説明

車両制御装置

【課題】アクセルオンからアクセルオフに移行したときの消費エネルギーを小さくし、エネルギー効率を高くすることができるようにする。
【解決手段】車両のボディと、複数の車輪と、所定の車輪に配設され、車輪にキャンバを付与するためのキャンバ可変機構と、キャンバ付与条件が成立したかどうかを判断するキャンバ付与条件成立判断処理手段と、キャンバ付与条件が成立した場合に車輪にキャンバを付与するキャンバ付与処理手段と、ニュートラル走行設定条件が成立したかどうかを判断するニュートラル走行設定条件成立判断処理手段と、ニュートラル走行設定条件が成立した場合に、駆動源と駆動輪との間のトルクの伝達を遮断するニュートラル走行設定処理手段とを有する。駆動源における摩擦、イナーシャ等が抵抗になって消費エネルギーが大きくなることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、後方の車輪に負のキャンバ(ネガティブキャンバ)を付与することができるようにした車両が提供されている。
【0003】
この種の車両においては、後方の各車輪のタイヤに、互いに対向する方向にキャンバスラストを発生させることができる。したがって、車両を直進させて走行させるとき、すなわち、車両の直進走行時、車両を制動させるとき、すなわち、車両の制動時等に何らかの理由で車両に外力が加わると、外力が加わった側とは反対側の車輪のタイヤに、大きなキャンバスラストが発生し、該キャンバスラストが復元力として車両に加わるので、車両の直進走行時の安定性(以下「走行安定性」という。)を高くすることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−193781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の車両においては、例えば、車両が降坂路に差し掛かったときに、運転者によってアクセルペダルが踏み込まれている状態(以下「アクセルオン」という。)からアクセルペダルが踏み込まれていない状態(以下「アクセルオフ」という。)に移行しても、エンジンと、駆動輪、例えば、後輪とが連結されているので、車両を走行させるに当たり、摩擦、イナーシャ等が抵抗になり、消費されるエネルギー、すなわち、消費エネルギーがその分大きくなってしまう。したがって、車両のエネルギー効率が低い。
【0006】
本発明は、前記従来の車両の問題点を解決して、アクセルオンからアクセルオフに移行したときの消費エネルギーを小さくし、エネルギー効率を高くすることができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の車両制御装置においては、車両のボディと、該ボディに対して回転自在に配設された複数の車輪と、該各車輪のうちの所定の車輪に配設され、車輪にキャンバを付与するためのキャンバ可変機構と、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方に基づいて、あらかじめ設定されたキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断するキャンバ付与条件成立判断処理手段と、該キャンバ付与条件成立判断処理手段によって、キャンバ付与条件が成立したと判断された場合に、前記キャンバ可変機構を作動させて前記所定の車輪にキャンバを付与するキャンバ付与処理手段と、該キャンバ付与処理手段によって前記所定の車輪にキャンバが付与された場合に、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方に基づいて、ニュートラル走行設定条件が成立したかどうかを判断するニュートラル走行設定条件成立判断処理手段と、該ニュートラル走行設定条件成立判断処理手段によって、ニュートラル走行設定条件が成立したと判断された場合に、車両にニュートラル走行を設定し、駆動源と前記各車輪のうちの駆動輪との間のトルクの伝達を遮断するニュートラル走行設定処理手段とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両制御装置においては、車両のボディと、該ボディに対して回転自在に配設された複数の車輪と、該各車輪のうちの所定の車輪に配設され、車輪にキャンバを付与するためのキャンバ可変機構と、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方に基づいて、あらかじめ設定されたキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断するキャンバ付与条件成立判断処理手段と、該キャンバ付与条件成立判断処理手段によって、キャンバ付与条件が成立したと判断された場合に、前記キャンバ可変機構を作動させて前記所定の車輪にキャンバを付与するキャンバ付与処理手段と、該キャンバ付与処理手段によって前記所定の車輪にキャンバが付与された場合に、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方に基づいて、ニュートラル走行設定条件が成立したかどうかを判断するニュートラル走行設定条件成立判断処理手段と、該ニュートラル走行設定条件成立判断処理手段によって、ニュートラル走行設定条件が成立したと判断された場合に、車両にニュートラル走行を設定し、駆動源と前記各車輪のうちの駆動輪との間のトルクの伝達を遮断するニュートラル走行設定処理手段とを有する。
【0009】
この場合、所定の車輪にキャンバが付与されているときに、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方に基づいて、ニュートラル走行設定条件が成立したと判断されると、車両にニュートラル走行が設定され、駆動源と駆動輪との間のトルクの伝達が遮断されるので、駆動源における摩擦、イナーシャ等が抵抗になって消費エネルギーが大きくなることがない。
【0010】
したがって、車両のエネルギー効率を高くすることができる。
【0011】
