説明

半導体構造体およびその形式、方法(多層埋込みストレッサを形成するための構造および方法)

【課題】デバイス・チャネル領域に歪みを誘起する半導体構造体で使用される、段階的ドーパント分布構造を有する多層埋込みストレッサを提供する。
【解決手段】本発明の多層ストレッサは、ソース/ドレイン領域が一般に位置決めされる半導体構造体の部分内に形成される。本発明の多層ストレッサは、アンドープか低濃度にドープされた第1の共形エピ半導体層と、第1のエピ半導体層に比べて高濃度にドープされた第2のエピ半導体層とを含む。第1および第2のエピ半導体層各々は、同じ格子定数を有し、この格子定数は、それらの半導体層が埋め込まれた基板の格子定数と異なっている。本発明の多層埋込みストレッサを含む構造は、応力近接と短チャネル効果の良好なバランスを実現し、さらに深いソース/ドレイン領域の形成中に一般に生じるどんな可能な欠陥もなくするか、実質的に減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体構造体およびこの半導体構造体を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、段階的ドーパント分布構造と、共形的な少なくとも第1のエピタキシャル(エピ)半導体とを有する多層埋込みストレッサを含んだ相補形金属酸化物半導体(CMOS)構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス基板中の機械的応力は、デバイス性能を調整するために広く使用されている。例えば、一般的なSi技術では、トランジスタのチャネルは、シリコンの{110}面に沿って配列される。この配列で、チャネルが膜方向で圧縮応力を受けかつ/またはチャネルの垂線方向で引っ張り応力を受けるとき、ホール移動度が増すが、一方で、シリコン膜が膜方向で引っ張り応力を受けかつ/またはチャネルの垂線方向で圧縮応力を受けるとき、電子移動度が増す。したがって、pチャネル電界効果トランジスタ(pFET)またはnチャネル電界効果トランジスタ(nFET)あるいはその両方のチャネル領域に有利に圧縮応力または引っ張り応力あるいはその両方を生じさせて、そのようなデバイスの性能を高めることができる。
【0003】
所望の応力シリコン・チャネル領域を生成する1つの可能な方法は、ソース領域とドレイン領域の間にあるチャネル領域に圧縮歪みまたは引っ張り歪みを誘起するように、CMOSデバイスのソース領域およびドレイン領域に埋込みSiGeまたはSi:Cストレッサ(すなわち、応力ウェル)を形成することである。埋込みストレッサ技術は現在よく知られているが、通常のCMOSプロセスの流れの中に埋込みストレッサを組み込むことは、極めて難しいことである。CMOSデバイスの性能の程度は、埋込みストレッサ自体によって生じる応力、埋込みストレッサ中の活性ドーパント濃度および埋込みストレッサのデバイス・チャネル領域までの近さに大きく依存している。
【0004】
埋込みストレッサ技術の上述の様々な欠陥を克服することが重要であることは、この主題の素材に向けられた膨大な技術開発によって証明される。つい最近のこの技術の進歩のいくつかは、例えば、米国特許第6,921,913号、第6,831,292号、第6,844,227号、第6,323,525号、および第5,442,205号、ならびに米国特許出願公開第20050082522A1号および第20040262694A1号に見出すことができる。
【特許文献1】米国特許第6,921,913号
【特許文献2】米国特許第6,831,292号
【特許文献3】米国特許第6,844,227号
【特許文献4】米国特許第6,323,525号
【特許文献5】米国特許第5,442,205号
【特許文献6】米国特許出願公開第20050082522A1号
【特許文献7】米国特許出願公開第20040262694A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体産業でのこれらの進歩にもかかわらず、ストレッサ近接と短チャネル効果の良好なバランスを実現する埋込みストレッサ技術のさらなる改善が必要とされている。さらに、欠陥発生の可能性をなくする埋込みストレッサ技術が必要とされている。欠陥発生は、一般に、従来技術の埋込みストレッサ技術で深いソース/ドレイン領域のイオン打込み中に起きる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、段階的ドーパント分布構造および共形的な少なくとも第1のエピ半導体層を有する多層埋込みストレッサが提供される。本発明の多層ストレッサは、ソース/ドレイン領域が一般に設けられる半導体構造体の部分の中に形成される。本発明の多層埋込みストレッサを含む構造は、応力近接と短チャネル効果の良好なバランスを実現し、さらに、深い打込みを使用した深いソース/ドレイン領域の形成中に一般に生じるどんな可能な欠陥もなくするか、実質的に減少させる。
