説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】溝型の素子間分離部により囲まれた活性領域に形成される電界効果トランジスタにおいて、所望する動作特性を得ることのできる技術を提供する。
【解決手段】素子分離部SIOを、溝型素子分離膜6L,6Sと、溝型素子分離膜6L,6Sの上面に形成されたシリコン膜またはシリコン酸化膜からなる厚さ10〜20nmの拡散防止膜20と、拡散防止膜20の上面に形成された厚さ0.5〜2nmのシリコン酸化膜21L,21Sとから構成し、拡散防止膜20の組成をSiOx(0≦x<2)とし、溝型素子分離膜6L,6Sおよびシリコン酸化膜21L,21Sの組成をSiOとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、半導体基板の主面に形成された溝型の素子間分離部により囲まれた活性領域に形成される電界効果トランジスタを有する半導体装置およびその製造に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSI(Large Scale Integration)に用いられる半導体素子の微細化に応じて、各半導体素子を互いに電気的に分離する素子間分離部の微細化も進んでいる。近年は、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法に比べて高集積化および分離能力の向上が期待できる溝素子分離(Trench Isolation)法がLSIに広く利用されている。
【0003】
例えば米国特許出願公開2007/0111470号明細書(特許文献1)には、溝の内壁にシリコン窒化膜(liner layer)を形成した後、溝の底部のみに酸化膜(oxide layer)を形成し、その後、溝の内部をシリコン酸化膜(silicon oxide layer)で埋め込むことにより溝型の素子間分離部を形成する方法が開示されている。
【0004】
また、米国特許第7645679号明細書(特許文献2)には、溝の内壁に熱酸化膜(thermal oxidation layer)を形成し、さらにその上にシリコン−リッチ酸化膜(silicon rich oxide)を形成した後、溝の内部を酸化膜(oxidation isolation layer)で埋め込むことにより溝型の素子間分離部を形成する方法が開示されている。
【0005】
また、米国特許第6331472号明細書(特許文献3)には、溝の内壁に酸化膜(oxide layer)およびシリコン−リッチ酸化膜(silicon-rich oxide)を積層した後、溝の内部をシリコン酸化膜(silicon oxide)で埋め込み、その表面を研磨することで、溝の内部に埋め込まれたシリコン酸化膜の上面が平坦である溝型の素子間分離部を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開2007/0111470号明細書
【特許文献2】米国特許第7645679号明細書
【特許文献3】米国特許第6331472号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、溝型の素子間分離法については、以下に説明する種々の技術的課題が存在する。
【0008】
例えば、互いに厚さの異なるゲート絶縁膜を有する複数の電界効果トランジスタを製造する場合、互いに厚さの異なるゲート絶縁膜を形成する工程において、ウエットエッチング法を繰り返し用いるが、そのウエットエッチング法を繰り返し用いた影響で溝の内部に埋め込まれた溝型素子分離膜の上面の端部に窪みが発生することがある。その窪みにゲート絶縁膜およびゲート電極が入り込むと、溝型素子分離膜により囲まれた活性領域の半導体基板の主面の端部がゲート絶縁膜およびゲート電極によって囲まれてしまう。そのため、電界効果トランジスタが動作すると、活性領域の半導体基板の主面の端部にゲート電極からの電界が強く働いて反転層が形成されやすくなり、電界効果トランジスタのしきい値電圧が下がるという問題が生じる。
【0009】
また、互いに厚さの異なるゲート絶縁膜を有する複数の電界効果トランジスタを製造する場合、互いに厚さの異なるゲート絶縁膜を形成する工程において、熱酸化法を繰り返し用いるが、その熱酸化時に用いる酸化分子または水分子などの酸化種が溝型素子分離膜の中を拡散して、溝型素子分離膜と半導体基板との間において酸化反応が進むことがある。このとき、溝型素子分離膜は上記酸化反応により生じた酸化膜の分だけ体積膨張し、その結果、溝型素子分離膜で囲まれた活性領域に応力をもたらす。この応力は半導体基板の電子の速度(すなわち移動度(Mobility))を変化させるため、電界効果トランジスタの動作速度が変化し、所望する速度で集積回路が動かなくなるなどの不具合をもたらす原因となる。
【0010】
また、近年、駆動能力を向上させるために、ゲート絶縁膜をHigh−k材料で構成し、ゲート電極を金属材料で構成する電界効果トランジスタの採用が検討されている。しかし、この電界効果トランジスタにおいては、溝型素子分離膜から放出された酸化種がゲート絶縁膜を構成するHigh−k材料およびゲート電極を構成する金属材料の中に拡散して、しきい値電圧が変動するという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、溝型の素子間分離部により囲まれた活性領域に形成される電界効果トランジスタにおいて、所望する動作特性を得ることのできる技術を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
この実施の形態は、半導体基板の主面の所定の領域に形成された溝と、溝の内部に埋め込まれた溝型素子分離膜と、溝型素子分離膜の上面に形成された厚さ10〜20nmの拡散防止膜と、拡散防止膜の上面に形成された厚さ0.5〜2nmの上層シリコン酸化膜とから構成される素子間分離部を有し、素子間分離部に囲まれた半導体基板の活性領域に、半導体基板の主面上に形成された酸化膜とHigh−k膜との積層膜からなるゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜の上面に形成された金属膜からなるゲート電極と、ゲート電極の両側の半導体基板に形成された半導体領域とから構成される電界効果トランジスタを有する半導体装置であって、溝型素子分離膜)および上層シリコン酸化膜の組成をSiO、拡散防止膜の組成をSiOx(0≦x<2)とするものである。
【0015】
また、この実施の形態は、電界効果トランジスタを形成する半導体装置の製造方法であって、電界効果トランジスタを互いに電気的に分離する素子間分離部の製造工程が、半導体基板の主面上にパッド絶縁膜およびマスク絶縁膜を下から順次形成した後、所定の領域のマスク絶縁膜、パッド絶縁膜、および半導体基板を除去して、半導体基板の主面に所定の幅および深さを有する溝を形成する工程と、溝の内壁に内壁酸化膜を形成する工程と、溝の内部を含む半導体基板の主面上に、下層シリコン酸化膜を形成した後、マスク絶縁膜をストッパー膜として下層シリコン酸化膜の表面を研磨して、溝が形成されていない領域の下層シリコン酸化膜を除去する工程と、溝が形成された領域の下層シリコン酸化膜の上面の位置が、溝が形成されていない半導体基板の主面の位置と同じとなるように、下層シリコン酸化膜を加工して溝型素子分離膜を形成する工程と、半導体基板の主面上に拡散防止膜を形成し、さらに、その上に上層シリコン酸化膜を形成する工程と、マスク絶縁膜をストッパー膜として上層シリコン酸化膜の表面を研磨して、溝が形成されていない領域の上層シリコン酸化膜を除去した後、マスク絶縁膜の上面の拡散防止膜を除去する工程と、溝が形成された領域の上層シリコン酸化膜を加工して所定の厚さとする工程と、マスク絶縁膜、パッド絶縁膜、および上層シリコン酸化膜の側面の拡散防止膜を除去する工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0017】
溝型の素子間分離部により囲まれた活性領域に形成される電界効果トランジスタにおいて、所望する動作特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態による電界効果トランジスタの構造を説明する電界効果トランジスタのゲート長方向およびゲート幅方向に沿った要部断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態による電界効果トランジスタの製造工程を説明する電界効果トランジスタのゲート長方向およびゲート幅方向に沿った要部断面図である。
