説明

半導体装置の製造方法

【課題】 チャネル領域に応力を印加するよう作用する階段状のソース/ドレイン・エピタキシャル領域を、製造プロセスを有意に複雑あるいは冗長とすることなく形成する。
【解決手段】 ゲート電極をマスクとしてドーパントを注入し、半導体基板内にドーパント注入領域を形成する(S2)。サイドウォールの形成(S3)後、ゲート電極及びサイドウォールをマスクとして半導体基板内に第1のリセスを形成する(S4)。このとき、第1のリセスの内壁の一部からドーパント注入領域が露出される。その後、上記ドーパント注入領域を選択エッチングにより除去し、第1のリセスに連通し且つ第1のリセスより浅い第2のリセスを形成する(S5)。それにより、階段状のリセスが形成される。そして、第1のリセス及び第2のリセス内に、チャネル領域へのストレッサとして作用する半導体材料を成長させてソース/ドレイン領域を形成する(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置における素子の集積密度を向上させるために、種々の微細化技術が開発されている。現在、そのような微細化技術を用いることにより、例えば、90nm以下のゲート長を有するトランジスタ素子が製造されている。
【0003】
半導体装置における素子の集積密度を向上する目的として、駆動速度の高速化及び消費電力の低減が挙げられる。しかしながら、例えば90nm以下のゲート長を有するトランジスタ素子では、微細化に伴うゲート長の減少に伴ってリーク電流が増大し、消費電力の低減が妨げられるという問題が生じている。逆に、リーク電流を所定の値以下に抑制しようとすると、トランジスタの電流駆動能力の向上が困難となる。このように、トランジスタの駆動能力の向上と消費電力の低減との間にはトレードオフの関係がある。そのため、トランジスタの性能向上を図るための新しいアプローチが模索されている。
【0004】
そのような新しいアプローチの1つとして歪みシリコン技術がある。この技術は、チャネル領域に応力を加えてエネルギーバンド構造を変化させることで、キャリアの有効質量を低減し、キャリア移動度を高めるものであり、それにより電流駆動能力を向上させることができる。MOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)では、チャネル領域に一軸性の応力を加えることによってキャリア移動度が向上することが知られている。P型チャネルトランジスタでは、ソース/ドレインからチャネルを圧縮する応力(圧縮応力)を加えて圧縮歪みを生じさせることにより、ホール(正孔)の移動度が向上する。N型チャネルトランジスタでは、ソース/ドレインからチャネルを伸張する応力(引っ張り応力)を加えて引っ張り歪みを生じさせることにより、電子の移動度が向上する。
【0005】
チャネル領域に圧縮応力又は引張応力を印加するため、ソース/ドレイン領域に凹部(リセス)を形成し、該リセス内に、チャネル領域を含む半導体基板と異なる材料をエピタキシャル成長させる所謂エンベディッド(埋め込み)構造のトランジスタが提案されている。例えば、シリコン(Si)のチャネル領域を有するP型チャネルトランジスタでは、ソース/ドレイン領域として典型的にシリコンゲルマニウム(SiGe)混晶が埋め込まれる。そして、SiGeのエピタキシャル成長時にその場(in−situ)ドーピングによってボロン(B)を添加することにより、ソース/ドレインの寄生抵抗を低減することができる。このソース/ドレインの低抵抗化は、応力による移動度向上と相俟って、トランジスタ性能を改善する。なお、Siチャネル領域を有するN型チャネルトランジスタでは典型的に、SiGeに代えてカーボンドープトシリコン(SiC)、Bに代えてリン(P)又はヒ素(As)が用いられる。
【0006】
図1は、このような埋め込み構造のトランジスタ10を模式的に示している。トランジスタ10は、半導体基板11と、該基板上に形成されたゲート絶縁膜21、ゲート電極22及びサイドウォール24とを有する。トランジスタ10はまた、半導体基板11内に形成されたリセスに埋め込まれたソース/ドレイン領域31を有する。トランジスタ10は更に、サイドウォール24の下にソース/ドレイン領域31に隣接して、一対のソース/ドレイン・エクステンション領域33を有する。そして、チャネル領域12が、一対のエクステンション領域33間、すなわち、ゲート絶縁膜22の下方に定められる。エクステンション領域33は、ゲート電極のパターン形成後にイオン注入により形成され、その後、サイドウォール24の形成を介して、ソース/ドレイン領域31が、リセス形成及び選択エピタキシャル成長によって形成される。
