説明

基板処理方法、基板処理装置、プログラム、記録媒体および置換剤

【課題】複数種類の液体を用いる基板処理方法において、液体を用いた処理の後に基板上に残留している当該液体を、次に使用される液体によって迅速かつより確実に置換することができる基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、処理液によって基板Wを処理する工程と、基板上に置換液を供給し、基板上に残留する処理液を置換液で置換する工程と、を備える。置換する工程に用いられる置換液は、処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有し、かつ、処理液の密度と同一の密度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法に係り、とりわけ、処理液を用いた処理の後に基板上に残留している処理液を迅速かつより確実に置換液で置換することができる基板処理方法に関する。
【0002】
また、本発明は、基板を処理する基板処理装置に係り、とりわけ、処理液を用いた処理の後に基板上に残留している処理液を迅速かつより確実に置換液で置換することができる基板処理装置に関する。
【0003】
さらに、本発明は、基板を処理する基板処理方法であって、処理液を用いた処理の後に基板上に残留している処理液を迅速かつより確実に置換液で置換することができる基板処理方法を実行するためのプログラム、並びに、このプログラムを記録した記録媒体に関する。
【0004】
さらに、本発明は、被処理体上に供給されて被処理体の表面上に残留している液体と置換されるようになる置換剤に係り、とりわけ、迅速かつより確実に液体と置換され得る置換剤に関する。
【背景技術】
【0005】
例えば、半導体ウエハ(以下においては、単にウエハと呼ぶ)やディスプレイ用ガラス基板等の基板に対し、複数種類の液体を用いて処理を施すことが広く行われている。一例として、半導体装置の製造工程中には、複数種類の液体を用いた洗浄処理がウエハに対して数回行われる。
【0006】
特許文献1に開示された基板の処理方法(ウエハの洗浄方法)は、薬液による処理工程と、純水を用いたリンス工程と、純水を乾燥剤で置換する置換工程と、基板を乾燥させる乾燥工程と、を有している。また、特許文献2に開示された基板の処理方法(ウエハの洗浄方法)は、薬液による処理工程と、薬液を乾燥剤で置換する置換工程と、基板を乾燥させる工程と、を有している。すなわち、特許文献2に開示された洗浄方法では、純水によるリンス工程が省かれるとともに、薬液を乾燥剤で置換することによって基板をリンス処理している。
【特許文献1】特開2003−297794号公報
【特許文献2】特開2005−5469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような複数種類の液体を用いた基板の処理において、基板上に残留する液体を、次に用いられる種類の液体に短時間で置換することができれば、生産効率の観点から好ましい。また逆に、それまでの処理で用いられていた液体が基板上に長時間残留すると、生産効率上の問題だけでなく、品質上の問題まで生じてしまう。例えば、特許文献1および特許文献2の処理において、薬液が長時間にわたって基板上に残留すると、基板上の薬液が残留している位置のみにおいて、薬液による処理が局部的に進行してしまう。すなわち、基板の表面内において、また、基板間において、処理の進行の程度がばらついてしまう。また、純水が長時間にわたって基板上に残留すると、残留した純水が、酸素や基板(シリコン)と反応し、基板上にウォーターマークが発生してしまうという不具合が生じてしまう。
【0008】
そして、近年において、半導体装置の回路パターンが微細化されていっていること等を考慮すれば、処理液の置換を短時間でより確実に行うことを可能にすることが、この先において、枚葉式処理およびバッチ式処理のいずれにおいても非常に重要になってくるものと理解される。
【0009】
すなわち、本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、液体(処理液)を用いた処理の後に基板上に残留している当該液体を、次に使用される液体(置換液)によって迅速かつより確実に置換することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、液体(処理液)を用いた処理の後に基板上に残留している当該液体を、次に使用される液体(置換液)によって迅速かつより確実に置換することができる基板処理方法を実行するためのプログラム、並びに、このプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、被処理体上に供給されて被処理体の表面上に残留している液体と置換されるようになる置換剤に係り、とりわけ、迅速かつより確実に液体と置換され得る置換剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
なお、上述した特許文献1および特許文献2には、表面張力が低い置換液(例えば、ハイドロフルオロエーテル)を置換液として用いることによって、基板に残留する処理液を迅速に置換することが、提案されている。その一方で、本件発明者は、置換液の表面張力だけでなく置換液の密度が置換の進行に与える影響について詳細な検討を行った。そして、本件発明者は、置換液の密度が、置換液の表面張力とともに、置換の迅速性および置換の確実性に大きな影響を与えることを知見した。すなわち、本発明はこのような知見に基づくものであり、本発明によれば、従来技術と比較し、処理液を用いた処理の後に基板上に残留している当該処理液を短時間でより確実に置換液で置換することができる。
【0013】
本発明による基板処理方法は、処理液によって基板を処理する工程と、前記基板上に置換液を供給し、前記基板上に残留する前記処理液を前記置換液で置換する工程と、を備え、前記置換する工程に用いられる置換液は、前記処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有し、かつ、前記処理液の密度と同一の密度を有することを特徴とする。
【0014】
本発明による基板処理方法において、前記置換する工程で用いられる置換液は、前記処理液と互いに可溶であるようにしてもよい。
【0015】
また、本発明による基板処理方法が、前記置換する工程の後に、前記基板を乾燥させる工程を、さらに備え、前記置換する工程で用いられる置換液は、前記処理液よりも揮発性を有するようにしてもよい。
【0016】
さらに、本発明による基板処理方法において、前記処理液が水からなる液体であるようにしてもよい。このような本発明による基板処理方法において、前記置換する工程で用いられる置換液は、比重が1よりも大きい不水溶性の液体と、比重が1よりも小さい水溶性の液体と、の混合液であるようにしてもよい。あるいは、本発明による基板処理方法において、前記置換する工程で用いられる置換液は、不水溶性の液体と、水溶性の液体と、の混合液であるようにしてもよい。このような本発明による基板処理方法において、前記不水溶性の液体は、ペルフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルおよびハイドロクロロフルオロカーボンのうちの少なくともいずれか一つを含むようにしてもよい。また、このような本発明による基板処理方法において、前記水溶性の液体は、脂肪族アルコール類、ケトン類、エステル類およびグリコール類のうちの少なくともいずれか一つを含むようにしてもよい。
【0017】
さらに、本発明による基板処理方法の前記置換する工程において、前記基板の周囲に前記置換液の蒸気が供給され、前記蒸気が前記基板上に凝縮することにより、前記基板上に前記置換液が供給されるようにしてもよい。このような本発明による基板処理方法において、前記置換する工程で用いられる置換液は、二種類以上の液体の混合液であり、前記基板の周囲に供給される前記置換液の蒸気は、前記二種類以上の液体が、それぞれ予め設定した量だけ加熱器に供給され、加熱器で加熱されることにより生成されるようにしてもよい。
【0018】
本発明による第1の基板処理装置は、基板を保持する保持手段と、前記基板を処理するための処理液を吐出する処理液吐出部と、前記処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有するとともに処理液の密度と同一の密度を有する置換液を吐出する置換剤吐出部と、前記処理液を用いて処理された基板上に置換液を供給し、前記基板上に残留する前記処理液を前記置換液で置換するように、前記処理液吐出部からの前記処理液の吐出と、前記置換剤吐出部からの前記置換液の吐出と、を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明による第1の基板処理装置が、混合されて前記置換液を構成するようになる複数種類の液体をそれぞれ供給する複数の配管と、各配管および前記置換剤吐出部に接続された混合手段と、をさらに備え、前記制御装置は、それぞれ予め設定された量の液体が、各配管から前記混合手段にそれぞれ供給されるとともに前記混合手段で混合され、前記置換液が生成されるように、前記配管からの液体の供給をさらに制御してもよい。
【0020】
本発明による第2の基板処理装置は、基板を保持する保持手段と、前記基板を処理するための処理液を吐出する処理液吐出部と、前記処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有するとともに前記処理液の密度と同一の密度を有する置換液の蒸気を吐出する置換剤吐出部と、前記処理液を用いて処理された基板の周囲に置換液の蒸気を供給し、前記基板上に凝縮した置換液によって前記基板上に残留する前記処理液を置換するように、前記処理液吐出部からの前記処理液の吐出と、前記置換剤吐出部からの前記置換液の蒸気の吐出と、を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明による第2の基板処理装置が、混合されて前記置換液を構成するようになる複数種類の液体をそれぞれ供給する複数の配管と、各配管に接続された混合手段と、前記混合手段と前記置換剤吐出部との間に設けられた加熱器と、をさらに備え、前記制御装置は、それぞれ予め設定された量の液体が、各配管から前記混合手段にそれぞれ供給されるとともに前記混合手段で混合され、その後、前記加熱器で加熱され、前記置換液の蒸気が生成されるように、前記配管からの液体の供給と、前記加熱器による加熱と、をさらに制御してもよい。あるいは、本発明による第2の基板処理装置が、混合されて前記置換液を構成するようになる複数種類の液体をそれぞれ供給する複数の配管と、前記配管および前記置換剤吐出部に接続された加熱混合手段と、をさらに備え、前記制御装置は、それぞれ予め設定された量の液体が、各配管から前記加熱混合手段にそれぞれ供給され、前記加熱混合手段によって混合されるとともに加熱されて、前記置換液の蒸気が生成されるように、前記配管からの液体の供給と、前記加熱混合手段による加熱と、をさらに制御してもよい。あるいは、本発明による第2の基板処理装置が、気化されるとともに混合されて前記置換液の蒸気を構成するようになる複数種類の液体をそれぞれ供給する複数の配管と、前記配管を加熱する加熱器と、前記配管および前記置換剤吐出部に接続された混合手段と、をさらに備え、前記制御装置は、それぞれ予め設定された量の液体が、前記加熱器によって加熱されながら各配管から前記混合手段にそれぞれ供給され、前記混合手段で混合されて、前記置換液の蒸気が生成されるように、前記加熱器による加熱と、前記配管からの液体の供給と、をさらに制御してもよい。これらの第2の基板処理装置において、生成された置換液の蒸気が、キャリアガス、例えば窒素ガスからなるキャリアガスとともに、置換剤吐出部から吐出されるようにしてもよい。
