説明

熱処理装置及び熱処理方法

【課題】被処理物を急速昇温でき、熱効率及びスループットに優れるとともに、構成の簡素な熱処理装置を提供する。
【解決手段】高温真空炉は、被処理物を1,000℃以上2,400℃以下の温度に加熱する本加熱室21と、本加熱室21に隣接する予備加熱室22と、予備加熱室22と本加熱室21との間で被処理物を移動させるための移動機構27と、を備える。本加熱室21の内部には、被処理物を加熱するメッシュヒータ33と、メッシュヒータ33の熱を被処理物に向けて反射するように配置される第1多層熱反射金属板41と、が備えられる。移動機構27は、被処理物とともに移動可能な第2多層熱反射金属板42を備える。被処理物が予備加熱室22内にあるときには、第2多層熱反射金属板42が本加熱室21と予備加熱室22とを隔てて、メッシュヒータ33の一部が第2多層熱反射金属板42を介して予備加熱室22に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、高真空且つ高温に維持した雰囲気、又は不活性ガスを若干含む高温雰囲気を形成し、この雰囲気下において、結晶成長、化学反応又は成膜等の化学変化及び物理変化を被処理物に生じさせるための熱処理装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)等を行うための結晶成長炉や化学反応炉と呼ばれる熱処理装置の中には、真空雰囲気又はガス雰囲気を高温状態に維持する加熱室と、当該加熱室内で被処理物を加熱するための加熱手段とを備え、この加熱室に配置された被処理物に対して熱処理を行う構成のものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1は、この種の熱処理装置において、本加熱室と予備加熱室を備え、先ず予備加熱室で予備加熱処理を行った後、予備加熱室から本加熱室へ被処理物を移動させることで本加熱処理を行う構成を開示する。特許文献2〜5においても、同様の構成を有する熱処理装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−292305号公報
【特許文献2】特開2004−297034号公報
【特許文献3】特開2004−271072号公報
【特許文献4】特開2005−273931号公報
【特許文献5】特開2006−41544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜5の構成は何れも、被処理物の予備加熱室への出し入れ、及び、予備加熱室と本加熱室との間での被処理物の移動に相当の時間を要していた。このため、熱効率及びスループットの点で改善の余地があった。また、上記の出し入れ及び移動のための機構が複雑であり、構成の簡素化の観点からも改善の余地が残されていた。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、被処理物の温度を速やかに所望の温度まで到達させることができ、熱効率及びスループットに優れるとともに、構成の簡素な熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の熱処理装置が提供される。即ち、被処理物を1,000℃以上2,400℃以下の温度に加熱するための第1室と、この第1室に隣接する第2室と、この第2室と前記第1室との間で前記被処理物を移動させるための移動機構と、を備える。前記第1室の内部には、前記被処理物を周囲から加熱できるように配置される加熱ヒータと、この加熱ヒータの熱を前記被処理物に向けて反射するように配置される第1多層熱反射金属板と、が備えられる。前記移動機構は、前記被処理物とともに移動可能な第2多層熱反射金属板を備える。前記被処理物が前記第2室内にあるときには、前記第2多層熱反射金属板が前記第1室と前記第2室とを隔てるように位置し、前記加熱ヒータから発生する熱の一部が前記第2多層熱反射金属板を介して前記第2室に供給されて、これにより当該第2室内の被処理物を予備加熱することが可能に構成されている。
【0008】
これにより、第1室の熱を利用して第2室を昇温するので、予備加熱に必要なヒータを少なくでき、又は全く設置しない構成とすることができる。この結果、熱処理装置の構成を著しく簡素化できる。また、第2室での予備加熱が終了した後、隣接する第1室へ被処理物を移動させるだけで、第2多層熱反射金属板が被処理物とともに移動して、第1室と第2室とが連通した状態となる。従って、第1室と第2室との間で被処理物を移動させるための機構を簡素化できるとともに、その移動のために必要な時間も短縮できる。従って、本加熱処理を直ちに開始して急速な昇温を実現でき、熱効率及びスループットが良好である。
【0009】
前記熱処理装置においては、前記第2多層熱反射金属板の積層枚数は、前記第1多層熱反射金属板の積層枚数よりも少ないことが好ましい。
【0010】
これにより、予備加熱時に、第1室の熱の一部が第2多層熱反射金属板を通じて第2室側へ適当に分配される。従って、第2室の温度を適度に上昇させ、予備加熱処理を容易に行うことができる。
【0011】
前記熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記移動機構は、前記被処理物とともに移動可能な第3多層熱反射金属板を備える。前記被処理物が前記第2室内にあるときには、前記第3多層熱反射金属板が前記第2室とその外部とを隔てるように位置する。前記被処理物が前記第1室内にあるときには、前記第3多層熱反射金属板が前記第1室と前記第2室とを隔てるように位置する。
【0012】
これにより、予備加熱時においては、第3多層熱反射金属板によって第2室の温度低下を良好に防止できる。また、本加熱処理時においては、第3多層熱反射金属板が第1室と第2室とを隔てるので、第1室の被処理物を効率良く昇温させることができる。
【0013】
前記熱処理装置においては、前記第3多層熱反射金属板は、多数の貫通孔を有する金属板を、当該貫通孔の位置を異ならせながら積層して構成されていることが好ましい。
【0014】
これにより、本加熱処理時に被処理物から発生するガスを、第3多層熱反射金属板の各金属板の貫通孔を通じて良好に排気することができる。従って、被処理物や第1室のガスによる汚染を防止できる。一方で、第1室の熱は第3多層熱反射金属板によって良好に遮断されるので、本加熱処理時の熱効率を良好に維持できる。
【0015】
前記熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記移動機構は、前記被処理物とともに移動可能な第4多層熱反射金属板を備える。前記被処理物が前記第1室内にあるときには、前記第4多層熱反射金属板が前記第2室とその外部とを隔てるように位置する。
【0016】
これにより、本加熱処理時においては、第4多層熱反射金属板によって第2室の温度低下を防止できるので、第1室を容易に高温雰囲気に維持することができる。
【0017】
前記の熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、多層熱反射金属板に囲われた第3室が、前記第2室の外側に隣接させて備えられる。前記移動機構は、前記被処理物とともに移動可能な第4多層熱反射金属板を備える。前記被処理物が前記第1室内にあるときには、前記第4多層熱反射金属板が前記第2室と前記第3室とを隔てるように位置する。
【0018】
これにより、第2室等の熱が逃げるロスを、第3室を設ける簡素な構成によって低減することができる。
【0019】
前記の熱処理装置においては、前記被処理物が前記第2室内にあるときには、前記第4多層熱反射金属板が前記第3室とその外部とを隔てるように位置することが好ましい。
【0020】
これにより、予備加熱処理時に第3多層熱反射金属板と第4多層熱反射金属板とによって第3室が閉鎖されるので、断熱効果を簡単な構成で得ることができる。
【0021】
前記の熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第4多層熱反射金属板にはロッドが連結されている。このロッドは、前記被処理物が前記第2室内にあるときには、前記第3室を挟んで前記第2室と反対側に位置する。
【0022】
これにより、第2室等の熱がロッドを伝わって逃げるロスを第3室によって低減できる。従って、熱処理の効率が一層向上するとともに、ロッドの熱損傷も防止できる。
【0023】
前記熱処理装置においては、前記第4多層熱反射金属板は、多数の貫通孔を有する金属板を、当該貫通孔の位置を異ならせながら積層して構成されていることが好ましい。
【0024】
これにより、本加熱処理時に被処理物から発生するガスを、第4多層熱反射金属板の各金属板の貫通孔を通じて良好に排気することができる。従って、被処理物や、第1室及び第2室のガスによる汚染を防止できる。一方で、第2室の熱は第4多層熱反射金属板によって良好に遮断されるので、第2室の過度の温度低下を防止し、本加熱処理時の熱効率を良好に維持できる。
【0025】
前記の熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記移動機構は、前記被処理物とともに移動可能な第5多層熱反射金属板を備える。前記被処理物が前記第1室内にあるときは、前記第5多層熱反射金属板が前記第3室とその外部とを隔てるように位置する。