【0007】
本発明に従って、本発明の多層埋込みストレッサを含む半導体構造体が提供される。本構造体は、
半導体基板の表面に設けられた少なくとも1つの電界効果トランジスタと、
前記半導体基板の凹領域内の少なくとも1つの電界効果トランジスタの設定場所に設けられた段階的ドーパント分布構造および少なくとも第1の共形エピタキシャル半導体層を有する多層埋込みストレッサと、を含み、前記多層埋込みストレッサは前記少なくとも1つの電界効果トランジスタのチャネル領域に歪みを誘起する。
【0008】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの電界効果トランジスタ(FET)はpFETであり、多層埋込みストレッサはSiGeを含む。本発明の他の実施形態では、少なくとも1つの電界効果トランジスタはnFETであり、多層埋込みストレッサはSi:Cを含む。本発明のさらに他の実施形態では、本構造体は、少なくとも1つのpFETと、分離領域で隔てられた少なくとも1つのnFETとを含み、前記pFETに関連した前記多層埋込みストレッサはSiGeを含み、また前記nFETに関連した前記多層埋込みストレッサはSi:Cを含む。
【0009】
上で示したように、多層埋込みストレッサは、基板の凹領域内に共形的に配置された少なくとも第1のエピ半導体層を含む。第1のエピ半導体層は、アンドープであってもよく、または低濃度にドープされてもよい。本発明の多層埋込みストレッサは、また、第1のエピ半導体層の上に配置された第2のエピ半導体層を含む。この第2のエピ半導体層は、第1のエピ半導体層のドーパント濃度に比べて高濃度にドープされる。
【0010】
pFETが単結晶Si基板の上に形成される実施形態では、多層埋込みストレッサは、凹領域内に共形的に配置された第1のエピSiGe層と、この第1のエピSiGe層の上に配置された第2のエピSiGe層とを含む。本発明に従って、第1のエピSiGeはアンドープであるか、低濃度にドープされるが、一方で、第2のエピSiGe層は、第1のエピSiGe層に比べて高濃度にドープされる。
【0011】
nFETが単結晶Si基板に形成される実施形態では、多層埋込みストレッサは、凹領域内に共形的に配置された第1のエピSi:C層と、この第1のエピSi:C層の上に配置された第2のエピSi:C層とを含む。本発明に従って、第1のエピSi:Cはアンドープであるか、低濃度にドープされるが、一方で、第2のエピSi:C層は、第1のエピSi:C層に比べて高濃度にドープされる。
【0012】
上述の構造のほかに、本発明は、また、この構造を製造する方法を提供する。全体的には、本発明の方法は、
延長スペーサを有する少なくとも1つの電界効果トランジスタを半導体基板の表面に設けるステップであって、前記半導体基板が、前記少なくとも1つの電界効果トランジスタの設定場所に凹領域を有する該ステップと、
前記凹領域内の前記半導体基板の露出表面に第1のエピタキシャル半導体層を共形的に成長させるステップであって、前記第1のエピタキシャル半導体層の格子定数が、前記半導体基板の格子定数と異なっている該ステップと、
前記第1のエピタキシャル半導体層の上に第2のエピタキシャル半導体層を形成するステップであって、前記第2のエピタキシャル半導体層が、第1のエピタキシャル半導体層と同じ格子定数を有し、かつ第1のエピタキシャル半導体層よりも高いドーパント濃度を有する該ステップと、
前記第1および第2のエピタキシャル半導体層の上部内に延長領域を形成するステップと、を含む。
【0013】
留意されたいことであるが、第1のエピタキシャル(エピ)半導体層は、凹領域と共形的に形成され、したがって形成された多層埋込みストレッサ(例えば、第1と第2のエピ半導体層の組合せ)は、半導体基板に形成された凹領域の外形に従っている。本発明のいくつかの実施形態では、多層埋込みストレッサは、丸くなった角を実質的に含まない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、デバイスのチャネルに近接した多層埋込みストレッサを含む構造およびそのような構造を製造する方法を提供し、これから、本出願に伴う次の記述および図面を参照してより詳細に説明される。留意されたいことであるが、図面は例示の目的のために与えられ、したがって、図面は一定の拡大比で描かれていない。
