説明

半導体装置の製造方法

【課題】更なる微細化を促進できる半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】 第1の半導体層1上に、第1半導体層1よりも絶縁化し難い第2半導体層3を形成する工程と、第2半導体層3の上面から第1半導体層1にかけて、第2半導体層3、及び第1半導体層1を露出させる溝7を形成する工程と、溝7から露出する第1半導体層1、及び第2半導体層3を絶縁化し、溝を、絶縁化した第1半導体層9で閉じる工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、微細なトレンチアイソレーションを有した半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体装置の素子分離領域とし、局所酸化(LOCal Oxidation of silicon:LOCOS)型素子分離領域に代わって、シャロートレンチアイソレーション(Shallow Trench Isolation:STI)が多用されている。STIは、LOCOSのようにバーズビークが成長しないのでマスク変換誤差が小さい。しかも、LOCOSに比べて分離領域を深く形成でき、隣接する活性領域間の絶縁距離を大きくできる。LOCOS型素子分離領域を持つ半導体装置は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
STIは微細化に有利であるが、更なる微細化のために、いくつかの困難な事情が現れてきた。
【0004】
その一つが、STIのアスペクト比が高くなることである。アスペクト比とは、トレンチの縦と横の比であり、例えば、図41に示すように、トレンチ200では、その間口径Wを分母とし、その深さDを分子とする値である。アスペクト比D/Wの値が大きくなるほど、トレンチの断面形状は、細長くなる。
【0005】
半導体装置の微細化を更に進めるためには、STIの幅、つまり間口径Wを縮小しなければならない。同時に、開口径Wが縮小されることによって短縮された活性領域間絶縁距離を補償するために、STIの深さ、つまりトレンチの深さDは深くしなければならない。結果として、STIのアスペクト比は高まる。
【0006】
アスペクトが高くなったSTIや、間口径が縮小されたSTIにおいて、困難な事情の一つが、トレンチを絶縁物によって埋め込み難くなることである。典型的には、図42に示すように、絶縁物201がトレンチ200にオーバーハングし、トレンチ200が絶縁物201によって塞がれる。トレンチ200が塞がれると、トレンチ200内に、絶縁物201を堆積できなくなり、STIが不完全なものとなる。
【特許文献1】米国特許第5,963,817号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、更なる微細化を促進できる半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1態様に係る半導体装置の製造方法は、第1の半導体層上に、前記第1半導体層よりも絶縁化し難い第2半導体層を形成する工程と、前記第2半導体層の上面から前記第1半導体層にかけて、前記第2半導体層、及び前記第1半導体層を露出させる溝を形成する工程と、前記溝から露出する前記第1半導体層、及び第2半導体層を絶縁化し、前記溝を、絶縁化した第1半導体層で閉じる工程とを具備する。
【0009】
この発明の第2態様に係る半導体装置の製造方法は、第1の半導体層上に、前記第1半導体層よりも絶縁化し難い第2半導体層を形成する工程と、前記第2半導体層の上面から前記第1半導体層にかけて、前記第2半導体層、及び前記第1半導体層を露出させる溝を形成し、前記溝に挟まれたフィン状半導体構造を形成する工程と、前記溝から露出する前記第1半導体層、及び第2半導体層を絶縁化し、前記溝を絶縁化した第1半導体層で閉じ、前記フィン状半導体構造内における前記第1半導体層の幅を前記絶縁化した第1の半導体層で狭め、前記第2半導体層を前記絶縁化した第1半導体層上にオーバーハングさせる工程とを具備する。
【0010】
この発明の第3態様に係る半導体装置の製造方法は、第1の半導体層上に、前記第1半導体層よりも絶縁化し難い第2半導体層を形成する工程と、前記第2半導体層の上面から前記第1半導体層にかけて、前記第2半導体層、及び前記第1半導体層を露出させる溝を形成し、前記溝に挟まれたフィン状半導体構造を形成する工程と、前記溝から露出する前記第1半導体層、及び第2半導体層を絶縁化し、前記溝を絶縁化した第1半導体層で閉じ、前記フィン状半導体構造内における前記第1半導体層を前記絶縁化した第1半導体層で閉じ、前記第2半導体層を、前記絶縁化した第1半導体層上に孤立させる工程とを具備する。
【0011】
この発明の第4態様に係る半導体装置の製造方法は、第1の半導体層上に、前記第1半導体層よりも絶縁化し難い第2半導体層を形成する工程と、前記第2半導体層の上面から前記第1半導体層にかけて、前記第2半導体層、及び前記第1半導体層を露出させる溝を形成し、前記第2半導体層、及び前記第1半導体層を含み、前記溝に挟まれた第1フィン状半導体構造、及び前記第1フィン状半導体構造よりも幅が広い第2フィン状半導体構造を形成する工程と、前記溝から露出する前記第1半導体層、及び第2半導体層を絶縁化し、前記溝を絶縁化した第1半導体層で閉じ、前記第1フィン状半導体構造内における前記第1半導体層を前記絶縁化した第1半導体層で閉じ、前記第2半導体層を、前記絶縁化した第1半導体層上に孤立させ、前記第2フィン状半導体構造内における前記第1半導体層の幅を前記絶縁化した第1の半導体層で狭め、前記第2半導体層を前記絶縁化した第1半導体層上にオーバーハングさせる工程とを具備する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、更なる微細化を促進できる半導体装置の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
現在では、段差被覆性(step coverage)を良好にできる絶縁物や、その製造方法が開発され、比較的、アスペクト比が高いトレンチを埋め込むことが可能な技術が確立されている。例えば、反応源にTEOS(Tetraethylorthosilicate)を、酸化剤にオゾン(O)を利用したCVD(Chemical Vapor Deposition)法による二酸化シリコンである。
【0014】
段差被覆性を良好にできる絶縁物、あるいは段差被覆性を良好にできる製造方法を用いたとしても、トレンチは半導体ウェーハ内に複雑に配置された立体的空間である。しかも、立体的空間のアスペクト比の上昇、あるいは間口径の縮小は、今後更に進展する。そのような立体空間内に、絶縁物をコンフォーマル(conformal)に堆積することは極めて困難である、と推測される。
【0015】
以下、この発明の実施形態のいくつかを、図面を参照して説明する。この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0016】
(第1実施形態)
