説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】仕事関数を十分に制御することができ、閾値電圧の変動を抑制した半導体装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、半導体基板10に第1導電型チャネルMOSFETを備える。第1導電型チャネルMOSFETは、例えばPチャネルMOSFETであって、半導体基板10の上に設けられたゲート絶縁膜21と、ゲート電極65とからなる。ゲート電極65は、ゲート絶縁膜21の上に設けられた金属ゲート電極20と、金属ゲート電極20の上に設けられた金属酸化膜24と、金属酸化膜24の上に設けられた金属ゲート電極26と、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの微細化の進展にともない、MOSFET(Metal−Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を構成するポリシリコンゲート電極の空乏化による駆動電流の劣化が問題となっている。そこで、金属ゲート電極を用いることにより電極の空乏化を回避する技術が検討されている。
【0003】
金属ゲート電極と高誘電率絶縁膜を用いたMOSFETの一つとして、半導体基板上にゲート絶縁膜、金属ゲート電極、ポリシリコンゲート電極を積層した構造がある。かかる構造を用いたMOSFETとして、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1におけるNチャネルMOSFETは、半導体基板上に形成されたSiOの上に高誘電率絶縁膜を積層したゲート絶縁膜と、下層の導電膜の上にポリシリコン等からなる上層の導電膜を積層したゲート電極と、を有する。また、PチャネルMOSFETは、半導体基板上に形成されたSiOの上に高誘電率絶縁膜を積層したゲート絶縁膜と、下層の導電膜、絶縁膜、中間層の導電膜、ポリシリコン等からなる上層の導電膜を積層した積層構造を持つゲート電極、とを有する。下層の導電膜としては、Ti、Al、Ta等の金属物質、TiN等の金属窒化物が例示されている。また、絶縁膜としては、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、Al、La、Yの金属窒化物が例示されている。中間層の導電膜としては、Ti、Al、Ta等の金属物質、TiN等の金属窒化物が例示されている。このような構成により、NチャネルMOSFETおよびPチャネルMOSFETの仕事関数を独立的に調整できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−208260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される構成においては、PチャネルMOSFETにおける中間層の導電膜を構成する材料が絶縁膜と化学反応し別の物質が生成してしまったり、中間層の導電膜を構成する材料が絶縁膜を通り抜けて下層の導電膜にまで拡散してしまう結果、PチャネルMOSFETの仕事関数の制御が十分にできず、閾値電圧の変動を生じてしまうという問題があった。
例えば、下層の導電膜としてTiN、絶縁膜としてSiO、中間層の導電膜としてTiNを用いた場合、第2導電膜のSiOが分解され、上下の導電膜と化学反応し、TiOに変化してしまう。これにより、PチャネルMOSFETの閾値電圧の制御は不安定になってしまう。
【0006】
さらに、下層の導電膜としてAl、絶縁膜としてSiO、中間層の導電膜としてTiNを用いた場合には、中間層の導電膜に含まれるTiが絶縁膜を突き抜けて第1導電膜のAl内部にまで拡散する結果、PチャネルMOSFETの仕事関数の制御が十分にできず、閾値電圧の変動を生じてしまう。
絶縁膜として、金属窒化物を用いた場合でも同様の問題を生じる。また、PチャネルMOSFETに限らず、NチャネルMOSFETを用いた場合でも、同様の問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
半導体基板上に第1導電型チャネルMOSFETを備える半導体装置であって、
前記半導体基板の上に設けられた第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜の上に設けられた第1の金属ゲート電極と、
前記第1の金属ゲート電極の上に設けられた金属酸化膜と、
前記金属酸化膜の上に設けられた第2の金属ゲート電極と、を含む、半導体装置が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、第1の金属ゲート電極層を形成する工程と、
前記第1のゲート電極層の上に金属酸化膜を形成する工程と、