【図3】図2に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図4】図3に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図5】図4に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図6】図5に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図7】図6に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図8】図7に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図9】図8に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図10】図9に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図11】図10に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図12】図11に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図13】図12に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図14】図13に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図15】図14に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図16】図15に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図17】図16に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図18】図17に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図2と同じ箇所の要部断面図である。
【図19】本発明に先立って本発明者によって検討された電界効果トランジスタの製造工程を説明する電界効果トランジスタのゲート長方向およびゲート幅方向に沿った要部断面図である。
【図20】図19に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図19と同じ箇所の要部断面図である。
【図21】図20に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図19と同じ箇所の要部断面図である。
【図22】図21に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図19と同じ箇所の要部断面図である。
【図23】図22に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図19と同じ箇所の要部断面図である。
【図24】図23に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図19と同じ箇所の要部断面図である。
【図25】図24に続く電界効果トランジスタの製造工程中の図19と同じ箇所の要部断面図である。
【図26】(a)、(b)、および(c)はそれぞれ図25に続く電界効果トランジスタの製造工程中の要部平面図、図26(a)のA−A′線に沿った要部断面図、および図26(a)のB−B′線に沿った要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0020】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0021】
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態においては、電界効果トランジスタを代表するMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)をMISと略し、pチャネル型のMISFETをpMIS、nチャネル型のMISFETをnMISと略す。また、以下の実施の形態において、ウエハと言うときは、Si(Silicon)単結晶ウエハを主とするが、それのみではなく、SOI(Silicon On Insulator)ウエハ、集積回路をその上に形成するための絶縁膜基板等を指すものとする。その形も円形またはほぼ円形のみでなく、正方形、長方形等も含むものとする。
【0022】
また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明の一実施の形態による溝型の素子分離部の構造がより明確となると思われるため、本発明に先駆けて本発明者が検討した、ゲート絶縁膜を比誘電率の高いHigh−k材料で構成した電界効果トランジスタの製造方法について図19〜図26を用いて工程順に説明する。図19〜図25はnMISおよびpMISの要部断面図であり、それぞれのゲート長方向に沿った断面図とゲート幅方向に沿った断面図とを示している。図26(a)、(b)、および(c)はそれぞれnMISとpMISの要部平面図、同図(a)のA−A′線に沿った要部断面図、および同図(b)のB−B′線に沿った要部断面図である。
【0024】
まず、図19に示すように、例えば単結晶シリコンに、例えばボロン(B)などのp型不純物を導入した半導体基板(この段階では半導体ウエハと称する平面略円形状の半導体の薄板)1を用意する。続いて、半導体基板1の主面上に、シリコン酸化膜2およびシリコン窒化膜3を順次形成する。シリコン酸化膜2の厚さは、例えば5〜20nm程度、シリコン窒化膜3の厚さは、例えば30〜100nm程度である。
【0025】
次に、リソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、半導体基板1の所望する領域に、種々の溝幅を有する複数の溝4L,4Sを形成する。ここで、図中の符号4Sは最小の溝幅を有する溝を示し、符号4Lはそれよりも溝幅の広い溝を示す。溝4L,4Sの深さは、例えば半導体基板1の主面から150〜400nm程度であり、最小の溝幅を有する溝4Sの溝幅は20〜50nm程度である。
【0026】
次に、図20に示すように、溝4L,4Sの内部を洗浄した後、溝4L,4Sの内壁(側面および底面)の半導体基板1を熱酸化法により酸化して、内壁酸化膜5を形成する。内壁酸化膜5の厚さは、例えば3〜10nm程度である。
【0027】
次に、図21に示すように、例えばSA−CVD(Sub-Atmospheric Chemical Vapor Deposition)法を用いて、溝4L,4Sの内部を含む半導体基板1の主面上にシリコン酸化膜6を堆積する。シリコン酸化膜6の形成は、SA−CVD法に限定されるものではなく、HDP−CVD(High Density Plasma Chemical Vapor Deposition)法などの他のCVD法または塗布法を用いてもよい。さらに、埋め込み性または膜質などを鑑みて溝4L,4Sの内部の下と上とで互いに異なる製法で形成された膜を積層してもよい。
【0028】
次に、図22に示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて、シリコン窒化膜3をストッパー膜としてシリコン酸化膜6の表面を研磨する。これにより、溝4L,4Sの内部にシリコン酸化膜6が埋め込まれて溝型素子分離膜6L,6Sとなる。ここで、溝4Lの内部に埋め込まれたシリコン酸化膜6が溝型素子分離膜6Lであり、溝4Sの内部に埋め込まれたシリコン酸化膜6が溝型素子分離膜6Sである。
【0029】
次に、図23に示すように、熱リン酸を用いて、シリコン窒化膜3を除去する。次に、nMIS形成領域の半導体基板1に、イオン注入法を用いてp型不純物(例えばボロン(B))を選択的に導入することにより、p型ウェル7を形成する。この際、シリコン酸化膜2をスクリーン膜として用いる。同様に、pMIS形成領域の半導体基板1に、イオン注入法を用いてn型不純物(例えばリン(P)またはヒ素(As))を選択的に導入することにより、n型ウェル8を形成する。この際、シリコン酸化膜2をスクリーン膜として用いる。なお、p型ウェル7およびn型ウェル8を形成する前に、一旦シリコン酸化膜2を除去し、半導体基板1の主面に熱酸化法などの方法により新たにシリコン酸化膜を形成して、これをスクリーン膜としてもよい。続いて、nMISおよびpMISのそれぞれのしきい値電圧を調整するための不純物を半導体基板1にイオン注入法を用いて導入する。
【0030】
次に、フッ化水素酸を含む溶液を用いたウエットエッチング法によりシリコン酸化膜2を除去した後、熱酸化法により半導体基板1の主面に、例えば2〜6nm程度の厚さの第1酸化膜(図示は省略)を形成する。この第1酸化膜は、入出力回路または電源回路等に用いられ、例えば2.5V程度の高い耐圧が要求される電界効果トランジスタのゲート絶縁膜に用いられる。その後、リソグラフィ法およびフッ化水素酸を含む溶液を用いたウエットエッチング法を用いて、所望する領域のみに第1酸化膜を残し、他の領域の第1酸化膜を除去する。なお、ここで説明するnMISおよびpMISは第1酸化膜が除去された領域に形成される。