図1〜図4は、この発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、第1の半導体層1上に、第2の半導体層3を形成する。第1の半導体層の一例は、半導体基板、即ち半導体ウェーハであり、第2の半導体層3の具体的一例は、半導体基板表面に薄く形成された層、もしくは半導体基板上に薄く堆積された薄膜である。本例において、第2の半導体層3の半導体材料は、第1の半導体層1よりも絶縁化し難い半導体材料から選ばれる。絶縁化の一例は酸化である。
【0018】
本例では、第1の半導体層1の材料として、2種類以上の元素を含む半導体材料、例えば、2種類以上の半導体元素の固溶体からなる混晶半導体(alloy semiconductor)を選び、第2の半導体層3の材料として、単元素からなる元素半導体(elemental semiconductor)を選んでいる。ただし、第2の半導体層3が、第1の半導体層1よりも絶縁化し難ければ、混晶半導体と元素半導体との積層構造に限られるものではない。
【0019】
さらに、本例では、混晶半導体として、格子定数が、元素半導体の格子定数よりも大きいものを選んでいる。第1の半導体層1の格子定数を、第2の半導体層3の格子定数よりも大きくすることで、第1の半導体層1上に形成される第2の半導体層3の格子面間隔は、第2の半導体層3が単層の場合に比べて拡がり、いわゆる“歪半導体(strained semiconductor)、もしくは歪チャネル(strained channel)”と呼ばれる構造が得られる。本明細書では、以下“歪半導体(歪シリコン)”と呼ぶ。歪半導体は、半導体の格子面間隔が拡がることで、キャリアの移動度が向上し、動作が高速な半導体装置が得られる構造の一つである。歪半導体は、上記特許文献1にも記載されている。
【0020】
第2の半導体層3が第1の半導体層1よりも絶縁化し難いこと、及び第1の半導体層1の格子定数が第2の半導体層3の格子定数よりも大きいことの双方の条件を満足する材料の一例は、第1の半導体層1がSiGe、第2の半導体層3がSiである。以下、第1の半導体層1をSiGe基板1、第2の半導体層3をSi層3と呼ぶ。
【0021】
図1に示すように、まず、SiGe基板1上に、Si層3を形成する。Si層3は、例えば、SiGe基板1上に、Siをエピタキシャル成長させることで形成される。次に、Si層3上に、マスク層5を形成する。マスク層5は、トレンチを形成する際のハードマスクとして機能する層である。本例において、マスク層5の条件は、SiGe基板1、及びSi層3に対してエッチングレートがとれること、及びSi層3の上面の絶縁化、例えば、酸化を抑制できることである。この条件を満足する材料の一例は、Siである。以下マスク層5をSiN層5と呼ぶ。
【0022】
次に、図2に示すように、SiN層5を、半導体活性領域形成パターンに、例えば、ホトリソグラフィ法を用いてパターニングする。
【0023】
次に、図3に示すように、SiN層5をエッチングし難く、Si層3、及びSiGe基板1をエッチングし易い条件で、Si層3、及びSiGe基板1を、異方性エッチング、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)を用いてエッチングする。これにより、Si層3の上面からSiGe基板1にかけて、トレンチ7が形成される。トレンチ7は、Si層3、SiGe基板1を露出させる立体空間である。
【0024】
次に、図4に示すように、Si層3、SiGe基板1の露出面を、絶縁化、例えば、酸化する。SiGe基板1は、Si層3よりも酸化しやすい。このため、SiGe酸化物9は、立体空間、本例ではトレンチ7に向かって、Siの酸化物11よりも大きく成長する。成長した結果、トレンチ7はSiGe酸化物9によって閉じられる。SiGeは、Siよりも酸化されやすい性質を持つので、酸化の方法は、如何なる方法を用いられても良い。酸化の一例を挙げるならば、塩酸酸化(hydrochloric acid oxidation)である。塩酸酸化は、水蒸気と塩酸とを含む酸化雰囲気を利用する。塩酸酸化を用いると、SiGeの酸化レートが、Siの酸化レートよりも30倍以上となることが、本件発明者によって確認された。具体的には、Siが6nm程度に酸化される条件では、SiGeは200nm程度に酸化される。塩酸酸化は、SiGeを、Siに比較して急速に酸化するので、例えば、トレンチ7をSiGe酸化物9で閉じるまでに必要な時間を短縮できる効果が期待できる。また、Siの酸化レートとSiGeの酸化レートとの比を大きくとれる、例えば、30倍以上とれるので、酸化によるSi層3の縮小を最小限に抑えることができる。これらの利点から、塩酸酸化は、本発明を実施するに際して、実用的な酸化方法の一つである、といえる。
【0025】
SiGe酸化物9は、露出面13からトレンチ7に向かって成長すると同時に、露出面13からSiGeのトレンチ7に挟まれたフィン状半導体構造、例えば、半導体活性領域15内に後退する。Si酸化物11も同様に、露出面13からトレンチ7に向かって成長すると同時に、半導体活性領域15内に後退する。SiGe酸化物9の後退速度は、Si酸化物11の後退速度よりも速いので、半導体活性領域15の断面形状は、図4に示すように、Si層3の部分で幅が広く、SiGe基板1の部分で幅が狭い、いわゆる“T字型”になる。
【0026】
第1実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、SiGe基板(第1の半導体層)1上に、SiGe基板1よりも絶縁化、例えば、酸化し難いSi層(第2半導体層)3を形成し、Si層3、及びSiGe基板1を露出させる立体空間、例えば、トレンチ7を形成する。この後、トレンチ7から露出するSiGe基板1、及びSi層3を絶縁化、例えば、酸化する。SiGe酸化物9の成長速度はSi酸化物11の成長速度よりも速いために、トレンチ7はSiGe酸化物9で閉じられる。この結果、半導体装置の微細化が進み、立体空間、例えば、トレンチ7のアスペクト比の上昇、あるいは間口径の縮小が進展した場合でも、トレンチ7を絶縁物、本例では、SiGe酸化物で埋め込むことが可能になる。
【0027】
SiGe酸化物9、及びSi酸化物11は、トレンチ7に向かって成長すると同時に、フィン状の半導体構造、例えば、半導体活性領域15内に後退する。Si酸化物11の後退速度はSiGe酸化物9の後退速度よりも遅いので、Si層3では、酸化による後退が抑制される。Si層3は、例えば、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)のチャネルになる部分である。半導体活性領域15のうち、チャネルになる部分の後退が抑制されれば、例えば、チャネル幅の減少を抑制できる。従って、MISFETの駆動能力の低下を抑制することができる。
【0028】
また、工程数の削減も可能である。典型的なSTI構造の場合、トレンチを形成し、トレンチを絶縁物で埋め込み、埋め込んだ絶縁物を、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等で平坦化する必要がある。対して、上記製造方法は、トレンチ7を形成し、トレンチ7内に露出したSi層3、SiGe基板1の露出面を絶縁化、例えば、酸化することで、STI構造を得ることができる。
