説明

インターフェース回路及び電力変換装置並びに車載用電機システム

【課題】 信号伝送が行われる回路間の基準電位の電位差が変動しても確実に信号を伝達できるインターフェース回路を提供することを課題とする。
【解決手段】 上記課題を解決するために、インターフェース回路4を、レベルシフト回路20と、このレベルシフト回路20の動作用電源電圧の電位を選択するための電位選択回路10から構成した。電位選択回路10は複数の入力電位のうちの一つを選択し、レベルシフト回路20は第1の電位を基準電位とする電圧パルスを入力し、第2の電位を基準電位とする電圧パルスを出力し、前記電位選択回路の出力電位と第1の電位との電位差及び前記選択電位と第2の電位との電位差で動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電位の異なる回路間の信号伝達に用いられるインターフェース回路及び電力変換装置並びに車載用電機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェース回路としては従来、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。従来のインターフェース回路は、電流源と抵抗器を備え、抵抗器に流れる電流の方向を切り替えて、第1の基準電位の回路から入力されたパルス信号を、第1の基準電位とは異なる第2の基準電位のパルス信号として伝達している。これにより、従来のインターフェース回路では、光アイソレータなどの外付部品を使用することなく、基準電位の異なる回路間の信号伝達を行っている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−46145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換装置、例えば車載用インバータ装置では、基準電位が異なる回路間で信号伝達が行われている。このため、基準電位が異なる回路間を電気的に絶縁する必要がある。この電気的な絶縁には通常、光アイソレータが用いられている。しかし、光アイソレータは、消費電力及び経時変化が大きく、かつ使用温度範囲が狭い。このため、15年という長寿命が要求され、かつ使用温度環境が−40℃から150℃という車載用インバータ装置には、光アイソレータを用いることなく、基準電位の異なる回路間の信号伝送ができる手段の採用が望まれている。
【0005】
また、光アイソレータは、シリコン基板上に集積回路(IC)化することができず、外付部品としてプリント基板に実装して車載用インバータ装置内に搭載しなければならない。このため、車両の限られたスペースに搭載される車載用インバータ装置には、光アイソレータを用いることなく、基準電位の異なる回路間の信号伝送ができ、かつ装置の小型化に寄与できる手段の採用が望まれている。
【0006】
この点、従来のインターフェース回路は、光アイソレータを用いることなく、基準電位の異なる回路間の信号伝送ができる。
【0007】
しかしながら、従来のインターフェース回路は、信号伝送が行われる回路間の基準電位の電位差がノイズなどの影響を受けて大きく変動するということに対してまで配慮がなされているものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の代表的な発明の一つは、信号伝送が行われる回路間の基準電位の電位差が変動しても確実に信号を伝達できるインターフェース回路を提供する。
【0009】
本発明の最も代表的な特徴は、複数の入力電位のうちの一つを選択する電位選択回路と、第1の電位を基準電位とする電圧パルスを入力し、第2の電位を基準電位とする電圧パルスを出力するレベルシフト回路とを有し、このレベルシフト回路は前記電位選択回路の出力電位と第1の電位との電位差及び前記選択電位と第2の電位との電位差で動作するインターフェース回路にある。
【0010】
また、本発明は、変換部のスイッチング半導体素子を駆動するための制御信号を出力する制御部と、制御部からの制御信号を受けて、変換部のスイッチング半導体素子を駆動させる駆動信号を出力する駆動部との間の信号伝達手段として、上記インターフェース回路を用いた電力変換装置を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、車載電源から車載回転電機に供給される電力を所定の電力にして車載回転電機を制御する制御装置として、上記電力変換装置を用いたことを特徴とする車載電機システムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、信号伝送が行われる回路間の基準電位の電位差が変動しても確実に信号を伝達できるので、高耐ノイズ、高信頼性、高耐熱性のインターフェース回路を提供できる。
【0013】
また、本発明によれば、制御部と駆動部との間に上記インターフェース回路を備えた電力変換装置を提供できる。
【0014】
さらに、本発明によれば、車載回転電機の制御装置として、上記電力変換装置を備えた車載電機システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。以下に説明する実施例では、本発明のインターフェース回路が用いられる電力変換装置として、車載用インバータ装置を例に挙げて説明する。車載用インバータ装置は車載電動機の駆動を制御するものであり、車載電源を構成する車載バッテリから供給された直流電力を交流電力に変換し、得られた交流電力を車載電動機に供給するものである。
【0016】
尚、以下に説明する構成は、DC/DCコンバータや直流チョッパなどの直流−直流電力変換装置にも適用可能である。また、以下に説明する構成は、産業用や家庭用などの電力変換装置にも適用可能である。
【実施例1】
【0017】
本発明の第1実施例を図1乃至図6に基づいて説明する。初めに、図6を用いて、本実施例の車両の構成及び動作を説明する。図6は、本実施例の車両の動力システムの概略構成を示す。
【0018】
図示の車両は、電動車両の1つであるハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と称する)である。HEVは2つの動力システムを備えている。その1つは、内燃機関であるエンジンENGを動力源としたエンジンシステムである。エンジンシステムは、主としてHEVの駆動源として用いられる。もう1つは、モータジェネレータM/Gを動力源とした電機システムである。電機システムは、主としてエンジンENGの始動源及びアシスト源並びにHEVの電力発生源として用いられる。
【0019】
本実施例のHEVではエンジンENGのアイドルストップ運転(以下、「IS運転」と称する)が可能である。IS運転は、イグニションキースイッチをオンした状態で、信号待ちなどの停車時にエンジンENGの作動を一旦停止し、発車時にエンジンENGを再始動させる運転モードである。
【0020】
車体(図示省略)のフロント部には前輪車軸FDSが回転可能に軸支されている。前輪車軸FDSの両端には1対の前輪FLW,FRWが設けられている。また、図示省略したが、車体のリア部には、両端に1対の後輪が設けられた後輪車軸が回転可能に軸支されている。
【0021】
本実施例のHEVは前輪駆動方式を採用している。このため、前輪車軸FDSの中央部にはデファレンシャルギアDEFが設けられている。前輪車軸FDSにはデファレンシャルギアDEFの出力側が機械的に接続されている。デファレンシャルギアDEFの入力側には変速機T/Mの出力側が機械的に接続されている。デファレンシャルギアDEFは動力分配機構であり、変速機T/Mから伝達された回転駆動力を左右の前輪車軸FDSに分配するものである。変速機T/Mは動力伝達機構であり、変速機T/Mに伝達された回転駆動力を変速してデファレンシャルギアFDSに伝達するものである。変速機T/Mに伝達される回転駆動力は、エンジンENG及びモータジェネレータM/Gから伝達されたものである。
【0022】
エンジンENGには、インジェクタ,スロットバルブ,点火装置,吸排気バルブ(いずれも図示省略)などの複数のコンポーネント機器が設けられている。インジェクタは、エンジンENGの気筒内に噴射される燃料の供給量を制御するための燃料噴射弁である。スロットバルブは、エンジンENGの気筒内に供給される空気の供給量を制御するための絞り弁である。点火装置は、エンジンENGの気筒内の混合気を燃焼させる火種を供給するための火源である。吸排気バルブは、エンジンENGの気筒の吸気側及び排気側に設けられた開閉弁であり、エンジンENGの作動サイクルに応じて開閉タイミングが制御されるものである。
【0023】
各コンポーネント機器はエンジン制御装置ECUによって制御される。エンジン制御装置ECUは、各コンポーネント機器を作動させるための制御信号(制御値)を、上位制御装置から出力された指令信号(指令値)、各種センサや他の制御装置などから出力された出力信号(各種パラメータ値)、予め記憶装置に記憶されているデータやマップなどから演算する。演算された制御信号(制御値)は、各コンポーネント機器の駆動装置に出力される。これにより、各コンポーネント機器の作動が制御され、エンジンENGの作動が制御される。
【0024】
変速機T/Mには変速機構が設けられている。変速機構は複数のギアから構成されたものであり、回転駆動力を入力軸から出力軸に伝達するギアの伝達経路を、車両の運転状態に応じて変えることにより、複数のギア比が得られるものである。変速機構は変速機制御装置TCUによって制御される。変速機制御装置TCUは、変速機構を作動させるための制御信号(制御値)を、上位制御装置から出力された指令信号(指令値)、各種センサや他の制御装置などから出力された出力信号(各種パラメータ値)、予め記憶装置に記憶されているデータやマップなどから演算する。演算された制御信号(制御値)は、変速機構の駆動装置に出力される。これにより、変速機構の作動が制御され、変速機T/Mの作動が制御される。
【0025】
本実施例のHEVでは、エンジンENGのクランクシャフトに設けられたプーリEPUと、モータジェネレータM/Gの回転軸に設けられたプーリMPUとのベルトBELによる機械的な連結によって、エンジンENGとモータジェネレータM/Gが機械的に連結されている。これにより、本実施例のHEVでは、モータジェネレータM/Gの回転駆動力をエンジンENGに、エンジンENGの回転駆動力をモータジェネレータM/Gにそれぞれ伝達できる。
【0026】
モータジェネレータM/Gは永久磁石式交流同期機であり、図3に示すように、固定子MSTと回転子MROとを備えている。固定子MSTは固定子鉄心と固定子巻線とを備えている。固定子鉄心は円筒状のものであり、複数の円環状の珪素鋼板(磁性材)が軸方向に積層されて形成された積層鉄心から構成されている。固定子鉄心の内周部には複数のスロットが形成されている。固定子鉄心のスロットには固定子巻線が収納されている。固定子巻線の巻き方としては、分布巻(スロットのいくつかを跨いで(挟んで)離間した2つのスロットに巻線の2辺が収納される巻方)或いは集中巻(隣接するスロット間に形成されたティースに巻線が巻かれ、隣接するスロットに巻線の2辺が収納される巻方)のいずれかが採用されている。
【0027】
固定子MSTの内周側には、回転可能に保持された回転子MROが配置されている。固定子MSTと回転子MROは互いの中心軸が同心となるように、空隙を介して対向している。回転子MROは回転子鉄心と永久磁石とを備えている。回転子鉄心は円柱状のものであり、複数の円板状の珪素鋼板(磁性材)が軸方向に積層されて形成された積層鉄心から構成されている。回転子鉄心の中心部には、回転軸が軸方向に貫通するように設されている。回転子鉄心の外周部には、軸方向に貫通した複数の磁石挿入孔が回転方向に等間隔で形成されている。磁石挿入孔は断面が矩形状であり、断面の長手方向が回転方向、断面の短手方向が径方向となるように形成されている。永久磁石はN極とS極の回転磁極を構成する直方体状ものであり、全周が回転子鉄心で覆われるように、磁石挿入孔に埋め込まれている。
【0028】
N極の永久磁石とS極の永久磁石は回転方向に交互に配置されている。隣接する永久磁石間(磁石挿入孔間)には補助磁極が形成されている。補助磁極は、磁石挿入孔間に形成された鉄心部分であり、リラクタンストルクを発生させる磁束が流れるための磁路を構成している。磁石挿入孔の回転方向の長さは永久磁石の回転方向の長さよりも大きくなっている。このため、永久磁石の回転方向両端部には、磁石挿入孔に永久磁石が埋め込まれた場合に生じる空隙が形成されている。永久磁石の回転方向両端部に形成された空隙は、永久磁石と補助磁極との間の永久磁石の磁束密度分布の変化を緩やかにする磁気的なものである。
【0029】
モータジェネレータM/Gの作動はインバータ装置INVによって制御される。固定子MSTの固定子巻線には、インバータ装置INVによって制御された三相交流電力が供給される。これにより、固定子MSTは回転磁界を発生することができる。固定子巻線に供給される三相交流電力はインバータ装置INVによって制御されたものであり、固定子巻線に供給された電流の作る固定子MSTの起磁力の合成ベクトルが回転子MROの補助磁極の磁極中心位置よりも回転方向に向いたものである。固定子MSTに回転磁界が発生すると、回転子MROには、永久磁石の磁束によるトルクと、補助磁極を通る磁束によるリラクタンストルクが発生する。これにより、回転子MROには、三相交流電力に応じた回転駆動力が発生する。すなわちモータジェネレータM/Gは電動機として動作することができる。
【0030】
モータジェネレータM/Gは、エンジンENGの回転駆動力を受けて発電機として動作する。この場合、回転子MROはエンジンENGの回転駆動力を受けて回転する。回転子MROが回転すると、固定子巻線に永久磁石の磁束が鎖交し、固定子巻線に起電力が誘起される。これにより、固定子MSTには、回転子MROの回転数に応じた三相交流電力が発生する。すなわちモータジェネレータM/Gは発電機として動作することができる。発生した三相交流電力はインバータ装置INVに供給される。インバータ装置INVは三相交流電力を直流電力に変換する。変換された直流電力は高圧バッテリBA1に供給されて充電される。
【0031】
尚、モータジェネレータM/Gとしては、ルンデル形回転子を有する交流同期機或いはかご形回転子を有する交流誘導機を用いてもよい。
【0032】
ルンデル形回転子は、N極とS極の爪状磁極が回転方向に交互に配置された磁極鉄心を備えている。磁極鉄心には界磁巻線が巻かれている。界磁巻線は、爪状磁極を磁化するための励磁巻線である。界磁巻線は集電環に電気的に接続されている。集電環は、外部から電流の供給を受ける導電部材であり、磁極鉄心の回転軸の軸方向一端側の外周面上に設けられている。集電環の外周面にはブラシが押圧接触されている。これにより、集電環はブラシの接触面に対して摺動接触しながらブラシに電気的に接続され、ブラシから界磁電流の供給を受けることができる。ブラシに供給される界磁電流は電圧調整器によって制御される。電圧調整器は、トランジスタなどのスイッチング半導体素子のスイッチング動作によって界磁電流を制御するものであり、インバータ装置の電動機制御装置から制御信号を受けて駆動信号を発生し、発生した駆動信号に基づいてスイッチング半導体素子のスイッチング動作(オン・オフ)を制御する。
【0033】
かご形回転子は、成層鉄心から構成された回転子鉄心を備えている。回転子鉄心の外周部には複数のスロットが設けられている。複数のスロットは回転子鉄心の外周部を軸方向に打ち抜くことによって形成されている。複数のスロットには二次導体が加圧鋳入されている。二次導体はアルミニウム製の棒状導体であり、回転子鉄心の軸方向両端部から軸方向両方向に突出するように、複数のスロットに埋め込まれている。複数の二次導体の軸方向両端部は、銅製の導電性部材である短絡環によって機械的に接続されている。これにより、複数の二次導体は電気的に短絡する。
【0034】
インバータ装置INVは、高圧バッテリBA1から供給された直流電力を三相交流電力に変換する電力変換装置であり、パワーモジュールPMU,駆動回路装置DCU及び電動機制御装置MCUを備えている。
【0035】
