説明

記憶回路、電子機器

【課題】新たな構成の不揮発性の記憶回路を提供する。
【解決手段】第1の記憶回路と、第2の記憶回路と、第1のスイッチと、第2のスイッチと、位相反転回路と、を有し、第1の記憶回路は、酸化物半導体膜により形成された第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、容量素子と、を有する。酸化物半導体膜により形成された第1のトランジスタと、容量素子と、を用い不揮発性の記憶回路を構成する。また、記憶回路に接続する電源線、及び信号線を少なくし、当該記憶回路に用いるトランジスタ数を減少させることで、回路規模の小さい不揮発性の記憶回路を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電源を切っても記憶している論理状態が消えない不揮発性の記憶回路に関する。また、当該記憶回路を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)などの信号処理回路は、その用途によって多種多様な構成を有しているが、一般的に、データやプログラムを記憶するためのメインメモリの他に、レジスタやキャッシュメモリなど、各種の記憶回路が設けられている。
【0003】
レジスタやキャッシュメモリ等の記憶回路は、メインメモリよりも高速でデータの読み書きを行う必要がある。よって、通常は、レジスタとしてフリップフロップ回路が、キャッシュメモリとしてSRAM(Static Random Access Memory)等が用いられる。つまり、これらのレジスタ、キャッシュメモリ等には、電源電圧の供給が途絶えるとデータを消失してしまう揮発性の記憶回路が用いられている。
【0004】
消費電力を抑えるため、データの入出力が行われない期間において信号処理回路への電源電圧の供給を一時的に停止するという方法が提案されている。その方法では、レジスタ、キャッシュメモリ等の揮発性の記憶回路の周辺に不揮発性の記憶回路を配置し、上記データをその不揮発性の記憶回路に一時的に記憶させる。こうして、信号処理回路において電源電圧の供給を停止する間も、レジスタ、キャッシュメモリ等に記憶されたデータ信号は保持される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、信号処理回路において長時間の電源電圧の供給停止を行う際には、電源電圧の供給停止の前に、揮発性の記憶回路内のデータをハードディスク、フラッシュメモリ等の外部記憶装置に移すことで、データの消失を防ぐこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−078836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたような信号処理回路では、不揮発性の記憶回路を構成する記憶素子として強誘電体が用いられている。強誘電体を用いた記憶素子では、データの書き込みを繰り返すことによって、強誘電体材料が疲労し、書き込み不良となる等の問題があり、書き換え回数が制限される。また、データの処理速度(以下、アクセススピードとも呼ぶ)、例えば、読み書きの速度が遅い。
【0008】
また、不揮発性の記憶回路として、フラッシュメモリを用いた場合、高電圧を印加してトンネル電流により電子を注入または放出する動作を行うため、データの書き換えを繰り返すことによる各記憶素子の劣化が激しい等の問題があり、書き換え回数が制限される。また、アクセススピードが遅い。
【0009】
また、揮発性の記憶回路の一つであるレジスタとして、フリップフロップ回路を用いた場合、回路規模が大きくなる。また、トランジスタを用いて当該フリップフロップ回路を構成した場合、記憶回路に用いるトランジスタ数が増加してしまう。
【0010】
上述の課題に鑑み、本発明は、電源を切っても記憶している論理状態が消えない、新たな構成の記憶回路を提供することを目的の一つとする。また、記憶回路に接続する電源線、及び信号線を少なくし、当該記憶回路に用いるトランジスタ数を減少させることで、回路規模の小さい不揮発性の記憶回路を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、第1の記憶回路と、第2の記憶回路と、第1のスイッチと、第2のスイッチと、位相反転回路と、を有し、第1の記憶回路は、酸化物半導体膜により形成された第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、容量素子と、を有する。酸化物半導体膜により形成された第1のトランジスタと、容量素子と、を用い不揮発性の記憶回路を構成する。また、記憶回路に接続する電源線、及び信号線を少なくし、当該記憶回路に用いるトランジスタ数を減少させることで、回路規模の小さい不揮発性の記憶回路を実現することができる。より詳細には以下の通りである。
【0012】
本発明の一態様は、第1の記憶回路と、第2の記憶回路と、第1のスイッチと、第2のスイッチと、位相反転回路と、を有し、第1の記憶回路は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、容量素子と、を有し、第1のトランジスタは、酸化物半導体により形成され、第1のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方は、第1の制御信号が与えられる第1の信号線に接続され、第1のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方は、容量素子の電極の一方、及び第2のトランジスタのゲート電極と接続され、容量素子の電極の他方は、接地され、第1のトランジスタのゲート電極は、第2の制御信号が与えられる第2の信号線に接続され、位相反転回路の入力端子は、第2の信号線に接続され、位相反転回路の出力端子は、第1のスイッチの入力端子と接続され、位相反転回路の第1端子は、電源電圧が与えられる電源線と接続され、位相反転回路の第2端子は、接地され、第1のスイッチの第1端子は、電源線と接続され、第1のスイッチの第2端子は、第2のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方に接続され、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、接地され、第3のトランジスタのゲート電極は、第2のトランジスタのゲート電極と接続され、第3のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方は、電源線と接続され、第3のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方は、第1のスイッチの出力端子と接続され、第2のスイッチの第1端子は、位相反転回路の出力端子と接続され、第2のスイッチの第2端子は、第2の信号線に接続され、第1のスイッチの出力端子は、第2のスイッチを介して第2の記憶回路と接続されることを特徴とする記憶回路である。
【0013】
本発明の他の一態様は、第1の記憶回路と、第2の記憶回路と、第1のスイッチと、第2のスイッチと、位相反転回路と、を有し、第1の記憶回路は、第1のトランジスタと、容量素子と、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、を有し、第1のスイッチは、第4のトランジスタと、第5のトランジスタと、を有し、第1のトランジスタは、酸化物半導体により形成され、第1のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方は、第1の制御信号が与えられる第1の信号線に接続され、第1のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方は、容量素子の電極の一方、及び第2のトランジスタのゲート電極と接続され、容量素子の電極の他方は、接地され、第1のトランジスタのゲート電極は、第2の制御信号が与えられる第2の信号線に接続され、位相反転回路の入力端子は、第2の信号線に接続され、位相反転回路の出力端子は、第4のトランジスタのゲート電極と、第5のトランジスタのゲート電極と接続され、位相反転回路の第1端子は、電源電圧が与えられる電源線と接続され、位相反転回路の第2端子は、接地され、第4のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方は、電源線と接続され、第4のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方は、第5のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方に接続され、第5のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方は、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方に接続され、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、接地され、第3のトランジスタのゲート電極は、第2のトランジスタのゲート電極と接続され、第3のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方は、電源線と接続され、第3のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方は、第4のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方、及び第5のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、第2のスイッチの第1端子は、位相反転回路の出力端子と接続され、第2のスイッチの第2端子は、第2の信号線に接続され、第4のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方、及び第5のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方は、第2のスイッチを介して第2の記憶回路と接続されることを特徴とする記憶回路である。
【0014】
また、上記各構成において、第1のトランジスタは、In、Ga及びZnを含んでなる酸化物半導体材料、またはIn、Sn及びZnを含んでなる酸化物半導体材料により形成されてもよい。
【0015】
また、本発明の他の一形態は、上記構成の記憶回路を用いた電子機器である。
【発明の効果】
【0016】
上記した新たな構成の不揮発性の記憶回路を用いることによって、電源電圧の供給を停止した後も記憶回路はデータを長期間にわたって保持し続けることができる。よって、ノーマリ・オフの駆動方法を行うことができる。したがって、記憶回路の消費電力を大幅に低減することができる。
【0017】
また、上記した新たな構成の不揮発性の記憶回路に接続する電源線、及び信号線を少なくし、当該記憶回路に用いるトランジスタ数を減少させることで、回路規模の小さい不揮発性の記憶回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】記憶回路の構成を示す図。
【図2】記憶回路の駆動方法を示すタイミングチャート。
【図3】記憶回路の駆動方法を示すタイミングチャート。
【図4】記憶回路の構成を示す図。
【図5】記憶回路の構成を示す図。
【図6】記憶回路の構成を示す図。
【図7】記憶処理装置の構成を示す図。
【図8】CPUの構成を示す図。
【図9】記憶回路に用いることができるトランジスタの作製工程を示す図。
【図10】記憶回路に用いることができるトランジスタの作製工程を示す図。
【図11】記憶回路に用いることができるトランジスタの作製工程を示す図。
【図12】記憶回路に用いることができるトランジスタの断面図を示す図。
【図13】記憶回路に用いることができるトランジスタの断面図を示す図。
【図14】携帯用の電子機器のブロック図。
【図15】電子書籍のブロック図。
【図16】計算によって得られた移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図17】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図18】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図19】計算によって得られたドレイン電流と移動度のゲート電圧依存性を説明する図。
【図20】計算に用いたトランジスタの断面構造を説明する図。
【図21】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図22】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図23】本発明の一態様に係る酸化物材料の構造を説明する図。
【図24】トランジスタの平面図、及び断面図を示す図。
【図25】トランジスタの特性を示す図。
【図26】トランジスタの特性を示す図。
【図27】トランジスタの特性を示す図。
【図28】酸化物半導体膜のXRDスペクトルを示す図。
【図29】トランジスタのオフ電流を示す図。
【図30】トランジスタの特性を示す図。
【図31】基板温度と電界効果移動度の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
なお、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れかわることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れかえて用いることができるものとする。
【0021】
また、電圧は、ある電位と基準の電位(例えばグラウンド電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、本明細書において、電圧、電位、電位差を、各々、電位、電圧、電圧差と言い換えることが可能である。
【0022】
「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0023】
図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0024】
「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものである。
【0025】
(実施の形態1)
本発明の一形態について、図1を用いて説明を行う。図1に示す記憶回路は、本発明の記憶回路100の回路構成の一例を示している。
【0026】
〈記憶回路の回路構成〉
図1に示す記憶回路100は、第1の記憶回路102と、第2の記憶回路104と、第1のスイッチ108と、第2のスイッチ110と、位相反転回路106と、を有し、第1の記憶回路102は、第1のトランジスタ112と、容量素子114と、第2のトランジスタ116と、第3のトランジスタ118と、を有している。
【0027】
また、第1のトランジスタ112は、酸化物半導体により形成され、第1のトランジスタ112のソース電極、またはドレイン電極の一方は、第1の制御信号(IN)が与えられる第1の信号線に接続され、ソース電極、またはドレイン電極の他方は、容量素子114の電極の一方、及び第2のトランジスタ116のゲート電極と接続され、容量素子114の電極の他方は、接地されている。
【0028】
なお、第1のトランジスタ112は、酸化物半導体(OS:Oxide Semiconductor)により形成されているため、図1中の第1のトランジスタ112に「OS」の記号を付記してある。
【0029】
また、図1中において、第1のトランジスタ112のソース電極またはドレイン電極の他方と、容量素子114の接続箇所にはノードa(Na)を付記してある。第1のトランジスタ112をオフ状態とすることで、ノードa(Na)、及び容量素子114の一方の電極に与えられた電位を保持することができる。
【0030】
また、第1のトランジスタ112は、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いるため、極めてオフ電流が小さいトランジスタである。酸化物半導体を用いた第1のトランジスタ112のオフ電流は、シリコン半導体などで形成されるトランジスタの10万分の1以下のオフ電流であるため、第1のトランジスタ112のリークによる、ノードa(Na)に蓄積される電荷の消失を無視することが可能である。つまり、酸化物半導体を用いた第1のトランジスタ112により、電力の供給が無くても情報の保持が可能な不揮発性の記憶回路を実現することが可能である。
【0031】
また、第1のトランジスタ112のゲート電極は、第2の制御信号(CLK)が与えられる第2の信号線に接続されている。
【0032】
また、位相反転回路106の入力端子は、第2の制御信号(CLK)が与えられる第2の信号線と接続され、位相反転回路106の出力端子は、第1のスイッチ108の入力端子と接続され、位相反転回路106の第1端子は、電源電圧(Vdd)が与えられる電源線と接続され、位相反転回路106の第2端子は、接地されている。なお、本明細書等において、「接地されている」とは、例えば、接地線(GND)と接続することである。
【0033】
なお、位相反転回路106は、入力されたクロック信号(CLK)の反転した信号であるクロック反転信号(CLKB)を出力する。反転した信号とは、入力された信号の電位がハイレベル電位(高電位ともいう)の場合には、ローレベル電位(低電位ともいう)を示し、入力された信号がローレベル電位の場合には、ハイレベル電位を示す。
【0034】
また、第1のスイッチ108の入力端子は、位相反転回路106の出力端子と接続され、第1のスイッチ108の出力端子は、第2のスイッチ110の入力端子に接続されている。また、第1のスイッチ108の第1端子は、電源電圧(Vdd)が与えられる電源線と接続され、第1のスイッチ108の第2端子は、第2のトランジスタ116のソース電極、またはドレイン電極の一方に接続され、第2のトランジスタ116のソース電極、またはドレイン電極の他方は、接地されている。
【0035】
なお、第1のスイッチ108は、クロック反転信号(CLKB)が与えられる。クロック反転信号(CLKB)がローレベル電位の時には、ノードb(Nb)に電源電圧(Vdd)のプリチャージを行う。一方、クロック反転信号(CLKB)がハイレベル電位の時には、ノードb(Nb)は、ノードa(Na)の状態に依存する。例えば、ノードa(Na)がローレベル電位の場合、第2のトランジスタ116がオフ状態となり、ノードb(Nb)は、直前の電位状態を維持し、ノードa(Na)がハイレベル電位の場合には第2のトランジスタ116がオン状態となり、ノードb(Nb)は、ローレベル電位となる。
【0036】
また、第3のトランジスタ118のゲート電極は、第2のトランジスタ116のゲート電極と接続され、第3のトランジスタ118のソース電極、またはドレイン電極の一方は、電源線と接続され、第3のトランジスタ118のソース電極、またはドレイン電極の他方は、第1のスイッチ108の出力端子と接続されている。
【0037】
また、第2のスイッチ110の第1端子は、位相反転回路106の出力端子と接続され、第2のスイッチ110の第2端子は、第2の制御信号(CLK)が与えられる第2の信号線に接続され、第1のスイッチ108の出力端子は、第2のスイッチ110を介して第2の記憶回路104と接続されている。また、第2の記憶回路104は、出力信号(OUT)が取り出される第3の信号線と接続されている。
【0038】
なお、第2のスイッチ110は、クロック信号(CLK)、及びクロック反転信号(CLKB)が与えられる。クロック信号(CLK)がローレベル電位、且つクロック反転信号(CLKB)がハイレベル電位の時に、オン状態となる。
【0039】
また、図1中において、第1のスイッチ108と第2のスイッチ110との接続箇所にはNb(ノードb)を、第2のスイッチ110と第2の記憶回路104との接続箇所には、Nc(ノードc)を、それぞれ付記してある。
【0040】
〈記憶回路の駆動方法〉
ここで、図1に示す記憶回路100の駆動方法について、図2、及び図3を用いて説明を行う。なお、記憶回路100の駆動方法として、電源電圧の供給の後、消費電力を削減するために電源電圧の供給を停止し、再び電源電圧を供給する一例を示す。図2、及び図3は、図1に示す記憶回路100の駆動方法を示すタイミングチャートであり、図2においては、電源電圧供給の後、保持されるデータがハイレベル電位についてのタイミングチャートを示しており、図3においては、電源電圧供給の後、保持されるデータがローレベル電位についてのタイミングチャートを示している。
【0041】
また、図2、及び図3に示すタイミングチャートにおいて、Vddは電源電圧(Vdd)を示し、CLKは第2の制御信号であるクロック信号(CLK)を示し、CLKBはクロック反転信号(CLKB)を示し、INは第1の制御信号である入力信号(IN)を示し、Naはノードaにおける信号(Na)を示し、Nbはノードbにおける信号(Nb)を示し、Ncはノードcにおける信号(Nc)を示し、OUTは第3の信号線からの出力信号(OUT)を示す。なお、Vddが0V(図中、ローレベル電位に対応)のときは、電源電圧が供給されていない場合に相当する。
【0042】
また、図2、及び図3において、第1の期間(図中、T1と表記)は、電源電圧供給前の初期状態の期間であり、第2の期間(図中、T2と表記)は、電源電圧供給後の通常動作を行う期間であり、第3の期間(図中、期間T3と表記)は、電源電圧供給停止中の期間であり、第4の期間(図中、T4と表記)は、電源電圧供給再開後の期間を示している。また、図2において、第1の期間(T1)乃至第4の期間(T4)には、それぞれ、各期間内の時刻を表すため、時刻t1乃至時刻t18を付記してある。
