基との位置は構造2から相互交換可能である。例えば塩酸塩等のプロトン化した化合物は、AKAP−PKA相互作用の分離剤として特に好ましく使用される。例えば化合物JG5(表を参照)等のように複数の塩基中心を有する化合物の場合、二塩酸塩が特に好ましい。リード構造990が好ましい(表を参照)。

【化3】

【0054】
脂肪酸残基の大きさが増大するにつれて、IC値は減少する。また、JG31(表を参照)の場合のように、アントラセンは追加の効果を示す。これは、アミジンへの電子シフトが大きく塩基性が大きいことを意味する。アミジン上の電子密度は特定の使用の場合に重要であるので、R残基とR残基とは電子供与体である(化合物6、7のオルト/パラ−メトキシフェニル、オルト/パラ−ジアミノフェニルを参照)。
【0055】
本発明による分離剤の特定の分解産物も有利である。任意の条件下において、チオカルバミジン(例えばNo.990)は、例えば疾病治療用にも使用可能なチオールとグアニジンとを形成するアミン等の求核試薬に対して不安定である。したがって好ましい実施態様では本発明は、特にAKAPとPKAの分離剤として、及びインビボとインビトロとにおける基本研究におけるツールとしての薬剤において使用される、環状イミダゾール(6)とジヒドロイミダゾール(7)とに関する。R残基とR残基は、アリール残基または脂環式残基であることが好ましい(SM61、SM63、SM65)。また、アミジンにおける6員環も好ましい(SM71に基づく化合物8)。
【0056】
アミジンが硫黄から分離して、ナフタチレン(化合物9)の2つの位置に付着する場合も有利である(化合物9)。有利な一実施態様では、距離N−Sは実質的に変わらないままである。R1はS−Rを含むのが好ましい。それにより、アミジン上の電子密度が活性化合物の電子密度と比較可能になるからである。Rはアルキル残基であることが好ましい。したがって、異性体10も好ましい。
【化4】

【化5】

【0057】
したがって、一般式11、12による分離剤が好ましい。

【化6】

【0058】
本発明の特許請求の範囲は、本質的に化合物、ならびにそのHCL塩が含まれる。好ましい実施態様では、RとRは、非依存的に以下であり得る。
‐ 鎖の長さがC〜Cである、非環式脂肪族化合物。
‐ 環の大きさがC〜Cであって、それぞれ独立的に含まれている1つ以上のOまたはNタイプのヘテロ原子を有する脂環式化合物。
‐ 芳香族化合物(単環式、ヘテロアリール、1〜3置換単環式残基)。
【0059】
電子供与基(例:OMeまたはMMe)については上記に示した。複素環式芳香族化合物の使用は、バイオアベイラビリティに関して特に有利である。また、鎖の長さがC〜Cであり互いに非依存的に形成されるRとRと同じ基を有するRを有する、非環式脂肪族タイプのリンカー基として、Xを有する構造12を使用することも有利である。
【0060】
上記化合物の化学的性質については、以下のことに留意されたい。すなわち、硫黄および隣接する位置10は、本発明の一部の実施態様では、酸化を受けやすい。硫黄のみが酸化される場合、活性体がリード構造の骨格を有さず(上記を参照)、スルホキシド2とスルホン3とのいずれかを有することが有利である。更に、位置10は硫黄酸化後に酸性となり、脱プロトン化後に例えばクレイセン(Claisen)アルドールを添加することも考えられる。後者の反応は、化合物16として酢酸成分を使用して例証される(下記を参照)。Rが水素原子である場合、分子内閉環も生じる。
【0061】
有利なことには、上記の2つの位置(硫黄とNo.10)とは反応性が高い。
【0062】
構造11を有効にするには、位置10を調節しないことが好ましい。上記のとおり、位置10は酸性であり得るし、以下で述べるとおり、酸化を受けやすい可能性がある。バルキネスに有意な変化がないという有利な点があるので、この位置には、生理学的条件下の多様性を防止して活性を有利に維持するフッ素原子を置くことができる。したがって、特に構造16は、早期喪失から保護される。

【化7】


【化8】

【0063】
位置10の酸化により生じた生成物(酸化生成物、化合物18)の好ましい実施形態として、水を除去した後構造8としてのアセチル体を添加することによって得た生成物が20で実証される(下記を参照)。有利なことに、位置10は置換可能である。特に、これには、化合物21に示したようにR残基とR残基とが含まれ、またこれはRとRとのエクステンションとしてFであってもよい。NとR/Rとの間のスペーサに関する上記説明と硫黄の酸化に関する上記説明は、下記の化合物にも適用される。
【化9】

【化10】

【0064】
例えば、R、R、R、Rは、単独でアルキル残基及びアリール残基を表すことができる。
【0065】
したがって、1−置換ナフタレンを使用することが好ましい。標的分子の親油性ポケットにおいて、例えば芳香二環ユニット等の親油性側基への親和性は、物質の受容性に有意に寄与する。したがって、化合物22、23、24による一般式を有する化合物も好ましく、同等な親和性を有利に示す。

【化11】

【0066】
有利な実施態様では、化合物22〜24による該二環ユニットにおいては、Xが酸素であるが、N、NH、またはSであってもよい。三環システムも好ましい(表中の化合物SM39、SM44も参照)。
【0067】
他の好ましい実施態様では、グアニジンが好ましい。このとき、RとRは、シアノである(例えば、化合物25)。



【化12】

【0068】
硫黄アミジンも好ましい。これは、インビボとインビトロでは異なる安定性を有することがある(化合物11によるリード構造)。経口投与の場合、本発明による化合物は、1mg/mlの水溶性を有する。このときpHは2〜7であることが好ましい。1日投与量200〜400mgを注入する場合、注射器1本で溶液400mlの注入を避けるために、水溶性はさらに高くされる。
【0069】
したがって、ナフタレンがキノリンまたはイソキノリンで置換されている化合物であって、例えば水溶性を高めるためにHCL塩として投与可能な化合物も好ましい。
【化13】