パワーモジュールPMUはインバータ装置INVの変換用主回路を構成しており、複数のパワー半導体素子を備えている。電動機制御装置MCUはインバータ装置INVの制御部を構成しており、複数のパワー半導体素子をスイッチング動作(オン・オフ)させるための制御信号(制御値)を、上位制御装置から出力された指令信号(指令値)、各種センサや他の制御装置から出力された出力信号(各種パラメータ値)、予め記憶装置に記憶されているデータやマップなどに基づいて演算する。演算された制御信号(制御値)は駆動回路装置DCUに出力される。駆動回路装置DCUはインバータ装置INVの駆動部を構成しており、複数のパワー半導体素子をスイッチング動作させるための駆動信号を、電動機制御装置MCUから出力された制御信号(制御値)に基づいて発生する。発生した駆動信号はパワーモジュールPMUに出力される。
【0036】
本実施例のインバータ装置INVでは、パワーモジュールPMUと駆動回路装置DCUが組になってインテリジェントパワーモジュールIPMを構成している。
【0037】
本実施例のハイブリッド自動車の電源は2つの電源系から構成されている。その1つは高電圧(42v)系電源である。そのもう1つは低電圧(14v)系電源である。高電圧系電源は、モータジェネレータM/Gの駆動用電源、エンジンENGのコンポーネント機器であるインジェクタ,スロットバルブ,点火装置,吸排気バルブなどの駆動用電源として用いられており、高圧バッテリBA1を備えている。低電圧系電源は、エンジンENGを始動させるスタータSTRの駆動用電源、ラジオ,ライトなどの補機の駆動用電源、エンジン制御装置ECU,変速機制御装置TCU,電動機制御装置MCU,バッテリ制御装置BCU,総合制御装置GCUなどの制御装置の駆動用電源として用いられており、低圧バッテリBA2を備えている。
【0038】
高圧バッテリBA1はバッテリ電圧36vのリチウムイオンバッテリである。高圧バッテリBA1としては同じバッテリ電圧の鉛バッテリ或いは水素イオンバッテリを用いてもよい。
【0039】
低圧バッテリBA2はバッテリ電圧12vの鉛バッテリである。低圧バッテリBA2としては同じバッテリ電圧のリチウムイオンバッテリ或いは水素イオンバッテリを用いてもよい。
【0040】
高圧バッテリBA1(高電圧系電源)はインバータ装置INVの入力(直流)側に電気的に接続されている。これにより、高圧バッテリBA1(高電圧系電源)とインバータ装置INVは相互に直流電力の授受を行うことができる。モータジェネレータM/Gを電動機として動作させる場合には、高圧バッテリBA1(高電圧系電源)に蓄えられた直流電力がインバータ装置INVに供給され、三相交流電力に変換される。モータジェネレータM/Gを発電機として動作させる場合には、インバータ装置INVから出力された直流電力が高電圧電気負荷に供給されて駆動電力として消費されると共に、高圧バッテリBA1に供給されて充電される。
【0041】
低圧バッテリBA2(低電圧系電源)は双方向のDC−DCコンバータDCCを介して高圧バッテリBA1(高電圧系電源)に電気的に接続されている。これにより、低圧バッテリBA2(低電圧系電源)と高圧バッテリBA1(高電圧系電源)は相互に直流電力をその電圧レベルを変えて授受することができる。低電圧電気負荷に低電圧の直流電力を供給する場合、低圧バッテリBA2を充電する場合には、高圧バッテリBA1(高電圧系電源)から供給された直流電力がDC−DCコンバータDCCによって降圧されて低圧バッテリBA2(低電圧系電源)に供給される。高圧バッテリBA1(高電圧系電源)のバックアップなどが必要な場合には、低圧バッテリBA2(低電圧系電源)から供給された直流電力がDC−DCコンバータDCCによって昇圧されて高圧バッテリBA1(高電圧系電源)に供給される。
【0042】
高圧バッテリBA1及び低圧バッテリBA2はバッテリ制御装置BCUによって充放電が制御され、また、寿命などが管理される。バッテリ制御装置BCUには、各バッテリの充放電制御や寿命管理のために、高圧バッテリBA1及び低圧バッテリBA2の電圧値及び電流値などが入力される。
【0043】
DC−DCコンバータDCCは半導体モジュール,リアクトル及び駆動回路装置(いずれも図示省略)を備えている。半導体モジュールは、DC−DCコンバータDCCの直流電力昇降圧用の昇降圧回路のスイッチ部を構成しており、複数のスイッチング半導体素子を備えている。リアクトルは、昇降圧回路の電磁エネルギー蓄積部を構成する磁気的素子であり、環状の磁性コアに2つの巻線が巻かれたものである。駆動回路装置はDC−DCコンバータDCCの駆動部を構成しており、制御装置(図示省略)から出力された制御信号(制御値)に基づいて、複数のスイッチング半導体素子をスイッチング動作(オン・オフ)させるための駆動信号を発生する。駆動信号はモジュールのパワー半導体素子に出力される。駆動回路装置に制御信号を出力する制御装置はDC−DCコンバータDCC内或いはバッテリ制御装置BCU内に組み込まれている。
【0044】
エンジン制御装置ECU,変速機制御装置TCU,電動機制御装置MCU及びバッテリ制御装置BCUは車載用ローカルエリアネットワークLANを介して相互に電気的に接続されていると共に、総合制御装置GCUと電気的に接続されている。これにより、各制御装置間では双方向の信号伝送が可能になり、相互の情報伝達,検出値の共有などが可能になる。総合制御装置GCUは、車両の運転状態に応じて各制御装置に指令信号を出力するものである。例えば総合制御装置GCUは、運転者の加速要求に基づいたアクセルの踏み込み量に応じて車両の必要トルク値を算出し、この必要トルク値を、エンジンENGの運転効率が良くなるように、エンジンENG側の出力トルク値とモータジェネレータM/G側の出力トルク値とに分配する。分配されたエンジンENG側の出力トルク値はエンジントルク指令信号としてエンジン制御装置ECUに、分配されたモータジェネレータM/G側の出力トルク値はモータトルク指令信号として電動機制御装置MCUにそれぞれ出力される。
【0045】
本実施例のHEVは複数の運転モードを備えている。2つの動力システムの動作は各運転モードに応じて制御される。
【0046】
始動モード1(初期始動モード);
始動モード1は、エンジンENGが低温状態(エンジンENGの冷却水温度Tc が所定値Ts 未満)である場合において、イグニションキースイッチをオンし、エンジンENGをコールド状態で始動させる運転モードである。
【0047】
イグニションキースイッチがオンすると、スタータSTRには低圧バッテリBA2から直流電力が供給される。スタータSTRは、直流電力の供給を受けて回転駆動力を発生すると共に、発生した回転駆動力をエンジンENGのクランクシャフトに伝達する。これにより、エンジンENGが始動する。
【0048】
エンジンENGが始動すると、クランクシャフトの回転によってエンジンENGの気筒内の混合気が圧縮され、点火装置によって点火される。混合気に着火して混合気が完爆すると、エンジンENGは自ら回転駆動力を発生する。
【0049】
尚、始動モード1におけるエンジンENGの始動にはモータジェネレータM/Gを用いることもできる。この場合、モータジェネレータM/Gの作動は、後述する始動モード2と同様に、総合制御装置GCUから出力された回転数指令信号n* (回転数指令値)に基づいてインバータ装置INVを制御すればよい。
【0050】
始動モード2(再始動モード);
始動モード2は、エンジンENGが高温状態で、かつイグニションキースイッチがオン状態にある場合において、信号待ちなどの停車時にエンジンENGの作動を停止させ、発車時にエンジンENGをホット状態で再始動して、エンジンENGの作動を再開させる運転モードである。
【0051】
総合制御装置GCUは、運転者から発進合図の信号(例えばブレーキの踏み込みの解除を示す信号)が入力された場合、電動機制御装置MCUに回転数指令信号n* (回転数指令値)を出力する。これにより、インバータ装置INVは、次に示す直流−交流変換動作を行う。
【0052】
電動機制御装置MCUは、パワーモジュールPMUのパワー半導体素子を動作させるための制御信号(制御値)を、総合制御装置GCUから出力された回転数指令信号n* (回転数指令値)に基づいて演算する。演算された制御信号(制御値)は駆動回路装置DCUに出力される。駆動回路装置DCUは、パワーモジュールPMUのパワー半導体素子を動作させるための駆動信号を、電動機制御装置MCUから出力された制御信号(制御値)に基づいて発生する。発生した駆動信号はパワーモジュールPMUに出力される。パワーモジュールPMUのパワー半導体素子は、駆動回路装置DCUから出力された駆動信号に基づいてスイッチング動作(オン・オフ)し、高圧バッテリBA1から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。
【0053】
インバータ装置INVの変換動作で得られた三相交流電力はモータジェネレータM/Gの固定子MSTに出力される。これにより、モータジェネレータM/Gは電動機として作動し、パワーモジュールPMUから出力された三相交流電力に応じた回転駆動力を発生する。
【0054】
モータジェネレータM/Gの回転駆動力はエンジンENGのクランクシャフトに伝達される。これにより、エンジンENGは再始動する。再始動後のエンジンENGの動作は始動モード1と同様である。
【0055】
停止モード1(車両停止モード);
停止モード1は、イグニションキースイッチがオフの場合、エンジンENGの作動を停止させ、車両全体を停止させる運転モードである。
【0056】
停止モード2(アイドルストップモード);
停止モード2は、信号待ちなどの停車時にイグニションキースイッチがオンで、かつアクセルが踏み込まれておらず、かつ車速が0で、かつ高圧バッテリBA1の充電量VBcが所定値VBl以上の場合、エンジンENGの作動(アイドリング)を停止させる運転モードである。
【0057】
総合制御装置GCUは、上記運転条件が満たされた場合、エンジン制御装置ECUにエンジン停止指令信号を出力する。これにより、エンジンENGの各コンポーネント機器の作動が停止し、エンジンENGの作動が停止する。
【0058】
停止モード2の運転条件には、エンジンENGの冷却水温度Tc が所定値Ts 以上、停車時における車体の傾斜角度θが所定角度θs 以下などを適宜追加してもよい。停車時に停止モード2の運転条件が満たされない場合には、アイドリング状態でエンジンENGの作動を継続させればよい。エンジンENGを駆動源とする補機類、例えばエアコンのコンプレッサなどを停止モード2中に駆動する場合には、モータジェネレータM/Gを補機類の駆動源として作動させ、モータジェネレータM/Gから出力された回転駆動力で補機類を駆動するようにすればよい。
【0059】
エンジン走行モード;
エンジン走行モードは、要求トルクτdが目標トルクτa未満(アクセルの踏み込み量が小さい)、高圧バッテリBA1の充電量VBcが所定値VBh以上の場合、エンジンENGから出力された回転駆動力によって車両を駆動する運転モードである。ここで、所定値VBhは所定値VBlよりも大きい値である。
【0060】
総合制御装置GCUは、上記運転条件が満たされた場合、トルク指令信号(トルク指令値)を電動機制御装置MCU及びエンジン制御装置ECUに出力する。この場合、エンジンENGによる駆動であるので、総合制御装置GCUから電動機制御装置MCUに出力されるトルク指令信号(トルク指令値)は0である。従って、モータジェネレータM/Gの回転駆動力は0になる。
【0061】
総合制御装置GCUからエンジン制御装置ECUに出力されるトルク指令信号(トルク指令値)は、要求トルクτd に対応したエンジン回転数に相当する値である。エンジン制御装置ECUは、エンジンENGの各コンポーネント機器を制御するための制御信号(制御値)を、総合制御装置GCUから出力されたトルク指令信号(トルク指令値)に基づいて演算する。演算された制御信号(制御値)はエンジンENGの各コンポーネント機器の駆動装置に出力される。これにより、エンジンENGの各コンポーネント機器の作動が制御され、エンジンENGの混合気の空燃比などが制御される。この制御により、エンジンENGは、要求トルクτd に対応する回転駆動力を出力する。
【0062】
エンジン走行発電モード;
エンジン走行発電モードは、要求トルクτdが目標トルクτa未満(アクセルの踏み込み量が小さい)、高圧バッテリBA1の充電量VBcが所定値VBh未満の場合、さらには要求トルクτdが目標トルクτa以上(アクセルの踏み込み量が大きい)、高圧バッテリBA1の充電量VBcが所定値VBl未満の場合、エンジンENGから出力された回転駆動力によって車両を駆動すると共に、エンジンENGから出力された回転駆動力によってモータジェネレータM/Gを回転駆動し、モータジェネレータM/Gを発電機として作動させる運転モードである。
【0063】
総合制御装置GCUは、上記運転条件が満たされた場合、トルク指令信号(トルク指令値)を電動機制御装置MCU及びエンジン制御装置ECUに出力する。
【0064】
総合制御装置GCUから電動機制御装置MCUに出力されるトルク指令信号(トルク指令値)は、モータジェネレータM/Gに所定の定格電力を発生させるための指令信号(指令値)であり、回転駆動力を発生させるためのトルク指令信号(トルク指令値)とは逆向きの負の値である。これにより、インバータ装置INVは、次に示す交流−直流変換動作を行う。
【0065】
電動機制御装置MCUは、パワーモジュールPMUパワー半導体素子を動作させるための制御信号(制御値)を、総合制御装置GCUから出力されたトルク指令信号(トルク指令値)に基づいて演算する。演算された制御信号(制御値)は駆動回路装置DCUに出力される。駆動回路装置DCUは、パワーモジュールPMUのパワー半導体素子を動作させるための駆動信号を、電動機制御装置MCUから出力された制御信号(制御値)に基づいて発生する。発生した駆動信号はパワーモジュールPMUに出力される。パワーモジュールPMUのパワー半導体素子は、駆動回路装置DCUから出力された駆動信号に基づいてスイッチング動作(オン・オフ)し、モータジェネレータM/Gから供給された三相交流で電力を直流電力に変換する。
【0066】
インバータ装置INVの変換動作で得られた三相交流電力は高圧バッテリBA1(高電圧系電源)に出力される。これにより、高圧バッテリBA1(高電圧系電源)に供給された直流電力は高電圧電気負荷の駆動力として消費されると共に、高圧バッテリBA1に充電される。
【0067】
総合制御装置GCUからエンジン制御装置ECUに出力されるトルク指令信号(トルク指令値)は、要求トルクτd に対応したエンジン回転数に相当する値に、発電機として動作するモータジェネレータM/Gの駆動に必要なトルクに相当する値を加算した値の信号である。エンジン制御装置ECUの動作は、前述したエンジン走行モードと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0068】
加速モード;
加速モードは、要求トルクτdが目標トルクτa以上、高圧バッテリBA1の充電量VBcが所定値VBL以上の場合、エンジンENGとモータジェネレータM/Gから出力された回転駆動力によって車両を駆動する運転モードである。
【0069】
総合制御装置GCUは、上記運転条件が満たされた場合、トルク指令信号(トルク指令値)を電動機制御装置MCU及びエンジン制御装置ECUに出力する。
【0070】
トルク指令信号(トルク指令値)は、エンジンENG側の要求トルクτdeに対応するトルク指令信号(トルク指令値)及びモータジェネレータM/G側の要求トルクτdmに対応するトルク指令信号(トルク指令値)である。要求トルクτde及び要求トルクτdmは、エンジンENGの運転効率が高くなるように、要求トルクτd を分配したものである。要求トルクτdeに対応するトルク指令信号(トルク指令値)はエンジン制御装置ECUに、要求トルクτdmに対応するトルク指令信号(トルク指令値)は電動機制御装置MCUにそれぞれ出力される。
【0071】
インバータ装置INVの動作は、前述した直流−交流変換動作と同様であるので、ここでの説明は省略する。エンジン制御装置ECUの動作は、前述したエンジン走行モードと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0072】
以上により、エンジンENGとモータジェネレータM/Gは、要求トルクτd に対応する回転駆動力を分担して出力する。
【0073】
回生モード;
回生モードは、イグニションキースイッチがオンで、かつアクセルが踏み込まれておらず、かつ車速が0よりも大きく、かつ高圧バッテリBA1の充電量VBcが所定値VBh未満の場合、車輪の運動(回転)エネルギーをモータジェネレータM/Gに伝達して、モータジェネレータM/Gを回転駆動させ、モータジェネレータM/Gを発電機として作動させる運転モードである。
