説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】ハイブリッド埋め込みプロセスを用いて、分離性能の高い素子分離構造を得る。
【解決手段】トランジスタ間を分離する素子分離構造13を有する半導体装置1の製造方法であって、素子分離構造13を形成する工程は、基板Wに形成された溝部15の底部に第1の絶縁部32を埋め込む工程と、第1の絶縁部32の上に第2の絶縁部34を埋め込む工程を有し、溝部15の底部に第1の絶縁部32を埋め込む工程は、第1の絶縁部32の材料31を基板Wの表面に成膜する工程と、溝部15の上部から第1の絶縁部32の材料31を除去する工程と、溝部15の上部において、溝部15の内壁に付着していた第1の絶縁部32の材料31の残留層32aを除去する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特にシャロートレンチアイソレーション(Shallow Trench Isolation:STI)を用いる半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造分野においては、動作速度の向上や低消費電力といった性能向上、製造コストの抑制などの観点から、ますます高集積化が求められている。高集積化のためには、基板の表面に形成されたトランジスタ間を分離する素子分離構造の微細化が重要である。近年、この素子分離構造を微細化させる技術としてSTIが採用されている。STIは、異方性エッチングで基板表面に形成された溝部に絶縁部を埋め込むことによって、素子分離構造を形成する技術である。
【0003】
STIで形成される素子分離構造に用いられる絶縁部には、従来からBPSG(boro phospho silicate
glass)法や、オゾンTEOS(tetra ethyl ortho silicate)法、USG(undoped silicate glass)法、HDP(high density plasma enhanced chemical vapor deposition)法等により成膜されたSiO2膜が用いられている。
【0004】
しかしながら、微細化に伴い、素子分離構造を形成する溝部のアスペクト比が非常に高くなっており、このアスペクト比の高い溝部を埋め込もうとすると、上述のBPSG法やオゾンTEOS法、HDP法等の手法で形成されたSiO2膜は、溝部の埋め込み性が悪いという問題が生じる。
【0005】
そこで、アスペクト比の高い溝部への埋め込み性を向上させるために、ポリシラザン溶液を基板の表面に塗布し、次いで熱処理を行うことによりSiOに変質させて形成されたSiO2膜を素子分離構造として用いることが検討されている。その理由は、ポリシラザン溶液は高い流動性を有するため、高アスペクト比の溝部を容易に埋め込むことができるからである。また、ポリシラザン溶液は下地依存性が弱いので、ボイドレス、あるいはシームレスの素子分離絶構造を容易に形成することができる。
【0006】
一方、ポリシラザン溶液中には流動性を高めるために多くの不純物が含まれている。この不純物の影響により、ポリシラザン溶液を焼成して得られる絶縁部は部分的に密度が低くなり、ウエットエッチング耐性が弱くなる。ところが、半導体装置の製造工程では、例えばゲート酸化膜の除去などでウエットエッチングが繰り返し行われる。ポリシラザン溶液を焼成して得られた絶縁部は、低密度な部分のウエットエッチング耐性が低いので、ウエットエッチングの際に部分的なエッチングが進行しやすく、ボイドが発生しやすい。その結果、トランジスタ間の分離性能が低下してしまう。
【0007】
そこで、このようなウエットエッチング耐性の低下といった不具合を回避するために、ハイブリッド埋め込みプロセスが検討されている(特開2006−156471号公報)。ハイブリッド埋め込みプロセスとは、素子分離溝部にポリシラザン溶液を焼成して得られた絶縁部を埋め込んだ後、溝部の上部からポリシラザン溶液由来の絶縁部を除去(エッチバック)し、溝部上部の未充填部分をHDPシリコン酸化膜等の緻密な絶縁膜で埋め込む技術である。
【特許文献1】特開2006−156471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1のハイブリッド埋め込みプロセスでは、溝部に埋め込んだポリシラザン溶液由来の絶縁部を溝上部から除去(エッチバック)するに際し、ウエットエッチングを行っていた。しかしながら、上述の様にポリシラザン溶液を焼成して得られた絶縁部は、低密度ゆえにウエットエッチング耐性が低く、エッチバックの際に溝部の底部に存在する絶縁部まで除去されてしまう心配があった。溝部の底部に存在する絶縁部まで除去されてしまうと、トランジスタ間の分離性能が低下してしまう。
【0009】
本発明の目的は、ハイブリッド埋め込みプロセスを用いて、分離性能の高い素子分離構造を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、トランジスタ間を分離する素子分離構造を有する半導体装置の製造方法であって、前記素子分離構造を形成する工程は、基板に形成された溝部の底部に第1の絶縁部を埋め込む工程と、前記第1の絶縁部の上に第2の絶縁部を埋め込む工程を有し、前記溝部の底部に前記第1の絶縁部を埋め込む工程は、前記第1の絶縁部の材料を基板の表面に成膜する工程と、前記溝部の上部から前記第1の絶縁部の材料を除去する工程と、前記溝部の上部において、前記溝部の内壁に付着していた前記第1の絶縁部の材料の残留層を除去する工程を有することを特徴とする、半導体装置の製造方法が提供される。
【0011】
