説明

ハイブリッド自動車

【課題】内燃機関の排気を浄化する浄化触媒の暖機が要求されている状態で走行用パワーをバッテリからの出力パワーだけでは賄うことができないときのエミッションの悪化を抑制する。
【解決手段】浄化触媒の暖機要求がなされていて走行用パワーPdrv*が出力制限相当パワー(kw・Wout)より大きいときにおいて(S120,S130)、触媒温度Tcが閾値Tcref未満のときには、触媒温度Tcが閾値Tcref以上のときよりも遅い触媒暖機用点火時期TFcでの点火を伴ってエンジンからパワーが出力されながら走行用パワーPdrv*に基づくパワーによって走行するようエンジンと二つのモータとを制御する(S190〜S260)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車に関し、詳しくは、排気を浄化する浄化触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられて走行用の動力を出力可能な内燃機関と走行用の動力を入出力可能な電動機と電動機と電力のやりとりが可能な二次電池とを備えるハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、排気を浄化する触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられ走行用の動力を出力するエンジンと、走行用の動力を出力するモータと、モータと電力をやりとりするバッテリと、を備えるものにおいて、触媒を暖機する必要があるときに、走行に要求される走行用パワーがバッテリの出力制限より大きいときには、触媒暖機(点火時期を通常運転時よりも大幅に遅角することを含む)を中断し、車両全体に要求される要求パワーがエンジンから出力されながら走行するようエンジンとモータとを制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、こうした制御により、運転者の要求に対応できるようにしてドライバビリティを確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−042700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハイブリッド自動車では、触媒を暖機する必要があるときに走行用パワーがバッテリの出力制限より大きいときには、点火時期を通常運転時よりも大幅に遅角することも中断するため、触媒の浄化能力によってはエミッションが悪化してしまう場合がある。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、内燃機関の排気を浄化する浄化触媒の暖機が要求されている状態で走行用パワーをバッテリからの出力パワーだけでは賄うことができないときのエミッションの悪化を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
排気を浄化する浄化触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられて走行用のパワーを出力可能な内燃機関と、走行用のパワーを出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやりとりが可能なバッテリと、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記バッテリの状態に応じて該バッテリから出力可能な最大電力である出力制限を設定する出力制限設定手段と、
走行に要求される走行用パワーを設定する走行用パワー設定手段と、
前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記設定された出力制限に相当する出力制限相当パワーより大きいときにおいて、前記浄化触媒の暖機の進行程度である触媒暖機程度が予め定められた所定程度に至っていないときには、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至った後よりも遅い時期での点火を伴って前記内燃機関からパワーが出力されながら前記設定された走行用パワーに基づくパワーによって走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、浄化触媒の暖機要求がなされていて走行に要求される走行用パワーがバッテリから出力可能な最大電力である出力制限に相当する出力制限相当パワーより大きいときにおいて、浄化触媒の暖機の進行程度である触媒暖機程度が予め定められた所定程度に至っていないときには、触媒暖機程度が所定程度に至った後よりも遅い時期での点火を伴って内燃機関からパワーが出力されながら走行用パワーに基づくパワーによって走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。したがって、浄化触媒の暖機要求がなされていて走行用パワーが出力制限相当パワーより大きいときにおいて、触媒暖機程度が所定程度に至っていないときには、触媒暖機程度が所定程度に至った後よりも遅い時期での点火を伴って内燃機関を運転することにより、エミッションの悪化を抑制しながら浄化触媒の暖機を促進させることができる。また、浄化触媒の暖機要求がなされていて走行用パワーが出力制限相当パワーより大きいときにおいて、触媒暖機程度が所定程度に至った後は、触媒暖機程度が所定程度に至っていないときよりも早い時期での点火を伴って内燃機関を運転することにより、内燃機関の運転効率や応答性の向上を図ることができる。ここで、本発明のハイブリッド自動車において、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至ったときは、前記浄化触媒の温度が該浄化触媒の一部が活性化していると想定される温度以上になったときである、ものとすることもできる。また、本発明のハイブリッド自動車において、前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記出力制限相当パワー以下のときには、前記浄化触媒の暖機用の運転状態で前記内燃機関が運転されながら前記設定された走行用パワーによって走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する手段である、ものとすることもできる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車において、前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記出力制限相当パワーより大きいときにおいて、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至っていないときには、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至った後よりも大きなスロットル開度で前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を制御する手段である、ものとすることもできる。