旋回支援装置、旋回支援方法及び旋回支援プログラム
【課題】車両の回頭性を向上することができる旋回支援装置、旋回支援方法及び旋回支援プログラムを提供する。
【解決手段】道路の通行方向を含む経路データ18を記憶した地理情報記憶部17を用いて、自車両の旋回を支援するナビゲーションユニット2において、メインCPU20は、自車位置を演算し、経路データ18に基づき、自車位置の進行方向前方に、支援対象となる転回地点を検出し、自車両の転回地点での転回方向を検出し、転回地点の自車両の転回方向に基づき、自車両内輪に制動力を付加する。
【解決手段】道路の通行方向を含む経路データ18を記憶した地理情報記憶部17を用いて、自車両の旋回を支援するナビゲーションユニット2において、メインCPU20は、自車位置を演算し、経路データ18に基づき、自車位置の進行方向前方に、支援対象となる転回地点を検出し、自車両の転回地点での転回方向を検出し、転回地点の自車両の転回方向に基づき、自車両内輪に制動力を付加する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回支援装置、旋回支援方法及び旋回支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ITS(高度道路交通システム;Intelligent Transport Systems)の発展に伴
い、ナビゲーション装置の機能が高度化する傾向にある。例えば、ナビゲーション装置と車両の各電子制御装置とが協働して、道路状況に応じた運転補助を行う各種システムが開発されている。
【0003】
特許文献1には、自車の転回(Uターン)を支援するシステムが記載されている。このシステムは、自車位置前方の交差点等が、転回禁止区域であるか否かを判断し、転回可能である場合には、車車間通信により周囲の車両に転回走行を通知し、転回を自動制御により行う。
【特許文献1】特開2006−190237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したシステムでは、転回しやすくするために、自車両の回頭性を向上させる制御を行っていない。即ち、上記システムは、道路幅と最小旋回半径に基づき自車両が転回できるか否かを判断し、転回出来ると判断した場合には、自動制御を行うが、転回できないと判断した場合には、切り返しを行う。このため、円滑に転回できないことがある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の回頭性を向上することができる旋回支援装置、旋回支援方法及び旋回支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、地図データを記憶した地図データ記憶手段を用いて、自車両の旋回を支援する旋回支援装置において、自車位置を演算する自車位置演算手段と、前記地図データに基づき、自車位置の進行方向前方に、支援対象となる旋回地点を検出する地点検出手段と、前記自車両の前記旋回地点での旋回方向を検出する旋回方向検出手段と、前記旋回地点での前記自車両の旋回方向に基づき、前記自車両内輪に制動力を付加する制動力制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の旋回支援装置において、旋回終了のタイミングを判断する旋回終了判断手段と、前記旋回終了判断手段が旋回終了であると判断した際に、加速に適した推奨変速比を選択し、前記自車両の変速比を該推奨変速比に変更することを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の旋回支援装置において、車速及び操舵角を取得する車両情報取得手段をさらに備えるとともに、前記制動力制御手段は、車速及び操舵角に基づき前記自車両内輪及び外輪の駆動力比率を取得し、該駆動力比率に基づき制動量を決定することを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、地図データを記憶した地図データ記憶手段と、制御手段とを用いて自車両の旋回を支援する旋回支援方法において、前記制御手段が、自車位置の進行
方向前方に支援対象となる旋回地点があるか否かを判断し、該旋回地点を検出した際に、前記自車両の前記旋回地点での旋回方向を検出するとともに、前記旋回地点での前記自車両の旋回方向に基づき、前記自車両内輪に制動力を付加することを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、地図データを記憶した地図データ記憶手段と、制御手段とを用いて自車両の旋回を支援する旋回支援プログラムにおいて、前記制御手段を、自車位置を演算する自車位置演算手段と、前記地図データに基づき、自車位置の進行方向前方に、支援対象となる旋回地点を検出する地点検出手段と、前記自車両の前記旋回地点での旋回方向を検出する旋回方向検出手段と、前記旋回地点での前記自車両の旋回方向に基づき、前記自車両内輪に制動力を付加する制動力制御手段として機能させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、旋回支援装置は、自車両の旋回方向に基づき自車両内輪に制動力を付加するので、旋回時の回頭性を向上することができる。
請求項2に記載の発明によれば、旋回終了であると判断した際に、加速に適した推奨変速比に変更することができるので、旋回後の加速を容易にすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、車速及び繰舵角に基づき内輪及び外輪の駆動力比率を取得し、この比率に基づき制動量を決定する。このため、その時点の車両の状況に応じた制動力を付加することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、自車両の旋回方向に基づき、自車両内輪に制動力を付加するので、旋回時の回頭性を向上することができる。
請求項5に記載の発明によれば、旋回支援プログラムに従って、自車両の旋回方向に基づき自車両内輪に制動力を付加するので、旋回時の回頭性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図11に従って説明する。図1は、自車両Cに搭載された転回支援システム1の概略図である。
本実施形態では、自車両Cは、前輪Fが駆動輪として機能する二輪駆動車(FF車)である。自車両Cのエンジン30には、トランスアスクル31が連結され、トランスアスクル31は、エンジン30の駆動力を、一対のフロントアスクル34,35を介して、前輪Fに伝達する。
【0015】
この自車両Cに搭載された転回支援システム1は、旋回支援装置としてのナビゲーションユニット2、エンジン・自動変速機(AT)制御ユニット3、ブレーキECU5を有している。ナビゲーションユニット2、エンジン・AT制御ユニット3及びブレーキECU5は、CAN通信等の車内ネットワークにより、双方向にデータを送受信可能に接続されている。
【0016】
ナビゲーションユニット2について、図2に従って説明する。ナビゲーションユニット2は、メインCPU20、RAM21、ROM22、センサI/F23、画像プロセッサ24、通信I/F25を備える。尚、メインCPU20は、自車位置演算手段、地点検出手段、旋回方向検出手段、制動力制御手段、旋回終了判断手段、車両情報取得手段、制御手段に対応する。
【0017】
メインCPU20は、ナビゲーションユニット2の主制御を司り、ROM22に記憶された旋回支援プログラム等に基づき、各種制御を行う。また、メインCPU20は、センサI/F23を介して、自車両Cに取り付けられたGPS受信部10から、緯度・経度等の座標を示す位置検出信号を入力して、電波航法により自車両Cの絶対位置を算出する。
また、メインCPU20は、自車両Cに設けられた車速センサ12及びジャイロ11から車速信号、方位検出信号をそれぞれ入力し、車速信号及び方位検出信号を用いる自律航法により、基準位置からの相対位置を算出し、電波航法で算出した絶対位置と組み合わせて自車位置を特定する。
【0018】
また、メインCPU20は、地図データ記憶手段としての地理情報記憶部17から地図データとしての経路ネットワークデータ(以下、経路データ18という)、地図描画データ19を読み出す。地理情報記憶部17は、内蔵ハードディスク、又は光ディスク等の外部記憶媒体である。経路データ18は、全国を区画したメッシュ内の道路に関するデータであって、各メッシュの識別子であるメッシュIDと、メッシュ内の各リンクに関するリンクデータと、ノードに関するノードデータとを有している。ノードは、交差点、インターチェンジ、道路の端点等を示す要素であって、リンクは各ノードを接続する要素である。また、リンクデータは、例えば、一方通行、転回禁止、転回可能といった、そのリンクに対応する道路の通行規制(通行方向)のデータを有している。またリンクデータは、高速道路、国道等といった道路種別や、リンクコスト等を有している。リンクコストは、そのリンクの長さや走行しやすさ等に応じて各リンクを重み付けした値であって、目的地までの経路探索の際に用いられる。
