説明

半導体装置の製造方法

【課題】 トランジスタのスイッチング速度低下を防止することが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明では、半導体基板100上にゲート絶縁膜104を形成する工程と、ゲート絶縁膜104上に金属膜107を形成する工程と、金属膜107上に金属シリコン化合物膜108を連続して堆積する工程と、金属シリコン化合物膜108上にシリコン膜110を形成する工程と、金属膜107、金属シリコン化合物膜108及びシリコン膜110を加工する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に係わり、特にMIPS(Metal Insert Poly−Si Stack)構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタのゲート電極として、空乏化が生じないメタルゲート電極の活用が検討されている。また、メタルゲート電極構造のひとつとして、金属膜をゲート電極下部に用い、その上部にシリコン膜を用いるシリコン膜と金属膜の積層構造がある。
【0003】
この構造ではシリコン膜と金属膜の界面における抵抗の上昇によりトランジスタのスイッチング速度が低下するという問題があるため、シリコン膜と金属膜の界面にシリサイド層を形成する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、金属膜とシリコン膜を反応させてシリサイド層を形成するという従来の方法は、金属膜とシリコン膜が接している部分にのみ選択的にシリサイド層を形成できるという利点がある一方で、金属膜表面が酸化され、抵抗が増加し、所望の界面抵抗が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−19396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、シリコン膜と金属膜の積層となっているゲート電極構造において、シリコン膜と金属膜の界面における抵抗を低減し、トランジスタのスイッチング速度低下を防止することが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係わる半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、前記ゲート絶縁膜上に金属膜を形成する工程と、前記金属膜上に金属シリコン化合物膜を連続して堆積する工程と、前記金属シリコン化合物膜上にシリコン膜を形成する工程と、前記金属膜、前記金属シリコン化合物膜及び前記シリコン膜を加工する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トランジスタのスイッチング速度低下を防止することが可能な半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図。
【図2】本発明の実施例に係る半導体装置の製造方法を示す工程断面図。
【図3】ゲート電極構造と分布定数回路を示す図。
【図4】ゲート電極の製造方法を示す工程断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置として、MIPS構造のトランジスタを例にその製造方法を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1および図2は、本実施例に係るトランジスタの製造工程を示す工程断面図である。
【0012】
図1(a)に示すように、半導体基板、例えば単結晶シリコン基板100上に素子分離101を形成する。次に、PMOS領域にSiGe層102を形成する。SiGe層102によって、キャリア速度が増大する。続いて、NMOS領域の半導体基板100上、及びPMOS領域のSiGe層102上に、窒素を含む界面層103を形成する。
【0013】
さらに、有機ソースを用いた化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法等により、ハフニウム(Hf)を含むゲート絶縁膜104を素子分離101上、及び界面層103上に形成する。
【0014】
次に、図1(b)に示すように、閾値制御層105として、例えばMg膜を0.4nmの膜厚で形成する。
【0015】
さらに、図1(c)に示すように、NMOS領域のMg膜105の上にレジスト106を形成し、PMOS領域のMg膜を除去し、NMOS領域にMg膜105を残す。Mg膜105がNMOS領域に形成されるトランジスタの閾値を制御する。
【0016】
次に、図1(d)に示すように、金属膜、例えばTiN膜107を10nmの膜厚で形成する。その後、TiN膜107上に金属シリコン化合物膜、例えばTiSix膜108を3nmの膜厚で堆積する。TiN膜107とTiSix膜108は同一装置で、大気にさらすことなく連続的に成膜する。
【0017】
TiN膜107及びTiSix膜108は、例えば、スパッタリング法により堆積する。TiSix膜108は、TiSixターゲットを用い、DC Powerを1000kW、Ar流量を20sccmの条件で堆積する。この場合、TiSixターゲットの組成としてはSi/Ti=2以上であることが望ましい。また、TiSixターゲットではなく、TiとSiの2種類のターゲットを用いてコスパッタ法により堆積しても良い。
【0018】
さらに、TiSix膜108の表面は大気に曝されるため、TiSix膜108の表面にシリコン酸化膜109が形成される。ここで、形成されたシリコン酸化膜109は薬液による処理で容易に除去できる。
【0019】