【0070】
したがって、一般式IIIの分離剤が好ましい、すなわち、構造1'と式2'(前者と平衡状態)による分離剤が好ましい。
【化14】

【0071】
2'と2''がS−C単結合を中心として回転すると、1'と比較して、R、Rの場合と同じく、二重結合と水素が一致する(逆の場合も同じ)。
【0072】
他の好ましい分離剤は、図19および/または図20による一般式を有する。好ましい分離剤は、従来技術で既知のペプチド阻害剤または分離剤よりも多くの驚くような利点を有する。まず、まず、本発明による非ペプチド分離剤は、新たな分野の問題に対応すべく、従来技術とは異なるものである。本発明による構造は、これまで技術的に徒労を重ねてきた長く未解決のままの、緊急のニーズを満たすものである。特に、解決法の単純性は発明力を示しており、従来技術のより複雑な記述にとってかわるものである。上記及び下記の疾病の治療に関する科学技術の発達は、様々な方向において進んでいる。したがって、本発明の記述は、該発達を正当化し、問題解決において技術的に間違った考えを排除することが達成されることを意味する。より具体的には、本発明の記述によって達成された技術的進歩は、改善、性能向上、コスト削減、時間短縮、材料、作業工程、達成しにくいコストまたは原材料、信頼性向上、不具合の排除、すぐれた品質、メンテナンスフリー、高効率、高収率、技術範囲の拡大、更なる手段の提供、疾病治療における他の方法の提供、新しい分野の創出、初の問題解決、保管手段の提供、代替方法、合理化の範囲、自動化及び縮小化、有用薬剤の範囲の拡大においてみられる。したがって、本発明の記述は、様々な可能性から選択されたものの結果が予測不能である場合において好都合な選択である。本発明の記述は、技術的に称賛され、経済的成功とライセンス発行とにつながる新しい分野の技術である。特に、新規性のある分子は、cAMP依存シグナル伝達の異常または欠陥によって引き起こされる疾病の治療に使用可能である。上記の疾病に関する表現の特徴付けは、治療がなされる疾病の機能定義を行う目的ではない。むしろ、区分化cAMP依存シグナル伝達の変化または欠陥に関する疾病としての該表現は、本発明の意味における明確に定められた疾病群のための総称としての働きを有する。すなわち、当業者は、どの種類の疾病が総称による定義で網羅されるか、および本発明による内容に関する特許請求の範囲に含まれるかを予測できる。したがって、総称に含まれる個々の特定疾病を記述することは、試験を記載せずに説明可能なわずかな数の治療法を主張するものではなく、上記シグナル伝達の異常に関係する特許請求の範囲にある疾病を明確にし特定するものであるにすぎない。本発明の分子を使用して、上記のAKAPタンパク質とPKA分子との相互作用に影響を及ぼすことが可能である。具体的には、上記のAKAP18タンパク質とPKA分子との相互作用、特に上記AKAP18デルタタンパク質とPKA分子との相互作用(PKA分子との、特に、PKA分子のサブユニットとの、特に好ましくはRIIアルファおよび/またはRIIベータ分子との)を調節可能である。すなわち、例えば、AKAP79、グラビン、AKAP82または上記他のAKAP、特にAKAP18アルファ/ベータ/ガンマ/デルタ、特に好ましくはAKAP18デルタのPKAとの間の相互作用を調節、特に阻害することができる。好ましい態様では、分離剤の阻害作用は100%であるが、90%、80%、70%、60%、50%、40%も好ましく、より好ましくは30%、特に好ましくは20%、特に10%である。上記阻害率のそれぞれが好ましい。
【0073】
一方において本発明の分離剤は新しい分子であり、他方において好ましい分子は、初めて発見された薬剤における発見使用として開示される化合物である。
【0074】
本発明の他の好ましい実施態様では、新しい分子、特に薬剤分野における新しい分子は、疾病の治療用の分子である。該疾病は、発明の定義にしたがい、区分化cAMP依存シグナル伝達に関する疾病の総称の範囲に含まれる。
【0075】
特に好ましい実施態様では、新しい分子は、尿崩症、膵性糖尿病、肥満、浮腫、慢性閉塞性肺疾患、AIDS、統合失調症、肝硬変、心不全、冠状動脈性心臓病、筋緊張亢進、十二指腸潰瘍および/またはぜんそくから選択される疾病に関する。
【0076】
表B、好ましくは表CまたはDによる化合物は、従来技術では説明されていない新しい分子である。開示される他の化合物(好ましくは表Aに記載の化合物)は、治療法または診断法の分野において有用な化合物として開示されていない。ただし、実際これらの化合物は、該化合物がアーカイブまたはライブラリーに記録されているが未登録のため一般に未認証であるという事実によってのみその新規性が得られるとしても、完全に新しい化合物として解釈することができる(特に表A、Bを参照)。
【0077】
本発明は、本発明による非ペプチド分子を標的とする認識分子に関する。本発明の非ペプチド分子の開示によって、当業者は、過度な努力なく通常試験を使用して新規性のある非ペプチド分子の認識分子を得ることができる。したがって、認識分子は明確に完全に開示することができる。本発明によれば、認識分子は、抗体、錯体、キレート剤、またはペプチドであって、これらは、その生物学的活性、すなわちAKAP−PKA相互作用の調節を損なわないようにして、非ペプチド分離剤と相互作用する。認識分子は、インビボまたはインビトロシステムにおける分離剤の検出を可能にする。このため、認識分子に検出プローブを付与することが有利である。該プローブは、当業者にとって周知である。
【0078】
本発明は、細胞、細胞集合体、組織培養物、組織パッチを対象とする。更に本発明は、本発明の分離剤および/または本発明の認識分子を含むマウス、ラット、キャトル、ウシ、ロバ、ヒツジ、ラクダ、ヤギ、ブタ、ギニアピッグ、ハムスター、ネコ、サル、イヌ、ヒト等の生物を対象とする。これらの細胞、組織培養物、または生物を使用すれば、例えば疾病の原因や診断・治療の考えられる方法に関して様々な疾病の調査を行うことができる。好ましい疾病は、ぜんそく、筋緊張亢進、心臓肥大、冠状動脈性心臓病、十二指腸潰瘍、心不全、肝硬変、統合失調症、AIDS、膵性糖尿病、尿崩症、肥満、慢性閉塞性肺疾患、学習障害、浮腫(病理的水貯留)、感染症、および/または癌である。例えば、本発明の認識分子を有さないが本発明の分離剤または両方の構造を同時に有する疾病の調査において生物を使用することも好ましい。本発明の内容の開示に基づくと、当業者はどの種類の分離剤または認識分子をどの濃度で使用すべきか分かるであろう。理由は、後者は、通常試験を使用し、本発明に開示の技術内容と例えば参考文献等のような記載の従来技術から直ちに明らかに得られるからである。生物は、PKA−AKAP相互作用を改良する、好ましくは分離する医薬品の開発にも使用可能である。明らかに、新規性のある分離剤自体を、医薬品用試験分子として使用することは可能であるが、医薬品開発の源であるリード構造として使用することも可能である。生物によって更に、PKA−AKAP相互作用が重要な役割を果たす代謝プロセスについてのインビボ調査、あるいはPKA−AKAP相互作用が例えば細胞変性等の特定の病原性変化などの特定の事象に関係しているかどうかについてどのプロセスを明確にする必要があるかについてのインビボ調査、も可能になる。新規性のある分離剤または認識分子は、組み合わせ方法を用いた本発明による化合物から得た修飾分離剤または修飾認識分子であってもよい。本質的に、本発明の分子がリード構造として働くこのようにして得た構造は、本発明による分離剤と認識分子との機能的アナログである。「機能的アナログ」とは、同様にして得た相同構造が、AKAPとPKAとの相互作用または特定の疾病に対するそれらの有意性について結論を与えることを意味する。したがって、本発明において機能的アナログ分子は、本質的に同じ効果を有するものとして当業者が識別できる分子である。したがって、本発明は、本質的に同じルートで本質的に同じ機能を有する修飾分子であって、本質的に新規性のある分離剤または認識分子と同じ結果を与える修飾分子を対象としている。更に本発明は、特許請求の範囲にある分子と同じ効果を達成すると当業者にとって明らかな同等な化合物も対象とする。したがって、上記機能的アナログ構造は、リード構造として本発明の分離剤または認識分子を用いて得られる。構造に基づいて組み合わせた薬剤またはその他の薬剤の設計を利用して、機能的アナログを得ることができる。用語「薬剤の設計」の定義は、当業者には明らかである。例えば、参照として「Wirkstoffdesign. Der Weg zum Arzneimittel」、「Lehrbuch der klinischen Pharmazie」その他の標準文献が挙げられる。
【0079】
したがって、本発明は、新規性のある分離剤、またはキレート剤、錯化剤または抗体の形態における分離剤を標的とする認識分子を含む医薬品に関する。これは任意選択として医薬的に許容可能なキャリアおよび/または助剤を含む。例えば、助剤はアジュバント、ふ形剤、またはその他である。例えばキャリアは、溶加剤、希釈剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、溶出抑制剤、吸収促進薬、湿潤剤、吸収剤および/または潤滑剤であり得る。この場合、すなわちもしキャリア、アジュバントおよび/またはふ形剤が(例:リポソーム)新規性のある分離剤またはその認識分子とともに存在する場合、これらは薬剤または医薬品と呼ばれる。
【0080】
本発明の他の好ましい実施態様では、本発明による医薬品は、ゲル、ポウドレージ(poudrage)、粉末、タブレット、持続放出タブレット、予混合剤、乳化剤、調合製剤、ドロップ剤、濃縮物、粒状、シロップ、ペレット、ボーラス、カプセル、エアロゾル、スプレーおよび/または吸入の形態にて調製され、および/またはこの形態にて使用される。タブレット、被覆タブレット、カプセル、ピル、及び粒状は、従来のコーティングと膜を施すことができる(任意選択として乳白剤)。また、反応物質の放出が、エンド重合物質とろう状物質とが包埋剤として使用可能な、腸管の特定領域にのみ(任意には遅延的に)起きるようにして構成することもできる。
【0081】
例えば、本発明の薬剤は、経口にて許容可能な容量の形態にて経口投与にて使用可能である。これには、カプセル、タブレット、水性懸濁液、溶液といった形態が含まれる。経口投与用のタブレットの場合、頻繁に使用されるキャリアの例としては、乳糖やコーンスターチが挙げられる。一般に、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤も添加可能である。使用可能なカプセル、希釈剤の形態をとる経口投与には、乳糖、乾燥コーンスターチが含まれる。水性懸濁液の経口投与において、活性物質は、乳化剤と懸濁化剤と結合する。更に、特定の甘味料および/または着香量および/または着色剤を必要に応じて添加してもよい。
【0082】
活性物質は、マイクロカプセル状にても存在可能である。任意選択として、1つ以上の上記のキャリア剤をともに用いてもよい。
【0083】
活性物質に加えて、座薬は従来の水溶性/非水溶性キャリアを含むことができる。例としては、ポリエチレングリコール、脂肪(例:ココア脂、高級エステル(例えば、C16脂肪酸を含むC14アルコール)、またはこれらの物質の混合物が挙げられる。
【0084】
活性物質に加えて、軟膏、ペースト、クリーム、ゲルは、従来のキャリアを含んでよい。
例としては、動物性脂肪、植物性脂肪、ワックス、パラフィン、スターチ、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコンベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛、またはこれらの物質の混合物が挙げられる。
【0085】
活性物質に加えて、粉末やスプレーは、従来のキャリアを含んでもよい。例としては、乳糖、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物が挙げられる。更に、スプレーは、クロロフルオロカーボン等の従来のスプレー用高圧ガスを含んでもよい。
【0086】
活性物質に加えて、すなわち本発明による化合物に加えて、溶液と乳剤は、従来のキャリアを含んでよい。これらには溶媒、可溶化剤、乳化剤が挙げられる。これらの例としては、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に綿実油、ピーナツ油、コーン油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油)、グリセロール、グリセロールホルマール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物が挙げられる。非経口用としては、溶液と乳剤も、血液等張液において存在可能である。
【0087】
活性物質に加えて、懸濁液は液体希釈剤等の従来のキャリアを含んでもよい。これは例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、懸濁化剤等であって、例としては、エトキシレートイソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタ水酸化物、ベントナイト、寒天、トラガカント、またはこれらの物質の混合物が挙げられる。
【0088】
薬剤は、水性滅菌注射液または油性懸濁液等の凍結乾燥滅菌注射可能製剤の形態にて存在可能である。該懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤(Tween 80等)や懸濁化剤を使用して、周知の方法を使用して調製することもできる。滅菌注射製剤は、滅菌注射液でもよいし、非毒性非経口許容希釈剤/溶媒中の懸濁液(例:1,3−ブタンジオール中溶液)であってもよい。使用可能な許容可能なふ形剤と溶媒としては、マンニトール、水、リンガー溶液、等張食塩水が挙げられる。更に、滅菌非揮発性油は、溶媒または懸濁化剤として従来使用されている。任意の低刺激性非揮発性油(合成モノ/ジグリセリドを含む)は、この用途で使用可能である。オレイン酸とそのグリセリド誘導体等の脂肪酸は、注射剤の製造において使用可能である。例としては、オリーブ油やヒマシ油等の天然で、医薬的に許容可能な油を特にポリオキシエチレン化した形態で使用可能である。該油性の溶液や懸濁液は、希釈剤や分散剤として、長鎖アルコールやその類似アルコールも含むことができる。
【0089】
上記の製剤形態は、着色剤、保存剤、着香剤、風味付け添加剤も含んでよい。例えば、ペパーミント油、ユーカリ油、サッカリン等の甘味料が挙げられる。本発明による化合物は、混合物全体の約0.01〜99.9wt%、より好ましくは約0.05〜99wt%の濃度で上記製剤において存在すべきである。
【0090】
上記化合物に加えて、上記製剤は更に、医薬活性物質を含んでもよく、該医薬活性物質に加えて、塩、緩衝剤、ビタミン、糖誘導体(特にサッカライド)、酵素、野菜抽出物、その他を含んでもよい。緩衝剤と糖誘導体とは、皮下投与中の疼痛を有利に軽減する。ヒアルロニダーゼ等の酵素は、効果を増大させる。上記の製剤は、周知の方法による通常の手段にて製造される。例えば、活性物質とキャリアとを混合させることによる。
【0091】
上記の製剤は、ヒト及び動物に対して、経口、経直腸、非経口(静脈内、筋内、皮下)、嚢内、経膣、腹腔内、局所性(粉末、軟膏、ドロップ)等にて投与可能であり、下記の疾病の治療に使用される。注射液、経口治療用の溶液及び懸濁液、ゲル、ブルーアップ製剤、乳剤、軟膏、またはドロップは、適切な製剤として可能である。局所治療については、眼科薬、皮膚病薬、銀塩及び他の塩、点耳、眼軟膏剤、粉末または溶液を使用可能である。動物については、適切な製剤において、食物や水を介して摂取可能である。更に、薬剤はプラスチック(局所治療にはプラスチック鎖)、コラーゲン、または骨セメント等の他のキャリアに組み込むこともできる。
【0092】
本発明の別の好ましい実施態様では、医薬品中に、化合物を濃度0.1〜99.5wt%、好ましくは濃度0.5〜95wt%、より好ましくは濃度20.0〜80wt%にて組み込む。すなわち、化合物は、上記医薬品(タブレット、ピル、粒状、その他)中に、好ましくは混合物全体の0.1〜99.5wt%の濃度で組み込まれる。当業者であれば、活性物質の量、すなわちキャリア物質と結合して単回投与形態を形成するための新規性のある化合物の量が、治療を受ける患者と投与形態の種類によって変わることを承知しているであろう。患者の状態がいったん向上すると、医薬品中の活性化合物の比率は緩和することができ、疾病を停止させる維持量とすることができる。症状に応じて、続いて、投与の量や頻度、またはその両方を改善した状態が維持されるレベルまで減少させることができる。いったん症状が望ましいレベルまで軽減されると、治療は終了すべきである。ただし、疾病の症状が再発した場合には、患者が長期的に間欠的治療を必要とする場合もある。したがって、化合物の比率、すなわち、医薬品の混合物全体におけるその濃度、ならびにその組成または組合せは可変であり、当業者によって修正・適合可能である。
【0093】
本発明の化合物は、様々なルートで生物、好ましくはヒトまたは動物に接触させることができることは、当業者であれば分かるであろう。更に、当業者であれば、特定の医薬品が様々な投与量で適用可能なことを熟知しているであろう。適用は、疾病を可能な限り効果的に撃退するように、あるいは該疾病の発病が予防的投与によって防止されるように行うべきである。適用における濃度と種類は、通常試験を使用して当業者が決定できる。本発明の化合物の好ましい適用は、粉末、タブレット、液体混合物、ドロップ、カプセル等の形態での経口投与、座薬、溶液等の形態での経直腸投与、注射、輸液、溶液の形態での非経口投与、軟膏、パッド、包帯、経膣等の形態での局所投与である。本発明による化合物の接触は、予防薬または治療薬において行われることが好ましい。
【0094】
例えば、選択された適用形態、投与量、投与計画、アジュバントの選択等に関する適性は、患者すなわちヒトまたは動物由来の血清アリコートを採取し、治療手順の過程において疾病の指標の有無を試験することによって決定することができる。代替的にあるいは付随的に、腎臓・肝臓の状態、及びT細胞や免疫セステムの他の細胞の量、疾病・回復期の過程を特徴付け実証する他のマーカーの量は、従来方法で決定できる。これにより、患者の免疫構造、特に代謝にとって重要な組織の構造について一般的検査を行うことができる。更に、患者の臨床状態を、望ましい効果について観察することができる。治療効果が不十分であった場合、患者は、本発明の医薬品を使用して更に治療を受けることができ、構造全体を向上させると予測される他の既知の薬剤で任意に改善することができる。明らかに、医薬品のキャリアまたはふ形剤を修飾すること、または投与ルートを変更することも可能である。
【0095】
経口摂取に加えて、例えば筋肉注射、皮下注射、血管内への注射を、本発明による化合物の他の好ましい治療投与ルートとして想定することができる。同時に、カテーテルまたは外科用チューブを介した投与を使用することができる。例えば、腎臓、肝臓、脾臓、腸、肺等の特定の臓器に直接つながるカテーテルを介した投与が挙げられる。
【0096】
好ましい実施態様では、本発明による化合物は、24時間につき体重1kg当り総量が好ましくは0.05〜500mg、より好ましくは5〜100mg使用され得る。有利なことに、該量は、異常、または応答性・病的・生理学的状態の症状を予防または改善するために使用される治療用の量である。
【0097】
明らかに投与量は、受け手の年齢、健康状態、体重、疾病の程度、必要な同時治療の種類、治療頻度、望ましい効果と副作用の種類による。好ましい結果をあげるためには、単回投与量または複数投与量として1日につき体重1kg当り0.005〜500mg、好ましくは0.05〜500mgを適用可能である。特に、医薬品は通常、1日につき約1〜10回の投与回数、または代替的にあるいは追加的に持続注入される。該投与は、慢性用の治療または急性用の治療として適用可能である。単回投与形態を行うためのキャリア物質と組み合わされる活性物質の量が治療を受ける宿主と特定の投与形態とによって変化してもよい。好ましい態様では、1日当たりの投与量は、2〜5回の投与回数で、各投与につき体重1kg当り0.05〜500mgの活性物質含有量を含むタブレット1〜2錠で提供される。活性物質はより高含有量であってもよい(例えば、体重1kg当たり5000mgの濃度を上限とする)。タブレットは、持続放出錠であってもよい。この場合、1日当たりの投与回数は、1〜3回に低減される。持続放出タブレットの活性物質含有量は3〜3000mgであってよい。活性物質が上記のように注入によって投与される場合、宿主は、1日当たり1〜10回本発明の化合物に接触させるか、持続注入を行うことが好ましい。この場合、1日につき1〜4000mg量が好ましい。1日当たりの好ましい総量は、ヒト薬剤と動物薬剤との両方において有利なことが分かった。上記投与量を変えることが必要な場合もあり、これは治療を受ける宿主の性質と体重や、疾病の種類と深刻度や、薬剤の調製と適用の種類や、投与の時間間隔に依存する。したがって、上記量より低量を生物に接触させることが好ましい場合もあれば、上記の活性物質量を上回ることが好ましい場合もある。当業者は、各事例において必要な最適投与量と、活性物質の適用の種類を決定可能である。
【0098】
本発明の他の特定の好ましい実施態様では、医薬品は、体重1kg当り1〜100mg、特に2〜50mgの単回投与量にて使用される。1日当たりの総量(上記)と同じく、単回投与量は、当業者によって変更可能である。同様に、本発明によって使用される化合物は、上記単一濃度・製剤を食餌や飼料配合や飲み水と組み合わせて動物薬において使用することも可能である。単回投与量は、1回の投与で提供される活性物質量であって、1日投与量全体、または1日投与量の半分、または1日投与量の3分の1、または1日投与量4分の1に通常対応する活性物質量を含むことが好ましい。したがって、投与単位には、1、2、3または4、またはそれ以上の単回投与量、または0.5、0.3、0.25の単回投与量を含むことが好ましい。好ましい態様では、本発明の化合物の1日当たりの投与回数は、2〜10回、好ましくは2〜7回、より好ましくは3〜5回である。言うまでもなく、本発明による医薬品の持続注入も可能である。
【0099】
本発明の特に好ましい実施態様では、本発明の化合物の各経口投与において1〜2錠のタブレットを投与する。本発明によるタブレットは、当業者が周知のコーティングや膜を施して提供可能であり、または宿主の好ましい特定の領域にのみ活性物質が放出されるように構成することも可能である。
【0100】
本発明の他の実施態様では、本発明による化合物が任意選択的に、複数が互いに結合していたり、キャリアに結合していたり、リポソームに密閉されていたりすることが好ましい。本発明の意味において、該リポソームにおける密閉は、本発明の化合物がリポソームの内部に存在することを必ずしも意味するものではない。例えば、化合物が外膜にアンカリングされている場合もあるように、本発明における「密閉」とは、本発明の化合物がリポソームの膜に接していることも意味する。リポソーム内やリポソーム上に新規性のある化合物がこのように存在することは、リポソームが免疫刺激効果を有するものとしてリポソームを当業者が選択する場合に、有利である。リポソームの免疫刺激効果を変更する様々な方法は、DE 198 51 282に開示の技術において当業者には周知であろう。脂質は、エステルやアミド等の通常の脂質でもよい。あるいはセレブロシド、ガングリオシドの糖脂質、スフィンゴ脂質やリン脂質等といった複合脂質でもよい。
【0101】
