説明

半導体装置及びその作製方法

【課題】トランジスタを構成する各部材の抵抗を小さくし、トランジスタのオン電流の向上を図り、集積回路の高性能化を図ることを課題の一とする。
【解決手段】単結晶半導体基板上に絶縁層を介して設けられ、素子分離絶縁層によって素子分離されたn型FET及びp型FETを有する半導体装置であって、それぞれのFETは、半導体材料を含むチャネル形成領域と、チャネル形成領域に接し、半導体材料を含む導電性領域と、導電性領域に接する金属領域と、チャネル形成領域に接するゲート絶縁層と、ゲート絶縁層に接するゲート電極と、金属領域を一部に含むソース電極またはドレイン電極と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、半導体装置及びその作製方法に関する。
【0002】
なお、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能する素子及び装置全般を指すものである。
【背景技術】
【0003】
集積回路の高性能化(高速化、低消費電力化)を図るために、トランジスタの微細化が進められている。
【0004】
トランジスタとして電界効果トランジスタ(FET;Field Effect Transistor)を用いて微細化を行う際、スケーリング則に沿ったチャネル長の短縮、ゲート絶縁膜の薄膜化、等により、トランジスタの微細化が追求されてきている。
【0005】
微細化の進行に伴い、顕在化する短チャネル効果を抑制するために、半導体層中の不純物濃度を制御することによってトランジスタのしきい値電圧を制御することが行われる。しかしながら半導体層中の不純物濃度を制御することは、キャリアの不純物散乱等に起因するオン電流(電流駆動力)の低下を招いてしまう。そのため、トランジスタを構成する各部材(ソース領域、ドレイン領域、配線等)の抵抗を予め小さくすることは、非常に有効である。なおトランジスタを構成する各部材の抵抗によるオン電流の低下への影響は、微細化が進行するほど顕著になる。
【0006】
電界効果トランジスタの一例として特許文献1には、SOI(Silicon on Insulator)技術を用いて絶縁層の上に単結晶半導体層が設けられた電界効果トランジスタについて開示がなされている。特許文献1のSOI構造の電界効果トランジスタは、ソース領域及びドレイン領域に金属と半導体材料との合金でなるシリサイド領域を設け、電界効果トランジスタと配線とのコンタクト抵抗の低減を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開2008/0308867号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の電界効果トランジスタの構成では、シリサイド材料を用いてコンタクト抵抗の低減をしているものの、トランジスタを構成する各部材の抵抗をさらに小さくするには、まだ改善の余地がある。
【0009】
そこで、開示する発明の一態様は、トランジスタを構成する各部材の抵抗を小さくすることを課題の一つとする。または、トランジスタを構成する各部材の抵抗を小さくし、トランジスタのオン電流の向上を図り、集積回路の高性能化を図ることを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、半導体材料を含むチャネル形成領域と、チャネル形成領域に接し、半導体材料を含む導電性領域と、導電性領域に接する金属領域と、チャネル形成領域に接するゲート絶縁層と、ゲート絶縁層に接するゲート電極と、金属領域を一部に含むソース電極またはドレイン電極と、を有する半導体装置である。
【0011】
本発明の一態様において、ゲート絶縁層とチャネル形成領域の接触界面が、金属領域と導電性領域との接触界面より上方に存在する半導体装置でもよい。
【0012】
本発明の一態様は、半導体材料を含むチャネル形成領域と、チャネル形成領域に接し、半導体材料を含む導電性領域と、導電性領域に接し、半導体材料の金属化合物を含む金属化合物領域と、金属化合物領域に接する金属領域と、チャネル形成領域に接するゲート絶縁層と、ゲート絶縁層に接するゲート電極と、金属領域を一部に含むソース電極またはドレイン電極と、を有し、金属化合物を構成する金属元素と、金属領域を構成する金属元素とは同一である半導体装置である。
【0013】
本発明の一態様において、ゲート電極の一部に、金属化合物を含む領域を有する半導体装置でもよい。
【0014】
本発明の一態様において、導電性領域に添加された導電型を付与する不純物元素の濃度は、1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下である半導体装置でもよい。
【0015】
本発明の一態様において、導電性領域は、チャネル形成領域に接する低導電性領域と、低導電性領域に接する高導電性領域を有し、低導電性領域に添加された導電型を付与する不純物元素の濃度は1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下であり、高導電性領域に添加された導電型を付与する不純物元素の濃度より小さい濃度である半導体装置でもよい。
【0016】
本発明の一態様において、金属領域が、導電性領域と重畳しない領域にも存在する半導体装置でもよい。
【0017】
本発明の一態様において、チャネル形成領域は、絶縁層上に存在する半導体層中に形成された半導体装置でもよい。
【0018】
本発明の一態様において、上部に絶縁層が設けられたべース基板を有する半導体装置でもよい。
【0019】
本発明の一態様において、ベース基板は、ガラス基板、単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板、又は太陽電池グレードシリコン基板のいずれか一である半導体装置でもよい。
【0020】
本発明の一態様は、半導体材料を含む領域に接するゲート絶縁層と、ゲート絶縁層に接するゲート電極と、ゲート電極と重畳するチャネル形成領域と、チャネル形成領域に接する導電性領域と、を形成し、導電性領域の一部を除去し、導電性領域の一部が除去された領域に金属層を形成して、導電性領域と接する金属領域を形成し、金属領域を一部に含むソース電極またはドレイン電極を形成する半導体装置の作製方法である。
【0021】
本発明の一態様は、半導体材料を含む領域に接するゲート絶縁層と、ゲート絶縁層に接するゲート電極と、ゲート電極と重畳するチャネル形成領域と、チャネル形成領域に接する導電性領域と、を形成し、導電性領域に接する金属層を形成することで、導電性領域に接し、半導体材料の金属化合物を含む金属化合物領域と、金属化合物領域に接する金属領域と、を形成する半導体装置の作製方法である。
【0022】
本発明の一態様において、金属層をゲート電極に接するように形成することで、ゲート電極の一部に金属化合物を含む領域を形成する半導体装置の作製方法でもよい。
【0023】
本発明の一態様において、導電型を付与する不純物元素を1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下の濃度で添加することにより、導電性領域を形成する半導体装置の作製方法でもよい。
【0024】
本発明の一態様において、導電型を付与する不純物元素を1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下の濃度で添加することにより、導電性領域の一部である低導電性領域を形成し、導電型を付与する不純物元素を低導電性領域より高濃度となるよう添加することにより、導電性領域の一部である高導電性領域を形成する半導体装置の作製方法でもよい。
【0025】
本発明の一態様において、金属層を、導電性領域と重畳しない領域にも形成する半導体装置の作製方法でもよい。
【0026】
本発明の一態様において、半導体材料を含む領域を、絶縁層上に形成する半導体装置の作製方法でもよい。
【0027】
本発明の一態様において、Hイオンが照射されたボンド基板を絶縁層を介してベース基板に貼り合わせ、ボンド基板から分離されたボンド基板の一部の膜をベース基板に形成することにより、絶縁層を介してベース基板上に、半導体材料となる半導体膜を形成する半導体装置の作製方法でもよい。
【0028】
本発明の一態様において、ベース基板として、ガラス基板、単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板、又は太陽電池グレードシリコン基板のいずれか一を用いる半導体装置の作製方法でもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様により、トランジスタを構成する各部材の抵抗を小さくすることができるため、トランジスタのオン電流を向上することができる。また本発明の一態様により、トランジスタを構成する各部材の抵抗を小さくすることができるため、トランジスタのオン電流を向上することができ、集積回路の高性能化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図2】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図3】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図4】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図5】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図6】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図7】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図8】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図9】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図10】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図11】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図12】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図13】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図14】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図15】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図16】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図17】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図18】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図19】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【図20】本発明の一形態に係る半導体装置を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではないとする。
【0032】
なお、各実施の形態の図面等において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0033】
なお、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」等などの用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0034】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の構成について、図1および図2を参照して説明する。
【0035】
図1(A)には、単結晶半導体基板100上に絶縁層102を介して設けられ、素子分離絶縁層108によって素子分離されたn型FET及びp型FETを有する半導体装置の一例を示す。当該半導体装置は、単結晶半導体層106aおよび単結晶半導体層106bに形成されるチャネル形成領域と、当該チャネル形成領域に接し、半導体材料を含む導電性領域と、これに接し、半導体材料の金属化合物を含む金属化合物領域122aおよび金属化合物領域122bと、これに接する金属領域128aおよび金属領域128bと、チャネル形成領域に接するゲート絶縁層110a、ゲート絶縁層110bと、これに接するゲート電極112a、ゲート電極112bと、金属領域128aまたは金属領域128bを一部に含むソース電極またはドレイン電極と、を有している。また、金属化合物を構成する金属元素と、金属領域128a、金属領域128bを構成する金属元素とは同一である。