【0031】
次に、図24に示すように、第1酸化膜が除去された領域の半導体基板1の主面に、熱酸化法などを用いて第2酸化膜9を形成する。第2酸化膜9は、例えばシリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜であり、その厚さは、例えば0.5〜1.5nm程度である。この第2酸化膜9は、メモリ回路またはプロセッサ回路等に用いられ、例えば1.0V程度の低い耐圧が要求される電界効果トランジスタのゲート絶縁膜に用いられる。ここで、熱酸化法などを用いて形成した第2酸化膜9に代えて、自然酸化または化学処理で成膜される、例えば厚さが0.1〜1.5nm程度の酸化膜を用いることもできる。
【0032】
ここでは、半導体基板1の主面には、互いに厚さの異なる2種類の酸化膜(第1酸化膜(厚さ2〜6nm程度)と第2酸化膜9(厚さ0.5〜1.5nm程度))を形成したが、LSIの機能を高めるために、互いに厚さの異なる3種類以上の酸化膜を形成してもよい。前述した要領で、リソグラフィ法およびウエットエッチング法を繰り返すことにより、互いに厚さの異なる3種類以上の酸化膜を形成することができる。
【0033】
次に、第2酸化膜9上に、CVD法を用いてハフニウム酸化膜(HfO)などのHigh−k膜10を形成する。High−k膜10の厚さは、例えば0.5〜2nm程度である。
【0034】
次に、図25に示すように、High−k膜10上にキャップ膜(図示は省略)を介してゲート電極材料として金属膜11aと多結晶シリコン膜11bとを積層した多層膜を形成する。この多層膜の厚さは、例えば50〜100nm程度である。
【0035】
次に、図26(a)、(b)、および(c)に示すように、リソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、多結晶シリコン膜11bおよび金属膜11aを所定の形状に加工してゲート電極12を形成し、さらに、High−k膜10を所定の形状に加工する。その後、半導体基板1の主面上にシリコン窒化膜などの絶縁膜を堆積した後、ドライエッチング法を用いてこの絶縁膜をエッチバックすることにより、ゲート電極12およびHigh−k膜10の側面にサイドウォール13を形成する。
【0036】
続いて、nMIS形成領域に、イオン注入法を用いて、ゲート電極12およびサイドウォール13に対して自己整合的にn型不純物(例えばリン(P)またはヒ素(As))を導入して、ソース・ドレインを構成するn型半導体領域14を形成する。同様に、pMIS形成領域に、イオン注入法を用いて、ゲート電極12およびサイドウォール13に対して自己整合的にp型不純物(例えばボロン(B)またはフッ化ボロン(BF))を導入して、ソース・ドレインを構成するp型半導体領域15を形成する。その後、ゲート電極12およびソース・ドレイン(nMISのn型半導体領域14およびpMISのp型半導体領域15)の上面に抵抗を下げるためのシリサイド膜16(例えばニッケルシリサイド等)を形成する。
【0037】
その後、nMISおよびpMISは、それぞれ金属配線等によりその他の半導体素子と電気的に接続されて集積回路が形成される。
【0038】
しかしながら、互いに厚さの異なる2種類の酸化膜(第1酸化膜と第2酸化膜9)を形成した場合、前述の図24に示すように、ウエットエッチング法を用いた影響で、溝幅の広い溝4Lに形成された溝型素子分離膜6Lの上面の端部(溝素子分離膜6Lの上面の溝4Lの側面に沿った部分)に窪み(Divot)が発生する。溝幅の狭い溝4Sに形成された溝型素子分離膜6Sでも窪みは発生して、溝型素子分離膜6Sは、全体に厚さが目減りした形状となる。前述の図23に点線で示すように、ウエットエッチング法は半導体基板1にダメージを与えることはないが、その等方性により溝型素子分離膜6L,6Sの端部では、露出した溝型素子分離膜6L,6Sの側面からもウエットエッチングが進むため、窪みが生じてしまう。
【0039】
窪みにHigh−k膜10が入り込むと、活性領域の半導体基板1の主面の端部は、High−k膜10およびゲート電極12によって囲まれてしまう。そのため、電界効果トランジスタが動作する場合、活性領域の半導体基板1の主面の端部にゲート電極12からの電界が強く働いて反転層が形成されやすくなり、電界効果トランジスタのしきい値電圧が下がるという問題が生じる。微細化が進んだLSIでは、電界効果トランジスタが形成される活性領域に占める窪みの割合が大きくなるため、電界効果トランジスタの動作特性に及ぼす窪みの影響が大きくなる。また、互いに厚さの異なる3種類以上の酸化膜を形成した場合は、ウエットエッチング法を繰り返し用いるため、窪みがより深く形成される可能性があり、電界効果トランジスタの動作特性に及ぼす窪みの影響は深刻である。
【0040】
また、互いに厚さの異なる2種類の酸化膜(第1酸化膜と第2酸化膜9)を形成した場合、熱酸化法を繰り返し用いるため、その熱酸化時に用いる酸化分子または水分子などの酸化種が溝型素子分離膜6L,6Sの中を拡散して、溝型素子分離膜6L,6Sと半導体基板1との間において酸化反応が進むことがある。このとき、溝型素子分離膜6L,6Sは上記酸化反応により生じた酸化膜の分だけ体積膨張し、その結果、溝型素子分離膜6L,6Sで囲まれた活性領域に応力をもたらす。この応力は半導体基板1の電子の速度(すなわち移動度)を変化させるため、電界効果トランジスタの動作速度が変化し、所望する速度で集積回路が動かなくなるなどの不具合をもたらす原因となる。
【0041】
また、溝型素子分離膜6L,6Sから放出された酸化種がHigh−k膜10およびゲート電極12を構成する金属膜11aの中に拡散することがある。この場合も、電界効果トランジスタのしきい値電圧が変動する可能性がある。
【0042】
(実施の形態)
本発明の一実施の形態によるゲート絶縁膜を比誘電率の高いHigh−k材料で構成し、ゲート電極を金属材料で構成する電界効果トランジスタ(nMISおよびpMIS)の構造を図1を用いて説明する。図1は、nMISおよびpMISの要部断面図であり、それぞれのゲート長方向に沿った断面図とゲート幅方向に沿った断面図とを示している。
【0043】
半導体基板1の主面には、半導体基板1に形成される素子間の干渉を防止する機能を有する素子間分離部SIOが形成されている。素子間分離部SIOに囲まれた半導体基板1は活性領域と呼ばれ、この活性領域に種々の半導体素子が形成される。本実施の形態では、これら半導体素子のうち、nMISおよびpMISを例示している。
【0044】
素子間分離部SIOは、半導体基板1に形成された溝4L,4Sと、溝4L,4Sの内壁(側面および底面)に形成された内壁酸化膜5と、内壁酸化膜5を介して溝4L,4Sの内部を埋め込むように形成された溝型素子分離膜(下層シリコン酸化膜)6L,6Sとから構成される。溝4Sは最小の溝幅を有する溝であり、溝4Lは溝4Sよりも溝幅の広い溝である。溝4L,4Sの深さは、例えば半導体基板1の主面から150〜400nm程度であり、内壁酸化膜5の厚さは、例えば3〜10nm程度である。溝型素子分離膜6L,6Sは、ほぼ化学量論的組成(SiO)を有するシリコン酸化膜からなる。また、溝4L,4Sの内部に埋め込まれた溝型素子分離膜6L,6Sの上面は平坦であり、溝型素子分離膜6L,6Sの上面の端部には窪みは形成されていない。
【0045】
さらに、溝4L,4Sの内部に埋め込まれた溝型素子分離膜6L,6Sの上面は拡散防止膜(シリコン膜またはシリコンリッチ酸化膜)20により覆われている。拡散防止膜20は、シリコン膜またはシリコンリッチ酸化膜からなる。シリコンリッチ酸化膜は、化学量論的組成(SiO)よりもシリコンの比率が大きい(酸素の比率が小さい)シリコン酸化膜であり、その組成を化学式で表せばSiOx(0<x<2)となる。拡散防止膜20の厚さは、例えば3〜20nm程度であり、好適な厚さとしては、例えば10〜20nm程度である。
【0046】
さらに、拡散防止膜20の上面はシリコン酸化膜(上層シリコン酸化膜)21L,21Sにより覆われている。シリコン酸化膜21L,21Sは、ほぼ化学量論的組成(SiO)を有するシリコン酸化膜からなる。シリコン酸化膜21L,21Sの厚さは、例えば0.5〜2nm程度である。従って、SiOの組成を有する溝型素子分離膜6L,6SとSiOの組成を有するシリコン酸化膜21L,21Sとの間には、シリコン膜またはこれらの膜よりも酸素に対するシリコンの比率が大きいシリコンリッチ酸化膜からなる拡散防止膜20が形成されている。
【0047】
また、溝型素子分離膜6L,6Sの上面の位置は、溝4L,4Sが形成されていない半導体基板1の主面の位置とほぼ同じであるか、または溝4L,4Sが形成されていない半導体基板1の主面の位置よりも、例えば10nm程度低くなっている。このため、素子間分離部SIOと活性領域との境には、溝型素子分離膜6L,6Sの上面に形成された拡散防止膜20とシリコン酸化膜21L,21Sとの合計の厚さ分の段差が生じるが、その段差は最大でも20nm程度である。