【0026】
これにより、本加熱処理時において熱が逃げるロスを、第3室の断熱効果によって一層低減できる。
【0027】
前記の熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、多層熱反射金属板に囲われた第4室を、前記第3室の外側に隣接させて備える。前記被処理物が前記第2室内にあるときには、前記第5多層熱反射金属板が前記第4室とその外部とを隔てるように位置する。
【0028】
これにより、第2室等の熱が逃げるロスを、2つの第3室によって一層低減することができる。
【0029】
前記の熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第5多層熱反射金属板にはロッドが連結されている。このロッドは、前記被処理物が前記第1室内にあるときには、前記第3室を挟んで前記第2室と反対側に位置する。
【0030】
これにより、本加熱処理時において、第1室の熱がロッドを伝わって逃げるロスを第3室によって低減できる。従って、熱処理の効率が一層向上するとともに、ロッドの熱損傷も防止できる。
【0031】
前記熱処理装置においては、前記第2室内の被処理物を500℃以上の温度に予備加熱できることが好ましい。
【0032】
これにより、高い温度での予備加熱が必要な処理に好適な熱処理装置を提供できる。
【0033】
前記熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記移動機構は、前記被処理物を支持する支持体と、この支持体に連結されるロッドと、を備える。前記ロッドは、温度絶縁体を介して前記支持体に連結される。
【0034】
これにより、第1室や第2室の熱がロッドを伝わって逃げるロスを温度絶縁体により低減でき、熱処理の一層の効率化を図ることができる。
【0035】
前記熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記移動機構は、前記被処理物を支持する支持体と、この支持体に連結されるロッドと、を備える。前記被処理物が前記第1室内にあるときに、前記ロッドと前記支持体との連結を切離し可能に構成されている。
【0036】
これにより、第1室の熱がロッドを伝わって逃げるロスを低減でき、熱処理の一層の効率化を図ることができる。
【0037】
前記熱処理装置においては、前記第2室は多層熱反射金属板を備え、この多層熱反射金属板には通路孔が形成されて、この通路孔を通じて前記第2室に対し被処理物を出し入れ可能に構成することが好ましい。
【0038】
これにより、簡素な構成で、第2室への被処理物の出し入れを実現できる。
【0039】
前記熱処理装置においては、前記通路孔を開閉可能な開閉部材が設けられていることが好ましい。
【0040】
これにより、予備加熱時等に開閉部材を閉鎖することで、第2室の熱ロスを低減し、熱処理の一層の効率化を図ることができる。
【0041】
前記熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第2室は多層熱反射金属板を備え、この多層熱反射金属板の少なくとも一部が移動することで通路空間を形成可能に構成される。この通路空間を通じて、前記第2室に対し被処理物を出し入れ可能に構成する。
【0042】
これにより、簡素な構成で、第2室への被処理物の出し入れを実現できる。
【0043】
前記の熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第2室に対し被処理物を出し入れ可能な搬送機構を備える。この搬送機構はアームを備え、このアームによって被処理物を搬送するように構成されている。
【0044】
あるいは、前記搬送機構は回転テーブル式に構成されていることが好ましい。
【0045】
これにより、簡素な構成の搬送機構によって、第2室への被処理物の出し入れを実現できる。
【0046】
前記熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、被処理物を上下方向に並べて複数ストックすることが可能なストック室と、被処理物を前記第2室と前記ストック室との間で水平方向に搬送可能な搬送機構と、を備える。前記第2室は前記第1室に対し上下方向に隣接している。
【0047】
これにより、複数の被処理物をストックして次々と予備加熱処理及び本加熱処理を行うことが可能になり、スループットを顕著に向上できる。また、コンパクトな構成で上記機能を達成できるので、熱処理装置の設置面積を低減できる。
【0048】
前記熱処理装置においては、前記ストック室は、当該ストック室にストックされる被処理物を冷却するための冷却機構を備えていることが好ましい。
【0049】
これにより、熱処理後の被処理物を急速に冷却できるので、短時間で次工程に移行することができ、スループットを一層向上できる。
【0050】
前記熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、被処理物を大気中から装置内に導入するための導入室を備える。この導入室に導入された被処理物を前記第2室に搬送可能に構成されている。
【0051】
これにより、熱処理装置へ被処理物の導入を容易に行うことができる。
【0052】
前記熱処理装置においては、前記第1室は、10-2Pa以下の真空とすることが可能に構成されていることが好ましい。
【0053】
あるいは、前記第1室は、10-2Pa以下の真空に到達した後に不活性ガスを導入した希薄ガス雰囲気下とすることが可能に構成されていることが好ましい。
【0054】
これにより、例えば半導体プロセス等の高真空での処理に好適な熱処理装置を提供できる。
【0055】
前記熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記移動機構は、前記被処理物を載置するための受け台を備える。この受け台は、タンタルカーバイド、タングステンカーバイド、タングステン、タンタル、モリブデン又はグラファイトの少なくとも何れかよりなる。
【0056】
また、前記熱処理装置においては、前記加熱ヒータは、タングステン、モリブデン、又はタンタルの少なくとも何れかよりなることが好ましい。
【0057】
これにより、高い温度での熱処理に好適な熱処理装置を提供できる。
【0058】
また、前記熱処理装置においては、前記受け台又は加熱ヒータの少なくとも何れか一方は、タンタルカーバイドを施したタンタルよりなる取付ネジによって他の部材に固定されていることが好ましい。
【0059】
これにより、高温でも固定部分の焼き付きが生じないので、メンテナンス性に優れた熱処理装置を提供できる。
【0060】
前記熱処理装置においては、前記加熱ヒータは、タングステン、モリブデン、又はタンタルの少なくとも何れかよりなるカバーによって覆われていることが好ましい。
【0061】
これにより、本加熱処理時に被処理物から発生する分子線や蒸気に加熱ヒータが晒されることがカバーによって防止されるので、加熱ヒータの寿命を延ばすことができる。
【0062】
また、前記熱処理装置においては、前記カバーは、タンタルカーバイドを施したタンタルよりなる取付ネジによって他の部材に固定されていることが好ましい。
【0063】
これにより、高温でも固定部分の焼き付きが生じないので、メンテナンス性に優れた熱処理装置を提供できる。
【0064】
前記熱処理装置においては、前記第1多層熱反射金属板及び第2多層熱反射金属板は、タングステンカーバイド、タングステン、タンタル又はモリブデンの少なくとも何れかよりなることが好ましい。
【0065】
これにより、高い温度での熱処理に好適な熱処理装置を提供できる。
【0066】
前記熱処理装置においては、前記第1多層熱反射金属板及び第2多層熱反射金属板の少なくとも何れか一方は、タンタルカーバイドを施したタンタルよりなる取付ネジによって他の部材に固定されていることが好ましい。
【0067】
これにより、高温でも固定部分の焼き付きが生じないので、メンテナンス性に優れた熱処理装置を提供できる。
【0068】
前記熱処理装置においては、前記移動機構において、被処理物の周囲に、タングステン、モリブデン、又はタンタルの少なくとも何れかよりなるシールドが配置されていることが好ましい。
【0069】
これにより、本加熱処理時に被処理物から発生する分子線や蒸気に加熱ヒータが晒されることがシールドによって防止されるので、加熱ヒータの寿命を延ばすことができる。
【0070】
前記の熱処理装置においては、前記シールドは、タンタルカーバイド処理を施したタンタルよりなる取付ネジによって他の部材に固定されていることが好ましい。
【0071】
これにより、高温でも固定部分の焼き付きが生じないので、メンテナンス性に優れた熱処理装置を提供できる。
【0072】
前記熱処理装置においては、前記第1多層熱反射金属板において、積層されている金属板の間に温度検知部が配置されていることが好ましい。
【0073】
これにより、第1室内の温度分布を適切かつ正確に計測することができる。また、この温度検知部を使用して、本加熱部の温度制御を行うことも可能となる。そのことにより、チャンバのビューポートを介して放射温度計で本加熱部を測温し、制御にフィードバックする際にビューポートが曇って測温できなくなる問題も解決できる。
【0074】
