説明

処理装置、処理方法および記憶媒体

【課題】被処理基板が基板保持機構によって適切に保持されているかを誤検知することなく正確に判断することができ、製造コストを低く抑えることができ、さらに、処理中に被処理基板が破損したとしても直ちにその破損を検知することができる。
【解決手段】処理装置1は、ウエハWを保持する基板保持機構20と、ウエハWに処理液を供給する処理液供給機構30と、ウエハWを周縁外方から覆うとともに、基板保持機構20と一体となって回転可能な回転カップ61と、を備えている。基板保持機構20は、一端22aでウエハWを保持しているときには他端22bが上方位置に位置し、他方、一端22aでウエハWを保持していないときには他端22bが下方位置に位置する保持部材22を有している。当該保持部材22の他端22bの下方に、保持部材22の他端22bが下方位置に位置しているときに当該保持部材22の他端22bに接触可能な接触式センサー10が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板が基板保持機構によって保持されているかを判断することができる処理装置および処理方法、並びに当該処理方法をコンピュータに実行させる記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被処理基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと呼ぶ)を保持する基板保持機構と、基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、ウエハを保持した基板保持機構を回転させる回転機構と、を備えた液処理装置が知られている。このような従来の液処理装置においては、基板保持機構の上方に光を発光する発光部が設けられ、かつ、基板保持機構の下方に当該発光部からの光を受光する受光部が設けられており、基板保持機構によってウエハが保持されているかが判断されていた。
【0003】
すなわち、発光部からの光が受光部によって検知された場合には、基板保持機構によってウエハは保持されていないと判断され、発光部からの光を受光部によって検知されなかった場合には、基板保持機構によってウエハが保持されていると判断されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の液処理装置では、基板保持機構上にウエハがあるかどうかを判断することはできるものの、ウエハが基板保持機構によって適切に保持されているかを判断することはできなかった。
【0005】
また、受光部に薬液や水分が付着することによって受光部が発光部からの光を受けることができず、基板保持機構上にウエハがあるものとして誤検知することもあった。
【0006】
また、受光部としては、薬液と反応しないものを用いる必要があるので、受光部を、例えばサファイヤなどの高価な材料を用いて製造する必要が生じ、液処理装置の製造コストが高くなってしまっている。
【0007】
さらに、ウエハを回転機構によって回転させているときにウエハが破損したとしても、ウエハが破損したことを直ちに検知することができず、ウエハの破片によって液処理装置の部品(特に、バルブなど)が破損してしまい、部品の修理や交換を余儀なくされている。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、被処理基板が基板保持機構によって適切に保持されているかを誤検知することなく正確に判断することができ、製造コストを低く抑えることができ、さらに、処理中に被処理基板が破損したとしても直ちにその破損を検知することができる処理装置および当該処理装置を用いた処理方法、並びに当該処理方法をコンピュータに実行させる記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による処理装置は、
ケーシングと、
ケーシング内に設けられ、被処理基板を保持する基板保持機構と、
基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、
前記基板保持機構を回転させる回転機構と、を備え、
基板保持機構は、基板保持動作時に揺動軸を中心に揺動し、一端で被処理基板を保持しているときには他端が正常位置に位置し、他方、一端で被処理基板を保持していないときには他端が異常位置に位置する保持部材を有し、
当該保持部材の他端の近隣に、保持部材の他端が異常位置に位置しているときに当該保持部材の他端に接触可能な接触式センサーが配置されている。
【0010】
このような構成によって、被処理基板が基板保持機構によって適切に保持されているかを誤検知することなく正確に判断することができる。また、製造コストを低く抑えることができる。さらに、処理中に被処理基板が破損したとしても直ちにその破損を検知することができる。
【0011】
本発明による処理装置において、接触式センサーは、可撓性を持ち、保持部材の他端に接触可能な接触部と、当該接触部に連結され、接触部の動きを検知するセンサー部と、を有することが好ましい。
【0012】
本発明による処理装置において、接触部は、保持部材側に突出して保持部材の他端に接触可能であるとともに、取り替え可能な突出部を有していることが好ましい。