【0043】
また、図2、及び図3においては、図中Xは、信号電位が不定の状態を表している。不定の状態とは、ノードc(Nc)の電位、及び出力電位(OUT)は、第2のスイッチ110は電源供給直後がオフ状態なので、ハイレベル電位とローレベル電位のどちらの可能性もある状態を表している。
【0044】
はじめに、電源電圧供給の後、保持されるデータがハイレベル電位の場合について、図2に示すタイミングチャートを用いて説明を行う。
【0045】
〈初期状態期間、通常動作期間〉
まず、図2に示す第1の期間(T1)から、第2の期間(T2)にするために、電源電圧(Vdd)を供給した状態(0Vより大きい電源電圧とした状態)で、ハイレベル電位とローレベル電位との間で信号が周期的に変化するクロック信号(CLK)、及びクロック反転信号(CLKB)を供給する(時刻t2)。なお、クロック信号(CLK)については、電源電圧(Vdd)と同時に立ち上がる場合に、不安定な動作となる可能性があるため、電源電圧(Vdd)よりも事前に立ち上がるような構成としてもよい。
【0046】
また、電源電圧(Vdd)は、位相反転回路106、第1のスイッチ108、及び第3のトランジスタ118のソース電極、またはドレイン電極の一方の端子に与えられ、クロック信号(CLK)は、位相反転回路106の入力端子、第1のトランジスタ112のゲート電極、第2のスイッチ110の第2端子に、それぞれ与えられ、クロック反転信号(CLKB)は、位相反転回路106の出力端子より出力される。
【0047】
次に、第1の信号線より第1のトランジスタ112のソース電極、またはドレイン電極の一方に入力信号(IN)を供給する(時刻t2〜時刻t3)。
【0048】
なお、ノードa(Na)の電位は、第1のトランジスタ112のソース電極、またはドレイン電極の一方に与えられた入力信号(IN)と、第1のトランジスタ112のゲート電極に与えられたクロック信号(CLK)により決定される。基本動作としては、クロック信号(CLK)がハイレベル電位の時に、第1のトランジスタ112がオン状態となるため、入力信号(IN)がノードa(Na)に与えられる。ただし、クロック信号(CLK)がローレベル電位の時にも、第1のトランジスタ112と容量素子114とにより、ノードa(Na)は、クロック信号(CLK)が立ち下がる直前の状態の入力信号(IN)を保持することができる。
【0049】
例えば、時刻t3〜時刻t4においては、クロック信号(CLK)がローレベル電位となるが、ノードa(Na)はクロック信号(CLK)が立ち下がる直前の状態であるハイレベル電位を保持している。一方、時刻t4〜時刻t5においては、クロック信号(CLK)がハイレベル電位の際に、入力信号(IN)の供給が停止するため、ノードa(Na)にローレベル電位が書き込まれる。
【0050】
なお、図2においては、電源停止前に、クロック信号(CLK)をハイレベル電位とし、入力信号(IN)をハイレベル電位とする。その後、クロック信号(CLK)がローレベル電位の際に、入力信号(IN)の供給を停止(ローレベル電位)し、ノードa(Na)にハイレベル電位を書き込む。(時刻t6〜時刻t9)。
【0051】
また、ノードb(Nb)の電位は、クロック反転信号(CLKB)、電源電圧(Vdd)、及びノードa(Na)の電位によって決定される。例えば、クロック反転信号(CLKB)の電位がローレベル電位の時、第1のスイッチ108がプリチャージ状態となり、ノードb(Nb)の電位は、電源電圧(Vdd)と同電位となる。一方、クロック反転信号(CLKB)の電位がハイレベル電位の時、第1のスイッチ108のプリチャージ状態が終了し、ノードb(Nb)の電位は、ノードa(Na)の状態に依存する。ノードa(Na)の電位がハイレベル電位の場合、第2のトランジスタ116がオン状態となるため、ノードb(Nb)の電位はローレベル電位となる(時刻t3〜時刻t4)。
【0052】
また、ノードc(Nc)の電位は、第2のスイッチ110の状態と、ノードb(Nb)の電位によって決定される。例えば、第2のスイッチ110がオン状態の時は、ノードc(Nc)の電位は、ノードb(Nb)と同電位となり、第2のスイッチ110がオフ状態の時は、ノードc(Nc)の直前の状態を維持する。なお、第2のスイッチ110は、クロック信号(CLK)がローレベル電位、且つクロック反転信号(CLKB)がハイレベル電位の時にオン状態となる。
【0053】
また、出力信号(OUT)として、第2の記憶回路104によって、ノードc(Nc)の信号の反転信号を出力される。
【0054】
〈電源電圧供給停止前の動作〉
第3の期間(T3)は、電源電圧(Vdd)の供給が停止する期間である。よって、第2の期間(T2)の時刻t9〜時刻t10において、電源停止前の動作を行う。
【0055】
電源停止前の動作としては、クロック信号(CLK)をローレベル電位、クロック反転信号(CLKB)をハイレベル電位に、それぞれ固定する。なお、ノードa(Na)の電位は、第1のトランジスタ112と、容量素子114に保持される。
【0056】
〈電源電圧供給停止の動作〉
第3の期間(図中、T3と表記)は、電源電圧供給停止の期間である。時刻t10において、電源電圧(Vdd)の供給を停止する。電源電圧(Vdd)の供給の停止により、ノードa(Na)の電位以外の全ての電位がローレベル電位となるが、ノードa(Na)のみ電源電圧(Vdd)の供給が停止した後においても、電源電圧(Vdd)の供給停止前に与えられていたハイレベル電位が保持される。ここで、第1のトランジスタ112は、リーク電流が極めて小さいため、ノードa(Na)、及び容量素子114によって保持された信号(電位)が変動することを抑制することができる。
【0057】
〈電源電圧供給再開の動作〉
第4の期間(図中、T4と表記)は、電源電圧供給再開の動作を行う期間である。電源電圧(Vdd)の供給を再開させた後、電源電圧(Vdd)の供給停止時に固定された、ローレベル電位のクロック信号(CLK)、ハイレベル電位のクロック反転信号(CLKB)をそれぞれ供給する(時刻t13)。
【0058】
次に、ノードa(Na)に保持されたデータの読み出しを行う。ノードa(Na)の電位は、電源電圧が停止する前に保持されていたハイレベル電位となる。また、ノードb(Nb)の電位は、クロック反転信号(CLKB)がハイレベル電位であるため、ノードa(Na)の状態に依存する。ノードa(Na)の電位がハイレベル電位であるため、ノードb(Nb)の電位はローレベル電位となる。また、ノードc(Nc)の電位は、第2のスイッチ110にクロック反転信号(CLKB)のハイレベル電位が与えられているためオン状態となり、ノードb(Nb)と同電位となる。なお、出力信号(OUT)は、ノードc(Nc)の反転信号であるから、ハイレベル電位が出力される(時刻t13〜時刻t14)。
【0059】
次に、クロック信号(CLK)、及びクロック反転信号(CLKB)のレベル(信号電位)の固定を解除する。すなわち、クロック信号(CLK)、及びクロック反転信号(CLKB)を、ハイレベル電位とローレベル電位が周期的に変化する通常の信号に戻す。また、入力信号(IN)をハイレベル電位として、ノードa(Na)へのデータの書き込みを再開する(時刻t14)。
【0060】
以上が、電源電圧供給の後、保持されるデータがハイレベル電位についての駆動方法である。
【0061】
次に、電源電圧供給の後、保持されるデータがローレベル電位の場合について、図3に示すタイミングチャートを用いて説明を行う。なお、図2に示すタイミングチャートと同様な部分の説明は省略する。
【0062】
〈初期状態期間、通常動作期間〉
まず、図3に示す第1の期間(T1)から、第2の期間(T2)にするために、電源電圧(Vdd)を供給した状態(0Vより大きい電源電圧とした状態)で、ハイレベル電位とローレベル電位との間で信号が周期的に変化するクロック信号(CLK)、及びクロック反転信号(CLKB)を供給する(時刻t2)。なお、クロック信号(CLK)については、電源電圧(Vdd)と同時に立ち上がる場合に、不安定な動作となる可能性があるため、電源電圧(Vdd)よりも事前に立ち上がるような構成としてもよい。
【0063】
また、電源電圧(Vdd)は、位相反転回路106、第1のスイッチ108、及び第3のトランジスタ118のソース電極、またはドレイン電極の一方の端子に与えられ、クロック信号(CLK)は、位相反転回路106の入力端子、第1のトランジスタ112のゲート電極、第2のスイッチ110の第2端子に、それぞれ与えられ、クロック反転信号(CLKB)は、位相反転回路106の出力端子より出力される。
【0064】
次に、第1の信号線より第1のトランジスタ112のソース電極、またはドレイン電極の一方に入力信号(IN)を供給する(時刻t2〜時刻t3)。
【0065】
なお、ノードa(Na)の電位は、第1のトランジスタ112のソース電極、またはドレイン電極の一方に与えられた入力信号(IN)と、第1のトランジスタ112のゲート電極に与えられたクロック信号(CLK)により決定される。基本動作としては、クロック信号(CLK)がハイレベル電位の時に、第1のトランジスタ112がオン状態となるため、入力信号(IN)がノードa(Na)に与えられる。ただし、クロック信号(CLK)がローレベル電位の時にも、第1のトランジスタ112と容量素子114とにより、ノードa(Na)は、立ち下がる直前の状態の入力信号(IN)を保持することができる。
【0066】
なお、図3においては、電源停止前に、クロック信号(CLK)がハイレベル電位の際に、入力信号(IN)の供給を停止し、ノードa(Na)にローレベル電位を書き込む。(時刻t8〜時刻t9)。
【0067】
また、ノードb(Nb)の電位は、クロック反転信号(CLKB)、電源電圧(Vdd)、及びノードa(Na)の電位によって決定される。例えば、クロック反転信号(CLKB)の電位がローレベル電位の時、第1のスイッチ108がプリチャージ状態となり、ノードb(Nb)の電位は、電源電圧(Vdd)と同電位となる。一方、クロック反転信号(CLKB)の電位がハイレベル電位の時、第1のスイッチ108のプリチャージ状態が終了し、ノードb(Nb)の電位は、ノードa(Na)の状態に依存する。ノードa(Na)の電位がハイレベル電位の場合、第2のトランジスタ116がオン状態となるため、ノードb(Nb)の電位はローレベル電位となる。
【0068】
また、ノードc(Nc)の電位は、第2のスイッチ110の状態と、ノードb(Nb)の電位によって決定される。例えば、第2のスイッチ110がオン状態の時は、ノードc(Nc)の電位は、ノードb(Nb)と同電位となり、第2のスイッチ110がオフ状態の時は、ノードc(Nc)の直前の状態を維持する。なお、第2のスイッチ110は、クロック信号(CLK)がローレベル電位、且つクロック反転信号(CLKB)がハイレベル電位の時にオン状態となる。
【0069】
また、出力信号(OUT)は、第2の記憶回路104によって、ノードc(Nc)の信号の反転信号を出力する。
【0070】
〈電源電圧供給停止前の動作〉
第3の期間(T3)は、電源電圧(Vdd)の供給が停止する期間である。よって、第2の期間(T2)の時刻t9〜時刻t10において、電源停止前の動作を行う。
【0071】
電源停止前の動作としては、クロック信号(CLK)をローレベル電位、クロック反転信号(CLKB)をハイレベル電位に、それぞれ固定する。なお、ノードa(Na)の電位は、第1のトランジスタ112と、容量素子114に保持される。
【0072】
〈電源電圧供給停止の動作〉
第3の期間(図中、T3と表記)は、電源電圧供給停止の期間である。時刻t10において、電源電圧(Vdd)の供給を停止する。電源電圧(Vdd)の供給の停止により、全ての電位がローレベル電位となる。なお、図3においては、ノードa(Na)に保持されるデータもローレベル電位である。
【0073】
〈電源電圧供給再開の動作〉
第4の期間(図中、T4と表記)は、電源電圧供給再開の動作を行う期間である。電源電圧(Vdd)の供給を再開させた後、電源電圧(Vdd)の供給停止時に固定された、ローレベル電位のクロック信号(CLK)、ハイレベル電位のクロック反転信号(CLKB)をそれぞれ供給する(時刻t13)。
【0074】
次に、ノードa(Na)に保持されたデータの読み出しを行う。ノードa(Na)の電位は、電源電圧(Vdd)が停止する前に保持されていたローレベル電位となる。また、ノードb(Nb)の電位は、クロック反転信号(CLKB)がハイレベル電位であるため、ノードa(Na)の状態に依存する。ノードa(Na)の電位がローレベル電位であるため、ノードb(Nb)の電位はハイレベル電位となる。また、ノードc(Nc)の電位は、第2のスイッチ110にクロック反転信号(CLKB)のハイレベル電位が与えられているためオン状態となり、ノードb(Nb)と同電位となる。なお、出力信号(OUT)は、ノードc(Nc)の反転信号であるから、ローレベル電位が出力される(時刻t13〜時刻t14)。
【0075】
次に、クロック信号(CLK)、及びクロック反転信号(CLKB)のレベル(信号電位)の固定を解除する(時刻t14)。すなわち、クロック信号(CLK)、及びクロック反転信号(CLKB)を、ハイレベル電位とローレベル電位が周期的に変化する通常の信号に戻す。
【0076】
その後、入力信号(IN)をハイレベル電位とし、ノードa(Na)へのデータの書き込みを再開する(時刻t15〜時刻t16)。
【0077】
以上が、電源電圧供給の後、保持されるデータがローレベル電位についての図3に示すタイミングチャートの駆動方法である。
【0078】
以上のように、本実施の形態に示した記憶回路においては、第1の記憶回路102として、図1に示す構成とすることで、不揮発性の記憶回路とすることができる。また、記憶回路に接続する電源線、及び信号線を少なくすることで、回路規模の小さい不揮発性の記憶回路とすることができる。
【0079】
また、このような記憶回路を、レジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。よって、記憶回路全体、もしくは記憶回路を構成する一または複数の論理回路において、待機状態のときに短い時間でも電源停止を行うことができるため、消費電力を抑えることができる記憶回路、及び消費電力を抑えることができる当該記憶回路の駆動方法を提供することができる。
【0080】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0081】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1に示した記憶回路100の、より具体的な回路構成の一例について、図4を用いて説明を行う。なお、先の実施の形態1で説明した部分と同様の箇所については、同様の符号を用い、その説明は省略する。
【0082】
図4に示す記憶回路100は、第1の記憶回路102と、第2の記憶回路104と、第1のスイッチ108と、第2のスイッチ110と、位相反転回路106と、を有している。
【0083】
本実施の形態においては、第1のスイッチ108として、トランジスタを用いる場合を例示しており、これらの回路素子の接続構成は図1と同じである。
【0084】
第1のスイッチ108は、第4のトランジスタ120と、第5のトランジスタ122と、を有しており、第4のトランジスタ120のゲート電極は、第5のトランジスタ122のゲート電極と接続されている。また、第4のトランジスタ120のソース電極、またはドレイン電極の一方は、電源電圧(Vdd)が与えられる電源線と接続され、第4のトランジスタ120のソース電極、またはドレイン電極の他方は、第5のトランジスタ122のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、第5のトランジスタ122のソース電極、またはドレイン電極の他方は、第2のトランジスタ116のソース電極、またはドレイン電極の一方に接続され、第2のトランジスタ116のソース電極、またはドレイン電極の他方は、接地されている。
【0085】
また、第4のトランジスタ120のゲート電極と、第5のトランジスタ122のゲート電極には、クロック反転信号(CLKB)が与えられる。クロック反転信号(CLKB)がローレベル電位の時には、第4のトランジスタ120がオン状態となり、ノードb(Nb)に電源電圧(Vdd)のプリチャージを行う。一方、クロック反転信号(CLKB)がハイレベル電位の時には、第4のトランジスタ120がオフ状態となり、第5のトランジスタ122がオン状態となるため、ノードb(Nb)の電位は、ノードa(Na)の状態に依存する。例えば、ノードa(Na)がローレベル電位であれば、第2のトランジスタ116がオフ状態となり、ノードb(Nb)は、直前の電位状態を維持する。一方、ノードa(Na)がハイレベル電位であれば、第2のトランジスタ116がオン状態となり、ノードb(Nb)は、ローレベル電位となる。
【0086】
本実施の形態に示すように、第1のスイッチ108として、以上のような回路構成を使用することができる。
【0087】
以上のように、本実施の形態に示した記憶回路においては、第1の記憶回路102として、図4に示す構成とすることで、不揮発性の記憶回路とすることができる。また、記憶回路に接続する電源線、及び信号線を少なくすることで、回路規模の小さい不揮発性の記憶回路とすることができる。
【0088】
また、このような記憶回路を、レジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。よって、記憶回路全体、もしくは記憶回路を構成する一または複数の論理回路において、待機状態のときに短い時間でも電源停止を行うことができるため、消費電力を抑えることができる記憶回路、及び消費電力を抑えることができる当該記憶回路の駆動方法を提供することができる。
【0089】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【0090】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、実施の形態1、及び実施の形態2に示した記憶回路100の、より具体的な回路構成の一例について、図5を用いて説明を行う。なお、先の実施の形態1、及び実施の形態2で説明した部分と同様の箇所については、同様の符号を用い、その説明は省略する。
【0091】
図5に示す記憶回路100は、第1の記憶回路102と、第2の記憶回路104と、第1のスイッチ108と、第2のスイッチ110と、位相反転回路106と、を有している。
【0092】
本実施の形態においては、第1のスイッチ108と、第2のスイッチ110と、位相反転回路106と、第2の記憶回路104として、トランジスタを用いる場合を例示しており、これらの回路素子の接続構成は、図1、及び図4と同じである。
【0093】
第1のスイッチ108は、第4のトランジスタ120と、第5のトランジスタ122と、を有しており、第4のトランジスタ120のゲート電極と、第5のトランジスタ122のゲート電極が接続されている。また、第4のトランジスタ120のソース電極、またはドレイン電極の一方は、電源線と接続され、第4のトランジスタ120のソース電極、またはドレイン電極の他方は、第5のトランジスタ122のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、第5のトランジスタ122のソース電極、またはドレイン電極の他方は、第2のトランジスタ116のソース電極、またはドレイン電極の一方に接続され、第2のトランジスタ116のソース電極、またはドレイン電極の他方は、接地されている。
【0094】
第2のスイッチ110は、トランジスタ128と、トランジスタ130と、を有しており、トランジスタ128のゲート電極は、第2の制御信号(CLK)が与えられる第2の信号線と接続されており、トランジスタ130のゲート電極は、位相反転回路106の出力端子と接続されており、トランジスタ128のソース電極、またはドレイン電極の一方は、トランジスタ130のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続されており、トランジスタ128のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ130のソース電極、またはドレイン電極の他方と接続されている。
【0095】
位相反転回路106は、トランジスタ124と、トランジスタ126と、を有しており、トランジスタ124のゲート電極と、トランジスタ126のゲート電極が接続され、第2の制御信号(CLK)が与えられる第2の信号線と接続されている。また、トランジスタ124のソース電極、またはドレイン電極の一方には、電源電圧(Vdd)が与えられる電源線と接続され、トランジスタ124のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ126のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、トランジスタ126のソース電極、またはドレイン電極の他方は、接地されている。
【0096】
第2の記憶回路104は、トランジスタ132と、トランジスタ134と、トランジスタ136と、トランジスタ138と、トランジスタ140と、トランジスタ142と、を有しており、トランジスタ132のゲート電極と、トランジスタ134のゲート電極が接続され、第2のスイッチ110の出力端子と接続されている。また、トランジスタ132のソース電極、またはドレイン電極の一方は電源電圧(VDD)が与えられる電源線と接続され、トランジスタ132のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ134のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、トランジスタ134のソース電極、またはドレイン電極の他方は、接地されている。
