説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】半導体基板上に設けられるNiPtSi電極の熱安定性を向上させる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板と、この半導体基板中のチャネル領域と、チャネル領域上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、チャネル領域の両側に形成され、NiおよびPtを主成分とする金属半導体化合物層からなるソース/ドレイン電極とを備え、金属半導体化合物層と半導体基板との界面において、金属半導体化合物層の単一の結晶粒と半導体基板との境界部の最大Pt濃度が、界面の平均Pt濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置および半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板上に金属半導体化合物層が形成される半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路の高機能化には、その構成素子であるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)の高性能化が必要である。これまで、素子性能の向上は、比例縮小則(スケーリング)によって進められてきた。
【0003】
MISFETのチャネル長が微細化により短くなるに従って、チャネルの抵抗は減少していく。したがって、チャネル以外の部分、すなわちソース/ドレイン電極における抵抗、いわゆる寄生抵抗が素子性能を大きく左右するようになる。
【0004】
この寄生抵抗の中で大きな割合を占めるのがソース/ドレイン電極と半導体基板との界面抵抗(Rc)である。したがって、MISFETの性能向上のためには、界面抵抗(Rc)の低減が重要な課題となる。
【0005】
ソース/ドレイン電極の材料としてはニッケルモノシリサイド(以下、ニッケルシリサイドあるいはNiSiとも表記)等の金属半導体化合物がよく用いられる。そして、NiSiは比抵抗が低く、シリサイド化反応において消費するSiの量が少ないため、極薄電極材料として有効な材料である。
【0006】
もっとも、NiSiでは余剰Ni原子のチャネル部への異常拡散が起こりやすい。このようなNiの異常拡散が生ずると、ジャンクションリークが増大し、例えば、LSIの待機電流が増大するという問題が生ずる。また、プロセス条件によっては高い抵抗率のニッケルダイシリサイド(NiSi)が生じてしまうという問題もある。
【0007】
これに対し、NiにPt(白金)を混ぜたニッケルシリサイド(以下、ニッケルプラチナシリサイドまたはNiPtSiとも表記)は熱安定性と低界面抵抗を併せ持つという優れた特性から、現状で最も有望な電極材料である。従来、NiPtSiのソース/ドレイン電極を形成する際、基板のSiに不純物(ドーパント)をイオン注入して活性化したのち、NiおよびPtをスパッタ堆積し、最後に熱処理によってシリサイド化を行う方法が用いられて生きた。この方法は、不純物前打ちプロセス(IBS:Implantation Before Silicidation)とも称される。
【0008】
また、金属シリサイド層とSi基板との界面抵抗(Rc)の低抵抗化を実現する手法として、金属シリサイド形成前にイオン注入によって形成された不純物層を、金属シリサイド形成の際に金属シリサイド層とSi基板の界面に偏析させ、この界面に高濃度の不純物偏析層を形成する技術、いわゆる不純物偏析プロセスがある。さらには、p型MISFETに関しては、不純物のイオン注入をシリサイド化の後に行う方法、いわゆる不純物後打ちプロセス(IAS:Implantation After Silicidation)が提案されている(非特許文献1)。
【非特許文献1】T.Yamauchi et al., “Novel doping technology for a 1nm NiSi/Si junction with dipoles comforting Schottky (DCS) barrier” IEDM Tech.Dig., 2007, pp.963−966
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者らは、NiPtSi/Si接合において、Ptの効果を最大限に引き出すためには、界面にPtの高濃度層が形成されていることが望ましいことに着目した。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、半導体基板上に設けられるNiPtSi電極の熱安定性を向上させる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板中のチャネル領域と、前記チャネル領域上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記チャネル領域の両側に形成され、NiおよびPtを主成分とする金属半導体化合物層からなるソース/ドレイン電極とを備え、前記金属半導体化合物層と前記半導体基板との界面において、前記金属半導体化合物層の単一の結晶粒と前記半導体基板との境界部の最大Pt濃度が、前記界面の平均Pt濃度よりも高いことを特徴とする。
【0012】
第1の態様の半導体装置において、前記界面にAs不純物層が形成され、前記界面近傍にAs濃度のピークを有し、前記ピークの裾部のAs濃度が前記金属半導体層側で前記半導体基板側よりも高いことが望ましい。
【0013】
本発明の第2の態様の半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成し、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、前記半導体基板上にNiからなる第1の金属膜を堆積し、前記第1の金属膜上にNiおよびPtを主成分とする第2の金属膜を堆積し、熱処理により、前記第1および第2の金属膜を前記半導体基板と反応させて、前記ゲート電極の両側に金属半導体化合物層を形成することを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の態様の半導体装置の製造方法は、n型MISFETを有する半導体装置の製造方法であって、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成し、前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、前記半導体基板上にNiおよびPtを主成分とする金属膜を堆積し、第1の熱処理により、前記金属膜を前記半導体基板と反応させて、前記ゲート電極の両側に金属半導体化合物層を形成し、前記金属半導体化合物層にAsを導入し、前記Asを前記金属半導体化合物層と前記半導体基板との界面に拡散させることを特徴とする。
【0015】
第3の態様の半導体装置の製造方法において、イオン注入により前記金属半導体化合物層にAsを導入した後、前記Asを第2の熱処理により前記界面に拡散させることが望ましい。
【0016】
第3の態様の半導体装置の製造方法において、前記金属半導体化合物層上にAsを含有する固相膜を堆積し、第2の熱処理により、前記固相膜から前記金属半導体化合物層に前記Asを導入し、かつ、前記Asを前記界面に拡散させることが望ましい。
【0017】
本発明の第4の態様の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上の、NiおよびPtを主成分とする金属半導体化合物層と、前記金属半導体化合物層上の金属電極とを備え、前記金属半導体化合物層と前記半導体基板との界面において、前記金属半導体化合物層の単一の結晶粒と前記半導体基板との境界部の最大Pt濃度が、前記界面の平均Pt濃度よりも高いことを特徴とする。
【0018】
本発明の第5の態様の半導体装置の製造方法は、半導体基板上にNiからなる第1の金属膜を堆積し、前記第1の金属膜上にNiおよびPtを主成分とする第2の金属膜を堆積し、熱処理により、前記第1および第2の金属膜を前記半導体基板と反応させて、金属半導体化合物層を形成し、前記金属半導体化合物層上に金属電極を形成することを特徴とする。
【0019】
本発明の第6の態様の半導体装置の製造方法は、半導体基板上にNiおよびPtを主成分とする金属膜を堆積し、第1の熱処理により、前記金属膜を前記半導体基板と反応させて、金属半導体化合物層を形成し、前記金属半導体化合物層にAsを導入し、前記Asを前記界面に拡散させ、前記金属半導体化合物層上に金属電極を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、半導体基板上に設けられるNiPtSi電極の熱安定性を向上させる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の半導体装置の製造方法および半導体装置について、図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書中、「飛程」とは、イオン注入プロセスにおけるProjected Range(Rp)と同義である。