【0048】
nMIS形成領域の半導体基板1の主面には半導体領域であるp型ウェル7が形成されており、pMIS形成領域の半導体基板1の主面には半導体領域であるn型ウェル8が形成されている。
【0049】
続いて、nMISの構成について説明する。
【0050】
nMIS形成領域(p型ウェル7)の半導体基板1の主面には、ゲート絶縁膜10nが形成されている。このゲート絶縁膜10nは、SiOの組成を有する第2酸化膜(ゲート酸化膜)9とSiOよりも比誘電率の高いHigh−k膜23nとから構成されている。High−k膜23nとしては、例えばハフニウム酸化(HfO)膜、ハフニウム酸窒化(HfON)膜、ハフニウムシリケート(HfSiO)膜、またはハフニウムシリケート窒化(HfSiON)膜のようなハフニウム系絶縁膜を使用する。このハフニウム系絶縁膜には、仕事関数を調整して所望するnMISのしきい値電圧を得るための金属元素、例えばランタン(La)が含まれている。従って、代表的なHigh−k膜23nの構成材料として、例えばハフニウムランタン酸窒化(HfLaON)を例示することができる。High−k膜23nの厚さは、例えば1nm程度である。
【0051】
また、半導体基板1とHigh−k膜23nとが直接接した場合、nMISの移動度が低下する恐れがあるが、半導体基板1とHigh−k膜23nとの間に第2酸化膜9を介在させることにより、上記移動度の低下を防ぐことができる。第2酸化膜9の厚さは、例えば0.5〜1.5nm程度である。
【0052】
ゲート絶縁膜10nの上面には、キャップ膜24nが形成されている。このキャップ膜24nは、例えばランタン酸化(LaO)膜であり、High−k膜23nを構成するハフニウム系絶縁膜に、nMISのしきい値電圧を得るための金属元素、すなわちランタン(La)を添加するために形成されている。なお、High−k膜23nを構成するハフニウム系絶縁膜に添加される金属元素として、ランタン(La)を例示したが、他の金属元素であってもよい。なお、キャップ膜24nを構成する金属元素が全てHigh−k膜23nに添加される場合もある。
【0053】
キャップ膜24nの上面には、チタンナイトライド(TiN)膜25と多結晶シリコン膜26とを積層した構造のゲート電極12が形成されている。チタンナイトライド(TiN)膜に代えて、他の金属膜を用いてもよい。チタンナイトライド(TiN)膜25の厚さは、例えば5〜20nm程度である。また、多結晶シリコン膜26の厚さは、例えば30〜80nm程度である。さらに、ゲート電極12の上面には、シリサイド膜16が形成されている。このシリサイド膜16は、例えばニッケルシリサイド(NiSi)膜または白金シリサイド(PtSi)膜である。
【0054】
ゲート電極12、キャップ膜24n、およびHigh−k膜23nからなる積層膜の両側の側壁には、内側から順に、例えば共に絶縁膜からなるオフセットサイドウォール27およびサイドウォール30が形成されている。また、ゲート電極12の両側の半導体基板1(p型ウェル7)には、n型半導体領域28が形成されており、n型半導体領域28の外側にはn型半導体領域31が形成されている。n型半導体領域31の上面には、ゲート電極12の上面に形成されたシリサイド膜16と同じ工程で形成されるシリサイド膜16が形成されている。
【0055】
続いて、pMISの構成について説明する。
【0056】
pMIS形成領域(n型ウェル8)の半導体基板1の主面には、ゲート絶縁膜10pが形成されている。このゲート絶縁膜10pは、SiOの組成を有する第2酸化膜(ゲート酸化膜)9とSiOよりも比誘電率の高いHigh−k膜23pとから構成されている。High−k膜23pとしては、例えばハフニウム酸化(HfO)膜、ハフニウム酸窒化(HfON)膜、ハフニウムシリケート(HfSiO)膜、またはハフニウムシリケート窒化(HfSiON)膜のようなハフニウム系絶縁膜を使用する。このハフニウム系絶縁膜には、仕事関数を調整して所望するpMISのしきい値電圧を得るための金属元素、例えばアルミニウム(Al)が含まれている。従って、代表的なHigh−k膜23pの構成材料として、例えばハフニウムアルミニウム酸窒化物(HfAlON)を例示することができる。High−k膜23pの厚さは、例えば1nm程度である。
【0057】
また、半導体基板1とHigh−k膜23pとが直接接した場合、pMISの移動度が低下する恐れがあるが、半導体基板1とHigh−k膜23pとの間に第2酸化膜9を介在させることにより、上記移動度の低下を防ぐことができる。第2酸化膜9の厚さは、例えば0.5〜1.5nm程度である。
【0058】
ゲート絶縁膜10pの上面には、キャップ膜24pが形成されている。このキャップ膜24pは、例えばアルミニウム酸化(AlO)膜であり、High−k膜23pを構成するハフニウム系絶縁膜に、pMISのしきい値電圧を得るための金属元素、すなわちアルミニウム(Al)を添加するために形成されている。なお、High−k膜23pを構成するハフニウム系絶縁膜に添加される金属元素として、アルミニウム(Al)を例示したが、他の金属元素であってもよい。なお、キャップ膜24pを構成する金属元素が全てHigh−k膜23pに添加される場合もある。
【0059】
キャップ膜24pの上面には、ゲート電極12が形成され、ゲート電極12の上面にはシリサイド膜16が形成されている。これらゲート電極12およびシリサイド膜16は、それぞれ前述したnMISのゲート電極12およびシリサイド膜16と同じ構成である。
【0060】
ゲート電極12、キャップ膜24p、およびHigh−k膜23pからなる積層膜の両側の側壁には、内側から順に、例えば共に絶縁膜からなるオフセットサイドウォール27およびサイドウォール30が形成されている。また、ゲート電極12の両側の半導体基板1(n型ウェル8)には、p型半導体領域29が形成されており、p型半導体領域29の外側にはp型半導体領域32が形成されている。p型半導体領域32の上面には、ゲート電極12の上面に形成されたシリサイド膜16と同じ工程で形成されるシリサイド膜16が形成されている。
【0061】
なお、本実施の形態では、ゲート電極12を金属膜と多結晶シリコン膜との積層膜により構成したが、金属膜のみで構成してもよい。この場合、シリサイド膜16はn型半導体領域31およびp型半導体領域32の上面のみに形成され、ゲート電極12の上面には形成されない。
【0062】
次に、本発明の一実施の形態による前述の図1に示した電界効果トランジスタの製造方法を図2〜図18を用いて工程順に説明する。図2〜図18は、nMISおよびpMISの要部断面図であり、それぞれのゲート長方向に沿った断面図とゲート幅に沿った断面図とを示している。
【0063】
まず、図2に示すように、例えば単結晶シリコンに、例えばボロン(B)などのp型不純物を導入した半導体基板(この段階では半導体ウエハと称する平面略円形状の半導体の薄板)1を用意する。続いて、半導体基板1の主面上に、シリコン酸化膜(パッド絶縁膜)2およびシリコン窒化膜(マスク絶縁膜)3を順次形成する。シリコン酸化膜2の厚さは、例えば5〜20nm程度、シリコン窒化膜3の厚さは、例えば30〜100nm程度である。
【0064】
次に、リソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、半導体基板1の所望する領域に、種々の溝幅を有する複数の溝4L,4Sを形成する。ここで、図中の符号4Sは最小の溝幅を有する溝を示し、符号4Lはそれよりも溝幅の広い溝を示す。溝4L,4Sの深さは、例えば半導体基板1の主面から150〜400nm程度であり、最小の溝幅を有する溝4Sの溝幅は20〜50nm程度である。また、ここでは、溝4L,4Sの側面とシリコン窒化膜3の側面とがほぼ同一面となるように加工されているが、溝4L,4Sの側面がシリコン窒化膜3の側面よりもはみ出した状態、すなわちオフセットが付いた状態となるように加工してもよい。
【0065】
次に、図3に示すように、溝4L,4Sの内部を洗浄した後、溝4L,4Sの内壁(側面および底面)の半導体基板1を熱酸化法により酸化して、内壁酸化膜5を形成する。内壁酸化膜5の厚さは、例えば3〜10nm程度である。熱酸化法として、ラジカル酸化法などの活性酸化種を用いる方法を使用すると、面方位が互いに異なる溝4L,4Sの側面と底面とを、ほぼ同じ酸化速度で均一に酸化することができる。オフセットが付いた状態で溝4L,4Sを形成した場合は、活性領域の半導体基板1の主面の端部がラウンド状に酸化されるので、電界効果トランジスタを動作させた際の電界集中による不具合を緩和することができる。
【0066】