本発明の第2の観点によれば、前記熱処理装置を用いて被処理物を熱処理する熱処理方法であり、前記第2室で被処理物を500℃以上1,000℃以下の温度に予備加熱する予備加熱処理と、前記第2室から前記第1室へ被処理物を移動させることで、前記第1室において被処理物を1,000℃以上2,400℃以下の温度に加熱する本加熱処理と、この本加熱処理の終了後に、前記第1室から前記第2室へ被処理物を移動させることで被処理物を冷却する冷却処理と、を行う熱処理方法が提供される。
【0075】
これにより、被処理物の温度を均一且つ速やかに所望の温度まで到達させることができ、熱効率及びスループットを向上させることができる。
【0076】
本発明の第3の観点によれば、前記熱処理装置を用いて被処理物を熱処理する熱処理方法であり、前記第2室で被処理物を500℃以上1,000℃以下の温度に予備加熱する予備加熱処理と、前記第2室から前記第1室へ被処理物を移動させた後に、設定された温度プロフィルに従って前記第1室の温度を制御することで、被処理物を1,000℃以上2,400℃以下の温度に加熱する本加熱処理と、この本加熱処理の終了後に、設定された温度プロフィルに従って前記第1室の温度を制御することで、前記第1室内の被処理物を冷却する冷却処理と、を行う熱処理方法が提供される。
【0077】
これにより、被処理物の温度を、所望の温度プロフィルで加熱及び冷却することが可能になる。従って、被処理物を急激に加熱する場合及び緩やかに加熱する場合の何れにも対応でき、適用範囲の広い熱処理方法を提供することができる。
【0078】
前記熱処理方法においては、前記予備加熱処理及び前記本加熱処理は、10-2Pa以下の真空において行われることが好ましい。
【0079】
あるいは、前記予備加熱処理及び前記本加熱処理は、10-2Pa以下の真空に到達した後に不活性ガスを導入した希薄ガス雰囲気下において行われることが好ましい。
【0080】
これにより、例えば半導体プロセス等の高真空を必要とする熱処理に好適な方法を提供できる。
【0081】
前記熱処理方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記予備加熱処理及び前記本加熱処理は、上容器と下容器からなる容器に前記被処理物を収納し、前記上容器と前記下容器とを嵌合させた状態で行うものとする。この容器は、タンタルカーバイド処理を施したタンタルにより構成されている。
【0082】
これにより、容器の実質的な密閉状態が実現されて、真空又は希薄ガス雰囲気下での本加熱処理時に、容器の内圧が雰囲気に対して高く保持される。従って、不純物の容器内への侵入を防止できる。また、SiCを処理する場合に、容器の内部空間の炭素分子を、容器のタンタルカーバイド処理がされた部分に選択的に吸蔵でき、これによって容器の内部空間をシリコン飽和蒸気圧に保つことができる。従って、単結晶SiCの処理に好適な熱処理方法を提供することができる。
【0083】
前記熱処理方法においては、以下のようにすることが好ましい。即ち、前記予備加熱処理及び前記本加熱処理は、上容器と下容器からなる容器に前記被処理物を収納し、前記上容器と前記下容器とを嵌合させた状態で行うものとする。この容器は、タングステンカーバイド、タングステン、又はグラファイトの少なくとも何れかよりなる。
【0084】
これにより、容器の実質的な密閉状態が実現されて、真空又は希薄ガス雰囲気下での本加熱処理時に、容器の内圧が雰囲気に対して高く保持される。従って、不純物の容器内への侵入を防止できる。また、高温での熱処理に好適な熱処理方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る高温真空炉の全体構成を示す模式図である。
【0086】
図1に示す熱処理装置としての高温真空炉11は、加熱炉12と、ストック室13と、導入室14と、観察室15と、を備えている。
【0087】
加熱炉12は、被処理物を1,000℃以上2,400℃以下の温度に加熱するための本加熱室(第1室)21と、被処理物を500℃以上の温度に予備加熱可能な予備加熱室(第2室)22と、を備えている。予備加熱室22は本加熱室21の下方に配置され、本加熱室21に対して上下方向に隣接している。また、加熱炉12は、予備加熱室22の下方に配置された断熱室(第3室)23を備えている。この断熱室23は予備加熱室22に対して上下方向に隣接している。
【0088】
加熱炉12は真空チャンバ19を備え、前記本加熱室21と予備加熱室22は、この真空チャンバ19の内部に備えられている。真空チャンバ19には真空形成装置としてのターボ分子ポンプ34が接続されて、例えば10-2Pa以下、望ましくは10-7Pa以下の真空を真空チャンバ19内に得ることができるようになっている。ターボ分子ポンプ34と真空チャンバ19との間には、ゲートバルブ25が介設される。また、ターボ分子ポンプ34には、補助のためのロータリーポンプ26が接続される。
【0089】
加熱炉12は、予備加熱室22と本加熱室21との間で被処理物を上下方向に移動させることが可能な移動機構27を備えている。この移動機構27は、被処理物を支持可能な支持体28と、この支持体28を上下動させることが可能なシリンダ部29と、を備えている。シリンダ部29はシリンダロッド30を備え、このシリンダロッド30の一端が前記支持体28に連結されている。
【0090】
加熱炉12は、真空度を測定するための真空計31を備えている。また、加熱炉12には、質量分析法を行うための質量分析装置32が備えられる。本実施形態では、真空計31としてイオンゲージを用い、質量分析装置32として四重極型質量分析計を用いている。
【0091】
ストック室13は、加熱炉12での加熱処理前又は加熱処理後の被処理物を一時的にストックしておくためのものであり、真空チャンバ61を備えている。この真空チャンバ61には、加熱炉12と同様に、ターボ分子ポンプ34、ゲートバルブ25、及びロータリーポンプ26が備えられており、真空チャンバ61内に例えば10-2Pa以下、望ましくは10-7Pa以下の真空を得ることができるように構成されている。
【0092】
真空チャンバ61には、真空度を測定するための真空計62が備えられる。本実施形態では、真空計62としてイオンゲージが用いられている。
【0093】
真空チャンバ61内にはストッカ63が備えられている。このストッカ63は、前記被処理物を上下方向に複数並べてストックできるように構成されている。ストック室13は、ストッカ63を上下動させるための移動機構64を備えている。
【0094】
また、ストック室13は、ストッカ63にストックされた被処理物を冷却するための、図略の冷却機構を備えている。この冷却機構は、冷却水を循環させる冷却水経路等より構成されている。
【0095】
加熱炉12の真空チャンバ19と、ストック室13の真空チャンバ61は、搬送路65を通じて接続されている。この搬送路65は、ゲートバルブ66によって開閉可能になっている。
【0096】
また、ストック室13には、ストック室13と加熱炉12との間で被処理物を搬送するための搬送機構67が備えられる。この搬送機構67は、水平方向に移動可能な搬送アーム68を備えている。搬送機構67は、被処理物を搬送アーム68の先端部の上に載置した状態で、当該被処理物を、ストック室13のストッカ63上と、加熱炉12の支持体28上(予備加熱室22)との間で、搬送路65経由で水平方向に搬送することができる。
【0097】
導入室14は、大気中から高温真空炉11内に被処理物を導入するためのものであり、真空チャンバ71を備えている。この真空チャンバ71には、加熱炉12及びストック室13と同様に、ターボ分子ポンプ34、ゲートバルブ25、及びロータリーポンプ26が備えられており、真空チャンバ71内に例えば10-2Pa以下、望ましくは10-5Pa以下の真空を得ることができるように構成されている。真空チャンバ71には、真空度を測定するための真空計72が備えられる。本実施形態では、真空計72としてコンビネーションゲージが用いられている。
【0098】
真空チャンバ71内にはストッカ73が備えられている。このストッカ73は、前記被処理物を上下方向に複数並べてストックできるように構成されている。導入室14は、ストッカ73を上下動させるための移動機構74を備えている。
【0099】
導入室14は、被処理物を真空チャンバ71内に導入するための導入口75を備える。また、導入室14の真空チャンバ71と、ストック室13の真空チャンバ61とは、搬送路76を通じて接続されている。この搬送路76は、ゲートバルブ77によって開閉可能になっている。
【0100】
導入室14には、被処理物を搬送するための搬送機構78が備えられる。この搬送機構78は、水平方向に移動可能な搬送アーム79を備えている。搬送機構78は、被処理物を搬送アーム79の先端部の上に載置した状態で、当該被処理物を、導入室14のストッカ73上と、ストック室13のストッカ63上との間で、搬送路76経由で搬送することができる。
【0101】
観察室15は、被処理物を評価及び観察するためのものであり、真空チャンバ81を備えている。この真空チャンバ81には、真空度を測定するための真空計82が備えられる。本実施形態では、真空計82としてイオンゲージが用いられている。
【0102】
この観察室15には、反射高速電子線回折装置(RHEED)83等、適宜の観察装置及び評価装置が備えられる。また、観察室15には、被処理物を載置可能な昇降台84が備えられている。観察室15は、昇降台84を上下動させるための移動機構85を備えている。