また、駆動源と駆動輪との間のトルクの伝達が遮断されても、前記所定の車輪にキャンバが付与されているので、走行安定性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車両の制御ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における車両の概念図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における車輪の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における制御部の動作を示す第1のメインフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態における制御部の動作を示す第2のメインフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態における操縦安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態におけるニュートラル走行処理のサブルーチンを示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態におけるニュートラル走行処理手段の動作を説明するための概念図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるニュートラル走行処理手段の動作を説明するための概念図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態におけるニュートラル走行処理手段の動作を説明するための概念図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態における駆動ユニットの動作を説明するための速度線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図2は本発明の第1の実施の形態における車両の概念図である。
【0015】
図において、11は車両の本体であるボディ、12は駆動源としてのエンジン、WLF、WRF、WLB、WRBは、前記ボディ11に対して回転自在に配設された左前方、右前方、左後方及び右後方の車輪である。前記車輪WLF、WRFによって前輪が、車輪WLB、WRBによって後輪が構成される。
【0016】
本実施の形態において、車両は後輪駆動方式の構造を有し、前記車輪WLB、WRBが駆動輪として機能する。そして、エンジン12と各車輪WLB、WRBとが第1の伝動軸としてのプロペラシャフト17、差動装置18及び第2の伝動軸としてのドライブシャフト46を介して連結され、エンジン12を駆動することによって発生させられた回転が車輪WLB、WRBに伝達される。本実施の形態において、前記車両は後輪駆動方式の構造を有するようになっているが、前輪駆動方式の構造を有するようにしたり、四輪駆動方式の構造を有するようにしたりすることもできる。なお、前記エンジン12とプロペラシャフト17との間には、図示されない変速機が配設される。また、エンジン12に代えて、第1の駆動源としてのエンジン、及び第2の駆動源としての発電機/モータから成る駆動ユニットを配設してハイブリッド型車両を構成するようにしたり、第1の駆動源としてのエンジン、第2の駆動源としての発電機及び第3の駆動源としてのモータから成る駆動ユニットを配設してハイブリッド型車両を構成するようにしたり、駆動源としてのモータを配設して電気自動車を構成するようにしたりすることもできる。
【0017】
そして、13は車両の操舵を行うための操作部としての、かつ、操舵部材としてのステアリングホイール、14は車両を加速するための操作部としての、かつ、加速操作部材としてのアクセルペダル、15は車両を制動するための操作部としての、かつ、制動操作部材としてのブレーキペダルである。
【0018】
また、31、32は、それぞれ、ボディ11と各車輪WLB、WRBとの間に配設され、各車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したりするためのキャンバ可変機構としてのアクチュエータである。なお、本実施の形態においては、ボディ11と各車輪WLB、WRBとの間に各アクチュエータ31、32が配設されるようになっているが、ボディ11と各車輪WLF、WRFとの間にアクチュエータを配設したり、ボディ11と車輪WLF、WRF、WLB、WRBとの間にアクチュエータを配設したりすることができる。
【0019】
ところで、前記車輪WLF、WRF、WLB、WRBは、アルミニウム合金等によって形成された図示されないホイール、及び該ホイールの外周に嵌(かん)合させて配設されたタイヤ36を備える。そして、該タイヤ36として、後述される損失正接を小さくすることにより、タイヤ36のトレッドの変形によって発生する転がり抵抗が小さくされた低転がり抵抗タイヤが使用される。この場合、タイヤ36の転がり抵抗が小さくされるので、燃費を良くすることができる。
【0020】
本実施の形態においては、転がり抵抗を小さくするためにタイヤ36の幅が通常のタイヤより小さくされるが、トレッドの溝のパターンであるトレッドパターンを、転がり抵抗が小さくなるような形状にしたり、少なくともトレッドの部分の材料を、転がり抵抗が小さいものにしたりすることができる。
【0021】
なお、前記損失正接は、トレッドが変形する際のエネルギーの吸収の度合いを表し、貯蔵剪(せん)断弾性率に対する損失剪断弾性率の比で表すことができる。損失正接が小さいほどトレッドによるエネルギーの吸収が少なくなるので、タイヤ36に発生する転がり抵抗が小さくなり、タイヤ36に発生する摩耗が少なくなる。これに対して、損失正接が大きいほどトレッドによるエネルギーの吸収が多くなるので、タイヤ36に発生する転がり抵抗が大きくなり、タイヤ36に発生する摩耗が多くなる。
【0022】
次に、各車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したりするための前記アクチュエータ31、32について説明する。この場合、アクチュエータ31、32の構造は同じであるので、車輪WLB及びアクチュエータ31についてだけ説明する。
【0023】
図3は本発明の第1の実施の形態における車輪の断面図である。
【0024】
図において、WLBは車輪、21はホイール、31はアクチュエータ、36はタイヤである。
【0025】
前記アクチュエータ31は、ベース部材としての図示されないナックルに固定されたキャンバ制御用の駆動部としてのモータ41、前記ナックルに対して揺動自在に配設された可動部材としての可動プレート43、前記モータ41の回転運動を可動プレート43の揺動運動に変換する運動方向変換機構としてのクランク機構45、前記エンジン12(図2)の回転をホイール21に伝達する前記ドライブシャフト46等を備える。前記ホイール21は、可動プレート43に対して回転自在に支持され、ドライブシャフト46と連結される。
【0026】
また、前記クランク機構45は、前記モータ41の出力軸に取り付けられた第1の変換要素としてのウォームギヤ51、前記ナックルに対して回転自在に配設され、前記ウォームギヤ51と噛(し)合させられる第2の変換要素としてのウォームホイール52、及び該ウォームホイール52と可動プレート43とを連結する第3の変換要素としての、かつ、連結要素としてのアーム53を有する。該アーム53は、一端において、ウォームホイール52の回転軸から偏心させた位置で、第1の連結部を介してウォームホイール52と連結され、他端において、可動プレート43の上端で、第2の連結部を介して可動プレート43と連結される。この場合、前記可動プレート43によって第4の変換要素が構成される。
