説明

半導体素子の製造方法、半導体素子、及び遅延装置

【課題】トランジスタのゲート領域にWSi2が積層されたノンドープのポリシリコンを用い、WSi2をゲート電極とし、ノンドープのポリシリコンを高抵抗体として扱い、実効的なゲート絶縁部の膜厚を制御しローパスフィルターを形成する技術がある。この技術をサリサイド工程に展開する場合に、例えばLDD形成に伴い寄生的に当該ポリシリコンの一部に不純物が添加されると、サリサイド化に伴う高速の拡散により広がり、当該ポリシリコンの比抵抗が低下しフィルター特性が劣化するという課題がある。
【解決手段】トランジスタのゲート領域形成前にLDD部を形成する。LDD部を先に形成することで、ゲート領域とLDD部とのオーバーラップがある状態で、かつゲート領域への不純物導入を防止することが可能となる。LDD部の形成に伴う不純物がゲート領域に侵入しないため、高速の拡散が生じてもゲート領域内への不純物拡散が防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造方法、半導体素子、及び遅延装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI内では、集積化が容易なMIS型トランジスタが主として用いられている。LSIの内部では集積度を高めるため、トランジスタのゲート電極として用いられる、不純物をドーピングし低抵抗化したポリシリコンが配線用にも用いられている。また、トランジスタのソース/ドレインも同様に配線用にも用いられている。LSIの集積度が更に大きくなると、ポリシリコンの比抵抗が金属などと比べて高いため、配線遅延が生じるという問題が発生する。そこで、ポリシリコンにWSi2などに代表される金属シリサイドをポリシリコンを覆うように重ねて形成し、配線遅延を抑制する方法が知られている。
【0003】
ここで、一部のトランジスタに対して、当該トランジスタのゲート領域に用いられるポリシリコンに対して、不純物のドーピングを止めて高抵抗のポリシリコンを形成し、このポリシリコンを電極以外の用途に転用する技術が、例えば、特許文献1に示されている。これは、誘電体として扱い得るノンドープのポリシリコンをゲート部分に用い、WSi2を用いて当該ポリシリコンを覆うように積層されたトランジスタを形成し、実効的なゲート絶縁部の膜厚を制御するものである。また、近年の更なる微細化に伴い、トランジスタのゲート電極と共にソース/ドレインを用いた配線部についても電気抵抗を下げるため、自己整合的に金属シリサイドで覆う技術であるサリサイド工技術が用いられるようになってきている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−91441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されている技術では、特許文献1の6頁目に記載されるように、「通常のMOSトランジスタの製造プロセスに従いLDD層(図示しない)及びソース/ドレインの拡散層(図示しない)をマスクによりNMOSとPMOSとで打ち分けて形成する(ステップS7)。」と記載されている。
【0006】
MOSトランジスタのLDD(Lightly Doped Drain)部(特許文献1ではLDD層と記載)は典型的には、ポリシリコンを含むゲート電極をマスクとして不純物をイオン注入することで形成される。また、ソース/ドレイン部(特許文献1ではソース/ドレインの拡散層と記載)の拡散層は典型的には、ゲート電極形成後、サイドウォールを形成し、当該サイドウォールとゲート電極とをマスクとして不純物をイオン注入することで自己整合的に形成される。サイドウォールは、まずSiO2をCVD法を用いて等方的に成層し、次に異方性のドライエッチングによりサイドウォールを形成する方法が用いられる。
【0007】
以上の工程を行うことで、ポリシリコンを含むゲート電極にはLDD部及びソース/ドレインの拡散層形成に伴い、不純物イオンの注入が為される。ポリシリコン層を含むゲート電極を用いる場合、ポリシリコン中での拡散係数が大きく、特許文献1の6頁目に記載されるように、「N2雰囲気中で850℃、30分の処理条件で行う(ステップS9)。」の不純物活性化アニールを行うことで不純物イオンはポリシリコンの深さ方向に侵入すし、ポリシリコン全体に拡散する。