【0074】
総合制御装置GCUは、上記運転条件が満たされた場合、トルク指令信号(トルク指令値)を電動機制御装置MCU及びエンジン制御装置ECUに出力する。この場合、モータジェネレータM/Gの駆動であるので、総合制御装置GCUからエンジン制御装置ECU出力されるトルク指令信号(トルク指令値)は0である。従って、エンジンENGの回転駆動力は0になる。
【0075】
総合制御装置GCUから電動機制御装置MCUに出力されるトルク指令信号(トルク指令値)は、モータジェネレータM/Gに所定の定格電力を発生させるための指令信号(指令値)であり、回転駆動力を発生させるためのトルク指令信号(トルク指令値)とは逆向きの負の値である。インバータ装置INVの動作は、前述した直流−交流変換動作と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0076】
以上、本実施例のHEVの構成及び動作を説明したが、モータジェネレータM/Gを配置する箇所としては、エンジンENGと変速機T/Mとの間もある。この場合、エンジンENGのクランクシャフトとモータジェネレータM/Gの回転軸が機械的に直結或いはクラッチなどの締結機構を介して機械的に連結される。このような構成は、エンジンENGと共にモータジェネレータM/Gを車両の駆動源とするHEVに好適なものであり、バッテリの電圧も200v以上になる。動作的には、車両の低速域から中速域ではモータジェネレータM/Gを駆動源として使用する。車両の高速域ではエンジンENGを駆動源として使用する。車両の加速時や登坂時などの高負荷時にはモータジェネレータM/GとエンジンENGを駆動源として使用する。
【0077】
また、モータジェネレータM/Gとインバータ装置INVは一体であってもよい。この場合、モータジェネレータM/Gの軸方向一端部側(プーリMPUの側とは反対側の軸方向端部)にインバータ装置INVを内蔵することが考えられる。その他としては、モータジェネレータM/Gの外周上部或いは外周下部若しくは外周側部にインバータ装置INVを配置して両者の筐体を一体化することなども考えられる。どの方式を採用するかは搭載スペースの関係から決定すればよい。省スペース化としては後者の方よりも前者の方が好ましい。
【0078】
また、モータジェネレータM/Gの電源として低圧バッテリBA2のみを備える場合もある。この場合、運転モードとしては、前述した加速モードを除く、他の運転モードが備わる。
【0079】
次に、図3乃至5を用いて、本実施例のインバータ装置INVの電気的な回路構成について説明する。
【0080】
本実施例のインバータ装置INVは、パワーモジュールPMU,駆動回路装置DCU及び電動機制御装置MCUから構成されている。
【0081】
尚、図3乃至図5では、電源系及び電力系のラインと制御系のラインとが区別し易いように、電源系及び電力系のラインを実線で、制御系のラインを破線及び矢印でそれぞれ図示している。
【0082】
図3は、パワーモジュールPMUの回路構成を示す。
パワーモジュールPMUは電力変換用の主回路を構成しており、駆動回路装置DCUから出力された駆動信号を受けて動作し、高圧バッテリBA1に供給された直流電力を三相交流電力に変換し、モータジェネレータM/Gの固定子巻線に供給する。主回路は3相ブリッジ回路であり、3相分の直列回路が高圧バッテリBA1の正極側と負極側との間に電気的に並列に接続されて構成されている。直列回路はアームとも呼ばれ、2つのパワー半導体素子によって構成されている。
【0083】
アームは、上アーム側のパワー半導体素子と下アーム側のパワー半導体素子とが電気的に直列に接続されて構成されている。本実施例では、パワー半導体素子として、スイッチング半導体素子であるnチャネルのMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いている。MOSFETを構成する半導体チップは、ドレイン電極,ソース電極及びゲート電極の3つの電極を備えている。また、ドレイン電極とソース電極との間には、ソース電極からドレイン電極に向かう方向が順方向である寄生のダイオードが電気的に接続されている。
【0084】
パワー半導体素子としてIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を用いてもよい。IGBTは、別途、コレクタ電極とエミッタ電極との間にダイオード素子を電気的に接続する必要がある。IGBTはコレクタ電極とエミッタ電極の他にゲート電極を備えている。
【0085】
u相アームAuはパワー半導体素子Mupのソース電極とパワー半導体素子Munのドレイン電極が電気的に直列に接続されて構成されている。v相アームAv及びw相アームAwもu相アームAuと同様であり、パワー半導体素子Mvp,Mwpのソース電極とパワー半導体素子Mvn,Mwnのドレイン電極が電気的に直列に接続されて構成されている。
【0086】
パワー半導体素子Mup,Mvp,Mwpのドレイン電極は高圧バッテリBA1の高電位側(正極側)に電気的に接続されている。パワー半導体素子Mun,Mvn,Mwnのソース電極は高圧バッテリBA1の低電位側(負極側)に電気的に接続されている。u相アームAuの中点(上アーム側パワー半導体素子のソース電極と下アーム側パワー半導体素子のドレイン電極との接続部分)はモータジェネレータM/Gのu相の固定子巻線に電気的に接続されている。v相アームAv,w相アームAwの中点もu相アームAuの中点と同様に、モータジェネレータM/Gのv相,w相の固定子巻線に電気的に接続されている。
【0087】
高圧バッテリBA1の正極側と負極側との間には、パワー半導体素子の動作によって生じる直流電圧の変動を抑制するために、平滑用の電解コンデンサSECが電気的に接続されている。
【0088】
高圧バッテリBA1の正極側とパワーモジュールPMUの入力(直流)正極側との間には上アーム主回路インダクタンス100が電気的に接続されている。高圧バッテリBA1の負極側とパワーモジュールPMUの入力(直流)負極側との間には下アーム主回路インダクタンス200が接続されている。上アーム主回路インダクタンス100及び下アーム主回路インダクタンス200は、高圧バッテリBA1からパワーモジュールPMUに至る配線などに寄生している寄生インダクタンスである。
【0089】
パワーモジュールPMUは、ケースによって囲われたベース上に絶縁基板を介して半導体チップが実装され、三相ブリッジ回路が形成されるように、半導体チップ間、半導体チップと入力端子との間、半導体チップと出力端子との間がアルミワイヤや板状導体などの接続導体によって電気的に接続されて構成されている。ベースは、銅やアルミニウムなどの熱伝導性部材によって構成されている。ベースの下面は空気或いは冷却水などの冷却媒体によって冷却されるようになっている。ベースの下面には、冷却媒体による冷却効率を向上させるために、フィンなどが設けられている。絶縁基板は、窒化アルミニウムなどの絶縁部材からなるものであって、両面に配線パターンがメタライズされている。半導体チップは、前述したMOSFETを構成するものであり、両面に電極を有している。ベースと絶縁基板との間、絶縁基板と半導体チップとの間は、半田などの接合部材によって接合されている。
【0090】
図4は、駆動回路装置DCU及び電動機制御装置MCUの回路構成及び信号系の構成を示す。
駆動回路装置DCUは、各相の各上下アームに対応する複数の回路が1つの回路に集積された、いわゆる6in1の集積回路(IC)から構成されたものであり、各相の各上下アームに対応する回路として、インターフェース回路4,ゲート回路5及び異常検出回路6を備えている。また、駆動回路装置DCUは、インターフェース回路4及びゲート回路5を駆動するための絶縁電源3を備えている。
【0091】
絶縁電源3は、動作電源を構成する変圧器であり、その一次側(高圧側)に低圧バッテリBA2が、その二次側(低圧側)に、動作電源を必要とする回路がそれぞれ電気的に接続されている。絶縁電源3の二次側からは13vの動作電圧が、インターフェース回路4及びゲート回路5に印加される。
【0092】
インターフェース回路4は、電動機制御装置MCUとゲート回路5との間の駆動信号用伝送回路と、異常検出回路6と電動機制御装置MCUとの間の異常検出信号用伝送回路とを構成するものであり、各相の各上下アームに対応するように、u相,v相,w相の各上アーム駆動用インターフェース回路4a,4b,4cと、u相,v相,w相の各下アーム駆動用インターフェース回路4d,4e,4fと、u相,v相,w相の各上アーム異常検出用インターフェース回路4g,4h,4iと、u相,v相,w相の各下アーム異常検出用インターフェース回路4j,4k,4lとを備えている。
【0093】
ゲート回路5は、インターフェース回路4から出力された駆動信号をパワーモジュールPMUに出力する駆動回路であり、各相の各上下アームに対応するように、u相,v相,w相の各上アーム駆動用ゲート回路5a,5b,5cと、u相,v相,w相の各下アーム駆動用ゲート回路5d,5e,5fとを備えている。
【0094】
パワー半導体素子Mpu(Mpv,Mpw)には、u相(v相,w相)上アーム駆動用インターフェース回路4a(4b,4c)及びu相(v相,w相)上アーム駆動用ゲート回路5a(5b,5c)が対応して設けられている。u相(v相,w相)上アーム駆動用インターフェース回路4a(4b,4c)の出力側はu相(v相,w相)上アーム駆動用ゲート回路5a(5b,5c)の入力側に、その入力側は電動機制御装置MCUに電気的に接続されている。u相(v相,w相)上アーム駆動用ゲート回路5a(5b,5c)の出力側はパワー半導体素子Mpu(Mpv,Mpw)のゲート電極に電気的に接続されている。
【0095】
u相(v相,w相)上アーム駆動用インターフェース回路4a(4b,4c)は、電動機制御装置MCUから出力された制御信号Vpu* (Vpv*,Vpw*)を受けて、受けた制御信号Vpu* (Vpv*,Vpw*)を、パワー半導体素子Mpu(Mpv,Mpw)を駆動するための駆動信号Vpu(Vpv,Vpw)として、u相(v相,w相)上アーム駆動用ゲート回路5a(5b,5c)に出力する。u相(v相,w相)上アーム駆動用インターフェース回路4a(4b,4c)から出力された駆動信号Vpu(Vpv,Vpw)は、u相(v相,w相)上アーム駆動用ゲート回路5a(5b,5c)によって電圧変換され、最終段の駆動信号Vpu(Vpv,Vpw)としてパワー半導体素子Mpu(Mpv,Mpw)のゲート電極に出力される。
【0096】
パワー半導体素子Mnu(Mnv,Mnw)には、u相(v相,w相)下アーム駆動用インターフェース回路4d(4e,4f)及びu相(v相,w相)下アーム駆動用ゲート回路5d(5e,5f)が対応して設けられている。u相(v相,w相)下アーム駆動用インターフェース回路4d(4e,4f)の出力側はu相(v相,w相)下アーム駆動用ゲート回路5d(5e,5f)の入力側に、その入力側は電動機制御装置MCUに電気的に接続されている。u相(v相,w相)下アーム駆動用ゲート回路5d(5e,5f)の出力側はパワー半導体素子Mnu(Mnv,Mnw)のゲート電極に電気的に接続されている。
【0097】
u相(v相,w相)下アーム駆動用インターフェース回路4d(4e,4f)は、電動機制御装置MCUから出力された制御信号Vnu* (Vnv*,Vnw*)を受けて、受けた制御信号Vnu* (Vnv*,Vnw*)を、パワー半導体素子Mnu(Mnv,Mnw)を駆動するための駆動信号Vnu(Vnv,Vnw)として、u相(v相,w相)下アーム駆動用ゲート回路5d(5e,5f)に出力する。u相(v相,w相)下アーム駆動用インターフェース回路4d(4e,4f)から出力された駆動信号Vnu(Vnv,Vnw)は、u相(v相,w相)下アーム駆動用ゲート回路5d(5e,5f)によって増幅され、最終段の駆動信号Vnu(Vnv,Vnw)としてパワー半導体素子Mnu(Mnv,Mnw)のゲート電極に出力される。
【0098】
異常検出回路6は、パワー半導体素子Mpu〜Mnwに流れる過電流を検出するものであり、各相の各上下アームに対応するように、u相,v相,w相の各上アーム異常検出回路6a,6b,6cと、u相,v相,w相の各下アーム異常検出回路6d,6e,6fとを備えている。
【0099】
u相,v相,w相の各上アーム異常検出回路6a,6b,6c及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出回路6d,6e,6fは電流センサ(図示省略)を備えている。電流センサは、例えば抵抗素子からなる電流検出素子であり、対応するパワー半導体素子のソース電極に電気的に接続されている。
【0100】
u相,v相,w相の各上アーム異常検出回路6a,6b,6c及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出回路6d,6e,6fには、対応する電流センサによって検知された電圧値(検知信号)が入力される。これにより、u相,v相,w相の各上アーム異常検出回路6a,6b,6c及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出回路6d,6e,6fは、対応するパワー半導体素子の過電流を、対応する電流センサから出力された検知信号に基づいて検出する。
【0101】
u相,v相,w相の各上アーム異常検出回路6a,6b,6c及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出回路6d,6e,6fは、対応するパワー半導体素子の過電流を検出した場合、対応する異常検出信号Csa〜Csfをインターフェース回路4に出力する。インターフェース回路4は、u相,v相,w相の各上アーム異常検出回路6a,6b,6c及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出回路6d,6e,6fから出力された異常検出信号Csa〜Csfをフェールセーフ信号Csa*〜Csf*として、対応するu相,v相,w相の各上アーム異常検出用インターフェース回路4g,4h,4iと、u相,v相,w相の各下アーム異常検出用インターフェース回路4j,4k,4lから電動機制御装置MCUに出力する。電動機制御装置MCUは、過電流が検出されたパワー半導体素子或いは全てのパワー半導体素子の動作をフェールセーフ信号Csa*〜Csf*に基づいて停止する、いわゆる過電流保護を行う。
【0102】
保護機能としては過電流保護機能の他に、過電圧保護機能や過温度保護機能なども備えている。過電圧保護機能や過温度保護機能では、過電流保護機能と同様に、センサなどを用いた異常検出を行い、異常がある場合には、インターフェース回路4を介して電動機制御装置MCUに異常検出指令信号を出力する。
【0103】
尚、本実施例では、便宜上、u相,v相,w相の各上アーム異常検知用インターフェース回路4g,4h,4iとu相,v相,w相の各下アーム異常検出用インターフェース回路4j,4k,4lとを、u相,v相,w相の各上アーム異常検出回路6a,6b,6cとu相,v相,w相の各下アーム異常検出回路6d,6e,6fとをそれぞれ1つの回路で図示したが、実際には、各相の各上下アームに対応するように、それぞれ6つの回路から構成されている。
【0104】
また、本実施例では、異常検出信号Csa〜Csfとフェールセーフ信号Csa*〜Csf*とをそれぞれ1つの破線で図示したが、実際には、各相の各上下アームに対応するように、それぞれ6つの信号から構成されている。
【0105】
また、本実施例では、異常検出回路6の入力線を2本1組の実線で図示したが、実際には、u相,v相,w相の各上アーム異常検出回路6a,6b,6c及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出回路6d,6e,6fに対応するように、12本6組の入力線から構成されている。
【0106】
電動機制御装置MCUは、パワーモジュールPMUのパワー半導体素子を動作させるための制御値を、入力された複数の入力信号に基づいて演算し、演算された制御値を制御信号Vpu*〜Vnw*として駆動回路装置DCUに出力するものであり、制御値の演算を行うマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と称する)2と、マイコン2を駆動するための絶縁電源1を備えている。
