説明

ハイドライド気相成長法による平坦で低転位密度のm面窒化ガリウムの成長

【課題】非常に平坦性で完全な透明性と鏡面性をもつm面窒化ガリウム(GaN)膜を成長する方法。
【解決手段】本方法は、選択横方向成長技術によって構造欠陥密度の大幅な低減を実現する。高品質で、一様で、厚いm面GaN膜は分極のないデバイスの成長のための基板として用いるために作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は米国特許法第119条(e)に基づいて、本発明の譲受人に譲渡された以下の同時係属の米国特許出願の利益を主張するものである。
【0002】
ベンジャミン・A.ハスケル(Benjamin A. Haskell)、メルヴィン B.マクローリン(Melvin B. McLaurin)、スティーブン・P.デンバース(Steven P. DenBaars)、ジェームス・S.スペック(James S. Speck)、中村修二(Shuji Nakamura)による米国特許仮出願第60/576,685号、2004年6月3日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による平坦で低転位密度のm面窒化ガリウムの成長( GROWTH OF PLANAR REDUCED DISLOCATION DENSITY M−PLANE GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.119−US−P1
この出願は参照として本明細書中に組み込まれる。
【0003】
本出願は米国特許法第119、120及び/または365条に基づいて、本発明の譲受人に譲渡された以下7つの同時係属出願の一部継続出願であり、その利益を主張するものである。
【0004】
(1)ベンジャミン・A.ハスケル、マイケル・D.クレイブン(Michael D.Craven)、ポール・T.フィニ(Paul T. Fini)、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、中村修二による国際特許出願第PCT/US03/21918号、2003年7月15日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による転位密度の低い無極性窒化ガリウムの成長(GROWTH OF REDUCED DISLOCATION DENSITY NON−POLAR GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.93−WO−U1(2003−224−2)。この出願は、ベンジャミン・A.ハスケル、マイケル・D.クレイブン、ポール・T.フィニ、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、中村修二による米国特許仮出願第60/433,843号、2002年12月16日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による転位密度の低い無極性窒化ガリウムの成長( GROWTH OF REDUCED DISLOCATION DENSITY NON−POLAR GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.93−US−P1(2003−224−1)の優先権を主張する。
【0005】
(2)ベンジャミン・A.ハスケル、ポール・T.フィニ、松田成正(Shigemasa Matsuda)、マイケル・D.クレイブン、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、中村修二による国際特許出願第PCT/US03/21916号、2003年7月15日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による平坦な無極性a面窒化ガリウムの成長(GROWTH OF PLANAR,NON−POLAR A−PLANE GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.94−WO−U1(2003−225−2)。この出願は、ベンジャミン・A.ハスケル、ポール・T.フィニ、松田成正、マイケル・D.クレイブン、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、中村修二による米国特許仮出願第60/433,844号、2002年12月16日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による平坦な無極性a面窒化ガリウムの成長技術(TECHNIQUE FOR THE GROWTH OF PLANAR,NON−POLAR A−PLANE GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.94−US−P1(2003−225−1)の優先権を主張する。
【0006】
(3)マイケル・D.クレイブン、ジェームス・S.スペックによる米国特許出願第10/413,691号、2003年4月15日出願、発明の名称「有機金属気相成長法によって成長させた非極性a面窒化ガリウム薄膜(NON−POLAR A−PLANE GALLIUM NITRIDE THIN FILMS GROWN BY METALORGANIC CHEMICAL VAPOR DEPOSITION)」、代理人識別番号30794.100−US−U1(2002−294−2)。この出願は、マイケル・D.クレイブン、ステーシア・ケラー(Stacia Keller)、スティーブン・P.デンバース、タル・マーガリス(Tal Margalith)、ジェームス・S.スペック、中村修二、ウメシュ・K.ミシュラ(Umesh K. Mishra)による米国特許仮出願第60/372,909号、2002年4月15日出願、発明の名称「非極性窒化ガリウム系薄膜およびヘテロ構造材料(NON−POLAR GALLIUM NITRIDE BASED THIN FILMS AND HETEROSTRUCTURE MATERIALS)」、代理人識別番号30794.95−US−P1(2002−294/301/303)の優先権を主張する。
【0007】
(4)マイケル・D.クレイブン、ステーシア・ケラー、スティーブン・P.デンバース、タル・マーガリス、ジェームス・S.スペック、中村修二、ウメシュ・K.ミシュラによる米国特許出願第10/413,690号、2003年4月15日出願、発明の名称「非極性(Al、B、In、Ga)N量子井戸およびヘテロ構造材料およびデバイス(NON−POLAR (Al,B,In,Ga)N QUANTUM WELL AND HETEROSTRUCTURE MATERIALS AND DEVICES)」、代理人識別番号30794.101−US−U1(2002−301−2)。この出願は、マイケル・D.クレイブン、ステーシア・ケラー、スティーブン・P.デンバース、タル・マーガリス、ジェームス・S.スペック、中村修二、ウメシュ・K.ミシュラによる米国特許仮出願第60/372,909号、2002年4月15日出願、発明の名称「非極性窒化ガリウム系薄膜およびヘテロ構造材料(NON−POLAR GALLIUM NITRIDE BASED THIN FILMS AND HETEROSTRUCTURE MATERIALS)」、代理人識別番号30794.95−US−P1(2002−294/301/303)の優先権を主張する。
【0008】
(5)マイケル・D.クレイブン、ステーシア・ケラー、スティーブン・P.デンバース、タル・マーガリス、ジェームス・S.スペック、中村修二、ウメシュ・K.ミシュラによる米国特許出願第10/413,913号、2003年4月15日出願、発明の名称「非極性窒化ガリウム薄膜における転位の低減(DISLOCATION REDUCTION IN NON−POLAR GALLIUM NITRIDE THIN FILMS)」、代理人識別番号30794.102−US−U1(2002−303−2)。この出願は、マイケル・D.クレイブン、ステーシア・ケラー、スティーブン・P.デンバース、タル・マーガリス、ジェームス・S.スペック、中村修二、ウメシュ・K.ミシュラによる米国特許仮出願第60/372,909号、2002年4月15日出願、発明の名称「無極性窒化ガリウム系薄膜およびヘテロ構造材料(NON−POLAR GALLIUM NITRIDE BASED THIN FILMS AND HETEROSTRUCTURE MATERIALS)」、代理人識別番号30794.95−US−P1の優先権を主張する。
【0009】
