説明

デバイス製造方法

【課題】 ノズルから吐出された液滴に変質等が生じないように吐出空間の雰囲気を置換することが可能なデバイス製造方法を提供する。
【解決手段】 デバイスの製造方法は、基板をチャンバ内に搬入して載置台に載置する工程と、待機位置において封止部材により液滴吐出ノズルを隔離した状態で、チャンバの内部を減圧する減圧工程と、ガス供給機構からチャンバ内にパージガスを導入してチャンバ内部の雰囲気を置換するとともに大気圧状態に戻す雰囲気置換工程と、封止部材による液滴吐出ノズルの隔離を解除し、液滴吐出ノズルを吐出位置に移動させて被処理体へ向けて前記液滴を吐出する吐出工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハやFPD基板などにトランジスタや配線などを含む各種の半導体デバイスを製造する過程では、レジスト塗布、露光、現像の各工程を含むフォトリソグラフィー技術によるパターニングや、エッチング、アッシング、洗浄などの基本工程が繰り返される。現在、半導体デバイスの製造には、高い加工精度を得るために、高真空技術やプラズマ技術が利用されている。
【0003】
半導体デバイスの製造に使用される半導体製造装置は、基板の大型化や技術ノードの進展に伴う材料の変化などに対応しなければならないため、大型化する傾向にあり、装置構成やプロセスの改良などが繰り返されている。さらに、低コスト化と省エネルギー化による環境負荷の低減が求められる中、デバイス製造に必要な消費電力を抑制できることも半導体製造装置を選定する際に重要な要素になっている。
【0004】
このような状況の中で、新たな半導体製造装置の提案として、半導体デバイス材料を微細な液滴の形で基板などの被処理体表面に吐出することによって半導体デバイスを製造する技術(以下、「液滴吐出法」と記す)が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−266669号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献2】特開2003−311197号公報(特許請求の範囲など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、特許文献2に記載の液滴吐出法による半導体デバイスの製造では、フォトリソグラフィーやエッチングなどの工程を削減できるため、半導体デバイスの製造コストを大幅に低減できるというメリットがある。一方、液滴吐出法では、使用する全ての半導体デバイス材料を溶液、分散液などの形態に液体化して用いる必要がある。しかし、液滴吐出ノズルから吐出される液滴は非常に微小であるため、液滴飛翔空間における雰囲気中の水分や酸素、さらには基板表面からの揮発成分などの存在により、液滴中の溶質濃度に変化が生じたり、成分が酸化されたりするなどの変質が生じ、半導体デバイスの特性に影響を及ぼすおそれがあるという問題があった。
【0007】
液滴吐出法では、微細なノズル孔に連通して設けられた圧力室の内容積を、例えば圧電セラミックスなどの伸縮を利用して急激に変化させることにより、半導体デバイス材料をノズル孔から液滴として吐出する。このため、メニスカスとよばれるノズル孔内部における液体材料の気液界面状態が吐出性能に大きな影響を与えることが知られている。メニスカスは、周囲の圧力により大きな変動を受け、ノズル孔の外部が圧力室よりも減圧雰囲気であれば液体材料がノズル孔を介して流出してしまい、逆に外部が高い圧力雰囲気であれば液体材料はノズル孔内の奥深くまで後退してしまい、いずれも正常な吐出が不可能になる。従って、ノズルから吐出された液滴が被処理体表面に到達するまでの吐出空間は大気圧条件であることが必要であり、それ故、例えば吐出空間を減圧状態にしてその雰囲気を置換し、飛翔する液滴への影響を最小限に抑えるというような手段を講ずることができなかった。
【0008】
従って本発明は、ノズルから吐出された液滴に変質等が生じないように吐出空間の雰囲気を効率良く置換することが可能なデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、被処理体を載置する載置台を備えた第1の容器と、前記第1の容器内にパージガスを供給するガス供給機構と、前記第1の容器内を減圧排気する排気機構と、前記載置台に対向配備された液滴吐出ノズルから被処理体に向けて半導体デバイス材料の液滴を吐出する液滴吐出機構と、被処理体に対して液滴を吐出する吐出位置と液滴を吐出しない待機位置との間で、前記液滴吐出ノズルを移動させる移動機構と、前記待機位置において前記液滴吐出ノズルを隔離して大気圧状態に保持する第2の容器と、を備え、被処理体表面に半導体デバイスを製造するデバイス製造装置を用い、