【0015】
次の説明において、本発明を徹底的に理解するために、特定の構造、構成要素、材料、寸法、処理ステップおよび技術などの特定の詳細が数多く示される。しかし、当業者は理解することであろうが、本発明はこれらの特定の詳細なしに実施することができる。他の例では、本発明を曖昧にしないようにするために、よく知られた構造または処理ステップは詳細に説明されていない。
【0016】
理解されることであろうが、1つの層、領域、または基板としての要素が他の要素「の上に(onまたはover)」あると言われるとき、それは、他の要素の直ぐ上にあることがあり、または介在する要素が存在することもある。対照的に、要素が他の要素「の直ぐ上に(directly onまたはdirectly over)」あると言われるとき、介在する要素は存在していない。また、要素が他の要素の下に(「beneath」または「under」)あると言われとき、それは他の要素の直ぐ下にあることがあり、または介在する要素が存在することがある。対照的に、要素が他の要素の「直ぐ下に(directly beneathまたはdirectly under)」あると言われるとき、介在する要素は存在しない。
【0017】
上で述べたように、段階的ドーパント分布構造と、半導体基板に設けられた凹領域内に共形的に配置された少なくとも第1のエピ半導体層とを有する多層埋込みストレッサは、少なくとも1つのCMOSデバイスを有する半導体構造体で使用するために設けられる。本発明の多層ストレッサは、ソース/ドレイン領域が一般に設けられる半導体構造体の部分の中に形成される。本発明の多層埋込みストレッサを含む構造は、応力近接と短チャネル効果の良好なバランスを実現し、さらに、深いソース/ドレイン領域の形成中に一般に生じる可能な欠陥をなくするか、実質的に減少させる。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の多層埋込みストレッサは、丸くなった角を実質的に含まない。
【0018】
最初に、図1を参照して、図1は、本発明で使用される初期構造10を示す。図示のように、初期構造10は、少なくとも1つの分離領域14が形成された半導体基板12を含む(図面には、一対の分離領域が特に示されている)。初期構造10は、また、半導体基板12の部分に形成された凹領域16を含む。凹領域16は、少なくとも1つの電界効果トランジスタ(FET)18の設定場所に設けられている。
【0019】
図1およびその他の図面はただ1つのFETを示すが、本発明は、同じ半導体基板12に複数のFETを形成することを考えている。複数のFETは、同じ導電性であってもよい(すなわち、全てnFETまたはpFET)。もしくは、複数のFETは、異なる導電性であってもよい(すなわち、いくつかのnFETおよびいくつかのpFET)。異なる複数のFETが形成されるとき、他方のFETの組を保護しながら一方のFETの組を処理するためにブロック・マスクを使用することができることを除いて、図1〜5に示す同じ基本処理ステップが使用される。
【0020】
少なくとも1つのFET18は、ゲート誘電体20、ゲート導体22、および誘電体キャップ24を含むゲート・スタックを有する。第1の狭いスペーサ26は、ゲート・スタックの側壁に位置している。デバイス・チャネル25は、基板12のメサ部分に位置している。
【0021】
初期構造の様々な構成要素は、当業者によく知られている従来の材料で構成されている。また、第1の狭いスペーサ26形成までの、但し凹領域16の形成を含まない初期構造10は、当業者によく知られた技術を利用して製造される。
【0022】
本発明で使用される初期構造10の半導体基板12は、Si、Ge、SiGe、SiC、SiGeC、Ga、GaAs、InAs、InP、および全ての他のIII/VまたはII/VI化合物半導体を含み、これらに限定されない任意の半導体材料を含む。半導体基板12は、また、有機半導体または、Si/SiGe、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、またはSiGe・オン・インシュレータ(SGOI)のような層状半導体を含むことができる。本発明のいくつかの実施形態では、半導体基板12は、Si含有半導体材料、すなわちシリコンを含む半導体材料で構成されるのが好ましい。半導体基板12は、ドープされていてもよく、アンドープでもよく、または、ドープ領域とアンドープ領域を含むことができる。本発明に従って、半導体基板12は、後で形成される埋込み多層ストレッサと異なる第1の格子定数を有している。