【0007】
P型チャネルトランジスタの場合、Bを高濃度ドープされたSiGeソース/ドレイン領域31が、チャネル領域12に圧縮応力を印加する低抵抗のストレッサとして機能する。しかしながら、短チャネル領域では短チャネル効果を防ぐため、ソースドレインエクステンション領域を基板方向に浅く濃く形成する必要があり、このような領域を従来イオン注入で形成することが一般的であった。一方でチャネルへソースドレインからより強い圧縮応力を与えることがもとめられてきた。
【0008】
この要求にこたえる一手法として、エクステンション領域33を短縮することにより、SiGe領域31とチャネル領域12とを接近させ、チャネル領域12に加えられる応力を増大させることが考えられる。しかしながら、チャネル領域12に対してSiGe領域31を接近させることは、不純物であるBの分布で見るとソースドレイン接合がゲートに接近することに等しく、SiGe領域31が含むBによってソースドレインからの空乏層が互いに干渉しあい、ゲート電圧でトランジスタの動作を制御できなくなる短チャネル効果が起こる。故に、チャネル領域12に対してSiGe領域31を接近させることには限界がある。また、ロールオフ特性を改善するためにSiGe領域31中のB濃度を低下させると、ソース/ドレインの寄生抵抗が増大し得るとともに、エピタキシャル成長速度が極端に低下するという製造上の問題が生じる。
【0009】
エクステンション領域33の存在による応力の低下及び寄生抵抗の増大の問題を回避する他の一手法として、従来の拡散層として形成されたエクステンション領域33を、エピタキシャル層として形成された層で置き換えることが考えられる。図2は、そのようなエピタキシャル層を有するトランジスタ100を例示している。トランジスタ100は、エクステンション領域33がエピタキシャル領域132で置き換えられていることを除いて、図1のトランジスタ10と実質的に同じとし得る。トランジスタ100は、従来のソース/ドレイン領域31に相当する第1領域131と、チャネル領域112に隣接した、より浅いエピタキシャル領域132からなる第2領域と、を有する階段状のソース/ドレイン・エピタキシャル領域130を含んでいる。例えば、P型トランジスタでは、エピタキシャル領域130はSiGeで形成され得る。
【0010】
トランジスタ100においては、エピタキシャル領域130が、チャネル領域112に隣接する第2領域132を含めて、ストレッサとして機能することにより、チャネル領域112に効率的に応力を印加して正孔又は電子の移動度を高めることができる。また、エピタキシャル領域130を、浅い第2領域132を含めて、高濃度にドーピングすることにより、ソース/ドレインの寄生抵抗を低減することが可能である。さらに、従来のソース/ドレイン領域31に相当する第1領域131とチャネル領域112との間に、ロールオフ特性の劣化を防止するのに十分な離隔距離を確保することができる。
【0011】
図2に示した階段状のエピタキシャル領域130を有するトランジスタ100を形成するためには、一般的に、リセス形成と該リセス内へのストレッサの埋め込み成長との組み合わせプロセスが二回必要と考えられる。例えば、先ず、ゲート電極122の形成後に第2領域132用のリセスを形成し、該リセス内にSiGeを選択成長させる。次いで、サイドウォール124を形成する。その後、第1領域131用のリセスを形成し、該リセス内にSiGeを選択成長させる。この方法は、図1に関連して説明したトランジスタ10の製造方法と比較して、リセスプロセス及び選択エピプロセスをそれぞれ一回ずつ増加させるため複雑且つ冗長であり、トランジスタの製造コストを増大させてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−182109号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】N.Yasutake、外12名、“Record-high performance 32 nm node pMOSFET with advanced Two-step recessed SiGe-S/D and stress liner technology”、2007 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers、2007年、p.48-49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