本発明による医薬品で治療可能な好ましい疾病は、以下の疾病から構成される群から選択される。すなわち、AIDS、ニキビ、タンパク尿症(タンパク尿)、アルコール禁断症候群、アレルギー、脱毛症(髪の喪失)、ALS(筋委縮性側索硬化症)アルツハイマー病、レチナール黄斑老年性変性、貧血、不安症候群、炭そ病(milzbrand)、大動脈硬化、閉塞性動脈疾患、動脈硬化、動脈閉塞性疾患、側頭動脈炎、動静脈フィステル、関節炎、関節症、ぜんそく、呼吸不全、自己免疫疾患、房室ブロック、アシドーシス、脱出椎間板、風膜炎症、膵臓癌、ベッカー型筋ジストロフィー、良性前立腺過形症(BPH)、膀胱癌、血友病、気管支腫瘍、乳癌、BSE、バッドキアリ症候群、多食症、滑液包炎、バイラー症候群、バイパス、クラミジア感染症、慢性疼痛、肝硬変、脳振とう症、クロイツフェルトヤコブ病、腸癌、腸結核、うつ、尿崩症、真性糖尿病、若年性真性糖尿病、糖尿病性網膜症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、十二指腸癌、進行性筋ジストロフィー、異栄養、エボラ、湿疹、勃起障害、肥満、繊維症、頸癌、子宮癌、脳内出血、脳炎、毛髪欠損、片麻痺、溶血性貧血、血友病、ペットアレルギー(獣毛アレルギー)、皮膚癌、帯状ヘルペス、心筋梗塞、心不全、心臓弁膜症、脳転移、脳卒中、脳腫瘍、睾丸癌、虚血、カーラー病(形質細胞腫)、ポリオ(急性肺白髄炎)、骨の希薄化、接触湿疹、麻痺、肝硬変、白血病、肺線維症、肺癌、肺水腫、リンパ節癌(ホジキン病)、リンパ肉芽腫症、リンパ腫、狂犬病、胃癌、乳癌、髄膜炎、嚢胞性線維症、多発性硬化症(MS)、心筋梗塞症、神経皮膚炎、神経線維腫症、神経腫瘍、腎臓癌、(腎臓細胞癌腫)、骨粗しょう症、膵臓癌、肺炎、多発性神経障害、性的能力異常、全身性進行性硬化(PSS)、前立腺癌、じんましん、対麻痺症候群、外傷、直腸癌、胸膜炎、頭蓋大脳外傷、膣癌、副鼻腔炎、食道癌、振戦、結核、腫瘍疼痛、やけど、中毒、ウイルス性髄膜炎、更年期障害、軟部組織の肉腫、軟部組織の腫瘍、脳血液循環異常、および/またはCNS腫瘍から選択される。
【0102】
他の実施態様では、本発明の医薬品は、耳・鼻・喉領域、肺、縦隔、消化管、泌尿生殖器系、婦人科系、胸部、内分泌系、皮膚、骨と軟組織肉腫、中皮腫、メラノーマ、中枢神経系の新生物、幼児の癌性疾病または腫瘍疾病、リンパ腫、白血病、腫瘍随伴症候群、原発腫瘍の転移(CUP症候群)、腹膜癌症、免疫抑制関連悪性腫瘍、および/または腫瘍転移といった癌性疾病または腫瘍疾病の群から選択された癌性疾病の治療にも使用可能である。
【0103】
更に具体的には、腫瘍は、以下の種類の癌を含む:乳腺腺癌、前立腺腺癌、結腸腺癌。気管支から発生する肺癌のすべての形態。骨髄癌、メラノーマ、ヘパトーマ、神経目細胞腫。乳頭腫。アプドーマ、コリストーマ、ブランキオーマ。悪性カルチノイド症候群。カルチノイド心疾患、癌腫(例えば、ウォーカー癌腫、基底細胞癌腫、鱗状基底細胞癌腫、ブラウン−ピアス癌腫、腺管癌腫、エールリッヒ腫瘍、上皮内癌腫、癌性−2癌腫、メルケル細胞癌腫、粘膜癌、非小細胞性気管支癌腫、燕麦細胞癌腫、乳頭癌腫、硬性癌腫、気管支肺胞癌腫、気管支癌腫、扁平上皮細胞癌腫、及び移行上皮癌腫)。組織球性機能障害、白血病(例えば、B細胞白血病、混合細胞白血病、ヌル細胞白血病、T細胞白血病、慢性T細胞白血病、HTLV−II関連白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、マスト細胞白血病、骨髄性白血病)。悪性組織球増殖症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、孤立性プラズマ細胞腫瘍。細胞内皮症、軟骨芽細胞腫。軟骨腫、軟骨肉腫。繊維肉腫。巨細胞腫。組織球腫。脂肪腫。脂肪肉腫。白血肉腫。中皮腫。粘液腫。粘液肉腫。骨腫。骨肉腫。ユーイング肉腫。滑液肉腫。腺繊維腫。腺リンパ腫。癌肉腫、脊索腫。頭蓋咽頭腫、未分化胚細胞腫、過誤腫。間葉腫。中腎腫、筋肉腫、エナメル上皮腫、セメント腫。歯牙腫。奇形腫。胸腺腫、じゅう毛芽細胞腫。腺癌、腺腫。胆管腫。コレステリン腫。円柱腫。嚢胞腺癌、嚢胞腺腫。粒状膜細胞腫。ギナドロ(gynadro)芽細胞腫。汗腺腫。島細胞腫。ライディグ細胞腫。乳頭腫。セルトリ細胞腫、卵胞膜細胞腫、平滑筋腫。平滑筋肉腫。筋肉芽細胞腫。筋腫。筋肉腫。横紋筋腫。横紋筋肉腫。上衣腫。神経節細胞腫、神経膠腫。髄芽腫、髄膜
腫。神経鞘腫。神経芽細胞腫。神経上皮腫、神経線維腫、神経腫、傍神経節腫、非クロム親和性傍神経節腫、角化血管腫、好酸球増加を伴う血管リンパ過形成。硬化血管腫。血管腫症。グロムス血管腫。血管内皮腫。血管腫。血管周囲細胞腫。血管肉腫。リンパ管腫、リンパ管筋腫、リンパ管肉腫。松果体腫。葉状嚢肉腫。血管肉腫。リンパ管肉腫。粘液肉腫、卵巣癌腫。肉腫(例えば、ユーイング肉腫、実験に基づきカポジ肉腫、マスト細胞肉腫)。新生物(例えば、骨新生物、胸部新生物、消化器系新生物、結腸直腸新生物、肝臓新生物、副膵新生物、下垂体新生物、睾丸新生物、眼窩内新生物、頭頸部新生物、中枢得神経の新生物、聴覚器官の新生物、骨盤の新生物、呼吸管や尿生殖路の新生物)。神経線維腫症と頸部扁平上皮異形成。
【0104】
他の好ましい実施態様では、治療または予防される癌性疾病または腫瘍は、以下の腫瘍の群から選択される:耳・鼻・喉領域の腫瘍(内鼻、副鼻腔、鼻咽頭、唇、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、耳、唾液腺、傍神経節腫の腫瘍を含む)。肺の腫瘍(非小細胞性気管支癌、小細胞性気管支癌を含む)。縦隔の腫瘍。消化管の腫瘍(食道、胃、膵臓、肝臓、胆嚢、胆道、小腸、結腸の腫瘍、直腸癌、肛門癌を含む)。泌尿生殖器腫瘍(腎臓、尿感、膀胱、前立腺、尿道、陰茎、睾丸の腫瘍を含む)。婦人科系腫瘍(子宮頸、膣、外陰部、子宮癌、悪性トロホブラスト、卵巣の腫瘍を含む)。卵管の腫瘍(Tuba Faloppii)。腹腔の腫瘍。内分泌器官の腫瘍。乳癌。内分泌器官の腫瘍(甲状腺、副甲状腺、副腎皮質の腫瘍、脾臓内分泌部腫瘍、カルチノイド腫瘍、カルチノイド症候群、多発性内分泌腺腫。骨・軟組織肉腫。内皮腫、皮膚腫瘍、メラノーマ(皮膚、眼球内を含む)。中枢神経系の腫瘍。幼児期の腫瘍(網膜芽腫、ウィルムス腫瘍、神経線維腫症、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫腫瘍ファミリー、横紋筋肉腫。リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、中枢神経系の原発性リンパ腫、ホジキン病を含む)。白血病(急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ性白血病を含む)。プラズマ細胞新生物。骨髄異形成症候群。腫瘍随伴症候群。未知の原発性腫瘍を伴う転移(CUP症候群)。腹膜癌。免疫抑制関連悪性腫瘍(AIDS関連悪性腫瘍(例:カポジ肉腫)、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連中枢神経系リンパ腫、AIDS関連ホジキン病、AIDS関連肛門性器腫瘍を含む)、移植関連悪性腫瘍。転移癌(脳転移癌、肺転移癌、肝臓転移癌、骨転移癌、肋膜・心膜転移癌を含む)。悪性腹水。
【0105】
他の好ましい実施態様では、治療または予防される癌性疾病または腫瘍は、以下の腫瘍の群から選択される:乳癌、胃腸腫瘍(結腸癌腫、胃癌腫、膵臓癌腫、結腸癌、小腸癌を含む)、卵巣癌腫、頸部癌腫、肺癌、前立腺癌、腎臓細胞癌腫、および/または転移。
【0106】
本発明の他の好ましい実施態様では、疾病は、本発明の意味において感染病と称され、区分化cAMP依存シグナル伝達の調節に伴う疾病から構成される群から選択される。すなわち、モンキーポックス、AIDS、炭そ病〔炭そ菌、ミルズブランド(milzbrand)〕、トリインフルエンザ、ボレリオ症、回帰熱ボレリア、ボツリヌス中毒症(クロストリジウム属)、ブルセラ症、カンピロバクター感染症、クラミジア感染症、コレラ(コレラ菌)、クロイツフェルトヤコブ病、Q熱リケッチア、クリプトスポリジウムパルブーム(parvuum)(クリプトスポリジウム症)、デング熱、ジフテリア、エボラウイルス感染症、エキノコッカス(キツネサナダムシ、イヌサナダムシ)、EHEC感染症(STEC感染症、VTEC感染症)、エンテロウイルス、腸チフス(発疹チフス)、野兎病菌(ツラレミア)、春夏髄膜脳炎、黄熱病、ランブル鞭毛虫症、リン病、流感(インフルエンザ)、ヘモフィラスインフルエンザ、ハンタウイルス、ヘリコバクターピロリ菌、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヘルペス、HUS(溶血性尿毒症症候群)、流行性角結膜炎百日咳、ポリオ(急性肺白髄炎)、アタマジラミ寄生、疥癬虫寄生、クリミアコンゴ熱、ラッサ熱、食品関連疾病、レジオネラ症、リーシュマニア症、ハンセン病、レプトスプラ症、リステリア症、ライム病、鼠径リンパ肉芽腫、マラリア(プラスモジウム感染)、マールブルグウイルス感染症、はしか、類鼻そ症、髄膜炎菌、MRSA(ブドウ球菌)、おたふく風邪、真菌症(真菌感染症)、発生率が増大している新しい感染症、ノロウイルス、オルニトーシス(オウム病)、パピローマウイルス、パラチフス熱、ペスト(ペスト菌)、肺炎球菌感染症(肺炎連鎖球菌)、天然痘、旅行関連感染症、無鉤条虫感染、ロタウイルス、風疹、RSV感染症、サルモネラ症、猩紅熱、重症急性呼吸器症候群(SARS)、性感染症、細菌性赤痢、破傷風、狂犬病、トキソプラズマ症、旋毛虫病、結核、腸チフス、水痘(水ぼうそう)、変異クロイツフェルトヤコブ病、ウイルス性出血熱、西ナイル熱、エルシニア症、および/またはダニ媒介病。本発明による医薬品は、上記の病原体、特にホスファターゼの酵素を必ずしも阻害する必要はない。医薬品は、膜かく乱効果やその他の効果を有する場合もある。本発明の意味において、好ましくは、病原体の病原性を減少させることが不可欠である。
【0107】
本発明の他の好ましい実施態様では、治療を受ける疾病は本質的に細菌によって誘導または同時誘導される。該細菌は、レジオネラ、連鎖球菌、ブドウ球菌、クレブシエラ菌、ヘモフィラスインフルエンザ、リケッチア(腸チフス)、マイコバクテリア、ウレアプラズマ、ナイセリア類(髄膜炎、ウォーターハウスフリーデリクセン症候群、リン病)、シュードモナス、ボルデテラ(百日咳)、コリネバクテリア(ジフテリア)、クラミジア、カンピロバクター(下痢)、大腸菌、プロテウス、サルモネラ、シゲラ菌、エルシニア、ビブリオ、腸球菌、クロストリジウム、リステリア、ボレリア、梅毒トレポネーマ、ブルセラ、野兎病菌、および/またはレプトスピラがある。
【0108】
更に本発明は、AKAP、好ましくはAKAP18、より好ましくはAKAP18デルタへの特異的結合、および/またはPKA、好ましくはそのサブユニット、より好ましくはRIIサブユニットへの特異的結合のための分離剤の使用に関する。
【0109】
更に本発明は、PKAのRIアルファ、RIIアルファ、RIベータおよび/またはRIIベータサブユニットとAKAPとの相互作用の阻害に関する。ここで本発明の意味における「阻害」とは、任意の種類の修飾を意味する。
【0110】
本発明の特に好ましい実施態様では、分離剤は水利尿剤、避妊薬、抗感染症薬、抗不安薬、および/または抗癌剤として使用可能である。
【0111】
他の有利な実施態様では、疾病は、以下の疾病からなる群から選択される。
任意の病因のぜんそく、すなわちアトピー性ぜんそく、非アトピー性ぜんそく、アレルギー性ぜんそく、lgE媒介アトピー性ぜんそく、気管支ぜんそく、本態性ぜんそく、原発性ぜんそく、病理生理学的異常による内因性ぜんそく、環境要因による外因性ぜんそく、未知または不明な原因による本態性ぜんそく、非アトピー性ぜんそく、気管支ぜんそく、気腫性ぜんそく、ストレス誘導ぜんそく、職業ぜんそく、細菌/真菌/原虫/ウイルス感染性によるアレルギーぜんそく、非アレルギー性ぜんそく、初期ぜんそく、「喘鳴小児性症候群」からなる群のぜんそく、
慢性/急性気管支収縮、慢性気管支炎、小気道閉そく及び肺気腫、
任意の病因の気道の閉塞性/炎症性疾病、すなわちぜんそく、塵肺、慢性好酸球性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、肺気腫または関連呼吸困難を含むCOPD、気管の不可逆性進行性閉塞の特徴を有するCOPD、ショック肺(成人呼吸器疾患症候群、ARDS)、他の医薬品による治療を原因とする気管過敏症の悪化からなる群の気道の閉塞性/炎症性疾病、
任意の病因の塵肺、すなわちアルミニウム肺症やアルミニウム肺塵、炭粉症(ぜんそく)、アスベスト肺症やアスベスト肺塵、カリコシス/石灰肺塵、ダチョウ羽毛塵の吸入によるプチロシス(ptilosis)、鉄微粒子の吸入による鉄沈着症、珪肺症またはポッターぜんそく、綿肺症または綿塵肺、滑石塵肺からなる群の肺塵、
任意の病因の気管支炎、すなわち急性気管支炎、急性喉頭気管支炎、ピーナツ誘発性気管支炎、気管支カタル、クループ性気管支炎、喀痰を伴わない気管支炎、感染性ぜんそく気管支炎、喀痰を伴う気管支炎、ブドウ球菌/連鎖球菌気管支炎、肺胞気管支炎からなる群の気管支炎、
任意の病因の気管支拡張症、すなわち円柱状気管支拡張症、嚢胞状気管支拡張症、紡錘状気管支拡張症、細気管支拡張症、嚢状気管支拡張症、喀痰を伴わない気管支拡張症、濾胞状気管支拡張症からなる群の気管支拡張症、
季節性アレルギー鼻炎、通年性アレルギー鼻炎、または任意の病因の副鼻腔炎、すなわち化膿性/非化膿性副鼻腔炎、急性/慢性副鼻腔炎、し骨蜂巣炎、前副鼻腔炎、上顎副鼻腔炎、ちょう形骨副鼻腔炎からなる群の副鼻腔炎、
任意の病因の関節リウマチ、すなわち急性関節炎、急性痛風性関節炎、原発性慢性多発性関節炎、骨関節症、感染性関節炎、ライム関節炎、プログレディエント(progredient)関節炎、乾癬性関節炎、脊髄関節炎からなる群の関節リウマチ、
炎症を伴う痛風・発熱、または炎症を伴う疼痛、
任意の病因の好酸球関連病理学的異常、すなわち好酸球増加症、好酸球肺湿潤、レフラー症候群、慢性好酸球肺炎、熱帯性肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギルス腫、好酸球肉芽腫、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、チャーグ・ストラウス症候群、結節性多発性動脈炎(PAN)、全身性壊死性血管炎からなる群の好酸球関連病理学的異常、
アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、またはアレルギー性/アトピー性湿疹、
任意の病因のじんましん、すなわち免疫関連じんましん、補体関連じんましんん、じんましん誘発物質により誘発されたじんましん、物理的刺激により誘発されたじんましん、ストレス誘発性じんましん、突発性じんましん、急性じんましん、慢性じんましん、血管神経性浮腫、コリン性じんましん、常染色体優勢/獲得型寒冷じんましん、接触性じんましん、ジアンティーン(giantean)じんましん、丘疹状じんましんからなる群のじんましん、
任意の病因の結膜炎、すなわち照射性結膜炎、急性カタル性結膜炎、急性伝染性結膜炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性結膜炎、慢性カタル性結膜炎、化膿性結膜炎、春先の結膜炎からなる群の結膜炎、
任意の病因のブドウ膜炎、すなわちブドウ膜全体またはその一部の炎症、前部ブドウ膜炎、虹彩炎、毛様体炎、虹彩毛様体炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体過敏性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、脈絡膜炎、脈絡網膜炎、乾癬からなる群のブドウ膜炎、
任意の病因の多発性硬化症、すなわち原発性プログレディエント(progredient)多発性硬化症、突発性及び症状の寛解を伴う多発性硬化症からなる群の多発性硬化症、
任意の病因の自己免疫/炎症性疾患、すなわち自己免疫−血液疾患、溶血性貧血、再生不良性貧血、再生不能性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、全身性紅斑性狼そう、多発性軟骨炎、強皮症、ウェーゲナー肉芽腫症、光線障害、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、スティーブンス・ジョンソン症候群、突発性スプルー、自己免疫過敏結腸症、潰瘍性大腸炎、クローン病、内分泌眼病、バセドー氏病、サルコイドーシス、肺胞炎、慢性過敏性肺炎、原発性胆汁性肝硬変、インスリン欠乏性糖尿病または1型膵性メリティス、前部ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎または後部ブドウ膜炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎(蔓延性)、間質性肺線維症、肝硬変症、嚢胞性線維症、乾癬性関節炎、糸球体腎炎(ネフローゼ性、非ネフローゼ性)、急性糸球体腎炎、突発性ネフローゼ、微小変化ネフロパシー、炎症性/過剰増殖性皮膚疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、家族性両性天ほうそう、紅斑性天ほうそう、落ち葉状天ほうそう、vulgaris天ほうそうからなる群の自己免疫/炎症性疾患、
臓器移植後の回種移植拒絶反応の予防、
任意の病因の過敏性腸炎(炎症性大腸炎(IBD)、すなわち潰瘍性大腸炎(UC)、膠原性大腸炎、ポリープ性大腸炎、貫壁性大腸炎、クローン病(CD)からなる群の過敏性腸炎、
任意の病因の敗血性ショック、すなわち腎不全、急性腎不全、悪液質、マラリア悪液質、下垂体性悪液質、尿毒性悪液質、心臓悪液質、副腎悪液質またはアジソン病、癌性悪液質、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症から起こる悪液質からなる群の敗血性ショック、
肝臓障害
肺高血圧症、酸素欠乏に誘発される肺高血圧症、
骨希薄化、原発性骨粗しょう症、二次骨粗しょう症、
任意の病因の中枢神経系異常、すなわちうつ病、パーキンソン病、学習記憶障害、遅発性ジスケネジー、薬物依存症、動脈硬化症認知症、ハンチントン病の随伴症状としての認知症、ウィルソン病、激越性麻痺症、視床委縮からなる群の中枢神経系異常、
感染症、特にウイルス感染。該ウイルスは、宿主におけるTNF−αの生成を増大させる、または宿主におけるTNF−αの上方調節に感応するので、複製やその他の重要な活性を妨げる。該感染症のウイルスには、HIV−1、HIV−2、HIV−3、サイトメガロウイルス、CMV、インフルエンザ、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(帯状ヘルペスや単純ヘルペスを含む)が挙げられる。
イースト菌感染症と真菌感染症。該イーストと菌類は、宿主におけるTNF−αの上方調節に感応するまたはTNF−αの生成を誘発する。特に全身性イースト菌感染症と真菌感染症の治療用に他の薬剤とともに同時投与を行う場合は真菌性髄膜炎に有効である。該他の薬剤の例としては、ポリマイシン、好ましくはポリマイシンB、イミダゾール、好ましくはクロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾールおよび/またはケトコナゾール、トリアゾール、好ましくはフルコナゾールおよび/またはイトラナゾール、ならびにアンフォテリシン、好ましくはアンフォテリシンBおよび/またはリポソームアンフォテリシンBが挙げられる。
【0112】
更に本発明は、AKAP−PKA相互作用をを改良、特に阻害する方法において、
(a)本発明の分離剤または該分離剤を標的とする認識分子を生成する工程、および
(b)前記工程(a)による少なくとも1つの生成物を、細胞、細胞培養物、組織、およ
び/または標的生物に接触させる工程
を含む方法に関する。
本発明の好ましい実施態様では、上記方法は、調節がPKAの調節RIIサブユニット、好ましくはRIIアルファサブユニットおよび/またはRIIベータサブユニットであるRIIサブユニットに有効であるという特徴を有する。
【0113】
更に本発明は、本発明の生成物、好ましくは分離剤及び前記分離剤を標的とする認識分子、および/または本発明による医薬組成物、及び任意選択にてキット内容の取扱いまたは組合せに関する情報(例:取扱説明レーフレットや、更に詳しい説明を掲載したホームページのインターネットアドレス等)を含んだ、キットに関する。例えば、キットの取扱いに関する情報は、上記疾病、特に好ましい疾病に関する治療投薬計画を備えてもよい。また、情報は、AKAP−PKA相互作用またはその分離に関して疾病を診断する上での本発明の生成物の使用に関する情報を備えてもよい。本発明のキットは、基本研究にも使用可能である。基本研究において、キットは、好ましくは代謝事象がAKAPとPKAとの相互作用の有無を伴うかどうか検出するために使用可能である。更に具体的には、本発明のキットによって、AKAPおよび/またはPKAのどのサブユニットが上記2つの分子の相互作用または該相互作用の非発生について寄与するかを決定することができる。
【0114】
有利な一実施態様では、本発明による生成物は、ペプチド、ベクター、核酸、アミノ酸、炭水化物、または脂質を含むことができる。例えば、生成物を脂肪残基に結合させて、膜透過性を変化させることが好ましい場合がある。PKA結合が異なる親和性で行われている複数の物質を比較することによって、生理学的プロセスの進行を保証するためにどの程度のPKA−AKAP相互作用が必要であるか規定する定量的表示が可能になる。特に、本発明のキットは、該生理学的プロセスの進行を調べるために使用可能である。有利なことに、本発明の分子は、PKAのRIIサブユニットを、AKAP好ましくはAKAP18特にAKAP18デルタの典型的PKA結合領域よりも強く結合させるように選択することが可能である。有利なことに、本発明の選択分子は、RIIアルファまたはRIIベータまたは特定のRIサブユニットに特異的であるので、キットは、例えばこれらの分子の相互作用に関するより詳細な見識を得るために使用することができる。より具体的には、PKAの任意の調節サブユニットをAKAPタンパク質から分離させることによって、どのタイプのPKAが、すなわちIIアルファタイプかIベータタイプかIタイプのいずれが調査対象である各プロセスに関与するかについて情報が得られる。
【0115】
本発明は、医薬品を製造する方法に関し、該方法は、以下の工程を含む。
(a)好ましくはリード構造の形態をとる、本発明による分離剤を生成する工程と、
(b)好ましくは組み合せた医薬品設計および/または構造に基づく医薬品設計を使用し
てリード構造の化学的改良を行うことによって物質を得る工程、および任意に
(c)前記AKAP−PKA相互作用に影響を及ぼす能力について前記物質を試験する工
程、および任意に
(d)医薬品として適切な物質を選択する工程。
【0116】
本発明の好ましい実施態様では、上記方法は、試験物質を、医薬的に許容可能な形態に調製することも備える。
【0117】
本発明は、上記方法から直接得た加工生成物にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0118】
以下、本発明の実施例に関して、より詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本発明の阻害剤または分離剤は、AKAPとPKAとの相互作用を調節する。以下、本発明をいくつか選択した実施例を挙げて詳細に説明する。
【0119】
1. 材料と方法
特に明記しない限り、使用した試薬と化学薬品は、Merck (Darmstadt)、Sigma (Deisenhofen)、またはCarl Roth (Karlsruhe)から購入した。
【0120】
1.1 培地及び緩衝剤