(6)マイケル・D.クレイブン、スティーブン・P.デンバースによる国際特許出願第PCT/US03/39355号、2003年12月11日出願、発明の名称「非極性(Al、B、In、Ga)N量子井戸(NON−POLAR (Al,B,In,Ga)N QUANTUM WELLS)」、代理人識別番号30794.104−WO−01(2003−529−1)。この出願は、上記特許出願PCT/US03/21918号(30794.93−WO−U1)、第PCT/US03/21916号(30794.94−WO−U1)、第10/413,691号(30794.100−US−U1)、第10/413,690号(30794.101−US−U1)、第10/413,913号(30794.102−US−U1)の一部継続出願である。
【0010】
(7)アーパン・チャクラボーティ(Arpan Chakraborty)、ベンジャミン・A.ハスケル、ステーシア・ケラー、ジェームス・S.スペック、スティーブン・P.デンバース、中村修二、ウメシュ・K.ミシュラによる米国特許出願第11/123,805号、2005年5月6日出願、発明の名称「有機金属気相成長法による非極性窒化インジウムガリウム薄膜、ヘテロ構造物、およびデバイスの製作(FABRICATION OF NONPOLAR INDIUM GALLIUM NITRIDE THIN FILMS,HETEROSTRUCTURES AND DEVICES BY METALORGANIC CHEMICAL VAPOR DEPOSITION)」、代理人識別番号30794.117−US−U1(2004−495−2)。この出願は、アーパン・チャクラボーティ、ベンジャミン・A.ハスケル、ステーシア・ケラー、ジェームス・S.スペック、スティーブン・P.デンバース、中村修二、ウメシュ・K.ミシュラによる米国特許仮出願第60/569,749号、2004年5月10日出願、発明の名称「有機金属気相成長法による非極性インジウムガリウム薄膜、ヘテロ構造物およびデバイスの製作(FABRICATION OF NONPOLAR INGAN THIN FILMS, HETEROSTRUCTURES AND DEVICES BY METALORGANIC CHEMICAL VAPOR DEPOSITION)」、代理人識別番号30794.117−US−P1(2004−495)の優先権を主張する。
【0011】
これら全ての出願は参照として本明細書中に組み込まれる。
1.本発明の技術分野
本発明は化合物半導体の成長とデバイス作製に関するものである。より具体的には、本発明は、ハイドライド気相成長法による平坦なm面GaN膜の直接成長や、または低転位密度を達成するためこれに引き続き選択的にGaN膜の選択横方向成長(lateral epitaxial overgrowth)を用いた、平坦なm面窒化ガリウム(GaN)膜の成長と作製に関するものである。
【背景技術】
【0012】
2.関連技術の説明
(注:本願明細書は様々な文献を参照している。これら文献それぞれは以下の「参考文献」と題されたセクションに見出せる。これら文献のそれぞれは参照としてここに組み込まれているものとする。)
窒化ガリウム(GaN)ならびにアルミニウム及びインジウムを含むその3元および4元の化合物(AlGaN、InGaN、AlInGaN)の有用性は、可視及び紫外の光電子デバイスや高性能電子デバイスの作製に対して十分に確立されてきている。これらのデバイスは通常は分子線エピタキシー(MBE)、有機金属気相成長法(MOCVD)、あるいはハイドライド気相成長(HVPE)法などの成長技術によってエピタキシャル成長される。
【0013】
GaNとその合金は六方晶系ウルツ鉱型結晶構造において最も安定である。その構造は相互に120°回転関係にある2つ(または3つ)の等価な基底面軸(a軸)によって示され、これらの軸はすべて主軸のc軸に垂直である。図1は一般的な六方晶系ウルツ鉱型結晶構造100の概略図であり、重要な面102、104、106、108と、軸110、112、114、116を図中に示す。ここで、塗りつぶされたパターンは重要な面102、104、106を示すことを意図するものであり、構造100の材料を表すものではない。III族元素原子と窒素原子は結晶のc軸に沿って交互にc面を占める。ウルツ鉱型構造に含まれる対称要素はIII族窒化物がこのc軸に沿ってバルクの自発分極を有することを示す。さらに、ウルツ鉱型結晶構造は対称中心がないので、ウルツ鉱型窒化物は結晶c軸に沿ってさらに圧電分極を示す。電子および光電子デバイス用の現状の窒化物技術は極性c方向に沿って成長した窒化物薄膜を用いている。しかしながら、III族窒化物系の光電子及び電子デバイスにおける従来のc面量子井戸構造は強い圧電分極及び自発分極の存在によって望ましくない量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)を示すことになる。c方向に沿った強い組み込み(built−in)電界のために電子と正孔は空間的に分離してしまい、それがためにキャリアの再結合効率が制限され、振動子強度が低下し、発光がレッド・シフトを起こすことになってしまう。
【0014】
GaN光電子デバイスにおける自発分極および圧電分極の効果を取り除く可能性のある1つの方法は結晶の非極性面上にデバイスを成長することである。そのような面はGaとN原子を同数ずつ含み、電荷中性である。更に、引き続き成長する非極性層は相互に等価であり、それゆえに、バルク結晶は成長方向に沿って分極しない。GaNにおける対称等価な非極性面の2つのファミリーは、まとめてa面と呼ばれる{11−20}ファミリーと、まとめてm面と呼ばれる{1−100}ファミリーである。
【0015】
実際に、例えば<11−20>a方向または<1−100>m方向のような非極性成長方向を用いた(Al、Ga、In、B)Nの量子井戸構造は、極性軸が膜の成長面内にあり、量子井戸のヘテロ界面に平行であるので、ウルツ鉱型窒化物構造において分極が誘起する電界効果を除去することが出来る有効な手段を提供するものであるということが示された。非極性の電子および光電子デバイスの作製における利用可能性から、過去数年間、非極性(Al、Ga、In)Nの成長は大きな関心を集めている。最近では、アルミン酸リチウム基板上にプラズマ支援MBEにより作製した非極性m面AlGaN/GaN量子井戸、及びMBE及びMOCVDの両方を用いてr面サファイア基板上に成長した非極性a面AlGaN/GaN多重量子井戸(MQW)には成長方向に沿っての分極電界が存在しないことが示された。更に最近では、スン(Sun)ら[非特許文献1]及びガードナー(Gardner)ら[非特許文献2]はそれぞれ、MBE及びMOCVD法によってm面InGaN/GaN量子井戸構造をヘテロエピタキシャル成長した。チトニス(Chitnis)ら[非特許文献3]はa面InGaN/GaN構造をMOCVDで成長した。もっとも大事なこととして、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究者ら、すなわちチャクラボーティー(Chakraborty)ら[非特許文献4]はごく最近、低欠陥密度のHVPE成長a面GaNをテンプレートとして用いて、低欠陥密度a面InGaN/GaNデバイスを成長することによる大きな利点を実証した。本文献は、非極性III族窒化物発光ダイオード(LED)及びレーザ・ダイオード(LD)は極性のものに比較してはるかに良好な特性を持つ可能性があることを確立した。
【0016】
GaNのバルク結晶は入手できないので、単純に結晶をカットして、続くデバイスの再成長のための結晶表面を作り出すことは出来ない。全てのGaN膜は最初はヘテロエピタキシャル成長され、すなわちGaNと適度に格子整合する異種基板上に成長させる。近年、多くの研究グループが、自立(free−standing)GaN基板を得て、それをデバイスのホモエピタキシャル再成長用に用いるために、その異種基板を取り除くに十分な厚さ(>200μm)のGaN膜をヘテロエピタキシャル成長するための手段としてHVPE法を用いることが可能であることを認識してきた。HVPEはMOCVDに比べて1桁から2桁大きな成長速度を持ち、MBEよりは3桁も大きな成長速度を有するという利点があり、これはHVPEを基板作製の魅力的な技術とする長所である。
【0017】
窒化物のヘテロエピタキシャル成長における一つの甚だしく不利な点は、基板とエピタキシャル薄膜間の界面に構造欠陥が発生することである。重要で、影響の大きい欠陥の主要なタイプは貫通転位と積層欠陥の2つである。極性c面GaN膜において転位と積層欠陥の低減を達成する主要な手段は、選択横方向成長(lateral epitaxial overgrowth)(LEO、ELO、またはELOG)、選択領域エピタキシー、およびPENDEOエピタキシー(登録商標)を含むいろいろな横方向オーバーグロース技術を用いることである。これらのプロセスの大事な点は、垂直成長よりも横方向成長が容易になるようにすることによって、転位が薄膜表面を垂直に伝播することを妨げるか抑えることである。このような転位低減技術はHVPEとMOCVDによってc面GaN成長に対して精力的に開発されてきた。