【0027】
前記ウォームギヤ51及びウォームホイール52によって、ウォームギヤ51及びウォームホイール52の回転運動の軸心の向きが変換され、ウォームホイール52及びアーム53によって、ウォームホイール52の回転運動がアーム53の直進運動に変換され、アーム53及び可動プレート43によって、アーム53の直進運動が可動プレート43の揺動運動に変換される。
【0028】
したがって、モータ41を駆動すると、ウォームギヤ51及びウォームホイール52が回転させられ、アーム53が進退させられ、可動プレート43が揺動させられる。その結果、可動プレート43が鉛直方向に対して傾けられた角度と等しい角度のキャンバが車輪WLBに付与される。
【0029】
次に、前記構成の車両の制御装置について説明する。
【0030】
図1は本発明の第1の実施の形態における車両の制御ブロック図である。
【0031】
図において、16はコンピュータを構成する制御部、60は車両の制御を行う車両制御部である。なお、該車両制御部60によって主制御部が、前記制御部16によって副制御部が構成される。
【0032】
また、61は第1の記憶部としてのROM、62は第2の記憶部としてのRAM、63は車速を検出する車速検出部としての車速センサ、64は操作者である運転者による前記ステアリングホイール13(図2)の操作量を表す操舵量としてのステアリング角度を検出する操舵量検出部としての、かつ、ステアリング操作量検出部としてのステアリングセンサ、65は車両のヨーレートを検出するヨーレート検出部としてのヨーレートセンサ、66は第1の加速度としての横加速度を検出する第1の加速度検出部としての横加速度(G)センサ、67は第2の加速度としての前後加速度を検出する第2の加速度検出部としての前後加速度(G)センサ、68は各車輪WLB、WRBに付与されたキャンバを検出するキャンバ検出部としてのキャンバセンサ、70は図示されない表示画面を備えた表示部、71は運転者による前記アクセルペダル14の操作量を表す踏込量(アクセル開度)を検出する加速操作量検出部としてのアクセルセンサ、72は運転者による前記ブレーキペダル15の操作量を表す踏込量(ブレーキストローク)を検出する制動操作量検出部としてのブレーキセンサ、73は各車輪WLB、WRBの図示されないサスペンション装置のストロークを検出する懸架検出部としてのサスストロークセンサ、75は各車輪WLB、WRBに加わる荷重を検出する荷重検出部としての荷重センサである。前記ボディ11、アクチュエータ31、32、制御部16、車両制御部60等によって車両制御装置が構成される。
【0033】
前記サスストロークセンサ73は、ハイトセンサ、磁気センサ等によって構成され、前記荷重センサ75は、サスペンション装置に配設されたロードセル(歪みセンサ)によって構成される。
【0034】
ところで、本実施の形態においては、前述されたように、タイヤ36の転がり抵抗が小さくされるが、タイヤ36の転がり抵抗が小さい場合、タイヤ36の剛性が低下し、タイヤの路面を掴(つか)む力、すなわち、グリップ力が小さくなる。そこで、本実施の形態においては、タイヤ36の剛性が低く、グリップ力が小さい場合でも、例えば、走行安定性を高くすることができるように、あらかじめ設定された所定のキャンバ付与条件が成立したかどうかが判断され、所定のキャンバ付与条件が成立した場合に、前記各アクチュエータ31、32が作動させられ、各車輪WLB、WRBに所定の負のキャンバθが付与される。
【0035】
なお、前記各車輪WLF、WRF、WLB、WRBのうちの少なくとも各車輪WLB、WRB、本実施の形態においては、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBが、アクチュエータ31、32を作動させない通常の状態である初期状態に置かれた場合に、車両の仕様で規定された所定の角度のキャンバ、すなわち、基準キャンバαが、各車輪WLF、WRF、WLB、WRBに付与される。したがって、本実施の形態においては、キャンバ付与条件が成立した場合に、前記基準キャンバαに所定のキャンバが付加されて前記キャンバθが、
−5〔°〕≦θ<0〔°〕
にされる。なお、前記基準キャンバαが負の値を採る場合、基準キャンバαに前記所定のキャンバが付加され、キャンバθの絶対値が大きくされる。
【0036】
また、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態で車両を走行させるのに伴ってタイヤ36に偏摩耗が発生すると、タイヤ36の寿命が短くなってしまうが、本実施の形態においては、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態で車両を走行させているときに、タイヤ36に偏摩耗が発生するのを抑制するために、所定のキャンバ解除条件が成立したかどうかが判断され、キャンバ解除条件が成立した場合に、アクチュエータ31、32が作動させられ、各車輪WLB、WRBへのキャンバθの付与が解除され、各車輪WLB、WRBが初期状態に置かれる。
【0037】
ところで、車両の走行中に、例えば、車両が降坂路に差し掛かって、アクセルオンからアクセルオフに移行したときに、エンジン12と各車輪WLB、WRBとが、トルクが伝達される状態で連結されていると、摩擦、イナーシャ等が抵抗になって消費エネルギーが大きくなり、車両のエネルギー効率が低くなってしまう。
【0038】
そこで、本実施の形態においては、各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与した状態で車両を走行させているときに、所定のニュートラル走行条件が成立した場合に、エンジン12と各車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達が遮断されるようになっている。
【0039】
次に、前記制御部16及び車両制御部60の動作について説明する。
【0040】
図4は本発明の第1の実施の形態における制御部の動作を示す第1のメインフローチャート、図5は本発明の第1の実施の形態における制御部の動作を示す第2のメインフローチャート、図6は本発明の第1の実施の形態における操縦安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図、図7は本発明の第1の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図、図8は本発明の第1の実施の形態におけるニュートラル走行処理のサブルーチンを示す図、図9は本発明の第1の実施の形態におけるニュートラル走行処理手段の動作を説明するための概念図である。