【0029】
なお、Si層3の上面とSiGe酸化物9の上面との間には、ほぼSi層3の厚さ分の段差が生じる。しかし、ゲート電極を形成するための導電材料、例えば、導電性ポリシリコンが、Si層3の厚さ分の段差で、いわゆる段切れが生じないようであれば、Si層3間の段差を埋め込む埋め込み工程、及び埋め込み材を平坦化する平坦化工程を省略できることは言うまでも無い。
【0030】
このように、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、更なる微細化を促進できる半導体装置の製造方法を得ることができる。
【0031】
図5は第1実施形態に係る製造方法を利用して製造された半導体装置の一例を示す平面図である。図6は図5中のVI−VI線に沿う断面図、図7は図5中のVII−VII線に沿う断面図、図8は図5中のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【0032】
本一例に係る半導体装置はトランジスタであり、MISFET、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を示している。もちろん、第1実施形態を利用して製造される半導体装置は、本一例に限られるものではない。
【0033】
図5〜図8に示すように、半導体活性領域15は、SiGe基板1と、SiGe基板1上に形成されたSi層3とを含み、SiGe基板1の導電型、及びSi層3の導電型はそれぞれ、例えば、P型である。活性領域15の形状はフィン状である。
【0034】
フィン状の活性領域15において、Si層3のY方向に沿う長さLy-Siは、SiGe基板1のY方向に沿う長さLy-SiGeよりも長く(図6参照)、Si層3のX方向に沿う幅Wx-Siは、SiGe基板1のX方向に沿う幅Wx-SiGeよりも長い(図7参照)。かつ、Si層3のX方向に沿った2つの端部3E-X1、3E-X2は、SiGe酸化物9上に配置され、Si層3のY方向に沿った2つの端部3E-Y1、3E-Y2も同様に、SiGe酸化物9上に配置される。SiGe酸化物9は素子分離領域であるので、活性領域15の、X方向に沿った断面形状、及びY方向に沿った断面形状の双方とも、“T字型”になる。
【0035】
活性領域15には半導体装置、例えば、MOSFETが形成される。MOSFETは、Si層3の上面上に形成されたゲート絶縁膜(本例では、ゲート酸化膜)21、ゲート酸化膜21上に形成されたゲート電極23、Si層3からSiGe基板1内にかけて形成されたN型のソース/ドレイン拡散層25を含む。
【0036】
MOSFET及びSiGe酸化物9上には、ソース/ドレイン拡散層25に達する開口を有する層間絶縁膜27が形成される。開口内には、導電物、一般にプラグ29と呼ばれる導電物が形成される。層間絶縁膜27上には、プラグ29を介してソース/ドレイン拡散層25に電気的に接続される内部配線31が形成される。
【0037】
このように、第1実施形態に係る製造方法を利用することで、半導体装置、例えば、MOSFETを形成することができる。
【0038】
本一例に係るMOSFETによれば、次のような利点を得ることができる。
【0039】
ソース/ドレイン拡散層どうしを接続するチャネルが、SiGe基板3上に形成されたSi層1内に得られるので、歪半導体と呼ばれる構造になる。この結果、動作が、典型的なMOSFETに比較して高速になる。
【0040】
素子分離領域、即ちSiGe酸化物9が、フィン状の活性領域15内に後退しているので、隣接したMOSFETどうしの分離距離が増す。この結果、隣接したMOSFETどうし間に流れるリーク電流が減り、半導体集積回路装置の微細化や、低電圧動作化に有利になる。
【0041】
また、分離距離を、従来のSTI構造を持つMOSFETと同じにした場合には、半導体活性領域15の幅を大きくでき、MOSFETのチャネル幅を拡大できる。チャネル幅が拡大できることによって、MOSFETの駆動電流の向上を図ることができる。
【0042】
また、PN接合33は、フィン状の活性領域15のうち、SiGe酸化物9によって挟まれた部分にあり、PN接合33の面積が、典型的なMOSFETに比較して小さくなる。PN接合33の面積が小さくなることで、ソース/ドレイン拡散層25とバルク、本例ではSiGe基板1との間に寄生するPN接合容量が減少する。PN接合容量が減少することによって、歪半導体の典型的な構造よりも、動作が更に高速になる。
【0043】
さらに、本一例に係るMOSFETでは、PN接合33が、フィン状の活性領域15のうち、SiGe酸化物9によって挟まれた部分にある。さらに、Si層3の端部3E-X1、3E-X2、3E-Y1、3E-Y2がそれぞれ、SiGe酸化物9上に配置される。MOSFETの構造として、ソース/ドレイン拡散層25の表面に、ソース/ドレイン拡散層25とプラグ29とのコンタクト抵抗を下げるために、シリサイド層を形成する構造がある。本一例に係るMOSFETでは、例えば、ソース/ドレイン拡散層25の表面に、シリサイド層を形成する場合に、以下のような利点を得ることができる。この利点の理解のために、シリサイド層の一形成例を、本一例、及び本一例の参考例を対比させて説明する。
【0044】
図9A〜図12Aは、Si層3の端部(図中では3E-Y1、3E-Y2)がSiGe基板1上に配置された例(参考例)に係る構造を示し、図9B〜図12Bは、Si層3の端部(図中では3E-Y1、3E-Y2)がSiGe酸化物9上に配置された、本一例に係る構造を示す。
【0045】
図9A、図9Bに、ソース/ドレイン拡散層25を形成した後の断面を示す。ここまでの説明では省略したが、Si層3の表面(本例ではソース/ドレイン拡散層25の表面)上には、犠牲酸化膜41と呼ばれる酸化膜が形成される。犠牲酸化膜41は、例えば、SiN層5(図1参照)とSi層3との間に形成され、SiN層5を形成する際にSi層3に与えられるダメージや、ソース/ドレイン拡散層25を形成するためのイオン注入の際にSi層3に与えられるダメージを緩和する役目を持つ。ソース/ドレイン拡散層25の表面をシリサイド化する際には、犠牲酸化膜41は除去されなければならない。犠牲酸化膜41があると、Si層3のシリサイド化が妨げられてしまうからである。犠牲酸化膜41を除去した後の断面を図10A、図10Bに示す。
【0046】
図10A、図10Bに示すように、犠牲酸化膜41を除去する際には、酸化膜のエッチングが行われる。このエッチングや、SiN層5の剥離、STIの高さを調節するウェット処理等のエッチングの際に、Si層3の端部(図中では3E-Y1、3E-Y2)に沿ってエッチングが進行し、参考例ではSi酸化物43に、本一例ではSiGe酸化物9に、それぞれピット45が形成されることがある。ピット45が形成された状態で、高融点金属、例えば、タングステン層47を形成した後の断面図を図11A、図11Bに示す。
【0047】