【0008】
そのため、LDD部を形成し、かつノンドープポリシリコン領域を得るためには、イオン注入工程でノンドープポリシリコン領域へのイオン注入を防ぐなどの工夫を行う必要があり、ここに技術的な飛躍がある。しかし、そのための技術について、具体的な説明は為されていない。
【0009】
更に、ポリシリコンを含むゲート電極を覆うように例えばチタンなどの金属薄膜を形成し、熱処理により金属シリサイドを形成する(サリサイド)工程では、不純物の拡散係数が極めて大きくなり、数μmオーダーの距離まで不純物はポリシリコン中に拡散する。そのため、例えばLDD形成工程でノンドープポリシリコン領域の一部に不純物がドーピングされた場合でも、サリサイド工程を用いる場合にはノンドープポリシリコン領域中に拡散してしまう。しかし、上記した現象を防止するための具体的な手段についても、特許文献1では具体的な説明が為されていない。
【0010】
本発明は、従来のこのような問題点を解決し、容易に追試可能なノンドープのポリシリコンを有する半導体素子の製造方法、半導体素子、及び遅延装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書中では、「上」とは基板の第1面を介して、当該基板を構成する物体から離れて行く方向と定義する。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る半導体素子の製造方法は、第1面に半導体領域を有する基板の前記第1面側に、第1導電型を有するウェルを形成する工程と、前記ウェルを覆う位置に第2導電型を有し、かつ前記ウェルよりも高い不純物濃度を有するLDD部を形成する工程と、平面視にて前記LDD部に囲まれる領域を含む場所にゲート絶縁部を形成する工程と、前記ゲート絶縁部の少なくとも一部及び、前記LDD部の少なくとも一部を覆う領域を含む場所にノンドープ(ポリ/アモルファス)シリコンを含むゲート半導体部を形成する工程と、平面視にて前記LDD部の一部と重なり、前記ゲート絶縁部及び前記LDD部を合わせた領域を挟む場所を含めて配置される、第2導電型を有し、かつ前記LDD部よりも高い不純物濃度を有するソース/ドレイン部を形成する工程と、前記半導体領域及び前記ゲート半導体部と合金化し得る金属層を、前記基板の前記第1面側に位置する、前記基板を含む全部材の露出部の少なくとも一部に形成する工程と、熱処理により前記金属層を、前記半導体領域及び前記ゲート半導体部が有する、半導体を含む部分と合金化させる工程と、合金化された領域を残し前記金属層を除去し、自己整合的に形成された合金を含むゲート電極部及びソース/ドレイン電極部を形成する工程と、を含み、上記した工程を当該順に実行することを特徴とする。
【0013】
この製造方法によれば、LDD部が形成された後でノンドープポリシリコンを含むゲート半導体部が形成される。そのため、LDD部形成に起因するノンドープポリシリコンへの不純物の侵入を阻止することができる。また、LDD部よりも高い不純物濃度を有するソース/ドレイン部の形成前にノンドープポリシリコンを覆う保護層を形成する工程を有している。従って、LDD部よりも高い不純物濃度を有するソース/ドレイン部の形成工程でノンドープポリシリコンへのソース/ドレイン部形成に起因する不純物の侵入を阻止することができる。また、バルク半導体又は半導体層、及びノンドープポリシリコンと合金を形成する金属層を形成して、合金化する処理で拡散係数が増化する現象が発生する。この現象に対しても、ゲート半導体部には不純物そのものが導入されていないためゲート半導体部をノンドープ状態に保ち、かつゲート半導体部上に電極となる合金層を形成することができる。同時に、半導体領域にも合金層が形成される。合金層は、半導体に不純物を添加して得られるソース/ドレイン部の電気抵抗と比べ小さい抵抗値を有している。そしてソース/ドレイン部は配線材としても用いられており、ソース/ドレイン部上に合金層を形成することで配線遅延の抑制が可能となる。
【0014】
また、本発明に係る半導体素子の製造方法として、前記LDD部はLOCOS又はSTIと、前記基板との間に形成されることを特徴とする。
【0015】