【0041】
まず、制御部16の図示されない判定情報取得処理手段は、判定情報取得処理を行い、前記各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与したり、キャンバθの付与を解除したりするために必要な判定情報、及びエンジン12と車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達を断続するために必要な判定情報、本実施の形態においては、車両の状態を表す車両状態、及び運転者による各操作部の操作の状態を表す操作状態を取得する(ステップS1、S2)。
【0042】
そのために、前記判定情報取得処理手段は、前記車速センサ63、ヨーレートセンサ65、横加速度センサ66、前後加速度センサ67、キャンバセンサ68、サスストロークセンサ73、荷重センサ75等の各センサのセンサ出力を読み込み、車両状態として、車速、ヨーレート、横加速度、前後加速度、キャンバθ、サスストローク、荷重等を取得する。
【0043】
なお、前記判定情報取得処理手段は、前記車速の変化率(微分)を表す加速度、又は減速度を算出したり、前記ヨーレートの変化率を表すヨーレート変化速度を算出したり、前記横加速度の変化率を表す横加速度変化速度を算出したり、前記サスストロークに基づいてロール角を算出したりして、車両状態として、加速度、減速度、ヨーレート変化速度、横加速度変化速度、ロール角等を取得することもできる。
【0044】
次に、前記判定情報取得処理手段は、前記ステアリングセンサ64、アクセルセンサ71、ブレーキセンサ72等の各センサのセンサ出力を読み込み、操作状態として、ステアリング角度、アクセルペダル14の踏込量、ブレーキペダル15の踏込量等を取得する。
【0045】
なお、前記判定情報取得処理手段は、前記ステアリング角度の変化率を表すステアリング角速度、及び該ステアリング角速度の変化率を表すステアリング角加速度を算出したり、アクセルペダル14の踏込量の変化率を表す踏込速度、及び該踏込速度の変化率を表す踏込加速度等を算出したり、ブレーキペダル15の踏込量の変化率を表す踏込速度、及び該踏込速度の変化率を表す踏込加速度等を算出したりして、操作状態として、ステアリング角速度、ステアリング角加速度、アクセルペダル14の踏込速度及び踏込加速度、ブレーキペダル15の踏込速度及び踏込加速度等を取得することもできる。
【0046】
さらに、ステアリングセンサ64に代えて、操舵量検出部としての舵角センサを配設し、操舵量としての車輪WLF、WRFの舵角を検出することもできる。その場合、前記判定情報取得処理手段は、舵角センサのセンサ出力を読み込み、操作状態として舵角を取得する。また、前記判定情報取得処理手段は、舵角の変化率を表す舵角速度、該舵角速度の変化率を表す舵角加速度等を算出し、操作状態として舵角速度、舵角加速度等を取得することもできる。
【0047】
続いて、前記制御部16の図示されない第1のキャンバ付与条件成立判断処理手段としての操縦安定キャンバ要否判定処理手段は、第1のキャンバ付与条件成立判断処理としての操縦安定キャンバ要否判定処理を行い、運転者がステアリングホイール13を操作して車両を旋回させるとき、すなわち、車両の旋回時に、旋回用のキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断する(ステップS3、S4)。
【0048】
そのために、操縦安定キャンバ要否判定処理手段は、前記ステアリング角度を読み込み、ステアリング角度が閾(しきい)値γth0以上であるかどうかを判断し(ステップS3−1)、ステアリング角度が閾値γth0以上である場合に、前記旋回用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS3−2)。
【0049】
そして、旋回用のキャンバ付与条件が成立した場合に、制御部16の図示されないキャンバ付与状態判断処理手段は、キャンバ付与状態判断処理を行い、前記キャンバセンサ68によって検出されたキャンバθpを読み込み、該キャンバθpが、
−5〔°〕≦θp<0〔°〕
であるかどうかによって、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断する(ステップS5)。
【0050】
各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されている場合、制御部16は処理を終了し、キャンバθが付与されていない場合、制御部16の図示されない第1のキャンバ制御処理手段としてのキャンバ付与処理手段は、第1のキャンバ制御処理としてのキャンバ付与処理を行い、アクチュエータ31、32を作動させて各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与する(ステップS6)。
【0051】
このとき、旋回に伴って車両に遠心力が発生するが、外周側の車輪(車両を左方に旋回させる場合は車輪WRBであり、車両を右方に旋回させる場合は車輪WLBである。)の接地荷重が内周側の車輪(車両を左方に旋回させる場合は車輪WLBであり、車両を右方に旋回させる場合は車輪WRBである。)の接地荷重より大きくなり、外周側の車輪のタイヤ36に発生するキャンバスラストが内周側の車輪のタイヤ36に発生するキャンバスラストより大きくなる。したがって、車両に求心力を発生させることができるので、車両の旋回時の安定性(以下「旋回安定性」という。)を高くすることができる。
【0052】
一方、前記操縦安定キャンバ要否判定処理において、旋回用のキャンバ付与条件が成立しない場合、制御部16の図示されない第2のキャンバ付与条件成立判断処理手段としての直進安定キャンバ要否判定処理手段は、第2のキャンバ付与条件成立判断処理としての直進安定キャンバ要否判定処理を行い、車両の直進走行時に、前記車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方、本実施の形態においては、前記車両状態及び操作状態に基づいて、直進走行用のキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断する(ステップS7、S8)。
【0053】
