説明

ハイブリッド車およびその制御方法

【課題】アクセル開度が所定開度未満の状態から所定開度以上の状態に変更されて排気の吸気系への再循環であるEGRを停止するときに内燃機関の排気を浄化する浄化触媒が過熱されるのをより抑制する。
【解決手段】アクセル開度が所定開度未満の状態から所定開度以上の状態に変更されたときには、エンジンから要求パワーP2が出力されるまでは燃費優先時動作ラインを用いてEGRを伴ってエンジンを運転し(ポイントA→ポイントB)、エンジンから要求パワーP2が出力された以降はエンジンが高トルク要求時動作ライン上で運転されるまでエンジンから要求パワーP2が出力される状態を保持してエンジンの回転数NeおよびトルクTeを高トルク要求時動作ライン上に向けて変更する(ポイントB→ポイントC)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車としては、排気の吸気側への供給(EGR)が可能なエンジンと、動力を入出力する第1のモータと、エンジンと第1のモータと車軸とに接続された遊星歯車機構と、車軸に動力を入出力する第2のモータと、第1のモータおよび第2のモータと電力をやりとりするバッテリと、を備え、車速に対してエンジンに要求されるパワーが小さいときにはEGRを伴ってエンジンを運転し、車速に対してエンジンに要求されるパワーが大きいときにはEGRを伴わずにエンジンを運転するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車では、EGRを伴わずにエンジンを運転するときにはエンジンの回転数およびトルクの関係である燃費優先動作ライン上でエンジンを運転し、EGRを伴ってエンジンを運転するときには燃費優先動作ラインに比して回転数に対するトルクが小さい傾向のEGR動作ライン上でエンジンを運転することにより、車両のエネルギ効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−360672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハイブリッド車では、EGRを伴ってエンジンを運転しているときに操作者によってアクセルペダルが踏み込まれてEGRを停止する場合には、エンジンの排気を浄化する浄化触媒が過熱状態になるおそれがある。操作者によってアクセルペダルが踏み込まれたときにはエンジンから走行用に出力されるパワーが大きくなって排気の温度が上昇し、EGRを伴わずにエンジンを運転するときにはEGRを伴ってエンジンを運転するときに比して排気の温度が高くなるため、アクセルペダルが踏み込まれたときに直ちにEGRを停止してエンジンを燃費優先動作ライン上で運転すると、浄化触媒の温度が上昇してしまう。
【0005】
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、アクセル開度が所定開度未満の状態から所定開度以上の状態に変更されて排気の吸気系への再循環を停止するときに内燃機関の排気を浄化する浄化触媒が過熱されるのをより抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド車は、
排気を吸気系に再循環する排気再循環装置と排気を浄化する浄化触媒を有する排気浄化装置とが取り付けられた内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続されて該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備えるハイブリッド車であって、
アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
前記検出されたアクセル開度が大きいほど大きくなる傾向に前記駆動軸に出力すべき要求トルクを設定する要求トルク設定手段と、
前記設定された要求トルクを前記駆動軸に出力するのに必要なパワーと前記蓄電手段を充放電するためのパワーとの和のパワーとして前記内燃機関から出力すべき要求パワーを設定する要求パワー設定手段と、
前記検出されたアクセル開度が所定開度未満の状態で継続されているときには前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴った状態で前記内燃機関を運転するために該内燃機関の回転数とトルクとに課される制約として予め設定された第1の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力されると共に前記設定された要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記検出されたアクセル開度が前記所定開度以上の状態で継続されているときには前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わない状態で前記内燃機関を運転するための制約として前記第1の動作ラインよりトルクが大きくなるよう予め設定された第2の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わないで前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力されると共に前記設定された要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記検出されたアクセル開度が前記所定開度未満の状態から前記所定開度以上の状態に変更されたときには、前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力されるまでは前記第1の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って前記設定された要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力された以降は前記第2の動作ライン上で前記内燃機関が運転されるまで該内燃機関から前記設定された要求パワーが出力される状態を保持して前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環の有無に拘わらずに前記設定された要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド車では、アクセル開度が大きいほど大きくなる傾向の駆動軸に出力すべき要求トルクを駆動軸に出力するのに必要なパワーと蓄電手段を充放電するためのパワーとの和のパワーとして内燃機関から出力すべき要求パワーを設定し、アクセル開度が所定開度未満の状態で継続されているときには排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴った状態で内燃機関を運転するために内燃機関の回転数とトルクとに課される制約として予め設定された第1の動作ラインを用いて排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って内燃機関から要求パワーが出力されると共に要求トルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、アクセル開度が所定開度以上の状態で継続されているときには排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わない状態で内燃機関を運転するための制約として第1の動作ラインよりトルクが大きくなるよう予め設定された第2の動作ラインを用いて排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わないで内燃機関から要求パワーが出力されると共に要求トルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、アクセル開度が所定開度未満の状態から所定開度以上の状態に変更されたときには、内燃機関から要求パワーが出力されるまでは第1の動作ラインを用いて排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って要求トルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、内燃機関から要求パワーが出力された以降は第2の動作ライン上で内燃機関が運転されるまで内燃機関から要求パワーが出力される状態を保持して排気再循環装置による排気の吸気系への再循環の有無に拘わらずに要求トルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する。