【0022】
まず、最初に、NiPtSi/Si接合について発明者らが得た知見について説明する。図2は標準的なNiPtSi層の作成方法によりSi基板上に形成された、NiPtSi/Siの深さ方向元素プロファイルである。ここで、標準的な作成方法とは、Si基板上にNiPtSi層を形成する前に、AsをSi基板にイオン注入で導入するいわゆる不純物前打ちプロセスである。
【0023】
図2は、NiPtSi/Si界面の不純物分布をアトムプローブによって分析した結果である。横軸には、シリサイド層表面からの深さ、縦軸にはPtの原子濃度(%)を示す。また、界面位置の確認のため、Ni、Siの分布も同時に示している。
【0024】
図2より、Pt濃度が最も高いのが、NiPtSi層の表面近傍であることがわかる。また、NiPtSi層の中央付近、さらにNiPtSi層とSi基板との界面にPt濃度のピークがあるのがわかる。表面の最も高いPt濃度ピークと、NiPtSi層中央付近のピークのために、界面までPtが十分到達していないことがわかる。
【0025】
ここで、NiPtSi層とSi基板の界面にPtが存在することの意義を説明する。背景技術にて記載したように、Ptを含むNiSiは、Ptを含まないNiSiに比べて熱安定性が向上する。この基本原理を探るため、発明者らは第一原理計算により検証を行い、原理の解明に至った。計算方法としては、局所密度汎関数近似を超えたところで、なおかつスピン分極も考慮したSP−GGA(Spin−Polarized Generalized Gradient Approximation)の手法を採用した。
【0026】
図3は、第一原理計算によるNiSi/Siでの界面Pt挙動を説明する図である。図3(a)が計算で用いた層構造を示す図、図3(b)が図3(a)構造に対応する各格子位置におけるPtの全エネルギー差を示す図である。
【0027】
この結果によると、NiSi中にPtが含まれた場合、PtはNiと置換してPtSiとなることが最もエネルギー的に有利であることが導かれた。また、NiSi/Si界面でのPt原子の挙動解析より、PtはSi界面に安定点があることも導かれた。以上より、NiPtSi/Si構造では、PtSiがSiとの界面に安定して形成されることが第一原理的に導かれた。
【0028】
次に、界面にPtSiが存在した場合になぜNiSiの熱安定性が実現できるのかにつて、PtSi/SiとNiSi/Siの2つのモデルを用いて検討した。図4は、第一原理計算によるPtSiの熱安定性を説明する図である。図4(a)は、Si置換位置にNiがある場合の全エネルギー差を示す図である。図4(b)は、図4(a)から求めたNiの反応速度である。
【0029】
図4(a)から、PtSiがNiSiよりも界面にNiを吸着しやすいことが導かれる。また、図4(b)からは、半導体装置の製造プロセス上、現実的なアニール温度範囲である350℃から550℃までの間で、NiがPtSiにおいてNiSiより脱離しにくく、界面の熱安定性に優れていることを示している。
【0030】
以上より、NiPtSi/Siの界面ではPtSiが形成され、界面PtSiの恩恵によりNi脱離に関係した熱安定性が向上すると結論付けられる。すなわち、Ni脱離抑制により、PN接合ジャンクションリークの増加が抑制される。また、余剰Niが面方位に無関係に引き起こしてしまうNiSiによる界面急峻性の劣化を抑制することができるのである。
【0031】
このように、原理的には、NiPtSi/Siの界面にPtSiが形成され、シリサイド層の熱安定性が向上するはずである。しかし、図2に示したように現実には、界面でのPtSi形成が妨げられる要因があり、界面において十分にPtの濃度をあげることができていない。
【0032】
そこで、まず、Ptのシリサイド中での拡散に関する可能性を探るため、第一原理計算により拡散バリアの計算を行った。図5は、第一原理計算によるシリサイド中の原子拡散バリアを説明する図である。図に示すように、NiSi中の格子間位置をPtが移動する際のエネルギーバリアが1.8eV程度であることがわかる。一方、PtSi中のNiは2.6eV以上のバリアがあることがわかる。以上より、理論的には、NiSi中をPtは比較的容易に移動できるはずであることが分かる。
【0033】
図6は、NiSi膜中のPt拡散の実験結果を示す図である。NiSi上にPtを堆積した後に450℃、30秒アニールしてPtの深さ方向の濃度を分析した。この結果から、理論通りにPtがNiSi膜中を界面にむけて移動していることがわかる。
【0034】
アニール温度を変えてPtの移動量を増加させた結果から、拡散エネルギーを実験的に導出すると1.6eVとなり上記の計算結果と良い対応が得られた。このことはPt偏析の過程ではNiSiのバルク中、言い換えると、結晶粒内を拡散する過程が支配的であることを意味している。
【0035】
このように、原理的には、PtはNiSi中を動きやすく、NiPtSi/Siの界面にPtSiが形成されやすいはずである。しかし、現実には、界面でのPtSi形成が妨げられている。以下、上記知見を基礎に、発明者らが完成させた本発明の実施の形態について具体的に説明する。
【0036】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、n型MISFETを有する半導体装置の製造方法であって、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成し、このゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、半導体基板上にNiおよびPtを主成分とする金属膜を堆積し、第1の熱処理により、この金属膜を半導体基板と反応させて、ゲート電極の両側に金属半導体化合物層を形成し、この金属半導体化合物層にAsを導入し、導入したAsを金属半導体化合物層と半導体基板との界面に拡散させることを特徴とする。なお、本実施の形態の半導体装置はn型MISFETである。
【0037】
以下、半導体基板としてSi基板、金属半導体化合物層としてNiPtSi層を例に説明する。なお、本明細書中、NiおよびPtを主成分とする金属膜とは、金属膜中のNi、Ptそれぞれの原子割合が他の成分よりも多い金属膜である。以下、NiおよびPtを主成分とする金属膜をNiPt膜とも記述する。
【0038】
また、ここではイオン注入によりAsをNiPtSi層に導入し、第2の熱処理によりAsを界面に拡散させる場合について説明する。
【0039】
図1は、本実施の形態の半導体装置の製造方法の概略図である。高濃度不純物層を形成する前のSi基板上にシリサイド層としてNiPtSi層を形成する。NiPtSi層の形成は、例えば、NiPt膜のスパッタ堆積と、アニールにより行われる。
【0040】
次に、イオン注入によりAsをNiPtSi層に導入する(IAS)。シリサイド化の過程において不純物が含まれていないため、Ptと不純物の相互作用を除外した反応が起きる。これによりAsの場合では、前打ちよりも後打ちにて界面Pt濃度が高くなり、特にSi基板との界面で、Pt高濃度化が実現できる。したがって、NiPtSi層の熱安定性が向上する。
【0041】
また、NiPtSi層形成後にイオン注入とアニールを行うことで界面へのAs不純物偏析を生じさせる。以上により極浅接合で、かつ、界面抵抗の低い接合が得られる。
【0042】
図7〜図11は、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0043】
まず、例えば、B(ボロン)が1015atoms/cm程度ドープされた面方位(100)面のp型のSi基板10に、Si酸化膜からなる素子分離領域12(STI:Shallow Trench Isolation)を形成する。
【0044】
次に、Si基板10上に、例えば、Si酸化膜で形成される、ゲート絶縁膜14をEOT(Effective Oxide Thickness)にして1nm程度形成する。そして、ゲート絶縁膜14上に、ゲート電極16となるポリシリコン膜を減圧化学的気相堆積(以下LP−CVDともいう)法によって100〜150nm程度堆積する。そして、リソグラフィー技術および反応性イオンエッチング(以下RIEともいう)等のエッチング技術により、ゲート絶縁膜14およびゲート電極16をゲート長が30nm程度となるようにパターン形成する。必要ならば、ここで1〜2nmのポスト酸化を行う。
【0045】
次に、シリコン窒化膜をLP−CVD法によって例えば、約8nm程度堆積した後、RIE法によってエッチバックすることにより、シリコン窒化膜をゲート電極16の側面部にのみ残す。これにより、側壁絶縁膜18を形成する。以上により、図7に示す構造が形成される。
【0046】