そのために、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段は、車速を読み込み、車速を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去X〔秒〕間の車速に基づいて、車速算出値、本実施の形態においては、平均車速を算出するとともに、ステアリング角度を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去Y〔秒〕間のステアリング角度に基づいて操舵量算出値、本実施の形態においては、平均ステアリング角度を算出し、過去X〔秒〕間の平均車速が閾値vth以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度が閾値γthより小さいかどうかを判断する(ステップS7−1)。過去X〔秒〕間の平均車速が閾値vth以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度が閾値γthより小さい場合に、直進安定キャンバ要否判定処理手段は、前記直進走行用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS7−2)。
【0054】
そして、直進走行用のキャンバ付与条件が成立した場合、前記キャンバ付与状態判断処理手段は、前記キャンバθpを読み込み、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断し(ステップS9)、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されていない場合、前記キャンバ付与処理手段は、アクチュエータ31、32を作動させて各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与する(ステップS10)。
【0055】
このとき、各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与するのに伴って、各車輪WLB、WRBのタイヤ36に、互いに対向する方向にキャンバスラストが発生するので、何らかの理由で車両に外力が加わると、外力が加わった側とは反対側の車輪のタイヤ36に、大きなキャンバスラストが発生し、該キャンバスラストが復元力として車両に加わる。したがって、走行安定性を高くすることができる。
【0056】
ところで、前述されたように、本実施の形態においては、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されている状態で車両を走行させているときに、所定のニュートラル走行設定条件が成立した場合に、エンジン12と車輪WLB、WRBとの間のトクルの伝達が遮断されるようになっている。
【0057】
そのために、本実施の形態においては、図9に示されるように、エンジン12とプロペラシャフト17との間に変速機22が配設され、該変速機22は、エンジン12からの回転を受ける入力軸23、所定のギヤ機構から成る変速機構25、前記入力軸23と変速機構25との間に、係脱自在に配設された係合要素としてのクラッチC等を備える。該クラッチCは、図示されない油圧サーボを備え、係脱用の駆動部としてのソレノイド26を駆動し、図示されない所定の切換弁を切り換え、前記油圧サーボに対して作動用の油を給排することによって係脱させられる。なお、前記クラッチCとして電磁クラッチを使用することができる。
【0058】
そして、前記キャンバ付与処理において、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されると、制御部16の図示されないキャンバ付与状態通知処理手段は、キャンバ付与状態通知処理を行い、車両制御部60にキャンバ付与信号を送り、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されていることを車両制御部60に通知する。
【0059】
続いて、車両の直進走行時に各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されていることが通知されると、前記車両制御部60の図示されないニュートラル走行処理手段は、ニュートラル走行処理を行う(ステップS11)。
【0060】
すなわち、前記ニュートラル走行処理手段のニュートラル走行設定条件成立判断処理手段は、ニュートラル走行設定条件成立判断処理を行い、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方、本実施の形態においては、操作状態であるアクセルペダル14の踏込量を読み込み、ニュートラル走行設定条件が成立したかどうかを、アクセルオンからアクセルオフに移行したかどうかによって判断する(ステップS11−1、S11−2)。なお、本実施の形態においては、アクセルペダル14の踏込量に基づいて、アクセルオンからアクセルオフに移行したかどうかを判断するようになっているが、アクセルペダル14の踏込速度、踏込加速度等に基づいて、また、エンジン12における燃料噴射量、空気吸入量等に基づいてアクセルオンからアクセルオフに移行したかどうかを判断することができる。この場合、エンジン12における燃料噴射量、空気吸入量等の判定情報は、前記判定情報取得処理手段によって車両状態として取得される。
【0061】
そして、前記ニュートラル走行設定条件が成立した場合に、前記ニュートラル走行処理手段のニュートラル走行設定処理手段は、ニュートラル走行設定処理を行い(ステップS11−3)、車両にニュートラル走行を設定し、前記ソレノイド26を駆動し、前記油圧サーボから油を排出することによって前記クラッチCを解放する。その結果、エンジン12と各車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達が遮断される。アクセルオンからアクセルオフに移行していない場合、前記ニュートラル走行設定条件は成立しないので、エンジン12と各車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達は遮断されない。
【0062】
続いて、前記ニュートラル走行処理手段のニュートラル走行解除条件成立判断処理手段は、ニュートラル走行解除条件成立判断処理を行い、アクセルペダル14の踏込量を読み込み、ニュートラル走行解除条件が成立したかどうかを、アクセルオフからアクセルオンに移行したかどうかによって判断する(ステップS11−4、S11−5)。なお、本実施の形態においては、ニュートラル走行解除条件が成立したかどうかを、アクセルペダル14の踏込量に基づいて、アクセルオフからアクセルオンに移行したかどうかによって判断するようになっているが、ブレーキペダル15の踏込量を読み込み、ニュートラル走行解除条件が成立したかどうかを、運転者によってブレーキペダル15が踏み込まれたかどうかによって判断したり、図示されない変速指示部材としてのシフトレバーからの信号を読み込み、ニュートラル走行解除条件が成立したかどうかを、運転者によってシフトレバーが操作されたかどうかによって判断したりすることもできる。さらに、アクセルオフからアクセルオンに移行したかどうかによって第1の条件が成立したかどうかを判断し、運転者によってブレーキペダル15が踏み込まれたかどうかによって第2の条件が成立したかどうかを判断し、運転者によってシフトレバーが操作されたかどうかによって第3の条件が成立したかどうかを判断し、第1〜第3の条件のうちの少なくとも一つの条件が成立したときにニュートラル走行解除条件が成立したと判断することもできる。