これにより、アクセル開度が所定開度未満の状態から所定開度以上の状態に変更されたときに、内燃機関から出力されるパワーに拘わらず直ちに第2の動作ライン上で内燃機関を運転するものに比して排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って内燃機関を運転する時間をより長くすることができ、内燃機関の浄化触媒が過熱されるのを抑制することができる。なお、「3軸式動力入出力手段」としては、シングルピニオン式またはダブルピニオン式の遊星歯車機構やデファレンシャルギヤなどが含まれる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド車において、前記制御手段は、前記アクセル開度が前記所定開度未満の状態から前記所定開度以上の状態に変更されたときに前記浄化触媒の温度が予め定められた所定温度未満のときには、前記内燃機関から出力されるパワーに拘わらず前記第2の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わないで前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、浄化触媒の温度が所定温度未満のときには、より迅速に内燃機関を第2の動作ライン上で運転することができる。
【0010】
また、本発明のハイブリッド車において、前記制御手段は、前記アクセル開度が前記所定開度未満の状態から前記所定開度以上の状態に変更されたときに前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力されるまでは、前記第1の動作ラインを用いて前記内燃機関から前記設定された要求パワーに緩変化処理を施して得られるパワーが出力されるよう制御する手段である、ものとすることもできるし、前記アクセル開度が前記所定開度未満の状態から前記所定開度以上の状態に変更されたときに前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力された以降は、前記第2の動作ライン上で前記内燃機関が運転されるまで前記第2の動作ラインに前記設定された要求パワーを適用して得られる回転数に緩変化処理を施した回転数で前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力されるよう制御する手段である、ものとすることもできる。
【0011】
本発明のハイブリッド車の制御方法は、
排気を吸気系に再循環する排気再循環装置と排気を浄化する浄化触媒を有する排気浄化装置とが取り付けられた内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続されて該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
アクセル開度が大きいほど大きくなる傾向の前記駆動軸に出力すべき要求トルクを該駆動軸に出力するのに必要なパワーと前記蓄電手段を充放電するためのパワーとの和のパワーとして前記内燃機関から出力すべき要求パワーを設定し、
アクセル開度が所定開度未満の状態で継続されているときには前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴った状態で前記内燃機関を運転するために該内燃機関の回転数とトルクとに課される制約として予め設定された第1の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って前記内燃機関から前記設定した要求パワーが出力されると共に前記要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、アクセル開度が前記所定開度以上の状態で継続されているときには前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わない状態で前記内燃機関を運転するための制約として前記第1の動作ラインよりトルクが大きくなるよう予め設定された第2の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わないで前記内燃機関から前記設定した要求パワーが出力されると共に前記要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、アクセル開度が前記所定開度未満の状態から前記所定開度以上の状態に変更されたときには、前記内燃機関から前記設定した要求パワーが出力されるまでは前記第1の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って前記要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記内燃機関から前記設定した要求パワーが出力された以降は前記第2の動作ライン上で前記内燃機関が運転されるまで該内燃機関から前記設定した要求パワーが出力される状態を保持して前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環の有無に拘わらずに前記要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する、 ことを要旨とする。
【0012】
この本発明のハイブリッド車では、アクセル開度が大きいほど大きくなる傾向の駆動軸に出力すべき要求トルクを駆動軸に出力するのに必要なパワーと蓄電手段を充放電するためのパワーとの和のパワーとして内燃機関から出力すべき要求パワーを設定し、アクセル開度が所定開度未満の状態で継続されているときには排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴った状態で内燃機関を運転するために内燃機関の回転数とトルクとに課される制約として予め設定された第1の動作ラインを用いて排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って内燃機関から要求パワーが出力されると共に要求トルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、アクセル開度が所定開度以上の状態で継続されているときには排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わない状態で内燃機関を運転するための制約として第1の動作ラインよりトルクが大きくなるよう予め設定された第2の動作ラインを用いて排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わないで内燃機関から要求パワーが出力されると共に要求トルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、アクセル開度が所定開度未満の状態から所定開度以上の状態に変更されたときには、内燃機関から要求パワーが出力されるまでは第1の動作ラインを用いて排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って要求トルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、内燃機関から要求パワーが出力された以降は第2の動作ライン上で内燃機関が運転されるまで内燃機関から要求パワーが出力される状態を保持して排気再循環装置による排気の吸気系への再循環の有無に拘わらずに要求トルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する。これにより、アクセル開度が所定開度未満の状態から所定開度以上の状態に変更されたときに、内燃機関から出力されるパワーに拘わらず直ちに第2の動作ライン上で内燃機関を運転するものに比して排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って内燃機関を運転する時間をより長くすることができ、内燃機関の浄化触媒が過熱されるのを抑制することができる。なお、「3軸式動力入出力手段」としては、シングルピニオン式またはダブルピニオン式の遊星歯車機構やデファレンシャルギヤなどが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図6】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図7】動作ライン変更時設定処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態から所定開度Aref以上の状態に変更されたときのエンジン22の目標運転ポイントの変化の様子の一例を示す説明図である。