被処理体を前記第1の容器内に搬入して前記載置台に載置する工程と、
前記待機位置において前記第2の容器により前記液滴吐出ノズルを隔離した状態で、前記第1の容器の内部を減圧する減圧工程と、
前記ガス供給機構から前記第1の容器内にパージガスを導入して該第1の容器内部の雰囲気を置換するとともに大気圧状態に戻す雰囲気置換工程と、
前記第2の容器による前記液滴吐出ノズルの隔離を解除し、該液滴吐出ノズルを前記吐出位置に移動させて被処理体へ向けて前記液滴を吐出する吐出工程と、
を含むことを特徴とする、デバイス製造方法を提供する。
【0010】
本発明において、前記雰囲気置換工程の前に、前記載置台および前記第1の容器を加熱する第1の加熱工程を有することが好ましい。
また、前記吐出工程の後で、形成されたデバイスを焼成する第2の加熱工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、待機位置において液滴吐出ノズルを隔離して大気圧状態に保持するので、液滴吐出ノズルと被処理体との間の吐出空間の雰囲気置換を効率良く、かつ容易に行なうことができる。従って、液滴吐出ノズルから液滴として吐出された半導体デバイス材料が変質することを防止できる。
また、液滴吐出ノズルを用いて半導体デバイスを製造することにより、フォトリソグラフィー工程を削減することが可能となり、装置構成の簡素化、省エネルギー化、低コスト化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態のデバイス製造装置の内部の概略構成を示す斜視図。
【図2】第1実施形態のデバイス製造装置の概略断面図。
【図3】精密吐出ノズルの封止構造の例を示す要部断面図。
【図4】精密吐出ノズルの封止構造の別の例を示す要部断面図。
【図5】デバイス形成手順の一例を示すフロー図。
【図6】キャパシタ製造の手順の一例を示す工程図。
【図7】第2実施形態のデバイス製造装置の概略構成を示す部分切り欠き斜視図。
【図8】第2実施形態のデバイス製造装置の概略断面図。
【図9】隔壁プレートの説明に供する要部断面図。
【図10】デバイス形成手順の別の例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態にかかるデバイス製造装置の内部の構造を示す概略斜視図であり、図2は、デバイス製造装置の概略構成を示す断面図である。このデバイス製造装置100は、例えばFPD(フラットパネルディスプレイ)用ガラス基板やプラスチック基板などの基板Sを収容する第1の耐圧容器としてのチャンバ1を備えている。このチャンバ1は、気密に構成され、排気装置41により減圧可能であり、また、図示しない基板搬入出口から基板Sを搬入または搬出できるように構成されている。デバイス製造装置100のチャンバ1内には、搬入された基板Sを水平に載置して保持するためのステージ3と、このステージ3に載置された基板Sの上面(正確にはデバイス形成面)に対してデバイス材料を微小な液滴として吐出する精密吐出ノズル5を有するキャリッジ7と、このキャリッジ7をY方向に水平移動させる走査機構9とを有している。
【0014】
走査機構9においては、Y方向に延びる一対の平行なガイドレール11,11がステージ3の左右両側に配置されている。また、ステージ3上方を横断するようにX方向に延び、図示しない電気モータ等の駆動によりキャリッジ7をX方向に水平移動可能に支持する支持部材13が設けられている。この支持部材13は、ガイドレール11,11上を移動可能に立設された一対の脚部15,15と、ステージ3の基板S載置面と平行になるように該脚部15,15に掛け渡されたガイド板17を備えている。支持部材13は、たとえば電気モータを有する図示しない駆動機構により全体としてガイドレール11,11上をY方向に移動可能となっている。
【0015】