【0103】
観察室15の真空チャンバ81と、ストック室13の真空チャンバ61とは、搬送路86を通じて接続されている。この搬送路86は、ゲートバルブ87によって開閉可能になっている。
【0104】
観察室15には、被処理物を搬送するための搬送機構89が備えられる。この搬送機構89は、水平方向に移動可能な搬送アーム90を備えている。搬送機構89は、被処理物を搬送アーム90の先端部の上に載置した状態で、当該被処理物を、観察室15の昇降台84上と、ストック室13のストッカ63上との間で、搬送路86経由で搬送することができる。
【0105】
次に、図2から図5までを参照して、加熱炉12の構成を説明する。図2は加熱炉及びストック室の断面図、図3は加熱炉の拡大断面図である。図4は図3のIV−IV線断面矢視図、図5は図3のV−V線断面矢視図である。
【0106】
図2及び図3に示すように、本加熱室21は真空チャンバ19の内部空間の上部に配置される。また、図4に示すように、本加熱室21は平面断面視で正六角形に形成されている。
【0107】
本加熱室21の内部には、加熱ヒータとしてのメッシュヒータ33が備えられている。図4に示すように、メッシュヒータ33は、本加熱室21の側壁に沿うように並べて配置されている。このメッシュヒータ33は例えばタングステン製とされ、正六角形状の本加熱室21の1辺につき2個ずつ、計12個配置されている。メッシュヒータ33は、タンタルカーバイド処理を施したタンタルよりなる取付ネジによって、本加熱室21の壁部に取り付けられている。この構成により、本加熱室21の中央部に配置された被処理物を、メッシュヒータ33により周囲から加熱できるようになっている。
【0108】
このメッシュヒータ33は、タングステンからなる図略のカバーによって覆われている。このカバーは、タンタルカーバイド処理を施したタンタルよりなる取付ネジによって、メッシュヒータ33に取り付けられている。これにより、後述の本加熱処理時に被処理物から発生する分子線や蒸気にメッシュヒータ33が晒されることがカバーによって防止されるので、メッシュヒータ33の寿命を延ばすことができる。
【0109】
また、このメッシュヒータ33は、正六角形状の本加熱室21の1つの辺(2個のメッシュヒータ33)ごとに、本加熱室21の外壁とともに取り外して交換することができる。この分割構成により、寿命の到来したメッシュヒータ33だけを交換することが可能になり、メンテナンス費用を低減できる。
【0110】
本加熱室21の側壁や天井には第1多層熱反射金属板41が固定され、この第1多層熱反射金属板41によって、メッシュヒータ33の熱を本加熱室21の中央部に向けて反射させるように構成されている。
【0111】
これにより、本加熱室21内において、加熱処理対象としての被処理物を取り囲むようにメッシュヒータ33が配置され、更にその外側に多層熱反射金属板41が配置されるレイアウトが実現されている。従って、被処理物を強力且つ均等に加熱し、1,000℃以上2,300℃以下の温度まで昇温させることができる。
【0112】
本加熱室21の天井側は第1多層熱反射金属板41によって閉鎖される一方、底面の第1多層熱反射金属板41には貫通孔55が形成されている。被処理物は、この貫通孔55を介して、本加熱室21と、この本加熱室21の下側に隣接する予備加熱室22との間で移動できるようになっている。
【0113】
前記貫通孔55には、移動機構27の支持体28の一部が挿入されている。この支持体28は、上から順に、第2多層熱反射金属板42、第3多層熱反射金属板43、及び第4多層熱反射金属板44を互いに間隔をあけて配置した構成となっている。
【0114】
3つの多層熱反射金属板42〜44は、何れも水平に配置されるとともに、垂直方向に設けた柱部35によって互いに連結されている。そして、第2多層熱反射金属板42及び第3多層熱反射金属板43とで挟まれたスペースに受け台36が配置され、この受け台36上に被処理物(正確には、被処理物を収納した容器2)を載置できるように構成されている。本実施形態において、この受け台36はタンタルカーバイドにより構成されている。また、受け台36は、タンタルカーバイド処理を施したタンタルよりなる取付ネジによって、支持体28を構成する部材(例えば、第3多層熱反射金属板43)に取り付けられている。
【0115】
移動機構27を構成するシリンダ部29のシリンダロッド30は、中空状に形成されている。また、このシリンダロッド30の端部にフランジが形成されて、このフランジが第4多層熱反射金属板44の下面に固定される。この構成により、前記シリンダ部29を伸縮させることで、受け台36上の被処理物(容器2)を前記3つの多層熱反射金属板42〜44とともに上下動させることができる。
【0116】
前記予備加熱室22は、本加熱室21の下側の空間を、多層熱反射金属板46で囲うことにより構成されている。図5に示すように、予備加熱室22は平面断面視で円状となるように構成されている。なお、予備加熱室22内には、前記メッシュヒータ33のような加熱手段は備えられていない。
【0117】
図3や図5に示すように、予備加熱室22の底面部においては、前記多層熱反射金属板46に貫通孔56が形成されている。また、予備加熱室22の側壁をなす多層熱反射金属板46において、前記搬送路65と対面する部位に通路孔50が形成されている。また、前記予備加熱室22は、前記通路孔50を閉鎖可能な開閉部材51と、この開閉部材51を昇降させる開閉機構52と、を備えている。
【0118】
予備加熱室22の下側で隣接する前記断熱室23は、上側が前記多層熱反射金属板46によって区画され、下側及び側部が多層熱反射金属板47によって区画されている。断熱室23の下側を覆う多層熱反射金属板47には貫通孔57が形成されて、前記シリンダロッド30を挿通できるようになっている。
【0119】
前記貫通孔57の上端部に相当する位置において、多層熱反射金属板47には収納凹部58が形成される。この収納凹部58には、前記支持体28が備える第4多層熱反射金属板44を収納可能になっている。
【0120】
多層熱反射金属板41〜44,46,47は何れも、金属板(タングステン製)を所定の間隔をあけて積層した構造になっている。前記開閉部材51においても、通路孔50を閉鎖する部分には、同様の構成の多層熱反射金属板が用いられている。
【0121】
このように高融点の金属板を積層させた構成の多層熱反射金属板は、断熱機能を有するほか、タングステンのメッシュヒータ33から放射される熱放射エネルギーを反射し、これにより加熱効果を得ることができる(反射加熱機能)。
【0122】
即ち、タングステンのメッシュヒータ33が加熱時(1,800℃〜2,600℃の高温領域)に発する波長エネルギーは、その殆どが、波長0.4μm〜3.5μmの波長領域の間に含まれている。一方、2,200℃において、タングステンの波長エネルギーのピークは約1.1μmの部分に現れ、このときのタングステンの反射率は約0.65である。また、タングステンは、比較的波長エネルギーの高い波長領域(1.1μm〜3.0μm)では、その波長が長くなるにつれて反射率が増加し、例えば波長3.0μmでは反射率は約0.8に達する。このように、清浄な高純度雰囲気でのタングステンのメッシュヒータ33に対して、タングステンは十分な反射特性を備えているということができる。
【0123】
多層熱反射金属板41〜44,46,47の材質としては、メッシュヒータ33の熱輻射に対して十分な加熱特性を有し、また、融点が雰囲気温度より高い物質であれば、任意のものを用いることができる。例えば、前記タングステンのほか、タンタル、ニオブ、モリブデン等の高融点金属材料や、タングステンカーバイド、ジリコニウムカーバイド、タンタルカーバイド、ハフニウムカーバイド、モリブデンカーバイド等の炭化物を、多層熱反射金属板41〜44,46,47として用いることができる。また、その反射面に、金やタングステンカーバイド等からなる赤外線反射膜を更に形成しても良い。
【0124】
そして、支持体28に備えられる多層熱反射金属板42〜44は、小さな貫通孔を多数有するパンチメタル構造のタングステン板を、当該貫通孔の位置を異ならせつつ所定の間隔をあけて積層した構造になっている。
【0125】
また、支持体28の最も上層に備えられる第2多層熱反射金属板42の積層枚数は、本加熱室21の第1多層熱反射金属板41の積層枚数よりも少なくなっている。
【0126】
また、これらの多層熱反射金属板41〜44,46,47は、タンタルカーバイド処理を施したタンタルよりなる取付ネジによって、本加熱室21や予備加熱室22等の壁部に固定されている。このように、前記メッシュヒータ33、それを覆うカバー、受け台36、及び多層熱反射金属板41〜44,46,47を他の部材へ取り付ける固定手段として、タンタルカーバイド処理を施したタンタルよりなる取付ネジを使用することによって、固定部分でネジが焼き付くことがなく、メンテナンス作業を簡単に行うことができる。
【0127】