次に、図8に示すように、例えば、スパッタ法により、厚さ10nm程度のNiPt膜20をSi基板10上に形成する。すなわち、n型MISFETのソースおよびドレイン領域にNiPt膜が接するよう堆積する。
【0047】
そして、その後、図9に示すように、第1の熱処理として、例えば、RTAにより、500℃、30秒程度のアニールを行い、NiPt膜20をSi基板10と反応させてシリサイド化して、厚さ20nm程度のNiPtSi層22を形成する。この時、ゲート電極16もシリサイド化され、いわゆるFUSI構造となる。その後、薬液により未反応の余剰のNiPt膜20を剥離する。このNiPtSi層22がn型MISFTのソース/ドレイン電極となる。
【0048】
次に、図10に示すようにAsをイオン注入する。このAsは、NiPtSi層22中に導入されることになる。Asのイオン注入量は、例えば、1×1015〜1×1016cm−2である。
【0049】
その後、図11に示すように第2の熱処理として、例えば、RTAにより、550℃、30秒程度のアニールを行う。このアニールにより、AsをNiPtSi層22/Si基板10界面に偏析させて、As偏析層24が形成される。
【0050】
この第2の熱処理の温度は、350℃以上550℃以下であることが望ましい。この範囲を下回ると、As偏析層24の濃度が十分高くならない恐れがあるからである。また、この温度を上回ると、NiPtSi層22のNiがSi基板10中に異常拡散することにより、ジャンクションリークが増大する恐れがあるからである。
【0051】
なお、Asイオン注入の条件は、イオン注入直後の飛程(Rp)がNiPtSi層中に入るように設定されることが望ましい。これによって、Asを効果的に偏析させ、As偏析層24の不純物濃度を一層高くするとともに、As偏析層24をより浅く形成することが可能となるからである。
【0052】
本実施の形態の半導体装置は、上述の半導体装置の製造方法により製造され、図11のようにSi基板10と、Si基板10中のチャネル領域29と、チャネル領域29上に形成されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上に形成されたゲート電極16と、チャネル領域29の両側に形成され、NiPtSi層22からなるソース/ドレイン電極とを備えるn型MISFETである。
【0053】
そして、NiPtSi層22とSi基板10との界面において、NiPtSi層22の単一の結晶粒とSi基板10との境界部の最大Pt濃度が、この界面の平均Pt濃度よりも高いことを特徴とする。このため、NiPtSi層の熱安定性が向上する。
【0054】
また、NiPtSi層22とSi基板10との界面にAs不純物層としてAs偏析層24が形成され、界面近傍にAs濃度のピークを有し、このピークの裾部のAs濃度がNiPtSi層22側でSi基板側よりも高いことを特徴とする。As偏析層24のAs濃度は、例えば、8×1019〜5×1020atoms/cmである。後に詳述するように、このピークの裾部のAs分布により、NiPtSi層22の熱安定性がさらに向上する。
【0055】
なお、ここではソース/ドレインの不純物層としてAs偏析層24のみがある場合について記載する。しかしながら、例えば、As偏析層24よりも低濃度のエクステンション拡散層を備えていてもかまわない。エクステンション拡散層を備えることで、MISFETの特性最適化、具体的には、ショートチャネル効果と動作電流との最適化等が容易になるという効果が得られる。
【0056】
NiPtSi層22とSi基板10との界面に存在するPtは、熱安定性を高める観点からは、NiPtSi層22等の結晶粒内に存在することが必要である。しかしながら、結晶粒内に取り込まれなかったPtがNiPtSi層22の粒界等に存在していても構わない。
【0057】
図12は、本実施の形態と従来技術の製造方法で形成されたNiPtSi/Si界面付近のPt濃度の分布を示す図である。図12は、界面のNiPtSi層の単一の結晶粒とSi基板との境界部を評価した結果である。図12(a)が本実施の形態の不純物後打ちプロセス、図12(b)が従来技術の不純物前打ちプロセスによる。
【0058】
ここでは、堆積するNiPt膜中のPt原子濃度を5%とし、シリサイド化の熱処理を500℃、30秒、Asのイオン注入量は1×1015cm−2としている。また、不純物後打ちプロセスのシリサイド後の熱処理は、550℃、30秒としている。
【0059】
なお、図12は、アトムプローブによって分析した結果である。本明細書において、NiPtSi/Siの界面位置と原子濃度は、アトムプローブ分析に基づき以下のように定義される。すなわち、Si濃度が、バルクのSi基板の濃度の75%となる領域を界面とする。これはProxigramと呼ばれる。その界面に対し法線ベクトルを描いて元素量を積分し、原子濃度とする。
【0060】
図12では、この定義に基づき1次元化した濃度分布と界面位置が示されている。図12より明らかなように、従来技術では界面のNiPtSi層の単一の結晶粒とSi基板との境界部のPt濃度の最大値が約2.2%であるのに対し、本実施の形態では約4.0%と高くなっている。
【0061】
図13は、図12と同じ試料につき、NiPtSi/Siの界面のPt濃度を比較した図である。図13(a)がPt濃度の測定結果を示す図、図13(b)が測定箇所の説明図である。図12と同様、測定はアトムプローブにより行っている。測定はNiPtSi/Siの界面を含む直径約100nm、高さ約20nmの円筒領域を対象とする。図13(a)には界面平均、境界部A、境界部BのPt濃度を示す。ここで、界面平均とは先の円筒領域全体のPt濃度を平均化した値である。図13(b)の細線破線の横長矩形が円筒領域全体に相当する部分の断面を模式的に示す。また、境界部Aとは、先の円筒領域内において直径約20nmの円筒領域でNiPtSi層の結晶粒界部とSi基板の境界のPt濃度を算出する場合に、最大Pt濃度を示す円筒領域を示している。図13(b)に境界部Aに相当する部分の断面を太線破線の矩形で模式的に示す。また、境界部Bとは、先の円筒領域内において直径約20nmの円筒領域でNiPtSi層の単一の結晶粒とSi基板の境界のPt濃度を算出する場合に、最大Pt濃度を示す円筒領域を示している。図13(b)に境界部Bに相当する部分の断面を太線破線の矩形で模式的に示す。
【0062】
図13から明らかなように、従来技術の前打ちでは境界部BのPt濃度が、界面平均のPt濃度と等しい。これに対し、本実施の形態の後打ちでは、境界部BのPt濃度が、界面の平均Pt濃度よりも高くなっている。
【0063】
ここで、境界部Bの領域の高濃度のPtは主に、NiPtSi層の結晶粒内またはNiPtSi層の結晶粒とSi基板に挟まれた領域に存在するシリサイド微結晶粒内に存在している。また、境界部Aにおいて境界部BよりもPt濃度が高くなるのは、NiPtSi層の結晶粒界部とSi基板に挟まれた領域の粒界に存在する、結晶粒に取り込まれていないPtとで構成されているためである。NiPtSi層の熱安定性に寄与するのはあくまで結晶粒内に存在するPtである。したがって、本実施の形態のように、界面に存在する結晶粒内のPt濃度が高くなることで、熱安定性が向上する。さらに、結晶粒内のPt濃度が、界面の平均Pt濃度よりも高くなるということは、添加したPtが効率よく結晶粒内に取り込まれ熱安定性に寄与することになる。この点からも本実施の形態のPt濃度分布は好ましい。
【0064】
本実施の形態の製造方法において、界面のPt濃度が高くなる理由は、NiPtSi形成過程における不純物の影響を排除することによると考えられる。すなわち、シリサイド化の前にAsがSi基板中に存在すると、シリサイド化の過程でPtとAsは電荷移動によって、相互作用を与え、Ptの移動が妨げられる。n型不純物層上のNiPtSiでは、界面のPt濃度がp型不純物層上に比べて高くならないという問題も、この現象に起因すると考えられる。
【0065】
本実施の形態においては、不純物は、NiPtSi形成後に後打ちされるのでPtとAsの相互作用は極力除外されている。その結果、図12、図13にすでに示したように、本実施の形態の不純物後打ちプロセスではPtの界面での濃度が高くなる。特に、界面の結晶粒内でPt濃度が高まるのである。
【0066】
図14は、本実施の形態の半導体装置のNiPtSi/Si界面の電圧−電流特性を測定した結果を示す図である。図中には比較のため、不純物後打ちプロセスのNiSi/Si界面の測定結果も示してある。本実施の形態のNiPtSi/Siの試料の作成条件は、図12、図13の場合と同様である。
【0067】
図14より、NiPtSi/Siにて高い電流が得られていることがわかる。ここでサンプルの電流経路からすると、NiPtSi、NiSi自体の抵抗も電圧電流特性に含まれている。したがって、全体としての抵抗は界面抵抗だけでなくシリサイド膜自体の成分も含んでいるといえる。
【0068】
特に、順方向特性でもNiPtSi/Siの抵抗が低いことから、NiPtSiは膜自体の抵抗がNiSiよりも低いことを示している。NiSiは熱処理によってNiSiなどが形成されてしまい、高抵抗になっているといえる。