ガイド板17の下面には、図示しないガイド軸を介してキャリッジ7がX方向に移動可能に装着されている。キャリッジ7の下面(ステージ3および基板Sと対向する面)には前記精密吐出ノズル5が形成されている。そして、図示しない駆動機構による支持部材13のY方向の移動と、支持部材13におけるキャリッジ7のX方向の移動との組合せにより、ステージ3上方において精密吐出ノズル5をXY面上に任意の軌道で移動させることができる。
【0016】
精密吐出ノズル5は、例えばインクジェットプリンタ技術の分野において周知なインクジェットノズルと同様の液滴吐出機構により液滴吐出を行なうようになっている。精密吐出ノズル5における液滴吐出機構は、例えば多数の微細なノズル孔5aと、該ノズル孔5aに連通し、ピエゾ素子の収縮・伸長によって内部容積を増減可能に構成された圧力発生室(図示は省略)と、を有する液滴噴射ヘッドを備えている。そして、コントローラ50(後述)からの電気的な駆動信号でピエゾ素子を駆動させて圧力発生室の容積を変化させ、その際に生じる内部圧力の上昇によって各ノズル孔5aから液体デバイス材料を数ピコリットル〜数マイクロリットル程度の微小な液滴として基板Sへ向けて噴射できるように構成されている。また、精密吐出ノズル5の各ノズル孔5aは、キャリッジ7に搭載された液体材料タンク19a,19b,19cに接続されており、そこから各種液体デバイス材料が供給される構成になっている。本実施形態では、液体材料タンク19aには例えばポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリ(3−メチルチオフェン)などの導電性ポリマーに代表される導電体材料、液体材料タンク19bには例えばポリビニルフェノールなどの絶縁体材料、液体材料タンク19cには例えばα,α’−ジデシルペンタチオフェン、α,α’−ジデシルヘプタチオフェン、α,α’−ジデシルヘキサチオフェン、α,α’−ジヘキシルヘキサチオフェン、α,α’−ジエチルヘキサチオフェン、ヘキサチオフェンなどの半導体材料がそれぞれ収納されている。なお、上記以外にも、例えばドデシルベンゼンスルホン酸、エチレングリコール等の界面活性剤を収容する液体材料タンクを配備して、界面活性剤を吐出することも可能である。
なお、精密吐出ノズル5の構成は、デバイス材料を微小な液滴として吐出できるものであれば上記構成に限るものではない。
【0017】
支持部材13がステージ3(および基板S)に対向しない領域である待機位置には、封止部材21が配備されている。なお、精密吐出ノズル5を待機させる待機位置は、チャンバ1内のどの位置でもよく、チャンバ1の外に配置されていてもよい。この封止部材21は、上面が開口した筐体であり、例えば金属等の材質の耐圧容器として構成され、図示しない昇降機構によって鉛直方向に昇降自在に設けられ、その開口した縁部21aは、例えばゴムなどのエラストマーにより構成されている。
【0018】
図3および図4は、封止部材21による隔離構造を示す拡大図である。まず、図3(a)は、支持部材13のガイド板17の下面(当接面17a)に封止部材21の開口の縁部21aを押し当てた状態を示している。このように支持部材13のガイド板17の下面は、チャンバ1内が減圧にされた状態で精密吐出ノズル5を隔離するため、第2の耐圧容器としての封止部材21を気密に当接させて封止する当接面17aとして機能する。この場合、キャリッジ7は全体として封止部材21の内部に収容され、外部雰囲気から隔離される。また、封止部材21の縁部21aは、ガイド板17の当接面17aに押し当てられた際に押圧力によって弾性変形し、気密性を確保できるようになっている。
【0019】
図3(b)は、封止部材21による隔離構造の別の例に関するものであり、キャリッジ7のノズル形成面7aに封止部材21を当接した状態を示している。つまり、この場合には、キャリッジ7のノズル形成面7aが当接面として機能する。ノズル形成面7aには多数のノズル孔5aが形成されているが、その周囲を囲むように封止部材21の開口の縁部21aを押し当てる。ノズル形成面7aに押し当てられた際に、縁部21aは押圧力によって弾性変形するため、気密性を確保できるようになっている。これにより、ノズル孔5aを隔離して外部圧力の変化の影響を遮断できる。
【0020】