図11A、図11Bに示すように、タングステン層47は、ピット45内にも形成される。タングステン層47がピット45内に形成された状態でシリサイド化を行うと、図12A、図12Bに示すように、シリサイド層49がピット45内に形成される。この結果、シリサイド層49はSi層3よりも下方に延び、シリサイド層49はPN接合33に近づく。
【0048】
図12Aに示すように、参考例では、Si層3の端部3E-Y1、3E-Y2を、SiGe基板1上に配置しているので、シリサイド層49とPN接合33との間の距離51が非常に近くなる。場合によっては、シリサイド層49がPN接合33を介してSiGe基板1に達することがある。シリサイド層49がSiGe基板1に達すると、ソース/ドレイン拡散層25が基板1(MOSFETのバックゲート)に短絡してリーク電流が増加し、低電圧動作が困難になる。最悪の場合には回路不良の原因となり、半導体集積回路装置の製造歩留りを低下させる。
【0049】
対して本一例に係るMOSFETでは、図12Bに示すように、シリサイド層49がピット45内に形成された場合でも、シリサイド層49とPN接合33との間にSiGe酸化物9が形成されているので、距離51を十分に得ることができる。この結果、参考例に比較してリーク電流の増加を抑制できる。これは、低電圧動作に有利である。もちろん、シリサイド層49とSiGe基板1との短絡もSiGe酸化物9によって抑制されるので、参考例に比較して製造歩留りも向上する。
【0050】
このように、本一例に係るMOSFETは、例えば、シリサイド層49をソース/ドレイン拡散層25の表面に形成する場合、リーク電流を抑制でき、低電圧動作に有利となること、及びシリサイド層49とSiGe基板1との短絡を抑制でき、製造歩留りが向上する、という利点を得ることができる。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態は、トレンチの幅の規定に関する例であり、様々なトレンチの幅を有した半導体装置に関する。
【0052】
図13はトレンチの幅の第1例を示す断面図、図14はトレンチの幅の第2例を示す断面図である。
【0053】
図13に示すように、トレンチ7の第1例は、第1実施形態で説明した通り、トレンチ7をSiGe酸化物9によって閉じることが可能な例である。この場合、トレンチ7の幅“Wt”は、トレンチ7の側壁(オリジナル表面は参照符号13により図示)から成長するSiGe酸化物9の厚さを“Tsg”としたとき、“Wt≦(Tsg×2)”に設定すれば良い。
【0054】
対して、図14に示すように、トレンチ7の幅“Wt”を、“Wt>(Tsg×2)”に設定した場合には、トレンチ7は、SiGe酸化物9によって閉じられなくなり、窪み61が生ずる。
【0055】
様々な回路を1つのチップに高密度に集積する半導体集積回路装置においては、トレンチ7の幅Wtの幅も様々に設定される。例えば、トランジスタ等の半導体素子を集積する密度(集積度)の大小や、トランジスタの大きさ等によって、トレンチ7の幅Wtは、様々に設定される。このため、実際の半導体集積回路装置においては、トレンチ7の幅Wtを全て、図13に示した通りに設定することが困難な場合がある。この場合には、図15に示すように、“Wt≦(Tsg×2)”に設定したトレンチ7-1と、“Wt>(Tsg×2)”に設定したトレンチ7-2とを混在させても良い。
【0056】
トレンチ7-2には窪み61が生じるが、窪み61については、例えば、図16に示すように、絶縁物63、例えば、二酸化シリコンによって埋め込むと良い。この際、窪み61のアスペクト比“Dd/Wd”は、例えば、絶縁物63によって埋め込むことが可能な値に設定すると、窪み61を十分に埋め込むことが可能である。なお、“Dd”は窪み61の深さ、“Wd”は窪み61の幅である。Si層3どうしの間に窪み65が生じているが、窪み61を絶縁物63によって埋め込む際に、窪み65についても、絶縁物63によっていっしょに埋め込んでも良い。
【0057】
第2実施形態に係る半導体装置によれば、幅が狭いトレンチ7-1、幅が広いトレンチ7-2を有する半導体装置において、トレンチ7-1が典型的な方法による埋め込みが困難になる程、アスペクト比の向上、及び間口径の縮小が進展した場合でも、トレンチ7を絶縁物、例えば、SiGe酸化物9によって埋め込むことが可能となる。
【0058】
なお、図13、及び図14に示す参照符号“Tsb”、“Tbg”、“Tbb”は、それぞれトレンチ7の側壁から後退するSiGe酸化物9の厚さ、トレンチ7の底面から成長するSiGe酸化物9の厚さ、トレンチ7の底面から後退するSiGe酸化物9の厚さを示している。また、参照符号“Tox9”、“Tox11”は、それぞれトレンチ7の側壁に形成されるSiGe酸化物9の厚さ、Si層3の側壁に形成されるSi酸化物11の厚さを示している。
【0059】
(第3実施形態)
第3実施形態は、歪半導体の構造を持つ半導体装置において、その特性を、更に向上させる半導体装置に関する。
【0060】
歪半導体の構造を持つ半導体装置、例えば、歪半導体Nチャネル型MISFETではP型Si層3に対して引張応力を生じさせ、歪半導体Pチャネル型MISFETではN型Si層3に対して圧縮応力を生じさせると、動作が更に高速になる。基本的には、P型Si層3の場合には、図17に示すように、P型Si層3の周囲に、P型Si層3に対して引張力を与える引張材料71を形成し、N型Si層3の場合には、図18に示すように、その周囲にN型Si層3に対して圧縮力を与える圧縮材料73を形成する。
【0061】
典型的なSTI構造を有したMISFETに、例えば、図17に示す構造を適用した場合を図19に示す。図19に示すMISFETは参考例である。
【0062】
図19に示すように、参考例に係るMISFETにおいて、トレンチ7の側壁上に引張材料71を形成した場合、引張材料71がPN接合33に近接する。このため、PN接合33を貫通するような欠陥75が発生し易くなる。PN接合33を貫通する欠陥75が発生すると、ソース/ドレイン拡散層25からバルク(SiGe基板1)へのリーク電流が増加し、MISFETの低電圧動作が困難になるばかりか、最悪の場合には回路不良を誘発する。これは、製造歩留りを悪化させる。
【0063】
対して、第3実施形態に係る半導体装置、例えば、MISFETでは、図20に示すように、引張材料71とPN接合33との間に、厚いSiGe酸化物9が形成されるので、図19に示すMISFETに比較して、PN接合33を貫通するような欠陥75が発生し難い。従って、ソース/ドレイン拡散層25からバルク(SiGe基板1)へのリーク電流の増加を抑制でき、MISFETの低電圧動作に有利となる。欠陥75の発生も抑制されるので、製造歩留りの悪化も抑制できる。
【0064】
図19、及び図20は、Si層3がP型、ソース/ドレイン拡散層がN型であり、Si層3に引張力を与える引張材料71を用いた例を示したが、Si層3がN型、ソース/ドレイン拡散層がP型であり、Si層3に圧縮力を与える圧縮材料73を用いた場合でも同様である。
【0065】
次に、第3実施形態に係る半導体装置の一製造方法例を説明する。
【0066】
