説明

欠陥検査装置およびその方法

【課題】高スループットかつ高感度の欠陥検査装置を提供すること。
【解決手段】広帯域波長の照明を用いて結像性能を向上させることが有効である。そこで、従来の屈折型光学系より広帯域波長の照明が使用可能な反射型光学系を用い、更に良好な収差状態を得られるレンズ外周部の円弧形状のスリット状視野にする。しかしこの方式は、受光面での各検出画素寸法の違いによる明るさの差と、センサの出力配列を視野内の位置座標に対応付けることが課題である。課題を解決するために、明るさの差及び座標を画素位置に応じて個別に補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造におけるウェハやFPD,パターンドメディア,半導体リソグラフィ用マスク,液晶デバイスなどの、パターンが形成された試料の欠陥検査装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造は、フロントエンド工程とバックエンド工程に分けられる。フロントエンド工程は、アイソレーション形成,ウェル形成,ゲート形成,ソース/ドレイン形成,層間絶縁膜形成、及び平坦化などから成る。バックエンド工程は、コンタクトプラグ形成,層間絶縁膜形成,平坦化,メタル配線形成を繰り返し、最後にパッシベーション膜形成を行う。
【0003】
上記の製造工程の途中では、ウェハを抜き取り、欠陥検査が行われる。ここで欠陥とは、ウェハ表面の異物やスクラッチ、及びパターン欠陥(ショート,オープン,ビア非開口など)である。欠陥検査の目的は、第一に製造装置の状態を管理すること、第二に不良発生工程とその原因を特定することにある。そのため、半導体デバイスの微細化に伴い、欠陥検査装置には高い検出感度が要求されている。
【0004】
欠陥検査装置では、隣接あるいは近接するチップ間の画像を比較する方法が用いられることが多い。これは、1枚のウェハ上に、同一構造のパターンを有する数百個の半導体デバイス(チップまたはダイと呼ぶ)が作製されることを利用した方法である。
【0005】
特に、暗視野画像を比較する欠陥検査装置は、スループットが高いので、インライン検査に広く使用されている。
【0006】
第一の従来技術として、紫外領域の暗視野欠陥検査装置に関して、レンズから成る屈折型光学系を使用することが知られている。この技術に関連するものとして、例えば特表2005−517906号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、光学系の視野は直線形状のスリット状で、長辺サイズは数mmである。このスリット状視野の下、ウェハを短辺方向に走査することにより、高スループットの欠陥検査が可能であることが記載されている。
【0007】
一方、第二の従来技術として、可視光領域から真空紫外領域にわたる広波長帯域の欠陥検査装置に関して、ミラーから成る反射型光学系を使用することが知られている。この第二の従来技術では、反射型光学系は色収差が無いので、広波長帯域で使用できる。製造工程と注目欠陥に応じて波長帯域を選定することにより、高感度の欠陥検査が可能である。この技術に関連するものとして、例えば特表2008−534963号公報(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2005−517906号公報
【特許文献2】特表2008−534963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
半導体デバイスの微細化に伴い、欠陥検査装置に対して、スループットを維持あるいは向上させつつ、検出感度の向上が求められているという課題がある。多種の製造工程と注目欠陥について、この課題を解決するには、二つの条件を同時に満足する必要がある。第一の条件は、光学系の視野(特に長辺サイズ)を十分に大きくすることである。第二の条件は、製造工程と注目欠陥に応じて、最適な波長帯域を選定することである。
【0010】
第一の従来技術は、第一の条件を満足しつつ、遠紫外領域に適用が可能である。しかし、屈折型光学系は色収差があるので、広波長帯域での使用は非常に難しいという課題がある。また、真空紫外領域ではレンズによる吸収が大きいので、屈折型光学系の使用は現状では不可能であるという課題がある。一方、反射型光学系を用いる第二の従来技術は、第二の条件を満足している。しかし、スループット向上の課題がある。
【0011】
そこで、多種の製造工程と注目欠陥に対して、高スループットかつ高感度の欠陥検査装置を提供することを目的する発明として、本件出願人は、関連先出願(特願2009−14878)を提出している。
【0012】
