説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】CMISのソース・ドレイン領域端部における転位の発生および拡散抵抗の上昇を防止する。
【解決手段】CMISにおけるソース・ドレイン領域12、14の形成時、シリコン基板1に不純物をイオン注入する前に、Pウエル層4には転位抑制元素としてアルゴンを打ち込み、かつNウエル層5には窒素を転位抑制元素として打ち込む。これにより転位の発生を抑制しつつ、かつ、Pウエル層4とNウエル層5それぞれに適した転移抑制元素を打ち分けることで拡散抵抗の上昇を抑制し、歩留まりを向上させ、素子の信頼性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、CMIS構造を有する半導体装置およびその製造に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MISトランジスタ(以下単にMISという)のゲート端部となるソースやドレイン領域ではAsやP、B(BF)などの不純物が高い濃度で打ち込まれる。このゲート端部は応力が集中する箇所となるので、ゲート端部近傍に転位が発生する場合が多くみられる。転位が発生すると電流のリーク源となるので、転位の発生はトランジスタの電気的特性の低下を招く。
【0003】
この転位を防止する方法として、特許文献1(特開平4―212418号公報)には、As、P、Bの他にアルゴン、窒素等不活性イオンを打ち込むことが記載されている。
【特許文献1】特開平4―212418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたように、N型のMIS(以下単にNMISという)、P型のMIS(以下単にPMISという)とに同一の種類の元素を打ち込むと、打ち込まれた領域の拡散抵抗がNMIS、PMISのどちらか一方で大きくなることが、発明者らの実験により明らかとなった。例えば、NMIS、PMISのソース・ドレイン領域に転位を抑制するまでの量の窒素を打ち込むと、PMISの拡散抵抗が大きく上昇する。一方で、NMIS、PMISのソース・ドレイン領域に転位を抑制するまでの量のアルゴンを打ち込むと、NMISの拡散抵抗が大きく上昇する等である。拡散抵抗が上昇すると、トランジスタ電流の低下やスイッチングスピードの低下をもたらすため、転位を抑制しつつ、かつ拡散抵抗を低減する最適な不純物の選択がNMIS、PMISで必要であることを発明者らは見出した。
【0005】
本発明の目的は、基板のソースやドレイン領域に生じる欠陥や転位を抑制し、かつ上記のような拡散抵抗の上昇を防ぎ、さらに性能の良好な半導体装置を製造する技術を提供することにある。
【0006】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0008】
本願の一発明による半導体装置の製造方法は、以下の工程を含むものである。
(a)半導体基板の主面にゲート絶縁膜を形成する工程、
(b)前記ゲート絶縁膜上にN型のMISトランジスタの第1ゲート電極およびP型のMISトランジスタの第2ゲート電極をそれぞれ形成する工程、
(c)前記(b)工程の後、前記第1ゲート電極をマスクにしてN型のMISトランジスタ形成領域の前記半導体基板にN型不純物を打ち込むことにより、前記第1ゲート電極の近傍の前記半導体基板にN型低濃度層を形成し、前記第2ゲート電極をマスクにしてP型のMISトランジスタ形成領域の前記半導体基板にP型不純物を打ち込むことにより、前記第2ゲート電極の近傍の前記半導体基板にP型低濃度層を形成する工程、
(d)前記(c)工程の後、前記第1および第2ゲート電極のそれぞれの側面に絶縁膜を形成する工程、
(e)前記絶縁膜および前記第1ゲート電極をマスクとして前記N型のMISトランジスタ形成領域の前記半導体基板にN型不純物および窒素を打ち込むことにより、前記第1ゲート電極の近傍の前記半導体基板に前記N型のMISトランジスタのソース・ドレイン領域を形成する工程、
(f)前記絶縁膜および前記第2ゲート電極をマスクとして前記P型のMISトランジスタ形成領域の前記半導体基板にP型不純物およびアルゴンを打ち込むことにより、前記第2ゲート電極の近傍の前記半導体基板に前記P型のMISトランジスタのソース・ドレイン領域を形成する工程。
【発明の効果】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0010】
CMISにおけるソース・ドレイン領域内の拡散抵抗の上昇もなく、転位発生を防止することができるため、歩留まりを向上させ、素子の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0012】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、実施例等において構成要素等について、「Aからなる」、「Aよりなる」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。
