説明

半導体装置

【課題】 ゲート電極下の絶縁膜の実装時のストレスによるクラックの発生を防止できるようにした半導体装置及びその製造方法、半導体装置の設計方法を提供する。
【解決手段】 シリコン基板1に設けられたトランジスタと、このトランジスタを覆うようにシリコン基板1上に設けられた層間絶縁膜21と、層間絶縁膜21上にAlパッド31を介して設けられたバンプ電極41とを有し、バンプ電極41下方の領域のシリコン基板1には、トランジスタとしてゲート電極11の周縁部下のシリコン酸化膜が当該ゲート電極11の中央部下のシリコン酸化膜よりも厚いMOSトランジスタ10のみが設けられ、それ以外の領域のシリコン基板1には、トランジスタとしてゲート電極の中央部下からその周縁部下にかけてのシリコン酸化膜の厚さが均一なMOSトランジスタ70が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法、半導体装置の設計方法に関し、特に、バンプ電極下方の領域において、ゲート電極下の絶縁膜でのクラックの発生を防止できるようにした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図7(A)は従来例に係る半導体装置200の構成例を示す断面図である。図7(A)に示すように、この半導体装置200は、シリコン基板1と、このシリコン基板1上に形成されたMOSトランジスタ80と、シリコン基板1上に設けられてMOSトランジスタ80を覆う層間絶縁膜21と、この層間絶縁膜21上に設けられたAlパッド31と、層間絶縁膜21上に設けられてAlパッド31上の周縁を覆うパッシベーション膜33と、このパッシベーション膜33下から露出したAlパッド31上に設けられたバンプ電極41と、を含んだ構成となっている。この半導体装置200では、層間絶縁膜21を介してMOSトランジスタ80の上方にAlパッド31が形成されており、このような構成により、チップ面積の縮小が図られている。
【0003】
また、この種の従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。即ち、上記公報には、半導体素子上にAlパッドを形成され、さらに、このAlパッドにスリットが形成された半導体装置が開示されており、かかる半導体装置にあっては、半導体素子上にAlパッドを有することでチップの微細化が図れ、更には、スリットの存在により、Alの熱応力等によるストレスの影響を抑制でき、層間絶縁膜へのクラックの発生を抑制できる、というものであった。
【特許文献1】特開2002−151465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに、図7(A)に示したような半導体装置200や、上記特許公報に開示されたような半導体装置によれば、チップ面積の縮小(チップの微細化)が可能である。
しかしながら、本発明者は、図7(A)に示した構造のTEGを形成し、このTEG
を配線基板に実装して動作させたところ、バンプ電極の真下方向に位置するMOSトランジスタにおいて、ゲート電極とシリコン基板との間で電流リーク(不良)が多く発生し、その一方で、バンプ電極の真下方向から外れた領域に位置するMOSトランジスタでは、上記のような電流リークがほとんど発生しない、という問題に直面した。
【0005】
このような問題に対して、本発明者がホットエレクトロン解析装置を用いて、電流リークの経路を解析したところ、図7(B)に示すように、ゲート電極81の端部下のゲート酸化膜82にクラックが発生しており、このクラックを経路としてゲート電極81とシリコン基板1との間で電流がリークしている、という知見を得た。このようなゲート電極81の端部下でのクラックの発生及び、このクラックを経路とした電流リークの発生は、特に、ゲート酸化膜82が150[Å]以下の厚さに形成されたTEGで多発することが分かった。
【0006】