【0019】
メインCPU20は、ユーザの入力操作に応じて目的地の座標等の識別データを取得すると、その識別データをRAM21等に一時記憶する。さらに、メインCPU20は、自車位置の座標と目的地の座標とに基づき、経路データ18のリンクコストを用いて、複数の条件下で目的地までの経路を探索する。
【0020】
また、地理情報記憶部17に記憶された地図描画データ19は、全国の地図を分割したメッシュ毎に格納されている。地図描画データ19は、メッシュID毎に、描画データ、道路形状データ等を有している。描画データには、道路、市街地、河川等を示す点や線を描画するための描画点の座標や、ベクトルデータが記憶されている。道路形状データは、道路の形状を示すデータであって、ノード座標、形状補間点の座標、勾配、幅員、コーナー曲率半径等が記憶されている。尚、形状補間点とは、道路のカーブ形状を表すための要素であって、ノードとノードの間に配置されている。
【0021】
画像プロセッサ24は、自車両Cの現在位置周辺やユーザが指定した地域に相当する地図描画データ19を読み出して地図を描画するための出力データを生成し、該出力データをRGBの映像出力信号等に変換して、地図画面15aをディスプレイ15に出力する。また、ディスプレイ15は、ユーザの指の接触位置を検出するタッチパネルであって、ユーザが目的地を指定するための所定のタッチパネル操作を行うと、ディスプレイ15のタッチパネルコントローラ14は、通信I/F25を介して、メインCPU20に接触位置を出力する。
【0022】
またメインCPU20は、経路データ18に基づき、車両前方にあり、自車両Cが転回(Uターン)を行う転回地点を判断する。ナビゲーションユニット2が目的地までの経路を探索し、該経路の案内を行っている場合、メインCPU20は、探索された経路上に、転回を行う交差点(転回地点)があるか否かを判断する。該転回地点が検出され、該転回地点が自車位置から所定距離内になると、転回支援を行う。尚、転回地点は、特許請求の範囲の旋回地点に対応する。
【0023】
経路案内を行っていない場合、メインCPU20は、ステアリングコラム又はインストルメントパネル、又はナビゲーションユニット2が組み込まれた筐体等に設けられた転回選択スイッチSW1の押釦を待機する。転回選択スイッチSW1は、ユーザに転回する意思がある場合に押釦されるスイッチである。転回選択スイッチSW1が押釦操作されると
、メインCPU20は、通信I/F25を介して、転回選択スイッチSW1から転回指令信号を入力する。転回指令信号を入力すると、メインCPU20は、地理情報記憶部17を検索して、自車位置周辺の経路データ18を抽出する。さらに抽出した経路データ18のうち、自車両Cの進行方向前方のリンク及びノードを検出する。さらにそのリンク及びノードに対応する通行規制を地図描画データ19から抽出し、転回地点の座標を取得する。複数の転回地点が検出された場合には、最も近い地点の座標を取得する。そして、自車位置と転回地点との相対距離が所定距離D1以内になると、転回支援を行う。
【0024】
転回支援を開始すると判断すると、メインCPU20は、自車両Cの転回方向(旋回方向)を判断する。通常、転回方向は右方向であるため、メインCPU20は、経路データ18から、自車両Cが現在走行している道路が右折可能レーンであるか否かを判断する。自車両Cが右折可能レーンを走行している場合には、現在走行しているレーンの幅、転回地点である交差点等の大きさ、転回後に進入するレーンの位置及び幅を取得する。さらに、各レーンの位置、交差点の大きさ、道路幅等に応じて、自車両Cが転回する際の旋回軌跡を演算する。
【0025】
旋回軌跡を算出すると、自車両Cが上記旋回軌跡に沿って走行する場合のステアリング角度(繰舵角)を算出する。また、ステアリングセンサ13からステアリング角度を逐次取得し、取得したステアリング角度が、旋回軌跡に基づき算出した該ステアリング角度以上になった場合には、メインCPU20は、車速センサ12から車速を取得し、取得したステアリング角度及び車速と、図3に示す配分率マップMとに基づき、左右駆動輪の駆動力の配分率を求める。本実施形態では、自車両Cは前輪駆動車であるため、前左輪FL及び前右輪FR(図1参照)の駆動力比率がこのマップにより求められる。
【0026】
配分率マップMには、ステアリング角度及び車速に応じた配分率M1(内輪駆動力/外輪駆動力)がそれぞれ記憶されている。この配分率マップMでは、ステアリング角度及び車速の範囲に応じた配分率M1が記憶されているが、ステアリング角度及び車速の変化に応じて、配分率M1が連続的に変化するマップでもよい。この配分率M1は、車速の増大に伴い、旋回(転回)中心方向の内輪の駆動力が、外輪の駆動力よりも小さくなるように設定されている。また、配分率M1は、ステアリング角度の増大に従い、内輪の駆動力と外輪の駆動力との差が小さくなるように、即ち該配分率M1が「1」に近づくように設定されている。
【0027】
メインCPU20は、配分率マップMに基づき駆動輪の配分率M1を取得し、該配分率M1に基づき、自車両Cの旋回中心方向の内輪に付加する制動力を演算する。詳述すると、メインCPU20は、取得した配分率M1に基づき、次式に基づき内輪に付加する制動トルク(制動量)を算出する。尚、車輪に付加される駆動トルクは、スロットル開度、エンジン回転数、ギヤ比等の値と、各種マップとに基づき算出される。
【0028】
制動トルク=駆動トルク×(1−配分率)・・・(式1)
制動トルクを算出すると、制動トルク値をブレーキECU5に出力する。ブレーキECU5は、内輪に付加する制動トルク値を取得すると、その内輪に該制動トルクが付加されるように内輪のブレーキ装置38を制御する。
【0029】
例えば、図4に示すように、前左輪FL及び前右輪FRには、エンジン30及びトランスアスクル31から、駆動力が等しく伝達されるが、前右輪FRにはブレーキ装置38により制動力FBが加わるため、前右輪FRの駆動力F2は、前左輪FLの駆動力F1よりも小さくなる。その結果、自車両Cの重心Gを中心として、右方向(図中矢印方向)に自車両Cを旋回させるヨーモーメントが働く。これにより、自車両Cの回頭性を高めることができるため、自車両Cの安定性が向上する。また、支援を行わない場合と比べてステア
リングの操作量を少なくすることができ、転回を楽に行うことができる。
【0030】
転回支援が終了し、転回先のレーンに進入すると、メインCPU20は転回終了信号をエンジン・AT制御ユニット3に出力する。
エンジン・AT制御ユニット3は、CPU、ROM、RAM及び入出力ポート等を備え、エンジン30及びトランスアスクル31の制御を司る。エンジン・AT制御ユニット3の入力ポートには、アクセルセンサ(図示略)からアクセル操作量信号が入力され、スロットルセンサ(図示略)からスロットル開度信号が入力される。また、車速センサ12(図2参照)から車速信号が入力される。エンジン・AT制御ユニット3は、これら入力信号に基づいてエンジン30に制御信号を出力して、燃料噴射量制御等を行う。
【0031】
また、エンジン・AT制御ユニット3の入力ポートには、シフトレバー装置(図示略)からシフトレバー操作信号が入力され、アクセルセンサ(図示略)からアクセル操作量信号が入力される。エンジン・AT制御ユニット3は、アクセル操作量信号や車速信号から把握される車両の走行状況や運転者のシフトレバー操作や、ナビゲーションユニット2から出力される変速段を指定する指令信号に応じて、変速機用アクチュエータ(いずれも図示略)を駆動して、トランスアスクル31の変速段の切り替えを行う。
【0032】
また、ブレーキECU5は、自車両Cの各車輪に取り付けられた油圧式のブレーキ装置38、及びブレーキに油圧を供給する各油圧系統を制御する。自車両Cには、第1の油圧系統及び第2の油圧系統が備えられており、第1の油圧系統は、ブレーキペダル、ブレーキ液が貯留されたリザーブタンク、油圧を発生するブレーキマスタシリンダ、油圧バルブ(いずれも図示略)等から構成されている。この油圧系統では、ブレーキペダルが踏み込まれると、ブレーキマスタシリンダ内に油圧が発生する。油圧バルブが開弁状態の際には、ブレーキマスタシリンダで発生した油圧がブレーキの油圧シリンダに供給され、これにより車輪の回転が停止される。
【0033】
第2の油圧系統は、ブレーキECU5にて駆動制御され、リザーブタンクに接続された油圧ポンプ、同油圧ポンプにて発生した油圧を保持するための蓄圧タンク、各車輪のブレーキ装置38に供給されるフルード流量を制御するバルブ等から構成されている。この第2の油圧系統では、ブレーキECU5により油圧ポンプが駆動されると、油圧ポンプにより発生した油圧が蓄圧タンクに蓄えられる。さらに、転回時には、ブレーキECU5により、制動力を付加する対象となる内輪の上記バルブが開弁され、蓄圧タンクに蓄えられた油圧がブレーキ装置38の油圧シリンダに供給される。これにより、旋回中心方向の内輪に制動力が付加される。即ち、第2の油圧系統は、ブレーキペダルが操作されていなくてもブレーキを作動させることができる油圧系統である。