また、封止部材のさらに別の例としては、例えば図4(a),図4(b)に示すものを挙げることができる。図4(a)に示す例では、封止部材21がフランジ21bを備えており、このフランジ21bをガイド板17の当接面17aに対してOリングなどのシール部材22を介して押圧させることにより気密性を確保し、精密吐出ノズル5を隔離できる。また、図4(b)に示す例では、封止部材21の縁部がキャリッジ7のノズル形成面7aに嵌合できるように構成されており、この嵌合部25にOリングなどのシール部材24を配備することにより、精密吐出ノズル5を隔離することができる。なお、封止部材21による精密吐出ノズル5の隔離構造は、図3、図4に例示したものに限らず、気密性を確保できる構造であればどのような構造でもよい。
【0021】
図2に示すように、チャンバ1の天板1aの中央部には、チャンバ1内にガスを導入するガス導入部26が設けられており、このガス導入部26はガス供給管29を介して例えばAr、N等のパージガスを供給するパージガス供給源31に接続されている。ガス供給管29の途中には、マスフローコントローラー(MFC)33およびその前後のバルブ35,37が設けられており、パージガスを所定の流量でガス導入部26を介してチャンバ1内に導入できるようになっている。
なお、ガス導入部26は、チャンバ1の上部に限らず、例えばチャンバ1の側壁1cや、底板1bに設けることもできる。
【0022】
また、チャンバ1の底板1bには、複数の排気口39が設けられており、この排気口39は図示しない真空ポンプを備えた排気装置41に接続されている。そして、排気装置41を作動させることにより、排気口39を介してチャンバ1内を所定の減圧状態にまで減圧できるように構成されている。なお、パージガスによるチャンバ1内の雰囲気置換を効率的に行なうためには、ガス導入部26と排気口39を並列的に配設するよりも、図2に示すように互いに対向して配設することが好ましい。
【0023】
チャンバ1の天板1aには、例えばタングステンランプなどからなる複数の加熱ランプ43が設けられており、チャンバ1内を昇温できるようになっている。また、ステージ3には、抵抗加熱ヒータ45が埋設されており、ヒータ電源47から電力を供給することによりステージ3を加熱し、そこに載置された基板Sを加熱できるようになっている。なお、加熱ランプ43や抵抗加熱ヒータ45などの加熱手段(加熱機構)は、チャンバ1の上部(天板1a)または下部(ステージ3または底板1b)のどちらか一方に配備されていればよいが、図2に例示のように上下部の両方に配備することにより加熱時間を短縮してデバイス形成のスループットを向上させることができる。
【0024】
デバイス製造装置100の各構成部は、CPUを備えたコントローラ50に接続されて制御される構成となっている。コントローラ50には、工程管理者がデバイス製造装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、デバイス製造装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース51が接続されている。
【0025】
また、コントローラ50には、デバイス製造装置100で実行される各種処理をコントローラ50の制御にて実現するための制御プログラムや処理条件データ等が記録されたレシピが格納された記憶部52が接続されている。
【0026】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース51からの指示等によって任意のレシピを記憶部52から呼び出してコントローラ50に実行させることで、コントローラ50の制御下で、デバイス製造装置100で所望の処理が行われる。また、前記レシピは、例えば、CD−ROM、DVD、ハードディスク、フレキシブルディスク、フラッシュメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納された状態のものを利用したり、あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させて利用したりすることも可能である。
【0027】
デバイス製造装置100では、上記のような構成により、基板S上の予め設定された領域に対して液体デバイス材料を吐出し、例えばトランジスタなどの半導体デバイスを形成することができる。
【0028】
以上のように構成されるデバイス製造装置100においては、例えば図5に示す手順でデバイスの製造が行なわれる。
まず、ステップS1では、図示しない基板搬入出口より基板Sをチャンバ1内に搬入し、ステージ3上に載置する。