【0013】
このような構成によって、保持部材の他端と突出部とが接触するときの保持部材の回転速度が速く、接触の衝撃によって突出部が破損したとしても、当該突出部のみを取り替えればよい。このため、処理装置の維持コストを低く抑えることができる。
【0014】
本発明による処理装置において、センサー部は、ケーシングの外方に設置されていることが好ましい。
【0015】
このような構成によって、センサー部に特別な耐水加工を施すことなく、センサー部が処理液などによって故障することを防止することができる。
【0016】
本発明による処理装置において、少なくとも回転機構を制御する制御機構をさらに備え、当該制御機構は、被処理基板が基板保持機構によって保持された後、被処理基板が処理されるときの回転速度よりも遅い速度で基板保持機構を一回転させることによって、被処理基板が保持機構によって適切に保持されているかを確認することが好ましい。
【0017】
このような構成によって、保持部材の他端下方の一箇所に接触式センサーを配置するだけで、保持部材によって被処理基板が適切に保持されているかを検知することができる。
【0018】
本発明による処理方法は、
ケーシングと、ケーシング内に設けられ、被処理基板を保持する基板保持機構と、基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、前記基板保持機構を回転させる回転機構と、を備え、基板保持機構は、基板保持動作時に揺動軸を中心に揺動し、一端で被処理基板を保持しているときには他端が正常位置に位置し、他方、一端で被処理基板を保持していないときには他端が異常位置に位置する保持部材を有し、当該保持部材の他端の近隣に、保持部材の他端が異常位置に位置しているときに当該保持部材の他端に接触可能な接触式センサーが配置されている処理装置を用いた処理方法であって、
基板保持機構によって、被処理基板を保持する保持工程と、
基板保持機構を、被処理基板が処理されるときの回転速度よりも遅い速度で一回転させることによって、被処理基板が保持機構によって適切に保持されているかを確認する確認工程と、
回転機構によって、基板保持機構によって保持された被処理基板を回転させる回転工程と、
処理液供給機構によって、基板保持機構により保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給工程と、
を備えている。
【0019】
このような方法によって、被処理基板が基板保持機構によって適切に保持されているかを誤検知することなく正確に判断することができる。また、処理方法が実施される処理装置の製造コストを低く抑えることができる。また、処理中に被処理基板が破損したとしても直ちにその破損を検知することができる。さらに、保持部材の他端下方の一箇所に接触式センサーを配置するだけで、保持部材によって被処理基板が適切に保持されているかを検知することができる。
【0020】
本発明による記憶媒体は、
コンピュータに処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
当該処理方法は、ケーシングと、ケーシング内に設けられ、被処理基板を保持する基板保持機構と、基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、前記基板保持機構を回転させる回転機構と、を備え、基板保持機構は、基板保持動作時に揺動軸を中心に揺動し、一端で被処理基板を保持しているときには他端が正常位置に位置し、他方、一端で被処理基板を保持していないときには他端が異常位置に位置する保持部材を有し、当該保持部材の他端の近隣に、保持部材の他端が異常位置に位置しているときに当該保持部材の他端に接触可能な接触式センサーが配置されている処理装置を用いた処理方法であって、
基板保持機構によって、被処理基板を保持する保持工程と、
基板保持機構を、被処理基板が処理されるときの回転速度よりも遅い速度で一回転させることによって、被処理基板が保持機構によって適切に保持されているかを確認する確認工程と、
回転機構によって、基板保持機構によって保持された被処理基板を回転させる回転工程と、
処理液供給機構によって、基板保持機構により保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給工程と、を備えた方法である。
【0021】
このような構成によって、被処理基板が基板保持機構によって適切に保持されているかを誤検知することなく正確に判断することができる。また、処理方法が実施される処理装置の製造コストを低く抑えることができる。また、処理中に被処理基板が破損したとしても直ちにその破損を検知することができる。さらに、保持部材の他端下方の一箇所に接触式センサーを配置するだけで、保持部材によって被処理基板が適切に保持されているかを検知することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、一端で被処理基板を保持しているときには他端が上方位置に位置し、他方、一端で被処理基板を保持していないときには他端が下方位置に位置する保持部材を設け、かつ、当該保持部材の他端の下方に、保持部材の他端が下方位置に位置しているときに当該保持部材の他端に接触可能な接触式センサーを配置している。このため、被処理基板が基板保持機構によって適切に保持されているかを誤検知することなく正確に判断することができる。また、処理装置の製造コストを低く抑えることもでき、さらに、処理中に被処理基板が破損したとしても直ちにその破損を検知することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態