また、本発明のハイブリッド自動車において、前記内燃機関は、吸気バルブの開閉タイミングを変更する可変バルブタイミング機構が取り付けられてなり、前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記出力制限相当パワーより大きいときにおいて、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至っていないときには、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至った後よりも早いタイミングで前記吸気バルブが開閉されながら前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を制御する手段である、ものとすることもできる。
【0010】
また、本発明のハイブリッド自動車において、前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記出力制限相当パワーより大きいときにおいて、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至っていないときには、前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記出力制限相当パワー以下のときと同一時期での点火を伴って前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を制御し、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至った後には、前記浄化触媒の暖機要求がなされていないときと同一時期での点火を伴って前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を制御する手段である、ものとすることもできる。
【0011】
さらに、本発明のハイブリッド自動車において、前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記出力制限相当パワーより大きいときには、前記設定された走行用パワーから前記出力制限相当パワーを減じて得られる差分パワーが前記内燃機関から出力されながら前記設定された走行用パワーによって走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する手段である、ものとすることもできる。
【0012】
あるいは、本発明のハイブリッド自動車において、前記バッテリと電力のやりとりが可能で動力を入出力可能な発電機と、前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、を備え、前記電動機は、車両のいずれかの車軸に動力を出力可能に取り付けられてなり、前記制御手段は、前記内燃機関の運転に際して前記発電機を制御する手段である、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図6】エンジン22からパワーを出力しながら走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図7】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図8】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【図9】変形例のハイブリッド自動車320の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0016】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)134aを有する浄化装置134を介して外気へ排出される。
【0017】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、例えば、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランク角θcrやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Tw,燃焼室内に取り付けられた図示しない圧力センサからの筒内圧力,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128を開閉するインテークカムシャフトや排気バルブを開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカム角θci,θco,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットル開度TH,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からの吸入空気量Qa,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温Tin,浄化触媒134aの温度を検出する温度センサ134bからの触媒温度Tc,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号Voなどが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランク角θcrに基づいてクランクシャフト26の回転数即ちエンジン22の回転数Neを演算したり、エアフローメータ148からの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて体積効率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算したり、クランクポジションセンサ140からのクランク角θcrに対するカムポジションセンサ144からの吸気バルブ128のインテークカムシャフトのカム角θciの角度(θci−θcr)に基づいて吸気バルブ128の開閉タイミングVTを演算したりしている。
【0018】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0019】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0020】