【0036】
また、図1(A)に示すn型FETおよびp型FETは、ゲート電極112aの一部に金属化合物領域124aを、ゲート電極112bの一部に金属化合物領域124bを含んでいる。また、ゲート電極112aの一部に金属領域130aを、ゲート電極112bの一部に金属領域130bを含んでいる。なお、上記において、チャネル形成領域は、単結晶半導体層106aのゲート絶縁層110aとの界面近傍の領域、または、単結晶半導体層106bの、ゲート絶縁層110bとの界面近傍の領域をいう。
【0037】
なお導電性領域は、チャネル形成領域に接する低導電性領域114aおよび低導電性領域114b(第1の導電性領域ともいう)と、これに接する高導電性領域118aおよび高導電性領域118b(第2の導電性領域ともいう)とを有していてもよい。この場合、低導電性領域114aおよび低導電性領域114bに添加された導電型を付与する不純物元素の濃度を、1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下とし、高導電性領域118aおよび高導電性領域118bに添加された導電型を付与する不純物元素の濃度を、低導電性領域114aより高濃度にすることが望ましい。さらに、金属領域128a、金属領域128bは、導電性領域と重畳しない領域にも設けることができる。この場合、コンタクトの位置合わせに要求される精度を緩和することができるため、FETの製造工程上有利である。
【0038】
なお、図1(A)において、金属化合物領域122aおよび金属化合物領域122b上の一部には、金属領域128aおよび金属領域128bが存在しない構成となっているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。金属領域128aおよび金属領域128bが金属化合物領域122aおよび金属化合物領域122bの上部全面に存在していても良い。当該構成の相違は、金属層のパターニング精度にも起因するものであるから、これらの構成は特に限定されない。
【0039】
図1(B)には、n型FET及びp型FETを有する半導体装置の別の一例を示す。当該半導体装置は、単結晶半導体層106aおよび単結晶半導体層106bに形成されるチャネル形成領域と、当該チャネル形成領域に接し、半導体材料を含む導電性領域と、これに接する金属領域604a、金属領域604c、金属領域605a、及び金属領域605cと、チャネル形成領域に接するゲート絶縁層110a、ゲート絶縁層110bと、これに接するゲート電極112a、ゲート電極112bと、金属領域604aまたは金属領域604cを一部に含むソース電極またはドレイン電極と、金属領域605aまたは金属領域605cを一部に含むソース電極またはドレイン電極と、を有している。
【0040】
また、図1(B)に示すn型FETおよびp型FETは、ゲート電極112aの一部に金属領域604bを、ゲート電極112bの一部に金属領域605bを含んでいる。また、上記において、チャネル形成領域は、単結晶半導体層106aのゲート絶縁層110aとの界面近傍の領域、または、単結晶半導体層106bの、ゲート絶縁層110bとの界面近傍の領域をいう。
【0041】
なお、導電性領域は、チャネル形成領域に接する低導電性領域114aおよび低導電性領域114bと、これに接する高導電性領域118aおよび高導電性領域118bとを有していてもよい。この場合、低導電性領域114aおよび低導電性領域114bに添加された導電型を付与する不純物元素の濃度を、1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下とし、高導電性領域118aおよび高導電性領域118bに添加された導電型を付与する不純物元素の濃度を、低導電性領域114aより高濃度にすることが望ましい。
【0042】
図1(B)に示す構成と、図1(A)に示す構成の相違の一は、金属化合物領域の有無である。すなわち、図1(B)では、導電性領域に直接、金属領域604a、金属領域604c、金属領域605a、及び金属領域605cが接触している。このように、図1(B)では、金属領域が金属化合物領域を代替する機能を有しているため、金属化合物領域を用いる場合と比較して、電気抵抗をさらに低減させることができる。つまり、当該構成を採用することで、半導体装置の特性を一層向上させることが可能である。なお、FETの微細化に伴い、導電性領域に添加される不純物の濃度は増大する傾向にあるから、導電性領域と金属領域との接触抵抗は大きな問題とならない。
【0043】
また、図1(B)に示す構成では、金属領域の形成に際して、単結晶半導体層106aおよび単結晶半導体層106bの一部(導電性領域の一部)が除去された構成(えぐられた構成)を採用している。このため、実質的な電流の経路を短縮することが可能であり、電気抵抗の低減が実現される。つまり、当該構成を採用することで、半導体装置の特性をさらに向上させることが可能である。なお、上記「一部が除去された構成」は、「ゲート絶縁層と単結晶半導体層(チャネル形成領域)との接触界面が、金属領域と単結晶半導体層(導電性領域)との接触界面より上方(単結晶半導体基板100の表面を基準点とする)に存在する」のような表現を用いて表すことも可能である。
【0044】
また、当該構成では、「金属領域」は金属を主成分とすることに限定されない。「金属領域」は、その導電性が所定の条件(例えば、半導体材料と金属との化合物と比較して導電性が高いという条件)を満たすものであれば、どのような材料を用いて形成しても良い。この意味において「金属領域」を「導通領域」のように言い換えることも可能である。
【0045】
なお、図1(B)における、金属領域604a、金属領域604b、金属領域604c、金属領域605a、金属領域605b、金属領域605cの形状等の構成についても、特に限定する必要はない。
【0046】
図2(A)には、n型FET及びp型FETを有する半導体装置の別の一例を示す。当該半導体装置の構成は、概ね、図1(A)に係る半導体装置の構成と同様である。
【0047】
図2(A)に示す構成と、図1(A)に示す構成の代表的な相違点は、第1の金属領域704a、第1の金属領域704b、第1の金属領域704c、第1の金属領域706a、第1の金属領域706b、及び第1の金属領域706cと、第2の金属領域705a、第2の金属領域705b、第2の金属領域705c、第2の金属領域707a、第2の金属領域707b、及び第2の金属領域707cとが積層構造により形成されている点である。なお、当該構成においても、「金属領域」は金属を主成分とすることに限定されない。「金属領域」は、その導電性が所定の条件(例えば、半導体材料と金属との化合物と比較して導電性が高いという条件)を満たすものであれば、どのような材料を用いて形成しても良い。この意味において「金属領域」を「導通領域」のように言い換えることも可能である。
【0048】
図2(B)には、n型FET及びp型FETを有する半導体装置の別の一例を示す。当該半導体装置の構成は、概ね、図1(B)に係る半導体装置の構成と同様である。
【0049】
図2(B)に示す構成と、図1(B)に示す構成の代表的な相違点は、導電性領域が、浅い接合の導電性領域(図1(B)における低導電性領域114aおよび低導電性領域114bに対応する領域)のみによって構成されている点である。すなわち、図2(B)では、高導電性領域118aおよび高導電性領域118bが形成されておらず、上記導電性領域と金属領域604a、金属領域604c、金属領域605a、及び金属領域605cとが直接接触している。このため、FETの特性を向上させつつも、FETの製造工程を簡略化することができる。ここで、導電性領域に添加される不純物の濃度が低い場合には、導電性領域と金属領域との接触抵抗が問題となりうるが、当該問題は、添加される不純物の濃度を高めることで解消することが可能である。
【0050】
なお、当該構成においても、「金属領域」は金属を主成分とすることに限定されない。「金属領域」は、その導電性が所定の条件(例えば、半導体材料と金属との化合物と比較して導電性が高いという条件)を満たすものであれば、どのような材料を用いて形成しても良い。この意味において「金属領域」を「導通領域」のように言い換えることも可能である。
【0051】
本実施の形態に係る構成は、他の実施の形態に係る構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0052】
(実施の形態2)
本実施の形態では、SOI基板を用いた半導体装置の作製方法について説明する。ここでは、半導体装置を構成する半導体素子の代表例としてn型FETとp型FETを作製する場合の一例について図3乃至図5を用いて説明する。
【0053】
まず、SOI基板を用意する(図3(A)参照)。本実施の形態では、単結晶半導体基板100上に絶縁層102を介して単結晶半導体層104が設けられた構成のSOI基板を示しているが、開示する発明の一態様に用いることができるSOI基板はこれに限定して解釈されない。例えば、ガラス基板をはじめとする絶縁基板上に絶縁層を介して単結晶半導体層が設けられた構成のSOI基板を用いても良い。また、絶縁層上の半導体層は単結晶であることに限定されず、多結晶、微結晶等であっても良い。絶縁層102は例えば、半導体の酸化物を用いて形成することが好適であるが、これに限定されない。なお、絶縁層102として酸化物を用いる場合には、当該絶縁層102をBOX(Buried OXide)層と呼ぶこともある。
【0054】
単結晶半導体層104上には、素子分離絶縁層を形成するためのマスクとなる保護層を形成する(図示せず)。保護層としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどを材料とする絶縁層を用いることができる。なお、この工程の前後において、しきい値電圧を制御するために、p型の導電性を付与する不純物を単結晶半導体層104に添加しておいてもよい。半導体がシリコンの場合、p型の導電性を付与する不純物としては、例えば、硼素、アルミニウム、ガリウムなどを用いることができる。同様に、この工程の前後において、しきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純物を単結晶半導体層104に添加しておいてもよい。半導体がシリコンの場合、n型の導電性を付与する不純物としては、例えば、リンや砒素などを用いることができる。不純物として、p型の導電性を付与する不純物を添加する場合には、例えば、硼素を5×1017cm―3以上1×1019cm−3未満の濃度で添加することができる。
【0055】
次に、上記の保護層をマスクとしてエッチングを行い、保護層に覆われていない領域(露出している領域)の単結晶半導体層104及び絶縁層102の一部を除去する。これにより単結晶半導体層106aおよび単結晶半導体層106bが形成される。当該エッチングには、ドライエッチングを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0056】
次に、エッチング後の単結晶半導体層106a、106bおよび絶縁層102を覆うように、絶縁層102と同様の材料からなる絶縁層を形成する。例えば、酸化シリコンを材料として絶縁層102が形成されている場合には、上記絶縁層も酸化シリコンを材料として形成することが望ましい。上記絶縁層は、例えば、化学気相成長法などの方法を用いて形成することができる。当該絶縁層は、単結晶半導体層106aおよび単結晶半導体層106bが覆われるように厚く堆積して形成することが望ましい。その後、単結晶半導体層106aおよび単結晶半導体層106bに重畳する領域の絶縁層を除去し、保護層を除去して素子分離絶縁層108を残存させる(図3(B)参照)。絶縁層の除去方法としては、CMPなどの研磨処理やエッチング処理などがあるが、いずれの方法を用いても良い。
【0057】
次に、単結晶半導体層106aおよび単結晶半導体層106b上に絶縁層を形成し、当該絶縁層上に導電材料を含む層を形成する。
【0058】
絶縁層は後のゲート絶縁層となるものであり、PECVD法やスパッタリング法等を用いて得られる酸化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等を含む膜の単層構造または積層構造とすると良い。他に、高密度プラズマ処理や熱酸化処理によって、単結晶半導体層106a、単結晶半導体層106bの表面を酸化、窒化することにより、上記絶縁層を形成してもよい。高密度プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガス、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスを用いて行うことができる。また、絶縁層の厚さは特に限定されないが、例えば、1nm以上100nm以下とすることができる。