以下、本発明に係る処理装置、処理方法および記憶媒体の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図5(a)(b)は本発明の実施の形態を示す図である。
【0024】
図1に示すように、液処理システムは、外部から被処理基板としてのウエハWを収容したキャリアを載置するための載置台81と、キャリアに収容されたウエハWを取り出すためのトランスファーアーム82と、トランスファーアーム82によって取り出されたウエハWを載置するための棚ユニット83と、棚ユニット83に載置されたウエハWを受け取り、当該ウエハWを液処理装置1内に搬送するメインアーム84と、を含んでいる。そして、この液処理システムには、複数(本実施の形態では12個)の液処理装置1が組み込まれている。なお、この図1は、本実施の形態による液処理装置1を含む液処理システムを上方から見た上方平面図である。
【0025】
このうち、液処理装置1は、図2に示すように、ケーシング5と、ケーシング5内に設けられ、ウエハWを保持する基板保持機構20と、基板保持機構20によって保持されたウエハWに処理液を供給する処理液供給機構30と、ケーシング5内で基板保持機構20によって保持されたウエハWを周縁外方から覆うとともに、基板保持機構20と一体となって回転可能な回転カップ61と、前記回転カップ61および前記基板保持機構20を一体的に回転させる回転機構70と、を備えている。なお、この図2は、本実施の形態による液処理装置1の縦断面図である。
【0026】
また、図2に示すように、ケーシング5内であって回転カップ61の周縁外方には、ウエハWを洗浄した後の処理液を受ける環状の排液カップ62が配置されている。そして、この排液カップ62には、排液カップ62を経た処理液を外方に排出する排液管63が連結されている。
【0027】
また、図2に示すように、ケーシング5の側壁には、ウエハWを出し入れするための出入口5aが設けられている。
【0028】
また、図2および図3に示すように、基板保持機構20は、水平に設けられた円板状をなす回転プレート21と、回転プレート21の周縁端部に設けられ、ウエハWを一端22aで保持する保持部材22と、回転プレート21の下面の中心部に連結され、下方鉛直に延びる円筒状の回転軸23とを有している。また、回転プレート21の中心部には、円筒状の回転軸23の孔23aに連通する円形の孔21aが形成されており、回転軸23の孔23aの内部には、昇降機構56により上下方向に昇降自在な昇降部材25が設けられている。
【0029】
また、図4(a)乃至(c)に示すように、各保持部材22の他端22bの下方には、上下方向自在に移動し、保持部材22でのウエハ保持位置にウエハWを受け入れる時は、保持部材22の他端22bを上方に押圧し、保持部材22によってウエハWを保持するときに、保持部材22の他端22bから離れる昇降機構15が配置されている。
【0030】
この保持部材22は、図4(a)乃至(c)に示すように揺動軸17を中心に上下方向に揺動可能となっている。そして、この保持部材22と回転プレート21との間には、バネ16が設けられており、ウエハWを保持していないときで、かつ、昇降機構15によって他端が押圧されていないときには、保持部材22の他端22bが下方位置に位置している(図4(a)参照)。他方、ウエハWを保持していないときであっても、昇降機構15によって他端が押圧されているときには、保持部材22の他端22bが上方位置に位置している(図4(b)参照)。なお、この保持部材22は、円周方向に三箇所配置されており、三点でウエハWを保持するようになっている。
【0031】
また、ウエハWを保持した後のウエハ保持作動時において、保持部材22が一端22aでウエハWを保持しているとき(正常時)には他端22bが上方位置に位置し(図5(a)参照)、他方、保持部材22が一端22aでウエハWを保持していないとき(異常時)には他端22bが下方位置に位置している(図5(b)参照)。
【0032】
また、図2および図3に示すように、昇降部材25内には、ウエハWの裏面(下面)側から処理液を供給する裏面処理液供給路26が設けられている。また、昇降部材25の上端部にはウエハ支持台27が設けられ、このウエハ支持台27の上面にはウエハWを支持するためのウエハ支持ピン28が設けられている。なお、回転軸23は、軸受け部材29を介してベースプレート6に回転可能に支持されている。
【0033】
また、図2乃至図5(a)(b)に示すように、保持部材22の他端22bの下方で、昇降機構15が作動する位置から離れた位置、つまり、保持部材22がウエハ保持動作やウエハ保持解除動作を行わない位置には、保持部材22の他端22bが下方位置に位置しているときに当該保持部材22の他端22bに異常時に接触可能な接触式センサー10が配置されている。