LB培地
トリプトン10g/l
NaCl10g/l
酵母エキス5g/l
pH7.0
溶液は、よく撹拌してから加圧減菌処理した。
【0121】
LB寒天
LB培地に、寒天15g/lを添加してから加圧減菌処理した。
寒天プレートを調製するため、すべての固形微粒子が溶解するまでLB寒天を電子レンジで加熱した。
摂氏40度まで冷却した後、必要な抗生物質を添加し、溶液をプレートに流し込んだ。
【0122】
アンピシリン
アンピシリンは、増殖細菌中の細胞壁合成を防ぐペニシリン誘導体である。原液の状態で(100mg/ml)−20℃で保管し、使用直前にLB寒天またはLB培地において濃度100μg/mlまで希釈した。
【0123】
20×トリス/酢酸/エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)緩衝剤(TAE)
Oの0.5l中にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス) 242g
0.5MのEDTA 40ml、pH8

酢酸 22.8ml
O 1l
【0124】
臭化エチジウム溶液
臭化エチジウム 1g
O 100ml
【0125】
6×デオキシリボ核酸(DNA)試験緩衝剤
ブロモフェノールブルー 250mg
キシレンシアノール 250mg
150mMトリス−HCl 33ml、pH7.6
グリセロール 60ml
O 7ml
【0126】
イソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG) (IPTG))溶液
IPTG 1.79g
O 50ml
【0127】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)
Na2HPO4×2H2O28.5g
NaH2HPO4×H2O5.5g
NaCl164g
H2O1l
【0128】
プロテアーゼ阻害剤混合物
トラシロール(アプロチニン1.4μg/μl
ベンズアミジン0.5mM
ダイズトリプシン阻害剤(STI)3.2μg/μl
【0129】
フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)溶液(40mM)
PMSF14mg
エタノール(ethanol)2ml
【0130】
ジチオスレイトール(DTT)原液(0.5M)
DTT771mg
H2O10ml
【0131】
溶菌緩衝剤
PBS
プロテアーゼ阻害剤混合物(1:125)
PMSF溶液(1:80)
DTT原液(1:100)
【0132】
リゾチーム溶液
リゾチーム10mg
H2O10ml
【0133】
グルタチオン溶出緩衝剤
還元グルタチオン40mM
NaCl200mM
0.2%Tween 20
トリスHcl100mM、pH8.5
【0134】
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS))サンプル緩衝剤
トリスHcl100mM、pH6.8
4%SDS
20%グリセロール
10%β−メルカプトエタノール
0.02%ブロモフェノールブルー
DTT30mM
【0135】
分離ゲル(10%)
下記の量は、ゲル2つ分の量
30%アクリルアミド(0.8%ビスアクリルアミド含む)3.75ml
トリスHcl0.75M(5.625ml)、pH8.8
20%SDS56.5μl
H2O2.5ml
10%ペルオキソニ硫酸アンモニウム(APS)79μl
N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)5.65μl
【0136】
集合ゲル
下記の量は、ゲル2つ分の量
30%アクリルアミド(0.8%ビスアクリルアミド含む)835μl
トリスHcl0.625M(625μl)、pH6.8
20%SDS25μl
H2O3.5ml
10%APS25μl
TEMED5μl
【0137】
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)泳動緩衝剤
グリシン250mM
トリス25mM
0.1%SDS
【0138】
クマシー染色液
クーマーシィブリリアントブルーG250(2g)
酢酸75ml
メタノール500ml
H2O1l
【0139】
脱染液
酢酸75ml
エタノール100ml
H2O1l
【0140】
半乾性トランスファー緩衝剤
トリス25mM
グリシン190mM
20%メタノール
【0141】
トリス緩衝食塩水(TBS)
トリスHcl10mM、pH8.0
NaCl150mM
【0142】
TBS-Tween 20(TBST)
TBSに同じ。ただし0.01%Tween 20を含む。
【0143】
赤色S染色液
赤色S2g
トリクロロ酢酸30g
スルホサリチル酸30g
H2O100ml
【0144】
ブロット
TBST中に脱脂粉乳50g/l
【0145】
ブラッドフォード試薬
クーマーシィブリリアントブルーG250(100mg)
非変性エタノール50ml
H2O800ml
溶液は一晩置いてから、リン酸100mlを添加。
H2O1l
溶液は撹拌し濾過する。
【0146】
結合緩衝剤
プロテアーゼ阻害剤混合物80μl
PMSF溶液125μl
DTT原液0.5M(20μl)
PBS10ml
【0147】
ブロッキング溶液
脱脂粉乳150mg
DTT原液0.5M(100μl)
0.05%Tween 20
PMSF溶液625μl
プロテアーゼ阻害剤混合物400μl
PBS50ml
【0148】
PBST
PBS中0.05%Tween 20
【0149】
1.2 プラスミドDNAによるコンピテント細菌の形質転換
形質転換を行うため、BL21(DE3)株のコンピテント大腸菌細胞を、CohenとWangの方法に従って生成した。
【0150】
−80℃で保管した細菌を氷上で2回解凍し、形質転換させるプラスミドDNA2ngを細菌懸濁液50μlに添加した。氷上で30分間培養した後、プラスミドDNAを得るために、細胞を45秒間42℃度で熱衝撃に暴露した。その後、37℃に予熱しておいたLB培地250μlを直ちに添加し、細胞を37℃で1時間撹拌した。これにより、細胞はプラスミドによってコードされる抗生物質耐性を示した。
【0151】
その後、細胞懸濁液30μlを除去し、抗生物質製剤を含むLB寒天上で培養した。残余物は1分間8000×gで遠心分離機にかけ、培地100μl中で再懸濁して同様に培養した。寒天プレートは、一晩37℃で培養した。次の日、コロニーを数えて、形質転換の効果を数量化した。
【0152】
1.3 プラスミドDNAの調製
GST融合タンパク質を発現させるため、クローンタンパク質コード配列を含むpGEX−4T3プラスミド(図1)を使用した。該ベクターは、細菌細胞に外来DNAを導入するために使用することができる。また、プラスミドDNAは、例えば対照用に、細胞から再分離することができる。
【0153】
プラスミドDNA5〜10μgを大腸菌から分離するため、LB培地2〜3mlに対して、寒天プレート由来の単一のコロニーを有する対応抗生物質を接種した。培養物は、一晩37℃で撹拌して培養した。細胞は13000×gで遠心分離機にかけ、上澄みを可能な限り完全に廃棄した。細菌沈殿物からのプラスミド分離は、QIAprep Spin Miniprep Kit (Qiagen GmbH, Hilden)のプラスミド少量調製手順書に従って実施した。
【0154】
タンパク質とタンパク質結合染色体DNAとを除去するため、細胞をアルカリ溶菌緩衝剤で溶解した。可溶性プラスミドDNAは、高濃度食塩水の存在下でシリカゲル(カラム内にて)に結合させ、洗浄し、最後に低濃度食塩水を使用して溶出した。
【0155】
分離プラスミドDNAは、制限エンドヌクレアーゼ消化とその後のアガロースゲル電気泳動法を用いて分析した。
【0156】
1.4 DNAの制限
(大腸菌から分離した)EcoRI等の制限エンドヌクレアーゼは、配列で規定される特定部位においてDNAを切断する。酵素は、該配列を認識し、結合し、加水分解によりDNAを切断する。大腸菌等の微生物は、外来DNAを分解する制限エンドヌクレアーゼを有する。自己DNAと外来DNAとの間の区別は、DNAのメチル化パターンを変化させることによって可能である。
【0157】
様々なメーカー(New England BioLabs (NEB), Beverly, USA; Fermentas GmbH, St. Leon-Rot; Invtrogen GmbH, Karlsruhe)から購入したエンドヌクレアーゼは、メーカーの指示に従って使用した。
【0158】
一般に、DNAの制限(制限エンドヌクレアーゼによる処理)は、1時間、37℃で実施した。典型的な反応バッチは、DNA5μg、10×酵素緩衝剤1μg、酵素溶液0.5μlを含み、滅菌水で満たして最終的な分量が10μlとなるようにした。
【0159】
培養後、反応バッチ全体を、アガロースゲル電気泳動法を用いて分析した。
【0160】
1.5 アガロースゲル電気泳動法
電気泳動法において、電圧を印加することによって、分子は、ゲル中において大きさや電荷に従って分離される。
【0161】
1%アガロースゲルを使用した。調製を行うため、1%固形アガロースをTAE緩衝剤に入れ、電子レンジで沸騰させて溶解した。透明溶液を45℃まで冷却し、アガロース溶液100mlにつき臭化エチジウム(EtBr)溶液5μlを添加した。
【0162】
EtBrは、核酸の塩基間のインターカレーションを行うので、紫外線光下での検出が可能になる。EtBr蛍光発光は、EtBrによりインターカレーションされたDNAのプリン塩基とピリミジン塩基との非局在化π電子システムによって増大される。
【0163】
次に液体ゲルをプラスチック型に流し込み、冷却重合させた。検査対象のDNAサンプルに、サンプル緩衝剤、TAE、グリセロール、ブロモフェノールブルーを添加した。グリセロールは、溶液密度を増大させるので、溶液がゲルポケットにより容易に届き、かつゲルポケットに保持されることが可能になる。ブロモフェノールブルーによって、サンプルは可視となる。
【0164】
サンプル中のDNA断片の大きさを測定するため、DNA5μlの分子量標準をゲルにつき1レーンにおける規定の大きさのDNA断片を用いて分析した(HyperLadder I, Bioline GmbH, Luckenwalde、図2)。
【0165】
電気泳動法を、30分間電圧120Vにて実施した。その後、ゲルをBoehringer MannheimのLumiImager F1で撮影し、同梱のLumi Analyst 3.0 Softwareで分析した。
【0166】
1.6 GST融合タンパク質の発現と精製
アンピシリンを含むLB培地150mlに、寒天プレート由来の形質転換クローンの大腸菌細胞を接種した。培養液は、一晩30℃で培養した(ON)(37℃において、細胞成長が非常に急速になるので、培養は次の日には対数増殖期をすでに超える。更に、培養温度を上昇させるにつれて、融合タンパク質の基本的発現が増大する。これにより、不溶性封入体が形成された結果として精製が遅延する可能性がある)。
【0167】
次の日、一晩置いた培養物20mlを、アンピシリンを含む新鮮LB培地500mlに移した。37℃における培養の間、細菌の成長を光学濃度(OD)600nmで測定することによってモニタリングした。OD600(約0.6)に達した後に、細菌は対数増殖期にあり、このときタンパク質の発現は最大であり、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質の発現は、最終濃度である1.5mMでIPTGを添加することによって誘導された。IPTGは、乳糖オペロンの合成誘導原であって、リプレッサーに結合することにより、DNAへの結合を阻害する。30分間37℃における培養を行った後、細菌を、5000×gと4℃で10分間遠心分離機にかけて沈殿させた。
【0168】
この時点から先は、以降のすべての精製工程は、プロテアーゼの活性を低く抑えるために、氷上で実施した。沈殿物は、低温溶菌緩衝剤30ml中で再懸濁させ、DTTを添加して最終濃度を5mMとした。細胞懸濁液は、French Pressure Cell Press (「French press」)を使用して3回機械的に溶菌させた。この処理中に、細菌細胞壁は高圧の結果として破壊したので、次に行う浄化剤によるプラズマ細胞膜の溶菌が容易になった。
【0169】
浄化剤として、最終濃度1%のTriton X-100を使用した。懸濁液は、30分間4℃で若干撹拌して、プラズマ細胞膜を溶解させてサイトゾルタンパク質を溶液に放出した。
【0170】
このようにして得た溶解物は、17000×gと4℃で10分間遠心分離機にかけて、細胞残屑を除去した。上澄みは、GST融合タンパク質を含んでいた。GST融合タンパク質を精製するため、上澄みは、若干撹拌しながら室温で30分間、Glutathione Sepharose 4B600μl(融菌緩衝剤中の50%懸濁液(Amersham GmbH & Co. KG, Brunswick社製))で培養した。
【0171】
インビボにおいて、GST酵素は、例えば肝細胞の細胞質ゾルにおいてグルタチオンの反応を様々な求電子疎水基質で触媒する等、解毒反応において重要な役割を果たす。タンパク質の精製において、所望のタンパク質で融合されたGSTは、セファロースビーズに結合したグルタチオンに対して高親和性と高特異性をもって結合する。セファロースは、ビーズ状のアガロース由来基材で、架橋結合して三次元網目構造を形成する。その体積が大きいので、ビーズやビーズに結合する物質は、500×gで5分間遠心分離機にかけて沈殿させることが可能である。
【0172】
この他、GST融合タンパク質は、グルタチオンセファロースで充填したカラム上における親和性クロマトグラフィーを使用して精製することもできる。通常この作用によって、高純度であるが低生産高なタンパク質が得られる。次にGST融合タンパク質を含むセファロース沈殿物を、3回洗浄した。これは、各回において溶菌緩衝剤3mlで再懸濁し再び遠心分離機にかけることによって実施した。
【0173】
グルタチオンセファロースから精製タンパク質を溶出するため、ペレットに溶出緩衝剤300μlを添加し、10分間室温で撹拌した。溶出緩衝剤は遊離グルタチオンを過剰に含んでいたので、GST融合タンパク質からグルタチオンセファロースを競合的に除去した。500×gで5分間遠心分離機にかけた後、融合タンパク質を含む上澄みを慎重にピペット操作して収集し、同量のサンプル分割単位量のグリセロールを添加して−20℃で保管した。グリセロールは、タンパク質の分解を招く氷晶の形成を防ぐ(特に複数の凍結/解凍サイクル後)。
【0174】
精製プロセスのモニタリングを行うため、サンプルは手順における様々な段階で取り出して、SDA PAGE(以下を参照)を使用して分析した。すなわち、IPTGによるタンパク質合成の誘導前後の段階、細胞溶解物の遠心分離前後の段階、グルタチオンセファロースの添加前後の段階、及びセファロース沈殿物の洗浄後の段階においてサンプルを取り出し分析した。
【0175】
1.7 SDS PAGE
タンパク質の精製と分子量とを分析するために使用した方法は、Laemmliによる、不連続ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS PAGE)である。
【0176】
分子量を検出するため、ゲルにおけるタンパク質の移動率に及ぼす電荷と三次構造との影響を除去する必要がある。これにより、タンパク質の(対数)移動性がその分子量にのみ依存するようになる。
【0177】
この状態は、天然タンパク質をSDS浄化剤で変性させることによって実質的に達成可能である。これによって、オリゴマータンパク質がそのサブユニットに解離する。SDSのスルホン酸基の負電荷は、個々のアミノ酸側鎖の固有電荷にオーバレイしているので、タンパク質の均一な負電荷が得られる。
【0178】
ジスルフィド架橋は、SDSの他にサンプル緩衝剤に存在するDTTとβメルカプトエタノールによって還元され開裂する。変性タンパク質は、大きさに従って、すなわちアミノ酸鎖の長さに従って、SDSに結合する。
【0179】
核酸のアガロースゲル電気泳動同様に、既知の分子量を有するタンパク質から成る分子量標準は、ゲルにも共通して適用される。このため、BenchMark Protein Ladder分子量標準(図3、Invitrogen GmbH, Karlsruhe社)を使用した。
【0180】
SDS PAGEは、非連続な方法といわれる。その理由は、ゲルは2つの部分、すなわち収集ゲルと分離ゲルとから成り、これらはその孔径やpH値において異なるからである。該非連続システムは、連続システムに比べて輪郭がはっきりとしたバンドが得られるので、タンパク質の大きさや分子量がより正確に測定できる。
【0181】
結合タンパク質を有するセファロースビーズは、SDS PAGEで直接使用可能である。その理由は、SDSサンプル緩衝剤は、還元力が大きいので、タンパク質がビーズから溶出するからである。
【0182】
ゲルの分離は、セクション2.1に記載した試薬を使用して行った。重合は、ピペット操作によりTEMEDの添加後に開始し、溶液3.75mlを専用プラスチックホルダーでクランプされたたグラスプレート間でピペット操作した。
【0183】
次にゲルは、2−プロパノールで被覆し、気泡を除去し、ゲルが空気に触れないようにした(酸素は重合反応を妨げるため)。2−プロパノールを重合完了後に除去し、収集ゲルを調製した(セクション1.1を参照)。分離ゲルを収集ゲルの層で被覆した後、サンプルポケットを形成するリッジをゲル溶液に入れた。
【0184】
タンパク質サンプルは、5分間95℃にてサンプル緩衝剤中で沸騰させて変性させた。サンプルは、短時間遠心分離機にかけ、ハミルトン注射器を使用してゲルポケットに移した。
【0185】
約15分間90Vで泳動を実施後、タンパク質は分離ゲルに達し、電圧は1.5時間で120Vまで増大した。
【0186】
泳動完了後、ゲル中の分離タンパク質は、クマシーブリリアントブルーG250溶液で染色するか、またはウエスタンブロット分析を使用して更に調べた(下記を参照)。
【0187】
クマシー染色のために、ゲルは30〜60分まずクマシー染色液中で、次に脱染色液中で撹拌し、過剰な染料を除去した。非染色ゲルと染色タンパク質とのコントラストは十分大きかった。最後に、Bio-Rad ChemiDoc EQで撮影し、同梱のQuantity One softwareで分析した。
【0188】
1.8 ウエスタンブロッティング
SDS PAGEによる分離に続いて行うウエスタンブロッティングにおいては、タンパク質は、電圧を用いてニトロセルロースまたはポリフッ化ビニリデン(PVDF)の膜に転写され、特定の抗体(Ab)を使用して検出される。Abへの結合後、過剰なAbを洗浄除去し、膜は標識化され一次Abを特異的認識する二次Abで培養される。標識は、放射性同位体または染料形成反応を触媒する酵素から成る。
【0189】
最初に、イモビロンP−PVDF膜をゲルの大きさに切って、エタノールで15秒、次に半乾性転写緩衝剤で少なくとも5分間湿らせる。ワットマンフィルタ紙も適切な大きさに切って、転写緩衝剤で湿らせる。
【0190】
ゲルから膜へのタンパク質転写は、2つのフィルタ、膜、ゲル、及びそれらの上に積層される別の2つのフィルタを有するBioRad TransBlot SD Semi Dry Transfer Cellを使用して実施した。気泡はタンパク質転写を阻害するので、除去した。転写緩衝剤4mlをピペット操作してスタック上に取り出した後、転移細胞は閉じ、タンパク質は1時間10Vにて膜に転写された。
【0191】
次に、膜上のタンパク質をPonceau S溶液で染色した。このために、膜は水で洗浄して、20分間室温でPonceau S溶液中で撹拌した。分子量標準のバンドを鉛筆で追跡し、膜を透明フィルムで覆って、LumiImager F1を使用して撮影した(露出は7秒、上面照明)。
【0192】
Ab培養前に、膜上の自由結合部位をブロックしなければならない。さもないと、大量のAbが非特異的に該部位に付着して、特異的シグナルと干渉するおそれがあるからである。1時間ブロット内で撹拌することによって膜を飽和させた。
【0193】
一次A18デルタ3Abは、すでに用意してあった。これは、ラビットに、AKAP18デルタ配列のアミノ酸60〜76と同一な配列を有するペプチドの免疫を付与することによって生成した。これによって得られた抗血清は、Thiopropyl Sepharose 6B(Amersham GmbH & Co. KG, Brunswick)と組み合わせて免疫付与に使用されるペプチドを介して親和性クロマトグラフィーによって精製した。A18デルタ3Abは、AKAP18デルタとAKAP18ガンマとの両方に結合する。
【0194】
Ab溶液は、ブロット内で1:500に希釈した。Abの所要量を減少させるため、膜を室温で2時間または4℃で一晩、気泡のないAb溶液3mlを用いて培養袋中で撹拌した。
【0195】
5分間TBSTで3回洗浄した後、膜はブロット内で二次Ab(抗ラビットF(ab)2フラグメント)の1:1000希釈物中で1時間撹拌した。二次Abは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(POD)(Dianova, Hamburg)に結合した。
【0196】
膜は10分間TBSTで3回洗浄した。検出を行うため、4mlのLumiLight Western Blotting Substrate(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim)の溶液1、2を膜に添加し、室温で5分間撹拌した。検出溶液は、光(化学発光)を発生させるAb結合PODによって酸化されるルミノールを含む。透明フィルムで覆った膜の写真を撮影し、LumiImager F1上で「化学発光」を調節した(露出は1分)。
【0197】
1.9 タンパク質濃度のブラッドフォード測定
ブラッドフォード法は、グルタチオンセファロース溶出液中のタンパク質濃度の測定に最適である。これは、使用する色原体(クーマーシィブリリアントブルーG250)が、溶出液にも存在する過剰なグルタチオンに結合せず、陽イオン疎水性アミノ酸側鎖に特に結合するからである。
【0198】
測定のために、タンパク質含有サンプル(希釈溶出液)50μlを2MのNaOH50μlに添加し、10分間60℃で培養した。その後、ブラッドフォード試薬1mlを添加し、サンプルをキュベットに移し、595nmでの吸収レベルを測定した。
【0199】
タンパク質の濃度は、様々なオボアルブミン希釈物由来の一連の検定標準と比較して測定した。
【0200】
1.10 酵素免疫測定法(ELISA)
ELISAは、抗原を特異的抗体で検出する方法である。検出は、結合パートナーの1つと共有結合する酵素によって行われ、酵素は色原体の変化を触媒する。これによって、例えば染色や化学発光等が定量的に発生する(ウエスタンブロッティングで記載のとおり)。2つの結合パートナーの1つは固定化するので、非結合抗体または非結合抗原の除去は非常に容易である。検出は、特別な読取り装置(ELISAリーダー)内の光電子増倍管を使用して化学発光の強度(I)を観察することによって行われる。測定値の出力は、相対照度ユニット(RLU)において行う。
【0201】
この場合、一方のタンパク質(PKA)がもう一方(AKAP18デルタ−GST)に結合することが、小有機分子の存在によって阻害されるかどうかを調べることが要点であった。したがって、サンドイッチELISA法が開発された。サンドイッチELISA法において、AKAPタンパク質の結合先であるRIIアルファPKAサブユニットは384ウェルマイクロタイタープレート(MTP)に結合した。
【0202】
高いタンパク質結合能力を有するポリスチレンから構成される白色MTPを使用した(384-Well White Flat Bottom Polystyrene High Bind Microplate、製品番号3703番、Corning GmbH, Wiesbaden)。白色は化学発光を反射することにより検出レベルを向上させ、同時に近隣のウェルの発光を防止する。自由結合部位は、結合後ブロックされる(下記を参照)。第2GST−AKAP18デルタタンパク質を、対照としての潜在的低分子量阻害剤とともに阻害性ペプチド(下記を参照)に添加した。続いて、結合GST−AKAP18デルタを抗体と化学発光とによって定量化した。ELISAの原理を図4に示した。
【0203】
使用タンパク質の生理学的pH値を維持するため、PBS(リン酸緩衝食塩水、pH7.4)を緩衝系として使用した。タンパク質分解を遅らせるため、緩衝剤に、非特異的プロテアーゼ阻害剤としてプロテアーゼ阻害剤とPMSFとの混合物を添加した。更に、DTTを使用して、タンパク質が酸化しないようにした。ブロッキング溶液は更に0.3%脱脂粉乳を含んでいた。これは、そこに含まれる乳タンパク質でMTP非特異的結合部位を飽和するためである。
【0204】
結果に関するセクションでより詳細に説明するとおりELISAを確立するため、PKA−RIIアルファを検出するにあたり、上記及びセクション1.8(ウエスタンブロッティング)に記載のものに加えて、更に他の抗体が必要であった(市販のマウスPKARIIalpha抗体(BD Biosciences, San Jose, USA)、及び抗マウスPODAb(Dianova, Hamburg))。
【0205】
1.11 結合曲線とIC50値の計算
実験で得られたデータの一部を、GraphPad Prism(GraphPad Software, San Diego, USA)を使用して評価した。
【0206】
結合曲線を測定値に適合させるために(結果を参照)、1つの部位の結合モデルを基本として使用し、このモデルをGST−AKAP18デルタのRIIアルファへの結合に適用する。対応する式は以下のとおりである。
Y=Bmax・X/K+X
【0207】
IC50計算の測定値を、1つの部位の競合モデルに適合させた。マイナスの結合値に対する誤適応を除外するため、最小値漸近線は、0.0より大きくなければならない。使用した式は以下のとおりである。
Y=最小値+(最大値−最小値)/1+10x−log/C50
【0208】
1.12 物質ライブラリーのスクリーニング
スクリーニング、すなわち、AKAP18デルタ−RIIアルファ結合の潜在的阻害剤を系統的・部分的に自動検索を行うために、FMP20000物質ライブラリーを用いた。ライブラリーには、20064の様々な市販の物質が含まれていた。これらの物質は、57MTP上のDMSO中の原液10mM中にあって、それぞれ384のウェルを有していた(ChemDiv, San Diego, USA)。ライブラリーの物質は、既知の薬理学的活性物質にも適用される特定基準に従って選択されている。該基準には、Lipinski's Ruleも含まれる(「考察」を参照)。
【0209】
スクリーニング用のMTPを調製するため、380のウェルのそれぞれを、電子制御式24チャンネルピペット(Eppendorf)を使用して濃度0.75ng/μl(結合緩衝剤中)のRIIアルファ溶液20μlで充填した。AKAP18デルタ−GST(8ng/l)10μlをピペット操作して残りの4つのウェルそれぞれに入れ、検出の陽性対照を得た(表1.1のMTP占有分と、表1.2のピペット操作概要とを参照)。MTPを遠心分離機にかけてから(2500×gで1分間)、MTPを少なくとも1時間室温で培養した。タンパク質溶液をタッピングにより除去してペーパースタック上に取り出した後、非特異的結合部位を、室温で少なくとも1時間ブロッキング溶液/ウェル100μlでブロックした。
【0210】
表1.1 MTP占有分。カラム1と24は対照反応の場合を、カラム2〜23は低分子量物質の場合を示す。表1.2のピペット操作概要も参照のこと
【表1.1】

【0211】
ブロッキング溶液は、自動Power Washer 384(Tecan)を使用して除去した。すべてのウェルは、TBSTで洗浄した。洗浄作業の完了後、なお残っている可能性がある溶液残留物をタッピングにより除去してペーパースタック上に取り出した。
【0212】
次の工程において、低分子量物質を自動ピペット操作するために、MTPを調製した。各ウェルに、ピペット操作概要(表1.2)に従ってピペット操作したブロッキング溶液または対照10μlを加えた。阻害剤を含まず、AKAP18デルタ−GST量のを徐々に増大させ(ウェルにつき0、80、160ng)かつ阻害性L314Eペプチドと18d−PP対照ペプチド(最終濃度は25mMと1μM)とを有するものの反応を対照として使用した。プレートは短時間、遠心分離機にかけた。
【0213】
同時に、以下のようにして、ピペット操作できるようにライブラリーMTPを調製した。短時間、遠心分離機にかけた後で解凍(37℃度で30分間)し、溶液をプレート底に堆積させた。存在する可能性がある固体粒子を溶解するために、プレートを1分間超音波槽に浸漬した。プレートに付着した水を5分間30℃でEppendorf Concentrator 5301中で処理して蒸発させ、保護膜を慎重に除去した。
【0214】
Sciclone ALH 3000 Workstation(Caliper LifeSciences, Hopkinton, USA)を使用して、各潜在的な低分子量阻害剤0.5μl(ジメチルスルホキシド(DMSO)中の原液10mM、最終濃度は244μM)をライブラリーMTPからスクリーニングMTPに移した。対照カラム1と24にはそれぞれDMSO0.5μlを添加し、他のサンプルと同量のDMSOが対照に添加されるようにした。スクリーニングMTPを遠心分離機にかけた後で、AKAP18デルタ−GST(ブロッキング溶液中8ng/μl)をピペット操作概要に従って添加し(表2.2)、室温で少なくとも30分間培養した。
【0215】
Power Washer中にてPBSTで洗浄することによって過剰なタンパク質を除去した後、潜在的な阻害剤の存在下における結合AKAP18デルタ−GSTの量を、各ウェルにつき、20μlのA18デルタ3(ブロッキング溶液中1:1000、室温で少なくとも1時間、または4℃度で一晩中)、及び20μlの抗ラビットPOD Ab(ブロッキング溶液中1:3000、室温で少なくとも15分間)を使用して検出した。Power Washerを使用してPBSTで洗浄することは、各ピペット工程間で行った。各ウェルにつき、20μlのLumiLight Western blotting基質(Roche)をピペット操作し、室温で5分関培養することによって定量化を行った。Tecan Genios Pro MTP readerと同梱のMagellan 5.02(化学発光終点測定。積分時間は各ウェルにつき10ms。Tecan Deutschland GmbH, Crailsheim)を使用して化学発光を検出した。
【0216】
表1.2 スクリーニングMTPのピペット操作概要。カラム1と24は対照反応の場合を、カラム2〜23は低分子量物質反応の場合を示す。
*1E、1F、24K、24Lにおいて、小分子のピペット操作後、ブロッキング緩衝剤10μlを、GST−AKAP18デルタ20μlで置換した。