本発明は、関連先出願を出発点とするものである。反射型光学系では、収差が良好となるのはレンズ外周部の円弧形状部分であることに着目した。この場合、検査視野をレンズ中央部で直線形状のスリット状とする方式では、形状が異なるため検出感度が低下する。そこで、検査視野も収差が良好となる形状に合わせて、例えば、レンズ外周部で円弧形状のスリット状とする。この時、検査視野内で画素寸法が違うため、同一パターンでも検出した明るさが違ってしまい、パターンの誤検出や欠陥寸法の誤認識に繋がり、欠陥検出性能が低下するという課題があることに注目した。
【0013】
本発明の一つの目的は、多種の製造工程と注目欠陥に対して、高スループットかつ高感度の欠陥検査装置の性能をさらに向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一つの特徴は、パターンが形成された試料に光を照明し、試料の像を反射型光学系を介して画像センサに結像し、欠陥の有無を判定する欠陥検査装置において、反射型光学系は共役な2組のフーリエ変換光学系を含み、反射型光学系の収差は光軸外で補正され、試料面における視野は非直線形状のスリット状であり、画像センサの画素位置に応じて補正することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、フーリエ変換光学系のフーリエ変換面に、空間フィルタを含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明のその他の特徴は、試料面における視野は円弧形状のスリット状であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のその他の特徴は、反射型光学系の光軸は試料面の法線方向に対して傾きをなし、試料面における視野は楕円の一部のスリット状であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のその他の特徴は、試料面におけるスリット状視野の短辺方向に、試料を走査するステージを含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明のその他の特徴は、可視光から深紫外光領域の範囲で、試料に応じて所定の単一の波長帯域の光を選定し、試料を照明することを特徴とする。
【0020】
また、本発明のその他の特徴は、可視光から深紫外光領域の範囲で、試料に応じて所定の複数の波長帯域の光を選定し、試料を照明することを特徴とする。
【0021】
また、本発明のその他の特徴は、複数の波長帯域の光を単一の画像センサに結像することを特徴とする。
【0022】
また、本発明のその他の特徴は、複数の波長帯域の光を複数の画像センサに結像することを特徴とする。
【0023】
また、本発明のその他の特徴は、複数の波長帯域を射出する光源は単一光源であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明のその他の特徴は、複数の光源から所定の波長帯域の光を選定し、試料を照明することを特徴とする。
【0025】
また、本発明のその他の特徴は、検査領域の画像と、検査領域と隣接または近接する領域の画像とを比較して、欠陥の有無を判定することを特徴とする。
【0026】
また、本発明のその他の特徴は、画像センサは時間遅延積分型であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明のその他の特徴は、時間遅延積分型画像センサの出力配列と、反射型光学系の視野内位置との対応により、明るさを補正することを特徴とする
また、本発明のその他の特徴は、一次元センサ及び二次元センサの出力配列と、反射型光学系の視野内の位置とを対応付けることを特徴とする。
【0028】
また、本発明のその他の特徴は、円弧形状の視野内において、複数の視野を確保し、それぞれ別の画像センサに結像することを特徴とする。
【0029】
また、本発明のその他の特徴は、複数の画像センサに結像した画像を、統合処理することを特徴とする。
【0030】
本発明の上記特徴及び上記以外の特徴については、以下の記述により、説明される。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一つの態様によれば、多種の製造工程と注目欠陥に対して、高スループットかつ高感度の欠陥検査装置の性能をさらに向上することができる。
【0032】
また、本発明の他の態様によれば、円弧形状視野の画素寸法の違いを補正し、欠陥検出性能を向上できる。
【0033】
本発明の上記特徴及びその他の特徴は、以下の記載により、更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る反射型光学系を用いた欠陥検査装置の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る反射型光学系のウェハ上の視野を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係るウェハの繰り返しパターンからの回折光を遮光する空間フィルタを示す図である。