【0014】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0015】
また、材料等について言及するときは、特にそうでない旨明記したとき、または、原理的または状況的にそうでないときを除き、特定した材料は主要な材料であって、副次的要素、添加物、付加要素等を排除するものではない。たとえば、シリコン部材は特に明示した場合等を除き、純粋なシリコンの場合だけでなく、添加不純物、シリコンを主要な要素とする2元、3元等の合金(たとえばSiGe)等を含むものとする。
【0016】
また、以下の実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするために部分的にハッチングを付す場合がある。
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態は、CMISの製造方法に適用したものであり、図1〜図12を用いて説明する。
【0020】
まず、図1に示すように、シリコン基板1の主面に浅溝2aを形成し、その浅溝2a内を1000℃前後の温度で熱酸化して5〜20nmの熱酸化膜2を形成する。その後、浅溝2a内にCVD法またはスパッタ法で形成した埋め込み酸化膜3を堆積した後、希釈酸化雰囲気中もしくは窒素雰囲気中で1000℃〜1150℃、1〜2時間のアニールを施し、ボイドの解消を目的に埋め込み酸化膜3の緻密化を行う。さらに、シリコン基板1上の余分な埋め込み酸化膜3を、CMPあるいはエッチバックにより平坦化して除去し、素子分離構造を形成する。
【0021】
次に、図2に示すように、シリコン基板1表面を900℃、酸素雰囲気中で熱処理して約10nmの熱酸化膜(図示しない)を形成し、この熱酸化膜をバッファ層としてシリコン基板1中のPMIS領域にN型不純物のリンを、NMIS領域にP型不純物のボロンをそれぞれ濃度1×1013(個/cm)程度でイオン注入し、Pウエル層4およびNウエル層5を形成する。その後、上記熱酸化膜を希釈したHFにより除去する。
【0022】
次に、図3に示すように、ゲート酸化膜6、多結晶シリコン膜7、第1の絶縁膜8を順次堆積した後、フォトリソグラフィ技術によりパターニングし、ゲート電極7aを形成する。
【0023】
次に、図4に示すように、900℃、酸素雰囲気中で熱処理してシリコン基板1表面に3〜10nmの厚さの熱酸化膜(図示しない)を形成し、この熱酸化膜をバッファ層としてNウエル層5にボロン、Pウエル層4にヒ素を、それぞれ濃度1×1013(個/cm)程度でイオン注入し、低濃度層9a、9bを形成する。なお、Nウエル層5に不純物をイオン注入するときは、Pウエル層4側をフォトレジスト(図示しない)で覆い不純物が注入されないようにする。Pウエル層4に不純物をイオン注入するときも同様に、Nウエル層5側をフォトレジスト(図示しない)で覆い、不純物が注入されないようにする。
【0024】
その後、シリコン基板1の主面上に酸化シリコンからなる第2の絶縁膜を堆積した後、異方性のドライエッチングにより上記熱酸化膜(バッファ層)および第2の絶縁膜をゲート電極7aの側壁のみに残してサイドウォール10を形成し、LDD構造を形成する。
【0025】
次に、図5に示すように、Pウエル層4に窒素分子イオンを20〜40keV、濃度1〜3×1015(個/cm)で打ち込んで窒素打ち込み領域11を形成し、さらにヒ素イオンを50keV、濃度5×1014〜3×1015(個/cm)程度で打ち込んでソース・ドレイン領域12を形成する。その後、Nウエル層5にアルゴンイオンを20〜40keV、濃度0.5〜1.5×1015(個/cm)で打ち込んでアルゴン打ち込み領域13を形成し、さらにボロンイオンを30keV、濃度5×1014〜3×1015(個/cm)程度で打ち込んでソース・ドレイン領域14を形成する。その後、1000℃近傍の活性化アニールを行う。なお、Nウエル層5にアルゴンイオンをイオン注入するときは、Pウエル層4側をフォトレジスト(図示しない)で覆いアルゴンイオンが注入されないようにする。Pウエル層4に窒素イオンをイオン注入するときも同様に、Nウエル層5側をフォトレジスト(図示しない)で覆い、窒素イオンが注入されないようにする。
【0026】
次に、図6に示すように、酸化シリコン膜15を堆積した後、フォトリソグラフィ技術によりパターニングし、ソース・ドレイン領域12からの電極引き出しのために、電極プラグとなるタングステン膜16をコンタクトホール16a内に形成し、酸化シリコン膜15およびタングステン膜16上に配線(図示しない)を形成し、CMISを完成する。