【0034】
次に、ナビゲーションユニット2が行う転回支援の処理手順について、図5〜図7に従って説明する。まず、ナビゲーションユニット2のメインCPU20は、支援の開始を待機する(ステップS1)。イグニッションスイッチやアクセサリスイッチ等がオンになり、ナビゲーションユニット2が起動されると、支援を開始すると判断し(ステップS1においてYES)、転回実施判定処理を行う(ステップS2)。転回実施判定処理は、自車両Cが進行方向前方で転回するか否かを判断する処理である。転回実施判定処理で転回を行うと判断した場合には、RAM21等に記憶された転回支援フラグがオンになる。
【0035】
転回実施判定処理を終了すると、メインCPU20は、転回支援フラグがオンであるか否かを判断し(ステップS3)、転回支援フラグがオンである場合には(ステップS3においてYES)、ステップS4に進み、支援実施処理を行う。支援実施処理は、転回時の自車両Cの回頭性を向上するために、各前輪Fのうち旋回中心方向の内輪のブレーキ装置38を制御して、該内輪に制動力を付加する処理である。転回支援フラグがオフである場
合には(ステップS3においてNO)、ステップS5に進む。
【0036】
支援実施処理(S4)を行った後は、メインCPU20は、支援を終了するか否かを判断する(ステップS5)。メインCPU20は、イグニッションスイッチ等がオフされたとき等に、支援を終了すると判断する(ステップS5においてYES)。また、ナビゲーションユニット2が起動している間は、支援を終了しないと判断して(ステップS5においてNO)、ステップS2に戻り処理を繰り返す。即ち、ナビゲーションユニット2が起動中である場合は、ステップS2〜S5を繰り返す。
【0037】
次に、ナビゲーションユニット2が行う転回実施判定処理(ステップS2)について図6に従って説明する。ナビゲーションユニット2のメインCPU20は、経路案内中であるか否かを判断する(ステップS2−1)。経路案内中でない場合には(ステップS2−1においてNO)、転回選択スイッチSW1がオンであるか否かを判断する(ステップS2−2)。転回選択スイッチSW1が押釦されず、オフであると判断すると(ステップS2−2においてNO)、転回実施判定処理を終了して、ステップS3に進む。
【0038】
ステップS2−1において経路案内中であると判断した場合(ステップS2−1においてYES)、及び転回選択スイッチSW1がオンであると判断した場合(ステップS2−2においてYES)は、自車両Cが転回地点から所定距離D1内を走行しているか否かを判断する(ステップS2−3)。経路案内を行っている場合には、探索された経路上に、転回地点があるか否かを判断し、転回地点がない場合には(ステップS2−3においてNO)、転回実施判定処理を終了し、ステップS3に進む。経路上に転回地点が検出された場合には、その転回地点と自車位置との相対距離を取得し、相対距離が所定距離D1内であるか否かを判断する。該相対距離が所定距離D1内であると判断した場合には(ステップS2−3においてYES)、ステップS2−4に進む。
【0039】
経路案内を行っていない場合には、自車位置周辺の経路データ18のうち、自車両Cの進行方向前方であって、自車位置から所定距離D1内にあるリンク及びノードを検出する。さらにそのリンク及びノードに対応する通行規制を経路データ18から抽出し、転回可能な交差点等の転回地点の座標を取得する。複数の転回地点が検出された場合には、最も近い地点の座標を取得する。転回地点が検出されない場合には、自車位置が転回地点から所定距離D1内でないと判断して(ステップS2−3においてNO)、転回実施判定処理を終了した後、ステップS3に進む。
【0040】
自車位置が転回地点から所定距離D1以下になると(ステップS2−3においてYES)、メインCPU20は、自車両Cが右折可能レーンを走行しているか否かを判断する(ステップS2−4)。具体的には、メインCPU20は、自車両Cが走行しているレーンの通行規制を経路データ16から取得し、自車両Cが走行しているレーンが右折可能レーンであるか否かを判断する。
【0041】
図8に示すように、自車両Cが右折可能レーンL1を走行している場合、メインCPU20は経路データ18に基づき自車両Cが右折可能レーンL1を走行していると判断し(ステップS2−4においてYES)、右折レーンフラグをオンにする(ステップS2−5)。右折レーンフラグは、自車両Cが右折可能なレーンを走行しているかを示すフラグである。自車両Cが右折可能レーン以外を走行していると判断すると(ステップS2−4においてNO)、右折レーンフラグをオフにする(ステップS2−6)。
【0042】
右折レーンフラグを更新すると、メインCPU20は、マップマッチング等に基づき、自車両Cが転回地点である交差点内に進入したか否かを判断する(ステップS2−7)。自車両Cが交差点の手前にあって、交差点内に進入していないと判断すると(ステップS
2−7においてNO)、ステップS2−4に戻り、自車両Cが右折可能レーンL1の走行を継続しているか否かを判断する。
【0043】
自車両Cが交差点内に進入したと判断すると(ステップS2−7においてYES)、メインCPU20は、右折レーンフラグがオンであるか否かを判断する(ステップS2−8)。右折レーンフラグがオンであると判断すると(ステップS2−8においてYES)、転回支援フラグをオンにする(ステップS2−9)。この転回支援フラグは、制動力付加を行うか否かを示すフラグであって、このフラグがオンに変わった時点から転回のための制動力付加を許可する。右折レーンフラグがオフであると判断すると(ステップS2−8においてNO)、転回支援フラグをオフにする(ステップS2−10)。即ち、自車両Cが右折可能レーンL1を走行していない場合には、転回のための制動力付加を行わない。
【0044】
次に支援実施処理について図7に従って説明する。ナビゲーションユニット2のメインCPU20は、RAM21に格納されたタイマカウンタAを「0」に初期化し(ステップS4−1)、転回地点である交差点に進入してからの経過時間ΔTAを計測する。また、メインCPU20は、タイマカウンタAのカウンタ値A1が所定値T1未満であるか否かを判断する(ステップS4−2)。この所定値T1は、自車両Cが交差点に進入してから転回を行うまでにかかる時間に設定されている。
【0045】
自車両Cが交差点内に進入した直後は、メインCPU20は、カウンタ値A1が所定値T1未満であると判断して(ステップS4−2においてYES)、ステップS4−4に進む。一方、例えば自車両Cが転回予定を変更して、交差点を通過してしまった場合、カウンタ値A1が所定値T1以上の値に到達するので(ステップS4−2においてNO)、支援実施処理を終了し、ステップS5に進む。
【0046】
ステップS4−3では、メインCPU20は、上記したように転回時の旋回軌跡を算出し、旋回軌跡に沿って走行する際の転回開始時の所定角度θ1を算出する。さらに、ステアリングセンサ13からステアリング角度を取得し、取得したステアリング角度が、旋回軌跡に基づき算出した所定角度θ1よりも大きいか否かを判断して、転回を開始したか否かを判断する。ステアリング角度が所定角度θ1未満である場合には(ステップS4−3においてNO)、ステップS4−2に戻る。
【0047】
図9に示すように、自車両Cが交差点J内で転回を開始し、ステアリング角度が所定角度θ1を超えたと判断すると(ステップS4−3においてYES)、メインCPU20は、車速及びステアリング角度を、車速センサ12及びステアリングセンサ13からそれぞれ取得する(ステップS4−4)。
【0048】
さらに、メインCPU20は、取得した車速及びステアリング角度に基づき、制動トルク付加量を演算する(ステップS4−5)。このとき、メインCPU20は、図3に示す配分率マップMに基づき、取得した車速及びステアリング角度に対応する配分率を読み出す。さらに、上記の式1に基づき、制動トルクを算出する。
【0049】
制動トルクを算出すると、メインCPU20は、該制動トルクに基づき、ブレーキECU5を制御して、旋回中心方向の内輪に制動力を付加する(ステップS4−6)。詳述すると、メインCPU20は、該制動トルクの大きさと、各車輪のブレーキ装置38に供給されるフルード流量を制御する上記バルブの制御量とを関連付けたマップ等に基づき、該バルブの制御量を判断し、各前輪Fのうち、旋回中心方向の内輪に制動力を加える。これにより、トランスアスクル31からは各前輪Fに等しく駆動力が分配されるが、内輪に制動力が加わることにより、図4に示すように内輪の駆動力F2が外輪の駆動力F1に比べて小さくなる。これにより、図10に示すように自車両Cが交差点J内を転回している場