チャネル領域に応力を印加するよう作用する階段状のソース/ドレイン・エピタキシャル領域を、簡易な製造プロセスで形成する技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一観点によれば、半導体装置の製造方法は、半導体基板上にゲート電極を形成する工程と、ゲート電極をマスクとして半導体基板にドーパントを注入し、半導体基板内にドーパント注入領域を形成する工程とを含む。当該方法はまた、ゲート電極の側壁にサイドウォールを形成する工程と、ゲート電極及びサイドウォールをマスクとして半導体基板をエッチングして第1のリセスを形成する工程とを含む。当該方法は更に、サイドウォールの下方に位置する上記ドーパント注入領域を除去し、第2のリセスを形成する工程と、第1のリセス及び第2のリセス内に半導体材料を成長させてソース/ドレイン領域を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0016】
一回の選択エピプロセスで、ストレッサとして機能する階段状のソース/ドレイン・エピタキシャル領域を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】階段状エピタキシャル領域を有する半導体装置を示す断面図である。
【図3】一実施形態に従った半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】一実施形態に従った半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【図5】一実施形態に従った半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【図6】一実施形態に従った半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【図7】一実施形態に従った半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。なお、図面において、種々の構成要素は必ずしも同一の尺度で描いていない。また、図面全体を通して、同一あるいは対応する構成要素には同一又は類似の参照符号を付する。
【0019】
先ず、図3を参照して、一実施形態に従った半導体装置の製造方法の主な工程を説明する。この方法は、図2に示した階段状エピタキシャル・ソース/ドレイン領域130を有するトランジスタ100を製造することができる。製造されるトランジスタは、例えばPチャネルMOSFETなどのP型電界効果トランジスタ、又は例えばNチャネルMOSFETなどのN型電界効果トランジスタを含む。以下では、P型電界効果トランジスタを“PMOS”、N型電界効果トランジスタを“NMOS”として説明する。
【0020】
図3の工程S1にて、例えばSiウェハなどの半導体基板111上にゲート絶縁膜121及びゲート電極122を形成する。
【0021】
工程S2にて、形成されたゲート電極122をマスクとして用いて、図2のエピタキシャル領域の第2領域132と同様の形状の浅いドーパント注入領域が得られるよう、半導体基板111の表面領域にドーパントを注入する。このドーパントは、例えばSiなどの半導体基板材料を所定の条件でエッチングするとき(後述の工程S5参照)に、半導体基板111自体に対するドーパント注入領域のエッチング選択比が増大されるように選択される。Si基板に対して、このドーパントは例えばAs又はPとし得る。このように、PMOSを製造する場合においても、PMOSとして動作させるために本来必要なBなどのP型ドーパントではなく、As又はPなどのN型ドーパントを注入してもよい。なお、このドーパント注入領域は後に除去され且つ置換されるため、以下では、このドーパント注入領域を犠牲領域とも称する。
【0022】
工程S3にて、ゲート電極122の側壁にサイドウォール124を形成する。例えば、シリコン窒化膜などの絶縁膜を堆積し、該絶縁膜を異方性エッチングすることにより、サイドウォール124を形成することができる。
【0023】