本加熱室21に設けられる前記第1多層熱反射金属板41においては、積層される金属板と金属板との間に、温度検知部としての熱電対37が複数設置されている(図4を参照)。これにより、本加熱室21内の温度分布を正確に把握してメッシュヒータ33をフィードバック制御することができる。従って、本加熱室21の温度を、予め設定された温度プロフィルに従って正確に上昇又は下降させる制御も可能になる。また、従来の放射温度計及びビューポートによる温度検知制御と比較して、チャンバのビューポートの曇りによって測温不可能となることがなく、信頼性の高い温度制御を実現できる。
【0128】
次に、図7等を参照しつつ、この高温真空炉11において被処理物を収納するために用いられる容器2について説明する。図7は容器の上容器と下容器とを取り外した状態の斜視図である。図8は容器内に被処理物がセットされた様子を示す模式断面図である。
【0129】
この容器2は、図7に示す構成の上容器2aと下容器2bとを嵌め合わせることにより構成されている。本実施形態において、容器2は円筒状に構成されているが、これは一例であって、例えば六面体状に構成されていても良い。
【0130】
前記上容器2a及び下容器2bは、タンタルカーバイド処理を施したタンタルから構成されている。この結果、図8に示すように、容器2の表面にはタンタルカーバイド層3が形成されている。このタンタルカーバイド層3のうち、上容器2a及び下容器2bの内面を覆う部分は、容器2の内部空間に露出している。
【0131】
容器2の内部空間には、処理対象(被処理物)としての単結晶SiC基板1が配置されている。この単結晶SiC基板1の結晶構造としては、例えば、6H−SiC又は4H−SiCとすることが考えられる。また、容器2の内部には、Si供給源としてのシリコンペレット5が配置されている。
【0132】
単結晶SiC基板1と下容器2bの内底面との間には、スペーサ4が介在される。このスペーサ4によって、単結晶SiC基板1の上面及び下面の両方が、容器2の内部空間に対し十分に露出した状態となっている。
【0133】
上容器2aと下容器2bとを図8に示すように嵌め合わせたときの嵌合部分の遊びは、約2mm以下であることが好ましい。これによって実質的な密閉状態が実現され、本加熱室21での加熱処理工程において容器2内のSi圧力を高めて外部圧力(本加熱室21内の圧力)よりも高い圧力とし、不純物がこの嵌合部分を通じて容器2内に侵入するのを防止できる。
【0134】
以上の構成の容器2を、図1に示す導入室14の導入口75から真空チャンバ71内に入れ、ストッカ73上に載置する。そして、この状態からターボ分子ポンプ34を駆動し、真空チャンバ71の内部を真空とする。
【0135】
なお、加熱炉12の真空チャンバ19、及びストック室13の真空チャンバ61については、予め10-2Pa以下、望ましくは10-7Pa以下の真空状態としておく。あるいは、予め10-2Pa以下、望ましくは10-7Pa以下の真空に到達した後に不活性ガスを導入した希薄ガス雰囲気下としても良い。また、加熱炉12の移動機構27を予め駆動して、支持体28を下降させた状態にしておく。また、開閉機構52を駆動して開閉部材51を下降させ、予備加熱室22の前記通路孔50を開いておく。
【0136】
次に、図1のゲートバルブ77を開き、搬送機構78を駆動して、導入室14の容器2をストック室13のストッカ63上に搬送した後、ゲートバルブ77を閉じる。次に、ゲートバルブ66を開き、搬送機構67を駆動して、前記容器2を予備加熱室22内(支持体28が備える受け台36上)へ搬送した後、ゲートバルブ66を閉じる。このように、予備加熱室22の側壁に設けられる多層熱反射金属板46に通路孔50を設けることで、簡素な構成で、予備加熱室22に対する容器2の出し入れを実現できる。
【0137】
次に、前記開閉機構52を駆動して開閉部材51を上昇させ、前記通路孔50を閉鎖する。この状態では、図3に示すように、支持体28の第2多層熱反射金属板42が貫通孔55を閉鎖し、予備加熱室22と本加熱室21とを仕切るように位置する。また、第3多層熱反射金属板43が貫通孔56を閉鎖し、予備加熱室22と断熱室23とを仕切るように位置する。更に、第4多層熱反射金属板44が貫通孔57及び収納凹部58を閉鎖し、断熱室23とその外部の空間とを仕切るように位置する。
【0138】
この状態でメッシュヒータ33を駆動すると、本加熱室21が1,000℃以上2,400℃以下の所定の温度に加熱される。ここで、支持体28の第2多層熱反射金属板42の積層枚数は、前記第1多層熱反射金属板41の積層枚数よりも少なくなっている。従って、メッシュヒータ33が発生する熱の一部が第2多層熱反射金属板42を介して予備加熱室22に適度に供給(分配)され、予備加熱室22内の容器2(被処理物)を例えば500℃以上の所定の温度となるように予備加熱することができる。即ち、予備加熱室にヒータを設置しなくても予備加熱を実現でき、予備加熱室の簡素な構造が実現できている。
【0139】
またこのとき、第3多層熱反射金属板43が予備加熱室22の下側の貫通孔56を閉鎖しており、この前記第3多層熱反射金属板43は前述のとおりパンチメタル板の積層構造となっている。同様に、断熱室23の下側の貫通孔57を閉鎖する第4多層熱反射金属板44も、パンチメタル板の積層構造となっている。
【0140】
従って、第3多層熱反射金属板43の部分で熱を良好に反射させ、予備加熱室22内の被処理物を効率良く予備加熱し、脱ガス処理を行うことができる。また、予備加熱時に容器2内の被処理物から出るガスは、第3多層熱反射金属板43及び第4多層熱反射金属板44のパンチメタルの貫通孔を通じて、予備加熱室22及び断熱室23の外部へ容易に排気することができる。
【0141】
更に、この予備加熱時に前記通路孔50が開閉部材51によって閉鎖されるので、予備加熱室22の熱ロスを低減できる。また、支持体28の第4多層熱反射金属板44に連結されているシリンダロッド30は、断熱室23を挟んで予備加熱室22と反対側に位置している。従って、予備加熱室22等の熱がシリンダロッド30を伝わって逃げるロスを断熱室23によって効果的に低減でき、シリンダロッド30の熱損傷も防止できる。
【0142】
上記の予備加熱処理を所定時間行った後、シリンダ部29を駆動し、支持体28を上昇させる。この結果、図6に示すように、容器2(及び、内部の被処理物)が下側から貫通孔55を通過して本加熱室21内に移動する。これにより、直ちに本加熱処理が開始され、本加熱室21内の容器(被処理物)を所定の温度(1,000℃以上2,400℃以下の温度)に急速に昇温させることができる。
【0143】
この図6の状態では、支持体28の第3多層熱反射金属板43が貫通孔55を閉鎖し、予備加熱室22と本加熱室21とを仕切るように位置する。従って、本加熱室21内の被処理物を効率良く予備加熱することができる。また、支持体28の第4多層熱反射金属板44が貫通孔56を閉鎖するので、予備加熱室22から熱が逃げるのを防止し、本加熱室21での効率的な加熱を実現している。更に、この第4多層熱反射金属板44は第3多層熱反射金属板43と同様にパンチメタル構造であるので、ガスを予備加熱室22の外部へ良好に排気できる。
【0144】
上記の本加熱処理を所定時間行った後、メッシュヒータ33による加熱を停止するとともに、移動機構27を駆動し、支持体28を下降させる。この結果、図3に示すように、容器2が予備加熱室22内に移動し、急速に冷却される。この状態で所定時間冷却した後、開閉部材51及びゲートバルブ66が開かれるとともに図1の搬送機構67が駆動され、受け台36上の容器2がストック室13のストッカ63上に搬送された後、ゲートバルブ66が閉じられる。
【0145】
処理後の容器2はストック室13内で図略の冷却機構により更に冷却された後、観察室15に搬送されて評価及び観察が行われたり、導入室14に搬送されて導入口75から取り出されて次工程へ送られたりする。
【0146】
以上のプロセスにおける被処理物の温度変化を図9に示す。このグラフで示すように、予備加熱室22から本加熱室21に容器2が移動し、本加熱処理が開始されると同時に、被処理物が急速な昇温カーブで加熱されることが判る。
【0147】
この本加熱処理では、容器2内(図8)の内部に設置したシリコンペレット5からのシリコン蒸気の蒸発により、容器2の内部空間はシリコン飽和蒸気圧に保たれ、このために単結晶SiC基板1の表面からのシリコン分子の蒸発が抑制される。また、容器2の内部空間にはタンタルカーバイド層3が露出しているため、単結晶SiC基板1から蒸発して容器2の内部空間に存在するシリコン蒸気及び炭素蒸気の中から、炭素分子だけが選択的に容器2の表面のタンタルカーバイド層3に取り込まれる。
【0148】
この結果、容器2の内部空間は、単結晶SiC基板1の表面からシリコン蒸気が蒸発しにくい一方、炭素蒸気が蒸発し易い雰囲気に保たれる。この結果、単結晶SiC基板1の表面からシリコン蒸気と炭素蒸気がほぼ同時に蒸発する。加えて、炭素分子は選択的に容器2の表面のタンタルカーバイド層3に取り込まれるので、容器2の内部空間はシリコン蒸気圧が常に高く保たれ自動的にシリコン飽和蒸気圧に保たれる。以上により、単結晶SiC基板1の表面を、シリコン蒸発による荒れが生じていない極めて平坦な表面とすることができる。
【0149】
本実施形態の高温真空炉11によれば、図9に示すような鋭い昇温カーブが実現されるとともに、単結晶SiC基板1を均一に加熱することができる。
【0150】