【0059】
導電材料を含む層は、導電材料を含むポリシリコンなどの半導体材料を用いて形成することができる。また、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、CVD法やスパッタリング法、蒸着法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。なお、本実施の形態では、導電材料を含む層を、半導体材料を用いて形成する場合について説明する。
【0060】
その後、マスクを用いて、絶縁層および導電材料を含む層をエッチングして、ゲート絶縁層110a、ゲート絶縁層110b、ゲート電極112a、ゲート電極112bを形成する。
【0061】
次に、ゲート電極112a、ゲート電極112bを覆う絶縁層116を形成する。そして、n型FETとなる領域に、リン(P)やヒ素(As)などを添加して、浅い接合深さの低導電性領域114aを形成し、p型FETとなる領域に、硼素(B)やアルミニウム(Al)などを添加して、浅い接合深さの低導電性領域114bを形成する(図3(C)参照)。ここで、添加する不純物の濃度は適宜設定することができるが、半導体素子の微細化に合わせてその濃度を高くすることが望ましい。また、ここでは、絶縁層116を形成した後に低導電性領域114aおよび低導電性領域114bを形成する工程を採用しているが、低導電性領域114aおよび低導電性領域114bを形成した後に絶縁層116を形成する工程としても良い。
【0062】
次に、サイドウォール絶縁層116aおよびサイドウォール絶縁層116bを形成する。p型FETとなる領域のサイドウォール絶縁層116bは、n型FETとなる領域のサイドウォール絶縁層116aよりも幅を広くすることが望ましい。また、この際に、絶縁層116を部分的にエッチングして、ゲート電極112a、ゲート電極112bの上面と、低導電性領域114a、低導電性領域114bの上面を露出させる(図3(D)参照)。
【0063】
次に、ゲート電極112a、ゲート電極112b、低導電性領域114a、低導電性領域114b、サイドウォール絶縁層116a、サイドウォール絶縁層116b等を覆うように、絶縁層を形成する。そして、n型FETとなる領域の低導電性領域114aと接する領域に、リン(P)やヒ素(As)などを添加して、高導電性領域118aを形成し、p型FETとなる領域の低導電性領域114bと接する領域に、硼素(B)やアルミニウム(Al)などを添加して、高導電性領域118bを形成する。その後、上記絶縁層を除去し、ゲート電極112a、ゲート電極112b、サイドウォール絶縁層116a、サイドウォール絶縁層116b、高導電性領域118a、高導電性領域118a等を覆う金属層120を形成する(図4(A)参照)。当該金属層120は、スパッタリング法や蒸着法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いて形成することができる。金属層120は、単結晶半導体層106aや単結晶半導体層106bを構成する半導体材料と反応して低抵抗な金属化合物となる金属材料を用いて形成することが望ましい。このような金属材料としては、例えば、チタン、タンタル、タングステン、ニッケル、コバルト、白金等がある。
【0064】
次に、熱処理を施して、上記金属層120と半導体材料とを反応させる。これにより、高導電性領域118aに接する金属化合物領域122a、高導電性領域118bに接する金属化合物領域122bを形成すると共に、ゲート電極112aの一部に金属化合物領域124aを、ゲート電極112bの一部に金属化合物領域124bを、それぞれ形成する(図4(B)参照)。熱処理としては、例えば、フラッシュランプの照射による熱処理を用いることができる。もちろん、その他の熱処理方法を用いても良いが、金属化合物の形成に係る化学反応の制御性を向上させるためには、ごく短時間の熱処理が実現できる方法を用いることが望ましい。なお、上記の金属化合物領域は、金属材料と半導体材料との反応により形成されるものであるため、第2の導電性領域よりもさらに導電性が高い。当該金属化合物領域を形成することで、FETの電気抵抗を十分に低減し、素子特性を向上させることができる。
【0065】
次に、レジスト材料などを用いて所望の形状のマスク126を形成する(図4(C)参照)。そして、当該マスク126を用いて金属層120をエッチングすることにより、電極(または配線)の一部として機能する金属領域128a、金属領域128b、金属領域130a、金属領域130bを形成する(図4(D)参照)。エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれを用いても良い。ここで、金属領域128aおよび金属領域128bはソース電極(または配線)またはドレイン電極(または配線)の一部となる。また、金属領域130aおよび金属領域130bはゲート電極(または配線)の一部となる。なお、本実施の形態では、金属領域128a、金属領域128b、金属領域130a、金属領域130bを形成する工程について説明しているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。例えば、金属領域128aおよび金属領域128bを形成し、金属領域130aおよび金属領域130bは形成しない構成を採用しても良いし、金属領域130aおよび金属領域130bを形成し、金属領域128aおよび金属領域128bは形成しない構成を採用しても良い。素子の電気抵抗低減という観点からは、いずれの金属領域を形成する場合であっても所定の効果を得ることができる。
【0066】
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、層間絶縁層132a、層間絶縁層132bを形成する(図5(A)参照)。層間絶縁層132aや層間絶縁層132bは、酸化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。また、ポリイミド、アクリル等の有機絶縁材料を用いて形成しても良い。また、ここでは、n型FETとなる領域には単層構造の層間絶縁層132aを形成し、p型FETとなる領域には二層構造の層間絶縁層132bを形成しているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。
【0067】
その後、上記層間絶縁層に、金属領域128a、金属領域128b、金属領域130a、金属領域130bに達する開口を形成し、当該開口に、電極(または配線)として機能する導電層を形成する。ここでは、金属領域128aおよび金属領域128bと接触する導電層134aおよび導電層134bのみを示しているが、この工程において、金属領域130aおよび金属領域130bと接触する導電層をあわせて形成することができる(図5(B)参照)。導電層134aおよび導電層134bとして用いることができる材料には特に限定はなく、各種導電材料を用いることができる。
【0068】
以上により、n型FETおよびp型FETを有する半導体装置を形成することができる。なお、配線の構造としては、層間絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線を採用しても良い。多層配線を採用することにより、高度に集積化した半導体装置を提供することができる。また、本実施の形態では、上記FETを形成する基板としてSOI基板を用いる場合について説明しているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。シリコン基板をはじめとする単結晶半導体基板、多結晶半導体基板などを用いて上記FETを形成することもできる。
【0069】
開示する発明の一態様では、金属化合物領域を形成する際に用いる金属層を、FETの電極(または配線)の一部として用いている。これにより、電気抵抗を十分に抑制して、好適な半導体素子を提供することが可能である。また、層間絶縁層に開口を形成する際に、金属層を残存させておくことにより、エッチング工程で薄い単結晶半導体層をオーバーエッチングすることによる不良を低減することが出来るといったプロセス上の利点もある。
【0070】
本実施の形態に係る構成は、他の実施の形態に係る構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0071】
(実施の形態3)
本実施の形態では、SOI基板を用いた半導体装置の作製方法について説明する。ここでは、半導体装置を構成する半導体素子の代表例としてn型FETとp型FETを作製する場合の一例について図6及び図7を用いて説明する。なお本実施の形態では、実施の形態1の図1(B)で示した半導体装置の作製方法について説明する。なお、上記実施の形態2で述べたSOI基板を用いた半導体装置の作製方法と重複する箇所については、上記実施の形態2の記載を援用し、説明を省略するものとする。
【0072】
まず、上記実施の形態2の図3(A)乃至図3(D)と同様にして、高導電性領域118a、高導電性領域118b、及び金属層120を形成し、図4(A)の状態を得る(図6(A)参照)。次に、図4(B)と同様にして、金属化合物領域122a、金属化合物領域122b、金属化合物領域124a、及び金属化合物領域124bを形成し、図6(B)の状態を得る(図6(B)参照)。
【0073】
次に、金属層120、金属化合物領域122a、金属化合物領域122b、金属化合物領域124a、及び金属化合物領域124bをエッチングすることにより、一点鎖線601で囲まれた領域を露出させる(図6(C)参照)。エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれを用いても良い。当該エッチングに基づいて、高導電性領域118a、高導電性領域118bの表面が除去され、一点鎖線601で囲まれた領域を形成することで、後に形成する配線層と高導電性領域118a、高導電性領域118bとの接触面積を増加させることができる。
【0074】
次に、ゲート電極112a、ゲート電極112b、高導電性領域118a、高導電性領域118b、サイドウォール絶縁層116a、サイドウォール絶縁層116b等を覆うように、金属層602を形成する。次いで、レジスト材料などを用いて所望の形状のマスク603を形成する(図7(A)参照)。そして、当該マスク603を用いて金属層602をエッチングすることにより、電極(または配線)の一部として機能する金属領域604a、金属領域604b、金属領域604c、金属領域605a、金属領域605b、金属領域605cを形成する(図7(B)参照)。なお金属層602は、スパッタリング法や蒸着法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いて単層、または積層にして形成することができる。金属層602に用いる金属材料としては、例えば、アルミニウム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、ニッケル、銀、銅等、若しくは当該金属材料の合金材料、または化合物材料がある。特に、タングステン、モリブデンは、耐熱性が高く、金属化合物領域122a、金属化合物領域122b、金属化合物領域124a、及び金属化合物領域124bより低抵抗な材料とすることができ、微細加工性等にも優れており好適である。なお、金属層602に用いる金属材料は、金属化合物領域124a、及び金属化合物領域124bより低抵抗な材料であればよく、金属酸化物、金属窒化物等の材料であってもよい。またエッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれを用いても良い。ここで、金属領域604a、金属領域604c、金属領域605a、及び金属領域605cはソース電極(または配線)またはドレイン電極(または配線)の一部となる。また、金属領域604b、及び金属領域605bはゲート電極(または配線)の一部となる。なお、本実施の形態では、金属領域604a、金属領域604b、金属領域604c、金属領域605a、金属領域605b、金属領域605cを形成する工程について説明しているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。例えば、金属領域604a、金属領域604c、金属領域605a、及び金属領域605cを形成し、金属領域604b、及び金属領域605bは形成しない構成を採用しても良い。素子の電気抵抗低減という観点からは、いずれの金属領域を形成する場合であっても所定の効果を得ることができる。
【0075】
