説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】構造が簡単なトランジスタにより、サステイン耐圧を改善し且つサステイン耐圧のばらつきの抑制及びトランジスタ形成後のドレイン抵抗及び接合プロファイルの調整が可能な、自由度が高い半導体装置を実現できるようにする。
【解決手段】半導体装置は、p型ウェル102に形成され、互いに並行に延びると共に、ゲート長方向の幅が比較的に大きい第1ゲート電極125と、ゲート長方向の幅が比較的に小さい第2ゲート電極126と、p型ウェル102における第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126同士の間に形成されたLDD低濃度領域135と、該p型ウェル102における第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126のそれぞれの外側に形成されたLDD中濃度領域134とを有している。LDD低濃度領域135の不純物濃度は、LDD中濃度領域134の不純物濃度よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Transistor)分野における高電圧を駆動可能な高集積CMIS(Complementary Metal Insulator semiconductor)用トランジスタ等の半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高度集積化及び微細化に伴い、トランジスタにおいても微細化が急速に進められている。トランジスタの微細化に伴い、半導体集積回路装置の電源電圧は、スケーリング則に応じて低下している。一方、高耐圧トランジスタを搭載した高性能LSI(Large Scale Integration)が環境分野及び車載分野の用途として必要性を増している。これらの市場の要望を満たすために、現在では微細CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)デバイスである、例えば駆動電圧が1.2Vの低電圧駆動トランジスタと駆動電圧が3.3VのI/Oトランジスタとに加えて、電源コントローラ、モータコントローラ又はLCD等を駆動するための5V、12V若しくは24V、又はそれ以上の電源電圧を要求される高耐圧トランジスタが必要となっており、これらを混載した集積回路装置の開発が加速している。
【0003】
これら高耐圧トランジスタを作製するには、ゲート絶縁膜の耐圧及びソース・ドレイン間の耐圧(サステイン耐圧)等の各耐圧を十分に高める必要があり、一般に、ゲート絶縁膜の耐圧は、その厚膜化により耐圧を向上させている。一方、サステイン耐圧の向上を図るには、通常、MOS型のトランジスタにおいて、図26に示すように、ゲート電極19の近傍のドレイン領域15に、レジストマスクを用いて濃度が薄い拡散層16を形成するドレイン拡張型のNMOSトランジスタ1Aがある。また、図27に示すように、ゲート電極19の下側に濃度が低い不純物領域よりなるPN接合を備えたドレイン拡張型のNMOSトランジスタ1Bが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
図26に示すNMOSトランジスタ1Aは、その全体が半導体基板11のp型ウェル領域12に形成される。ソース領域13と隣接するソースLDD領域14は、通常のCMOSに適用されるn型LDD(Lightly Doped Drain)注入法により形成される。ドレイン領域105と隣接するドレインLDD領域16の不純物濃度は、ソースLDD領域14の不純物濃度よりも低いn型ドーパント濃度を有する、極低濃度にドープされた領域である。
【0005】
NMOSトランジスタ1Aの製造方法は、まず、半導体基板11の上部に素子分離17を選択的に形成し、さらに、半導体基板11にp型ウェル領域12を形成する。その後、半導体基板11の主面上にゲート絶縁膜18を形成し、続いて、ゲート絶縁膜18の上にゲート電極19を選択的に形成する。
【0006】
次に、イオン注入法により、ゲート電極19をマスクとしてp型ウェル領域12にイオン打ち込みを行って、ドレインLDD領域16を形成する。
【0007】
次に、ゲート電極19をマスクとして、コアCMOSのn型LDD注入法により、p型ウェル領域12にソースLDD領域14を形成する。このとき、先に形成されたドレインLDD領域16を第1のレジストマスク(図示せず)によりマスクする。
【0008】
次に、ゲート電極19を覆うように、半導体基板11の主面上に、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を成膜する。その後、第2のレジストマスクにより、ドレインLDD領域16を保護した状態で、成膜されたシリコン酸化膜等に対して異方性エッチングを行って、サイドウォール20及びシリサイドブロック22を形成する。
【0009】
次に、CMOSのn型ソース・ドレイン注入法により、ゲート電極19、サイドウォール20及びシリサイドブロック22をマスクとして、p型ウェル領域12の上部にソース領域13及びドレイン領域15を自己整合的に形成する。
【0010】
次に、半導体基板11の上に、高融点金属膜を成膜した後、熱処理を行うことにより、ソース領域13及びドレイン領域15の上部並びにゲート電極19のシリサイドブロック22からの露出面に、それぞれシリサイド層112を自己整合的に形成する。
【0011】
これにより、極めて低濃度のドレインLDD領域16であるドレイン拡張領域を備えたNMOSトランジスタ1Aが形成される。
【0012】
一方、図27に示すように、ドレイン拡張型のNMOSトランジスタ1Bの製造方法は、まず、半導体基板11の上部に、第1の素子分離17及び第2の素子分離25を選択的に形成する、その後、通常CMOSに適用されるNMOS及びPMOSトランジスタ製造用のツイン・ウェル注入法により、半導体基板11の上部に、それぞれレジストマスクによって定義された領域に対して、p型ウェル領域12及びn型ウェル領域14を形成する。
【0013】
次に、半導体基板11の主面上に、ゲート絶縁膜18及びゲート電極19を順次形成する。この際、ゲート電極19は第2の素子分離25の一部と重なるように形成される。
【0014】
次に、通常のCMOSに適用されるn型LDD注入法により、トランジスタ領域の全面に不純物の打ち込みを行って、ソースLDD領域14を形成する。このとき、ゲート電極19及び第2の素子分離25によって自己整合的に必要な部分にのみ不純物が注入される。
【0015】
次に、ゲート電極19を覆うように、半導体基板11の主面上に、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を成膜する。その後、成膜されたシリコン酸化膜等に対して異方性エッチングを行って、サイドウォール20を形成する。
【0016】
次に、CMOSのn型ソース・ドレイン注入法により、ゲート電極19及びサイドウォール20、第1の素子分離17及び第2の素子分離25をマスクとして、p型ウェル領域12及びn型ウェル領域14の各上部にソース領域13及びドレイン領域15をそれぞれ自己整合的に形成する。
【0017】
次に、半導体基板11の上に、高融点金属膜を成膜した後、熱処理を行うことにより、ソース領域13、ドレイン領域15及びゲート電極19の各上部にシリサイド層23をそれぞれ自己整合的に形成する。
【0018】
ここで、p型ウェル領域12の濃度並びにn型ウェル領域16の横方向のサイズ及び濃度は、ドレインからバルクへの破壊電圧を制御する必要性(例えば、サイズが大きくなれば破壊電圧が上昇し、また、濃度が薄くなれば破壊耐圧が上昇する)と、トランジスタの動作特性とに対して、別々に最適化されている。これにより、ドレイン拡張型のNMOSトランジスタ1Bは、ソース領域13とドレイン領域15との各拡散層とそれぞれ接続され、且つゲート電極19の下側のゲート絶縁膜18の直下に極めて低濃度にドープされたPN接合26を形成することにより、耐圧の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2001−168210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、図26に示したドレイン拡張型のNMOSトランジスタ1Aは、ドレインLDD領域16をマスクする際にレジストマスクを用いているため、マスク境界27及びマスク境界28が存在するため、マスクのアライメントずれを考慮する必要がある。このため、特にドレイン領域15上のマスク境界28においては、ゲート電極19から所定の距離を保つ必要があり、そのためのマージンによってサステイン耐圧のばらつきが発生し易く、且つ、デバイスの面積が増大するという問題が生じる。その上、互いに隣接して形成された2つのゲート電極19を有し、各ソース領域13又はドレイン領域15のいずれか一方を共有する2つのトランジスタ1Aを差動回路として用いるペア型トランジスタにおいては、マスクのアライメントずれが一方向にずれると、非対称なペア型トランジスタが形成されてしまう。この非対称に形成されたペア型トランジスタでは、駆動電流等の動作特性にばらつきが生じて、デバイス性能が劣化するという問題がある。
【0021】
