説明

ハイブリッド車両用の自動変速機

【課題】ハイブリッド車両用自動変速機の、運転者の操作に対する追従性を向上させ、燃費を向上させる。
【解決手段】自動変速機1は、駆動ギヤG3a,G5aを軸支する第1駆動ギヤ軸4と入力軸2とを連結自在な第1クラッチC1と、駆動ギヤG2a,G4aを軸支する第2駆動ギヤ軸5と入力軸2とを連結自在な第2クラッチC2と、駆動ギヤG3a,G5aを第1駆動ギヤ軸4に連結自在な第1噛合機構SM1と、駆動ギヤG2a,G4aを第2駆動ギヤ軸5に連結自在な第2噛合機構SM2と、プラネタリギヤ機構PGの第3要素Raを変速機ケース7に固定自在なブレーキB1と、電動機MGを第1要素Saに連結する状態または電動機MGを第3要素Raに連結する状態に切換自在な切換機構8とを備える。第1要素Saと第1駆動ギヤ軸4とが連結され、第2要素Caと駆動ギヤG3aとが連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と電動機とを備えるハイブリッド車両用の自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関と電動機とを備えるハイブリッド車両用の自動変速機が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のものは、デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)を用いて、変速比順位で奇数番目の変速段で走行中の場合は、変速比順位で偶数番目の変速段の何れか1のギヤ列を用いて、電動機を適切な回転数で回転させて回生又はアシストを行い、変則比順位で偶数番目の変速段で走行中の場合は、変速比順位で奇数番目の変速段の何れか1のギヤ列を用いて、電動機を適切な回転数で回転させて回生又はアシストを行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3647399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の自動変速機は、例えば、急発進ができるように、発進時において大きな駆動力を出せるように発進段のギヤ列のギヤ比を設定すると、発進時の燃費が悪くなる。逆に、発進時において燃費が向上されるように発進段のギヤ列のギヤ比を設定すると、大きな駆動力が出し難くなり、運転者の操作に対する追従性(ドライバビリティ)が低下する。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、運転者の操作に対する追従性(ドライバビリティ)を向上させると共に、燃費を向上させることができる自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、内燃機関と電動機とを備えるハイブリッド車両用の自動変速機であって、前記内燃機関の動力が伝達される入力軸の回転を複数のギヤ列を介して複数段に変速して出力部材から出力するものにおいて、変速比順位で奇数番目の変速段を確立する各ギヤ列の駆動ギヤを軸支する第1駆動ギヤ軸と、変速比順位で偶数番目の変速段を確立する各ギヤ列の駆動ギヤを軸支する第2駆動ギヤ軸と、前記入力軸と前記第1駆動ギヤ軸とを解除自在に連結する第1クラッチと、前記入力軸と前記第2駆動ギヤ軸とを解除自在に連結する第2クラッチと、変速比順位で奇数番目の変速段を確立する各ギヤ列の駆動ギヤを第1駆動ギヤ軸に選択的に連結する第1噛合機構と、変速比順位で偶数番目の変速段を確立する各ギヤ列の駆動ギヤを第2駆動ギヤ軸に選択的に連結する第2噛合機構と、サンギヤとキャリアとリングギヤとの3つの要素を備えるプラネタリギヤ機構と、前記プラネタリギヤ機構の前記サンギヤ、キャリア、リングギヤからなる3つの要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素、第3要素として、前記第3要素を変速機ケースに解除自在に固定するブレーキと、前記電動機のロータを前記プラネタリギヤ機構の第1要素に接続する状態、前記電動機のロータを前記プラネタリギヤ機構の第3要素に接続する状態の何れかの状態に切換自在な切換機構とを備え、前記第1要素と前記第1駆動ギヤ軸とが連結され、前記第2要素と前記第1駆動ギヤ軸に軸支される何れか1つの駆動ギヤとが連結されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、切換機構により、電動機のロータをプラネタリギヤ機構の第1要素に連結する状態と、電動機のロータをプラネタリギヤ機構の第3要素に連結する状態とに切換自在とされている。
【0008】
これにより、切換機構を電動機のロータとプラネタリギヤ機構の第3要素とを連結する状態とし、第1クラッチを係合させて内燃機関の駆動力をプラネタリギヤ機構の第1要素に伝達させることにより、第3要素に伝達される電動機の駆動力と、第1要素に伝達される内燃機関の駆動力とを合成して第2要素から第2要素に連結される駆動ギヤを有するギヤ列を介して出力部材から出力させることができ、車両発進時の駆動力(トルク)を高めることができる。
【0009】
又、切換機構を電動機のロータとプラネタリギヤ機構の第1要素とを連結する状態とし、ブレーキで第3要素を変速機ケースに固定することにより、第1要素に伝達される内燃機関の回転速度をプラネタリギヤ機構のギヤ比(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)及び第2要素に連結する駆動ギヤを備えるギヤ列のギヤ比(従動ギヤの歯数/駆動ギヤの歯数)で設定される所定の出力速度で出力部材から出力させることができる。
【0010】