本発明は、このような解決すべき問題に着目してなされたものであって、ゲート電極下の絶縁膜の実装時のストレスによるクラックの発生を防止できるようにした半導体装置及びその製造方法、半導体装置の設計方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の半導体装置は、半導体基板に設けられたトランジスタと、前記トランジスタを覆うように前記半導体基板上に設けられた層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上にパッドを介して設けられたバンプ電極とを有し、前記バンプ電極下方の領域の前記半導体基板には、前記トランジスタとしてゲート電極の周縁部下の絶縁膜が当該ゲート電極の中央部下の絶縁膜よりも厚い一のトランジスタのみが設けられ、それ以外の領域の前記半導体基板には、前記トランジスタとしてゲート電極の中央部下からその周縁部下にかけての絶縁膜の厚さが均一な他のトランジスタが設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成であれば、バンプ電極下方の領域に形成された一のトランジスタの絶縁膜において、実装時のストレスによるクラックの発生を防止することができ、このクラックを経路としたゲート電極と半導体基板間での電流リークを防止することができる。
【0009】
〔発明2〕 発明2の半導体装置は、発明1の半導体装置において、前記一のトランジスタの前記ゲート電極の中央部下の絶縁膜と、前記他のトランジスタの前記ゲート電極下の絶縁膜とが同じ厚さであることを特徴とするものである。ここで、「同じ」とは、絶縁膜の厚さの数値が厳密に同じである場合と、設計上の厚さが同じでも、その成膜時のプロセスのばらつきによって、その厚さに多少のばらつきがある場合(即ち、ほぼ同じである場合)との両方を含む意味である。
発明2の半導体装置によれば、一のトランジスタと他のトランジスタの電気的特性(例えば、閾値電圧等)をほぼ同じにすることができる。
【0010】
〔発明3〕 発明3の半導体装置は、発明1又は発明2の半導体装置において、前記一のトランジスタは、LOCOSオフセット構造のトランジスタであることを特徴とするものである。ここで、LOCOSオフセット構造とは、LOCOS(local oxidation of silicon)プロセスによって、ゲート電極の周縁部下の絶縁膜だけが厚膜化された構造のことである。
【0011】
発明3の半導体装置によれば、半導体基板に素子分離用のLOCOS層を形成する際に、このLOCOS層の形成と同時に、ゲート電極の周縁部下の絶縁膜を厚膜化することができるので、厚膜化のための工程の追加が少なくて済む。
【0012】
〔発明4〕 発明4の半導体装置は、発明1又は発明2の半導体装置において、前記一のトランジスタは、HTOオフセット構造のトランジスタであることを特徴とするものである。ここで、HTOオフセット構造とは、HTO( high temperature oxide)の選択的な形成によって、ゲート電極の周縁部下の絶縁膜だけが厚膜化された構造のことである。
発明4の半導体装置によれば、LOCOS特有のバーズビークがないので、発明2と比べて、半導体装置の素子サイズを小さくすることができる。
【0013】
〔発明5〕 発明5の半導体装置は、発明1又は発明2の半導体装置において、前記一のトランジスタは、STIオフセット構造のトランジスタであることを特徴とするものである。ここで、STIオフセット構造とは、STI(shallow trench isolation)プロセスによって、ゲート電極の周縁部下の絶縁膜だけが厚膜化された構造のことである。
【0014】
発明5の半導体装置によれば、LOCOS特有のバーズビークがないので、発明2と比べて、半導体装置の素子サイズを小さくすることができる。また、半導体基板に素子分離用のSTI層を形成する際に、このSTI層の形成と同時に、ゲート電極の周縁部下の絶縁膜を厚膜化することができるので、発明3と比べて、厚膜化のためにHTOを別工程で形成する必要がなく、厚膜化のための工程の追加が少なくて済む。
【0015】
〔発明6〕 発明6の半導体装置の製造方法は、半導体基板にトランジスタを形成する工程と、前記トランジスタを覆うように前記半導体基板上に層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜上にパッドを介してバンプ電極を形成する工程とを含み、前記トランジスタを形成する工程では、前記バンプ電極が形成される領域の下方の前記半導体基板には、ゲート電極の周縁部下の絶縁膜が当該ゲート電極の中央部下の絶縁膜よりも厚い一のトランジスタのみを形成し、それ以外の領域の前記半導体基板には、ゲート電極の中央部下からその周縁部下にかけての絶縁膜の厚さが均一な他のトランジスタを形成することを特徴とするものである。
【0016】