即ち、図9に示す温度制御及び被処理物の搬送制御の例は、単結晶SiC基板の気相処理条件に関して最適なプロセス環境をもたらすものである。この図9に示す処理は、具体的には以下のように行われる。即ち、予備加熱室22に被処理物を搬入し、500℃以上1,000℃以下の温度に予備加熱する(予備加熱処理)。そして、予備加熱室22から前記本加熱室21へ被処理物を移動させるとともに、本加熱室21を1,000℃以上2,400℃以下の任意の温度に維持することにより、鋭い温度勾配で被処理物を、1,000℃以上2,400℃以下の任意の温度まで急速に加熱する(本加熱処理)。本加熱終了後に、本加熱室21から予備加熱室22へ被処理物を移動させ、これにより、鋭い温度勾配で被処理物を冷却する(冷却処理)。
【0151】
なお、このように急激な温度勾配で被処理物の温度を上昇又は下降させる熱処理は、様々な熱処理に適用することができる。例えば、被処理物としての単結晶SiC基板の表面に多結晶SiC基板を極めて近接させた状態で配置したものをタンタルカーバイドの坩堝(容器)に収納して、予備加熱室22内で例えば800℃に予備加熱する。その後、前記本加熱室21へ坩堝を移動させることで、坩堝内をシリコン飽和蒸気圧雰囲気とし、数分間で例えば2,000℃まで加熱する。この2,000℃の状態で10分程度加熱処理すると、単結晶SiC基板表面に単結晶SiC薄膜を気相エピタキシャル成長させることができる。その後、本加熱室21から予備加熱室22へ坩堝を移動させることで急速に冷却した後、加熱炉12の外部へ搬出する。このような超近接昇華法ともいうべき気相プロセスを行う場合、本実施形態の高温真空炉11を使用して上述のような短時間での加熱及び短時間での冷却を行うと、無欠陥の単結晶SiC薄膜を短時間で得ることができ、極めて好適である。
【0152】
他の熱処理としては、例えば、単結晶SiC基板をタンタルカーバイドの坩堝(容器)に収納して、予備加熱室22内で例えば800℃に予備加熱する。その後、前記本加熱室21へ坩堝を移動させることで、坩堝内をシリコン飽和蒸気圧雰囲気とし、例えば2,000℃の温度で10分程度加熱処理すると、単結晶SiC基板表面が熱エッチングされ、基板表面を原子レベルで平坦化することができる。その後、本加熱室21から予備加熱室22へ坩堝を移動させることで急速に冷却した後、加熱炉12の外部へ搬出する。このような気相プロセスにも、本実施形態の高温真空炉11を使用して、上述したような短時間での高温加熱及び短時間での冷却を行うことが好適である。これにより、単結晶SiC基板の表面改質を熱エッチングで効率良く行うことができるとともに、その表面改質の品質は上述のとおり原子レベルに平坦であり、更に均一なモフォロジーが形成されるので、表面状態を極めて良好とすることができる。この結果、例えば、機械化学研磨(CMP)工程を不要とすることができる。
【0153】
ただし、被処理物を本加熱室21へ移動させることで急激に昇温させる代わりに、以下のような形態で熱処理を行っても良い。即ち、予備加熱室22から本加熱室21へ被処理物を移動させた後に、設定された温度プロフィルに従って本加熱室21の温度を制御することで、被処理物を1,000℃以上2,400℃以下の温度に加熱する。また、本加熱処理の終了後は、設定された温度プロフィルに従って前記本加熱室21の温度を制御することで、前記本加熱室21内の被処理物を冷却するようにするのである。なお、冷却は、ある程度の温度まで本加熱室21で所定の温度プロフィルに従って冷却処理を行い、その後に、予備加熱室22へ被処理物を移動させることで第2次冷却処理を行うようにしても良い。
【0154】
例えば、単結晶SiC基板表面と多結晶SiC基板との間にシリコンプレートを介在させたものを、タンタルカーバイドからなる坩堝(容器)に収納して、予備加熱室22で例えば800℃に予備加熱する。続いて、前記本加熱室21へ坩堝を移動させる。その後、所定の温度プロフィルに従って、本加熱室21の温度を約1時間程度の時間を掛けて上昇させ、2,000℃に到達してから約10時間程度の高温処理を行う。すると、坩堝内がシリコン飽和蒸気圧雰囲気となり、かつ、単結晶SiC基板と多結晶SiC基板との間にシリコン溶融液が介在されて、単結晶SiC基板表面に単結晶SiCを液相エピタキシャル成長させることができる。その後、所定の温度プロフィルに従って、本加熱室21の温度を約1時間程度の時間を掛けて下降させ、800℃に到達した時点で前記予備加熱室22へ移動させ、加熱炉12の外部へ搬出する。このような液相プロセスを行う場合、温度勾配が緩やかな温度プロフィルを本実施形態の高温真空炉11に設定して、長時間をかけて被処理物を加熱及び冷却することが、単結晶SiC液相エピタキシャル成長膜の歪を防止できる点で極めて有効である。
【0155】
以上に本願発明の好適な実施形態を説明したが、以上の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0156】
図10に加熱炉の例の模式図を示す。なお、以下の説明において、前記実施形態と同一又は類似する部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0157】
図10に示す加熱炉12においては、支持体28の下端部に位置する前記第4多層熱反射金属板44に、シリンダロッド30の先端が、温度絶縁体38を介して連結されている。この構成により、本加熱室21や予備加熱室22の熱がシリンダロッド30を伝わって逃げるロスを温度絶縁体38によっても低減できている。
【0158】
また、図3等においては図示を省略したが、図10で示すように、本加熱室21において、前記被処理物(容器2)の本加熱処理時の位置の周囲にシールド39が備えられても良い。このシールド39は、例えばタングステン、モリブデン、又はタンタルからなり、円筒状に形成されている。この構成によれば、本加熱処理時に被処理物から発生する分子線やガスにメッシュヒータ33が晒されることがシールド39によって防止されるので、メッシュヒータ33の寿命を延ばすことができる。このシールド39は、移動機構27の支持体28側に(被処理物とともに移動可能に)備えられても良く、この場合でも上記と同様の効果を発揮することができる。シールド39を他の部材に取り付けるには、タンタルカーバイド処理を施したタンタルよりなる取付ネジを用いるのが、高温環境での焼き付きを防止できる点で好ましい。
【0159】
図11に加熱炉の別の例の模式図を示す。この図11の加熱炉12においては、断熱室23の下側に第2断熱室(第4室)24を更に配置している。この第2断熱室24は、その上側を多層熱反射金属板47によって覆われ、側部及び下側を多層熱反射金属板48によって覆われている。移動機構27の支持体28は、第4多層熱反射金属板44の下側に、更にパンチメタル構造の第5多層熱反射金属板45を備えている。この第5多層熱反射金属板45は、他の多層熱反射金属板42〜44と同様に、被処理物とともに移動可能とされている。そして、この第5多層熱反射金属板45に前記シリンダロッド30が温度絶縁体38を介して連結されている。
【0160】
図11は予備加熱処理時の様子を示し、このとき、多層熱反射金属板47に形成されている貫通孔59は、支持体28が備える第4多層熱反射金属板44によって閉鎖されて、断熱室23と第2断熱室24との間が第4多層熱反射金属板44によって隔てられる。また、多層熱反射金属板48に形成されている貫通孔57及び収納凹部58は、支持体28が備える第5多層熱反射金属板45によって閉鎖されて、第2断熱室24とその外部の空間とが第5多層熱反射金属板45によって隔てられる。従って、予備加熱時においては断熱室23及び第2断熱室24の閉鎖状態が実現され、2つの断熱室の断熱効果によって一層の熱効率向上が図られる。
【0161】
また、図11の状態から支持体28を上昇させた本加熱処理時では、多層熱反射金属板46の貫通孔56が第4多層熱反射金属板44によって閉鎖され、多層熱反射金属板47の貫通孔59が第5多層熱反射金属板45によって閉鎖される。従って、この図11の構成では本加熱処理時においても断熱室23の閉鎖状態が実現されて、その断熱効果によって熱効率を一層上昇させることができる。また、本加熱処理時ではシリンダロッド30が前記断熱室23を挟んで予備加熱室22と反対側に位置するので、シリンダロッド30の熱損傷を効果的に防止できる。
【0162】
予備加熱室22に通路孔50を設ける構成に代えて、例えば以下の構成とすることができる。即ち、予備加熱室22の多層熱反射金属板46を例えば水平方向(又は上下方向)に分割した構成とし、分割された一部又は全部が移動することで多層熱反射金属板46の間に隙間(通路空間)を形成できるようにする。この場合、前記通路空間を通じて、予備加熱室22に対して被処理物を出し入れすることができる。
【0163】
予備加熱室22に対して被処理物(容器2)を出し入れする搬送機構は、搬送アーム68を用いたものに限定されない。例えば、水平な回転テーブルを有する回転テーブル式の搬送機構に変更することができる。
【0164】
被処理物(容器2)が本加熱室21内にあるときに、シリンダロッド30の先端を支持体28に対して切離し可能に構成することもできる。なお、シリンダロッド30を切り離す前に、前記支持体28は適宜の機構によって本加熱室21側に保持しておく。この構成によれば、シリンダロッド30を介した熱ロスやシリンダロッド30の熱損傷を大幅に抑制することができる。
【0165】
受け台36は、タンタルカーバイドで構成されることに代えて、例えばタングステンカーバイド、タングステン、又はグラファイトからなるように変更することができる。