なお、図7(A)において、ゲート絶縁層110a、110bと、単結晶半導体層106a、106bに形成されるチャネル形成領域との接触界面が、金属層602が形成された金属領域と、高導電性領域118a、118bが形成された導電性領域との接触界面より上方に存在するように設けられる。そのため、トランジスタを構成する各部材の抵抗を小さくすることができ、トランジスタのオン電流を向上することができる。また、金属層602を有することで、ソースまたはドレインと、チャネルとの間隔を自由に設定することができる。
【0076】
次に、上記実施の形態2の図5(A)及び図5(B)と同様にして、層間絶縁層132a、層間絶縁層132b、導電層134a、および導電層134bを形成し、図7(C)の状態を得る(図7(C)参照)。
【0077】
以上により、n型FETおよびp型FETを有する半導体装置を形成することができる。なお、配線の構造としては、層間絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線を採用しても良い。多層配線を採用することにより、高度に集積化した半導体装置を提供することができる。また、本実施の形態では、上記FETを形成する基板としてSOI基板を用いる場合について説明しているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。シリコン基板をはじめとする単結晶半導体基板、多結晶半導体基板などを用いて上記FETを形成することもできる。
【0078】
開示する発明の一態様では、金属化合物領域を除去し、新たに形成した金属層をFETの電極(または配線)の一部として用いている。これにより、金属層の接触面積を広くし、且つ電気抵抗を十分に抑制して、好適な半導体素子を提供することが可能である。また、新たに金属層を形成することにより、FETに発生する熱の放散性を高めることができ、自己加熱による電流量の低下を抑制することができる。
【0079】
本実施の形態に係る構成は、他の実施の形態に係る構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0080】
(実施の形態4)
本実施の形態では、SOI基板を用いた半導体装置の作製方法について説明する。ここでは、半導体装置を構成する半導体素子の代表例としてn型FETとp型FETを作製する場合の一例について図8及び図9を用いて説明する。なお本実施の形態では、実施の形態1の図2(A)で示した半導体装置の作製方法について説明する。なお、上記実施の形態2で述べたSOI基板を用いた半導体装置の作製方法と重複する箇所については、上記実施の形態2の記載を援用し、説明を省略するものとする。
【0081】
まず、上記実施の形態2の図3(A)乃至図3(D)と同様にして、高導電性領域118a、高導電性領域118b、及び金属層120を形成し、図4(A)の状態を得る(図8(A)参照)。次に、図4(B)と同様にして、金属化合物領域122a、金属化合物領域122b、金属化合物領域124a、及び金属化合物領域124bを形成し、図8(B)の状態を得る(図8(B)参照)。
【0082】
次に、金属層120をエッチングすることにより、金属化合物領域122a、金属化合物領域122b、金属化合物領域124a、及び金属化合物領域124bを露出させる(図8(C)参照)。エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれを用いても良い。当該エッチングによって、金属化合物領域122a、金属化合物領域122b、金属化合物領域124a、及び金属化合物領域124bの表面が除去されるとともに、高導電性領域118a、高導電性領域118bの表面の清浄化を図ることができ好適である。
【0083】
次に、ゲート電極112a、ゲート電極112b、金属化合物領域122a、金属化合物領域122b、金属化合物領域124a、金属化合物領域124b、サイドウォール絶縁層116a、サイドウォール絶縁層116b等を覆うように、第1の金属層701、第2の金属層702を形成する。次いで、レジスト材料などを用いて所望の形状のマスク703を形成する(図9(A)参照)。そして、当該マスク703を用いて第1の金属層701、第2の金属層702をエッチングすることにより、電極(または配線)の一部として機能する第1の金属領域704a、第1の金属領域704b、第1の金属領域704c、第2の金属領域705a、第2の金属領域705b、第2の金属領域705c、第1の金属領域706a、第1の金属領域706b、第1の金属領域706c、第2の金属領域707a、第2の金属領域707b、第2の金属領域707cを形成する(図9(B)参照)。なお第1の金属層701、第2の金属層702は、スパッタリング法や蒸着法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いて単層、または積層にして形成することができる。第1の金属層701に用いる金属材料としては、例えば、アルミニウム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、ニッケル、銀、銅等の金属材料、当該金属材料の金属酸化物または金属窒化物等の化合物材料がある。また、第2の金属層702に用いる金属材料としては、例えば、アルミニウム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステン、ニッケル、銀、銅等の金属材料、金属酸化物または金属窒化物等の化合物材料がある。特に、第1の金属層701として窒化チタン、第2の金属層702としてタングステンを用いることにより、耐熱性に優れ、金属化合物領域122a、金属化合物領域122b、金属化合物領域124a、及び金属化合物領域124bより低抵抗な材料とすることができ、金属化合物領域と接する界面での接触不良を低減することができ、好適である。なお、第2の金属層702に用いる金属材料は、金属化合物領域124a、及び金属化合物領域124bより低抵抗な材料であればよく、金属酸化物、金属窒化物等の材料であってもよい。またエッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれを用いても良い。ここで、第1の金属領域704a、第1の金属領域704c、第2の金属領域705a、第2の金属領域705c、第1の金属領域706a、第1の金属領域706c、第2の金属領域707a、第2の金属領域707cはソース電極(または配線)またはドレイン電極(または配線)の一部となる。また、第1の金属領域704b、第2の金属領域705b、第1の金属領域706b、第2の金属領域707bはゲート電極(または配線)の一部となる。なお、本実施の形態では、第1の金属領域704a、第1の金属領域704b、第1の金属領域704c、第2の金属領域705a、第2の金属領域705b、第2の金属領域705c、第1の金属領域706a、第1の金属領域706b、第1の金属領域706c、第2の金属領域707a、第2の金属領域707b、第2の金属領域707cを形成する工程について説明しているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。例えば、第1の金属領域704a、第1の金属領域704c、第2の金属領域705a、第2の金属領域705c、第1の金属領域706a、第1の金属領域706c、第2の金属領域707a、第2の金属領域707cを形成し、第1の金属領域704b、第2の金属領域705b、第1の金属領域706b、第2の金属領域707bは形成しない構成を採用しても良い。素子の電気抵抗低減という観点からは、いずれの金属領域を形成する場合であっても所定の効果を得ることができる。
【0084】
次に、上記実施の形態2の図5(A)及び図5(B)と同様にして、層間絶縁層132a、層間絶縁層132b、導電層134a、および導電層134bを形成し、図9(C)の状態を得る(図9(C)参照)。
【0085】
以上により、n型FETおよびp型FETを有する半導体装置を形成することができる。なお、配線の構造としては、層間絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線を採用しても良い。多層配線を採用することにより、高度に集積化した半導体装置を提供することができる。また、本実施の形態では、上記FETを形成する基板としてSOI基板を用いる場合について説明しているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。シリコン基板をはじめとする単結晶半導体基板、多結晶半導体基板などを用いて上記FETを形成することもできる。
【0086】
開示する発明の一態様では、ソース電極(または配線)またはドレイン電極(または配線)の一部、及びゲート電極(または配線)の一部となる配線層を、導電層と金属層との積層構造とし、FETの電極(または配線)の一部として用いている。これにより、FETの電極(または配線)と、導電層134a、および導電層134bとの接触面積を広くし、且つ電気抵抗を十分に抑制して、好適な半導体素子を提供することが可能である。また、導電層と金属層との積層構造を形成することにより、FETに発生する熱の放散性を高めることができ、自己加熱による電流量の低下を抑制することができる。
【0087】
本実施の形態に係る構成は、他の実施の形態に係る構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0088】
(実施の形態5)
本実施の形態では、SOI基板を用いた半導体装置の作製方法について説明する。ここでは、半導体装置を構成する半導体素子の代表例としてn型FETとp型FETを作製する場合の一例について図10及び図11を用いて説明する。なお本実施の形態では、実施の形態1の図2(B)で示した半導体装置の作製方法について説明する。また本実施の形態で説明する半導体装置の作製方法において、上記実施の形態3で説明した半導体装置と異なる点は、高導電性領域118a、高導電性領域118bを形成しない点にある。そのため本実施の形態の説明で、上記実施の形態2及び実施の形態3で述べたSOI基板を用いた半導体装置の作製方法と重複する箇所については、上記実施の形態2及び実施の形態3の記載を援用し、説明を省略するものとする。
【0089】
まず、上記実施の形態2の図3(A)乃至図3(D)と同様にして、金属層120を形成し、図10(A)の状態を得る(図10(A)参照)。なお図10(A)では、図示するように図6(A)とは異なり、高導電性領域118a、高導電性領域118bを形成していない。そのため、高導電性領域118a、高導電性領域118bを形成するための工程を削減することが出来る。次に、図4(B)と同様にして、金属化合物領域122a、金属化合物領域122b、金属化合物領域124a、及び金属化合物領域124bを形成し、図10(B)の状態を得る(図10(B)参照)。
【0090】
次に、金属層120、金属化合物領域122a、金属化合物領域122b、金属化合物領域124a、及び金属化合物領域124bをエッチングすることにより、一点鎖線601で囲まれた領域を露出させる(図10(C)参照)。エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれを用いても良い。当該エッチングに基づいて、金属化合物領域122a、金属化合物領域122b、金属化合物領域124a、及び金属化合物領域124bが除去され、後に形成する配線層と低導電性領域114a、低導電性領域114bとを接触させることができる。
【0091】
次に、ゲート電極112a、ゲート電極112b、単結晶半導体層106a、単結晶半導体層106b、サイドウォール絶縁層116a、サイドウォール絶縁層116b等を覆うように、金属層602を形成する。次いで、レジスト材料などを用いて所望の形状のマスク603を形成する(図11(A)参照)。そして、当該マスク603を用いて金属層602をエッチングすることにより、電極(または配線)の一部として機能する金属領域604a、金属領域604b、金属領域604c、金属領域605a、金属領域605b、金属領域605cを形成する(図11(B)参照)。なお金属層602、マスク603に関する説明は、実施の形態3と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0092】
なお図11(A)において、ゲート絶縁層110a、110bと、単結晶半導体層106a、106bに形成されるチャネル形成領域との接触界面が、金属層602が形成された金属領域と、単結晶半導体層106a、106bが形成された領域との接触界面より上方に存在するように設けられる。そのため、トランジスタを構成する各部材の抵抗を小さくすることができ、トランジスタのオン電流を向上することができる。また、金属層602を有することで、ソースまたはドレインと、チャネルとの間隔を自由に設定することができる。
【0093】
次に、上記実施の形態2の図5(A)及び図5(B)と同様にして、層間絶縁層132a、層間絶縁層132b、導電層134a、および導電層134bを形成し、図11(C)の状態を得る(図11(C)参照)。
【0094】