このような構成であれば、バンプ電極下方の領域に形成した一のトランジスタの絶縁膜において、実装時のストレスによるクラックの発生を防止することができ、このクラックを経路とした電流リークを防止することができる。
【0017】
〔発明7〕 発明7の半導体装置の設計方法は、半導体基板に設けられたトランジスタと、前記トランジスタを覆うように前記半導体基板上に設けられた層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上にパッドを介して設けられたバンプ電極とを含んで構成される半導体装置の設計方法であって、前記バンプ電極の位置を検出する処理と、検出された前記位置の下方に設けられる前記トランジスタを特定する処理と、特定された前記トランジスタのみをゲート電極の周縁部下の絶縁膜が当該ゲート電極の中央部下の絶縁膜よりも厚い一のトランジスタとし、それ以外の前記トランジスタはゲート電極の中央部下からその周縁部下にかけての絶縁膜の厚さが均一な他のトランジスタとする処理と、を実行することを特徴とするものである。
【0018】
このような構成であれば、バンプ電極下方の領域に設けられた一のトランジスタの絶縁膜において、実装時のストレスによるクラックの発生を防止することができ、このクラックを経路とした電流リークを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(1)第1実施形態
図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置100の構成例を示す断面図である。図1(A)に示すように、この半導体装置100は、シリコン基板(P−sub)1と、このシリコン基板1上に形成された2種類のMOSトランジスタ10,70と、各MOSトランジスタ10,70間を素子分離するLOCOS層3と、シリコン基板1上に設けられてMOSトランジスタ10,70やLOCOS層3等を覆う層間絶縁膜21と、この層間絶縁膜21上に設けられたAlパッド31と、層間絶縁膜21上に設けられてAlパッド31上の周縁を覆うパッシベーション膜33と、このパッシベーション膜33下から露出したAlパッド31上に設けられたバンプ電極41と、を含んだ構成となっている。
【0020】
層間絶縁膜21は、例えばシリコン酸化膜である。また、パッシベーション膜33は、例えばシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが積層された膜である。この半導体装置100では、層間絶縁膜21を介してMOSトランジスタ10の上方にAlパッド31が形成されており、このような構成により、チップ面積の縮小が図られている。
図1(A)に示すように、この半導体装置100では、バンプ電極41が形成された領域(以下、「バンプ領域」という。)の下方に形成されたトランジスタはMOSトランジスタ10だけであり、バンプ電極41が形成されていない領域(以下、「非バンプ領域」という。)の下方に形成されたトランジスタは通常構造のMOSトランジスタ70だけとなっている。
【0021】
図1(B)は、MOSトランジスタ10の構成例を示す断面図である。図1(B)に示すMOSトランジスタ10は、ゲート電極11と、ゲート酸化膜12と、ソース又はドレイン(以下、S/D)層17a及び17bと、LOCOSオフセット層13と、NST層15と、を含んだ構成となっている。ゲート電極11は、例えばリンがドープされたポリシリコンからなるものである。また、ゲート酸化膜12は、例えばシリコン酸化膜からなるものであり、その厚さは例えば120〜150[Å]程度である。さらに、S/D層17a,17bは、例えばリン又は砒素等のN型不純物がシリコン基板1に拡散して形成された拡散層である。
【0022】
また、LOCOSオフセット層13は、ゲート酸化膜12とS/D層17aとの間のシリコン基板1及び、ゲート酸化膜12とS/D層17bとの間のシリコン基板1、にそれぞれ設けられたシリコン酸化膜である。図1(B)に示すように、このMOSトランジスタ10では、LOCOSオフセット層13はゲート酸化膜12よりも厚く、このLOCOSオフセット層13によって、ゲート電極11の周縁部下のシリコン酸化膜厚は、ゲート電極11の中央部下のシリコン酸化膜厚よりも大きくなっている。このMOSトランジスタ10では、LOCOSオフセット層13の厚さは、例えば2000〜4000[Å]程度である。
【0023】