従って、プラネタリギヤ機構のギヤ比及び第2要素に連結する駆動ギヤを備えるギヤ列のギヤ比を燃費を重視して設定しておけば、運転状態に応じて上記2つのうち何れかを選択して車両を発進させることができ、運転者の操作に対する追従性(ドライバビリティ)を向上させると共に、燃費を向上させることができる
本発明においては、切換機構を、プラネタリギヤ機構の第1要素又は第3要素の何れの連結も断つ状態に切換自在に構成されることが好ましい。かかる構成によれば、電動機を完全に切り離すことができる。これにより、電動機を用いていない場合に、全ての変速段において、電動機を切り離すことができ、電動機のイナーシャ(慣性)による燃費の低下を防止することができる。
【0011】
又、電動機の故障を検知する故障検知機構を設け、故障検知機構が電動機の故障を検知した場合には、切換機構をプラネタリギヤ機構の第1要素又は第3要素の何れの連結も断つ状態に切り換えれば、故障した電動機の影響を受けることなく内燃機関による車両の走行が可能となる。
【0012】
本発明においては、切換機構を、切換スリーブと、直動アクチュエータにより切換スリーブ内を進退自在なロッドとで構成し、切換スリーブと電動機のロータとを連結し、切換スリーブに、径方向に貫通する第1と第2の2つの貫通孔が互いに切換スリーブの軸方向に間隔を存して設けられ、第1貫通孔に第1突出部材を内挿し、第2貫通孔に第2突出部材を内挿し、2つの貫通孔内には、突出部材を径方向内方へ付勢する弾性部材を夫々配置し、ロッドに次第に径方向外方へ拡径する拡径部を設けることにより第1と第2の2つのテーパ面を形成し、ロッドが直動アクチュエータにより前進又は後退され第1テーパ面が第1突出部材に接触することにより、第1突出部材が弾性部材の付勢力に抗して切換スリーブから径方向外方に突出し、第1突出部材がプラネタリギヤの第1要素に連結された第1凹部に係合して、切換機構が電動機のロータを第1要素に接続する状態となり、ロッドが直動アクチュエータにより後退又は前進され第2テーパ面が第2突出部材に接触することにより、第2突出部材が弾性部材の付勢力に抗して切換スリーブから径方向外方に突出し、第2突出部材がプラネタリギヤ機構の第3要素に連結された第2凹部に係合して、切換機構が電動機のロータを第3要素に接続する状態となるように、切換機構を構成することができる。
【0013】
又、本発明においては、切換機構を、切換スリーブと、直動アクチュエータにより軸方向に進退自在なロッドと、ロッドの進退運動を回転運動に切り換える円筒溝カムと、円筒溝カムに連結され第1と第2の2つの板カムが固定されるカム軸とを備え、切換スリーブと電動機のロータとを連結し、切換スリーブに、径方向に貫通する第1と第2の2つの貫通孔を互いに軸方向に間隔を存して設け、第1貫通孔に第1突出部材を内挿し、第2貫通孔に第2突出部材を内挿し、両貫通孔内に、突出部材を径方向内方へ付勢する弾性部材を配置し、第1カムが第1突出部材を弾性部材の付勢力に抗して突き出し、第1凹部に係合させて、切換機構が電動機のロータをプラネタリギヤ機構の第1要素に接続する状態となり、第2カムが第2突出部材を弾性部材の付勢力に抗して突き出し、第2凹部に係合させて、切換機構が電動機のロータをプラネタリギヤ機構の第3要素に接続する状態となるように、切換機構を構成することもできる。
【0014】
又、本発明においては、二次電池の充電率が所定値未満であり、内燃機関の駆動力を用いて車両を発進させる場合には、切換機構は前記電動機のロータをプラネタリギヤ機構の第3要素に接続する状態に切り換えられ、第1クラッチを係合して、内燃機関の駆動力をプラネタリギヤ機構の第1要素に伝達させると共に、逆転(後進方向の回転)する第3要素の回転を電動機で抑制して、第2要素及びこれに連結される駆動ギヤを備えるギヤ列を介して出力部材から動力を出力することが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、電動機で発電し二次電池に充電する回生を行いながら内燃機関の駆動力により発進することができる。
【0016】
又、本発明においては、車両速度が所定速度未満の低速走行状態であり、二次電池の充電率が所定値以上であって且つ外気温が所定温度以下の低温環境である場合には、切換機構は電動機のロータをプラネタリギヤ機構の第1要素に接続する状態に切り換えられることが好ましい。
【0017】
寒冷地等で外気温が所定温度以下の低温度環境のため暖機が十分でなく、且つ車両速度が所定速度未満の低速走行状態である場合には、運転者の意図に関わらず内燃機関が停止するエンジンストール(所謂エンスト)が発生する虞がある。この場合、上記の如く、切換機構により、電動機のロータをプラネタリギヤ機構の第1要素に接続する状態に切り換えれば、電動機と内燃機関とが第1要素及び第1クラッチを介して直結できるため、電動機の駆動力を用いてエンストの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の自動変速機の実施形態を示すスケルトン図。
【図2】実施形態の切換機構を示す説明図。
【図3】実施形態の切換機構の変更例を示す説明図。
【図4】実施形態の切換機構の変更例の作動を示す説明図。
【図5】実施形態のプラネタリギヤ機構の1速段における速度線図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図を参照して、本発明の自動変速機の実施形態を説明する。図1に示す自動変速機1は、エンジンからなる内燃機関ENGの動力が伝達される入力軸2と、図外のディファレンシャルギヤを介して駆動輪としての左右の前輪に動力を出力する出力ギヤからなる出力部材3と、変速比の異なる複数のギヤ列G2〜G5とを備える。
【0020】