合には、転回方向のヨーモーメントYが発生し、容易に転回することができる。
【0050】
続いて、メインCPU20は、ステアリングセンサ13から再びステアリング角度を取得して、該ステアリング角度が上記旋回軌跡に基づき算出した所定角度θ2未満であるか否かを判断する(ステップS4−7)。このときメインCPU20は、図11に示すように、自車両Cが算出した旋回軌跡に沿って走行した際に、転回先のレーンL2に進入開始したときのステアリング角度を算出し、該ステアリング角度を所定角度θ2とする。尚、所定角度θ2でなくても、ステアリング角度の変化量が所定量未満であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0051】
ステアリング角度が所定角度θ2以上である、即ち自車両Cが交差点内で転回中であると判断すると(ステップS4−7においてNO)、ステップS4−4に戻り、そのときの車速及びステアリング角度に基づき内輪に付加する制動トルク付加量を新たに算出し、該制動トルク付加量に基づき、油圧系統の上記バルブを制御する。
【0052】
ステアリング角度が所定角度θ2未満である、即ち転回が終了したと判断すると(ステップS4−7においてYES)、メインCPU20は、タイマカウンタBを「0」に初期化し(ステップS4−8)、該タイマカウンタBを用いて経過時間ΔTBを計測する。
【0053】
さらに、メインCPU20は、エンジン・AT制御ユニット3から、その時点で選択されている変速段を取得し、取得した変速段が、加速に適した推奨変速段として、2速よりも大きいか否かを判断する(ステップS4−9)。2速よりも大きい変速段である場合(ステップS4−9においてYES)、メインCPU20は、エンジン・AT制御ユニット3に変速段変更要求を送信して変速段を2速にする(ステップS4−10)。これにより、図11に示すように転回先のレーンL2に進入した自車両Cは、再加速が容易になる。
【0054】
ステップS4−9において変速段が2速以下であると判断すると(ステップS4−9においてNO)、タイマカウンタBに格納されたカウンタ値B1が所定値T2以上であるか否かを判断する(ステップS4−11)。この所定値T2は、転回後に加速を継続する時間を最適化した値に設定されている。カウンタ値B1が所定値T2以下であると判断すると(ステップS4−11においてNO)、ステップS4−9に戻り、変速段を2速に維持する。カウンタ値B1が所定値T2未満であると判断すると(ステップS4−9においてYES)、支援実施処理を終了する。
【0055】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、道路の通行規制を含む経路データ18を記憶した地理情報記憶部17を用いて、自車両Cの転回を支援するナビゲーションユニット2において、自車位置を演算し、自車位置の進行方向前方に、支援対象となる転回地点を検出するメインCPU20を備えるようにした。また、メインCPU20は、自車両Cの転回地点での転回方向を検出し、該転回方向に基づき、車両内輪に制動力を付加するようにした。このため、転回時の回頭性を高めることができるので、円滑且つ安全に転回動作を行うことができる。
【0056】
(2)上記実施形態によれば、メインCPU20は、転回終了のタイミングをステアリング角度に基づき判断し、転回終了であると判断した際に、その時点で選択されている変速段を判断するようにした。そして2速よりも大きい変速段であった場合には、2速に切り替えるようにした。このため、転回後は加速に適した変速段に切り替えることができるので、転回後の加速を容易にすることができる。
【0057】
(3)上記実施形態では、メインCPU20は、車速センサ12及びステアリングセン
サ13から車速及びステアリング角度を取得し、該車速及びステアリング角度と配分率マップMに基づき、前左輪FL及び前右輪FRに付加される駆動力の配分率M1を取得するようにした。さらに配分率M1に基づき、内輪に付加する制動トルクを算出し、該制動トルクに基づき内輪に制動力を付加するようにした。このため、車速が大きい場合には比較的大きい制動力を内輪に付加する等、その時点の車両の状況に応じた制動力を付加することができるので、各状況において回頭性を高めることができる。
【0058】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、転回支援システム1を前輪駆動車である自車両Cに搭載したが、後輪を駆動する後輪駆動車(FR車)、四輪駆動車等に搭載してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、転回支援システム1を、自車両Cの転回(Uターン)を支援するシステムに具体化したが、図12に示すように、自車両Cが急カーブ100を旋回する際の支援を行うシステムにしてもよい。この場合にも、旋回中心方向の内輪に制動力を付加することにより、旋回時の回頭性を向上することができる。
【0060】
・上記実施形態では、ステップS4−2でタイマカウンタAのカウンタ値A1が所定値T1未満であるか否かを判断するようにした。この所定値T1は、その交差点に対応する経路データ18や路車間通信によって、交差点の信号制御時間を取得し、該信号制御時間に基づき適宜設定してもよい。
【0061】
・上記実施形態では、有段(多段)変速機を備えたトランスアスクル31を搭載した場合に、転回後の加速に適した変速段を「2速」としたが、これ以外の変速段(変速比)にしてもよい。一方、無段変速機を搭載した場合には、転回後に加速に適した変速比にする。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】転回支援システムの概略図。
【図2】ナビゲーションユニットの概略図。
【図3】配分率マップの説明図。
【図4】転回支援時の駆動輪に働く力を説明する概念図。
【図5】本実施形態の処理手順を示すフロー図。
【図6】転回実施判定処理のフロー図。
【図7】支援実施処理のフロー図。
【図8】交差点進入前の状況を説明する説明図。
【図9】転回開始時の説明図。
【図10】転回実行時の説明図。
【図11】転回終了時の説明図。
【図12】別例の急カーブにおける支援の概念図。
【符号の説明】
【0063】
1…転回支援システム、2…旋回支援装置としてのナビゲーションユニット、17…地図データ記憶手段としての地理情報記憶部、18…地図データとしての経路データ、20…自車位置演算手段、地点検出手段、旋回方向検出手段、制動力制御手段、旋回終了判断手段、車両情報取得手段、制御手段としてのメインCPU、C…自車両、FB…制動力。
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回支援装置、旋回支援方法及び旋回支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ITS(高度道路交通システム;Intelligent Transport Systems)の発展に伴
い、ナビゲーション装置の機能が高度化する傾向にある。例えば、ナビゲーション装置と車両の各電子制御装置とが協働して、道路状況に応じた運転補助を行う各種システムが開発されている。
【0003】
特許文献1には、自車の転回(Uターン)を支援するシステムが記載されている。このシステムは、自車位置前方の交差点等が、転回禁止区域であるか否かを判断し、転回可能である場合には、車車間通信により周囲の車両に転回走行を通知し、転回を自動制御により行う。
【特許文献1】特開2006−190237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したシステムでは、転回しやすくするために、自車両の回頭性を向上させる制御を行っていない。即ち、上記システムは、道路幅と最小旋回半径に基づき自車両が転回できるか否かを判断し、転回出来ると判断した場合には、自動制御を行うが、転回できないと判断した場合には、切り返しを行う。このため、円滑に転回できないことがある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の回頭性を向上することができる旋回支援装置、旋回支援方法及び旋回支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、地図データを記憶した地図データ記憶手段を用いて、自車両の旋回を支援する旋回支援装置において、自車位置を演算する自車位置演算手段と、前記地図データに基づき、自車位置の進行方向前方に、支援対象となる旋回地点を検出する地点検出手段と、前記自車両の前記旋回地点での旋回方向を検出する旋回方向検出手段と、前記旋回地点での前記自車両の旋回方向に基づき、前記自車両内輪に制動力を付加する制動力制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の旋回支援装置において、旋回終了のタイミングを判断する旋回終了判断手段と、前記旋回終了判断手段が旋回終了であると判断した際に、加速に適した推奨変速比を選択し、前記自車両の変速比を該推奨変速比に変更することを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の旋回支援装置において、車速及び操舵角を取得する車両情報取得手段をさらに備えるとともに、前記制動力制御手段は、車速及び操舵角に基づき前記自車両内輪及び外輪の駆動力比率を取得し、該駆動力比率に基づき制動量を決定することを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、地図データを記憶した地図データ記憶手段と、制御手段とを用いて自車両の旋回を支援する旋回支援方法において、前記制御手段が、自車位置の進行