【0022】
本発明による第1または第2の基板処理装置において、前記保持手段は、前記基板が水平方向に沿うようにして、一つの基板を保持するようにしてもよい。あるいは、本発明による第1または第2の基板処理装置において、前記保持手段は、前記基板が垂直方向に沿うようにして、同時に複数の基板を保持するようにしてもよい。
【0023】
また、本発明による第1または第2の基板処理装置において、前記置換液は、前記処理液と互いに可溶であるようにしてもよい。
【0024】
さらに、本発明による第1または第2の基板処理装置において、前記置換液は、前記処理液よりも揮発性を有するようにしてもよい。
【0025】
さらに、本発明による第1または第2の基板処理装置において、前記保持手段は、前記基板を回転可能に保持し、前記制御装置は、前記処理液が前記置換液によって置換された後に、前記基板を回転させながら基板を乾燥させるように、前記保持手段を制御してもよい。
【0026】
さらに、本発明による第1または第2の基板処理装置において、前記処理液は水からなる液体であるようにしてもよい。
【0027】
本発明によるプログラムは、基板処理装置を制御する制御装置によって実行されるプログラムであって、前記制御装置によって実行されることにより、処理液によって基板を処理する工程と、前記基板上に置換液を供給し、前記基板上に残留する前記処理液を前記置換液で置換する工程と、を備え、前記置換する工程に用いられる置換液は、前記処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有し、かつ、前記処理液の密度と同一の密度を有する、被処理基板の処理方法を、基板処理装置に実施させることを特徴とする。
【0028】
本発明によるプログラム記録媒体は、基板処理装置を制御する制御装置によって実行されるプログラムが記録された記録媒体であって、前記プログラムが前記制御装置によって実行されることにより、処理液によって基板を処理する工程と、前記基板上に置換液を供給し、前記基板上に残留する前記処理液を前記置換液で置換する工程と、を備え、前記置換する工程に用いられる置換液は、前記処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有し、かつ、前記処理液の密度と同一の密度を有する、被処理基板の処理方法を、基板処理装置に実施させることを特徴とする。
【0029】
本発明による置換剤は、被処理体上に供給されて、被処理体の表面上に残留する液体と置換されるようになる置換剤であって、液体状態において、置換されるべき液体の表面張力よりも小さい表面張力を有し、かつ、液体状態において、置換されるべき液体の密度と同一の密度を有することを特徴とする。
【0030】
本発明による置換剤が、置換されるべき液体と互いに可溶であるようにしてもよい。
【0031】
また、本発明による置換剤が、置換されるべき液体よりも揮発性を有するようにしてもよい。
【0032】
さらに、本発明による置換剤において、置換されるべき液体は水としてもよい。このような本発明による置換剤が、比重が1よりも大きい不水溶性の液体と、比重が1よりも小さい水溶性の液体と、の混合液であるようにしてもよい。あるいは、本発明による置換剤が、不水溶性の液体と、水溶性の液体と、の混合液であるようにしてもよい。このような本発明による置換剤において、前記不水溶性の液体は、ペルフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルおよびハイドロクロロフルオロカーボンのうちの少なくともいずれか一つを含むようにしてもよい。また、このような本発明による置換剤において前記水溶性の液体は、脂肪族アルコール類、ケトン類、エステル類およびグリコール類のうちの少なくともいずれか一つを含むようにしてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態においては、本発明による基板処理装置の一適用例として、半導体ウエハ(基板)を洗浄(処理)する洗浄装置(基板処理装置)を、例に挙げて説明する。また、以下に説明する実施の形態においては、本発明による基板処理方法の一適用例として、薬液処理された基板を水(処理液)でリンス処理し、その後、基板上に残留している水を置換液で置換し、さらにその後、基板上から液体を除去して基板を乾燥させる基板の洗浄方法(基板洗浄方法)を、例に挙げて説明する。ただし、以下に説明する実施の形態は本件発明の一適用例に過ぎず、本件発明による基板処理方法および基板処理装置を、半導体ウエハ以外の基板の洗浄処理や、基板の洗浄処理以外の処理に適用することができる。また、本発明による置換剤は、基板に限られない被処理体の表面上に残留する液体を置換することにも用いられ得る。
【0034】
図1乃至図5は本発明による基板処理方法、基板処理装置、プログラムおよびプログラム記録媒体の実施の形態を説明するための図である。このうち、図1乃至図3は、半導体ウエハ(以下において、単にウエハと呼ぶ)Wを一枚ずつ処理する枚葉処理に関する例を、第1の実施の形態として、説明するための図であり、図4および図5は、複数枚の半導体ウエハによって構成されたバッチを一括処理するバッチ処理に関する例を、第2の実施の形態として、説明するための図である。
【0035】
(第1の実施の形態)
まず、図1乃至図3を参照しながら、枚葉式処理に関する第1の実施の形態について説明する。なお、図1は、基板処理装置の概略構成を示す基板処理装置の縦断面図であり、図2は基板処理装置を示す上面図である。
【0036】
図1に示すように、本実施の形態において、基板処理装置10は、ウエハWを保持する保持手段12と、ウエハWを処理するための処理液を吐出する処理液吐出部20と、ウエハW上に残留する処理液を置換するための置換液(置換剤)を吐出する置換剤吐出部30と、を有している。なお、置換剤とは、置換液(すなわち液体)、置換液の蒸気(すなわち気体)、さらには置換液の凝固物(すなわち固体)をすべて含む概念とする。
【0037】
図1に示すように、保持手段12は、ケーシング18内に配置されている。本実施の形態において、保持手段12は、ウエハWを回転可能に吸着保持するスピンチャックとして構成されている。図1に示すように、保持手段12は、ウエハWの処理されるべき表面が水平方向に沿うようにして、一枚のウエハWを吸着するようになっている。保持手段12はモータ等の駆動手段14に連結されており、この駆動手段14に駆動されることによって、鉛直方向に沿った軸心を中心として、保持したウエハWとともに回転するようになる。
【0038】
また、図1および図2に示すように、保持手段12に保持されたウエハWを少なくとも水平方向から取り囲むカップ15がケーシング18内に配置されている。カップの15の底部からケーシング18の外部へと、排気・排液管16が延びている。この排気・排液管16を介し、カップ15に回収された液体およびケーシング18の内部の雰囲気が、ケーシング18の外部へと排出される。
【0039】
本実施の形態において、処理液吐出部20および置換剤吐出部30は、それぞれ別のノズルによって構成されている。処理液吐出部20および置換剤吐出部30は、例えば摺動可能なアーム、または、図2に示すような揺動可能アーム19に支持されている。そして、アーム19が移動することによって、処理液吐出部20および置換剤吐出部30は、保持手段12に保持されたウエハWの上方、とりわけウエハWの中心部の上方と、ウエハWの外方と、の間を、ウエハWの板面に沿って水平方向に移動することができる。
【0040】
図1に示すように、処理液吐出部20には処理液供給配管22の一端が連結されている。また、処理液供給配管22の他端は、切り換え弁23を介して、複数の配管24a,25aに接続されている。各配管24a,25aは、ウエハWを処理するための処理液を貯留した処理液貯留手段24,25にそれぞれ接続されている。また、各配管24a,25aには、各配管内を流れる流体の流量を調節する流量制御弁24b,25bが介設されている。本実施の形態において、基板処理装置10は、純水(DIW)を貯留した純水貯留手段24と、薬液を貯留した薬液貯留手段25と、を含んでいる。以上の構成により、切り換え弁23および流量制御弁24b,25bを操作することにより、例えばポンプの揚力等を駆動力として、選択された処理液貯留手段24,25から所定の処理液が所定の流量で処理液吐出部20から吐出されるようになる。
【0041】
ここで、処理液貯留手段24,25として、例えばタンク等の既知の貯留手段が用いられ得る。また、薬液貯留手段25に貯留される薬液は、例えば、希フッ酸水溶液(DHF)、アンモニア−過酸化水素水(SC1)、硫酸−過酸化水素水(SC2)等のような種々の既知の薬液から、基板処理装置10に求められる処理内容に応じて、適宜選択され得る。
【0042】
次に、置換剤吐出部30の系統について説明する。図1に示すように、置換剤吐出部30には置換剤供給配管32の一端が連結されている。また、置換剤供給配管32の他端は、ミキサー(混合器、混合手段)33を介して、複数の配管34a,35aに接続されている。各配管34a,35aは、混合されて置換液を構成するようになる複数種類の液体(置換剤要素)がそれぞれ貯留された複数の液体貯留手段34,35に、それぞれ接続されている。また、各配管34a,35aには、各配管内を流れる流体の流量を調節する流量制御弁34b,35bと、各配管を開閉する開閉弁34c,35cと、が介設されている。以上の構成により、流量制御弁34b,35bおよび開閉弁34c,35cを操作することにより、例えばポンプの揚力等を駆動力として、各液体貯留手段34,35から所定量の置換剤要素がそれぞれミキサー33に供給される。これにより、所望の組成を有した置換液(置換剤の液体)が生成され、置換剤吐出部30から吐出されるようになる。なお、液体貯留手段34,35として、処理液貯留手段24,25と同様に、例えばタンク等の既知の貯留手段が用いられ得る。