【0097】
また、トランジスタ136のゲート電極は、位相反転回路106の出力端子と接続され、トランジスタ142のゲート電極は、第2の制御信号(CLK)が与えられる第2の信号線と接続されている。また、トランジスタ138のゲート電極は、トランジスタ140のゲート電極、トランジスタ132のソース電極、またはドレイン電極の他方、及びトランジスタ134のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、出力信号(OUT)が取り出される第3の信号線と接続されている。
【0098】
また、トランジスタ136のソース電極、またはドレイン電極の一方は、電源電圧(Vdd)が与えられる電源線と接続され、トランジスタ136のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ138のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、トランジスタ138のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ140のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、トランジスタ140のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ142のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、トランジスタ142のソース電極、またはドレイン電極の他方は接地されている。
【0099】
ここで、第1の記憶回路102として、酸化物半導体により形成された第1のトランジスタ112を用いない回路構成を比較例として図6に示す。
【0100】
なお、図6に示す記憶回路200は、トランジスタにより構成された記憶回路であり、酸化物半導体を用いたトランジスタを使用していないため、揮発性の記憶回路となる。
【0101】
記憶回路200は、位相反転回路240と、第1のスイッチ242と、第2のスイッチ246と、第1の記憶回路244と、第2の記憶回路248と、を有する。
【0102】
位相反転回路240は、トランジスタ202と、トランジスタ204と、を有し、トランジスタ202のゲート電極と、トランジスタ204のゲート電極が接続され、第2の制御信号(CLK)が与えられる第2の信号線と接続される。また、トランジスタ202のソース電極、またはドレイン電極の一方は、電源電圧(Vdd)が与えられる電源線と接続され、トランジスタ202のソース電極、ドレイン電極の他方は、トランジスタ204のソース電極、またはドレイン電極の一方に接続され、トランジスタ204のソース電極、またはドレイン電極の他方は、接地されている。
【0103】
第1のスイッチ242は、トランジスタ206と、トランジスタ208と、を有し、トランジスタ206のゲート電極は、位相反転回路240の出力端子と接続されており、トランジスタ208のゲート電極は、第2の制御信号(CLK)が与えられる第2の信号線と接続されている。また、トランジスタ206のソース電極、またはドレイン電極の一方は、トランジスタ208のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、第1の制御信号である入力信号(IN)が与えられる第1の信号線に接続されている。また、トランジスタ206のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ208のソース電極、またはドレイン電極の他方と接続されている。
【0104】
第1の記憶回路244は、トランジスタ210と、トランジスタ212と、トランジスタ214と、トランジスタ216と、トランジスタ218と、トランジスタ220と、を有しており、トランジスタ210のゲート電極は、トランジスタ212のゲート電極、及び第1のスイッチ242の出力端子が接続されている。また、トランジスタ210のソース電極、またはドレイン電極の一方は、電源電圧(Vdd)が供給される電源線に接続され、トランジスタ210のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ212のソース電極、またはドレイン電極の一方に接続され、トランジスタ212のソース電極、またはドレイン電極の他方は、接地されている。
【0105】
また、トランジスタ214のゲート電極は、位相反転回路240の出力端子と接続され、トランジスタ220のゲート電極は、第2の制御信号(CLK)が与えられる第2の信号線と接続されている。また、トランジスタ216のゲート電極は、トランジスタ218のゲート電極、トランジスタ210のソース電極、またはドレイン電極の他方、及びトランジスタ212のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続されている。
【0106】
また、トランジスタ214のソース電極、またはドレイン電極の一方は、電源線と接続され、トランジスタ214のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ216のソース電極、ドレイン電極の一方と接続され、トランジスタ216のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ218のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、トランジスタ218のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ220のソース電極、またはドレイン電極の一方に接続され、トランジスタ220のソース電極、またはドレイン電極の他方は、接地されている。
【0107】
第2のスイッチ246は、トランジスタ222と、トランジスタ224と、を有し、トランジスタ222のゲート電極は、位相反転回路240の出力端子と接続されており、トランジスタ224のゲート電極は、第2の制御信号(CLK)が与えられる第2の信号線と接続されている。また、トランジスタ222のソース電極、またはドレイン電極の一方は、トランジスタ224のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、トランジスタ210のソース電極、またはドレイン電極の他方、及びトランジスタ212のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続されている。また、トランジスタ222のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ224のソース電極、またはドレイン電極の他方と接続されている。
【0108】
第2の記憶回路248は、トランジスタ226と、トランジスタ228と、トランジスタ230と、トランジスタ232と、トランジスタ234と、トランジスタ236と、を有し、トランジスタ226のゲート電極は、トランジスタ228のゲート電極、及び第2のスイッチ246の出力端子と接続されている。また、トランジスタ226のソース電極、またはドレイン電極の一方は、電源電圧(Vdd)が供給される電源線と接続され、ソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ228のソース電極、またはドレイン電極の一方に接続され、トランジスタ228のソース電極、またはドレイン電極の他方は、接地されている。
【0109】
また、トランジスタ230のゲート電極は、第2の制御信号(CLK)が与えられる第2の信号線と接続され、トランジスタ236のゲート電極は、位相反転回路240の出力端子と接続されている。また、トランジスタ232のゲート電極は、トランジスタ234のゲート電極、トランジスタ226のソース電極、またはドレイン電極の他方、及びトランジスタ228のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、出力信号(OUT)が取り出される第3の信号線と接続されている。
【0110】
また、トランジスタ230のソース電極、またはドレイン電極の一方は、電源線に接続され、トランジスタ230のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ232のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、トランジスタ232のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ234のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、トランジスタ234のソース電極、またはドレイン電極の他方は、トランジスタ236のソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、トランジスタ236のソース電極、またはドレイン電極の他方は、接地されている。
【0111】
このように、図6に示す記憶回路200は、18個のトランジスタにより構成されている。一方、図5に示した記憶回路100は、14個のトランジスタと、酸化物半導体を用いた1個のトランジスタと、1個の容量素子と、により構成することで、回路規模を縮小することができる。また、酸化物半導体を用いたトランジスタにより不揮発性の記憶回路とすることができる。
【0112】
以上のように、本実施の形態に示した記憶回路においては、第1の記憶回路102として、図5に示す構成とすることで、不揮発性の記憶回路とすることができる。また、記憶回路に接続する電源線、及び信号線を少なくし、当該記憶回路に用いるトランジスタ数を削減することで、回路規模の小さい不揮発性の記憶回路とすることができる。
【0113】
また、このような記憶回路を、レジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。よって、記憶回路全体、もしくは記憶回路を構成する一または複数の論理回路において、待機状態のときに短い時間でも電源停止を行うことができるため、消費電力を抑えることができる記憶回路、及び消費電力を抑えることができる当該記憶回路の駆動方法を提供することができる。
【0114】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことができる。
【0115】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1、実施の形態2、及び実施の形態3で示した記憶回路と、該記憶回路と接続する複数の回路により構成された記憶処理装置について、図7を用いて説明を行う。
【0116】
図7に、本発明の一態様に係る記憶処理装置の一例を示す。記憶処理装置150は、一または複数の演算回路と、一または複数の記憶回路とを少なくとも有する。具体的に、図7に示す記憶処理装置150は、演算回路151と、演算回路152と、記憶回路153と、記憶回路154と、記憶回路155と、制御回路156と、電源制御回路157と、を有する。
【0117】
演算回路151、及び演算回路152は、単純な論理演算を行う論理回路をはじめ、加算器、乗算器、さらには各種演算回路などを含む。そして、記憶回路153は、演算回路151における演算処理の際に、データを一時的に保持するレジスタとして機能する。記憶回路154は、演算回路152における演算処理の際に、データを一時的に保持するレジスタとして機能する。
【0118】
また、記憶回路155は、メインメモリとして用いることができ、制御回路156が実行するプログラムをデータとして記憶する、または演算回路151、及び演算回路152からのデータを記憶することができる。
【0119】
制御回路156は、記憶処理装置150が有する演算回路151、演算回路152、記憶回路153、記憶回路154、及び記憶回路155の動作を統括的に制御する回路である。
【0120】
先の実施の形態1乃至3で示した記憶回路100を記憶回路153、記憶回路154、及び記憶回路155に用いることで、記憶回路153、記憶回路154、及び記憶回路155への電源電圧の供給を停止しても、データを保持することができる。よって、記憶処理装置150全体への電源電圧の供給を停止し、消費電力を抑えることができる。または、記憶回路153、記憶回路154、または記憶回路155のいずれか一つまたは複数への電源電圧の供給を停止し、記憶処理装置150の消費電力を抑えることができる。また、電源電圧の供給をオフする前に、高速でデータの書き込みができ、且つ電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。
【0121】
また、記憶回路153、記憶回路154、及び記憶回路155への電源電圧の供給が停止されるのに合わせて、記憶回路153、記憶回路154、及び記憶回路155とデータのやり取りを行う演算回路151、演算回路152または制御回路156への、電源電圧の供給を停止するようにしても良い。例えば、演算回路151と記憶回路153において、動作が行われない場合、演算回路151及び記憶回路153への電源電圧の供給を停止するようにしても良い。
【0122】
また、電源制御回路157は、記憶処理装置150が有する演算回路151、演算回路152、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155、及び制御回路156へ供給する電源電圧の大きさを制御する。そして、電源電圧の供給を停止する場合、電源電圧の供給を停止するためのスイッチング素子は、電源制御回路157に設けられていても良いし、演算回路151、演算回路152、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155、及び制御回路156のそれぞれに設けられていても良い。
【0123】
なお、メインメモリである記憶回路155と、演算回路151、演算回路152、及び制御回路156の間に、キャッシュメモリとして機能する記憶回路を設けても良い。キャッシュメモリを設けることで、メインメモリへのアクセスを減らして演算処理などの信号処理を高速化させることができる。キャッシュメモリとして機能する記憶装置にも、上述した記憶回路を用いることで、記憶処理装置150の消費電力を抑えることができる。また、電源電圧の供給をオフする前に、高速でデータの書き込みができ、且つ電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。
【0124】
また、本実施の形態の記憶回路は、記憶回路に接続する電源線、及び信号線を少なくし、当該記憶回路に用いるトランジスタ数が削減されているため、回路規模を小さくすることができる。
【0125】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【0126】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る記憶回路の一つである、CPUの構成について説明する。
【0127】
図8に、本実施の形態のCPUの構成を示す。図8に示すCPUは、基板9900上に、ALU9901、ALU・Controller9902、Instruction・Decoder9903、Interrupt・Controller9904、Timing・Controller9905、Register9906、Register・Controller9907、Bus・I/F9908、書き換え可能なROM9909、ROM・I/F9920と、を主に有している。
【0128】
なお、ALUは、Arithmetic Logic Unitであり、Bus・I/Fは、バスインターフェースであり、ROM・I/Fは、ROMインターフェースである。ROM9909、及びROM・I/F9920は、別チップに設けても良い。もちろん、図8に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0129】
Bus・I/F9908を介してCPUに入力された命令は、Instruction・Decoder9903に入力され、デコードされた後、ALU・Controller9902、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907、Timing・Controller9905に入力される。
【0130】
ALU・Controller9902、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907、Timing・Controller9905は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALU・Controller9902は、ALU9901の動作を制御するための信号を生成する。また、Interrupt・Controller9904は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。Register・Controller9907は、Register9906のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてRegister9906の読み出しや書き込みを行なう。
【0131】
また、Timing・Controller9905は、ALU9901、ALU・Controller9902、Instruction・Decoder9903、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばTiming・Controller9905は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0132】
本実施の形態のCPUでは、Register9906に、上記実施の形態で示した構成を有する記憶回路が設けられている。Register・Controller9907は、ALU9901からの指示に従い、Register9906の記憶回路に、一時的にデータの保持を行うことができる。
【0133】
この様にして、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUを停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0134】
本実施の形態では、CPUを例に挙げて説明したが、本発明の記憶回路はCPUに限定されず、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP、FPGA等のLSIにも応用可能である。
【0135】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【0136】
(実施の形態6)
本実施の形態においては、実施の形態1の図1に示した記憶回路100に用いることのできるトランジスタの作製方法について説明を行う。なお、図1に示した第1のトランジスタ112、容量素子114、第2のトランジスタ116と、を例に挙げて図9乃至図11を用いて説明する。なお、記憶回路100に含まれるその他の素子も第1のトランジスタ112、容量素子114、及び第2のトランジスタ116と同様に作製することができる。
【0137】
なお、本実施の形態では、第2のトランジスタ116に用いる材料が単結晶シリコンである場合を例に挙げて、以下作製方法について説明する。
【0138】
まず、図9(A)に示すように、基板700上に絶縁膜701と、単結晶の半導体基板から分離された半導体膜702とを形成する。
【0139】
基板700として使用することができる材料に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、基板700には、フュージョン法やフロート法で作製されるガラス基板、石英基板、半導体基板、セラミック基板等を用いることができる。ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。
【0140】
なお、具体的な単結晶の半導体膜702の作製方法の一例について、簡単に説明する。まず、単結晶の半導体基板であるボンド基板に、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを注入し、ボンド基板の表面から一定の深さの領域に、結晶構造が乱されることで局所的に脆弱化された脆化層を形成する。脆化層が形成される領域の深さは、イオンビームの加速エネルギーとイオンビームの入射角によって調節することができる。そして、ボンド基板と、絶縁膜701が形成された基板700とを、間に当該絶縁膜701が挟まるように貼り合わせる。貼り合わせは、ボンド基板と基板700とを重ね合わせた後、ボンド基板と基板700の一部に、1N/cm以上500N/cm以下、好ましくは11N/cm以上20N/cm以下程度の圧力を加える。圧力を加えると、その部分からボンド基板と絶縁膜701とが接合を開始し、最終的には密着した面全体に接合がおよぶ。次いで、加熱処理を行うことで、脆化層に存在する微小ボイドが結合して、微小ボイドの体積が増大する。その結果、脆化層においてボンド基板の一部である単結晶半導体膜が、ボンド基板から分離する。上記加熱処理の温度は、基板700の歪み点を越えない温度とする。そして、上記単結晶半導体膜をエッチング等により所望の形状に加工することで、半導体膜702を形成することができる。