【0023】
SOI基板が使用されるとき、その基板は、上部半導体および下部半導体、例えば埋込み絶縁層で少なくとも部分的に分離されたSi層を含む。埋込み絶縁層は、例えば、結晶または非結晶酸化物、窒化物またはそれらの任意の組合せを含む。好ましくは、埋込み絶縁層は酸化物である。一般に、埋込み絶縁層は、層転写プロセスの初期段階において、または例えばSIMOX(酸素イオン打込みによる分離)のようなイオン打込みアニール・プロセス中に、形成される。
【0024】
基板12は単一の結晶方向であってもよく、または代わりに、異なる結晶方向の表面領域を有するハイブリッド半導体基板を使用することもできる。ハイブリッド基板では、形成された特定のFETの性能を高める特定の結晶方向に、そのFETを製造することができる。例えば、ハイブリッド基板では、pFETを{110}結晶方向に形成することができ、一方で、nFETを{100}結晶方向に形成することができる構造を実現することができる。ハイブリッド基板が使用されるとき、SOIのような特性、バルクのような特性、またはSOIとバルクの組合せのような特性を与えることができる。
【0025】
半導体基板12は、また、第1のドープ(nまたはp)領域および第2のドープ(nまたはp)領域を含むことができる。はっきりさせるために、ドープ領域は本出願の図面に明確に示されていない。第1のドープ領域および第2のドープ領域は、同じであってもよく、または導電性またはドーピング濃度あるいはその両方が異なってもよい。これらのドープ領域は、「ウェル」として知られている。
【0026】
次に、少なくとも1つの分離領域14が、一般的に半導体基板12に形成される。分離領域14は、トレンチ分離領域(図示のような)であってもよく、またはフィールド酸化物分離領域であってもよい。トレンチ分離領域は、当業者によく知られた従来のトレンチ分離プロセスを利用して形成される。トレンチ分離領域を形成する際に、例えば、リソグラフィ、トレンチのエッチングおよびトレンチ誘電体の充填を使用することができる。場合によっては、トレンチ充填前にトレンチにライナを形成してもよく、トレンチ充填後に高密度化のステップを行ってもよく、その上、トレンチ充填の後に平坦化プロセスを行ってもよい。フィールド酸化物は、いわゆるシリコンの局部酸化プロセスを利用して形成することができる。留意されたいことであるが、少なくとも1つの分離領域は、隣接したゲートが反対の導電性であるとき一般に必要とされる隣接ゲート領域間分離を実現する。隣接したゲート領域は、同じ導電性(すなわち、両方ともnまたはp型)であってもよく、または代わりに、異なる導電性(すなわち、一方がn型で他方がp型)であってもよい。
【0027】
本発明のこの時点で、ゲート・スタックの様々な材料層の付着、リソグラフィおよびエッチングを含んだ従来CMOSプロセスの流れを、FET18の形成で使用することができる。代わりに、置換ゲート(replacement gate)・プロセスをFET18の形成で使用することができる。
【0028】
上で述べたように、FET18は、ゲート誘電体20、ゲート導体22、および誘電体キャップ24を含むゲート・スタックを有する。半導体基板12の表面に配置されるゲート誘電体20は、例えば、酸化、窒化または酸窒化のような熱成長プロセスによって形成することができる。代わりに、ゲート誘電体20は、例えば、化学気相成長(CVD)、プラズマ支援CVD、有機金属化学気相成長(MOCVD)、原子層付着(ALD)、蒸着、反応性スパッタリング、化学溶液付着、および他の同様な付着プロセスのような付着プロセスによって形成することができる。ゲート誘電体20は、また、上のプロセスの任意の組合せを利用して形成することができる。
【0029】
ゲート誘電体20は、約4.0以上の誘電率を持つ絶縁材料で構成される。本明細書で言及する全ての誘電率は、特に言及しなければ真空に対するものである。一実施形態では、ゲート誘電体20は、ハイk材料を含む。「ハイk」という用語は、4.0好ましくは7.0を超える誘電率を有する誘電体を意味する。具体的には、本発明で使用されるゲート誘電体20は、酸化物、窒化物、酸窒化物および/または金属ケイ酸塩および窒化金属ケイ酸塩を含むケイ酸塩を含むが、これらに限定されない。一実施形態では、ゲート誘電体20は、例えば、SiO、HfO、ZrO、Al、TiO、La、SrTiO、LaAlO、Y、Ga、GdGaOおよびこれらの混合物で構成されるのが、好ましい。