【0043】
本実施の形態において、基板処理装置10は、二つの液体貯留手段34,35を有している。すなわち、本実施の形態において、置換剤吐出部30から吐出される置換液は、二種類の液体、さらには詳しくは、二種類の有機溶剤からなっている。そして、本実施の形態において、二種類の液体からなる置換液は、以下の(1)乃至(4)の条件をすべて満たすようになっている。
(1)置換液が、置換液による置換対象となる処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有する。
(2)置換液が、置換液による置換対象となる処理液の質量密度と同一の質量密度を有する。
(3)置換液と、置換液による置換対象となる処理液とが互いに可溶である。
(4)置換液が、置換液による置換対象となる処理液よりも揮発性を有する。
【0044】
ここで、条件(2)の置換液が処理液と同一の密度を有するとは、ある一定の条件下において、置換液の密度の処理液の密度に対する比が、少数第1位までの値に四捨五入すると、1.0となることを意味する。すなわち、置換液による置換対象となる処理液が純水である場合、置換液が、0.95g/cm3以上1.05g/cm3未満の密度を有すれば、置換液の密度が純水の密度と同一であると表現する。
【0045】
また、揮発性の大小については、ある一定の条件下における、蒸発潜熱の大小に基づいて判断する。すなわち、置換液の蒸発潜熱が純水の蒸発潜熱(略2256J/g)よりも低ければ、置換液が純水よりも揮発性を有すると表現する。
【0046】
このような置換液は、不水溶性の液体と、水溶性の液体と、の混合液であることが好ましい。置換液によって置換されるべき処理液が、水、水溶性液体および不水溶性液体のうちのいずれであっても、置換液は処理液と互いに可溶となり、条件(3)を満たすからである。とりわけ、置換液が、二種類の置換剤要素として、置換液によって置換されるべき処理液を標準物質とした比重が1より大きい不水溶性液体と、置換液によって置換されるべき処理液を標準物質とした比重が1より小さい水溶性液体と、の混合液であることがさらに好ましい。このような置換剤要素の入手は容易であり、二種類の置換剤要素の混合比率を調節することによって、条件(2)を満たすことが可能となる。
【0047】
一例として、一方の液体貯留手段に収容される液体を、メタノール、エタノール、1−プロパノール(n−プロパノール)、2−プロパノール(IPA:イソプロピルアルコール)、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、tert−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノール等の脂肪族アルコール類、アセトンおよびメチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、エステル類、ならびに、グリコール類のうちの少なくともいずれか一つを含む水溶性の液体とすることができる。また、他方の液体貯留手段に収容される液体を、C6F14、C7F16およびC8F18等のペルフルオロカーボン類、CF3CF2CFHCFHCF3等のハイドロフルオロカーボン類、C4F9OCH3等のハイドロフルオロエーテル類、ならびに、C3HC12F5等のハイドロクロロフルオロカーボン類のうちの少なくともいずれか一つを含む不水溶性液体の液体とすることができる。
【0048】
ところで、基板処理装置10は、以上の各構成要素を制御する制御装置40をさらに備えている。具体的には、制御装置40は、上述した保持手段12、駆動手段14、アーム19、各弁類等に電気的に接続され、これらの機器類の動作を制御する。制御装置40には、工程管理者等が基板処理装置10を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、基板処理装置10の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる入出力装置41が接続されている。また、制御装置40は、基板処理装置10で実行される処理を実現するためのプログラム等が記録された記録媒体42にアクセス可能となっている。記録媒体42は、ROMおよびRAM等のメモリ、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMおよびフレキシブルディスク等のディスク状記録媒体等、既知のプログラム記録媒体から構成され得る。
【0049】
次に、以上のような構成からなる基板処理装置10を用いて実行され得る基板処理方法の一例について説明する。なお、以下に説明する基板処理方法を実行するための各構成要素の動作は、予めプログラム記録媒体42に格納されたプログラムに基づいた制御装置40からの制御信号によって制御される。
【0050】
以下に説明する基板処理方法は、上述したように、ウエハWの洗浄処理方法であって、薬液によってウエハWを薬液洗浄する工程と、薬液処理されたウエハWを処理液(純水)によってリンス処理する工程と、リンス処理されたウエハW上に置換液を付着させ、ウエハW上に残留する処理液(純水)を置換液で置換する工程と、ウエハW上から置換液を除去して、ウエハWを乾燥させる工程と、を含んでいる。以下、各工程について、詳述していく。
【0051】
まず、処理対象のウエハWが、ケーシング18の内部に持ち込まれ、保持手段12によって保持される。このとき、ウエハWは、その板面が水平方向に沿うようにして、保持手段12に吸着保持される。また、制御装置40からの信号に基づいて、駆動手段14が、ウエハWとともに保持手段12を回転駆動する。このような動作に並行して、アーム19が移動し、処理液吐出部20がウエハWの処理されるべき表面の中心部の直上に配置される。
【0052】
この状態において、制御信号40からの信号に基づいて切り換え弁23および流量制御弁25bが動作し、薬液が処理液吐出部20から所定流量で吐出される。吐出された薬液は、ウエハWの処理されるべき表面の中心部に供給され、ウエハWの回転にともなって、ウエハWの表面の中心部から周縁部へと広がっていく。このようにして、ウエハWの表面が薬液に曝されて処理される。そして、制御装置40からの制御信号に基づいて切り換え弁23が動作して処理液吐出部20からの薬液の吐出が停止し、処理液として薬液を用いた薬液洗浄工程が終了する。なお、ウエハWの回転に起因した遠心力によって、ウエハW上から外方に振り切られた薬液は、カップ15に回収され、排気・排液管16からケーシング18の外部へと排出される。
【0053】
次に、リンス工程について説明する。まず、制御装置40からの制御信号に基づいて切り換え弁23および流量制御弁24bが動作する。これにより、処理液としての純水が、処理液吐出部20から所定流量で吐出されるようになる。吐出された純水は、ウエハWの処理されるべき表面の中心部に供給され、ウエハWの回転にともなって、ウエハWの表面の中心部から周縁部へと広がっていく。このようにして、ウエハWの表面上の薬液が純水によって置換されていく。そして、制御装置40からの制御信号に基づいて切り換え弁23が動作して処理液吐出部20からの純水の吐出が停止し、処理液として純水を用いたリンス工程が終了する。なお、ウエハWの回転に起因した遠心力によって、ウエハW上から外方に振り切られた薬液および純水は、カップ15に回収され、排気・排液管16からケーシング18の外部へと排出される。
【0054】
ところで、以上の薬液洗浄工程およびリンス工程においては、処理液吐出部30が処理液を吐出しながら、アーム19によって、ウエハWの中心部上方からウエハの周縁部へ向けてウエハWの板面に沿って移動するようにしてもよい。このような方法によれば、処理液吐出部30から吐出される処理液が短時間でウエハWの全面に延び広がるようにすることが可能となる。また、薬液洗浄工程およびリンス工程においては、処理液の吐出が停止した後、所定時間の間だけウエハWを回転させておく、好ましくは高速回転させておくことが好ましい。このような方法によれば、次の工程の開始時に、ウエハW上に残留する処理液の量を大幅に低減することができる。
【0055】
次に、置換工程について説明する。まず、制御装置40からの制御信号に基づいて開閉弁34c,35cおよび流量制御弁34b,35bが動作する。これにより、第1の置換剤要素としての第1の液体(例えば、IPA:イソプロピルアルコール)が所定の流量で第1液体貯留部34からミキサー33へと流れ込むとともに、第2の置換剤要素としての第2の液体(例えば、ハイドロフルオロエーテル)が所定の流量で第2液体貯留部35からミキサー33へと流れ込む。ミキサー33において、第1の液体と第2の液体との混合液である置換液(液体状の置換剤)が生成される。生成された置換液は、配管32内を流れ、置換剤吐出部30から所定流量で吐出されるようになる。吐出された置換液は、ウエハWの表面の中心部に供給され、ウエハWの表面の中心部から周縁部へと広がっていく。そして、ウエハWの表面上に残留する純水に置き換わり、ウエハWの表面上を占めるようになる。
【0056】
置換剤吐出部30から吐出される置換液は、上述した(1)乃至(3)の条件を満たすようになっている。このような置換液を用いた場合、極めて短時間で、かつ、安定して確実に置換されるべき処理液(純水)を置換液で置換することができる。このような現象が生じるメカニズムは必ずしも明らかではないが、その一要因と考えられ得るメカニズムについて、図3を参照しながら、以下に説明する。ただし、本件発明は以下のメカニズムに限定されるものではない。
【0057】
上述したように、置換液は、置換液による置換対象となる処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有している(上述した条件(1))。例えば、表面張力が13〜15dyn/cm程度のハイドロフルオロエーテルと、表面張力が20dyn/cm程度のイソプロピルアルコールとの混合液からなる置換液は、置換されるべき純水の表面張力(略72dyn/cm)よりも低い表面張力を有するようになる。したがって、図3に示すように、置換されるべき処理液(純水)と比較して、置換液はウエハWの表面上を迅速に延び広がることができる。また、例えばウエハWの表面に配線パターン等の微細な凹凸形状が形成されていたとしても、置換液は、置換されるべき純水と比較して、この凹凸形状の凹部8内にまで入り込みやすくなっている。
【0058】
また、置換液は、置換液による置換対象となる処理液と同一の密度を有している(上述した条件(2))。本件発明において、同一密度とは、置換されるべき処理液の液体状態での密度に対する置換液の液体状態での密度の比の値が、少数第1位までの値に四捨五入すると、1.0となることを意味する。例えば、液体状態での質量密度が1.4〜1.7g/cm3程度のハイドロフルオロエーテルと、液体状態での質量密度が0.7〜0.8g/cm3程度のイソプロピルアルコールと、を体積比で4:6〜5:5で混合することにより、生成された置換液が、置換されるべき純水と同一の質量密度を有するようにすることが可能となる。