【0141】
半導体膜702には、閾値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型の導電性を付与する不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型の導電性を付与する不純物元素を添加しても良い。閾値電圧を制御するための不純物元素の添加は、パターニングする前の半導体膜に対して行っても良いし、パターニング後に形成された半導体膜702に対して行っても良い。また、閾値電圧を制御するための不純物元素の添加を、ボンド基板に対して行っても良い。若しくは、不純物元素の添加を、閾値電圧を大まかに調整するためにボンド基板に対して行った上で、閾値電圧を微調整するために、パターニング前の半導体膜に対して、又はパターニングにより形成された半導体膜702に対しても行っても良い。
【0142】
なお、本実施の形態では、単結晶の半導体膜を用いる例について説明しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、絶縁膜701上に気相成長法を用いて形成された多結晶、微結晶、非晶質の半導体膜を用いても良いし、上記半導体膜を公知の技術により結晶化しても良い。公知の結晶化方法としては、レーザ光を用いたレーザ結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法がある。或いは、触媒元素を用いる結晶化法とレーザ結晶化法とを組み合わせて用いることもできる。また、石英のような耐熱性に優れている基板を用いる場合、電熱炉を使用した熱結晶化方法、赤外光を用いたランプアニール結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法、950℃程度の高温アニール法を組み合わせた結晶化法を用いても良い。
【0143】
次に、図9(B)に示すように、半導体膜702上にゲート絶縁膜703を形成する。
【0144】
ゲート絶縁膜703は、高密度プラズマ処理、熱処理などを行うことにより半導体膜702の表面を酸化又は窒化することで形成することができる。高密度プラズマ処理は、例えばHe、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスとを用いて行う。この場合、プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化又は窒化することにより、1〜20nm、望ましくは5〜10nmの絶縁膜が半導体膜に接するように形成できる。
【0145】
また、プラズマCVD法又はスパッタリング法などを用い、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化アルミニウム又は酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))等を含む膜を、単層で、又は積層させることで、ゲート絶縁膜703を形成しても良い。
【0146】
なお、本明細書において酸化窒化物とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い物質であり、また、窒化酸化物とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い物質を意味する。
【0147】
ゲート絶縁膜703の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。本実施の形態では、プラズマCVD法を用いて、酸化珪素を含む単層の絶縁膜を、ゲート絶縁膜703として用いる。
【0148】
次いで、図9(B)に示すように、ゲート電極704を形成する。
【0149】
ゲート電極704は、導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング、及びエッチング)することで、形成することができる。上記導電膜の形成にはPE−CVD法、スパッタリング法、蒸着法、スピンコート法等を用いることができる。また、導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いることができる。上記金属を含む合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。又は、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多結晶珪素などの半導体を用いて形成しても良い。
【0150】
なお、本実施の形態ではゲート電極704を単層の導電膜で形成しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。ゲート電極704は積層された複数の導電膜で形成されていても良い。
【0151】
また、ゲート電極704は、導電膜を形成後、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、所望のテーパー形状を有するようにエッチングすることができる。また、テーパー形状は、マスクの形状によっても角度等を制御することができる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素もしくは四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄もしくは弗化窒素などのフッ素系ガス又は酸素を適宜用いることができる。
【0152】
次に、図9(C)に示すように、ゲート電極704をマスクとして一導電性を付与する不純物元素を半導体膜702に添加することで、ゲート電極704と重なるチャネル形成領域706と、チャネル形成領域706を間に挟む一対の不純物領域705とが、半導体膜702に形成される。
【0153】
本実施の形態では、半導体膜702にn型を付与する不純物元素(例えばリン)を添加する場合を例に挙げる。
【0154】
次いで、図10(A)に示すように、ゲート絶縁膜703、ゲート電極704を覆うように、絶縁膜707、絶縁膜708を形成する。具体的に、絶縁膜707、絶縁膜708は、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの無機の絶縁膜を用いることができる。特に、絶縁膜707、絶縁膜708に誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁膜707、絶縁膜708に、上記材料を用いた多孔性の絶縁膜を適用しても良い。多孔性の絶縁膜では、密度の高い絶縁膜と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する寄生容量を更に低減することが可能である。
【0155】
本実施の形態では、絶縁膜707として酸化窒化珪素、絶縁膜708として窒化酸化珪素を用いる場合を例に挙げる。また、本実施の形態では、ゲート電極704上に絶縁膜707、絶縁膜708を形成している場合を例示しているが、本発明はゲート電極704上に絶縁膜を1層だけ形成していても良いし、3層以上の複数の絶縁膜を積層するように形成していても良い。
【0156】
次いで、図10(B)に示すように、絶縁膜707、及び絶縁膜708にCMP(化学的機械研磨)処理やエッチング処理を行うことにより、ゲート電極704の表面を露出させる。なお、後に形成される第1のトランジスタ112の特性を向上させるために、絶縁膜707、絶縁膜708の表面は可能な限り平坦にしておくことが好ましい。
【0157】
以上の工程により、第2のトランジスタ116を形成することができる。
【0158】
次いで、第1のトランジスタ112、及び容量素子114の作製方法について説明する。まず、図10(C)に示すように、絶縁膜708上に酸化物半導体膜709を形成する。
【0159】
酸化物半導体膜709は、ゲート電極704、絶縁膜707、及び絶縁膜708上に形成した酸化物半導体膜を所望の形状に加工することで、形成することができる。上記酸化物半導体膜の膜厚は、2nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下とする。酸化物半導体膜は、金属酸化物ターゲットを用いて、スパッタリング法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(例えばアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(例えばアルゴン)及び酸素混合雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。
【0160】
酸化物半導体膜としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)とを含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体膜を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0161】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0162】
例えば、酸化物半導体膜として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0163】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0164】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0165】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0166】
本実施の形態では、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、及びZn(亜鉛)を含む金属酸化物ターゲット(Indium Galium Zinc Oxide:IGZOターゲットともいう)を用いて、スパッタリング法により得られる膜厚30nmのIn−Ga−Zn系酸化物半導体の薄膜を、酸化物半導体膜として用いる。上記IGZOターゲットとして、例えば、各金属の組成比が、原子数比で、In:Ga:Zn=1:1:0.5、In:Ga:Zn=1:1:1、又はIn:Ga:Zn=1:1:2であるターゲットを用いることができる。また、In、Ga、及びZnを含むターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上100%未満である。充填率の高いターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0167】
また、酸化物半導体膜として、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)を含む金属酸化物ターゲット(Indium Tin Zinc Oxide)を用いて、スパッタリング法により得られるIn−Sn−Zn系酸化物半導体の薄膜を用いてもよい。酸化物半導体として、In−Sn−Zn−O系の材料を用いる場合、ターゲットの組成比は、原子数比で、In:Sn:Zn=1:2:2、In:Sn:Zn=2:1:3、In:Sn:Zn=1:1:1、或いは4:9:7などを用いる。
【0168】
本実施の形態では、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたアルゴンガス、及び酸素ガスを導入し、上記IGZOターゲットを用いて酸化物半導体膜を成膜する。なお、スパッタリングガスとしては、高純度化されたガスを用いると好ましい。具体的には、アルゴンガスについては、純度が9N(99.9999999%)であり、露点が−121℃であり、HO含有量が0.1ppb以下であり、H含有量が0.5ppb以下であると好ましい。また、酸素ガスについては、純度が8N(99.999999%)であり、露点−112℃であり、HO含有量が1ppb以下、H含有量が1ppb以下であると好ましい。このような高純度化されたガスを用いることで、成膜される酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減できる。
【0169】
なお、処理室内の残留水分を除去するために、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて処理室を排気すると、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0170】
また、処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における酸化物半導体膜への、アルカリ金属、水素化物等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として上述した吸着型の真空ポンプを用いることで、排気系からのアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0171】
また、成膜時に、基板温度を100℃以上600℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下としても良い。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。
【0172】
また、基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜の欠陥密度が低下するため好ましい。酸化物半導体膜の欠陥密度は、トランジスタの電界効果移動度に影響を与える。ここで、トランジスタの電界効果移動度について、以下、説明を行う。
【0173】
なお、酸化物半導体膜に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の移動度よりも低くなる。移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
【0174】
半導体膜本来の移動度をμ、測定される電界効果移動度をμとし、半導体膜中に何らかのポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、電界効果移動度μは以下の式で表現できる。
【0175】
【数1】

【0176】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度である。また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、以下の式で表される。
【0177】
【数2】

【0178】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さ30nm以下の半導体膜であれば、チャネルの厚さは半導体膜の厚さと同一として差し支えない。
線形領域におけるドレイン電流Iは、以下の式で表現できる。
【0179】
【数3】

【0180】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。また、Vはドレイン電圧である。
上式の両辺をVgで割り、更に両辺の対数を取ると、以下のようになる。
【0181】
【数4】


数4の右辺はVの関数である。この式からわかるように、縦軸をln(Id/Vg)、横軸を1/Vgとして実測値をプロットして得られるグラフの直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。すなわち、トランジスタのI―V特性から、欠陥密度を評価できる。酸化物半導体膜としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm程度である。
【0182】
このようにして求めた欠陥密度等をもとに数1および数2よりμ=120cm/Vsが導出される。欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物で測定される移動度は40cm/Vs程度である。しかし、半導体内部および半導体と絶縁膜との界面の欠陥が無い酸化物半導体の移動度μは120cm/Vsとなると予想できる。
【0183】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁膜との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁膜界面からxだけ離れた場所における移動度μは、以下の式で表される。
【0184】
【数5】

【0185】
ここで、Dはゲート方向の電界、B、lは定数である。Bおよびlは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×10cm/s、l=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と数5の第2項が増加するため、移動度μは低下することがわかる。
【0186】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの移動度μを計算した結果を図16に示す。なお、計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘電率、厚さをそれぞれ、2.8電子ボルト、4.7電子ボルト、15、15nmとした。さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6電子ボルト、4.6電子ボルトとした。また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vは0.1Vである。
【0187】
図16で示されるように、ゲート電圧1V強で移動度100cm/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、移動度が低下する。なお、界面散乱を低減するためには、半導体層表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0188】
このような移動度を有する酸化物半導体を用いて微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した結果を図17乃至図19に示す。なお、計算に用いたトランジスタの断面構造を図20に示す。図20に示すトランジスタは酸化物半導体膜にnの導電型を呈する半導体領域503aおよび半導体領域503cを有する。半導体領域503aおよび半導体領域503cの抵抗率は2×10−3Ωcmとする。
【0189】
図20(A)に示すトランジスタは、下地絶縁膜501と、下地絶縁膜501に埋め込まれるように形成された酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁膜502の上に形成される。トランジスタは半導体領域503a、半導体領域503cと、それらに挟まれ、チャネル形成領域となる真性の半導体領域503bと、ゲート電極505を有する。ゲート電極505の幅を33nmとする。
【0190】
ゲート電極505と半導体領域503bの間には、ゲート絶縁膜504を有し、また、ゲート電極505の両側面には側壁絶縁膜506aおよび側壁絶縁膜506b、ゲート電極505の上部には、ゲート電極505と他の配線との短絡を防止するための絶縁膜507を有する。側壁絶縁膜の幅は5nmとする。また、半導体領域503aおよび半導体領域503cに接して、ソース電極508aおよびドレイン電極508bを有する。なお、このトランジスタにおけるチャネル幅を40nmとする。
【0191】
図20(B)に示すトランジスタは、下地絶縁膜501と、酸化アルミニウムよりなる埋め込み絶縁膜502の上に形成され、半導体領域503a、半導体領域503cと、それらに挟まれた真性の半導体領域503bと、幅33nmのゲート電極505とゲート絶縁膜504と側壁絶縁膜506aおよび側壁絶縁膜506bと絶縁膜507とソース電極508aおよびドレイン電極508bを有する点で図20(A)に示すトランジスタと同じである。
【0192】
図20(A)に示すトランジスタと図20(B)に示すトランジスタの相違点は、側壁絶縁膜506aおよび側壁絶縁膜506bの下の半導体領域の導電型である。図20(A)に示すトランジスタでは、側壁絶縁膜506aおよび側壁絶縁膜506bの下の半導体領域はnの導電型を呈する半導体領域503aおよび半導体領域503cであるが、図20(B)に示すトランジスタでは、真性の半導体領域503bである。すなわち、半導体領域503a(半導体領域503c)とゲート電極505がLoffだけ重ならない領域ができている。この領域をオフセット領域と言い、その幅Loffをオフセット長という。図から明らかなように、オフセット長は、側壁絶縁膜506a(側壁絶縁膜506b)の幅と同じである。
【0193】
その他の計算に使用するパラメータは上述の通りである。計算にはシノプシス社製デバイスシミュレーションソフト、Sentaurus Deviceを使用した。図17は、図20(A)に示される構造のトランジスタのドレイン電流(Id、実線)および移動度(μ、点線)のゲート電圧(Vg、ゲートとソースの電位差)依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0194】