又、自動変速機1は、変速比順位で奇数番目の各変速段のギヤ列G3,G5の駆動ギヤG3a,G5aを回転自在に軸支する第1駆動ギヤ軸4と、変速比順位で偶数番目の変速段のギヤ列G2,G4の駆動ギヤG2a,G4aを回転自在に軸支する第2駆動ギヤ軸5と、リバースギヤGRを回転自在に軸支するリバース軸6を備える。
【0021】
又、自動変速機1は、第1駆動ギヤ軸4に回転自在に軸支されたアイドル駆動ギヤGiaと、リバース軸6に固定されアイドル駆動ギヤGiaに噛合する第1アイドル従動ギヤGibと、第2駆動ギヤ軸5に固定された第2アイドル従動ギヤGicとで構成されるアイドルギヤ列Giを備える。
【0022】
第1駆動ギヤ軸4は入力軸2と同一軸線上に配置されており、第2駆動ギヤ軸5は第1駆動ギヤ軸4と平行に配置されている。入力軸2の回転は、第1クラッチC1を介して第1駆動ギヤ軸4に解除自在に伝達される。又、入力軸2の回転は、第2クラッチC2を介してアイドル駆動ギヤGiaに解除自在に伝達される。即ち、入力軸2の回転は、第2クラッチC2及びアイドルギヤ列Giを介して第2駆動ギヤ軸5に解除自在に伝達される。
【0023】
又、入力軸2と同軸上にプラネタリギヤ機構PGが配置されている。プラネタリギヤ機構PGは、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSa及びリングギヤRaに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に軸支するキャリアCaとからなるシングルピニオン型で構成される。
【0024】
プラネタリギヤ機構PGのサンギヤSa、キャリアCa、リングギヤRaからなる3つの要素を、図5に示す速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素、第3要素とすると、第1要素はサンギヤSa、第2要素はキャリアCa、第3要素はリングギヤRaとなる。
【0025】
第1要素たるサンギヤSaは、第1駆動ギヤ軸4に固定されている。第2要素たるキャリアCaは、3速ギヤ列G3の3速駆動ギヤG3aに連結されている。第3要素たるリングギヤRaは、ブレーキB1により変速機ケース7に解除自在に固定される。
【0026】
ブレーキB1は、正転(前進方向の回転)を許容し逆転(後進方向の回転)を阻止する状態、又は正転を阻止し逆転を許容する状態の何れかの状態に切換自在な2ウェイクラッチで構成されている。尚、ブレーキB1は、2ウェイクラッチに限らず、湿式多板ブレーキ、ハブブレーキ、バンドブレーキ等の他のもので構成してもよい。
【0027】
プラネタリギヤ機構PGの径方向外方には、中空の電動機MG(モータ・ジェネレータ)が配置されている。換言すれば、プラネタリギヤ機構PGは、中空の電動機MGの内方に配置されている。電動機MGは、ステータMGaとロータMGbとを備える。
【0028】
又、電動機MGは、コントローラECUの指示信号に基づき、パワードライブユニットPDUを介して制御され、コントローラECUは、パワードライブユニットPDUを、二次電池BATTの電力を消費して電動機MGを駆動させる駆動状態と、ロータMGbの回転力を抑制させて発電し、発電した電力をパワードライブユニットPDUを介して二次電池BATTに充電する回生状態とに適宜切り換える。
【0029】
自動変速機1は、ロータMGbとサンギヤSaとを連結した状態、ロータMGbとリングギヤRbとを連結した状態、ロータMGbをサンギヤSa及びリングギヤRaから切り離した状態の何れか1の状態の切換自在な切換機構8を備える。
【0030】
リバース軸6には、リバースギヤGRが回転自在に軸支されている。出力部材3を軸支する出力軸3aには、2速駆動ギヤG2a及び3速駆動ギヤG3aに噛合する第1従動ギヤGo1が回転自在に軸支されている。又、出力軸3aには、4速駆動ギヤG4a及び5速駆動ギヤG5aに噛合する第2従動ギヤGo2が固定されている。
【0031】
このように、2速ギヤ列G2と3速ギヤ列G3の従動ギヤ、及び4速ギヤ列G4と5速ギヤ列G5の従動ギヤとを夫々1つのギヤGo1,Go2で構成することにより、自動変速機の軸長を短くすることができ、FF(前輪駆動)方式の車両への搭載性を向上させることができる。
【0032】
第1駆動ギヤ軸4には、シンクロメッシュ機構で構成され、3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸4とを連結した状態、5速駆動ギヤG5aと第1駆動ギヤ軸4とを連結した状態、3速駆動ギヤG3a及び5速駆動ギヤG5aと第1駆動ギヤ軸4との連結を断つ状態の何れかの状態に切換自在な第1噛合機構SM1が設けられている。
【0033】
第2駆動ギヤ軸5には、シンクロメッシュ機構で構成され、2速駆動ギヤG2aと第2駆動ギヤ軸5とを連結した状態、4速駆動ギヤG5aと第2駆動ギヤ軸5とを連結した状態、2速駆動ギヤG2a及び4速駆動ギヤG5aと第2駆動ギヤ軸5との連結を断つ状態の何れかの状態に切換自在な第2噛合機構SM2が設けられている。
【0034】
出力軸3aには、シンクロメッシュ機構で構成され、第1従動ギヤGo1と出力軸3aとを連結した状態と、この連結を断つ状態の何れかの状態に切換自在な第3噛合機構SM3が設けられている。リバース軸6には、シンクロメッシュ機構で構成され、リバースギヤGRとリバース軸6とを連結した状態と、この連結を断つ状態の何れかの状態に切換自在な第4噛合機構SM4が設けられている。
【0035】
次に、図1及び図2を参照して、切換機構8を説明する。ここで、プラネタリギヤ機構PGのサンギヤSaは筒状に構成されており、その内周面には第1凹部Sa1が設けられている。
【0036】
リングギヤRaには、プラネタリギヤ機構PGと同一軸線上に配置された連結スリーブ81が連結されている。連結スリーブ81の内径は筒状のサンギヤSaの内径と同一に設定されている。連結スリーブ81の内周面には、第2凹部81aが設けられている。