前記第1の絶縁部の材料を基板の表面に成膜する工程は、ポリシラザン溶液を基板の表面に塗布する工程と、熱処理により、ポリシラザン溶液をSiOに変質させる工程を有していても良い。また、前記第1の絶縁部の材料を除去する工程は、反応性イオンエッチングにより行われ、前記残留層を除去する工程は、フッ化水素ガスおよびアンモニアガスにより、前記残留層を反応生成物に変質させる工程と、前記反応生成物を加熱して除去する工程を有しても良い。また、前記残留層を反応生成物に変質させる工程において、温度またはフッ化水素ガスおよびアンモニアガスの混合比が調節されても良い。また、前記第1の絶縁部の上に第2の絶縁部を埋め込む工程は、プラズマCVDによって行われても良い。
【0012】
また、本発明によれば、トランジスタ間を分離する素子分離構造を有する半導体装置であって、上記製造方法によって製造されたことを特徴とする、半導体装置が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、処理システムの制御コンピュータによって実行することが可能なプログラムが記録された記録媒体であって、前記プログラムは、前記制御コンピュータによって実行されることにより、前記処理システムに、上記のいずれかの製造方法を行わせるものであることを特徴とする、記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、近年の微細化に伴ってアスペクト比が非常に高くなっている素子分離構造についても、ハイブリッド埋め込みプロセスを用いて、分離性能の高い半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照にして説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
先ず、本発明方法によって製造される半導体装置1の部分的な構成の一例を、図1を参照に説明する。例えばP型シリコン(Si)ウェハよりなる基板Wには、Nソース11とNドレイン12が形成されており、それらNソース11とNドレイン12の間には、トランジスタ間を分離するための素子分離構造13が形成されている。
【0017】
素子分離構造13は、いわゆるハイブリッド埋め込みプロセスによって形成されたシャロートレンチアイソレーション(Shallow Trench Isolation:STI)に構成されている。即ち、素子分離構造13は、基板Wに形成された溝部15の底部に埋め込まれた第1の絶縁部16と、溝部15の上部において、この第1の絶縁部16の上に埋め込まれた第2の絶縁部17を有している。第1の絶縁部16は、シラザン溶液を基板Wの表面に塗布し、次いで熱処理を行うことによりSiOに変質させてSiO2膜からなる。第2の絶縁部17は、HDP SiO2膜等の緻密な絶縁膜からなる。
【0018】
基板Wの上層には、第1の層間絶縁膜20が形成されると共に、例えばSiO2膜よりなるゲート酸化膜21と、例えばポリシリコン膜よりなるゲート電極22とがこの順序で設けられている。更に、第1の層間絶縁膜20の上層にはメタル配線層をなすCu(銅)(あるいはAl(アルミニウム))の配線層23が形成されている。また、前述のNソース11およびNドレイン12と配線層23との間はW(タングステン)のプラグ層25にて接続されている。第1の層間絶縁膜20の上層には、第2の層間絶縁膜26が設けられ、この第2の層間絶縁膜26の上層には、例えば窒化膜よりなるハードマスク27を介して第3の層間絶縁膜28が形成されている。
【0019】
次に、半導体装置1が備える素子分離構造13を形成する工程を図2〜5を参照にして説明する。なお、理解を容易にさせるために、本発明に至るまでの経緯を含めて説明する。
【0020】
先ず、一般的なフォトリソグラフィー工程を経て、基板Wに溝部15が形成される。即ち、基板W上にシリコン熱酸化膜が形成され、更に、シリコン熱酸化膜上にCMPの研磨ストッパとなるシリコン窒化膜30が形成される。次に、基板W(シリコン窒化膜30)上にCVDシリコン酸化膜が形成され、更に、CVDシリコン酸化膜上にフォトレジスト膜が塗布される。次に、フォトレジス膜が所定のパターンに加工され、更に、加工されたフォトレジスト膜(レジストパターン)をマスクとして、CVDシリコン酸化膜がエッチングされ、ハードマスクが形成される。その後、フォトレジスト膜(レジストパターン)は、アッシング、エッチングにより除去される。次に、ハードマスク(CVDシリコン酸化膜)をマスクとして、シリコン窒化膜30、シリコン熱酸化膜、シリコン基板Wがエッチングされ、基板Wの表面に溝部15(シャロートレンチ)が形成される(図2(a))。エッチング後、弗酸蒸気によって、ハードマスクが除去される。なお、溝部15には、更に、シリコン熱酸化膜等が形成される場合もある。
【0021】
次に、基板Wの表面にポリシラザン溶液が塗布される。ポリシラザン溶液は、キシレン、ジブチルエーテル等の溶剤中に、過水素化シラザン(パーハイドロシラザン)重合体[(SiH2 NH)n ]を分散させることにより生成される。このポリシラザン溶液が、例えばスピンコーティング法により、基板Wの表面に塗布される。この場合、ポリシラザン溶液は、高い流動性を有し、下地依存性も弱いため、シャロートレンチのような高アスペクト比の溝部15の内部にも、ボイド等を生じさせずに埋め込まれる。
【0022】
次に、熱処理を行い、ポリシラザン溶液の塗布膜をSiO膜31に変質させる。こうして、第1の絶縁部の材料としてのSiO膜31を、溝部15の内部に埋め込んだ状態で基板Wの表面に成膜する(図2(b))。
【0023】