【表1.2A】

【表1.2B】

【表1.2C】

【0217】
2.結果
2.1 組み換えAKAP18デルタの精製
2.1.1 AKAP18デルタ−GST融合タンパク質をコードするプラスミド
GST融合タンパク質の発現(図1)に適しており、かつAKAP18デルタコード化配列を含むpGEX−4T3ベクターは、すでに本研究チームが利用できるようにしてあった。1059塩基対を含むAKAP18デルタcDNA断片は、GSTコード化配列の3'末端に位置したので、発現タンパク質におけるGSTは、AKAP18デルタのN−ターミナル末端に位置した。本作業を開始する前に、短時間配列決定を行うことによって、配列の正確性を確認した。
【0218】
発現のため、GST−AKAP18デルタ構造を、競合BL21細胞に形質転換した。形質転換を確認するため、得られたクローンのうちの4つを由来とするプラスミドDNAを分離し、DNA制限を制限エンドヌクレアーゼEcoRIとXholとを使用して行った。これらの酵素はクローニングにも使用されるので、AKAP18デルタ挿入サイズ(1.0kb)と線状化pGexベクターのサイズ(4.9kb)を有する断片は、予測どおりアガロースゲル電気泳動法(図5)で検出された。
【0219】
2.1.2 GST−AKAP18デルタを発現する細菌溶解の最適化
IPTG含有培地中で培養することによって、pGEX−AKAP18デルタベクターで形質転換された細菌が、組み換えタンパク質を発現可能になる。その後細菌細胞溶解を行ってから、溶液中に放出されたGST融合タンパク質をグルタチオンセファロースに結合させ、洗浄し、最後に余分のグルタチオンで溶出した。
【0220】
可能なかぎり高いタンパク質収率を達成するため、標準方法に基づき、GST−AKAP18デルタ精製の様々なパラメータを変化させた。このようにして確立した精製手順は、セクション1.6で説明されている。
【0221】
対照用に精製した精製組み換えGST−AKAP18デルタの予想サイズは75kDaであり、GSTのみの予想サイズは25kDaであった。
【0222】
pGEX−AKAP18デルタプラスミドで競合大腸菌BL21細胞の形質変換を行った後、細胞を成長させ、タンパク質合成をIPTGで誘導した。まず、様々な条件における細菌溶解がタンパク質収率に影響を及ぼすかどうか、またどのように影響を及ぼすかについて調べた。
【0223】
標準方法すなわちフレンチプレスによる溶菌という標準方法を変えるだけでなく、同じ誘導培養由来の細胞をリゾチームで溶解し、DTTを添加した。以下の異なる条件について調べた。
・1×フレンチプレス
・3×フレンチプレス
・1×フレンチプレス溶菌前にDTT5mMを添加
・室温で30分間リゾチームを使用(1mg/ml)
・37℃で30分間リゾチームを使用(1mg/ml)
【0224】
上記追加の精製手順とグルタチオンセファロースへの結合(セクション1.6を参照)の次に、ビーズ5μlを各バッチから取り出して、SDS PAGEを使用してからクマシー染色を行って分析を行った(図7)。空pGEXベクターで形質転換された細胞も対照として使用した。空pGEXベクターにとってGSTは予想される唯一の精製物であった。
【0225】
図6A、6Bから分かるように、予想される大きさのタンパク質を検出することができた。
【0226】
溶菌前の細胞懸濁液にDTT5mMを添加することによって、高いタンパク質収率が得られた(図6A)。
【0227】
クーマシィで染色されたゲルを目視で比較すると、細胞溶解においてリゾチームはフレンチプレスよりも有効性が低いことが分かった(図6A)。
【0228】
高いタンパク質収率を、30分間室温で培養して達成した(図6B)。
【0229】
2.1.3 GST融合タンパク質のグルタチオンセファロースへの結合効率の向上
GST−AKAP18デルタがグルタチオンセファロースに結合する効率を最適化することを試みた。これは、セファロースビーズによる細胞溶解物の培養時間と培養温度を変化させることによって行った(図6B)。30分間室温で細胞溶解物の培養を行うと高いタンパク質収率を得られることが分かった。
【0230】
2.1.4 溶出条件の最適化
セファロースビーズからのGST−AKAP18デルタの溶出は、標準条件下ではあまり有効でないことが分かったので、タンパク質収率を最大化するために溶出条件を適合化した。
【0231】
メーカーの指示(室温で10分間)に対して溶出時間や溶出温度を変化させても、収率向上は達成できなかった。したがって、溶出緩衝剤の組成を変化させた。メーカーの推奨によれば、溶出緩衝剤の組成は、トリス−HCL50mM中グルタチオン(GSH)10mM(pH8.0)である。
【0232】
100mMのNaClまたは0.1%トリトンX−100を添加すると、効率は向上しないことが分かった(図7のA、B)。したがって、工程においてGSH濃度を40mMまで増大させ、トリス濃度を100mMまで増大させ、pH値を9.0まで増大させ、NaCl濃度を200mMまで増大させた。更に、溶出緩衝剤に0.2%Tween 20を添加した。最後に、試験を行って、タンパク質が複数の溶出によって得られたかどうか調べた(図7のC−I)。ウエスタンブロッティング(A18デルタ3と、ペルオキシダーゼ(POD)結合抗ラビットAbによる)を使用して、精製タンパク質をGST−AKAP18デルタとして識別した(図7のJ)。
【0233】
最適化前に実施されかつELISA確立のために使用された精製のタンパク質濃度は、ブラッドフォード分析を使用して測定され、0.4μg/μlであることがわかった。
【0234】
スクリーニングのため、組み換えGST−AKAP18デルタを別に精製する必要があった。この精製は上記の最適化された条件下で実施した。この精製から得た溶出物の濃度は、確立ELISAを使用して最初の精製と比較して測定したところ、8μg/μlであることがわかった。
【0235】
2.2タンパク質間相互作用を定量化するためのELISAの確立
PKAのRIIアルファサブユニットとGST−AKAP18デルタとの間のタンパク質間結合の定量的検出を行うため、ELISAに基づく検出を行った。これは、通常試験によって適切に最適化されたものであり、他のすべてのAKAPタンパク質とPKAサブユニットに対して使用可能である。
【0236】
セクション1.10ですでに説明したとおり、この方法の利点は特に、感度が高く取扱いが容易なことである。更に、必要な物質がすでに確立されていて、十分な量利用可能であることであった。抗ラビットPODAbと化学発光溶液は市販されているが、A18デルタ3AbとGST−AKAP18デルタは本研究チーム内で生成した(上記を参照)。
【0237】
まず、主たる問題は、GST−AKAP18デルタを初めにマイクロタイタープレート(MTP)に結合させてからRIIアルファのMTPへの結合を検出すべきか、あるいはその逆であるべきかということであった。前者を選択すると、感度が低く、必要なタンパク質量が多くなり、必要なPKARIIalpha抗体は自家生成できない。このことから、後者を選択するしかないことになる。すなわち、RIIアルファをMTPに結合してから、GST−AKAP18デルタのMTPへの結合を検出することになる。これは、ELISA確立の初期段階後に行った。
【0238】
分析を行うにあたり、以下の重要な点を調べる必要があった。
・適切な結合またはブロッキング用の緩衝剤の組成
・MTPに結合するRIIアルファタンパク質の量
・プレート結合RIIアルファに結合するGST−AKAP18デルタの量
・検出用の抗体の適切な希釈
・ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液がELISAに及ぼす影響(ペプチドと有機物質はDMSOに溶解)
・対照反応の阻害性ペプチドの濃度
・RIIアルファ、GST−AKAP18デルタ、抗体、及び化学発光検出用溶液の培養時間
・結合タンパク質を有するMTPの保管条件
・化学発光の検出
【0239】
上記の点を鑑みてELISAの確立を以下に説明する。特に明記しないかぎり、ELISA確立上のすべての実験において二重測定を実施した。すなわち、同量のタンパク質を含む2つのウェルを、各回同じ条件下で調べた。
【0240】
各実験においてわずか2つの測定を実施しただけであったものの、各平均値について標準誤差を計算して、平均値の精度を測定した。データは、有意性を測定するためには使用すべきでない。図面中の誤差表示は、平均値の標準誤差を示す。場合によっては(図9A等)、平均値の標準誤差はあまりに小さいので誤差表示は認められない。
【0241】
2.2.1 脱脂粉乳はMTP上の自由結合部位をブロックするために最適
脱脂粉乳、ウシ血清アルブミン(BSA)、及びELISA用に特別に前処理を施したBSA(ELIS BSA)を、ブロッキング試薬として調べた(図8A。単一測定)。
【0242】
BSAは、本明細書で実証するとおり、非特異的発光シグナルを起こす物質を含むことが多い。ただし、ELISA BSAは多数の非特異的シグナルを示し、一方脱脂粉乳は実質的に化学発光を示さなかった。したがって、MTP上の自由結合部位をブロックするため、結合緩衝剤中最終濃度0.3%で脱脂粉乳を使用した。
【0243】
2.2.2 MTPウェルはPKA−Rllアルファ50ngで飽和可能
RIIアルファ濃度を徐々に増大させた結合緩衝剤溶液をピペット操作してMTPのウェルに入れた。自由結合部位を脱脂粉乳溶液でブロッキングした後、プレートに結合したタンパク質量をPKARIIalphaAbと抗マウスPODAbで検出した。この時点で最適な抗体濃度は既知でなかったので、1:5000希釈物(PKARIIalpha)と1:10000希釈物(抗マウスPOD)を使用した。測定した化学発光強度は、タンパク質濃度に関してグラフに表して、タンパク質によるウェルの飽和が達成されたかどうか、またその達成時期について決定した(図8B)。
【0244】
ウェルにつきRllアルファ45ngから、結合能力が飽和した。次に、ウェルにつき40ng及び25ngのRllアルファ量を使用した試験を行った。
【0245】
2.2.3化学発光強度は、各ウェルでGST−AKAP18デルタ200ngのとき最大に達する
25ngまたは40ngのRllアルファ4を、各回2列のMTPウェルに結合させた。ブロッキング後、GST−AKAP18デルタ濃度を徐々に増大させた(ウェルにつき0〜200ng)ブロッキング緩衝剤溶液をピペット操作してウェルに入れた。以下、該試験アレイを「結合シリーズ」と呼ぶ。結合タンパク質の検出は、A18デルタ3と抗ラビットPOD Abとを使用して行った(それぞれ1:5000、1:10000)。測定シグナル強度は、ウェルごとにGST−AKAP18デルタの量に関してグラフで表した(図8C)。
【0246】
ウェルにつきGST−AKAP18デルタ200ngを超えると、結合曲線が飽和に近接することが分かった。測定値の初期評価から、以下の結論が導かれた。すなわち、ウェルにつきGST−AKAP18デルタ値が80ngのとき、最大飽和の半分が達成される。結合が最大飽和の半分に達すると、可能な限り最大の感度が得られる。したがって、ウェルにつきGST−AKAP18デルタ濃度80ngを使用して以下の実験を実施した。
【0247】
測定値に対する単一部位結合モデル(セクション1.11を参照)の適合を含む更なる評価を図8Cに示した。結果として、最大飽和の半分を達成するには、GST−AKAP18デルタの値はより低い値50〜60ngであるということが分かった。
【0248】
RIIアルファ25ngで被覆したウェルの発光強度とRIIアルファ40ngで被覆したウェルの発光強度との間には有意な差はみられなかったので、以下の試験はタンパク質をセーブするためにウェルにつきRIIアルファ25ngの方を使用して行った。
【0249】
タンパク質をセーブするために、更に調査を行って、ウェルにつきRIIアルファの量15ngがスクリーニングにおいて十分な量であるかを調べた(図9A)。同様に、発光強度の低下は観察されなかったので、上記量のタンパク質にてスクリーニングを行うことは可能であった。
【0250】
2.2.4 A18デルタ3抗体は1:1000に希釈
上記試験のように、RIIアルファ−GST−AKAP18デルタ結合シリーズを調製してから、様々なA18デルタ3Ab希釈物を使用して検出した(図9B)。最初、抗ラビットPOD Abの希釈物は1:10000で維持した。
【0251】
希釈率1:5000において、結合曲線より、すべてのGST−AKAP18デルタ−RIIアルファ合成物が検出されるわけではないことが示された。濃度を5倍増大させた際に、著しく強いシグナルが得られた。同時に、背景シグナル、すなわちGST−AKAP18デルタ 0ngにおける発光強度は低値のままであったので、高感度が得られた。
【0252】
2.2.5 二次抗体の妥当な希釈率は1:3000
前章と同じ試験を行った。この試験では、A18デルタ3一次抗体の希釈率は1:1000であった(図9C)。同様に、希釈率を1:10000から1:3000まで減少させると、抗ラビットPOD Abの場合において、シグナル強度と感度の増大が観察された。
【0253】
したがって、上記のとおり定めたA18デルタ3Abの希釈率1:1000、抗ラビットPOD Abの希釈率1:3000を使用して、以下の実験と物質スクリーニングとを行った。
【0254】
2.2.6 DMSOによるELISAの機能低下はなし
有機溶媒ジメチルスルホキシド(DMSO)の、タンパク質間結合またはその検出に及ぼす影響を調べる必要があった。その理由は、対照として用いた阻害性ペプチドL314EとHt31、ならびに物質ライブラリー自体がDMSO中で溶解したからである。
【0255】
最初の実験において、二次Abの様々な希釈物と、GST−AKAP18デルタの様々な濃度とを同時に使用して反応量全体(20μl)に対する1%DMSOの影響を同様に試験した(図10A)。DMSOは結果に対してなんら実質的な影響を及ぼさないことがわかった。GST−AKAP18デルタの様々な濃度と様々なAb希釈物について先に得られた結果は確認された。
【0256】
別の実験においては、RIIアルファとGST−AKAP18デルタの一定量に、DMSO濃度を最大2.5%まで徐々に増大させて添加した(図10B)、得られたシグナルは、ほんの若干減少した。スクリーニングについても、DMSOの最大濃度は2.5%であった。
【0257】
対照実験において、MTPに結合したRIIアルファを、PKARIIalphaと抗マウスPOD Abを使用して検出した(図10A、最後から2番目の値)。
【0258】
別の対照(同じく図10Aの最後の値)において、RIIアルファをプレートに結合せず、残りの分析を周知のとおり実施した。驚くべきことに、この場合、高い化学発光強度が測定された。これによって、測定シグナルが結合GST−AKAP18量を反映するかどうかが問題となった。これを調べるため、別の実験を行った(次のセクションを参照)。
【0259】
2.2.7 RIIアルファ結合GST−AKAP18デルタの検出は特異的
シグナル特異性を制御するため、ウェルにつき25ngのRIIアルファを一列のMTPに結合させ、一方2列目のMTPにはRIIアルファを結合させなかった。非特異的結合部位をブロッキングした後、GST−AKAP18デルタの濃度を徐々に増大させた溶液をピペット操作して上記両列に入れ、特異的に結合したタンパク質を、抗体によって検出した(図10C)。
【0260】
RIIアルファを含む列におけるシグナルは増大して最終的に飽和に達し、一方RIIアルファを含まない列においては、GST−AKAP18デルタの非特異的結合による若干の増大しか観察されなかった。この結果から、検出は特異的であることを示された。したがって、図10Aにおける対照である最後の値には、ピペット操作等の誤差がおそらく含まれている。
【0261】
2.2.8 阻害性ペプチドは、GST−AKAP18デルタのRIIアルファへの結合を防ぐ
周知のとおり、AKAPとPKAのRサブユニットとの間の結合は、AKAP由来ペプチドによって特異的かつ競合的に阻害することができる。したがって、該ペプチドを、ペプチドによってRIIアルファとGST−AKAP18デルタとの間の相互作用を防ぐ目的で、対照反応において使用した。この場合においても、可能な限り感度が高い検出を行うため、確立されたアンカーペプチド阻害剤Ht31とAKAP18−L314EとのIC50値をまず測定した。IC50値は、考えられる最大のタンパク質間合成物のうちわずか50%が形成される場合におけるペプチド濃度である。
【0262】
これらの値を測定するため、RIIアルファをウェルにつき25ngにてMTPに結合させ、各回でGST−AKAP18デルタ80ngを添加した。その後、ピペット操作によりペプチドを徐々に濃度を増加させながら添加した。
【0263】
L314Eペプチドは、結合に対してより強い阻害効果を及ぼす。したがって、25nMのIC50値の濃度における対照反応においてL314Eペプチドを使用した(図11)。ペプチド阻害は特異的であった。理由は、プロリン含有対照ペプチド18d−PP、Ht31−Pは、まったく阻害効果を示さないか示してもごくわずかであるからである。
【0264】
2.2.9 タンパク質間結合に十分な培養時間は30〜60分
時間要素は、物質ライブラリースクリーニングの計画と実施において少なからぬ役割を果たす。したがって、複数の追加実験を行って、必要な培養時間に関する情報を得た。まず、適切な化学発光強度を得るために十分なタンパク質合成物を形成する時間を試験した。このため、再び結合シリーズをピペット操作して、MTP洗浄により15分後、30分後、60分後に、タンパク質間結合の形成を妨害した。その後、結合GST−AKAP18デルタの量を、Abを用いて検出した(図12)。
【0265】
わずか30〜60分後に、強い化学発光シグナルが検出された。
【0266】
2.2.10 阻害性ペプチドにより阻害を行うために十分な時間は30〜60分
更に、GST−AKAP18デルタのRIIアルファへの結合を、競合阻害作用を有するL314Eペプチドと18d−PP対照ペプチドとの存在下で調べた。濃度0.01μMまたは10μMのペプチドを反応バッチに15分、30分、または60分間入れてから、結合GST−AKAP18デルタの量を検出した(図13A)。この場合も、先に測定された場合のように培養時間30〜60分で十分であることが分かった。
【0267】
2.2.11 最適な抗体培養時間は60分または15分
抗体の抗原への結合は、時間依存的に進行し、最初、特異性は、培養時間を増大させるにつれて増大した。特異性は、例えば、タンパク質分解によってやがて後の時点で減少する可能性がある。高感度測定に必要な培養時間を得るため、RIIアルファ−GST−AKAP18デルタ合成物にA18デルタ3抗体と抗ラビットPOD抗体とを添加した。結合反応は、洗浄により15分後、30分後、60分後に妨害した。この場合、一次抗体と二次抗体に関するすべての可能性がある培養時間の組合せを考慮した(図13B)。
【0268】
両抗体ともに、培養時間60分で最大のシグナル強度が得られることが分かった。ただし、一次抗体結合の場合に60分ならば、二次抗体の培養時間を減少させてもよいと考えられる。
【0269】
2.2.12 化学発光は8分間で検出可能
ルミノールの酸化による化学発光は、時間依存性反応である。強度は、反応過程において基質が消費され、ペルオキシダーゼが変性されたので、数分後に低下した。
【0270】
ここで使用したLumiLight溶液等の市販の製品において、強度低下を減速させる助剤を添加した場合であっても深刻な問題を生じなかった。測定を実施すべき時間枠である、基質溶液を反応バッチに添加した後の時間窓は、いずれにしても調べた。このために、結合シリーズをピペット操作し(上記を参照)、化学発光の測定を、LumiLight溶液を添加してから2分後、4分後、8分後に繰り返し行った。
【0271】
測定は、LumiLight添加後8分以内に可能であり、このときシグナル強度が劇的に低下するおそれはなかった。測定作業全体は、上記時間窓内に容易に完了した。
【0272】
2.2.13 タンパク質被覆MTPは長時間保管可能
スクリーニングを迅速に行うためには、複数のMTPをRIIアルファで被覆し、将来使用する場合に備えて保管することが妥当であった。保管の結果タンパク質が分解しないことを確認するため、RIIアルファを上記のように2列のMTPに結合させ、非特異的結合部位をブロックした。その後、1つの列を1時間室温で保管し、もう一方の列を66時間4℃で保管した後、ELISAを実施した。結合GST−AKAP18デルタの量を検出した(図14)。
【0273】
保管時間は、調査した時間窓内において結果に認識可能な影響を及ぼさなかった。
【0274】
その後、定めた濃度と培養時間とを使用して、物質ライブラリーのスクリーニングを行った。
【0275】
2.3 RIIアルファGST−AKAP18デルタの相互作用の低分子量阻害剤を見つけるための物質ライブラリーのスクリーニング
いったんセクション1.12に記載のようにMTPをピペット操作して測定すると、測定化学発光強度が十分高いかどうか確かめるために初期試験がなされた。十分高い場合、各ウェルの化学発光を、Microsoft Excelの表計算プログラムを使用して、対照と比較したRIIアルファ−GST−AKAP18デルタ結合量の百分率値に変換した。このために、80ngのGST−AKAP18デルタを有する対照の測定値の平均値(ウェルC1、D1、M24、N24。表1.1と1.2を参照)を100%とした。目視評価を容易にするため、続いて結果は、自動色指定によって色指定を受けた(Microsoft Visual Basicに記載のプログラムを使用)。このとき、10%間隔で様々な色を使用した。一例を挙げると、表2.1は、MTPの生データ(RLUにおける化学発光)と、色指定を伴う結合百分率変換とを示す。スクリーニングの完全なデータは、付録で参照可能である。
【0276】
表2.1
上:スクリーニングで使用したMTPの測定から得た生データ。RLUにおける化学発光の強度を示す。
下:生データを使用して、対照(ウェルC1、D1、M24、N24.プレート占有分については表2.1も参照)と比較した潜在的阻害剤の存在下におけるGST−AKAP18デルタとRIIアルファとの間の結合百分率を計算し、下記のカラーチャートに従って色指定した。

【表2.1】

【0277】
いったん色指定されると、MTPのいくつかは、区別可能な特性を示した。例えばプレートの特定領域に、多くの阻害剤候補が存在した。対照値の調査で、カラム1とカラム24における100%値が大きく異なると示された場合(差異が20%を超える場合)、対応するMTPは、プレートの各半分について該半分に関する対照値にのみ基づいて、再評価した(例えば、カラム1〜12の場合、カラム1の対照値)。それでもなおプレート上に目立つ領域が残った場合、プレート全体をもう一度ピペット操作し、測定し、評価した。これは、プレート4、6、7、13、21、38、50の場合に必要であった。
【0278】
いわゆる化合物IDをライブラリーの各物質に割り当てることによって、コンピュータに基づくデータ評価に役立てた。スクリーニングの完了に続いて、すべての測定値を表中の対応する化合物IDに割り当てた。結果は、表2.2に記載の物質の結合百分率値の増大に基づいて分類した。これの物質を使用することにより、RIIアルファとGST−AKAP18デルタとの間のタンパク質間結合は、対照値の20%以下まで阻害することができた。
【0279】
表2.2:20064の物質を備えたライブラリーのスクリーニング。物質濃度244μMにおいて、RIIアルファとGST−AKAP18デルタとの間の結合を対照値と比べて20%以下まで阻害した19の候補物質を示した。「プレートID」は、ライブラリーMTPの番号を示す。「位置ID」は、候補物質を含むウェルの位置である。
【表2.2】

【0280】
表2.3:ピペット操作と検証測定値。希釈シリーズを各潜在的阻害剤(A7−H15、I1−P10、記載の化合物ID)と、ペプチド(A3−H6,I11−P12)用に作製し、阻害効果の濃度依存性を調べた。更に、阻害剤を有さない結合シリーズを作製した(A1−H2、I13−P14)。更に、発光強度を表3.1に記載のとおり百分率値に変換し、色標識化した(表3.4を参照)。「化合物ID」は化合物のIDを示す。「I」は強度を示す。表中の意味は以下;
Ohne:なし 、Substanz/Comp.ID:物質/化合物ID、〔Substanz〕/μM:〔物質〕/μM、〔Lumineszenz〕/RLU:〔発光〕/RLU

【表2.3A】

【表2.3B】

【0281】
2.4潜在的阻害剤の検証
物質ライブラリーのスクリーニングで見つかった潜在的阻害剤を検証するため、これらの潜在的阻害剤をライブラリーMTPから選択して、表2.3に示したピペット操作概要に従って、対照反応とともに希釈シリーズを確立した。希釈シリーズは、GST−AKAP18デルタ−RIIアルファ結合の特異的阻害作用が存在する場合にのみに期待される、見つかった潜在的阻害剤の濃度依存性を実証するためのものである。確認データを使用して、これらの化合物(表2.4)のIC50値をセクション1.11に記載のとおり計算した(図15)。これらの値は、いずれの物質濃度において、考えられる最大阻害作用の半分が達成されるかを示す。物質量は限定されているので、単一測定を行ったが、対照以外では、図15には誤差表示はみられない。
【0282】
識別物質の識別と純度は、液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)によって確認した。さらに調べるため、物質は、ChemDiv(San Diego, USA)を使用し高量にて再編した。
【0283】
表2.4:表2.3の結果から計算された阻害分子(A7−H15、I1−P10)の存在下、またはペプチド(A3−H6,I11−P12)の存在下、または阻害剤を有さない場合(A1−H2、I13−P14における結合シリーズ)におけるGST−AKAP18デルタとRIIアルファとの結合百分率。色コードは、表2.1のものに対応している。表中、Ohne:なし 、Substanz/Comp.ID:物質/化合物IDの意味である。
【表2.4】

【0284】
表2.5:上記検証における、RIIアルファ−GST−AKAP18デルタ結合の濃度依存性阻害作用を示した9つの物質の特性。「MW」は、単位g/molでの分子量を示す。「logP」は、分配係数を示す。「水素結合受容体」は、水素結合中の受容体として働き得る原子数を示す。「水素結合供与体」は、水素結合中の供与体として働き得る原子数を示す。表中の意味は以下。Compound ID:化合物ID、Internal no.:内部番号、ID No.:ID番号、ChemDiv order no.:ChemDiv社製造番号、Structure:構造、Empirical formula:実験式、Plate ID:プレートID、Pos ID:位置ID、Barcode:バーコード、H acceptor:水素結合受容体、H doner:水素結合供与体
【表2.5A】