【0059】
確かに、置換液の表面張力が置換されるべき処理液の表面張力よりも低ければ、置換液がウエハWの表面の凹凸形状に追従して延び広がり、置換されるべき処理液が入り込んでいる凹凸形状の凹部8内にまで入り込むことを促進することができる、と考えられる。しかしながら、図3に示すように、置換液が凹部8内に入り込むには、それまで凹部8内に入り込んでいた処理液を凹部8内から排出する必要がある。すなわち、処理液がそれまで占めていた領域と、置換液がそれまで占めていた領域とを互いに変更する必要がある。そして、とりわけ、その板面が水平方向に延びるようにして保持されたウエハWにおいては、略鉛直方向に延びる凹部が多数存在する。この場合、重力の影響を受け、置換液によって、置換されるべき処理液をウエハWの表面から引き離し辛いことがあると想定される。本実施の形態によれば、置換液が置換されるべき処理液と同一の質量密度を有しているので、ウエハWの表面上のいかなる位置に処理液が残留していたとしても、重力による影響を排除することができる。したがって、それまでにウエハWの表面上に接触していた処理液を排除して、表面張力の低い置換液がウエハWの表面に沿って延び広がり、これにより、ウエハWの表面上の位置に残留していた処理液が、置換液によって短時間でより確実に置換されていくものと想定される。
【0060】
ここで、本件発明者が、置換されるべき処理液の質量密度に対する置換液の質量密度の比(質量密度比)が、置換効率に与える影響を調査した実験について説明する。まず、一端が閉鎖された内径0.4mmで長さが15mmの管を用意した。管の材質はPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)とした。この管を置換されるべき液体で満たし、置換液内に浸漬した。置換液内に浸漬してから30秒後、60秒後および90秒後に、置換液が、置換されるべき液体を排除して管の開口部から管内に入り込んだ長さ(mm)を測定した。置換液されるべき液体は純水と微量の着色剤との混合物とし、置換されるべき液体の密度は0.975g/cm3であった。一方、置換液は、密度が0.786g/cm3のイソプロピルアルコールと、ハイドロフルオロエーテルと、の混合物とした。ハイドロフルオロエーテルは、いずれも3M社から入手可能なHFE7100(組成:C4F9OCH3、密度:1.520g/cm3)、HFE7200(組成:C4F9OC2H5、密度:1.430g/cm3)およびHFE7300(組成:C6F13OCH3、密度:1.660g/cm3)とした。さらに、置換液は、各種のハイドロフルオロエーテルとイソプロピルアルコールとの混合比を種々変更させて生成した。
【0061】
HFE7100とイソプロピルアルコールとの混合液からなる置換液を用いた実験結果を表1に示し、HFE7200とイソプロピルアルコールとの混合液からなる置換液を用いた実験結果を表2に示し、HFE7300とイソプロピルアルコールとの混合液からなる置換液を用いた実験結果を表3に示す。表1乃至表3から、置換されるべき処理液の質量密度に対する置換液の質量密度の比(質量密度比)を1.0とした場合に、優れた置換効率が得られ得る、ことを理解することができる。
【表1】

【表2】

【表3】

【0062】
さらに、本実施の形態において、置換液と、置換液による置換対象となる処理液とが互いに可溶である(上述した条件(3))。ハイドロフルオロエーテルは、公知のように不水溶性であり、純水と安定して混ざり合うことができない。一方、イソプロピルアルコールは、アルコール基を有しており、水溶性である。また、イソプロピルアルコールは、有機溶剤であり、ハイドロフルオロエーテルと互いに可溶である(安定して混ざり合う)。この結果、本実施の形態において、置換液は、置換されるべき処理液(純水)と互いに可溶であり、安定して混ざり合うことができる。
【0063】
図3に示すように、ウエハWの凹凸形状の凹部8内に残留する微量の処理液は、置換液がウエハW上を広がることによって、置換液に覆われるようになる。そして、置換液が、ウエハWの表面の微細な表面形状に沿って、処理液が残留している微細な凹部8内にまで入り込もうとすると、置換液の凹部8内への移動にともなって、処理液は、当該処理液を覆っている置換液内に溶け込むようになる。これにより、本実施の形態によれば、ウエハW上に残留する処理液を、置換液によって、さらに迅速かつさらに確実に置換し、ウエハWの表面上から処理液を排除することができる。
【0064】
以上のように、置換されるべき純水との間で上述した条件(1)乃至(3)を満たす置換液をウエハW上に供給することにより、置換工程において、ウエハW上に残留するリンス液の置換液による置換を短時間でより確実に完了させることができる。置換を短時間でより確実に完了させることができれば、生産性を向上させることができ、コスト面において優位となる。とりわけ、本実施の形態にように、置換されるべき処理液が純水である場合、純水がウエハW上に長時間存在してウエハWの表面に長時間接触していると、純水が酸素およびウエハWをなす半導体と反応して、ウエハWの表面にウォーターマークが発生してしまうことがある。したがって、置換液による置換を短時間でより確実に完了させることができれば、生産性を向上させるだけでなく、ウォーターマークの発生を防止し、安定した高品質を確保することができる。この結果、歩留まりを向上させることもでき、さらにコスト面で優位になる。
【0065】
以上のようにして置換工程が進み、制御装置40からの制御信号に基づいて流量制御弁34b,35bおよび開閉弁34c,35cが再び動作する。この結果、置換剤吐出部30からの置換液の吐出が停止し、置換液を用いた置換工程が終了する。
【0066】
ところで、置換工程においては、置換剤吐出部30をウエハWの中心上方からウエハの周縁部へ向けて移動させながら、置換剤吐出部30から置換液を吐出するようにしてもよいし、ウエハWの表面の中心部直上に停止させたまま、置換剤吐出部30から置換液を吐出するようにしてもよい。また、置換剤吐出部30から吐出された置換液がウエハWの微細な凹部8内に入り込む前に、置換液がウエハW上から振り切られることを防止するため、保持手段12は、ウエハWを低速で回転させること、あるいは、回転を停止させておくことが好ましい。
【0067】
次に、乾燥工程について説明する。まず。制御装置40からの制御信号に基づいて、駆動手段14が、ウエハWとともに保持手段12を高速回転させる。これにより、ウエハW上の置換液が、ウエハW上から外方に振り切られる。そして、本実施の形態によれば、上述したように、置換液は、置換液による置換対象となる処理液よりも高い揮発性を有している(上述した条件(4))。例えば、蒸発潜熱が100〜130J/g程度のハイドロフルオロエーテルと、蒸発潜熱が670J/g程度のイソプロピルアルコールとの混合液からなる置換液は、置換されるべき純水の蒸発潜熱(略2259J/g)よりも低い蒸発潜熱を有するようになる。したがって、ウエハWの表面の微細な凹部8内に入り込んだ置換液も、短時間で蒸発する。このように、置換液がウエハWから振り切られることと、置換液が蒸発することと、によって、ウエハWの表面から置換液が除去される。このようにしてウエハWが乾燥し、駆動手段14による保持手段12の回転駆動が停止して、乾燥工程が終了する。
【0068】
なお、この乾燥工程中、保持手段に保持されたウエハWに向けて、例えば、高温のガス(窒素ガス等)が吹き付けられる等して、ウエハWの表面が加熱されることが好ましい。このようにウエハWの表面が加熱されると、ウエハW上に残留する置換液の蒸発が促進され、ウエハWの乾燥を短時間化することができる。
【0069】
このようにしてウエハWに対する一連の処理が終了し、処理済みのウエハWがケーシング18内から搬出され、次に処理されるべきウエハWがケーシング18内に持ち込まれ、持ち込まれたウエハWに対して同様の処理が施されていく。
【0070】
以上のような本実施の形態によれば、置換液は、処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有している。したがって、処理液と比較して、置換液はウエハWの表面上を迅速に延び広がることができる。また、例えばウエハWの表面に配線パターン等の微細な凹凸形状が形成されていたとしても、置換液は、この凹凸形状の凹部8内にまで入り込みやすくなっている。加えて、本実施の形態によれば、置換液は処理液の密度と同一の密度を有している。したがって、重力に影響されることなく、処理液と置換液とが混ざりやすくなっている。すなわち、処理液がウエハWの表面上から置換液内へ移動しやすくなっている。このように置換液が置換されるべき処理液が残留している領域に入り込みやすく、かつ、ウエハW上に残留している処理液が置換液内に入り込みやすくなっているので、ウエハW上に残留する処理液を置換液によって迅速かつより確実に置換し、ウエハWの表面上から処理液を離間させることができる。
【0071】
したがって、処理液が水であったとしても、水がウエハW上に存在している時間、言い換えると、水がウエハWに接触している時間を短時間化することができる。これにより、ウォーターマークの発生を大幅に抑制することができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、置換液および処理液は、互いに対する可溶性を有しているので、少なくとも一部分において接触していれば互いに混ざり込むことができる。したがって、ウエハW上に残留している処理液は、例えば、ウエハの凹凸形状の凹部8内に残留する微量の処理液は、ウエハWの表面上を延び広がってくる処理液内に溶け込むようになる。すなわち、ウエハW上に残留している処理液が置換液内に入り込みことがさらに促進される。これにより、本実施の形態によれば、ウエハW上に残留する処理液を、置換液によって、さらに迅速かつさらに確実に置換し、ウエハWの表面上から処理液を除去することができる。
【0073】
さらに、本実施の形態によれば、置換液は、処理液よりも高い揮発性を有している。したがって、処理液をそのまま乾燥させることに比較して、ウエハW上に残留している置換液を迅速に蒸発させて、ウエハWを短時間で乾燥させることができるようになる。
【0074】
なお、上述した枚葉式処理に関する第1の実施の形態に対して、種々の変更が可能である。
【0075】
例えば、上述した第1の実施の形態において、置換剤吐出部30から置換液(液体状の置換剤)が吐出される例を示したが、これに限られず、置換剤供給配管32に加熱器を介設し、置換剤吐出部30から置換液の蒸気をケーシング18の内部に吐出するようにしてもよい。このような方法によれば、ウエハWの表面上に置換剤(置換液の蒸気)が結露することによって、ウエハWの表面上に置換液を付着させることができる。