図17(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図17(B)は10nmとしたものであり、図17(C)は5nmとしたものである。ゲート絶縁膜が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流Id(オフ電流)が顕著に低下する。一方、移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流Id(オン電流)には目立った変化が無い。ゲート電圧1V前後で、ドレイン電流は記憶回路で用いるトランジスタの特性として、十分な10μAを超えることが示された。
【0195】
図18は、図20(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを5nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧Vg依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図18(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図18(B)は10nmとしたものであり、図18(C)は5nmとしたものである。
【0196】
また、図19は、図20(B)に示される構造のトランジスタで、オフセット長Loffを15nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。図19(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとしたものであり、図19(B)は10nmとしたものであり、図19(C)は5nmとしたものである。
【0197】
いずれもゲート絶縁膜が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0198】
なお、移動度μのピークは、図17では80cm/Vs程度であるが、図18では60cm/Vs程度、図19では40cm/Vs程度と、オフセット長Loffが増加するほど低下する。また、オフ電流も同様な傾向がある。一方、オン電流もオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。また、いずれもゲート電圧1V前後で、ドレイン電流は記憶回路で用いるトランジスタの特性として、十分な10μAを超えることが示された。
【0199】
酸化物半導体膜の成膜条件の一例としては、基板加熱温度200℃、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。
【0200】
なお、酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で絶縁膜707、及び絶縁膜708までが形成された基板700を予備加熱し、基板700に吸着した水分又は水素などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱の温度は、100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下である。また、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。
【0201】
なお、酸化物半導体膜709を形成するためのエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、三塩化硼素(BCl)、四塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0202】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0203】
ウェットエッチングに用いるエッチング液として、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、クエン酸やシュウ酸などの有機酸を用いることができる。本実施の形態では、ITO−07N(関東化学社製)を用いる。
【0204】
酸化物半導体膜709を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0205】
なお、スパッタリング等で成膜された酸化物半導体膜中には、不純物としての水分又は水素(水酸基を含む)が多量に含まれていることがある。水分又は水素はドナー準位を形成しやすいため、酸化物半導体にとっては不純物である。そこで、本発明の一態様では、酸化物半導体膜中の水分又は水素などの不純物を低減(脱水化または脱水素化)するために、酸化物半導体膜709に対して、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、などにおいて、加熱処理を施す。
【0206】
酸化物半導体膜709に加熱処理を施すことで、酸化物半導体膜709中の水分又は水素を脱離させることができる。具体的には、250℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満の温度で加熱処理を行えば良い。例えば、500℃、3分間以上6分間以下程度で行えばよい。加熱処理にRTA法を用いれば、短時間に脱水化または脱水素化が行えるため、ガラス基板の歪点を超える温度でも処理することができる。
【0207】
本実施の形態では、加熱処理装置の一つである電気炉を用いる。
【0208】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、又は窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0209】
加熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水分又は水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0210】
以上の工程により、酸化物半導体膜709中の水素濃度を低減することができる。なお、酸化物半導体膜709中の水素濃度は、5×1019/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下とする。
【0211】
なお、上記の脱水化または脱水素化の加熱処理後に、酸化性雰囲気において、さらに加熱処理を行うことが望ましい。脱水化または脱水素化の加熱処理において、酸化物半導体膜709中に生じた酸素欠損に、酸化性雰囲気にて加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜709中に酸素を供給することができる。このように、酸化物半導体膜709に酸素を供給することができることから、酸化性雰囲気における加熱処理を加酸素化ということもできる。例えば、加酸素化は、100℃以上350℃未満、好ましくは150℃以上250℃未満で行う。なお、脱水化または脱水素化の加熱処理と、加酸素化の加熱処理は連続して行うことが好ましい。連続して行うことで生産性を向上させることができる。
【0212】
なお、酸化性雰囲気とは、酸化性ガス(酸素ガス、オゾンガス、酸化窒素ガスなど)の雰囲気であって、水素などが含まれないことが好ましい。例えば、導入する酸化性ガスの純度を、8N(99.999999%)以上、好ましくは9N(99.9999999%)以上とする。酸化性雰囲気は、酸化性ガスを不活性ガスと混合して用いてもよく、酸化性ガスが少なくとも10ppm以上含まれるものとする。
【0213】
なお、酸化物半導体膜は非晶質であっても良いが、結晶性を有していても良い。結晶性を有する酸化物半導体膜としては、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜を用いることができる。
【0214】
CAAC−OS膜とは、広義に、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形、または正六角形の原子配列を有し、且つ、c軸に垂直な方向から見て、金属原子が層状、または、金属原子と酸素原子が層状に配列した相を含む材料をいう。
【0215】
なお、CAAC−OS膜は単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。また、CAAC−OS膜は結晶化した部分(結晶部分)、または結晶化した領域(結晶領域)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界、または1つの結晶領域と他の結晶領域の境界を明確に判別できないこともある。
【0216】
また、CAAC−OS膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。また、CAAC−OS膜を構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトル、または表面の法線ベクトルに平行な方向)に揃っていてもよい。
【0217】
このようなCAAC−OS膜の例として、膜状に形成され、膜表面、基板面、または界面に垂直な方向から観察すると三角形、または、六角形の原子配列が認められ、かつその膜断面を観察すると金属原子、または、金属原子と酸素原子(あるいは窒素原子)の層状配列が認められる材料を挙げることもできる。
【0218】
ここで、CAAC−OS膜に含まれる結晶構造の一例について図21乃至図23を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図21乃至図23は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図21において丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸は3配位のOを示す。
【0219】
図21(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下、4配位のO)と、を有する構造を示す。金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図21(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図21(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図21(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0220】
図21(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図21(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図21(B)に示す構造をとりうる。図21(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0221】
図21(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図21(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。または、図21(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。図21(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0222】
図21(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図21(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図21(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0223】
図21(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図21(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図21(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0224】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0225】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図21(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは、下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図21(B)に示す5配位のGaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは、上方向に1個の近接Gaを有する。図21(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは、下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)、または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0226】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0227】
図22(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図22(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図22(C)は、図22(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0228】
図22(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図22(A)において、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図22(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0229】
図22(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0230】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図21(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0231】
具体的には、図22(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0232】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系や、In−Hf−Zn−O系、In−La−Zn−O系、In−Ce−Zn−O系、In−Pr−Zn−O系、In−Nd−Zn−O系、In−Sm−Zn−O系、In−Eu−Zn−O系、In−Gd−Zn−O系、In−Tb−Zn−O系、In−Dy−Zn−O系、In−Ho−Zn−O系、In−Er−Zn−O系、In−Tm−Zn−O系、In−Yb−Zn−O系、In−Lu−Zn−O系や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、Zn−Mg−O系、Sn−Mg−O系、In−Mg−O系や、In−Ga−O系の材料、などを用いた場合も同様である。
【0233】
例えば、図23(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0234】
図23(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0235】
図23(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図23(C)は、図23(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0236】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0237】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図23(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0238】
また、CAAC−OS膜は、非晶質の酸化物半導体膜と比較して、金属と酸素の結合が秩序化している。すなわち、酸化物半導体膜が非晶質の場合は、個々の金属原子によって酸素原子の配位数が異なることも有り得るが、CAAC−OS膜では金属原子における酸素原子の配位数はほぼ一定となる。そのため、微視的な酸素の欠損が減少し、水素原子(水素イオンを含む)やアルカリ金属原子の脱着による電荷の移動や不安定性を減少させる効果がある。
【0239】
また、CAAC−OS膜は、酸化物半導体膜が極めて薄い膜厚(例えば、5nm)でもCAAC−OS膜とすることができる。このような膜厚でCAAC−OS膜とすることにより、例えばL長が短い(例えば、L長=30nm)トランジスタを作製する場合においても、高い信頼性の酸化物半導体とすることができる。
【0240】
また、CAAC−OS膜を形成する場合においては、下地膜(ここでは、絶縁膜708)の表面の平坦性を良好にすることが好ましい。表面の平坦性は、原子レベルで平坦化された絶縁膜(ALF:Atomic Layer Flatnessともいう)とすればよく、例えば、絶縁膜708の平均面粗さ(Ra)を0.3nm以下、好ましくは0.1nm以下、更に好ましくは0.07nm以下とする。絶縁膜708の表面の平坦性が良好であると、CAAC−OS膜の結晶性を向上させることができる。
【0241】
以上により酸化物半導体膜709を形成することができる。
【0242】
次いで、図11(A)に示すように、ゲート電極704と接し、なおかつ酸化物半導体膜709とも接する導電膜710と、酸化物半導体膜709と接する導電膜711とを形成する。導電膜710、及び導電膜711は、ソース電極またはドレイン電極として機能する。
【0243】
具体的に、導電膜710、及び導電膜711は、ゲート電極704、絶縁膜707、絶縁膜708、及び酸化物半導体膜709を覆うようスパッタリング法や真空蒸着法で導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング、及びエッチング)することで、形成することができる。
【0244】
導電膜710、及び導電膜711となる導電膜は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、アルミニウム、銅などの金属膜の下側もしくは上側にクロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属膜を積層させた構成としても良い。また、アルミニウム又は銅は、耐熱性や腐食性の問題を回避するために、高融点金属材料と組み合わせて用いると良い。高融点金属材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、ネオジム、スカンジウム、イットリウム等を用いることができる。
【0245】
また、導電膜710、及び導電膜711となる導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、更にその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Cu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、Mo、は、酸化膜との密着性が高い。よって、下層にCu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、或いはMoで構成される導電膜、上層にCuで構成される導電膜を積層し、上記積層された導電膜を導電膜710、及び導電膜711に用いることで、酸化膜である絶縁膜と、導電膜710、及び導電膜711との密着性を高めることができる。
【0246】
導電膜形成後に加熱処理を行う場合には、この加熱処理に耐える耐熱性を導電膜に持たせることが好ましい。
【0247】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体膜709がなるべく除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。エッチング条件によっては、酸化物半導体膜709の露出した部分が一部エッチングされることで、溝部(凹部)が形成されることもある。
【0248】
本実施の形態では、導電膜にチタン膜を用いる。そのため、アンモニアと過酸化水素水を含む溶液(アンモニア過水)を用いて、選択的に導電膜をウェットエッチングすることができる。具体的には、31重量%の過酸化水素水と、28重量%のアンモニア水と、水とを、5:2:2の体積比で混合したアンモニア過水を用いる。または、塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)などを含むガスを用いて、導電膜をドライエッチングしても良い。
【0249】
なお、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光に多段階の強度をもたせる多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことで更に形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0250】