前記金属酸化膜の上に第2の金属ゲート電極層を形成する工程と、を含む、半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
さらに、本発明によれば、
半導体基板上に第1導電型チャネルMOSFETと第2導電型チャネルMOSFETを備える半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板の第1導電型チャネルMOSFET形成予定領域および第2導電型チャネルMOSFET形成予定領域のそれぞれに第1のゲート絶縁膜および第2のゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のゲート絶縁膜上に、第1の金属ゲート電極層を形成する工程と、
前記第1の金属ゲート電極層上および前記第2のゲート絶縁膜の上のそれぞれに金属酸化膜を形成する工程と、
前記第1導電型チャネルMOSFET形成予定領域の前記金属酸化膜の上に第2の金属ゲート電極膜を形成するとともに、前記第2導電型チャネルMOSFET形成予定領域の前記金属酸化膜の上に第3の金属ゲート電極膜を形成する工程と、を含む、半導体装置の製造方法が提供される。
【0010】
金属酸化物は、シリコン酸化物や金属窒化物よりも標準生成エンタルピーが低いため、熱的に安定である。したがって、上記構成によれは、第1の金属ゲート電極と第2の金属ゲート電極の間に金属酸化膜を設けているため、金属酸化膜と上下の金属ゲート電極との化学反応を抑制し、かつ第2の金属ゲート電極を構成する金属原子が第1の金属ゲート電極に拡散することを防ぐことができる。このため、金属ゲート電極を有するMOSFETの仕事関数を十分に制御することができ、閾値電圧の変動を抑制した半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、閾値電圧の制御性に優れた、半導体装置およびその製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の半導体装置を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態における半導体装置1を示す断面図である。半導体装置1は、半導体基板10上に、PチャネルMOSFET(第1導電型チャネルMOSFET)とNチャネルMOSFET(第2導電型チャネルMOSFET)を備える。
【0015】
PチャネルMOSFETは、半導体基板10(シリコン基板)上に設けられたゲート絶縁膜21(第1のゲート絶縁膜)と、ゲート絶縁膜21の上に設けられた金属ゲート電極20(第1の金属ゲート電極)と、金属ゲート電極20の上に設けられた金属酸化膜24と、金属酸化膜24の上に設けられた金属ゲート電極26(第2の金属ゲート電極)と、を含む。
【0016】
金属酸化膜24としては、例えば、La、Al、Ta、ZrO、HfOから選択される材料を用いることができる。本実施形態では、Laを用いた例を示す。
【0017】
また、金属酸化膜24の膜厚は、特に限定されないが、たとえば0.1nm以上とすることができる。また、金属酸化膜24の膜厚は、特に限定されないが、たとえば10.0nm以下とすることができる。このような範囲の膜厚にすることで、ゲート電極65中に金属酸化膜24が存在しても、MOSFETの特性を劣化させることはない。
【0018】
ゲート絶縁膜21は、界面絶縁膜16と、界面絶縁膜16(シリコン酸窒化膜)よりも誘電率の高い高誘電率膜18と、からなる。界面絶縁膜16としては、例えばシリコン酸窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等を用いることができる。高誘電率膜18としては、例えばHfSiON、HfO、ZrO等を用いることができる。また、ゲート絶縁膜21は、多層構造でもよいが、これに限定されずに、単層(高誘電率膜18)でもよい。
【0019】
PチャネルMOSFETのゲート電極65は、金属ゲート電極20と、金属酸化膜24と、金属ゲート電極26と、シリコン電極56と、シリサイド層64と、が積層した膜から構成されている。
【0020】
金属ゲート電極20としては、例えばAl、TiN、W、TaN、TaSiN、Ru、TiAl等を用いることができる。また、金属ゲート電極26としては、例えば、TiN、W、TaN、TaSiN、Ru、TiAl、Alを用いることができる。
金属ゲート電極20と金属ゲート電極26を構成する金属材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、金属ゲート電極20にAl、金属ゲート電極26にTiNを用いた例を示す。
【0021】