以上により、n型FETおよびp型FETを有する半導体装置を形成することができる。なお、配線の構造としては、層間絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線を採用しても良い。多層配線を採用することにより、高度に集積化した半導体装置を提供することができる。また、本実施の形態では、上記FETを形成する基板としてSOI基板を用いる場合について説明しているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。シリコン基板をはじめとする単結晶半導体基板、多結晶半導体基板などを用いて上記FETを形成することもできる。
【0095】
開示する発明の一態様では、金属化合物領域を除去し、新たに形成した金属層をFETの電極(または配線)の一部として用いている。これにより、金属層の接触面積を広くし、且つ電気抵抗を十分に抑制して、好適な半導体素子を提供することが可能である。また金属層を低導電性領域114a、低導電性領域114bと直接接触させることができ、電気抵抗を十分に抑制して、好適な半導体素子を提供することが可能である。また、新たに金属層を形成することにより、FETに発生する熱の放散性を高めることができ、自己加熱による電流量の低下を抑制することができる。
【0096】
本実施の形態に係る構成は、他の実施の形態に係る構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0097】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置の他の一例について説明する。
【0098】
本発明の一態様である半導体装置は、上記実施の形態に示す構造以外にも様々な構造を有することができる。本実施の形態の半導体装置の一例について図12及び図13を用いて説明する。図12及び図13は、本実施の形態の半導体装置の一例を示す断面図である。なお、図12及び図13に示す半導体装置において、他の実施の形態の半導体装置の構成要素のいずれかと同じ、又はいずれかに相当する(例えば同じ符号)構成要素の説明については、同じ又は相当する他の実施の形態の半導体装置の構成要素の説明を適宜援用する。
【0099】
図12(A)に示す半導体装置は、図1(A)に示す半導体装置における低導電性領域114a及び低導電性領域114bが絶縁層102に接する構造であり、その他の部分については、図1(A)に示す半導体装置の構成要素と同じである。
【0100】
図12(B)に示す半導体装置は、図1(B)に示す半導体装置における低導電性領域114a及び低導電性領域114bが絶縁層102に接する構造であり、その他の部分については、図1(B)に示す半導体装置の構成要素と同じである。
【0101】
図13(A)に示す半導体装置は、図2(A)に示す半導体装置における低導電性領域114a及び低導電性領域114bが絶縁層102に接する構造であり、その他の部分については、図2(A)に示す半導体装置の構成要素と同じである。
【0102】
図13(B)に示す半導体装置は、図2(B)に示す半導体装置における低導電性領域114a及び低導電性領域114bが絶縁層102に接する構造であり、その他の部分については、図2(B)に示す半導体装置の構成要素と同じである。
【0103】
図12及び図13に示す半導体装置における絶縁層102に接する低導電性領域114a及び低導電性領域114bは、例えば導電型を付与する不純物元素を、半導体層における深さ方向の不純物元素の拡散を制御しつつ添加することにより形成することができる。なお、絶縁層102に接する低導電性領域114a及び低導電性領域114bの形成の際に熱処理を行ってもよい。熱処理を行うことにより導電型を付与する不純物元素の拡散が促進される。
【0104】
図12及び図13に一例として示すように、本実施の形態の半導体装置は、絶縁層102に低導電性領域114a及び低導電性領域114bが接する構造にすることができる。
【0105】
さらに、本実施の形態における半導体装置の構造の他の一例について図14及び図15を用いて説明する。図14及び図15は、本実施の形態における半導体装置の構造の他の一例を示す断面図である。なお、図14及び図15に示す半導体装置において、他の実施の形態の半導体装置の構成要素のいずれかと同じ、又はいずれかに相当する(例えば同じ符号)構成要素の説明については、同じ又は相当する他の実施の形態の半導体装置の構成要素の説明を適宜援用する。
【0106】
図14(A)に示す半導体装置は、図1(A)に示す半導体装置におけるサイドウォール絶縁層(例えば図3に示すサイドウォール絶縁層116a及びサイドウォール絶縁層116b)が3つ以上の絶縁層により構成され、n型FETを覆う絶縁層805aと、p型FETを覆う絶縁層805bと、を有する構造である。その他の部分については、図1(A)に示す半導体装置の構成要素のいずれかに相当する。
【0107】
図14(B)に示す半導体装置は、図1(B)に示す半導体装置におけるサイドウォール絶縁層が3つ以上の絶縁層により構成され、n型FETを覆う絶縁層805aと、p型FETを覆う絶縁層805bと、を有する構造である。その他の部分については、図1(B)に示す半導体装置の構成要素のいずれかに相当する。
【0108】
図15(A)に示す半導体装置は、図2(A)に示す半導体装置におけるサイドウォール絶縁層が3つ以上の絶縁層により構成され、n型FETを覆う絶縁層805aと、p型FETを覆う絶縁層805bと、を有する構造である。その他の部分については、図2(A)に示す半導体装置の構成要素のいずれかに相当する。
【0109】
図15(B)に示す半導体装置は、図2(B)に示す半導体装置におけるサイドウォール絶縁層が3つ以上の絶縁層により構成され、n型FETを覆う絶縁層805aと、p型FETを覆う絶縁層805bと、を有する構造である。その他の部分については、図2(B)に示す半導体装置の構成要素のいずれかに相当する。
【0110】
図14及び図15に示すサイドウォール絶縁層116aは、ゲート電極112aに接する絶縁層801a、絶縁層801aに接する絶縁層802a、絶縁層802aに接する絶縁層803a、及び絶縁層803aに接する絶縁層804aにより構成される。
【0111】
図14及び図15に示すサイドウォール絶縁層116bは、ゲート電極112bに接する絶縁層801b、絶縁層801bに接する絶縁層802b、絶縁層802bに接する絶縁層803b、及び絶縁層803bに接する絶縁層804bにより構成される。
【0112】
絶縁層801a乃至絶縁層804a並びに絶縁層801b乃至絶縁層804bのそれぞれは、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜などの絶縁膜を用いて構成することができ、該絶縁膜を成膜し、成膜した絶縁膜を選択的にエッチングする工程を順次繰り返すことにより形成することができる。例えば酸化シリコン膜を用いて絶縁層801a及び絶縁層801bを構成し、窒化シリコン膜を用いて絶縁層802a及び絶縁層802bを構成し、酸化シリコン膜を用いて絶縁層803a及び803bを構成し、窒化シリコン膜を用いて絶縁層804a及び絶縁層804bを構成することができる。これらの絶縁膜は、例えばCVD法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0113】
なお、図14及び図15に示す半導体装置において、低導電性領域114aは、絶縁層801a及び絶縁層802aの下部の領域の不純物元素濃度と、絶縁層803a及び絶縁層804aの下部の領域の不純物元素濃度が異なっていてもよい。例えば絶縁層801a及び絶縁層802aの下部の領域の不純物元素濃度を、絶縁層803a及び絶縁層804aの下部の領域の不純物元素濃度より低くすることもできる。また、低導電性領域114bも同様に、絶縁層801b及び絶縁層802bの下部の領域の不純物元素濃度と、絶縁層803b及び絶縁層804bの下部の領域の不純物元素濃度が異なっていてもよい。例えば絶縁層801b及び絶縁層802bの下部の領域の不純物元素濃度を、絶縁層803b及び絶縁層804bの下部の領域の不純物元素濃度より低くすることもできる。
【0114】
また、上記実施の形態と同様に、p型FETとなる領域のサイドウォール絶縁層116bは、n型FETとなる領域のサイドウォール絶縁層116aよりも幅を広くすることもできる。サイドウォール絶縁層116aの幅は、絶縁層801a乃至絶縁層804aのそれぞれの幅により適宜設定することができ、サイドウォール絶縁層116bの幅は、絶縁層801b乃至絶縁層804bのそれぞれの幅により適宜設定することができる。
【0115】
また、図14及び図15に示す半導体装置では、サイドウォール絶縁層116a及びサイドウォール絶縁層116bのそれぞれを4層の絶縁層により構成しているが、これに限定されず、5層以上の複数の絶縁層により構成することもできる。
【0116】
また、図14及び図15に示す絶縁層805a及び絶縁層805bは、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜などを用いて構成することができ、例えば酸化シリコン膜を用いて絶縁層805a及び絶縁層805bを構成することができる。ただし、絶縁層805a及び絶縁層805bは必ずしも設ける必要はない。
【0117】
また、図14及び図15に示す半導体装置は、n型FET及びp型FETの単結晶半導体層のそれぞれに歪みが設けられた構造とすることもでき、例えばn型FETとなる単結晶半導体層に引っ張り歪みを形成し、p型FETとなる単結晶半導体層に圧縮歪みを形成することができる。
【0118】
図14及び図15に一例として示すように、本発明の一態様である半導体装置は、3層以上の絶縁層により構成されたサイドウォール絶縁層を有する構造にすることができる。これによりサイドウォール絶縁層の下部に形成される導電性領域の濃度分布を制御することができ、また、サイドウォール絶縁層を構成する絶縁層のそれぞれの幅を適宜設定することにより、p型FET及びn型FETのチャネル長をそれぞれ設定することができる。
【0119】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせ又は置き換えを行うことができる。
【0120】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置の一例として、演算機能を有する半導体装置について説明する。
【0121】
まず本実施の形態の演算機能を有する半導体装置の一例として、マイクロプロセッサの構成について図16を用いて説明する。図16は、本実施の形態のマイクロプロセッサの構成の一例を示すブロック図である。
【0122】
マイクロプロセッサ900は、演算回路901(Arithmetic logic unit。ALUともいう。)、演算回路制御部902(ALU Controller)、命令解析部903(Instruction Decoder)、割り込み制御部904(Interrupt Controller)、タイミング制御部905(Timing Controller)、レジスタ906(Register)、レジスタ制御部907(Register Controller)、バスインターフェース908(Bus I/F)、読み出し専用メモリ(ROMともいう)909、およびメモリインターフェース(ROMインターフェースともいう)910を有している。
【0123】
バスインターフェース908を介してマイクロプロセッサ900に入力された命令は、命令解析部903に入力され、デコードされた後、演算回路制御部902、割り込み制御部904、レジスタ制御部907、タイミング制御部905に入力される。演算回路制御部902、割り込み制御部904、レジスタ制御部907、タイミング制御部905は、デコードされた命令に基づき様々な制御を行う。
【0124】
演算回路制御部902は、演算回路901の動作を制御するための信号を生成する。また、割り込み制御部904は、マイクロプロセッサ900のプログラム実行中に、外部の入出力装置や周辺回路からの割り込み要求を処理する回路であり、割り込み制御部904は、割り込み要求の優先度やマスク状態を判断して、割り込み要求を処理する。レジスタ制御部907は、レジスタ906のアドレスを生成し、マイクロプロセッサ900の状態に応じてレジスタ906の読み出しや書き込みを行う。タイミング制御部905は、演算回路901、演算回路制御部902、命令解析部903、割り込み制御部904、およびレジスタ制御部907の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えば、タイミング制御部905は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えている。図16に示すように、内部クロック信号CLK2は他の回路に入力される。