【0018】
ごく最近になってGaNの横方向成長技術はa面膜に対して実証された。クレイブン(Craven)ら[非特許文献5]は薄いa面GaNテンプレート層の上に誘電体マスクを用いてMOCVDによってLEOを行うことに成功した。発明者らのグループはこれに続き、HVPEによるa面GaN成長のLEO技術を開発した[非特許文献6]。しかしながら今日までm面GaNに対してはそのようなプロセスは開発も実証もされていない。
【0019】
本発明は、このような課題を克服し、HVPEによる高品質m面GaNの成長技術を初めて提供するものである。
【非特許文献1】Sun et al., Appl.Phys.Lett.83(25)5178(2003)
【非特許文献2】Gardner et al., Appl.Phys.Lett.86,111101(2005)
【非特許文献3】Chitnis et al., Appl.Phys.Lett.84(18)3663(2004)
【非特許文献4】Chakraborty et al., Appl.Phys.Lett.85(22)5143(2004)
【非特許文献5】Craven et al., Appl.Phys.Lett.81(7)1201(2002)
【非特許文献6】Haskell et al., Appl.Phys.Lett.83(4)644(2003)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は非常に平坦で完全な透明性と鏡面性を持ったm面GaN膜を成長する方法を提供するものである。本方法は選択横方向成長技術によって構造欠陥密度を大幅に低減することができる。高品質で、一様な、厚いm面GaN膜が製作でき、分極のないデバイス成長のための基板として用いることができる。
【0021】
以下、図面を参照する。対応する部分には一貫して同じ参照番号を付与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下の好ましい実施の形態の説明では、添付の図面を参照する。添付の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明を実施することができる特定の実施例を例示するために示す。本発明の範囲を逸脱することなく、その他の実施形態を利用してもよく、構造上の変化を施しても良いことは明らかである。
【0023】
概要
非極性m面{1−100}窒化物半導体を成長させることによって、ウルツ鉱型構造III族窒化物のデバイス構造における分極の影響を取り除く手段が得られる。現状の(Ga、Al、In、B)Nデバイスは、極性[0001]c方向に成長されるため、そこでは光電子デバイスの主たる伝導方向に沿って電荷分離が起こる。その結果生じる分極電界は現状のデバイスの性能を低下させる。このようなデバイスを非極性方向に沿って成長させればデバイス性能を著しく改善することが出来る。
【0024】
m面GaN厚膜を成長するためのこれまでの努力では、ピット、ノッチ、及びクラックなどのバルク欠陥を高密度に含んだ、欠陥の多いエピ層しか出来なかった。このような膜はまた非常に不均一で、デバイス層作製のためのホモエピタキシャル再成長における基板として用いるには適さなかった。本発明は、厚い非極性m面GaN膜の成長において、これまでに観察された問題を解決するものであり、ピット、V字型欠陥、矢印欠陥(arrowhead defects)、貫通転位、及び積層欠陥を除去することを含むものである。本発明は、非常に平坦で、完全な透明性と鏡面性を持つm面GaN膜を成長できることをはじめて実証するものである。更に本発明は、選択横方向成長法によって構造欠陥密度の大幅な低減を実現する方法を提供するものである。本発明によりはじめて、高品質で、一様な、厚いm面GaN膜が製作でき、分極のないデバイス成長のための基板として使用することが出来る。
【0025】
本発明は、高品質、低欠陥密度、非極性m面{1−100}GaNを製作する比較的簡単な手段を提供するものである。現在GaN薄膜はバルク結晶が入手できないのでヘテロエピタキシャル成長しなければならないし、この成長工程のための完全に格子整合された基板も存在しない。従来のヘテロエピタキシャル成長では格子不整合の結果、成長したGaN膜は本来的に欠陥の多いものであり、一般には10cm−2以上に及ぶ転位密度を含むものである。選択横方向成長法を用いる一連の成長技術はc面(0001)及び最近ではa面{11−20}GaN成長において開発されてきて、転位密度の大幅な低減を実現してきた。本発明は異種基板上に成長したm面GaNにおける膜品質の大幅な改良を実現する手段を提供し、加えて、いかなる成長技術を用いても達成されたことのないm面GaNの選択横方向成長にはじめて成功した、その実行方法を提供するものである。本発明の結果として、大幅に低減した欠陥密度を持ち、厚い非極性m面GaN膜を成長すること、及びそれに引き続いて、改良された特性を持つ電子及び光電子デバイスを様々な成長技術を用いて成長するためにそれを用いることが今や可能となった。
【0026】
技術説明
本発明は平坦なm面GaN膜とその自立層をHVPEによって製作する方法を提供するものである。低い成長圧力と水素を含むキャリア・ガスを用いて、本発明は異種基板から非極性m面GaNの直接成長とその表面安定化を実証した。本発明は更に、マスク層を通した基板からの選択横方向成長よって、m面GaNにおける貫通転位と積層欠陥の密度を低減させる手法を提供するものである。
【0027】
平坦なm面GaNの直接成長
本発明は平坦なm面GaN膜のHVPE法による直接成長方法をはじめて提供するものである。その成長プロセスは次の特許文献に記載されたa面GaN成長の場合と似ている。
ベンジャミン・A.ハスケル、ポール・T.フィニ、松田成正、マイケル・D.クレイブン、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、中村修二による国際特許出願第PCT/US03/21916号、2003年7月15日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による平坦な無極性a面窒化ガリウムの成長(GROWTH OF PLANAR,NON−POLAR A−PLANE GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.94−WO−U1。この出願は、ベンジャミン・A.ハスケル、ポール・T.フィニ、松田成正、マイケル・D.クレイブン、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、中村修二による米国特許仮出願第60/433,844号、2002年12月16日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による平坦な無極性a面窒化ガリウムの成長技術(TECHNIQUE FOR THE GROWTH OF PLANAR,NON−POLAR A−PLANE GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.94−US−P1(2003−225−1)の優先権を主張する。両出願とも参照として本明細書中に組み込まれる。
【0028】
本発明はHVPE法による{1−100}GaN作製の様々な成長シーケンスに適用できる。従来の金属ソースHVPE法は気相の塩化水素(HCl)のような(ただし、これに限定されるわけではない)ハロゲン化物化合物と金属ガリウムを、700℃を超える温度で反応させて一塩化ガリウム(GaCl)を形成する過程を含む。このGaClは一般的には窒素、水素、ヘリウム、またはアルゴンであるキャリア・ガスによって基板へ運ばれる。基板への輸送中に、または基板にて、または排気流の中において、GaClはアンモニア(NH)と反応してGaNを形成する。基板で起こる反応は基板/成長膜表面上にGaNを生成して、その結果、結晶成長が起こることになる。
【0029】
本発明は平坦なGaN膜を得るために、いくつかの成長パラメータの組み合わせを用いる。
1.これに限るものではないが、例えばm面6H−SiC基板、m面4H−SiC基板、(100)γ−LiAlO基板、またはm−(In、Al、Ga、B)Nテンプレート層で覆われた上記の基板のどれかの適当な基板を用いること。本発明では、これら全ての基板について成功することを実証した。
2.反応器内の1つ以上のガス流の内、最終的な成長段階においてキャリアガスとして一部分は水素(H)を用いること。
3.成膜の最終工程/段階で反応器内を大気圧(760Torr)より下の減圧とすること。
【0030】
プロセス工程