また、NST層15はNチャネルストッパー層の略称である。このNST層15は、LOCOS層3オフセット層越しに、シリコン基板1に砒素、リン等のN型不純物が導入され、熱拡散されて形成された拡散層である。ゲート電極11に設計閾値以上の電圧が印加されると、ゲート酸化膜12下にN型に反転したチャネルが形成され、このチャネルとNST層15とを通って、ドレイン電流が流れるようになっている。
【0024】
このように、LOCOSオフセット層13によって、ゲート電極11の周縁部下のシリコン酸化膜だけが厚膜化されたMOSトランジスタの構造のことを、LOCOSオフセット構造ともいう。
図2は、MOSトランジスタ70の構成例を示す断面図である。図2に示すように、非バンプ領域の下方に形成されたMOSトランジスタ70は通常の構造であり、ゲート電極71と、ゲート酸化膜12と、S/D層17a,17bと、を含んだ構成となっている。このMOSトランジスタ70には、LOCOSオフセット層13やNST層15が無く、
ゲート電極71とシリコン基板1との間にはゲート酸化膜12だけが形成されているので、ゲート電極71の中央部下からその周縁部下にかけてのシリコン酸化膜の膜厚は均一となっている。
【0025】
図3(A)〜(D)は、第1実施形態に係る半導体装置100の製造方法を示す工程図である。次に、図1(A)及び(B)に示した半導体装置100の製造方法について説明する。
図3(A)では、まず始めに、シリコン基板1にLOCOS層3及びLOCOSオフセット層13を形成する。即ち、シリコン窒化膜等の酸化防止膜(図示せず)をシリコン基板1上に部分的に形成し、この状態でシリコン基板1を熱酸化する。これにより、酸化防止膜で覆われていないシリコン基板1だけを酸化して、LOCOS層3及びLOCOSオフセット層13を同時に形成する。LOCOS層3及びLOCOSオフセット層13を形成した後で、シリコン基板1上から酸化防止膜を取り除く。
【0026】
次に、フォトリソグラフィによって、シリコン基板1上にLOCOSオフセット層13を露出し、他の領域を覆うレジストパターン(以下、「第1レジストパターン」という。)R1を形成する。そして、図3(A)に示すように、この第1レジストパターンR1をマスクにシリコン基板1に砒素、リン等のN型不純物を導入する。さらに、第1レジストパターンR1を除去した後で、シリコン基板1を熱処理する。このようなイオン注入及び熱拡散によって、シリコン基板1にNST層15を形成する。
【0027】
次に、シリコン基板1に熱酸化処理を施して、図3(B)に示すようにゲート酸化膜12を形成する。そして、このゲート酸化膜12を形成したシリコン基板1の全面上にポリシリコン膜9を形成する。このポリシリコン膜9の形成は、例えばLPCVD(low pressure chemical vapor deposition)法により行う。
【0028】
次に、MOSトランジスタ10用のゲート電極を形成する領域と、ゲート電極71(図2参照。)を形成する領域とだけを覆い、その他の領域を露出するレジストパターン(以下、「第2レジストパターン」という。)R2を、フォトリソグラフィによってポリシリコン膜上に形成する。そして、図3(C)に示すように、この第2レジストパターンR2をマスクにポリシリコン膜をエッチングして、ゲート電極11とゲート電極71(図2参照。)とを同時に形成する。
【0029】
次に、第2レジストパターンR2を除去する。そして、図3(D)に示すように、これらのゲート電極11をマスクにして、シリコン基板1にリン又は砒素等のN型不純物をイオン注入し熱拡散して、S/D層17a,17bを形成する。その後、S/D層17a,17bを形成したシリコン基板1上に層間絶縁膜21(図1(A)参照。)やメタル配線(図示せず)等を順次形成し、さらに、この層間絶縁膜21上にAlパッド31(図1(A)参照。)を形成する。
【0030】
このAlパッド31は、MOSトランジスタ10上方(即ち、バンプ領域)の層間絶縁膜21上に形成する。さらに、このAlパッド31の上方を開口したパッシベーション膜33(図1(A)参照。)を層間絶縁膜21上に形成し、このパッシベーション膜33下から露出したAlパッド31上にバンプ電極41(図1(A)参照。)を形成する。これにより、図1(A)に示した半導体装置100を完成させる。
【0031】