方向前方に支援対象となる旋回地点があるか否かを判断し、該旋回地点を検出した際に、前記自車両の前記旋回地点での旋回方向を検出するとともに、前記旋回地点での前記自車両の旋回方向に基づき、前記自車両内輪に制動力を付加することを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、地図データを記憶した地図データ記憶手段と、制御手段とを用いて自車両の旋回を支援する旋回支援プログラムにおいて、前記制御手段を、自車位置を演算する自車位置演算手段と、前記地図データに基づき、自車位置の進行方向前方に、支援対象となる旋回地点を検出する地点検出手段と、前記自車両の前記旋回地点での旋回方向を検出する旋回方向検出手段と、前記旋回地点での前記自車両の旋回方向に基づき、前記自車両内輪に制動力を付加する制動力制御手段として機能させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、旋回支援装置は、自車両の旋回方向に基づき自車両内輪に制動力を付加するので、旋回時の回頭性を向上することができる。
請求項2に記載の発明によれば、旋回終了であると判断した際に、加速に適した推奨変速比に変更することができるので、旋回後の加速を容易にすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、車速及び繰舵角に基づき内輪及び外輪の駆動力比率を取得し、この比率に基づき制動量を決定する。このため、その時点の車両の状況に応じた制動力を付加することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、自車両の旋回方向に基づき、自車両内輪に制動力を付加するので、旋回時の回頭性を向上することができる。
請求項5に記載の発明によれば、旋回支援プログラムに従って、自車両の旋回方向に基づき自車両内輪に制動力を付加するので、旋回時の回頭性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図11に従って説明する。図1は、自車両Cに搭載された転回支援システム1の概略図である。
本実施形態では、自車両Cは、前輪Fが駆動輪として機能する二輪駆動車(FF車)である。自車両Cのエンジン30には、トランスアスクル31が連結され、トランスアスクル31は、エンジン30の駆動力を、一対のフロントアスクル34,35を介して、前輪Fに伝達する。
【0015】
この自車両Cに搭載された転回支援システム1は、旋回支援装置としてのナビゲーションユニット2、エンジン・自動変速機(AT)制御ユニット3、ブレーキECU5を有している。ナビゲーションユニット2、エンジン・AT制御ユニット3及びブレーキECU5は、CAN通信等の車内ネットワークにより、双方向にデータを送受信可能に接続されている。
【0016】
ナビゲーションユニット2について、図2に従って説明する。ナビゲーションユニット2は、メインCPU20、RAM21、ROM22、センサI/F23、画像プロセッサ24、通信I/F25を備える。尚、メインCPU20は、自車位置演算手段、地点検出手段、旋回方向検出手段、制動力制御手段、旋回終了判断手段、車両情報取得手段、制御手段に対応する。
【0017】
メインCPU20は、ナビゲーションユニット2の主制御を司り、ROM22に記憶された旋回支援プログラム等に基づき、各種制御を行う。また、メインCPU20は、センサI/F23を介して、自車両Cに取り付けられたGPS受信部10から、緯度・経度等の座標を示す位置検出信号を入力して、電波航法により自車両Cの絶対位置を算出する。
また、メインCPU20は、自車両Cに設けられた車速センサ12及びジャイロ11から車速信号、方位検出信号をそれぞれ入力し、車速信号及び方位検出信号を用いる自律航法により、基準位置からの相対位置を算出し、電波航法で算出した絶対位置と組み合わせて自車位置を特定する。
【0018】
また、メインCPU20は、地図データ記憶手段としての地理情報記憶部17から地図データとしての経路ネットワークデータ(以下、経路データ18という)、地図描画データ19を読み出す。地理情報記憶部17は、内蔵ハードディスク、又は光ディスク等の外部記憶媒体である。経路データ18は、全国を区画したメッシュ内の道路に関するデータであって、各メッシュの識別子であるメッシュIDと、メッシュ内の各リンクに関するリンクデータと、ノードに関するノードデータとを有している。ノードは、交差点、インターチェンジ、道路の端点等を示す要素であって、リンクは各ノードを接続する要素である。また、リンクデータは、例えば、一方通行、転回禁止、転回可能といった、そのリンクに対応する道路の通行規制(通行方向)のデータを有している。またリンクデータは、高速道路、国道等といった道路種別や、リンクコスト等を有している。リンクコストは、そのリンクの長さや走行しやすさ等に応じて各リンクを重み付けした値であって、目的地までの経路探索の際に用いられる。
【0019】
メインCPU20は、ユーザの入力操作に応じて目的地の座標等の識別データを取得すると、その識別データをRAM21等に一時記憶する。さらに、メインCPU20は、自車位置の座標と目的地の座標とに基づき、経路データ18のリンクコストを用いて、複数の条件下で目的地までの経路を探索する。
【0020】
また、地理情報記憶部17に記憶された地図描画データ19は、全国の地図を分割したメッシュ毎に格納されている。地図描画データ19は、メッシュID毎に、描画データ、道路形状データ等を有している。描画データには、道路、市街地、河川等を示す点や線を描画するための描画点の座標や、ベクトルデータが記憶されている。道路形状データは、道路の形状を示すデータであって、ノード座標、形状補間点の座標、勾配、幅員、コーナー曲率半径等が記憶されている。尚、形状補間点とは、道路のカーブ形状を表すための要素であって、ノードとノードの間に配置されている。
【0021】
画像プロセッサ24は、自車両Cの現在位置周辺やユーザが指定した地域に相当する地図描画データ19を読み出して地図を描画するための出力データを生成し、該出力データをRGBの映像出力信号等に変換して、地図画面15aをディスプレイ15に出力する。また、ディスプレイ15は、ユーザの指の接触位置を検出するタッチパネルであって、ユーザが目的地を指定するための所定のタッチパネル操作を行うと、ディスプレイ15のタッチパネルコントローラ14は、通信I/F25を介して、メインCPU20に接触位置を出力する。
【0022】
またメインCPU20は、経路データ18に基づき、車両前方にあり、自車両Cが転回(Uターン)を行う転回地点を判断する。ナビゲーションユニット2が目的地までの経路を探索し、該経路の案内を行っている場合、メインCPU20は、探索された経路上に、転回を行う交差点(転回地点)があるか否かを判断する。該転回地点が検出され、該転回地点が自車位置から所定距離内になると、転回支援を行う。尚、転回地点は、特許請求の範囲の旋回地点に対応する。
【0023】
経路案内を行っていない場合、メインCPU20は、ステアリングコラム又はインストルメントパネル、又はナビゲーションユニット2が組み込まれた筐体等に設けられた転回選択スイッチSW1の押釦を待機する。転回選択スイッチSW1は、ユーザに転回する意思がある場合に押釦されるスイッチである。転回選択スイッチSW1が押釦操作されると
、メインCPU20は、通信I/F25を介して、転回選択スイッチSW1から転回指令信号を入力する。転回指令信号を入力すると、メインCPU20は、地理情報記憶部17を検索して、自車位置周辺の経路データ18を抽出する。さらに抽出した経路データ18のうち、自車両Cの進行方向前方のリンク及びノードを検出する。さらにそのリンク及びノードに対応する通行規制を地図描画データ19から抽出し、転回地点の座標を取得する。複数の転回地点が検出された場合には、最も近い地点の座標を取得する。そして、自車位置と転回地点との相対距離が所定距離D1以内になると、転回支援を行う。