図2は本発明の好ましい実施形態による、平坦なm面GaN膜をハイドライド気相成長法で直接成長する工程を示すフローチャートである。この工程は高品質で平坦なm面GaN膜を通常の3ゾーン水平流のHVPEシステムを用いて作製する場合の典型的な成長シーケンスを備えている。正確なシーケンスは以下に記すように選択される基板によって変わる。
【0031】
ブロック200は、ex situクリーニングは施さないで基板を反応器に装着する工程を表している。好ましい実施形態においては、基板はm面6H−SiC基板、m面4H−SiC基板、(100)γ−LiAlO基板、またはm−(In、Al、Ga、B)Nテンプレート層で覆われた上記の基板のどれかである。
【0032】
ブロック202は、反応器を加熱する前に酸素と水蒸気の濃度を下げるために、反応器を排気して、代わりに反応器に精製した窒素(N)ガスを充填する工程を表す。系の酸素と水蒸気の濃度を更に下げるために、通常はこの工程を繰り返す。
【0033】
ブロック204は系の全ての流路にHとNの混合ガスを流しながら、反応器を成長温度である約1,040℃に加熱する工程を表す。基板がm面(In、Al、Ga、B)Nテンプレート層で覆われている場合は、テンプレートが分解するのを防ぐために反応器を加熱する段階でガス流の中に少量のNHを含ませることが一般に望ましい。また、テンプレート層を用いる場合はブロック204の前にブロック208、すなわち減圧工程を実行することで膜の高品質化が達成される。
【0034】
ブロック206は反応器が成長温度に到達したときに行う基板の窒化処理の工程を表す。ここで窒化処理は基板の表面を窒化するために反応器の中のガス流に無水アンモニア(NH)を加える工程を含む。基板の窒化処理の工程は900℃より高い温度で行われる。この工程はLiAlO基板を用いる場合には実行することが大いに望ましいが、一方、SiC基板を用いる場合には一般に不要であり、除いてもよい。
【0035】
ブロック208は反応器の圧力を望ましい成膜圧力まで低下させる工程を示す。好ましい実施形態では、所望の成膜圧力は大気圧(760Torr)より下であり、より具体的には所望の成膜圧力は5から100Torrの範囲である。好ましい実施形態では所望の成膜圧力は約76Torrである。
【0036】
ブロック210は基板の上に低温バッファや核生成層を一切用いることなく、直接m面GaN膜の成長を開始するために、気体である塩化水素(HCl)をガリウム(Ga)ソースへ流し始める工程を表している。通常の金属ソースHVPE法は気体HClのような(ただし、これに限定するものではない)ハロゲン化物化合物と金属Gaの700℃を超える温度でのその場(in situ)反応を含み、一塩化ガリウム(GaCl)のような金属のハライド種を形成する。
【0037】
ブロック212では、反応器中の1つ以上のガス流の中に少なくとも一部分は水素(H)を含むキャリア・ガスによって、GaClを基板へ輸送する工程を表している。キャリア・ガスは窒素、ヘリウム、またはアルゴン、またはその他の非反応性希ガスも含んでいてよい。基板への輸送中、または基板にて、または排気流の中において、GaClはNHと反応してGaNを形成する。基板上で反応が生じることで基板上にGaNが生成され、結果として結晶成長が起こることになる。典型的なV族/III族比(NHとGaClのモル比)はこのプロセスでは1〜50である。Gaソースの下流に補足的にHClを注入したり、あるいはHClとGaソースとの反応が完全でなかったりするため、NH/HCl比は必ずしもV族/III族比に等しくないことに注意されたい。
【0038】
ブロック214は、所望の成長時間が過ぎた後に、気体HClの流れを遮断して反応器圧力を元に戻し、反応器の温度を室温に下げる工程を示す。遮断の工程は更にガス流の中にNHを含ませて、反応器温度が低下する間にGaN膜の分解が起こるのを防止する工程を含む。反応器圧力は大気圧に戻してもよく、あるいは或る低い圧力に保っても良く、冷却は例えば5から760Torrの間の圧力で行われる。
【0039】
典型的なGaN膜の成長速度はこのプロセスでは1から400μm/hである。この成長速度は、ソースと基板の温度、システム中の様々な気体の流速、反応器の形状、その他を含むが、これに限定されるわけではない多数の成長パラメータに依存していて、それは平坦なm面GaN膜を成長する範囲内で、かなり広い領域にわたって変化させることが出来る。これらパラメータのほとんど全ての好適値は成長反応器の形状に対して固有である。
【0040】
上記のプロセス工程における「最終成長段階」についての記述は、上記の条件を用いた適切な時間の工程で成長段階を終了することによって、他の条件では凸凹していたり欠陥の多い膜であったものを平坦化することが可能であるという観察結果を指している。成長の初期段階では膜品質や形態に関わらず、m面配向物質が成長する任意の成長パラメータを取り込んでよい。
【0041】
好ましくは、上記プロセス工程で平坦なm面GaN膜を作製する。
更に、この方法を用いて作製されるデバイスはレーザ・ダイオード、発光ダイオード及びトランジスタを含んでいる。
【0042】
実験結果
上述された成長パラメータの組み合わせを用いると、平坦なm面GaN膜を常に成長することができた。図3(a)は(100)γ−LiAlO基板上に成長したm面GaN膜のノマルスキー光学コントラスト顕微鏡写真を示す。この試料は32%のN、58%のH、残りはNHとHClを用いて、V族:III族比が15.8である条件で成長したものである。成長圧力は70Torrであり、基板温度は862℃であった。顕微鏡像には本発明を用いないで以前に成長したm面GaN膜に特徴的であったピットやクラックのようなバルク欠陥は見当たらない。表面はナノメータ寸法の起伏をもった、非結晶学的な流れ形状を示している。図3(b)はこの同じ試料の原子間力顕微鏡(AFM)像を示す。縞模様の形状はMBE成長されたm面GaN膜に共通して見られるが、この表面は以前に報告されたどのものよりもはるかに平坦である。AFM像の右下象限に見られる波状の形状は以前の文献には報告されていない。この形状は膜中の螺旋転位の特徴を持った貫通転位の存在と関係するものと思われる。この表面の凹凸の自乗平均根(RMS)は25μm2の面積内で14.1Åであり、それは同じ技術によってr−面Al上に成長したa面GaN膜と同程度である。
【0043】
m面GaNの選択横方向成長
上記技術はHVPEによって平坦なm面GaN膜を成長する手段をはじめて提供するものである。これらの膜はスムーズで平坦である一方、まだ貫通転位や基底面積層欠陥を高密度に含む。実際に、そのような直接成長した試料の透過電子顕微鏡(TEM)写真は貫通転位と積層欠陥の密度がそれぞれ4×10cm−2と2×10cm−1であることを明確に示している。そのような構造欠陥が存在すると、そのデバイス性能は、低い欠陥密度のm面GaNを用いて達成されるであろう性能に比べて劣化することになる。本発明はLEOによってm面GaN膜の構造欠陥密度を低減する方法を更に含むものである。
【0044】
本発明は次の特許文献によって開示されたa面GaN薄膜における欠陥低減のために開発された技術に密接に関連するものである。
ベンジャミン・A.ハスケル、マイケル・D.クレイブン、ポール・T.フィニ、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、中村修二による国際特許出願第PCT/US03/21918号、2003年7月15日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による転位密度の低い無極性窒化ガリウムの成長(GROWTH OF REDUCED DISLOCATION DENSITY NON−POLAR GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.93−WO−U1(2003−224−2)。この出願は、ベンジャミン・A.ハスケル、マイケル・D.クレイブン、ポール・T.フィニ、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、中村修二による米国特許仮出願第60/433,843号、2002年12月16日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による転位密度の低い無極性窒化ガリウムの成長(GROWTH OF REDUCED DISLOCATION DENSITY NON−POLAR GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.93−US−P1(2003−224−1)の優先権を主張する。両出願とも参照として本明細書中に組み込まれる。
【0045】
本発明はいくつかの重要な要素に依るものである。
