説明

ハイブリッド車両の排気浄化装置

【課題】 本発明はハイブリッド車両の排気浄化装置に関し、排気浄化触媒への還元剤の供給を必要なときに行うことができ、しかも、専用の装置を新たに設けることなく行えるようにする。
【解決手段】 排気通路に設けられた排気浄化触媒への還元剤の供給時期を判定する。その判定結果から還元剤を供給すべき時期であると判断されるときには、内燃機関の燃焼が停止している状態において、モータによって内燃機関を強制的に回転させる。また、これと同時に、内燃機関の吸気通路或いは燃焼室内に還元剤を供給する。供給された還元剤は、モータにより内燃機関を強制回転させた時のポンプ作用によって排気通路に送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関とモータとを有し、少なくともモータにより車両を駆動可能なハイブリッド車両の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
理論空燃比よりもリーンな空燃比で運転することが可能な内燃機関、所謂リーンバーンエンジンが知られている。リーンバーンエンジンから排出される排気ガスには、HCやCOに比較してNOxの濃度が高いという特徴があり、三元触媒のみでは排気ガス中のNOxを十分に浄化することができない。このため、リーンバーンエンジンの排気通路には、三元触媒とともに或いは三元触媒の代わりに、NOxを吸蔵することができるNOx触媒が設けられている。
【0003】
ところが、NOx触媒の有するNOxの吸蔵能力には限界がある。このため、NOx触媒の吸蔵能力が限界に近づいた場合には、吸蔵しているNOxを放出させて吸蔵能力を回復させてやる必要がある。NOx触媒からNOxを放出させるには、排気ガス中に還元剤を添加することによってNOx触媒を還元雰囲気にすればよい。NOx触媒に吸蔵されているNOxは還元剤によって還元され、無害な窒素になって大気中へ放出される。還元剤としては、エンジンの燃料(例えばガソリン)の他、水素が用いられている。水素は低温での還元能力が高く、還元剤として優れている。特許文献1には、水素タンクを排気通路におけるNOx触媒の上流に接続し、排気通路に直接水素を供給するようにしたシステムが開示されている。
【特許文献1】特表2003−507631号公報
【特許文献2】特開平6−137135号公報
【特許文献3】特開2002−303129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、バルブやパイプ等、排気通路に水素を供給するための専用の部品を新たに設ける必要がある。また、排気通路内の圧力は高いため、水素供給源の圧力によっては、排気通路内に水素を送り込むためのポンプが必要になる場合もある。部品点数の増加に伴うコスト増や搭載性の悪化を抑えるためには、できる限り既存のシステムを用いて水素を供給できるようにしたい。
【0005】
なお、燃料として水素を使用可能な内燃機関であれば、例えば、空燃比がリッチになるように水素の噴射量を増量することで、未燃の水素を触媒に供給することができる。しかし、この場合、空燃比の変化によって内燃機関のトルクを変動させてしまう可能性があり、NOx触媒への水素の供給を必要なときに行うことができるとは限らない。また、還元剤として使用できる水素は噴射した水素の一部であり、NOx触媒の還元処理に必要な量以上の水素を噴射する必要がある。つまり、無駄な水素の噴射によって燃費の悪化が生じてしまうおそれもある。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、排気浄化触媒への還元剤の供給を必要なときに行うことができ、しかも、専用の装置を新たに設けることなく行えるようにしたハイブリッド車両の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関とモータとを有し、少なくとも前記モータにより車両を駆動可能なハイブリッド車両の排気浄化装置であって、
前記内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化触媒と、
前記内燃機関の吸気通路或いは燃焼室内に還元剤を供給する還元剤供給手段と、