次に、図4に示すように、例えば溝4L,4Sの内部を含む半導体基板1の主面上に塗布法を用いてポリシラザン(Polysilazane;−(SiH−NH)−)を堆積した後、水蒸気雰囲気で熱処理することにより、シリコン酸化膜(下層シリコン酸化膜)6を形成する。シリコン窒化膜3の上面に堆積されたポリシラザンの厚さは、例えば300〜700nm程度である。また、熱処理の温度は、例えば600〜800℃程度である。シリコン酸化膜6の形成は、上記ポリシラザンを用いた塗布法に限定されるものではなく、例えばSA−CVD法またはHDP−CVD法などの他のCVD法を用いてもよい。あるいは、シラノール(Silanol)系の材料を用いた成膜方法を用いてもよい。シリコン酸化膜6はほぼ化学量論的組成(SiO)を有している。
【0067】
次に、図5に示すように、CMP法を用いて、シリコン窒化膜3をストッパー膜としてシリコン酸化膜6の表面を研磨する。これにより、溝4L,4Sの内部にシリコン酸化膜6が埋め込まれて溝型素子分離膜(下層シリコン酸化膜)6L,6Sとなる。ここで、溝4Lの内部に埋め込まれたシリコン酸化膜6が溝型素子分離膜6Lであり、溝4Sの内部に埋め込まれたシリコン酸化膜6が溝型素子分離膜6Sである。
【0068】
次に、図6に示すように、フッ化水素酸を含む溶液を用いて、溝型素子分離膜6L,6Sの上面の半導体基板1の主面からの高さを調整する。ここでは、溝型素子分離膜6L,6Sの上面の位置と、半導体基板1の主面の位置とを同じとした場合を例示するが、溝型素子分離膜6L,6Sの上面の位置は、半導体基板1の主面の位置よりも、例えば10nm程度低くしてもよい。
【0069】
次に、図7に示すように、半導体基板1の主面上にシリコン膜またはシリコンリッチ酸化膜からなる拡散防止膜(シリコン膜またはシリコンリッチ酸化膜)20を堆積する。拡散防止膜20の厚さが、例えば50nm以上あると、拡散防止膜20の段差により、後のゲート電極の形成工程において、段差側面に沿ったエッチング残り等の加工不良が生じてしまう。一方、拡散防止膜20の厚さが薄すぎると、拡散防止膜20の効果(酸化種の拡散を防止する効果)が得られなくなる。そこで、拡散防止膜20の厚さを、例えば3〜20nm程度とし、好適な厚さとしては、例えば10〜20nm程度とした。
【0070】
拡散防止膜20の上面の位置は、溝型素子分離膜6L,6Sの上面の位置と半導体基板1の主面の位置とが同じであることから、半導体基板1の主面よりもその厚さ分高くなる。しかし、溝型素子分離膜6L,6Sの上面の位置を半導体基板1の主面の位置よりも低くすることにより、拡散防止膜20の上面の位置と半導体基板1の主面の位置とをほぼ同じとすることは可能である。
【0071】
また、シリコンリッチ酸化膜は、化学量論的組成(SiO)よりもシリコンの比率が大きい(酸素の比率が小さい)シリコン酸化膜であり、その組成を化学式で表せばSiOx(0<x<2)となる。従って、シリコン膜またはシリコンリッチ酸化膜からなる拡散防止膜20の組成は、SiOx(0≦x<2)となり、拡散防止膜20における酸素に対するシリコンの比率は前述したシリコン酸化膜6における酸素に対するシリコンの比率よりも大きい。シリコン膜またはシリコンリッチ酸化膜は、例えばHDP−CVD法により形成され、シラン(SiH)ガスと酸素(O)ガスとの分圧または流量比などを調整することにより、その組成を調整することができる。
【0072】
次に、図8に示すように、HDP−CVD法を用いて、半導体基板1の主面上(拡散防止膜20上)にシリコン酸化膜(上層シリコン酸化膜)21を堆積する。シリコン窒化膜3の上面に拡散防止膜20を介して堆積されたシリコン酸化膜21の厚さは、例えば150〜500nm程度である。シリコン酸化膜21を成膜した後、例えば1100℃の温度で60秒程度の熱処理を行い、シリコン酸化膜21の膜質を安定させてもよい。また、ここでは、HDP−CVD法を用いてシリコン酸化膜21を形成したが、他の成膜方法、例えば前述したシリコン酸化膜6と同じ成膜方法により形成することができる。すなわち、塗布法、SA−CVD法、またはシラノール系の材料を用いた成膜方法を用いてもよい。
【0073】
次に、図9に示すように、CMP法を用いて、シリコン窒化膜3をストッパー膜としてシリコン酸化膜21の表面を研磨する。これにより、溝型素子分離膜6L,6Sの上面のシリコン窒化膜3に囲まれた領域のみに拡散防止膜20を介してシリコン酸化膜21L,21Sを埋め込む。この際、シリコン窒化膜3の上面に形成されていた拡散防止膜20は除去されるが、シリコン窒化膜3に囲まれた領域に埋め込まれたシリコン酸化膜21L,21Sとシリコン窒化膜3との間には拡散防止膜20は残存する。従って、溝型素子分離膜6L,6Sの上面のシリコン窒化膜3に囲まれた領域に埋め込まれたシリコン酸化膜21L,21Sの側面および底面は拡散防止膜20と接している。ここで、溝型素子分離膜6Lの上面に拡散防止膜20を介して形成されたシリコン酸化膜21がシリコン酸化膜21Lであり、溝型素子分離膜6Sの上面に拡散防止膜20を介して形成されたシリコン酸化膜21がシリコン酸化膜21Sである。
【0074】
次に、図10に示すように、フッ化水素酸を含む溶液を用いて、溝型素子分離膜6L,6Sの上面のシリコン窒化膜3に囲まれた領域に埋め込まれたシリコン酸化膜21L,21Sの厚さを調整する。シリコン酸化膜21L,21Sの厚さ(第1の厚さ)を、例えば31.5〜33nm程度とした。
【0075】
ここで、シリコン酸化膜21L,21Sの厚さが厚すぎると、シリコン酸化膜21L,21Sが酸化種の供給源となり、電界効果トランジスタのしきい値電圧が変動する可能性がある。また、シリコン酸化膜21L,21Sの厚さが、後のゲート電極12を形成する工程において5nm以上あると、シリコン酸化膜21L,21Sの段差により、段差側面に沿ったエッチンング残り等の加工不良が生じてしまう。一方、シリコン酸化膜21L,21Sを全て除去すると、その下の拡散防止膜20が後の工程において酸化されて、拡散防止膜20の効果(酸化種の拡散を防止する効果)が得られなくなる。そこで、後のゲート絶縁膜10n,10pを形成する工程において、シリコン酸化膜21L,21Sの厚さ(第4の厚さ)が0.5〜2nm程度となるように、シリコン酸化膜21L,21Sの厚さ(第1の厚さ)が調整される。
【0076】
次に、図11に示すように、熱リン酸を用いて、シリコン窒化膜3を除去する。続いて、フッ化水素酸を含む溶液を用いて、シリコン酸化膜2およびシリコン酸化膜21L,21Sの側面の拡散防止膜20を除去して、溝4L,4Sが形成されていない半導体基板1の主面を露出させる。ここで、シリコン酸化膜21L,21Sもフッ化水素酸を含む溶液により、20nm程度ウエットエッチンングされて、シリコン酸化膜21L,21Sの厚さ(第2の厚さ)は、例えば11.5〜13nm程度となる。
【0077】
続いて、熱酸化法を用いて、溝4L,4Sが形成されていない半導体基板1の主面にシリコン酸化膜22を形成する。シリコン酸化膜22の厚さは、例えば5nm程度である。
【0078】
これにより、溝4L,4Sに埋め込まれた溝型素子分離膜6L,6Sの上面のみに拡散防止膜20が形成され、さらに拡散防止膜20の上面にシリコン酸化膜21L,21Sが形成される。
【0079】
次に、nMIS形成領域の半導体基板1に、イオン注入法を用いてp型不純物(例えばボロン(B))を選択的に導入することにより、p型ウェル7を形成する。この際、シリコン酸化膜22をスクリーン膜として用いる。同様に、pMIS形成領域の半導体基板1に、イオン注入法を用いてn型不純物(例えばリン(P)またはヒ素(As))を選択的に導入することにより、n型ウェル8を形成する。この際、シリコン酸化膜22をスクリーン膜として用いる。続いて、nMISおよびpMISのそれぞれのしきい値電圧を調整するための不純物を半導体基板1にイオン注入法を用いて導入する。
【0080】
次に、フッ化水素酸を含む溶液を用いたウエットエッチング法によりシリコン酸化膜22を除去する。ここで、シリコン酸化膜21L,21Sもフッ化水素酸を含む溶液により、5nm程度ウエットエッチンングされて、シリコン酸化膜21L,21Sの厚さ(第3の厚さ)は、例えば6.5〜8nm程度となる。
【0081】
次に、半導体基板1の主面に、例えば熱酸化法を用いて第1酸化膜(図示は省略)を形成する。第1酸化膜の厚さは、例えば2〜6nm程度である。第1酸化膜は、例えば入出力回路または電源回路等に形成されて、例えば2.5V程度の高い耐圧が要求されるnMISおよびpMISのゲート絶縁膜に用いられる。その後、リソグラフィ法およびフッ化水素酸を含む溶液を用いたウエットエッチング法を用いて、所望する領域のみに第1酸化膜を残し、他の領域の第1酸化膜を除去する。ここで、第1酸化膜が除去された領域では、シリコン酸化膜21L,21Sもフッ化水素酸を含む溶液により、6nm程度ウエットエッチンングされて、シリコン酸化膜21L,21Sの厚さ(第4の厚さ)は、例えば0.5〜2nm程度となる。なお、本実施の形態で説明するnMISおよびpMISは第1酸化膜が除去された領域に形成される。
【0082】