工程S4にて、ゲート電極122及びその側壁のサイドウォール124をマスクとして、半導体基板111の表面から、図2のエピタキシャル領域の第2領域132となる半導体基板領域に第1の凹部(リセス)を形成する。例えば、RIE(リアクティブ・イオン・エッチング)法を用い得る。このリセスは、工程S2にて形成された犠牲領域より深く形成され、当該リセスの内壁の一部にて犠牲領域を露出させる。なお、このリセス形成に先立って、イオン注入によるソース/ドレイン領域を形成してもよい。例えば、PMOSではB、NMOSではPをイオン注入し得る。
【0024】
工程S5にて、犠牲領域を選択エッチングにより除去する。この工程は、注入ドーパントの存在によって、犠牲領域が半導体基板111自体より高いエッチングレートを有することで達成される。このエッチングは、例えば、犠牲領域がAs又はPを注入されたSiである場合、塩素(Cl)ガスを用いたエッチングとし得る。犠牲領域の除去により、半導体基板111とサイドウォール124との間に、工程S4で形成された第1のリセスに連通する、より浅い第2のリセスが形成される。故に、図2の階段状のエピタキシャル領域130に相当する位置に、階段状のリセスが形成される。
【0025】
そして、工程S6にて、階段状リセス内に、チャネル領域112へのストレッサとして機能するソース/ドレイン領域130をエピタキシャル成長する。それにより、第1領域131と、より浅い第2領域132とを有する階段状のソース/ドレイン・エピタキシャル領域130が形成される。エピタキシャル領域130の材料は、チャネル領域112へのストレッサとして作用し得るよう、半導体基板111と異なる材料を有し、例えば半導体基板111がSiを有する場合、PMOSではSiGe、NMOSではSiCなどとし得る。また、エピタキシャル成長中にドーパントを高濃度にin−situドーピングすることにより、ソース/ドレインとしても機能するエピタキシャル領域130を低抵抗化することができる。このドーパントは例えば、PMOSではB、NMOSではPなどとし得る。
【0026】
なお、工程S5及びS6は同一装置にて連続的に行うことが好ましい。故に、工程S5における例えばClエッチングといったエッチングは、工程S6で使用するエピタキシャル成長装置にて行われることが好ましい。
【0027】
以上の工程により、図2に示した階段状エピタキシャル領域130を有する埋め込み型トランジスタ構造100が得られる。その後、層間絶縁膜、コンタクト及び配線層などの形成が続けられ、半導体装置が完成される。
【0028】
この方法は、エクステンション領域として拡散層を有するトランジスタ(図1参照)を製造するための一般的な方法の工程群を利用して、図2に示した階段状のエピタキシャル領域を有するトランジスタを製造することができる。上述の工程S5にて、犠牲領域を除去するためのエッチング(例えば、Clエッチング)が必要とされるが、工程S5は、エピタキシャル成長前に露出Si面を処理するために従来においても用いられ得る工程を利用することができる。よって、この方法は、チャネル領域に応力を印加するよう作用する階段状のソース/ドレイン・エピタキシャル領域を、製造プロセスを有意に複雑あるいは冗長とすることなく形成することができる。このことは、製造コストの上昇を抑制しながら、トランジスタ性能を向上させ得ることを意味する。
【0029】
以下、非限定的な実施例を参照して、上述の製造方法を更に詳細に説明する。
【0030】
図4−7を参照して、歪みシリコン技術を用いたPMOSと、歪みシリコン技術を用いないNMOSとを含む半導体装置の製造方法の一例を説明する。半導体装置は、一般的に、所望の回路を構成するように配置された多数のトランジスタを有し、これらのトランジスタは、シャロートレンチアイソレーション(STI)などの素子分離構造によって互いに電気的に分離され得る。しかしながら、図4−7においては、1つのPMOSの形成領域(図中、“PMOS”として示す)及び1つのNMOSの形成領域(図中、“NMOS”として示す)のみを抜き出して示している。
【0031】
先ず、例えばSiウェハであるSi基板211上にゲート絶縁膜221及びゲート電極222を形成する(図4(a))。例えば、Siウェハ211上にゲート絶縁膜及びゲート電極のための材料膜を堆積し、フォトリソグラフィを用いてゲート電極222及びゲート絶縁膜221のパターニングを行う。
【0032】
次いで、必要に応じて、ゲート電極222の側壁に第1のサイドウォール223を形成する(図4(b))。サイドウォール223は、例えば10nm以下といった比較的薄い厚さを有する。一例として、CVD−SiN膜を8nm成膜した後、ドライエッチングによってエッチバックし、ゲート電極122の側壁にサイドウォール223を残存させる。