【0107】
絶縁電源1は、動作電源を構成する変圧器であり、その一次側(高圧側)に低圧バッテリBA2が電気的に接続され、その二次側(低圧側)にマイコン2の電源端子が電気的に接続されている。マイコン2の電源端子には、絶縁電源1の二次側から出力された5vの動作電圧が印加される。
【0108】
マイコン2には、入力信号として、トルク指令信号(トルク指令値)τ* ,回転数指令信号(回転数指令値)n* ,検知信号(u相〜w相の電流値)iu〜iw及び検知信号(回転子ROTの磁極位置)θが入力される。
【0109】
トルク指令信号(トルク指令値)τ* 及び回転数指令信号(回転数指令値)n* は、車両の運転モードに応じて総合制御装置GCUから出力される。検知信号(u相〜w相の電流値)iu〜iwは電流センサCu〜Cwから出力される。検知信号(回転子ROTの磁極位置)θは磁極位置センサMPCから出力される。
【0110】
電流センサCu〜Cwは、インバータ装置INV(パワーモジュールPMU)からモータジェネレータM/Gの固定子STRの固定子巻線に供給されるu相〜w相電流iu〜iwを検知するためのものであり、シャント抵抗器,変流器(CT)などから構成されたものである。
【0111】
磁極位置センサMPCは、モータジェネレータM/Gの回転子MROの磁極位置θを検出するためのものであり、レゾルバ,エンコーダ,ホール素子,ホールICなどから構成されたものである。
【0112】
マイコン2は、d軸,q軸の電流指令値Id*,Iq*を入力信号に基づいて演算し、演算された電流指令値Id*,Iq*に基づいて電圧制御値Vu〜Vwを演算し、演算された電圧制御値Vu〜Vwを、パワーモジュールPMUのパワー半導体素子を動作させるための制御信号(PWM信号(パルス幅変調信号))Vpu*〜Vnw*として駆動回路装置DCUに出力する。
【0113】
図5は、駆動回路装置DCU及び電動機制御装置MCUの電源系の構成を示す。
前述したように、絶縁電源1は出力電圧5vの1つの電源から構成されている。絶縁電源1の低電位側(負極側)は電気的に接地されている。このため、絶縁電源1の基準電位は接地電位となる。
【0114】
絶縁電源3は出力電圧13vの4つの電源、すなわちU相上アーム用絶縁電源3a、v相上アーム用絶縁電源3b、w相上アーム用絶縁電源3c及び各相の下アームに共通に設けられた下アーム用絶縁電源3dから構成されている。
【0115】
u相(v相,w相)上アーム用絶縁電源3a(3b,3c)の低電位側(負極側)はパワー半導体素子Mpu(Mpv,Mpw)のソース電極に電気的に接続されている。このため、u相(v相,w相)上アーム用絶縁電源3a(3b,3c)の基準電位はパワー半導体素子Mpu(Mpv,Mpw)のソース電極の電位となる。下アーム用絶縁電源3dの低電位側(負極側)はパワー半導体素子Mnu〜Mnwのソース電極に電気的に接続されている。また、パワー半導体素子Mnu〜Mnwのソース電極は電気的に接地されている。このため、下アーム用絶縁電源3dの基準電位はパワー半導体素子Mnu〜Mnwのソース電極の電位(接地電位)となる。
【0116】
絶縁電源1の低電位側(負極側)にはマイコン2の低電位側(負極側)電源端子が電気的に接続されている。また、絶縁電源1の低電位側(負極側)にはu相,v相,w相の各上アーム駆動用インターフェース回路4a,4b,4c、u相,v相,w相の各下アーム駆動用インターフェース回路4d,4e,4f、u相,v相,w相の各上アーム異常検出用インターフェース回路4g,4h,4i及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出用インターフェース回路4j,4k,4lの低電位側(負極側)電源端子の一方側が電気的に接続されている。
【0117】
絶縁電源1の高電位側(正極側)にはマイコン2の高電位側(正極側)電源端子が電気的に接続されている。また、絶縁電源1の高電位側(正極側)にはu相,v相,w相の各上アーム駆動用インターフェース回路4a,4b,4c、u相,v相,w相の各下アーム駆動用インターフェース回路4d,4e,4f、u相,v相,w相の各上アーム異常検出用インターフェース回路4g,4h,4i及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出用インターフェース回路4j,4k,4lの高電位側(正極側)電源端子の一方側が電気的に接続されている。
【0118】
u相(v相,w相)上アーム用絶縁電源3a(3b,3c)の低電位側(負極側)にはu相(v相,w相)上アーム駆動用インターフェース回路4a(4b,4c)及びu相(v相,w相)上アーム異常検出用インターフェース回路4g(4h,4i)の低電位側(負極側)電源端子の他方側が電気的に接続されている。また、u相(v相,w相)上アーム用絶縁電源3a(3b,3c)の低電位側(負極側)には上記インターフェース回路以外にu相(v相,w相)上アーム用ゲート回路5a(5b,5c)の低電位側(負極側)電源端子及びu相(v相,w相)上アーム異常検出回路6a(6b,6c)のセンサの一端側が電気的に接続されている。
【0119】
u相(v相,w相)上アーム用絶縁電源3a(3b,3c)の高電位側(正極側)にはu相(v相,w相)上アーム駆動用インターフェース回路4a(4b,4c)及びu相(v相,w相)上アーム異常検出用インターフェース回路4g(4h,4i)の高電位側(正極側)電源端子の他方側が電気的に接続されている。また、u相(v相,w相)上アーム用絶縁電源3a(3b,3c)の高電位側(正極側)には上記インターフェース回路以外にu相(v相,w相)上アーム用ゲート回路5a(5b,5c)の高電位側(正極側)電源端子が電気的に接続されている。
【0120】
下アーム用絶縁電源3dの低電位側(負極側)にはu相,v相,w相の各下アーム駆動用インターフェース回路4d,4e,4f及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出用インターフェース回路4j,4k,4lの低電位側(負極側)電源端子の他方側が電気的に接続されている。下アーム用絶縁電源3dの低電位側(負極側)にはインターフェース回路以外にu相,v相,w相の各下アーム用ゲート回路5d,5e,5fの低電位側(負極側)電源端子及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出回路6d,6e,6fのセンサの一端側が電気的に接続されている。
【0121】
下アーム用絶縁電源3dの高電位側(正極側)にはu相,v相,w相の各下アーム駆動用インターフェース回路4d,4e,4f及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出用インターフェース回路4j,4k,4lの高電位側(正極側)電源端子の他方側が電気的に接続されている。下アーム用電源3dの高電位側(正極側)には上記インターフェース回路以外にu相,v相,w相の各下アーム用ゲート回路5d,5e,5fの高電位側(正極側)電源端子が電気的に接続されている。
【0122】
次に、図1,2を用いて、本実施例のインターフェース回路4の構成について詳細に説明する。
【0123】
図1は、本実施例の上記インターフェース回路のうち、u相(v相,w相)上アーム駆動用インターフェース回路4a(4b,4c)及びu相(v相,w相)下アーム駆動用インターフェース回路4d(4e,4f)の回路構成を示す。
【0124】
u相(v相,w相)上アーム駆動用インターフェース回路4a(4b,4c)は、マイコン2とu相(v相,w相)上アーム用ゲート回路5a(5b,5c)との間に電気的に接続された信号伝送回路であって、マイコン2から出力されたデジタル信号(電圧パルス信号)を、u相(v相,w相)上アーム用ゲート回路5a(5b,5c)に入力されるデジタル信号(電圧パルス信号)にレベルシフトし、u相(v相,w相)上アーム用ゲート回路5a(5b,5c)に伝達するように構成されている。また、u相(v相,w相)上アーム駆動用インターフェース回路4a(4b,4c)はu相(v相,w相)上アーム用絶縁電源3a(3b,3c)及び絶縁電源1に電気的に接続されており、それらを動作電源としている。
【0125】
u相(v相,w相)下アーム駆動用インターフェース回路4d(4e,4f)は、マイコン2とu相(v相,w相)下アーム用ゲート回路5d(5e,5f)との間に電気的に接続された信号伝送回路であって、マイコン2から出力されたデジタル信号(電圧パルス信号)を、u相(v相,w相)下アーム用ゲート回路5d(5e,5f)に入力されるデジタル信号(電圧パルス信号)にレベルシフトし、u相(v相,w相)下アーム用ゲート回路5d(5e,5f)に伝達するように構成されている。また、u相,v相,w相の各下アーム駆動用インターフェース回路4d,4e,4fは下アーム用絶縁電源3d及び絶縁電源1に電気的に接続されており、それらを動作電源としている。
【0126】
前述したように、絶縁電源1の電源電圧は5vである。一方、u相,v相,w相の各上アーム用絶縁電源3a,3b,3c及び下アーム用絶縁電源3dの電源電圧は13vであり、絶縁電源1の電源電圧よりも大きい。このように、本実施例では、2種類の異なる電源電圧をインターフェース回路の動作電源としたが、3種類以上の異なる電源電圧をインターフェース回路の動作電源としてもよい。
【0127】
以下、u相,v相,w相の各上アーム駆動用インターフェース回路4a,4b,4c及びu相,v相,w相の各下アーム駆動用インターフェース回路4d,4e,4fの具体的な回路構成について説明するが、それらの回路構成は全て同じである。従って、以下の説明では、u相,v相,w相の各上アーム駆動用インターフェース回路4a,4b,4c及びu相,v相,w相の各下アーム駆動用インターフェース回路4d,4e,4fを駆動用インターフェース回路と称して説明する。
【0128】
駆動用インターフェース回路は、複数の回路素子が1つのシリコン基板上に集積されて実装された1つの半導体集積回路装置(以下、「IC」と称する)から構成されたものであり、集積回路の全体をモールド部材(電気的に絶縁性を有する樹脂)によって覆った装置本体(図1の一点鎖線で囲った部分)と、装置本体を覆っているモールド部材から外部に導出された第1乃至第5の端子21〜24,11及び第7端子12とを備えている。駆動用インターフェース回路は回路機能上、電位選択回路10とレベルシフト回路20から構成されている。電位選択回路10とレベルシフト回路20は第6の端子30によって電気的に接続されている。
【0129】
レベルシフト回路20は、マイコン2から出力されたデジタル信号をレベルシフトしてゲート回路5に伝達する信号伝達回路であり、第1の電位V1(絶縁電源1の低電位側の電位であり)を基準電位とするパルス信号(パルス電圧V3の信号であり、マイコン2から出力される制御信号)を入力して、第2の電位V2(絶縁電源3の低電位側の電位)を基準電位とするパルス信号(パルス電圧V4の信号であり、ゲート回路5に出力される駆動信号)を出力するように、2個のトランジスタ素子と3個の抵抗素子から構成されている。レベルシフト回路20には第1乃至第4の端子21〜24及び第6の端子30が電気的に接続されている。
【0130】
第1の端子21にはnpn形トランジスタ素子TR1のエミッタ電極が電気的に接続されている。npn形トランジスタ素子TR1のコレクタ電極には電流制限用抵抗素子R2の一端が電気的に接続されている。電流制限用抵抗素子R2は、npn形トランジスタ素子TR1のコレクタ電極に流れ込む電流を制限するためのものである。電流制限用抵抗素子R2の他端(npn形トランジスタ素子TR1のコレクタ電極との接続端側とは反対側の接続端)には駆動電圧発生用抵抗素子R1の一端が電気的に接続されている。駆動電圧発生用抵抗素子R1は、後述するpnp形トランジスタ素子TR2を駆動するための駆動電圧を発生させるためのものである。駆動電圧発生用抵抗素子R1の他端(電流制限用抵抗素子R2との接続端側とは反対側の接続端)にはpnp形トランジスタ素子TR2のエミッタ電極が電気的に接続されている。
【0131】
pnp形トランジスタ素子TR2のコレクタ電極には出力信号発生用抵抗素子R3の一端が電気的に接続されている。出力信号発生用抵抗素子R3は、後述する第4の端子24に出力信号を発生させるためのものである。出力信号発生用抵抗素子R3の他端(pnp形トランジスタ素子TR2のコレクタ電極との接続端とは反対側の接続端)には第2の端子22が電気的に接続されている。npn形トランジスタ素子TR1のベース電極には第3の端子23が電気的に接続されている。
【0132】
pnp形トランジスタ素子TR2のコレクタ電極と出力信号発生用抵抗素子R3との接続点には第4の端子24が電気的に接続されている。電流制限用抵抗素子R2と駆動電圧発生用抵抗素子R1との接続点にはpnp形トランジスタ素子TR2のベース電極が電気的に接続されている。pnp形トランジスタ素子TR2のエミッタ電極と駆動電圧発生用抵抗素子R1との接続点には第6の端子30が電気的に接続されている。
【0133】
第1の端子21には絶縁電源1の低電位側が電気的に接続されている。また、第2の端子22には絶縁電源3の低電位側が電気的に接続されている。これにより、第2の端子22の第2の電位V2は絶縁電源3の低電位側の電位になる。ここで、第2の端子22の第2の電位V2は、u相,v相,w相の各上アーム駆動用インターフェース回路4a,4b,4cでは第1の電位V1に対して浮動電位となり、u相,v相,w相の各下アーム駆動用インターフェース回路4d,4e,4fでは第1の電位V1と同じ基準電位になる。
【0134】
第3の端子23は制御信号入力端子であり、第1の電位V1と同じ電位を基準電位とするマイコン2に電気的に接続されている。これにより、npn形トランジスタ素子TR1のベース電極には、マイコン2から出力された信号、すなわち第1の電位V1と同じ電位を基準電位とするパルス信号(パルス電圧V3)が入力される。npn形トランジスタ素子TR1は、パルス信号(パルス電圧V3)によってスイッチング動作(オン・オフ)する。
【0135】
第4の端子24は制御信号出力端子であり、第2の電位V2と同じ電位を基準電位とするゲート回路5に電気的に接続されている。これにより、レベルシフト回路20は、第2の電位V2と同じ電位を基準電位とするゲート回路5に、第2の電位V2を基準電位とするパルス信号(パルス電圧V4)を出力する。
【0136】
第6の端子30はレベルシフト回路20の動作用電源の高電位側端子であり、電位選択回路10に電気的に接続されている。これにより、レベルシフト回路20の動作用電源の高電位側端子には、電位選択回路10よって選択された電位が入力(印加)されるようになっている。
【0137】
電位選択回路10は、異なる複数の電位の中から、レベルシフト回路20の動作用電源電圧の高電位側の電位として選択するものであり、電気的な切替回路と考えてもよい。電位選択回路10には第5,第7の端子11,12及び第6の端子30が電気的に接続されている。
【0138】
一例として電位選択回路10は、ダイオード素子D1,D2のカソード電極同士を電気的に接続したものから構成されている。ダイオード素子D1のアノード電極には第7の端子12が電気的に接続されている。ダイオード素子D2のアノード電極には第5の端子11が電気的に接続されている。ダイオード素子D1,D2のカソード電極には第6の端子30が電気的に接続されている。ダイオード素子D1,D2は、第5の端子11及び第7の端子12から第6の端子30に向かう方向が順方向になる。
【0139】
第5の端子11には絶縁電源1の高電位側が電気的に接続されている。これにより、ダイオード素子D2のアノード電極には第5の電位V5(絶縁電源1の高電位側の電位)が入力(印加)される。第7の端子12には絶縁電源3の高電位側が電気的に接続されている。これにより、ダイオード素子D1のアノード電極には第7の電位V7(絶縁電源3の高電位側の電位)が入力(印加)される。ダイオード素子D1,D2は、入力(印加)された電位、すなわち第5の電位V5と第7の電位V7のうち、第1の電位V1との電位差が大きい電位を第6の電位V6として選択する。これにより、電位選択回路10は、レベルシフト回路20の動作用電源電圧の高電位側である第6の電位V6として、第5の電位V5或いは第7の電位V7のいずれか一方をレベルシフト回路20に入力(印加)する。