【図9】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0016】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)134aを有する浄化装置134を介して外気へ排出されると共にEGR(Exhaust Gas Recirculation)システム160を介して吸気側に供給される。EGRシステム160は、浄化装置134の後段に接続されて排気を吸気側のサージタンクに供給するためのEGR管162と、EGR管162に配置されステッピングモータ163により駆動されるEGRバルブ164とを備え、EGRバルブ164の開度の調整により、不燃焼ガスとしての排気を供給量を調整して吸気側に供給する。エンジン22は、こうして空気と排気とガソリンとの混合気を燃焼室に吸引することができるようになっている。以下、エンジン22の排気を吸気側に供給することをEGRという。
【0017】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室内に取り付けられた図示しない圧力センサからの筒内圧力,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,浄化装置134に取り付けられた触媒温度センサ134bからの触媒温度Tc,空燃比センサ135aからの空燃比,酸素センサ135bからの酸素信号,EGRバルブ164の開度を検出するEGRバルブ開度センサ165からのEGRバルブ開度EVなどが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号やスロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号,イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号,吸気バルブ128の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号,EGRバルブ164の開度を調整するステッピングモータ163への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。また、EGRバルブ開度EVは、0%のときにEGRバルブ164が全閉であることを示し、値が大きいほどエンジン22の吸気側に供給される排気が多くなる。
【0018】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0019】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0020】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0021】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0022】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0023】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図3はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0024】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50を充放電すべき充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)など制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の充放電要求パワーPb*は、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした
【0025】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPedとを設定し(ステップS110)、設定した要求パワーPedに基づいてエンジン22の目標パワーPe*を次式(1)により設定する(ステップS120)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図4に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求トルクTr*は、図示するように、アクセル開度Accが大きいほど大きい傾向に且つ車速Vが大きいほど小さい傾向に設定される。また、要求パワーPedは、設定された要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに出力するのに必要なパワーとバッテリ50を充放電するためのパワーとの和のパワーとして、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものから充放電要求パワーPb*を減じて計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めることができる。また、式(1)は、エンジン22の目標パワーPe*を要求パワーPedに向けて緩変化させるためのなまし処理としての関係式であり、式(1)中、「k1」はなまし係数である。
【0026】
Pe*=(1-k1)・(前回Pe*)+k1・Ped (1)
【0027】
次に、後述する動作ライン変更時設定処理中に値1が設定されると共に動作ライン変更時設定処理中でないときに値0が設定される変更時フラグFの値を調べ(ステップS130)、変更時フラグFが値0のときには、動作ライン変更時設定処理中ではないと判断し、アクセル開度Accを所定開度Arefと比較する(ステップS140)。ここで、所定開度Arefは、運転者によって走行用に大きなトルクの出力が要求されている高トルク要求時であるか否かを判定するために用いられるものであり、例えば50%や60%などを用いることができる。アクセル開度Accが所定開度Aref未満のときには、高トルク要求時ではないと判断し、燃費優先時動作ラインと目標パワーPe*とに基づいてエンジン22を運転すべき目標運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると共に(ステップS150)、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいて目標EGRバルブ開度EV*を設定する(ステップS160)。高トルク要求時でないときの目標回転数Ne*と目標トルクTe*との設定は、エンジン22の排気を吸気側に供給するEGRを伴ってエンジン22を効率よく動作させるための燃費優先時動作ラインと目標パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図5に示す。なお、図5には、実線に高トルク要求時でないときに用いる燃費優先時動作ラインを示し、一点鎖線に高トルク要求時に用いる高トルク要求時動作ラインを示している。図示するように、高トルク要求時でないときには、燃費優先時動作ライン(実線)と目標パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点によりエンジン22の目標運転ポイントが設定され、図5の例では、目標回転数Ne*として値N1が設定されると共に目標トルクTe*として値T1が設定される。また、目標EGRバルブ開度EV*は、エンジン22が効率よく運転されるように目標回転数Ne*および目標トルクTe*と目標EGRバルブ開度EV*との関係として予め定められた図示しないマップに対して目標回転数Ne*および目標トルクTe*を適用することにより導出して設定するものとした。