前記排気浄化触媒への還元剤の供給時期を判定し、その判定結果から還元剤を供給すべき時期であると判断されるときには、前記内燃機関の燃焼が停止している状態において前記モータによって前記内燃機関を強制的に回転させるとともに、前記還元剤供給手段を作動させて還元剤を供給する制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記還元剤供給手段は、還元剤として水素を供給するように構成され、
前記制御手段は、前記内燃機関の始動時を前記排気浄化触媒への水素の供給時期としていることを特徴としている。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、前記制御手段は、前記排気浄化触媒に供給される水素を含む混合気の空燃比が所定の空燃比になるようにスロットルの開度を制御することを特徴としている。
【0010】
第4の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関とモータとを有し、少なくとも前記モータにより車両を駆動可能なハイブリッド車両の排気浄化装置であって、
前記内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化触媒と、
前記内燃機関の吸気通路或いは燃焼室内に還元剤を供給する還元剤供給手段と、
前記排気浄化触媒への還元剤の供給時期を判定し、その判定結果から還元剤を供給すべき時期であると判断されるときには、前記内燃機関の燃焼を停止させるとともに、前記内燃機関の回転停止に先立ち、最後に排気行程を経て停止する気筒を予測し、当該気筒の最後の排気行程において当該気筒から還元剤が排出されるように前記還元剤供給手段から当該気筒に還元剤を供給することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、内燃機関の吸気通路或いは燃焼室内に供給された還元剤を、モータにより内燃機関を強制回転させた時のポンプ作用によって排気通路に送ることができるので、排気浄化触媒に還元剤を供給する手段として既存の還元剤供給手段を用いることができる。つまり、排気浄化触媒に還元剤を供給するための専用の装置を設ける必要がない。しかも、第1の発明によれば、内燃機関の燃焼を停止させてもモータによって走行が可能であるので、排気浄化触媒への還元剤の供給を必要なときに行うことができる。
【0012】
また、第2の発明によれば、内燃機関の始動に先立ち、排気浄化触媒上での水素と酸素の燃焼反応による反応熱によって排気浄化触媒を暖機することができる。さらに、第3の発明によれば、空燃比の調整によって排気浄化触媒上での水素と酸素の燃焼反応を促進することができ、排気浄化触媒を効率良く暖機することができる。
【0013】
第4の発明によれば、慣性による回転時の内燃機関のポンプ作用を利用して、内燃機関の吸気通路或いは燃焼室内に供給された還元剤を排気通路に送ることができるので、排気浄化触媒に還元剤を供給する手段として既存の還元剤供給手段を用いることができる。しかも、最後に排気行程を経て停止する気筒に還元剤が供給されるので、還元剤が空気で希釈されることを抑えることができ、少量の還元剤で濃い還元雰囲気を作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は本発明の排気浄化装置が適用されたハイブリッド車両の駆動システムの構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態にかかるハイブリッド車両の駆動システムは、動力装置として内燃機関(以下、エンジンという)2とモータ10とを備えている。
【0015】
エンジン2は、燃料としてガソリンと水素を利用可能な水素利用内燃機関として構成されている。エンジン2の吸気マニホールド2aには、ガソリンインジェクタ42と水素インジェクタ44が設けられている。ガソリンインジェクタ42はガソリンタンク32に接続され、水素インジェクタ44は水素タンク34に接続されている。これらインジェクタ42,44は気筒毎に設けられているが、図1ではそれぞれ1つのみ図示している。エンジン2の排気マニホールド2bには、排気管4が接続されている。排気管4には、その上流側から順に触媒装置6とマフラ8が設けられている。触媒装置6には、排気浄化触媒である三元触媒6aとNOx触媒6bが収納されている。
【0016】