バンプ電極41の形成後は、この半導体装置100を配線基板に実装する。この実装工程では、バンプ電極41を配線基板のインナーリードや、アウターリードに接合するが、その接合方法は、高温と荷重とを加えての熱圧着である。そのため、バンプ電極41下のMOSトランジスタ10には、この実装処理によってかなりのストレスが付加されるが、この第1実施形態に係る半導体装置100によれば、MOSトランジスタ10のゲート電極11の周縁部下にはLOCOSオフセット層13が存在し、その厚さはゲート酸化膜12よりも厚くなっているので、実装時のストレスに耐えることができる。
【0032】
従って、このゲート電極11の周縁部下でのクラックの発生を防止することができ、このクラックを経路とした電流リークを防止することができる。これにより、安定した高品質のIC製品を提供することができる。
また、この半導体装置100では、MOSトランジスタ10のゲート電極11の中央部下のシリコン酸化膜と、MOSトランジスタ70のゲート電極71の中央部下のシリコン酸化膜とが、同じ厚さとなっている(即ち、MOSトランジスタ10,70間で、ゲート酸化膜12の膜厚は同じである。)。従って、MOSトランジスタ10,70間で、その電気的特性(例えば、閾値電圧等)をほぼ同じにすることができる。
【0033】
さらに、この半導体装置100の製造方法によれば、シリコン基板1に素子分離用のLOCOS層3を形成すると同時に、ゲート電極11周縁部下のシリコン酸化膜を厚膜化することができるので、厚膜化のための工程の追加が少なくて済む。
一方、本発明の実施の形態に係る半導体装置100の設計方法は、バンプ電極41の位置を検出する処理と、検出された位置の下方に設けられるトランジスタを特定する処理と、特定されたトランジスタのみをMOSトランジスタ10とし、それ以外のトランジスタはMOSトランジスタ70とする処理と、を実行することを特徴とするものである。
【0034】
このような構成であれば、バンプ領域の下方に設けられたMOSトランジスタ10において、実装時のストレスによるクラックの発生を防止することができ、このクラックを経路としたゲート電極11とシリコン基板1間での電流リークを防止することができる。
この第1実施形態では、シリコン基板1が本発明の「半導体基板」に対応し、Alパッド31が本発明の「パッド」に対応している。また、MOSトランジスタ10が本発明の「一のトランジスタ」に対応し、MOSトランジスタ70が本発明の「他のトランジスタ」に対応している。さらに、ゲート酸化膜12とLOCOSオフセット層13とが本発明の「絶縁膜」に対応している。
(2)第2実施形態
図4は、第2実施形態に係るMOSトランジスタ50の構成例を示す断面図である。この第2実施形態において、第1実施形態と異なる点は、図1(A)に示した半導体装置100において、LOCOSオフセット構造のMOSトランジスタ10を、図4に示すMOSトランジスタ50に置き換えた点だけである。その他の構成は、第1実施形態と同じである。従って、図4において、図1(A)及び(B)と同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0035】
図4に示すMOSトランジスタ50は、ゲート電極11と、ゲート酸化膜12と、S/D層17a,17bと、HTO層53と、NST層15と、を含んだ構成となっている。HTO層53は、ゲート酸化膜12とS/D層17a,17bとの間のシリコン基板1に設けられたシリコン酸化膜である。図4に示すように、このMOSトランジスタ50では、HTO層53はゲート酸化膜12よりも厚く、このHTO層53によって、ゲート電極11の周縁部下のシリコン酸化膜厚は、ゲート電極11の中央部下のシリコン酸化膜厚よりも大きくなっている。このMOSトランジスタ50では、HTO層53の厚さは、例えば2000〜3000[Å]程度である。
【0036】
このように、HTO層53によって、ゲート電極11の周縁部下のシリコン酸化膜だけが厚膜化されたMOSトランジスタの構造のことを、HTOオフセット構造ともいう。
第2実施形態に係る半導体装置100´では、バンプ領域の下方に形成されたトランジスタはHTOオフセット構造を有するMOSトランジスタ50だけであり、非バンプ領域の下方に形成されたトランジスタは通常構造のMOSトランジスタ70(図2参照。)だけとなっている。
【0037】
このような構成であれば、MOSトランジスタ50のゲート電極11の周縁部下にはHTO層53が存在し、その厚さはゲート酸化膜12よりも厚くなっているので、実装時のストレスによるクラックの発生を防止することができ、このクラックを経路とした電流リークを防止することができる。従って、第1実施形態と同様に、安定した高品質のIC製品を提供することができる。