【0028】
続いて、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρ(サンギヤ31の歯数/リングギヤ32の歯数)と減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて次式(2)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とエンジン22の目標トルクTe*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいて式(3)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算し(ステップS210)、要求トルクTr*に設定したトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2のトルク指令Tm2*を式(4)により計算する(ステップS220)。ここで、式(2)および式(4)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図6に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(2)および式(4)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(3)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(3)中、右辺第2項の「kp」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「ki」は積分項のゲインである。
【0029】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (2)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+kp(Nm1*-Nm1)+ki∫(Nm1*-Nm1)dt (3)
Tm2*=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (4)
【0030】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,目標EGRバルブ開度EV*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*と目標EGRバルブ開度EV*とについてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS230)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*および目標トルクTe*と目標EGRバルブ開度EV*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されると共にEGRバルブ開度EVが目標EGRバルブ開度EV*となるようにスロットルバルブ124の開度を制御する吸入空気量制御や燃料噴射弁126からの燃料噴射量を制御する燃料噴射制御,点火プラグ130の点火時期を制御する点火制御,吸気バルブ128の開閉タイミングを制御する吸気バルブタイミング可変制御,EGRバルブ164の開度を制御するEGR制御などを行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、運転手によって走行用に大きなトルクの出力が要求されている高トルク要求時でないときには、排気を吸気側に再循環するEGRを伴ってエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0031】
ステップS130,S140で変更時フラグFが値0であってアクセル開度Accが所定開度Aref以上のときには、動作ライン変更時設定処理中ではないと共に運転者によって走行用に大きなトルクの出力が要求される高トルク要求時であると判断し、前回本ルーチンが実行されたときにステップS100で入力されたアクセル開度(前回Acc)を所定開度Arefと比較する(ステップS170)。そして、前回のアクセル開度(前回Acc)が所定開度Aref以上のときには、アクセル開度Accが所定開度Aref以上の状態で継続されていると判断し、高トルク要求時動作ラインと目標パワーPe*とに基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると共に(ステップS180)、エンジン22の排気を吸気側に供給するEGRが行なわれないよう目標EGRバルブ開度EV*に値0を設定し(ステップS190)、設定したエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を用いて上述した処理によりモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定し(ステップS210,S220)、目標回転数Ne*や目標トルクTe*,目標EGRバルブ開度EV*についてはエンジンECU24に送信すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS230)、本ルーチンを終了する。高トルク要求時の目標回転数Ne*と目標トルクTe*との設定は、EGRを伴わずにエンジン22から大きなトルクを出力するための高トルク要求時動作ラインと目標パワーPe*とに基づいて行なわれる。高トルク要求時動作ラインは、図5中一点鎖線に示すように、燃費優先時動作ライン(実線)に比して回転数Neに対するトルクTeが大きい傾向に定められており、図5の例では、目標回転数Ne*として値N2が設定されると共に目標トルクTe*として値T2が設定される。なお、実施例では、高トルク要求時動作ラインを用いてエンジン22が運転されるときには、燃費優先時動作ラインを用いてエンジン22が運転されるときに比して吸気バルブ128の開閉タイミングが早くなるようにエンジンECU24によって吸気バルブタイミング可変制御が行なわれるものとした。こうした制御により、高トルク要求時には、EGRを伴わずにエンジン22から比較的大きなトルクを出力して走行することができる。
【0032】
一方、アクセル開度Accが所定開度Aref以上であって前回のアクセル開度Accが所定開度Aref未満のときには(ステップS140,S170)、アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態から所定開度Aref以上の状態に変更されたと判断し、エンジン22の回転数NeおよびトルクTeからなる運転ポイントを燃費優先時動作ライン上から高トルク要求時動作ライン上に変更するための動作ライン変更時設定処理を実行し(ステップS200)、この動作ライン変更時設定処理で設定されるエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を用いて上述のステップS210〜S230の処理を実行して駆動制御ルーチンを終了する。動作ライン変更時設定処理の一例を図7に示し、アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態から所定開度Aref以上の状態に変更されたときのエンジン22の目標運転ポイントの変化の様子の一例を図8に示す。以下、動作ライン変更時設定処理について説明する。