図21、及び図22は、この発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【0067】
図21に示すように、上記図14で説明したトレンチ7の幅“Wt”が、“Wt>(Tsg×2)”に設定された構造を形成する。トレンチ7は、SiGe酸化物9によって閉じられないので、フィン状の活性領域15間には、窪み61が生ずる。
【0068】
次に、図22に示すように、引張材料71を、図21に示す構造上に堆積した後、引張材料71の表面を、例えば、CMP法を用いて平坦化し、引張材料71を窪み61内に埋め込む。
【0069】
第3実施形態に係る半導体装置は、例えば、図21、及び図22に示す工程を経ることで、製造することができる。
【0070】
次に、第3実施形態の変形例を説明する。
【0071】
(第1変形例)
図23は、この発明の第3実施形態に係る半導体装置の第1変形例を示す断面図である。
【0072】
図23に示すように、半導体集積回路は、通常、CMOS型である。即ちNチャネル型MISFETと、Pチャネル型MISFETとが、一つの半導体集積回路に混在する。従って、Nチャネル型MISFETが形成されるP型Si層3Pの周囲には、引張材料71を形成し、Pチャネル型MISFETが形成されるN型Si層3Nの周囲には、圧縮材料73を形成すれば良い。
【0073】
なお、図23に示すように、N型Si層3N(又はP型Si層3P)のうち、一部のN型Si層3N´の周囲には、引張材料71、及び圧縮材料73の双方が形成される。つまり、N型Si層3N´は、引張力、及び圧縮力を同時に受ける。このため、N型Si層3N´に形成されるPチャネル型MISFETの特性は、N型Si層3Nに形成されるPチャネル型MISFETの特性と異なることが予想される。特性の差が、集積回路上、懸念される場合には、N型Si層3N´に形成したPチャネル型MISFETを、集積回路に接続しないようにしても良い。
【0074】
(第2変形例)
図24は、この発明の第3実施形態に係る半導体装置の第2変形例を示す断面図である。
【0075】
図24に示すように、P型Si層3P、及びN型Si層3N毎に、引張材料71、及び圧縮材料73を使い分けることが難しい場合には、引張材料71、あるいは圧縮材料73のいずれかのみを使用するようにしても良い。
【0076】
第2変形例は、図21、及び図22に示した製造方法により製造できる。
【0077】
なお、第1変形例は、図25に示すように、例えば、窪み61を、引張材料71によって埋め込んだ後、P型Si層3Pはマスク75により被覆し、N型Si層3Nは露出させる。次いで、マスク75をマスクに用いて、引張材料71を除去し、窪み61を再度露出させる。次いで、露出した窪み61を、圧縮材料73によって埋め込むことで形成できる。
【0078】
(第3変形例)
図26は、この発明の第3実施形態に係る半導体装置の第3変形例を示す断面図である。
【0079】
第1、第2変形例は、トレンチ7の幅“Wt”が、“Wt>(Tsg×2)”である装置を示したが、第3実施形態は、図26に示すように、トレンチ7の幅“Wt”が、“Wt<(Tsg×2)”である装置にも適用できる。
【0080】
(第4実施形態)
第4実施形態は、活性領域15の幅の規定に関する。
【0081】
図27に示すように、トレンチ7の側壁から後退するSiGe酸化物9の厚さ“Tsb”と、活性領域15の幅“Wa”との関係を、“Wa>(Tsb×2)”とすると、SiGe酸化物9を形成した後の活性領域15に、幅“Wf”のSiGe層を残すことができる。この構造は、第1〜第3実施形態において説明した構造である。
【0082】
図28は、この発明の第4実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【0083】
しかし、図28に示すように、SiGe酸化物9の厚さ“Tsb”と、活性領域15の幅“Wa”との関係を、“Wa≦(Tsb×2)”とすると、活性領域15のうち、SiGe基板1の部分が酸化され、Si層3が、SiGe酸化物9上に形成された構造となる。この構造は、いわゆるSOI(Silicon(or Semiconductor) On Insulator)構造と等価である。
【0084】
つまり、上記実施形態において説明した製造方法は、SiGe酸化物9の厚さ“Tsb”と、活性領域15の幅“Wa”との関係を、“Wa≦(Tsb×2)”とすることで、SOI構造を、簡単に形成することができる。しかも、Si層3は、SiGe基板1上に形成されたものであるから、歪半導体による利点、例えば、キャリアの移動度が向上する、という利点も有したままのSOI構造、いわゆる歪SOI構造を得ることができる。典型的な歪SOI構造は、SiGe基板に対してSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)技術を用いる方法、絶縁基板上にSiGe基板を張り合わせる方法、及びSOI基板に酸化濃縮法を用いる方法が知られているが、いずれもプロセスが複雑で難しい。
【0085】
対して、本例は、SiGe酸化物9の厚さ“Tsb”と活性領域15の幅“Wa”との関係を、“Wa≦(Tsb×2)”として、トレンチ7を形成する。この後、酸化するだけで、歪SOI構造が得られ、簡単である。また、Si層3の厚さを薄く制御することも可能である。例えば、Si層2の厚さを、MISFETのゲート長の1/4以下の厚さにすると、ショートチャネル効果にも強い構造を得ることができる。
【0086】
次に、第4実施形態に係る半導体装置の具体的な例を説明する。
【0087】
(第1例)
図29は、第4実施形態に係る半導体装置の第1例を示す断面図である。
【0088】
第1例は、図29に示すように、活性領域15の幅“Wa”とSiGe酸化物9の厚さ“Tsb”との関係を“Wa≦(Tsb×2)”とし、トレンチ7-1の幅“Wt”とSiGe酸化物9の厚さ“Tsg”との関係を“Wt≦(Tsg×2)”とした例である。
【0089】
このように、第1例は、トレンチ7-1がSiGe酸化物9によって閉じられ、かつ、Si層3がSiGe酸化物9上に形成され、歪SOI構造をなす例である。
【0090】
(第2例)
図30は、第4実施形態に係る半導体装置の第2例を示す断面図である。
【0091】
第2例は、図30に示すように、活性領域15の幅“Wa”とSiGe酸化物9の厚さ“Tsb”との関係を“Wa≦(Tsb×2)”とした上で、トレンチ7の幅を2種類以上に設定した例である。本例では、トレンチ7-1において、幅“Wt”とSiGe酸化物9の厚さ“Tsg”との関係が“Wt≦(Tsg×2)”に設定され、トレンチ7-2において、幅“Wt”とSiGe酸化物9の厚さ“Tsg”との関係が“Wt>(Tsg×2)”に設定される。
【0092】
このように、第2例は、トレンチ7-1がSiGe酸化物9によって閉じられた部分と、窪み61が生ずる部分とがある構造において、Si層3がSiGe酸化物9上に形成され、歪SOI構造をなす例である。このような構造としても良い。
【0093】
(第3例)
図31は、第4実施形態に係る半導体装置の第3例を示す断面図である。
【0094】