次に、図12に示すように、第1酸化膜が除去された領域の半導体基板1の主面上に、例えば熱酸化法を用いて第2酸化膜(ゲート酸化膜)9を形成する。第2酸化膜9の厚さは、例えば0.5〜1.5nm程度である。これにより、例えば入出力回路または電源回路等に形成されて、2.5V程度の高い耐圧が要求されるnMISおよびpMIS形成領域には、厚さが2〜6nm程度である第1酸化膜が形成され、例えばメモリ回路またはプロセッサ回路等に形成されて、1.0V程度の低い耐圧が要求されるnMISおよびpMIS形成領域には、厚さが0.5〜1.5nm程度の第2酸化膜9が形成される。
【0083】
前述したように、熱リン酸を用いてシリコン窒化膜3を除去した後、第2酸化膜9が形成されるまでの間に、3回の熱酸化および2回のウエットエッチング(熱酸化法によるシリコン酸化膜22の成膜およびその膜のウエットエッチングによる除去、熱酸化法による第1酸化膜の成膜およびその膜のウエットエッチングによる除去、熱酸化法による第2酸化膜9の成膜)が行われている。
【0084】
しかし、溝4L,4Sの内部に埋め込まれた溝型素子分離膜6L,6Sの上面はシリコン膜またはシリコンリッチ膜からなる拡散防止膜20により覆われているので、溝型素子分離膜6L,6Sの上面はウエットエッチングされ難く、溝型素子分離膜6L,6Sの上面の端部(溝素子分離膜6L,6Sの上面の溝4L,4Sの内壁に沿った部分)における窪みの発生を防止することができる。
【0085】
さらに、溝4L,4Sの内部に埋め込まれた溝型素子分離膜6L,6Sの上面はシリコン膜またはシリコンリッチ膜からなる拡散防止膜20により覆われているので、熱酸化法を繰り返し行っても、酸化分子または水分子などの酸化種が拡散防止膜20に捕獲されて、溝型素子分離膜6L,6Sの中へ侵入し難くなる。また、溝型素子分離膜6L,6Sに含まれる酸化種も放出され難くなる。
【0086】
ここでは、半導体基板1の主面には、2〜6nm程度の厚さの第1酸化膜と0.5〜1.5nm程度の厚さの第2酸化膜9を形成することにより、互いに厚さの異なる2種類の酸化膜を形成するが、LSIの機能を高めるために、互いに厚さの異なる3種類以上の酸化膜を形成してもよい。前述した要領で、リソグラフィ法およびウエットエッチング法を繰り返すことにより、互いに厚さの異なる3種類以上の酸化膜を形成し、これにより互いに厚さの異なる3種類以上の酸化膜を形成することができる。互いに厚さの異なる3種類以上の酸化膜を形成しても、拡散防止膜20が形成されていることにより、溝型素子分離膜6L,6Sの上面の端部(溝素子分離膜6L,6Sの上面の溝4L,4Sの内壁に沿った部分)における窪みの発生を防止することができ、さらに、溝4L,4Sの内部に埋め込まれた溝型素子分離膜6L,6Sへの酸化種の拡散または溝4L,4Sの内部に埋め込まれた溝型素子分離膜6L,6Sからの酸化種の放出を防止することができる。
【0087】
次に、図13に示すように、半導体基板1の主面上に、High−k膜(SiOよりも比誘電率の高い高誘電体膜)23n,23pおよびキャップ膜24n,24pを順次形成する。nMIS形成領域では、High−k膜23nには、例えばハフニウム酸化(HfO)膜、ハフニウム酸窒化(HfON)膜、ハフニウムシリケート(HfSiO)膜、またはハフニウムシリケート窒化(HfSiON)膜のようなハフニウム系絶縁膜を用い、キャップ膜24nには、例えばランタン酸化(LaO)膜を用いる。pMIS形成領域では、High−k膜23pには、例えばハフニウム酸化(HfO)膜、ハフニウム酸窒化(HfON)膜、ハフニウムシリケート(HfSiO)膜、またはハフニウムシリケート窒化(HfSiON)膜のようなハフニウム系絶縁膜を用い、キャップ膜24pには、例えばアルミニウム酸化(AlO)膜を用いる。High−k膜23n,23pは、例えばCVD法またはALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて形成され、その厚さは、例えば1nm程度である。また、キャップ膜24n、24pは、例えばスパッタリング法を用いて形成され、その厚さは、例えば0.1〜1.5nm程度である。
【0088】
続いて、熱処理を行う。この熱処理は、例えば1000℃で10秒程度実施される。この熱処理により、キャップ膜24nから、例えばランタン(La)がHigh−k膜23nに拡散し、キャップ膜24pから、例えばアルミニウム(Al)がHigh−k膜23pに拡散する。これにより、nMIS形成領域では、第2酸化膜9およびHigh−k膜23nからなるゲート絶縁膜10nが形成され、pMIS形成領域では、第2酸化膜9およびHigh−k膜23pからなるゲート絶縁膜10pが形成される。
【0089】
次に、半導体基板1の主面上に、例えばチタンナイトライド(TiN)膜25および多結晶シリコン膜26を順次形成する。チタンナイトライド(TiN)膜25は、例えばスパッタリング法を用いて形成され、その厚さは、例えば5〜20nm程度である。多結晶シリコン膜26は、例えばCVD法を用いて形成され、その厚さは、例えば30〜80nm程度である。
【0090】
次に、図14に示すように、リソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、多結晶シリコン膜26、チタンナイトライド(TiN)膜25、キャップ膜24n,24p、およびHigh−k膜23n,23pを加工する。
【0091】
これにより、nMIS形成領域には、第2酸化膜9とHigh−k膜23nとの積層膜からなるゲート絶縁膜10n、キャップ膜24n、およびチタンナイトライド(TiN)膜25と多結晶シリコン膜26との積層膜からなるゲート電極12により構成されるnMIS用スタックゲート構造のゲートが形成される。また、同様に、pMIS形成領域には、第2酸化膜9とHigh−k膜23pとの積層膜からなるゲート絶縁膜10p、キャップ膜24p、およびチタンナイトライド(TiN)膜25と多結晶シリコン膜26との積層膜からなるゲート電極12により構成されるpMIS用スタックゲート構造のゲートが形成される。
【0092】
ここで、溝4L,4Sの内部に埋め込まれた溝型素子分離膜6L,6Sの上面には、拡散防止膜20(厚さ10〜20nm程度)およびシリコン酸化膜21L,21S(厚さ0.5〜2nm程度)が形成されていることから、溝型素子分離膜6L,6Sと半導体基板1との境部分において、これらの厚さ分程度の段差が生じる。しかし、その段差は最大でも20nm程度であるので、nMIS用スタックゲート構造およびpMIS用スタックゲート構造のゲートを形成する際のドライエッチングにおいて、段差側面に沿ったエッチング残り等の加工不良は生じにくい。
【0093】
また、溝4L,4Sの内部に埋め込まれた溝型素子分離膜6L,6Sの上面の端部(溝素子分離膜6L,6Sの上面の溝4L,4Sの内壁に沿った部分)には、窪みが形成されていないことから、活性領域の半導体基板1の主面の端部が、ゲート絶縁膜10n,10pおよびゲート電極12により囲まれることがない。これにより、電界効果トランジスタが動作する場合、活性領域の半導体基板1の主面の端部にゲート電極12からの電界が強く働いて反転層が形成されやすくなり、電界効果トランジスタのしきい値電圧が下がるという問題を回避することができる。
【0094】
なお、前述した2.5V程度の高い耐圧が要求されるnMIS形成領域にも、第1酸化膜とHigh−k膜23nとの積層膜からなるゲート絶縁膜10n、キャップ膜24n、およびチタンナイトライド(TiN)膜25と多結晶シリコン膜26との積層膜からなるゲート電極12により構成されるnMIS用スタックゲート構造のゲートが形成される。また、同様に、前述した2.5V程度の高い耐圧が要求されるpMIS形成領域にも、第1酸化膜とHigh−k膜23pとの積層膜からなるゲート絶縁膜10p、キャップ膜24p、およびチタンナイトライド(TiN)膜25と多結晶シリコン膜26との積層膜からなるゲート電極12により構成されるpMIS用スタックゲート構造のゲートが形成される。
【0095】
次に、図15に示すように、nMIS用スタックゲート構造のゲートおよびpMIS用スタックゲート構造のゲートの側壁にそれぞれ、例えばシリコン窒化膜からなるオフセットサイドウォール27を形成する。オフセットサイドウォール27の厚さは、例えば5nm程度である。
【0096】
次に、nMIS形成領域に、イオン注入法を用いてn型不純物(例えばリン(P)またはヒ素(As))を導入して、nMIS用スタックゲート構造のゲートに対して自己整合的にn型半導体領域28を形成する。同様に、pMIS形成領域に、イオン注入法を用いてp型不純物(例えばボロン(B)またはフッ化ボロン(BF))を導入して、pMIS用スタックゲート構造のゲートに対して自己整合的にp型半導体領域29を形成する。
【0097】
次に、図16に示すように、nMIS用スタックゲート構造のゲートおよびpMIS用スタックゲート構造のゲートの側壁にオフセットサイドウォール27を介してそれぞれ、例えばシリコン窒化膜およびシリコン酸化膜の積層膜からなるサイドウォール30を形成する。