NチャネルMOSFETは、半導体基板10の上に設けられたゲート絶縁膜19(第2のゲート絶縁膜)と、ゲート絶縁膜19の上に設けられた金属ゲート電極26(第3のゲート絶縁膜)と、を含む。さらに、NチャネルMOSFETは、ゲート絶縁膜19と金属ゲート電極26との間に、金属酸化膜24を有している。
【0022】
金属酸化膜24としては、例えば、La、Al、Ta、ZrO、HfOから選択される材料を用いることができる。本実施形態では、Laを用いた例を示す。また、PチャネルMOSFETの金属酸化膜24と同様に、金属酸化膜24の膜厚は、たとえば0.1nm以上10.0nm以下とすることができる。
【0023】
ゲート絶縁膜19は、界面絶縁膜16と、界面絶縁膜16(シリコン酸窒化膜)よりも誘電率の高い高誘電率膜18と、からなる。界面絶縁膜16としては、例えばシリコン酸窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等を用いることができる。高誘電率膜18としては、例えばHfSiON、HfO、ZrO等を用いることができる。本実施形態においては、HfOを用いた例を示す。また、ゲート絶縁膜19は、多層構造でもよいが、これに限定されずに、単層(高誘電率膜18)でもよい。
【0024】
NチャネルMOSFETのゲート電極61は、金属酸化膜24と、金属ゲート電極26と、シリコン電極50と、シリサイド層60と、が積層した膜から構成されている。
【0025】
金属ゲート電極26としては、例えば、TiN、W、TaN、TaSiN、Ru、TiAl、Alを用いることができる。本実施形態では、金属ゲート電極26にTiNを用いた例を示す。
【0026】
NチャネルMOSFETにおいては、金属酸化膜24は設けられていてもよいし、設けなくてもよい。しかし、後述するように、NチャネルMOSFETでは、高誘電率膜18と金属ゲート電極26との間に、Laからなる金属酸化膜24を有することにより、閾値電圧の制御もすることができる。よって、NチャネルMOSFETにおいても、金属酸化膜24も設けたほうが、半導体装置1全体として見た場合、優れた特性を有する。
【0027】
次に、本発明の実施の形態にかかる半導体装置の製造方法について図2〜6を参照して説明する。
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、半導体基板10(シリコン基板)上にゲート絶縁膜(ゲート絶縁膜21)を形成する工程と、ゲート絶縁膜21上に、第1の金属ゲート電極層(金属ゲート電極20)を形成する工程と、金属ゲート電極20の上に金属酸化膜24を形成する工程と、金属酸化膜24の上に第2の金属ゲート電極層(金属ゲート電極26)を形成する工程と、を含む。
【0028】
また、半導体基板上に第1導電型チャネルMOSFETと第2導電型チャネルMOSFETを備える場合には、本実施の形態の半導体装置の製造方法は、半導体基板10の第1導電型チャネルMOSFET形成予定領域および第2導電型チャネルMOSFET形成予定領域のそれぞれに第1のゲート絶縁膜(ゲート絶縁膜21)および第2のゲート絶縁膜(ゲート絶縁膜19)を形成する工程と、ゲート絶縁膜21上に、第1の金属ゲート電極層(金属ゲート電極20)を形成する工程と、金属ゲート電極20上およびゲート絶縁膜19の上のそれぞれに金属酸化膜(金属酸化膜24)を形成する工程と、第1導電型チャネルMOSFET形成予定領域の金属酸化膜24の上に第2の金属ゲート電極膜(金属ゲート電極26)を形成するとともに、第2導電型チャネルMOSFET形成予定領域の金属酸化膜24の上に第3の金属ゲート電極膜(金属ゲート電極26)を形成する工程と、を含む。
【0029】
まず、図2(a)に示すように、半導体基板10上に素子分離酸化膜12を形成する。形成方法は、従来用いられているSTI(Shallow Trench Isolation)である。その後、NチャネルMOSFET形成領域にP−ウエル14、PチャネルMOSFET形成領域にN−ウエル15を形成する。そして、NチャネルMOSFET形成領域およびPチャネルMOSFET形成領域に、界面絶縁膜16として1.0nmのシリコン酸窒化膜を形成する(図2(b))。形成方法は、硫酸/過酸化水素水混合液、オゾン水、塩酸/オゾン水、熱酸化後によりシリコン酸化膜を形成し、つづいて、プラズマ窒化を用いて形成する。
【0030】
その後、図2(c)に示すように、界面絶縁膜16上に高誘電率膜18を形成する。高誘電率膜18は、HfSiON、HfO、ZrOから選ばれる絶縁膜である。本実施形態では、HfO膜を用いた。高誘電率膜18の膜厚は、たとえば1.0nm以上、5.0nm以下である。形成方法としては、CVD法、ALCVD法、スパッタ法等を用いることができる。
【0031】