【0069】
すなわち、この結果からもNiPtSiの熱安定性が示されていることになる。なお、それぞれのサンプルはAsイオン注入後のアニールが550℃の場合を示している。条件検討の際に、450℃の場合と、500℃の場合のものも準備したが、アニール温度が550℃のものが最も高い電流が得られた。
【0070】
ただし、シリサイド膜厚とイオン注入された不純物濃度によって、アニール温度の最適条件が異なることもわかっている。また、アニール温度のみならず、アニール時間にも依存することがわかっている。これらの条件を最適化することにより、所望の構造と特性を得ることが可能である。
【0071】
図15は、本実施の形態のNiPtSi/Si界面でのAs不純物分布を示す図である。本実施の形態の試料の作成条件は、図12、図13の場合と同様である。図15は、アトムプローブによる分析結果である。横軸には、シリサイド層/Si基板界面からの深さ、縦軸にはAsの原子濃度(%)を示す。
【0072】
図から明らかなように、Asが界面付近にパイルアップしている。また、アトムプローブ分析のProxigramは界面粗さによる分布広がりを除外して評価しており、図から不純物が界面の深さ方向に対し±1nm以下の領域にAs濃度のピークを有することが分かる。また、このピークの半値幅が界面に対し±1nm以下の範囲にある。さらに、ピークの裾部のAs濃度がシリサイド側(図15中横軸で−6〜−1nmの範囲)でSi基板側(図15中横軸で1〜6nmの範囲)よりも高い。
【0073】
ただし、図15では原理検証のための試料のため、Asイオン注入量を1×1015cm−2と低くしていたのでAs濃度は全体としてそれほど高くない。ここで堆積したNiPt膜中のPt濃度は5%であり、それほど高いとはいえない。それにも関わらず、PtをNiSiに添加することによるAs偏析効果は明瞭に現れている。
【0074】
このように、本実施の形態のNiPtSi層へのAs後打ちプロセスでは、イオン注入後の熱処理により不純物が界面まで拡散し、界面のSi側において安定点に自己整合的に収まり、極浅で高濃度のAs偏析層が形成される。
【0075】
以下、この原理を説明する。第一原理計算で、PtSi/SiとNiSi/Siの両者に対し、不純物のAsあるいはBを置換位置に入れ込んだ構造での全エネルギー計算を行った。
【0076】
図16は、第一原理計算による界面不純物挙動を説明する図である。図16は計算結果であり、縦軸にエネルギー、横軸にサイトの深さ方向位置を示している。エネルギーの基準をSiバルクにとっている。
【0077】
As、Bのいずれの場合も界面のSi側にエネルギーの極小がある。またシリサイド中では、PtSiの方が、NiSiよりも不純物にとってのエネルギーが高くなっていることが見て取れる。この結果より、特にAsの場合、界面にPtSiが形成されると、不純物を界面に偏析させる上で、不純物後打ちが有効であることが導かれる。
【0078】
ここで、その理由を説明する。図17は、本実施の形態の不純物後打ちプロセスの原理を説明する図である。図17によると、PtSiはNiSiよりも不純物にとってポテンシャルエネルギーが高く感じられるので、不純物移動の際にはPtSiが拡散バリアとして振舞われる。
【0079】
従来型の、いわゆる雪かき効果によるAs偏析では、シリサイド化の過程で、特にNiSiやPtSiの段階で不純物がシリサイド膜中に取り込まれてしまう。その後でモノシリサイド化するので、シリサイド膜に取り込まれたAsはPtSiの障壁のためにSi側へ移動できなくなる。
【0080】
一方、すでにシリサイド構造、すなわちNiSi/PtSi/Siが形成されている場合では、この構造に対して不純物の後打ちを行うと、不純物はシリサイド中の格子間位置に導入される。このため、熱処理によりAsはPtSiの障壁を容易に超えることができ、Si側の安定位置に自然に収まることになる。従って、不純物後打ちによって、NiPtSiではAs濃度が高くなるというのは理論的に導かれる帰結といえる。さらに、シリサイド内部からのAsの界面方向への拡散が促進されていることにより、ピークの裾部のAs濃度がNiPtSi層側でSi基板側よりも高くなる。
【0081】
このように、本実施の形態によれば、Asを不純物として用いた場合に、NiPtSi層/Si基板界面付近の不純物濃度を高くでき、この結果ショットキー障壁高さ(SBH)を実効的に低下させることができる。さらに、ピークの裾部のAs濃度がNiPtSi層側でSi基板側よりも高くなる。このようにAsが高濃度にNiPtSi層側に存在することで、NiPtSi層内のSiと未結合のPtがAsと結合し安定する。そして、Si基板側へのPtの脱離を防止する。このため、NiPtSi層のPt濃度が維持される。その結果、NiPtSi層のNi拡散抑制効果が高まる。特に、Asのイオン注入による後打ちで、NiPtSi層が一部アモルファス化してしまい、Siと未結合のPtが多くなる場合にこの効果は顕著である。したがって、NiPtSi層の熱安定性がさらに向上する。以上のように、このプロセスが、n型MISFETの界面抵抗(Rc)の低抵抗化実現および熱安定性向上のために極めて有効といえる。
【0082】
なお、Ni膜に含有するPt量は、原子濃度で、5%以上10%以下であることが望ましい。なぜなら、この範囲を下回ると、Niの異常拡散の抑制効果が低下し始めるからである。また、この範囲を上回ると、高価なPtの使用による製造コストの増大が懸念されるからである。
【0083】
また、本実施の形態によれば、NiPtSiの膜中の平均Pt濃度よりも界面でのPt濃度が高まる。したがって、元々のNi膜に含有させるPt濃度が10%であったとしても界面のPt濃度はそれよりも高まることになり、Ptの特性を十分活用することが可能となる。
【0084】
以上のように、本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、熱安定性に優れ、低抵抗なソース/ドレイン電極と、極浅の不純物層を有するn型MISFETが実現される。そして、本実施の形態の半導体装置であるn型MISFETは、熱安定性にすぐれ、寄生抵抗が低減され極浅の不純物層を有することで高いトランジスタ特性を実現する。
【0085】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、半導体基板上にNiからなる第1の金属膜を堆積し、第1の金属膜上にNiおよびPtを主成分とする第2の金属膜を堆積し、熱処理により、第1および第2の金属膜を半導体基板と反応させて、ゲート電極の両側に金属半導体化合物層を形成することを特徴とする。なお、本実施の形態の半導体装置はn型MISFETである。
【0086】
以下、半導体基板としてSi基板、金属半導体化合物層としてNiPtSi層を例に説明する。また、ここではNiPtSi層形成後に、イオン注入によりAsをNiPtSi層に導入し、その後の熱処理により界面に拡散させる場合について説明する。本実施の形態の半導体装置の製造方法は、第1の実施の形態において、シリサイド形成のために堆積する金属膜が、NiとNiPtの積層膜となる点が異なっている。なお、第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0087】
図18は、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。本実施の形態の半導体装置の製造方法について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0088】
第1の実施の形態の図7と同様に、ゲート電極16の側面部に側壁絶縁膜18を有する構造を形成する。その後、図18に示すように、例えば、スパッタ法により、厚さ3nm程度のNi膜26をSi基板10上に形成する。次に、厚さ7nm程度のNiPt膜28をNi膜26上に形成する。すなわち、n型MISFETのソース/ドレイン領域にNiとNiPtの積層膜が接するよう堆積する。
【0089】
その後、第1の実施の形態と同様に、熱処理によりNiPtSi層22を形成した後、Asのイオン注入と、熱処理によるAsの拡散でAs偏析層24を形成する。このようにして、図11に示すと同様なn型MISFETが形成される。
【0090】
もっとも、本実施の形態によれば、堆積する金属膜をNiとNiPtの積層膜とすることにより、NiPtSi層22のSi基板10との界面におけるPt濃度を、さらに高くすることが可能となる。したがって、NiPtSi層22の熱安定性がさらに向上する。
【0091】
界面のPt濃度が第1の実施の形態に比較して高くなる理由を以下に説明する。第1の実施の形態のNiPtSi層の形成では、NiPt膜をSi基板上に堆積した後、熱処理によってシリサイド化し、NiPtSi層を作る。
【0092】