【図4】本発明の実施例に係るウェハからの散乱光の一部を遮光する空間フィルタを示す図である。
【図5】本発明の実施例に係る欠陥検査装置の一実施形態を示す図である。
【図6】本発明の実施例に係る欠陥検査装置の一実施形態を示す図である。
【図7】本発明の実施例に係る欠陥からの散乱光の強度分布を示す図である。
【図8】本発明の実施例に係る欠陥検査装置の一実施形態を示す図である。
【図9】本発明の実施例に係る欠陥検査装置の一実施形態を示す図である。
【図10】本発明の実施例に係るレジストパターン検査におけるウェハの断面構造を示す図である。
【図11】本発明の実施例に係るシステマティック欠陥の判定方法を示す図である。
【図12】本発明の比較例に係る屈折型光学系の直線形状視野におけるTDIセンサ上の画素配列を示す図である。
【図13】本発明の実施例に係る反射型光学系の円弧形状視野におけるTDIセンサ上の画素配列を示す図である。
【図14】本発明の実施例に係る同一PSLが各画素でどの明るさで検出されるかを示す図である。
【図15】本発明の実施例に係る一次元センサを円弧形状に配列する方式を示す図である。
【図16】本発明の実施例に係る一次元センサを並列に配置し、収差の小さい箇所の画素を有効とする方式を示す図である。
【図17】本発明の実施例に係る二次元センサを使用し、円弧形状に合わせて有効な画素を使用する方式を示す図である。
【図18】本発明の実施例に係る反射型光学系の円弧形状視野にて一次元センサもしくは二次元センサを使用した場合の座標補正方式を示す図である。
【図19】本発明の実施例に係るレンズ光軸外の円弧形状部分の両側を検査視野とし、複数の光源から波長の同じ光を照射する方式を示す図である。
【図20】本発明の実施例に係るレンズ光軸外の円弧形状部分の両側を検査視野とし、複数の光源から偏光した光を照射する方式を示す図である。
【図21】本発明の実施例に係るレンズ光軸外の円弧形状部分の両側を検査視野とし、複数の光源から異なる照明方向及び波長の異なる光を照射する方式を示す図である。
【図22】本発明の実施例に係るレンズ光軸外の円弧形状部分の両側を検査視野とし、単一の光源から波長の同じ光を分光し照射する方式を示す図である。
【図23】本発明の実施例に係る2つの視野で検出したウェハ上の同一位置の画像を、統合処理する方式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施形態として、半導体ウェハを対象とする暗視野欠陥検査装置で説明する。本発明の欠陥検査装置の概略構成の一例を図1に示す。
【0036】
主要な構成要素は、ウェハ101を搭載するステージ102,可視光レーザ110,紫外光レーザ111,深紫外光レーザ112,アッテネータ113,114,115,ミラー116,シャッター117,118,119,照明光学系103,反射型光学系104,空間フィルタ105,検出器106,画像処理部107,全体制御部108、及び入出力操作部109である。
【0037】
ウェハ101を欠陥検査装置に装填する時、オペレータは製造工程や注目欠陥などの情報を入出力操作部109に入力する。全体制御部108はこの情報を用いて、シミュレーションや実験などにより事前に蓄積したデータベースを参照して、後述のように最適な波長帯域を選定する他、各部を制御する。
【0038】
レーザ110,111,112は安定な出力を得るために常時発振しており、アッテネータ113,114,115の光量調整及びシャッター117,118,119による遮光により、選定した波長帯域の光を通過させることができる。アッテネータ113,114,115の光量調整に加えて、シャッター117,118,119による遮光を併用することにより、選定した波長帯域の光のみを確実に通過させることができる。
【0039】
反射型光学系104は、複数枚のミラー116から成り、光軸(ウェハ101の法線方向)に対して回転対称に構成されている。光学設計のパラメータはミラー116の形状や面間隔などであり、収差は光軸から所定の距離離れた位置で補正されている。光学系は回転対称なので、収差が補正された領域は円弧形状となる。なお、反射型光学系は原理的に色収差が無く、可視光から真空紫外光領域にわたる広波長帯域で、良好な結像性能が維持されるので、前記紫外光レーザには、真空紫外光レーザを使用しても良い。
【0040】
照明光学系103を介して、ウェハ101上の円弧形状のスリット状視野部分に、斜方から光を照明する。ウェハ101からの正反射光は反射型光学系104の開口外に出射するので、本光学系では暗視野像が得られる。視野の長辺方向のサイズは5mm以上である。なお、屈折型光学系で同程度の視野サイズを実現するには、通常20枚以上のレンズが必要であるが、本実施例の反射型光学系104はミラー6枚で良く、簡素な構成を実現できる。
【0041】