そして、図2(d)に示すように、NチャネルMOSFET形成予定領域およびPチャネルMOSFET形成予定領域における高誘電率膜18上の全面に、金属ゲート電極20を形成する。金属ゲート電極20はAl、TiN、W、TaN、TaSiN、Ru、TiAlから選ばれる金属である。本実施形態ではAlを用いた。膜厚は、たとえば1.0nm以上、20.0nm以下である。
【0032】
次に、金属ゲート電極20の全面を覆うように、レジストを形成した後、図3(a)に示すように、NチャネルMOSFET形成領域におけるレジストを開口して、NチャネルMOSFET形成領域の金属ゲート電極20を露出する。これによって、レジストマスク22を形成する(図3(a))。
【0033】
続いて、NチャネルMOSFET形成領域の金属ゲート電極20を除去する。これにより、NチャネルMOSFET形成領域に、金属ゲート電極20の開口部を形成する。除去には、H液によるWetエッチング、もしくはDryエッチングを用いることができる。さらに、有機剥離液を用いてウエット処理により、レジストマスク22を除去する(図3(b))。レジストマスク22の除去には、有機剥離液以外に、酸素プラズマアッシング、H/Nアッシング等を用いてもよい。
【0034】
次に、図3(c)に示すように、金属酸化膜24を形成する。金属酸化膜24は、La、Al、Ta、ZrO、HfOから選ばれる。本実施形態では、Laを用いた。膜厚は、たとえば0.1nm以上、10.0nm以下の範囲である。形成方法としては、CVD法、ALCVD法、スパッタ法等を用いることができる。
【0035】
続いて、金属酸化膜24の全面を覆うように、金属ゲート電極26を形成する。金属ゲート電極26としては、例えば、TiN、W、TaN、TaSiN、Ru、TiAl、Alを用いることができる。本実施形態では、金属ゲート電極26にTiNを用いる。
続いて、金属ゲート電極26上にシリコン電極28を形成する。シリコン電極28は、アモルファスシリコンから構成されている。シリコン電極28(アモルファスシリコン)の膜厚は、たとえば10nm以上、100nm以下である。シリコン電極28として、アモルファスシリコン以外に、ポリシリコンを用いてもよい。
その後、ハードマスク30を成膜する。ハードマスク30は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜から選ばれる膜である(図3(d))。
【0036】
さらに、図4(a)に示すように、NチャネルMOSFET形成領域(Pウエル14)およびPチャネルMOSFET形成領域(Nウエル15)のそれぞれのゲート電極形成予定領域上に、レジストマスク32を形成する。
次に、Dryエッチング及びWet処理により、図4(b)に示すように、ゲート絶縁膜およびゲート電極をゲート形状に加工する。その後、図4(b)に示すように、ハードマスク30を除去する。
【0037】
そして、シリコン窒化膜をALCVD法より形成し、図4(c)に示すように、オフセットスペーサー34を形成する。オフセットスペーサー用の膜は、シリコン酸化膜もしくは、シリコン窒化膜/シリコン酸化膜の積層構造でもよい。
【0038】
その後、レジストマスク36によりPチャネルMOSFET形成領域をマスクした状態で、NチャネルMOSFET形成領域に、Extension領域38をイオン注入により形成する(図4(d))。注入条件は、たとえば、As 2keV 8E14atoms/cm 0度、BF 50keV 3E13atoms/cm 30度である。続いて、PチャネルMOSFET領域に、同様にレジストマスク40にてNチャネルMOSFET形成領域をマスクした状態で、Extension領域42をイオン注入により形成する(図5(a))。注入条件は、たとえば、BF 3keV 8E14atoms/cm 0度、As 50keV 3E13atoms/cm 30度である。
【0039】
続いて、シリコン窒化膜もしくはシリコン酸化膜を成膜し、ドライエッチングにより、図5(b)に示すように、サイドウォールスペーサー44を形成する。
その後、レジストマスク46によりPチャネルMOSFET形成領域をマスクした状態で、NチャネルMOSFET形成領域に、Deep SD領域48をイオン注入により形成する(図5(c))。注入条件は、As 20keV 3E15atoms/cm 0度、P 20keV 5E13atoms/cm 0度である。この時、シリコン電極28にもイオン注入が行われ、N型シリコン電極50が形成される。
【0040】
続いて、PチャネルMOSFET形成領域に、同様にレジストマスク52にてNチャネルMOSFET形成領域をマスクした状態で、Deep SD領域54をイオン注入により形成する(図5(d))。注入条件は、B 7keV 5.0E13atoms/cm 0度、BF 9keV 2E15atoms/cm 0度である。この時、シリコン電極28にもイオン注入が行われ、P型シリコン電極56が形成される。