【0063】
そして、前記ニュートラル走行解除条件が成立した場合に、前記ニュートラル走行処理手段のニュートラル走行解除処理手段は、ニュートラル走行解除処理を行い、ニュートラル走行を解除し、ソレノイド26を駆動して前記油圧サーボに油を供給し、前記クラッチCを係合させる(ステップS11−6)。
【0064】
一方、前記直進安定キャンバ要否判定処理において、直進走行用のキャンバ付与条件が成立しない場合に、前記キャンバ付与状態判断処理手段は、前記キャンバθpを読み込み、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断する(ステップS12)。
【0065】
続いて、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されている場合に、制御部16の図示されない第2のキャンバ制御処理手段としてのキャンバ解除処理手段は、第2のキャンバ制御処理としてのキャンバ解除処理を行い、制御部16に内蔵された計時処理部としての図示されないタイマによる計時を開始し、計時を開始してから所定の時間が経過すると、アクチュエータ31、32を作動させて各車輪WLB、WRBへのキャンバθの付与を解除する(ステップS13、ステップS14)。
【0066】
このように、本実施の形態においては、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態で車両を走行させているときに、ニュートラル走行設定条件が成立した場合に、エンジン12と各車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達が遮断されるので、エンジン12における摩擦、イナーシャ等による消費エネルギーを小さくすることができ、車両のエネルギー効率を高くすることができる。
【0067】
この場合、エンジン12と各車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達が遮断されるので、エンジンブレーキは掛からないが、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されるので、エンジンブレーキによることなく、走行安定性を高くすることができる。
【0068】
次に、エンジン及び発電機/モータから成る駆動ユニットを使用する車両、すなわち、ハイブリッド型車両に適用される本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0069】
図10は本発明の第2の実施の形態におけるニュートラル走行処理手段の動作を説明するための概念図である。
【0070】
図において、30は駆動ユニットであり、該駆動ユニット30は、第1の駆動源としてのエンジン12、及び第2の駆動源としての、かつ、電動機械としての発電機/モータ(G/M)33を備える。また、22は変速機であり、エンジン12と発電機/モータ33と変速機22とが直列に連結され、変速機22と車輪WLB、WRBとが差動装置18を介して連結される。
【0071】
前記変速機22は、エンジン12からの回転を受ける入力軸23、所定のギヤ機構から成る変速機構25、前記入力軸23と変速機構25との間に、係脱自在に配設された係合要素としてのクラッチC等を備える。
【0072】
また、34は発電機/モータ33を発電機として駆動したり、モータとして駆動したりするためのインバータ、35はバッテリ、37はバッテリ35の残量、すなわち、バッテリ残量SOCを検出するバッテリ残量検出部である。
【0073】
そして、60は車両制御部であり、該車両制御部60の図示されない電動機械駆動処理手段は、電動機械駆動処理を行い、前記バッテリ残量検出部37によって検出されたバッテリ残量SOCを読み込み、バッテリ残量SOCが閾値ε1より大きい場合、前記インバータ34に力行用の駆動信号を送り、発電機/モータ33をモータとして駆動してモータトルクを発生させ、該モータトルクを、変速機22に伝達し、更に車輪WLB、WRBに伝達し、車輪WLB、WRBを回転させてハイブリッド型車両を走行させる。
【0074】
また、バッテリ残量SOCが閾値ε1以下である場合、車両制御部60のエンジン駆動処理手段は、エンジン駆動処理を行い、エンジン12を駆動してエンジントルクを発生させ、該エンジントルクを、変速機22に伝達し、更に車輪WLB、WRBに伝達し、車輪WLB、WRBを回転させてハイブリッド型車両を走行させる。
【0075】
そして、ハイブリッド型車両の走行中に、アクセルオンからアクセルオフに移行すると、前記エンジン駆動処理手段は、エンジン12を非駆動状態にし、前記電動機械駆動処理手段は、インバータ34に回生用の駆動信号を送り、発電機/モータ33によって電力を発生させ、バッテリ35を充電する。
【0076】
次に、直進安定キャンバ要否判定処理においてキャンバ付与条件が成立し、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態で車両を走行させているときの前記ニュートラル走行処理手段の動作について、図8を援用して説明する。
【0077】
すなわち、該ニュートラル走行処理手段の前記ニュートラル走行設定条件成立判断処理手段は、車両を加速するための操作部としての、かつ、加速操作部材としてのアクセルペダル14の踏込量を読み込み、ニュートラル走行設定条件が成立したかどうかを、アクセルオンからアクセルオフに移行し、かつ、バッテリ残量SOCが閾値ε2より大きいかどうかによって判断する(ステップS11−1、S11−2)。
【0078】
そして、アクセルオンからアクセルオフに移行し、かつ、バッテリ残量SOCが閾値ε2より大きく、前記ニュートラル走行設定条件が成立した場合に、前記ニュートラル走行処理手段のニュートラル走行設定処理手段は、ハイブリッド型車両にニュートラル走行を設定し、前記ソレノイド26を駆動し、前記油圧サーボから油を排出することによって前記クラッチCを解放する。その結果、駆動ユニット30と各車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達が遮断される。アクセルオンからアクセルオフに移行していないか、又はバッテリ残量SOCが閾値ε2以下である場合、前記ニュートラル走行設定条件は成立しないので、駆動ユニット30と各車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達は遮断されない。なお、この場合、閾値ε2は閾値ε1と等しくされるが、閾値ε1と異ならせることができる。