ここで反応過程を時系列で考えると、PtSiとNiSiは生成温度が200℃程度でほぼ等しく、最初の反応でSiとNiおよびPtがそれぞれシリサイド化してしまう。ただし、この時点ではモノシリサイドではなくダイプラチナシリサイドあるいはダイニッケルシリサイドである。
【0093】
次に、熱処理温度および時間が増加すると、モノシリサイドが形成されることになるが、PtSiの生成温度が300℃とNiSiよりも低いので先にPtSiが形成されることになる。このPtSiは一度形成されると、凝集エネルギーの高さのため、結合は容易に崩すことが困難であり、膜中の特定の場所にとどまったままとなる。
【0094】
この反応初期に形成されたPtSiが、図2においてNiPtSi層の中央付近に存在するPt濃度ピークに対応する。したがって、PtSiの界面での高濃度化を妨げる根本原因はPtの初期反応であるといえる。
【0095】
先に記載したように、基本的にPtはNiSi中を動きやすく、かつ、界面に安定に存在しうる。したがって、NiPtSi層中央部のPt濃度を抑制し、界面のPt濃度を上げるためには、Ptの初期反応を抑制し、Ptの固定化を防ぐことが重要である。
【0096】
図19は、本実施の形態の製造方法のNi/NiPt積層膜堆積法を説明する図である。図に示すように、下層のNi膜を先に反応させてNiSiを形成し、界面におけるPtSiの生成を抑制する。その後、NiPt膜中からPtが界面側に拡散して、PtSiを形成する。
【0097】
このように、Ni膜を先に堆積することにより、Ptの初期反応を抑制し、Ptの固定化が防止される。したがって、NiPtSi層とSi基板との界面のPt濃度を一層高くすることが可能となる。
【0098】
なお、ここではn型MISFETを例に説明したが、例えば、不純物をAsからBにかえてp型MISFETにこの技術を適用することも有用である。特に、p型MISFETでは、NiPtSi層とSi基板との界面のPt濃度を高くすることで、正孔に対するショットキー障壁高さが低くなるため一層の接触抵抗低減効果が得られるという利点がある。
【0099】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、第2の実施の形態の製造方法を、不純物後打ちプロセスではなく、不純物前打ちプロセスに適用する形態である。
【0100】
以下、半導体基板としてSi基板、金属半導体化合物層としてNiPtSi層を例に説明する。ここではNiPtSi層を形成するための金属膜堆積前に、イオン注入によりAs不純物を導入する。
【0101】
図20〜22は、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。本実施の形態の半導体装置の製造方法について、第1、第2の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0102】
第1の実施の形態の図7と同様に、ゲート電極16の側面部に側壁絶縁膜18を有する構造を形成する。次に、図20に示すように、Asをイオン注入し、活性化熱処理を加え、n型不純物層30をチャネル領域の両側に形成する。
【0103】
その後、図21に示すように、例えば、スパッタ法により、厚さ3nm程度のNi膜26をSi基板10上に形成する。次に、厚さ7nm程度のNiPt膜28をNi膜26上に形成する。すなわち、n型MISFETのソース/ドレイン領域にNiとNiPtの積層膜が接するよう堆積する。
【0104】
その後、第1の実施の形態と同様に、熱処理によりNiPtSi層22を形成する。この時、いわゆる雪かき効果により、As偏析層24が形成される。このようにして、図22に示すn型MISFETが形成される。
【0105】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した、Asを後打ちすることによる界面のPt濃度向上効果は得られない。しかしながら、従来のNi膜を介在させないプロセスと比較すれば、NiPtSi層とSi基板との界面のPt濃度を高くすることが可能である。したがって、NiPtSi層の熱安定性が向上する。よって、熱安定性に優れたn型MISFETを実現することが可能となる。
【0106】
また、p型MISFETにこの技術を適用することが有用である点については、第2の実施の形態と同様である。
【0107】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、第1の実施の形態の製造方法が、Asを金属半導体化合物層中にイオン注入で導入するのに対し、Asを金属半導体化合物層中に固相拡散により導入する点で異なっている。以下、半導体基板としてSi基板、金属半導体化合物層としてNiPtSi層、Asを含有する固相膜として、Asを含有するSi酸化物であるAsSG膜(As Silicate Glass)を例に説明する。以下、第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0108】
本実施の形態ではNiPtSi層形成後に、NiPtSi層上にAsSG膜を堆積し、第2の熱処理により、AsSG膜からNiPtSi層にAsを導入し、かつ、AsをNiPtSi層とSi基板の界面に拡散させることを特徴とする。
【0109】
図23、図24は、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。本実施の形態の半導体装置の製造方法について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0110】
図9に示すように、NiPt膜20をSi基板10と反応させてシリサイド化して、厚さ20nm程度のNiPtSi層22を形成するまでは第1の実施の形態と同様である。次に、図23に示すように、AsSG膜32を堆積する。
【0111】
AsSG膜32の形成は、例えば、適当な溶媒にAsSGを溶解させたものを半導体上に塗布し、その後スピンコートにより膜厚を制御する。その後、熱処理により溶媒を揮発させAsSG膜32とする。
【0112】
次に、図24に示すように、第2の熱処理として、例えば、100℃以上550℃以下の熱処理を行う。この熱処理により、AsSG膜32からAsをNiPtSi層22の結晶粒内あるいは結晶粒界を通して拡散させる。そして、AsをNiPtSi層22/Si基板10界面に偏析させて、As偏析層24が形成される。
【0113】
なお、この第2の熱処理の処理温度に関しては、シリサイド化を行う第1の熱処理の処理温度よりも低温であることが望ましい。NiPtSi層22の表面側の組成変化により電極自体の抵抗が増大するのを抑制するためである。
【0114】
ここで、NiPtSi層上にAsSG膜を堆積させた後、熱処理によりAs元素をNiPtSi膜中に拡散させる際、NiPtSi層の結晶性の違いにより、Asが不均一に拡散する可能性がある。例えば、Si(100)基板上のNiPtSi膜は一般に多結晶であるため、結晶粒界が存在する。As元素の拡散はこの結晶粒界で優先的に起きてしまうことが考えられる。
【0115】
しかし、NiPtSi膜ではPt濃度に依存して結晶粒の大きさを変化させることが可能であり、むしろ粒界での拡散を増長させることでNiPtSi/Si界面でのAs濃度を高めることも可能である。従って、本実施の形態の製造方法でも、基本的には第1の実施の形態の不純物後打ちプロセスと同様の効果が発生する。
【0116】
さらに、本実施の形態によれば、NiPtSi層22中にAsを導入する際に、イオン注入のように、NiPtSi層22をアモルファス化する恐れがない。したがって、アモルファス化したNiPtSi層22が再シリサイド化する際に、Asが結晶中に取り込まれる恐れもない。よって、界面へのAsの偏析が促進されるという利点もある。
【0117】
なお、ここではAsSG膜を固相膜の例として選んだが、他の半導体系材料あるいはその酸化物でも構わない。不純物としてAsを含みつつ、さらにNiPtSi層中へAs以外が拡散しない材料を選択することが重要である。
【0118】
(第5の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置は、第1の実施の形態のn型MISFETと、さらにp型MISFETを備えるCMIS構造の半導体装置の製造方法および半導体装置である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0119】
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。図25〜図30は本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0120】
まず、p型のSi基板10に、素子分離領域12を形成する。この素子分離領域12は、n型MISFETが形成される第1の半導体領域50と、p型MISFETが形成される第2の半導体領域60との境界部に形成される。その後、p型ウェル52およびn型ウェル62を不純物のイオン注入により形成する。
【0121】