【0037】
連結スリーブ81とサンギヤSaには、電動機MGのロータMGbに連結された切換スリーブ82が内挿されている。切換スリーブ82には、凹部Sa1,81aの位置に対応させて径方向に貫通する第1と第2の2つの貫通孔83a,83bが切換スリーブ82の軸方向に間隔を存して設けられている。第1貫通孔83aには、第1突出部材84aが内挿され、第2貫通孔83bには、第2突出部材84bが内挿されている。
【0038】
切換スリーブ82には、直動アクチュエータ85により進退自在なロッド86が内挿されている。ロッド86には、軸方向一端に第1テーパ面87a、軸方向他端に第2テーパ面87bを備える拡径部87が形成されている。ロッド86は、常時は拡径部87が第1突出部材84aと第2突出部材84bとの間に位置するように配置される。
【0039】
突出部材84a,84bの内端部には、夫々、拡径部87のテーパ面87a,87bに対向するテーパ面が形成されている。又、突出部材84a,84bは、弾性部材たるスプリングの付勢力により径方向内方へ付勢されており、常時は貫通孔83a,83bから突出していない非突出状態とされている(図2(a)参照)。
【0040】
図2(b)に示すように、直動アクチュエータ85によりロッド86を内燃機関ENG側に押し進めると、拡径部87の第1テーパ面87aが第1突出部材84aをスプリングの付勢力に抗して径方向外方へ突出させる。これにより、第1突出部材84aと第1凹部Sa1とが係合し、ロータMGbがサンギヤSaと連結した状態となる。
【0041】
逆に、図2(c)に示すように、直動アクチュエータ85によりロッド86を後退させると、拡径部87の第2テーパ面87bが第2突出部材84bをスプリングの付勢力に抗して径方向外方へ突出させる。これにより、第2突出部材84bと第2凹部81aとが係合し、ロータMGbがリングギヤRaと連結した状態となる。
【0042】
又、図2(a)に示すように、拡径部87の両テーパ面87a,87bが両突出部材84a,84bの何れにも非接触となる位置となるように、直動アクチュエータ85によりロッド86を位置させれば、プラネタリギヤ機構PGとロータMGbとの連結が断たれた状態となる。
【0043】
又、本実施形態の自動変速機1は、ロータMGbの回転数を検出する回転数検出機構(図示省略)を備え、回転数検出機構により検出されたロータMGbの回転数はコントローラECUに送信される。コントローラECUは、回転数検出機構で検出されるロータMGbの回転数が異常な回転数となっている場合には、電動機MGが故障していると判定し、切換機構8を、プラネタリギヤ機構PGとロータMGbとの連結が断たれた状態に切り換える。これにより、故障した電動機MGの影響を受けることなく、内燃機関ENGでの走行を行うことができる。本実施形態においては、回転数検出機構とコントローラECUとにより、本発明の故障検知機構を構成している。
【0044】
尚、故障検知機構は、電動機MGの故障を検知できれば、他の構成を用いてもよい。例えば、回転数検出機構に代えて、電動機MGの温度を測定する温度測定機構を用い、コントローラECUが温度測定機構で測定された温度が異常な温度である場合に、切換機構8を、プラネタリギヤ機構PGとロータMGbとの連結が断たれた状態に切り換えるようにして構成してもよい。
【0045】
又、切換機構8は、図2に示す本実施形態のものに限らず、切換自在であれば他の構成を用いてもよい。例えば、カム機構を用いて回転方向の位相を変化させることにより、第1突出部材84aが突出する状態、第2突出部材84bが突出する状態、第1及び第2突出部材84a,84bの何れもが突出しない状態に切換自在となるように構成してもよい。
【0046】
このカム機構を用いた切換機構8の例を図3及び図4を参照して説明する。尚、図2に示す切換機構8と同一の構成は同一の符号を付すと共にその説明を省略する。
【0047】
図3及び図4に示すカム機構を用いた切換機構8は、直動アクチュエータ85により進退自在なロッド86の先端部を摺動自在に内挿する円筒溝カム88を備える。円筒溝カム88には、周面を斜めに切り欠いたカム溝88aが形成されている。又、ロッド86の先端部には、カム溝88a内に位置させて突出する突起部86aが設けられている。
【0048】
又、円筒溝カム88の内燃機関ENG側の端部にはカム軸89が延設されている。カム軸89は切換スリーブ82に回転自在に且つ軸方向への移動が阻止された状態で内挿されている。カム軸89には、第1突出部材84aに対応する位置に第1板カム89aが固定され、第2突出部材84bに対応する位置に第2板カム89bが固定されている。
【0049】
直動アクチュエータ85によりロッド86を後退させると、円筒溝カム88及び突起部86aによりカム軸89が回転し、図4(b)に示すように、第1板カム89aが第1突出部材84aをスプリングの付勢力に抗して径方向外方へ押し出し、第1突出部材84aが第1凹部Sa1に係合する。このとき、第2突出部材84bは、図4(c)に示すように、第2板カム89bで押し出されず、第2凹部81aと係合しない。この状態が本発明の第1位相に相当する。
【0050】
逆に、直動アクチュエータ85によりロッド86を前進させると、円筒溝カム88及び突起部86aによりカム軸89が反対側に回転し、図4(e)に示すように、第2板カム89bが第2突出部材84bをスプリングの付勢力に抗して径方向外方へ押し出し、第2突出部材84bが第2凹部81aに係合する。このとき、第1突起部材84aは、図4(d)に示すように、第1板カム89bで押し出されず、第1凹部Sa1と係合しない。この状態が本発明の第2位相に相当する。
【0051】