また、図27に示したドレイン拡張型のNMOSトランジスタ1Bは、サステイン耐圧の改善は見込めるものの、ゲート絶縁膜18の直下に形成された低濃度のPN接合26を形成するためにレジストマスクを用いている。このため、マスク境界29及びマスク境界30が存在する。従って、p型ウェル領域12及びn型ウェル領域14のそれぞれのアライメントずれにより、PN接合26の濃度が一定とならず、耐圧にばらつきが生じる。その上、ドレイン拡張型のNMOSトランジスタ1Aと同様に、各ソース領域13又はドレイン領域15のいずれか一方を共有する2つのトランジスタ1Bを差動回路として用いるペア型トランジスタにおいては、マスクのアライメントずれが一方向にずれることにより、非対称なペア型トランジスタが形成されてしまう。このため、駆動電流等の動作特性にばらつきが生じて、デバイス性能が劣化するという問題がある。
【0022】
前記に鑑み、本発明は、構造が簡単なトランジスタにより、面積の増大及び製造工程の増加を生じることなくサステイン耐圧を改善し、且つサステイン耐圧のばらつきの抑制及びトランジスタ形成後のドレイン抵抗及び接合プロファイルの調整が可能な、自由度が高い半導体装置を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記の目的を達成するため、本発明は、半導体装置を、一の半導体領域に形成され、互いに並行に延びると共に、ゲート長方向の幅が比較的に大きい第1ゲート電極及び比較的に小さい第2ゲート電極とを有し、半導体領域における第1ゲート電極及び第2ゲート電極同士の間の拡散層の不純物濃度が、該半導体領域における第1ゲート電極及び第2ゲート電極のそれぞれ外側の拡散層の不純物濃度よりも低い構成とする。
【0024】
具体的に、本発明に係る半導体装置は、第1導電型の第1半導体領域の上に第1ゲート絶縁膜を介在させて形成された第1ゲート電極と、第1半導体領域の上に第1ゲート絶縁膜を介在させると共に、第1ゲート電極と間隔をおいて並行に形成され、第1ゲート電極よりもゲート長方向の幅が小さい第2ゲート電極と、第1半導体領域における第1ゲート電極の両側方の領域にそれぞれ形成され、第2導電型の第1不純物を含む第1ソース領域及び第2導電型の第2不純物を含む第1ドレイン領域と、第1半導体領域における第2ゲート電極の両側方の領域にそれぞれ形成され、第2導電型の第3不純物を含む第2ソース領域及び第2導電型の第4不純物を含む第2ドレイン領域とを備え、第1ソース領域における第1不純物の濃度は、第1ドレイン領域における第2不純物の濃度よりも高く、第2ソース領域における第3不純物の濃度は、第2ドレイン領域における第4不純物の濃度よりも低く、第2ソース領域は、第1ドレイン領域と共有されている。
【0025】
本発明の半導体装置によると、第1ゲート電極と第2ゲート電極とを並行に形成することにより、第1ゲート電極と第2ゲート電極との間にある第1ドレイン領域及び第2ソース領域への不純物の注入量をレジストマスクを用いることなく自己整合的に減らすことができる。その結果、マスク合わせが不要となるため、サステイン耐圧のばらつきがなく、且つデバイス面積の増大と工程の増加によるコストの増大を抑制することができる。
【0026】
また、第1ゲート電極と第2ゲート電極との間の第1ドレイン領域及び第2ソース領域の不純物濃度が低いため、第1ゲート電極の端部では電界が緩やかな注入プロファイルを形成できる。このため、インパクトイオン化率を低減できるので、基板リーク電流の増加による基板電位の上昇に伴うサステイン耐圧の低下を改善することができる。
【0027】
また、第1ゲート電極における第1ソース領域と第1ドレイン領域との間の実効チャネル長を広げることができるため、ショートチャネル効果の影響を低減できるので、トランジスタ領域を縮小でき、小チップ化を図ることができる。
【0028】
さらに、第2ゲート電極に適当な電位を与えることにより、外部から第1ドレイン領域及び第2ドレイン領域の空乏層の幅、抵抗及び電界を調整できるため、回路設計の自由度が高く、サステイン耐圧の向上に加えてホットキャリアが流れる方向と位置とを変更できるので、ホットキャリアの寿命の劣化を改善することができる。
【0029】
本発明の半導体装置は、第1ゲート電極と第2ゲート電極との各側面上にそれぞれ形成され、絶縁体からなるサイドウォールをさらに備え、第1ゲート電極と第2ゲート電極との対向する側面上に形成されたサイドウォール同士は、互いに接触していてもよい。
【0030】
本発明の半導体装置において、第1ソース領域、第1ドレイン領域、第2ソース領域及び第2ドレイン領域は、それぞれの接合深さが互いに同一の接合面を有していてもよい。
【0031】
本発明の半導体装置において、第1ドレイン領域は、第1不純物を含み且つ第1ゲート電極と重なるように形成され、第1不純物による第1のPN接合と、第1のPN接合から第2ゲート電極側に離れた領域に形成され、第1のPN接合よりも高い濃度を持つ、第2不純物による第2のPN接合と、第2のPN接合から第2ゲート電極側の領域に形成され、第2のPN接合よりも高い濃度を持つ、第3不純物による第3のPN接合とを有していてもよい。
【0032】
本発明の半導体装置において、第1ソース領域における第1不純物が添加された領域及び第2ドレイン領域における第4不純物が添加された領域には、第1不純物及び第4不純物よりも高い濃度を持つ第2導電型の第5不純物が添加され、第5不純物が添加された領域は、第1不純物が添加された領域及び第4不純物が添加された領域に包含されて形成されていてもよい。
【0033】
本発明の半導体装置は、第1ソース領域及び第2ドレイン領域の上部に形成された金属層をさらに備え、金属層は、第1ドレイン領域及び第2ソース領域の上部には形成されていなくてもよい。
【0034】
本発明の半導体装置は、第1半導体領域の上に第1ゲート絶縁膜をそれぞれ介在させると共に、第1ソース領域における第1ゲート電極のゲート幅方向に沿った中心線をそれぞれ線対称として形成され、第1ゲート電極と同一の構成を持つ第3ゲート電極、及び第2ゲート電極と同一の構成を持つ第4ゲート電極と、第1半導体領域における第3ゲート電極の両側方の領域にそれぞれ形成され、第1不純物を含む第3ソース領域及び第2不純物を含む第3ドレイン領域と、第1半導体領域における第4ゲート電極の両側方の領域にそれぞれ形成され、第3不純物を含む第4ソース領域及び第4不純物を含む第4ドレイン領域とをさらに備え、第3ソース領域における第1不純物の濃度は、第3ドレイン領域における第2不純物の濃度よりも高く、第4ソース領域における第3不純物の濃度は、第4ドレイン領域における第4不純物の濃度よりも低く、第3ソース領域は、第1ソース領域と共有され、且つ第4ソース領域は、第3ドレイン領域と共有されていてもよい。
【0035】
このようにすると、ソース領域を共有した隣り合わせのトランジスタを差動回路として用いるペア型トランジスタにおいても、マスクのアライメントずれが生じないため、特性ばらつきの増大によるデバイスの性能劣化がない。
【0036】
また、本発明の半導体装置は、第1半導体領域の上に第1ゲート絶縁膜をそれぞれ介在させると共に、第2ドレイン領域における第2ゲート電極のゲート幅方向に沿った中心線をそれぞれ線対称として形成され、第2ゲート電極と同一の構成を持つ第4ゲート電極、及び第1ゲート電極と同一の構成を持つ第3ゲート電極と、第1半導体領域における第3ゲート電極の両側方の領域にそれぞれ形成され、第1不純物を含む第3ソース領域及び第2不純物を含む第3ドレイン領域と、第1半導体領域における第4ゲート電極の両側方の領域にそれぞれ形成され、第3不純物を含む第4ソース領域及び第4不純物を含む第4ドレイン領域とをさらに備え、第3ソース領域における第1不純物の濃度は、第3ドレイン領域における第2不純物の濃度よりも高く、第4ソース領域における第3不純物の濃度は、第4ドレイン領域における第4不純物の濃度よりも低く、第4ドレイン領域は、第2ドレイン領域と共有され、且つ第4ソース領域は、第3ドレイン領域と共有されていてもよい。
【0037】
このようにすると、ドレイン領域を共有した隣り合わせのトランジスタを差動回路として用いるペア型トランジスタにおいても、マスクのアライメントずれが生じないため、特性ばらつきの増大によるデバイスの性能劣化がない。
【0038】
本発明の半導体装置において、第1ソース領域と第1ゲート電極との重なり部分の第1オーバラップ量は、第1ドレイン領域と第2ゲート電極との重なり部分の第2オーバラップ量よりも大きくてもよい。
【0039】
また、本発明の半導体装置において、第2ソース領域と第2ゲート電極との重なり部分の第3オーバラップ量は、第2ドレイン領域と第2ゲート電極との重なり部分の第4オーバラップ量よりも小さくてもよい。
【0040】
本発明の半導体装置において、第2ソース領域と第2ドレイン領域とは、第1半導体領域における第2ゲート電極の下側部分において接触して短絡していてもよい。
【0041】
本発明の半導体装置において、第1半導体領域における第1ゲート電極の中央部の下側部分の導電型と、第2ゲート電極の中央部の下側部分の導電型とは、極性が互いに逆であってもよい。
【0042】
本発明の半導体装置において、第1ゲート電極と第2ゲート電極との間隔は、第1ゲート電極及び第2ゲート電極の高さの70%以下であり、第2ゲート電極のゲート長方向の幅は、第1ゲート電極及び第2ゲート電極の高さの1.3倍以上であってもよい。
【0043】
本発明の半導体装置は、第2半導体領域の上に第1ゲート絶縁膜よりも薄い第2ゲート絶縁膜を介在させて形成された第3ゲート電極をさらに備えていてもよい。
【0044】
このようにすると、通常のMIS構造による拡散から変更がなく、簡単な構造で低電圧駆動のロジックコアトランジスタとの混載が容易となる。