【0034】
より具体的には、図2乃至図5(a)(b)に示すように、接触式センサー10は、樹脂材料からなり可撓性を持つとともに、保持部材22の他端22bに接触可能な接触部11と、当該接触部11に連結部12を介して連結され、接触部11の動きを検知するセンサー部13と、を有している。そして、接触部11は、水平方向であって保持部材22側に突出し、保持部材22の他端22bに接触可能であるとともに、取り替え可能な突出部11aを有している。
【0035】
また、図2および図3に示すように、センサー部13は、ケーシング5の外方に設置されており、より具体的には、ケーシング5の外方であってベースプレート6下方に設置されている。なお、連結部12はベースプレート6を貫通して設けられているが、このベースプレートと連結部12との間は密封されており、ウエハWに供給された処理液などがセンサー部13に漏れて伝わることはない。このため、センサー部13に特別な耐水加工を施すことなく、センサー部13が処理液などによって故障することを防止することができる。
【0036】
また、図2に示すように、回転機構70は、モータ軸71aを有するモータ71と、当該モータ軸71aに巻き掛けられるとともに、回転軸23の下端部にも巻き掛けられたベルト72とを有している。なお、ベルト72とモータ軸71aとの間にはプーリー74が設けられ、ベルト72と回転軸23との間にはプーリー73が設けられている。
【0037】
また、図2に示すように、処理液供給機構30は、基板保持機構20によって保持されたウエハWの表面に処理液を供給するノズル31aを有するノズルブロック31と、ノズルブロック31に連結され、当該ノズルブロック31を基板保持機構20に保持されたウエハWの表面に沿って移動させるノズルアーム32と、当該ノズルアーム32から下方鉛直方向に向かって延びるノズル揺動軸33と、当該ノズル揺動軸33を駆動するノズル駆動部75と、を有している。また、ノズル揺動軸33の下端にはノズルブロック31、ノズルアーム32、ノズル揺動軸33およびノズル駆動部75を上下方向に駆動するノズル昇降機構57が連結されている。
【0038】
そして、このノズル駆動部75は、モータ軸76aを有するモータ76と、当該モータ軸76aに巻き掛けられるとともに、ノズル揺動軸33の下端部にも巻き掛けられたベルト77とを有している。なお、ベルト77とモータ軸76aとの間にはプーリー79が設けられ、ベルト77とノズル揺動軸33との間には、プーリー78が設けられている。
【0039】
また、回転機構70と、処理液供給機構30のノズル駆動部75や後述する処理液供給部40には、回転機構70および処理液供給機構30のノズル駆動部75や処理液供給部40の駆動を制御する制御機構50が接続されている。そして、この制御機構50は、ウエハWが基板保持機構20により保持された後、ウエハWが処理されるときの回転速度(処理時回転速度)よりも遅い速度で基板保持機構20を一回転させるよう、回転機構70を制御するようになっている。なお、制御機構50は、接触式センサー10にも接続されており、接触式センサー10からの信号を受けるようになっている。
【0040】
また、図2および図3に示すように、排液カップ62の周縁外方には、気体導入部3から供給されてウエハWを経た清浄空気を取り込んで排気する環状の排気カップ66が配置されている。そして、この排気カップ66には、排気カップ66を経た気体を外方に排出する排気管67が連結されている。また、排液カップ12の下端には、スリット状の通気孔66aが設けられており、排気カップ66を経た気体を排気管67に案内するようになっている(図2の点線矢印参照)。
【0041】
また、図2に示すように、ノズルブロック31、ノズルアーム32およびノズル揺動軸33内には、処理液が通過する処理液流路が設けられている。また、図2に示すように、これら処理液流路は、処理液供給部40に連通されている
【0042】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。より具体的には、本実施の形態による液処理装置1により、ウエハWを洗浄処理する液処理方法について述べる。
【0043】
まず、メインアーム84によって保持されたウエハWが、出入口5aを介して液処理装置1のケーシング5内に搬送される。そして、このようにして搬送されたウエハWが、昇降部材25を上昇させた状態で、ウエハ支持台27に設けられたウエハ支持ピン28上に受け渡される。このとき、保持部材22の他端22bは下方に位置している(図4(a)参照)。
【0044】
次に、昇降機構15が上昇し、ウエハWの他端22bが上方に押圧され、保持部材22が揺動軸17を中心に揺動し、保持部材22の他端22bが上方位置に位置することとなる(図4(b)参照)。
【0045】
次に、昇降部材25が下降し、保持部材22のウエハ保持位置にウエハWが配置される(図4(b)参照)。その後、昇降機構15が下降し、保持部材22の一端22aによりウエハWがチャッキングされて保持される(保持工程)(図4(c)参照)。その後、昇降部材25はさらに下降し、ウエハWから離れる。
【0046】