直動アクチュエータ85で、突起部86aがカム溝88aの軸方向中央部に配置されるようにロッド86を位置させると、図4(a)に示すように、両突出部材84a,84bの何れもが両凹部Sa1,81aに係合しない状態となる。
【0052】
次に、上記の如く構成される自動変速機1の作動について説明する。尚、本実施形態の自動変速機1では、車両が駐車状態であるときには、切換機構8を電動機MGとサンギヤSaとを連結させた状態とし、第1クラッチC1を係合させることにより、電動機MGを駆動させて内燃機関ENGを始動させることができる。
【0053】
先ず、内燃機関ENGの駆動力を用いて1速段を確立する際には、第3噛合機構SM3を第1従動ギヤGo1と出力軸3aとを連結させた状態とし、ブレーキB1によりプラネタリギヤ機構PGのリングギヤRaを変速機ケース7に固定し、第1クラッチC1を係合させる。
【0054】
内燃機関ENGの駆動力は、入力軸2、第1クラッチC1、第1駆動ギヤ軸4を介して、プラネタリギヤ機構PGのサンギヤSaに入力され、入力軸2に入力された内燃機関ENGの回転速度がプラネタリギヤ機構PGのギヤ比(リングギヤRaの歯数/サンギヤSaの歯数)をgとして1/(g+1)に減速されて、キャリアCaを介し3速駆動ギヤG3aに伝達される。
【0055】
3速駆動ギヤG3a及び第1従動ギヤGo1で構成される3速ギヤ列G3のギヤ比(3速駆動ギヤG3aの歯数/第1従動ギヤGo1の歯数)をiとして、1/i(g+1)に変速されて出力部材3から出力され、1速段が確立される。
【0056】
1速段においては、電動機MGを用いない場合には、切換機構8は、サンギヤSa及びリングギヤRaの連結を断つ状態とする。これにより、電動機MGのイナーシャ(慣性)による回転損失を防止することができる。
【0057】
又、電動機MGの故障を検知している場合にも、切換機構8を、サンギヤSa及びリングギヤRaの連結を断つ状態としてもよい。
【0058】
回生運転を行う場合には、切換機構8により、電動機MGをサンギヤSaに連結させ、電動機MGでブレーキをかけることにより回生を行うことができる。
【0059】
又、切換機構8により、電動機MGとサンギヤSaとを連結させた状態で、電動機MGを駆動させて、内燃機関ENGの駆動力をアシストするアシスト走行、又は電動機MGの駆動力のみで走行するEV(Electric Vehicle)走行を行うことができる。
【0060】
又、EV走行中であって車両速度が所定速度以上の場合には、第1クラッチC1を係合させることにより、内燃機関ENGを始動させることができる。
【0061】
又、ブレーキB1によるリングギヤRaの固定を解除し、電動機MGを切換機構8によりリングギヤRaに連結させて、回生運転を行うこともできる。ブレーキB1によるリングギヤRaの固定を解除して、電動機MGをリングギヤRaに連結させている場合、出力部材3に連結するキャリアCaは、電動機MGが連結されたリングギヤRaよりも遥かにイナーシャが大きくなる。
【0062】
このため、発進時では、図3のプラネタリギヤ機構PGの速度線図に破線で示すように、内燃機関ENGの動力が伝達されるサンギヤSaの回転速度Neに対して、キャリアCaの回転速度が略0になり、リングギヤRaが逆回転(後進方向側の回転。図3のN1。)する。そして、リングギヤRaの回転速度がN1からN2になるように電動機MGでブレーキをかけて発電し回生運転を行うことにより、キャリアCaに正転側(前進方向側)の駆動力が発生する(図3の一点鎖線参照)。
【0063】
これにより、通常の1速段よりも出力速度の低く駆動力(トルク)の大きい発進段を確立できる。
【0064】
又、電動機MGにより正転側の駆動力を発生させれば、内燃機関ENGの駆動力と電動機MGの駆動力とがキャリアCaで合成されて出力部材3から出力される。従って、大きな駆動力を出し易くなり、運転者の操作に対する追従性(ドライバビリティ)を向上させることができる。
【0065】
尚、1速段で走行中に2速段にアップシフトされることをコントローラECUが車両速度等の車両情報から予測した場合には、第2噛合機構SM2を2速駆動ギヤG2aと第2駆動ギヤ軸5とを連結させる状態又はこの状態に近付けるプリシフト状態とする。
【0066】
又、実施形態の自動変速機1では、プラネタリギヤ機構PGのギヤ比gと3速ギヤ列G3のギヤ比iを燃費を重視して比較的小さい値に設定している。そして、コントローラECUは、アシスト走行する場合には、アクセルペダルの踏み込み量等の車両情報に基づいて、燃費を重視した発進を行うときには、電動機MGのロータMGbをサンギヤSaに接続してアシスト走行させ、駆動力(トルク)を重視した発進を行うときには、電動機MGのロータMGbをリングギヤRaに接続してアシスト走行させる。
【0067】
内燃機関ENGの駆動力を用いて2速段を確立する場合には、第2噛合機構SM2を2速駆動ギヤG2aと第2駆動ギヤ軸5とを連結させた状態とし、第3噛合機構SM3を第1従動ギヤGo1と出力軸3aとを連結させた状態とし、第2クラッチC2を係合させる。
【0068】
コントローラECUがアップシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸4とを連結した状態又はこの状態に近付けるプリシフト状態とする。
【0069】
車両が減速状態にあり、且つ二次電池BATTの充電率SOCが所定値未満であるときには、コントローラECUは、減速回生を行う。2速段の減速回生では、ブレーキB1を係合させ、第1従動ギヤGo1に噛合する3速駆動ギヤG3aと共に回転するキャリアCaの回転速度を、切換機構8によりリングギヤRaに連結させた電動機MGにより発電させることによりブレーキをかけて、回生を行う。
【0070】