【0125】
次に、本実施の形態の演算機能を有する半導体装置の他の一例として、非接触でデータの送受信を行う機能、および演算機能を備えた半導体装置の構成について図17を用いて説明する。図17は、本実施の形態における演算機能を有する半導体装置の他の一例の構成を示すブロック図である。図17に示す半導体装置は、無線通信により外部装置と信号の送受信を行って動作するコンピュータ(以下、「RFCPU」という)と呼ぶことができる。
【0126】
図17に示すRFCPU911は、アナログ回路部912とデジタル回路部913を有している。アナログ回路部912として、共振容量を有する共振回路914、整流回路915、定電圧回路916、リセット回路917、発振回路918、復調回路919と、変調回路920と、電源管理回路930とを有している。デジタル回路部913は、RFインターフェース921、制御レジスタ922、クロックコントローラ923、CPUインターフェース924、中央処理ユニット(CPUともいう)925、ランダムアクセスメモリ(RAMともいう)926、読み出し専用メモリ927を有している。
【0127】
RFCPU911の動作の概要は以下の通りである。アンテナ928が信号を受信すると、共振回路914により誘導起電力が生じる。誘導起電力は、整流回路915を経て容量部929に充電される。この容量部929はセラミックコンデンサーや電気二重層コンデンサなどのキャパシタで形成されていることが好ましい。容量部929は、RFCPU911を構成する基板に集積されている必要はなく、他の部品としてRFCPU911に組み込むこともできる。
【0128】
リセット回路917は、デジタル回路部913をリセットし初期化する信号(リセット信号ともいう)を生成する。例えば、電源電圧の上昇に遅延して立ち上がる信号をリセット信号として生成する。発振回路918は、定電圧回路916により生成される制御信号に応じて、クロック信号の周波数とデューティー比を変更する。復調回路919は、受信信号を復調する回路であり、変調回路920は、送信するデータを変調する回路である。
【0129】
例えば、復調回路919はローパスフィルタで形成され、振幅変調(ASK)方式の受信信号を、その振幅の変動をもとに、二値化する。また、送信データを振幅変調(ASK)方式の送信信号の振幅を変動させて送信するため、変調回路920は、共振回路914の共振点を変化させることで通信信号の振幅を変化させている。
【0130】
クロックコントローラ923は、電源電圧または中央処理ユニット925における消費電流に応じてクロック信号の周波数とデューティー比を変更するための制御信号を生成している。電源電圧の監視は電源管理回路930が行っている。
【0131】
アンテナ928からRFCPU911に入力された信号は復調回路919で復調された後、RFインターフェース921で制御コマンドやデータなどに分解される。制御コマンドは制御レジスタ922に格納される。制御コマンドには、読み出し専用メモリ927に記憶されているデータの読み出し、ランダムアクセスメモリ926へのデータの書き込み、中央処理ユニット925への演算命令などが含まれている。
【0132】
中央処理ユニット925は、CPUインターフェース924を介して読み出し専用メモリ927、ランダムアクセスメモリ926、制御レジスタ922にアクセスする。CPUインターフェース924は、中央処理ユニット925が要求するアドレスより、読み出し専用メモリ927、ランダムアクセスメモリ926、制御レジスタ922のいずれかに対するアクセス信号を生成する機能を有している。
【0133】
中央処理ユニット925の演算方式は、読み出し専用メモリ927にOS(オペレーティングシステム)を記憶させておき、起動とともにプログラムを読み出し実行する方式を採用することができる。また、専用回路で演算回路を構成して、演算処理をハードウェア的に処理する方式を採用することもできる。ハードウェアとソフトウェアを併用する方式では、専用の演算回路で一部の演算処理を行い、プログラムを使って、残りの演算を中央処理ユニット925が処理する方式を適用できる。
【0134】
図16及び図17に一例として示すように、本実施の形態の演算機能を有する半導体装置は、演算処理により様々な機能を有することができ、また該演算処理を高速に行うことができる。
【0135】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせ又は置き換えを行うことができる。
【0136】
(実施の形態8)
本実施の形態では、計算機シミュレーションを用いて、開示する発明の効果について検証した結果を示す。ここではsilvaco社製のソフトウェア(SmartSpice)を用いて、19段のリングオシレータにおけるチャネル長と遅延時間との関係を計算した。また、半導体層を構成する材料としてシリコンを用いる場合について計算を行った。チャネル長については、0.04μm〜0.25μmの間で変化させている。
【0137】
計算のモデルとしては、BSIM4を用いた。ゲート絶縁層の厚さは2nmとし、コンタクト抵抗、配線抵抗、寄生容量などの他のパラメータについてはデフォルト条件(一定)とした。
【0138】
図18(A)には、計算に用いたFETのモデルを示す。また、図18(B)には、比較例として計算を行ったFETのモデルを示す。ここでは、金属領域につき、その厚みなどを調整することで、比較例における金属化合物領域の1/10の抵抗値(一例として、R_metal=10Ω、R_silicide=100Ω)が実現された場合を想定して計算を行った。
【0139】
実際の抵抗値は金属領域、金属化合物領域共に、より小さな値が一般的であるが、ここでは簡単のため上記の抵抗値を採用した。このため、当該計算結果は相対的な指標としての意味を有する。
【0140】
図19(A)および図19(B)に、上記の計算結果を示す。ここで、図19(A)は遅延時間についての計算結果を示している。縦軸は遅延時間を表し、横軸はチャネル長を表す。チャネル長が小さくなるにつれて遅延時間も小さくなっているが、これはチャネルに係る抵抗の成分が小さくなっているためである。図19(B)は、図18(A)に示す構成の遅延時間に対する図18(B)に示す構成の遅延時間の比率を示すものである。縦軸は遅延時間を表し、横軸はチャネル長を表す。図19(B)から、ゲート長が小さくなるに従って、低抵抗化の効果が顕著に現れることがわかる。
【0141】
以上の計算結果より、開示する発明の一態様が抵抗の低減に効果的であることが示された。本実施の形態に係る構成は、他の実施の形態に係る構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0142】
(実施の形態9)
<SOI基板の作製工程>
本実施の形態では、SOI基板の作製方法の一例について、図20を参照して説明する。
【0143】
まず、ベース基板1000を用意する(図20(A)参照)。ベース基板1000としては、半導体でなる基板を用いる場合には、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコンなどの14族元素でなる単結晶半導体基板又は多結晶半導体基板を用いることができる。さらには、太陽電池の製造に用いられる太陽電池グレードシリコン基板(SOG−Si:Solar grade Silicon、例えばSi純度が99.9999%程度のもの)等も用いることができる。また、ベース基板1000としては、セラミック基板、石英基板やサファイア基板などの絶縁体でなる基板、金属やステンレスなどの導電体でなる基板などを用いることができる。
【0144】
また、上記の他にベース基板1000として、液晶表示装置などに使用されている透光性を有するガラス基板を用いることができる。ガラス基板としては、歪み点が580℃以上(好ましくは、600℃以上)であるものを用いると良い。また、ガラス基板は無アルカリガラス基板であることが好ましい。無アルカリガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。
【0145】
次に、ボンド基板1010を用意する(図20(B−1)参照)。ボンド基板1010としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコンなどの第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。
【0146】
ボンド基板1010のサイズに制限は無いが、例えば、直径が8インチ(200mm)、12インチ(300mm)、18インチ(450mm)といったサイズの半導体基板を用いることができる。また、円形の半導体基板を、矩形に加工して用いても良い。
【0147】
次に、ボンド基板1010に絶縁層1014を形成する(図20(B−2)参照)。
【0148】
絶縁層1014は、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等を用いることができる。これらの膜は、熱酸化法、CVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、CVD法を用いて絶縁層1014を形成する場合には、テトラエトキシシラン(略称;TEOS:化学式Si(OC)等の有機シランを用いて作製される酸化シリコン膜を絶縁層1014に用いることが生産性の点から好ましい。
【0149】
本実施の形態では、ボンド基板1010に熱酸化処理を行うことにより絶縁層1014(ここでは、酸化シリコン膜)を形成する。熱酸化処理は、酸化性雰囲気中にハロゲンを添加して行うことが好ましい。例えば、塩素(Cl)が添加された酸化性雰囲気中でボンド基板1010に熱酸化処理を行うことによりHCl酸化された絶縁層1014を形成する。従って、絶縁層1014は、塩素原子を含有した膜となる。
【0150】
なお、本実施の形態においては絶縁層1014を単層構造としているが、積層構造としても良い。また、貼り合わせに際して特に問題がない場合など、絶縁層1014を設ける必要がない場合には、絶縁層1014を設けない構成としても良い。また、ベース基板1000上に、絶縁層1014と同様の材料を用いて絶縁層を形成してもよい。
【0151】
次に、ボンド基板1010にイオンを照射することにより、脆化領域1012を形成する(図20(B−3)参照)。より具体的には、例えば、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを照射して、ボンド基板1010の表面から所定の深さの領域に脆化領域1012を形成する。脆化領域1012が形成される深さは、イオンビームの加速エネルギーやイオンビームの入射角によって制御される。つまり、脆化領域1012は、イオンの平均侵入深さと同程度の深さの領域に形成されることになる。ここで、脆化領域1012が形成される深さは、ボンド基板1010の全面において均一であることが望ましい。
【0152】
また、上述の脆化領域1012が形成される深さにより、ボンド基板1010から分離される半導体層の厚さが決定される。脆化領域1012が形成される深さは、ボンド基板1010の表面から50nm以上1μm以下であり、好ましくは50nm以上300nm以下である。本実施の形態では、イオンの照射を絶縁層1014の形成後に行っているが、これに限られず、絶縁層1014の形成前にイオンの照射を行っても良い。
【0153】
脆化領域1012の形成は、イオンドーピング処理で行うことができる。イオンドーピング処理は、イオンドーピング装置を用いて行うことができる。イオンドーピング装置の代表的な装置は、プロセスガスをプラズマ励起して生成された全てのイオン種をチャンバー内に配置された被処理体に照射する非質量分離型の装置である。非質量分離型の装置であるのは、プラズマ中のイオン種を質量分離しないで、全てのイオン種を被処理体に照射しているからである。これに対して、イオン注入装置は質量分離型の装置である。イオン注入装置は、プラズマ中のイオン種を質量分離し、ある特定の質量のイオン種を被処理体に照射する装置である。
【0154】
イオンドーピング装置の主要な構成は、被処理物を配置するチャンバー、所望のイオンを発生させるイオン源、およびイオンを加速し、照射するための加速機構である。イオン源は、所望のイオン種を生成するためのソースガスを供給するガス供給装置、ソースガスを励起して、プラズマを生成させるための電極などで構成される。プラズマを形成するための電極として、フィラメント型の電極や容量結合高周波放電用の電極などが用いられる。加速機構は、引出電極、加速電極、減速電極、接地電極等の電極など、およびこれらの電極に電力を供給するための電源などで構成される。加速機構を構成する電極には複数の開口やスリットが設けられており、イオン源で生成されたイオンは電極に設けられた開口やスリットを通過して加速される。なお、イオンドーピング装置の構成は上述したものに限定されず、必要に応じた機構が設けられる。
【0155】