【0038】
また、このMOSトランジスタ50では、LOCOS層3特有のバーズビークがないので、第1実施形態で説明したMOSトランジスタ10と比べて、半導体装置の素子サイズを小さくすることができる。次に、このMOSトランジスタ50を含む半導体装置100´の製造方法について説明する。
図5(A)〜(D)は、第2実施形態に係る半導体装置100´の製造方法を示す工程図である。図5(A)では、まず始めに、シリコン基板1にLOCOS層3を形成する。次に、このLOCOS層3が形成されたシリコン基板1上にHTO層53を形成する。このHTO層53の形成方法は、例えば600〜900[℃]程度の熱CVD法によって、シリコン基板1上にシリコン酸化膜(図示せず)を形成する。次に、この図示しないシリコン酸化膜上に、HTO層53を形成する領域を覆い、その他の領域を露出するレジストパターン(図示せず)を形成する。そして、この図示しないレジストパターンをマスクにシリコン酸化膜をエッチングして、HTO層53を形成する。
【0039】
次に、図5(A)に示すように、フォトリソグラフィによって、シリコン基板1上にHTO層53を露出し、他の領域を覆う第1レジストパターンR1を形成する。そして、図5(A)に示すように、この第1レジストパターンR1をマスクにシリコン基板1に砒素、リン等のN型不純物を導入する。さらに、第1レジストパターンR1を除去した後で、シリコン基板1を熱処理する。このようなイオン注入及び熱拡散によって、シリコン基板1にNST層15を形成する。
【0040】
これ以降の製造方法は、第1実施形態と同じである。即ち、図5(B)に示すようにゲート酸化膜12を形成し、このゲート酸化膜12を形成したシリコン基板1の全面上にポリシリコン膜9を形成する。そして、図5(C)に示すように、MOSトランジスタ用のゲート電極11を形成する領域と、ゲート電極11(図1(A)参照。)を形成する領域とだけを覆い、その他の領域を露出する第2レジストパターンR2をポリシリコン膜上に形成する。そして、この第2レジストパターンR2をマスクにポリシリコン膜をエッチングして、ゲート電極11とゲート電極71(図2参照。)とを同時に形成する。
【0041】
次に、図5(D)に示すように、これらのゲート電極11をマスクにして、シリコン基板1にリン又は砒素等のN型不純物をイオン注入し熱拡散して、S/D層17a,17bを形成する。その後、S/D層17a,17bを形成したシリコン基板1上に層間絶縁膜21(図1(A)参照。)やメタル配線(図示せず)等を順次形成し、さらに、Alパッド31(図1(A)参照。)とパッシベーション膜33(図1(A)参照。)とを順次形成する。そして、このパッシベーション膜33下から露出したAlパッド31上にバンプ電極41(図1(A)参照。)を形成して、第2実施形態に係る半導体装置100´を完成させる。
【0042】
この第2実施形態では、MOSトランジスタ50が本発明の「一のトランジスタ」に対応し、ゲート酸化膜12とHTO層53とが本発明の「絶縁膜」に対応している。その他の対応関係は第1実施形態と同じである。
(3)第3実施形態
図6は、第3実施形態に係るMOSトランジスタ60の構成例を示す断面図である。この第3実施形態において、第1実施形態と異なる点は、図1(A)に示した半導体装置100において、LOCOSオフセット構造のMOSトランジスタ10を、図6に示すMOSトランジスタ60に置き換えた点と、素子分離用のLOCOS層3を素子分離用のSTI層4に置き換えた点だけである。その他の構成は、第1実施形態と同じである。従って、図6において、図1と同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0043】
図6に示すMOSトランジスタ60は、ゲート電極11と、ゲート酸化膜12と、S/D層17a,17bと、STIオフセット層63と、NST層15と、を含んだ構成となっている。STIオフセット層63は、ゲート酸化膜12とS/D層17aとの間のシリコン基板1及び、ゲート酸化膜12とS/D層17bとの間のシリコン基板1、にそれぞれ設けられたシリコン酸化膜である。
【0044】
図6に示すように、このMOSトランジスタ60では、STIオフセット層63はゲート酸化膜12よりも厚く、このSTIオフセット層63によって、ゲート電極11の周縁部下のシリコン酸化膜厚は、ゲート電極の中央部下のシリコン酸化膜厚よりも大きくなっている。このMOSトランジスタ60では、STIオフセット層63の厚さ(深さ)は、例えば4000〜7000[Å]程度である。