この製造方法によれば、LOCOS又はSTI上に位置する範囲でノンドープポリシリコンの配置が製造工程のばらつきにより変動しても、トランジスタのゲート絶縁部上に位置するノンドープポリシリコンの面積は変動しない。従って、ノンドープポリシリコンの配置変動に起因する特性変動を抑制し得る半導体素子を得る製造方法を提供することができる。
【0016】
また、本発明に係る半導体素子は、前記ゲート絶縁部と、前記ゲート絶縁部を平面視にて取り囲む位置に配置される前記LDD部と、平面視にて前記LDD部の一部と重なり、前記ゲート絶縁部及び前記LDD部を合わせた領域を挟む場所を含めて配置される前記ソース/ドレイン部と、前記ゲート絶縁部の少なくとも一部と、前記LDD部の少なくとも一部とを覆うノンドープポリシリコンを含む前記ゲート半導体部と、前記ゲート半導体部の少なくとも一部を覆う、金属シリサイドを含む前記ゲート電極部と、前記ソース/ドレイン部の少なくとも一部を覆う、金属シリサイドを含む前記ソース/ドレイン電極部と、を含むことを特徴とする。
【0017】
これによれば、トランジスタを構成するゲート半導体部の内部を、不純物起因の特性ばらつきが抑えられたノンドープポリシリコンで構成することができる。ゲート半導体部の内部での特性ばらつきが抑えられることで、ゲート絶縁部にかかる電界強度のばらつきが抑えられ、局所的な破壊による信頼性低下の発生が抑えられる半導体素子を提供することができる。
【0018】
また、本発明に係る遅延装置は、前記ゲート半導体部のノンドープポリシリコンが有する電気抵抗と、前記半導体素子のゲート電極部が有するゲート容量と、を直列に配置し、前記半導体素子の前記ゲート電極部に入力信号を印加し、前記半導体素子のソース/ドレイン部から出力信号を抽出する構成を有することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ノンドープポリシリコンの抵抗値は面積に反比例して低下する。一方、ゲート容量は面積に比例して上昇する。従って、ノンドープポリシリコンの抵抗値とゲート容量との積により規定される時定数はトランジスタ形状には依存しない。そのため、トランジスタ形状の影響を受けない安定した時定数を有する遅延装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について図面を用いて説明する。図1〜図3は本実施形態に係る半導体素子としてのLOCOSオフセット型NMOSトランジスタ(以下、NMOSトランジスタと略記する)を形成する工程断面図である。なお、特記無き場合には、製造工程は第1面側に為されるものとする。
【0021】
まず、図1に示す工程1として、シリコンを主として含む基板10中にPウェル20を形成する。Pウェル20は、例えばB(ほう素)を1×1013cm-2程度の量で、60keV程度に加速してイオン注入を行った後、1150℃、4時間程度、窒素中に、基板表面の荒れを抑制するよう若干の酸素を添加した雰囲気で熱処理を行う。この工程で4μm程度の深さ(基板の不純物濃度≒1×1015cm-3と同程度の濃度となる位置で定義)を持つPウェル20が形成される。ここで、Pウェル20が形成される場所は、Pウェル予定領域が開口されたレジストマスクを形成した後、Bのイオン注入工程を行うことで制御することができる。
なお、説明の都合上、工程2以降は図面の縮尺を変え、点線で示した範囲内について図示を行う。
【0022】
次に、工程2として、LDD部30を形成する。まず、バッファ酸化膜31を熱酸化法により20nm程度形成し、CVD法などを用いて窒化膜(図示せず)を形成する。そしてフォトリソグラフ工程とエッチング工程を用いてパターニングし、窒化膜マスク33を形成する。ここで、バッファ酸化膜31は、Pウェル20と窒化膜マスク33との間にかかる応力を緩和するために挿入されている。そして、この窒化膜マスク33をマスクとしてLDD部30を形成するためのイオン注入工程を行う。イオン注入工程は、例えばP(燐)を1×1013cm-2程度の量で、80keV程度に加速して行う。窒化膜マスク33の厚さは160nm程度あるため、燐は窒化膜マスク33中に阻止される。そして、1000℃〜1100℃程度の温度範囲で湿式酸化を行う。窒化膜マスク33は酸化種を通さないため、窒化膜マスク33下での酸化は抑制され、酸化種を透過する領域にLOCOS34が形成される。そして、LOCOS34の基板側には、LDD部30が形成される。LOCOS34形成後、窒化膜マスク33を例えば、加熱された燐酸を含む溶液を用いてエッチング除去し、次にフッ酸を含むエッチング液を用いてバッファ酸化膜31をエッチング除去する。