1.m面SiC上のAlNバッファ層上に成長したm面GaNテンプレートのような(ただし、これに限るわけではない)適当な基板またはテンプレートを用いること。
2.テンプレートまたは基板上に多孔質のマスクを成膜すること。このマスクは、誘電体層を成膜してパターニングした場合のように一様なものであっても、または、薄い多孔質の金属性またはセラミックのマスクを成膜する場合のように不均一なものであっても良い。マスクは各種のin situ技術またはex situ技術によって成膜してよい。
3.(760Torrより低い)低圧で(Al、B、In、Ga)Nを成膜すること。
4.基板/テンプレートが成長中に曝されるガス流として大部分がHである気体を用いること。
【0046】
プロセス工程
図4は、本発明の好ましい実施形態により、GaN膜の選択横方向成長によって、平坦なm面GaN膜における貫通転位と欠陥の密度を低減する工程を示すフローチャートである。これらの工程は基板上に成膜したマスクをパターニングする工程(以下のブロック400から408まで)とHVPE法を用いて基板からGaN膜のLEO成長を行う工程(以下のブロック410から420まで)を備えていて、そこではパターニングされたマスクによって覆われていない基板の部分にのみGaN膜が核成長し、GaN膜がパターニングされたマスクの中の開口部から垂直に成長し、次にGaN膜はパターニングされたマスクの上を基板表面を横切って横方向に拡がる。
【0047】
ブロック400はm面6H−SiC基板上のAlNバッファ層上にMBEで成長したm面GaNテンプレートのような(ただし、これに限るわけではない)適当な基板またはテンプレートの上に〜1350Å厚のSiO膜を成膜する工程を表している。ここでSiO膜は誘電体マスクの基礎となるものである。好ましい実施形態では、パターニングされたマスクは誘電体膜であり、基板はm面6H−SiC基板であるが、その他の物質を同様に用いてもよく、例えばパターニングされたマスクとして金属材料を、あるいは基板としてサファイアを用いてもよい。
【0048】
ブロック402はSiO膜上にフォトレジスト層を成膜し、成膜したフォトレジスト層を通常のフォトリソグラフィー処理工程を用いてパターニングする工程を表している。一実施形態では、パターンは5μm幅の開口によって隔てられた35μm幅のストライプを備えている。
【0049】
ブロック404はパターニングされたフォトレジスト層によって露出したSiO膜の部分をすべて、基板を緩衝フッ化水素(HF)酸に2分間浸漬することによってエッチング除去する工程を表している。
【0050】
ブロック406は、残留しているフォトレジスト層の部分を、アセトンを用いて取り除く工程を表している。
【0051】
ブロック408は基板をアセトン、イソプロピール・アルコール、および脱イオン水を用いて洗浄する工程を表している。
【0052】
乾燥後、5μm幅の開口によって隔てられた35μm幅のストライプを有するようパターニングされたSiO膜を備えたパターンマスクで基板は覆われている。
【0053】
好ましくはマスクは多孔質である。さらに、マスクは誘電体層を成膜してパターニングする場合のように一様なものであっても、また、薄い多孔質の金属性またはセラミックのマスクを成膜する場合のように不均一なものであっても良い。マスクは様々なin situ技術またはex situ技術によって成膜してよい。
【0054】
次に続くブロックは、HVPE法を用いて基板上へGaN膜を選択横方向成長する工程を表す。ここで、GaN膜はパターニングされたマスクによって露出した部分のみに核生成し、GaN膜はパターニングされたマスク内の開口部から垂直に成長し、次いでGaN膜はパターニングされたマスクの上を基板表面を横切るように横方向に拡がり、最終的には隣接するGaNストライプと合体する。選択横方向成長は、ほぼ大気圧(760Torr)である低成長圧力を用い、一部分は水素を含むキャリアガスを利用する。横方向成長プロセスの成長条件は、HVPE法を用いる高品質で平坦なm面GaN成長について上記した条件と非常に似ている。
【0055】
これらの工程とその成長パラメータは、本発明の譲受人に譲渡された以下の同時係属出願に更に詳しく記載されている。
ベンジャミン・A.ハスケル、ポール・T.フィニ、松田成正、マイケル・D.クレイブン、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、中村修二による国際特許出願第PCT/US03/21916号、2003年7月15日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による平坦な無極性a面窒化ガリウムの成長(GROWTH OF PLANAR,NON−POLAR A−PLANE GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.94−WO−U1。この出願は本発明の譲受人に譲渡された以下の2つの同時係属出願の優先権を主張する。
ベンジャミン・A.ハスケル、ポール・T.フィニ、松田成正、マイケル・D.クレイブン、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、中村修二による米国特許仮出願第60/433,844号、2002年12月16日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による平坦な無極性a面窒化ガリウムの成長技術(TECHNIQUE FOR THE GROWTH OF PLANAR,NON−POLAR A−PLANE GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.94−US−P1;および
ベンジャミン・A.ハスケル、マイケル・D.クレイブン、ポール・T.フィニ、スティーブン・P.デンバース、ジェームス・S.スペック、中村修二による米国特許仮出願第60/433,843号、2002年12月16日出願、発明の名称「ハイドライド気相成長法による転位密度の低い無極性窒化ガリウムの成長( GROWTH OF REDUCED DISLOCATION DENSITY NON−POLAR GALLIUM NITRIDE BY HYDRIDE VAPOR PHASE EPITAXY)」、代理人識別番号30794.93−US−P1。
【0056】
これら全ての出願とも参照として本明細書に組み込まれる。
【0057】
ブロック410は反応器に基板を装着する工程を表す。
【0058】
ブロック412は、反応器中の酸素濃度を下げるために、反応器を排気し、代わりに反応器に精製した窒素(N)ガスを充填する工程を表す。反応器内の酸素濃度を更に下げるために、しばしばこの工程を繰り返す。
【0059】
ブロック414は成長室に低圧でHとNとNHの混合ガスを流しながら、反応器を成長温度である約1,040℃に加熱する工程を表す。好ましい実施形態では、所望の成膜圧力は大気圧(760Torr)より下であり、一般的には300Torrより下である。より具体的には、所望の成膜圧力は5から100Torrの範囲に制限され、76Torrに設定されても良い。
【0060】
ブロック416は基板の上に低温バッファや核生成層を一切用いることなく、直接m面GaN膜の成長を開始するために、気体である塩化水素(HCl)をガリウム(Ga)ソースへ流し始める工程を表している。通常の金属ソースHVPE法は気体HClのような(ただし、これに限定するものではない)ハロゲン化物化合物と金属Gaの700℃を超える温度でのその場(in situ)反応を含み、一塩化ガリウム(GaCl)を形成する。
【0061】
ブロック418では、反応器中の1つ以上のガス流の中に少なくとも一部分は水素(H)を含むキャリア・ガスによって、GaClを基板へ輸送する工程を表している。一実施形態では、キャリア・ガスは主として水素であってもよく、他の実施形態では、キャリア・ガスは水素、窒素、アルゴン、ヘリウム、またはその他の不活性ガスの混合物を含む。基板へ輸送中、または基板にて、または排気流の中において、GaClはNHと反応してGaNを形成する。基板上で反応が生じることで基板上にGaNが生成され、その結果、結晶成長が起こることになる。典型的なV族/III族比はこのプロセスでは1〜50である。Gaソースの下流に補足的にHClを注入したり、あるいはHClとGaソースとの反応が完全でなかったりするため、NH/HCl比は必ずしもV族/III族比に等しくないことに注意されたい。
【0062】
ブロック420は、所望の成長時間が過ぎた後に、気体HClの流れを遮断して反応器の温度を室温に下げる工程を示す。基板温度が600℃以下に下がるまでは反応器は低圧に保たれるのが一般的には良いが、反応器圧力をこのとき大気圧に戻すという選択もある。遮断の工程は更に、ガス流の中にNHを含ませて、反応器温度が低下する間にGaN膜の分解が起こるのを防止する工程を含む。