【表2.5B】

【0285】
3.考察
タンパク質キナーゼAアンカータンパク質(AKAP)は、cAMP依存シグナル経路において重要な役割を果たす。これらは、組織特異的に発現される。様々なAKAPタンパク質は、タンパク質キナーゼA(PKA)を、様々な細胞内コンパートメント上でアンカリングする。同時に、これらは、更なるシグナル経路の重要な成分のための足場タンパク質となり得る。
【0286】
とりわけ、低分子量の薬らしい物質のライブラリーをスクリーニングするためのELISAを展開した。この方法を使用して、AKAP18デルタ−RIIアルファ結合のn濃度依存的な有効な阻害剤が見つかった。
【0287】
PKAアンカリングの特異的阻害により、低分子量物質の特性と相まって、該物質は、新しい活性物質の潜在的標的としてAKAPタンパク質の検証において使用されるのみならず、その開発のためのリード構造でもある。
【0288】
3.1 RIIアルファ−AKAP18デルタ結合の阻害剤は、薬理学的に興味深い特性を有する
活性物質に関する1つの重要な必要事項は、生体膜を通過可能なことである。細胞内における能力、ならびに事実上生物内と細胞培養モデル内との両方における能力は、該生体膜通過可能性に大きく依存する。膜透過性の前提条件は、物質の親油性である。一方、膜移動の推進力は、膜の一つの側における可能な限り高い濃度である。これは、親油性に反比例する水媒体における良好な可溶性によってのみ達成可能である。
【0289】
膜透過性を予測するための複数のモデルの1つは、1−オクタノール−水混合物における物質の分布である。分配係数Pは、この分布から以下のように計算することができる。
P=[物質]1−octanol/[物質]water
【0290】
挙げているのは、通常、この値の対数:logPである。表2.5に、有効な阻害剤のlogPが示されている。値が1より大きいと、ほとんどの物質は有機相において堆積する。値が1より小さいと、ほとんどの物質は水相において堆積する。発見された物質は、1より大きいlogP値を有するので、それらすべてについて良好な膜透過性が期待される。
【0291】
有機分子の膜透過性に悪影響を及ぼす1つの要因は、水素結合を形成する能力である。この種の非共有結合により、分子を取り巻く水和物の膜ができるので、膜通過前にエネルギーを導入して、その膜を除去しなければならない。
【0292】
ただし、疎水性相互作用を別とすれば、水素結合は、最も重要な力を有する。この力によって、活性物質の標的構造への非共有結合、すなわちこの場合においては活性物質のPKAのRIIアルファサブユニットへのまたはAKAP18デルタへの非共有結合が生じる。
【0293】
水素結合を形成する能力を評価する1つの方法は、水素結合供与体と水素結合受容体とを単純に計数する方法である。水素結合供与体と水素結合受容体との数は、表2.5に記載されている。
【0294】
水素結合を形成する能力を評価する別の方法は、コンピュータに基づくモデルの確立である。したがって、例えば、特に結合全体における水素結合の寄与は、分子力学を考慮して結合パートナーの可能性のある移動方向を計算することによってHIV−1プロテアーゼ阻害剤について測定した。次に、自由エネルギー量を分析して、タンパク質−阻害剤合成物の結合を促進する力に関する情報を得た。
【0295】
細胞内の小分子の有用性に及ぼす別の特性は、その大きさである。分子の大きさは、その分子量によって近似可能である。胆汁による物質の吸収と排出との両方が分子量に依存することが分かった。低分子量の場合、胆汁による物質の吸収が増大しその排出が減少する。物質ライブラリーに含まれるすべての物質の1つの本質的な特性は、平均250mg/molといった比較的低分子量である点である(表2.5を参照)。
【0296】
上記方法のいずれによっても、単独では信頼可能な予測を立てることはできない。特に、水素結合の可能性は、親油性との関係で認識しなければならない。したがって、Lipinskiらは、いわゆるRule of Fiveを確立した。このルールは、物質のいずれの特性が低膜透過性を引き起こすかを以下の通り定義している。
・水素結合供与体数が5個を超える(OH基とNH基との合計)
・水素結合受容体数が10個を超える(N原子とO原子との合計)
・分子量が約500g/mol
・分配係数logP>5
【0297】
スクリーニングにより決定した活性物質は、上記のすべての条件に一致する(表2.5)。すなわち、これらは膜透過性を有する。
【0298】
いずれにせよ、新しい活性物質と発見したその構造の方法的改良に対して、有効性を向上させるため、可能ならこれらの値を低下させることが目的の1つでなければならない。本発明の好ましい構造は、該低下させられた値を有する。
【0299】
3.2 阻害剤を使用する分野は、その特異性によって決定される
スクリーニング後に検証を行い(表2.4、図2.11、2.12)、特定の阻害剤が、濃度依存的に、RIIアルファPKAサブユニットとGST−AKAP18デルタとの結合を阻害することが分かった。
【0300】
すべての識別された物質は、疎水芳香環システムを有するので、RIIサブユニットにより形成された疎水ポケットにおける結合が可能である。
一方、水素結合によるAKAPのRII結合領域への直接結合も考えられる。
【0301】
選択物質は、AKAP18デルタに特異的に結合するので、このシグナル経路の区画の懸濁結果をインビボで調べることもできる(下記を参照)。他の物質は他のAKAPタンパク質に特異的に結合するので、これらの物質を使用して他のシグナル経路を調べることができる。
【0302】
有利な物質は、特異的にAKAP18タンパク質、すなわちスプライシング変異体であるアルファ、ベータ、ガンマ、デルタのいずれかに結合する。したがって、これらについてはRIIサブユニットとの相互作用が排除される。理由は、すべてのイソ型は、同じRII結合領域を有するからである(図15)。
【0303】
ただし、物質の1つがRIIサブユニットに結合した場合、AKAPタンパク質とRIIサブユニットとの相互作用を一般に阻害することが可能なツールが適用される。
【0304】
結合部位は、コンピュータに基づくモデルの確立を使用して明らかにされ得る。ここで、発見された物質の構造は、可能性のある相互作用領域に関するRIIアルファまたはAKAP−RII結合領域の構造を用いて調べることができる。
【産業上の利用可能性】
【0305】
3.3 新しい活性物質のリード構造を示すAKAP−PKA阻害剤
RIIアルファGST−AKAP18デルタ結合の阻害剤は、利点を有する新しい医薬品群として開発されている。
【0306】
新しい医薬品としてPKA−AKAP18デルタ結合(ただし他のAKAP分子にも結合)の阻害剤を使用する1つの方法は、AQP2が腎集合管細胞の頂端膜へAVP誘導転座されること(AQP2シャトル)に、PKA−AKAP18デルタを関与させることに基づく。
【0307】
このプロセスにおいて、AKAP18デルタはPKAをAQP2含有小胞上にアンカリングするので、AVP刺激の後、触媒サブユニットは、特異的に水路タンパク質をリン酸化することができる。この結果、頂端プラズマ細胞膜を有する小胞への輸送とその融合が生じる。このようにして、膜の透水性は増大する。
【0308】
ラットモデルで実証されているように、発熱、肝硬変、高血圧等の特定の疾病において水滞留が発生し得る。特に妊娠期においては浮腫を生じる可能性がある。
【0309】
今日まで、水滞留は、いわゆる利尿薬で治療されていた。利尿薬は、一次尿から集合管上皮細胞に戻すようにイオンを通常輸送するNa+イオン/K+イオン/Ca2+イオン輸送体を阻害することによって腎臓経由で水分排出の増加を間接的に引き起こすものである。結果として、集合管におけるオスモル濃度は増大し、集合管上皮細胞の頂端細胞膜において構成的に存在するAQP2分子による浸透作用が生じる。水滞留以外に、利尿剤は、心不全や筋緊張亢進等においても使用される。ただし、電解質が大量に失われるために、望ましくない薬物効果(UAW)が発生し得る。
【0310】
電解質損失により引き起こされたUAWの医薬品欠損を埋めるものは、水利尿薬である。これらは、水排出を増大させるので、従来の利尿剤にかわる潜在的医薬品である。今日まで、バソプレッシン受容体拮抗薬が、水利尿効果を有すると知られている唯一の医薬品である。
【0311】
AKAP18デルタのAQP2転座への関与の点から見て、RIIアルファ−GST−AKAP18デルタ結合の阻害剤を更に開発して新規の水利尿薬を作ることが可能である。AKAP18デルタ−PKA結合の特異的阻害によって、PKAをAQP2ベアリング小胞から分離すること(セクション1.7)によって、AVP媒介シグナルカスケードが妨害されるので、AVP刺激にもかかわらず、膜におけるAQP2分子の結合が阻害される。このようにして、水の再吸収が増大不能になり、より多くの水が尿を介して排出される。この作用形態は、利尿剤の作用形態(上記)とは異なり、集合管上皮細胞へと戻るようイオンが輸送されることを妨げることはない。したがって、該特性を有する活性物質は、水利尿薬となり得る。この水利尿薬により、利尿を特異的に推進することが可能となり得る。
【0312】
医薬品開発の必須条件は、阻害分子を最適化することである。阻害分子は、低濃度で有効なので、水利尿薬として期待される効果を調べるために動物モデルにおいて同様に使用することができる。例えば、もしラットが、最適化抑制剤の投与時により多くの水を排出した場合、AKAPタンパク質は、医薬品の潜在的標的として検証されたということになる。
【0313】
AKAP18デルタは、腎臓にのみ発現するのではなく、その他の組織にも発現する。発現レベルは、他のAKAPタンパク質も重要な役割を担う心臓において特に高い。
【0314】
心筋細胞の細胞培養モデルにおいて実証されるように、AKAP媒介PKAアンカリングは、L−タイプCa2+チャンネル(CaV1.2チャンネル)を介したCa2+電流のβアドレナリン制御の必須条件である。
【0315】
AKAP18アルファ(=AKAP15)は、ロイシンジッパーモチーフを介して、Ca2+チャンネルの孔形成アルファ1サブユニットのCターミナスに結合する。βアドレナリン受容体/cAMPシグナル経路の活性化に続いて、AKAPタンパク質に結合したPKAは触媒サブユニットを放出する。次に該触媒サブユニットは、チャンネルのアルファ1サブユニットにおけるセリン残基をリン酸化可能である。結果として、チャンネルの開特性が増大し、Ca2+インフラックスが増大した。これは、陽性変力・陽性変時作用を備えている。
【0316】
同じ研究により以下のことが実証された。すなわち、アンカーペプチド阻害剤Ht31を使用すると、βアドレナリン受容体によって活性化されたCaV1.2チャンネル活性のPKA依存性増大が一時停止される。本発明による低分子量阻害剤は、心筋細胞におけるβブロッカーと同じ効果を示す。
【0317】
βブロッカーは、各標的細胞のβアドレナリン受容体における神経伝達物質アドレナリン、ノルアドレナリンの活性を競合的に阻害する医薬品である。これらは、組織特異的に発現するベータ1受容体、ベータ2受容体、ベータ3受容体に分けられる。ノルアドレナリンは、ベータ1受容体に対してより大きく影響を及ぼし、ベータ2受容体に対してより少ない影響を及ぼす。心筋細胞に発現するのは圧倒的にベータ1受容体であって、この他ベータ1選択性(心選択性)βブロッカーと非選択性βブロッカーとがある。βブロッカーは、心臓に対して陰性変力作用と陰性変時作用とを有する。これによって、心筋の酸素需要量が減少するので、βブロッカーは冠状動脈性心臓病の治療に使用される。
【0318】
更に、βブロッカーは未知のメカニズムを介して血管筋に弛緩効果を及ぼす。したがって、βブロッカーは高血圧症の治療に使用される。
【0319】
RIIサブユニットに結合するAKAPの阻害剤は、βブロッカーの代替薬となり得る。AKAP18アルファ依存シグナル経路を特異的にブロックすることによって、これらの阻害剤は、βブロッカーよりもさらに特異的効果を有する可能性がある。これは、後者が受容体下流のすべてのシグナル経路をブロックするからである。更に、AKAP18阻害剤は、例えばぜんそく等の場合のようにβブロッカーが禁忌である場合に使用可能である。
【0320】
ただし、新しい活性物質は、骨格筋においてUAWを引き起こす可能性がある。これは、LタイプCa2+チャンネルとAKAP18アルファもそこに発現するからである。
【0321】
心筋細胞以外に、CaV1.2チャンネルとAKAP18アルファとは、脳のニューロンの樹枝状結晶と細胞体とにも生じる。したがって、AKAP18アルファは、CaV1.2チャンネルの調節にも関係する可能性がある。これは、阻害分子の別の使用分野となり得る可能性を示している。
【0322】
3.4 当該物質は、PKAアンカリングをブロックする新しいツール
今日まで、AKAPタンパク質とPKAのRIIサブユニットとの間におけるタンパク質間相互作用は、セクション1.8に記載のとおりペプチド(Ht31、AKAPIS)を使用して阻害されていた。しかし、AKAP−RII合成物の特異的阻害は、この方法では不可能である。理由は、ペプチドはHt31のRII結合領域に対応する、あるいは様々なAKAPタンパク質から計算されたコンセンサス結合部位を起点として発生しているからである。したがって、システム内にみられるすべての調節サブユニットをブロックすることが研究されている。
【0323】
AKAPタンパク質のRII結合領域のすべては非常に似通っている。したがって、小分子によって、特定のAKAP−PKA合成物の特異的阻害が可能かどうかという点が問題である。一方、RII結合領域の若干の差異がある場合でも、物質を最適化した後、AKAP−PKA相互作用の特異的阻害が可能であると思われる(下記を参照)。
【0324】
該ペプチドの別の欠点は、膜浸透性の欠如である。例えば細胞培養モデルにおける膜透過性を要する実験において、ペプチドはアシル化しなければならなかった。
【0325】
この不利な点は、本明細書に記載の低分子量阻害剤によって克服できる。本発明による物質の化学的・物理的特性によって、動物モデルにおける場合と同様に細胞培養における直接使用も可能となる。したがって、AKAPタンパク質の機能のインビボでの調査が初めて可能となった。
【0326】
更に、出発物質を識別した後、小有機分子の事実上無限の構造的多様性を使用して、タンパク質表面へのより強い結合、安定性の増大、非特異的副作用の減少、インビボでの有用性の増大といった目的において最適化することができる。
【0327】
好ましいRIIアルファ−GST−AKAP18デルタ相互作用の低分子量阻害剤は、その特性、その作用形態、その特異性に関する情報を提供する追加の実験が可能である。
【0328】
まずまず、該物質は、確立されたELISAを使用して変性等、タンパク質に及ぼす非特異的効果について調べることができる。そのために、RIIアルファまたはGST−AKAP18デルタをMTPに結合させ、物質の濃度を徐々に増大させながら添加することができる。続いて、PKARIIalpha抗体またはA18デルタ3抗体を使用して、タンパク質を検出することができる。
【0329】
また、ELISAは、RIIアルファをMTPに結合させ、濃度を徐々に増大させた阻害剤の存在下で様々な組み換えAKAPタンパク質を添加することによって、低分子量阻害剤の特異性を最初に調べる上で使用することができる。すべてのAKAP−RIIアルファ相互作用の阻害は、阻害剤がRIIアルファに結合していることを示す。複数のAKAPの間における阻害レベルの差異は、阻害剤がAKAPタンパク質の若干異なるRII結合領域に結合していることを示す。
【0330】
上記の調査とは別に、既知の試薬と方法とを用いて直ちに実施できる3つの追加実験について述べる必要がある。これら実験により、特に細胞が生物の一部である場合に、確認物質のいずれが、特に細胞に有効であるか、およびそれゆえ最適化できるかについても情報が与えられうる。
【0331】
最初に、AQP2転座を促すため、ラットの腎臓の内部髄質由来の集合管細胞(IMCD細胞)にAVPで物質の存在下と非存在下の両条件下で刺激を与えた。その後、免疫蛍光染色を実施することができる。これにおいて、培養後、細胞は固定され透過性になる。蛍光染料に結合した抗体を使用して、次にAQP2の細胞間局在を蛍光顕微鏡で決定することができる。このようにして、AQP2のおそらくAKAP18デルタに依存する転座に及ぼす物質の影響を調べることができる。
【0332】
2つ目の実験は、パッチクランプ法を使用して初代培養済みの新生児ラット由来の初代培養心筋細胞において、LタイプCa2+チャンネルを通るCa2+電流を測定する実験である。このために、単一細胞の膜部分を緩衝剤充填ガラス毛管で固定し、膜全体に定電圧を印加する。電流パルスは、固定膜領域に位置する電圧依存LタイプCa2+チャンネルを通るCa2+電流の測定可能な増大をトリガ可能である。
【0333】
細胞を非特異的βアドレナリン受容体アゴニストイソプロテレノールで刺激した後、Ca2+チャンネル電流が増大すると予測される。理由は、受容体の活性は、セクション3.3に記載のAKAP18アルファ依存シグナルカスケードをトリガするからである。結果として、LタイプCa2+チャンネルはリン酸化されるので、その開確率は増大する。該測定は、物質の存在下と非存在下の両方において実施可能であるので、シグナル経路に及ぼす効果は、測定された電流によって間接的に定量化することができる。
【0334】
最後に、3つ目の実験において上記の心筋細胞を使用することができる。この実験において、細胞はイソプロテレノールと上記物質とを用いて前培養する。その後、膜透過性蛍光Ca2+指標を細胞に添加する。これにより、細胞内におけるCa2+分布が可視化され、レーザー走査型顕微鏡(LSM)を使用してCa2+濃度の変化が時間分解的でも分析可能となる。物質の存在下において、物質がAKAP−PKA相互作用に阻害効果を有するとき、すなわち結果としてCa2+チャンネルのリン酸化に阻害効果を有するとき、Ca2+濃度の変化はより少ないと思われる。
【0335】
これらの実験から、PKAとの相互作用に関するAKAP18デルタの特異的阻害または非特異的阻害が、細胞培養モデルにおける物質においても可能であることがわかった場合、濃度依存性有効性を向上させる目的で最適化を行うことができる。
【0336】
最適化の第一段階は、コンピュータに基づくモデルの確立である。これによって、分子のどの官能基がタンパク質のどのアミノ酸と相互作用するかについての概念が得られる。
【0337】
これに基づき、分子の官能基は、Lipinski's Rule(セクション3.1を参照)に従いながら、結合パートナーとの親和性を高めるために秩序だった方法で置換することができる。
【0338】
更に、阻害剤を組み合わせて使用することによって、追加効果またはシナジー効果が得られるかどうか確かめるために、試験を行うことができる。このようにして向上が達成され得るなら、最も効果的な相互作用を有する官能基を組み合わせた分子の標的合成を試みることができる。
【0339】
このようにして得た物質は、同じ効果を達成するより低い濃度であることを要する。これによって、より有利にインビボでの使用が可能となり、非特異的効果または毒性効果がより生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0340】
図面は以下の内容を示している。
【図1】GST融合タンパク質の発現に使用されるpGEX−4T3ベクターの概略図である。図中の英語は、Thrombin:トロンビンglutationS-transferase:グルタチオンS−トランスフェラーゼStop codons:終止コドン
【図2】HyperLadder IのDNAマーカー分子量標準である。図中の英語は、SIZE:大きさ。
【図3】SDS PAGE用のInvitrogen BenchMark protein ladder分子量標準である。図中の英語は、Highlight:ハイライト
【図4】PKA−RIIアルファとGST−AKAP18デルタとの間のタンパク質間結合の定量的検出を行うためのELISAの概略図である。384ウェルMTP(図左)の各ウェルにおいて、以下の反応のいずれかが起きる。図4A:阻害剤が存在しない場合、GST−AKAP18デルタはプレート結合RIIアルファに結合するので、化学発光を介して抗体により検出することができる。図4B:2つの結合パートナーのうちの1つに結合する小分子を添加すると(ここではGST−AKAP18デルタ)、GST−AKAP18デルタと抗体との両方が次の洗浄工程中に除去されるので、化学発光が起きない。図4C:阻害性ペプチドによる結合の阻害についても上記と同様であるが、ただしこの場合は必ずRIIアルファに結合する。図中符号の意味は以下。1:読取り装置における強度の検出(RLUによる)2:384ウェルMTP3:阻害剤なし4:ルミノール(「LumiLight」)5:発光6:二次Ab:抗ラビットPOD7:一次8:阻害小分子9:「陽性対照」:阻害性ペプチドAKAP18−L314E
【図5】競合大腸菌細胞をpGEX−AKAP18デルタで形質転換し、4つのクローン由来のプラスミドDNAを調製し、制限酵素での消化を行い、アガロースゲル電気泳動を使用して分析した。「クローン1non」は、クローン1由来の未処理プラスミドである。「クローン1〜4」は、クローン1〜4のEcoRI処理プラスミド及びXhol処理プラスミドである。消化プラスミドは、4.9kbと1kbの予測断片を示す。図中の語句の意味は以下。Marker:マーカーKlone 1 non:クローン1 nonKlone 1:クローン1Klone 2:クローン2Klone 3:クローン3Klone 4:クローン4
【図6】溶菌と結合の様々な条件下で精製した後で、組み換えGST−AKAP18デルタ(75kDa)またはGST(25kDa)が結合しているグルタチオンセファロースビーズ由来のSDS PAGEサンプル緩衝剤溶出液の分析である。クマシー染色したSDS PAGEを使用した。5μlのサンプル緩衝剤溶出液を各回適用した。図6A:溶菌の条件を変化させた。「GST」は、空pGEXベクターの生成物である。「GST−18デルタ」は、pGEX−AKAP18デルタの生成物である。「FP」は、フレンチプレスである。「DTT」は、単一フレンチプレス溶菌前にDTTを添加した場合である。「Lyso」は、リゾチームを使用した溶菌である。「RT」は、室温である。「MW標準」は、分子量標準である。図6B:結合の条件を変化させた。各細菌の懸濁液は、フレンチプレスを使って3回溶解させた。図中の語句の意味は以下。MW standard:MW標準30 min.:30分60 min.:60分
【図7】段階的に溶出緩衝剤の組成を変化させることによって、グルタチオン(GSH)セファロースビーズ由来のGST−AKAP18デルタの溶出を最適化することができた。表の最初と最後の欄には、クマシー染色したSDS PAGE(A〜I)とウエスタンブロッティング(J)によるセクションがそれぞれ示されている。最後の欄における矢印は、分析前のビーズで使用された種類の溶出条件を示す。各回、70〜80kDaのセクションが示されている。2番目と3番目の欄は、適用されたサンプル量を示す。最後から2番目の欄は、溶出分を示し、その他の欄は、溶出緩衝剤の組成を示す。「V」は量を示し、「T−X」はTriton X-100を示し、「T−20」はTween 20を示し、「E」は溶出番号を示す。図中の語句の意味は以下。SDS-PAGE(A-I Coomassie, J Western Blot):SDS−PAGE(A〜Iはクマシー染色、Jはウエスタンブロッティング)Sample:サンプルBeads after solution:溶出後のビーズ