【0098】
次に、nMIS形成領域に、イオン注入法を用いてn型不純物(例えばリン(P)またはヒ素(As))を導入して、nMIS用スタックゲート構造のゲートおよびサイドウォール30に対して自己整合的にn型半導体領域31を形成する。同様に、pMIS形成領域に、イオン注入法を用いてp型不純物(例えばボロン(B)またはフッ化ボロン(BF))を導入して、pMIS用スタックゲート構造のゲートおよびサイドウォール30に対して自己整合的にp型半導体領域32を形成する。
【0099】
続いて、熱処理を行う。この熱処理は、例えば1000℃で10秒間および1230℃で数m秒実施される。この熱処理によって、nMIS形成領域のn型半導体領域28,31に導入されたn型不純物を活性化し、pMIS形成領域のp型半導体領域29,32に導入されたp型不純物を活性化させて、ソース・ドレインを形成する。
【0100】
次に、図17に示すように、半導体基板1の主面上に、ニッケル(Ni)膜を形成した後、熱処理を行う。この熱処理は、例えば450℃で実施される。この熱処理によって、半導体基板1を構成する単結晶シリコン(Si)とニッケル(Ni)、および多結晶シリコン膜26を構成するシリコン(Si)とニッケル(Ni)とを固相反応させてニッケルシリサイド(NiSi)を形成し、続いて未反応のニッケル(Ni)を除去することにより、n型半導体領域31およびp型半導体領域32の上面ならびにゲート電極12を構成する多結晶シリコン膜26の上面にシリサイド膜16を形成する。ニッケルシリサイド(NiSi)に代えて、例えば白金シリサイド(PtSi)などを使用することもできる。
【0101】
次に、図18に示すように、半導体基板1の主面上に、シリコン窒化膜33を堆積する。シリコン窒化膜33は、例えばCVD法を用いて形成され、その厚さは、例えば30nm程度である。
【0102】
次に、半導体基板1の主面上に、層間絶縁膜34を形成する。層間絶縁膜34は、例えばプラズマCVD法を用いて形成されるTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate;Si(OC)膜である。続いて、層間絶縁膜34の表面を、例えばCMP法を用いて平坦化した後、リソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて、シリコン窒化膜33および層間絶縁膜34に接続孔35を形成する。
【0103】
次に、接続孔35の内壁(側面および底面)を含む層間絶縁膜34上に、例えばスパッタリング法を用いてチタンナイトライド(TiN)膜36aを形成する。チタンナイトライド(TiN)膜36aは、例えば後の工程で接続孔35の内部に埋め込まれる材料が拡散するのを防止する、いわゆるバリア機能を有している。続いて、半導体基板1の主面上に、接続孔35の内部を埋め込むようにタングステン(W)膜36bを形成する。このタングステン(W)膜36bは、例えばCVD法を用いて形成される。続いて、タングステン(W)膜36bおよびチタンナイトライド(TiN)膜36aを、例えばCMP法を用いて研削することにより、接続孔35の内部にプラグ36を形成する。
【0104】
次に、半導体基板1の主面上に、例えばアルミニウム(Al)膜またはタングステン(W)膜などの金属膜を堆積し、これをリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて加工することにより、配線37を形成する。この後、さらに上層の配線を形成するが、ここでの説明は省略する。以上の製造工程により、本発明の一実施の形態による電界効果トランジスタ(nMISおよびpMIS)が略完成する。
【0105】
このように、本実施の形態によれば、ウエットエッチングを繰り返し行うことにより、互いに厚さの異なる2種類の酸化膜(第1酸化膜と第2酸化膜9)を形成しても、溝4L,4Sの内部に埋め込まれた溝型素子分離膜6L,6Sの上面の端部(溝素子分離膜6L,6Sの上面の溝4L,4Sの内壁に沿った部分)には窪みが形成されないことから、活性領域の半導体基板1の主面の端部が、ゲート絶縁膜10n,10pおよびゲート電極12により囲まれることがない。これにより、電界効果トランジスタが動作する場合、活性領域の半導体基板1の主面の端部においてゲート電極12からの電界が強く働かないので、所望する電界効果トランジスタのしきい値電圧を得ることができる。
【0106】
また、熱処理法を繰り返し行うことにより、互いに厚さの異なる2種類の酸化膜(第1酸化膜と第2酸化膜9)を形成しても、溝4L,4Sの内部に埋め込まれた溝型素子分離膜6L,6Sの上面はシリコン膜またはシリコンリッチ酸化膜からなる拡散防止膜20により覆われているので、酸化分子または水分子などの酸化種が拡散防止膜20に捕獲されて溝型素子分離膜6L,6Sの中へ侵入し難くなる。これにより、溝型素子分離膜6L,6Sと半導体基板1との間における酸化反応を防ぐことができるので、その酸化反応により酸化膜が形成されることによる応力の発生を防ぐことができる。従って、応力に起因した半導体基板1の電子の速度の変化が抑えられるので、電界効果トランジスタの動作速度の変化を抑制することができる。また、溝型素子分離膜6L,6Sに含まれる酸化種も放出され難くなるので、溝型素子分離膜6L,6Sに含まれる酸化種がHigh−k膜23n,23pおよびゲート電極12を構成するチタンナイトライド(TiN)膜25の中に拡散することによる電界効果トランジスタのしきい値電圧の変動を抑制することができる。
【0107】
なお、本実施の形態では、溝4L,4Sの内部に埋め込まれるように形成された溝型素子分離膜6L,6Sの組成を化学量論的組成(SiO)、溝型素子分離膜6L,6Sの上面を覆う拡散防止膜20の組成をSiOx(0≦x<2)、拡散防止膜20の上面に形成されたシリコン酸化膜21L,21Sの組成を化学量論的組成(SiO)としたが、これに限定されるものではない。例えば溝型素子分離膜6L,6Sまたはシリコン酸化膜21L,21Sの組成が化学量論的組成(SiO)からずれた場合は、拡散防止膜20の組成は、溝型素子分離膜6L,6Sまたはシリコン酸化膜21L,21Sの組成よりもシリコンの比率の大きい組成(酸素の比率の小さい組成)とすればよい。
【0108】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、半導体基板の主面に形成された溝型の素子間分離部により囲まれた活性領域に形成される電界効果トランジスタを有する半導体装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 半導体基板
2 シリコン酸化膜(パッド絶縁膜)
3 シリコン窒化膜(マスク絶縁膜)
4L,4S 溝
5 内壁酸化膜
6 シリコン酸化膜(下層シリコン酸化膜)
6L,6S 溝型素子分離膜(下層シリコン酸化膜)
7 p型ウェル
8 n型ウェル
9 第2酸化膜(ゲート酸化膜)
10 High−k膜
10n,10p ゲート絶縁膜
11a 金属膜
11b 多結晶シリコン膜
12 ゲート電極
13 サイドウォール
14 n型半導体領域
15 p型半導体領域
16 シリサイド膜
20 拡散防止膜(シリコン膜またはシリコンリッチ酸化膜)
21,21L,21S シリコン酸化膜(上層シリコン酸化膜)
22 シリコン酸化膜
23n,23p High−k膜
24n,24p キャップ膜
25 チタンナイトライド(TiN)膜
26 多結晶シリコン膜
27 オフセットサイドウォール
28 n型半導体領域
29 p型半導体領域
30 サイドウォール
31 n型半導体領域
32 p型半導体領域
33 シリコン窒化膜
34 層間絶縁膜
35 接続孔
36 プラグ
36a チタンナイトライド(TiN)膜
36b タングステン(W)膜
37 配線
SIO 素子分離部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主面の所定の領域に、
所定の幅を有する溝と、
前記溝の内部に埋め込まれた下層シリコン酸化膜と、
前記下層シリコン酸化膜の上面に形成されたシリコン膜またはシリコンリッチ酸化膜と、
前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜の上面に形成された上層シリコン酸化膜と、
から構成される素子間分離部を有し、
前記素子間分離部に囲まれた前記半導体基板の活性領域に、
前記半導体基板の主面上にゲート酸化膜およびHigh−k膜を下から順に形成した積層膜からなるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上面に金属膜からなるゲート電極と、
前記High−k膜および前記ゲート電極の側面に形成されたサイドウォールと、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板に形成された半導体領域と、