図1(e)に示すように、シリコン酸化膜109を希釈HF処理などにより除去したのち、シリコン膜110を形成する。このシリコン膜110は、例えば80nmの膜厚の多結晶シリコン膜である。このように、シリコン酸化膜109はシリコン膜110を形成する前に通常行う洗浄処理によって、容易に除去できる。また、TiN膜107とTiSix膜108は連続成膜するため、TiO2膜が形成されることがない。よって、金属膜107とシリコン膜110の界面にシリコン酸化膜、TiO2膜のような絶縁膜は介在せず、金属膜107とシリコン膜110の界面抵抗を低く保つことが可能となる。
【0020】
この後、図2(a)に示すように、シリコン膜110、金属シリコン化合物膜108、金属膜107、閾値制御層105、ゲート絶縁膜104及び界面層103を異方性エッチングし、例えばゲート幅30nmのゲート構造111を形成する。
【0021】
さらに、シリコン窒化膜112を形成したのち、シリコン窒化膜112をエッチバックして、ゲート電極の側壁部分をシリコン窒化膜112で囲む構造にする。さらに、例えば、nMOS領域にはAs+イオンをイオン注入し、pMOS領域にはB+イオンをイオン注入し、800度 5秒の熱処理を行うことで、浅い拡散層113を形成する。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、シリコン窒化膜114及びシリコン酸化膜115を形成した後、シリコン窒化膜114及びシリコン酸化膜115のエッチバックを行う。さらに、例えば、nMOS領域にはP+イオンをイオン注入し、pMOS領域にはB+イオンをイオン注入し、1030度 5秒の熱処理を行うことで、深い拡散層116を形成する。
【0023】
次に、例えばNiPt膜を10nmの膜厚で全面に形成し、350度 30秒の熱処理を行い、NiPt膜とシリコン膜110の上部を反応させる。未反応のNiPt膜を例えば塩酸と硝酸の混合溶液により除去した後、500度 30秒の熱処理を行う。このようにして、シリコン膜110と浅い拡散層113上にNiSixからなるシリサイド層117を形成する。
【0024】
さらに、図2(c)に示すように、ゲート構造111間の第1の層間絶縁膜118上に所望のコンタクトパターンを形成し、コンタクトパターンの内部に例えば、Ti/TiN/W膜を埋め込む。CMP(Chemical Mechanical Polish)で平坦化することにより、コンタクト119を形成する。さらに、第2の層間絶縁膜120を形成し、所望のパターンを形成した後、TaN/Cu膜を埋め込んでCMPで平坦化することにより、コンタクト119を電気的につなぐCu配線121を形成する。
【0025】
このようにして、電極が金属膜107、金属シリコン化合物膜108、シリコン膜110及びシリサイド層117の積層構造であるゲート構造を有するトランジスタを形成する。
【0026】
本実施例では、金属膜であるTiN膜107上に金属シリコン化合物膜であるTiSix膜108を形成した後、シリコン膜110を形成している。この形成方法の効果について以下に述べる。
【0027】
図3を用いて、ゲート電極の構造とその抵抗の関係を説明する。ゲート電極が、金属膜(TiN)107、シリコン膜110、シリサイド層117の積層構造の場合について、分布定数回路を図3に示す。ゲート電極の配線方向に流れる電流204はシリサイド層の抵抗が最も低いので、シリサイド層117を通して伝わる。
【0028】
一方、ゲート電極の垂直方向に流れる電流205は、シリサイド層117とシリコン膜110の界面抵抗201及び、シリコン膜110と金属膜107の界面抵抗202を伝わり、最下層にある金属膜107の抵抗203に流れる。
【0029】
トランジスタのスイッチング速度低下を防止するためには、配線方向のシリサイド層の抵抗を下げるとともに、配線方向と垂直な方向の界面抵抗を下げることが必要となる。
【0030】
しかし、従来の方法では、シリコン膜110と金属膜107との界面抵抗202を十分に低く保つことが出来ない。
【0031】
シリコン膜110と金属膜107との界面抵抗202を低減するため、図4(a)に示すように、シリコン膜110と金属膜107の界面にシリサイド層を形成する方法がある。具体的には、TiN膜107上に形成したシリコン膜122上にTi膜123を形成し、シリコン膜122とTi膜123をシリサイド反応させて、金属シリコン化合物膜108を形成する。さらに、金属シリコン化合物膜108上にシリコン膜110を形成し、TiN膜107、金属シリコン化合物膜108、シリコン膜110の積層構造である電極を形成している。ここでは、シリコン膜110の上部をシリサイド化して、シリサイド層117を形成する工程は省略する。このような従来の方法の場合、以下のような問題がある。
【0032】
図4(b)に示すように、TiN膜107の表面が大気に曝され酸化されることで、TiN膜107の表面にTiO2膜124が形成される。TiO2膜124は希釈HFなどの薬液処理で除去することが出来ないため、シリコン膜110の成膜後もTiO2膜124が残る。TiN膜107と金属シリコン化合物膜108の界面にTiO2膜124が存在するため、TiN膜107と金属シリコン化合物膜108の界面抵抗が高くなってしまう。これは、シリコン膜110と金属膜107との界面抵抗202の上昇につながる。
【0033】
また、図4(c)に示すように、TiN膜107とシリコン膜122との界面にTi膜125を介在させることで、Tiシリサイドを形成する方法も考えられる。しかし、Ti膜125とシリコン膜122を連続成膜しない限り、Ti膜125の方がTiN膜107よりも酸化され易いために、図4(b)の場合よりも厚いTiO2膜124が形成されてしまう。また、通常、Ti膜125はスパッタ法で成膜し、シリコン膜122はCVD法で成膜する。よって、Ti膜125とシリコン膜122を大気にさらすことなく、連続的に成膜することは困難である。
【0034】