次に、制御機構50は、回転機構70によって、ウエハWが処理されるときの回転速度よりも遅い速度で基板保持機構20を一回転させる(確認工程)(図2および図3参照)。
【0047】
より具体的には、モータ71のモータ軸71aを回転させることによって、モータ軸71aに巻き掛けられるとともに、回転軸23の下端部にも巻き掛けられたベルト72を回転させ、回転軸23を一回転させる(図2参照)。
【0048】
ここで、保持部材22は、ウエハWを保持しているとき(ウエハ保持作動時)で、一端22aでウエハWを正常に保持しているときには他端22bが上方位置に位置し(図5(a)参照)、他方、一端22aでウエハWを正常に保持していないとき(異常時)には他端22bが下方位置に位置する(図5(b)参照)。つまり、ウエハWが保持部材22によって適切に保持されていない場合には、保持部材22と回転プレート21との間に設けられたバネ16の弾性力によって、保持部材22の他端22bが下方位置に位置することとなる(図5(b)参照)。
【0049】
このため、ウエハWが保持部材22によって適切に保持されていない場合には、基板保持機構20を一回転させると、下方位置に位置する保持部材22の他端22bが、接触式センサー10の接触部11の突出部11aに接触する(図5(b)参照)。この結果、接触部11が受けた振動がセンサー部13に伝わり、センサー部13によって、ウエハWが保持部材22によって適切に保持されていないことを検知することができる。そして、センサー部13からの信号に基づいて、制御機構50は、ウエハWが保持部材22によって適切に保持されていないことを判断することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、上述のように、保持部材22の他端22bが接触式センサー10の接触部11の突出部11aに接触したか否かによって、ウエハWが保持部材22によって保持されているかを検知し、従来の液処理装置1のように発光部からの光を受光部で受光するか否かによって基板保持機構20によりウエハWが保持されているかを検知するようなものではない。このため、従来のように、受光部に薬液や水分が付着することによって、基板保持機構20上にウエハWがあるものとして誤検知するというようなことは当然発生しない。
【0051】
また、このように本実施の形態によれば受光部を用いないので、液処理装置1を製造する材料として透過性で耐薬性のあるサファイヤなどの高価な材料を用いる必要がない。このため、液処理装置1の製造コストを低く抑えることができる。
【0052】
ところで、基板保持機構20にウエハWが正常に保持されているかを検知するために、ウエハWの直上において水平方向に光を走らせる方法も考えられる。すなわち、ウエハWの直上で水平方向に光を照射する発光部と、発光部からの光を受光する受光部とを設け、受光部によって光を受けることができれば、ウエハWが正常に保持されていると判断し、発光部からの光を受光部によって受けることができなければ、ウエハWは正常に保持されていないと判断する方法も考えられる。
【0053】
しかしながら、このような方法においては、発光部と受光部の各々をケーシング5の周縁外方に配置する必要がある。このため、ケーシング5に対して固定されている排液カップを用いるのであれば、当該排液カップに発光部から照射される光を通過させる孔やサファイヤなどからなる透過部を設けることもできる。
【0054】
しかしながら、本実施の形態のように、回転カップ61が基板保持機構20と一体的に回転する様な液処理装置を用いる場合には以下のような不都合がある。すなわち、ウエハWを洗浄しているときで回転カップ61が回転しているときには(後述参照)、発光部からの光を孔や透過部に通すことができない。このため、ウエハWを洗浄しているときには、そもそも、正常にウエハWを保持しているかを確認することができない。
【0055】
この点、このような不都合を克服するために、回転カップ61の外周全体に透過部を設けることも考えられるが、上述のように、透過性があり耐薬性のあるサファイヤなどの材料は高価なため、装置の製造コストが高くなってしまう。
【0056】
このことに対して、本実施の形態によれば、保持部材22の他端22bの下方に接触式センサー10を設けるだけで、回転カップ61に上述のような孔や透過部を設けることなく、(ウエハWを洗浄しているときも含め(後述参照))保持部材22によってウエハWが保持されているかを確認することができる。このため、基板保持機構20と回転カップ61とを一体的に回転させる液処理装置に用いる際には、特に有益である。
【0057】
また、上述のようにウエハWが処理されるときの回転速度(処理時回転速度)よりも遅い速度で基板保持機構20を回転させるので、例えウエハWが保持部材22によって適切に保持されていない場合であっても、ウエハWが破損することがない。すなわち、もしウエハWが適切に基板保持機構20に保持されているかを確認のために処理時回転速度でウエハWを回転させたとすると、ウエハWが保持部材22によって適切に保持されていない場合には、ウエハWが保持部材22から外れた際に衝撃を受けたり、ウエハWが保持部材22から飛び出して他の部材に衝突したりすることによって、ウエハWが破損することが考えられる。しかしながら、本実施の形態によれば、処理時回転速度よりも遅い速度で基板保持機構20(強いてはウエハW)を回転させるので、このような事態が発生することを防止することができる。