【0166】
前記メッシュヒータ33は、タングステンで構成されることに代えて、例えばモリブデン又はタンタルからなるように変更することができる。
【0167】
メッシュヒータ33を覆う図略のカバーは、タングステンで構成されることに代えて、例えばモリブデン又はタンタルからなるように変更することができる。
【0168】
熱処理で用いる容器2は、タンタルカーバイド処理されたタンタルによって構成されることに代えて、例えばタンタルカーバイド、(タンタルカーバイド処理なしの)タンタル、タングステンカーバイド、タングステン、又はグラファイトからなるように変更することができる。
【0169】
上記実施形態の熱処理は、単結晶SiC基板1に関する熱処理に限らず、他の様々な化学変化及び物理変化を被処理物に生じさせるために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明の一実施形態に係る高温真空炉の全体構成を示す模式図。
【図2】加熱炉及びストック室の構成を示す断面図。
【図3】加熱炉において、被処理物を収納した容器を予備加熱室に移動させ、予備加熱処理を行っている様子を詳細に示す断面拡大図。
【図4】図3のIV−IV線断面矢視図。
【図5】図3のV−V線断面矢視図。
【図6】図3の状態から容器を本加熱室へ移動させ、本加熱処理を行っている様子を示す断面拡大図。
【図7】加熱処理に使用される容器の上容器と下容器を取り外した状態を示す斜視図。
【図8】容器内の被処理物の配置例を示す断面図。
【図9】予備加熱処理及び本加熱処理の温度制御と被処理物の移動の例を示すグラフ。
【図10】加熱炉の他の例において予備加熱処理が行われる様子を示す模式断面図。
【図11】加熱炉の更に他の例において予備加熱処理が行われる様子を示す模式断面図。
【符号の説明】
【0171】
1 単結晶SiC基板(試料、被処理物)
2 容器
11 高温真空炉(熱処理装置)
12 加熱炉
13 ストック室
19 真空チャンバ
21 本加熱室(第1室)
22 予備加熱室(第2室)
23 断熱室(第3室)
24 第2断熱室(第4室)
27 移動機構
28 支持台
29 シリンダ部
30 シリンダロッド
33 メッシュヒータ(加熱ヒータ)
41 第1多層熱反射金属板
42 第2多層熱反射金属板
43 第3多層熱反射金属板
44 第4多層熱反射金属板
45 第5多層熱反射金属板
46〜48 多層熱反射金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を1,000℃以上2,400℃以下の温度に加熱するための第1室と、
この第1室に隣接する第2室と、
この第2室と前記第1室との間で前記被処理物を移動させるための移動機構と、
を備え、
前記第1室の内部には、前記被処理物を周囲から加熱できるように配置される加熱ヒータと、この加熱ヒータの熱を前記被処理物に向けて反射するように配置される第1多層熱反射金属板と、が備えられ、
前記移動機構は、前記被処理物とともに移動可能な第2多層熱反射金属板を備え、
前記被処理物が前記第2室内にあるときには、前記第2多層熱反射金属板が前記第1室と前記第2室とを隔てるように位置し、前記加熱ヒータから発生する熱の一部が前記第2多層熱反射金属板を介して前記第2室に供給されて、これにより当該第2室内の被処理物を予備加熱することが可能に構成されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理装置であって、
前記第2多層熱反射金属板の積層枚数は、前記第1多層熱反射金属板の積層枚数よりも少ないことを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱処理装置であって、
前記移動機構は、前記被処理物とともに移動可能な第3多層熱反射金属板を備え、
前記被処理物が前記第2室内にあるときには、前記第3多層熱反射金属板が前記第2室とその外部とを隔てるように位置し、
前記被処理物が前記第1室内にあるときには、前記第3多層熱反射金属板が前記第1室と前記第2室とを隔てるように位置することを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の熱処理装置であって、
前記第3多層熱反射金属板は、多数の貫通孔を有する金属板を、当該貫通孔の位置を異ならせながら積層して構成されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の熱処理装置であって、
前記移動機構は、前記被処理物とともに移動可能な第4多層熱反射金属板を備え、
前記被処理物が前記第1室内にあるときには、前記第4多層熱反射金属板が前記第2室とその外部とを隔てるように位置することを特徴とする熱処理装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の熱処理装置であって、
多層熱反射金属板に囲われた第3室を、前記第2室の外側に隣接させて備え、
前記移動機構は、前記被処理物とともに移動可能な第4多層熱反射金属板を備え、
前記被処理物が前記第1室内にあるときには、前記第4多層熱反射金属板が前記第2室と前記第3室とを隔てるように位置することを特徴とする熱処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の熱処理装置であって、
前記被処理物が前記第2室内にあるときには、前記第4多層熱反射金属板が前記第3室とその外部とを隔てるように位置することを特徴とする熱処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の熱処理装置であって、
前記第4多層熱反射金属板にはロッドが連結されており、
このロッドは、前記被処理物が前記第2室内にあるときには、前記第3室を挟んで前記第2室と反対側に位置することを特徴とする熱処理装置。
【請求項9】
請求項5から8までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記第4多層熱反射金属板は、多数の貫通孔を有する金属板を、当該貫通孔の位置を異ならせながら積層して構成されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の熱処理装置であって、
前記移動機構は、前記被処理物とともに移動可能な第5多層熱反射金属板を備え、
前記被処理物が前記第1室内にあるときは、前記第5多層熱反射金属板が前記第3室とその外部とを隔てるように位置することを特徴とする熱処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の熱処理装置であって、
多層熱反射金属板に囲われた第4室を、前記第3室の外側に隣接させて備え、
前記被処理物が前記第2室内にあるときには、前記第5多層熱反射金属板が前記第4室とその外部とを隔てるように位置することを特徴とする熱処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の熱処理装置であって、
前記第5多層熱反射金属板にはロッドが連結されており、
このロッドは、前記被処理物が前記第1室内にあるときには、前記第3室を挟んで前記第2室と反対側に位置することを特徴とする熱処理装置。
【請求項13】
請求項1から12までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記第2室内の被処理物を500℃以上の温度に予備加熱できることを特徴とする熱処理装置。
【請求項14】
請求項1から13までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記移動機構は、前記被処理物を支持する支持体と、この支持体に連結されるロッドと、を備え、
前記ロッドは、温度絶縁体を介して前記支持体に連結されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項15】
請求項1から14までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記移動機構は、前記被処理物を支持する支持体と、この支持体に連結されるロッドと、を備え、
前記被処理物が前記第1室内にあるときに、前記ロッドと前記支持体との連結を切離し可能に構成されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項16】
請求項15に記載の熱処理装置であって、
前記第2室は多層熱反射金属板を備え、この多層熱反射金属板には通路孔が形成されて、この通路孔を通じて前記第2室に対し被処理物を出し入れ可能に構成したことを特徴とする熱処理装置。
【請求項17】
請求項16に記載の熱処理装置であって、前記通路孔を開閉可能な開閉部材が設けられていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項18】
請求項14に記載の熱処理装置であって、
前記第2室は多層熱反射金属板を備え、この多層熱反射金属板の少なくとも一部が移動することで通路空間を形成可能に構成され、
この通路空間を通じて、前記第2室に対し被処理物を出し入れ可能に構成したことを特徴とする熱処理装置。
【請求項19】