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づい残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0021】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0022】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0023】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、浄化装置134の浄化触媒134aを暖機する際の動作について説明する。図3は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0024】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,触媒温度Tc,バッテリ50の出力制限Wout,浄化触媒134aの暖機要求がなされているか否かを示す触媒暖機要求フラグFcなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、触媒温度Tcは、温度センサ134bにより検出されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。バッテリ50の出力制限Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。触媒暖機要求フラグFcは、温度センサ134bからの触媒温度Tcが浄化触媒134aが活性化していると想定される活性化温度Tcact(例えば、400℃や420℃,450℃など)未満のときに値1が設定され、温度センサ134bからの触媒温度Tcが活性化温度Tcact以上のときに値0が設定されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。
【0025】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*と走行用パワーPdrv*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図4に要求トルク設定用マップの一例を示す。走行用パワーPdrv*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものに損失としてのロスLossを加えて計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数を乗じることによって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ることによって求めたりすることができる。
【0026】
続いて、触媒暖機要求フラグFcの値を調べる(ステップS120)。以下、まず、触媒暖機要求フラグFcが値0のとき即ち浄化触媒134aの暖機要求がなされていないときについて説明し、その後、触媒暖機要求フラグFcが値1のとき即ち浄化触媒134aの暖機要求がなされているときについて説明する。
【0027】
触媒暖機要求フラグFcが値0のとき、即ち、浄化触媒134aの暖機要求がなされていないときには、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて設定されるバッテリ50を充放電するのに必要なパワーとしての充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を走行用パワーPdrv*から減じて得られるパワーを要求パワーPe*として設定すると共に(ステップS170)、エンジン22の回転数NeとトルクTeとの制約としてエンジン22を効率よく運転する動作ラインと設定した要求パワーPe*とを用いて得られる回転数とトルクとをエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*として設定し(ステップS180)、設定したエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とをエンジンECU24に送信する(ステップS210)。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図5に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とは、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。また、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御,開閉タイミング制御などの制御を行なう。具体的には、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とからなる運転ポイントでエンジン22を効率よく運転するためのスロットル開度(以下、燃費用スロットル開度という)THeと点火時期(以下、燃費用点火時期という)TFeと吸気バルブ128の開閉タイミング(以下、燃費用開閉タイミングという)VTeとをそれぞれ目標スロットル開度TH*と目標点火時期TF*と目標開閉タイミングVT*として設定すると共に、吸入空気量Qaに燃料噴射係数τを乗じることによって吸入空気量Qaに応じた目標燃料噴射量Qf*を設定し、スロットル開度THが目標スロットル開度TH*となるようスロットルモータ136を駆動制御することによって吸入空気量制御を行ない、目標燃料噴射量Qf*による燃料噴射が行なわれるよう燃料噴射弁126を駆動制御することによって燃料噴射制御を行ない、目標点火時期TF*で点火が行なわれるようイグニッションコイル138を駆動制御することによって点火制御を行ない、吸気バルブ128の開閉タイミングVTが目標開閉タイミングVT*となるよう可変バルブタイミング機構150を駆動制御することによって開閉タイミング制御を行なう。
【0028】
続いて、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とエンジン22の目標トルクTe*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS220)。エンジン22からパワーを出力しながら走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図6に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0029】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0030】
こうしてモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、設定したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信して(ステップS260)、本ルーチンを終了する。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0031】