次に、支持部材13をガイドレール11,11に沿ってスライド移動させることにより、キャリッジ7を待機位置、すなわち精密吐出ノズル5が基板Sと対向する位置より外れ、封止部材21に対向する位置まで移動させる。この状態で、ステップS2では、封止部材21を上昇させて支持部材13の当接面17aに封止部材21の縁部21aを当接させ、精密吐出ノズル5を隔離する。
【0029】
ステップS3では、精密吐出ノズル5を隔離した状態で、排気装置41を作動させ、チャンバ1内を所定の圧力まで減圧排気する。これにより、チャンバ1内雰囲気中の水分や酸素、さらに基板S上に形成された膜などから揮発した溶剤や化学物質などの揮発成分が除去される。このような減圧状態でも、精密吐出ノズル5は封止部材21によって隔離されていることから、精密吐出ノズル5のノズル孔5aは大気圧状態に保たれ、メニスカスを良好な状態に維持できる。
【0030】
次にステップS4では、チャンバ1の天井部に配設された加熱ランプ43および/またはステージ3に埋設配備された抵抗加熱ヒータ45に電力を供給し、チャンバ1内雰囲気と基板Sを所定温度に加熱する。なお、この加熱工程は任意である。
【0031】
次に、ステップS5では、精密吐出ノズル5を隔離した状態でガス導入部26を介してパージガス供給源31からパージガスをチャンバ1内に導入し、チャンバ1内雰囲気をパージガスで置換するとともに、チャンバ1内の圧力を大気圧に戻す。
【0032】
パージガスの導入によりチャンバ1内が大気圧状態に回復した後、ステップS6では、封止部材21を下降させて精密吐出ノズル5の隔離を解除し、支持部材13を移動させることにより、待機位置にあったキャリッジ7の精密吐出ノズル5をステージ3に載置された基板Sに対向する吐出位置まで移動させる。そして、ステップS7では、キャリッジ7をX方向に往復移動させながら、基板S表面へ向けて液体デバイス材料の液滴を吐出する。精密吐出ノズル5からは、導電体、絶縁体および半導体の各液体材料が、数ピコリットル〜数マイクロリットルの微小な液滴として吐出されるため、基板S上に微細なデバイス構造を形成できる。また、微小な液滴が基板Sへ向けて飛翔する吐出空間は、減圧排気後とパージガスによる雰囲気置換がなされていることから、液体材料成分が変質することがなく、良質なデバイスが製造される。
【0033】
デバイス製造装置100を使用してデバイスを作製する場合、上記ステップS2〜ステップS7の各工程は1回でもよいが、作製するデバイスの種類に応じ、図5に示すようにステップS7の終了後ステップS2の処理に戻り、ステップS2〜ステップS7までの工程を繰り返し実施してもよい。
【0034】
吐出終了後は、必要に応じてチャンバ1の天井部に配設された加熱ランプ43および/またはステージ3に埋設配備された抵抗加熱ヒータ45に電力を供給し、例えば50〜100℃程度に加熱して基板S上に形成されたデバイスの加熱、焼成を行なう(ステップS8)。これにより、液体材料中に含まれる溶剤・溶媒などの成分を揮発させて除去することができる。なお、このステップS8の加熱/焼成工程は、任意工程である。
【0035】
次に、ステップS9では、ステージ3上に載置された基板Sを図示しない基板搬入出口を介してチャンバ1外へ搬出する。以上のステップS1〜ステップS9までの一連の工程により、1枚の基板Sに対するデバイスの作製が終了する。
【0036】
図6(a)〜(e)は、デバイス製造装置100を使用してデバイスの一例であるDRAM(Dynamic Random Access Memory)等に利用可能なメモリセルを製造する場合の概略工程を示している。まず、図6(a)に示すように、キャリッジ7に搭載された液体材料タンク19aから例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)製の基板S表面に向けて導電体材料を精密吐出ノズル5を介して吐出し、ゲート電極201を形成する。
【0037】