又は、コントローラECUがアップシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸4とを連結させた状態として、プラネタリギヤ機構PGの3つの要素を相対回転不能なロック状態として、切換機構8により電動機MGをサンギヤSa又はリングギヤRaに連結させて、電動機MGによりブレーキをかけ減速回生を行ってもよい。
【0071】
これにより、車両が減速状態から加速状態に直ちに移行した場合であっても、速やかに3速段へアップシフトすることができる。
【0072】
又、電動機MGによりアシスト走行する場合には、第1噛合機構SM1を3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸4とを連結させた状態として、プラネタリギヤ機構PGをロック状態とし、切換機構8により電動機MGをサンギヤSa又はリングギヤRaに連結させて、電動機MGの駆動力を3速ギヤ列G3を介して出力部材3に伝達する。
【0073】
内燃機関ENGの駆動力を用いて3速段を確立する場合には、第1噛合機構SM1を3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸4とを連結させた状態として、第1クラッチC1を係合させる。これにより、内燃機関ENGの駆動力は、入力軸2、第1クラッチC1、第1駆動ギヤ軸4、第1噛合機構SM1、3速ギヤ列G3を介して、出力部材3に伝達され、1/iの回転速度で出力される。
【0074】
3速段においては、第1噛合機構SM1が3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸4とを連結させた状態となっているため、プラネタリギヤ機構PGのサンギヤSaとキャリアCaとが同一回転となる。従って、プラネタリギヤ機構PGの各要素が相対回転不能なロック状態となり、電動機MGで切換機構8によりサンギヤSa又はリングギヤRaにブレーキをかければ減速回生となり、電動機MGでサンギヤSa又はリングギヤRaに駆動力を伝達させれば、アシスト走行を行うことができる。
【0075】
又、第1クラッチC1を開放して、電動機MGの駆動力のみで走行するEV走行も可能である。
【0076】
コントローラECUは、車両情報に基づきダウンシフトが予測される場合には、第2噛合機構SM2を2速駆動ギヤG2aと第2駆動ギヤ軸5とを連結する状態、又はこの状態に近づけるプリシフト状態とし、アップシフトが予測される場合には、第2噛合機構SM2を4速駆動ギヤG4aと第2駆動ギヤ軸5とを連結する状態、又はこの状態に近づけるプリシフト状態とする。これにより、第2クラッチC2を係合させ、第1クラッチC1を開放するだけで、変速段の切換えを行うことができ、変速をスムーズに行うことができる。
【0077】
内燃機関ENGの駆動力を用いて4速段を確立する場合には、第2噛合機構SM2を4速駆動ギヤG4aと第2駆動ギヤ軸5とを連結させた状態とし、第2クラッチC2を係合させる。
【0078】
4速段で走行中は、コントローラECUが車両情報からダウンシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸4とを連結した状態、又はこの状態に近づけるプリシフト状態とし、第3噛合機構SM3を第1従動ギヤGo1と出力軸3aとを連結した状態とする。
【0079】
逆に、コントローラECUが車両情報からアップシフトを予測している場合には、第1噛合機構SM1を5速駆動ギヤG5aと第1駆動ギヤ軸4とを連結した状態、又は、この状態に近づけるプリシフト状態とする。これにより、第1クラッチC1を係合し、第2クラッチC2を開放するだけで、ダウンシフト又はアップシフトを行うことができ、変速をスムーズに行うことができる。
【0080】
4速段で走行中に減速回生又はアシスト走行を行う場合には、コントローラECUがダウンシフトを予測しているときには、第1噛合機構SM1を3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸4とを連結した状態とし、第3噛合機構SM3を第1従動ギヤGo1と出力軸3aとを連結した状態とする。
【0081】
そして、減速回生を行う場合には、電動機MGによりブレーキをかけ減速回生を行う。このとき、プラネタリギヤ機構PGがロック状態にあるため、切換機構8は、ロータMGbをサンギヤSa又はリングギヤRaに連結させた状態にすればよい。
【0082】
アシスト走行を行う場合には、電動機MGを駆動させ、第1駆動ギヤ軸4、3速ギヤ列を介して、出力部材3に電動機MGの駆動力を伝達させる。
【0083】
コントローラECUがアップシフトを予測しているときには、第1噛合機構SM1を5速駆動ギヤG5aと第1駆動ギヤ軸4とを連結した状態とし、切換機構8を電動機MGのロータMGbとサンギヤSaとを連結した状態とする。
【0084】
そして、減速回生を行う場合には、電動機MGによりブレーキをかけ減速回生を行い、アシスト走行を行う場合には、電動機MGの駆動力を、サンギヤSa、第1駆動ギヤ軸4、5速ギヤ列を介して、出力部材3に伝達させる。
【0085】
内燃機関ENGの駆動力を用いて5速段を確立する場合には、第1噛合機構SM1を5速駆動ギヤG5aと第1駆動ギヤ軸4とを連結した状態とする。
【0086】
電動機MGを用いて回生、アシスト走行、又は、電動機MGの駆動力のみを用いたEV走行を行う場合には、切換機構8により電動機MGのロータMGbをサンギヤSaに連結させる。EV走行を行う場合には、第1クラッチC1を開放させる。尚、5速段でのEV走行中に、第1クラッチC1を徐々に係合させることにより、内燃機関ENGの始動を行うこともできる。
【0087】