本実施形態では、イオンドーピング装置で、水素ガスから生成されるイオンをボンド基板1010に添加する。プラズマソースガスとして水素を含むガスを供給する。例えば、Hを供給する。水素ガスを励起してプラズマを生成し、質量分離せずに、プラズマ中に含まれるイオンを加速し、加速されたイオンをボンド基板1010に照射する。
【0156】
イオンドーピング装置において、水素ガスから生成されるイオン種(H、H、H)の総量に対してHの割合が50%以上とする。より好ましくは、そのHの割合を80%以上とする。イオンドーピング装置は質量分離を行わないため、プラズマ中に生成される複数種の水素イオンのうち、1つ(H)を50%以上とすることが好ましく、80%以上とすることが好ましい。同じ質量のイオンを照射することで、ボンド基板1010の同じ深さに集中させてイオンを添加することができる。
【0157】
脆化領域1012をボンド基板1010の浅い領域に形成するためには、イオンビームの加速電圧を低くする必要があるが、プラズマ中のHイオンの割合を高くすることで、水素イオンを効率よく、ボンド基板1010に添加できる。HイオンはHイオンの3倍の質量を持つことから、同じ深さに水素原子を1つ添加する場合、Hイオンの加速電圧は、Hイオンの加速電圧の3倍にすることが可能となる。これにより、イオンの照射工程のタクトタイムを短縮することが可能となり、生産性やスループットの向上を図ることができる。
【0158】
イオンドーピング装置は廉価で、大面積処理に優れているため、このようなイオンドーピング装置を用いてHを照射することで、半導体特性の向上、大面積化、低コスト化、生産性向上などの顕著な効果を得ることができる。また、イオンドーピング装置を用いた場合、重金属も同時に導入されるおそれがあるが、塩素原子を含有する絶縁層1014を介してイオンの照射を行うことによって、重金属によるボンド基板1010の汚染を防ぐことができる。
【0159】
なお、加速されたイオンビームをボンド基板1010に照射する工程は、イオン注入装置で行うこともできる。イオン注入装置を用いる場合には、質量分離により、Hイオンが照射されるようにすることが好ましい。
【0160】
次に、ベース基板1000とボンド基板1010を貼り合わせる(図20(C)参照)。具体的には、絶縁層1014を介してベース基板1000とボンド基板1010を貼り合わせる。ベース基板1000の表面と絶縁層1014の表面とを接触させた後、加圧処理を施すことで、ベース基板1000とボンド基板1010の貼り合わせが実現される。なお、貼り合わせのメカニズムとしては、ファン・デル・ワールス力が関与するメカニズムや、水素結合が関与するメカニズムなどが考えられている。
【0161】
なお、ボンド基板1010とベース基板1000とを貼り合わせる前に、ボンド基板1010上に形成された絶縁層1014及びベース基板1000上の少なくとも一方にプラズマ処理を行うことが好ましい。絶縁層1014及びベース基板1000の少なくとも一方にプラズマ処理行うことにより、親水基の増加や、平坦性を向上させることができる。その結果、ボンド基板1010とベース基板1000との接合強度を高めることができる。
【0162】
ここで、プラズマ処理は、真空状態のチャンバーに不活性ガス(例えば、Arガス)を導入し、被処理面(例えば、ベース基板1000)にバイアスを印加してプラズマ状態として行う。プラズマ中には電子とArの陽イオンが存在し、陰極方向(ベース基板1000側)にArの陽イオンが加速される。加速されたArの陽イオンがベース基板1000表面に衝突することによって、ベース基板1000表面がスパッタエッチングされる。このとき、ベース基板1000表面の凸部から優先的にスパッタエッチングされ、当該ベース基板1000表面の平坦性を向上することができる。また、加速されたArの陽イオンによって、ベース基板1000の有機物等の不純物を除去し、ベース基板を活性化することができる。また、真空状態のチャンバーに不活性ガスに加えて、反応性ガス(例えば、Oガス、Nガス)を導入し、被処理面にバイアス電圧を印加してプラズマ状態として行うこともできる。反応性ガスを導入する場合、ベース基板1000表面がスパッタエッチングされることにより生じる欠損を、補修することができる。
【0163】
さらに、プラズマ処理の後に、ボンド基板1010上に形成された絶縁層1014と、ベース基板1000の表面処理を行うことが好ましい。表面処理としては、オゾン処理(例えば、オゾン水洗浄またはUVオゾン処理)やメガソニック洗浄、2流体洗浄(純水や水素添加水等の機能水を窒素等のキャリアガスとともに吹き付ける方法)又はこれらを組み合わせて行うことができる。また、オゾン水洗浄とフッ酸による洗浄を複数回繰り返し行ってもよい。特に、上述したように絶縁層1014、ベース基板1000の表面にプラズマ処理を行った後に、表面処理を行うことによって、絶縁層1014、ベース基板1000表面の有機物等のゴミを除去し、表面を親水化することができる。その結果、絶縁層1014とベース基板1000の接合強度を向上させることができる。
【0164】
ボンド基板1010とベース基板1000とを貼り合わせた後に、貼り合わせられたベース基板1000およびボンド基板1010に対して熱処理を施して、貼り合わせを強固なものとすると良い。この際の加熱温度は、脆化領域1012における分離が進行しない温度とする必要がある。例えば、400℃未満、好ましくは300℃以下とする。熱処理時間については特に限定されず、処理時間と貼り合わせ強度との関係から適切な条件を設定すればよい。例えば、200℃、2時間の熱処理を施すことができる。なお、貼り合わせに係る領域にマイクロ波などを照射して、該領域のみを局所的に加熱することも可能である。貼り合わせ強度に問題がない場合には、上記熱処理は省略すれば良い。
【0165】
次に、ボンド基板1010を、脆化領域1012において、半導体層1016とボンド基板1020とに分離する(図20(D)参照)。ボンド基板1010の分離は、熱処理により行うと良い。該熱処理の温度は、ベース基板1000の耐熱温度を目安にすることができる。例えば、ベース基板1000としてガラス基板を用いる場合には、熱処理の温度は400℃以上750℃以下とすることが好ましい。ただし、ガラス基板の耐熱性が許すのであればこの限りではない。なお、本実施の形態においては、600℃、2時間の熱処理を施すこととする。
【0166】
上述のような熱処理を行うことにより、脆化領域1012に形成された微小な空孔の体積変化が生じ、脆化領域1012に亀裂が生ずる。その結果、脆化領域1012に沿ってボンド基板1010が分離する。これにより、ベース基板1000上にはボンド基板1010から分離された半導体層1016が残存することになる。また、この熱処理で、貼り合わせに係る界面が加熱されるため、当該界面に共有結合が形成され、貼り合わせを一層強固なものとすることができる。
【0167】
上述のようにして形成された半導体層1016の表面には、分離工程やイオン照射工程に起因する欠陥が存在し、また、その平坦性は損なわれている。そのため、半導体層1016の欠陥を低減させる処理、または、半導体層1016の表面の平坦性を向上させる処理を行うと良い。
【0168】
本実施の形態において、半導体層1016の欠陥の低減、および、平坦性の向上は、例えば、半導体層1016にレーザー光を照射することで実現できる。レーザー光を半導体層1016に照射することで、半導体層1016が溶融し、その後の冷却、固化によって、欠陥が低減され、表面の平坦性が向上した単結晶半導体層が得られるのである。
【0169】
また、単結晶半導体層の膜厚を小さくする薄膜化工程を行っても良い。半導体層の薄膜化には、ドライエッチング処理またはウエットエッチング処理の一方、または双方を組み合わせたエッチング処理を適用すればよい。例えば、半導体層がシリコンからなる場合、SFとOをプロセスガスに用いたドライエッチング処理で、半導体層を薄くすることができる。
【0170】
以上により、ベース基板1000上に、半導体層1018を形成することができる(図20(E)参照)。
【0171】
なお、本実施の形態では、レーザー光を照射した後に、エッチング処理を行う場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されず、レーザー光を照射する前にエッチング処理を行ってもよいし、レーザー光の照射前後にエッチング処理を行ってもよい。
【0172】
なお、本実施の形態においては、レーザー光を用いて欠陥の低減、および、平坦性の向上を実現しているが、本発明の一態様はこれに限定されない。熱処理など、他の方法を用いて欠陥の低減、平坦性の向上を実現しても良い。また、欠陥低減処理が不要であれば、エッチング処理などの平坦性向上処理のみを適用しても良い。
【0173】
なお、分離後のボンド基板1020は、再生工程によって再生ボンド基板となり、再度用いることができる。分離後のボンド基板1020の表面には、脆化領域1012などに起因する欠陥が存在しているため、再生工程の前にこれら欠陥を除去しておくと良い。このようにすることで、再生工程をより好適に行うことができる。除去の方法としては、エッチング処理や、CMPなどの研磨処理がある。
【0174】
<太陽電池グレードシリコンについて>
次に、本実施の形態で用いるベース基板1000の一態様として、太陽電池グレードシリコンを用いる場合について詳細に説明する。
【0175】
SOI基板の作製工程で説明したように、ベース基板1000は、後に半導体層1016となるボンド基板1010と、同材質の絶縁層1014を介して化学結合にて貼り合わせが行われる。従って、ベース基板1000には、シリコン基板を用いることが好ましい。また、従来のバルクウエハを用いたデバイスの製造工程をそのまま流用できる点や、半導体層1016と相互的に機械的性質の相性が良い点などからも、シリコン基板をベース基板1000として用いることに利点がある。
【0176】
本形態においても、ベース基板1000には、シリコン基板を用いることができる。ただし、本形態では、従来から用いられている半導体グレードの品質を有した単結晶シリコンではなく、太陽電池グレードの品質を有した単結晶シリコンを用いることが好ましい。
【0177】
従来の半導体グレードの単結晶シリコンは、純度が11N(イレブンナイン)以上であり、極微量の不純物がデバイス特性に影響するような微細デバイスにも用いられる。高純度のシリコン材料を得る代表的な製法としては、中間化合物のトリクロロシラン(SiHCl)を水素で還元するシーメンス法が知られており、その概要を説明する。
【0178】
珪石をコークスなどと混同して還元焼成し、純度98乃至99%の金属グレートシリコンを製造する。
【0179】
SiO+C→Si+CO
SiO+2C→Si+CO
【0180】
次に、この金属グレードシリコンを塩化水素と高温で反応させ、トリクロロシラン(SiHCl)を得る。
【0181】
Si+3HCl→SiHCl+H
【0182】
得られた液体のトリクロロシラン(SiHCl)を精留し、気化して水素とともに反応炉内に導入すると、約1100〜1200℃に加熱したシリコン心棒の表面で反応が起こり、純度11N(イレブンナイン)の多結晶シリコンがシリコン心棒の表面に堆積する。
【0183】
SiHCl+H→Si+3HCl
【0184】
以上までが、一般的に用いられている半導体グレードの単結晶シリコンを作製するための高純度シリコン材料の製法である。この後、高純度の多結晶シリコン材料を石英坩堝で溶解するとともに目的とする導電型を与える不純物を混入し、シリコンの融液に接触させた種結晶を回転させながら単結晶シリコンのインゴットを成長させる。この様な方法を一般的にチョクラルスキー法(CZ法)と呼び、その後板状に切り出して鏡面研磨したものが半導体グレード単結晶シリコン基板である。
【0185】
一方、太陽電池グレードの単結晶シリコンは、純度が6N乃至7N程度であり、VLSIなどの半導体デバイス用途には用いることはできないが、太陽電池用途としては十分に機能する。太陽電池グレード単結晶シリコン材料の製造方法としては、種々の方法が試みられているが、亜鉛還元法を用いて作製したものが好ましい。以下、亜鉛還元法による太陽電池グレードシリコン材料の製造方法について概要を説明する。
【0186】
シーメンス法と同様に珪石をコークスなどと混同して還元焼成し、純度98乃至99%の金属グレードシリコンを製造する。
【0187】
SiO+C→Si+CO
SiO+2C→Si+CO
【0188】
次に、この金属グレードシリコンを塩素と高温で反応させ、四塩化ケイ素(SiCl)を得る。
【0189】
Si+2Cl→SiCl
【0190】
得られた液体の四塩化ケイ素(SiCl)を精留して気化し、同じく気化した亜鉛ガス(沸点907℃)とともに反応炉内に導入する。反応炉内部で還元反応により純度6N乃至7Nの多結晶シリコンが析出する。
【0191】
SiCl+2Zn→Si+2ZnCl
【0192】