請求項1から18までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記第2室に対し被処理物を出し入れ可能な搬送機構を備え、
この搬送機構はアームを備え、このアームによって被処理物を搬送するように構成されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項20】
請求項1から19までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記第2室に対し被処理物を出し入れ可能な搬送機構を備え、
この搬送機構は回転テーブル式に構成されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項21】
請求項1から20までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
被処理物を上下方向に並べて複数ストックすることが可能なストック室と、
被処理物を前記第2室と前記ストック室との間で水平方向に搬送可能な搬送機構と、
を備え、
前記第2室は前記第1室に対し上下方向に隣接していることを特徴とする熱処理装置。
【請求項22】
請求項21に記載の熱処理装置であって、
前記ストック室は、当該ストック室にストックされる被処理物を冷却するための冷却機構を備えていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項23】
請求項1から22までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
被処理物を大気中から装置内に導入するための導入室を備え、
この導入室に導入された被処理物を前記第2室に搬送可能に構成されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項24】
請求項1から23までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記第1室は、10-2Pa以下の真空とすることが可能に構成されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項25】
請求項1から23までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記第1室は、10-2Pa以下の真空に到達した後に不活性ガスを導入した希薄ガス雰囲気下とすることが可能に構成されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項26】
請求項1から25までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記移動機構は、前記被処理物を載置するための受け台を備え、
この受け台は、タンタルカーバイド、タングステンカーバイド、タングステン、タンタル、モリブデン又はグラファイトの少なくとも何れかよりなることを特徴とする熱処理装置。
【請求項27】
請求項26に記載の熱処理装置であって、
前記受け台は、タンタルカーバイド処理を施したタンタルよりなる固定ネジによって他の部材に固定されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項28】
請求項1から27までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記加熱ヒータは、タングステン、モリブデン、又はタンタルの少なくとも何れかよりなることを特徴とする熱処理装置。
【請求項29】
請求項28に記載の熱処理装置であって、
前記加熱ヒータは、タンタルカーバイド処理を施したタンタルよりなる取付ネジによって他の部材に固定されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項30】
請求項1から29までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記加熱ヒータは、タングステン、モリブデン、又はタンタルの少なくとも何れかよりなるカバーによって覆われていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項31】
請求項30に記載の熱処理装置であって、
前記カバーは、タンタルカーバイド処理を施したタンタルよりなる取付ネジによって他の部材に固定されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項32】
請求項1から31までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記第1多層熱反射金属板及び第2多層熱反射金属板は、タングステンカーバイド、タングステン、タンタル又はモリブデンの少なくとも何れかよりなることを特徴とする熱処理装置。
【請求項33】
請求項32に記載の熱処理装置であって、
前記第1多層熱反射金属板又は第2多層熱反射金属板の少なくとも何れか一方は、タンタルカーバイド処理を施したタンタルよりなる取付ネジによって他の部材に固定されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項34】
請求項1から33までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記移動機構において、被処理物の周囲に、タングステン、モリブデン、又はタンタルの少なくとも何れかよりなるシールドが配置されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項35】
請求項34に記載の熱処理装置であって、
前記シールドは、タンタルカーバイド処理を施したタンタルよりなる取付ネジによって他の部材に固定されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項36】
請求項1から35までの何れか一項に記載の熱処理装置であって、
前記第1多層熱反射金属板において、積層されている金属板の間に温度検知部が配置されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項37】
請求項1から36までの何れか一項に記載の熱処理装置を用いて被処理物を熱処理する熱処理方法であり、
前記第2室で被処理物を500℃以上1,000℃以下の温度に予備加熱する予備加熱処理と、
前記第2室から前記第1室へ被処理物を移動させることで、前記第1室において被処理物を1,000℃以上2,400℃以下の温度に加熱する本加熱処理と、
この本加熱処理の終了後に、前記第1室から前記第2室へ被処理物を移動させることで被処理物を冷却する冷却処理と、
を行うことを特徴とする熱処理方法。
【請求項38】
請求項1から36までの何れか一項に記載の熱処理装置を用いて被処理物を熱処理する熱処理方法であり、
前記第2室で被処理物を500℃以上1,000℃以下の温度に予備加熱する予備加熱処理と、
前記第2室から前記第1室へ被処理物を移動させた後に、設定された温度プロフィルに従って前記第1室の温度を制御することで、被処理物を1,000℃以上2,400℃以下の温度に加熱する本加熱処理と、
この本加熱処理の終了後に、設定された温度プロフィルに従って前記第1室の温度を制御することで、前記第1室内の被処理物を冷却する冷却処理と、
を行うことを特徴とする熱処理方法。
【請求項39】
請求項37又は38に記載の熱処理方法であって、
前記予備加熱処理及び前記本加熱処理は、10-2Pa以下の真空において行われることを特徴とする熱処理方法。
【請求項40】
請求項37又は38に記載の熱処理方法であって、
前記予備加熱処理及び前記本加熱処理は、10-2Pa以下の真空に到達した後に不活性ガスを導入した希薄ガス雰囲気下において行われることを特徴とする熱処理方法。
【請求項41】
請求項39又は40に記載の熱処理方法であって、
前記予備加熱処理及び前記本加熱処理は、上容器と下容器からなる容器に前記被処理物を収納し、前記上容器と前記下容器とを嵌合させた状態で行うものとし、
この容器は、タンタルカーバイド処理を施したタンタルにより構成されていることを特徴とする熱処理方法。
【請求項42】
請求項39又は40に記載の熱処理方法であって、
前記予備加熱処理及び前記本加熱処理は、上容器と下容器からなる容器に前記被処理物を収納し、前記上容器と前記下容器とを嵌合させた状態で行うものとし、
この容器は、タングステンカーバイド、タングステン、又はグラファイトの少なくとも何れかよりなることを特徴とする熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−7193(P2009−7193A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168708(P2007−168708)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/大面積SiC革新的基盤技術の研究開発」に関する業務委託研究,産業活力再生特別処置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(503092180)学校法人関西学院 (71)
【Fターム(参考)】