【0027】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。まず、本発明者らは転位の発生メカニズムを検討するために、図7に示すようなサンプルを作製した。シリコン基板30の主面上にストライプ状にパターン化したマスク膜33を形成し、さらに、露出したシリコン基板30に先ほどと同様の条件でAsやBFを打ち込んだ。すなわち、シリコン基板30に窒素分子イオンを20〜40keV、濃度1〜3×1015(個/cm)で打ち込み、さらにヒ素イオンを50keV、濃度5×1014〜3×1015(個/cm)程度で打ち込んだ。また、別のサンプルではシリコン基板30にアルゴンイオンを20〜40keV、濃度0.5〜1.5×1015(個/cm)で打ち込み、さらにボロンイオンを30keV、濃度5×1014〜3×1015(個/cm)程度で打ち込んだ。
【0028】
上記シリコン基板30をアニールした後にTEM(transmission electron microscope)観察を行った結果、転位はまず、マスク膜33端部付近の非晶質化領域32と再結晶化領域31の界面でSPE(solid phase epitaxy:固相エピタキシャル)欠陥と呼ばれる微小欠陥が発生し、その後、このSPE欠陥34がマスク膜33の応力によりP/N接合を横切る大きな欠陥(転位)に成長することが判明している。
【0029】
ここで、微小欠陥の発生メカニズムを考察した結果を図7を用いて説明する。ソース・ドレイン領域の不純物打ち込み時に、シリコン基板30が非晶質化し、その後の活性化アニール時にこの非晶質化領域32が再結晶化する際、非晶質/単結晶Siから非晶質化領域32が再結晶化していく。この再結晶化速度には面方位依存性が存在するので、成長界面がぶつかりあい、その界面でSPE欠陥34が発生する。この再結晶化速度は(111)<(110)<(100)面の順で速くなり、特に(111)面の結晶化速度はその他の面に比べ極端に遅い。そのためこの(111)面の方向にSPE欠陥34が発生する。
【0030】
また、図8に示すように、ソース・ドレイン領域の不純物打ち込み時に、シリコン基板30が非晶質化し、その後の活性化アニール時にEOR(end of range)欠陥と呼ばれる欠陥が、AsやBFの不純物最高濃度近傍および、非晶質/単結晶Si近傍に発生し、マスク膜33端部近傍に発生したEOR欠陥35から転位が発生することもわかった。
これらの結果から、転位を抑制するにはSPE欠陥およびEOR欠陥を抑制することが重要であることが判明した。
【0031】
また、公知例において、窒素やアルゴンを打ち込んだ際に転位が抑制される理由について上記と同様な実験を行った結果、転位の起点となるSPE欠陥およびEOR欠陥が消滅されたためであることがTEM観察の結果から判明した。
【0032】
窒素やアルゴンをソース・ドレイン領域に打ち込むと、EOR欠陥が消滅され転位が抑制されることがわかったが、本方法により副作用が発生した場合、製品等に適用はできない。本方法ではソース・ドレイン領域に本来電気的に不要な物質を打ち込むので、打ち込んだ領域の膜質が変化することが考えられる。膜質が変化すると拡散抵抗が変化することが考えられる。拡散抵抗が上昇するとトランジスタ電流の低下やスイッチングスピードの低下を招く。ここで、窒素またはアルゴンを打ち込んだ場合の拡散抵抗の変化について検討した結果を図9、10に示す。図9はAs打ち込み領域に窒素またはアルゴンを打ち込んだ場合であり、図10はBF打ち込み領域に窒素またはアルゴンを打ち込んだ場合であって、活性化アニール後のものである。図9、10とも窒素、アルゴン濃度の上昇とともに拡散抵抗が大きくなる結果となっている。しかし、その拡散抵抗上昇の開始濃度は、Asを打ち込んだ場合では打ち込み種で異なり、アルゴンを打ち込んだ場合では低い濃度から拡散抵抗の上昇が認められた。BFを打ち込んだ場合では、窒素、アルゴンでその依存性に差はほとんどなかった。
【0033】
拡散抵抗は1.5〜2倍程度上昇するとその影響が発生するので、As打ち込み領域にアルゴンを打ち込んだ場合の許容打ち込み濃度は図11より、6×1014(個/cm)以下、As打ち込み領域に窒素を打ち込んだ場合は、3×1015(個/cm)以下となる。また、図12に示すように、BF打ち込み領域にアルゴン、窒素を打ち込んだ場合の許容打ち込み濃度は約1.5×1015(個/cm)以下となる。
【0034】
一方で転位を抑制できるアルゴン、窒素の濃度は、Asの場合で、1×1015(個/cm)以上、BFの場合でそれぞれ、5×1014(個/cm)、1.5×1015(個/cm)であることが実験から得られている。
【0035】
この結果から、転位を抑制しつつ、かつ拡散抵抗を抑制できる条件としては、図11に示すように、Asの打ち込みの場合、窒素打ち込み濃度は、1×1015〜3×1015(個/cm)の範囲であり、アルゴン打ち込み濃度範囲はない。また、BFの打ち込みの場合は、図12に示すように、窒素打ち込み濃度範囲はなく、アルゴン打ち込み濃度は、5×1014〜1.5×1015(個/cm)の範囲となった。