なお、ここで副生成物である塩化亜鉛(ZnCl)は捕集槽に固体として回収することができる。
【0193】
以上が亜鉛還元法による純度6N乃至7Nの太陽電池グレードシリコン材料の製造方法である。以降の単結晶インゴット引き上げ手法及び切り出し、研磨等による基板化の手法は前述した半導体グレード単結晶シリコンと同様である。
【0194】
ここまでに説明した半導体グレードシリコン材料の製造方法であるシーメンス法と太陽電池グレードシリコン材料の製造方法である亜鉛還元法は、上述した製法の違い以外にコストが大きく異なっていることが知られている。
【0195】
その理由として、シーメンス法におけるトリクロロシラン(SiHCl)と水素の反応速度よりも亜鉛還元法における四塩化ケイ素と亜鉛ガスの反応速度が速く、収率も高い点がある。また、その反応温度も亜鉛還元法の方が低く、装置のランニングコストが抑えられる。更に、亜鉛還元法では、未反応の中間化合物、及び副生成物を回収し再利用し易い点も挙げられる。
【0196】
シーメンス法では未反応のトリクロロシラン(SiHCl)とともに排気されるのは、同じく未反応の水素と副生成物の塩化水素である。トリクロロシラン(SiHCl)は常温では液体であり、回収物を全て再利用するには気液分離と更に気体成分の分離及びその設備が必要となる。一方の亜鉛還元法では、未反応の四塩化ケイ素とともに排出されるのは、副生成物の塩化亜鉛(ZnCl)のみである。反応温度では、塩化亜鉛(ZnCl)は気体であるが、捕集槽で固化温度(融点275℃)以下に冷却されると固体となって回収される。四塩化ケイ素も常温では液体であり、回収物は容易に固液分離できる。回収した塩化亜鉛(ZnCl)は、溶融状態で電気分解することができ、陰極で析出する金属亜鉛と陽極で発生する塩素を分離回収して再利用することができる。
【0197】
従って、亜鉛還元法の製造に要するエネルギーは、シーメンス法の1/4乃至1/5となり、製造コストは、1/3乃至1/5が見込まれている。
【0198】
本形態で用いるベース基板1000は、この亜鉛還元法によって作製された単結晶シリコンを用いることが好ましい。前述したように、単結晶シリコンは、ベース基板1000として相応しい材料ではあるが、素子を形成するシリコン活性層とは絶縁酸化膜を介して分離されているものである。従って、単結晶シリコンの純度は、バックゲートの電極として用いられる場合も含めて、素子特性を左右させるものではない。つまり、ベース基板1000として用いる単結晶シリコンは、支持体としての機能が主である。従って、純度の低く安価な太陽電池グレードの単結晶シリコンでもベース基板1000として用いることができる。
【0199】
一方、シリコン活性層を形成するためのボンド基板1010には、半導体グレードの単結晶シリコンを用いる。つまり、本形態においては、ベース基板1000とシリコン活性層を形成するためのボンド基板1010は、それぞれ純度の異なる単結晶シリコンを用いていることができる。
【0200】
また、従来のSOI基板では、ベース基板1000には、後に半導体層1016となる半導体グレードの単結晶シリコンが用いられており、材料コストを押し上げる要因となっていた。本形態で用いた亜鉛還元法による太陽電池グレードの単結晶シリコン基板をベース基板1000に用いることによって、特性を落とすことなく、高性能で安価なデバイスを提供することができる。
【0201】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせ又は置き換えを行うことができる。
【符号の説明】
【0202】
100 単結晶半導体基板
102 絶縁層
104 単結晶半導体層
106a 単結晶半導体層
106b 単結晶半導体層
108 素子分離絶縁層
110a ゲート絶縁層
110b ゲート絶縁層
112a ゲート電極
112b ゲート電極
114a 低導電性領域
114b 低導電性領域
116 絶縁層
116a サイドウォール絶縁層
116b サイドウォール絶縁層
118a 高導電性領域
118b 高導電性領域
120 金属層
122a 金属化合物領域
122b 金属化合物領域
124a 金属化合物領域
124b 金属化合物領域
126 マスク
128a 金属領域
128b 金属領域
130a 金属領域
130b 金属領域
132a 層間絶縁層
132b 層間絶縁層
134a 導電層
134b 導電層
601 一点鎖線
602 金属層
603 マスク
604a 金属領域
604b 金属領域
604c 金属領域
605a 金属領域
605b 金属領域
605c 金属領域
701 金属層
702 金属層
703 マスク
704a 金属領域
704b 金属領域
704c 金属領域
705a 金属領域
705b 金属領域
705c 金属領域
706a 金属領域
706b 金属領域
706c 金属領域
707a 金属領域
707b 金属領域
707c 金属領域
801a 絶縁層
801b 絶縁層
802a 絶縁層
802b 絶縁層
803a 絶縁層
803b 絶縁層
804a 絶縁層
804b 絶縁層
805a 絶縁層
805b 絶縁層
900 マイクロプロセッサ
901 演算回路
902 演算回路制御部
903 命令解析部
904 制御部
905 タイミング制御部
906 レジスタ
907 レジスタ制御部
908 バスインターフェース
911 RFCPU
912 アナログ回路部
913 デジタル回路部
914 共振回路
915 整流回路
916 定電圧回路
917 リセット回路
918 発振回路
919 復調回路
920 変調回路
921 RFインターフェース
922 制御レジスタ
923 クロックコントローラ
924 CPUインターフェース
925 中央処理ユニット
926 ランダムアクセスメモリ
927 専用メモリ
928 アンテナ
929 容量部
930 電源管理回路
1000 ベース基板
1010 ボンド基板
1012 脆化領域
1014 絶縁層
1016 半導体層
1018 半導体層
1020 ボンド基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料を含むチャネル形成領域と、
前記チャネル形成領域に接し、前記半導体材料を含む導電性領域と、
前記導電性領域に接する金属領域と、
前記チャネル形成領域に接するゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層に接するゲート電極と、
前記金属領域を一部に含むソース電極またはドレイン電極と、を有する半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ゲート絶縁層と前記チャネル形成領域の接触界面が、前記金属領域と前記導電性領域との接触界面より上方に存在する半導体装置。
【請求項3】
半導体材料を含むチャネル形成領域と、
前記チャネル形成領域に接し、前記半導体材料を含む導電性領域と、
前記導電性領域に接し、前記半導体材料の金属化合物を含む金属化合物領域と、
前記金属化合物領域に接する金属領域と、
前記チャネル形成領域に接するゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層に接するゲート電極と、
前記金属領域を一部に含むソース電極またはドレイン電極と、を有し、
前記金属化合物を構成する金属元素と、前記金属領域を構成する金属元素とは同一である半導体装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記ゲート電極の一部に、前記金属化合物を含む領域を有する半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記導電性領域に添加された導電型を付与する不純物元素の濃度は、1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下である半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記導電性領域は、前記チャネル形成領域に接する低導電性領域と、前記低導電性領域に接する高導電性領域を有し、
前記低導電性領域に添加された導電型を付与する不純物元素の濃度は1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下であり、前記高導電性領域に添加された導電型を付与する不純物元素の濃度より小さい濃度である半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一において、
前記金属領域が、前記導電性領域と重畳しない領域にも存在する半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一において、
前記チャネル形成領域は、絶縁層上に存在する半導体層中に形成された半導体装置。
【請求項9】
請求項8において、
上部に前記絶縁層が設けられたべース基板を有する半導体装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記ベース基板は、ガラス基板、単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板、又は太陽電池グレードシリコン基板のいずれか一である半導体装置。
【請求項11】
半導体材料を含む領域に接するゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層に接するゲート電極と、
前記ゲート電極と重畳するチャネル形成領域と、
前記チャネル形成領域に接する導電性領域と、を形成し、
前記導電性領域の一部を除去し、
前記導電性領域の一部が除去された領域に金属層を形成して、前記導電性領域と接する金属領域を形成し、
前記金属領域を一部に含むソース電極またはドレイン電極を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項12】
半導体材料を含む領域に接するゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層に接するゲート電極と、
前記ゲート電極と重畳するチャネル形成領域と、
前記チャネル形成領域に接する導電性領域と、を形成し、
前記導電性領域に接する金属層を形成することで、前記導電性領域に接し、前記半導体材料の金属化合物を含む金属化合物領域と、前記金属化合物領域に接する金属領域と、を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記金属層を前記ゲート電極に接するように形成することで、前記ゲート電極の一部に前記金属化合物を含む領域を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれか一において、
導電型を付与する不純物元素を1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下の濃度で添加することにより、前記導電性領域を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれか一において、
導電型を付与する不純物元素を1×1019cm−3以上1×1021cm−3以下の濃度で添加することにより、前記導電性領域の一部である低導電性領域を形成し、
導電型を付与する不純物元素を前記低導電性領域より高濃度となるよう添加することにより、前記導電性領域の一部である高導電性領域を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項16】
請求項11乃至15のいずれか一において、
前記金属層を、前記導電性領域と重畳しない領域にも形成する半導体装置の作製方法。
【請求項17】
請求項11乃至16のいずれか一において、
前記半導体材料を含む領域を、絶縁層上に形成する半導体装置の作製方法。
【請求項18】
請求項11乃至16のいずれか一において、
イオンが照射されたボンド基板を絶縁層を介してベース基板に貼り合わせ、
前記ボンド基板から分離されたボンド基板の一部の膜を前記ベース基板に形成することにより、
前記絶縁層を介して前記ベース基板上に、前記半導体材料からなる半導体膜を形成する半導体装置の作製方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記ベース基板として、ガラス基板、単結晶シリコン基板、多結晶シリコン基板、又は太陽電池グレードシリコン基板のいずれか一を用いる半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−29610(P2011−29610A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136048(P2010−136048)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】