また、この駆動システムは、駆動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ12を備えている。エンジン2、モータ10、及びジェネレータ12は、動力分割機構14を介して相互に連結されている。動力分割機構14につながるモータ10の回転軸には、減速機16が接続されている。減速機16は、モータ10の回転軸と駆動輪20につながるドライブシャフト18とを連結している。動力分割機構14は、エンジン2の駆動力をジェネレータ12側と減速機16側とに分割する装置である。動力分割機構14による駆動力の配分は任意に変更することができる。
【0017】
この駆動システムには、さらに、インバータ24、コンバータ26、高圧バッテリ28、及びECU(Electronic Control Unit)40が含まれている。インバータ24は、ジェネレータ12及びモータ10に接続されるとともに、コンバータ26を介して高圧バッテリ28にも接続されている。ジェネレータ12で発電された電力は、インバータ24を介してモータ10に供給することもできるし、インバータ24及びコンバータ26を介して高圧バッテリ28に充電することもできる。また、高圧バッテリ28に充電されている電力は、コンバータ26及びインバータ24を介してモータ10に供給することができる。インバータ24やコンバータ26の制御はECU40によって行われる。ECU40は、インバータ24やコンバータ26の他、エンジン2、モータ10、ジェネレータ12、動力分割機構14等を含む駆動システムの全体を総合的に制御している。
【0018】
この駆動システムによれば、モータ10を停止させてエンジン2の駆動力のみによって駆動輪20を回転させることもできるし、逆に、エンジン2を停止させてモータ10の駆動力のみによって駆動輪20を回転させることもできる。モータ10とエンジン2の双方を作動させ、双方の駆動力によって駆動輪20を回転させることもできる。また、この駆動システムによれば、モータ10をエンジン2のスタータとして機能させることもできる。つまり、エンジン2の始動時、モータ10の駆動力の一部或いは全部を動力分割機構14を介してエンジン2に入力することで、エンジン2をクランキングすることができる。さらに、エンジン2の始動に関係なく、停止しているエンジン2を必要に応じて強制的に回転させることもできる。
【0019】
また、この駆動システムによれば、エンジン2とモータ10とを協調制御することで、最も効率の良い運転領域でエンジン2を運転することができる。その際には、燃焼性に優れた水素をガソリンに添加することによる超リーンバーン運転が行われる。超リーンバーン運転は、理論空燃比よりも遥かにリーンな空燃比で行われる運転であり、燃費の向上やNOxの発生量の低減といった顕著な効果を得ることができる。しかし、超リーンバーン運転時には、エンジン2で発生するNOxの絶対量は減少するものの、NOxの発生量のHCやCOの発生量に対する比率は大きくなる。このため、三元触媒6aのみでは排気ガス中のNOxを十分に浄化することはできない。この駆動システムでは、超リーンバーン運転時に発生したNOxをNOx触媒6bによって吸蔵することで、NOxが大気中へ放出されることを防止している。
【0020】
このようなNOx触媒6bを用いたシステムでは、NOx触媒6bの吸蔵能力が限界に近づいた場合、NOx触媒6bに還元剤を供給してNOx触媒6bの吸蔵能力を回復させてやる必要がある。還元剤としてはガソリンも使用可能であるが、この駆動システムでは、還元剤として優れた水素がエンジン2の燃料として使用されている。この水素を還元剤としてNOx触媒6bに供給することができれば、NOx触媒6bの吸蔵能力を効率よく回復させることができる。
【0021】
本実施形態では、ECU40によるエンジン2とモータ10の協調制御によってNOx触媒6bへの水素供給が行われる。図2のフローチャートに示すルーチンは、NOx触媒6bに水素を供給するために実行されるエンジン2とモータ10の協調制御のルーチンである。ECU40は、図2に示すルーチンを一定のクランク角毎に周期的に実行している。
【0022】
図2に示すルーチンの最初のステップ100では、NOx触媒6bの還元処理が必要か否か判定される。NOx触媒6bに吸蔵されているNOxの量は、エンジン2の運転時間や走行距離等に基づいて推定することができる。本ステップでは、推定したNOxの吸蔵量と所定の基準値とが比較され、推定吸蔵量が基準値を超えたら、NOx触媒6bの還元処理が必要と判断される。判定の結果、還元処理が必要とされていない場合には、車両の走行状態に応じた通常運転が継続される(ステップ108)。