【0058】
なお、基板保持機構20を一回転させるので、接触式センサー10は、保持部材22の他端22bの下方の一箇所にだけ配置されていればよい。
【0059】
上述のような確認工程の後、回転機構70によって、基板保持機構20によって保持されたウエハWを処理時回転速度で回転させる(回転工程)(図2および図3参照)。ここで、回転カップ61は、基板保持機構20と一体となっているので、回転軸23を回転させることによって、この回転カップ61を基板保持機構20と一体的に回転させることができる。
【0060】
このとき、処理液供給機構30によって、基板保持機構20により保持されたウエハWに処理液が供給される(処理液供給工程)(図2参照)。この処理液供給工程においては、ウエハWに、ノズル31aを介して、例えば、アンモニア過水、純水、希フッ酸、純水、IPAを順番に供給することができる。
【0061】
この処理液供給工程において、ノズル駆動部75によってノズル揺動軸33が駆動され、ノズルアーム32の先端に設けられたノズル31aは、ノズル揺動軸33を中心として、ウエハW上方においてウエハWの表面に沿って揺動される(図1および図2参照)。
【0062】
このように、ウエハWを回転させている間にウエハWにひびが入るなどしてウエハWが破損した場合には、基板保持機構20に対するウエハWの相対的な位置がずれる。このため、保持部材22と回転プレート21との間に設けられたバネ16の弾性力によって、保持部材22の一端22aがウエハWから外れ、保持部材22の他端22bが下方位置に位置することとなる(図5(b)参照)。
【0063】
このため、基板保持機構20と一体となって回転している保持部材22の他端22bが、接触式センサー10の接触部11の突出部11aと接触することとなり、センサー部13はウエハWが破損したことを検知することができる。この結果、当該センサー部13からの信号を受けた制御機構50は、回転機構70の駆動を停止させることができる。
【0064】
このように、本実施の形態によれば、洗浄処理中にウエハWが破損したとしても直ちにその破損を検知することができ、回転機構70の駆動を停止させることができる。このため、被害を最小限に抑えることができ、強いてはウエハWの破片によって液処理装置1の部品(特に、バルブなど)が破損してしまうことを防止することができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、取り替え可能な突出部11aが保持部材22の他端22bに接触するため、保持部材22の他端22bと突出部11aとが接触するときの保持部材22の回転速度が速く、接触の衝撃によって突出部11aが破損したとしても、当該突出部11aのみを取り替えればよい。このため、液処理装置1の維持コストを低く抑えることができる。
【0066】
なお、上述のように、回転カップ61は基板保持機構20と一体となって回転するため、ウエハWから振り切られた処理液が回転カップ61に当たった際に当該処理液には遠心力が働く。このため、当該処理液は、外方へ飛び散りにくくミスト化しにくくなっている。
【0067】
上述したような処理液供給工程が終了すると、処理済みのウエハWが、保持部材22によるチャッキングを解消した後、基板保持機構20から取り除かれ、出入口5aを介してケーシング5の外方に搬出される(図2参照)。
【0068】
なお、上記では、確認工程において、基板保持機構20を一回転させる態様を用いて説明したが、このように基板保持機構20を一回転させなくてもよい。ただし、このような場合に三つの保持部材22の各々がウエハWが適切に保持されているかを検知するには、接触式センサーの接触部として、例えば保持部材22の他端22bの下方で円周状に延びたものを用いる必要がある。
【0069】
また、上記では、上下に揺動する保持部材22の例を用いて説明したが、これに限られない。例えば、水平方向に揺動する保持部材を用いる処理装置を用いたとしても、本実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、上述したような液処理方法を例えば制御機構50に含まれるコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムや、このようなコンピュータプログラムを格納した記憶媒体も提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態による液処理装置を含む液処理システムを上方から見た上方平面図。
【図2】本発明の実施の形態による液処理装置の縦断面図。
【図3】本発明の実施の形態による液処理装置を拡大した縦断面図。
【図4】本発明の実施の形態による液処理装置の保持部材によりウエハを保持する機構を示した縦断面図。
【図5】本発明の実施の形態による液処理装置の接触式センサー近傍をさらに拡大した縦断面図。
【符号の説明】
【0072】
5 ケーシング
10 接触式センサー
11 接触部
11a 突出部
13 センサー部
16 バネ
17 揺動軸
20 基板保持機構
22 保持部材
22a 保持部材の一端