【0023】
次に、工程3として、ゲート絶縁部40を形成する。ゲート絶縁部40は熱酸化法により形成される。ここで、ゲート絶縁部40の形成の前に必要に応じ犠牲酸化などの工程を挿入しても良い。
【0024】
次に、工程4として、ノンドープのポリシリコンを含むゲート半導体部50を形成する。まず、ノンドープのポリシリコン、又はノンドープのアモルファスシリコンを主として含む膜(図示せず)をCVD法などを用いて形成する。そしてフォトリソグラフ工程とエッチング工程を用いてパターニングし、ゲート半導体部50を形成する。ここで、ゲート半導体部50を汚染から守るために熱酸化法などを用いてゲート半導体部50の露出部に酸化膜を形成する工程を行っても良い。この構造を用いる場合、ゲート半導体部50の両端はLOCOS34に乗り上げる形状を有している。そのため、ゲート半導体部50を形成する場合に用いられるフォトリソグラフ工程でマスクの合わせずれが生じても、ゲート絶縁部40はゲート半導体部50で覆われるため、合わせずれによる特性変動を抑えることができる。
【0025】
次に、図2に示す工程5−1として、LDDイオン注入を行う。フォトリソグラフ工程を用いてレジストマスク61を形成した後、LDDイオン注入を行うことで不純物の侵入を防止することができる。なお、ここではソース/ドレイン部60(後述する)にもLDD用のイオン注入を行っているが、この領域はマスクしてイオン注入を行っても良い。イオン注入後、レジストマスク61は除去する。
【0026】
次に、工程5−2として、サイドウォール62を形成した後、再度フォトリソグラフ工程を用いてレジストマスク63を形成する。そして、ソース/ドレイン部60にイオン注入を行う。イオン注入工程は、例えばAs(砒素)を4×1015cm-2程度の量で、40keV程度に加速して行う。イオン注入後、レジストマスク63は除去する。
【0027】
次に、工程6として、チタン膜70を例えばスパッタ法を用いて形成する。ここで、チタン膜70の厚さは50nm程度が好ましい。また、チタン膜70を形成する前に、例えばフッ酸を含むエッチング速度の遅い溶液やRCA洗浄液などを用いて、Pウェル20をライトエッチング、あるいは洗浄する工程を挿入しても良い。ここで、ゲート半導体部50とソース/ドレイン部60の露出面は、半導体領域が露出する状態にしてからチタン膜70を形成する処理を行う。この工程は、例えばフッ酸を含むエッチング液で表面の酸化膜を除去することで構成することができる。
【0028】
次に、工程7として700℃程度のランプアニール法により、ソース/ドレイン部60とチタン膜70が接している領域、及びシリコンを含むゲート半導体部50の、半導体の領域と、チタン膜70とが接している領域でチタンと半導体とを合金化する。この合金化で、ソース/ドレイン電極81と、ゲート電極82が形成される。ここで、例えば酸化膜とチタン膜70が接している領域では、合金化が生じないため、チタン膜70はそのままの状態を保つ。
【0029】
工程7を実行する場合に、B、P、Asなどの不純物がゲート半導体部50中で極めて大きくなる現象が観察されている。本実施形態では、ゲート半導体部50中への不純物の侵入が抑えられているため、拡散係数の変動があっても不純物そのものがゲート半導体部50内に含まれていない。そのため、ゲート半導体部50中には不純物が侵入することはない。合金化処理を終えた後、チタン膜70のみを20分程度RCA洗浄液を用いて選択的にエッチングし、除去する。
【0030】
以上の工程を用いることで、図3に示す、ゲート半導体部50表面にゲート電極82が形成された半導体素子としてのNMOSトランジスタ90が形成される。
【0031】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、LOCOSオフセット法を用いた例について説明したが、これは別の構造を有する場合にも適用可能である。この実施形態では、マスクオフセット構造を有するNMOSトランジスタについてその製造工程を説明する。第1の実施形態との相違点は、第1の実施形態での工程2に示したLOCOSオフセットを形成する工程に代えて、マスクオフセットを形成する点である。図4〜図6は、構造を有するNMOSトランジスタの製造工程に対応した工程断面図である。