次に、シリコン窒化膜30をストッパとして、CMPプロセスにより、SiO膜31が研磨された後、更に、エッチングによって、溝部15の上部から第1の絶縁部の材料としてのSiO膜31が除去される。こうして、溝部15の底部のみにSiO膜31の一部からなる第1の絶縁部32が埋め込まれた状態となる(図2(c))。
【0024】
ここで、このように溝部15の上部から第1の絶縁部の材料としてのSiO膜31をエッチングで除去する場合、従来は、ウエットエッチングを行っていた。しかしながら、ポリシラザン溶液を焼成して得られたSiO膜31は、低密度のためウエットエッチング耐性が低く、エッチバックの際に溝部15の底部に存在するSiO膜31まで除去されてしまい、トランジスタ間の分離性能が低下する恐れがある。
【0025】
そこで本発明者は、溝部15の上部からSiO膜31を除去するに際し、反応性イオンエッチング(Reactive Ion
Etching; RIE)を採用することを試みた。反応性イオンエッチングは、イオンによるスパッタリングと、エッチングガスの化学反応を利用したエッチング技術であり、微細加工に適し、異方性エッチングも可能である。反応性イオンエッチングを利用することにより、溝部15の底部に第1の絶縁部32を残した状態で、溝部15の上部からSiO膜31を除去することが可能となる。
【0026】
しかしながら、このように反応性イオンエッチングを利用して、溝部15の上部からSiO膜31を除去した場合、溝部15の底部に第1の絶縁部32を残すことができるが、その一方で、溝部15に面しているシリコン窒化膜30の側壁30’が、反応性イオンエッチングによってテーパー状に削れてしまうといった、新たな問題が生じた(図2(c))。
【0027】
即ち、このようにシリコン窒化膜30’の側壁がテーパー状に削れた状態で、その後、プラズマCVDによって、第1の絶縁部32の上に第2の絶縁部の材料としてのHDP SiO膜33が埋め込まれる(図2(d))。次に、シリコン窒化膜30をストッパとして、CMPプロセスにより平坦化され、HDPシリコン酸化膜33が所定の形状の第2の絶縁部34となる(図2(e))。次に、例えばホット燐酸溶液により、シリコン窒化膜33が除去されて、素子分離構造13が形成される(図2(f))。
【0028】
しかしながら、このようにして製造された素子分離構造13にあっては、第2の絶縁部34の側面34’が横へ外側に突出したいわゆるオーバーハング形状となってしまう。このようにオーバーハング形状となった第2の絶縁部34は、その後に行われる成膜プロセスや、リソグラフィープロセス等の後工程に悪影響を及ぼす可能性がある。また、このようにオーバーハング形状となった第2の絶縁部34が形成されたことに起因して、デバイス歩留まりの低下、Gate長のばらつき、断線等の不良が発生する可能性もある。
【0029】
そこで次に、本発明者は、溝部15の上部から反応性イオンエッチングによってSiO膜31を除去するに際し、溝部15に面しているシリコン窒化膜30’の側壁が削れないように、SiO膜31をエッチングすることを試みた。
【0030】
即ち、先ず、一般的なフォトリソグラフィー工程を経て、基板Wに溝部15が形成される(図3(a))。次に、ポリシラザン溶液の塗布、熱処理を経て、第1の絶縁部の材料としてのSiO膜31が、溝部15の内部に埋め込まれた状態で基板Wの表面に成膜される(図3(b))。なお、これら図3(a)(b)の工程は、先に図2(a)(b)で説明した工程と同様である。
【0031】
次に、反応性イオンエッチングを利用することにより、溝部15の底部に第1の絶縁部32を残した状態で、溝部15の上部からSiO膜31を除去した。その際、処理ガスの成分、分圧、チャンバ内圧力、プラズマ状態、処理温度、エッチング時間などの種々のパラメータを調整することで、溝部15に面しているシリコン窒化膜30’の側壁がエッチングされるのを防止した(図3(c))。この場合、シリコン窒化膜30’の側壁の形状はテーパー状とならず、ほぼ垂直のままに保たれた。しかし一方で、シリコン窒化膜30’の側壁が削れないようなエッチング条件とした場合、溝部15の上部からSiO膜31を完全には除去できず、溝部15の上部において、溝部15の内壁面に第1の絶縁部32の残留層32aが残ってしまった。このように残留層32aを残したまま素子分離構造13を製造した場合、次に説明するように、更に別の新たな問題が生じた。
【0032】
即ち、このように溝部15の上部において、溝部15の内壁面に第1の絶縁部32の残留層32aが付着して残っている状態で、その後、プラズマCVDによって、第1の絶縁部32の上に第2の絶縁部の材料としてのHDP SiO膜33が埋め込まれる(図3(d))。次に、シリコン窒化膜30をストッパとして、CMPプロセスにより平坦化され、HDPシリコン酸化膜33が所定の形状の第2の絶縁部34となる(図3(e))。次に、例えば燐酸溶液により、シリコン窒化膜33が除去されて、素子分離構造13が形成される(図3(f))。
【0033】
しかしながら、このようにして製造された素子分離構造13にあっては、溝部15の上部において、第2の絶縁部34の側面と、溝部15の内壁面との間に、第1の絶縁部32の残留層32aが入り込んだ状態で残ってしまった。ところが、半導体装置1の製造では、後工程において、例えばゲート酸化膜の除去などの目的でウエットエッチングが繰り返し行われる。そのようなウエットエッチングの際に、第2の絶縁部34の側面と溝部15の内壁面との間に残っていた第1の絶縁部32の残留層32aを通じて、エッチング液xが浸み込み、第2の絶縁部34の側面と溝部15の内壁面との間に隙間が生じるとともに、溝部15の底部に埋め込まれていた第1の絶縁部32がエッチングされてしまう(図3(f))。これにより、素子分離構造13の分離性能が低下してしまう。