【0023】
一方、NOx触媒6bの還元処理が必要と判断された場合には、ステップ102,104,106の一連の処理が実行される。まず、ステップ102では、エンジン2の燃焼を停止させる処理が実行される。具体的には、インジェクタ42,44からの燃料供給が停止されるとともに、点火プラグ(図示略)による点火が停止される。また、スロットル(図示略)も閉じられる。これと同時に、バッテリ28に充電されている電力がインバータ24からモータ10へ供給され、モータ10の駆動力による走行が開始される。その際、エンジン2の停止の前後で駆動輪20に伝達される駆動力が変動しないように、モータ10に供給される電力がインバータ24によって調整される。
【0024】
次のステップ104では、エンジン2の燃焼が実際に停止したか否か判定される。ECU40がインジェクタ42,44や点火プラグに停止指令を出力してから、エンジン2の燃焼が実際に停止するまでには、タイムラグが生じるからである。エンジン2の燃焼が停止したか否かは、エンジン回転数の変化によって判定することができる。本ステップでは、エンジン回転数の低下速度と所定の基準値とが比較され、エンジン回転数の低下速度が基準値を超えたら、エンジン2の燃焼が停止したと判断される。判定の結果、エンジン2の燃焼が停止するまでは、次のステップ106の処理はスキップされる。
【0025】
エンジン2の燃焼が停止した場合には、ステップ106の処理が実行される。ステップ106では、動力分割機構14が操作され、モータ10の駆動力の一部が動力分割機構14を介してエンジン2に入力される。これにより、エンジン2はモータ10の駆動力によって強制的に回転させられ、吸気マニホールド2aから空気を吸い込んで排気マニホールド2bへ排出するポンプとして作動する。
【0026】
また、ステップ106では、モータ10によるエンジン2の強制回転と同時に、ECU40から水素インジェクタ44に噴射指令が供給され、所定量の水素が水素インジェクタ44から噴射される。この場合、各気筒の水素インジェクタ44を作動させてもよく、特定気筒の水素インジェクタ44のみ作動させてもよい。或いは、水素の供給量に応じて作動させる水素インジェクタ44の本数を決めてもよい。水素インジェクタ44から吸気マニホールド2aへ噴射された水素は、エンジン2のポンプ作用によって燃焼室内に吸入され、そのまま排気マニホールド2bへ排出される。エンジン2の燃焼停止時にはスロットルは閉じられているため、水素の空気による希釈度は小さい。したがって、触媒装置6には極めて水素濃度の高いガスが流入することとなり、NOx触媒6bの周囲雰囲気は濃い還元雰囲気とされる。NOx触媒6bに吸蔵されていたNOxは水素によって還元され、無害な窒素となって大気中へ放出される。
【0027】
所定量の水素をNOx触媒6bに供給し、NOx触媒6bの還元処理が終了した場合には、次回のステップ100の判定結果は否定(No)となる。その場合は、ステップ108に進み、通常運転が再開される。ステップ108では、インジェクタ42,44からの燃料供給と点火プラグによる点火が再開され、エンジン2が再始動される。そして、エンジン2の駆動力による走行が再開される。その際、エンジン2の再始動の前後で駆動輪20に伝達される駆動力が変動しないように、モータ10に供給される電力がインバータ24によって調整される。
【0028】
以上説明したルーチンによれば、モータ10によりエンジン2を強制回転させた時のエンジン2のポンプ作用により、水素インジェクタ44から噴射した水素を燃焼させることなく排気管4に送ることができる。したがって、NOx触媒6bに水素を供給するための専用の装置を設ける必要がない。しかも、上記のルーチンによれば、エンジン2の燃焼を停止させている間はモータ10によって走行が行われるので、エンジン2の燃焼は何時でも停止させることができる。つまり、NOx触媒6bの還元処理が必要になったときには、NOx触媒6bへの水素の供給を何時でも行うことができる。
【0029】
なお、上記実施の形態では、ECU40によって上記ルーチンを実行することにより、第1の発明の「制御手段」が実現されている。
【0030】
実施の形態2.