【0045】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、第1ソース領域、第1ドレイン領域、第2ソース領域及び第2ドレイン領域を、第1ゲート電極及び第2ゲート電極をマスクとして、互いに異なる少なくとも3方向からのイオン注入によって形成する。
【0046】
本発明の半導体装置の製造方法によると、互いに並行に形成された第1ゲート電極と第2ゲート電極とをマスクとしてイオン注入することにより、第1ゲート電極と第2ゲート電極との間にある第1ドレイン領域及び第2ソース領域への不純物の注入量をレジストマスクを用いることなく自己整合的に減らすことができる。その結果、マスク合わせが不要となることから、サステイン耐圧のばらつきがなく、且つデバイス面積の増大と工程の増加によるコストの増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法によると、面積の増大及び製造工程の増加を生じることなくサステイン耐圧を改善し、サステイン耐圧のばらつきの抑制及びトランジスタの形成後のドレイン抵抗及び接合プロファイルの調整が可能な、自由度が高い半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る半導体装置を示す要部の断面図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図3】図3は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図4】図4は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図5】図5は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図6】図6は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図7】図7(a)は本発明の一実施形態に係る半導体装置における低濃度LDD領域が形成可能な最大チルト角の範囲を示す図である。図7(b)は本発明の一実施形態に係る半導体装置における低濃度LDD領域が形成可能な最大ゲート電極間隔の範囲を示す図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は本発明の一実施形態に係る半導体装置における高耐圧LDD注入時のレイアウト図である。
【図9】図9は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図10】図10は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図11】図11は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図12】図12は本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図13】図13は本発明の一実施形態の第1変形例に係る半導体装置であって、ソース領域を共有するペア型トランジスタの要部を示す断面図である。
【図14】図14は本発明の一実施形態の第2変形例に係る半導体装置であって、ドレイン領域を共有するペア型トランジスタの要部を示す断面図である。
【図15】図15は本発明の一実施形態に係る半導体装置における第1ゲート電極及び第2ゲート電極の各電位と空乏層を示す模式的な断面図である。
【図16】図16は本発明の一実施形態に係る半導体装置における第1ゲート電極及び第2ゲート電極の各電位と空乏層を示す模式的な断面図である。
【図17】図17は本発明の一実施形態に係る半導体装置における第1ゲート電極及び第2ゲート電極の各電位と空乏層を示す模式的な断面図である。
【図18】図18は本発明の一実施形態に係る半導体装置における第1ゲート電極及び第2ゲート電極の各電位と空乏層を示す模式的な断面図である。
【図19】図19は本発明の一実施形態の第3変形例に係る半導体装置の要部を示す断面図である。
【図20】図20は本発明の一実施形態の第4変形例に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図21】図21は本発明の一実施形態の第5変形例に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図22】図22は本発明の一実施形態の第5変形例に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図23】図23は本発明の一実施形態の第6変形例に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図24】図24は本発明の一実施形態の第7変形例に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図25】図25は本発明の一実施形態の第7変形例に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図26】図26は第1の従来例に係る半導体装置を示す断面図である。
【図27】図27は第2の従来例に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
(一実施形態)
本発明の一実施形態に係る半導体装置について図1を参照しながら説明する。
【0050】
図1に示すように、一実施形態に係る半導体装置は、例えば、環境保護に対応する高効率な電源制御機能付きポータブルデバイスで使用される、5Vの電源電圧と接続された高耐圧トランジスタ120と、1.2Vの電源電圧と接続され、高速動作用途の微細トランジスタ121とが混載されている構成例を説明する。
【0051】
なお、図1においては、高圧トランジスタ120において、NMISトランジスタのみを示しているが、例えばCMISを構成するために、1つの半導体基板101にNMISトランジスタとPMISトランジスタとが同時に形成されていることは自明であることから、NMISトランジスタのみを図示している。同様に、微細トランジスタ121においても、NMISトランジスタのみを図示し、PMISトランジスタを省略している。
【0052】
高耐圧トランジスタ120は、例えばシリコン(Si)からなる半導体基板101の上部に形成されたp型ウェル102及び該p型ウェル102の上に形成されている。p型ウェル102は、シャロウトレンチ分離(STI:Shallow Trench Isolation)からなる素子分離107によって区画されており、p型ウェル102の上には、例えば酸化シリコン(SiO)からなるゲート絶縁膜108をそれぞれ介在させ、互いに間隔をおいて並行に延びる第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126が形成されている。ここで、第1ゲート電極125のゲート長方向の幅は比較的に大きく、例えば500nm〜1000nm程度に設定されている。これに対し、第2ゲート電極126のゲート長方向の幅は比較的に小さく、例えば100nm〜200nm程度に設定されている。また、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126との間隔は、80nm〜200nm程度に設定されている。
【0053】
各ゲート電極125、126のゲート長方向の両側面上には、積層された絶縁膜からなるサイドウォール110が形成されている。該サイドウォール110は、内側から順次形成されたオフセットサイドウォール145、断面L字状のサイドウォール下層膜149及びサイドウォール上層膜150から構成される。なお、本実施形態においては、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126との間の領域に形成されるサイドウォール110同士は、互いに接触して形成されている。
【0054】
p型ウェル102の上部であって、第1ゲート電極125における第2ゲート電極126と反対側の側部の下側及びその側方の領域には、n型のLDD中濃度領域134が形成されている。また、p型ウェル102の上部における第1ゲート電極125と第2ゲート電極126との間の領域には、n型のLDD低濃度領域135が形成され、第2ゲート電極126の下側の領域及び第1ゲート電極125と反対側の側方の領域には、n型のLDD中濃度領域134が形成されている。ここで、LDD低濃度領域135は、第1ゲート電極125における第2ゲート電極126側の側部の下側にも重なり部分を有している。また、LDD低濃度領域135は、第1ゲート電極125に対するドレイン領域と第2ゲート電極126に対するソース領域として共有されている。また、LDD中濃度領域134及びLDD低濃度領域135の不純物の拡散深さは、ほぼ同一に設定されている。
【0055】
第1ゲート電極125に対して第2ゲート電極126と反対側に位置するLDD中濃度領域134には、外側のサイドウォール110の下側及びその側方の領域に、LDD中濃度領域134よりも接合深さが浅く且つ高濃度のn型のソース領域103が形成されている。また、第2ゲート電極126に対して第1ゲート電極125と反対側に位置するLDD中濃度領域134には、外側のサイドウォール110の下端部及びその側方の領域に、LDD中濃度領域134よりも接合深さが浅く且つ高濃度のn型のドレイン領域105が形成されている。
【0056】