【0041】
そして、レジストマスク除去後、熱処理を行い、Extension、Deep SD領域を活性化させる。熱処理条件は、たとえば、1050℃、0秒である。
その後、図6(a)に示すように、シリサイド膜58、60、62、64を形成する。シリサイド膜の形成方法は、たとえば次に示す方法を用いることができる。まず、NiPt合金膜をスパッタ法により、膜厚8nm程度形成する。NiPt合金膜中のPt含有量は約5%である。続いて、温度375℃で熱処理して、1次シリサイド層を形成する。そして、未反応のNiPt膜を王水により除去し、1次シリサイド層の表面を露出させる。次に温度500℃で、熱処理することにより、2次シリサイド膜を形成する。これにより、シリサイド層60、62、64、66が形成される(図6(a))。シリサイド膜としては、NiPtSi以外に、NiSi、PtSiを用いてもよい。
【0042】
次に、図6(b)に示すように、コンタクトエッチングストッパー膜66を成膜する。膜種は、たとえばシリコン窒化膜等を用いることができる。膜厚は、たとえば10nm以上、100nm以下とすることができる。さらに、図6(c)に示すように、シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜68を成膜した後、図6(d)に示すようにコンタクト70を形成する。このようにして、図1に示す、半導体装置1が製造される。
【0043】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
上記の実施形態における半導体装置においては、PチャネルMOSFETの金属ゲート電極20(第1の金属ゲート電極)と、金属ゲート電極26(第2の金属ゲート電極)との間に、金属酸化膜24(金属酸化物)が介在している。金属酸化物は、シリコン酸化物や金属窒化物よりも標準生成エンタルピーが低いため、熱的に安定である。したがって、金属酸化膜24と上下の金属ゲート電極との化学反応を抑制し、かつ金属ゲート電極を構成する金属原子が第1の金属ゲート電極層に拡散することを防ぐことができる。このため、金属ゲート電極を有するMOSFETの仕事関数を十分に制御することができ、閾値電圧の変動を抑制するという優れた効果を有する。これにより、閾値電圧の制御性に優れた半導体装置が得られる。
【0044】
ここで、標準生成エンタルピー(以下、Hと略すときもある[kJ/mol])の具体的な値を比較してみる。標準生成エンタルピー値の出典は、「化学便覧 基礎編 改訂5版 発行所:丸善株式会社 編者:社団法人日本化学会」である。
金属酸化物(金属酸化膜24)の標準生成エンタルピーは、Laでは、−1793.7kJ/mol、Alでは、−1675.7kJ/mol、Taでは、−2046kJ/mol、ZrOでは、−1100.56kJ/mol、HfOでは、−1144.7kJ/molである。一方、シリコン酸化物であるSiOの標準生成エンタルピーは、−910.94kJ/molである。よって、シリコン酸化物よりも金属酸化物のほうが安定であることがわかる。上記出典に記載されているとおり、金属窒化物より金属酸化物の標準生成エンタルピーが低いので、Al等の金属酸化物のほうが安定である。
【0045】
一般的に、標準生成エンタルピーの負の絶対値の大きさは、酸化物の還元されにくさを示す。
しかしながら、発明者は、MOSFET中のゲート電極の技術分野においては、シリコン酸化物や金属窒化は還元され分解されてしまうため、シリコン酸化物や金属窒化物程度のHの負の絶対値の大きさでは足りないことを発見した。
これに対して、本発明においては、上記金属酸化物の標準生成エンタルピーは、シリコン酸化物や金属窒化物程度のHの負の絶対値より大きい、−1000kJ/mol以上とすることができる。Hが−1000kJ/mol以上であると、上記技術分野において、金属酸化物は、特に還元されにくくなり熱に対して安定性を示す。このため、金属酸化物は、他の金属膜等と化学反応を起こしにくくなる。また、金属酸化物は熱的に安定となり、酸素欠損が形成され難くなる。このため、金属原子が金属酸化物(金属酸化膜24)を介して拡散することを抑制することができる。
また、特に、金属酸化物について還元反応が起きにくくする観点から、本発明の金属酸化物の酸素単位あたりの標準生成エンタルピーは、−500kJ/mol以上とすることができる。
【0046】
次に、特許文献1に記載の発明と対比しつつ本実施の形態の効果について説明する。
例えば、ゲート絶縁膜上に、TiN、SiO、TiNを積層したゲート電極構造を用いた場合(特許文献1の構成)を考えると、標準生成エンタルピーから、金属酸化物の場合に比べてSiOは容易に分解されて、TiOに化学変化してしまう。このため、仕事関数制御が不十分となって、閾値電圧の変動を生じる。