【0063】
好ましくは、上記のプロセス工程でテンプレートから平坦なm面GaN膜の選択横方向成長を行う。更に、上記プロセス工程は自立m面GaN膜または基板の製造に用いられる。しかしながら、本発明はいかなる(Al、B、In、Ga)N膜の成膜も含んでよい。更に、この方法を用いて製造されるデバイスはレーザ・ダイオード、発光ダイオード及びトランジスタを含む。
【0064】
実験結果
本発明の実験例では、m面GaNテンプレートはm面6H−SiC上にMBEで成長したAlNバッファ層を用いて成長された。つぎにGaNテンプレート表面上に〜1350Å厚のSiO層を成膜した。従来のフォトリソグラフィー技術と5%HF溶液中のウェット・エッチングを用いて、SiO層中に平行なストライプの開口部の配列をパターニングした。最初の実験では、この平行なストライプはGaN[0001]または[11−20]のいずれかに沿って配向している。アセトンとイソプロパノールでウェハを超音波洗浄した後、パターニングされたウェハは水平HVPE反応器に装着される。試料は62.5Torrの圧力下で、52%のN,42%のHおよび6%のNHの雰囲気中で850から1075℃の範囲の成膜温度まで加熱される。試料が所望の成長温度に到達すると、反応器内のガス流はV族:III族比が13.1である、38%のN2,57%のH2、残りはNH3とHClに切り替えられる。所望の成長時間が経過した後に、反応器中へのHCl流は停止され、加熱炉は遮断され、試料はNH3が存在する低圧力下で600℃より低い温度まで冷却される。600℃より低い温度では、雰囲気は切り替えられてNだけとなり、試料は室温まで冷却される。
【0065】
<0001>方向に沿った平行なマスクストライプを用いた選択横方向成長プロセスの概略を図5(a)に示す。この図において、500は基板/テンプレート,502はSiOマスク、504はm面GaN表面を示す。成長過程では、m面GaN膜504は基板/テンプレート材料500の露出した部分からのみ成長し、マスク502上に、基板500表面を横切って横方向に拡がる。横方向に成長しているGaN膜504は、露出した窓506領域から垂直に成長しているGaN504に比べて、翼領域508においては低い貫通転位密度を示している。図5(b)は平行ストライプのマスク配置502が代わって<11−20>に沿っている場合の対応する過程を示している。この配置では2つの非対称な翼が形成される。Ga面の翼510には貫通転位も積層欠陥も両方とも無いが、窒素面の翼512と514には貫通転位は無いものの、積層欠陥がある。両方共に貫通転位は窓材料中にはあっても選択横方向成長した材料504中では取り除かれている。
【0066】
この技術で成長したいくつかのm面GaNストライプの例を図6(a)に示す。これらのストライプは<0001>方向に沿って配向したSiOマスクの幅略5μmの窓を通して成長し、約40μmの幅に横方向に拡がったものである。この成長を十分な時間続けると、このストライプは隣接するストライプと合体して、図7(a)に示すような、連続したm面GaN表面を形成することになる。合体した膜は、垂直方向から横方向への成長に変わることによって、転位がブロックされたり、屈げられたりして、選択横方向成長の領域では低転位密度を持つことになる。この低減された欠陥密度は図7(b)に示す全波長カソードルミネッセンス(CL)像によって確認される。CL像は暗くて欠陥の多い窓領域と、より明るい、選択横方向成長の翼領域とを明からにしている。選択横方向成長した材料中では低転位密度であるために、選択横方向成長した材料はより強い発光を示す。このように、本発明は非極性m面GaN膜における構造欠陥密度の低減に有効な手段を提供するものである。転位の屈曲は図7(e)と(f)に示す断面SEM像およびCL像にて更に観察できる。
【0067】
m面GaNLEOストライプの第2の例を図6(b)に示す。この場合、<11−20>方向に沿って配向している平行なSiOストライプを用いている。図6(a)に示したストライプと比べて、<11−20>方向に沿って配向しているストライプは、側面は垂直なc面を示し、非対称な横方向成長速度を示す。Ga面の翼は転位と積層欠陥が無く、一方N面の翼は転位だけが無い。<11−20>に配向しているストライプを使用して成長した、スムーズな、合体した膜を図7(c)に示す。低欠陥密度であることが図7(d)に示した平面CL像でもまた明らかであり、この像では欠陥の多い窓領域は暗く、低欠陥密度の翼領域は明るく見えている。N面の翼は積層欠陥を含むにもかかわらず、積層欠陥はGaNにおける発光再結合効率を著しく落とすことにはならないので、その発光は窓領域のそれよりもはるかに強い。
【0068】
図8(a),8(b)および8(c)は本発明によって提供された欠陥低減技術を用いた場合及び用いない場合の局所的な表面形態を比較する図である。図8(a)はいかなる形式の欠陥低減法も用いないで成長したm面GaN膜の最もスムーズなもののAFM像を示している。この表面は以前に科学論文に報告されたどの表面よりもはるかにスムーズであり、RMS凹凸は25μmの面積にわたって8Åである。図8(b)に示したAFM像もm面GaN表面の5×5μm像であるが、本発明による<0001>方向に沿ったストライプを使用して成長した試料の選択横方向成長領域から撮ったものである。転位の終端による波状の形状は除去されており、表面凹凸は6Åに低下した。この凹凸は非常に高品質の極性c面GaN膜と同等である。図8(c)はm面GaN膜の他のAFM像であり、この場合、GaNの<11−20>方向に沿って平行に配向しているSiOストライプを取り入れたLEO試料の選択横方向成長された翼の1つから撮ったものである。表面形態ははるかに一様であり、最高品質のc面GaN膜に見られるものと酷似した形態を示している。この表面のRMS凹凸はたった5.31Åであり、非LEO表面に比べて34%の低減/改良である。このように、本発明はよりスムーズなm面GaN表面を提供するために用いることが出来て、デバイス品質を高めるものとなる。
【0069】
高品質m面GaNの成長とそれに続く欠陥低減に関する本発明の好ましい実施形態は次のことを含んでいる。
1.(100)γ−LiAlOまたは(1−100)SiC(六方晶多形のいずれか)のような(ただし、これに限るものではない)適当な基板、または適当な基板上のm面III−N膜からなるテンプレートを用いること。
2.反応器内の1つ以上のガス流にGaN成膜段階のキャリア・ガスとして一部分は水素を用いること。
3.成膜のGaN成長段階において、760Torrより低い低反応器圧力を用いること。
4.下地のIII−Nテンプレート層または基板を露出できるような、開口部またはストライプを含む1300Å厚のSiOマスクのような薄いマスク層を成膜する工程を含む欠陥低減技術を取り入れること。
5.横方向に拡がって低欠陥密度GaNを作製するために、マスク層を通してm面GaN膜を成長すること。
【0070】
例として、予めMBE法によってm面AlN膜を被覆した、500μm厚の研磨したm面SiC基板上に1300Å厚のSiO膜を成膜する。通常のフォトリソグラフィ工程を用いて、5μm幅の開口部で分離された35μm幅のストライプを含んだフォトレジスト層をパターニングする。ウェハを次に緩衝フッ化水素酸に2分間浸漬して、露出したSiOを完全にエッチング除去する。残されたフォトレジストをアセトンで取り除き、ウェハをアセトン、イソプロピル・アルコール及び脱イオン水中で洗浄する。乾燥後、5μm幅の開口部で分離された35μm幅のSiOストライプで被覆されているm面SiC基板上のm面AlN薄膜からなるウェハは、成長のために反応器内に装着される。成長過程では、GaNは露出したAlN上にだけ核生成し、マスクの開口部を通して垂直に成長する。そこで膜はSiOストライプ上を横方向に広がり、最終的には隣接するGaNストライプと合体する。
【0071】
可能な変更と変形
好ましい実施形態として、平坦なm面GaNを成長し、その後、選択横方向成長プロセスによってm面GaNの品質を改良する方法を説明した。(100)γ−LiAlO、(1−100)4H−SiCおよび(1−100)6H−SiCを含む、いくつかの基板材料が本発明を実行するのに有効であることが証明された。自立m面GaN、自立m面AlN、SiCの他の多形、ミスカットのm面Al、前述したいずれかの基板のミスカット変形物を含む(ただし、これに限るわけではない)他の適当な基板材料を本発明の実施において用いてもよい。横方向成長過程における基板も、平坦なm面GaNの成長に適したいずれかの基板、またはGaN、AlN、AlGaNのテンプレート層、他のテンプレート材料で被覆された上記基板のいずれかから選ぶことが出来る。様々な成長技術によって低温または成長温度で成膜した核生成層はまた、この技術を用いて次に続くHVPE法による選択横方向成長に用いてもよい。基板の選択は反応器加熱段階での最適なガス条件に影響を及ぼす。LiAlOのようなある種の基板に対してはアンモニアを含む雰囲気内で昇温するのが好ましく、一方SiCはアンモニアが存在する中での昇温では悪影響を受ける。特にGaNテンプレート上での再成長時は、低圧力で成長温度まで昇温するのが好ましい。本発明の技術範囲を逸脱することなしに昇温条件は大幅に変更されてもよい。