【0140】
尚、本実施例では、第5の電位V5と第7の電位V7の2つの異なる電位を電位選択回路10の入力電位としたが、3つ以上の異なる電位を電位選択回路10の入力電位としてもよい。
【0141】
絶縁電源1の低電位側の電位(第1の電位)を基準電位とするオン(highレベル)のパルス信号(制御信号)がマイコン2から出力されると、そのパルス信号は第3の端子23を介してnpn形トランジスタ素子TR1のベース電極に入力(印加)される。これにより、npn形トランジスタ素子TR1はオンする。ここで、第1の電位V1に対する第5の電位V5との電位差をV51、第1の電位V1に対する第7の電位V7の電位差をV71とする。電位選択回路10は、V51とV71の大きい方の電位差V51又はV71を選択し、これをレベルシフト回路20の動作用電源電圧として入力(印加)する。
【0142】
TR1がオンのとき、駆動電圧発生用抵抗素子R1に電流が流れ、駆動電圧発生用抵抗素子R1の両端には、pnp形トランジスタ素子TR2を動作(オン)させるための動作電圧が発生する。動作電圧はpnp形トランジスタ素子TR2のベース電極に入力(印加)される。これにより、pnp形トランジスタ素子TR2はオンする。pnp形トランジスタ素子TR2がオンすると、出力信号発生用抵抗素子R3に電流が流れ、出力信号発生用抵抗素子R3の両端には、絶縁電源3の低電位側の電位を基準電位とするオンのパルス信号が発生する。パルス信号は、絶縁電源1の低電位側の電位から絶縁電源3の低電位側の電位へ、基準電位がレベルシフトされた状態でゲート回路5に出力される。
【0143】
ゲート回路5は、レベルシフト回路20から出力されたパルス信号を最終段の駆動信号として、パワーモジュールPMUのパワー半導体素子Mpu〜Mnwのゲート電極に出力する。これにより、パワー半導体素子Mpu〜Mnwは、ゲート回路5から出力されたパルス信号に基づいてオンする。
【0144】
マイコン2から出力されるパルス信号がオフ(Lowレベル)になると、npn形トランジスタ素子TR1はオフする。これにより、駆動電圧発生用抵抗素子R1に電流が流れなくなるので、駆動電圧発生用抵抗素子R1の両端に発生する電圧(pnp形トランジスタ素子TR2を動作させるための動作電圧)が0Vになり、pnp形トランジスタ素子TR2はオフする。pnp形トランジスタ素子TR2がオフすると、第4の電位V4が第2の電位V2と同電位(Lowレベル)になり、パワー半導体素子Mpu〜Mnwのゲート電極に入力されるパルス信号はオフになる。これにより、パワー半導体素子Mpu〜Mnwはオフする。
【0145】
以上のように、本実施例では、光アイソレータなどの絶縁手段を用いることなく、電動機制御装置MCUのマイコン2から出力されたパルス信号(絶縁電源1の低電位側の電位を基準電位とするパルス信号)を、ゲート回路5に入力されるパルス信号(絶縁電源3の低電位側の電位を基準電位とするパルス信号)としてレベルシフトし、ゲート回路5に伝達できる。
【0146】
尚、レベルシフト回路はバイポーラトランジスタ回路に限定されず、CMOS回路やBiCMOS回路などでも容易に実現できる。
【0147】
ここで、実際にモータジェネレータM/Gが動作し、上アーム側のパワー半導体素子がオン、下アーム側のパワー半導体素子がオフする状態を想定し、駆動用インターフェース回路の動作を詳細に説明する。
【0148】
本実施例を上アーム側に適用した場合、第1の電位V1は絶縁電源1の低電位側になり、第2の電位V2は上アーム側パワー半導体素子(図3に示すMpu,Mpv,Mpw)のソース電位になる。これらパワー半導体素子がオンオフすると第2の電位が0Vからバッテリ電圧VBまで変化する。この時、図1に示す第1の電位V1と第2の電位V2との電位差ΔVGは、ΔVG=VB−0=VB(正の電圧)となる。ここで、絶縁電源1の出力電圧を5v、絶縁電源3の出力電圧を13vとすると、電位差V51(第1の電位V1に対する第5の電位差)が5V、電位差V71(第1の電位に対する第7の電位差)が13v+VB(正の電圧)となり、電位差V51と電位差V71との関係はV51<V71になる。従って、上アーム側の駆動用インターフェース回路では、第7の電位(絶縁電源3の高電位側の電位)を第6の電位V6として選択し、これをレベルシフト回路20に入力(印加)する。
【0149】
マイコン2から出力された制御信号(パルス信号)は基準電位が第1の電位V1から第2の電位V2にレベルシフトされ、駆動信号(パルス信号)として上アーム側のゲート回路5に伝達される。これにより、上アーム側のパワー半導体素子のゲート電極には、上アーム側のゲート回路5によって出力された駆動信号(パルス信号)号が入力(印加)される。従って、上アーム側のパワー半導体素子は、上アーム側のゲート回路5から出力された駆動信号(パルス信号)に基づいてオンオフ動作する。
【0150】
一方、本実施例を下アーム側に適用した場合、第1の電位V1は絶縁電源1の低電位側になり、第2の電位V2は下アーム側パワー半導体素子(図3に示すMnu,Mnv,Mnw)のソース電位になる。下アーム側では、図3に示す下アーム主回路インダクタンス200にパワー半導体素子のスイッチングによる過渡的な電流が流れて電圧ノイズが発生する。ここで、例えば下アーム主回路インダクタンス200のインダクタンス値をLS2=10nH、スイッチング時に下アーム主回路インダクタンス200に流れる過渡的な電流dI/dtを500A/μs程度であるとした場合、±5ボルトの電圧ノイズが発生する。本願発明者らが行った実験においても数百Armsのモータ出力電流時に±5ボルト程度の電圧ノイズが観測された。電圧ノイズは、下アーム主回路インダクタンス200のインダクタンス値LS2と、スイッチング時に下アーム主回路インダクタンス200に流れる過渡的な電流dI/dtに依存する。電圧ノイズの値を±VLボルトとすると、第1の電位V1に対する第2の電位V2との電位差ΔVGは±VLボルトで変動する。
【0151】
ここで、絶縁電源1の出力電圧を5v、絶縁電源3の出力電圧を13vとすると、電位差ΔVGがΔVG>−8の条件を満たすような電圧ノイズ±VLが発生すると、電位差V51(第1の電位V1に対する第5の電位差)と電位差V71(第1の電位V1に対する第7の電位差)との関係は、V51<V71になる。これにより、下アーム側の駆動用インターフェース回路では、第7の電位V7(絶縁電源3の高電位側の電位)を第6の電位V6として選択し、これをレベルシフト回路20に入力(印加)する。ここで、レベルシフト回路20に入力(印加)される第6の電位V6はV6=V7=ΔVG+13−Vdとなる。尚、Vdは図1に示すダイオードD1及びD2のオン電圧(約0.7V)である。
【0152】
電位差ΔVGがΔVG<−8の条件を満たすような電圧ノイズ±VLが発生すると、電位差V51と電位差V71との関係は、V51>V71になる。これにより、下アーム側の駆動用インターフェース回路では、第1の電位V1(絶縁電源1の高電位側の電位)を第6の電位V6として選択し、これをレベルシフト回路20に入力(印加)する。ここで、レベルシフト回路20に入力(印加)される第6の電位V6は数6の関係からV6=V5=5−Vdとなる。尚、Vdは図1に示すダイオードD1及びD2のオン電圧(約0.7V)である。
【0153】
電位差ΔVGがΔVG=−8の条件を満たすような電圧ノイズ±VLが発生すると、電位差V51と電位差V71との関係はV51=V71となる。これにより、下アーム側の駆動用インターフェース回路では、電位選択回路10によって選択される第6の電位V6はV6=V5=V7=5−Vdとなる。尚、Vdは図1に示すダイオードD1及びD2のオン電圧(約0.7V)である。
【0154】
従って、下アーム側の駆動用インターフェース回路は、電位差ΔVGの変動があっても、レベルシフト回路20を正常に動作させることができる。
【0155】
マイコン2から出力された制御信号(パルス信号)は基準電位が第1の電位V1から第2の電位V2にレベルシフトされ、駆動信号(パルス信号)として下アーム側のゲート回路5に伝達される。これにより、下アーム側のパワー半導体素子のゲート電極には、下アーム側のゲート回路5によって出力された駆動信号(パルス信号)号が入力(印加)される。従って、下アーム側のパワー半導体素子は、下アーム側のゲート回路5から出力された駆動信号(パルス信号)に基づいてオンオフ動作する。
【0156】
以上、本実施例によれば、モータジェネレータM/Gの駆動によってパワー半導体素子Mpu〜Mnwのソース電極の電位が定常的あるいは過渡的に変動しても、その変動に影響されることなく、駆動用インターフェース回路を正常に動作させることができる。すなわちレベルシフト回路20の第6の電位V6を電位選択回路10によって選択するようにしたので、ノイズなどによって第2の電位V2が変動してもレベルシフト回路20を正常に動作させ、パワー半導体素子Mpu〜Mnwを正常に動作させることができるので、駆動用インターフェース回路の耐ノイズ性及び信頼性を向上させることができる。従って、本実施例によれば、光アイソレータを用いることなく、電動機制御装置MCUと駆動回路装置DCUとの間の信号伝送を行うことができ、しかも、耐ノイズ性、信頼性、耐熱性に優れたインターフェース回路4を提供できる。
【0157】
また、本実施例によれば、駆動用インターフェース回路を、バイポーラトランジスタや金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ,ダイオード,抵抗などの回路素子によって構成できるので、駆動用インターフェース回路を集積回路(IC)化することができる。これにより、本実施例によれば、駆動用インターフェース回路を他の駆動回路構成部品と共に同一の基板に実装できるので、インターフェース回路4を小型にできる。従って、本実施例によれば、インバータ装置INVを小型化できる。
【0158】
尚、駆動用インターフェース回路の集積回路(IC)化にあたっては、ゲート回路5を含めて行ってもよい。また、駆動用インターフェース回路の集積回路(IC)化にあたっては、各相各アーム単位(1in1)で行ってもよいし、或いは各相単位(2in1)で行ってもよい。さらに、各アーム単位(3in1)で行ってもよいし、或いは全てまとめた形(6in1)で行ってもよい。
【0159】
尚、本実施例のように、ダイオード素子D1,D2を用いた電位選択回路10を構成した場合において、電位差V51と電位差V71との関係がV51<V71になったときには第7の端子12に吸い込み電流が流れる。また、電位差V51と電位差V71との関係がV51>V71になったときには第5の端子11に吸い込み電流が流れる。電位差V51と電位差V71との関係がV51=V71の条件になったときには第5の端子11及び第7の端子12に同じ電流量の吸い込み電流が流れる。従って、電位差V51と電位差V71との大小関係と、第5の端子11及び第7の端子12に流れる電流とを計測することにより、本発明のインターフェース回路の使用有無を確認できる。
【0160】
図2は、本実施例のインターフェース回路のうち、u相,v相,w相の各上アーム異常検出用インターフェース回路4g,4h,4i、u相,v相,w相の各下アーム異常検出用インターフェース回路4j,4k,4lの回路構成を示す。
【0161】
u相,v相,w相の各上アーム異常検出用インターフェース回路4g,4h,4i及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出用インターフェース回路4j,4k,4lは回路構成が全て同じである。従って、以下の説明では、u相,v相,w相の各上アーム異常検出用インターフェース回路4g,4h,4i及びu相,v相,w相の各下アーム異常検出用インターフェース回路4j,4k,4lを異常検出用インターフェース回路と称して説明する。
【0162】
異常検出用インターフェース回路は、駆動用インターフェース回路と同様に、電位選択回路10及びレベルシフト回路40から構成されている。異常検出用インターフェース回路の電位選択回路10の構成及び動作は駆動用インターフェース回路の電位選択回路と同様であるので、各構成要素に同符号を付し、ここでの説明を省略する。レベルシフト回路40は、図1の駆動用インターフェース回路の第6の端子30から第1の端子21に至る回路(図1の左側の回路)と、第6の端子30から第2の端子22に至る回路(図1の右側の回路)とが入れ替わった構成になっている。
【0163】
従って、レベルシフト回路40では、npn形トランジスタ素子TR4のベース電極に第4の端子44が電気的に接続されている。npn形トランジスタ素子TR4のエミッタ電極には第2の端子42が電気的に接続されている。pnp形トランジスタ素子TR3のコレクタ電極と出力信号発生用抵抗素子R4との間には第3の端子43が電気的に接続されている。出力信号発生用抵抗素子R4の接続端であって、pnp形トランジスタ素子TR3のコレクタ電極との接続端とは反対側の接続端には第1の端子41が電気的に接続されている。尚、図2においてR5は駆動電圧発生用抵抗素子、R6は電流制限用抵抗素子をそれぞれ示す。
【0164】
絶縁電源3の低電位側の電位(パワー半導体素子のソース電極の電位)を基準電位とする異常検出有(highレベル)のパルス信号(異常検出信号)が異常検出回路6から出力されると、そのパルス信号は第4の端子44を介してnpn形トランジスタ素子TR4のベース電極に入力(印加)される。これにより、npn形トランジスタ素子TR4がオンする。ここで、第1の電位V1に対する第5の電位V5との電位差をV51、第1の電位V1に対する第7の電位V7の電位差をV71とする。電位選択回路10は、V51とV71の大きい方の電位差V51又はV71を選択し、これをレベルシフト回路40の動作用電源電圧として入力(印加)する。
【0165】
TR4がオンのとき、駆動電圧発生用抵抗素子R5に電流が流れ、駆動電圧発生用抵抗素子R5の両端には、pnp形トランジスタ素子TR3を動作(オン)させるための動作電圧が発生する。動作電圧はpnp形トランジスタ素子TR3のベース電極に入力(印加)される。これにより、pnp形トランジスタ素子TR3はオンする。pnp形トランジスタ素子TR3がオンすると、出力信号発生用抵抗素子R4に電流が流れ、出力信号発生用抵抗素子R4の両端には、絶縁電源1の低電位側の電位を基準電位とする異常検出有のパルス信号(フェールセーフ信号)が発生する。パルス信号(フェールセーフ信号)は、絶縁電源3の低電位側の電位から絶縁電源1の低電位側の電位へ、電位がレベルシフトされた状態でマイコン25に出力される。
【0166】
マイコン2は、異常が検出されたパワー半導体素子Mpu〜Mnw又は全てのパワー半導体素子Mpu〜Mnwの動作を停止(オフ)させるように、レベルシフト回路40から出力されたパルス信号(フェールセーフ信号)に基づいてインターロックを作動させ、パワー半導体素子Mpu〜Mnwを過電流から保護する。
【0167】
過電流が流れなくなり、異常検出回路6から出力されるパルス信号(異常検出信号)が異常検出無(Lowレベル)になると、npn形トランジスタ素子TR4はオフする。これにより、駆動電圧発生用抵抗素子R5に電流が流れなくなるので、駆動電圧発生用抵抗素子R5の両端に発生する電圧が0Vになり、pnp形トランジスタ素子TR3はオフする。pnp形トランジスタ素子TR3がオフすると、第3の電位V3が第1の電位V1と同電位(Lowレベル)になり、マイコン2に入力されるパルス信号(フェールセーフ信号)は異常検出無(Lowレベル)になる。これにより、マイコン2は、インターロックを解除する。
【0168】
尚、レベルシフト回路はバイポーラトランジスタ回路に限定されず、CMOS回路やBiCMOS回路などでも容易に実現できる。
【0169】
実際にモータジェネレータM/Gが動作し、上アーム側のパワー半導体素子がオン、下アーム側のパワー半導体素子がオフする状態における異常検出用インターフェース回路の動作も、駆動用インターフェース回路の動作と同様になる。
【0170】
本実施例を上アーム側に適用した場合、第1の電位V1は絶縁電源1の低電位側になり、第2の電位V2は上アーム側パワー半導体素子(図3に示すMpu,Mpv,Mpw)のソース電位になる。これらパワー半導体素子がオンオフすると第2の電位が0Vからバッテリ電圧VBまで変化する。この時、図2に示す第1の電位V1と第2の電位V2との電位差ΔVGは、ΔVG=VB−0=VB(正の電圧)となる。ここで、絶縁電源1の出力電圧を5v、絶縁電源3の出力電圧を13vとすると、電位差V51(第1の電位V1に対する第5の電位差)が5V、電位差V71(第1の電位に対する第7の電位差)が13v+VB(正の電圧)となり、電位差V51と電位差V71との関係はV51<V71になる。従って、上アーム側の駆動用インターフェース回路では、第7の電位(絶縁電源3の高電位側の電位)を第6の電位V6として選択し、これをレベルシフト回路20に入力(印加)する。