そして、半導体領域50、60上にゲート絶縁膜14を形成する。さらに、ゲート絶縁膜14上に、ゲート電極16となるポリシリコン膜を堆積する。そして、リソグラフィー技術およびRIE等のエッチング技術により、ゲート絶縁膜14およびゲート電極16をパターン形成する。
【0122】
次に、シリコン窒化膜を堆積した後、RIE法によってエッチバックすることにより、シリコン窒化膜をゲート電極16の側面部にのみ残す。これにより、側壁絶縁膜18を形成する。以上のようにして、図25に示す構造が形成される。
【0123】
次に、図26に示すように、NiPt膜20をSi基板10上に形成する。すなわち、n型MISFETおよびp型MISFETのソース/ドレイン領域にNiPt膜20が接するよう堆積する。
【0124】
そして、その後、図27に示すように、第1の熱処理を行い、NiPt膜20をSi基板10と反応させてシリサイド化して、NiPtSi層22を形成する。この時、ゲート電極16もシリサイド化されいわゆるFUSI構造となる。その後、薬液により未反応の余剰のNiPt膜20を剥離する。このNiPtSi層22がn型MISFTおよびp型MISFTのソース/ドレイン電極となる。
【0125】
次に、図28に示すように、ゲート電極16、側壁絶縁膜18およびレジスト(図示せず)をマスクに、Bを、イオン注入により第2の半導体領域60のNiPtSi層22中に選択的に導入する。
【0126】
次に、図29に示すように、ゲート電極16、側壁絶縁膜18およびレジスト(図示せず)をマスクに、Asを、イオン注入により第1の半導体領域50のNiPtSi層22中に選択的に導入する。
【0127】
その後、図30に示すように第2の熱処理として、例えば、RTAにより、550℃、30秒程度のアニールを行う。このアニールにより、B不純物およびAs不純物をNiPtSi層22/Si基板10界面に偏析させて、B偏析層34およびAs偏析層24が形成される。このようにして、CMIS構造の半導体装置が形成される。
【0128】
なお、本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、n型MISFETおよびp型MISFETの双方について、熱安定性に優れ、低抵抗なソース/ドレイン電極と、極浅の不純物層を有するCMIS構造の半導体装置が実現される。そして、本実施の形態のCMIS構造の半導体装置においては、n型MISFETおよびp型MISFETの双方について熱安定性にすぐれ、寄生抵抗が低減され極浅の不純物層を有することで高いトランジスタ特性が実現される。
【0129】
特に、p型MISFETについては、NiPtSi層とSi基板との界面のPt濃度があがることによるショットキー障壁高さの低下による界面抵抗の低抵抗化が実現できる。
【0130】
なお、p型MISFETに、イオン注入によりBを導入する際、BFをイオン注入しても構わない。BFのイオン注入によれば、Bに比べ飛程(Rp)を小さくすることが可能である。すなわち、Bの場合と同じ加速電圧でも、イオン注入された際の分布ピークがシリサイド中に収まりやすくなり、Bの場合に比べてイオン注入条件の最適化が容易になる。また、より薄いシリサイド層へのB導入が容易になるという効果が得られる。
【0131】
(第6の実施の形態)
本実施の形態は、CMIS構造の半導体装置の製造方法および半導体装置において、p型MISFETに導入する不純物をBではなく、Mgとすること以外は第5の実施の形態と同様である。
【0132】
本実施の形態によれば、第5の実施の形態に比較して、一層p型MISFETの界面抵抗を低減することが可能となる。
【0133】
本実施の形態によれば、Bの代わりにMgによる不純物偏析層が形成される。Mgの不純物偏析層は、p型MISFETのNiPtSi層/Si基板界面のショットキー障壁高さを低減させ、界面抵抗を低くする上で極めて有効である。これは、Bの場合以上に、Mgを不純物とする不純物偏析層とした場合に、界面での電気双極子(ダイポール)の影響が強くなり、ショットキー障壁高さが低下するからである。
【0134】
なお、本実施の形態において、Mg単独でなく、Bとあわせて不純物偏析層を形成しても良い。MgのSiに対する固溶限がBに比べて低いため、Mg単独で不純物偏析層を形成した場合には、不純物濃度の不足によりショットキー障壁高さが十分に下がらない恐れがあるためである。
【0135】
また、MgにかえてCaやBaを適用してもMgと同様の効果が得られる。
【0136】
(第7の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法および半導体装置は、半導体装置を構成するn型MISFETおよびp型MISFETが、Fin型MISFETであること以外は第5の実施の形態と同様である。したがって、第5の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0137】
図31は、本実施の形態の半導体装置の斜視図である。図31に示すように、本実施の形態の半導体装置は、例えば、シリコンの半導体基板上に、Fin型のn型MISFET70と、Fin型のp型MISFET80を有している。
【0138】
n型MISFET70は、第1のチャネル領域72の両側に、NiPtSi層22からなるソース/ドレイン電極と、NiPtSi層22と基板との間に形成されたAs偏析層24を有している。
【0139】
また、p型MISFET80は、第2のチャネル領域82の両側に、NiPtSi層22からなるソース/ドレイン電極と、NiPtSi層22と基板との間に形成されたB偏析層34を有している。
【0140】
そして、n型MISFET70、p型MISFET80のチャネル領域72、82は、Si基板10に垂直なFin形状をしており、相対する2つの主面を有している。そして、この2つの主面上に、それぞれ、ゲート絶縁膜(図示せず)が形成されている。そのゲート絶縁膜上に、ゲート電極16が形成されている。このように、第7の実施の形態のMISFETは、いわゆるダブルゲート構造を有するFin型MISFETである。
【0141】
本実施の形態の半導体装置の製造方法においては、公知のFin型MISFETの製造方法が適用される。そして、その中で、第5の実施の形態と同様の方法により、NiPtSi層22、B偏析層34、およびAs偏析層24が形成される。
【0142】
Fin型MISFETは、ゲートの支配力が非常に強いため、ドレイン電界によるソース端でのバリア低下(Drain Induced Barrier Lowering)を抑えることができ、短チャネル効果に強いという特徴を持っている。よって、本実施の形態の半導体装置の製造方法および半導体装置によれば、第5の実施の形態の効果に加え、短チャネル効果を抑制するという効果を得ることが可能となる。
【0143】
(第8の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、半導体基板上にNiおよびPtを主成分とする金属膜を堆積し、第1の熱処理により、金属膜を半導体基板と反応させて、金属半導体化合物層を形成し、金属半導体化合物層にAsを導入し、Asを金属半導体化合物層と半導体基板との界面に拡散させ、金属半導体化合物層上に金属電極を形成することを特徴とする。
【0144】
本実施の形態は、第1の実施の形態を、配線層から半導体基板または半導体基板中に形成された不純物層への導通をとるための金属のコンタクト電極構造に応用する形態である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0145】
以下、半導体基板としてSi基板、金属半導体化合物層としてNiPtSi層を例に説明する。また、ここではイオン注入によりAsをNiPtSi層に導入し、Asを第2の熱処理により界面に拡散させる場合について説明する。
【0146】
図32〜図36は、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。まず、図32に示すように、p型のSi基板10に、Si酸化膜からなる素子分離領域12を形成する。次に、例えば、スパッタ法により、厚さ10nm程度のNiPt膜20をSi基板10上に堆積する。
【0147】
その後、図33に示すように、第1の熱処理として、例えば、RTAにより、500℃、30秒程度のアニールを行い、NiPt膜20をSi基板10と反応させてシリサイド化して、厚さ20nm程度のNiPtSi層22を形成する。その後、薬液により未反応の余剰のNiPt膜20を剥離する。
【0148】
次に、図34に示すようにAsをイオン注入する。このAsは、NiPtSi層22中に導入される。
【0149】
その後、図35に示すように第2の熱処理として、例えば、RTAにより、550℃、30秒程度のアニールを行う。このアニールにより、AsをNiPtSi層22/Si基板10の界面に偏析させて、As偏析層24が形成される。
【0150】