【0033】
動作ライン変更時設定処理では、まず、エンジン22の目標パワーPe*が要求パワーPed近傍であるか否かを判定する(ステップS300)。ここで、目標パワーPe*が要求パワーPed近傍であるか否かの判定は、例えば、目標パワーPe*と要求パワーPedとの差が予め定められた所定値未満であるか否かを判定することにより行なうことができる。いまは、アクセル開度Accが所定開度Aref未満から所定開度Aref以上に変更されたときを考えているから、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求される要求トルクTr*やこの要求トルクTr*に基づくエンジン22の要求パワーPedは前回に設定された値より大きな値が設定され(図8中、値P1から値P2)、エンジン22の目標パワーPe*にはこの要求パワーPedに向けて徐々に大きくなる値が設定される。エンジン22の目標パワーPe*が要求パワーPed近傍でないときには、エンジン22から未だ要求パワーPedは出力されていないと判断し、図3の駆動制御ルーチンのステップS150,S160の処理と同様に、排気を吸気側に再循環するEGRを伴って燃費時優先動作ライン上の運転ポイントでエンジン22が運転されるようにエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*と目標EGRバルブ開度EV*とを設定すると共に(ステップS310,S320)、変更時フラグFに値1を設定して(ステップS330)、動作ライン変更時設定処理を終了する。このようにエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定することにより、エンジン22の目標パワーPe*が要求パワーPedに向けて徐々に大きくなる間は、排気の吸気系への再循環であるEGRを伴って燃費優先時動作ライン上でエンジン22が運転されることになる(図8中、ポイントA→ポイントB)。
【0034】
そして、EGRを伴って燃費優先時動作ライン上でエンジン22が運転されているときにエンジン22の目標パワーPe*が徐々に大きくなって目標パワーPe*が要求パワーPed近傍に至ったときには(ステップS300)、エンジン22から要求パワーPedが出力されていると判断し、高トルク要求時動作ラインとエンジン22の要求パワーPedとを用いて動作ライン変更後のエンジン22の回転数およびトルク(図8中、ポイントC)としての変更後回転数Netgtおよび変更後トルクTetgtを設定し(ステップS330)、設定した変更後回転数Netgtに基づいてエンジン22の目標回転数Ne*を次式(5)により設定すると共に設定した目標回転数Ne*でエンジン22の目標パワーPe*を除することによりエンジン22の目標トルクTe*を設定し(ステップS340)、排気の吸気側への供給が停止されるよう目標EGRバルブ開度EV*に値0を設定する(ステップS350)。式(5)は、エンジン22の目標回転数Ne*を変更後回転数Netgtに向けて緩変化させるためのなまし処理としての関係式であり、式(5)中、「k2」はなまし係数である。いまは、目標パワーPe*が要求パワーPed近傍に至ってエンジン22から要求パワーPedが出力されているときを考えているから、このように目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定することにより、エンジン22から要求パワーPedが出力される状態を保持してエンジン22の運転ポイントが高トルク要求時動作ライン上に向けて徐々に変化するようにエンジン22の目標運転ポイントを設定することができる(図8中、ポイントB→ポイントC)。こうしてエンジン22の目標運転ポイントを設定すると、目標回転数Ne*が変更後回転数Netgt近傍であるか否かを判定し(ステップS360)、エンジン22の目標回転数Ne*が変更後回転数Netgt近傍でないときには、エンジン22は未だ高トルク要求時動作ライン上で運転されていない即ちエンジン22の動作ラインの変更は完了していないと判断し、変更時フラグFに値1を設定して(ステップS370)、動作ライン変更時設定処理を終了する。ここで、目標回転数Ne*が変更後回転数Netgt近傍であるか否かの判定は、例えば、目標回転数Ne*と変更後回転数Netgtとの差が予め定められた所定値未満であるか否かを判定することにより行なうことができる。こうした制御により、エンジン22から要求パワーPedが出力された以降は、エンジン22から要求パワーPedが出力された状態を保持してエンジン22の運転ポイントを高トルク要求時動作ライン上に向けて徐々に変更することができる。
【0035】
Ne*=(1-k2)・前回Ne*+k2・Netgt (5)
【0036】
そして、エンジン22から要求パワーPedが出力される状態を保持してエンジン22の運転ポイントが高トルク要求時動作ライン上に向けて徐々に変更され、エンジン22の目標回転数Ne*が変更後回転数Netgtに至ったときには(ステップS360)、エンジン22が高トルク要求時動作ライン上で運転され、エンジン22の動作ラインの変更を完了したと判断し、変更時フラグFを値0にリセットして(ステップS370)、動作ライン変更時設定処理を終了する。このように動作ライン変更時設定処理が実行されると、図3の駆動制御ルーチンでは、アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態から所定開度Aref以上の状態に変更されて変更時フラグFに値1が設定されている間は、ステップS130で動作ライン変更時設定処理中であると判断して動作ライン変更時設定処理を実行する(ステップS200)。そして、エンジン22の運転ポイントが高トルク要求時動作ライン上に変更されて変更時フラグFが値0にリセットされると、ステップS130で動作ライン変更時設定処理中ではないと判断し、アクセル開度Accが所定開度Aref以上の状態が継続されていれば(ステップS140,S170)、排気の吸気側への再循環であるEGRを伴わずに高トルク要求時動作ラインを用いてエンジン22が運転されることになる(ステップS180,S190)。
【0037】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態から所定開度Aref以上の状態に変更されたときには、エンジン22から要求パワーPedが出力されるまでは燃費優先時動作ラインを用いてEGRを伴ってエンジン22を運転し、エンジン22から要求パワーPedが出力された以降はエンジン22が高トルク要求時動作ライン上で運転されるまでエンジン22から要求パワーPedが出力される状態を保持してエンジン22の運転ポイントを高トルク要求時動作ライン上に向けて変更するから、エンジン22の運転状態を変更するときに直ちにEGRを停止して高トルク要求時動作ラインを用いてエンジン22を運転するものに比してEGRを伴ってエンジン22を運転する時間をより長くすることができ、エンジン22の排気を浄化する浄化触媒134aが過熱されるのを抑制することができる。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態から所定開度Aref以上の状態に変更されたときには、常にエンジン22から要求パワーPedが出力されるまでは燃費優先時動作ラインを用いてEGRを伴ってエンジン22を運転するものとしたが、エンジン22の排気を浄化する浄化触媒134aの触媒温度Tcが過熱状態になるおそれがないと考えられる予め定められた所定温度Tref未満のときには、エンジン22から出力されるパワーに拘わらず直ちにEGRを停止して高トルク要求時動作ラインを用いてエンジン22を運転するものとしても構わない。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態から所定開度Aref以上の状態に変更されてエンジン22から要求パワーPedが出力された以降は、EGRが停止されるよう目標EGRバルブ開度EV*に値0を設定するものとしたが、エンジン22の運転ポイントが燃費優先時動作ライン上から高トルク要求時動作ライン上に移行されるのに伴って徐々に排気の吸気側への供給量を減少させるものとしてもよく、例えば、値0に向けて徐々に小さくなる値を目標EGRバルブ開度EV*に設定するものとしても構わない。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の目標パワーPe*が要求パワーPed近傍に至ったときに、エンジン22から要求パワーPedが出力されていると判断するものとしたが、エンジン22から出力されるパワーを推定または検出してエンジン22から要求パワーPedが出力されているか否かを判断するものとしてもよく、例えば、エンジン22の回転数NeとモータMG1のトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいてエンジン22から出力されていると推定される推定パワーPeestを次式(6)により演算すると共に演算した推定パワーPeestを要求パワーPedを比較することによりエンジン22から要求パワーPedが出力されているか否かを判定するものとしてもよい。