【0030】
ゲート誘電体20の物理的な厚さは変化してもよいが、一般に、ゲート誘電体20の厚さは、約0.5から約10nmであり、約0.5から約3nmの厚さがより一般的である。
【0031】
次に、ゲート導体22が、ゲート誘電体20の上の露出面に形成される。ゲート導体22は、例えば、ポリSi、SiGe、金属、金属合金、金属シリサイド、金属窒化物、金属炭化物、またはこれらの多層を含んだ組合せなどの導電性材料で構成される。多層が存在するとき、TiNまたはTaNなどの拡散障壁(図示されない)を各導電層の間に位置付けすることができる。
【0032】
ゲート導体22は、例えば、化学気相成長、プラズマ増速化学気相成長、原子層付着、スパッタリング、メッキ、蒸着、および任意の他の同様な付着プロセスを含んだ従来の付着プロセスを利用して形成される。ポリSiまたはSiGeがゲート電極として使用される実施形態では、インサイチュ(in−situ)付着プロセスを使用することができ、または、代わりに、付着の後に続いてイオン打込みを使用することができる。本発明のこの時点でイオン打込みによってゲート導体22をドープして、ゲート電極の仕事関数をシフトさせることができる。使用することができるドーパント・イオンの例示の例には、As、P、B、Sb、Bi、In、Al、Ga、Tlまたはこれらの混合物がある。ゲート導体22の厚さは、本発明にとって重要でない。しかし、一般に、ゲート導体22の厚さは、約20から約250nmである。
【0033】
各FET18のゲート・スタックは、また、ゲート導体22の表面に設けられた誘電体キャップ24を含む。誘電体キャップ24は、酸化物、窒化物、酸窒化物、またはこれらの任意の組合せを含み、例えば、CVD、PECVD、および蒸着を含んだ従来の付着プロセスを利用して形成される。誘電体キャップ24の厚さは、一般に約10から約100nmの範囲で変化することができる。
【0034】
第1の狭いスペーサ26は、ゲート・スタックの前(置換ゲート・プロセスの流れの場合のように)または後(従来のCMOSプロセスの流れの場合のように)に形成することができ、誘電体キャップ24と同じか異なる誘電体材料で構成されている。第1の狭いスペーサ26は、一般に、付着およびエッチングで形成され、それの最大底面に沿った幅は一般に約1から約50nmである。狭いスペーサ26は、酸化プロセスでも同様に形成することができる。第1の狭いスペーサ26は、また、一般にソース/ドレイン延長領域の形成中に存在しているので、延長スペーサと呼ぶことができる。
【0035】
基板12を処理し、FET18および第1の狭いスペーサ26を形成した後で、第1の狭いスペーサ26および誘電体キャップ24をエッチング・マスクとして使用して、各FET18の設定場所の基板12に少なくとも1つの凹領域16が形成される。凹領域16は、反応イオン・エッチング(RIE)のような異方性エッチング・プロセスを利用して形成することができる。異方性エッチング・プロセスは、分離領域14の外縁に位置合せされた外縁と第1の狭いスペーサ26に実質的に位置合せされた他の縁とを有する凹領域16を実現する。「実質的に位置合せされた」という用語は、異方性エッチング・プロセスがFET18のゲート・スタックの下を殆どまたは全くアンダーカットしないことを意味する。異方性エッチングは、本明細書で凹領域16を実現するために好ましい技術であり、また、分離を改善するのに役立って、より小さなトレンチ分離凹部をもたらす。異方性エッチングに加えて、本発明は、また、等方性エッチング・プロセスを利用することも考えている。等方性エッチング・プロセスは、一般に、各FET18のゲート・スタックの下に横方向アンダーカット領域(図示されない)を生じさせる。
【0036】
図1に示すように基板12に凹領域16を設けた後で、下にある半導体基板12の格子定数と異なった格子定数を有する第1のエピ半導体層28が、凹領域16内に形成される。留意されたいことであるが、第1のエピ半導体層28は、(後で、より詳細に説明する)第2のエピ半導体層30と共に、本発明の多層埋込みストレッサを形成する。第1のエピ半導体層28を含んだ結果として得られた構造が、例えば、図2に示されている。はっきりさせるために、図2または残りの図面では、FETの様々な要素に番号が付けられていない。
【0037】