第1ゲート電極125、第2ゲート電極126、ソース領域103及びドレイン領域105の各上部には、ニッケル(Ni)等からなるシリサイド層112がそれぞれ形成されている。
【0057】
なお、図示しないPMISトランジスタは、図1に示すNMISトランジスタのソース領域103、ドレイン領域105、LDD中濃度領域134及びLDD低濃度領域135の各導電型がp型に形成されている。
【0058】
次に、微細トランジスタ121の構成を説明する。
【0059】
微細トランジスタ121は、半導体基板101の上部に形成された、p型ウェル102とは異なるp型ウェル122及び該p型ウェル122の上に形成されている。p型ウェル122は、STIからなる素子分離107で区画されており、p型ウェル122の上には、SiOからなる薄膜ゲート絶縁膜124を介在させた第3ゲート電極127が形成されている。ここで、第3ゲート電極127のゲート長方向の幅は、例えば50nm〜100nm程度に設定されている。
【0060】
第3ゲート電極127のゲート長方向の両側面上には、積層された絶縁膜からなるサイドウォール110が形成されている。該サイドウォール110は、内側から順次形成されたオフセットサイドウォール145、断面L字状のサイドウォール下層膜149及びサイドウォール上層膜150から構成される。
【0061】
p型ウェル122の上部であって、第3ゲート電極127における両側部の下側及びその両側方の領域には、n型のエクステンション領域148が形成されている。また、p型ウェル122の上部における各エクステンション領域148の外側の領域には、該エクステンション領域148よりも接合深さが深く且つ高濃度のソース領域103及びドレイン領域105が形成されている。
【0062】
さらに、第3ゲート電極127、ソース領域103及びドレイン領域105の各上部には、Ni等からなるシリサイド層112がそれぞれ形成されている。
【0063】
なお、微細トランジスタ121においても、図示しないPMISトランジスタは、図1に示すNMISトランジスタのソース領域103、ドレイン領域105及びエクステンション領域148の各導電型をp型としている。
【0064】
このように、本実施形態に係る高耐圧トランジスタ120は、ゲート長方向の幅が比較的に大きい第1ゲート電極125と比較的に小さい第2ゲート電極126とを並行に形成することにより、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126との間に形成されたLDD低濃度領域135への不純物の注入量を、後述するように、レジストマスクを用いることなく自己整合的に減らすことができる。その結果、マスク合わせが不要となるため、サステイン耐圧のばらつきがなく、且つデバイス面積の増大と工程の増加によるコストの増大を抑制することができる。
【0065】
また、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126との間のLDD低濃度領域135の不純物濃度が低いため、第1ゲート電極125の端部では電界が緩やかな注入プロファイルを実現できる。このため、インパクトイオン化率を低減できるので、基板リーク電流の増加による基板電位の上昇に伴うサステイン耐圧の低下を改善することができる。
【0066】
また、第1ゲート電極125におけるソース領域103とLDD低濃度領域135との間の実効チャネル長を広げることができるため、ショートチャネル効果の影響を低減できる。その結果、トランジスタ領域を縮小でき、小チップ化を図ることができる。
【0067】
さらに、後述するように、第2ゲート電極126に適当な電位を与えることにより、外部からLDD中濃度領域134及びドレイン領域105の空乏層の幅、抵抗及び電界をそれぞれ調整することができる。このため、回路設計の自由度が高く、サステイン耐圧の向上に加えてホットキャリアが流れる方向と位置とを変更できるので、ホットキャリアの寿命の劣化を改善することができる。
【0068】
また、通常のMISトランジスタにおける拡散方法から変更がなく、構造が簡単であり、微細トランジスタ121等の低電圧駆動のロジックコアトランジスタとの混載が容易である。
【0069】
(製造方法)
以下、前記のように構成された高耐圧トランジスタ120及び微細トランジスタ121の製造方法について図2〜図12を参照しながら説明する。
【0070】
まず、図2に示すように、Siからなる半導体基板101の上部に、300nm〜400nm程度の深さを持つSTIからなる素子分離107を形成する。続いて、半導体基板101における高耐圧トランジスタ120のNMIS領域には、イオンエネルギー(加速エネルギー)が180keV〜230keVで、ドーズ量が1×1013atom/cm〜5×1013atom/cm程度のホウ素(B)をイオン注入することにより、p型ウェル102を形成する。一方、半導体基板101における図示しないPMIS領域には、イオンエネルギーが350keV〜450keVで、ドーズ量が2×1012atom/cm〜8×1012atom/cm程度の燐(P)をイオン注入することにより、n型ウェルを形成する。また、図示はしないが、NMIS及びPMISの各高耐圧トランジスタの閾値電圧を決定するための、イオン注入をそれぞれ行う。
【0071】
続いて、微細トランジスタ121のNMIS領域に、イオンエネルギーが180keV〜230keVで、ドーズ量が1×1013atom/cm〜5×1013atom/cm程度のホウ素(B)をイオン注入することにより、p型ウェル122を形成する。一方、半導体基板101における図示しないPMIS領域には、イオンエネルギーが350keV〜450keVで、ドーズ量が0.5×1013atom/cm〜2×1013atom/cm程度の燐(P)をイオン注入することにより、n型ウェルを形成する。また、図示はしないが、NMIS及びPMISの各微細トランジスタの閾値電圧を決定するための、イオン注入をそれぞれ行う。
【0072】
なお、高耐圧トランジスタ120と微細トランジスタ121の各ウェル注入及び閾値注入の順序は、特に問われない。
【0073】
次に、図3に示すように、電源回路等に使用される高耐圧トランジスタ120の比較的に厚膜のゲート絶縁膜108として、半導体基板101上の全面に膜厚が15nm〜20nm程度のSiO膜を形成する。このとき、SiO膜は、基板酸化(熱酸化)法による酸化膜とLP−CVD(Low Pressure-Chemical Vapor Deposition)膜等との積層膜とすることにより、素子分離(STI)107の端部によるストレス等を緩和することができる。また、ロジックトランジスタ又はSRAM(Static Random Access Memory)トランジスタに使用される微細トランジスタ121の薄膜ゲート絶縁膜124は、一旦形成された厚膜のゲート絶縁膜108を酸化膜ウェットエッチによって除去し、その後、p型ウェル122及び図示しないn型ウェルの上に、薄膜基板酸化法により膜厚が2nm〜3nm程度となるように形成する。
【0074】
次に、図4に示すように、半導体基板101上の全面に、膜厚が100nm〜150nm程度のノンドープのポリシリコン膜109を堆積する。その後、堆積したポリシリコン膜109における、高耐圧トランジスタ120のNMIS領域及びPMIS領域と微細トランジスタ121のNMIS領域及びPMIS領域とに、それぞれレジストマスクを用いて適宜イオン注入を行う。これにより、ゲート絶縁膜108及び薄膜ゲート絶縁膜124とポリシリコン膜109との界面における空乏化の抑制及びトランジスタの閾値電圧の調整を行い、CMIS構造に必要なポリシリコンゲートを形成する。
【0075】
次に、図5に示すように、レジストマスク(図示せず)を用いてゲートパターンを形成する。このとき、高耐圧トランジスタ120のNMIS領域においては、駆動能力及び閾値電圧を制御するトランジスタゲート電極となる第1ゲート電極125、及び該第1ゲート電極125のドレイン電極105側に所定の間隔をおいて配置され、ドレイン電極105の制御用のゲート電極となる第2ゲート電極126を同時に形成する。また、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126とは、1つの活性領域であるp型ウェル102内に配置され、該p型ウェル102内では、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126とは互いに並行に形成されることを特徴とする。同様に、高耐圧トランジスタ120の図示しないPMIS領域においても、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126とは、1つの活性領域であるn型ウェル内に配置され、該n型ウェル内では第1ゲート電極125と第2ゲート電極126とは互いに並行に形成される。
【0076】
これと同時に、高耐圧トランジスタ120と同一のレジストマスクにより、微細トランジスタ121のNMIS領域に、高速動作が可能なロジック回路を構成するための微細トランジスタ用ゲート電極である第3ゲート電極127を形成する。
【0077】
なお、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126との間隔は、後工程の高耐圧トランジスタ120におけるLDD注入工程で決められる値であり、80nm〜200nm程度とする。
【0078】