【0034】
そこで次に、本発明者は、溝部15の内壁面に付着している第1の絶縁部32の残留層32aをウエットエッチングで除去することを試みた。
【0035】
即ち、先ず、一般的なフォトリソグラフィー工程を経て、基板Wに溝部15が形成される(図4(a))。次に、ポリシラザン溶液の塗布、熱処理を経て、第1の絶縁部の材料としてのSiO膜31が、溝部15の内部に埋め込まれた状態で基板Wの表面に成膜される(図4(b))。次に、反応性イオンエッチングを利用して、溝部15の上部からSiO膜31が除去される。この場合、溝部15の上部の内壁面に第1の絶縁部32の残留層32aがまだ付着して残っている状態でSiO膜31のエッチングを停止させることにより、溝部15に面しているシリコン窒化膜30’の側壁の形状をテーパー状とせず、ほぼ垂直のままに保つことができる(図4(c))。なお、これら図4(a)(b)(c)の工程は、先に図3(a)(b)(c)で説明した工程と同様である。
【0036】
次に、ウエットエッチングを利用することにより、溝部15の内壁面に付着している第1の絶縁部32の残留層32aを除去した。しかしながら、残留層32aをウエットエッチングで除去した場合、残留層32aのみならず、溝部15の底部に埋め込まれていた第1の絶縁部32まで一緒にエッチングされ、更に、第1の絶縁部32中の低密度部分にボイドが形成されてしまった。
【0037】
そこで、本発明者は、このように溝部15の内壁面に付着している第1の絶縁部32の残留層32aを除去する工程について、更なる検討を重ねた。その結果、フッ化水素ガスおよびアンモニアガスにより、残留層32aを先ず反応生成物32bに変質させ、その後、変質させた反応生成物32bを加熱して除去することにより、溝部15の底部に第1の絶縁部32を残したまま、残留層32aのみを除去することができるという新規な知見を得た。
【0038】
ここで先ず、フッ化水素ガスおよびアンモニアガスにより、残留層32aを反応生成物32bに変質させる工程(COR処理工程)と、変質させた反応生成物32bを加熱して除去する工程(PHT処理工程)を行う処理システム100について説明する。図5に示すように、処理システム100は、基板Wを処理システム100に対して搬入出させる搬入出部101、搬入出部101に隣接させて設けられた2つのロードロック室102、各ロードロック室102にそれぞれ隣接させて設けられ、反応生成物32bを加熱して除去する工程を行うPHT(Post Heat Treatment)処理装置103、各PHT処理装置103にそれぞれ隣接させて設けられ、残留層32aを反応生成物32bに変質させる工程を行うCOR(Chemical Oxide Removal)処理装置104、処理システム100の各部に制御命令を与える制御コンピュータ105を有している。各ロードロック室102に対してそれぞれ連結されたPHT処理装置103、COR処理装置104は、ロードロック室102側からこの順に一直線上に並べて設けられている。
【0039】
搬入出部101は、基板Wを搬送する第一のウェハ搬送機構110が内部に設けられた搬送室111を有している。ウェハ搬送機構110は、基板Wを略水平に保持する2つの搬送アーム110a、110bを有している。搬送室111に隣接して、基板Wを複数枚並べて収容可能なキャリア112を載置する載置台113が配置されている。また、搬送室111の側方には、基板Wを回転させて偏心量を光学的に求めて位置合わせを行うオリエンタ114が設置されている。
【0040】
かかる搬入出部101において、基板Wは、搬送アーム110a、110bによって保持され、基板搬送装置110の駆動により略水平面内で回転及び直進移動、また昇降させられることにより、所望の位置に搬送させられる。そして、載置台113上のキャリア112、オリエンタ114、ロードロック室102に対して、搬送アーム110a、110bによって、基板Wが搬入出させられるようになっている。
【0041】
各ロードロック室102と搬送室111との間にそれぞれゲートバルブ115が備えられている。各ロードロック室102内には、基板Wを搬送する第二の基板搬送機構116が設けられている。この第二の基板搬送機構116は、基板Wを略水平に保持する搬送アーム117を有している。また、ロードロック室102は真空引き可能になっている。
【0042】
かかるロードロック室102において、基板Wは、搬送アーム117によって保持され、基板搬送機構116の駆動により略水平面内で回転及び直進移動、また昇降させられることにより搬送させられる。そして、各ロードロック室102に対して縦列に連結されたPHT処理装置103に対して搬送アーム117が進退させられることにより、PHT処理装置103に対して基板Wが搬入出させられる。さらに、各PHT処理装置103を介してCOR処理装置104に対して、搬送アーム117が進退させられることにより、COR処理装置104に対して基板Wが搬入出させられるようになっている。
【0043】
PHT処理装置103の内部は、基板Wを収納する密閉構造の処理室(処理空間)120に構成されている。また、図示はしないが、基板Wをロードロック室102と処理室120の間で搬入出させるための搬入出口が設けられており、この搬入出口を開閉するゲートバルブ121が、ロードロック室102と処理室120の間に設けられている。
【0044】