さらに、図4(d)に示すように、シリコン膜122とTi膜123をシリサイド反応させて、金属シリコン化合物膜108を形成する場合、拡散層形成時の熱工程などによってシリコンが拡散し、金属シリコン化合物膜108の下部にボイドが形成される。そのため、TiN膜107と金属シリコン化合物膜108との界面抵抗が上昇してしまう。これは、シリコン膜110と金属膜107との界面抵抗202の上昇につながる。
【0035】
これらの方法に対して、本実施例では、図4(e)に示すように、あらかじめ金属シリコン化合物膜108であるTiSix膜をTiN膜107上に堆積している。TiN膜107とTiSix膜108を同一装置で大気にさらすことなく、連続的に成膜することで、TiN膜107表面の酸化を抑制できる。また、シリサイド反応は起こらないため、熱工程を経た後にボイドが形成されることなく、TiN膜107とシリコン膜110の間にTiSix膜108を挿入することができる。さらに、TiSix膜108表面に形成されるのはシリコン酸化膜109であるため、TiSix膜108上にシリコン膜110を形成する前に希釈HFなどの処理を行うことで容易に除去できる。よって、シリコン膜110と金属膜107との界面抵抗202を低く保つことができる。
【0036】
よって、ゲート電極の垂直方向の界面抵抗を下げることが可能となり、トランジスタのスイッチング速度が従来の方法と比較して、大幅に改善できる。
【0037】
さらに金属膜107とシリコン膜110の間に金属シリコン化合物膜108であるシリサイド膜を介在させることで、膜ストレスの低減も可能となる。つまり、TiN膜のように金属窒化物や炭化物からなる薄膜は数G〜数10Paの圧縮応力を有するため、ゲート電極に金属窒化物や炭化物を使用するとゲート絶縁膜にも大きな圧縮応力が加わる。その結果、ゲート絶縁膜の信頼性が劣化してしまう。それに対して、シリサイド層は引っ張り応力を有するため、金属窒化物と積層させることで、ゲート絶縁膜に加わる応力を軽減することが可能となる。
【0038】
また、本実施例では、金属膜107としてTiN膜を用いたが、Tiと同じIV族のZr、Hfの窒化物、炭化物、シリコン窒化膜、シリコン炭化物でも良い。さらに、V族(V、Nb、Ta)、VI族(Mo、W)の窒化物、炭化物、シリコン窒化物、シリコン炭化物でも良い。
【0039】
このとき、金属膜107とシリコン膜110の間に挿入した金属シリコン化合物膜108は、IV族(Ti、Zr、Hf)、V族(V、Nb、Ta)、VI族(Mo、W)のシリサイドであれば良い。なお、金属膜と金属シリサイド膜が同族元素の場合には、加工が容易になる。
【0040】
さらに、本実施例では、ゲート絶縁膜104の材料として、Hfを含む膜を用いたが、例えば、Zr、Ti、Ta、Al、Sr、Y、Laなどの酸化物、又はZrSixOyのようにそれらの元素とシリコンの酸化物でも良い。さらには、それら酸化物の積層膜でも良い。
【0041】
また、本実施例では、閾値制御層105として、NMOS領域にのみMgが存在しているが、他の元素であっても良い。例えば、NMOS領域にLa膜を形成し、PMOS領域にAl2O3膜を形成しても良い。
【0042】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
100・・・ 半導体基板
101・・・ 素子分離
102・・・ SiGe層
103・・・ 界面層
104・・・ ゲート絶縁膜
105・・・ 閾値制御層
106・・・ レジスト
107・・・ 金属膜
108・・・ 金属シリコン化合物膜
109・・・ シリコン酸化膜
110・・・ シリコン膜
111・・・ ゲート構造
112・・・ シリコン窒化膜
113・・・ 浅い拡散層
114・・・ シリコン窒化膜
115・・・ シリコン酸化膜
116・・・ 深い拡散層
117・・・ シリサイド層
118・・・ 第1の層間絶縁膜
119・・・ コンタクト
120・・・ 第2の層間絶縁膜
121・・・ Cu配線
122・・・ シリコン膜
123・・・ Ti膜
124・・・ TiO2膜
125・・・ Ti膜
201・・・ シリサイド層/シリコン膜の界面抵抗
202・・・ シリコン膜/金属膜の界面抵抗
203・・・ 金属膜の抵抗
204・・・ ゲート電極の配線方向を流れる電流
205・・・ ゲート電極の垂直方向を流れる電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜上に金属シリコン化合物膜を連続して堆積する工程と、
前記金属シリコン化合物膜上にシリコン膜を形成する工程と、
前記金属膜、前記金属シリコン化合物膜及び前記シリコン膜を加工する工程と、
を有していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン膜を形成する前に、前記金属シリコン化合物膜の表面に存在する酸化膜を除去する工程を
さらに有していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記金属膜は、IV族、V族及びVI族の窒化物、炭化物、シリコン窒化物及びシリコン炭化物のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記金属シリコン化合物膜は、IV族、V族及びVI族のいずれかの金属を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記金属膜と前記金属シリコン化合物膜は、IV族、V族及びVI族のいずれかである同族の金属を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−267678(P2010−267678A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115895(P2009−115895)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】