このように、高耐圧トランジスタ120の、例えばNMIS領域に、互いに並行な第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126を形成することにより、第1ゲート電極125のドレイン形成領域が2つに分離される。これにより、p型ウェル102には、第1ゲート電極125の両側のソース形成領域128及び第1ドレイン形成領域129と、第2ゲート電極126に対して第1ドレイン形成領域129と反対側に位置する第2ドレイン形成領域130の3つの拡散領域が形成される。これは、図示しないPMIS領域においても同様である。
【0079】
次に、図6に示すように、リソグラフィ法により、微細トランジスタ121のNMIS領域及びPMIS領域に、レジストマスク131を形成する。その後、高耐圧トランジスタ120のNMIS領域及びPMIS領域に、中濃度で比較的に深い接合面を形成するLDD注入である高耐圧LDD注入132を実施する。
【0080】
このとき、LDD注入のチルト角133を高角度(大きい角度)とし、且つ第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126に対して4方向からそれぞれ1回ずつの4回のイオン注入を行う。例えば、NMIS領域には、イオンエネルギーが40keV〜60keVで、ドーズ量が0.7×1012atom/cm〜2×1012atom/cm程度の燐(P)をそれぞれチルト角が35°〜65°程度で4回注入する。また、PMIS領域には、イオンエネルギーが12keV〜20keVで、ドーズ量が0.7×1012atom/cm〜2×1012atom/cm程度のホウ素(B)をそれぞれチルト角が35°〜65°程度で4回注入する。
【0081】
このように、互いに近接して配置された第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126をマスクとして、4方向から4回のイオン注入を行うことにより、p型ウェル102の上部における第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126のそれぞれ外側に位置するソース形成領域129及び第2ドレイン形成領域130には、3回から4回分のLDD注入が実施されて、LDD中濃度領域134が形成される。一方、互いに隣接する第1ゲート電極125と第2ゲート電極126との間に位置する第1ドレイン形成領域129には、各ゲート電極125、126がLDD注入の影(マスク)となるため、2回分のLDD注入が実施される結果、LDD低濃度領域135が形成される。該LDD低濃度領域135には、2回分のイオンが注入されることから、例えば、NMIS領域には、合計で燐(P)が1.4×1012atom/cm〜4×1012atom/cm程度にイオン注入されることになる。また、PMIS領域には、ホウ素(B)が1.4×1012atom/cm〜4×1012atom/cm程度がイオン注入されることになる。
【0082】
これらLDD低濃度領域135とLDD中濃度領域134とは、2つの並行するゲート電極125、126により同時に形成され、不純物イオンが注入される領域がゲート電極間隔136によって決定される。従って、LDD中濃度領域134とLDD低濃度領域135とは、レジストマスクのアライメントに依存することなく、高精度に形成できるという効果を有する。
【0083】
また、第1ゲート電極125のソース形成領域128に形成されたLDD中濃度領域134と第1ゲート電極125との重なり幅である第1オーバラップ幅137は、50nm〜150nm程度と比較的に大きい。これに対し、LDD低濃度領域135は、LDD注入が各ゲート電極125、126に並行な方向に限定されるため、第1ゲート電極125とLDD低濃度領域135との重なり幅である第2オーバラップ幅138は20nm〜50nm程度と重なり幅が小さい。これにより、第1ゲート電極125のソース形成領域128と第1ドレイン形成領域129との間の実効チャネル長139を拡大することができる。これにより、ショートチャネル効果の影響を低減できるため、トランジスタ領域を縮小でき、デバイス面積の縮小を図ることができる。従って、マスク合わせを必要としないことから、サステイン耐圧のばらつきをなくすことができる上に、デバイス面積の縮小を図れる共に、工程の増加によるコストの増大を抑制することができる。
【0084】
また、第1ドレイン形成領域129は、注入濃度が低く、電界の変化が緩やかな注入プロファイルを形成し、インパクトイオン化率を低減できる。このため、基板リーク電流の増加による基板電位の上昇に伴うサステイン耐圧の低下を改善することができる。
【0085】
さらに、高耐圧LDD注入132を行った後に熱処理を加えることにより、緩やかな注入プロファイルを形成できる。このため、サステイン耐圧の改善効果をより一層高めることができる。熱処理条件は、不純物の注入条件にもよるが、低温且つ長時間の加熱条件の場合は、例えば温度が500℃〜750℃で60分〜120分程度の熱処理を用いることができる。一方、高温且つ短時間の加熱条件の場合は、例えば温度が750℃〜1000℃でスパイク熱処理〜60分の熱処理を用いることができる。本熱処理工程は、微細トランジスタ121におけるトランジスタ特性に大きく関わるエクステンション注入を行う前に実施されるため、微細トランジスタ121の特性劣化は無視できる。
【0086】
また、第2ゲート電極126の第1ドレイン形成領域129と第2ドレイン形成領域130については、LDD中濃度領域134と第2ゲート電極126との重なり幅である第3オーバラップ幅140は50nm〜150nm程度と大きい。一方、LDD低濃度領域135と第2ゲート電極126との重なり幅である第4オーバラップ幅141は20nm〜50nm程度である。また、LDD注入が各ゲート電極125、126に対して並行な方向に限定されているため、LDD中濃度領域134とLDD低濃度領域135との重なり幅は小さいが、高耐圧LDD注入132を行った後に熱処理を加えるため、第2ゲート電極幅142を小さくすることにより、LDD中濃度領域134とLDD低濃度領域135とを第2ゲート電極126の下側で接触させることが可能となる。図6は、熱処理を加えた状態を示している。
【0087】
ここで、所定のLDD低濃度領域135が形成されるための条件として、図6に示すゲート電極間隔136、ゲート電極高さ143、第2ゲート電極幅142、チルト角133及びLDD注入深さ144の関係について整理する。
【0088】
図7(a)及び図7(b)に、高耐圧LDD注入132を行った後に、前述した熱処理による注入イオンの熱拡散距離が30nm程度であると想定して、それぞれ許容できるチルト角133とゲート電極間隔136とを示す。
【0089】
例えば、図7(a)において、ゲート電極高さ143を120nmとし、熱処理後のLDD注入深さ144を80nmとし、且つ、第2ゲート電極幅142を150nmとした場合には、チルト角133を51°以下とすれば、第2ゲート電極126をLDD注入による注入イオンが突き抜けることなく、第1ドレイン形成領域129に不純物イオンが注入される。従って、図7(b)からは、この条件でのゲート電極間隔136は、88nm以下に設定すれば良いことが分かる。また、図7(b)から、第2ゲート電極幅142を200nmとした場合には、ゲート電極間隔136は117nm以下に設定すれば良いことが分かる。
【0090】
図8(a)に高耐圧トランジスタ120のNMIS領域の平面構成を示す。また、図8(b)には、図8(a)の構成を90°回転したトランジスタも併記している。いずれのトランジスタ配置においても、LDD注入のチルト角133を比較的に高角度とし、且つ、ゲート電極125、126に対して4方向のイオン注入を行っている。このため、近接して配置された第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126の外側のソース形成領域129及び第2ドレイン形成領域130には、3回から4回分のLDD注入によってLDD中濃度領域134が形成される。一方、近接して配置された第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126の間の第1ドレイン形成領域129には、近接したゲート電極同士がLDD注入の影となるため、2回分のLDD注入となり、その結果、不純物濃度が最も低いLDD低濃度領域135が形成される。このように、本実施形態によると、トランジスタの配置方向の制約がなく、設計の自由度が高くなる。
【0091】
次に、図9に示すように、LP−CVD法により、各ゲート電極125、126及び127を含む半導体基板101上の全面に、膜厚が5nm〜20nm程度のTEOS(Tetra-Etyhl-Ortho-Silicate)又は窒化シリコン(SiN)等からなる絶縁膜を堆積し、堆積した絶縁膜に対して異方性のドライエッチによるエッチバックを行って、各ゲート電極125、126及び127の両側面上にそれぞれオフセットサイドウォール145を形成する。なお、このとき、図9に示すように、オフセットサイドウォール145の各上端部は必ずしも形成されていなくてもよい。続いて、リソグラフィ法により、高耐圧トランジスタ120を覆うレジストマスク146を形成し、微細トランジスタ121におけるNMIS領域の基板表面に高濃度で且つ浅い接合面となるエクステンション注入147を行って、n型のエクステンション領域148を形成する。NMIS領域のエクステンション注入条件として、イオンエネルギーが2keV〜4keVで、ドーズ量が1×1015atom/cm〜3×1015atom/cm程度の砒素(As)をチルト角0°程度でイオン注入する。また、PMIS領域のエクステンション注入条件として、イオンエネルギーが0.3keV〜1keVで、ドーズ量が2×1014atom/cm〜8×1014atom/cm程度のホウ素(B)をチルト角0°程度でイオン注入する。