【0047】
また、ゲート絶縁膜上に、Al、SiO、TiNを積層したゲート電極構造を用いた場合(特許文献1の構成)を考えると、標準生成エンタルピーから、上層のTiがSiOを突き抜けてAl中にまで容易に拡散してしまう。このため、仕事関数制御が不十分となって、閾値電圧の変動を生じる。
【0048】
これに対して、本実施形態では、NチャネルMOSFETにおいて、HfOからなる高誘電率膜18とTiNからなる金属ゲート電極26との間に、Laからなる金属酸化膜24を有する。これにより、NチャネルMOSFETにおいても閾値電圧の制御もすることができる。つまり、PチャネルMOSFETおよびNチャネルMOSFETともに、閾値電圧の制御を安定して行うことができる。Laに代えて、金属酸化膜24としてAl、Ta、ZrO、HfOを用いた場合にも同様の効果が得られた。
【0049】
本発明による半導体装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、PチャネルMOSFETの金属ゲート電極20と金属ゲート電極26を構成する材料が異なる場合を示したが、金属ゲート電極20と金属ゲート電極26を構成する材料は同じであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 半導体装置
10 半導体基板
12 素子分離用絶縁膜
14 P−ウエル
15 N−ウエル
16 界面絶縁膜
18 高誘電率膜
19 ゲート絶縁膜
20 金属ゲート電極
21 ゲート絶縁膜
22 レジストマスク
24 金属酸化膜
26 金属ゲート電極
28 シリコン電極層
30 ハードマスク
32 レジストマスク
34 オフセットスペーサー
36 レジストマスク
38 エクステンション領域
40 レジストマスク
42 エクステンション領域
44 サイドウォールスペーサー膜
46 レジストマスク
48 Deep SD領域
50 N型シリコン電極層
52 レジストマスク
54 Deep SD領域
56 P型シリコン電極層
58 シリサイド層
60 シリサイド層
61 ゲート電極
62 シリサイド層
64 シリサイド層
65 ゲート電極
66 コンタクトエッチングストッパー膜
68 層間絶縁膜
70 コンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に第1導電型チャネルMOSFETを備える半導体装置であって、
前記半導体基板の上に設けられた第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のゲート絶縁膜の上に設けられた第1の金属ゲート電極と、
前記第1の金属ゲート電極の上に設けられた金属酸化膜と、
前記金属酸化膜の上に設けられた第2の金属ゲート電極と、を含む、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体基板上に、第2導電型チャネルMOSFETをさらに備え、
前記第2導電型チャネルMOSFETは、
前記半導体基板の上に設けられた前記第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のゲート絶縁膜の上に設けられた第3の金属ゲート電極と、を含む、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記第2導電型チャネルMOSFETは、前記第2のゲート絶縁膜と前記第3の金属ゲート電極との間に、金属酸化膜をさらに含む、半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の半導体装置において、
前記金属酸化膜は、La、Al、Ta、ZrO、HfOからなる群から選択される少なくとも一つを含む、半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の半導体装置において、
前記金属酸化膜の膜厚は、0.1nm以上10.0nm以下である、半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の半導体装置において、
前記第1の金属ゲート電極は、Al、TiN、W、TaN、TaSiN、Ru、TiAlからなる群から選択される少なくとも一つを含む、半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の半導体装置において、
前記第2の金属ゲート電極は、TiN、W、TaN、TaSiN、Ru、TiAl、Alからなる群から選択される少なくとも一つを含む、半導体装置。
【請求項8】
請求項2乃至7いずれかに記載の半導体装置において、