次に、図6(b)に示すように、液体材料タンク19bから絶縁材料を吐出し、ゲート電極201を覆うように積層膜202(ゲート絶縁膜と半導体膜が積層された構造のもの;絶縁膜のみ図示)を形成する。さらに、このように形成されたゲート構造に隣接する領域に、液体材料タンク19aから導電体材料を精密吐出ノズル5を介して吐出し、図6(c)に示すように、ソース・ドレイン用電極203a,203bを形成する。次に、図6(d)に示すように、液体材料タンク19bから絶縁材料を吐出し、ソース・ドレイン用電極203a,203bを覆うように容量膜204と絶縁膜205を形成する。そして、最後に液体材料タンク19aから導電体材料を精密吐出ノズル5を介して吐出し、図6(e)に示すように、容量膜204を覆うように容量電極206を形成する。
【0038】
図6(f)は、図6(d)の段階(容量膜204が形成された状態)の平面図である。このように精密吐出ノズル5から吐出されたデバイス材料の液滴は、基板Sの表面において円形に拡がるので、異なる液体デバイス材料を順次吐出、重ね打ちして積層していくことにより、フォトリソグラフィー工程やエッチング工程およびそのための設備を必要とせずに、基板Sの表面に所望の構造で半導体デバイスを形成できる。
【0039】
<第2実施形態>
図7および図8は、本発明の第2実施形態に係るデバイス製造装置200の概略構成を示す図面である。本実施形態に係るデバイス製造装置200は、チャンバを必要としない構成であるため、基板Sが大型でチャンバ内に収容しきれない場合に有利に使用できる。
このデバイス製造装置200は、例えばFPD用ガラス基板やプラスチック基板などの基板Sを水平に載置して保持するためのステージ103と、このステージ103に載置された基板Sの上面(正確にはデバイス形成面)に対してデバイス材料を微小な液滴として吐出する精密吐出ノズル105を有するキャリッジ107と、このキャリッジ107をY方向に水平移動させる走査機構109とを有している。
【0040】
走査機構109においては、Y方向に延びる一対の平行なガイドレール111,111がステージ103の左右両側に配置されている。また、ステージ103の上方を横断するようにX方向に延び、図示しない電気モータ等の駆動によりキャリッジ107をX方向に水平移動可能に支持する支持部材113が設けられている。支持部材113は、ガイドレール111,111上を移動可能に立設された一対の脚部115,115と、ステージ103の基板S載置面と平行になるように該脚部115,115に掛け渡されたガイド板117を備えている。この支持部材113は、たとえば電気モータを有する図示しない駆動機構により全体としてガイドレール111,111上をY方向に移動可能となっている。
【0041】
また、ガイド板117には図示しない昇降機構が設けられており、昇降軸118を介して脚部115,115に対して鉛直方向に昇降変位可能に装着されている。
【0042】
ガイド板117の下面には、図示しないガイド軸を介してキャリッジ107がX方向に移動可能に装着されている。キャリッジ107の下面(ステージ103および基板Sと対向する面)には前記精密吐出ノズル105が形成されている。そして、図示しない駆動機構による支持部材113のY方向の移動と、支持部材113におけるキャリッジ107のX方向の移動との組合せにより、ステージ103上方において精密吐出ノズル105をXY面上に任意の軌道で移動させることができる。
【0043】
精密吐出ノズル105は、第1実施形態の精密吐出ノズル5と同様の構成であるため、説明を省略する。また、精密吐出ノズル105は、キャリッジ107に搭載された液体材料タンク119a,119b,119cに接続されており、そこから各種液体材料が供給される構成になっている。液体材料タンク119aには導電体材料、液体材料タンク119bには絶縁体材料、液体材料タンク119cには半導体材料がそれぞれ収納されている。
【0044】
また、支持部材113のガイド板117の下面には、キャリッジ107の周囲を囲むように被処理体表面に当接・離間可能に設けられた耐圧容器としての枠体116が設けられている。なお、図7では枠体116を部分的に切り欠いて現している。この枠体116の上端はガイド板117の下面に略垂直に接続され、下方が開口した形状になっており、開口の縁部116aは例えばシール部材としてゴムなどのエラストマーにより構成されている。枠体116は、ガイド板117を上下に昇降させることにより、縁部116aにおいて基板Sの表面に当接した状態と、離間した状態の二つの状態をとることができる。
【0045】