【0032】
まず、図4の工程1に示すように、第1の実施形態の工程1と同様に基板10中にPウェル20を形成する(図1の工程1参照)。
【0033】
次に、工程2−1としてLOCOS110を形成する。LOCOS110は、まず、バッファ酸化膜111を熱酸化法により20nm程度形成し、CVD法などを用いて窒化膜(図示せず)を形成する。そしてフォトリソグラフ工程とエッチング工程とを用いてパターニングし、窒化膜マスク112を形成する。ここで、バッファ酸化膜111は、Pウェル20と窒化膜マスク112との間にかかる応力を緩和するために挿入されている。そして、1000℃〜1100℃程度の温度範囲で湿式酸化を行う。窒化膜マスク112は酸化種を通さないため、窒化膜マスク112下での酸化は抑制され、酸化種を透過する領域にLOCOS110が形成される。本実施形態に用いる工程断面図では、窒化膜マスク112で全面覆われた部分について図示されている。ここで、基板10中でLOCOS110に覆われる領域には、寄生MOS(LOCOSがゲート絶縁部として機能する)動作を抑制するための不純物の導入を行っても良い。LOCOS110の形成後、窒化膜マスク112を例えば加熱された、燐酸を含む溶液を用いてエッチング除去し、次にフッ酸を含むエッチング液を用いてバッファ酸化膜111をエッチング除去する。
なお、説明の都合上、工程2−2以降は図面の縮尺を変え、点線で示した範囲内について図示を行う。
【0034】
次に、図5に示す工程2−2として、LDD部120を形成する。まず、20nm程度の犠牲酸化膜122を熱酸化法を用いて形成した後、フォトリソグラフ工程を用いてレジストマスク121を形成する。レジストマスク121の幅は、トランジスタ150(図6参照)のチャネル領域の長さにフォトリソグラフ工程での合わせずれ分を加えた値を用いることで、トランジスタ150のゲート半導体部144(図6参照)とLDD部120とが重なる領域が確保できる。このレジストマスク121を用いて例えばP(燐)をイオン注入し、LDD部120を形成する。イオン注入後、レジストマスク121を除去し、犠牲酸化膜122はフッ酸を含むエッチング液を用いてエッチング除去する。
【0035】
次に、工程3として、ゲート絶縁部140を形成する。ゲート絶縁部140は熱酸化法により形成する。
【0036】
そして、第1の実施形態と同様に工程4〜工程7を行い、図6に示すトランジスタ150を形成する。この製造方法を用いることで、LOCOS110(図4工程2−1参照)を形成することで半導体層が途切れる、例えばSOIなど、半導体領域の厚さが小さい場合にも対応することが可能となる。ここで、例えばSOI構造に本実施形態を適用する場合、ウェルとしてイオン注入、熱拡散などの工程を新たに用いることなく、比抵抗の高い状態をそのまま用いてウェルに代えても良い。この場合にはウェルの形成工程は他の工程に付随する形で行われる。また、比抵抗の高いウェルを用いた場合には、ウェルの導電型という概念は余り意味をなさなくなるため、ウェルと反対型を有する導電型のLDDに代えて、同一型のLDDを用いても良い。
【0037】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態として、第1の実施形態を用いて形成されたNMOSトランジスタ90について説明する。便宜上、再度図3を用いて説明を行う。
【0038】
基板10中に位置するPウェル20の表面には、LOCOS34が配置されている。そして、LOCOS34を囲うようにLDD部30が配置されている。LOCOS34に挟まれる位置には、ゲート絶縁部40が配置されている。ゲート半導体部50はゲート絶縁部40と、LOCOS34の一部を覆う位置に配置されており、ゲート半導体部50を覆う領域にはゲート電極82が配置されている。LOCOS34を挟み、ゲート電極82と対向する位置には、ソース/ドレイン部60が位置する。ソース/ドレイン部60を覆う領域にはソース/ドレイン電極81が配置されている。
【0039】
