説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】トレンチの底部付近でのシリコン電極層の不純物の濃度を高めた溝型MOSFETを有する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】シリコン基板11の表面にトレンチ13を形成する工程と、トレンチ13の表面にゲート絶縁膜14を形成する工程と、トレンチ13内のゲート絶縁膜14上に、トレンチ13の表面に平行な酸素混入層が形成されたシリコン電極層17を堆積する工程と、シリコン電極層17に不純物を注入する工程と、シリコン電極層17を熱処理して不純物を拡散する工程と、を順次に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、半導体基板上に溝型MOSFETを有する半導体装置として好適な半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM(Dynamic Random Access Memory)は、メモリセルがアレイ状に配設されたメモリアレイ領域と、メモリアレイ領域の周辺に配設されると共に、各メモリセルを駆動する周辺回路が配設された周辺回路領域とを備えている。メモリセルは、シリコン基板の表面部分に形成されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)と、このMOSFETに接続されたキャパシタとから構成され、MOSFETを介してキャパシタに電荷を蓄積することによって、情報の記憶が行われる。キャパシタに蓄積された電荷は、MOSFETの接合リーク電流により、時間の経過に伴って減少する。従って、蓄積された電荷を読出し可能な時間内に、その電荷を読み出すと共に蓄積し直すリフレッシュ動作を行っている。
【0003】
DRAMでは、特に携帯式の電子機器への搭載に際しては、消費電力を少なくして電子機器のバッテリ駆動時間を確保する要請が強い。この目的のためには、装置の電源電圧を下げると共に、DRAMのメモリセルの電荷保持能力を向上させ、リフレッシュ動作の周期を長くすることが望ましい。
【0004】
メモリセルの電荷保持能力を向上する方法の一つとして、非特許文献1は、溝型MOSFET(RCAT:Recessed Channel Array Transistor)を提案している。溝型MOSFETは、ゲート電極を構成するシリコン層(シリコン電極層)が、シリコン基板の表面部分に形成されたトレンチに収容される特徴を有している。
【0005】
溝型MOSFETでは、トレンチの表面に沿って略U字状のチャネルが形成されるので、近年の配線ピッチの小さな半導体装置であってもチャネル長を確保できる。溝型MOSFETでは、その大きなチャネル長によって、プレーナ型MOSFETに比して、所要のしきい値電圧を得るための不純物濃度を低くできる。従って、PN接合部における電界強度を低減して、接合リーク電流を抑制し、メモリセルの電荷保持能力を向上させることが出来る。
【0006】
溝型MOSFETの製造に際しては、シリコン基板の表面部分にトレンチを形成した後、トレンチ内部を含むシリコン基板上にシリコン電極層を堆積する。イオン注入技術を用いてシリコン電極層に不純物を注入した後、シリコン電極層をゲート電極形状にパターニングする。更に、熱処理によってシリコン電極層に注入した不純物を拡散、活性化させ、導電性を有するゲート電極に形成する。
【0007】
一方、周辺回路領域に配設されるMOSFETは、メモリセルのMOSFETと異なり、チャネル長を短くして高速動作を確保することが好ましく、プレーナ型MOSFETが採用される。溝型MOSFET及びその製造方法については、例えば非特許文献1に記載されている。
【非特許文献1】Symposium on VLSI Technology, p.11-12, 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、DRAMの製造に際しては、スループットを向上させるために、メモリアレイ領域のシリコン電極層へのイオン注入と、周辺回路領域のシリコン電極層であって、メモリアレイ領域のシリコン電極層と同じ導電型を有する層へのイオン注入とを一つの工程で行うことが望ましい。ところが、この製造方法では、イオン注入の加速エネルギーが周辺回路領域のシリコン電極層の厚みに合わせて小さく設定されるので、熱処理条件の制約と相まって、図5に示すように、メモリアレイ領域10Aでは、注入された不純物34をトレンチ13の底部付近まで充分に拡散させることが出来ない問題がある。
【0009】
トレンチ13の底部付近でシリコン電極層17中の不純物濃度が不足すると、MOSFETの動作に際して上記底部付近でシリコン電極層17が空乏化することによって、MOSFETのオン電流が低下し、DRAMの動作速度が低下する。
【0010】
本発明は、上記に鑑み、半導体基板上に溝型MOSFETを有する半導体装置として好適な半導体装置及びその製造方法であって、製造のスループットを低下させることなく、トレンチの底部付近におけるシリコン電極層の不純物濃度の低下を抑制可能な半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上に溝型MOSFETを有する半導体装置の製造方法において、