ステップS120で触媒暖機要求フラグFcが値1のとき、即ち、浄化触媒134aの暖機要求がなされているときには、走行用パワーPdrv*を、電力を駆動系のパワーに換算する換算係数kwをバッテリ50の出力制限Woutに乗じて得られる出力制限相当パワー(kw・Wout)と比較する(ステップS130)。
【0032】
走行用パワーPdrv*が出力制限相当パワー(kw・Wout)以下のときには、浄化触媒134aの暖機用の運転ポイント(浄化触媒134aの暖機に適した運転ポイント)における回転数NsetとトルクTsetとをエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに設定し(ステップS140)、設定したエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*と共に点火時期遅角指令とスロットル開度増加指令と開閉タイミング進角指令とをエンジンECU24に送信し(ステップS190)、上述したステップS220〜S260の処理によってモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信して、本ルーチンを終了する。ここで、回転数Nsetとしては、例えば、エンジン22を運転する際の下限値(例えば、1000rpmや1200rpm、1300rpm)やそれよりも若干大きな値などを用いることができ、トルクTsetとしては、例えば、値0やそれよりも若干大きな値などを用いることができる。また、点火時期遅角指令は、点火制御に用いる目標点火時期TF*を燃費用点火時期TFeよりも遅い時期にさせるための指令であり、スロットル開度増加指令は、吸入空気量制御に用いる目標スロットル開度TH*を燃費用スロットル開度THeよりも大きな開度にさせるための指令であり、開閉タイミング進角指令は、開閉タイミング制御に用いる目標開閉タイミングVT*を燃費用開閉タイミングVTeよりも早いタイミングにさせるための指令である。エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*と共に点火時期遅角指令とスロットル開度増加指令とを受信したエンジンECU24は、燃費用スロットル開度THeよりも大きな開度を目標スロットル開度TH*として設定して吸入空気量制御を行なうと共に燃費用点火時期TFeよりも遅い時期を目標点火時期TF*として設定して点火制御を行ない、燃費用開閉タイミングTFeよりも早いタイミングを目標開閉タイミングVT*として設定して開閉タイミング制御を行なう。なお、燃料噴射量制御については、前述したのと同様、吸入空気量Qaに応じて目標燃料噴射量Qf*を設定して行なう。いま、浄化触媒134aの暖機要求がなされているときを考えているから、目標点火時期TF*としては、燃費用点火時期TFeよりも遅い範囲内で浄化触媒134aの暖機に適した時期(以下、触媒暖機用点火時期という)TFcを用いればよく、目標スロットル開度TH*や目標開閉タイミングVT*としては、目標点火時期TF*として燃費用点火時期TFeに代えて触媒暖機用点火時期TFcを用いることによるエンジン22からの出力パワーの減少分を補えるように定めた補正値ΔTHや補正値ΔVTを用いてそれぞれ補正値ΔTHだけ燃費用スロットル開度THeよりも大きな開度や補正値ΔVTだけ燃費用開閉タイミングVTeよりも早いタイミングを用いればよい。このように、浄化触媒134aの暖機要求がなされていないときよりも点火時期を遅くすることにより、浄化触媒134aの暖機を促進させることができる。また、それによるエンジン22からの出力パワーの減少をスロットル開度を大きくしたり吸気バルブ128の開閉タイミングを早くしたりすることによって補うから、エンジン22を目標回転数Ne*と目標トルクTe*とからなる運転ポイントまたはその近傍で運転しながら浄化触媒134aを暖機することができる。
【0033】
ステップS130で走行用パワーPdrv*が出力制限相当パワー(kw・Wout)より大きいときには、走行用パワーPdrv*から出力制限相当パワー(kw・Wout)を減じて得られる差分パワー(Pdrv*−kw・Wout)をエンジン22から出力すべき要求パワーPe*として設定し(ステップS150)、設定した要求パワーPe*と動作ラインとを用いて前述の図5により得られる回転数とトルクとをエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*として設定し(ステップS160)、触媒温度Tcを、浄化触媒134aの暖機の進行程度である触媒暖機程度が予め定められた所定程度に至ったか否かを判定するための閾値Tcrefと比較する(ステップS200)。閾値Tcrefは、例えば、浄化触媒134aの一部(例えば、浄化触媒134aの上流側の端面周辺の部位など)が活性化していると想定されるときに温度センサ134bにより検出される触媒温度Tcなどを用いることができ、例えば、180℃や200℃,220℃などを用いることができる。なお、浄化触媒134aの一部として浄化触媒134aの上流側の端面周辺の部位を例示したのは、エンジン22の運転時に、浄化触媒134aのうち上流側の方が下流側よりも温度が上昇しやすく活性化しやすいためである。
【0034】
触媒温度Tcが閾値Tcref未満のときには、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*と共に点火時期遅角指令とスロットル開度増加指令と開閉タイミング進角指令とをエンジンECU24に送信し(ステップS190)、上述したステップS220〜S260の処理によってモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信して、本ルーチンを終了し、触媒温度Tcが閾値Tcref以上のときには、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とをエンジンECU24に送信し(ステップS200)、上述したステップS220〜S260の処理によってモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信して、本ルーチンを終了する。即ち、浄化触媒134aの暖機要求がなされていて走行用パワーPdrv*が出力制限相当パワー(kw・Wout)より大きいときにおいて、触媒温度Tcが閾値Tcref未満のときには、浄化触媒134aの暖機要求がなされていて走行用パワーPdrv*が出力制限相当パワー(kw・Wout)以下のときと同様に、触媒暖機用点火時期TFcでの点火を伴ってエンジン22を運転し、触媒温度Tcが閾値Tcref以上のときには、浄化触媒134aの暖機要求がなされていないときと同様に、燃費用点火時期TFeでの点火を伴ってエンジン22を運転するのである。