第3例は、図31に示すように、一つのSiGe基板1上に、SOI構造の部分(SOI)と、バルク構造の部分(バルク)とを有する例である。具体的には、活性領域15の幅“Wa”とSiGe酸化物9の厚さ“Tsb”との関係を“Wa≦(Tsb×2)”とした部分(活性領域15-2)においてはSOI構造となり、“Wa>(Tsb×2)”とした部分(活性領域15-1)においてはバルク構造となる。
【0095】
第3例に示すように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を利用すれば、一つのSiGe基板1上に、SOI構造の部分とバルク構造の部分とを、活性領域15の幅“Wa”を変更するだけで簡単に形成できる。
【0096】
次に、第3例に係る半導体装置の適用例を説明する。
【0097】
図32は、第3例に係る半導体装置の第1の適用例を示す平面図である。
【0098】
SOI構造の利点の一つは、ソフトエラー耐性が良いことである。ソフトエラーは、半導体記憶装置において発生する現象の一つであり、記憶ノードに蓄積されたデータが、例えば、α線や中性子などの高エネルギー粒子が半導体基板を通過することによって生ずる電子と正孔とによって、反転する現象である。特に、DRAMセルやSRAMセルにおけるソフトエラーは、良く知られるところである。SOI構造は、Si層3がSiGe酸化物9上にあるだけなので、バルク構造に比べて半導体領域が狭い。このため、実施形態に示したSOI構造では、SiGe酸化物9があること、また、SiGe酸化物9上に非常に薄いSi層3があるだけなので、高エネルギー粒子が半導体層を通過する飛跡が短くなるため、発生する電子−正孔対が少ない。例えば、Si層3の具体的な厚さの一例は、SiGe層のGe濃度で決まる歪Si層の臨界膜厚値以下、具体的な数値の一例は、20nm以下である。よって、SOI構造は、バルク構造に比較してソフトエラー耐性が良い。
【0099】
そこで、図32に示すように、メモリセルアレイを、SOI構造の部分(SOI)に形成する。メモリセルアレイ以外の領域については、例えば、バルク構造とする。
【0100】
図32に示す半導体装置は、メモリセルアレイをSOI構造の部分に形成するので、メモリセルのソフトエラー耐性を良好にできる。
【0101】
図33は、第3例に係る半導体装置の第2の適用例を示す平面図である。
【0102】
第2の適用例は、第1の適用例と同様に、メモリセルアレイを有した半導体集積回路装置である。第2の適用例においても、メモリセルアレイはSOI構造(SOI)の部分に形成する。さらに、第2の適用例は、ヒューズボックス、及びレジスタを有する。ヒューズボックスはデバイス情報をプログラムする領域であり、レジスタはヒューズボックスから読み出したデバイス情報を記憶する回路である。デバイス情報の一例は、メモリセルアレイのリダンダンシ情報である。リダンダンシ情報は、電源投入時、電源投入検知信号PONに基づいてヒューズボックスから読み出され、周辺回路に隣接して設けられたレジスタに記憶される。ヒューズボックスは、情報を記憶する素子として、例えば、ヒューズを利用する。レジスタは、情報を記憶する素子として、例えば、ラッチ回路を利用する。ラッチ回路は、ほぼSRAMセルと同様であり、従来、ソフトエラー耐性が良いメモリとされていた。しかし、ラッチ回路の微細化が進むにつれ、情報をラッチするラッチノードの容量が小さくなり、例えば、DRAMセルと同様なソフトエラーの発生が懸念されるようになってきた。
【0103】
そこで、図33に示すように、レジスタをSOI構造(SOI)の部分に形成する。これにより、レジスタのソフトエラー耐性を強くすることができる。メモリセルアレイ、及びレジスタ以外の領域は、例えば、バルク構造とする。
【0104】
なお、ソフトエラーは、メモリセルがハード的に壊れる現象ではないので、データを書き直せば簡単に修復できる。メモリセルアレイにおいて発生したソフトエラーは、データを書き直せば良い。しかし、デバイス情報を記憶するレジスタは、メモリセルアレイのように、データの書き直しは考慮されていない。このため、上記レジスタにおいて、ソフトエラーが発生すると、電源を再投入しない限り修復できない。しかも、レジスタにはデバイス情報が記憶されているので、デバイス情報にソフトエラーが発生すると、集積回路自体の動作が混乱し、動作が不安定になる。つまり、デバイス情報を記憶するレジスタにおいて、そのソフトエラー耐性を強化することは、集積回路の動作の安定化に有利である。
【0105】
また、レジスタの領域は、図33に示すように、周辺回路や、メモリセルアレイに比較して狭い。上記実施形態で説明した製造方法は、活性領域15の幅“Wa”を変更するだけで、SOI構造とバルク構造とを作り分けることができ、例えば、レジスタが形成されるような狭い領域を、局所的にSOI構造にすることが可能である。
【0106】
(第4例)
第4例は、第4実施形態に、第3実施形態を組み合わせた例であり、SOI構造のSi層3の周囲に、Si層3に引張力を与える引張材料71、あるいはSi層3に圧縮力を与える圧縮材料73を有する。
【0107】
図34は、第4実施形態に係る半導体装置の第4例を示す断面図である。
【0108】
図34に示すように、第4例は窪み61を有し、この窪み61内部からSi層3、本例ではP型Si層3Pの周囲にかけて、本例では引張材料71が形成される。活性領域15-2は、SiGe酸化物9によって酸化され、歪SOI構造となる。
【0109】
第4例の構造を得るためには、活性領域15-2の幅“Wa”とSiGe酸化物9の厚さ“Tsb”との関係を、“Wa≦(Tsb×2)”とし、トレンチ7-2の幅“Wt”とSiGe酸化物9の厚さ“Tsg”との関係を、“Wt>(Tsb×2)”とすれば良い。
【0110】
このように、第4実施形態は、第3実施形態と組み合わせることが可能である。
【0111】
(第5例)
第5例は第4例と同様に、第4実施形態に第3実施形態を組み合わせた例である。
【0112】
図35は、第4実施形態に係る半導体装置の第5例を示す断面図である。
【0113】
図35に示すように、第5例は、トレンチ7-1をSiGe酸化物9によって閉じた例である。活性領域15-2は、SiGe酸化物9となり、SOI構造となる。Si層3、本例ではP型Si層3Pは、SiGe酸化物9上に形成される。引張材料71は、Si層3P間のSiGe酸化物9上に形成される。
【0114】
第5例の構造を得るためには、活性領域15-2の幅“Wa”とSiGe酸化物9の厚さ“Tsb”との関係を、“Wa≦(Tsb×2)”とし、トレンチ7-1の幅“Wt”とSiGe酸化物9の厚さ“Tsg”との関係を、“Wt≦(Tsb×2)”とすれば良い。
【0115】
(第6例)
第6例は第4例及び第5例と同様に、第4実施形態に第3実施形態を組み合わせた例である。
【0116】
図36は、第4実施形態に係る半導体装置の第6例を示す断面図である。
【0117】
図36に示すように、第6例は、一つのSiGe基板1上に、SOI構造の部分(SOI)と、バルク構造の部分(バルク)とを設けた例である。活性領域15-2は、SiGe酸化物9となり、SOI構造となる。活性領域15-1は、その側面からの一部がSiGe酸化物9となり、バルク構造となる。本例では、トレンチ7-1はSiGe酸化物9によって閉じられる。Si層3、本例ではP型Si層3Pは、SiGe酸化物9上に形成される。引張材料71は、Si層3P間のSiGe酸化物9上に形成される。