コントローラECUは、5速段で走行中に車両情報から4速段へのダウンシフトが予測される場合には、第2噛合機構SM2を4速駆動ギヤG4aと第2駆動ギヤ軸5とを連結させた状態、又はこの状態に近付けるプリシフト状態とする。これにより、4速段へのダウンシフトをスムーズに行うことができる。
【0088】
コントローラECUは、5速段で走行中に、車両情報から4速段へのダウンシフトが予測されておらず、且つ二次電池BATTの充電率SOCが所定値未満であり、車両が加速状態又はクルーズ(一定速度)走行状態の場合には、第2噛合機構SM2を2速駆動ギヤG2aと第2駆動ギヤ軸5とを連結した状態とし、切換機構8をロータMGbとリングギヤRaとを連結した状態として、電動機MGにより、リングギヤRaを所定の回転速度で回転させる。
【0089】
この状態で、第2クラッチC2を係合させ、第1クラッチC1を開放させることにより、内燃機関ENGの駆動力が、アイドルギヤ列Gi、第2駆動ギヤ軸5、第2噛合機構SM2、2速ギヤ列G2、3速ギヤ列G3を介して、プラネタリギヤ機構PGのキャリアCaに伝達される。
【0090】
このときに、電動機MGで発電させて回生を行うことにより、内燃機関ENGの駆動力が出力部材3に連結するサンギヤSaとリングギヤRaとに分散される。又、プラネタリギヤ機構PGの速度線図において、サンギヤSaとキャリアCaとの間の間隔は、キャリアCaとリングギヤRaとの間の間隔よりも広いため、キャリアCaに伝達される内燃機関ENGの駆動力は、出力部材3に連結するサンギヤSaに伝達され難い。このため、5速段における燃費を向上させることができる。
【0091】
又、コントローラECUは、5速段でのEV走行中において、車両情報から4速段へのダウンシフトが予測されておらず、二次電池BATTの充電率SOCが所定値以上であり、車両が加速状態又はクルーズ(一定速度)走行状態の場合には、第1クラッチC1を係合させて、内燃機関ENGを始動させ、内燃機関ENGの駆動力のみでの走行状態に切り換えることもできる。
【0092】
又、5速段でのEV走行中に、ブレーキB1を係合させて、リングギヤRaの回転速度を0とし、第2噛合機構SM2を2速駆動ギヤG2aと第2駆動ギヤ軸5とを連結した状態とする。そして、第2クラッチC2を係合させて、内燃機関ENGの駆動力をキャリアCaに伝達させて、電動機MGの駆動力を内燃機関ENGの駆動力で補助するアシスト走行を行うこともできる。
【0093】
内燃機関ENGの駆動力を用いて後進段を確立する場合には、第3噛合機構SM3を2速駆動ギヤG2bと出力軸3aとを連結した状態とし、第4噛合機構SM4をリバースギヤGRとリバース軸6とを連結した状態として、第2クラッチC2を係合させる。これにより、入力軸2の回転速度が、[アイドル駆動ギヤGiaの歯数/第1アイドル従動ギヤGibの歯数]×[リバースギヤGRの歯数/第1従動ギヤGo1の歯数]の回転速度のマイナス回転(後進方向の回転)に変速されて、出力部材3から出力される。
【0094】
後進段において、減速回生、アシスト走行を行う場合には、第1噛合機構SM1を3速駆動ギヤG3aと第1駆動ギヤ軸4とを連結した状態とし、プラネタリギヤ機構PGをロック状態とする。そして、逆転しているロータMGbに、正転側の駆動力を発生させれば(ブレーキをかければ)、減速回生となり、逆転側の駆動力を発生させれば、アシスト走行となる。
【0095】
実施形態の自動変速機1によれば、切換機構8により、電動機MGをサンギヤSaに連結させた状態、電動機MGをリングギヤRaに連結させた状態、電動機MGをプラネタリギヤ機構PGから切り離した状態の何れかの状態に切り換えることができる。
【0096】
これにより、1速段において、二次電池BATTの充電率SOCが所定値未満であっても、切換機構8により電動機MGをリングギヤRaに連結させ、回生を行いつつ車両を発進させることができる。
【0097】
又、図3の一点鎖線で示すように、図3の実線で示す通常の1速段よりも出力される回転速度が低い発進段を確立することができ、車両状態に応じてより適切な発進段を選択することができるため、運転者の操作に対する追従性(ドライバビリティ)を向上させると共に、燃費を向上させることができる。
【符号の説明】
【0098】
1…自動変速機、2…入力軸、3…出力部材(出力ギヤ)、3a…出力軸、4…第1駆動ギヤ軸、5…第2駆動ギヤ軸、6…リバース軸、7…変速機ケース、8…切換機構、81…連結スリーブ、82…切換スリーブ、C1…第1クラッチ、C2…第2クラッチ、S1…第1噛合機構、S2…第2噛合機構、G2…2速ギヤ列、G2a…2速駆動ギヤ、G3…3速ギヤ列、G3a…3速駆動ギヤ、G4…4速ギヤ列、G4a…4速駆動ギヤ、G5…5速ギヤ列、G5a…5速駆動ギヤ、Go1…第1従動ギヤ(2速・3速の従動ギヤ)、Go2…第2従動ギヤ(4速・5速の従動ギヤ)、Gi…アイドルギヤ列、GR…リバースギヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と電動機とを備えるハイブリッド車両用の自動変速機であって、前記内燃機関の動力が伝達される入力軸の回転を複数のギヤ列を介して複数段に変速して出力部材から出力するものにおいて、
変速比順位で奇数番目の変速段を確立する各ギヤ列の駆動ギヤを軸支する第1駆動ギヤ軸と、
変速比順位で偶数番目の変速段を確立する各ギヤ列の駆動ギヤを軸支する第2駆動ギヤ軸と、
前記入力軸と前記第1駆動ギヤ軸とを解除自在に連結する第1クラッチと、
前記入力軸と前記第2駆動ギヤ軸とを解除自在に連結する第2クラッチと、
変速比順位で奇数番目の変速段を確立する各ギヤ列の駆動ギヤを第1駆動ギヤ軸に選択的に連結する第1噛合機構と、
変速比順位で偶数番目の変速段を確立する各ギヤ列の駆動ギヤを第2駆動ギヤ軸に選択的に連結する第2噛合機構と、
サンギヤとキャリアとリングギヤとの3つの要素を備えるプラネタリギヤ機構と、