半導体基板の表面にトレンチを形成する工程と、
前記トレンチの表面にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記トレンチ内のゲート絶縁膜上に、前記トレンチの表面に平行な酸素混入層が形成されたシリコン電極層を堆積する工程と、
前記シリコン電極層に不純物を注入する工程と、
前記シリコン電極層を熱処理して前記不純物を拡散する工程と、
を順次に有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の半導体装置は、半導体基板上に形成されたトレンチ内に収容された不純物含有シリコン層を有する半導体装置において、
前記不純物含有シリコン層は、前記トレンチの表面と平行に延在する結晶粒界面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る半導体装置の製造方法によれば、シリコン電極層の結晶化に際して、酸素混入層を境界とする結晶粒界面を形成できる。シリコン電極層の表面付近に注入した不純物は、トレンチの表面に平行な結晶粒界面に沿ってトレンチの底部付近へ効率的に拡散するので、トレンチの底部付近におけるシリコン電極層の不純物濃度の低下を抑制できる。酸素混入層の形成に際しては、シリコン電極層の堆積を一旦中止すると共に、シリコン電極層の表面に微量の酸素を供給するだけでよいので、スループットが大きく低下することがない。なお、結晶粒界とは、多結晶体における結晶粒の境界をいう。
【0014】
本発明に係る半導体装置の製造方法の好適な態様では、前記トレンチの表面から前記酸素混入層までの距離が、前記トレンチの最小幅の1/2以下である。結晶粒界面をトレンチの底部付近へ延在させることによって、トレンチの底部付近におけるシリコン電極層の不純物濃度の低下をより効果的に抑制できる。
【0015】
本発明に係る半導体装置の製造方法では、前記不純物はN型不純物であってもよく、或いは、P型不純物であってもよい。N型不純物としては、例えばリン、ヒ素、又は、ガリウムを用いてもよく、P型不純物としては、例えばホウ素、BF、又は、インジウムを用いてもよい。本発明に係る半導体装置の製造方法では、前記熱処理工程によって、前記シリコン電極層が結晶化されると共に、前記酸素混入層を境界とする結晶粒界面が形成されてもよい。
【0016】
本発明に係る半導体装置の製造方法では、シリコン電極層中に1層の酸素混入層が形成されてもよく、或いは、複数層の酸素混入層が形成されてもよい。複数層の酸素混入層が形成されることによって、不純物をより効率的に拡散させることが出来る。
【0017】
本発明の半導体装置によれば、トレンチの表面と平行に延在する結晶粒界面を有することによって、熱処理に際して、シリコン電極層の表面付近に注入された不純物を結晶粒界面に沿ってトレンチの底部付近へ効率的に拡散させることが出来る。従って、トレンチの底部付近における不純物含有シリコン層の不純物濃度の低下を抑制でき、上記底部付近における不純物含有シリコン層の空乏化を抑制し、DRAMの動作速度の低下を抑制できる。
【0018】
本発明の半導体装置の好適な態様では、前記不純物含有シリコン層は、前記結晶粒界面の近傍に酸素を含有する。シリコン電極層中に酸素混入層を形成することによって、熱処理に際して、酸素混入層を境界とする結晶粒界面を容易に形成できる。
【0019】
本発明の半導体装置の好適な態様では、前記結晶粒界面と前記トレンチの表面との間の距離が、前記トレンチの最小幅の1/2以下である。本発明の半導体装置では、前記不純物含有シリコン層が、溝型MOSFETのゲート電極であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、図面を参照し、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。半導体装置10は、DRAMであって、メモリセルがアレイ状に配設されたメモリアレイ領域10Aと、メモリアレイ領域10Aの周辺に配設されると共に、メモリセルを駆動する周辺回路が配設された周辺回路領域とを備える。同図中、メモリアレイ領域10Aでは、ソース拡散層31を共有する2つのメモリセルを、周辺回路領域では、CMOSFETのうちのNMOSFETが配設されるNMOSFET領域10B、及び、PMOSFETが配設されるPMOSFET領域10Cをそれぞれ示している。
【0021】
半導体装置10は、シリコン基板11を備える。シリコン基板11の表面部分には、STI(Shallow Trench Isolation)型の素子分離構造12が形成され、MOSFETが形成される素子形成領域を区画している。シリコン基板11上にはゲート絶縁膜14が形成され、ゲート絶縁膜14上にはゲート電極15及び電極保護膜16が順次に積層されている。ゲート電極15は、ポリメタル構造を有し、下層は不純物が導入されたポリシリコン層(シリコン電極層)17で、上層はタングステン層18で構成されている。メモリアレイ領域10A及びNMOSFET領域10Bのシリコン電極層17にはN型不純物としてリンが、PMOSFET領域10Cのシリコン電極層17にはP型不純物としてホウ素がそれぞれ導入されている。電極保護膜16は、例えば窒化膜からなる。