【0041】
Peest=-Ne・Tm1*・(1+ρ)/ρ (6)
【0042】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22に要求される要求パワーPedに対してなまし処理を施して目標パワーPe*を設定するものとしたが、要求パワーPedに対してレート処理を施して目標パワーPe*を設定するものとしてもよいし、要求パワーPedをそのまま目標パワーPe*に設定するものとしても構わない。ここで、要求パワーPedをそのまま目標パワーPe*に設定する場合には、動作ライン変更時設定処理ではエンジン22から出力されているパワーPeを推定または検出してエンジン22から要求パワーPedが出力されているか否かを判定すればよい。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態から所定開度Aref以上の状態に変更されてエンジン22から要求パワーPedが出力された以降は、要求パワーPedと高トルク要求時動作ラインとから得られる変更後目標回転数Netgtに対してなまし処理を施してエンジン22の目標回転数Ne*を設定すると共に設定した目標回転数Ne*で要求パワーPedを除することによりエンジン22の目標トルクTe*を設定するものとしたが、エンジン22から要求パワーPedが出力された以降は、エンジン22から要求パワーPedが出力されている状態を保持してエンジン22の運転ポイントが高トルク要求時動作ライン上に変更されるものとすればよく、変更後回転数Netgtに対してレート処理を施して目標回転数Ne*を設定するものとしたり、直ちに変更後回転数Netgtを目標回転数Ne*に設定するものとしてもよい。また、変更後トルクTetgtに基づいてエンジン22の目標トルクTe*を設定すると共に設定した目標トルクTe*で要求パワーPedを除することにより目標回転数Ne*を設定するものとしても構わない。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、アクセル開度Accが所定開度Aref以上の状態から所定開度Aref未満の状態に変更されたときには、直ちにEGRを伴って燃費優先時動作ラインを用いてエンジン22の目標運転ポイントを設定するものとしたが、高トルク要求時動作ライン上の運転ポイントから任意の運転ポイントを経由して燃費優先時動作ライン上の運転ポイントにエンジン22の運転ポイントが変更されるものとすればよい。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の燃料噴射制御について、その詳細な説明を省略したが、エンジン22の排気を浄化する浄化触媒134aの触媒温度Tcが予め定められた所定温度以上のときには、触媒温度Tcが所定温度未満のときに比してエンジン22への燃料噴射が増量されるように燃料噴射制御を実行するものとしてもよい。この場合、実施例のハイブリッド自動車20では、アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態から所定開度Aref以上の状態に変更されるときには、エンジン22から要求パワーPedが出力されるまでEGRを伴って燃費優先動作ライン上でエンジン22を運転することにより直ちにEGRを停止して高トルク要求時動作ライン上でエンジン22を運転するものに比してEGRを行なう時間を長くすることができるから、エンジン22への燃料噴射の増量に伴うエミッションの低下を抑制することができる。
【0046】
実施例のハイブリッド自動車20では、減速ギヤ35を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしたが、リングギヤ軸32aにモータMG2を直接取り付けるものとしてもよいし、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしても構わない。
【0047】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図8の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図9における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0048】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、列車などの自動車以外のハイブリッド車の形態としても構わない。さらに、こうしたハイブリッド車の制御方法の形態としてもよい。
【0049】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、EGRシステムと浄化触媒134aを有する浄化装置134とが取り付けられたエンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、アクセルペダルポジションセンサ84が「アクセル開度検出手段」に相当し、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定する図3の駆動制御ルーチンのステップS110の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求トルク設定手段」に相当し、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものからバッテリ50を充放電すべき充放電要求パワーPb*を減じて要求パワーPedを設定する図3の駆動制御ルーチンのステップS110の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求パワー設定手段」に相当し、アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態のときには排気を吸気側に再循環するEGRを伴って燃費優先時動作ラインを用いてエンジン22から要求パワーPedに基づく目標パワーPe*が出力されるようエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*と目標EGRバルブ開度EV*とを設定してエンジンECU24に送信すると共にエンジン22が目標運転ポイントで運転されて要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信し、アクセル開度Accが所定開度Aref以上の状態が継続されているときにはEGRを伴わずに高トルク要求時動作ラインを用いてエンジン22から要求パワーPedに基づく目標パワーPe*が出力されるようエンジン22の目標運転ポイントと目標EGRバルブ開度EV*とを設定してエンジンECU24に送信すると共にエンジン22が目標運転ポイントで運転されて要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信し、アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