【0076】
また、上述した第1の実施の形態での各吐出部(ノズル)20,30や配管類の構成を適宜変更することが可能である。例えば、処理液吐出部20と置換剤吐出部30とが同一のノズルによって構成されるようにしてもよい。
【0077】
また、上述した実施の形態においては、複数種類の置換液要素を所定量ずつミキサー33に送り込み、複数種類の置換液要素の混合物からなる置換液を生成する例を示したが、これに限られず、予め複数種類の置換液要素を混合してなる置換液を生成しておき、この置換液を液体供給手段に貯留しておくようにしてもよい。ただし、複数種類の置換液要素を事前混合して置換液を事前に生成および貯留しておく場合、複数種類の置換液要素の特性(例えば、揮発性)の相違から、置換液の分離および置換液の組成の変化を来してしまう可能性がある。したがって、特性が大きく異なる複数種類の置換液要素を用いて置換液を生成する場合には、置換液の供給直前に、ミキサー(混合手段、混合器)33によって置換液要素を混合し、置換液を生成することが好ましい。
【0078】
さらに、上述した第1の実施の形態において、純水によるリンス工程が設けられている例を示したが、これに限られない。特開2005−5469号公報に開示されているように、純水によるリンス工程を省き、処理液としての薬液を置換液で置換するようにしてもよい。このような変形例においても、用いられる薬液(処理液)に対して上述した条件(1)乃至(4)を満たすような置換液を選定することにより、上述したような各条件に対応する効果をそれぞれ独立して得ることが可能となる。
【0079】
(第2の実施の形態)
次に、図4および図5を参照しながら、バッチ式処理に関する第2の実施の形態について説明する。なお、図4は、第2の実施の形態における基板処理装置の概略構成を示す基板処理装置の縦断面図であり、図5は、第2の実施の形態における基板処理装置を示す拡大図である。なお、図4及び図5において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付すとともに、重複する詳細な説明は省略する。
【0080】
図4および図5に示すように、基板処理装置50は、ウエハWを処理液中に浸漬して処理する浸漬処理部60と、処理液に浸漬されて処理されたウエハWを乾燥させる乾燥処理部70と、ウエハWを保持する保持手段85と、浸漬処理部60と乾燥処理部70との間に配置されたシャッター機構80と、を含んでいる。シャッター機構80は、浸漬処理部60と乾燥処理部70との間に配置されたシャッターボックス83と、シャッターボックス83に保持されたシャッター本体81と、を有している。また、浸漬処理部60内には、ウエハWを処理するための処理液を吐出する処理液吐出部69が配置されている。一方、乾燥処理部70には、ウエハW上に残留する処理液を置換するための置換液の蒸気(置換剤)を吐出する置換剤吐出部75が配置されている。以下、各構成要素について説明していく。
【0081】
まず、保持手段85について説明する。本実施の形態において、保持手段85は、略水平方向(図4および図5の紙面における奥行き方向)に延びる四本の保持部材86と、四本の保持部材86と連結され略鉛直方向に延びる支柱部材87と、を有するウエハボートとして構成されている。保持部材86は、一度に処理される複数のウエハW、例えば50枚のウエハWを下方から同時に支持することができるようになっている。このため、各保持部材86には、その長手方向に沿い一定間隔を空けて配列された溝(図示せず)が形成されている。ウエハWは、この溝に係合し、各ウエハWの板面が保持部材86の延びる方向と略直交するようにして、すなわち、各ウエハWの板面が鉛直方向に沿うようにして、保持部材86に保持される。
【0082】
一方、支柱部材87は、後述する乾燥処理部70の蓋体73を貫通して延びている。支柱部材87は、図示しない昇降機構に連結されており、この昇降機構の駆動によって鉛直方向に沿って上昇および降下することができる。この支柱部材87の鉛直方向に沿った移動によって、支柱部材87が、図4および図5に示すように、浸漬処理部60と乾燥処理部70との間を移動することができる。
【0083】
次に、浸漬処理部60について説明する。図4に示すように、浸漬処理部60は、上方に開口した処理槽61と、処理槽61の上方開口を外方から周状に取り囲む回収槽63と、回収槽63を外方から周状に取り囲む外槽65と、を有している。図4に示すように、処理槽61は、保持手段85の保持部材86を保持部材86に保持された複数枚のウエハWとともに収容可能となっている。処理槽61の底部には、開閉弁67aを介設された排液管67が連結されており、この排液管67を介し、処理槽61に貯留された液体を処理槽61から排出することができるようになっている。
【0084】
また、図4に示すように、処理槽61内には、二つの処理液吐出部69が配置されている。本実施の形態において、各処理液吐出部69は、処理槽61内に収容された保持手段85の保持部材86が延びる方向に沿うようにして細長状に延びる筒状の部材として形成されている。そして、この筒状部材には、保持部材86に保持されたウエハWの配置ピッチと略同一ピッチで吐出孔(図示せず)が形成されている。処理液吐出部69は、処理槽61の対向する内壁面にそれぞれ支持されている。好ましくは、保持部材86に保持された隣り合う二枚のウエハWの間に吐出孔が対面するとともに、このウエハWの間に処理液が吐出されるよう、処理液吐出部69が位置決めされている。
【0085】
なお、第2の実施の形態においては、図4に示すように、処理液吐出部69は、処理液供給配管22等を介して処理液貯留手段24,25に接続されている。そして、第2の実施の形態における、処理液吐出部69から上流側の配管類の構成は、上述した第1の実施の形態と同一となっている。
【0086】
回収槽63は、処理槽61から溢れ出た処理液を回収するための槽である。図4に示すように、回収槽63には、開閉弁64aを介設された排液管64が連結されている。この排液管64を介し、回収槽63に回収された液体を回収槽63から排出することができるようになっている。
【0087】
図4に示すように、外槽65は、シャッター機構80から突出する周状の突出壁84を受けるようになっている。そして、外槽65に貯留された液体内にまで突出壁84が入り込むことにより、外槽65および突出壁84よりも内方の領域を、外部から遮断することができるようになっている。
【0088】
次に、乾燥処理部70について説明する。図4および図5に示すように、乾燥処理部70は、上方および下方に開口した筒状体71と、筒状体71の上方の開口部を覆う蓋体73と、を有している。図4に示すように、筒状体71は、筒状体71の下方開口と処理槽61の上方開口が対面するように、配置されている。図5に示すように、シャッター機構80のシャッター本体81は、筒状体71の下方開口を閉鎖することができる。図5に示すように、筒状体71、蓋体73およびシャッター本体81によって区画される乾燥処理部70のチャンバー内に、保持手段85の保持部材86を、保持部材86に保持された複数枚のウエハWとともに、収容することができるようになっている。蓋体73は、図示しない昇降機構の駆動により、鉛直方向に沿って昇降可能となっており、筒状体71から離間することができる。
【0089】
また、図4および図5に示すように、処理槽61内には、二つの置換剤吐出部75が配置されている。本実施の形態において、各置換剤吐出部75は、保持手段85の保持部材86が延びる方向に沿うようにして細長状に延びる筒状の部材として形成されている。そして、この筒状部材には、保持部材86に保持されたウエハWの配置ピッチと略同一ピッチで吐出孔(図示せず)が形成されている。処理液吐出部69は、筒状体71の対向する内壁面にそれぞれ支持されている。好ましくは、保持部材86に保持された隣り合う二枚のウエハWの間に吐出孔が対面するとともに、このウエハWの間に処理液が吐出されるよう、置換剤吐出部69が位置決めされている。
【0090】
図4に示すように、置換剤吐出部75は、置換剤供給配管32を介し、加熱混合手段(加熱混合器)38に接続されている。図4に示すように、置換剤供給配管32は、第1の実施の形態と同様に、混合されて置換液を構成するようになる複数種類の液体(置換剤要素)がそれぞれ貯留された複数の液体貯留手段34,35に接続されている。加熱混合手段38は、ミキサー(混合器、混合手段)としても機能し、置換剤供給配管32内を流れる流体を混合して置換剤を生成するようになっている。また、加熱混合手段38は、ヒータとしても機能し、混合対象の複数種類の液体(置換剤要素)を加熱して、これらを蒸気化することができる。
【0091】
このような構成により、流量制御弁34b,35bおよび開閉弁34c,35cを操作することにより、例えばポンプの揚力等を駆動力として、各液体貯留手段34,35から所定量の置換剤要素がそれぞれ加熱混合手段38に供給される。そして、加熱混合手段38は、各液体貯留手段34,35からの所定量の液体を加熱して気化させることができる。これにより、所望の組成を有した置換液の蒸気(置換剤)が所定量生成され、置換剤吐出部30から吐出されるようになる。
【0092】
なお、第2の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態と同様に、基板処理装置50が、二つの液体貯留手段34,35を有している。すなわち、本実施の形態において、置換剤吐出部75から吐出される置換剤は、二種類の液体からなる混合液、さらには詳しくは、二種類の有機溶剤からなる混合液(置換液)の蒸気となる。そして、本実施の形態において、この二種類の液体からなる混合液(置換液)が、第1の実施の形態における条件と同一の次の(1)乃至(4)の条件をすべて満たすようになっている。言い換えると、置換剤吐出部75から吐出される蒸気は、液体状態において、次の(1)乃至(4)の条件をすべて満たすようになる。これらの条件を満たすべく液体貯留手段34,35に貯留される液体は、上述した第1の実施の形態と同様に選択することができる。
(1)置換液が、置換液による置換対象となる処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有する。
(2)置換液が、置換液による置換対象となる処理液の質量密度と同一の質量密度を有する。
(3)置換液と、置換液による置換対象となる処理液とが互いに可溶である。
(4)置換液が、置換液による置換対象となる処理液よりも揮発性を有する。
【0093】
ところで、図4に示すように、本実施の形態において、置換剤供給配管32は、流量制御弁36bおよび開閉弁36cが介設された配管36aを介し、窒素ガスを貯留した窒素貯留手段36にも接続されている。したがって、流量制御弁36bおよび開閉弁36cを操作することにより、窒素貯留手段36から所定量の窒素ガスが加熱混合手段38に供給される。そして、加熱混合手段38で所定の温度に加熱された窒素ガスを所定流量で乾燥処理部70へ供給することができる。また、上述した置換液の蒸気を生成する際に、