【0092】
次に、図10に示すように、それぞれオフセットサイドウォール145が形成された各ゲート電極125、126及び127を含む半導体基板101上の全面に、LP−CVD法によるTEOS、又はSA−CVD(Sub Atmospheric-Chemical Vapor Deposition)法によるNSG(Non-doped Silicate Glass)からなり、膜厚が10nm程度のサイドウォール下層膜149を堆積し、続いて、サイドウォール下層膜149の上に、ALD(Atomic Layer Deposition)法によるSiNからなり、膜厚が35nm〜60nm程度のサイドウォール上層膜150を堆積する。続いて、サイドウォール上層膜150及びサイドウォール下層膜149に対して異方性のドライエッチによるエッチバックを行って、各ゲート電極125、126及び127の側面上に、それぞれオフセットサイドウォール145、サイドウォール下層膜149及びサイドウォール上層膜150からなるサイドウォール110を形成する。このとき、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126との間のゲート電極間隔136が小さく、例えば88nm程度の場合には、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126との間にサイドウォール110が埋め込まれるため、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126との間に形成されるサイドウォール110同士は互いに接続される。
【0093】
次に、図11に示すように、高耐圧トランジスタ120及び微細トランジスタ121のNMIS領域とPMIS領域とに、それぞれ同時にソース・ドレイン注入151を行う。NMIS領域には、例えば、イオンエネルギーが15keV〜40keVで、ドーズ量が2×1015atom/cm〜8×1015atom/cm程度の砒素(As)、及びイオンエネルギーが5keV〜15keVで、ドーズ量が1×1015atom/cm〜5×1015atom/cm程度の燐(P)のうちの少なくとも一方をイオン注入する。また、PMIS領域には、イオンエネルギーが1keV〜3keVで、ドーズ量が2×1015atom/cm〜8×1015atom/cm程度のホウ素(B)をイオン注入する。これにより、高耐圧トランジスタ120及び微細トランジスタ121のソース領域103及びドレイン領域105がそれぞれ形成される。このとき、図示はしないが、ソース・ドレイン注入151は、各ゲート電極125、126及び127の上部にも同時にイオン注入される。なお、NMIS領域とPMIS領域とのソース・ドレイン注入151の実施順序は、特に問われない。続いて、イオン注入で導入された各不純物を活性化するため、高温短時間のランプ加熱又はレーザ加熱により、温度が1000℃以上の活性化熱処理を行う。
【0094】
次に、図12に示すように、スパッタ法等により、ソース領域103及びドレイン領域105と、各ゲート電極125、126及び127とを含む半導体基板101上の全面に、膜厚が5nm〜20nm程度の高融点金属であるニッケル(Ni)膜を堆積する。その後、堆積したNi膜をシリサイド化する熱処理を加える。続いて、塩酸等により、シリサイド化されない未反応のNi膜をウェットエッチにより除去する。その後、熱処理を適宜行うことにより、半導体基板101の第1ドレイン形成領域129を除く、第1ゲート電極125、第2ゲート電極126及び第3ゲート電極127の各上部、並びにソース領域103及びドレイン領域105の各上部に、NiSiからなるシリサイド層112をそれぞれ形成する。
【0095】
以上のように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によると、LDD中濃度領域134、LDD低濃度領域135、ソース領域103及びドレイン領域105、並びに各シリサイド層112を、全て自己整合的に形成することができる。従って、レジストマスクに依存せず、アライメントずれが生じないことから、サステイン耐圧のばらつきが抑制された、高精度なドレイン拡張型のトランジスタを実現することができる。
【0096】
(一実施形態の第1変形例)
一実施形態の第1変形例に係る半導体装置について図13を参照しながら説明する。
【0097】
図13に示すように、ソース領域103を共有した、互いに隣接する2つのトランジスタを差動回路として用いるペア型トランジスタであって、ソース領域103を中心に左右反転したペア型トランジスタ152Aとペア型トランジスタ152Bとがそれぞれ配置されている。ここで、図13において、図1と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0098】
ペア型トランジスタ152A及び152Bは、本実施形態に係る高耐圧トランジスタ120からなり、従って、上述したように、マスクのアライメントずれが生じないため、動作特性のばらつきの増大によるデバイスの性能劣化が生じない。
【0099】
(一実施形態の第2変形例)
また、図14の第2変形例に示すように、ドレイン領域105を共有した、互いに隣接する2つのトランジスタを差動回路として用いるペア型トランジスタ150A及び150Bについても同様にマスクのアライメントずれが生じないため、動作特性のばらつきの増大によるデバイスの性能劣化が生じない。
【0100】
(動作説明)
次に、図15〜図18を用いて、第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126に印加される4通りの電位によるチャネルの形成と空乏層の広がりについて説明する。
【0101】
まず、図15に示すように、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126に共にハイ(Hi)電圧が印加された場合は、p型ウェル102における第1ゲート電極125のゲート絶縁膜108の直下の領域には反転層によるチャネル102aが形成される。このとき、ドレイン領域105にもハイ電圧が印加されていることから、第2ゲート電極126及びドレイン領域105には、バイアス電圧が実質的に印加されていない。このため、高耐圧トランジスタ120には、あたかも第2ゲート電極126が設けられていない、ドレイン抵抗が付加されたトランジスタのような動作を行わせることができる。
【0102】
次に、図16に示すように、第1ゲート電極125にハイ電圧が印加され、第2ゲート電極126にロウ(Low)電圧が印加された場合は、p型ウェル102における第1ゲート電極125のゲート絶縁膜108の直下の領域には、反転層によるチャネル102aが形成される。一方、ドレイン領域105には、ハイ電圧のバイアスが印加されている。NMISトランジスタの場合は、第2ゲート電極126の下のLDD中濃度領域134の不純物はn型キャリアの電子である。従って、発生した電界により第2ゲート電極126のゲート絶縁膜108の表面の電子がドレイン領域105の方向に移動する。このため、ゲート絶縁膜108の表面に空乏層157が形成されることから、第2ゲート電極126付近の電流パスが細くなり、その結果、ドレイン抵抗を増大させることができる。
【0103】
次に、図17に示すように、第1ゲート電極125にロウ電圧が印加され、第2ゲート電極126にハイ電圧が印加された場合は、p型ウェル102における第1ゲート電極125のゲート絶縁膜108の直下の領域には、チャネル102aが形成されておらず、オフ状態となっている。一方、ドレイン領域105にもハイ電圧が印加されているため、第2ゲート電極126及びドレイン領域105には、バイアス電圧が実質的に印加されていない。このため、高耐圧トランジスタ120には、あたかも第2ゲート電極が設けられていない、ドレイン抵抗が付加されたトランジスタのような動作を行わせることができる。
【0104】
次に、図18に示すように、第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126に共にロウ電圧が印加された場合は、p型ウェル102における第1ゲート電極125のゲート絶縁膜108の直下の領域には、チャネル102aが形成されておらず、オフ状態となっている。一方、ドレイン領域105にはハイ電圧が印加されているため、第2ゲート電極126及びドレイン領域105には、バイアス電圧が印加されている。NMISトランジスタの場合には、第2ゲート電極126の下のLDD中濃度領域134の不純物はn型キャリアの電子である。従って、発生した電界により第2ゲート電極126のゲート絶縁膜108の表面の電子がドレイン領域105の方向に移動する。このため、ゲート絶縁膜108の表面に空乏層157が形成されて、第2ゲート電極126付近の電流パスが細くなる。その結果、ドレイン抵抗を増大させることができるので、オフリーク電流も低減することができる。
【0105】
このように、第2ゲート電極126に所定の電位を付与することにより、外部からLDD中濃度領域134及びLDD低濃度領域135を含むドレイン領域105の空乏層の幅、抵抗値及び電界を調整できるため、回路設計の自由度が高くなると共に、LDD中濃度領域134、LDD低濃度領域135及びドレイン領域105の空乏層157の制御が可能となる。これにより、サステイン耐圧の向上に加え、ホットキャリアが流れる方向と位置とを調整できるので、ホットキャリアの寿命の劣化を改善することができる。