【0171】
異常検知回路6から出力された異常検知信号は基準電位が第2の電位V2から第1の電位V1にレベルシフトされ、フェールセーフ信号としてマイコン2に伝達される。
【0172】
一方、本実施例を下アーム側に適用した場合、第1の電位V1は絶縁電源1の低電位側になり、第2の電位V2は下アーム側パワー半導体素子(図3に示すMnu,Mnv,Mnw)のソース電位になる。下アーム側では、図3に示す下アーム主回路インダクタンス200にパワー半導体素子のスイッチングによる過渡的な電流が流れて電圧ノイズが発生する。ここで、例えば下アーム主回路インダクタンス200のインダクタンス値をLS2=10nH、スイッチング時に下アーム主回路インダクタンス200に流れる過渡的な電流dI/dtを500A/μs程度であるとした場合、±5ボルトの電圧ノイズが発生する。本願発明者らが行った実験においても数百Armsのモータ出力電流時に±5ボルト程度の電圧ノイズが観測された。電圧ノイズは、下アーム主回路インダクタンス200のインダクタンス値LS2と、スイッチング時に下アーム主回路インダクタンス200に流れる過渡的な電流dI/dtに依存する。電圧ノイズの値を±VLボルトとすると、第1の電位V1に対する第2の電位V2との電位差ΔVGは±VLボルトで変動する。
【0173】
ここで、絶縁電源1の出力電圧を5v、絶縁電源3の出力電圧を13vとすると、電位差ΔVGがΔVG>−8の条件を満たすような電圧ノイズ±VLが発生すると、電位差V51(第1の電位V1に対する第5の電位差)と電位差V71(第1の電位V1に対する第7の電位差)との関係は、V51<V71になる。これにより、下アーム側の異常検知用インターフェース回路では、第7の電位V7(絶縁電源3の高電位側の電位)を第6の電位V6として選択し、これをレベルシフト回路40に入力(印加)する。ここで、レベルシフト回路40に入力(印加)される第6の電位V6はV6=V7=ΔVG+13−Vdとなる。尚、Vdは図2に示すダイオードD1及びD2のオン電圧(約0.7V)である。
【0174】
電位差ΔVGがΔVG<−8の条件を満たすような電圧ノイズ±VLが発生すると、電位差V51と電位差V71との関係は、V51>V71になる。これにより、下アーム側の異常検知用インターフェース回路では、第1の電位V1(絶縁電源1の高電位側の電位)を第6の電位V6として選択し、これをレベルシフト回路40に入力(印加)する。ここで、レベルシフト回路40に入力(印加)される第6の電位V6は数6の関係からV6=V5=5−Vdとなる。尚、Vdは図2に示すダイオードD1及びD2のオン電圧(約0.7V)である。
【0175】
電位差ΔVGがΔVG=−8の条件を満たすような電圧ノイズ±VLが発生すると、電位差V51と電位差V71との関係はV51=V71となる。これにより、下アーム側の異常検知用インターフェース回路では、電位選択回路10によって選択される第6の電位V6はV6=V5=V7=5−Vdとなる。尚、Vdは図2に示すダイオードD1及びD2のオン電圧(約0.7V)である。
【0176】
従って、下アーム側の異常検知用インターフェース回路は、電位差ΔVGの変動があっても、レベルシフト回路40を正常に動作させることができる。
【0177】
レベルシフト回路40が正常に動作すると、マイコン2は、レベルシフト回路40から出力されたパルス信号(フェールセーフ信号)に基づいて正確にインターロックの作動及び解除を行うことができる。
【0178】
以上、本実施例によれば、異常検出用インターフェース回路を駆動用インターフェース回路と同様に構成及び作用させることができるので、駆動用インターフェース回路と同様の作用効果を達成できる。
【実施例2】
【0179】
本発明の第2実施例を図7に基づいて説明する。
【0180】
図7は本実施例の駆動用インターフェース回路7(u相,v相,w相の各上アーム駆動用インターフェース回路7a,7b,7c及びu相,v相,w相の各下アーム駆動用インターフェース回路7d,7e,7f)の回路構成を示す。
【0181】
本実施例は第1実施例の変形例であり、第1実施例とは電位選択回路の構成が異なっている。他の構成は第1実施例と同様である。
【0182】
また、本実施例では、駆動用インターフェース回路7を例にとり、その回路構成について説明するが、第1実施例と同様に、レベルシフト回路20の第6の端子30から第1の端子21に至る回路(図7の左側の回路)と、第6の端子30から第2の端子22に至る回路(図7の右側の回路)とを入れ替えれば、異常検出用インターフェース回路を構成することができる。
【0183】
電位選択回路50は、第1の電位V1と第2の電位V2との電位差に応じて、第5の電位V5と第7の電位V7のいずれかをレベルシフト回路20の動作用電源電圧の高電位側の電位(第6の電位V6)として選択するものであり、スイッチSW1,SW2を電気的に直列接続した電気的な切替回路から構成されている。スイッチSW1,SW2は、トランジスタなどから構成されたものであり、入力端子53を介して入力された指令信号に基づいて動作する半導体スイッチである。
【0184】
スイッチSW1の一端(スイッチSW2との接続端とは反対側の接続端)には第5の端子51が電気的に接続されている。スイッチSW2の一端(スイッチSW1との接続端とは反対側の接続端)には第7の端子52が電気的に接続されている。スイッチSW1とスイッチSW2との接続端には第6の端子30が電気的に接続されている。スイッチSW2には、入力端子53を介して入力された指令信号が直接入力されるようになっている。スイッチSW1には、入力端子53を介して入力された指令信号が反転器NOTを介して入力されるようになっている。本実施例では、アナログスイッチからなるセレクタ回路によって電位選択回路50を構成している。
【0185】
入力端子53は比較器60に電気的に接続されている。比較器60は第1の端子21と第2の端子22から第1の電位V1と第2の電位V2を入力して両者を比較して、電位選択回路50に指令信号を出力する制御回路である。比較器60は、第1の電位V1と第2の電位V2との差電圧△VGを求め、差電圧△VGが△VG≧0の条件を満たす場合にはHigh信号或いはオン信号を出力し、差電圧△VGが△VG<0の条件を満たす場合にはLow信号或いはオフ信号を出力する。
【0186】
比較器60から出力された指令信号がHigh信号或いはオン信号である場合、スイッチSW2にはHigh信号或いはオン信号が直接入力される。スイッチSW1には、入力されたHigh信号或いはオン信号が反転器NOTによって反転され、すなわちLow信号或いはオフ信号として入力される。この結果、スイッチSW1はオフ、スイッチSW2はオンとなる。これにより、電位選択回路50は第7の電位V7を選択し、レベルシフト回路20の動作電圧(高電位側の電位であり、第6の電位V6)として第7の電位V7をレベルシフト回路20に入力(印加)する。この時、電位差V71は電位差V51よりも大きい状態にある。
【0187】
比較器60から出力された指令信号がLow信号或いはオフ信号である場合、スイッチSW2にはLow信号或いはオフ信号が直接入力される。スイッチSW1には、入力されたLow信号或いはオフ信号が反転器NOTによって反転され、すなわちHigh信号或いはオン信号として入力される。この結果、スイッチSW1はオン、スイッチSW2はオフとなる。これにより、電位選択回路50は第5の電位V5を選択し、レベルシフト回路20の動作電圧(高電位側の電位であり、第6の電位V6)として第5の電位V5をレベルシフト回路20に入力(印加)する。この時、電位差V51は電位差V71よりも大きい状態にある。
【0188】
このように、本実施例では、第1の電位V1と第2の電位V2との電位差の変動に基づいた指令信号(外部信号)を受けて電位選択回路60を動作させており、第1実施例と同様に、電位差ΔVGの変動があっても、レベルシフト回路20を動作させることができる。
【0189】
本実施例によれば、第1実施例と同様に、光アイソレータを用いることなく、電動機制御装置MCUと駆動回路装置DCUとの間の信号伝送を行うことができ、しかも、耐ノイズ性、信頼性、耐熱性に優れたインターフェース回路を提供できる。
【0190】
また、本実施例によれば、電位選択回路50を半導体スイッチ、反転器などの回路素子によって構成できるので、第1実施例と同様に、駆動用インターフェース回路をIC化することができる。
【実施例3】
【0191】
本発明の第3実施例を図8に基づいて説明する。
【0192】
図8は本実施例の駆動用インターフェース回路8(u相,v相,w相の各上アーム駆動用インターフェース回路8a,8b,8c及びu相,v相,w相の各下アーム駆動用インターフェース回路8d,8e,8f)の回路構成を示す。
【0193】
本実施例は第2実施例の変形例であり、第2実施例とは電位選択回路の構成が異なっている。他の構成は第2実施例と同様である。
【0194】
また、本実施例では、駆動用インターフェース回路8を例にとり、その回路構成について説明するが、第2実施例と同様に、レベルシフト回路20の第6の端子30から第1の端子21に至る回路(図8の左側の回路)と、第6の端子30から第2の端子22に至る回路(図8の右側の回路)とを入れ替えれば、異常検出用インターフェース回路を構成することができる。
【0195】
電位選択回路70は、第2実施例と同様に、第1の電位V1と第2の電位V2との電差に応じて、第5の電位V5と第7の電位V7のいずれかをレベルシフト回路20の動作用電源電圧の高電位側の電位として選択する電気的な切替回路である。本実施例の電位選択回路70は、電気的に直列接続されたスイッチSW1,SW2と、デコーダDCから構成されている。スイッチSW1,SW2は、トランジスタなどから構成された半導体スイッチである。
【0196】
スイッチSW1の一端(スイッチSW2との接続端とは反対側の接続端)には第5の端子71が電気的に接続されている。スイッチSW2の一端(スイッチSW1との接続端とは反対側の接続端)には第7の端子72が電気的に接続されている。スイッチSW1とスイッチSW2との接続端には第6の端子30が電気的に接続されている。デコーダDCには入力端子73が電気的に接続されている。デコーダDCは、検出器60からの指令信号を受けて、スイッチSW1,SW2を動作させるための駆動信号を出力するようになっている。本実施例では、マルチプレサクからなるセレクタ回路によって電位選択回路70を構成している。
【0197】
第2実施例で述べたように、比較器60は、第1の電位V1と第2の電位V2との差電圧△VGを求め、差電圧△VGが△VG≧0の条件を満たす場合にはHigh信号或いはオン信号を出力し、差電圧△VGが△VG<0の条件を満たす場合にはLow信号或いはオフ信号を出力する。
【0198】
比較器60から出力された指令信号がHigh信号或いはオン信号である場合、デコーダDCは、スイッチSW1がオフ、スイッチSW2がオンとなるように、それぞれに駆動信号を出力する。これにより、電位選択回路70は第7の電位V7を選択し、レベルシフト回路20の動作電圧(高電位側の電位であり、第6の電位V6)として第7の電位V7をレベルシフト回路20に入力(印加)する。この時、電位差V71は電位差V51よりも大きい状態にある。
【0199】
比較器60から出力された指令信号がLow信号或いはオフ信号である場合、デコーダDCは、スイッチSW1がオン、スイッチSW2がオフとなるように、それぞれに駆動信号を出力する。これにより、電位選択回路70は第5の電位V5を選択し、レベルシフト回路20の動作電圧(高電位側の電位であり、第6の電位V6)として第5の電位V5をレベルシフト回路20に入力(印加)する。この時、電位差V51は電位差V71よりも大きい状態にある。
【0200】
このように、本実施例では、第1の電位V1と第2の電位V2との電位差の変動に基づいた指令信号(外部信号)を受けて電位選択回路70を動作させており、第2施例と同様に、第1実施例と同様に、電位差ΔVGの変動があっても、レベルシフト回路20を動作させることができる。
【0201】
本実施例によれば、第2実施例と同様に、光アイソレータを用いることなく、電動機制御装置MCUと駆動回路装置DCUとの間の信号伝送を行うことができ、しかも、耐ノイズ性、信頼性、耐熱性に優れたインターフェース回路を提供できる。
【0202】
また、本実施例によれば、電位選択回路50を半導体スイッチ、デコーダなどの回路素子によって構成できるので、第2実施例と同様に、駆動用インターフェース回路をIC化することができる。
【実施例4】
【0203】
本発明の第4実施例を図9に基づいて説明する。
【0204】
図9は、本実施例の駆動用インターフェース回路9(u相,v相,w相の各上アーム駆動用インターフェース回路9a,9b,9c及びu相,v相,w相の各下アーム駆動用インターフェース回路9d,9e,9f)の回路構成を示す。
【0205】
第1乃至第3実施例では、パルス信号の基準電位が絶縁電源1の低電位側であり、基準電位に対してパルスが立ち上がる信号を伝達する駆動用インターフェース回路について説明したが、本実施例では、第1乃至第3実施例とは異なり、パルス信号の基準電位が絶縁電源1の高電位側であり、基準電位に対してパルスが立ち下がる信号を伝達する駆動用インターフェース回路9の構成を説明する。
【0206】
本実施例の駆動用インターフェース回路9は、第1乃至第3実施例と同様に、電位選択回路90及びレベルシフト回路80から構成されているが、それらの回路構成は第1乃至第3実施例とは異なる。
【0207】
尚、本実施例では、駆動用インターフェース回路9を例にとり、その回路構成について説明するが、第1乃至第3実施例と同様に、レベルシフト回路80の第6の端子31から第1の端子81に至る回路(図9の左側の回路)と、第6の端子31から第2の端子82に至る回路(図9の右側の回路)とを入れ替えれば、異常検出用インターフェース回路を構成することができる。
【0208】
レベルシフト回路80は、マイコン2から出力されたデジタル信号をレベルシフトしてゲート回路5に伝達する信号伝達回路であり、第1の電位V1(絶縁電源1の高電位側の電位)を基準電位とするパルス信号(パルス電圧V3の信号であり、マイコン2から出力される制御信号)を入力して、第2の電位V2(絶縁電源3の高電位側の電位)を基準電位とするパルス信号(パルス電圧V4の信号であり、ゲート回路5に出力される駆動信号)を出力するように、2個のトランジスタ素子と3個の抵抗素子から構成されている。レベルシフト回路80には第1乃至第4の端子81〜84及び第6の端子31が電気的に接続されている。
【0209】
第1の端子81にはpnp形トランジスタ素子TR5のエミッタ電極が電気的に接続されている。pnp形トランジスタ素子TR5のコレクタ電極には電流制限用抵抗素子R7の一端が電気的に接続されている。電流制限用抵抗素子R7は、pnpトランジスタのコレクタ電極から流れ出す電流を制限するためのものである。電流制限用抵抗素子R7の他端(pnp形トランジスタ素子TR5のコレクタ電極との接続端側とは反対側の接続端)には駆動電圧発生用抵抗素子R8の一端が電気的に接続されている。駆動電圧発生用抵抗素子R8は、後述するnpn形トランジスタ素子TR6を駆動するための駆動電圧を発生させるためのものである。駆動電圧発生用抵抗素子R8の他端には(電流制限用抵抗素子R7との接続端側とは反対側の接続端)にはnpn形トランジスタ素子TR6のエミッタ電極が電気的に接続されている。
【0210】
npn形トランジスタ素子TR6のコレクタ電極には出力信号発生用抵抗素子R9の一端が電気的に接続されている。出力信号発生用抵抗素子R9は、後述する第4の端子84に出力信号を発生させるためのものである。出力信号発生用抵抗素子R9の他端(npn形トランジスタ素子TR6のコレクタ電極との接続端とは反対側の接続端)には第2の端子82が電気的に接続されている。pnp形トランジスタ素子TR5のベース電極には第3の端子83が電気的に接続されている。
【0211】