また、酸化物半導体膜709と、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜710、及び導電膜711との間に、ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けるようにしても良い。酸化物導電膜の材料としては、酸化亜鉛を成分として含むものが好ましく、酸化インジウムを含まないものであることが好ましい。そのような酸化物導電膜として、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミニウム、酸窒化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛ガリウムなどを適用することができる。
【0251】
例えば、酸化物導電膜を形成する場合、酸化物導電膜を形成するためのパターニングと、導電膜710、及び導電膜711を形成するためのパターニングとを一括で行うようにしても良い。
【0252】
ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けることで、酸化物半導体膜709と導電膜710、及び導電膜711の間の抵抗を下げることができるので、トランジスタの高速動作を実現させることができる。
【0253】
次いで、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行うようにしても良い。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体膜709の表面に付着した水などを除去する。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0254】
なお、プラズマ処理を行った後、図11(B)に示すように、絶縁膜708、酸化物半導体膜709、導電膜710、及び導電膜711を覆うように、ゲート絶縁膜712を形成する。そして、ゲート絶縁膜712上において、酸化物半導体膜709と重なる位置にゲート電極713を形成し、導電膜710と重なる位置に導電膜714を形成する。
【0255】
ゲート絶縁膜712は、ゲート絶縁膜703と同様の材料、同様の積層構造を用いて形成することが可能である。なお、ゲート絶縁膜712は、水分や、水素などの不純物を極力含まないことが望ましく、単層の絶縁膜であっても良いし、積層された複数の絶縁膜で構成されていても良い。ゲート絶縁膜712に水素が含まれると、その水素が酸化物半導体膜709へ侵入し、又は水素が酸化物半導体膜709中の酸素を引き抜き、酸化物半導体膜709が低抵抗化(n型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、ゲート絶縁膜712はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。上記のゲート絶縁膜712には、バリア性の高い材料を用いるのが望ましい。
【0256】
例えば、バリア性の高い絶縁膜として、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などを用いることができる。複数の積層された絶縁膜を用いる場合、窒素の含有比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を、上記バリア性の高い絶縁膜よりも、酸化物半導体膜709に近い側に形成する。そして、窒素の含有比率が低い絶縁膜を間に挟んで、導電膜710、導電膜711、及び酸化物半導体膜709と重なるように、バリア性の高い絶縁膜を形成する。バリア性の高い絶縁膜を用いることで、酸化物半導体膜709内、ゲート絶縁膜712内、或いは、酸化物半導体膜709と他の絶縁膜の界面とその近傍に、水分又は水素などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。また、酸化物半導体膜709に接するように窒素の比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を形成することで、バリア性の高い材料を用いた絶縁膜が酸化物半導体膜709に接するのを防ぐことができる。
【0257】
本実施の形態では、スパッタリング法で形成された膜厚200nmの酸化珪素膜上に、スパッタリング法で形成された膜厚100nmの窒化珪素膜を積層させた構造を有する、ゲート絶縁膜712を形成する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。
【0258】
なお、ゲート絶縁膜712を形成した後に、加熱処理を施しても良い。加熱処理は、窒素、超乾燥空気、又は希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下において、好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下で行う。上記ガスは、水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下であることが望ましい。
【0259】
本実施の形態では、例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。或いは、導電膜710、及び導電膜711を形成する前に、水分又は水素を低減させるための酸化物半導体膜に対して行った先の加熱処理と同様に、高温短時間のRTA処理を行っても良い。酸素を含むゲート絶縁膜712が設けられた後に、加熱処理が施されることによって、酸化物半導体膜709に対して行った先の加熱処理により、酸化物半導体膜709に酸素欠損が発生していたとしても、ゲート絶縁膜712から酸化物半導体膜709に酸素が供与される。そして、酸化物半導体膜709に酸素が供与されることで、酸化物半導体膜709において、酸素欠損を低減し、化学量論的組成比を満たすことが可能である。酸化物半導体膜709には、化学量論的組成比を超える量の酸素が含まれていることが好ましい。
【0260】
その結果、酸化物半導体膜709をi型(真性)に近づけることができ、酸素欠損によるトランジスタの電気特性のばらつきを軽減し、オフ電流の極めて小さいトランジスタを実現することができる。この加熱処理を行うタイミングは、ゲート絶縁膜712の形成後であれば特に限定されず、他の工程、例えば樹脂膜形成時の加熱処理等と兼ねることで、工程数を増やすことなく、酸化物半導体膜709をi型に近づけることができる。
【0261】
また、イオン注入法又はイオンドーピング法などを用いて、酸化物半導体膜709に酸素を添加することで、酸素欠損を低減させても良い。例えば、2.45GHzのマイクロ波でプラズマ化した酸素を酸化物半導体膜709に添加すれば良い。
【0262】
また、ゲート電極713、及び導電膜714は、ゲート絶縁膜712上に導電膜を形成した後、該導電膜をパターニングすることで形成することができる。ゲート電極713、及び導電膜714は、ゲート電極704、或いは導電膜710、及び導電膜711と同様の材料を用いて形成することが可能である。
【0263】
ゲート電極713、及び導電膜714の膜厚は、10nm〜400nm、好ましくは100nm〜200nmとする。本実施の形態では、タングステンターゲットを用いてスパッタリング法により150nmの導電膜を形成した後、該導電膜を所望の形状に加工(パターニング、及びエッチング)することで、ゲート電極713、及び導電膜714を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0264】
以上の工程により、第1のトランジスタ112が形成される。
【0265】
なお、ゲート絶縁膜712を間に挟んで導電膜710と導電膜714とが重なる部分が、容量素子114に相当する。
【0266】
また、第1のトランジスタ112はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、必要に応じて、複数のゲート電極を有することで、チャネル形成領域を複数有する、マルチゲート構造のトランジスタも形成することができる。
【0267】
なお、酸化物半導体膜709に接する絶縁膜(本実施の形態においては、絶縁膜708、及びゲート絶縁膜712が該当する。)は、第13族元素及び酸素を含む絶縁材料を用いるようにしても良い。酸化物半導体材料には第13族元素を含むものが多く、第13族元素を含む絶縁材料は酸化物半導体との相性が良く、これを酸化物半導体膜に接する絶縁膜に用いることで、酸化物半導体膜との界面の状態を良好に保つことができる。
【0268】
第13族元素を含む絶縁材料とは、絶縁材料に一又は複数の第13族元素を含むことを意味する。第13族元素を含む絶縁材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどがある。ここで、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子%)が多いものを示し、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上のものを示す。
【0269】
例えば、ガリウムを含有する酸化物半導体膜に接して絶縁膜を形成する場合に、絶縁膜に酸化ガリウムを含む材料を用いることで酸化物半導体膜と絶縁膜の界面特性を良好に保つことができる。例えば、酸化物半導体膜と酸化ガリウムを含む絶縁膜とを接して設けることにより、酸化物半導体膜と絶縁膜の界面における水素のパイルアップを低減することができる。なお、絶縁膜に酸化物半導体の成分元素と同じ族の元素を用いる場合には、同様の効果を得ることが可能である。例えば、酸化アルミニウムを含む材料を用いて絶縁膜を形成することも有効である。なお、酸化アルミニウムは、水を透過させにくいという特性を有しているため、当該材料を用いることは、酸化物半導体膜への水の侵入防止という点においても好ましい。
【0270】
また、酸化物半導体膜709に接する絶縁膜は、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープなどにより、絶縁材料を化学量論的組成比より酸素が多い状態とすることが好ましい。酸素ドープとは、酸素をバルクに添加することをいう。なお、当該バルクの用語は、酸素を薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、酸素ドープには、プラズマ化した酸素をバルクに添加する酸素プラズマドープが含まれる。また、酸素ドープは、イオン注入法又はイオンドーピング法を用いて行ってもよい。
【0271】
例えば、酸化物半導体膜709に接する絶縁膜として酸化ガリウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムの組成をGa(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0272】
また、酸化物半導体膜709に接する絶縁膜として酸化アルミニウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化アルミニウムの組成をAl(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0273】
また、酸化物半導体膜709に接する絶縁膜として酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)の組成をGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)とすることができる。
【0274】
酸素ドープ処理を行うことにより、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を形成することができる。このような領域を備える絶縁膜と酸化物半導体膜が接することにより、絶縁膜中の過剰な酸素が酸化物半導体膜に供給され、酸化物半導体膜中、又は酸化物半導体膜と絶縁膜の界面における酸素欠陥を低減し、酸化物半導体膜をi型化又はi型に限りなく近くすることができる。
【0275】
なお、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜は、酸化物半導体膜709に接する絶縁膜のうち、上層に位置する絶縁膜又は下層に位置する絶縁膜のうち、どちらか一方のみに用いても良いが、両方の絶縁膜に用いる方が好ましい。化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を、酸化物半導体膜709に接する絶縁膜の、上層及び下層に位置する絶縁膜に用い、酸化物半導体膜709を挟む構成とすることで、上記効果をより高めることができる。
【0276】
また、酸化物半導体膜709の上層又は下層に用いる絶縁膜は、上層と下層で同じ構成元素を有する絶縁膜としても良いし、異なる構成元素を有する絶縁膜としても良い。例えば、上層と下層とも、組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとしても良いし、上層と下層の一方を組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとし、他方を組成がAl(X=3+α、0<α<1)の酸化アルミニウムとしても良いし、上層と下層の一方を組成がSiO(X=2+α、0<α<1)の酸化シリコンとし、他方を組成がAl(X=3+α、0<α<1)の酸化アルミニウムとしても良い。
【0277】
また、酸化物半導体膜709に接する絶縁膜は、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。例えば、酸化物半導体膜709の上層に組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムを形成し、その上に組成がGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)の酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を形成してもよい。なお、酸化物半導体膜709の下層を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良いし、酸化物半導体膜709の上層及び下層の両方を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。
【0278】
次に、図11(C)に示すように、ゲート絶縁膜712、ゲート電極713、導電膜714を覆うように、絶縁膜715を形成する。絶縁膜715は、スパッタリング法やPE−CVD法などを用いて形成することができる。また、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。なお、絶縁膜715には、誘電率の低い材料や、誘電率の低い構造(多孔性の構造など)を用いることが望ましい。絶縁膜715の誘電率を低くすることにより、配線や電極などの間に生じる寄生容量を低減し、動作の高速化を図ることができるためである。なお、本実施の形態では、絶縁膜715を単層構造としているが、本発明の一態様はこれに限定されず、2層以上の積層構造としても良い。
【0279】
以上の工程により、記憶回路に用いるトランジスタを作製することができる。なお、本実施の形態に示した作製方法では、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜710、及び導電膜711が、酸化物半導体膜709の後に形成されている。しかし、第1のトランジスタ112は、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜が、酸化物半導体膜709の下、すなわち、酸化物半導体膜709と絶縁膜708の間に設けられていても良い。
【0280】
図12に、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜710及び導電膜711が、酸化物半導体膜709と、絶縁膜708の間に設けられている場合の、第1のトランジスタ112、容量素子114、及び第2のトランジスタ116の断面図を示す。図12に示す第1のトランジスタ112は、絶縁膜708を形成した後に導電膜710及び導電膜711の形成を行い、次いで酸化物半導体膜709の形成を行うことで、得ることができる。
【0281】
このように酸化物半導体を用いたトランジスタによって、不揮発性の記憶回路を構成することができる。また、不揮発性の記憶回路を用いた半導体装置としては、例えば不揮発性のランダムアクセスメモリがある。
【0282】
ところで、不揮発性のランダムアクセスメモリとして磁気トンネル接合素子(MTJ素子)が知られている。MTJ素子は、絶縁膜を介して上下に配置している膜中のスピンの向きが並行であれば低抵抗状態、反並行であれば高抵抗状態となることで情報を記憶する素子である。したがって、本実施の形態で示す酸化物半導体を用いた記憶回路とは原理が全く異なっている。表1はMTJ素子と、本実施の形態に係る記憶回路との対比を示す。
【0283】
【表1】

【0284】
MTJ素子は磁性材料を使用するためキュリー温度以上にすると磁性が失われてしまうという欠点がある。また、MTJ素子は電流駆動であるため、シリコンのバイポーラデバイスと相性が良いが、バイポーラデバイスは集積化に不向きである。そして、MTJ素子は書き込み電流が微少とはいえメモリの大容量化によって消費電力が増大してしまうといった問題がある。
【0285】
原理的にMTJ素子は磁界耐性に弱く強磁界にさらされるとスピンの向きが狂いやすい。また、MTJ素子に用いる磁性体のナノスケール化によって生じる磁化揺らぎを制御する必要がある。
【0286】
さらに、MTJ素子は希土類元素を使用するため、金属汚染を嫌うシリコン半導体のプロセスに組み入れるには相当の注意を要する。MTJ素子はビット当たりの材料コストから見ても高価であると考えられる。
【0287】
一方、本実施の形態で示す酸化物半導体を用いたトランジスタは、チャネルを形成する半導体材料が金属酸化物であること以外は、素子構造や動作原理がシリコンMOSFETと同様である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタは磁界の影響を受けず、ソフトエラーも生じ得ないといった特質を有する。このことからシリコン集積回路と非常に整合性が良いといえる。
【0288】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【0289】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態6とは異なる構造を有した、酸化物半導体膜を用いたトランジスタについて図13を用いて説明する。
【0290】
図13(A)に示すトランジスタ801は、絶縁膜802上に形成された、活性層として機能する酸化物半導体膜803と、酸化物半導体膜803上に形成されたソース電極804と、酸化物半導体膜803上に形成されたドレイン電極805と、酸化物半導体膜803、ソース電極804、及びドレイン電極805上のゲート絶縁膜806と、ゲート絶縁膜806上において酸化物半導体膜803と重なる位置に設けられたゲート電極807とを有する。
【0291】
図13(A)に示すトランジスタ801は、ゲート電極807が酸化物半導体膜803の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極804と、ドレイン電極805とが酸化物半導体膜803の上に形成されているトップコンタクト型である。そして、トランジスタ801は、ソース電極804、及びドレイン電極805と、ゲート電極807とが重なっていない。すなわち、ソース電極804、及びドレイン電極805とゲート電極807との間には、ゲート絶縁膜806の膜厚よりも大きい間隔が設けられている。よって、トランジスタ801は、ソース電極804、及びドレイン電極805とゲート電極807との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができるので、高速動作を実現することができる。
【0292】
また、酸化物半導体膜803は、ゲート電極807が形成された後に酸化物半導体膜803にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域808を有する。また、酸化物半導体膜803のうち、ゲート絶縁膜806を間に挟んでゲート電極807と重なる領域がチャネル形成領域809である。酸化物半導体膜803では、一対の高濃度領域808の間にチャネル形成領域809が設けられている。高濃度領域808を形成するためのドーパントの添加は、イオン注入法を用いることができる。ドーパントは、例えば窒素、リン、ボロンなどを用いることができる。
【0293】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域808中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。
【0294】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域808は、酸化物半導体膜803中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域808を酸化物半導体膜803に設けることで、ソース電極804とドレイン電極805の間の抵抗を下げることができる。
【0295】