次に、図36に示すように、Si基板10上に、例えば、CVD法によりSi酸化物の層間絶縁膜90を堆積する。その後、公知のリソグラフィー法および反応性イオンエッチング(以下RIEともいう)等のエッチング技術により、コンタクトホールを開孔する。
【0151】
その後、コンタクトホール内に、例えば、CVD法により、TiNのバリアメタルとWのからなるコンタクト電極92を形成する。その後、コンタクト電極92上に、例えばCuの配線層94を形成する。
【0152】
図36に示す本実施の形態の半導体装置は、Si基板10と、Si基板10上の、NiPtSi層20と、このNiPtSi層20上のコンタクト電極92とを備えている。そして、第1の実施の形態と同様に、NiPtSi層20とSi基板10との界面から深さ方向で1nm以内の金属半導体化合物層内の領域において、この領域の結晶粒内のPt濃度が、この領域の平均Pt濃度よりも高くなっている。
【0153】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、NiPtSi層20とSi基板10との界面のPt濃度の高い熱安定性に優れたコンタクト電極構造が実現される。また、NiPtSi層20とSi基板10との界面のAs濃度の高い低抵抗なコンタクト電極構造が実現可能となる。そして、本実施の形態の半導体装置であるコンタクト電極構造は、高い熱安定性と、低抵抗なコンタクト特性を備える。
【0154】
なお、ここではAs偏析層24以外にはn型不純物層を有しないコンタクト構造を例に説明した。コンタクト電極92とSi基板10間のジャンクションリーク等を抑制する観点からは、As偏析層24より低濃度のn型不純物層を有することが望ましい。しかし、コンタクト抵抗低減の観点からは必ずしも、低濃度のn型不純物層は必須ではない。
【0155】
また、ここではp型のSi基板上のn型不純物層に配線層から電気的導通をとるコンタクト電極構造について説明した。しかし、p型のSi基板をn型のSi基板にかえたコンタクト電極構造、すなわち、n型のSi基板自体に電気的導通をとるコンタクト電極構造にもこの実施の形態を応用することが可能である。
【0156】
また、NiPtSi層20にAsにかえて、B等のp型不純物を導入してB偏析層を形成することにより、n型のSi基板上のp型不純物層、あるいは、p型のSi基板上のp型不純物層に配線層から電気的導通をとるコンタクト電極構造にもこの実施の形態を応用することが可能である。
【0157】
(第9の実施の形態)
本実施の形態は第2の実施の形態を、配線層から半導体基板または半導体基板中に形成された不純物層への導通をとるための金属のコンタクト電極構造に応用する形態である。すなわち、本実施の形態は、第8の実施の形態に対して、シリサイド形成のために堆積する金属膜がNiとNiPtの積層膜となる点が異なっている。以下、第2および第8の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0158】
図37は、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。本実施の形態の半導体装置の製造方法について、第8の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0159】
第8の実施の形態の同様に、p型のSi基板10に、Si酸化膜からなる素子分離領域12を形成する。その後、図37に示すように、例えば、スパッタ法により、厚さ3nm程度のNi膜26をSi基板10上に形成する。厚さ7nm程度のNiPt膜28をNi膜26上に形成する。
【0160】
その後は、第8の実施の形態と同様に、熱処理によりNiPtSi層22を形成した後、Asのイオン注入と熱処理によるAsの拡散でAs偏析層を形成する。このようにして、図36に示すと同様なコンタクト電極構造が形成される。
【0161】
本実施の形態によれば、堆積する金属膜をNiとNiPtの積層膜とすることにより、NiPtSi層22のSi基板10との界面におけるPt濃度を、第8の実施の形態よりも、さらに高くすることが可能となる。したがって、NiPtSi層22の熱安定性がさらに向上する。したがって、第8の実施の形態の効果に加えて、さらに熱安定性の向上したコンタクト電極構造の実現が可能となる。
【0162】
(第10の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、第3の実施の形態を、配線層から半導体基板または半導体基板中に形成された不純物層への導通をとるための金属のコンタクト電極構造に応用する形態である。すなわち、本実施の形態は、第8の実施の形態に対して、不純物後打ちプロセスではなく、不純物前打ちプロセスで不純物をNiPtSi層に導入する点が異なっている。以下、第3および第8の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0163】
本実施の形態によれば、Asを後打ちすることによる界面のPt濃度向上効果は得られない。しかしながら、従来のNi膜を介在させないプロセスと比較すれば、NiPtSi層とSi基板との界面のPt濃度を高くすることが可能である。したがって、NiPtSi層の熱安定性が向上するコンタクト電極構造の実現が可能となる。
【0164】
(第11の実施の形態)
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、第4の実施の形態を、配線層から半導体基板または半導体基板中に形成された不純物層への導通をとるための金属のコンタクト電極構造に応用する形態である。すなわち、本実施の形態は、第8の実施の形態に対して、Asをイオン注入で導入するのではなく、Asを固相拡散により導入する点で異なっている。以下、第4および第8の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0165】
本実施の形態によれば、第8の実施の形態の効果に加えて、NiPtSi層22中にAsを導入する際に、イオン注入のように、NiPtSi層22をアモルファス化する恐れがない。したがって、アモルファス化したNiPtSi層22が再シリサイド化する際に、Asを結晶中に取り込まれる恐れもない。よって、界面へのAsの偏析が促進され、さらに低抵抗なコンタクト構造が実現可能となる。
【0166】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、半導体装置の製造方法、半導体装置等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる半導体装置の製造方法、半導体装置等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0167】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての半導体装置の製造方法、半導体装置は、本発明の範囲に包含される。
【0168】
例えば、半導体基板については、Si基板を例に説明したが、必ずしもSi基板に限られことはなく、SiGe1−x(0<x<1)基板を適用することも可能である。
【0169】
また、Si基板についても(100)面方位を有する基板を例に説明した。しかし、(100)に限らず、(110)、(111)等、その他の面方位を有するSi基板を適用することが可能である。
【0170】
また、例えば、ゲート絶縁膜については、Si酸化膜を例に説明した。しかし、Si酸化膜にかえてhigh−k絶縁膜を適用することで、MISFETの性能が向上するため望ましい。high−k絶縁膜としては、例えば、Hf、Zr、Al、La等の希土類元素の酸化物、シリケート、窒化シリケート、あるいはこれらの混合物、積層物を適用することが可能である。
【0171】
また、例えば、ゲート電極については、ソース/ドレイン電極と同様にNiPtSiで形成される、いわゆるFUSI(FUlly Silicided)構造を例に説明した。もっとも、ゲート電極がFUSI構造であることが必須ではなく、例えば、ポリシリコンと金属シリサイドとの積層構造であっても構わない。また、例えば、金属と金属シリサイドとの積層構造であっても構わない。あるいは、ゲート電極全体が金属で形成されるメタルゲート構造であっても構わない。この場合、金属材料としては、例えば、Ti、Ta、Wの単体金属、あるいは、これらの金属の窒化物、炭化物等が適用可能である。また、例えば、Ti、Ta、Wの単体金属、あるいは、これらの金属の窒化物、炭化物等と、WN等のバリアメタルと、NiSiやNiPtSi等のシリサイドの3層からなるような積層構造のゲート電極であっても構わない。
【0172】
また、上記の各実施の形態の要素を適宜、他の実施の形態に適用することも可能である。
【0173】
本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法の概略図である。
【図2】NiPtSi/Si界面の不純物分布を分析した結果を示す図である。
【図3】第一原理計算によるNiSi/Siでの界面Pt挙動を説明する図である。