ゲート半導体部50はノンドープのポリシリコンを主として用いている。ゲート半導体部50の厚さを300nmとした場合に、シート抵抗は例えば20GΩ/□という極めて高い値をとる。そのため、ゲート電極82に電圧を印加した場合、ゲート絶縁部40の容量と組み合わせて、静電気などに起因するスパイク電圧の緩和を可能としている。また、ゲート半導体部50中にはほとんど不純物が含まれず、均一性の高い状態を有しているため、ゲート電極82に印加された電圧はゲート半導体部50中に均一にかかる。そのため、局部的な絶縁破壊が置き難いデバイス構造を得ることができる。
【0040】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態として、NMOSトランジスタ90(図3参照)を用いた遅延装置について図7を用いて説明する。図7は、NMOSトランジスタ90(図3参照)を用いた場合の遅延装置200の等価回路である。ここで、Rは0.3μmの厚みを有するゲート半導体部50のシート抵抗を表しており、約20GΩ/□の値を有している。Cはゲート電極82とPウェル20(Pウェル20とゲート絶縁部40との界面に形成される反転層を含む)を電極とし、ゲート電極82と基板10とに挟まれるゲート絶縁部40を誘電体とする容量を表しており、ゲート絶縁部40に厚さ10nmの酸化膜を用い、ゲート電極82が一辺1μmの矩形の平面形状を有する場合、0.345pFの値をとる。
図8は、遅延装置200を用いて得られる信号波形をシミュレーションにより導き出したものである。図8の縦軸の左目盛はVin(入力電圧)、Vgs(ゲート絶縁部40直上の電位)を表し、右目盛はId(ドレイン電流)を表している。Vth(閾値)は0.5V、W(チャネル幅)は25μmで計算している。図8に示されるように、Vinとして矩形波を入力した場合に、典型的な時定数型の遅延波形が得られている。この遅延装置200は、遅延装置200を構成する領域の面積の変動に対して時定数を変える事無く動作させることができる。例えば面積が倍になった場合には、直列抵抗成分Rは0.5倍になる。それに対してゲート絶縁部40の容量は2倍になる。そのため両者の積で示される時定数は面積により変動することがなく、設計マージンの大きい遅延装置200を構成することができる。また、遅延装置200はバッファアンプとしての機能も兼ね備えているため、遅延装置200に接続される負荷の値が変動しても時定数は変化しない。そのため、負荷変動に対しても遅延特性が安定な遅延装置を形成することができる。
【0041】
(変形例)
第1の実施形態及び第2の実施形態ではNMOSのトランジスタの製造工程について説明したが、これに代えてPMOSのトランジスタを形成することができる。具体的にはP型不純物とN型不純物とを切り替えることで実施できる。また、フォトリソグラフ工程とイオン注入工程とを加えることで、CMOSのトランジスタを形成することができる。また、フォトリソグラフ工程とイオン注入工程とを加えることで、ゲート半導体部に不純物を導入することができ、ドーピングが為されたポリシリコンゲートを有するCMOSトランジスタを形成することができる。また、チタン膜70(図2の工程6参照)に代えて、コバルト膜やニッケル膜を用いても良い。
【0042】
また、第1の実施形態では図1の工程2で、窒化膜マスク33をマスクとしてイオン注入を行い、LOCOS34の形成工程を通してLDD部30を形成する工程に代えて、LOCOS34を形成した後、LOCOS34を貫通する高いエネルギーを有するイオン注入を行うことでLDD部30を形成しても良い。また、LOCOS34に代えてSTI(浅トレンチ絶縁)構造を用いてLDD部30を形成しても良い。
【0043】
また、ゲート半導体部50(図1の工程4参照)、ゲート半導体部155(図6参照)の主な材質として用いられるポリシリコンに代えてアモルファスシリコンを主な材質として用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施形態に係るLOCOSオフセット型NMOSトランジスタを形成する工程断面図。
【図2】第1の実施形態に係るLOCOSオフセット型NMOSトランジスタを形成する工程断面図。
【図3】第1の実施形態に係るLOCOSオフセット型NMOSトランジスタを形成する工程断面図。