前記第3の金属ゲート電極は、TiN、W、TaN、TaSiN、Ru、TiAl、Alからなる群から選択される少なくとも一つを含む、半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかに記載の半導体装置において、
前記第1導電型チャネルMOSFETはPチャネルMOSFETである、半導体装置。
【請求項10】
請求項2乃至9いずれかに記載の半導体装置において、
前記第2導電型チャネルMOSFETはNチャネルMOSFETである、半導体装置。
【請求項11】
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に、第1の金属ゲート電極層を形成する工程と、
前記第1のゲート電極層の上に金属酸化膜を形成する工程と、
前記金属酸化膜の上に第2の金属ゲート電極層を形成する工程と、を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
半導体基板上に第1導電型チャネルMOSFETと第2導電型チャネルMOSFETを備える半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板の第1導電型チャネルMOSFET形成予定領域および第2導電型チャネルMOSFET形成予定領域のそれぞれに第1のゲート絶縁膜および第2のゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記第1のゲート絶縁膜上に、第1の金属ゲート電極層を形成する工程と、
前記第1の金属ゲート電極層上および前記第2のゲート絶縁膜の上のそれぞれに金属酸化膜を形成する工程と、
前記第1導電型チャネルMOSFET形成予定領域の前記金属酸化膜の上に第2の金属ゲート電極膜を形成するとともに、前記第2導電型チャネルMOSFET形成予定領域の前記金属酸化膜の上に第3の金属ゲート電極膜を形成する工程と、を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の半導体装置の製造方法において、
前記金属酸化膜は、La、Al、Ta、ZrO、HfOからなる群から選択される少なくとも一つからなること、を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11乃至13いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記金属酸化膜の膜厚は、0.1nm以上10.0nm以下である、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項11乃至14いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の金属ゲート電極層は、Al、TiN、W、TaN、TaSiN、Ru、TiAlからなる群から選択される少なくとも一つからなること、を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項11乃至15いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の金属ゲート電極は、TiN、W、TaN、TaSiN、Ru、TiAl、Alからなる群から選択される少なくとも一つからなること、を特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項12乃至16いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3の金属ゲート電極は、TiN、W、TaN、TaSiN、Ru、TiAl、Alからなる群から選択される少なくとも一つを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項12乃至17いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1導電型チャネルMOSFETはPチャネルMOSFETである、半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項12乃至18いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2導電型チャネルMOSFETはNチャネルMOSFETである、半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−29483(P2011−29483A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175192(P2009−175192)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】