反射型光学系104は、共役な2組のフーリエ変換光学系で構成される。フーリエ変換面には、空間フィルタ105が配置されている。空間フィルタ105は、ウェハ上の繰り返しパターンからの散乱光を遮光する。空間フィルタ105を通過した光は、検出器106に結像する。検出器106は画像センサとA/D変換器によって構成される。検出器106の画像センサは、例えば時間遅延積分型(TDI:Time Delay Integration)センサである。電荷の積分方向とステージ102の走査方向は、スリット状視野の短辺方向と一致しており、電荷転送速度とステージ走査速度とを同期させて検査画像を取得する。
【0042】
検査画像は、デジタル信号に変換し、画像処理部107へ記録する。画像処理部107には、検査チップと隣接または近接し、同一回路パターンを有するチップで取得した参照画像が記録されている。検査画像と参照画像に対して、位置合わせなどの処理を行った後、両者の差画像を出力する。この差画像の明るさを予め設定した閾値と比較し、欠陥の有無を判定する。欠陥の判定結果は、全体制御部108に送信され、所定の検査終了後に、入出力操作部109に表示される。
【0043】
図2は、本発明の一実施形態の光学系のウェハ101上視野を示したものである。反射型光学系の光軸120を中心とした円の内、収差の良好な外周部を使用した円弧形状となっており、反射型光学系のウェハ上の視野の長辺方向サイズ121を十分大きくして、ウェハ101を視野の短辺方向に走査することにより、高スループットを達成している。
【0044】
図3及び図4で、空間フィルタ105について説明する。空間フィルタは、例えば、2次元的に配列したセルから成り、任意形状の遮光部を設定可能になっている。ウェハのパターンからの回折光は背景雑音になるので、欠陥検出の信号対雑音比を低下させる。半導体デバイスでは繰り返しパターンが多いが、この場合、回折光はフーリエ変換面で点状または直線状になる。そこで、図3に示す様に、空間フィルタに直線状の遮光部を設定することにより、繰り返しパターンからの回折光を遮光し、信号対雑音比を向上させることができる。また、ウェハ表面の粗さやパターン側壁の粗さによる散乱光も背景雑音になり、信号対雑音比を低下させる。このような散乱光は、特定の方向に強く生じることが分かっている。そこで、図4に示す様に、空間フィルタの特定の部分に遮光部を設定することで、不要な散乱光を遮光し、信号対雑音比を向上できる。
【0045】
また、欠陥による散乱光と、ウェハ表面の粗さやパターン側壁の粗さなどによる散乱光とは、互いに偏光状態が異なることが多い。この場合、フーリエ変換面に偏光フィルタを配置し、欠陥の信号対雑音比を向上できる。
【0046】
図5,図6で、ウェハ101に複数の注目欠陥種が存在する場合に好適な実施形態を説明する。
【0047】
図5は、反射型光学系104の出射側に回折光学素子122を配置し、波長帯域別に光を分離する方式である。回折光学素子122としては、回折格子やプリズムなどを使用できる。分離された光は、波長帯域別に検出器123,124に結像する。それぞれの注目欠陥種ごとに、最適な波長帯域を選定できるので、信号対雑音比の高い画像が得られる。
【0048】
図6は、可視光領域から遠紫外領域にわたる広波長帯域で発光するランプ125を使用し、波長フィルタ126により所定の波長帯域の光を通過させる方式である。ランプはレーザに比べて、波長帯域当りの出力は小さいが、連続スペクトル光を発光するので、波長帯域をより精細に選定できる。本実施形態は、薄膜干渉の悪影響を軽減するのに非常に有効である。また、複数のレーザを搭載するよりも、装置構成が簡素になる。
【0049】
図7は、散乱光の強度分布をウェハ法線に垂直な観察面上で濃淡表示したものである。酸化膜上の欠陥からの散乱光の強度分布は、酸化膜厚によって大きく異なる。(a)のようにウェハ面の法線方向に強く散乱する場合と、(b)のように斜方に強く散乱する場合がある。
【0050】
図8で、欠陥による散乱光が斜方に強く生じる場合に好適な実施形態を説明する。ここでは反射型光学系104の光軸をウェハ面の法線方向に対して傾けることにより、斜方散乱光を捕捉している。反射型光学系104の収差は光軸に垂直な面内の円弧状領域で補正されているので、ウェハ101上の収差補正領域は楕円状となる。このため、照明光学系103により、楕円の一部のスリット状視野へ光を照明する。
【0051】
図9で、真空紫外光を使用する欠陥検査装置を説明する。真空紫外光源127としては、例えば波長126nmのArレーザを使用する。空気による光の吸収を避けるため、光路は真空チャンバ128の内部に配置する。また、波長157nmのF2レーザを使用してもよい。波長157nmでは、真空の必要はなく、酸素による光の吸収を避けるため、窒素雰囲気でよい。真空紫外領域のミラーのコート材料としては、AlやAuなどの金属膜を使用する。直入射(0度近い入射角)でも、反射率は高いので、センサに結像する光のパワーは十分に得られる。