触媒温度Tcが閾値Tcref未満のとき(浄化触媒134aの暖機がそれほど進行していないとき)には、触媒温度Tcが活性化温度Tcact以上のとき(浄化触媒134aの暖機が完了しているとき)よりも浄化触媒134aの浄化能力が著しく低いと想定されるため、触媒暖機用点火時期TFcで点火を行なうことにより、燃費用点火時期TFeで点火を行なうものに比して、エミッションの悪化を抑制しつつ浄化触媒134aの暖機を促進させることができる。一方、触媒温度Tcが閾値Tcref以上のとき(浄化触媒134aの暖機がある程度進行しているとき)には、触媒温度Tcが閾値Tcref未満のときよりも浄化触媒134aの浄化能力がある程度向上しており、点火時期を早くしたとしてもそれほどエミッションが悪化しないと想定されるため、燃費用点火時期TFeで点火を行なうことにより、触媒暖機用点火時期TFcで点火を行なうものに比して、エンジン22の運転効率や応答性の向上を図ることができる。もとより、浄化触媒134aの暖機要求がなされていて走行用パワーPdrv*が出力制限相当パワー(kw・Wout)より大きいときには、差分パワー(Pdrv*−kw・Wout)がエンジン22から出力されるようエンジン22を制御するから、走行用パワーPdrv*がエンジン22から出力されるようエンジン22を制御するものに比してエミッションの悪化を抑制することができる。
【0035】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、浄化触媒134aの暖機要求がなされていて走行用パワーPdrv*が出力制限相当パワー(kw・Wout)より大きいときにおいて、触媒温度Tcが閾値Tcref未満のときには、触媒温度Tcが閾値Tcref以上のときの燃費用点火時期TFeよりも遅い触媒暖機用点火時期TFcでの点火を伴ってエンジン22からパワーが出力されながら走行用パワーPdrv*に基づくパワーによって走行するようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するから、エミッションの悪化を抑制しつつ浄化触媒134aの暖機を促進させることができる。また、浄化触媒134aの暖機要求がなされていて走行用パワーPdrv*が出力制限相当パワー(kw・Wout)より大きいときにおいて、触媒温度Tcが閾値Tcref以上のときには、燃費用点火時期TFeでの点火を伴ってエンジン22を運転するから、エンジン22の運転効率や応答性の向上を図ることができる。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、浄化触媒134aの暖機要求がなされていて走行用パワーPdrv*が出力制限相当パワー(kw・Wout)より大きいときにおいて、触媒温度Tcが閾値Tcref未満のときには触媒暖機用点火時期TFcでの点火を伴ってエンジン22を運転し、触媒温度Tcが閾値Tcref以上のときには燃費用点火時期TFeでの点火を伴ってエンジン22を運転するものとしたが、それぞれ触媒暖機用点火時期TFc,燃費用点火時期TFeに限定されるものではなく、例えば、触媒温度Tcが閾値Tcref未満のときに触媒暖機用点火時期TFcよりも若干早い時期での点火を伴ってエンジン22を運転するものとしたり、触媒温度Tcが閾値Tcref以上のときに燃費用点火時期TFeよりも若干遅い時期での点火を伴ってエンジン22を運転するものとするなど、触媒温度Tcが閾値Tcref未満のときに、触媒温度Tcが閾値Tcref以上のときよりも遅い時期での点火を伴って内燃機関を運転するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、点火制御に用いる目標点火時期TF*に燃費用点火時期TFeよりも遅い時期(実施例では、触媒暖機用点火時期TFc)を設定するときには、吸入空気量制御に用いる目標スロットル開度TH*に燃費用スロットル開度THeよりも大きな開度を設定すると共に開閉タイミング制御に用いる目標開閉タイミングVT*に燃費用開閉タイミングVTeよりも早いタイミングを設定するものとしたが、目標スロットル開度TH*に燃費用スロットル開度THeよりも大きな開度を設定するものの目標開閉タイミングVT*には燃費用開閉タイミングVTeを設定するものとしてもよいし、目標開閉タイミングVT*に燃費用開閉タイミングVTeよりも早いタイミングを設定するものの目標スロットル開度TH*には燃費用スロットル開度THeを設定するものとしてもよいし、目標スロットル開度TH*に燃費用スロットル開度THeを設定すると共に目標開閉タイミングVT*に燃費用開閉タイミングVTeを設定するものとしてもよい。なお、吸気バルブ128の開閉タイミングを変更可能な可変バルブタイミング機構150に代えてまたは加えて吸気バルブ128のリフト量を変更可能な可変バルブリフト量機構を備える場合、目標開閉タイミングVT*を変更するのに代えてまたは加えてリフト量の目標値としての目標リフト量を変更するものとしてもよい。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、浄化触媒134aの暖機要求がなされていて走行用パワーPdrv*が出力制限相当パワー(kw・Wout)より大きいときには、差分パワー(Pdrv*−kw・Wout)がエンジン22から出力されるようエンジン22を制御するものとしたが、エンジン22からパワーが出力されるようエンジン22を制御するものであればよく、例えば、差分パワー(Pdrv*−kw・Wout)より若干小さなパワーや大きなパワーがエンジン22から出力されるようエンジン22を制御するものとしたり、走行用パワーPdrv*がエンジン22から出力されるようエンジン22を制御するものとしたりしてもよい。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、閾値Tcrefは、浄化触媒134aの一部(例えば、浄化触媒134aの上流側の端面周辺の部位など)が活性化していると想定されるときの触媒温度Tcなどを用いるものとしたが、触媒暖機用点火時期TFcより早い時期(実施例では、燃費用点火時期TFe)での点火を伴ってエンジン22を運転してもエミッションがそれほど悪化しないと想定されるときの触媒温度Tcや、浄化触媒134aの浄化能力がある程度向上していると想定されるときの触媒温度Tcなどを用いるものとしてもよい。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、浄化触媒134aの暖機の進行程度である触媒暖機程度が予め定められた所定程度に至ったか否かを、触媒温度Tcを用いて判定するものとしたが、触媒温度Tc以外のパラメータ、例えば、浄化触媒134aの暖機を継続している時間や、点火時期や吸入空気量Qaの積算値などから推定されるエンジン22の暖機状態などを用いて判定するものとしてもよい。
【0041】
実施例のハイブリッド自動車20では、浄化装置134に取り付けられた温度センサ134bにより触媒温度Tcを検出するものとしたが、温度センサ134bを備えず、吸入空気量Qaの積算値や吸気温Tin,冷却水温Twなどに基づいて浄化触媒134aの温度を推定するものとしてもよい。