COR処理装置104の内部は、基板Wを収納する密閉構造の処理室(処理空間)122に構成されている。また、基板WをPHT処理装置103の処理室120とCOR処理装置104の処理室122の間で搬入出させるための搬入出口123(図7参照)が設けられており、この搬入出口123を開閉するゲートバルブ124が、PHT処理装置103とCOR処理装置104の間に設けられている。
【0045】
図6に示すように、PHT処理装置103の処理室120内には、基板Wを略水平にして載置させる載置台130が設けられている。さらに、処理室120内に例えば窒素ガス(N)などの不活性ガスを加熱して供給する供給路131を備えた供給機構132、処理室120内を排気する排気路133を備えた排気機構134が備えられている。供給路131は窒素ガスの供給源135に接続されている。また、供給路131には、供給路131の開閉動作及び窒素ガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁136が設けられている。排気路133には、開閉弁137、強制排気を行うための排気ポンプ138が設けられている。
【0046】
なお、PHT処理装置103のゲートバルブ121、流量調整弁136、開閉弁137、排気ポンプ138等の各部の動作は、制御コンピュータ105の制御命令によってそれぞれ制御されるようになっている。即ち、供給機構132による窒素ガスの供給、排気機構134による排気などは、制御コンピュータ105によって制御される。
【0047】
図7に示すように、COR処理装置104は、密閉構造のチャンバー140を備えており、チャンバー140の内部が、前述の処理室122になっている。処理室122の内部には、基板Wを略水平にした状態で載置させる載置台14141が設けられている。
【0048】
載置台141は、平面視において略円形をなしており、チャンバー140の底部に固定されている。載置台141の内部には、載置台141の温度を調節する温度調節器142が設けられている。温度調節器142は、例えば温調用の液体(例えば水など)が循環させられる管路を備えており、かかる管路内を流れる液体と熱交換が行われることにより、載置台141の上面の温度が調節され、さらに、載置台141と載置台141上の基板Wとの間で熱交換が行われることにより、基板Wの温度が調節されるようになっている。なお、温度調節器142はかかるものに限定されず、例えば抵抗熱を利用して載置台141および基板Wを加熱する電気ヒータ等であっても良い。
【0049】
また、COR処理装置104には、処理室122内にガスを供給する供給機構143、処理室122内を排気する排気機構144が設けられている。
【0050】
チャンバー140の側壁部には、基板Wを処理室122内に搬入出させるための前述した搬入出口123が設けられており、この搬入出口123を開閉するゲートバルブ124が設けられている。また、チャンバー140の天井部には、処理室122内に処理ガスを吐出させる複数の吐出口を有するシャワーヘッド150が備えられている。
【0051】
供給機構143は、処理室122内にフッ化水素ガス(HF)を供給するフッ化水素ガス供給路151、処理室122内にアンモニアガス(NH)を供給するアンモニアガス供給路152、処理室122内に不活性ガスとしてアルゴンガス(Ar)を供給するアルゴンガス供給路153、処理室122内に不活性ガスとして窒素ガス(N)を供給する窒素ガス供給路154を備えている。フッ化水素ガス供給路151、アンモニアガス供給路152、アルゴンガス供給路153、窒素ガス供給路154は、シャワーヘッド150に接続されており、処理室122内には、シャワーヘッド150を介してフッ化水素ガス、アンモニアガス、アルゴンガス、窒素ガスが拡散されて吐出される。
【0052】
フッ化水素ガス供給路151は、フッ化水素ガスの供給源160に接続されている。また、フッ化水素ガス供給路151には、フッ化水素ガス供給路151の開閉動作及びフッ化水素ガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁161が設けられている。アンモニアガス供給路152はアンモニアガスの供給源162に接続されている。また、アンモニアガス供給路152には、アンモニアガス供給路152の開閉動作及びアンモニアガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁163が設けられている。アルゴンガス供給路153はアルゴンガスの供給源164に接続されている。また、アルゴンガス供給路153には、アルゴンガス供給路153の開閉動作及びアルゴンガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁165が設けられている。窒素ガス供給路154は窒素ガスの供給源166に接続されている。また、窒素ガス供給路154には、窒素ガス供給路154の開閉動作及び窒素ガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁167が設けられている。
【0053】
排気機構144は、開閉弁170、強制排気を行うための排気ポンプ171を備える排気路172を有している。排気路172の上流端部は、チャンバー140の底部に開口している。
【0054】
なお、COR処理装置104のゲートバルブ124、温度調節器142、流量調整弁161、163、165、167、開閉弁170、排気ポンプ171等の各部の動作は、制御コンピュータ105の制御命令によってそれぞれ制御されるようになっている。即ち、供給機構143によるフッ化水素ガス、アンモニアガス、アルゴンガス、窒素ガスの供給、排気機構144による排気、温度調節器142による温度調節などは、制御コンピュータ105によって制御される。