【0052】
上記実施例によるリソグラフィ工程のレジストパターン欠陥検査について、説明する。リソグラフィ工程ではパターンの微細化が進むにつれ、プロセスマージンが小さい特定箇所(ホットスポットと呼ぶ)に発生するシステマティック欠陥が重大な問題になっている。ホットスポット欠陥は、狭い間隙のショートやパターン寸法の微小な変化などであり、波長266nmの遠紫外光を用いた従来の欠陥検査装置では検出が困難になってきた。光学系の解像度は波長に逆比例するので、真空紫外光を用いることにより、欠陥検出感度が向上する。真空紫外光ではさらに、次に説明する効果も得られる。
【0053】
図10は、レジストパターン欠陥検査におけるウェハ断面構造を示す。通常の下地は表面の粗さが大きく、その散乱光が背景雑音となって欠陥検出を阻害している。真空紫外光は遠紫外光に比べて、反射防止膜やハードマスクで吸収され易いので、下地からの散乱光が大幅に減少する。その結果、信号対雑音比が向上し、欠陥検出が容易になる。
【0054】
図11で、隣接画像などを用いたチップ比較によらない欠陥判定方法を説明する。なぜなら、システマティック欠陥は複数チップの同一位置で発生するので、隣接画像などを用いたチップ比較による欠陥判定は困難である。通常、ホットスポットのレジストパターン形状は、パターン設計において、リソグラフィシミュレーションにより得られている。そこで、このレジストパターン形状データと、レジスト材料などの屈折率、及び照明光の波長,入射角,反射型光学系の開口数などの光学条件を用いて、欠陥が無いパターンの画像をシミュレーションにより求めておく。このシミュレーション画像に対して、検査画像を比較することにより、システマティック欠陥の有無を判定できる。上記の欠陥判定方法は、反射型光学系に限定されず、光学式欠陥検査装置全般に適用可能である。
【0055】
図12及び図13で、ウェハ101上視野に対して、検出器106の画像センサにTDIセンサを用いた場合の課題の具体例を説明する。
【0056】
図12は、本発明の比較例に係る屈折型光学系の直線形状視野におけるTDIセンサ上の画素配列を示す図であり、直線状視野を説明したものである。図12は、TDIセンサ202の画素長手方向に平行な直線状となる視野201における、TDIセンサ202上の画素204を示している。直線状視野では、TDI長手方向の画素において、TDI信号加算方向にそれぞれ加算された画素204(例えば、図12中の(2)+(3)+(4),(7)+(8)+(9)、又は(12)+(13)+(14)に相当する。なお、各図中では、○の中に各数字を入れて表記している。以下同じ。)は、視野内で全て同じ大きさとなる。よって、ウェハ上のパターンからの光203を検出する場合、どの画素でも画素への入射時間が同じとなり、同じ明るさの信号として検出できる。
【0057】
一方、非直線形状視野の一例として円弧状視野の場合を図13で説明する。図13は、TDIセンサ202のTDI長手方向に対し円弧状となる反射型光学系のセンサ上の視野(非直線形状)206における、TDIセンサ202上の画素204を示している。円弧状視野では、TDI長手方向の画素において、TDI信号加算方向にそれぞれ加算された画素204(例えば、図13中の(3)+(4)+(5),(6)+(7)+(8)、又は(11)+(12)+(13)+(14)+(15)に相当する。)は、センサ中心部の画素とセンサ両端部の画素で違う大きさとなる。よって、ウェハ上のパターンからの光203を検出する場合、画素によって入射時間が異なるため、同じ明るさの信号として検出できないことが課題である。
【0058】
本発明の実施例では画像センサの各画素の明るさの違いを事前に係数として求め、検査装置の画像処理部107又は全体制御部108又は検査装置外の検査システムの制御部又はデータベース部内のメモリに記憶し、記憶されたその係数で検出信号を補正して明るさ(又は感度)を均一化する。
【0059】
係数の算出方法の一例を説明する。まずPSL(標準粒子)を付着させたウェハを準備する。同一のPSLが各画素でどの明るさで検出されるかを測定し、その比で補正する。補正係数は(数1)で算出する。L1,L2は図14の上段に示す通り、センサの各画素が検出したPSLの明るさ(輝度値)を示し、補正係数K1はL1とL2の輝度値の比である。数1から補正係数K1が算出されると、図14の下段に示す通り、信号輝度L1に補正係数K1を乗ずることにより、輝度値の補正が可能となる。
【0060】
K1=L2/L1 …(数1)
【0061】
上記では、同一のPSLの例で説明したが、PSLは大きさが規格化されているため、同一大きさの違うPSLでも同程度の明るさとなると考え、各画素で違うPSLを測定した結果を用いて算出しても良い。また、PSLではなく同一の実欠陥や作りこみ欠陥を測定して係数を求めても良い。または、円弧形状視野における有効画素の面積比を係数として用いても良い。以上により、視野内の明るさの違いを補正できるため、反射型光学系104の円弧形状視野である反射型光学系のセンサ上の視野(非直線形状)206においても高感度に検査できる。