【0022】
メモリアレイ領域10Aの素子形成領域にはトレンチ13が形成され、シリコン電極層17の下部は、ゲート絶縁膜14を介してトレンチ13の内部に収容されている。ゲート電極15の両脇のシリコン基板11の表面付近には不純物が導入され、ソース・ドレイン拡散層19が形成されている。メモリアレイ領域10A及びNMOSFET領域10Bのソース・ドレイン拡散層19にはN型不純物が、PMOSFET領域10CにはP型不純物が、それぞれ導入されている。
【0023】
ゲート電極15と、ゲート電極15両脇のシリコン基板11に形成されたソース・ドレイン拡散層19とが、MOSFETを構成する。メモリアレイ領域10Aに形成されたMOSFETは、シリコン電極層17がトレンチ13内に収容された溝型MOSFETを、周辺回路領域に形成されたMOSFETは、シリコン電極層17が略平らなシリコン基板11上に形成されたプレーナ型MOSFETを構成する。
【0024】
ソース・ドレイン拡散層19下のシリコン基板11の部分はウェル20を構成し、ソース・ドレイン拡散層19よりも低濃度の不純物が導入されている。なお、ウェル20の不純物濃度を調節することによって、MOSFETのしきい値電圧を制御できる。
【0025】
シリコン電極層17中には、結晶粒界面21がシリコン基板11の表面に沿って一様に延在している。結晶粒界面21は、トレンチ13の内部では、トレンチ13の表面に略平行に延在している。図示しないが、ゲート電極15の側壁を覆って側壁保護膜が形成されており、電極保護膜16及び側壁保護膜を覆ってシリコン基板11上に層間絶縁膜が形成されている。層間絶縁膜上には、上層配線やメモリセルのキャパシタが形成されている。層間絶縁膜及びゲート絶縁膜14を貫通して、ソース・ドレイン拡散層19と上層配線やキャパシタとの間を接続するプラグが形成されている。
【0026】
本実施形態の半導体装置10によれば、シリコン電極層17中に一様に延在する結晶粒界面21を備えることによって、熱処理に際して、シリコン電極層17の表面付近に注入された不純物を結晶粒界面21に沿ってトレンチ13の底部付近へ効率的に拡散させることが出来る。従って、トレンチ13の底部付近におけるシリコン電極層17の不純物濃度の低下を抑制でき、上記底部付近におけるシリコン電極層17の空乏化を抑制し、DRAMの動作速度の低下を抑制できる。
【0027】
図2は、図1の半導体装置を製造する各製造段階を順次に示す断面図である。先ず、公知の方法で、シリコン基板11の表面部分に素子分離構造12を形成し、素子分離領域を区画する。次いで、公知のイオン注入技術を用いて、各素子形成領域に不純物を注入し、ウェル20を形成する。引き続き、公知のドライエッチング技術を用いて、メモリアレイ領域10Aのシリコン基板11をエッチングし、150nm程度の深さを有するトレンチ13を形成する。トレンチ13の幅は設計ルールに依存するが、本実施形態では例えば60nmに設定する。
【0028】
公知の酸化技術等を用いて、6nm程度の厚みを有するゲート絶縁膜14を形成した後、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、ノンドープのシリコン電極層17を例えば70nmの厚みに堆積する。シリコン電極層17の堆積に際しては、例えばポリシリコンを堆積するが、アモルファスシリコンを堆積してもよい。シリコン電極層17の堆積に際しては、また、堆積の初期の段階で堆積を一旦中断し、反応炉内に微量のOを導入する。導入されたOは、シリコン電極層17の表面を僅かに酸化し、酸素混入層22を形成する。なお、堆積の中断は、堆積されたシリコン電極層17の厚みがトレンチ13の最小の幅の半分以下である時点で行うことが好ましく、これによって、酸素混入層22をトレンチ13の表面に略平行に形成すると共に、酸素混入層22をトレンチ13の底部付近に延在させることが出来る。
【0029】
次いで、公知のリソグラフィ技術及びイオン注入技術を用いて、図2(a)の符号32に示すように、メモリアレイ領域10A及びNMOSFET領域10Bのシリコン電極層17に、N型不純物としてリンを注入する。注入するN型不純物の濃度は、例えば5×1015cm−2とする。N型不純物の注入に際しては、NMOSFET領域10Bにおいて、シリコン電極層17に注入されたN型不純物がシリコン基板11のチャネル部分に到達しないように、加速エネルギーを設定する。N型不純物がリンで、シリコン電極層17の厚みが70nmである場合には、加速エネルギーは10keV以下が望ましい。なお、リンに代えてヒ素を注入してもよい。
【0030】