【0079】
続いて、前記ニュートラル走行処理手段のニュートラル走行解除条件成立判断処理手段は、アクセルペダル14の踏込量を読み込み、ニュートラル走行解除条件が成立したかどうかを、アクセルオフからアクセルオンに移行したかどうかによって判断する(ステップS11−4、S11−5)。
【0080】
本実施の形態においては、ニュートラル走行解除条件が成立したかどうかを、アクセルオフからアクセルオンに移行したかどうかによって判断するようになっているが、第1の実施の形態と同様に、ニュートラル走行解除条件が成立したかどうかを、運転者によって、車両を制動するための操作部としての、かつ、制動操作部材としてのブレーキペダル15が踏み込まれたかどうかによって判断したり、運転者によって、図示されない変速指示部材としてのシフトレバーが操作されたかどうかによって判断したりすることもできる。さらに、アクセルオフからアクセルオンに移行したかどうかによって第1の条件が成立したかどうかを判断し、運転者によってブレーキペダル15が踏み込まれたかどうかによって第2の条件が成立したかどうかを判断し、運転者によってシフトレバーが操作されたかどうかによって第3の条件が成立したかどうかを判断し、第1〜第3の条件のうちの少なくとも一つの条件が成立した場合にニュートラル走行解除条件が成立したと判断することもできる。
【0081】
そして、前記ニュートラル走行解除条件が成立した場合に、前記ニュートラル走行処理手段のニュートラル走行解除処理手段は、ニュートラル走行を解除し、ソレノイド26を駆動して前記クラッチCを係合させる(ステップS11−6)。
【0082】
このように、本実施の形態においては、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態でハイブリッド型車両を走行させているときに、ニュートラル走行設定条件が成立した場合に、駆動ユニット30と各車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達が遮断されるので、駆動ユニット30における摩擦、イナーシャ等による消費エネルギーを小さくすることができ、ハイブリッド型車両のエネルギー効率を高くすることができる。
【0083】
この場合、駆動ユニット30と各車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達が遮断されるので、エンジンブレーキは掛からないが、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されるので、エンジンブレーキを利用することなく、走行安定性を高くすることができる。
【0084】
次に、エンジン、発電機及びモータから成る駆動ユニットを使用するハイブリッド型車両に適用した本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1、第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0085】
図11は本発明の第3の実施の形態におけるニュートラル走行処理手段の動作を説明するための概念図、図12は本発明の第3の実施の形態における駆動ユニットの動作を説明するための速度線図である。
【0086】
図において、84は駆動ユニットであり、該駆動ユニット84は、第1の駆動源としてのエンジン12、第2の駆動源としての、かつ、第1の電動機械としての発電機(G)81、第3の駆動源としての、かつ、第2の電動機械としてのモータ(M)82、並びにエンジン12、発電機81及びモータ82と連結され、エンジン12で発生させられたエンジントルクを分割して発電機81及びモータ82に伝達する動力分割装置としての、かつ、差動装置としてのプラネタリギヤユニット83を備える。そして、前記モータ82と車輪WLB、WRBとが差動装置18を介して連結される。この場合、プロペラシャフト17はモータ82の出力軸として機能する。
【0087】
また、86は発電機81を駆動するためのインバータ、87はモータ82を駆動するためのインバータ、35はバッテリ、37はバッテリ残量SOCを検出するバッテリ残量検出部である。
【0088】
そして、60は車両制御部であり、該車両制御部60の前記電動機械駆動処理手段は、バッテリ残量検出部37によって検出されたバッテリ残量SOCを読み込み、バッテリ残量SOCが閾値ε1より大きい場合、前記インバータ87に力行用の駆動信号を送り、モータ82を駆動してモータトルクを発生させ、該モータトルクをプロペラシャフト17に出力トルクとして出力する。該出力トルクは、車輪WLB、WRBに伝達され、車輪WLB、WRBを回転させてハイブリッド型車両を走行させる。
【0089】
また、バッテリ残量SOCが閾値ε1以下である場合、車両制御部60の前記エンジン駆動処理手段は、エンジン12を駆動してエンジントルクを発生させ、前記電動機械駆動処理手段は、インバータ86に駆動信号を送り、発電機81を駆動して発電機トルクを前記エンジントルクに対する反力として発生させる。その結果、前記プロペラシャフト17に出力トルクが出力され、該出力トルクは、車輪WLB、WRBに伝達され、車輪WLB、WRBを回転させてハイブリッド型車両を走行させる。
【0090】
そして、ハイブリッド型車両を走行させているときに、アクセルオンからアクセルオフに移行すると、前記エンジン駆動処理手段はエンジン12を非駆動状態にするとともに、前記電動機械駆動処理手段は、インバータ86に回生用の駆動信号を送り、発電機81を駆動して、発電機トルクを、車輪WLB、WRBを介して入力されるトルクに対する反力として発生させる。このとき、エンジン12、発電機81及びモータ82の各回転速度は、図12において線L1で示されているように、いずれも正の値を採る。
【0091】
その結果、モータ82が車輪WLB、WRBの回転を受けて回生電流を発生させ、発電機81が発電を行い、発電電流を発生させる。そして、前記回生電流及び発電電流がバッテリ35に送られ、バッテリ35が充電される。
【0092】
次に、直進安定キャンバ要否判定処理においてキャンバ付与条件が成立し、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態でハイブリッド型車両を走行させているときの前記ニュートラル走行処理手段の動作について、図8を援用して説明する。
【0093】
すなわち、前記ニュートラル走行処理手段の前記ニュートラル走行設定条件成立判断処理手段は、操作者である運転者による、車両を加速するための操作部としての、かつ、加速操作部材としてのアクセルペダル14の踏込量を読み込み、ニュートラル走行設定条件が成立したかどうかを、アクセルオンからアクセルオフに移行し、かつ、バッテリ残量SOCが閾値ε1より大きいかどうかによって判断する(ステップS11−1、S11−2)。