【0062】
図15乃至図18を用いて、本発明に係る別の複数の実施例を示す。本実施例は、検出器106の画像センサに一次元センサを使用する方法である。
【0063】
図15は、一次元センサ207(図15では1画素からなる複数の一次元センサを用いている。)の画素(1)乃至(11)を円弧状に配列した例である。一次元センサ207は、センサの各画素と視野の検出画素が1対1となる様に構成されている。よって反射型光学系104に於ける収差の良好な円弧状視野である反射型光学系のセンサ上の視野(非直線形状)206に、一次元センサ207の各画素位置を合わせることで、視野内の画素寸法の差を低減できる。
【0064】
図16は、複数の11画素からなる一次元センサ208を並列に配置し、収差の小さい箇所の画素(1)乃至(11)を有効とする例である。この方式は市販の一次元センサを使用できるため、入手が容易であり、かつ安価な構成にできる。一次元センサ208の画素数は11画素に限定されるものではなく、一次元センサ208が配置される空間の大きさに応じて画素数を可変にでき、入手が容易なものを選択できる。
【0065】
図17は、5画素×11画素の二次元センサ209を使用し、円弧状視野の形状に合わせて(又は対応させて)有効な画素(1)乃至(11)を設定し使用する例である。この方式は、市販の二次元センサを使用できるため、安価で構成できる。本例の場合、円弧状視野に合わせて収差のより小さい箇所にある画素を選ぶことが望ましい。また、二次元センサ209は、5画素×11画素に限定されず、二次元センサ209は、5画素×11画素に限定されず、二次元センサ209が配置される空間の大きさ及び/又は円弧状視野の大きさに応じて画素数を可変にでき、入手が容易な又は安価なものを選択できる。
【0066】
図18に、検出器106の画像センサに一次元センサもしくは二次元センサを使用した場合の座標補正について説明する。
【0067】
本実施例では収差の小さい箇所を有効とするために画素の配列を円弧状とするが、センサの出力配列は直線状のデータとなる。この相違は欠陥有無を判定するには問題とならないが、欠陥の位置座標を特定するには、センサの出力配列を視野内の位置座標に対応付ける必要がある。本発明の実施例では、各画素の視野内の位置座標と、センサの出力配列の位置座標との差(座標補正値)を事前に算出し、その値で座標を補正して対応付けることができることを示す。
【0068】
まず、座標補正値の算出方法を説明する。図18は、センサ上の視野を示したもので、X方向が長辺方向、Y方向が短辺方向である。図18左側で示すように、センサ上の円弧の半径をRとすると、座標補正値は(数2)の演算により算出できる。
【0069】
Y=R(1−cos(sin-1(X/R))) …(数2)
【0070】
次に、図18右側で示すように、算出した座標補正値で各画素の座標を補正し、センサの出力配列を視野内の位置座標に対応付けた座標値を算出する。
【0071】
以上により、反射型光学系104の円弧形状視野である反射型光学系のセンサ上の視野(非直線形状)206においても、高感度かつ高い位置座標精度により検査できる。
【0072】
図19乃至図23を用いて、本発明に係るさらに別の複数の実施例を示す。本実施例は、反射型光学系301において、反射型光学系の光軸120を中心とした2つの視野で同時検出する例である。
【0073】
図19は、光源303a及び303bから同じ波長の光を照射し、ウェハ101上の照明領域302aと照明領域302bへ照射する例である。光源303aは仰角αで照明領域302aを照明し、光源303bは仰角βで照明領域302bを照明する。そして、照明領域302aから散乱された光は、反射型光学系301を介して、検出器106aに結像され、照明領域302bから散乱された光は、反射型光学系301を介して、検出器106bに結像される。
【0074】
なお、光源303a及び303bは、レーザでもランプでも良い。
【0075】
また、仰角α,βは異なる角度であり、例えばα=25°,β=10°である。仰角α,βは、固定角度でも良いし、図示しない機構で角度を変えても良い。欠陥種毎の照明仰角に対する検出し易さが分かっている場合は、仰角α,βをそれぞれ検出したい欠陥種に応じた角度に設定すれば良い。
【0076】
また、光源303a及び303bから照射する光は異なる強度としても良い。例えば光源303aは強度の強い光を照明領域302aへ照射して検出器106aで検出し、光源303bは強度の弱い光を照明領域302bへ照射し検出器106bで検出する。
【0077】