【図4】第2の実施形態に係るNMOSトランジスタを形成する工程断面図。
【図5】第2の実施形態に係るNMOSトランジスタを形成する工程断面図。
【図6】第2の実施形態に係るNMOSトランジスタを形成する工程断面図。
【図7】NMOSトランジスタを用いた場合の遅延装置の等価回路。
【図8】遅延装置を用いて得られる信号波形のシミュレーション結果。
【符号の説明】
【0045】
10…基板、20…Pウェル、30…LDD部、31…バッファ酸化膜、33…窒化膜マスク、34…LOCOS、40…ゲート絶縁部、50…ゲート半導体部、60…ソース/ドレイン部、61…レジストマスク、62…サイドウォール、63…レジストマスク、70…チタン膜、81…ソース/ドレイン電極、82…ゲート電極、90…NMOSトランジスタ、110…LOCOS、111…バッファ酸化膜、112…窒化膜マスク、120…LDD部、121…レジストマスク、122…犠牲酸化膜、140…ゲート絶縁部、144…ゲート半導体部、150…トランジスタ、200…遅延装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に半導体領域を有する基板の前記第1面側に、第1導電型を有するウェルを形成する工程と、
前記ウェルの内部の位置に第2導電型を有し、かつ前記ウェルよりも高い不純物濃度を有するLDD部を形成する工程と、
平面視にて前記LDD部で囲まれる領域にゲート絶縁部を形成する工程と、
前記ゲート絶縁部の少なくとも一部及び、前記LDD部の少なくとも一部を覆う領域を含む場所にノンドープシリコンを含むゲート半導体部を形成する工程と、
平面視にて前記LDD部の一部と重なり、前記ゲート絶縁部及び前記LDD部を合わせた領域を挟む場所を含めて配置される、第2導電型を有し、かつ前記LDD部よりも高い不純物濃度を有するソース/ドレイン部を形成する工程と、
前記半導体領域及び前記ゲート半導体部と合金化し得る金属層を、前記基板の前記第1面側に位置する、前記基板を含む全部材の露出部の少なくとも一部に形成する工程と、
熱処理により前記金属層を、前記半導体領域及び前記ゲート半導体部が有する、半導体を含む部分と合金化させる工程と、
合金化された領域を残し前記金属層を除去し、自己整合的に形成された合金を含むゲート電極部及びソース/ドレイン電極部を形成する工程と、
を含み、上記した工程を当該順に実行することを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記LDD部はLOCOS又はSTIと、前記基板との間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法を用いて形成される半導体素子であって、前記ゲート絶縁部と、
前記ゲート絶縁部を平面視にて取り囲む位置に配置される前記LDD部と、
平面視にて前記LDD部の一部と重なり、前記ゲート絶縁部及び前記LDD部を合わせた領域を挟む場所を含めて配置される前記ソース/ドレイン部と、
前記ゲート絶縁部の少なくとも一部と、前記LDD部の少なくとも一部とを覆うノンドープシリコンを含む前記ゲート半導体部と、
前記ゲート半導体部の少なくとも一部を覆う、金属シリサイドを含む前記ゲート電極部と、
前記ソース/ドレイン部の少なくとも一部を覆う、金属シリサイドを含む前記ソース/ドレイン電極部と、
を含むことを特徴とする半導体素子。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体素子を用いて形成される遅延装置であって、
前記ゲート半導体部のノンドープシリコンが有する電気抵抗と、
前記半導体素子のゲート電極部が有するゲート容量と、
を直列に配置し、前記半導体素子の前記ゲート電極部に入力信号を印加し、前記半導体素子のソース/ドレイン部から出力信号を抽出する構成を有することを特徴とする遅延装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−177193(P2008−177193A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6679(P2007−6679)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】