【0024】
転回支援を開始すると判断すると、メインCPU20は、自車両Cの転回方向(旋回方向)を判断する。通常、転回方向は右方向であるため、メインCPU20は、経路データ18から、自車両Cが現在走行している道路が右折可能レーンであるか否かを判断する。自車両Cが右折可能レーンを走行している場合には、現在走行しているレーンの幅、転回地点である交差点等の大きさ、転回後に進入するレーンの位置及び幅を取得する。さらに、各レーンの位置、交差点の大きさ、道路幅等に応じて、自車両Cが転回する際の旋回軌跡を演算する。
【0025】
旋回軌跡を算出すると、自車両Cが上記旋回軌跡に沿って走行する場合のステアリング角度(繰舵角)を算出する。また、ステアリングセンサ13からステアリング角度を逐次取得し、取得したステアリング角度が、旋回軌跡に基づき算出した該ステアリング角度以上になった場合には、メインCPU20は、車速センサ12から車速を取得し、取得したステアリング角度及び車速と、図3に示す配分率マップMとに基づき、左右駆動輪の駆動力の配分率を求める。本実施形態では、自車両Cは前輪駆動車であるため、前左輪FL及び前右輪FR(図1参照)の駆動力比率がこのマップにより求められる。
【0026】
配分率マップMには、ステアリング角度及び車速に応じた配分率M1(内輪駆動力/外輪駆動力)がそれぞれ記憶されている。この配分率マップMでは、ステアリング角度及び車速の範囲に応じた配分率M1が記憶されているが、ステアリング角度及び車速の変化に応じて、配分率M1が連続的に変化するマップでもよい。この配分率M1は、車速の増大に伴い、旋回(転回)中心方向の内輪の駆動力が、外輪の駆動力よりも小さくなるように設定されている。また、配分率M1は、ステアリング角度の増大に従い、内輪の駆動力と外輪の駆動力との差が小さくなるように、即ち該配分率M1が「1」に近づくように設定されている。
【0027】
メインCPU20は、配分率マップMに基づき駆動輪の配分率M1を取得し、該配分率M1に基づき、自車両Cの旋回中心方向の内輪に付加する制動力を演算する。詳述すると、メインCPU20は、取得した配分率M1に基づき、次式に基づき内輪に付加する制動トルク(制動量)を算出する。尚、車輪に付加される駆動トルクは、スロットル開度、エンジン回転数、ギヤ比等の値と、各種マップとに基づき算出される。
【0028】
制動トルク=駆動トルク×(1−配分率)・・・(式1)
制動トルクを算出すると、制動トルク値をブレーキECU5に出力する。ブレーキECU5は、内輪に付加する制動トルク値を取得すると、その内輪に該制動トルクが付加されるように内輪のブレーキ装置38を制御する。
【0029】
例えば、図4に示すように、前左輪FL及び前右輪FRには、エンジン30及びトランスアスクル31から、駆動力が等しく伝達されるが、前右輪FRにはブレーキ装置38により制動力FBが加わるため、前右輪FRの駆動力F2は、前左輪FLの駆動力F1よりも小さくなる。その結果、自車両Cの重心Gを中心として、右方向(図中矢印方向)に自車両Cを旋回させるヨーモーメントが働く。これにより、自車両Cの回頭性を高めることができるため、自車両Cの安定性が向上する。また、支援を行わない場合と比べてステア
リングの操作量を少なくすることができ、転回を楽に行うことができる。
【0030】
転回支援が終了し、転回先のレーンに進入すると、メインCPU20は転回終了信号をエンジン・AT制御ユニット3に出力する。
エンジン・AT制御ユニット3は、CPU、ROM、RAM及び入出力ポート等を備え、エンジン30及びトランスアスクル31の制御を司る。エンジン・AT制御ユニット3の入力ポートには、アクセルセンサ(図示略)からアクセル操作量信号が入力され、スロットルセンサ(図示略)からスロットル開度信号が入力される。また、車速センサ12(図2参照)から車速信号が入力される。エンジン・AT制御ユニット3は、これら入力信号に基づいてエンジン30に制御信号を出力して、燃料噴射量制御等を行う。
【0031】
また、エンジン・AT制御ユニット3の入力ポートには、シフトレバー装置(図示略)からシフトレバー操作信号が入力され、アクセルセンサ(図示略)からアクセル操作量信号が入力される。エンジン・AT制御ユニット3は、アクセル操作量信号や車速信号から把握される車両の走行状況や運転者のシフトレバー操作や、ナビゲーションユニット2から出力される変速段を指定する指令信号に応じて、変速機用アクチュエータ(いずれも図示略)を駆動して、トランスアスクル31の変速段の切り替えを行う。
【0032】
また、ブレーキECU5は、自車両Cの各車輪に取り付けられた油圧式のブレーキ装置38、及びブレーキに油圧を供給する各油圧系統を制御する。自車両Cには、第1の油圧系統及び第2の油圧系統が備えられており、第1の油圧系統は、ブレーキペダル、ブレーキ液が貯留されたリザーブタンク、油圧を発生するブレーキマスタシリンダ、油圧バルブ(いずれも図示略)等から構成されている。この油圧系統では、ブレーキペダルが踏み込まれると、ブレーキマスタシリンダ内に油圧が発生する。油圧バルブが開弁状態の際には、ブレーキマスタシリンダで発生した油圧がブレーキの油圧シリンダに供給され、これにより車輪の回転が停止される。
【0033】
第2の油圧系統は、ブレーキECU5にて駆動制御され、リザーブタンクに接続された油圧ポンプ、同油圧ポンプにて発生した油圧を保持するための蓄圧タンク、各車輪のブレーキ装置38に供給されるフルード流量を制御するバルブ等から構成されている。この第2の油圧系統では、ブレーキECU5により油圧ポンプが駆動されると、油圧ポンプにより発生した油圧が蓄圧タンクに蓄えられる。さらに、転回時には、ブレーキECU5により、制動力を付加する対象となる内輪の上記バルブが開弁され、蓄圧タンクに蓄えられた油圧がブレーキ装置38の油圧シリンダに供給される。これにより、旋回中心方向の内輪に制動力が付加される。即ち、第2の油圧系統は、ブレーキペダルが操作されていなくてもブレーキを作動させることができる油圧系統である。
【0034】
次に、ナビゲーションユニット2が行う転回支援の処理手順について、図5〜図7に従って説明する。まず、ナビゲーションユニット2のメインCPU20は、支援の開始を待機する(ステップS1)。イグニッションスイッチやアクセサリスイッチ等がオンになり、ナビゲーションユニット2が起動されると、支援を開始すると判断し(ステップS1においてYES)、転回実施判定処理を行う(ステップS2)。転回実施判定処理は、自車両Cが進行方向前方で転回するか否かを判断する処理である。転回実施判定処理で転回を行うと判断した場合には、RAM21等に記憶された転回支援フラグがオンになる。
【0035】
転回実施判定処理を終了すると、メインCPU20は、転回支援フラグがオンであるか否かを判断し(ステップS3)、転回支援フラグがオンである場合には(ステップS3においてYES)、ステップS4に進み、支援実施処理を行う。支援実施処理は、転回時の自車両Cの回頭性を向上するために、各前輪Fのうち旋回中心方向の内輪のブレーキ装置38を制御して、該内輪に制動力を付加する処理である。転回支援フラグがオフである場
合には(ステップS3においてNO)、ステップS5に進む。
【0036】
支援実施処理(S4)を行った後は、メインCPU20は、支援を終了するか否かを判断する(ステップS5)。メインCPU20は、イグニッションスイッチ等がオフされたとき等に、支援を終了すると判断する(ステップS5においてYES)。また、ナビゲーションユニット2が起動している間は、支援を終了しないと判断して(ステップS5においてNO)、ステップS2に戻り処理を繰り返す。即ち、ナビゲーションユニット2が起動中である場合は、ステップS2〜S5を繰り返す。
【0037】
次に、ナビゲーションユニット2が行う転回実施判定処理(ステップS2)について図6に従って説明する。ナビゲーションユニット2のメインCPU20は、経路案内中であるか否かを判断する(ステップS2−1)。経路案内中でない場合には(ステップS2−1においてNO)、転回選択スイッチSW1がオンであるか否かを判断する(ステップS2−2)。転回選択スイッチSW1が押釦されず、オフであると判断すると(ステップS2−2においてNO)、転回実施判定処理を終了して、ステップS3に進む。
【0038】
ステップS2−1において経路案内中であると判断した場合(ステップS2−1においてYES)、及び転回選択スイッチSW1がオンであると判断した場合(ステップS2−2においてYES)は、自車両Cが転回地点から所定距離D1内を走行しているか否かを判断する(ステップS2−3)。経路案内を行っている場合には、探索された経路上に、転回地点があるか否かを判断し、転回地点がない場合には(ステップS2−3においてNO)、転回実施判定処理を終了し、ステップS3に進む。経路上に転回地点が検出された場合には、その転回地点と自車位置との相対距離を取得し、相対距離が所定距離D1内であるか否かを判断する。該相対距離が所定距離D1内であると判断した場合には(ステップS2−3においてYES)、ステップS2−4に進む。