【0042】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図7の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図7における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0043】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すると共にモータMG2からの動力を減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図8の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、駆動輪63a,63bに接続された駆動軸に変速機230を介してモータMGを取り付け、モータMGの回転軸にクラッチ229を介してエンジン22を接続する構成とし、エンジン22からの動力をモータMGの回転軸と変速機230とを介して駆動軸に出力すると共にモータMGからの動力を変速機230を介して駆動軸に出力するものとしてもよい。また、図9の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、エンジン22からの動力を変速機330を介して駆動輪63a,63bに接続された車軸に出力すると共にモータMGからの動力を駆動輪63a,63bが接続された車軸とは異なる車軸(図9における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。即ち、走行用の動力を出力する内燃機関と走行用の動力を出力する電動機とを備えるものであれば如何なるタイプのハイブリッド自動車としてもよいのである。
【0044】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、浄化触媒134aを有する浄化装置134が排気系に取り付けられたエンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「バッテリ」に相当し、電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づくバッテリ50の残容量(SOC)とバッテリ50の電池温度Tbとに基づいてバッテリ50から放電してもよい最大許容電力である出力制限Woutを演算するバッテリECU52が「出力制限設定手段」に相当し、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定すると共に設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものに損失としてのロスLossを加えた値として走行用パワーPdrv*を設定する図3の駆動制御ルーチンのステップS110の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「走行用パワー設定手段」に相当し、浄化触媒134aの暖機要求がなされていて走行用パワーPdrv*が出力制限相当パワー(kw・Wout)より大きいときにおいて、触媒温度Tcが閾値Tcref未満のときには、触媒温度Tcが閾値Tcref以上のときの燃費用点火時期TFeよりも遅い触媒暖機用点火時期TFcでの点火を伴ってエンジン22からパワーが出力されながら走行用パワーPdrv*に基づくパワーによって走行するようエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*とを設定し、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*と点火時期遅角指令とをエンジンECU24に送信すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する図3の駆動制御ルーチンのステップS120以降の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、受信したエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*と点火時期遅角指令とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24と、受信したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40と、が「制御手段」に相当する。
【0045】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど、排気を浄化する浄化触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられて走行用のパワーを出力可能なものであれば如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用のパワーを出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「バッテリ」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、電動機と電力のやりとりが可能なものであれば如何なるタイプのバッテリであっても構わない。「出力制限設定手段」としては、バッテリ50の残容量(SOC)とバッテリ50の電池温度Tbとに基づいて出力制限Woutを演算するものに限定されるものではなく、残容量(SOC)や電池温度Tbの他に例えばバッテリ50の内部抵抗などに基づいて演算するものなど、バッテリの状態に応じてバッテリから出力可能な最大電力である出力制限を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「走行用パワー設定手段」としては、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定すると共に設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものに損失としてのロスLossを加えた値として走行用パワーPdrvを設定するものに限定されるものではなく、アクセル開度Accだけに基づいて要求トルクを設定すると共にこの要求トルクに基づいて走行用パワーを設定するものや走行経路が予め設定されているものにあっては走行経路における走行位置に基づいて要求トルクを設定すると共にこの要求トルクに基づいて走行用パワーを設定するものなど、走行に要求される走行用パワーを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。