【0045】
このように、STIオフセット層63によって、ゲート電極11の周縁部下のシリコン酸化膜だけが厚膜化されたMOSトランジスタの構造のことを、STIオフセット構造ともいう。
第3実施形態に係る半導体装置100´´では、バンプ領域の下方に形成されたトランジスタはSTIオフセット構造を有するMOSトランジスタ60だけであり、非バンプ領域の下方に形成されたトランジスタは通常構造のMOSトランジスタ70(図2参照。)だけとなっている。
【0046】
このような構成であれば、MOSトランジスタ60のゲート電極11の周縁部下にはSTIオフセット層63が存在し、その厚さはゲート酸化膜12よりも厚くなっているので、実装時のストレスによるクラックの発生を防止することができ、このクラックを経路とした電流リークを防止することができる。従って、第1、第2実施形態と同様に、安定した高品質のIC製品を提供することができる。
【0047】
また、このMOSトランジスタ60では、LOCOS層3特有のバーズビークがないので、第1実施形態で説明したMOSトランジスタ10と比べて、半導体装置の素子サイズを小さくすることができる。
さらに、この半導体装置100´´を形成する場合には、シリコン基板1に素子分離用のSTI層4を形成すると同時に、ゲート電極11周縁部下のシリコン酸化膜を厚膜化することができるので、厚膜化のための工程の追加が少なくて済む。
【0048】
この第3実施形態では、MOSトランジスタ60が本発明の「一のトランジスタ」に対応し、ゲート酸化膜12とSTIオフセット層63とが本発明の「絶縁膜」に対応している。その他の対応関係は第1実施形態と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態に係る半導体装置100及び、MOSトランジスタ10の構成例を示す図。
【図2】MOSトランジスタ70の構成例を示す図。
【図3】半導体装置100の製造方法を示す工程図。
【図4】第2実施形態に係るMOSトランジスタ50の構成例を示す図。
【図5】半導体装置100´の製造方法を示す工程図。
【図6】第3実施形態に係るMOSトランジスタ60の構成例を示す図。
【図7】従来例に係る半導体装置200の構成例を示す図及び、その問題点を示す図。
【符号の説明】
【0050】
1 シリコン基板、3 (素子分離用の)LOCOS層、4 (素子分離用の)STI層、9 ポリシリコン膜、10,50,60 MOSトランジスタ(一のトランジスタに対応)、11,71 ゲート電極、12 ゲート酸化膜、13 LOCOSオフセット層、15 NST層、17a,17b S/D層、21 層間絶縁膜、31 Alパッド、33、パッシベーション膜、41バンプ電極、 53 HTO層、63 STIオフセット層、70 MOSトランジスタ(他のトランジスタに対応)、100,100´,100´´ 半導体装置、R1 第1レジストパターン、R2 第2レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に設けられたトランジスタと、
前記トランジスタを覆うように前記半導体基板上に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上にパッドを介して設けられたバンプ電極とを有し、
前記バンプ電極下方の領域の前記半導体基板には、前記トランジスタとしてゲート電極の周縁部下の絶縁膜が当該ゲート電極の中央部下の絶縁膜よりも厚い一のトランジスタのみが設けられ、
それ以外の領域の前記半導体基板には、前記トランジスタとしてゲート電極の中央部下からその周縁部下にかけての絶縁膜の厚さが均一な他のトランジスタが設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記一のトランジスタの前記ゲート電極の中央部下の絶縁膜と、前記他のトランジスタの前記ゲート電極下の絶縁膜とが同じ厚さであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記一のトランジスタは、LOCOSオフセット構造のトランジスタであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記一のトランジスタは、HTOオフセット構造のトランジスタであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記一のトランジスタは、STIオフセット構造のトランジスタであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体基板にトランジスタを形成する工程と、