窒素貯留手段36から所定量の窒素ガスを加熱混合手段38に供給することにより、生成された置換液の蒸気が、窒素ガスからなるキャリアガスとともに置換剤吐出部75から吐出されるようになる。なお、窒素貯留手段36として、例えばタンク等の既知の貯留手段が用いられ得る。
【0094】
また、図4および図5に示すように、乾燥処理部70内には、乾燥処理部70の排気を行うための排気管77が接続されている。
【0095】
なお、第2の実施の形態においても、基板処理装置50は、上述した第1の実施の形態と同様の制御装置40、入出力装置41および記録媒体42を含んでいる(図4参照)。
【0096】
次に、以上のような構成からなる基板処理装置50を用いて実行され得る基板処理方法の一例について説明する。なお、以下に説明する基板処理方法を実行するための各構成要素の動作は、予めプログラム記録媒体42に格納されたプログラムに基づいた制御装置40からの制御信号によって制御される。
【0097】
以下に説明する基板処理方法は、第1の実施の形態と同様に、ウエハWの洗浄処理方法であって、薬液によってウエハWを薬液洗浄する工程と、薬液処理されたウエハWを処理液(純水)によってリンス処理する工程と、リンス処理されたウエハW上に置換液を付着させ、ウエハW上に残留する処理液(純水)を置換液で置換する工程と、ウエハW上から置換液を除去して、ウエハWを乾燥させる工程と、を含んでいる。以下、各工程について、詳述していく。
【0098】
まず、蓋体73が上昇するとともに、保持手段85の保持部材86が筒状体71の外方位置まで上昇する。次に、処理対象のウエハWが、保持手段85の保持部材86上に載置され、保持手段85によって保持される。このとき、各ウエハWの板面が垂直方向に沿うようにして、複数枚のウエハWが保持手段12に同時に保持される。ウエハWを保持した保持手段85は、ウエハWが処理槽61内に配置される位置まで降下する。また、蓋体73も、筒状体71に当接する位置まで降下する。
【0099】
このような動作に先行し、あるいは、このような動作と並行し、制御装置40からの信号に基づいて切り換え弁23および流量制御弁25bが動作して、薬液が処理液吐出部69から処理槽61内に所定流量で吐出される。そして、ウエハWが処理槽61内に収容される前に、処理槽61が薬液で満たされる。この結果、保持手段85の降下にともなって、ウエハWが処理槽61内に収容されることにより、ウエハWは薬液に浸漬されることになる。このようにして、ウエハWの表面が薬液に曝されて洗浄処理される。この洗浄工程中、処理液吐出部69から薬液が吐出され続けてもよいし、薬液の供給が停止していてもよい。なお、処理槽61から溢れ出た薬液は、回収槽63に回収される。回収槽63に回収された薬液は、排液管64を介して排液され、廃棄される、あるいは、処理槽61内へ循環供給される。
【0100】
次に、リンス工程について説明する。まず、制御装置40からの制御信号に基づいて切り換え弁23および流量制御弁24bが動作する。これにより、処理液としての純水が、処理液吐出部69から処理槽61へ所定流量で供給される。処理槽61内の薬液は処理槽61から回収槽63に溢れ出て、排液管64を介して排液される。このようにして、処理槽61内の薬液が純水によって置換され、保持手段85に保持されたウエハWがリンス処理される。このリンス工程中、処理液吐出部69から純水が吐出され続けることが好ましい。そして、処理槽61から溢れ出た純水は、処理槽61から回収槽63に溢れ出て、排液管64を介して排液される。
【0101】
なお、以上に説明したリンス工程においては、処理液吐出部69から純水を吐出することによって、薬液で満たされていた処理槽61内を純水で置換して、ウエハWをリンス処理する例を示したが、これに限られず、まず、処理槽61内に貯留された薬液を排液管67から排液し、その後に、処理液吐出部69から純水を吐出して処理槽61内を純水で満たすようにしてもよい。
【0102】
また、薬液洗浄工程および純水リンス工程の少なくとも一つの工程中に、開閉弁36cおよび流量制御弁36bを動作させて、乾燥処理部70内に窒素ガスを供給し、乾燥処理部70内を窒素雰囲気にしておくことが好ましい。また、同時に加熱混合手段38を動作させて、乾燥処理部70内に高温の窒素ガスを供給し、乾燥処理部70の内壁面を加熱しておくことがさらに好ましい。この場合、次の置換工程において、乾燥処理部70に吐出された置換液の蒸気が、乾燥処理部70の内壁面に結露することを大幅に抑制し、置換液を有効に利用することができるからである。
【0103】
次に、置換工程について説明する。保持手段85が保持したウエハWとともに上昇する。保持手段85がウエハWとともに乾燥処理部70内に収容されると、シャッター機構80のシャッター本体81がシャッター本体83に対して摺動して筒状体71の下方開口を閉鎖し、乾燥処理部70と浸漬処理部60との間が遮断される。
【0104】
この状態で、所定の組成を有した所定量の置換液の蒸気が、置換剤として、置換剤吐出部75から吐出されて乾燥処理部60内へ供給されるようになる。具体的には、まず、制御装置40からの制御信号に基づいて開閉弁34c,35cおよび流量制御弁34b,35bが動作する。これにより、第1の置換剤要素としての第1の液体(例えば、IPA:イソプロピルアルコール)が所定量だけ第1液体貯留部34から加熱混合手段38へ流れ込むとともに、第2の置換剤要素としての第2の液体(例えば、ハイドロフルオロエーテル)が所定量だけ第2液体貯留部35から加熱混合手段38へ流れ込む。加熱混合手段38において、第1の液体と第2の液体とが混合されるとともに加熱され、第1の液体および第2の液体の混合液を気化してなる置換剤(置換液の蒸気)が所定量生成される。そして、この所定量の蒸気が、置換剤吐出部75を介し、乾燥処理部70内に収容されたウエハWの周囲へ供給される。
【0105】
なお、このような置換液の生成にともなって、開閉弁36cおよび流量制御弁36bを動作させて、窒素ガスを加熱混合手段38に流し込ませるようにしてもよい。この場合、生成された所定量の置換液の蒸気を、安定して確実に乾燥処理部70内へ供給することができるようになる。
【0106】
これにより、ウエハWの周囲に供給された置換液の蒸気は、処理槽61内に貯留された純水から引き上げられたウエハWの表面に結露する。この結果、ウエハWの表面上に置換液が付着し、ウエハWの表面上に置換液の膜が形成される。そして、この置換液によって、ウエハWの表面に残留する純水が置換されていく。
【0107】
ところで、第1の液体貯留手段からの第1の液体の供給量と第2の液体貯留手段からの第2の液体の供給量との供給比率は、当該供給比率で第1の液体と第2の液体とを混合してなる混合液が、上述した(1)乃至(4)の条件を満たすように決定されている。したがって、ウエハW上に付着した置換液も上述した(1)乃至(4)の条件を満たすようになる。
【0108】
なお、予め所定の混合比率で混合された混合液が加熱器によって気化されて、乾燥処理部70内へ送り込まれるようになっている場合、混合液をなす各液体(各置換液要素)の蒸発速度の相違から、蒸発する前の混合液の組成と、混合液の蒸気の組成と、が異なってしまうことがある。しかしながら、本実施の形態によれば、各液体が混合液を生成するために必要となる量だけ別個の液体貯留部34,35から加熱混合手段38へ供給されるようになっているので、蒸発する前の混合液の組成と、混合液の蒸気の組成と、が異なってしまうことを効果的に防止することができる。これにより、ウエハW上に付着した置換液も上述した(1)乃至(4)の条件を満たすようになる。
【0109】
上述した(1)乃至(3)の条件を満たす置換液を用いた場合、第1の実施の形態において説明したように、極めて短時間で、かつ、安定して確実に置換されるべき処理液(純水)を置換液で置換することができる。
【0110】
すなわち、置換液が置換液による置換対象となる処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有している場合(条件(1)を満たす場合)、図3に示すように、置換されるべき純水と比較して、置換液はウエハWの表面上を迅速に延び広がることができる。また、例えばウエハWの表面に配線パターン等の微細な凹凸形状が形成されていたとしても、置換液は、置換されるべき純水と比較して、この凹凸形状の凹部8内にまで入り込みやすくなっている。
【0111】
また、置換液が置換液による置換対象となる処理液と同一の密度を有している場合(条件(2)を満たす場合)、ウエハWの表面上のいかなる位置に処理液が残留していたとしても、置換液と処理液との相対移動に関して、重力による影響を排除することができる。したがって、それまでにウエハWの表面上に接触していた処理液を排除して、表面張力の低い置換液がウエハWの表面に沿って延び広がるものと想定される。この場合、ウエハWの表面上の位置に残留していた処理液を、置換液によって短時間でより確実に置換することができる。
【0112】
とりわけ、昨今においては、ウエハWの表面に形成される配線パターンが極めて複雑かつ微細化しており、ミクロ的に捕らえれば、ウエハWの板面の法線方向以外に延びる凹部も多数存在する。したがって、ウエハWの板面が鉛直方向に沿うようしてウエハWを保持する場合においても、条件(2)は置換効率を向上させる上で非常に有効な手段となる。
【0113】
さらに、置換液と置換液による置換対象となる処理液とが互いに可溶である場合(条件(3)を満たす場合)、置換されるべき処理液(純水)が置換液内に溶け込むことによって、置換されるべき処理液(純水)がウエハWの表面上から離れることを大幅に促進することができる。図3に示すように、ウエハWの凹凸形状の凹部8内に残留する微量の処理液は、置換液がウエハW上を広がることによって、置換液に覆われるようになる。そして、置換液が、ウエハWの表面の微細な表面形状に沿って、処理液が残留している微細な凹部8内にまで入り込もうとすると、置換液の凹部8内への移動にともなって、処理液は、当該処理液を覆っている置換液内に溶け込むようになる。これにより、本実施の形態によれば、ウエハW上に残留する処理液を、置換液によって、さらに迅速かつさらに確実に置換し、ウエハWの表面上から処理液を除去することができる。
【0114】
以上のように、置換されるべき純水との間で上述した条件(1)乃至(3)を満たす置換液をウエハWの表面に付着させることにより、置換工程において、置換液によるウエハW上に残留するリンス液の置換を短時間でより確実に完了させることができる。置換を短時間でより確実に完了させることができれば、生産性を向上させることができ、コスト面において優位となる。とりわけ、本実施の形態にように、置換されるべき処理液が純水である場合、ウエハWの表面にウォーターマークが発生してしまうことを効果的に防止することもできる。したがって、置換液による置換を短時間でより確実に完了させることができれば、生産性を向上させるだけでなく、安定した高品質を確保することができるとともに歩留まりを向上させることもでき、さらにコスト面で優位になる。