【0106】
なお、図15〜図18においては、NMISトランジスタの場合について説明したが、PMISトランジスタの場合にも同様の効果を得ることができる。すなわち、PMISトランジスタの場合は、NMISトランジスタのn型不純物をp型不純物に変更し、p型不純物をn型不純物に変更することにより得られる。また、NMISトランジスタの場合のハイ電圧は、例えば5Vであり、ロウ電圧は、例えば0Vである。従って、PMISトランジスタにおけるハイ電圧は、例えば0Vと、ロウ電圧は、例えば5Vと読みかえればよい。
【0107】
(一実施形態の第3変形例)
図19は一実施形態の第3変形例に係る半導体装置である高耐圧トランジスタの断面構成を示している。
【0108】
図19に示すように、第3変形例に係る高耐圧トランジスタ120は、第2ゲート電極126のゲート長方向の幅寸法(ゲート電極幅142)を大きくした構成を採る。このようにしても、上述した図15〜図18までの動作による効果と同様の効果を得ることができる。すなわち、第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126に共にハイ電圧が印加された場合には、p型ウェル102における第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126の各ゲート絶縁膜108の直下の領域には、それぞれ反転層によるチャネルが形成される。
【0109】
なお、第2ゲート電極幅142が比較的に小さい場合には、LDD低濃度領域135とLDD中濃度領域134との空乏層を短絡させることも可能である。
【0110】
また、第1ゲート電極125にハイ電圧が印加され、第2ゲート電極126にロウ電圧が印加された場合には、p型ウェル102における第2ゲート電極126のゲート絶縁膜108の下側部分を高抵抗層として使用可能である。
【0111】
また、第1ゲート電極125にロウ電圧が印加され、第2ゲート電極126にハイ電圧が印加された場合は、通常の第1ゲート電極125のみのオフ状態とすることができる。また、第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126に共にロウ電圧を印加した場合は、通常のオフ状態とすることができる。
【0112】
このように、第2ゲート電極幅142の値を適当に調節することによっても、種々のトランジスタ動作が可能となる。
【0113】
(一実施形態の第4変形例)
図20は一実施形態の第4変形例に係る半導体装置である高耐圧トランジスタの製造方法の要部の一工程の断面構成を示している。
【0114】
図20に示すように、LDD低濃度領域135が形成できる範囲で、第1ゲート電極125と第2ゲート電極126との間のゲート電極間隔136の値を大きく設定した場合には、サイドウォール110をゲート電極同士の隙間に埋め込むことは困難となる。
【0115】
従って、ソース・ドレイン注入151を実施する工程において、第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126の上側部分にそれぞれ端面の境界を設けるように、レジストマスク154を形成することにより、アライメントずれの影響を実質的に受けない構造を得ることができる。
【0116】
(一実施形態の第5変形例)
図21及び図22は一実施形態の第5変形例に係る半導体装置である高耐圧トランジスタの製造方法の要部の工程順の断面構成を示している。
【0117】
ゲート電極間隔136を比較的に大きい値に設定している場合には、まず、図21に示すように、半導体基板101の上の全面に、絶縁膜であるシリサイドブロック膜155をゲート電極同士の隙間に埋め込むように堆積する。
【0118】
次に、図22に示すように、堆積されたシリサイドブロック膜155に対して、等方性のウェットエッチを行うことにより、シリサイドブロック膜155をゲート電極同士の隙間にのみ残留させる。これにより、ゲート電極同士の隙間がサイドウォール110によって埋め込むことができない場合であっても、ゲート電極同士の隙間にシリサイドブロック膜155を選択的に形成することにより、各シリサイド層112をセルファラインにより形成することができる。
【0119】
(一実施形態の第6変形例)
図23に示すように、堆積されたシリサイドロック膜155に対して、等方性のウェットエッチに代えて、異方性のドライエッチを行うことによっても、ゲート電極同士の隙間にのみシリサイドロック膜155を残留させることができる。従って、第5変形例と同様に、各シリサイド層112をセルファラインにより形成することができる。
【0120】
さらに、第6変形例においては、ゲート電極同士の隙間だけでなく、第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126の外側のサイドウォール110の下部の側面上にもシリサイドブロック膜155をサイドウォール状に残留させることができる。このため、ソース領域103及びドレイン領域105において、それらの上部に形成される各シリサイド層112の内側の端部と各ゲート電極125、126の外側の端部との間隔を大きくすることができる。従って、各シリサイド層112からの各ゲート電極125、126に対する電界集中を緩和することができる。
【0121】
(一実施形態の第7変形例)
図24に示すように、LDD低濃度領域135が形成できる範囲で、且つゲート電極同士の隙間にシリサイドブロック膜155を埋め込むことができない、すなわちLDD低濃度領域135の上面が露出してしまうような場合は、シリサイドブロック膜155の上における第1ゲート電極125及び第2ゲート電極126の上側部分にそれぞれ端面の境界を設けるように、レジストマスク156を形成すればよい。
【0122】
従って、形成したレジストマスク156を用いて、シリサイドブロック膜155をエッチングした後、図25に示すように、各シリサイド層112を形成することにより、アライメントずれの影響を実質的に受けない半導体装置を得ることができる。
【0123】
なお、上述した実施形態及びその変形例において、オフセットサイドウォール145にTEOS膜又はSiN膜等の絶縁膜を用いたが、ゲート電極125、126又は半導体基板101が被る酸化等を抑制するために、低温で成膜が可能なSA−CVDによるNSG膜、低温LP−TEOS膜、低温ALD−SiN膜、低温炭化シリコン(SiC)膜又は酸窒化シリコン(SiON)等を用いることができる。
【0124】
また、本実施形態及びその変形例において、シリサイド層112には、Niシリサイドを用いたが、コバルト(Co)、チタン(Ti)、タングステン(W)、白金(Pt)若しくはモリブデン(Mo)、又やそれらの金属合金若しくは積層金属によるシリサイドを用いても特に問題はない。
【0125】
また、本実施形態及びその変形例において、微細トランジスタ121を構成する薄膜ゲート絶縁膜124の構成材料は、SiOに限られない。例えば、酸化ハフニウム(HfO)、ハフニウムシリケート(HfSixOy)若しくはハフニウムアルミネート(HfAlxOy)等の高誘電率(high−k)材料、又はSiOを含め、これらに窒素を添加した絶縁膜の群から選ばれるいずれか1つを含む単層膜、又はこれらの群から選ばれる少なくとも1つの膜を含む積層膜であってもよい。また、薄膜ゲート絶縁膜124の膜厚は、ゲート長、EOT(等価酸化膜厚)の許容値、及びリーク電流の許容値等を考慮して適宜決定すればよい。
【0126】
また、各ゲート電極125、126及び127の構成材料には、アモルファスSi又はノンドープポリシリコンに、燐(P)、砒素(As)、ホウ素(B)又はインジウム(In)等をイオン注入によりドーピングした、シリコン(Si)を含む電極材料を用いることができる。また、ゲルマニウム(Ge)をドーピングしたシリコンゲルマニウム(SiGe)等のSiを含む電極材料でもよく、加工性又はシリサイド反応等の観点から適宜決定すればよい。各ゲート電極125、126及び127の形成方法としては、LP−CVD法、スパッタ法若しくはALD法等の堆積法、又は塗布系シリコン材料による塗布法を用いることもできる。さらには、カーボン若しくは金属をドーピングしたシリコン材料又はポーラスシリコン等も選択が可能である。
【0127】
また、本実施形態及びその変形例においては、電圧が5Vの電源電圧と接続された高耐圧トランジスタ120、及び電圧が1.2Vの電源電圧と接続され高速動作用途の微細トランジスタ121を混載した半導体装置を例に説明したが、この構成に限られない。すなわち、据え置きデバイスとして使用される、電圧が12V又は24Vの電源電圧、さらには高耐圧の60Vの電源電圧を持つ車載デバイスに対応するための高効率な電源制御機能付きバッテリー制御回路にも応用可能である。この場合は、当然ながら、電源電圧に応じてゲート絶縁膜108の膜厚、ゲート長及びゲート電極の高さ等はスケーリングする必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、面積の増大及び製造工程の増加を生じることなくサステイン耐圧を改善し、サステイン耐圧のばらつきの抑制及びトランジスタの形成後のドレイン抵抗及び接合プロファイルの調整が可能な、自由度が高い半導体装置を実現でき、例えば電源電圧が高い環境分野又は車載分野用途の高性能LSIデバイス等に有用である。