また、In−Ga−Zn系酸化物半導体を酸化物半導体膜803に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下で1時間程度加熱処理を施すことにより、高濃度領域808中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。高濃度領域808中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域808の導電性を高め、ソース電極804とドレイン電極805の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極804とドレイン電極805の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域808中の窒素原子の濃度を、1×1020/cm以上7原子%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0296】
また、酸化物半導体膜803は、CAAC−OS膜で構成されていても良い。酸化物半導体膜803がCAAC−OS膜で構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体膜803の導電率を高めることができるので、ソース電極804とドレイン電極805の間の抵抗を下げることができる。
【0297】
そして、ソース電極804とドレイン電極805の間の抵抗を下げることで、トランジスタ801の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ801の微細化により、当該トランジスタを用いた記憶回路の占める面積を縮小化し、単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0298】
図13(B)に示すトランジスタ811は、絶縁膜812上に形成されたソース電極814と、絶縁膜812上に形成されたドレイン電極815と、ソース電極814とドレイン電極815上に形成された活性層として機能する酸化物半導体膜813と、酸化物半導体膜813、ソース電極814と、ドレイン電極815上のゲート絶縁膜816と、ゲート絶縁膜816上において酸化物半導体膜813と重なる位置に設けられたゲート電極817とを有する。
【0299】
図13(B)に示すトランジスタ811は、ゲート電極817が酸化物半導体膜813の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極814、及びドレイン電極815が酸化物半導体膜813の下に形成されているボトムコンタクト型である。そして、トランジスタ811は、トランジスタ801と同様に、ソース電極814、及びドレイン電極815と、ゲート電極817とが重なっていないので、ソース電極814またはドレイン電極815とゲート電極817との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができ、高速動作を実現することができる。
【0300】
また、酸化物半導体膜813は、ゲート電極817が形成された後に酸化物半導体膜813にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域818を有する。また、酸化物半導体膜813のうち、ゲート絶縁膜816を間に挟んでゲート電極817と重なる領域がチャネル形成領域819である。酸化物半導体膜813では、一対の高濃度領域818の間にチャネル形成領域819が設けられている。
【0301】
高濃度領域818は、上述した、トランジスタ801が有する高濃度領域808の場合と同様に、イオン注入法を用いて形成することができる。そして、高濃度領域818を形成するためのドーパントの種類については、高濃度領域808の場合を参照することができる。
【0302】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域818中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。
【0303】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域818は、酸化物半導体膜813中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域818を酸化物半導体膜813に設けることで、ソース電極814とドレイン電極815の間の抵抗を下げることができる。
【0304】
また、In−Ga−Zn系酸化物半導体を酸化物半導体膜813に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下程度で加熱処理を施すことにより、高濃度領域818中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。高濃度領域818中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域818の導電性を高め、ソース電極814とドレイン電極815の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極814とドレイン電極815の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域818中の窒素原子の濃度を、1×1020/cm以上7原子%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0305】
また、酸化物半導体膜813は、CAAC−OS膜で構成されていても良い。酸化物半導体膜813がCAAC−OS膜で構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体膜813の導電率を高めることができるので、ソース電極814とドレイン電極815の間の抵抗を下げることができる。
【0306】
そして、ソース電極814とドレイン電極815の間の抵抗を下げることで、トランジスタ811の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ811の微細化により、当該トランジスタを用いた記憶回路の占める面積を縮小化し、単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0307】
図13(C)に示すトランジスタ821は、絶縁膜822上に形成された、活性層として機能する酸化物半導体膜823と、酸化物半導体膜823上に形成されたソース電極824と、酸化物半導体膜823上に形成されたドレイン電極825と、酸化物半導体膜823、ソース電極824と、ドレイン電極825上のゲート絶縁膜826と、ゲート絶縁膜826上において酸化物半導体膜823と重なる位置に設けられたゲート電極827とを有する。さらに、トランジスタ821は、ゲート電極827の側部に設けられた、絶縁膜で形成されたサイドウォール830を有する。
【0308】
図13(C)に示すトランジスタ821は、ゲート電極827が酸化物半導体膜823の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極824と、ドレイン電極825とが酸化物半導体膜823の上に形成されているトップコンタクト型である。そして、トランジスタ821は、トランジスタ801と同様に、ソース電極824、及びドレイン電極825と、ゲート電極827とが重なっていないので、ソース電極824またはドレイン電極825とゲート電極827との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができ、高速動作を実現することができる。
【0309】
また、酸化物半導体膜823は、ゲート電極827が形成された後に酸化物半導体膜823にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域828と、一対の低濃度領域829とを有する。また、酸化物半導体膜823のうち、ゲート絶縁膜826を間に挟んでゲート電極827と重なる領域がチャネル形成領域831である。酸化物半導体膜823では、一対の高濃度領域828の間に一対の低濃度領域829が設けられ、一対の低濃度領域829の間にチャネル形成領域831が設けられている。そして、一対の低濃度領域829は、酸化物半導体膜823中の、ゲート絶縁膜826を間に挟んでサイドウォール830と重なる領域に設けられている。
【0310】
高濃度領域828及び低濃度領域829は、上述した、トランジスタ801が有する高濃度領域808の場合と同様に、イオン注入法を用いて形成することができる。そして、高濃度領域828を形成するためのドーパントの種類については、高濃度領域808の場合を参照することができる。
【0311】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域828中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。また、例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、低濃度領域829中の窒素原子の濃度は、5×1018/cm以上5×1019/cm未満であることが望ましい。
【0312】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域828は、酸化物半導体膜823中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域828を酸化物半導体膜823に設けることで、ソース電極824とドレイン電極825の間の抵抗を下げることができる。また、低濃度領域829をチャネル形成領域831と高濃度領域828の間に設けることで、短チャネル効果による、しきい値電圧のマイナスシフトを軽減することができる。
【0313】
また、In−Ga−Zn系酸化物半導体を酸化物半導体膜823に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下程度で加熱処理を施すことにより、高濃度領域828中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。またさらに、低濃度領域829も、窒素の濃度によっては、上記加熱処理によりウルツ鉱型の結晶構造を有する場合もある。高濃度領域828中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域828の導電性を高め、ソース電極824とドレイン電極825の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極824とドレイン電極825の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域828中の窒素原子の濃度を、1×1020/cm以上7原子%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0314】
また、酸化物半導体膜823は、CAAC−OS膜で構成されていても良い。酸化物半導体膜823がCAAC−OS膜で構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体膜823の導電率を高めることができるので、ソース電極824とドレイン電極825の間の抵抗を下げることができる。
【0315】
そして、ソース電極824とドレイン電極825の間の抵抗を下げることで、トランジスタ821の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ821の微細化により、当該トランジスタを用いた記憶回路の占める面積を縮小化し、単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0316】
図13(D)に示すトランジスタ841は、絶縁膜842上に形成されたソース電極844と、絶縁膜842上に形成されたドレイン電極845と、ソース電極844と、ドレイン電極845上に形成された活性層として機能する酸化物半導体膜843と、酸化物半導体膜843、ソース電極844、ドレイン電極845上のゲート絶縁膜846と、ゲート絶縁膜846上において酸化物半導体膜843と重なる位置に設けられたゲート電極847とを有する。さらに、トランジスタ841は、ゲート電極847の側部に設けられた、絶縁膜で形成されたサイドウォール850を有する。
【0317】
図13(D)に示すトランジスタ841は、ゲート電極847が酸化物半導体膜843の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極844、及びドレイン電極845が酸化物半導体膜843の下に形成されているボトムコンタクト型である。そして、トランジスタ841は、トランジスタ801と同様に、ソース電極844またはドレイン電極845と、ゲート電極847とが重なっていないので、ソース電極844またはドレイン電極845とゲート電極847との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができ、高速動作を実現することができる。
【0318】
また、酸化物半導体膜843は、ゲート電極847が形成された後に酸化物半導体膜843にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域848と、一対の低濃度領域849とを有する。また、酸化物半導体膜843のうち、ゲート絶縁膜846を間に挟んでゲート電極847と重なる領域がチャネル形成領域851である。酸化物半導体膜843では、一対の高濃度領域848の間に一対の低濃度領域849が設けられ、一対の低濃度領域849の間にチャネル形成領域851が設けられている。そして、一対の低濃度領域849は、酸化物半導体膜843中の、ゲート絶縁膜846を間に挟んでサイドウォール850と重なる領域に設けられている。
【0319】
高濃度領域848及び低濃度領域849は、上述した、トランジスタ801が有する高濃度領域808の場合と同様に、イオン注入法を用いて形成することができる。そして、高濃度領域848を形成するためのドーパントの種類については、高濃度領域808の場合を参照することができる。
【0320】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域848中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。また、例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、低濃度領域849中の窒素原子の濃度は、5×1018/cm以上5×1019/cm未満であることが望ましい。
【0321】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域848は、酸化物半導体膜843中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域848を酸化物半導体膜843に設けることで、ソース電極844とドレイン電極845の間の抵抗を下げることができる。また、低濃度領域849をチャネル形成領域851と高濃度領域848の間に設けることで、短チャネル効果による、しきい値電圧のマイナスシフトを軽減することができる。
【0322】
また、In−Ga−Zn系酸化物半導体を酸化物半導体膜843に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下程度で加熱処理を施すことにより、高濃度領域848中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。またさらに、低濃度領域849も、窒素の濃度によっては、上記加熱処理によりウルツ鉱型の結晶構造を有する場合もある。高濃度領域848中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域848の導電性を高め、ソース電極844とドレイン電極845の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極844とドレイン電極845の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域848中の窒素原子の濃度を、1×1020/cm以上7原子%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0323】
また、酸化物半導体膜843は、CAAC−OS膜で構成されていても良い。酸化物半導体膜843がCAAC−OS膜で構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体膜843の導電率を高めることができるので、ソース電極844とドレイン電極845の間の抵抗を下げることができる。
【0324】
そして、ソース電極844とドレイン電極845の間の抵抗を下げることで、トランジスタ841の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ841の微細化により、当該トランジスタを用いた記憶回路の占める面積を縮小化し、単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0325】
なお、酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度領域をセルフアラインプロセスにて作製する方法の一つとして、酸化物半導体膜の表面を露出させて、アルゴンプラズマ処理をおこない、酸化物半導体膜のプラズマにさらされた領域の抵抗率を低下させる方法が開示されている(S. Jeon et al. ”180nm Gate Length Amorphous InGaZnO Thin Film Transistor for High Density Image Sensor Applications”, IEDM Tech. Dig., pp.504−507, 2010.)。
【0326】
しかしながら、上記作製方法では、ゲート絶縁膜を形成した後に、ソース領域またはドレイン領域となるべき部分を露出するべく、ゲート絶縁膜を部分的に除去する必要がある。よって、ゲート絶縁膜が除去される際に、下層の酸化物半導体膜も部分的にオーバーエッチングされ、ソース領域またはドレイン領域となるべき部分の膜厚が小さくなってしまう。その結果、ソース領域またはドレイン領域の抵抗が増加し、また、オーバーエッチングによるトランジスタの特性不良が起こりやすくなる。
【0327】
トランジスタの微細化を進めるには、加工精度の高いドライエッチング法を採用する必要がある。しかし、上記オーバーエッチングは、酸化物半導体膜とゲート絶縁膜の選択比が十分に確保できないドライエッチング法を採用する場合に、顕著に起こりやすい。
【0328】
例えば、酸化物半導体膜が十分な厚さであればオーバーエッチングも問題にはならないが、チャネル長を200nm以下とする場合には、短チャネル効果を防止する上で、チャネル形成領域となる部分の酸化物半導体膜の厚さは20nm以下、好ましくは10nm以下であることが求められる。そのような薄い酸化物半導体膜を扱う場合には、酸化物半導体膜のオーバーエッチングは、上述したような、ソース領域またはドレイン領域の抵抗が増加、トランジスタの特性不良を生じさせるため、好ましくない。
【0329】
しかし、本実施の形態に示すように、酸化物半導体膜へのドーパントの添加を、酸化物半導体膜を露出させず、ゲート絶縁膜を残したまま行うことで、酸化物半導体膜のオーバーエッチングを防ぎ、酸化物半導体膜への過剰なダメージを軽減することができる。また、加えて、酸化物半導体膜とゲート絶縁膜の界面も清浄に保たれる。従って、トランジスタの特性及び信頼性を高めることができる。
【0330】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【0331】
(実施の形態8)
本実施の形態においては、酸化物半導体膜として、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域とするトランジスタ、及び当該トランジスタの特性について、図24乃至図31を用いて説明する。
【0332】
図24(A)はトランジスタの上面図である。また、図24(B)は図24(A)の一点鎖線A−Bに対応する断面図である。
【0333】
図24(B)に示すトランジスタは、基板600と、基板600上に設けられた下地絶縁膜602と、下地絶縁膜602上に設けられた酸化物半導体膜606と、酸化物半導体膜606と接する一対の電極614と、酸化物半導体膜606および一対の電極614上に設けられたゲート絶縁膜608と、ゲート絶縁膜608を介して酸化物半導体膜606と重畳して設けられたゲート電極610と、ゲート絶縁膜608およびゲート電極610を覆って設けられた層間絶縁膜616と、層間絶縁膜616に設けられた開口部を介して一対の電極614と接続する配線618と、層間絶縁膜616および配線618を覆って設けられた保護膜620と、を有する。
【0334】
基板600としてはガラス基板を、下地絶縁膜602としては酸化シリコン膜を、酸化物半導体膜606としてはIn−Sn−Zn−O膜を、一対の電極614としてはタングステン膜を、ゲート絶縁膜608としては酸化シリコン膜を、ゲート電極610としては窒化タンタル膜とタングステン膜との積層構造を、層間絶縁膜616としては酸化窒化シリコン膜とポリイミド膜との積層構造を、配線618としてはチタン膜、アルミニウム膜、チタン膜がこの順で形成された積層構造を、保護膜620としてはポリイミド膜を、それぞれ用いた。