【0072】
これとは別に、様々なマスク材料、マスク成膜技術、及びパターニング方法を、本発明の結果を著しく変えることなしに本発明の実施で用いることが出来る。そのような成膜の方法としては、(例えばチタニウムやタングステンのような)金属マスクを蒸着する方法、広範囲の酸化物及びSiNを含む誘電体マスクをスパッタ成膜する方法、及び酸化物、窒化物、あるいはフッ化物マスクを化学気相成膜する方法を含むが、これに限定するものではない。マスクは上記のようにex situ技術で成膜してもよいし、in situ成膜しても良い。例として、単一の、ソースを3つ含むHVPE反応器を用いて、m−SiC基板上にAlNバッファを成膜して、つぎに本明細書で説明した発明を用いて薄いGaN膜を成長し,そして薄いSiNマスクを成膜して、それを通して低欠陥密度のm面GaNを成長することが出来る。この例ではマスクはSiNの不規則的な島からなっているが、フォトリソグラフィによって形成された一様なマスクと同じ目的にかなう。これとは別に、金属Ti膜は自立m面GaN基板上に蒸着でき、HVPE成長システム内に装着され、NH中でアニールされて同様に多孔質のマスク層を形成する。
【0073】
他の代替方法としては、基板上にパターンマスクを成膜するのではなく、たとえば、反応性イオンエッチング法を用いてパターンを基板またはテンプレート材料の中へエッチングする方法がある。このような方法では、基板内の溝の深さと幅を選択して、エッチングされない平坦部から横に成長している膜が、溝の底から成長しているGaNが溝の上端部に達する前に合体するようにすべきである。この技術は、カンチレバーエピタキシーとして知られるが、極性c面GaN成長において実証されているものであり、本発明においても適用可能ある。残っている基板またはテンプレートの柱の上表面は、カンチレバーエピタキシーのようにコーティングされないままでもよく、あるいは側壁選択横方向成長のように、露出した側壁からの成長を促進するためにマスク材料で被覆されてもよい。
【0074】
誘電体マスクの形状は横方向に成長している膜の挙動に重要な影響を及ぼす。本発明の有効性を確立する段階では、基板に対して様々な方向を持つストライプを含んだマスクが用いられた。各形状の開口部からの成長の挙動は異なるが、マスク形状の選択は本発明の実施結果を基本的に変えるものではないということが示された。このように、GaNの核生成を促進する領域とGaNの核生成を抑制する領域を含むマスクならどのようなものでも形状によらずに取り込むことが出来る。
【0075】
反応器の形状と設計は本発明の実施に影響を与える。非極性GaNを首尾よく横方向成長するために必要な成長パラメータは反応器によって変わる。そのような変化は本発明の一般的な実施形態を基本的に変えるものではない。
【0076】
更に、一般的には横方向成長過程を膜合体点まで続けるのが望ましいが、合体は本発明の実施のための必要条件ではない。本発明者らは、合体前の選択横方向成長の非極性GaNストライプまたは支柱が非常に望まれるような多くの応用形態を予想してきた。それ故に、この開示は合体した場合及び合体前の選択横方向成長非極性GaN膜のどちらにも適用される。
【0077】
本発明はHVPE法による平坦なm面GaNの成長に焦点を当ててきた。しかしながら本発明はInGaNおよびAlGaNを含む(ただし、これに限るわけではない)m面III−N合金の成長にも適用できる。非極性GaN膜に一部Al、In、またはBを取り込むことは本発明の実施形態を基本的に変えるものではない。一般に、上記の議論で「GaN」について述べている記述はどれも、より一般的な窒化物化合物であるAlInGaN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦n≦1、x+y+z+n=1)で置き換えが出来る。また、本発明の範囲を逸脱することなしに、Si、Zn、Mg、およびFeのような(ただし、これに限るわけではない)添加ドーパントを本発明に記述された膜に取り込むことが出来る。
【0078】
本発明の実施形態は、温度および/または圧力が変化する、または異なる窒化物組成を持つというような多重成長工程を含んでいてもよい。そのような多重工程成長過程は、本明細書に説明した本発明に基本的に用いることができる。
【0079】
更に、本発明はHVPE法を用いた成長技術を説明してきた。非極性III−N膜の成長に関する発明者らの研究では、単純な変形を行うだけで、本明細書に説明したGaNの横方向成長技術はMOCVDによるm−GaNの成長にも同じように適用できることを確立した。
【0080】
利点および改善点
本発明は、平坦な高品質非極性m面GaNおよびHVPE法によるm面GaNの選択横方向成長に関するはじめての報告である。m面GaNの横方向成長に関しては、いかなる技術を用いたものもこれまでの文献に報告されていない。
【0081】
大部分が水素であるキャリア・ガスを用いての低圧力成長を応用することで、HVPE法による平坦なm面GaN膜の成長を初めて可能にした。基板上にヘテロエピタキシャル成長した非極性GaN膜に比べて、この発見に基づいてかなりの欠陥低減と膜品質改良を可能にしたことによって本発明は次のように発展する。このような低減された欠陥密度をもつ非極性GaNは、この技術を用いて成長したテンプレート膜上に続いて成長させた電子、光電子、及び電気機械的デバイスの改良に役立つであろう。本明細書で説明した選択横方向成長膜は、剥離して自立基板とすることができる厚い非極性GaN膜における転位密度を低減するための優れた手段を更に提供する。
【0082】
参考文献
以下の参考文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
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3.Y.Sun et al.,“In surface segregation in M−plane (In,Ga)N/GaN multiple quantum well structures,” Appl.Phys.Lett.83(25)5178(2003)
4.Gardner et al.,“Polarization anisotropy in the electroluminescence of m−plane InGaN−GaN multiple−quantum−well light−emitting diodes,” Appl.Phys.Lett.86,111101(2005)
5.Chitnis et al.,“Visible light−emitting diodes using a−plane GaN−InGaN multiple quantum wells over r−plane sapphire,” Appl.Phys.Lett.84(18)3663(2004)
6.Chakraborty et al.,“Nonpolar InGaN /GaN emitters on reduced−defect lateral epitaxially overgrown a−plane GaN with drive−current independent electroluminescence emission peak,” Appl.Phys.Lett.85(22)5143(2004)
7.Craven et al.,“Threading dislocation reduction via laterally overgrown nonpolar (11−20)a−plane GaN,” Appl.Phys.Lett.81(7)1201(2002)
8.Haskell et al.,“Defect reduction in (11−20) a−plane gallium nitride via lateral epitaxial overgrowth by hydride vapor phase epitaxy,” Appl.Phys.Lett.83(4)644(2003)
結論
これで本発明の好ましい実施形態の説明を終える。本発明の一つ以上の実施形態に関する上記の記述は例示および説明のために示された。開示の形態そのものによって本発明を包括または限定することを意図するものではない。多くの変更と変形が上記の教示に照らして可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、本明細書に添付の請求項によって限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】一般的な六方晶結晶構造と重要な結晶面の概略図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による、HVPE法を用いた平坦なm面GaN膜を直接成長するための工程を示すフローチャートである。