【0036】
すなわち、転位を抑制しつつ、かつ拡散抵抗を抑制する条件としては、NMISの場合には窒素を打ち込み、PMISの場合にはアルゴンを打ち込むようにする事が重要であることが明らかとなった。
【0037】
転位を抑制するには、EOR欠陥やSPE欠陥を窒素やアルゴン打ち込みにより消滅させることが重要である。転位に影響を与えるEOR欠陥やSPE欠陥は不純物の最高濃度深さRP1と同等もしくはこれより深い位置に形成されるので、窒素やアルゴンの最高濃度深さRP2は不純物のRP1以上の深さとすることが好ましい。
【0038】
(実施の形態2)
近年、歪Si等、半導体基板上にSiGeを含む層を堆積させ、その上にSiのエピタキシャル層を形成し、このSiエピタキシャル層にSiGeからの歪を与えて電気的特性を向上させる試みがなされている。これは、歪Siが高い電子移動度を有することにより、LSI等の素子の動作速度を向上することができるためである。本実施の形態では、SiGe層を有するCMISについて説明する。
【0039】
まず、図13に示すように、シリコン基板1上にIBS(ion beamsputtering:イオンビームスパッタリング)法によりSiGe層17を形成し、SiGe層17上にエピタキシャル成長によってシリコン層18を形成する。
【0040】
次に、シリコン層18に素子分離構造を形成するが、これ以降の工程は実施の形態1と同様に行なう。
【0041】
すなわち、まずシリコン層18に熱酸化膜2および埋め込み酸化膜3からなる素子分離構造を形成し、イオン注入によりPウエル層4およびNウエル層5を形成した後、ゲート電極7aを形成する。その後、Nウエル層5領域表面にボロン、Pウエル層4領域にヒ素を、それぞれ濃度1×1013(個/cm)程度で打ち込み、低濃度層9a、9bを形成する。なお、Nウエル層5に不純物をイオン注入するときは、Pウエル層4側をフォトレジスト(図示しない)で覆い不純物が注入されないようにする。Pウエル層4に不純物をイオン注入するときも同様に、Nウエル層5側をフォトレジスト(図示しない)で覆い、不純物が注入されないようにする。
【0042】
次に、ゲート電極7aの側面にサイドウォール10を形成し、Pウエル層4に窒素分子イオンをシリコン基板1中に20〜40keV、濃度1〜3×1015(個/cm)で打ち込み窒素打ち込み領域11を形成し、さらにヒ素イオンを50keV、濃度5×1014〜3×1015(個/cm)程度で打ち込んでソース・ドレイン領域12を形成する。その後、Nウエル層5にアルゴンイオンを20〜40keV、濃度0.5〜1.5×1015(個/cm)で打ち込み、アルゴン打ち込み領域13を形成し、さらにボロンイオンを30keV、濃度5×1014〜3×1015(個/cm)程度で打ち込みソース・ドレイン領域14を形成する。なお、Nウエル層5にアルゴンイオンをイオン注入するときは、Pウエル層4側をフォトレジスト(図示しない)で覆いアルゴンイオンが注入されないようにする。Pウエル層4に窒素イオンをイオン注入するときも同様に、Nウエル層5側をフォトレジスト(図示しない)で覆い、窒素イオンが注入されないようにする。
【0043】
その後、酸化シリコン膜15を堆積した後、フォトリソグラフィ技術によりパターニングし、電極プラグとなるタングステン膜16をコンタクトホール16a内に形成し、酸化シリコン膜15およびタングステン膜16上に配線(図示しない)を形成し、図14に示すCMISを完成する。
【0044】
以上のように、NMISに窒素を打ち込み、PMISにアルゴンを打ち込むことにより、素子内での転位を抑制しつつ、かつ拡散抵抗を抑制することができる。
【0045】
ここで、図14は、図13のSiGe層17を含む半導体基板を使用して素子を形成した場合の断面構造図であるが、SiGeの格子定数はシリコンの格子定数よりも大きいため、シリコン層18には引張りの歪みが印加される。このため、ソース・ドレイン領域14にはSiGeによる応力が素子形成前から既に発生しており、転位が発生しやすい状態である。よって、歪Si等を使用したCMIS素子には、本発明は特に有効である。
【0046】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0047】
たとえば、図16は、実施の形態2における図13とは異なる図15のSiGe基板40を使用して素子を形成した場合の断面構造図である。図15のSiGe基板40は、SOI(silicon on insulator)基板にSiGe層17を形成したものであり、シリコン基板1上にBOX酸化膜(buried oxide:埋め込み酸化膜)19、SiGe層17、シリコン層18が形成されている。図15のシリコン層18には、実施の形態2における図13のシリコン層18と同様の引張り応力が素子形成前から印加されている。