次に、図3を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施形態のハイブリッド車両の排気浄化装置は、図1に示す構成において、ECU40に、図2に示すルーチンに代えて図3に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。ECU40は、図3に示すルーチンを一定のクランク角毎に周期的に実行する。なお、図3において、図2に示すルーチンと同内容の処理については、同一のステップ番号を付している。
【0031】
図3に示すルーチンは、図2に示すルーチンとは、ステップ100からステップ104までの処理は共通しており、ステップ104の判定においてエンジン2の燃焼停止が確認された後の処理が異なっている。本ルーチンでは、エンジン2の燃焼停止後、さらに、エンジン2の回転が停止しているか否か判定される(ステップ110)。エンジン2は、その燃焼が停止した後も慣性によって暫くは回転し、その後、停止に至る。ステップ110の判定時、エンジン2の回転が続いている場合には、ステップ112の処理が実行され、エンジン2の回転が既に停止している場合には、図2に示すルーチンと同様、ステップ106の処理が実行される。
【0032】
ステップ112の処理が選択された場合、つまり、エンジン2の回転が続いている場合には、エンジン2の慣性エネルギーと行程仕事からエンジン2が停止するまでのクランクシャフトの回転角が算出され、算出されたエンジン停止までの回転角と現在のクランクシャフトの回転位置から、最後に排気行程を経て停止する気筒(最終停止気筒)が予測される。そして、この最終停止気筒が最後の吸気行程にあるときに、ECU40から最終停止気筒の水素インジェクタ44にのみ噴射指令が供給され、最終停止気筒の水素インジェクタ44から所定量の水素が噴射される。最後の吸気行程で水素インジェクタ44から噴射された水素は、エンジン2のポンプ作用によって最終停止気筒の燃焼室内に吸入され、燃焼することなく、その最後の排気行程において排気マニホールド2bへ排出される。そして、排気管4を通って触媒装置6内のNOx触媒6bに供給される。
【0033】
一方、ステップ106の処理が選択された場合、つまり、エンジン2の回転が既に停止している場合には、モータ10の駆動力の一部が動力分割機構14を介してエンジン2に入力され、モータ10の駆動力によるエンジン2の強制回転が行われる。これと同時に、ECU40からか全気筒或いは特定気筒の水素インジェクタ44に噴射指令が供給され、所定量の水素が水素インジェクタ44から噴射される。水素インジェクタ44から噴射された水素は、エンジン2のポンプ作用によってそのまま排気マニホールド2bへ排出され、排気管4を通って触媒装置6内のNOx触媒6bに供給される。
【0034】
ステップ112或いはステップ106でNOx触媒6bの還元処理が行われた後は、ステップ100の判定結果は否定(No)となる。その場合は、ステップ108に進み、通常運転が再開される。具体的には、エンジン2が再始動され、エンジン2の駆動力による走行が再開される。
【0035】
以上説明したルーチンによれば、エンジン2の燃焼停止後、エンジン2が慣性により回転している時のポンプ作用を利用して、水素インジェクタ44から噴射した水素を燃焼させることなく排気管4に送ることができる。したがって、NOx触媒6bに水素を供給するための専用の装置を設ける必要がない。しかも、最後に排気行程を経て停止する最終停止気筒に水素の供給が行われるので、排気マニホールド2bへ排出された水素が他の気筒からの空気によって希釈されることがない。つまり、上記ルーチンによれば、水素が空気で希釈されることを抑えることができ、必要最小量の水素で濃い還元雰囲気を作ることができる。
【0036】
また、上記ルーチンによれば、エンジン2が既に停止している場合には、モータ10によってエンジン2を強制的に回転させることができるので、慣性により回転している時のエンジン2のポンプ作用を利用できなかった場合であっても、確実にNOx触媒6bに水素を供給することができる。
【0037】
なお、上記実施の形態では、ECU40によって図3に示すルーチンを実行することにより、第4の発明の「制御手段」が実現されている。
【0038】
実施の形態3.