【図3】図3(a)は本発明を用いて達成した一様で平坦な表面形態を示すLiAlO基板上に成長したm面GaN膜のノマルスキー光学コントラスト顕微鏡写真であり、図3(b)はその表面の原子間力顕微鏡像である。
【図4】本発明の好ましい実施形態による、GaN膜の選択横方向成長を通して平坦なm面GaN膜中の貫通転位と欠陥の密度を低減させる工程を示すフローチャートである。
【図5】図5(a)は<0001>方向SiOストライプを用いたm面GaNの選択横方向成長プロセスの概略図、図5(b)は<11−20>方向SiOストライプを用いたm面GaNの横方向成長プロセスの概略図である。
【図6】図6(a)は<0001>方向m面GaN選択横方向成長ストライプの傾斜断面図であり、図6(b)は<11−20>方向GaNストライプの断面図である。
【図7】図7(a)と図7(c)はそれぞれ<0001>と<11−20>方向のストライプから成長して合体した選択横方向成長ストライプの平面走査型電子顕微鏡像であり、図7(b)と図7(d)は図7(a)と図7(c)にて示した表面に対応するカソードルミネッセンス(CL)像であり、それぞれ窓と翼の領域を示している。図7(e)は<0001>方向に沿って伸びているm面GaNストライプの断面SEM像であり、図7(f)は図7(e)にて示したストライプに対応するCL像である。
【図8】図8(a)、図8(b)および図8(c)はm面GaN表面の5×5μm原子間力顕微鏡像であり、図8(a)は欠陥低減を目指したものではない、この開示の第1の部分に記述された技術を用いて成長した表面を示し、図8(b)および図8(c)は本発明をもちいて成長した選択横方向成長m面GaN膜の翼の部分の表面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハイドライド気相成長法によって平坦なm面GaN膜を直接成長させる工程、および
(b)前記GaN膜の選択横方向成長を行って、前記平坦なm面GaN膜中の貫通転位と欠陥の密度を低減する工程
を備えたことを特徴とする、平坦なm面窒化ガリウム(GaN)膜を成長する方法。
【請求項2】
前記平坦なm面GaN膜は分極を含まないデバイスの成長のための基板として用いる目的で製作されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記平坦なm面GaN膜の直接成長は、m面SiC、(100)γ−LiAlOを含む基板、またはm面(In、Al、Ga、B)Nテンプレート層で覆われた基板上で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(a)は、
(1)基板を反応器に装着する工程、
(2)成長室に水素(H)と窒素(N)の混合ガスを流しながら、前記反応器を成長温度まで加熱する工程、
(3)前記反応器の圧力を大気圧よりも低い、所望の成膜圧力まで下げる工程、
(4)前記基板上に前記平坦なm面GaN膜の直接成長を開始するために、気体の塩化水素(HCl)をガリウム(Ga)源へ流し始める工程であって、前記気体HClは前記Gaと反応して一塩化ガリウム(GaCl)を形成する工程、
(5)少なくとも一部分は水素(H)を含むキャリア・ガスを用いて前記GaClを前記基板へ輸送する工程であって、前記GaN膜を形成するように前記GaClが前記基板上でアンモニア(NH)と反応する工程、および
(6)所望の成長時間が経った後で前記気体HClの流れを遮断し、前記反応器の圧力を大気圧に戻し、前期反応器の温度を室温に下げる工程、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板が低温または前記成長温度で成膜された核生成層で被覆されていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応器内のガス流に無水アンモニア(NH)を加えて前記基板を窒化する工程を更に備えていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(6)は、前記反応器の温度が低下する間に前記GaN薄膜が分解することを防ぐために、ガス流に無水アンモニア(NH)を含ませる工程を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(6)は、低圧で前記基板を冷却する工程を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(b)は、
(1)基板上に成膜されたマスクをパターニングする工程、および
(2)前記基板から前記GaN膜の選択横方向成長をハイドライド気相成長法を用いて行う工程を更に備え、前記GaN膜が前記パターニングされたマスクで覆われていない前記基板の部分の上にだけ核生成し、前記GaN薄膜が前記パターニングされたマスクの開口部を通して垂直に成長し、その後前記GaN膜がパターニングされたマスクの上を横に基板の表面を横切って拡がることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記選択横方向成長はほぼ大気圧またはそれ未満の成長圧力と、一部分は水素を含むキャリア・ガスとを利用することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記キャリア・ガスが主として水素であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記キャリア・ガスが水素と窒素、アルゴンまたはヘリウムの混合ガスを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記選択横方向成長は前記GaN膜における貫通転位密度を低減することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記パターニングされたマスクは金属材料または誘電性材料を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(1)は、
(1)前記基板上に二酸化ケイ素(SiO)膜を成膜する工程、
(2)前記二酸化ケイ素膜上のフォトレジスト層をパターニングする工程、
(3)前記パターニングされたフォトレジスト層によって露出した前記二酸化ケイ素膜の全ての部分をエッチング除去する工程、
(4)前記フォトレジスト層の残留部分を取り除く工程、および
(5)前記基板を洗浄する工程
を備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記基板は低温または前記成長温度で成膜した核生成層で被覆されていることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記GaN膜の選択横方向成長は、
(1)基板またはテンプレートから支柱またはストライプをエッチングする工程、および
(2)前記支柱またはストライプから横に成長させる工程
を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記GaN膜の選択横方向成長は、
(1)基板またはテンプレートから支柱またはストライプをエッチングする工程、
(2)前記支柱またはストライプの上面をマスクする工程、および
(3)前記支柱またはストライプの前記マスクされた上面の露出した部分から横方向に成長させる工程
を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
先行する請求項のいずれかを用いて作製されるデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−501606(P2008−501606A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515412(P2007−515412)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/018823
【国際公開番号】WO2005/122267
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(500027932)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (39)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】