【0055】
処理システム100の各機能要素は、処理システム100全体の動作を自動制御する制御コンピュータ105に、信号ラインを介して接続されている。ここで、機能要素とは、例えば前述した基板搬送機構110、116、PHT処理装置103のゲートバルブ121、流量調整弁136、排気ポンプ138、COR処理装置104のゲートバルブ124、温度調節器142、流量調整弁161、163、165、167、開閉弁170、排気ポンプ171等の、所定のプロセス条件を実現するために動作する総ての要素を意味している。制御コンピュータ105は、典型的には、実行するソフトウェアに依存して任意の機能を実現することができる汎用コンピュータである。
【0056】
図5に示すように、制御コンピュータ105は、CPU(中央演算装置)を備えた演算部105aと、演算部105aに接続された入出力部105bと、入出力部105bに挿着され制御ソフトウェアを格納した記録媒体105cと、を有する。この記録媒体105cには、制御コンピュータ105によって実行されることにより処理システム100に後述する所定の基板処理を行わせる制御ソフトウェア(プログラム)が記録されている。制御コンピュータ105は、該制御ソフトウェアを実行することにより、処理システム100の各機能要素を、所定のプロセスレシピにより定義された様々なプロセス条件(例えば、処理室120、122の圧力等)が実現されるように制御する。
【0057】
記録媒体105cは、制御コンピュータ105に固定的に設けられるもの、あるいは、制御コンピュータ105に設けられた図示しない読み取り装置に着脱自在に装着されて該読み取り装置により読み取り可能なものであっても良い。最も典型的な実施形態においては、記録媒体105cは、処理システム100のメーカーのサービスマンによって制御ソフトウェアがインストールされたハードディスクドライブである。他の実施形態においては、記録媒体105cは、制御ソフトウェアが書き込まれたCD−ROM又はDVD−ROMのような、リムーバブルディスクである。このようなリムーバブルディスクは、制御コンピュータ105に設けられた図示しない光学的読取装置により読み取られる。また、記録媒体105cは、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)のいずれの形式のものであっても良い。さらに、記録媒体105cは、カセット式のROMのようなものであっても良い。要するに、コンピュータの技術分野において知られている任意のものを記録媒体105cとして用いることが可能である。なお、複数の処理システム100が配置される工場においては、各処理システム100の制御コンピュータ105を統括的に制御する管理コンピュータに、制御ソフトウェアが格納されていても良い。この場合、各処理システム100は、通信回線を介して管理コンピュータにより操作され、所定のプロセスを実行する。
【0058】
次に、以上のように構成された処理システム100を用いた残留層32aの除去工程について説明する。
【0059】
即ち、先ず、一般的なフォトリソグラフィー工程を経て、基板Wに溝部15が形成される(図8(a))。次に、ポリシラザン溶液の塗布、熱処理を経て、第1の絶縁部の材料としてのSiO膜31が、溝部15の内部に埋め込まれた状態で基板Wの表面に成膜される(図8(b))。次に、反応性イオンエッチングを利用して、溝部15の上部からSiO膜31が除去される。この場合、溝部15の上部の内壁面に第1の絶縁部32の残留層32aがまだ付着して残っている状態でSiO膜31のエッチングを停止させることにより、溝部15に面しているシリコン窒化膜30’の側壁の形状をテーパー状とせず、ほぼ垂直のままに保つことができる(図8(c))。なお、これら図8(a)(b)(c)の工程は、先に図4(a)(b)(c)で説明した工程と同様である。
【0060】
次に、フッ化水素ガスおよびアンモニアガスにより、残留層32aを先ず反応生成物32bに変質させ、その後、変質させた反応生成物32bを加熱して除去することにより、溝部15の底部に第1の絶縁部32を残したまま、残留層32aのみを除去する
【0061】
即ち、図8(c)に示したように溝部15の内壁面にまだ第1の絶縁部32の残留層32aが付着している基板Wが、キャリア112内に収納されて、図5で説明した処理システム100に搬送される。
【0062】
処理システム100では、基板搬送機構110によってキャリア112から一枚の基板Wが取り出され、ロードロック室102に搬入される。ロードロック室102にウェハWが搬入されると、ロードロック室102が密閉され、減圧される。その後、ゲートバルブ121、124が開かれ、いずれも減圧されているロードロック室102、PHT処理装置103の処理室120、COR処理装置104の処理室122が、互いに連通させられる。基板Wは、基板搬送機構117によってロードロック室102から搬出され、PHT処理装置103の処理室120内を通過するように直進移動させられ、COR処理装置104の処理室122内に搬入される。
【0063】
COR処理装置104の処理室122内において、基板Wは、デバイス形成面を上面とした状態で、載置台141上に受け渡される。その後、搬入出口123が閉じられ、処理室122内が密閉される。
【0064】
処理室122内が密閉された後、処理室122内には、アンモニアガス供給路152、アルゴンガス供給路153、窒素ガス供給路154からそれぞれアンモニアガス、アルゴンガス、窒素ガスが供給される。また、処理室122内の圧力は、大気圧よりも低圧状態にされる。さらに、載置台142上の基板Wの温度は、温度調節器142によって所定の目標値(例えば約35℃程度)に調節される。