22b 保持部材の他端
30 処理液供給機構
50 制御機構
61 回転カップ
62 排液カップ
70 回転機構
W ウエハ(被処理基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
ケーシング内に設けられ、被処理基板を保持する基板保持機構と、
基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、
前記基板保持機構を回転させる回転機構と、を備え、
基板保持機構は、基板保持動作時に揺動軸を中心に揺動し、一端で被処理基板を保持しているときには他端が正常位置に位置し、他方、一端で被処理基板を保持していないときには他端が異常位置に位置する保持部材を有し、
当該保持部材の他端の近隣に、保持部材の他端が異常位置に位置しているときに当該保持部材の他端に接触可能な接触式センサーが配置されていることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
接触式センサーは、可撓性を持ち、保持部材の他端に接触可能な接触部と、当該接触部に連結され、接触部の動きを検知するセンサー部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
接触部は、保持部材側に突出して保持部材の他端に接触可能であるとともに、取り替え可能な突出部を有していることを特徴とする請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
センサー部は、ケーシングの外方に設置されていることを特徴とする請求項2に記載の処理装置。
【請求項5】
少なくとも回転機構を制御する制御機構をさらに備え、
当該制御機構は、被処理基板が基板保持機構によって保持された後、被処理基板が処理されるときの回転速度よりも遅い速度で基板保持機構を一回転させることによって、被処理基板が保持機構によって適切に保持されているかを確認することを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項6】
ケーシングと、ケーシング内に設けられ、被処理基板を保持する基板保持機構と、基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、前記基板保持機構を回転させる回転機構と、を備え、基板保持機構は、基板保持動作時に揺動軸を中心に揺動し、一端で被処理基板を保持しているときには他端が正常位置に位置し、他方、一端で被処理基板を保持していないときには他端が異常位置に位置する保持部材を有し、当該保持部材の他端の近隣に、保持部材の他端が異常位置に位置しているときに当該保持部材の他端に接触可能な接触式センサーが配置されている処理装置を用いた処理方法であって、
基板保持機構によって、被処理基板を保持する保持工程と、
基板保持機構を、被処理基板が処理されるときの回転速度よりも遅い速度で一回転させることによって、被処理基板が保持機構によって適切に保持されているかを確認する確認工程と、
回転機構によって、基板保持機構によって保持された被処理基板を回転させる回転工程と、
処理液供給機構によって、基板保持機構により保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給工程と、
を備えたことを特徴とする処理方法。
【請求項7】
コンピュータに処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
当該処理方法は、ケーシングと、ケーシング内に設けられ、被処理基板を保持する基板保持機構と、基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、前記基板保持機構を回転させる回転機構と、を備え、基板保持機構は、基板保持動作時に揺動軸を中心に揺動し、一端で被処理基板を保持しているときには他端が正常位置に位置し、他方、一端で被処理基板を保持していないときには他端が異常位置に位置する保持部材を有し、当該保持部材の他端の近隣に、保持部材の他端が異常位置に位置しているときに当該保持部材の他端に接触可能な接触式センサーが配置されている処理装置を用いた処理方法であって、
基板保持機構によって、被処理基板を保持する保持工程と、
基板保持機構を、被処理基板が処理されるときの回転速度よりも遅い速度で一回転させることによって、被処理基板が保持機構によって適切に保持されているかを確認する確認工程と、
回転機構によって、基板保持機構によって保持された被処理基板を回転させる回転工程と、
処理液供給機構によって、基板保持機構により保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給工程と、を備えた方法であることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−60063(P2009−60063A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228487(P2007−228487)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】