【図8】図8A:BSA、BSA−ELISA、及び脱脂粉乳を結合緩衝剤に入れた。化学発光基質を添加した後、非特異的シグナルの強度を測定した(単一測定)。図8B:RIIアルファ濃度を徐々に増大させた結合緩衝剤(全質量m(RIIアルファ)として表示)をピペット操作してMTPに入れた。非特異的結合部位をブロッキング緩衝剤でブロッキングし、結合タンパク質量をPKARIIalphaと抗マウスPODAbで検出した。図8C:RIIアルファ量を一定にした(ウェルにつきそれぞれ25ngと40ng)結合緩衝剤をピペット操作してMTPに入れた。非特異的結合部位をブロッキング緩衝剤でブロッキングし、GST−AKAP18デルタ量を徐々に増大させたブロッキング緩衝剤を添加して、結合GST−AKAP18デルタをA18デルタ3と抗ラビットPOD Abで検出した。「I」は強度を示し、「RLU」は相対照度を示し、「m」は質量を示す。図中の語句の意味は以下。I(chemiluminescence) in RLU:RLUにおけるl(化学発光)Skin milk:脱脂粉乳m(RIIα)in ng:m(RIIα)(単位:ng)m(GST-AKAP18δ)in ng:m(GST−AKAP18δ)(単位:ng)
【図9】図9A〜図9C:結合シリーズを調製した(図8Cのとおり)。図9A:それぞれ15ng、25ngの一定量のRIIアルファを含む結合シリーズについて、化学発光強度を測定した。図9B:A18デルタ3の希釈率を変化させ、抗ラビットPOD Abの希釈率は一定にして結合シリーズを検出した。図9C:A18デルタ3の希釈率を一定にし抗ラビットPOD Abの希釈率を変化させて結合シリーズを検出した。図中の語句の意味は以下。I(chemiluminescence) in RLU:RLUにおけるl(化学発光)anti-rabbit POD:抗ラビットPODm(GST-AKAP18δ)in ng:m(GST−AKAP18δ)(単位:ng)
【図10】図10A:一定量のRIIアルファに、GST−AKAP18デルタ0.80ngと160ngとを添加した。一定の希釈率のA18デルタ3と、希釈率1:3000(3k)と1:10000(10k)である二次抗ラビットPOD Abを使用して検出を行った。各実験は、1%DMSOの存在下(+)または非存在下(−)において実施した。図10B:一定量のRIIアルファに対する一定量のGST−AKAP18デルタの結合を、DMSO濃度を徐々に増大させて(0〜2.5%)検出した。図10C:0ngと25ngのRIIアルファをそれぞれ含む結合シリーズを作製して検出し、シグナル特異性を識別した。図中の語句の意味は以下。I(chemiluminescence) in RLU:RLUにおけるl(化学発光)Dilution:希釈率(二次Ab)m(GST-18δ)in ng:m(GST−18δ)(単位:ng)no RIIα:(RIIアルファなし)c(DMSO)in %:c(DMSO)(単位:%)m(GST-AKAP18δ)in ng:m(GST−AKAP18δ)(単位:ng)25ng of RIIα bound to MTP:RIIα25ngをMTPに結合no RIIα bound to MTP:MTPへのRIIα結合なし
【図11】IC50値を計算するため、一定量のRIIアルファとGST−AKAP18デルタとの間の結合を、ペプチド量を徐々に増大させて検出した。一部位結合モデルを測定値に適合させた(セクション1.11を参照)。L314EとHt31は競合的な結合阻害性を示したが、18d−PPとHt31−Pは、陰性対照として使用した。図中の語句の意味は以下。Binding GST-AKAP18δ-RIIα in %:GST−AKAP18δ−RIIαの結合率(単位:%)log(c(peptide)in μM:log(c(ペプチド)(単位:μM))
【図12】結合シリーズを作製した。ここで、洗浄によって、RIIアルファ−GST−AKAP18デルタ相互作用の進行を15分後、30分後、60分後に中断した。その後、結合GST−AKAP18デルタの量を検出した。図中の語句の意味は以下。I(chemiluminescence) in RLU:RLUにおけるl(化学発光)m(GST-AKAP18δ)in ng:m(GST−AKAP18δ)(単位:ng)
【図13】図13A:一定量のRIIアルファとGST−AKAP18デルタとを、15分、30分、または60分間、濃度0.01μMまたは10μMで、ペプチドL314Eと18d−PPに接触させた。その後、結合GST−AKAP18デルタの量を検出した。図13B:一定濃度のRIIアルファ−GST−AKAP18デルタ合成物を、培養時間15分、30分、60分の考えられるすべての組み合わせを用いてA18デルタ3と抗ラビットPOD Abで検出した。本図において、誤差表示は不可能であった。図13C:同じRIIアルファ−GST−AKAP18デルタ結合シリーズに、Abと化学発光基質を添加した。化学発光強度は、2分後、4分後、8分後に測定した。図中の語句の意味は以下。I(chemilumineszenz) in RLU:RLUにおけるl(化学発光)Incubation time in min.:培養時間(単位:分)c(peptides)in μM:(c(ペプチド)(単位:μM))peptide:ペプチドIncubation time 1st Ab in min.:一次Abの培養時間(単位:分)Incubation time 2nd Ab in min.:二次Abの培養時間(単位:分)m(GST-AKAP18δ)in ng:m(GST−AKAP18δ)(単位:ng)
【図14】MTPを等量のRIIアルファで1時間被覆した。次にブロッキング緩衝剤を添加し、MTPを1時間室温で、または66時間4℃で培養した。次に、GST−AKAP18デルタを徐々に濃度を増大させながら添加した。結合GST−AKAP18デルタの量をA18デルタ3と抗ラビットPOD Abを使用して検出した。図中の語句の意味は以下。I(chemilumineszenz) in RLU:RLUにおけるl(化学発光)m(GST-AKAP18δ)in ng:m(GST−AKAP18δ)(単位:ng)
【図15】図15A:RIIアルファ−GST−AKAP18デルタ結合曲線は、他の実験を示す。50nMのGST−AKAP18デルタを使用して実施した各実験は、高感度な測定範囲内にあった。図15B:阻害性ペプチドL314Eを使用した場合も、濃度依存的に結合が阻害された。図15C:阻害剤の濃度を徐々に増大させた検証実験の概要。9つの対象データと比較用の非活性化合物2348を示す。図15D〜図16L:一部位結合モデルの(セクション1.11を参照)測定値(単一測定なので誤差表示はなし)への適合に基づいて計算した、各単独の阻害剤、構造式、及びIC50値の濃度依存性効果(図15D〜図16L:単一測定)。図中の語句の意味は以下。Binding in %:結合率(単位:%)c(GST-AKAP18δ)in nM:c(GST−AKAP18δ)(単位:nM)log(c(substance)in μM:log(c(物質)(単位:μM))log(c(peptide)in μM:log(c(ペプチド)(単位:μM))
【図16】次ページに続く(図16H〜図16L)。図16H〜図16Lは、図15からの続きとしての第2部。第1部と判例については図15A〜15Gを参照。図中の語句の意味は以下。Binding in %:結合率(単位:%)log(c(substance)in μM:log(c(物質)(単位:μM))log(c(peptide)in μM:log(c(ペプチド)(単位:μM))
【図17】PKA−RIIアルファまたはPKA−RIIベータとGST−AKAP18デルタとの間のタンパク質間結合の定量的検出を行うために使用したELISAの概略図である(グルタチオンSトランスフェラーゼのAKAP18デルタとの融合)。384ウェルELISAプレートにおける低分子量物質の存在下または非存在下における相互作用である。一次抗AKAP18デルタと二次ぺルオキシダーゼ結合抗体と化学発光とを使用して、タンパク質相互作用を検出した。図中の語句の意味は以下。Inhibitor:阻害剤Antibody:抗体RIIα or RIIβ:RIIαまたはRIIβ
【図18】特定の物質による腎臓主細胞におけるアクアポーリン−2(AQP2)水路のバソプレッシン(AVP)依存性再分布の阻害(表B、阻害剤濃度(単位:μM)を参照)。ラットの腎臓の内部髄質由来の一時培養主細胞(IMCD細胞)は、AQP2のAVP誘発転座のモデルを示す。該再分布は、腎臓におけるAVP誘導水再吸収の分子基盤である。AQP2は、レーザー走査型顕微鏡を使用して、未処理細胞(対照)とAVPまたは物質で処理した細胞とにおける特異抗血清とCy3標識二次抗体とを用いて検出した(Tammaら(2003年)、Hennら(2004年))。図中の語句の意味は以下。unbehandelt:未処理inhibitor:阻害剤
【図19A】PKAの調節RIIアルファサブユニットとのAKAP18デルタの相互作用を阻害する物質群。相互作用を阻害するすべての物質(表A、Bを参照)の構造類似性について調べた。「構造1〜18」表示の下にある番号は、化合物ID(表A、Bを参照)に対応する。構造類似性は、物質1〜4、5と6との間、7〜9、11と12との間、13と14との間、15と16との間、17と18との間に見られた。物質10は、相互作用を阻害する他の物質となんら類似性が見られなかった。これらの構造の一般化は、図20に図示した。図中の語句の意味は以下。Strukturen:構造
【図19B】同上
【図20A】図19に示した構造1〜17の一般化である。
【図20B】同上
【図20C】同上
【図21】IMCD細胞におけるAQP2のAVP誘導再分布における、低分子量物質18882、990、990誘導体SM61、990誘導体SM65の効果(図18を参照)。物質の構造と化学特性は表A、B、Cに記載した(阻害物質の濃度(単位μM))。AQP2は、レーザー走査型顕微鏡を使用して、未処理細胞(対照)とAVPまたは物質で処理した細胞とにおける特異抗血清とCy3標識二次抗体とを用いて検出した(Tammaら(2003年)、Hennら(2004年))。低分子量物質990は、IMCD細胞においてPKAの調節RIIアルファサブユニットとのAKAP18デルタの相互作用を阻害する。対応して、990は、AQP2のAVP誘導再分布を妨げる。990誘導体である物質SM61は、同様にAQP2のAVP誘導再分布を妨げる。対照的に、物質18882と990誘導体である物質SM65は、使用濃度におけるAQP2のAVP誘導再分布になんら影響を及ぼさない。
【図22】低分子量物質990は、IMCD細胞においてPKAの調節RIIアルファサブユニットとのAKAP18デルタの相互作用を阻害する。物質(表A、B、Cを参照)は、図17に示したELISAに基づく試験アレイを使用して20064の化合物から構成される物質ライブラリーをスクリーニングして識別した。初代培養IMCD細胞は、未処理のまま(対照)か、または物質990(100μM)か陰性対照としてのcAMPかで30分間培養した。次に、細胞は溶菌され、cAMPアガロース沈澱させた(Hennら、JBC279、26654、2004年)。図22A:AKAP18デルタは、溶解物中で、ならびにcAMPアガロース沈澱物(cAMPアガロース)中で検出された(ウエスタンティングにおけるAKAP18デルタ特異抗体A18デルタ4を使用)(Hennら、2004年)。陰性対照として、cAMPをバッチに添加した。結果として、PKAの調節サブユニットのcAMPアガロースへの結合は、競合的に阻害された。このため、AKAPは沈殿しなかった。結果として、AKAP18デルタは、このサンプルでは検出されなかった。組み換え的に生成されたAKAP18デルタは、陽性対照として使用した。図22B:溶解物中とcAMPアガロース沈澱物中とでAKAPを検出するため、RIIオーバレイを行った(Hennら、JBC279、26654、2004年)。組み換え的に生成されたAKAP18デルタは、陽性対照として検出された。AKAP18デルタは、図22Aと図22Bにおいて矢印で示した。図中の語句の意味は以下。Lysates:溶解物cAMP agarose:cAMPアガロースKontrolle:対照
【図23】低分子量物質18882は、心筋細胞においてPKAの調節RIIアルファサブユニットとのAKAP18デルタの相互作用を阻害する。一方、物質990は、この相互作用に何ら影響を及ぼさない。物質(表A、B、Dを参照)は、図17に示したELISAに基づく試験アレイを使用して20064の化合物から構成される物質ライブラリーをスクリーニングして識別した。初代培養新生児心筋細胞は、未処理のまま(対照)か、または物質990、18882(各回100μM)か陰性対照としてのcAMPかで30分間培養した。次に、細胞は溶菌され、cAMPアガロース沈澱させた(Hennら、JBC279、26654、2004年)。図23A:AKAP18デルタは、溶解物中で、ならびにcAMPアガロース沈澱物(cAMPアガロース)中で検出された(ウエスタンブロッティングにおけるAKAP18デルタ特異抗体A18デルタ4を使用)(Hennら、JBC279、26654、2004年)。陰性対照として、cAMPをバッチに添加した。結果として、PKAの調節サブユニットとcAMPアガロースとの結合は、競合的に阻害された。したがって、AKAPは沈殿せず、結果としてAKAP18デルタはこのサンプルでは検出されない。組み換え的に生成されたAKAP18デルタは、陽性対照として使用した。図23B:ウエスタンティングを使用して、PKAの調節RIIアルファサブユニットを図23Aに記載と同じサンプルで検出した。予測通り、cAMPを含むサンプルにおいては、RIIベータは検出されない(表Aを参照)。予測通り、抗体はAKAP18デルタを認識しない。図23C:溶解物中とcAMPアガロース沈澱物中とでAKAPを非選択的に検出するため、RIIオーバレイを行った(Hennら、JBC279、26654、2004年)。組み換え的に生成されたAKAP18デルタは、陽性対照として検出された。図中の語句の意味は以下。Lysates:溶解物cAMP agarose:cAMPアガロースKontrolle:対照
【図24】物質18882によるLタイプCa2+チャンネル電流の阻害。LタイプCa2+チャンネル電流は、パッチクランプ法を使用して新生児ラット心筋細胞において測定した。細胞は、−70mVで保持し、0mVの試験電位まで繰り返し消極した(400msで−35mVまで増大後)。上図:物質18882(表A、Bを参照)と対照としての溶媒DMSOとを規定濃度にて細胞に添加した。下図:物質990と990の誘導体SM61(表Cを参照)とを規定濃度にて細胞に添加した。電流は、細胞構造全体が確立された後、400秒間測定した。細胞を、規定回数イソプロテレノール(1μM、ISO、β受容体アゴニスト)で刺激した。イソプロテレノールは、ES溶剤で洗浄した。図は、正規化電流の時間プロフィールを示す。(nは、測定細胞数に対応する。エラーバーは平均値±SEMを示す。)
【0341】
表A、B、C、Dは、以下の内容を示す。
【0342】
表A
PKAの調節RIIアルファサブユニットとのAKAP18デルタの相互作用を阻害する低分子量物質である。表は、少なくとも40%分、相互作用を阻害する142の物質を示す。
「結合率(単位%)」:各物質の存在下における、GST−AKAP18デルタとPKA−RIIアルファとの相対結合の百分率を示す。これは、対照(各物質の非存在下における、GST−AKAP18デルタとPKA−RIIアルファとの結合)に基づく。これらの物質は、図17に示したELISAに基づく試験アレイを使用して20064の化合物から構成される物質ライブラリーをスクリーニングして識別した。物質の構造が示されている。物質は、その阻害効果に従って配列されている。リストは、PKAの調節RIIaサブユニットとのAKAP18デルタの相互作用に最も潜在的阻害性を有する物質から順に配列されている。
「MW(g/mol)」:この値は、各物質の分子量を示す。分子量も、各物質の大きさの近似を示す。これは、バイオアベイラビリティに関して重要である(小分子は、より容易に細胞膜を通過可能)。
「化合物ID」:これらの数値は、Leibniz-Institut fur Molekulare Pharmakologieのシリアルコードを示す(合計20064)。
「プレートID」:物質が保管されている各物質ライブラリープレートの番号。
「位置ID」:物質が保管されている物質ライブラリープレートの位置。
「式」記載の経験公式は、各物質の元素組成を示す。
「logP」:この値は、各物質の分配係数の計算対数値である。これによって、極性相(水相)及び非極性相(膜性(脂質))における各物質の可溶性について予測可能となるので、細胞システムにおけるバイオアベイラビリティに関して初期情報が得られる。
「logSw」:この値は、可溶性係数の計算対数値である。これによって、水中における各物質の可溶性について情報が得られる。
「水素結合受容体」:各物質における、水素結合受容体数(N原子とO原子)を示す。
「水素結合供与体」:各物質における、水素結合供与体数(NH基とOH基)を示す。水素結合は、小分子とタンパク質との間の非共有結合の最も重要な種類である。したがって、水素結合供与体と水素結合受容体は、タンパク質と相互作用する物質の潜在能力を増大させる。
「原子結合数」:この値は、各物質の原子結合の数に対応する。これを中心として自由回転可能である。該結合数が大きいと、物質の構造的フレキシビリティが高まるので、タンパク質表面に適切に結合する確率も高まる。
要約すると、上記データによって、Lipinskiら(Lipinski, C.A., Lombardo, F., Dominy, B.W., Feeney, P.J., 「薬剤の発見・開発設定における可溶性と浸透性とを予測するための実験的コンピュータ使用に基づく方法」(Experimental and computational approaches to estimate solubility and permeability in drug discovery and development settings). Adv. Drug Deliv. Rev. 46, 3-26 (2001))によって実証された化学物質のバイオアベイラビリティに関する予測が可能になる。更に、これらの物質は、いわゆるRule of Fiveに適合するべきである。
・水素結合供与体数が最大5個(OH基とNH基との合計)
・水素結合受容体数が最大10個(N原子とO原子との合計)
・分子量が最大500g/mol
・分配係数logPは5以下
【0343】
表B
PKAの調節RIIアルファサブユニットとのAKAP18デルタの相互作用を阻害する選択された低分子量物質である。表は、少なくとも80%分、相互作用を阻害する物質を表Aから9つ選んで記載している。
「結合率(単位%)」:この値は、各物質の存在下における、GST−AKAP18デルタとPKA−RIIアルファとの相対結合の百分率を示す。これは、対照(物質の非存在下における、GST−AKAP18デルタとPKA−RIIアルファとの結合)に基づく。
IC50値は、各物質を滴定することによって測定した。相互作用阻害のIC50値は、図17に記載のELISA実験を使用して測定した。
「MW(g/mol)」:この値は、各物質の分子量を示す。分子量も、各物質の大きさの近似を示す。これは、バイオアベイラビリティに関して重要である(小分子は、より容易に細胞膜を通過可能)。
「化合物ID」:これらの数値は、Leibniz-Institut fur Molekulare Pharmakologieのシリアルコードを示す(合計20064)。
「プレートID」:これらの数値は、物質が保管されている各物質ライブラリープレートの番号である。
「位置ID」:物質が保管されている物質ライブラリープレートの位置。
「式」記載の経験式は、各物質の元素組成を示す。
「logP」:この値は、各物質の分配係数の計算対数値である。これによって、極性相(水相)及び非極性相(膜性(脂質))における各物質の可溶性について予測可能となるので、細胞システムにおけるバイオアベイラビリティに関して初期情報が得られる。
「logSw」:この値は、可溶性係数の計算対数値である。これによって、水中における各物質の可溶性について情報が得られる。
「水素結合受容体」:各物質における、水素結合受容体数(N原子とO原子)を示す。
「水素結合供与体」:各物質における、水素結合供与体数(NH基とOH基)を示す。水素結合は、小分子とタンパク質との間の非共有結合の最も重要な種類である。したがって、水素結合供与体と水素結合受容体は、タンパク質と相互作用する物質の潜在能力を増大させる。
「原子結合数」:この値は、各物質の原子結合の数に対応する。これを中心として自由回転可能である。該結合数が大きいと、物質の構造的フレキシビリティが高まるので、タンパク質表面に適切に結合する確率も高まる。
【0344】
表C
PKAの調節RIIアルファサブユニットとのAKAP18デルタの相互作用を調節する低分子量物質である。物質は、表A、Bに記載の物質990の誘導体である。これらの物質は、化学的改良により物質990から形成した。各物質の構造、実験式、分子量(MW)、logP値、水素結合受容体数、及び水素結合供与体数を示した(これらのパラメータについての説明は、表A、Bの凡例を参照)。PKAの調節RIIアルファサブユニットとのAKAP18デルタの相互作用に対する各物質の阻害効果は、図17に示したELISA実験において最高3回まで(スクリーニング番号1〜3)調べた。その結果からIC50(平均値。単位:μM)を測定した。誘導体と物質990とのIC50比を計算した(IC50比(化合物/990))。値が1より大きい場合はより阻害性が高いことを反映し、値が1より小さい場合は元の物質に比べて相互作用阻害性が小さいことを反映する。IC50平均値は、990のIC50平均値に関して行った実験から計算し、正規化した、IC50平均値を示す。阻害性を示さない物質には「−」を記載した。
【0345】
表D
PKAの調節RIIアルファサブユニットとのAKAP18デルタの相互作用を阻害する低分子量物質SM−FPと990である。物質SM−FPは、表A、Bに記載の物質990の誘導体である。SM−FPは、蛍光基の存在によって特徴付けられる。各物質の構造、実験式、分子量(MW)、logP値、水素結合受容体数、及び水素結合供与体数を示した(これらのパラメータについての説明は、表A、Bの凡例を参照)。PKAの調節RIIアルファサブユニットとのAKAP18デルタの相互作用に対する各物質の阻害効果は、図17に示したELISA実験において最高3回まで(スクリーニング番号1〜3)調べた。その結果からIC50(平均値。単位:μM)を測定した。誘導体と物質990とのIC50比を計算した(IC50比(化合物/990)。値が1より大きい場合はより阻害性が高いことを反映し、値が1より小さい場合は元の物質に比べて相互作用阻害性が小さいことを反映する。IC50平均値は、990のIC50平均値に関して行った実験から計算し、正規化した、IC50平均値を示す。阻害性を示さない物質には「−」を記載した。
【0346】
表A:AKAP18δ−RIIα相互作用を阻害するために使用される低分子量物質
表中英語の意味は以下;Structures:構造、Comp. ID:化合物ID、PlateID 384:プレートID384、PosID384:位置ID384、Binding:結合率、H acceptor:水素結合受容体、H donor:水素結合供与体、B rotN:原子結合数






