前記プラネタリギヤ機構の前記サンギヤ、キャリア、リングギヤからなる3つの要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に夫々第1要素、第2要素、第3要素として、
前記第3要素を変速機ケースに解除自在に固定するブレーキと、
前記電動機のロータを前記プラネタリギヤ機構の第1要素に接続する状態、前記電動機のロータを前記プラネタリギヤ機構の第3要素に接続する状態の何れかの状態に切換自在な切換機構とを備え、
前記第1要素と前記第1駆動ギヤ軸とが連結され、
前記第2要素と前記第1駆動ギヤ軸に軸支される何れか1つの駆動ギヤとが連結されることを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
請求項1記載の自動変速機において、
前記切換機構は、前記プラネタリギヤ機構の第1要素又は第3要素の何れの連結も断つ状態に切換自在に構成されることを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項2記載の自動変速機において、
前記電動機の故障を検知する故障検知機構を備え、
該故障検知機構が前記電動機の故障を検知した場合には、前記切換機構は前記プラネタリギヤ機構の第1要素又は第3要素の何れの連結も断つ状態に切り換えられることを特徴とする自動変速機。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の自動変速機において、
前記切換機構は、切換スリーブと、直動アクチュエータにより該切換スリーブ内を進退自在なロッドとを備え、
前記切換スリーブと前記電動機のロータとが連結され、
前記切換スリーブには、径方向に貫通する第1と第2の2つの貫通孔が互いに切換スリーブの軸方向に間隔を存して設けられ、該第1貫通孔には第1突出部材が内挿され、該第2貫通孔には第2突出部材が内挿され、
該2つの貫通孔内には、該突出部材を径方向内方へ付勢する弾性部材が夫々配置され、
前記ロッドには、次第に径方向外方へ拡径する拡径部を設けることにより第1と第2の2つのテーパ面が形成され、
前記ロッドが前記直動アクチュエータにより前進又は後退され前記第1テーパ面が前記第1突出部材に接触することにより、前記第1突出部材が弾性部材の付勢力に抗して前記切換スリーブから径方向外方に突出し、前記第1突出部材が前記プラネタリギヤ機構の第1要素に連結された第1凹部に係合して、前記切換機構が前記電動機のロータを前記第1要素に接続する状態となり、
前記ロッドが前記直動アクチュエータにより後退又は前進され前記第2テーパ面が前記第2突出部材に接触することにより、前記第2突出部材が弾性部材の付勢力に抗して前記切換スリーブから径方向外方に突出し、前記第2突出部材が前記プラネタリギヤ機構の第3要素に連結された第2凹部に係合して、前記切換機構が前記電動機のロータを前記第3要素に接続する状態となることを特徴とする自動変速機。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の自動変速機において、
前記切換機構は、切換スリーブと、直動アクチュエータにより軸方向に進退自在なロッドと、該ロッドの進退運動を回転運動に切り換える円筒溝カムと、該円筒溝カムに連結され第1と第2の2つの板カムが固定されるカム軸とを備え、
前記切換スリーブと前記電動機のロータとが連結され、
前記切換スリーブには、径方向に貫通する第1と第2の2つの貫通孔が互いに軸方向に間隔を存して設けられ、該第1貫通孔には第1突出部材が内挿され、該第2貫通孔には第2突出部材が内挿され、
該2つの貫通孔内には、該突出部材を径方向内方へ付勢する弾性部材が夫々配置され、
前記円筒溝カムは、前記ロッドの進退運動により、前記第1板カムが第1突出部材を弾性部材の付勢力に抗して突き出させ、前記第1突出部材が前記プラネタリギヤ機構の第1要素に連結された第1凹部に係合する第1位相、又は前記第2板カムが第2突出部材を弾性部材の付勢力に抗して突き出させ、前記第2突出部材が前記プラネタリギヤ機構の第3要素に連結された第2凹部に係合する第2位相に切換自在に構成されることを特徴とする自動変速機。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の自動変速機において、
二次電池の充電率が所定値未満であり、内燃機関の駆動力を用いて車両を発進させる場合には、
前記切換機構は前記電動機のロータを前記プラネタリギヤ機構の第3要素に接続する状態に切り換えられ、
前記第1クラッチを係合して、前記内燃機関の駆動力を前記プラネタリギヤ機構の第1要素に伝達させると共に、逆転する前記第3要素の回転を前記電動機で抑制して、前記第2要素及びこれに連結される駆動ギヤを備えるギヤ列を介して出力部材から動力を出力することを特徴とする自動変速機。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の自動変速機において、
車両速度が所定速度未満の低速走行状態であり、二次電池の充電率が所定値以上であって且つ外気温が所定温度以下の低温環境である場合には、
前記切換機構は前記電動機のロータを前記プラネタリギヤ機構の第1要素に接続する状態に切り換えられることを特徴とする自動変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−285012(P2010−285012A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138930(P2009−138930)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】