前記トランジスタを覆うように前記半導体基板上に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜上にパッドを介してバンプ電極を形成する工程とを含み、
前記トランジスタを形成する工程では、
前記バンプ電極が形成される領域の下方の前記半導体基板には、ゲート電極の周縁部下の絶縁膜が当該ゲート電極の中央部下の絶縁膜よりも厚い一のトランジスタのみを形成し、
それ以外の領域の前記半導体基板には、ゲート電極の中央部下からその周縁部下にかけての絶縁膜の厚さが均一な他のトランジスタを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
半導体基板に設けられたトランジスタと、前記トランジスタを覆うように前記半導体基板上に設けられた層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上にパッドを介して設けられたバンプ電極とを含んで構成される半導体装置の設計方法であって、
前記バンプ電極の位置を検出する処理と、
検出された前記位置の下方に設けられる前記トランジスタを特定する処理と、
特定された前記トランジスタのみをゲート電極の周縁部下の絶縁膜が当該ゲート電極の中央部下の絶縁膜よりも厚い一のトランジスタとし、それ以外の前記トランジスタはゲート電極の中央部下からその周縁部下にかけての絶縁膜の厚さが均一な他のトランジスタとする処理と、を実行することを特徴とする半導体装置の設計方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられた第1ゲート絶縁膜と、
前記第1ゲート絶縁膜上に設けられた第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極の周縁部と前記半導体基板との間に設けられた、前記第1ゲート絶縁膜よりも厚いオフセット絶縁膜と、
前記半導体基板に設けられたソース及びドレインと、
前記半導体基板の上方に設けられた層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に設けられたパッド電極と、
前記パッド電極上に設けられ、該パッド電極の上方に開口を有するパッシベーション膜と、
前記開口に設けられ、且つ、前記第1ゲート電極の少なくとも一部の上方に設けられたバンプ電極と、を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記バンプ電極の下方の前記半導体基板には、前記オフセット絶縁膜を含む前記第1トランジスタのみが設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記バンプ電極の下方以外の前記半導体基板に設けられた、第2ゲート絶縁膜及び第2ゲート電極を含む第2トランジスタを含み、
前記第2ゲート電極の周縁部と前記半導体基板との間にはオフセット絶縁膜が無く、且つ、前記第2絶縁膜の厚さは、前記第2ゲート電極の中央部の下から当該第2ゲート電極の周縁部の下にかけて均一であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記オフセット絶縁膜は、LOCOSであることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記オフセット絶縁膜は、STIであることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記オフセット絶縁膜は、HTOであることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−245037(P2006−245037A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54610(P2005−54610)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】