次に、図4を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。
本実施形態のハイブリッド車両の排気浄化装置は、図1に示す構成において、ECU40に、図4に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
【0039】
エンジン2の運転時、高温の排気ガスに晒されることで、触媒装置6内の各触媒6a,6bの温度は高温になっている。しかし、モータ10による走行時のようにエンジン2が停止している時には、放熱によって各触媒6a,6bの温度は低下していく。各触媒6a,6bの温度には、その浄化性能が最大となる適正温度が存在しており、適正温度より触媒温度が低すぎると、十分な浄化性能を得ることができない。このため、エンジン2の始動時、触媒温度が低い場合には、触媒温度が適正温度まで上昇するように、各触媒6a,6bを暖機してやる必要がある。図1に示す構成では、少なくとも三元触媒6aを暖機することができれば、理論空燃比下でエンジン2を運転することにより排気エミッションの悪化を防止することができる。
【0040】
触媒を暖機する方法の1つに、燃料を触媒上で酸素と反応させ、その際の反応熱によって触媒を加熱する方法がある。暖機用の燃料としてはガソリンも使用可能であるが、本実施形態の駆動システムでは、燃焼性に優れた水素がエンジン2の燃料として使用されているので、この水素を触媒装置6内の三元触媒6aに供給することができれば、三元触媒6aを効率よく暖機することができる。
【0041】
本実施形態では、ECU40によるエンジン2とモータ10の協調制御によって三元触媒6aへの水素供給が行われる。図4のフローチャートに示すルーチンは、三元触媒6aに水素を供給するために実行されるエンジン2とモータ10の協調制御のルーチンである。ECU40は、図4に示すルーチンを一定のクランク角毎に周期的に実行している。
【0042】
図4に示すルーチンの最初のステップ200では、エンジン2の始動が必要か否か判定される。モータ10による走行からエンジン2による走行に切替えられた場合や、エンジン2によってジェネレータ12を駆動する場合等にエンジン2の始動が行われる。判定の結果、エンジン2の始動が必要とされていない場合には、本ルーチンは終了する。また、これ以降の処理によってエンジン2の始動が完了した場合にも、本ルーチンは終了する。
【0043】
一方、エンジン2の始動が必要と判断された場合には、次に、三元触媒6aの温度が所定の基準値よりも低いか否か判定される(ステップ202)。基準値は適正温度の下限値に設定されている。ステップ202の判定の結果、触媒温度が基準値よりも低い場合には、ステップ204の処理が実行され、触媒温度が基準値以上になっている場合には、ステップ206の処理が実行される。
【0044】
ステップ204の処理が選択された場合、つまり、触媒温度が基準値よりも低い場合には、先ず、動力分割機構14が操作され、モータ10の駆動力の一部或いは全部が動力分割機構14を介してエンジン2に入力される。これにより、エンジン2はモータ10の駆動力によって強制的に回転させられ、吸気マニホールド2aから空気を吸い込んで排気マニホールド2bへ排出するポンプとして作動する。
【0045】
また、ステップ204では、モータ10によるエンジン2の強制回転と同時に、ECU40から水素インジェクタ44に噴射指令が供給され、所定量の水素が水素インジェクタ44から噴射される。さらに、それと同時に、吸気管(図示略)に設けられたスロットルが開かれ、水素の噴射量に応じた量の空気が吸気マニホールド2aへ供給される。空気量はスロットルの開度によって制御することができる。ECU40は、水素と空気の空燃比が触媒上での燃焼反応に適した所定の空燃比になるようにスロットルを制御する。水素インジェクタ44から吸気マニホールド2aへ噴射された水素は、空気とともにエンジン2のポンプ作用によって燃焼室内に吸入され、水素と空気の混合気となって排気マニホールド2bへ排出される。この混合気が排気管4を通って触媒装置6内の三元触媒6aに供給され、水素と酸素が三元触媒6a上で燃焼反応を起こすことで、三元触媒6aは加熱され、三元触媒6aの温度は上昇していく。
【0046】
ステップ204の処理によって三元触媒6aの温度が上昇し、やがて基準値以上になった場合には、ステップ204の処理からステップ206の処理に切替えられる。ステップ206では、先ず、水素インジェクタ44からの水素の噴射が停止される。そして、ガソリンインジェクタ42からの燃料供給と点火プラグによる点火が開始され、エンジン2が始動される。エンジン2の始動後は、エンジン2から排出される高温の排気ガスが三元触媒6aに供給されることで、三元触媒6aの温度は適正温度に維持される。
【0047】
以上説明したルーチンによれば、モータ10によりエンジン2を強制回転させた時のエンジン2のポンプ作用により、水素インジェクタ44から噴射した水素を燃焼させることなく排気管4に送ることができる。これにより、エンジン2の始動に先立ち、三元触媒6a上で水素と酸素を反応させ、その際の反応熱によって三元触媒6aを暖機することができる。しかも、空燃比の調整によって三元触媒6a上での水素と酸素の燃焼反応を促進することができ、三元触媒6aを効率良く暖機することができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、ECU40によって上記ルーチンを実行することにより、第1の発明の「制御手段」が実現されている。また、第2の発明及び第3の発明にかかる「制御手段」の機能が実現されている。
【0049】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、次のように変形して実施してもよい。