【0065】
その後、フッ化水素ガス供給路151から処理室122内にフッ化水素ガスが供給される。ここで処理室122内には、予めアンモニアガスが供給されているので、フッ化水素ガスを供給することにより、処理室122内の雰囲気はフッ化水素ガスとアンモニアガスとを含む混合ガスからなる処理雰囲気にされる。こうして処理室122内の基板Wの表面に混合ガスが供給されることで、基板Wに対してCOR処理が行われる。
【0066】
処理室122内の低圧状態の処理雰囲気によって、基板W表面の溝部15の内壁面に付着している第1の絶縁部32の残留層32aは、混合ガス中のフッ化水素ガスの分子及びアンモニアガスの分子と化学反応して、反応生成物32bに変質させられる(図8(d))。この場合、反応生成物としては、フルオロケイ酸アンモニウムや水分等の混合物が生成される。
【0067】
なお、この化学反応は等方的に進行するので、溝部15の内壁面に付着している第1の絶縁部32の残留層32aのみならず、第1の絶縁部32の上面も部分的に反応生成物32bに変質させられる。しかしながら、第1の絶縁部32の上面から所定の深さのところで反応が飽和し、第1の絶縁部32の内部までは、化学反応が進行しない。
【0068】
COR処理中は、各処理ガスの供給流量、不活性ガスの供給流量、排気流量等を調節することにより、混合ガス(処理雰囲気)が大気圧より減圧された一定の圧力(例えば約80mTorr(約10.7Pa)程度)に維持されるように調節する。また、混合ガス中のフッ化水素ガスの分圧は、約15mTorr(約2.00Pa)以上になるように調節しても良い。また、反応生成物32b中のフルオロケイ酸アンモニウムの昇華点は約100℃であり、基板Wの温度を100℃以上にすると、反応生成物32bの生成が良好に行われなくなるおそれがある。そのため、基板Wの温度は約100℃未満にすることが好ましい。
【0069】
上記の化学反応が飽和状態になる深さは、変質させる対象物である残留層32a(第1の絶縁部32)の種類、混合ガスの温度、混合ガス中のフッ化水素ガスの分圧等に依存する。即ち、残留層32aの種類に応じて、基板Wの温度、フッ化水素ガスの分圧をそれぞれ調節することで、化学反応が飽和状態になる深さ、反応生成物32bの生成量等を制御することができ、ひいては、後に詳細に説明するPHT処理後の第1の絶縁部32の上面のエッチング量を制御することができる。
【0070】
溝部15の内壁面に付着していた第1の絶縁部32の残留層32aが反応生成物32bに十分に変質され、COR処理が終了すると、処理室122内が強制排気されて減圧される。これにより、フッ化水素ガスやアンモニアガスが処理室122内から強制的に排出される。この強制排気が終了すると、搬入出口123が開口させられ、基板Wは基板搬送機構117によって処理室122内から搬出され、PHT処理装置103の処理室120内に搬入される。
【0071】
PHT処理装置103において、基板Wは表面を上にした状態で処理室120内の載置台130に載置される。処理室120内が密閉され、処理室120内が排気されながら、高温の加熱ガスが処理室120内に供給され、処理室120内が昇温される。これにより、上記COR処理によって生じた反応生成物32bが加熱されて昇華(気化)し、溝部15内から排出される(図8(e))。即ち、溝部15の内壁面に付着していた第1の絶縁部32の残留層32aが除去され、溝部15の底部に第1の絶縁部32のみが埋め込まれた状態となる。
【0072】
こうして、COR処理の後にPHT処理を実施することで、溝部15の内壁面に付着していた第1の絶縁部32の残留層32aが除去され、溝部15の底部に第1の絶縁部32のみが埋め込まれた状態とすることができる。なお、前述したCOR処理においては、第1の絶縁部32の上面に対しても、混合ガスとの化学反応が若干生じるため、第1の絶縁部32の上面が変質させられて少量の反応生成物32bが生じているが、前述したように、反応生成物32bに変質させる化学反応は所定の深さのところで飽和するため、第1の絶縁部32の上面が変質させられる深さは、非常に少ない。そのため、その後のPHT処理によって第1の絶縁部32の上面(反応生成物32b)が除去される深さ、即ちエッチング量は、第1の絶縁部32の全体の深さに比較して非常に少ない量に抑えられる。なお、このように第1の絶縁部32の上面から反応生成物32bとなってエッチング除去される量は、COR処理において混合ガス中のアンモニアガスの分圧、フッ化水素ガスの分圧等を調節することで、抑制することができる。
【0073】
PHT処理が終了すると、加熱ガスの供給が停止され、PHT処理装置103の搬入出口が開かれる。その後、基板Wは基板搬送機構117によって処理室120から搬出され、ロードロック室102に戻される。そして、ロードロック室102が密閉された後、ロードロック室102と搬送室111とが連通させられる。そして、基板搬送機構110によって、基板Wがロードロック室102から搬出され、載置台113上のキャリア112に戻される。以上のようにして、処理システム100における一連のエッチング工程が終了する。
【0074】
こうして、処理システム100において、溝部15の内壁面に付着していた第1の絶縁部32の残留層32aが除去された基板Wに対して、他の処理システムにおいて、第1の絶縁部32の上に第2の絶縁部を埋め込む工程が行われる。
【0075】