【0048】
ここで、SOI基板は、寄生容量を小さくし、トランジスタのスイッチングスピードを向上させる働きを有するものであり、一般的にSIMOX(silicon implanted oxide)という製法か、貼り合わせという製法によって形成される。
【0049】
図16に示すCMISは、実施の形態2における図14に示すCMISと同様に、素子形成前からソース・ドレイン領域14に応力がかかるため本発明は特に有効である。すなわち、本発明はソース・ドレイン領域に応力を発生させるようなプロセス・構造を採用した場合に特に有効となる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の半導体装置の製造方法は、CMIS構造を有する半導体素子の製造に幅広く利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置に含まれるCMISの製造方法を説明する要部断面図である。
【図2】図1に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図4】図3に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図5】図4に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図7】P/N接合を横切る微小欠陥(転位)の発生メカニズムを模式的に示した要部断面図である。
【図8】ソース・ドレインの不純物打ち込み後の活性化アニール時に発生したEOR欠陥を示す要部断面図である。
【図9】As打ち込み領域に窒素およびアルゴンを打ち込んだ場合の拡散抵抗の変化を示すグラフである。
【図10】BF打ち込み領域に窒素およびアルゴンを打ち込んだ場合の拡散抵抗の変化を示すグラフである。
【図11】As打ち込み領域に窒素およびアルゴンを打ち込んだ場合の拡散抵抗の変化を示すグラフである。
【図12】BF打ち込み領域に窒素およびアルゴンを打ち込んだ場合の拡散抵抗の変化を示すグラフである。
【図13】本発明の一実施の形態である半導体装置に含まれるCMISの製造方法を説明する要部断面図である。
【図14】本発明の一実施の形態である半導体装置に含まれるCMISの要部断面図である。
【図15】本発明を応用した半導体装置に含まれるCMISの製造方法を説明する要部断面図である。
【図16】本発明を応用した半導体装置に含まれるCMISの要部断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 シリコン基板
2 熱酸化膜
2a 浅溝
3 埋め込み酸化膜
4 Pウエル層
5 Nウエル層
6 ゲート酸化膜
7 多結晶シリコン膜
7a ゲート電極
8 第1の絶縁膜
9a、9b 低濃度層
10 サイドウォール
11 窒素打ち込み領域
12 ソース・ドレイン領域
13 アルゴン打ち込み領域
14 ソース・ドレイン領域
15 酸化シリコン膜
16 タングステン膜
16a コンタクトホール
17 SiGe層
18 シリコン層
19 BOX酸化膜
30 シリコン基板
31 再結晶化領域
32 非晶質化領域
33 マスク膜
34 SPE欠陥
35 EOR欠陥
40 SiGe基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板の主面に形成されたN型のMISトランジスタとP型のMISトランジスタとを備え、
前記N型のMISトランジスタと前記P型のMISトランジスタは、それぞれソース・ドレイン領域が具備された半導体装置であって、
前記N型のMISトランジスタのソース・ドレイン領域には窒素が、前記P型のMISトランジスタのソース・ドレイン領域にはアルゴンがそれぞれ混入されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記N型のMISトランジスタのソース・ドレイン領域に混入された前記窒素の最高濃度深さは、前記N型のMISトランジスタのソース・ドレイン領域に導入されたN型不純物の最高濃度深さ以上深く、前記P型のMISトランジスタのソース・ドレイン領域に混入された前記アルゴンの最高濃度深さは、前記P型のMISトランジスタのソース・ドレイン領域に導入されたP型不純物の最高濃度深さ以上深くされていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記N型およびP型のMISトランジスタ上に絶縁膜が堆積され、前記絶縁膜に形成された接続孔内に前記N型およびP型のMISトランジスタのゲート、ソースおよびドレイン領域と電気的に接続された電極プラグがそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体基板主面上にSiGe層が形成され、前記SiGe層上にSiを含むエピタキシャル層が形成され、前記エピタキシャル層に前記N型のMISトランジスタと前記P型のMISトランジスタがそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板の主面にSOI構造が形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