引き続き、公知のリソグラフィ技術及びイオン注入技術を用い、図2(b)の符号33に示すように、PMOSFET領域10Cのシリコン電極層17に、P型不純物としてホウ素を注入する。注入するP型不純物の濃度は、例えば2×1015cm−2とする。P型不純物の注入に際しては、PMOSFET領域10Cにおいて、シリコン電極層17に注入されたP型不純物がシリコン基板11のチャネル部分に到達しないように、加速エネルギーを設定する。P型不純物がホウ素で、シリコン電極層17の厚みが70nmである場合には、加速エネルギーは5keV以下が望ましい。なお、ホウ素に代えてBFやインジウムを注入してもよい。
【0031】
なお、上記図2(a)、(b)に示した不純物導入方法に代えて、シリコン電極層17の堆積に際して、in-situでシリコン電極層17内に不純物を導入する方法もある。しかし、この方法では、例えばN型のシリコン電極層17を堆積した場合には、PMOSFET領域10Cに対して、P型の不純物をイオン注入し、導電型をP型に変える工程が必要となる。
【0032】
次いで、シリコン電極層17上にタングステン層18を堆積する。タングステン層18上に例えば窒化シリコン層を堆積した後、公知のリソグラフィ技術及びドライエッチング技術を用いて、この窒化シリコン層をパターンニングし、電極保護膜16に形成する。引き続き、電極保護膜16をハードマスクとして用いて、タングステン層18及びシリコン電極層17をゲート電極15の形状にパターニングする。
【0033】
次いで、公知のリソグラフィ技術及びイオン注入技術を用いて、メモリアレイ領域10A及びNMOSFET領域10Bで、電極保護膜16から露出するシリコン基板11の表面付近にN型不純物を注入する。引き続き、PMOSFET領域10Cで、電極保護膜16から露出するシリコン基板11の表面付近にP型不純物を注入する。更に、熱処理によって、シリコン電極層17又はシリコン基板11の表面付近に注入した不純物を拡散させる。
【0034】
上記熱処理に際して、シリコン電極層17が再結晶化する。シリコン電極層17の再結晶化に際して、シリコン電極層17中では酸素混入層22を境界とする結晶粒界面21が形成される。結晶粒界は、不純物を拡散させ易い性質があり、メモリアレイ領域10Aでは、シリコン電極層17の表面付近に注入されたリンは、図3に示すように、結晶粒界面21に沿ってトレンチ13の底部付近へ拡散する。結晶粒界面21に沿ってトレンチ13の底部付近へ拡散したリンは、更に、結晶粒界面21からその近くのシリコン電極層17中へ拡散する。同図は、メモリアレイ領域10Aの一部を拡大して示している。シリコン基板11の表面付近では、熱処理によって、ソース・ドレイン拡散層19が形成される(図1)。
【0035】
更に、ゲート電極15の側壁を覆う側壁保護膜を形成した後、電極保護膜16及び側壁保護膜を覆ってシリコン基板11上に層間絶縁膜を堆積する。層間絶縁膜及びゲート絶縁膜14を貫通して、ソース・ドレイン拡散層19に接続するプラグを形成した後、層間絶縁膜上にプラグに接続する上層配線やキャパシタを形成する。これらの工程を経ることによって、半導体装置を製造できる。
【0036】
本実施形態の製造方法によれば、シリコン電極層17中にトレンチ13の表面に略平行な酸素混入層22を形成することによって、熱処理に際して、酸素混入層22を境界とする結晶粒界面21を形成すると共に、シリコン電極層17の表面付近に注入された不純物をこの結晶粒界面21に沿ってトレンチ13の底部付近へ拡散させることが出来る。従って、トレンチ13の底部付近におけるシリコン電極層17中の不純物濃度の低下を抑制できる。結晶粒界面21の形成に際しては、シリコン電極層17の堆積を一旦中断し、微量のOを導入するだけでよいので、スループットの低下を抑制できる。
【0037】
なお、上記実施形態では、シリコン電極層17中に1層の結晶粒界面21を形成したが、複数層の結晶粒界面21を形成してもよく、この場合、シリコン電極層17の表面付近に注入された不純物をトレンチ13の底部付近へより効率的に拡散させることが出来る。また、上記実施形態では、シリコン電極層17に導入するN型不純物としてリンを用いたが、ヒ素やガリウム等を用いても同様の効果を得ることが出来る。更に、シリコン電極層17をP型にしても同様の効果を得ることが出来る。P型不純物としては、例えばホウ素やインジウムを用いることができ、ホウ素を用いる場合にはBFを注入してもよい。
【0038】
上記実施形態の製造方法に従って半導体装置を製造し、実施例の半導体装置とした。また、上記実施形態の製造方法との比較のために、シリコン電極層17の堆積に際して酸素混入層22を形成することなく堆積し、比較例の半導体装置を製造した。実施例の半導体装置、及び、比較例の半導体装置について測定した、図3のIV−IV断面に沿ったリン濃度を図4に示す。同図中、グラフ(i)が実施例の半導体装置の結果を、グラフ(ii)が比較例の半導体装置の結果をそれぞれ示している。
【0039】
同図から判るように、比較例の半導体装置では、トレンチ13の底部付近のリン濃度が大きく低下しているのに対して、実施例の半導体装置では、結晶粒界面21でリン濃度が大きく増大していると共に、トレンチ13の底部付近のリン濃度の低下が抑制されている。これによって、上記実施形態の製造方法によって、トレンチ13の底部付近の不純物濃度の低下を抑制できることを確認できた。