即ち、残留層32aが除去された基板Wは、例えばCVD装置等の成膜装置に搬入され、先ず、ウェハWに対して成膜処理が行われる。例えばプラズマCVDによって、第1の絶縁部32の上に第2の絶縁部の材料としてのHDP SiO膜33が埋め込まれる(図8(f))。次に、シリコン窒化膜30をストッパとして、CMPプロセスにより平坦化され、HDP SiO膜33が所定の形状の第2の絶縁部34となる(図8(g))。次に、例えばホット燐酸溶液により、シリコン窒化膜33が除去されて、素子分離構造13が形成される(図8(h))。
【0076】
こうして製造された素子分離構造13にあっては、シリコン窒化膜30’の側壁の形状がほぼ垂直のままに保たれていたために、第2の絶縁部34の側面34’がほぼ垂直の形状となる。このため、その後に行われる成膜プロセスや、リソグラフィープロセス等の後工程に悪影響を及ぼす心配の無い素子分離構造13を得ることができる。
【0077】
また、溝部15の内壁面に第1の絶縁部32の残留層32aが残っていないので、後工程で行われるウエットエッチングの際、素子分離構造13の上部は、HDP SiO膜33からなる第2の絶縁部34によって保護される。これにより、マルチオキサイドプロセスのように、素子分離構造13が複数回ウエットエッチングに曝される場合でも、分離性能を維持できる。
【0078】
その後、周知のトランジスタ等の素子を形成する工程が続き、先に図1で説明した半導体装置1が得られる。トランジスタは、例えば、トレンチDRAMまたはトレンチDRAM混載(混載LSI)中のメモリセル中のトランジスタである。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、シャロートレンチアイソレーションを用いた半導体装置の製造分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】半導体装置の部分的な構成の一例の説明図である。
【図2】本発明に至る過程における、素子分離構造を形成する工程の説明図である。
【図3】本発明に至る過程における、素子分離構造を形成する工程の説明図である。
【図4】本発明に至る過程における、素子分離構造を形成する工程の説明図である。
【図5】処理システムの概略平面図である。
【図6】PHT処理装置の構成を示した説明図である。
【図7】COR処理装置の構成を示した説明図である。
【図8】本発明の実施の形態にかかる、素子分離構造を形成する工程の説明図である。
【符号の説明】
【0082】
W 基板
1 半導体装置
13 素子分離構造
15 溝部
16 第1の絶縁部
17 第2の絶縁部
30 シリコン窒化膜
32a 残留層
34 第2の絶縁部
32b 反応生成物
100 処理システム
101 搬入出部
102 ロードロック室102
103 PHT処理装置
104 COR処理装置
105 制御コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタ間を分離する素子分離構造を有する半導体装置の製造方法であって、
前記素子分離構造を形成する工程は、
基板に形成された溝部の底部に第1の絶縁部を埋め込む工程と、
前記第1の絶縁部の上に第2の絶縁部を埋め込む工程を有し、
前記溝部の底部に前記第1の絶縁部を埋め込む工程は、
前記第1の絶縁部の材料を基板の表面に成膜する工程と、
前記溝部の上部から前記第1の絶縁部の材料を除去する工程と、
前記溝部の上部において、前記溝部の内壁に付着していた前記第1の絶縁部の材料の残留層を除去する工程を有することを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の絶縁部の材料を基板の表面に成膜する工程は、
ポリシラザン溶液を基板の表面に塗布する工程と、
熱処理により、ポリシラザン溶液をSiOに変質させる工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記溝部の上部から前記第1の絶縁部の材料を除去する工程は、反応性イオンエッチングにより行われ、
前記残留層を除去する工程は、
フッ化水素ガスおよびアンモニアガスにより、前記残留層を反応生成物に変質させる工程と、
前記反応生成物を加熱して除去する工程を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記残留層を反応生成物に変質させる工程において、温度またはフッ化水素ガスおよびアンモニアガスの混合比が調節されることを特徴とする、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の絶縁部の上に第2の絶縁部を埋め込む工程は、プラズマCVDによって行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
トランジスタ間を分離する素子分離構造を有する半導体装置であって、
請求項1〜4のいずれかの製造方法によって製造されたことを特徴とする、半導体装置。
【請求項7】
処理システムの制御コンピュータによって実行することが可能なプログラムが記録された記録媒体であって、
前記プログラムは、前記制御コンピュータによって実行されることにより、前記処理システムに、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法を行わせるものであることを特徴とする、記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−64956(P2009−64956A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231408(P2007−231408)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】