【0033】
次いで、PMOS形成領域に、必要に応じてのポケット注入領域213と、図3の工程S2にて上述したドーパント注入領域(犠牲領域)251とを形成するためのイオン注入を行う(図4(c))。これらのイオン注入にはマスクとしてゲート電極222(これは、サイドウォール223が形成されている場合には、それを含むものとして理解される)を用いることができる。ポケット注入は、例えば、アンチモン(Sb)を、飛程Rpが10nm〜50nmになるよう10〜80keVのエネルギーで、1×1012(1E12、以下同様に示す)〜5E13cm−2のドーズ量だけ注入する。Sbの代わりにP又はAsを用いてもよい。
【0034】
犠牲領域251へのイオン注入は、例えば、Asを0.4〜6keVのエネルギーで1E14〜1E16cm−2注入する。Asドーズ量をこのような範囲内で調整することにより、図3の工程S5にて説明した犠牲領域の除去のためのエッチングにおいて、好適な犠牲領域のエッチングレート及び/又はその他のSi領域に対するエッチング選択比を得ることができる。また、エッチングレートなどを調整するためのAsなどのドーパントとともに、Bを注入することも可能である。
【0035】
次いで、NMOS形成領域に、必要に応じてのポケット注入領域214と、エクステンション領域215とを形成するためのイオン注入を行う(図4(d))。例えば、ポケットとしてインジウム(In)、エクステンションとしてAs又はPを注入する。
【0036】
続いて、PMOS形成領域及びNMOS形成領域の双方において、ゲート電極222の側壁にサイドウォール224を形成する(図5(a))。例えば、BT−BAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)を用いて35nm程度の厚さのCVD−SiNを堆積した後、ドライエッチングを行ってサイドウォール224を残存させる。
【0037】
次いで、必要に応じて、PMOS形成領域において、ゲート電極222及びその側壁のサイドウォール223、224をマスクとしてBを注入し、ソース/ドレイン拡散層216を形成する(図5(b))。ソース/ドレイン拡散層216はソース/ドレインの接合部におけるリーク電流の発生を抑制し得る。なお、図5(b)−(d)において、ソース/ドレイン拡散層216中の点線は、ソース/ドレイン拡散層の一部がポケット注入領域213中のSbなど、又は犠牲領域251中のAsなどを含有することを指し示している。
【0038】
次いで、NMOS形成領域を覆う、例えばシリコン酸化膜などを有する保護マスク252を形成する(図5(c))。保護マスク252は、後のPMOS形成領域におけるリセスプロセス及びエピタキシャル成長プロセスなどがNMOS形成領域に影響を及ぼすことを阻止する。例えば、Si基板211の全面に7nm程度の厚さのCVD−SIO膜と30nm程度の厚さの高密度プラズマSIO膜とを積層形成した後に、レジストマスクを用いて、これらの膜をPMOS形成領域上から除去しNMOS形成領域上に残存させる。
【0039】
次いで、PMOS形成領域において、ゲート電極222及びサイドウォール223、224をマスクとして、Si基板211の表面からリセス231’を形成する(図5(d))。NMOS形成領域は保護マスク252によって保護される。リセス231’は、Asが注入されたドーパント注入領域(犠牲領域)251より深く形成され、それにより、リセス231’の内壁において、As注入された領域が露出される。リセス231’はまた、図5(b)の工程でソース/ドレイン拡散層216が形成されているとき、好ましくはソース/ドレイン拡散層内に包含されるように形成される。リセス231’の形成は、例えば、RIEによってSi基板211を30nm程度の深さまでエッチングすることにより行われる。
【0040】
また、RIEの後にTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)によって15nm程度の追加エッチングを行ってもよい。TMAHによるエッチングは、Siの結晶面方位に応じたエッチングレート差が存在することにより、Σ型のリセス形状を得ることを可能にする。リセスをΣ型にしておくことにより、後に埋め込まれたストレッサがチャネル領域に一層効果的に応力を印加することを可能にし得る。
【0041】
図5(d)の工程に続いて、表面自然酸化膜をHF処理(例えば0.07%希釈)によって剥離し、活性なSi表面を露出させた状態でウェハを速やかにSiGe成膜装置に搬送する。