【0050】
図1の構成では、水素インジェクタ44を吸気マニホールド2aに配置することとしているが、その配置はこれに限定されるものではない。すなわち、水素インジェクタ44は、燃焼室内に直接、水素を噴射できるようにシリンダヘッドに組み込んでもよい。ガソリンインジェクタ42に関しても同様であり、燃焼室内に直接、ガソリンを噴射できるようにシリンダヘッドにガソリンインジェクタ42を組み込んでもよい。実施の形態2では、最終停止気筒の最後の吸気行程で水素を噴射しているが、燃焼室内に直接、水素を噴射できる場合には、最後の吸気行程から最後の排気行程までの間の任意のタイミングで水素を噴射することができる。
【0051】
また、図1の構成では、水素タンク34に貯蔵された水素を水素インジェクタ44に供給しているが、燃料改質器によって炭化水素系燃料(例えば、ガソリン)から改質された水素を水素インジェクタ44に供給してもよい。燃料改質器による炭化水素系燃料の改質方法には限定はなく、部分酸化反応を利用してもよく、水蒸気改質反応を利用してもよい。或いは、水素化燃料を脱水素反応させることで得られた水素を水素インジェクタ44に供給してもよい。
【0052】
また、図1の構成では、ハイブリッド車両はエンジン2によってもモータ10によっても走行可能に構成されているが、本発明を適用するにあたってはハイブリッド車両は少なくともモータ10によって走行可能であればよい。つまり、エンジン2は発電専用であってもよい。
【0053】
さらに、上記実施の形態では、NOx触媒6bを還元処理するための還元剤として水素を用いているが、水素以外の還元剤を用いてもよい。例えば、炭化水素系燃料を還元剤として用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の排気浄化装置が適用されたハイブリッド車両の駆動システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1において実行されるエンジンとモータの協調制御のルーチンについて示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2において実行されるエンジンとモータの協調制御のルーチンについて示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態3において実行されるエンジンとモータの協調制御のルーチンについて示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
2 エンジン
2a 吸気マニホールド
2b 排気マニホールド
4 排気管
6 触媒装置
6a 三元触媒
6b NOx触媒
8 マフラ
10 モータ
12 ジェネレータ
14 動力分割機構
16 減速機
18 ドライブシャフト
20 駆動輪
24 インバータ
26 コンバータ
28 バッテリ
32 ガソリンタンク
34 水素タンク
40 ECU
42 ガソリンインジェクタ
44 水素インジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関とモータとを有し、少なくとも前記モータにより車両を駆動可能なハイブリッド車両の排気浄化装置であって、
前記内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化触媒と、
前記内燃機関の吸気通路或いは燃焼室内に還元剤を供給する還元剤供給手段と、
前記排気浄化触媒への還元剤の供給時期を判定し、その判定結果から還元剤を供給すべき時期であると判断されるときには、前記内燃機関の燃焼が停止している状態において前記モータによって前記内燃機関を強制的に回転させるとともに、前記還元剤供給手段を作動させて還元剤を供給する制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の排気浄化装置。
【請求項2】
前記還元剤供給手段は、還元剤として水素を供給するように構成され、
前記制御手段は、前記内燃機関の始動時を前記排気浄化触媒への水素の供給時期としていることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車両の排気浄化装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記排気浄化触媒に供給される水素を含む混合気の空燃比が所定の空燃比になるようにスロットルの開度を制御することを特徴とする請求項2記載のハイブリッド車両の排気浄化装置。
【請求項4】
内燃機関とモータとを有し、少なくとも前記モータにより車両を駆動可能なハイブリッド車両の排気浄化装置であって、
前記内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化触媒と、
前記内燃機関の吸気通路或いは燃焼室内に還元剤を供給する還元剤供給手段と、
前記排気浄化触媒への還元剤の供給時期を判定し、その判定結果から還元剤を供給すべき時期であると判断されるときには、前記内燃機関の燃焼を停止させるとともに、前記内燃機関の回転停止に先立ち、最後に排気行程を経て停止する気筒を予測し、当該気筒の最後の排気行程において当該気筒から還元剤が排出されるように前記還元剤供給手段から当該気筒に還元剤を供給することを特徴とするハイブリッド車両の排気浄化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−266115(P2006−266115A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82423(P2005−82423)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】