本発明に従って、第1のエピ半導体層28はアンドープであるか、低濃度にドープされているか、またはそれらの組合せである。「低濃度にドープされた」は、第1のエピ半導体層28のドーパント濃度が約1E18原子/cm以下であることを意味し、約1E14から約1E18原子/cmのドーパント濃度がなおいっそう一般的である。形成されるデバイスの型に依存して、第1のエピ半導体層28のドーパントは、n型ドーパントまたはp型ドーパントであってもよい。
【0038】
半導体基板12が単結晶シリコンを含むとき、第1のエピ半導体層28は擬似格子整合(pseudomorphic)SiGeまたはSi:Cを含む。第1のエピ半導体層28の格子定数は、半導体基板12と比べて異なっているので、引っ張りまたは圧縮応力が凹領域16に生じる。そのような応力領域が、今度は、FETのチャネル領域に応力を加える。例えば、pFETのチャネル領域に圧縮応力を引き起こす圧縮応力埋込みストレッサを形成するために、SiGeが使用される。FETのチャネル領域は、FET18のゲート・スタックの下にある基板12の部分である。代わりに、Si:Cを使用して、nFETのチャネル領域に引っ張り応力を引き起こす引っ張り応力埋込みストレッサを形成することができる。
【0039】
本発明に従って、共形エピ成長プロセスを利用して、第1のエピ半導体層28が凹領域16内に形成される。共形エピ・プロセスの利用によって、第1のエピ半導体層28は、凹領域16を画定する半導体基板12の露出表面に対して確実に共形であるようになる。すなわち、共形エピ・プロセスは、凹領域16の外形に従った第1のエピ半導体層28を凹領域16内に実現する。
【0040】
第1のエピ半導体層28の厚さは、使用されるエピタキシャル成長プロセスのまさにその条件に依存して変化することがある。そのような条件は、当業者によく知られているので、エピタキシャル成長条件に関するさらなる詳細は、本明細書では割愛する。一般に、第1のエピ半導体層28の厚さは、約1から約30nmであり、約2から約15nmの厚さがよりいっそう一般的である。
【0041】
次に、また図3に示すように、第2のエピ半導体層30が、凹領域16内の第1のエピ半導体層28の上に形成され、例えば図3に示す構造が実現される。本発明に従って、第2のエピ半導体層30は、第1のエピ半導体層28と同じ格子定数を有し、一般に、第1のエピ半導体層28と同じ半導体材料で構成されている。しかし、第2のエピ半導体層が高濃度にドープされている点で、第2のエピ半導体層30は第1のエピ半導体層28と異なっている。「高濃度にドープされた」は、1E18原子/cmを超えるドーパント濃度(p型またはn型)を意味し、1E18超から約1E22原子/cmまでのドーパント濃度がよりいっそう一般的である。単結晶Si基板が使用される本出願の一実施形態では、第2のエピ半導体層30は、擬似格子整合SiGeまたはSi:Cを含む。
【0042】
第2のエピ半導体層30は、上述の共形エピ・プロセスを含んだ従来のエピタキシャル成長プロセスによって形成される。
【0043】
図4は、ソース/ドレイン延長領域のイオン打込み時の構造を示し、参照数字32は、ソース/ドレイン延長領域の形成において使用されるイオンを意味する。留意されたいことであるが、ソース/ドレイン延長領域は、第2のエピ半導体層30の上部ならびに半導体基板12のメサ部の側壁に位置する第1のエピ半導体層28の上部に形成される。ソース/ドレイン延長領域のイオン打込みは、当業者によく知られている標準的な条件を利用して行われる。一般に、浅い接合を有しドーパント濃度が1E19から1E23原子/cmであるソース/ドレイン延長が設けられる。活性化アニールがイオン打込みの後に続いて打込み種を活性化することができ、または、ソース/ドレイン延長の活性化は、使用されることがあるその後の熱プロセスで行われてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、延長打込みと共にハロー打込み(halo implant)が行われることがある。本発明のさらに他の実施形態では、ハロー打込みは、半導体基板を凹ます前に行うことができる。従来のハロー打込み条件が、本出願で使用される。
【0045】
図5は、第1および第2のエピ半導体層の上部に設けられたソース/ドレイン領域34を含む構造を示す。図5は、また、第2の広いスペーサ36が第1の狭いスペーサ26に接して形成された後の構造を示す。第2の広いスペーサ36は、必ずしも常にではないが一般に、第1の狭いスペーサ26と異なる絶縁材料で構成される。第2のエピ半導体層30に接する第2の広いスペーサ36の底面に沿って測定された第2の広いスペーサ36の幅は、約5から約100nmである。
【0046】