から構成される電界効果トランジスタを有し、
前記上層シリコン酸化膜の厚さは前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜の厚さよりも薄く、
前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜の厚さは前記下層シリコン酸化膜の厚さよりも薄く、
前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜における酸素に対するシリコンの比率が、前記下層シリコン酸化膜および前記上層シリコン酸化膜における酸素に対するシリコンの比率よりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、前記下層シリコン酸化膜および前記上層シリコン酸化膜の組成はSiOであり、前記シリコンリッチ酸化膜の組成はSiOx(0<x<2)であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置において、前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜の厚さは3〜20nmであることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置において、前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜の厚さは10〜20nmであることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置において、前記上層シリコン酸化膜の厚さは0.5〜2nmであることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置において、前記下層シリコン酸化膜の上面の位置は、前記溝が形成されていない前記半導体基板の主面の位置と同じであることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置において、前記下層シリコン酸化膜の上面の位置は、前記溝が形成されていない前記半導体基板の主面の位置よりも低いことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1記載の半導体装置において、前記下層シリコン酸化膜と前記溝の内壁との間に、厚さが5〜20nmの内壁酸化膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1記載の半導体装置において、前記High−k膜と前記金属膜との間に、ランタンまたはアルミニウムを含むキャップ膜が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項1記載の半導体装置において、前記電界効果トランジスタは、さらに、
前記金属膜の上面に形成された多結晶シリコン膜と、
前記多結晶シリコン膜および前記半導体領域の上面に形成されたシリサイド膜を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
以下の工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法:
(a)半導体基板の主面上にパッド絶縁膜およびマスク絶縁膜を下から順次形成する工程;
(b)所定の領域の前記マスク絶縁膜、前記パッド絶縁膜、および前記半導体基板を除去して、前記半導体基板の主面に所定の幅および深さを有する溝を形成する工程;
(c)前記溝の内壁に内壁酸化膜を形成する工程;
(d)前記溝の内部を含む前記半導体基板の主面上に、下層シリコン酸化膜を形成する工程;
(e)前記マスク絶縁膜をストッパー膜として前記下層シリコン酸化膜の表面を研磨して、前記溝が形成されていない領域の前記下層シリコン酸化膜を除去する工程;
(f)前記溝が形成された領域の前記下層シリコン酸化膜の上面の位置が、前記溝が形成されていない前記半導体基板の主面の位置と同じ、または前記溝が形成されていない前記半導体基板の主面の位置よりも低くなるように、前記下層シリコン酸化膜を加工する工程;
(g)前記(f)工程の後、前記半導体基板の主面上にシリコン膜またはシリコンリッチ酸化膜を形成する工程;
(h)前記(g)工程の後、前記半導体基板の主面上に上層シリコン酸化膜を形成する工程;
(i)前記マスク絶縁膜をストッパー膜として前記上層シリコン酸化膜の表面を研磨して、前記溝が形成されていない領域の前記上層シリコン酸化膜を除去する工程;
(j)前記マスク絶縁膜の上面の前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜を除去する工程;
(k)前記溝が形成された領域の前記上層シリコン酸化膜を加工して、所定の厚さとする工程;
(l)前記マスク絶縁膜、前記パッド絶縁膜、および前記上層シリコン酸化膜の側面の前記シリコン膜または前記シリコンリッチ膜を除去する工程;
(m)前記溝が形成されていない前記半導体基板の主面にゲート酸化膜を形成する工程;
(n)前記(m)工程の後、前記半導体基板の主面上にHigh−k膜を形成する工程、
ここで、前記(n)工程において、
前記上層シリコン酸化膜の厚さは前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜の厚さよりも薄く、
前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜の厚さは前記下層シリコン酸化膜の厚さよりも薄く、
前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜における酸素に対するシリコンの比率は、前記下層シリコン酸化膜または前記上層シリコン酸化膜における酸素に対するシリコンの比率よりも大きい。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、前記下層シリコン酸化膜または前記上層シリコン酸化膜は、塗布法を用いてポリシラザンを形成した後、水蒸気雰囲気で熱処理することにより形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、前記下層シリコン酸化膜または前記上層シリコン酸化膜は、シラノール系の材料を用いて形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、前記下層シリコン酸化膜または前記上層シリコン酸化膜は、SA−CVD法またはHDP−CVD法を用いて形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜は、HDP−CVD法により形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、前記下層シリコン酸化膜および前記上層シリコン酸化膜の組成はSiOであり、前記シリコンリッチ酸化膜の組成はSiOx(0<x<2)であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜の厚さは3〜20nmであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、前記シリコン膜または前記シリコンリッチ酸化膜の厚さは10〜20nmであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、前記(n)工程における前記上層シリコン酸化膜の厚さは0.5〜2nmであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、前記(n)工程の後、さらに以下の工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法:
(o)前記半導体基板の主面上に、キャップ膜、金属膜、および多結晶シリコン膜を下から順次形成する工程;
(p)前記多結晶シリコン膜、前記金属膜、前記キャップ膜、および前記High−k膜を加工して、前記多結晶シリコン膜および前記金属膜からなるゲート電極を形成し、前記High−k膜および前記ゲート酸化膜からなるゲート絶縁膜を形成する工程;
(q)前記ゲート電極の両側の前記半導体基板に半導体領域を形成する工程;
(r)前記多結晶シリコン膜および前記半導体領域の上面にシリサイド層を形成する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−109378(P2012−109378A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256693(P2010−256693)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】