【0094】
そして、アクセルオンからアクセルオフに移行し、かつ、バッテリ残量SOCが閾値ε2より大きく、前記ニュートラル走行設定条件が成立した場合に、前記ニュートラル走行処理手段のニュートラル走行設定処理手段は、ハイブリッド型車両にニュートラル走行を設定し、エンジン12を非駆動状態にするとともに、各インバータ86、87に駆動信号を送らず、発電機81及びモータ82を非駆動状態にする。その結果、駆動ユニット84と車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達が遮断される。このとき、図12において線L2で示されているように、エンジン12の回転速度は零(0)になり、発電機81の回転速度は負の値を採り、モータ82の回転速度は正の値を採る。
【0095】
また、アクセルオンからアクセルオフに移行していないか、又はバッテリ残量SOCが閾値ε2以下である場合、前記ニュートラル走行設定条件が成立しないので、駆動ユニット84と車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達は遮断されない。なお、この場合、閾値ε2は閾値ε1と等しくされるが、閾値ε1と異ならせることができる。
【0096】
続いて、前記ニュートラル走行処理手段のニュートラル走行解除条件成立判断処理手段は、アクセルペダル14の踏込量を読み込み、ニュートラル走行解除条件が成立したかどうかを、アクセルオフからアクセルオンに移行したかどうかによって判断する(ステップS11−4、S11−5)。
【0097】
本実施の形態においては、ニュートラル走行解除条件が成立したかどうかを、アクセルオフからアクセルオンに移行したかどうかによって判断するようになっているが、第1の実施の形態と同様に、ニュートラル走行解除条件が成立したかどうかを、運転者によって、車両を制動するための操作部としての、かつ、制動操作部材としてのブレーキペダル15が踏み込まれたかどうかによって判断したり、運転者によって、図示されない変速指示部材としてのシフトレバーが操作されたかどうかによって判断したりすることもできる。さらに、アクセルオフからアクセルオンに移行したかどうかによって第1の条件が成立したかどうかを判断し、運転者によってブレーキペダル15が踏み込まれたかどうかによって第2の条件が成立したかどうかを判断し、運転者によってシフトレバーが操作されたかどうかによって第3の条件が成立したかどうかを判断し、第1〜第3の条件のうちの少なくとも一つの条件が成立したときにニュートラル走行解除条件が成立したと判断することもできる。
【0098】
そして、前記ニュートラル走行解除条件が成立した場合に、前記ニュートラル走行処理手段のニュートラル走行解除処理手段は、ニュートラル走行を解除し、ハイブリッド型車両の状態に応じて、エンジン12を駆動するとともに、各インバータ86、87に駆動信号を送り、発電機81及びモータ82を駆動する(ステップS11−6)。
【0099】
このように、本実施の形態においては、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態でハイブリッド型車両を走行させているときに、ニュートラル走行設定条件が成立した場合に、駆動ユニット84と各車輪WLB、WRBとの間のトルクの伝達が遮断されるので、駆動ユニット84における摩擦、イナーシャ等による消費エネルギーを小さくすることができ、ハイブリッド型車両のエネルギー効率を高くすることができる。
【0100】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0101】
11 ボディ
12 エンジン
16 制御部
31、32 アクチュエータ
60 車両制御部
WLF、WRF、WLB、WRB 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディと、
該ボディに対して回転自在に配設された複数の車輪と、
該各車輪のうちの所定の車輪に配設され、車輪にキャンバを付与するためのキャンバ可変機構と、
車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方に基づいて、あらかじめ設定されたキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断するキャンバ付与条件成立判断処理手段と、
該キャンバ付与条件成立判断処理手段によって、キャンバ付与条件が成立したと判断された場合に、前記キャンバ可変機構を作動させて前記所定の車輪にキャンバを付与するキャンバ付与処理手段と、
該キャンバ付与処理手段によって前記所定の車輪にキャンバが付与された場合に、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方に基づいて、ニュートラル走行設定条件が成立したかどうかを判断するニュートラル走行設定条件成立判断処理手段と、
該ニュートラル走行設定条件成立判断処理手段によって、ニュートラル走行設定条件が成立したと判断された場合に、車両にニュートラル走行を設定し、駆動源と前記各車輪のうちの駆動輪との間のトルクの伝達を遮断するニュートラル走行設定処理手段とを有することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、車両の直進走行時にキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断し、
前記キャンバ付与処理手段は、車両の直進走行時に前記所定の車輪にキャンバを付与する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記ニュートラル走行設定処理手段は、前記駆動源と前記駆動輪との間に配設された係合要素を解放することによってトルクの伝達を遮断する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記駆動源は電動機械であり、
前記ニュートラル走行設定処理手段は、前記電動機械を非駆動状態にすることによってトルクの伝達を遮断する請求項1に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−173509(P2011−173509A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39011(P2010−39011)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】