第2のエピ半導体層30は高濃度にドープされているので、従来の深いソース/ドレイン・イオン打込みはなくすることができ、したがって多層埋込みストレッサ(すなわち、エピ半導体層28および30)に損傷が発生することはない。しかし、いくつかの実施形態では、従来の深いソース/ドレイン・イオン打込みが行われることがある。
【0047】
上述のプロセスは、デバイスのチャネルに近接した段階的ドーパント分布構造を有する多層埋込みストレッサ(すなわち、エピ半導体層28および30)を含む構造を実現する。「近接した」は、本発明のストレッサが、デバイスのチャネルから約30nm以下の距離内にあることを意味する。この距離は、一般に、第1の狭いスペーサ26の幅である。従来技術のプロセスでは、埋込みストレッサは、一般に、上述の第1および第2のスペーサの幅だけデバイス・チャネルからさらに離れている。
【0048】
本出願の他の有利点は、段階的ドーパント分布構造と凹領域内に共形的に配置された少なくとも第1のエピ半導体層とを有する本発明の多層埋込みストレッサが、従来構造に比べて、閾値電圧の低下を改善し、さらに短チャネル効果を殆どまたは全くなくすることである。エピ・プロセスまたは続く熱プロセスで、第1のアンドープ・エピ層または低濃度ドープ・エピ層のために、チャネル中へのドーパント拡散は非常に少なくなり、一方で、ストレッサ全体は、チャネルに非常に近接している。これによって、短チャネル効果が著しく減少し、かつ高いチャネル応力が維持される。
【0049】
本発明は、好ましい実施形態に関して具体的に示し説明したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形および細部の上述および他の変更を加えることができることは、当業者は理解するであろう。したがって、本発明は、説明され図示されたまさにその形および細部に限定されず、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる意図である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】狭い単一スペーサを含む電界効果トランジスタの設定場所の基板の一部分が凹んでいる構造を示す実体図(断面図による)である。
【図2】基板と異なる格子定数を有する第1のエピ半導体層を基板の凹部内に共形的に配置した後の図1の構造を示す実体図(断面図による)である。
【図3】第1のエピ半導体層と同じ格子定数を有する第2のエピ半導体層を基板の凹部内に配置した後の図2の構造を示す実体図(断面図による)である。
【図4】第1および第2の半導体層の上部にソース/ドレイン延長領域を形成しているときの図3の構造を示す実体図(断面図による)である。
【図5】第1の狭いスペーサに接する第2の広いスペーサを形成した後の図4の構造を示す実体図(断面図による)である。
【符号の説明】
【0051】
12 半導体基板
14 分離領域
16 凹領域
18 電界効果トランジスタ
26 第1の狭いスペーサ
28 第1のエピ半導体層
30 第2のエピ半導体層
34 ソース/ドレイン領域
36 第2の広いスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
応力デバイス・チャネルを有する半導体構造体であって、
半導体基板の表面に設けられた少なくとも1つの電界効果トランジスタと、
前記半導体基板の凹領域内にあり前記少なくとも1つの電界効果トランジスタの設定場所に設けられた段階的ドーパント分布構造および少なくとも第1の共形エピ半導体層を有する多層埋込みストレッサと、を含み、前記多層埋込みストレッサが前記少なくとも1つの電界効果トランジスタのチャネル領域に歪みを誘起する半導体構造体。
【請求項2】
前記多層埋込みストレッサが、前記半導体基板と異なる格子定数を有する、請求項1に記載の半導体構造体。
【請求項3】
前記多層埋込みストレッサが、前記第1の共形エピタキシャル半導体層上に配置された第2のエピタキシャル半導体層をさらに含む、請求項1に記載の半導体構造体。
【請求項4】
前記第1のエピタキシャル半導体層が、アンドープであるか、約1E18原子/cm以下のドーパント濃度を有する、請求項1に記載の半導体構造体。
【請求項5】
前記第2のエピタキシャル半導体層が、1E18原子/cmよりも高いドーパンド濃度を有する、請求項3に記載の半導体構造体。
【請求項6】
前記半導体基板が、単結晶Si基板であり、前記多層埋込みストレッサがSiGeを含む、請求項1に記載の半導体構造体。
【請求項7】