【図4】第一原理計算によるPtSiの熱安定性を説明する図である。
【図5】第一原理計算によるシリサイド中の原子拡散バリアを説明する図である。
【図6】NiSi膜中のPt拡散の実験結果を示す図である。
【図7】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図8】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図9】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図10】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図11】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図12】本実施の形態と従来技術の製造方法で形成されたNiPtSi/Si界面付近のNiPtSi結晶粒のPt濃度の分布を示す図である。
【図13】NiPtSi/Si界面付近のPt濃度を比較した図である。
【図14】第1の実施の形態の半導体装置のNiPtSi/Si界面の電圧−電流特性を測定した結果を示す図である。
【図15】第1の実施の形態のNiPtSi/Si界面でのAs不純物分布を示す図である。
【図16】第一原理計算による界面不純物挙動を説明する図である。
【図17】第1の実施の形態の不純物後打ちプロセスの原理を説明する図である。
【図18】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図19】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法のNi/NiPt積層膜堆積法を説明する図である。
【図20】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図21】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図22】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図23】第4の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図24】第4の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図25】第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図26】第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図27】第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図28】第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図29】第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図30】第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図31】第7の実施の形態の半導体装置の斜視図。
【図32】第8の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図33】第8の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図34】第8の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図35】第8の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図36】第8の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図37】第9の実施の形態の半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【符号の説明】
【0175】
10 Si基板
12 素子分離領域
14 ゲート絶縁膜
16 ゲート電極
18 側壁絶縁膜
20 NiPt膜
22 NiPtSi層
24 As偏析層
26 Ni膜
28 NiPt膜
29 チャネル領域
30 n型不純物層
32 AsSG膜
34 B偏析層
50 第1の半導体領域
52 p型ウェル
60 第2の半導体領域
62 n型ウェル
70 n型MISFET
72 チャネル領域
80 p型MISFET
82 チャネル領域
90 層間絶縁膜
92 コンタクト電極
94 配線層





【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板中のチャネル領域と、
前記チャネル領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記チャネル領域の両側に形成され、NiおよびPtを主成分とする金属半導体化合物層からなるソース/ドレイン電極とを備え、
前記金属半導体化合物層と前記半導体基板との界面において、前記金属半導体化合物層の単一の結晶粒と前記半導体基板との境界部の最大Pt濃度が、前記界面の平均Pt濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記界面にAs不純物層が形成され、前記界面近傍にAs濃度のピークを有し、前記ピークの裾部のAs濃度が前記金属半導体層側で前記半導体基板側よりも高いことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記半導体基板上にNiからなる第1の金属膜を堆積し、
前記第1の金属膜上にNiおよびPtを主成分とする第2の金属膜を堆積し、
熱処理により、前記第1および第2の金属膜を前記半導体基板と反応させて、前記ゲート電極の両側に金属半導体化合物層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
n型MISFETを有する半導体装置の製造方法であって、
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成し、
前記半導体基板上にNiおよびPtを主成分とする金属膜を堆積し、
第1の熱処理により、前記金属膜を前記半導体基板と反応させて、前記ゲート電極の両側に金属半導体化合物層を形成し、
前記金属半導体化合物層にAsを導入し、前記Asを前記金属半導体化合物層と前記半導体基板との界面に拡散させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
イオン注入により前記金属半導体化合物層にAsを導入した後、前記Asを第2の熱処理により前記界面に拡散させることを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記金属半導体化合物層上にAsを含有する固相膜を堆積し、第2の熱処理により、前記固相膜から前記金属半導体化合物層に前記Asを導入し、かつ、前記Asを前記界面に拡散させることを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
半導体基板と、
前記半導体基板上の、NiおよびPtを主成分とする金属半導体化合物層と、
前記金属半導体化合物層上の金属電極とを備え、
前記金属半導体化合物層と前記半導体基板との界面において、前記金属半導体化合物層の単一の結晶粒と前記半導体基板との境界部の最大Pt濃度が、前記界面の平均Pt濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
半導体基板上にNiからなる第1の金属膜を堆積し、
前記第1の金属膜上にNiおよびPtを主成分とする第2の金属膜を堆積し、
熱処理により、前記第1および第2の金属膜を前記半導体基板と反応させて、金属半導体化合物層を形成し、
前記金属半導体化合物層上に金属電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
半導体基板上にNiおよびPtを主成分とする金属膜を堆積し、
第1の熱処理により、前記金属膜を前記半導体基板と反応させて、金属半導体化合物層を形成し、
前記金属半導体化合物層にAsを導入し、前記Asを前記金属半導体化合物層と前記半導体基板との界面に拡散させ、
前記金属半導体化合物層上に金属電極を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2010−141051(P2010−141051A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314839(P2008−314839)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】