【0118】
第6例の構造を得るためには、活性領域の幅“Wa”とSiGe酸化物9の厚さ“Tsb”との関係を、“Wa≦(Tsb×2)”とした部分(活性領域15-2)と、“Wa>(Tsb×2)”とした部分(活性領域15-1)とを設け、トレンチ7-1の幅“Wt”とSiGe酸化物9の厚さ“Tsg”との関係を、“Wt≦(Tsb×2)”とすれば良い。
【0119】
第4例、第5例、及び第6例において、第4実施形態と第3実施形態との組み合わせの例を示した。しかし、第4実施形態と第3実施形態との組み合わせは、第4例、第5例、及び第6例に限られるものではなく、これら以外の如何なる組み合わせも可能である。
【0120】
(第5実施形態)
図37は、この発明の第5実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【0121】
図37に示すように、SiGe基板1を、第1実施形態において説明した塩酸酸化法を用いて酸化すると、SiGe酸化物9は、活性領域15-1(SiGe基板1)の内側に向って浸透するように成長する。例えば、活性領域15-1のうち、Si層3に近くの部分では、Si層3の酸化速度が遅いことから、活性領域15-1の酸化速度も低下する。この結果、活性領域15-1の平面面積は、Si層3と接触する部分で広く、Si層3から遠ざかるにつれて狭くなる。いわば活性領域15-1の形状はボトルネック状となる。この構造による利点は、SiGeとSiとの接触面積を大きく確保できることにある。上記実施形態の構造では、活性領域15-1が酸化されるため、SiGeとSiとの接触面積が小さくなる。このため、熱工程などのプロセス起因による歪の緩和が起きる可能性が高くなり、例えば、キャリア移動度が向上する、という利点が若干弱まる可能性がある。この点、活性領域15-1をボトルネック状とし、SiGeとSiとの接触面積を大きく確保しておけば、上記事情を解消できる。
【0122】
また、SiGe酸化物9は、活性領域15-1(SiGe基板1)の外側に向かって膨張するように成長する。SiGe酸化物9は、例えば、トレンチ7-1の側面及びトレンチ7-1の底面のそれぞれから矢印81、83に示すように成長する。この時、トレンチ7-1の底の部分においては、トレンチ7-1の側面から成長したSiGe酸化物9と、トレンチ7-1の底面から成長したSiGe酸化物9とがぶつかり、ボイド85を発生する。つまり、ボイド85を有したSTIが形成される。ボイド85を有したSTIによる利点は、STIの誘電率が低下し、STIの容量が小さくなることである。容量の小さいSTIは、半導体集積回路の動作の高速化に有利である。
【0123】
このように、第5実施形態によれば、活性領域15-1をボトルネック状とすることにより、SiGeとSiとの接触面積を大きくでき、“歪半導体”による利点が損なわれ難い、という効果を得ることができる。
【0124】
また、ボイドを有したSTIであると、STIの容量が小さくなるので、半導体集積回路の動作の高速化に有利である、という効果を得ることができる。
【0125】
(第6実施形態)
第6実施形態は、第5実施形態に、第4実施形態の歪SOI構造を適用した例である。
【0126】
図38はこの発明の第6実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【0127】
図38に示すように、第5実施形態に、第4実施形態の歪SOI構造を適用すると、Si層3の下に、SiGe層89を残すことができる。この構造による利点は、第5実施形態と同様に、Si層3がSiGe層89と接触することで、“歪半導体”による利点が損なわれ難いことにある。
【0128】
第6実施形態に示すように、第5実施形態は、第4実施形態に組み合わせることが可能である。もちろん、第5実施形態は、第4実施形態だけでなく、他の実施形態にも組み合わせることが可能である。
【0129】
(第7実施形態)
第7実施形態は、歪SOI構造の他の例である。
【0130】
図39はこの発明の第7実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図、図40は第7実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図である。
【0131】
図39及び図40に示すように、絶縁基板93は基板91上に形成される。SiGe層101は絶縁基板91上に形成される。Si層103はSiGe層101上に形成される。SiGe層101、及びSi層103はトレンチ107を有し、活性領域115が区画される。トレンチ107から露出したSiGe層101、及びSi層103の表面は酸化され、それぞれSiGe酸化物109、及びSi酸化物111が形成される。本例の活性領域115の幅は、第1〜第3実施形態と同様に、活性領域115の幅“Wa”との関係を、“Wa>(Tsb×2)”とする。従って、Si層103の下には、SiGe層101が残る。しかし、Si層103、及びSiGe層101は、絶縁基板93上に形成されるので、第7実施形態は、歪SOI構造である。
【0132】
第7実施形態による利点は、例えば、第6実施形態と同様に、Si層103の下に、SiGe層101が残っているので、SOI構造による利点、及び第1、第3、第5実施形態に示した利点の両方を生かすだけでなく、欠陥を含みやすいSiGe層を薄くすることが可能である。
【0133】
第7実施形態のような歪SOI構造を用いることも可能である。
【0134】
以上、この発明をいくつかの実施形態により説明したが、この発明は各実施形態に限定されるものではなく、その実施にあたっては発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
【0135】
また、上記実施形態はそれぞれ、単独で実施することが可能であるが、適宜組み合わせて実施することも、もちろん可能である。
【0136】
また、上記各実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、各実施形態において開示した複数の構成要件の適宜な組み合わせにより、種々の段階の発明を抽出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図2】図2はこの発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図3】図3はこの発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図4】図4はこの発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図5】図5は第1実施形態に係る製造方法を利用して製造された半導体装置の一例を示す平面図
【図6】図6は図5中のVI−VI線に沿う断面図
【図7】図7は図5中のVII−VII線に沿う断面図