【0039】
経路案内を行っていない場合には、自車位置周辺の経路データ18のうち、自車両Cの進行方向前方であって、自車位置から所定距離D1内にあるリンク及びノードを検出する。さらにそのリンク及びノードに対応する通行規制を経路データ18から抽出し、転回可能な交差点等の転回地点の座標を取得する。複数の転回地点が検出された場合には、最も近い地点の座標を取得する。転回地点が検出されない場合には、自車位置が転回地点から所定距離D1内でないと判断して(ステップS2−3においてNO)、転回実施判定処理を終了した後、ステップS3に進む。
【0040】
自車位置が転回地点から所定距離D1以下になると(ステップS2−3においてYES)、メインCPU20は、自車両Cが右折可能レーンを走行しているか否かを判断する(ステップS2−4)。具体的には、メインCPU20は、自車両Cが走行しているレーンの通行規制を経路データ16から取得し、自車両Cが走行しているレーンが右折可能レーンであるか否かを判断する。
【0041】
図8に示すように、自車両Cが右折可能レーンL1を走行している場合、メインCPU20は経路データ18に基づき自車両Cが右折可能レーンL1を走行していると判断し(ステップS2−4においてYES)、右折レーンフラグをオンにする(ステップS2−5)。右折レーンフラグは、自車両Cが右折可能なレーンを走行しているかを示すフラグである。自車両Cが右折可能レーン以外を走行していると判断すると(ステップS2−4においてNO)、右折レーンフラグをオフにする(ステップS2−6)。
【0042】
右折レーンフラグを更新すると、メインCPU20は、マップマッチング等に基づき、自車両Cが転回地点である交差点内に進入したか否かを判断する(ステップS2−7)。自車両Cが交差点の手前にあって、交差点内に進入していないと判断すると(ステップS
2−7においてNO)、ステップS2−4に戻り、自車両Cが右折可能レーンL1の走行を継続しているか否かを判断する。
【0043】
自車両Cが交差点内に進入したと判断すると(ステップS2−7においてYES)、メインCPU20は、右折レーンフラグがオンであるか否かを判断する(ステップS2−8)。右折レーンフラグがオンであると判断すると(ステップS2−8においてYES)、転回支援フラグをオンにする(ステップS2−9)。この転回支援フラグは、制動力付加を行うか否かを示すフラグであって、このフラグがオンに変わった時点から転回のための制動力付加を許可する。右折レーンフラグがオフであると判断すると(ステップS2−8においてNO)、転回支援フラグをオフにする(ステップS2−10)。即ち、自車両Cが右折可能レーンL1を走行していない場合には、転回のための制動力付加を行わない。
【0044】
次に支援実施処理について図7に従って説明する。ナビゲーションユニット2のメインCPU20は、RAM21に格納されたタイマカウンタAを「0」に初期化し(ステップS4−1)、転回地点である交差点に進入してからの経過時間ΔTAを計測する。また、メインCPU20は、タイマカウンタAのカウンタ値A1が所定値T1未満であるか否かを判断する(ステップS4−2)。この所定値T1は、自車両Cが交差点に進入してから転回を行うまでにかかる時間に設定されている。
【0045】
自車両Cが交差点内に進入した直後は、メインCPU20は、カウンタ値A1が所定値T1未満であると判断して(ステップS4−2においてYES)、ステップS4−4に進む。一方、例えば自車両Cが転回予定を変更して、交差点を通過してしまった場合、カウンタ値A1が所定値T1以上の値に到達するので(ステップS4−2においてNO)、支援実施処理を終了し、ステップS5に進む。
【0046】
ステップS4−3では、メインCPU20は、上記したように転回時の旋回軌跡を算出し、旋回軌跡に沿って走行する際の転回開始時の所定角度θ1を算出する。さらに、ステアリングセンサ13からステアリング角度を取得し、取得したステアリング角度が、旋回軌跡に基づき算出した所定角度θ1よりも大きいか否かを判断して、転回を開始したか否かを判断する。ステアリング角度が所定角度θ1未満である場合には(ステップS4−3においてNO)、ステップS4−2に戻る。
【0047】
図9に示すように、自車両Cが交差点J内で転回を開始し、ステアリング角度が所定角度θ1を超えたと判断すると(ステップS4−3においてYES)、メインCPU20は、車速及びステアリング角度を、車速センサ12及びステアリングセンサ13からそれぞれ取得する(ステップS4−4)。
【0048】
さらに、メインCPU20は、取得した車速及びステアリング角度に基づき、制動トルク付加量を演算する(ステップS4−5)。このとき、メインCPU20は、図3に示す配分率マップMに基づき、取得した車速及びステアリング角度に対応する配分率を読み出す。さらに、上記の式1に基づき、制動トルクを算出する。
【0049】
制動トルクを算出すると、メインCPU20は、該制動トルクに基づき、ブレーキECU5を制御して、旋回中心方向の内輪に制動力を付加する(ステップS4−6)。詳述すると、メインCPU20は、該制動トルクの大きさと、各車輪のブレーキ装置38に供給されるフルード流量を制御する上記バルブの制御量とを関連付けたマップ等に基づき、該バルブの制御量を判断し、各前輪Fのうち、旋回中心方向の内輪に制動力を加える。これにより、トランスアスクル31からは各前輪Fに等しく駆動力が分配されるが、内輪に制動力が加わることにより、図4に示すように内輪の駆動力F2が外輪の駆動力F1に比べて小さくなる。これにより、図10に示すように自車両Cが交差点J内を転回している場
合には、転回方向のヨーモーメントYが発生し、容易に転回することができる。
【0050】
続いて、メインCPU20は、ステアリングセンサ13から再びステアリング角度を取得して、該ステアリング角度が上記旋回軌跡に基づき算出した所定角度θ2未満であるか否かを判断する(ステップS4−7)。このときメインCPU20は、図11に示すように、自車両Cが算出した旋回軌跡に沿って走行した際に、転回先のレーンL2に進入開始したときのステアリング角度を算出し、該ステアリング角度を所定角度θ2とする。尚、所定角度θ2でなくても、ステアリング角度の変化量が所定量未満であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0051】
ステアリング角度が所定角度θ2以上である、即ち自車両Cが交差点内で転回中であると判断すると(ステップS4−7においてNO)、ステップS4−4に戻り、そのときの車速及びステアリング角度に基づき内輪に付加する制動トルク付加量を新たに算出し、該制動トルク付加量に基づき、油圧系統の上記バルブを制御する。
【0052】
ステアリング角度が所定角度θ2未満である、即ち転回が終了したと判断すると(ステップS4−7においてYES)、メインCPU20は、タイマカウンタBを「0」に初期化し(ステップS4−8)、該タイマカウンタBを用いて経過時間ΔTBを計測する。
【0053】
さらに、メインCPU20は、エンジン・AT制御ユニット3から、その時点で選択されている変速段を取得し、取得した変速段が、加速に適した推奨変速段として、2速よりも大きいか否かを判断する(ステップS4−9)。2速よりも大きい変速段である場合(ステップS4−9においてYES)、メインCPU20は、エンジン・AT制御ユニット3に変速段変更要求を送信して変速段を2速にする(ステップS4−10)。これにより、図11に示すように転回先のレーンL2に進入した自車両Cは、再加速が容易になる。
【0054】
ステップS4−9において変速段が2速以下であると判断すると(ステップS4−9においてNO)、タイマカウンタBに格納されたカウンタ値B1が所定値T2以上であるか否かを判断する(ステップS4−11)。この所定値T2は、転回後に加速を継続する時間を最適化した値に設定されている。カウンタ値B1が所定値T2以下であると判断すると(ステップS4−11においてNO)、ステップS4−9に戻り、変速段を2速に維持する。カウンタ値B1が所定値T2未満であると判断すると(ステップS4−9においてYES)、支援実施処理を終了する。
【0055】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、道路の通行規制を含む経路データ18を記憶した地理情報記憶部17を用いて、自車両Cの転回を支援するナビゲーションユニット2において、自車位置を演算し、自車位置の進行方向前方に、支援対象となる転回地点を検出するメインCPU20を備えるようにした。また、メインCPU20は、自車両Cの転回地点での転回方向を検出し、該転回方向に基づき、車両内輪に制動力を付加するようにした。このため、転回時の回頭性を高めることができるので、円滑且つ安全に転回動作を行うことができる。