【0042】
続いて、SiGe成膜装置において、エピタキシャル成長に先立ち、ドーパント注入領域(犠牲領域)251を選択的に除去する(図6(a))。それにより、犠牲領域251が形成されていた領域に、リセス(深いリセス)231’に連通した空隙(浅いリセス)232’が生じ、これらのリセスによって階段状のリセス230’が形成される。この目的のため、犠牲領域251に注入されたドーパントの種類に従って、Siに対して犠牲領域を選択エッチングするのに適したエッチング条件が選択される。例えば、As注入された犠牲領域251は、Clを含むガス、例えばCl/Hガスを供給することによって選択的にエッチングすることができる。この場合の好適なエッチング条件は、温度500〜600℃、Cl分圧0.5〜10Pa、より好ましくは1Pa程度、H分圧20〜60Pa、より好ましくは40Pa程度、エッチング時間1〜30minとし得る。
【0043】
次いで、好ましくは図6(a)の工程に連続して同一のSiGe成膜装置内で、露出Si表面に選択的に、BがドープされたSiGeをエピタキシャル成長させる(図6(b))。それにより、図5(d)の工程で形成された深いリセスと図6(a)の工程で形成された浅いリセスとがBドープされたSiGeで埋め込まれ、第1領域231及び第2領域232を有する階段状のソース/ドレイン・エピタキシャル領域230が形成される。また、ゲート電極222上にもSiGe膜241が形成されてもよい。
【0044】
SiGeの好適な成膜条件は、温度500〜600℃、H分圧20〜60Pa、SiH分圧1〜10Pa、GeH分圧0.05〜0.2Pa、B分圧0.001〜0.006Pa、HCl分圧0.5〜5Paである。SiGeの成膜条件は、より好ましくは、温度550℃程度、H分圧40Pa程度、SiH分圧2Pa程度、GeH分圧0.1Pa程度、B分圧0.003Pa程度、HCl分圧1Pa程度とし得る。一例として、550℃、H分圧34Pa、SiH分圧2Pa、10%GeH/H分圧0.6Pa、0.1%B/H分圧1.77Pa、HCl分圧1.25Paの混合ガス雰囲気として90分程度曝露する。このとき、Bが1E20cm−3程度ドープされた、Ge含有量20%程度のSiGeが、70nm程度の厚さで露出Si表面に選択成長する。
【0045】
斯くして、例えばAsを注入された犠牲領域251が、BドープされたSiGe領域232で置換される。この置換プロセスにおいては、SiGe成膜と同一の装置にて例えばClガス曝露によって浅いリセス232’を形成することができ、浅いリセス232’及び深いリセス231’を同時にSiGeで埋め込むことができる。故に、図1に示した従来の埋め込みトランジスタ構造の製造プロセスを利用し、該プロセスを有意に複雑にすることなく、チャネル領域へのストレッサとして機能する低寄生抵抗の階段状ソース/ドレイン領域230を形成し得る。また、浅いリセスを形作る空隙232’上にはゲート絶縁膜221又はサイドウォール223、224が存在するため、空隙232’の形状に従ってSiGeを埋め込むことができる。
【0046】
続いて、必要に応じて、露出したSiGe表面に選択的に、BがドープされたSiをエピタキシャル成長させる(図6(c))。この工程により、SiGeソース/ドレイン・エピタキシャル領域230及びゲート電極上のSiGe層241の上に、BドープされたSiキャップ層242が形成される。Siキャップ層242は、後のシリサイデーション時の熱工程に対する耐性を改善するとともに、SiGe中のGeによる汚染を抑制あるいは阻止し得る。
【0047】
Siキャップ層242の好適な成膜条件は、温度500〜600℃、H分圧20〜60Pa、SiH分圧1〜10Pa、B分圧0.001〜0.006Pa、HCl分圧0.5〜5Paである。Siキャップ層242の成膜条件は、より好ましくは、温度550℃程度、H分圧40Pa程度、SiH分圧2Pa程度、B分圧0.003Pa程度、HCl分圧1Pa程度とし得る。一例として、550℃、H分圧34Pa、SiH分圧2Pa、0.1%B/H分圧1.77Pa、HCl分圧1.25Paの混合ガス雰囲気として14分程度曝露する。このとき、Bが1E20cm−3程度ドープされたSiが、7nm程度の厚さで露出SiGe表面に選択成長する。
【0048】
そして、NMOS形成領域上に形成されていた保護マスク252を、例えばHFで除去する(図6(d))。
【0049】