npn形トランジスタ素子TR6のコレクタ電極と出力信号発生用抵抗素子R9との接続点には第4の端子84が電気的に接続されている。駆動電圧発生用抵抗素子R8と電流制限用抵抗素子R7との接続点にはnpn形トランジスタ素子TR6のベース電極が電気的に接続されている。npn形トランジスタ素子TR6のエミッタ電極と駆動電圧発生用抵抗素子R8との接続点には第6の端子31が電気的に接続されている。
【0212】
第1の端子81には絶縁電源1の高電位側が電気的に接続されている。これにより、第1の端子81の第1の電位V1は絶縁電源1の高電位側の電位になる。第2の端子82には絶縁電源3の高電位側が電気的に接続されている。これにより、第2の端子82の第2の電位V2は絶縁電源3の高電位側の電位になる。
【0213】
第3の端子83は制御信号入力端子であり、絶縁電源1の高電位側の電位を基準電位とするマイコン2に電気的に接続されている。pnp形トランジスタ素子TR5のベース電極には、マイコン2から出力された信号(絶縁電源1の高電位側の電位を基準電位とするパルス信号(パルス電圧V3))が入力される。pnp形トランジスタ素子TR5はパルス信号(パルス電圧V3)によってスイッチング動作(オン・オフ)する。
【0214】
第4の端子84は制御信号出力端子であり、絶縁電源3の高電位側の電位と同じ電位を基準電位とするゲート回路5に電気的に接続されている。レベルシフト回路80は、絶縁電源3の高電位側の電位と同じ電位を基準電位とするゲート回路5に、絶縁電源3の高電位側の電位を基準電位とするパルス信号(パルス電圧V4)を出力する。
【0215】
第6の端子31はレベルシフト回路80の動作用電源の低電位側端子であり、電位選択回路90に電気的に接続されている。これにより、レベルシフト回路80の動作用電源の低電位側端子の電位は、電位選択回路90よって選択された電位となる。
【0216】
電位選択回路90は、異なる複数の電位の中から、レベルシフト回路80の動作用電源電圧の低電位側の電位として選択するものであり、電気的な切替回路と考えてもよい。電位選択回路90には第5の端子91,第7の端子92及び第6の端子31が電気的に接続されている。
【0217】
一例として、電位選択回路90は、ダイオード素子D3,D4のアノード電極同士を電気的に接続したものから構成されている。ダイオード素子D3のカソード電極には第7の端子92が電気的に接続されている。ダイオード素子D4のカソード電極には第5の端子91が電気的に接続されている。ダイオード素子D3,D4のアノード電極には第6の端子31が電気的に接続されている。
【0218】
第5の端子91には絶縁電源1の低電位側が電気的に接続されている。これにより、ダイオード素子D4のカソード電極の電位は絶縁電源1の低電位側の電位と同じになる。第7の端子92には絶縁電源3の低電位側が電気的に接続されている。これにより、ダイオード素子D3のカソード電極の電位は絶縁電源3の低電位側の電位と同じになる。ダイオード素子D3,D4は、第5の電位V5と第7の電位V7のうち、基準電位である第1の電位V1との電位差が大きい電位を第6の電位V6として選択する。これにより、電位選択回路90は、レベルシフト回路80の動作用電源電圧の低電位側(第6の端子31)に、第5の電位V5或いは第7の電位V7のいずれか一方を入力(印加)する。
【0219】
尚、本実施例では、第5の電位V5と第7の電位V7の2つの異なる電位を電位選択回路90の入力電位としたが、3つ以上の異なる電位を電位選択回路90の入力電位としてもよい。
【0220】
絶縁電源1の高電位側の電位(第1の電位)を基準電位とするオン(Lowレベル)のパルス信号がマイコン2から出力されると、そのパルス信号は第3の端子83を介してpnp形トランジスタ素子TR5のベース電極に入力(印加)される。これにより、pnp形トランジスタ素子TR5がオンする。ここで、第1の電位V1に対する第5の電位V5との電位差をV51、第1の電位V1に対する第7の電位V7の電位差をV71とする。電位選択回路90は、V51とV71の大きい方の電位差V51又はV71を選択し、これをレベルシフト回路80の動作用電源電圧の低電位側の電位とする。
【0221】
TR5がオンのとき、駆動電圧発生用抵抗素子R8に電流が流れ、駆動電圧発生用抵抗素子R8の両端には、npn形トランジスタ素子TR6を動作(オン)させるための動作電圧が発生する。動作電圧はnpn形トランジスタ素子TR6のベース電極に入力(印加)される。これにより、npn形トランジスタ素子TR6はオンする。npn形トランジスタ素子TR6がオンすると、出力信号発生用抵抗素子R9に電流が流れ、出力信号発生用抵抗素子R9の両端には、絶縁電源3の高電位側の電位を基準電位とするオンのパルス信号が発生する。パルス信号は、絶縁電源1の高電位側の電位から絶縁電源3の高電位側の電位へ、電位がレベルシフトされた状態でゲート回路5に出力される。
【0222】
ゲート回路5は、レベルシフト回路80から出力されたパルス信号を最終段の駆動信号として、パワーモジュールPMUのパワー半導体素子Mpu〜Mnwのゲート電極に出力する。これにより、パワー半導体素子Mpu〜Mnwは、ゲート回路5から出力されたパルス信号に基づいてオンする。
【0223】
マイコン2から出力されるパルス信号がオフ(Highレベル)になると、ppn形トランジスタ素子TR5はオフする。これにより、駆動電圧発生用抵抗素子R8に電流が流れなくなるので、駆動電圧発生用抵抗素子R8の両端に発生する電圧(npn形トランジスタ素子TR6を動作させるための動作電圧)が0Vになり、npn形トランジスタ素子TR6はオフする。npn形トランジスタ素子TR6がオフすると、第4の電位V4が第2の電位V2と同電位(Highレベル)になり、パワー半導体素子Mpu〜Mnwのゲート電極に入力されるパルス信号はオフになる。これにより、パワー半導体素子Mpu〜Mnwはオフする。
【0224】
以上のように、本実施例では、光アイソレータなどの絶縁手段を用いることなく、電動機制御装置MCUのマイコン2から出力されたパルス信号(絶縁電源1の低電位側の電位を基準電位とするパルス信号)を、ゲート回路5に入力されるパルス信号(絶縁電源3の低電位側の電位を基準電位とするパルス信号)としてレベルシフトし、ゲート回路5に伝達できる。
【0225】
尚、レベルシフト回路はバイポーラトランジスタ回路に限定されず、CMOS回路やBiCMOS回路などでも容易に実現できる。
【0226】
ここで、実際にモータジェネレータM/Gが動作し、上アーム側のパワー半導体素子がオン、下アーム側のパワー半導体素子がオフする状態を想定し、駆動用インターフェース回路の動作を詳細に説明する。
【0227】
尚、本実施例の出力パルスV4は絶縁電源3の高電位側を基準電位とするため、上アーム側パワー半導体素子及び下アーム側パワー半導体素子がnMOSの場合、ゲート回路5では極性反転回路(NOT回路)などを用いてnMOSのソース電位を基準とするパルスにする変換する必要がある。上アーム側パワー半導体素子及び上アーム側パワー半導体素子がpMOSの場合、極性反転回路は不要である。
【0228】
以下に上アーム側パワー半導体素子及び下アーム側パワー半導体素子がpMOSとして、本実施例を上アーム側に適用した場合の動作を説明する。第1の電位V1は絶縁電源1の高電位側になり、第2の電位V2は上アーム側パワー半導体素子pMOSのソース電位になる。上アーム側では、図3に示す上アーム主回路インダクタンス100にパワー半導体素子のスイッチングによる過渡的な電流が流れて電圧ノイズが発生する。ここで、例えば上アーム主回路インダクタンス100のインダクタンス値をLS1=10nH、スイッチング時に上アーム主回路インダクタンス100に流れる過渡的な電流dI/dtを500A/μs程度であるとした場合、±5ボルトの電圧ノイズが発生する。電圧ノイズは、上アーム主回路インダクタンス100のインダクタンス値LS1と、スイッチング時に上アーム主回路インダクタンス100に流れる過渡的な電流dI/dtに依存する。電圧ノイズの値を±VLボルトとすると、第1の電位V1に対する第2の電位V2との電位差ΔVGは±VLボルトで変動する。
【0229】
ここで、絶縁電源1の出力電圧を第1の電位を基準として−5v、絶縁電源3の出力電圧を第2の電位を基準として−13vとすると、第1の電位に対する第2の電位との電位差ΔVGがΔVG<8の条件を満たすような電圧ノイズ±VLが発生すると、電位差V51(第1の電位V1に対する第5の電位差)と電位差V71(第1の電位V1に対する第7の電位差)との関係は、V51>V71になる。これにより、上アーム側の駆動用インターフェース回路では、第7の電位V7(絶縁電源3の低電位側の電位)を第6の電位V6として選択し、これをレベルシフト回路80に入力(印加)する。ここで、レベルシフト回路80に入力(印加)される第6の電位V6はV6=V7=ΔVG−13+Vdとなる。尚、Vdは図9に示すダイオードD3及びD4のオン電圧(約0.7V)である。
【0230】
第1の電位に対する第2の電位との電位差ΔVGがΔVG>8の条件を満たすような電圧ノイズ±VLが発生すると、電位差V51と電位差V71との関係は、V51<V71になる。これにより、上アーム側の駆動用インターフェース回路では、第5の電位V5(絶縁電源1の低電位側の電位)を第6の電位V6として選択し、これをレベルシフト回路20に入力(印加)する。ここで、レベルシフト回路80に入力(印加)される第6の電位V6は数6の関係からV6=V5=−5+Vdとなる。尚、Vdは図9に示すダイオードD3及びD4のオン電圧(約0.7V)である。
【0231】
電位差ΔVGがΔVG=8の条件を満たすような電圧ノイズ±VLが発生すると、電位差V51と電位差V71との関係はV51=V71となる。これにより、上アーム側の駆動用インターフェース回路では、電位選択回路90によって選択される第6の電位V6はV6=V5=V7=−5+Vdとなる。尚、Vdは図9に示すダイオードD3及びD4のオン電圧(約0.7V)である。
【0232】
本実施例を下アーム側に適用した場合、第1の電位V1は絶縁電源1の高電位側になり、第2の電位V2は下アーム側パワー半導体素子のソース電位になる。これらパワー半導体素子がオンオフすると第2の電位が0Vからバッテリ電圧VBまで変化する。この時、図9に示す第1の電位V1と第2の電位V2との電位差ΔVGは、ΔVG=VB−0=VB(正の電圧)となる。ここで、絶縁電源1の出力電圧を5v、絶縁電源3の出力電圧を13vとすると、電位差V51(第1の電位V1に対する第5の電位差)が−5V、電位差V71(第1の電位に対する第7の電位差)が−13v(負の電圧)となり、電位差V51と電位差V71との関係はV51>V71になる。従って、上アーム側の駆動用インターフェース回路では、第7の電位(絶縁電源3の低電位側の電位)を第6の電位V6として選択し、これをレベルシフト回路80に入力(印加)する。
【0233】
従って、下アーム側の駆動用インターフェース回路は、電位差ΔVGの変動があっても、レベルシフト回路80を動作させることができる。
【0234】
マイコン2から出力された制御信号(パルス信号)は基準電位が第1の電位V1から第2の電位V2にレベルシフトされ、駆動信号(パルス信号)として下アーム側のゲート回路5に伝達される。これにより、下アーム側のパワー半導体素子のゲート電極には、下アーム側のゲート回路5によって出力された駆動信号(パルス信号)号が入力(印加)される。従って、下アーム側のパワー半導体素子は、下アーム側のゲート回路5から出力された駆動信号(パルス信号)に基づいてオンオフ動作する。
【0235】
以上、本実施例によれば、モータジェネレータM/Gの駆動によってパワー半導体素子Mpu〜Mnwのソース電極の電位が定常的あるいは過渡的に変動しても、その変動に影響されることなく、駆動用インターフェース回路を正常に動作させることができる。従って、本実施例によれば、第1乃至第3実施例と同様に、光アイソレータを用いることなく、電動機制御装置MCUと、電動機制御装置MCUとは基準電位が異なる駆動回路装置DCUとの間の電気的な絶縁を行いながら、電動機制御装置MCUと駆動回路装置DCUとの間の信号伝送を行うことができ、しかも、耐ノイズ性、信頼性、耐熱性に優れた駆動用インターフェース回路を提供できる。
【0236】
また、本実施例によれば、駆動用インターフェース回路を、バイポーラトランジスタや金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ,ダイオード,抵抗などの回路素子によって構成できるので、駆動用インターフェース回路を集積回路(IC)化することができる。これにより、本実施例によれば、駆動用インターフェース回路を他の駆動回路構成部品と共に同一の基板に実装できるので、第1乃至第3実施例と同様に、インターフェース回路を小型にでき、インバータ装置INVを小型化できる。
【0237】
また、本実施例によれば、レベルシフト回路90の低電位側を、第1の電位V1と第2の電位V2との電位差ΔVGの大小や正負に関係なく、第5の電位V5或いは第7の電位V7のうち、第1の電位V1との差が大きい方を選択するようにしたので、電位選択回路90を簡単な回路で構成できる。
【0238】
尚、本実施例のように、ダイオード素子D3,D4を用いた電位選択回路10を構成した場合において、電位差V51と電位差V71との関係がV51>V71になったときには第7の端子92に吐き出し電流が流れる。電位差V51と電位差V71との関係がV51<V71になったときには第5の端子91に吐き出し電流が流れる。電位差V51と電位差V71との関係がV51=V71になったときには第5の端子91及び第7の端子92に同じ電流量の吐き出し電流が流れる。従って、電位差V51と電位差V71との大小関係と、第5の端子91及び第7の端子92に流れる電流とを計測することにより、本発明のインターフェース回路の使用有無を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】本発明の第1実施例である駆動用インターフェース回路の回路構成を示す回路図。
【図2】本発明の第1実施例である異常検出用インターフェース回路の回路構成を示す回路図。
【図3】本発明の第1実施例である車載用電機システム(バッテリ、インバータ装置及びモータジェネレータから構成された電動機駆動システム)の構成及びインバータ装置のパワーモジュールの回路構成を示すブロック図。
【図4】図3のインバータ装置の電動機制御装置と駆動回路装置の回路構成及び信号系の構成を示すブロック図。
【図5】図3のインバータ装置の電動機制御装置と駆動回路装置の電源系の構成を示すブロック図。
【図6】図3の電機システムが適用されたハイブリッド自動車の駆動系の構成を示すブロック図。
【図7】本発明の第2実施例である駆動用インターフェース回路の回路構成を示す回路図。
【図8】本発明の第3実施例である駆動用インターフェース回路の回路構成を示す回路図。
【図9】本発明の第4実施例である駆動用インターフェース回路の回路構成を示す回路図。
【符号の説明】
【0240】
1,3…絶縁電源、2…マイコン、4…インターフェース回路、5…ゲート回路、6…異常検出回路、10,50,60,90…電位選択回路、20,40,80…レベルシフト回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電位を基準とする信号を、第2電位を基準とする信号に伝達するものであって、
動作電源として複数の電位が印加されており、
前記複数電位のうちの1つの選択電位と前記第1電位との電位差及び、前記選択電位と前記第2電位との電位差で動作することを特徴とするインターフェース回路。
【請求項2】
信号伝達回路と、
該信号伝達回路の動作用電源電圧の電位を選択するための自動電位選択回路とを有し、
前記電位選択回路は、
異なる複数の電位が印加されるものであって、
前記複数電位のうちのいずれか1つを選択するように構成されており、
前記信号伝達回路は、
第1電位と第2電位と前記選択電位とが印加され、
前記選択電位と前記第1電位との電位差及び前記選択電位と前記第2電位との電位差で動作し、
前記第1電位を基準とする信号を、前記第2電位を基準とする信号に変換して伝達することを特徴とするインターフェース回路。
【請求項3】
請求項2に記載のインターフェース回路において、
第1電位と第2電位は配線導体で接続されていることを特徴とするインターフェース回路。
【請求項4】
請求項2に記載のインターフェース回路において、