【0115】
以上のようにして置換工程が進み、制御装置40からの制御信号に基づいて流量制御弁34b,35bおよび開閉弁34c,35cが再び動作する。この結果、置換剤吐出部75からの置換液の蒸気の吐出が停止し、置換液を用いた置換工程が終了する。
【0116】
なお、以上に説明した置換工程においては、ウエハWが乾燥処理部70に収容され、かつ、シャッター本体81によって乾燥処理部70が浸漬処理部60から遮断された後に、置換剤吐出部75から置換液の蒸気が吐出される例を示したが、これに限られない。上述したタイミングよりも早いタイミングで、置換剤吐出部75から置換液の蒸気を吐出し始めてもよい。例えば、リンス工程中に、置換剤吐出部75から置換液の蒸気を吐出し始め、置換剤吐出部75が処理槽61から引き上げられる際に、既に、乾燥処理部60内の雰囲気が置換液の蒸気によって形成されているようにしてもよい。
【0117】
次に、乾燥工程について説明する。まず。制御装置40からの制御信号に基づいて、開閉弁36c、流量制御弁36bおよび加熱混合手段38を動作させ、乾燥処理部70内に高温の窒素ガスを供給する。この結果、乾燥処理部70内が高温に保たれ、ウエハWの表面からの置換液の蒸発が促進される。とりわけ、本実施の形態によれば、上述したように、置換液は、置換液による置換対象となる処理液よりも高い揮発性を有している(上述した条件(4))。したがって、ウエハWの表面の微細な凹部8内に入り込んだ置換液も、短時間で蒸発する。このように、ウエハWの表面から置換液が除去され、ウエハWが乾燥する。
【0118】
このようにしてウエハWに対する一連の処理が終了する。そして、蓋体73が上昇した状態で、処理済みのウエハWを保持した保持手段85が上昇し、保持手段85から処理済みのウエハWが取り出される。また、次に処理されるべきウエハWが保持手段85に載置され、これらのウエハWに対して同様の処理が施されていく。
【0119】
以上のような第2の本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、置換液が処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有しているので、処理液と比較して、置換液はウエハWの表面上を迅速に延び広がることができる。また、例えばウエハWの表面に配線パターン等の微細な凹凸形状が形成されていたとしても、置換液は、この凹凸形状の凹部8内にまで入り込みやすくなっている。加えて、置換液が処理液の密度と同一の密度を有しているので、重力に影響されることなく、処理液と置換液とが混ざりやすくなっている。すなわち、処理液がウエハWの表面上から置換液内へ移動しやすくなっている。このように置換液が置換されるべき処理液が残留している領域に入り込みやすく、かつ、ウエハW上に残留している処理液が置換液内に入り込みやすくなっているので、ウエハW上に残留する処理液を置換液によって迅速かつより確実に置換し、ウエハWの表面上から処理液を離間させることができる。
【0120】
したがって、処理液が水であったとしても、水がウエハW上に存在している時間、言い換えると、水がウエハWに接触している時間を短時間化することができるので、ウォーターマークの発生を大幅に抑制することができる。
【0121】
また、置換液の蒸気をウエハWの周囲に供給しウエハWの表面に結露させることによって、ウエハWの表面に置換液を付着させるようになっている。したがって、置換液の使用量を大幅に低減することができる。
【0122】
また、本実施の形態によれば、置換液および処理液は、互いに対する可溶性を有しており、互いに混ざり込むことができる。したがって、ウエハW上に残留している処理液は、例えば、ウエハの凹凸形状の凹部8内に残留する微量の処理液は、ウエハWの表面上を延び広がってくる処理液内に溶け込むようになる。すなわち、ウエハW上に残留している処理液が置換液内に入り込むことがさらに促進される。これにより、本実施の形態によれば、ウエハW上に残留する処理液を、置換液によって、さらに迅速かつさらに確実に置換し、ウエハWの表面上から処理液を除去することができる。
【0123】
さらに、本実施の形態によれば、置換液が処理液よりも高い揮発性を有しているので、ウエハW上に残留している置換液を迅速に蒸発させて、ウエハWを短時間で乾燥させることができるようになる。
【0124】
なお、上述したバッチ式処理に関する第2の実施の形態に対して、種々の変更が可能である。
【0125】
例えば、上述した第2の実施の形態において、置換剤吐出部75から置換液の蒸気が吐出される例を示したが、これに限られず、置換剤吐出部75から気化されていない置換剤、すなわち置換液をウエハWに向けて吐出するようにしてもよい。
【0126】
また、上述した第2の実施の形態での各吐出部(ノズル)69,75や配管類の構成を適宜変更することが可能である。例えば、共通の処理液吐出部69から純水および薬液を吐出するようにした例を示したが、これに限られず、純水および薬液を別個の処理液吐出部から吐出するようにしてもよい。また、共通の置換剤吐出部75から置換液の蒸気および窒素ガスを吐出するようにした例を示したが、これに限られず、置換液の蒸気および窒素ガスを別個の置換剤吐出部から吐出するようにしてもよい。
【0127】
また、上述した実施の形態においては、複数種類の置換液要素を所定量ずつミキサー兼ヒータとして機能する加熱混合手段38に送り込み、複数種類の置換液要素を混合および加熱して置換液の蒸気を生成する例を示したが、これに限られない。置換液要素毎に貯留手段を設けることは必須ではなく、予め複数種類の置換液要素を混合してなる置換液を生成しておき、この置換液を液体供給手段に貯留しておくようにしてもよい。ただし、複数種類の置換液要素を事前混合して置換液を事前に生成および貯留しておく場合、複数種類の置換液要素の特性(例えば、揮発性)の相違から、置換液の分離または置換液の組成の変化を来してしまう可能性がある。したがって、特性が大きく異なる複数種類の置換液要素を用いて置換液を生成する場合には、置換液の供給直前に、ミキサー(混合手段、混合器)によって置換液要素を混合し、置換液を生成することが好ましい。
【0128】
さらに、上述した実施の形態において、基板処理装置10が、ヒータ兼ミキサーとして機能する加熱混合手段38を有する例を示したが、これに限られない。例えば、基板処理装置10が、配管34a,35aにそれぞれ設けられた加熱器と、各配管34a,35aおよび置換剤供給配管32に接続された混合手段(ミキサー、混合器)と、を有するようにしてもよい。すなわち、液体の置換剤要素をそれぞれ加熱して複数種類の置換剤要素の蒸気を別々に生成し、その後、生成された複数種類の置換剤要素の蒸気をミキサー(混合手段、混合器)で混合して置換液の蒸気を生成するようにしてもよい。あるいは、基板処理装置10が、各配管34a,35aおよび置換剤供給配管32に接続された混合手段(ミキサー、混合器)と、混合手段の下流側において置換剤供給配管32に設けられた加熱器と、を有するようにしてもよい。すなわち、複数種類の液体の置換剤要素を混合して置換液を生成し、その後、この置換液を加熱して置換液の蒸気を生成するようにしてもよい。これらの変形例においては、混合手段が図4における加熱混合手段38の位置に配置されていることが好ましい。
【0129】
さらに、上述した第2の実施の形態において、処理槽61に貯留された純水中に浸漬してウエハWをリンス処理する例を示したが、これに限られない。特開2003−297794号公報に開示されているように、乾燥処理部60内に処理液吐出部を設け、乾燥処理部60内でウエハWへ向けて純水を吐出して、ウエハWに対してリンス処理を施すようにしてもよい。
【0130】
さらに、上述した第2の実施の形態において、純水によるリンス工程が設けられている例を示したが、これに限られない。特開2005−5469号公報に開示されているように、純水によるリンス工程を省き、処理液としての薬液を置換液で置換するようにしてもよい。このような変形例においても、用いられる薬液(処理液)に対して、液体状態において上述した条件(1)乃至(4)を満たすような置換剤を選定することにより、上述したような各条件に対応する効果をそれぞれ独立して得ることが可能となる。
【0131】
以上、本発明による基板処理装置および基板処理方法の適用例として、二つの実施の形態について説明してきた。しかしながら、実施の形態の欄の冒頭部分でも述べたように、本発明による基板処理装置および基板処理方法の適用は、半導体ウエハの洗浄および乾燥に限定されるものではない。例えば、揮発性以外において顕著な特性を有する置換剤を採用し、処理液で処理された基板に残留する処理液をこの置換液で置換するとともに、引き続き、この置換剤の顕著な特性に基づいた処理(例えば、乾燥処理以外の処理)を基板に対して施していくようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は、本発明による第1の実施の形態を説明するための図であって、基板処理装置の概略構成を示す基板処理装置の縦断面図である。
【図2】図2は、図1に示された基板処理装置の上面図である。
【図3】図3は、ウエハWの表面上における、処理液と置換液との置換を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明による第2の実施の形態を説明するための図であって、基板処理装置の概略構成を示す基板処理装置の縦断面図である。
【図5】図5は、図4に示された基板処理装置の拡大図である。
【符号の説明】
【0133】
10 基板処理装置
12 保持手段
20 処理液吐出部
30 置換剤吐出部
34,35 液体貯留部
38 加熱混合手段
40 制御装置
42 記録媒体
50 基板処理装置
69 処理液吐出部
75 置換剤吐出部
85 保持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液によって基板を処理する工程と、
前記基板上に置換液を供給し、前記基板上に残留する前記処理液を前記置換液で置換する工程と、を備え、
前記置換する工程に用いられる置換液は、前記処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有し、かつ、前記処理液の密度と同一の密度を有する
ことを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記置換する工程で用いられる置換液は、前記処理液と互いに可溶である
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記置換する工程の後に、前記基板を乾燥させる工程を、さらに備え、