小さな欠陥を検出するには強い光を照射すると良いが、大きな欠陥は強く散乱するため、画像センサで輝度値が飽和する。この場合、例えば輝度値から欠陥の実寸法を算出しても正しい結果が得られない。前記の場合、検出器106aで欠陥を検出し、検出器106bで飽和していない輝度値を得て、照明強度に応じた欠陥の実寸法を算出することで、検出性能を下げずに欠陥の実寸法を算出できる。
【0078】
図20は、偏光板にて偏光した光を、ウェハ101上の照明領域302aと照明領域302bへ照明する例である。P偏光は小さい欠陥を検出する場合にS/N比を高く、S偏光は大きい欠陥を検出する場合にS/N比を高くできる特徴がある。よって、偏光板により例えば照明領域302aへはP偏光を、照明領域302bへはS偏光を照明することで、検出器106aは小さい欠陥を中心とした検出を、検出器106bは大きい欠陥を中心とした検出が可能となる。
【0079】
図21は、各照明領域に複数の方向から照明し、更に波長帯域の異なる照明をウェハ101上の照明領域302aと照明領域302bへ照射する例である。
【0080】
例えば、照明領域302aへは光源304と光源307からそれぞれ異なる方向及び異なる波長帯域の照明を照射し、照明領域302bへは光源305と光源306からそれぞれ異なる方向及び異なる波長帯域の照明を照射する。
【0081】
同じ位置に照射した波長帯域の異なる光は干渉しないので、各波長による散乱光が加算できるため、単一波長より安定した散乱光が得られる。
【0082】
また、照明方向により欠陥種の検出し易さが分かっている場合は、それぞれ検出したい欠陥種に応じた照明方向に設定すれば良い。
【0083】
図22は、単一の光源308から射出した光をハーフミラーで分光して、照明領域302aと302bへ照明する例である。本例は図18の例に比べて光源が1つで済むため、光源及び関連する装置部分を簡略化でき、安価な装置にできる。
【0084】
図23は、図19乃至図22を示した実施例のように2つの視野で検出したウェハ101上の同一位置の画像を統合処理する例である。検出器106aで検出した画像と、検出器106bで検出した画像を平均化処理することによりランダムノイズNを低減させ、欠陥部の輝度値S/ランダムノイズNの比率を上げて、検出性能を向上できる。
【0085】
なお、上述した各実施形態は、相互に適用可能であり、例えば、複数の一次元センサを用いる図16の実施例に、図13,図14で説明した係数による検出信号補正を組み合わせることにより、より一層の感度向上や有効画素の選択の自由度が拡大することなどの効果が期待できる。
【0086】
また、半導体ウェハの暗視野欠陥検査装置について説明したが、本発明は明視野欠陥検査装置にも適用可能である。
【0087】
また、本発明の反射型光学系は、ミラーの他に、ビームスプリッタなどの光学素子を含んでも良い。
【0088】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、反射光学系を用いる検査装置以外(屈折光学系又は反射屈折光学系)でも、照明視野領域が変形している(非直線形状である)場合、変形に対応したセンサ領域形状とすることも考えられる。
【0089】
また、二次元センサを用い、照明視野領域がセンサ領域より小さい又は大きい場合へ適用することも考えられる。
【0090】
また、線状視野に対して、本発明の画素位置の補正する概念を適用することも考えられる。また、照明が均一でない場合も適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
101 ウェハ
102 ステージ
103 照明光学系
104,301 反射型光学系
105 空間フィルタ
106,123,124 検出器
107 画像処理部
108 全体制御部
109 入出力操作部
110 可視光レーザ
111 紫外光レーザ
112 深紫外光レーザ
113〜115 アッテネータ
116 ミラー
117〜119 シャッター
120 反射型光学系の光軸
121 反射型光学系のウェハ上の視野の長辺方向サイズ
122 回折光学素子
125 ランプ
126 波長フィルタ
127 真空紫外光源
128 真空チャンバ
201 屈折型光学系のセンサ上の視野(直線形状)
202 TDIセンサ
203 ウェハ上のパターンからの光
204 画素
205 TDIセンサ出力配列の座標
206 反射型光学系のセンサ上の視野(非直線形状)
207,208 一次元センサ
209 二次元センサ
210 センサ出力配列の座標
302 ウェハ上照明領域
303〜308 光源(レーザもしくはランプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された試料に光を照明し、試料の像を反射型光学系を介して画像センサに結像し、欠陥の有無を判定する欠陥検査装置において、反射型光学系は共役な2組のフーリエ変換光学系を含み、反射型光学系の収差は光軸外で補正され、試料面における視野は非直線形状のスリット状であり、画像センサの画素位置に応じて明るさを補正することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