【符号の説明】
【0129】
101 半導体基板
102 p型ウェル(半導体領域)
102a チャネル
103 ソース領域
105 ドレイン領域
107 素子分離
108 ゲート絶縁膜
109 ポリシリコン膜
110 サイドウォール
112 シリサイド層
120 高耐圧トランジスタ
121 微細トランジスタ
122 p型ウェル
124 薄膜ゲート絶縁膜
125 第1ゲート電極
126 第2ゲート電極
127 第3ゲート電極
128 ソース形成領域
129 第1ドレイン形成領域
130 第2ドレイン形成領域
131 レジストマスク
132 高耐圧LDD注入
133 チルト角
134 LDD中濃度領域
135 LDD低濃度領域
136 ゲート電極間隔
137 第1オーバラップ幅
138 第2オーバラップ幅
139 実効チャネル長
140 第3オーバラップ幅
141 第4オーバラップ幅
142 第2ゲート電極幅
143 ゲート電極高さ
144 LDD注入深さ
145 オフセットサイドウォール
146 レジストマスク
147 エクステンション注入
148 エクステンション領域
149 サイドウォール下層膜
150 サイドウォール上層膜
151 ソース・ドレイン注入
152A ペア型トランジスタ
152B ペア型トランジスタ
154 レジストマスク
155 シリサイドブロック膜
156 レジストマスク
157 空乏層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体領域の上に第1ゲート絶縁膜を介在させて形成された第1ゲート電極と、
前記第1半導体領域の上に前記第1ゲート絶縁膜を介在させると共に、前記第1ゲート電極と間隔をおいて並行に形成され、前記第1ゲート電極よりもゲート長方向の幅が小さい第2ゲート電極と、
前記第1半導体領域における前記第1ゲート電極の両側方の領域にそれぞれ形成され、第2導電型の第1不純物を含む第1ソース領域及び第2導電型の第2不純物を含む第1ドレイン領域と、
前記第1半導体領域における前記第2ゲート電極の両側方の領域にそれぞれ形成され、第2導電型の第3不純物を含む第2ソース領域及び第2導電型の第4不純物を含む第2ドレイン領域とを備え、
前記第1ソース領域における前記第1不純物の濃度は、前記第1ドレイン領域における前記第2不純物の濃度よりも高く、
前記第2ソース領域における前記第3不純物の濃度は、前記第2ドレイン領域における前記第4不純物の濃度よりも低く、
前記第2ソース領域は、前記第1ドレイン領域と共有されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極との各側面上にそれぞれ形成され、絶縁体からなるサイドウォールをさらに備え、
前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極との対向する側面上に形成された前記サイドウォール同士は、互いに接触していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1ソース領域、第1ドレイン領域、第2ソース領域及び第2ドレイン領域は、それぞれの接合深さが互いに同一の接合面を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1ドレイン領域は、
前記第1不純物を含み且つ前記第1ゲート電極と重なるように形成され、前記第1不純物による第1のPN接合と、
前記第1のPN接合から前記第2ゲート電極側に離れた領域に形成され、前記第1のPN接合よりも高い濃度を持つ、前記第2不純物による第2のPN接合と、
前記第2のPN接合から前記第2ゲート電極側の領域に形成され、前記第2のPN接合よりも高い濃度を持つ、前記第3不純物による第3のPN接合とを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1ソース領域における第1不純物が添加された領域及び前記第2ドレイン領域における第4不純物が添加された領域には、前記第1不純物及び第4不純物よりも高い濃度を持つ第2導電型の第5不純物が添加され、
前記第5不純物が添加された領域は、前記第1不純物が添加された領域及び前記第4不純物が添加された領域に包含されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1ソース領域及び第2ドレイン領域の上部に形成された金属層をさらに備え、
前記金属層は、前記第1ドレイン領域及び第2ソース領域の上部には形成されていないことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1半導体領域の上に前記第1ゲート絶縁膜をそれぞれ介在させると共に、前記第1ソース領域における前記第1ゲート電極のゲート幅方向に沿った中心線をそれぞれ線対称として形成され、前記第1ゲート電極と同一の構成を持つ第3ゲート電極、及び前記第2ゲート電極と同一の構成を持つ第4ゲート電極と、
前記第1半導体領域における前記第3ゲート電極の両側方の領域にそれぞれ形成され、前記第1不純物を含む第3ソース領域及び前記第2不純物を含む第3ドレイン領域と、
前記第1半導体領域における前記第4ゲート電極の両側方の領域にそれぞれ形成され、前記第3不純物を含む第4ソース領域及び前記第4不純物を含む第4ドレイン領域とをさらに備え、
前記第3ソース領域における前記第1不純物の濃度は、前記第3ドレイン領域における前記第2不純物の濃度よりも高く、
前記第4ソース領域における前記第3不純物の濃度は、前記第4ドレイン領域における前記第4不純物の濃度よりも低く、
前記第3ソース領域は、前記第1ソース領域と共有され、且つ前記第4ソース領域は、前記第3ドレイン領域と共有されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1半導体領域の上に前記第1ゲート絶縁膜をそれぞれ介在させると共に、前記第2ドレイン領域における前記第2ゲート電極のゲート幅方向に沿った中心線をそれぞれ線対称として形成され、前記第2ゲート電極と同一の構成を持つ第4ゲート電極、及び前記第1ゲート電極と同一の構成を持つ第3ゲート電極と、
前記第1半導体領域における前記第3ゲート電極の両側方の領域にそれぞれ形成され、前記第1不純物を含む第3ソース領域及び前記第2不純物を含む第3ドレイン領域と、
前記第1半導体領域における前記第4ゲート電極の両側方の領域にそれぞれ形成され、前記第3不純物を含む第4ソース領域及び前記第4不純物を含む第4ドレイン領域とをさらに備え、
前記第3ソース領域における前記第1不純物の濃度は、前記第3ドレイン領域における前記第2不純物の濃度よりも高く、
前記第4ソース領域における前記第3不純物の濃度は、前記第4ドレイン領域における前記第4不純物の濃度よりも低く、
前記第4ドレイン領域は、前記第2ドレイン領域と共有され、且つ前記第4ソース領域は、前記第3ドレイン領域と共有されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1ソース領域と前記第1ゲート電極との重なり部分の第1オーバラップ量は、前記第1ドレイン領域と前記第2ゲート電極との重なり部分の第2オーバラップ量よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2ソース領域と前記第2ゲート電極との重なり部分の第3オーバラップ量は、前記第2ドレイン領域と前記第2ゲート電極との重なり部分の第4オーバラップ量よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2ソース領域と前記第2ドレイン領域とは、前記第1半導体領域における前記第2ゲート電極の下側部分において接触して短絡していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第1半導体領域における前記第1ゲート電極の中央部の下側部分の導電型と、前記第2ゲート電極の中央部の下側部分の導電型とは、極性が互いに逆であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1ゲート電極と前記第2ゲート電極との間隔は、前記第1ゲート電極及び第2ゲート電極の高さの70%以下であり、
前記第2ゲート電極のゲート長方向の幅は、前記第1ゲート電極及び第2ゲート電極の高さの1.3倍以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項14】
第2半導体領域の上に前記第1ゲート絶縁膜よりも薄い第2ゲート絶縁膜を介在させて形成された第3ゲート電極をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項15】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1ソース領域、第1ドレイン領域、第2ソース領域及び第2ドレイン領域は、
前記第1ゲート電極及び第2ゲート電極をマスクとして、互いに異なる少なくとも3方向からのイオン注入によって形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−109425(P2012−109425A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257530(P2010−257530)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】