以下の工程を含む半導体装置の製造方法;
(a)半導体基板の主面にゲート絶縁膜を形成する工程、
(b)前記ゲート絶縁膜上にN型のMISトランジスタの第1ゲート電極およびP型のMISトランジスタの第2ゲート電極をそれぞれ形成する工程、
(c)前記(b)工程の後、前記第1ゲート電極をマスクにしてN型のMISトランジスタ形成領域の前記半導体基板にN型不純物を打ち込むことにより、前記第1ゲート電極の近傍の前記半導体基板にN型低濃度層を形成し、前記第2ゲート電極をマスクにしてP型のMISトランジスタ形成領域の前記半導体基板にP型不純物を打ち込むことにより、前記第2ゲート電極の近傍の前記半導体基板にP型低濃度層を形成する工程、
(d)前記(c)工程の後、前記第1および第2ゲート電極のそれぞれの側面に絶縁膜を形成する工程、
(e)前記絶縁膜および前記第1ゲート電極をマスクとして前記N型のMISトランジスタ形成領域の前記半導体基板にN型不純物および窒素を打ち込むことにより、前記第1ゲート電極の近傍の前記半導体基板に前記N型のMISトランジスタのソース・ドレイン領域を形成する工程、
(f)前記絶縁膜および前記第2ゲート電極をマスクとして前記P型のMISトランジスタ形成領域の前記半導体基板にP型不純物およびアルゴンを打ち込むことにより、前記第2ゲート電極の近傍の前記半導体基板に前記P型のMISトランジスタのソース・ドレイン領域を形成する工程。
【請求項7】
前記絶縁膜をマスクとして前記半導体基板のN型のMISトランジスタ形成領域に窒素とN型不純物を打ち込む際、窒素の最高濃度深さをN型不純物の最高濃度深さ以上深く打ち込み、
前記絶縁膜をマスクとして前記半導体基板のP型のMISトランジスタ形成領域にアルゴンとP型不純物を打ち込む際、アルゴンの最高濃度深さをP型不純物の最高濃度深さ以上深く打ち込むことを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体基板主面上にSiGe層を形成し、前記SiGe層上にSiを含むエピタキシャル層を形成し、前記エピタキシャル層に前記N型のMISトランジスタと前記P型のMISトランジスタを形成することを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記N型およびP型のMISトランジスタ上に絶縁膜を堆積し、前記絶縁膜に形成された接続孔内に前記N型およびP型のMISトランジスタのゲート、ソースおよびドレイン領域と電気的に接続された電極プラグをそれぞれ形成することを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記(e)工程において、前記半導体基板の前記N型のMISトランジスタ形成領域に窒素分子イオンを打ち込む際、窒素を打ち込み濃度1〜3×1015(個/cm)の範囲で打ち込み、
前記(f)工程において、前記半導体基板の前記P型のMISトランジスタ形成領域にアルゴンイオンを打ち込む際、アルゴンを打ち込み濃度0.5〜1.5×1015(個/cm)の範囲で打ち込むことを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記(e)工程において、前記N型不純物としてヒ素イオンを濃度5×1014〜3×1015(個/cm)の範囲で打ち込み、
前記(f)工程において、前記P型不純物としてボロンイオンを濃度5×1014〜3×1015(個/cm)程度で打ち込むことを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記(a)工程の前に、前記半導体基板主面上にSiGe層を形成し、前記SiGe層上にSiを含むエピタキシャル層を形成することを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記半導体基板にSOI構造を形成することを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−135553(P2010−135553A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309727(P2008−309727)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】