態から所定開度Aref以上の状態に変更されたときには、目標パワーPe*が要求パワーPed近傍に至るまではEGRを伴って燃費優先時動作ラインを用いてエンジン22から目標パワーPe*が出力されるようエンジン22の目標運転ポイントと目標EGRバルブ開度EV*とを設定してエンジンECU24に送信すると共にエンジン22が目標運転ポイントで運転されて要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2を設定してモータECU40に送信し、目標パワーPe*が要求パワーPed近傍に至った以降はエンジン22が高トルク要求時動作ライン上で運転されるまでエンジン22から要求パワーPedが出力されている状態を保持してEGRを停止してエンジン22の回転数NeとトルクTeとからなる運転ポイントが高トルク要求時動作ライン上に変更されるようエンジン22の目標運転ポイントを設定すると共にエンジン22が目標運転ポイントで運転されて要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2を設定してモータECU40に送信する図3の駆動制御ルーチンおよび図7の動作ライン変更時設定処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、目標回転数Ne*および目標トルクTe*と目標EGRバルブ開度EV*とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24とトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40とが「制御手段」に相当する。
【0050】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、排気を吸気系に再循環する排気再循環装置と排気を浄化する浄化触媒を有する排気浄化装置とが取り付けられた内燃機関であれば水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせたものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる作動作用を有するものなど、駆動軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、電力動力入出力手段や電動機と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「アクセル開度検出手段」としては、アクセルペダルポジションセンサ84に限定されるものではなく、アクセル開度を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「要求トルク設定手段」としては、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定するものに限定されるものではなく、アクセル開度Accだけに基づいて要求トルクを設定するものなど、アクセル開度が大きいほど大きくなる傾向に駆動軸に出力すべき要求トルクを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「要求パワー設定手段」としては、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものからバッテリ50を充放電すべき充放電要求パワーPb*を減じて要求パワーPedを設定するものに限定されるものではなく、設定された要求トルクを駆動軸に出力するのに必要なパワーと蓄電手段を充放電するためのパワーとして内燃機関から出力すべき要求パワーを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態のときには排気を吸気側に再循環するEGRを伴って燃費優先時動作ラインを用いてエンジン22から要求パワーPedに基づく目標パワーPe*が出力されると共に要求トルクTr*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御し、アクセル開度Accが所定開度Aref以上の状態が継続されているときにはEGRを伴わずに高トルク要求時動作ラインを用いてエンジン22から要求パワーPedに基づく目標パワーPe*が出力されると共に要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御し、アクセル開度Accが所定開度Aref未満の状態から所定開度Aref以上の状態に変更されたときには、目標パワーPe*が要求パワーPed近傍に至るまではEGRを伴って燃費優先時動作ラインを用いてエンジン22から目標パワーPe*が出力されると共に要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御し、目標パワーPe*が要求パワーPed近傍に至った以降はエンジン22が高トルク要求時動作ライン上で運転されるまでエンジン22から要求パワーPedが出力されている状態を保持してEGRを停止して要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するものに限定されるものではなく、アクセル開度が所定開度未満の状態で継続されているときには排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴った状態で内燃機関を運転するために内燃機関の回転数とトルクとに課される制約として予め設定された第1の動作ラインを用いて排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って内燃機関から要求パワーが出力されると共に要求トルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、アクセル開度が所定開度以上の状態で継続されているときには排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わない状態で内燃機関を運転するための制約として第1の動作ラインよりトルクが大きくなるよう予め設定された第2の動作ラインを用いて排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わないで内燃機関から要求パワーが出力されると共に要求トルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、アクセル開度が所定開度未満の状態から所定開度以上の状態に変更されたときには、内燃機関から要求パワーが出力されるまでは第1の動作ラインを用いて排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って要求トルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、内燃機関から要求パワーが出力された以降は第2の動作ライン上で内燃機関が運転されるまで内燃機関から要求パワーが出力される状態を保持して排気再循環装置による排気の吸気系への再循環の有無に拘わらずに要求トルクが駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0051】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0052】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ハイブリッド車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、134a 浄化触媒、134b 触媒温度センサ、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、152 EGR管、154 EGRバルブ、156 温度センサ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気を吸気系に再循環する排気再循環装置と排気を浄化する浄化触媒を有する排気浄化装置とが取り付けられた内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続されて該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備えるハイブリッド車であって、
アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
前記検出されたアクセル開度が大きいほど大きくなる傾向に前記駆動軸に出力すべき要求トルクを設定する要求トルク設定手段と、
前記設定された要求トルクを前記駆動軸に出力するのに必要なパワーと前記蓄電手段を充放電するためのパワーとの和のパワーとして前記内燃機関から出力すべき要求パワーを設定する要求パワー設定手段と、
前記検出されたアクセル開度が所定開度未満の状態で継続されているときには前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴った状態で前記内燃機関を運転するために該内燃機関の回転数とトルクとに課される制約として予め設定された第1の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力されると共に前記設定された要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記検出されたアクセル開度が前記所定開度以上の状態で継続されているときには前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わない状態で前記内燃機関を運転するための制約として前記第1の動作ラインよりトルクが大きくなるよう予め設定された第2の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わないで前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力されると共に前記設定された要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記検出されたアクセル開度が前記所定開度未満の状態から前記所定開度以上の状態に変更されたときには、前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力されるまでは前記第1の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って前記設定された要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力された以降は前記第2の動作ライン上で前記内燃機関が運転されるまで該内燃機関から前記設定された要求パワーが出力される状態を保持して前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環の有無に拘わらずに前記設定された要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車であって、
前記制御手段は、前記アクセル開度が前記所定開度未満の状態から前記所定開度以上の状態に変更されたときに前記浄化触媒の温度が予め定められた所定温度未満のときには、前記内燃機関から出力されるパワーに拘わらず前記第2の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わないで前記内燃機関が運転されると共に前記設定された要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド車であって、
前記制御手段は、前記アクセル開度が前記所定開度未満の状態から前記所定開度以上の状態に変更されたときに前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力されるまでは、前記第1の動作ラインを用いて前記内燃機関から前記設定された要求パワーに緩変化処理を施して得られるパワーが出力されるよう制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド車であって、
前記制御手段は、前記アクセル開度が前記所定開度未満の状態から前記所定開度以上の状態に変更されたときに前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力された以降は、前記第2の動作ライン上で前記内燃機関が運転されるまで前記第2の動作ラインに前記設定された要求パワーを適用して得られる回転数に緩変化処理を施した回転数で前記内燃機関から前記設定された要求パワーが出力されるよう制御する手段である、
ハイブリッド車。
【請求項5】
排気を吸気系に再循環する排気再循環装置と排気を浄化する浄化触媒を有する排気浄化装置とが取り付けられた内燃機関と、動力を入出力可能な発電機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続されて該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力する電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、を備えるハイブリッド車の制御方法であって、
アクセル開度が大きいほど大きくなる傾向の前記駆動軸に出力すべき要求トルクを該駆動軸に出力するのに必要なパワーと前記蓄電手段を充放電するためのパワーとの和のパワーとして前記内燃機関から出力すべき要求パワーを設定し、
アクセル開度が所定開度未満の状態で継続されているときには前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴った状態で前記内燃機関を運転するために該内燃機関の回転数とトルクとに課される制約として予め設定された第1の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って前記内燃機関から前記設定した要求パワーが出力されると共に前記要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、アクセル開度が前記所定開度以上の状態で継続されているときには前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わない状態で前記内燃機関を運転するための制約として前記第1の動作ラインよりトルクが大きくなるよう予め設定された第2の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴わないで前記内燃機関から前記設定した要求パワーが出力されると共に前記要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、アクセル開度が前記所定開度未満の状態から前記所定開度以上の状態に変更されたときには、前記内燃機関から前記設定した要求パワーが出力されるまでは前記第1の動作ラインを用いて前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環を伴って前記要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記内燃機関から前記設定した要求パワーが出力された以降は前記第2の動作ライン上で前記内燃機関が運転されるまで該内燃機関から前記設定した要求パワーが出力される状態を保持して前記排気再循環装置による排気の吸気系への再循環の有無に拘わらずに前記要求トルクが前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する、
ハイブリッド車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−88466(P2011−88466A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241341(P2009−241341)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】