前記電位選択回路及び前記信号伝達回路は、半導体集積回路で構成されていることを特徴とするインターフェース回路。
【請求項5】
請求項2に記載のインターフェース回路において、
前記信号伝達回路は、
第1電位を基準電位とする信号を受けて、第2電位を基準電位とする信号を出力するレベルシフト回路であって、
前記選択された電位と前記第1電位との電位差及び前記選択された電位と前記第2電位との電位差で動作するように構成されていることを特徴とするインターフェース回路。
【請求項6】
請求項2に記載のインターフェース回路において、
前記電位選択回路は、前記複数電位のうち、前記第1電位との電位差が大きい電位を選択するように構成されていることを特徴とするインターフェース回路。
【請求項7】
信号伝達回路と、
該信号伝達回路の動作用電源電圧の電位を選択するための電位選択回路とを有し、
前記電位選択回路は、
異なる複数の電位が印加されるものであって、
前記複数電位のうちのいずれか1つを、切替指令信号を受けて選択するように構成されており、
前記信号伝達回路は、
第1電位と第2電位と前記選択電位とが印加され、
前記選択電位と前記第1電位との電位差及び前記選択電位と前記第2電位との電位差で動作し、
前記第1電位を基準とする信号を、前記第2電位を基準とする信号に変換して伝達することを特徴とするインターフェース回路。
【請求項8】
信号の基準電位の異なる回路間の信号伝達回路を含む複数の端子を有する半導体集積回路装置であって、
前記複数の端子は少なくとも、
第1電源の低電位点を第1電位とする第1端子と、
前記第1電源の高電位点を第2電位とする第2端子と、
第2電源の低電位点を第3電位とする第3端子と、
前記第2電源の高電位点を第4電位とする第4端子と、
前記第1電位を基準電位とする信号が入力される第5端子と、
前記第3電位を基準電位とする信号が出力される第6端子とを含むことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項9】
電力供給源から供給された電力を所定の電力に変換して出力するものであって、
スイッチング用半導体素子を有する変換部と、
前記スイッチング用半導体素子の動作を制御するための制御信号を出力する制御部と、
前記制御信号を受けて、前記スイッチング半導体素子を動作させるための駆動信号を前記変換部に出力する駆動部とを有し、
前記駆動部は、
前記制御信号を受ける駆動用インターフェース回路と、
前記駆動信号を出力する駆動回路とを備えており、
前記駆動用インターフェース回路は、
異なる複数の電位が印加されるものであって、
前記複数の電位のうちのいずれか1つの電位を選択すると共に、
前記選択電位と前記制御信号の基準電位との電位差及び前記選択電位と前記制御信号の基準電位とは異なる電位との電位差で動作し、
前記制御信号を受け、前記制御信号とは異なる基準電位の信号を前記駆動回路に出力するように構成されており、
前記駆動回路は、前記駆動用インターフェース回路から出力された前記信号を受け、前記半導体スイッチング素子を動作させるための前記駆動信号を出力するように構成されており、
前記変換部は、前記駆動信号によって前記スイッチング半導体素子が動作することにより、電力供給源から供給された電力を所定の電力に変換することを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電力変換装置において、
前記変換部は、
ブリッジ回路と、
該ブリッジ回路に電気的に接続された直流側端子と、
前記ブリッジ回路に電気的に接続された交流側端子とを備えており、
前記ブリッジ回路は、前記スイッチング半導体素子によって構成された複数のアームが前記直流側端子の高電位側と低電位側との間に電気的に並列接続されることによって構成されており、
前記複数のアームのそれぞれは、前記直流側端子の高電位側と前記交流側端子との間に電気的に接続された前記スイッチング半導体素子と、前記直流側端子の低電位側と前記交流側端子との間に電気的に接続された前記スイッチング半導体素子とが電気的に直列接続されることによって構成されており、
前記制御部は、前記直流側端子の低電位側の電位を基準電位とする制御動作用電源を備えており、
前記駆動部は、
前記複数のアームの高電位側に配置された前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応して設けられた複数の上アーム動作用電源と、
前記複数のアームの低電位側に配置された前記スイッチング半導体素子に共通して設けられた下アーム動作用電源とを備えており、
前記複数の上アーム動作用電源のそれぞれは、対応する前記スイッチング半導体素子が電気的に接続された前記交流側端子の電位を基準電位としており、
前記下アーム用動作電源は前記直流側端子の低電位側の電位を基準電位としており、
前記駆動用インターフェース回路と前記駆動回路は、前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応して設けられており、
前記複数のアームの高電位側に配置された前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応する前記駆動用インターフェース回路は、
対応する前記スイッチング半導体素子に対応した前記上アーム動作用電源から印加された電圧と前記制御動作用電源から印加された電圧のいずれかを動作用電源電圧とするものであって、
対応する前記スイッチング半導体素子の前記制御信号を受け、受けた前記制御信号とは異なる基準電位の信号を、対応する前記駆動回路に出力しており、
前記複数のアームの低電位側に配置された前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応する前記駆動用インターフェース回路は、
前記下アーム動作用電源から印加された電圧と前記制御動作用電源から印加された電圧のいずれかを動作用電源電圧として選択するものであって、
対応する前記スイッチング半導体素子の前記制御信号を受け、受けた前記制御信号とは異なる基準電位の信号を、対応する前記駆動回路に出力していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電力変換装置において、
前記複数の駆動回路及び前記複数の駆動用インターフェース回路は集積されて、1つの集積回路半導体装置で構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項10に記載の電力変換装置において、
前記駆動部は、さらに、
前記変換部の異常を検知するための検知回路と、
前記検知回路から出力された検知信号を前記制御部に伝達するための異常検知用インターフェース回路とを備えており、
前記異常検知用インターフェース回路は、
異なる複数の電位が印加されるものであって、
前記複数の電位のうちのいずれか1つの電位を選択すると共に、
前記選択電位と前記検知回路の検知信号の基準電位との電位差及び前記選択電位と前記検知回路の検知信号の基準電位とは異なる電位との電位差で動作し、
前記検知信号を受け、前記検知信号とは異なる基準電位の信号を前記制御部に出力するように構成されており、
前記制御部は、前記異常検知用インターフェース回路から出力された前記検知信号を受けて、前記変換部の異常検知処理を実行することを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電力変換装置において、
前記異常検知用インターフェース回路と前記検知回路は、前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応して設けられており、
前記複数のアームの高電位側に配置された前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応する前記異常検知用インターフェース回路は、
対応する前記スイッチング半導体素子に対応した前記上アーム動作用電源から印加された電圧と前記制御動作用電源から印加された電圧のいずれかを動作用電源電圧とするものであって、
対応する前記検知回路から前記検知信号を受け、受けた前記検知信号とは異なる基準電位の信号を前記制御部に出力しており、
前記複数のアームの低電位側に配置された前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応する前記異常検知用インターフェース回路は、
前記下アーム動作用電源から印加された電圧と前記制御動作用電源から印加された電圧のいずれかを動作用電源電圧として選択するものであって、
対応する前記検知回路から前記検知信号を受け、受けた前記検知信号とは異なる基準電位の信号を前記制御部に出力していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項13に記載の電力変換装置において、
前記複数の駆動回路,前記複数の駆動用インターフェース回路及び前記複数の異常検知用インターフェース回路は集積されて、1つの集積回路半導体装置で構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
車載電源から供給された電力を電動力に変換するものであって、
電動力を発生する電動機と、
車載電源から供給された電力を制御して前記電動機に供給する電力変換装置とを有し、
前記電力変換装置は、
車載電源から供給された電力を所定の電力に変換して前記電動機に供給するものであって、
スイッチング用半導体素子を有する変換部と、
前記スイッチング用半導体素子の動作を制御するための制御信号を出力する制御部と、
前記制御信号を受けて、前記スイッチング半導体素子を動作させるための駆動信号を前記変換部に出力する駆動部とを有しており、
前記駆動部は、
前記制御信号を受ける駆動用インターフェース回路と、
前記駆動信号を出力する駆動回路とを備えており、
前記駆動用インターフェース回路は、
異なる複数の電位が印加されるものであって、
前記複数の電位のうちのいずれか1つの電位を選択すると共に、
前記選択電位と前記制御信号の基準電位との電位差及び前記選択電位と前記制御信号の基準電位とは異なる電位との電位差で動作し、
前記制御信号を受け、前記制御信号とは異なる基準電位の信号を前記駆動回路に出力するように構成されており、
前記駆動回路は、前記駆動用インターフェース回路から出力された前記信号を受け、前記半導体スイッチング素子を動作させるための前記駆動信号を出力するように構成されており、
前記変換部は、前記駆動信号によって前記スイッチング半導体素子が動作することにより、車載電源から供給された電力を所定の電力に変換しており、
前記電動機は、前記変換部から供給された電力によって駆動力を発生することを特徴とする車載用電機システム。
【請求項16】
請求項15に記載の車載用電機システムにおいて、
前記変換部は、
ブリッジ回路と、
該ブリッジ回路に電気的に接続された直流側端子と、
前記ブリッジ回路に電気的に接続された交流側端子とを備えており、
前記ブリッジ回路は、前記スイッチング半導体素子によって構成された複数のアームが前記直流側端子の高電位側と低電位側との間に電気的に並列接続されることによって構成されており、
前記複数のアームのそれぞれは、前記直流側端子の高電位側と前記交流側端子との間に電気的に接続された前記スイッチング半導体素子と、前記直流側端子の低電位側と前記出力端子との間に電気的に接続された前記スイッチング半導体素子とが電気的に直列接続されることによって構成されており、
前記制御部は、前記直流側端子の低電位側の電位を基準電位とする制御動作用電源を備えており、
前記駆動部は、
前記複数のアームの高電位側に配置された前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応して設けられた複数の上アーム動作用電源と、
前記複数のアームの低電位側に配置された前記スイッチング半導体素子に共通して設けられた下アーム動作用電源とを備えており、
前記複数の上アーム動作用電源のそれぞれは、対応する前記スイッチング半導体素子が電気的に接続された前記交流側端子の電位を基準電位としており、
前記下アーム用動作電源は前記直流側端子の低電位側の電位を基準電位としており、
前記駆動用インターフェース回路と前記駆動回路は、前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応して設けられており、
前記複数のアームの高電位側に配置された前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応する前記駆動用インターフェース回路は、
対応する前記スイッチング半導体素子に対応した前記上アーム動作用電源から印加された電圧と前記制御動作用電源から印加された電圧のいずれかを動作用電源電圧とするものであって、
対応する前記スイッチング半導体素子の前記制御信号を受け、受けた前記制御信号とは異なる基準電位の信号を、対応する前記駆動回路に出力しており、
前記複数のアームの低電位側に配置された前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応する前記駆動用インターフェース回路は、
前記下アーム動作用電源から印加された電圧と前記制御動作用電源から印加された電圧のいずれかを動作用電源電圧として選択するものであって、
対応する前記スイッチング半導体素子の前記制御信号を受け、受けた前記制御信号とは異なる基準電位の信号を、対応する前記駆動回路に出力していることを特徴とする車載用電機システム。
【請求項17】
請求項16に記載の車載用電機システムにおいて、
前記複数の駆動回路及び前記複数の駆動用インターフェース回路は集積されて、1つの集積回路半導体装置で構成されていることを特徴とする車載用電機システム。
【請求項18】
請求項15に記載の車載用電機システムにおいて、
請求項9に記載の電力変換装置において、
前記駆動部は、さらに、
前記変換部の異常を検知するための検知回路と、
該検知回路から出力された検知信号を前記制御部に伝達するための異常検知用インターフェース回路とを備えており、
前記異常検知用インターフェース回路は、
異なる複数の電位が印加されるものであって、
前記複数の電位のうちのいずれか1つの電位を選択すると共に、
前記選択電位と前記検知回路の検知信号の基準電位との電位差及び前記選択電位と前記検知回路の検知信号の基準電位とは異なる電位との電位差で動作し、
前記検知回路から検知信号を受け、前記検知信号とは異なる基準電位の信号を前記制御部に出力するように構成されており、
前記制御部は、前記異常検知用インターフェース回路から出力された前記検知信号を受けて、前記変換部の異常検知処理を実行することを特徴とする車載電機システム。
【請求項19】
請求項18に記載の車載電機システムにおいて、
前記異常検知用インターフェース回路と前記検知回路は、前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応して設けられており、
前記複数のアームの高電位側に配置された前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応する前記異常検知用インターフェース回路は、
対応する前記スイッチング半導体素子に対応した前記上アーム動作用電源から印加された電圧と前記制御動作用電源から印加された電圧のいずれかを動作用電源電圧とするものであって、
対応する前記検知回路から前記検知信号を受け、受けた前記検知信号とは異なる基準電位の信号を前記制御部に出力しており、
前記複数のアームの低電位側に配置された前記スイッチング半導体素子のそれぞれに対応する前記異常検知用インターフェース回路は、
前記下アーム動作用電源から印加された電圧と前記制御動作用電源から印加された電圧のいずれかを動作用電源電圧として選択するものであって、
対応する前記検知回路から前記検知信号を受け、受けた前記検知信号とは異なる基準電位の信号を前記制御部に出力していることを特徴とする車載電機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−222786(P2006−222786A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34848(P2005−34848)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】