前記半導体基板が、単結晶Si基板であり、前記多層埋込みストレッサがSi:Cを含む、請求項1に記載の半導体構造体。
【請求項8】
前記少なくとも1つの電界効果トランジスタが、pFETおよびnFETを含み、前記pFETに関連した前記多層埋込みストレッサが圧縮応力を受け、前記nFETに関連した前記多層埋込みストレッサが引っ張り応力を受ける、請求項1に記載の半導体構造体。
【請求項9】
前記圧縮応力を受ける多層埋込みストレッサが、SiGeを含み、前記引っ張り応力を受ける多層埋込みストレッサが、Si:Cを含む、請求項8に記載の半導体構造体。
【請求項10】
前記多層埋込みストレッサの上部に延長領域をさらに含む、請求項1に記載の半導体構造体。
【請求項11】
単結晶Si基板の表面に設けられた少なくとも1つのp電界効果トランジスタと、
前記基板の凹領域内にあり前記少なくとも1つのp電界効果トランジスタの設定場所に設けられた段階的ドーパント分布構造および少なくとも第1の共形エピタキシャル半導体層を有する多層埋込みSiGeストレッサと、を含む半導体構造体であって、
前記多層埋込みSiGeストレッサが、前記少なくとも1つのp電界効果トランジスタのチャネル領域に圧縮歪みを誘起する半導体構造体。
【請求項12】
応力デバイス・チャネルを有する半導体構造体を形成する方法であって、
延長スペーサを有する少なくとも1つの電界効果トランジスタを半導体基板の表面に設けるステップであって、前記半導体基板が、前記少なくとも1つの電界効果トランジスタの設定場所に凹領域を有する該ステップと、
前記凹領域内の前記半導体基板の露出表面に第1のエピタキシャル半導体層を共形的に成長させるステップであって、前記第1のエピタキシャル半導体層の格子定数が、前記半導体基板の格子定数と異なっている該ステップと、
前記第1のエピタキシャル半導体層の上に第2のエピタキシャル半導体層を形成するステップであって、前記第2のエピタキシャル半導体層が、前記第1のエピタキシャル半導体層と同じ格子定数を有し、かつ前記第1のエピタキシャル半導体層よりも高いドーパント濃度を有する該ステップと、
前記第1および第2のエピタキシャル半導体層の上部内に延長領域を形成するステップと、を含む方法。
【請求項13】
前記凹領域が、異方性エッチングによって形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記凹領域が、等方性エッチングによって形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のエピタキシャル半導体層が、アンドープであるか、約1E18原子/cm以下のドーパント濃度を有するように形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のエピタキシャル半導体層が、1E18原子/cmよりも高いドーパント濃度を有するように形成される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記半導体基板が単結晶Si基板であり、前記第1および第2のエピタキシャル半導体層がSiGeを含む多層埋込みストレッサを形成する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記半導体基板が単結晶Si基板であり、前記第1および第2のエピタキシャル半導体層がSi:Cを含む多層埋込みストレッサを形成する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの電界効果トランジスタが、pFETおよびnFETを含み、前記pFETに関連した前記第1および第2のエピタキシャル半導体層が圧縮応力を受け、前記nFETに関連した前記第1および第2のエピタキシャル半導体層が引っ張り応力を受ける、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記延長スペーサに隣接して第2のスペーサを形成するステップをさらに含み、前記第2のスペーサは、前記延長領域を形成する前記ステップの後で形成される、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−329477(P2007−329477A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148947(P2007−148947)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】