【0056】
(2)上記実施形態によれば、メインCPU20は、転回終了のタイミングをステアリング角度に基づき判断し、転回終了であると判断した際に、その時点で選択されている変速段を判断するようにした。そして2速よりも大きい変速段であった場合には、2速に切り替えるようにした。このため、転回後は加速に適した変速段に切り替えることができるので、転回後の加速を容易にすることができる。
【0057】
(3)上記実施形態では、メインCPU20は、車速センサ12及びステアリングセン
サ13から車速及びステアリング角度を取得し、該車速及びステアリング角度と配分率マップMに基づき、前左輪FL及び前右輪FRに付加される駆動力の配分率M1を取得するようにした。さらに配分率M1に基づき、内輪に付加する制動トルクを算出し、該制動トルクに基づき内輪に制動力を付加するようにした。このため、車速が大きい場合には比較的大きい制動力を内輪に付加する等、その時点の車両の状況に応じた制動力を付加することができるので、各状況において回頭性を高めることができる。
【0058】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、転回支援システム1を前輪駆動車である自車両Cに搭載したが、後輪を駆動する後輪駆動車(FR車)、四輪駆動車等に搭載してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、転回支援システム1を、自車両Cの転回(Uターン)を支援するシステムに具体化したが、図12に示すように、自車両Cが急カーブ100を旋回する際の支援を行うシステムにしてもよい。この場合にも、旋回中心方向の内輪に制動力を付加することにより、旋回時の回頭性を向上することができる。
【0060】
・上記実施形態では、ステップS4−2でタイマカウンタAのカウンタ値A1が所定値T1未満であるか否かを判断するようにした。この所定値T1は、その交差点に対応する経路データ18や路車間通信によって、交差点の信号制御時間を取得し、該信号制御時間に基づき適宜設定してもよい。
【0061】
・上記実施形態では、有段(多段)変速機を備えたトランスアスクル31を搭載した場合に、転回後の加速に適した変速段を「2速」としたが、これ以外の変速段(変速比)にしてもよい。一方、無段変速機を搭載した場合には、転回後に加速に適した変速比にする。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】転回支援システムの概略図。
【図2】ナビゲーションユニットの概略図。
【図3】配分率マップの説明図。
【図4】転回支援時の駆動輪に働く力を説明する概念図。
【図5】本実施形態の処理手順を示すフロー図。
【図6】転回実施判定処理のフロー図。
【図7】支援実施処理のフロー図。
【図8】交差点進入前の状況を説明する説明図。
【図9】転回開始時の説明図。
【図10】転回実行時の説明図。
【図11】転回終了時の説明図。
【図12】別例の急カーブにおける支援の概念図。
【符号の説明】
【0063】
1…転回支援システム、2…旋回支援装置としてのナビゲーションユニット、17…地図データ記憶手段としての地理情報記憶部、18…地図データとしての経路データ、20…自車位置演算手段、地点検出手段、旋回方向検出手段、制動力制御手段、旋回終了判断手段、車両情報取得手段、制御手段としてのメインCPU、C…自車両、FB…制動力。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを記憶した地図データ記憶手段を用いて、自車両の旋回を支援する旋回支援装置において、
自車位置を演算する自車位置演算手段と、
前記地図データに基づき、自車位置の進行方向前方に、支援対象となる旋回地点を検出する地点検出手段と、
前記自車両の前記旋回地点での旋回方向を検出する旋回方向検出手段と、
前記旋回地点での前記自車両の旋回方向に基づき、前記自車両内輪に制動力を付加する制動力制御手段と
を備えたことを特徴とする旋回支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の旋回支援装置において、
旋回終了のタイミングを判断する旋回終了判断手段と、
前記旋回終了判断手段が旋回終了であると判断した際に、加速に適した推奨変速比を選択し、前記自車両の変速比を該推奨変速比に変更することを特徴とする旋回支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の旋回支援装置において、
車速及び操舵角を取得する車両情報取得手段をさらに備えるとともに、
前記制動力制御手段は、車速及び操舵角に基づき前記自車両内輪及び外輪の駆動力比率を取得し、該駆動力比率に基づき制動量を決定することを特徴とする旋回支援装置。
【請求項4】
地図データを記憶した地図データ記憶手段と、制御手段とを用いて自車両の旋回を支援する旋回支援方法において、
前記制御手段が、
自車位置の進行方向前方に支援対象となる旋回地点があるか否かを判断し、該旋回地点を検出した際に、前記自車両の前記旋回地点での旋回方向を検出するとともに、
前記旋回地点での前記自車両の旋回方向に基づき、前記自車両内輪に制動力を付加することを特徴とする旋回支援方法。
【請求項5】
地図データを記憶した地図データ記憶手段と、制御手段とを用いて自車両の旋回を支援する旋回支援プログラムにおいて、
前記制御手段を、
自車位置を演算する自車位置演算手段と、
前記地図データに基づき、自車位置の進行方向前方に、支援対象となる旋回地点を検出する地点検出手段と、
前記自車両の前記旋回地点での旋回方向を検出する旋回方向検出手段と、
前記旋回地点での前記自車両の旋回方向に基づき、前記自車両内輪に制動力を付加する制動力制御手段として機能させることを特徴とする旋回支援プログラム。
【請求項1】
地図データを記憶した地図データ記憶手段を用いて、自車両の旋回を支援する旋回支援装置において、
自車位置を演算する自車位置演算手段と、
前記地図データに基づき、自車位置の進行方向前方に、支援対象となる旋回地点を検出する地点検出手段と、
前記自車両の前記旋回地点での旋回方向を検出する旋回方向検出手段と、
前記旋回地点での前記自車両の旋回方向に基づき、前記自車両内輪に制動力を付加する制動力制御手段と
を備えたことを特徴とする旋回支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の旋回支援装置において、
旋回終了のタイミングを判断する旋回終了判断手段と、
前記旋回終了判断手段が旋回終了であると判断した際に、加速に適した推奨変速比を選択し、前記自車両の変速比を該推奨変速比に変更することを特徴とする旋回支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の旋回支援装置において、
車速及び操舵角を取得する車両情報取得手段をさらに備えるとともに、
前記制動力制御手段は、車速及び操舵角に基づき前記自車両内輪及び外輪の駆動力比率を取得し、該駆動力比率に基づき制動量を決定することを特徴とする旋回支援装置。
【請求項4】
地図データを記憶した地図データ記憶手段と、制御手段とを用いて自車両の旋回を支援する旋回支援方法において、
前記制御手段が、
自車位置の進行方向前方に支援対象となる旋回地点があるか否かを判断し、該旋回地点を検出した際に、前記自車両の前記旋回地点での旋回方向を検出するとともに、
前記旋回地点での前記自車両の旋回方向に基づき、前記自車両内輪に制動力を付加することを特徴とする旋回支援方法。
【請求項5】
地図データを記憶した地図データ記憶手段と、制御手段とを用いて自車両の旋回を支援する旋回支援プログラムにおいて、
前記制御手段を、
自車位置を演算する自車位置演算手段と、
前記地図データに基づき、自車位置の進行方向前方に、支援対象となる旋回地点を検出する地点検出手段と、
前記自車両の前記旋回地点での旋回方向を検出する旋回方向検出手段と、
前記旋回地点での前記自車両の旋回方向に基づき、前記自車両内輪に制動力を付加する制動力制御手段として機能させることを特徴とする旋回支援プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−23404(P2009−23404A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186006(P2007−186006)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
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