【0040】
ところで、従来の半導体装置では、上記実施形態とは異なり、周辺回路領域のPMOSFETにおけるシリコン電極層17をN型にすると共に、シリコン基板11表面よりやや下方にチャネルを形成した埋込みチャネル型が採用されていた。しかし、このPMOSFETでは、シリコン基板11とシリコン電極層17との間の仕事関数差によって、しきい値電圧を充分に低減できない問題があった。埋込みチャネル型のPMOSFETにおけるしきい値電圧は、例えば〜0.7Vである。
【0041】
上記に対して、本実施形態の半導体装置では、周辺回路領域のPMOSFETにおけるシリコン電極層17をP型にすると共に、シリコン基板11の直下にチャネルを形成した表面チャネル型を採用することによって、上記仕事関数差を低減し、しきい値電圧を0.3V程度に下げることが出来る。PMOSFETのシリコン電極層17をP型に、NMOSFETのシリコン電極層17をN型にしたトランジスタ構造はPNデュアルゲート構造と、また、その製造プロセスはPNデュアルゲートプロセスと呼ばれ、最新のロジック半導体装置等で採用されている。
【0042】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施した半導体装置及びその製造方法も、本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】図2(a)、(b)は、図1の半導体装置を製造する各製造段階を順次に示す断面図である。
【図3】図2に後続する一製造段階を示す断面図である。
【図4】図3のIV‐IV線に沿ったリン濃度分布を示すグラフである。
【図5】従来の半導体装置の製造方法について、図3に相当する製造段階を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10A:メモリアレイ領域
10B:周辺回路領域のNMOSFET領域
10C:周辺回路領域のPMOSFET領域
11:シリコン基板
12:素子分離構造
13:トレンチ
14:ゲート絶縁膜
15:ゲート電極
16:電極保護膜
17:シリコン電極層
18:タングステン層
19:ソース・ドレイン拡散層
20:ウェル
21:結晶粒界面
22:酸素混入層
31:ソース拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に溝型MOSFETを有する半導体装置の製造方法において、
半導体基板の表面にトレンチを形成する工程と、
前記トレンチの表面にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記トレンチ内のゲート絶縁膜上に、前記トレンチの表面に平行な酸素混入層が形成されたシリコン電極層を堆積する工程と、
前記シリコン電極層に不純物を注入する工程と、
前記シリコン電極層を熱処理して前記不純物を拡散する工程と、
を順次に有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記トレンチの表面から前記酸素混入層までの距離が、前記トレンチの最小幅の1/2以下である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記不純物がN型不純物である、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記不純物がP型不純物である、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理工程によって、前記シリコン電極層が結晶化されると共に、前記酸素混入層を境界とする結晶粒界面が形成される、請求項1〜4の何れか一に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
半導体基板上に形成されたトレンチ内に収容された不純物含有シリコン層を有する半導体装置において、
前記不純物含有シリコン層は、前記トレンチの表面と平行に延在する結晶粒界面を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記不純物含有シリコン層は、前記結晶粒界面の近傍に酸素を含有する、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記結晶粒界面と前記トレンチの表面との間の距離が、前記トレンチの最小幅の1/2以下である、請求項6又は7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記不純物含有シリコン層は、溝型MOSFETのゲート電極である、請求項6〜8の何れか一に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−4594(P2008−4594A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169766(P2006−169766)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】