枠体116に囲まれるように、その内側に配置されたキャリッジ107の下部には、水平方向にスライド可能な隔壁プレート108が設けられている。この隔壁プレート108は、図9に示すように、図示しない電気モータなどの駆動機構により、ノズル形成面107aに対して平行にスライド移動する。この隔壁プレート108により、ノズル孔105aが外部雰囲気から遮断された閉状態と、外部雰囲気に開放された開状態とを形成できる。従って、枠体116内を減圧状態にした際には、ノズル孔105aが吐出空間に露出しないよう封止できる。
【0046】
枠体116の側部には、内部へガスを導入するガス導入部126が設けられており、このガス導入部126はガス供給管129を介して例えばAr、N等のパージガスを供給するパージガス供給源131に接続されている。ガス供給管129の途中には、マスフローコントローラー133およびその前後のバルブ135,137が設けられており、パージガスを所定の流量でガス導入部126を介して枠体116内に導入できるようになっている。
【0047】
また、前記ガス導入部126と対向する側の枠体116の側部には、排気口139が設けられており、この排気口139は図示しない真空ポンプを備えた排気装置141に接続されている。そして、枠体116を基板Sに当接させた状態で、排気装置141を作動させることにより、排気口139を介して枠体116内を所定の減圧状態にまで減圧できるように構成されている。
【0048】
ステージ103には、抵抗加熱ヒータ145が埋設されており、ヒータ電源147から電力を供給することによりステージ103を加熱し、そこに載置された基板Sを加熱できるようになっている。
【0049】
デバイス製造装置200では、上記のような構成により、基板S上の予め設定された領域に対して液体デバイス材料を吐出し、例えばトランジスタなどの半導体デバイスを形成することができる。
なお、デバイス製造装置200における他の構成は、第1実施形態のデバイス製造装置100と同様であるため、同一の構成に同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
以上のように構成されるデバイス製造装置200においては、例えば図10に示す手順でデバイスの製造が行なわれる。
まず、ステップS11では、基板Sをステージ103に載置し、枠体116が基板Sの上方に位置するまで支持部材113をガイドレール111,111に沿ってスライド移動させる。この状態では、隔壁プレート108が閉状態であり、精密吐出ノズル105のノズル孔105aを外部雰囲気から遮断している。
【0051】
次に、ステップS12では、枠体116を下降させ、基板Sの上面(デバイス形成面)に枠体116の縁部116aを当接させる。そして、ステップS13では、排気装置141を作動させ、枠体116内を減圧排気する。これにより、枠体116内の吐出空間中の水分や酸素、さらに基板S上に形成された膜などから揮発した溶剤や化学物質などの揮発成分が除去される。このような減圧状態でも、精密吐出ノズル105は隔壁プレート108により隔離されていることから、精密吐出ノズル105のノズル孔105aは大気圧状態に保たれ、メニスカスを良好な状態に維持できる。
【0052】
次にステップS14では、ステージ103に埋設配備された抵抗加熱ヒータ145に電力を供給し、基板Sを所定温度に加熱する。なお、この加熱工程は任意である。
【0053】
次に、ステップS15では、精密吐出ノズル115を隔離した状態でガス導入部126を介してパージガス供給源131からパージガスを枠体116内に導入し、枠体116内の雰囲気をパージガスで置換するとともに、枠体116内の圧力を大気圧に戻す。
【0054】
パージガスの導入により枠体116内が大気圧状態に回復した後、ステップS16では、隔壁プレート108を開状態までスライドさせて精密吐出ノズル5の隔離を解除する。そして、ステップS17では、キャリッジ7をX方向に往復移動させながら、基板S表面へむけて半導体デバイス材料の液滴を吐出する。精密吐出ノズル105からは、導電体、絶縁体および半導体の各液体材料が、数ピコリットル〜数マイクロリットルの微小な液滴として吐出されるため、基板S上に微細なデバイス構造を形成できる。また、微小な液滴が基板Sへ向けて飛翔する吐出空間は、減圧排気後に、パージガスによる雰囲気置換がなされていることから、液体材料成分が変質することはなく、デバイスへの悪影響を回避できる。
【0055】