【図8】図8は図5中のVIII−VIII線に沿う断面図
【図9】図9A及び図9Bはシリサイド層の形成例を示す断面図
【図10】図10A及び図10Bはシリサイド層の形成例を示す断面図
【図11】図11A及び図11Bはシリサイド層の形成例を示す断面図
【図12】図12A及び図12Bはシリサイド層の形成例を示す断面図
【図13】図13はトレンチの幅の第1例を示す断面図
【図14】図14はトレンチの幅の第2例を示す断面図
【図15】図15はこの発明の第2実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図
【図16】図16はこの発明の第2実施形態に係る半導体装置の他例を示す断面図
【図17】図17は歪半導体構造を持つ半導体装置の一例を示す平面図
【図18】図18は歪半導体構造を持つ半導体装置の他例を示す平面図
【図19】図19は参考例に係る半導体装置を示す断面図
【図20】図20はこの発明の第3実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図
【図21】図21はこの発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図22】図22はこの発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図23】図23はこの発明の第3実施形態に係る半導体装置の第1変形例を示す断面図
【図24】図24はこの発明の第3実施形態に係る半導体装置の第2変形例を示す断面図
【図25】図25はこの発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図
【図26】図26はこの発明の第3実施形態に係る半導体装置の第3変形例を示す断面図
【図27】図27は活性領域の幅の第1例を示す断面図
【図28】図28は活性領域の幅の第2例を示す断面図
【図29】図29はこの発明の第4実施形態に係る半導体装置の第1例を示す断面図
【図30】図30はこの発明の第4実施形態に係る半導体装置の第2例を示す断面図
【図31】図31はこの発明の第4実施形態に係る半導体装置の第3例を示す断面図
【図32】図32は第3例に係る半導体装置の第1の適用例を示す平面図
【図33】図33は第3例に係る半導体装置の第2の適用例を示す平面図
【図34】図34はこの発明の第4実施形態に係る半導体装置の第4例を示す断面図
【図35】図35はこの発明の第4実施形態に係る半導体装置の第5例を示す断面図
【図36】図36はこの発明の第4実施形態に係る半導体装置の第6例を示す断面図
【図37】図37はこの発明の第5実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図
【図38】図38はこの発明の第6実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図
【図39】図39はこの発明の第7実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図
【図40】図40はこの発明の第7実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示す断面図
【図41】図41はアスペクト比を示す図
【図42】図42はトレンチが塞がれた状態を示す図
【符号の説明】
【0138】
1…第1の半導体層(SiGe基板)、3…第2の半導体層(Si層)、7…溝(トレンチ)、9…絶縁化した第1の半導体層(SiGe酸化物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の半導体層上に、前記第1半導体層よりも絶縁化し難い第2半導体層を形成する工程と、
前記第2半導体層の上面から前記第1半導体層にかけて、前記第2半導体層、及び前記第1半導体層を露出させる溝を形成する工程と、
前記溝から露出する前記第1半導体層、及び第2半導体層を絶縁化し、前記溝を、絶縁化した第1半導体層で閉じる工程と
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
第1の半導体層上に、前記第1半導体層よりも絶縁化し難い第2半導体層を形成する工程と、
前記第2半導体層の上面から前記第1半導体層にかけて、前記第2半導体層、及び前記第1半導体層を露出させる溝を形成し、前記溝に挟まれたフィン状半導体構造を形成する工程と、
前記溝から露出する前記第1半導体層、及び第2半導体層を絶縁化し、前記溝を絶縁化した第1半導体層で閉じ、前記フィン状半導体構造内における前記第1半導体層の幅を前記絶縁化した第1の半導体層で狭め、前記第2半導体層を前記絶縁化した第1半導体層上にオーバーハングさせる工程と
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
第1の半導体層上に、前記第1半導体層よりも絶縁化し難い第2半導体層を形成する工程と、
前記第2半導体層の上面から前記第1半導体層にかけて、前記第2半導体層、及び前記第1半導体層を露出させる溝を形成し、前記溝に挟まれたフィン状半導体構造を形成する工程と、
前記溝から露出する前記第1半導体層、及び第2半導体層を絶縁化し、前記溝を絶縁化した第1半導体層で閉じ、前記フィン状半導体構造内における前記第1半導体層を前記絶縁化した第1半導体層で閉じ、前記第2半導体層を、前記絶縁化した第1半導体層上に孤立させる工程と
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
第1の半導体層上に、前記第1半導体層よりも絶縁化し難い第2半導体層を形成する工程と、
前記第2半導体層の上面から前記第1半導体層にかけて、前記第2半導体層、及び前記第1半導体層を露出させる溝を形成し、前記第2半導体層、及び前記第1半導体層を含み、前記溝に挟まれた第1フィン状半導体構造、及び前記第1フィン状半導体構造よりも幅が広い第2フィン状半導体構造を形成する工程と、
前記溝から露出する前記第1半導体層、及び第2半導体層を絶縁化し、前記溝を絶縁化した第1半導体層で閉じ、前記第1フィン状半導体構造内における前記第1半導体層を前記絶縁化した第1半導体層で閉じ、前記第2半導体層を、前記絶縁化した第1半導体層上に孤立させ、前記第2フィン状半導体構造内における前記第1半導体層の幅を前記絶縁化した第1の半導体層で狭め、前記第2半導体層を前記絶縁化した第1半導体層上にオーバーハングさせる工程と
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁化は、酸化であることを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2006−5224(P2006−5224A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181076(P2004−181076)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】