「制御手段」としては、浄化触媒134aの暖機要求がなされていて走行用パワーPdrv*が出力制限相当パワー(kw・Wout)より大きいときにおいて、触媒温度Tcが閾値Tcref未満のときには、触媒温度Tcが閾値Tcref以上のときの燃費用点火時期TFeよりも遅い触媒暖機用点火時期TFcでの点火を伴ってエンジン22からパワーが出力されながら走行用パワーPdrv*に基づくパワーによって走行するようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するものに限定されるものではなく、浄化触媒の暖機要求がなされていて走行に要求される走行用パワーがバッテリから出力可能な最大電力である出力制限に相当する出力制限相当パワーより大きいときにおいて、浄化触媒の暖機の進行程度である触媒暖機程度が予め定められた所定程度に至っていないときには、触媒暖機程度が所定程度に至った後よりも遅い時期での点火を伴って内燃機関からパワーが出力されながら走行用パワーに基づくパワーによって走行するよう内燃機関と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0046】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
20,120,220,320 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、134a 浄化触媒、134b 温度センサ、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、229 クラッチ、230,330 変速機、MG,MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気を浄化する浄化触媒を有する浄化装置が排気系に取り付けられて走行用のパワーを出力可能な内燃機関と、走行用のパワーを出力可能な電動機と、前記電動機と電力のやりとりが可能なバッテリと、を備えるハイブリッド自動車であって、
前記バッテリの状態に応じて該バッテリから出力可能な最大電力である出力制限を設定する出力制限設定手段と、
走行に要求される走行用パワーを設定する走行用パワー設定手段と、
前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記設定された出力制限に相当する出力制限相当パワーより大きいときにおいて、前記浄化触媒の暖機の進行程度である触媒暖機程度が予め定められた所定程度に至っていないときには、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至った後よりも遅い時期での点火を伴って前記内燃機関からパワーが出力されながら前記設定された走行用パワーに基づくパワーによって走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えるハイブリッド自動車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記出力制限相当パワーより大きいときにおいて、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至っていないときには、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至った後よりも大きなスロットル開度で前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を制御する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド自動車であって、
前記内燃機関は、吸気バルブの開閉タイミングを変更する可変バルブタイミング機構が取り付けられてなり、
前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記出力制限相当パワーより大きいときにおいて、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至っていないときには、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至った後よりも早いタイミングで前記吸気バルブが開閉されながら前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を制御する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記出力制限相当パワーより大きいときにおいて、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至っていないときには、前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記出力制限相当パワー以下のときと同一時期での点火を伴って前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を制御し、前記触媒暖機程度が前記所定程度に至った後には、前記浄化触媒の暖機要求がなされていないときと同一時期での点火を伴って前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関を制御する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車であって、
前記制御手段は、前記浄化触媒の暖機要求がなされていて前記設定された走行用パワーが前記出力制限相当パワーより大きいときには、前記設定された走行用パワーから前記出力制限相当パワーを減じて得られる差分パワーが前記内燃機関から出力されながら前記設定された走行用パワーによって走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車であって、
前記触媒暖機程度が前記所定程度に至ったときは、前記浄化触媒の温度が該浄化触媒の一部が活性化していると想定される温度以上になったときである、
ハイブリッド自動車。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車であって、
前記バッテリと電力のやりとりが可能で動力を入出力可能な発電機と、
前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、
を備え、
前記電動機は、車両のいずれかの車軸に動力を出力可能に取り付けられてなり、
前記制御手段は、前記内燃機関の運転に際して前記発電機を制御する手段である、
ハイブリッド自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−71664(P2012−71664A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217361(P2010−217361)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】