請求項1において、前記フーリエ変換光学系のフーリエ変換面に、空間フィルタを含むことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記試料面における視野は円弧形状のスリット状であることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかにおいて、前記反射型光学系の光軸は試料面の法線方向に対して傾きをなし、試料面における視野は楕円の一部のスリット状であることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかにおいて、前記試料面におけるスリット状視野の短辺方向に、試料を走査するステージを含むことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかにおいて、前記可視光から深紫外光領域の範囲で、試料に応じて所定の単一の波長帯域の光を選定し、試料を照明することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれかにおいて、前記可視光から深紫外光領域の範囲で、試料に応じて所定の複数の波長帯域の光を選定し、試料を照明することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項8】
請求項7において、前記複数の波長帯域の光を単一の画像センサに結像することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項9】
請求項7において、前記複数の波長帯域の光を複数の画像センサに結像することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項10】
請求項6乃至請求項9のいずれかにおいて、前記複数の波長帯域を射出する光源は単一光源であることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項11】
請求項6乃至請求項9のいずれかにおいて、前記複数の光源から所定の波長帯域の光を選定し、試料を照明することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかにおいて、前記検査領域の画像と、検査領域と隣接または近接する領域の画像とを比較して、欠陥の有無を判定することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかにおいて、前記画像センサは時間遅延積分型であることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項14】
請求項13において、前記時間遅延積分型画像センサの出力配列と、反射型光学系の視野内位置との対応により、明るさを補正することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項12のいずれかにおいて、前記一次元センサ及び二次元センサの出力配列と、反射型光学系の視野内の位置とを対応付けることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれかにおいて、前記円弧形状の視野内において、複数の視野を確保し、それぞれ別の画像センサに結像することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項17】
請求項15において、前記複数の画像センサに結像した画像を、統合処理することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項18】
パターンが形成された試料に光を照明し、試料の像を反射型光学系を介して画像センサに結像し、欠陥の有無を判定する欠陥検査方法において、試料面における視野が非直線形状のスリット状であり、画像センサの画素位置に応じて明るさを補正することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項19】
パターンが形成された試料に光を照明し、試料の像を光学系を介して画像センサに結像し、欠陥の有無を判定する欠陥検査装置において、
照明視野領域の形状に対応した画像センサ領域形状とし、画像センサの画素位置に応じて明るさを補正することを特徴とする欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−27662(P2011−27662A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176002(P2009−176002)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】