次いで、必要に応じて、NMOSのソース/ドレイン注入オフセット用のサイドウォールスペーサ225を形成する(図7(a))。例えば、530℃程度の温度でCVD−SIO膜を30nm程度の厚さに堆積した後、エッチバックを行う。続いて、NMOS形成領域に例えばPを注入して活性化アニールを行うことにより、NMOSのソース/ドレイン領域217を形成する(図7(b))。そして、サイドウォールスペーサ225の除去後、Si及び/又はSiGeの露出表面のシリサイデーションを行い、PMOS及びNMOSの双方のソース/ドレイン領域及びゲート電極上にシリサイド層243を形成する(図7(c))。シリサイド層243は、例えばNiSi層とし得る。
【0050】
その後、層間絶縁膜、コンタクト及び配線層などの形成が続けられ、SiGe埋め込み型PMOSを含む半導体装置が完成される。
【0051】
以上、実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
100 半導体装置
111、211 半導体基板
112 チャネル領域
121、221 ゲート絶縁膜
122、222 ゲート電極
124、224 サイドウォール
130、230 階段状ソース/ドレイン・エピタキシャル領域(ストレッサ)
131、231 エピタキシャル領域の第1領域
132、232 エピタキシャル領域の第2領域
230’ 階段状リセス
231’ 第1のリセス(深いリセス)
232’ 第2のリセス(浅いリセス)
242 Siキャップ層
243 シリサイド層
251 ドーパント注入領域(犠牲領域)
252 保護マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にゲート電極を形成する工程と、
前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板にドーパントを注入し、前記半導体基板内にドーパント注入領域を形成する工程と、
前記ゲート電極の側壁にサイドウォールを形成する工程と、
前記ゲート電極及び前記サイドウォールをマスクとして前記半導体基板をエッチングして第1のリセスを形成する工程と、
前記サイドウォールの下方に位置する前記ドーパント注入領域を除去し、第2のリセスを形成する工程と、
前記第1のリセス及び前記第2のリセス内に半導体材料を成長させてソース/ドレイン領域を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2のリセスを形成する工程及び前記ソース/ドレイン領域を形成する工程は、同一のエピタキシャル成長装置にて行われる、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板はシリコン基板であり、前記ドーパントはヒ素又はリンである、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2のリセスを形成する工程は、塩素ガスを含むガスを用いて、前記ドーパント注入領域を前記半導体基板に対して選択的にエッチングすることを含む、請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ドーパント注入領域を形成する工程は、前記ドーパントとしてヒ素を、1×1014cm−2から1×1016cm−2の範囲内のドーズ量で注入する、請求項3又は4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記ソース/ドレイン領域はシリコンゲルマニウムを有する、請求項3乃至5の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ソース/ドレイン領域上にシリコン層を形成する工程、を更に有する請求項3乃至6の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体装置はP型トランジスタ及びN型トランジスタを含み、前記ドーパント注入領域を形成する工程は、前記半導体基板のP型トランジスタ形成領域及びN型トランジスタ形成領域の双方に同じドーパントを注入することを含む、請求項1乃至7の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−59783(P2012−59783A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199226(P2010−199226)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】