【表A1】



















【表A2】



















【表A3】



















【表A4】



















【表A5】



















【表A6】



















【表A7】




















【表A8】


















【表A9】





















【表A10】





















【表A11】






















【表A12】






















【表A13】


















【表A14】



















【表A15】













【表A16】
















【表A17】





















【表A18】



















【表A19】




















【表A20】





















【表A21】





















【表A22】















【表A23】























【表A24】




















【表A25】
















【表A26】



















【表A27】














【表A28】






























【表A29】

















【表A30】




















【表A31】


















【表A32】


















【表A33】

























【表A34】













【表A35】






















【表A36】


















【表A37】

















【表A38】

















【表A39】


















【表A40】


















【表A41】



























【表A42】
















【表A43】

















【表A44】


















【表A45】



















【表A46】



















【表A47】


















【表A48】



















【表A49】


























【表A50】













【表A51】


























【表A52】





【0347】
表B:PKA−RIIα−GST−AKAP18δ相互作用の阻害剤(物質ライブラリーFMP20000(ChemDiv社)表中の英語の意味は以下;
Comp. ID:化合物ID、ID No.:ID番号、Structure:構造、Formula:式、PlateID:プレートID、PosID:位置ID、Bar ID:バーコード、Binding:結合率、H acceptor:水素結合受容体、H donor:水素結合供与体、B rotN:原子結合数
【表B1】













【表B2】











【0348】
表C:物質990の誘導体
表中の英語の意味は以下;
Substance:物質
Structure:構造
Formula:式
H
IC50 in Screening no.1-3(μM):スクリーニング番号1〜3におけるIC50(μM)
Ratio IC50(comp./990) in Screening no. 1-3(μM):スクリーニング番号1〜3におけるIC50比(化合物/990)(μM)
Mean IC50(μM):IC50平均値(μM)
H acceptor:水素結合受容体
H donor:水素結合供与体

【表C1】












【表C2】



















【表C3】























【表C4】




















【表C5】



















【表C6】

















【表C7】



















【表C8】





















【表C9】
















【表C10】

















【表C11】





















【表C12】




【0349】
表D:蛍光染料結合物質SM−FP(物質990の誘導体)
表中の英語は以下の意味;
表中の英語の意味は以下;
Substance:物質
Structure:構造
Formula:式
H
IC50 in Screening no.1-3(μM):スクリーニング番号1〜3におけるIC50(μM)
Ratio IC50(comp./990) in Screening no. 1-3(μM):スクリーニング番号1〜3におけるIC50比(化合物/990)(μM)
Mean IC50(μM):IC50平均値(μM)
H acceptor:水素結合受容体
H donor:水素結合供与体、
【表D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表Aによる非ペプチドタンパク質キナーゼA/タンパク質キナーゼAアンカータンパク質分離剤。
【請求項2】
分子量150〜600g/mol、好ましくは190〜300g/molを有し、分配係数logPが10以下、好ましくは8以下であって、最大10個の水素結合供与体と最大10個の水素結合受容体とを有し、可溶度値logSwが−400〜0であって、原子結合数値が0〜7である非ペプチドタンパク質キナーゼA/タンパク質キナーゼAアンカータンパク質分離剤。
【請求項3】
最大7個、好ましくは6個の水素結合供与体を有し、最大6個、好ましくは5個、より好ましくは4個の水素結合受容体を有し、および/またはlogP値が1以上8以下、好ましくは1以上5以下であることを特徴とする、請求項2に記載の分離剤。
【請求項4】
前記分離剤が、AKAPとPKAサブユニットとの相互作用を少なくとも40%分、好ましくは少なくとも80%分阻害することを特徴とする、前記請求項1〜3のいずれかに記載の分離剤。
【請求項5】
前記分離剤が表Bから選択されることを特徴とする、前記請求項1〜4のいずれかに記載の分離剤。
【請求項6】
該分離剤が表Cから選択されることを特徴とする、前記請求項1〜5のいずれかに記載の分離剤。
【請求項7】
前記分離剤が表Dから選択されることを特徴とする、前記請求項1〜6のいずれかに記載の分離剤。
【請求項8】
一般式Iに記載の前記分離剤が、メソメリズムを介して相互交換可能である(RとRは相互交換可能とみなされる)ことを特徴とする、前記請求項1〜7のいずれかに記載の分離剤。
式I
【化1】


(式中、Xは非水素原子、好ましくは硫黄原子である。
はアルキル残基、またはアリール残基、好ましくは1−ナフチルメチル残基である。
とRは水素原子、またはアルキル残基またはアリール残基であり、
とRは好ましくは2つの水素原子、2つのメチル残基、1つのベンジル残基と1つのメチル残基、または1つのベンジル残基と1つのtert−ブチル残基である。
特に好ましくは、RとRは2−チアゾリジニル残基とメチル残基またはtert−ブチル残基であるか、または1−ナフチル残基と、イソプロピル残基、シクロヘキシル残基、ベンジル残基、またはメチル残基であるか、または一般式IIによるものである。)
式II
【化2】


(式中、X、R、R、Rは式Iと同じ意味を有する)
【請求項9】
該分離剤が、図19による構造を含むことを特徴とする、前記請求項1〜8のいずれかに記載の分離剤。
【請求項10】
該分離剤が、図20による構造を含むことを特徴とする、前記請求項1〜9のいずれかに記載の分離剤。
【請求項11】
AKAP18タンパク質、好ましくはAKAP18デルタタンパク質および/またはRIアルファおよび/またはRIIアルファおよび/またはRIベータおよび/またはRIIベータの結合を阻害することを特徴とする、前記請求項1〜10のいずれかに記載の分離剤。
【請求項12】
ヒトまたは動物の身体の外科的および/または治療的処置に用いられる、および/またはヒトまたは動物の身体に対して行われる診断方法に用いられる、前記請求項1〜11のいずれかに記載の分離剤。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の少なくとも1つの分離剤と、更に少なくとも1つの製剤キャリアおよび/または補助薬を含む医薬品。
【請求項14】
該キャリアが、溶加剤、崩壊剤、結合剤、保湿剤、増量剤、溶出抑制剤、吸収促進薬、湿潤剤、吸収剤および/または潤滑剤を含む群から選択されることを特徴とする、
前記請求項13に記載の医薬品。
【請求項15】
前記薬剤が、カプセル、タブレット、被覆タブレット、座薬、軟膏、クリーム、パッド、注射液および/または輸液であることを特徴とする、前記請求項13又は14のいずれかに記載の医薬品。
【請求項16】
前記認識分子が、抗体、錯化剤および/またはキレート剤であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の分離剤を標的とする認識分子。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれかに記載の分離剤と、請求項13〜15のいずれかに記載の医薬品および/または請求項16に記載の認識分子と、任意に、該キット成分の組合せおよび/または取扱いに関する情報を含むキット。
【請求項18】
AKAP−PKA相互作用の改良、特に阻害のための前記請求項1〜12のいずれかに記載の該分離剤および/または前記請求項13〜15のいずれかに記載の該医薬品の使用、および/または請求項16に記載の認識分子の使用。
【請求項19】
該相互作用の改良が細胞、細胞培養物、組織および/または標的生物において有効であることを特徴とする、前記請求項18に記載の使用。
【請求項20】
該相互作用の改良として、AQP2のバソプレッシン誘導再分布を改良、特に阻害していることを特徴とする、前記請求項19に記載の使用。
【請求項21】
RIアルファ、RIIアルファ、RIベータおよび/またはRIIベータPKAサブユニットとAKAPとの該相互作用を改良、特に阻害することを特徴とする、前記請求項18〜20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
請求項1〜17に記載の該医薬品が、AKAP、好ましくはAKAP18、より好ましくはAKAP18デルタに特異的に結合する、および/または該医薬品がPKA、好ましくはそのサブユニット、特に好ましくはRIIサブユニットに特異的に結合すること
を特徴とする、前記請求項18〜21のいずれかに記載の使用。
【請求項23】
該サブユニットが、ヒトおよび/またはネズミ科動物由来である、および/またはラット由来であることを特徴とする、前記請求項22に記載の使用。
【請求項24】
好ましくは区分化cAMP依存シグナル伝達に影響を及ぼす前記請求項18〜23のいずれかに記載の分離剤または医薬品のインビトロまたはインビボでの使用。
【請求項25】
前記区分化cAMP依存シグナル伝達の欠陥に伴う以下の疾病を含む群から選択される疾病の予防または治療のための薬剤の製造のための前記請求項18〜24のいずれかに記載の分離剤または医薬品の使用:
任意の病因のぜんそく、すなわちアトピー性ぜんそく、非アトピー性ぜんそく、アレルギー性ぜんそく、lgE媒介アトピー性ぜんそく、気管支ぜんそく、本態性ぜんそく、原発性ぜんそく、病理生理学的異常による内因性ぜんそく、環境要因による外因性ぜんそく、未知または不明な原因による本態性ぜんそく、非アトピー性ぜんそく、気管支ぜんそく、気腫性ぜんそく、ストレス誘導ぜんそく、職業ぜんそく、細菌/真菌/原虫/ウイルス感染性によるアレルギーぜんそく、非アレルギー性ぜんそく、初期ぜんそく、「喘鳴小児性症候群」からなる群のぜんそく、
慢性/急性気管支収縮、慢性気管支炎、小気道閉そく及び肺気腫、
任意の病因の気道の閉塞性/炎症性疾病、すなわちぜんそく、塵肺、慢性好酸球性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、肺気腫または関連呼吸困難を含むCOPD、気管の不可逆性進行性閉塞の特徴を有するCOPD、ショック肺(成人呼吸器疾患症候群、ARDS)、他の医薬品による治療を原因とする気管過敏症の悪化からなる群の気道の閉塞性/炎症性疾病、
任意の病因の塵肺、すなわちアルミニウム肺症やアルミニウム肺塵、炭粉症(ぜんそく)、アスベスト肺症やアスベスト肺塵、カリコシス/石灰肺塵、ダチョウ羽毛塵の吸入によるプチロシス(ptilosis)、鉄微粒子の吸入による鉄沈着症、珪肺症またはポッターぜんそく、綿肺症または綿塵肺、滑石塵肺からなる群の肺塵、
任意の病因の気管支炎、すなわち急性気管支炎、急性喉頭気管支炎、ピーナツ誘発性気管支炎、気管支カタル、クループ性気管支炎、喀痰を伴わない気管支炎、感染性ぜんそく気管支炎、喀痰を伴う気管支炎、ブドウ球菌/連鎖球菌気管支炎、肺胞気管支炎からなる群の気管支炎、
任意の病因の気管支拡張症、すなわち円柱状気管支拡張症、嚢胞状気管支拡張症、紡錘状気管支拡張症、細気管支拡張症、嚢状気管支拡張症、喀痰を伴わない気管支拡張症、濾胞状気管支拡張症からなる群の気管支拡張症、
季節性アレルギー鼻炎、通年性アレルギー鼻炎、または任意の病因の副鼻腔炎、すなわち化膿性/非化膿性副鼻腔炎、急性/慢性副鼻腔炎、し骨蜂巣炎、前副鼻腔炎、上顎副鼻腔炎、ちょう形骨副鼻腔炎からなる群の副鼻腔炎、
任意の病因の関節リウマチ、すなわち急性関節炎、急性痛風性関節炎、原発性慢性多発性関節炎、骨関節症、感染性関節炎、ライム関節炎、プログロディエント(progredient)関節炎、乾癬性関節炎、脊髄関節炎からなる群の関節リウマチ、
炎症を伴う痛風・発熱、または炎症を伴う疼痛、
任意の病因の好酸球関連病理学的異常、すなわち好酸球増加症、好酸球肺湿潤、レフラー症候群、慢性好酸球肺炎、熱帯性肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギルス腫、好酸球肉芽腫、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、チャーグ・ストラウス症候群、結節性多発性動脈炎(PAN)、全身性壊死性血管炎からなる群の好酸球関連病理学的異常、
アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、またはアレルギー性/アトピー性湿疹、
任意の病因のじんましん、すなわち免疫関連じんましん、補体関連じんましん、じんましん誘発物質により誘発されたじんましん、物理的刺激により誘発されたじんましん、ストレス誘発性じんましん、突発性じんましん、急性じんましん、慢性じんましん、血管神経性浮腫、コリン性じんましん、常染色体優勢/獲得型寒冷じんましん、接触性じんましん、ジアンチーン(giantean)じんましん、丘疹状じんましんからなる群のじんましん、
任意の病因の結膜炎、すなわち照射性結膜炎、急性カタル性結膜炎、急性伝染性結膜炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性結膜炎、慢性カタル性結膜炎、化膿性結膜炎、春先の結膜炎からなる群の結膜炎、
任意の病因のブドウ膜炎、すなわちブドウ膜全体またはその一部の炎症、前部ブドウ膜炎、虹彩炎、毛様体炎、虹彩毛様体炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体過敏性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、脈絡膜炎、脈絡網膜炎、乾癬からなる群のブドウ膜炎、
任意の病因の多発性硬化症、すなわち原発性プログロディエント(progredient)多発性硬化症、突発性及び症状の寛解を伴う多発性硬化症からなる群の多発性硬化症、
任意の病因の自己免疫/炎症性疾患、すなわち自己免疫−血液疾患、溶血性貧血、再生不良性貧血、再生不能性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、全身性紅斑性狼そう、多発性軟骨炎、強皮症、ウェーゲナー肉芽腫症、光線障害、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、スティーブンス・ジョンソン症候群、突発性スプルー、自己免疫過敏結腸症、潰瘍性大腸炎、クローン病、内分泌眼病、バセドー氏病、サルコイドーシス、肺胞炎、慢性過敏性肺炎、原発性胆汁性肝硬変、インスリン欠乏性糖尿病または1型膵性メリティス、前部ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎または後部ブドウ膜炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎(蔓延性)、間質性肺線維症、肝硬変症、嚢胞性線維症、乾癬性関節炎、糸球体腎炎(ネフローゼ性、非ネフローゼ性)、急性糸球体腎炎、突発性ネフローゼ、微小変化ネフロパシー、炎症性/過剰増殖性皮膚疾患、乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、家族性両性天ほうそう、紅斑性天ほうそう、落ち葉状天ほうそう、ブルガリス(vulgaris)天ほうそうからなる群の自己免疫/炎症性疾患、
臓器移植後の回種移植拒絶反応の予防、
任意の病因の過敏性腸炎(炎症性大腸炎(IBD)、すなわち潰瘍性大腸炎(UC)、膠原性大腸炎、ポリープ性大腸炎、貫壁性大腸炎、クローン病(CD)からなる群の過敏性腸炎、
任意の病因の敗血性ショック、すなわち腎不全、急性腎不全、悪液質、マラリア悪液質、下垂体性悪液質、尿毒性悪液質、心臓悪液質、副腎悪液質またはアジソン病、癌性悪液質、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症から起こる悪液質からなる群の敗血性ショック、
肝臓障害
肺高血圧症、酸素欠乏に誘発される肺高血圧症、
骨希薄化、原発性骨粗しょう症、二次骨粗しょう症、
任意の病因の中枢神経系異常、すなわちうつ病、パーキンソン病、学習記憶障害、遅発性ジスケネジー、薬物依存症、動脈硬化症認知症、ハンチントン病の随伴症状としての認知症、ウィルソン病、激越性麻痺症、視床委縮からなる群の中枢神経系異常、
感染症、特にウイルス感染。該ウイルスは、宿主におけるTNF−αの生成を増大させる、または宿主におけるTNF−αの上方調節に感応するので、複製やその他の重要な活性を妨げる。該感染症のウイルスには、HIV−1、HIV−2、HIV−3、サイトメガロウイルス、CMV、インフルエンザ、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(帯状ヘルペスや単純ヘルペスを含む)が挙げられ、
イースト菌感染症と真菌感染症の該イーストと菌類は、宿主におけるTNF−αの上方調節に感応するまたはTNF−αの生成を誘発し、特に全身性イースト菌感染症と真菌感染症の治療用に他の薬剤とともに同時投与を行う場合は真菌性髄膜炎に有効で、該他の薬剤の例としては、ポリマイシン、好ましくはポリマイシンB、イミダゾール、好ましくはクロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾールおよび/またはケトコナゾール、トリアゾール、好ましくはフルコナゾールおよび/またはイトラナゾール、ならびにアンフォテリシン、好ましくはアンフォテリシンBおよび/またはリポソームアンフォテリシンBが挙げられる。
【請求項26】
請求項13〜15のいずれかに記載の医薬品が、ゲル、パウドレージ(poudrage)、粉末、タブレット、持続放出タブレット、予混合剤、乳化剤、調合製剤、ドロップ剤、濃縮物、粒状、シロップ、ペレット、ボーラス、カプセル、エアロゾル、スプレーおよび/または吸入の形態にて調製され適用されることを特徴とする、前記請求項18〜25のいずれかに記載の使用。
【請求項27】
請求項13〜15のいずれかに記載の医薬品が、濃度0.1〜99.5wt%、好ましくは濃度0.5〜95.0wt%、より好ましくは濃度20.0〜80.0wt%で製剤中に存在することを特徴とする、前記請求項26に記載の使用。
【請求項28】
該製剤が、経口投与、静脈内投与、筋内投与、腹腔内投与および/または局所性投与されることを特徴とする、前記請求項27に記載の使用。
【請求項29】
請求項13〜15のいずれかに記載の医薬品を、24時間につき体重1kg当り総量0.05〜500mg、好ましくは5〜100mg使用することを特徴とする、前記請求項18〜28のいずれかに記載の使用。
【請求項30】
請求項13〜15のいずれかに記載の少なくとも1つの医薬品が、生物、好ましくはヒトまたは動物に接触することを特徴とする、前記請求項18〜29のいずれかに記載の使用。
【請求項31】
接触ルートは、経口、注入、経局所、経膣、経直腸および/または経鼻であること
を特徴とする前記請求項18〜30のいずれかに記載の使用。
【請求項32】
ぜんそく、筋緊張亢進、冠状動脈性心臓病、心臓肥大、十二指腸潰瘍、心不全、肝硬変、統合失調症、AIDS、膵性糖尿病、尿崩症、肥満、慢性閉塞性肺疾患および/または浮腫の予防または治療のための薬剤の製造における前記請求項18〜31のいずれかに記載の分離剤または医薬品の使用。
【請求項33】
水利尿薬、避妊薬、抗感染症薬、抗不安薬および/または抗癌剤の形態をとることを特徴とする前記請求項18〜32のいずれかに記載の使用。
【請求項34】
請求項1〜12のいずれかに記載の分離剤および/または請求項16に記載の認識分子を含む生物。
【請求項35】
好ましくは前記認識分子が存在する結果として、該生物が、ぜんそく、筋緊張亢進、心臓肥大、冠状動脈性心臓病、十二指腸潰瘍、心不全、肝硬変、統合失調症、AIDS、膵性糖尿病、尿崩症、肥満、癌、慢性閉塞性肺疾患、学習障害、および/または浮腫を含む群から選択される疾病を示すこと
を特徴とする、前記請求項34に記載の生物。
【請求項36】
請求項28に記載の生物を、組織および/または細胞特異的なAKAP−PKA相互作用のモデルとして、特に尿崩症、膵性糖尿病、肥満、浮腫、慢性閉塞性肺疾患、AIDS、統合失調症、肝硬変、心不全、冠状動脈性心臓病、心臓肥大、学習向上、筋緊張亢進、十二指腸潰瘍および/またはぜんそくのモデルとして使用すること
を特徴とする、前記請求項18〜32のいずれかに記載の使用。
【請求項37】
AKAP−PKA相互作用を改良、好ましくは阻害する方法であって、前記方法が、以下の工程:
(a)請求項1〜13のいずれかに記載の分離剤および/または請求項16に記載の認識
分子を生成する工程、および
(b)前記工程(a)による少なくとも1つの生成物を、細胞、細胞培養物、組織および
/または標的生物に接触させる工程
を含む方法。
【請求項38】
前記改良がPKAの調節RIIサブユニットに作用することを特徴とする、前記請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記RIIサブユニットがRIIアルファサブユニットおよび/またはRIIベータサブユニットであることを特徴とする前記請求項38に記載の方法。
【請求項40】
特に組み合せた医薬品設計および/または構造に基づく医薬品設計を使用した医薬品の開発においてリード構造として働く請求項1〜12のいずれかに記載の分離剤の使用。
【請求項41】
医薬品を製造する方法であって、前記方法が、以下の工程:
(a)リード構造として請求項1〜12のいずれかに記載の分離剤を生成する工程と、
(b)好ましくは組み合せた医薬品設計および/または構造に基づく医薬品設計を使用し
て該リード構造の化学的改良を行うことによって物質を得る工程、および任意に
(c)該AKAP−PKA相互作用に影響を及ぼす能力について該物質を試験する工程、
および医薬品として適切な物質を選択する工程
を含む方法。
【請求項42】
該物質を、薬剤として許容可能な形態に調製することを含む、前記請求項41に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2008−540586(P2008−540586A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511551(P2008−511551)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000897
【国際公開番号】WO2006/122546
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(502327850)
【氏名又は名称原語表記】Forschungsverbund Berlin e.V.
【住所又は居所原語表記】Rudower Chaussee17,D−12489 Berlin,Germany
【Fターム(参考)】