前記置換する工程で用いられる置換液は、前記処理液よりも揮発性を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記処理液は水からなる液体である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記置換する工程で用いられる置換液は、比重が1よりも大きい不水溶性の液体と、比重が1よりも小さい水溶性の液体と、の混合液である
ことを特徴とする請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記置換する工程で用いられる置換液は、不水溶性の液体と、水溶性の液体と、の混合液である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記不水溶性の液体は、ペルフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルおよびハイドロクロロフルオロカーボンのうちの少なくともいずれか一つを含む
ことを特徴とする請求項5または6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記水溶性の液体は、脂肪族アルコール類、ケトン類、エステル類およびグリコール類のうちの少なくともいずれか一つを含む
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記置換する工程において、前記基板の周囲に前記置換液の蒸気が供給され、前記蒸気が前記基板上に凝縮することにより、前記基板上に前記置換液が供給される
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記置換する工程で用いられる置換液は、二種類以上の液体の混合液であり、
前記基板の周囲に供給される前記置換液の蒸気は、前記二種類以上の液体が、それぞれ予め設定した量だけ加熱器に供給され、加熱器で加熱されることにより生成される
ことを特徴とする請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
基板を保持する保持手段と、
前記基板を処理するための処理液を吐出する処理液吐出部と、
前記処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有するとともに処理液の密度と同一の密度を有する置換液を吐出する置換剤吐出部と、
前記処理液を用いて処理された基板上に置換液を供給し、前記基板上に残留する前記処理液を前記置換液で置換するように、前記処理液吐出部からの前記処理液の吐出と、前記置換剤吐出部からの前記置換液の吐出と、を制御する制御装置と、を備える
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項12】
混合されて前記置換液を構成するようになる複数種類の液体をそれぞれ供給する複数の配管と、
各配管および前記置換剤吐出部に接続された混合手段と、をさらに備え、
前記制御装置は、それぞれ予め設定された量の液体が、各配管から前記混合手段にそれぞれ供給されるとともに前記混合手段で混合され、前記置換液が生成されるように、前記配管からの液体の供給をさらに制御する
ことを特徴とする請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
基板を保持する保持手段と、
前記基板を処理するための処理液を吐出する処理液吐出部と、
前記処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有するとともに前記処理液の密度と同一の密度を有する置換液の蒸気を吐出する置換剤吐出部と、
前記処理液を用いて処理された基板の周囲に置換液の蒸気を供給し、前記基板上に凝縮した置換液によって前記基板上に残留する前記処理液を置換するように、前記処理液吐出部からの前記処理液の吐出と、前記置換剤吐出部からの前記置換液の蒸気の吐出と、を制御する制御装置と、を備える
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項14】
混合されて前記置換液を構成するようになる複数種類の液体をそれぞれ供給する複数の配管と、
各配管に接続された混合手段と、
前記混合手段と前記置換剤吐出部との間に設けられた加熱器と、をさらに備え、
前記制御装置は、それぞれ予め設定された量の液体が、各配管から前記混合手段にそれぞれ供給されるとともに前記混合手段で混合され、その後、前記加熱器で加熱され、前記置換液の蒸気が生成されるように、前記配管からの液体の供給と、前記加熱器による加熱と、をさらに制御する
ことを特徴とする請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
混合されて前記置換液を構成するようになる複数種類の液体をそれぞれ供給する複数の配管と、
前記配管および前記置換剤吐出部に接続された加熱混合手段と、をさらに備え、
前記制御装置は、それぞれ予め設定された量の液体が、各配管から前記加熱混合手段にそれぞれ供給され、前記加熱混合手段によって混合されるとともに加熱されて、前記置換液の蒸気が生成されるように、前記配管からの液体の供給と、前記加熱混合手段による加熱と、をさらに制御する
ことを特徴とする請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項16】
気化されるとともに混合されて前記置換液の蒸気を構成するようになる複数種類の液体をそれぞれ供給する複数の配管と、
前記配管を加熱する加熱器と、
前記配管および前記置換剤吐出部に接続された混合手段と、をさらに備え、
前記制御装置は、それぞれ予め設定された量の液体が、前記加熱器によって加熱されながら各配管から前記混合手段にそれぞれ供給され、前記混合手段で混合されて、前記置換液の蒸気が生成されるように、前記加熱器による加熱と、前記配管からの液体の供給と、をさらに制御する
ことを特徴とする請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記保持手段は、前記基板が水平方向に沿うようにして、一つの基板を保持する
ことを特徴とする請求項11乃至16のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記保持手段は、前記基板が垂直方向に沿うようにして、同時に複数の基板を保持する
ことを特徴とする請求項11乃至17のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記置換液は、前記処理液と互いに可溶である
ことを特徴とする請求項11乃至18のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記置換液は、前記処理液よりも揮発性を有する
ことを特徴とする請求項11乃至19のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項21】
前記保持手段は、前記基板を回転可能に保持し、
前記制御装置は、前記処理液が前記置換液によって置換された後に、前記基板を回転させながら基板を乾燥させるように、前記保持手段を制御する
ことを特徴とする請求項11乃至20のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項22】
前記処理液は水からなる液体である
ことを特徴とする請求項11乃至21のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項23】
基板処理装置を制御する制御装置によって実行されるプログラムであって、
前記制御装置によって実行されることにより、
処理液によって基板を処理する工程と、
前記基板上に置換液を供給し、前記基板上に残留する前記処理液を前記置換液で置換する工程と、を備え、
前記置換する工程に用いられる置換液は、前記処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有し、かつ、前記処理液の密度と同一の密度を有する、被処理基板の処理方法を、
基板処理装置に実施させることを特徴とするプログラム。
【請求項24】
基板処理装置を制御する制御装置によって実行されるプログラムが記録された記録媒体であって、
前記プログラムが前記制御装置によって実行されることにより、
処理液によって基板を処理する工程と、
前記基板上に置換液を供給し、前記基板上に残留する前記処理液を前記置換液で置換する工程と、を備え、
前記置換する工程に用いられる置換液は、前記処理液の表面張力よりも小さい表面張力を有し、かつ、前記処理液の密度と同一の密度を有する、被処理基板の処理方法を、
基板処理装置に実施させることを特徴とする記録媒体。
【請求項25】
被処理体上に供給されて、被処理体の表面上に残留する液体と置換されるようになる置換剤であって、
液体状態において、置換されるべき液体の表面張力よりも小さい表面張力を有し、かつ、液体状態において、置換されるべき液体の密度と同一の密度を有する
ことを特徴とする置換剤。
【請求項26】
置換されるべき液体と互いに可溶である
ことを特徴とする請求項25に記載の置換剤。
【請求項27】
置換されるべき液体よりも揮発性を有する
ことを特徴とする請求項25または26に記載の置換剤。
【請求項28】
置換されるべき液体は水である
ことを特徴とする請求項25乃至27のいずれか一項に記載の置換剤。
【請求項29】
比重が1よりも大きい不水溶性の液体と、比重が1よりも小さい水溶性の液体と、の混合液である
ことを特徴とする請求項28に記載の置換剤。
【請求項30】
不水溶性の液体と、水溶性の液体と、の混合液である
ことを特徴とする請求項25乃至27のいずれか一項に記載の置換剤。
【請求項31】
前記不水溶性の液体は、ペルフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルおよびハイドロクロロフルオロカーボンのうちの少なくともいずれか一つを含む
ことを特徴とする請求項29または30に記載の置換剤。
【請求項32】
前記水溶性の液体は、脂肪族アルコール類、ケトン類、エステル類およびグリコール類のうちの少なくともいずれか一つを含む
ことを特徴とする請求項29乃至31のいずれか一項に記載の置換剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−38282(P2009−38282A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202835(P2007−202835)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】