デバイス製造装置200を使用してデバイスを作製する場合、上記ステップS12〜ステップS17の各工程は1回でもよいが、作製するデバイスの種類に応じて、図10に示すようにステップS12〜ステップS17までの各工程を繰り返し実施してもよい。
【0056】
吐出終了後は、必要に応じてステージ103に埋設配備された抵抗加熱ヒータ145に電力を供給し、例えば50〜100℃程度に加熱して基板S上に形成されたデバイスの加熱、焼成を行なう(ステップS18)。これにより、液体材料中に含まれる溶剤・溶媒などの成分を揮発させて除去することができる。このステップS18の加熱/焼成工程は、任意工程である。
【0057】
次に、ステップS19では、ステージ103上に載置された基板Sを図示しない搬送機構により移動させる。以上のステップS11〜ステップS19までの一連の工程により、1枚の基板Sに対するデバイスの作製が終了し、フォトリソグラフィー工程やエッチング工程およびそのための設備を必要とせずに、基板Sの表面にトランジスタやキャパシタなどの半導体デバイスを製造できる。
【0058】
以上、いくつかの実施形態を挙げ、本発明を詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記説明においては、基板SとしてFPD用ガラス基板などの矩形の大型基板を用いる場合を例に取り挙げたが、シリコンウエハなどの半導体基板を被処理体とする場合にも本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えばトランジスタ、キャパシタ、TFT素子などの各種半導体デバイスの製造において好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 チャンバ
3 ステージ
5 精密吐出ノズル
7 キャリッジ
11 ガイドレール
13 支持部材
15 脚部
17 ガイド板
19 液体材料タンク
31 パージガス供給源
50 コントローラ
51 ユーザーインターフェース
52 記憶部
100,200 デバイス製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を載置する載置台を備えた第1の容器と、前記第1の容器内にパージガスを供給するガス供給機構と、前記第1の容器内を減圧排気する排気機構と、前記載置台に対向配備された液滴吐出ノズルから被処理体に向けて半導体デバイス材料の液滴を吐出する液滴吐出機構と、被処理体に対して液滴を吐出する吐出位置と液滴を吐出しない待機位置との間で、前記液滴吐出ノズルを移動させる移動機構と、前記待機位置において前記液滴吐出ノズルを隔離して大気圧状態に保持する第2の容器と、を備え、被処理体表面に半導体デバイスを製造するデバイス製造装置を用い、
被処理体を前記第1の容器内に搬入して前記載置台に載置する工程と、
前記待機位置において前記第2の容器により前記液滴吐出ノズルを隔離した状態で、前記第1の容器の内部を減圧する減圧工程と、
前記ガス供給機構から前記第1の容器内にパージガスを導入して該第1の容器内部の雰囲気を置換するとともに大気圧状態に戻す雰囲気置換工程と、
前記第2の容器による前記液滴吐出ノズルの隔離を解除し、該液滴吐出ノズルを前記吐出位置に移動させて被処理体へ向けて前記液滴を吐出する吐出工程と、
を含むことを特徴とする、デバイス製造方法。
【請求項2】
前記雰囲気置換工程の前に、前記載置台および前記第1の容器を加熱する第1の加熱工程を有することを特徴とする、請求項1に記載のデバイス製造方法。
【請求項3】
前記吐出工程の後で、形成されたデバイスを焼成する第2の加熱工程を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のデバイス製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−48238(P2013−48238A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−180556(P2012−180556)
【出願日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【分割の表示】特願2006−322995(P2006−322995)の分割
【原出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】