【0335】
なお、図24(A)に示す構造のトランジスタにおいて、ゲート電極610と一対の電極614との重畳する幅をLovと呼ぶ。同様に、酸化物半導体膜606に対する一対の電極614のはみ出しをdWと呼ぶ。
【0336】
本実施の形態においては、酸化物半導体膜606として、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いることができる。
【0337】
なお、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域とするトランジスタは、該酸化物半導体膜を形成する際に基板を加熱して成膜すること、或いは酸化物半導体膜を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。なお、主成分とは組成比で5原子%以上含まれる元素をいう。
【0338】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜の成膜後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。また、トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせることができる。
【0339】
ここで、図24に示したトランジスタの特性について、以下説明を行う。
【0340】
図25(A)〜(C)は、In、Sn、Znを主成分とし、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μmである酸化物半導体膜と、厚さ100nmのゲート絶縁膜を用いたトランジスタの特性である。なお、Vは10Vとした。
【0341】
図25(A)は基板を意図的に加熱せずにスパッタリング法でIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性である。このとき電界効果移動度は18.8cm/Vsが得られている。一方、基板を意図的に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成すると電界効果移動度を向上させることが可能となる。図25(B)は基板を200℃に加熱してIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成したときのトランジスタ特性を示すが、電界効果移動度は32.2cm/Vsが得られている。
【0342】
電界効果移動度は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を形成した後に熱処理をすることによって、さらに高めることができる。図25(C)は、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜を200℃でスパッタリング成膜した後、650℃で熱処理をしたときのトランジスタ特性を示す。このとき電界効果移動度は34.5cm/Vsが得られている。
【0343】
基板を意図的に加熱することでスパッタリング成膜中の水分が酸化物半導体膜中に取り込まれるのを低減する効果が期待できる。また、成膜後に熱処理をすることによっても、酸化物半導体膜から水素や水酸基若しくは水分を放出させ除去することができ、上記のように電界効果移動度を向上させることができる。このような電界効果移動度の向上は、脱水化・脱水素化による不純物の除去のみならず、高密度化により原子間距離が短くなるためとも推定される。また、酸化物半導体膜から不純物を除去して高純度化することで結晶化を図ることができる。このように高純度化された非単結晶酸化物半導体膜は、理想的には100cm/Vsを超える電界効果移動度を実現することも可能になると推定される。
【0344】
In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜に酸素イオンを注入し、熱処理により該酸化物半導体膜に含まれる水素や水酸基若しくは水分を放出させ、その熱処理と同時に又はその後の熱処理により酸化物半導体膜を結晶化させても良い。このような結晶化若しくは再結晶化の処理により結晶性の良い非単結晶酸化物半導体膜を得ることができる。
【0345】
基板を意図的に加熱して成膜すること及び/又は成膜後に熱処理することの効果は、電界効果移動度の向上のみならず、トランジスタのノーマリ・オフ化を図ることにも寄与している。基板を意図的に加熱しないで形成されたIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域としたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスシフトしてしまう傾向がある。しかし、基板を意図的に加熱して形成された酸化物半導体膜を用いた場合、このしきい値電圧のマイナスシフト化は解消される。つまり、しきい値電圧はトランジスタがノーマリ・オフとなる方向に動き、このような傾向は図25(A)と図25(B)の対比からも確認することができる。
【0346】
なお、しきい値電圧はIn、Sn及びZnの比率を変えることによっても制御することが可能であり、組成比として原子数比で、In:Sn:Zn=2:1:3とすることでトランジスタのノーマリ・オフ化を期待することができる。また、ターゲットの組成比を原子数比で、In:Sn:Zn=2:1:3とすることで結晶性の高い酸化物半導体膜を得ることができる。
【0347】
意図的な基板加熱温度若しくは熱処理温度は、150℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは400℃以上であり、より高温で成膜し或いは熱処理することでトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることが可能となる。
【0348】
また、意図的に基板を加熱した成膜及び/又は成膜後に熱処理をすることで、ゲートバイアス・ストレスに対する安定性を高めることができる。例えば、2MV/cm、150℃、1時間印加の条件において、ドリフトがそれぞれ±1.5V未満、好ましくは1.0V未満を得ることができる。
【0349】
実際に、酸化物半導体膜の成膜後に加熱処理を行っていない試料1と、酸化物半導体膜の成膜後に650℃の加熱処理を行った試料2のトランジスタに対してBT試験を行った。
【0350】
まず基板温度を25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I特性の測定を行った。なお、Vはドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を示す。次に、基板温度を150℃とし、Vを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜608に印加される電界強度が2MV/cmとなるようにVに20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I測定を行った。これをプラスBT試験と呼ぶ。
【0351】
同様に、まず基板温度を25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I特性の測定を行った。次に、基板温度を150℃とし、Vを0.1Vとした。次に、ゲート絶縁膜608に印加される電界強度が−2MV/cmとなるようにVに−20Vを印加し、そのまま1時間保持した。次に、Vを0Vとした。次に、基板温度25℃とし、Vを10Vとし、トランジスタのV−I測定を行った。これをマイナスBT試験と呼ぶ。
【0352】
試料1のプラスBT試験の結果を図26(A)に、マイナスBT試験の結果を図26(B)に示す。また、試料2のプラスBT試験の結果を図27(A)に、マイナスBT試験の結果を図27(B)に示す。
【0353】
試料1のプラスBT試験およびマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ1.80Vおよび−0.42Vであった。また、試料2のプラスBT試験およびマイナスBT試験によるしきい値電圧の変動は、それぞれ0.79Vおよび0.76Vであった。
試料1および試料2のいずれも、BT試験前後におけるしきい値電圧の変動が小さく、信頼性が高いことがわかる。
【0354】
熱処理は酸素雰囲気中で行うことができるが、まず窒素若しくは不活性ガス、または減圧下で熱処理を行ってから酸素を含む雰囲気中で熱処理を行っても良い。最初に脱水化・脱水素化を行ってから酸素を酸化物半導体膜に加えることで、熱処理の効果をより高めることができる。また、後から酸素を加えるには、酸素イオンを電界で加速して酸化物半導体膜に注入する方法を適用しても良い。
【0355】
酸化物半導体膜中及び該酸化物半導体と接する膜との界面には、酸素欠損による欠陥が生成されやすいが、かかる熱処理により酸化物半導体膜中に酸素を過剰に含ませることにより、定常的に生成される酸素欠損を過剰な酸素によって補償することが可能となる。過剰酸素は主に格子間に存在する酸素であり、その酸素濃度は1×1016/cm以上2×1020/cm以下とすれば、結晶に歪み等を与えることなく酸化物半導体膜中に含ませることができる。
【0356】
また、熱処理によって酸化物半導体膜に結晶が少なくとも一部に含まれるようにすることで、より安定な酸化物半導体膜を得ることができる。例えば、組成比として原子数比で、In:Sn:Zn=1:1:1のターゲットを用いて、基板を意図的に加熱せずにスパッタリング成膜した酸化物半導体膜は、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)でハローパタンが観測される。この成膜された酸化物半導体膜を熱処理することによって結晶化させることができる。熱処理温度は任意であるが、例えば650℃の熱処理を行うことで、X線回折により明確な回折ピークを観測することができる。
【0357】
実際に、In−Sn−Zn−O膜のXRD分析を行った。XRD分析には、Bruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い、Out−of−Plane法で測定した。
【0358】
XRD分析を行った試料として、試料Aおよび試料Bを用意した。以下に試料Aおよび試料Bの作製方法を説明する。
【0359】
脱水素化処理済みの石英基板上にIn−Sn−Zn−O膜を100nmの厚さで成膜した。
【0360】
In−Sn−Zn−O膜は、スパッタリング装置を用い、酸素雰囲気で電力を100W(DC)として成膜した。ターゲットは、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いた。なお、成膜時の基板加熱温度は200℃とした。このようにして作製した試料を試料Aとした。
【0361】
次に、試料Aと同様の方法で作製した試料に対し加熱処理を650℃の温度で行った。加熱処理は、はじめに窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行い、温度を下げずに酸素雰囲気でさらに1時間の加熱処理を行っている。このようにして作製した試料を試料Bとした。
【0362】
図28に試料Aおよび試料BのXRDスペクトルを示す。試料Aでは、結晶由来のピークが観測されなかったが、試料Bでは、2θが35deg近傍および37deg〜38degに結晶由来のピークが観測された。
【0363】
このように、In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜は成膜時に意図的に加熱すること及び/又は成膜後に熱処理することによりトランジスタの特性を向上させることができる。
【0364】
この基板加熱や熱処理は、酸化物半導体膜にとって悪性の不純物である水素や水酸基を膜中に含ませないようにすること、或いは膜中から除去する作用がある。すなわち、酸化物半導体膜中でドナー不純物となる水素を除去することで高純度化を図ることができる。また、酸化物半導体膜に酸素欠損が発生していたとしても、酸素雰囲気での加熱処理、及び/又は下地絶縁膜から酸化物半導体膜に酸素が供与される。それによってトランジスタのノーマリ・オフ化を図ることができ、酸化物半導体が高純度化、及び酸素が供与されることによりオフ電流を1aA/μm以下にすることができる。ここで、上記オフ電流値の単位は、チャネル幅1μmあたりの電流値を示す。
【0365】
図29に、トランジスタのオフ電流と測定時の基板温度(絶対温度)の逆数との関係を示す。ここでは、簡単のため測定時の基板温度の逆数に1000を掛けた数値(1000/T)を横軸としている。
【0366】
具体的には、図29に示すように、トランジスタのオフ電流は、基板温度が125℃の場合には1aA/μm(1×10−18A/μm)以下、85℃の場合には100zA/μm(1×10−19A/μm)以下、室温(27℃)の場合には1zA/μm(1×10−21A/μm)以下にすることができる。好ましくは、125℃において0.1aA/μm(1×10−19A/μm)以下に、85℃において10zA/μm(1×10−20A/μm)以下に、室温において0.1zA/μm(1×10−22A/μm)以下にすることができる。
【0367】
もっとも、酸化物半導体膜の成膜時に水素や水分が膜中に混入しないように、成膜室外部からのリークや成膜室内の内壁からの脱ガスを十分抑え、スパッタリングガスの高純度化を図ることが好ましい。例えば、スパッタリングガスは水分が膜中に含まれないように露点−70℃以下であるガスを用いることが好ましい。また、ターゲットそのものに水素や水分などの不純物が含まれていていないように、高純度化されたターゲットを用いることが好ましい。In、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜は熱処理によって膜中の水分を除去することができるが、In、Ga、Znを主成分とする酸化物半導体膜と比べて水分の放出温度が高いため、好ましくは最初から水分の含まれない膜を形成しておくことが好ましい。
【0368】
また、酸化物半導体膜の成膜後に650℃の加熱処理を行った試料Bのトランジスタにおいて、基板温度と電気的特性の関係について評価した。
【0369】
測定に用いたトランジスタは、図24(A)に示す構造のトランジスタを用い、チャネル長Lが3μm、チャネル幅Wが10μm、Lovが0μm、dWが0μmである。なお、Vは10Vとした。なお、基板温度は−40℃、−25℃、25℃、75℃、125℃および150℃で行った。
【0370】
図30に、I(実線)および電界効果移動度(点線)のV依存性を示す。また、図31(A)に基板温度としきい値電圧の関係を、図31(B)に基板温度と電界効果移動度の関係を示す。
【0371】
図31(A)より、基板温度が高いほどしきい値電圧は低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で1.09V〜−0.23Vであった。
【0372】
また、図31(B)より、基板温度が高いほど電界効果移動度が低くなることがわかる。なお、その範囲は−40℃〜150℃で36cm/Vs〜32cm/Vsであった。従って、上述の温度範囲において電気的特性の変動が小さいことがわかる。
【0373】
上記のようなIn、Sn、Znを主成分とする酸化物半導体膜をチャネル形成領域とするトランジスタによれば、オフ電流を1aA/μm以下に保ちつつ、電界効果移動度を30cm/Vs以上、好ましくは40cm/Vs以上、より好ましくは60cm/Vs以上とし、LSIで要求されるオン電流の値を満たすことができる。例えば、L/W=33nm/40nmのFETで、ゲート電圧2.7V、ドレイン電圧1.0Vのとき12μA以上のオン電流を流すことができる。またトランジスタの動作に求められる温度範囲においても、十分な電気的特性を確保することができる。このような特性のトランジスタを記憶回路のトランジスタとして用いることで、十分な動作速度を実現することができる。
【0374】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【0375】
(実施の形態9)
本実施の形態においては、本発明の一態様に係る記憶回路を用いることで、消費電力の低い電子機器について説明を行う。特に電力の供給を常時受けることが困難な携帯用の電子機器の場合、本発明の一態様に係る消費電力の低い記憶回路をその構成要素に追加することにより、連続使用時間が長くなるといったメリットが得られる。
【0376】
本発明の一態様に係る記憶回路は、表示装置、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る記憶回路を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。
【0377】
本発明の一態様に係る記憶回路を、携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯用の電子機器に応用した場合について図14、及び図15を用いて説明する。
【0378】
図14は、携帯用の電子機器のブロック図である。図14に示す携帯用の電子機器はRF回路901、アナログベースバンド回路902、デジタルベースバンド回路903、バッテリー904、電源回路905、アプリケーションプロセッサ906、フラッシュメモリ910、ディスプレイコントローラ911、メモリ回路912、ディスプレイ913、タッチセンサ919、音声回路917、キーボード918などより構成されている。ディスプレイ913は表示部914、ソースドライバ915、ゲートドライバ916によって構成されている。アプリケーションプロセッサ906はCPU907、DSP908、インターフェース(IF)909を有している。上記実施の形態で示した記憶回路を、例えばCPU907に採用することによって、消費電力を低減することができる。
【0379】
図15は電子書籍のブロック図である。電子書籍はバッテリー1001、電源回路1002、マイクロプロセッサ1003、フラッシュメモリ1004、音声回路1005、キーボード1006、メモリ回路1007、タッチパネル1008、ディスプレイ1009、ディスプレイコントローラ1010によって構成される。マイクロプロセッサ1003はCPU1011、DSP1012、インターフェース1013を有している。上記実施の形態で示した記憶回路を、例えばCPU1011に採用することで、消費電力を低減することが可能になる。
【0380】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて行うことが出来る。
【符号の説明】
【0381】
100 記憶回路
102 第1の記憶回路
104 第2の記憶回路
106 位相反転回路
108 第1のスイッチ
110 第2のスイッチ
112 第1のトランジスタ
114 容量素子
116 第2のトランジスタ
118 第3のトランジスタ
120 第4のトランジスタ
122 第5のトランジスタ
124 トランジスタ
126 トランジスタ
128 トランジスタ
130 トランジスタ
132 トランジスタ
134 トランジスタ
136 トランジスタ
138 トランジスタ
140 トランジスタ
142 トランジスタ
150 記憶処理装置
151 演算回路
152 演算回路
153 記憶回路
154 記憶回路
155 記憶回路
156 制御回路
157 電源制御回路
200 記憶回路
202 トランジスタ
204 トランジスタ
206 トランジスタ
208 トランジスタ
210 トランジスタ
212 トランジスタ
214 トランジスタ
216 トランジスタ
218 トランジスタ
220 トランジスタ
222 トランジスタ
224 トランジスタ
226 トランジスタ
228 トランジスタ
230 トランジスタ
232 トランジスタ
234 トランジスタ
236 トランジスタ
240 位相反転回路
242 第1のスイッチ
244 第1の記憶回路
246 第2のスイッチ
248 第2の記憶回路
501 下地絶縁膜
502 絶縁膜
503a 半導体領域
503b 半導体領域
503c 半導体領域
504 ゲート絶縁膜
505 ゲート電極
506a 側壁絶縁膜
506b 側壁絶縁膜
507 絶縁膜
508a ソース電極
508b ドレイン電極
600 基板
602 下地絶縁膜
606 酸化物半導体膜
608 ゲート絶縁膜
610 ゲート電極
614 電極
616 層間絶縁膜
618 配線
620 保護膜
700 基板
701 絶縁膜
702 半導体膜
703 ゲート絶縁膜
704 ゲート電極
705 不純物領域
706 チャネル形成領域
707 絶縁膜
708 絶縁膜
709 酸化物半導体膜
710 導電膜
711 導電膜
712 ゲート絶縁膜
713 ゲート電極
714 導電膜
715 絶縁膜
801 トランジスタ
802 絶縁膜
803 酸化物半導体膜
804 ソース電極
805 ドレイン電極
806 ゲート絶縁膜
807 ゲート電極
808 高濃度領域
809 チャネル形成領域
811 トランジスタ
812 絶縁膜
813 酸化物半導体膜
814 ソース電極
815 ドレイン電極
816 ゲート絶縁膜
817 ゲート電極
818 高濃度領域
819 チャネル形成領域
821 トランジスタ
822 絶縁膜
823 酸化物半導体膜
824 ソース電極
825 ドレイン電極
826 ゲート絶縁膜
827 ゲート電極
828 高濃度領域
829 低濃度領域
830 サイドウォール
831 チャネル形成領域
841 トランジスタ
842 絶縁膜
843 酸化物半導体膜
844 ソース電極
845 ドレイン電極
846 ゲート絶縁膜
847 ゲート電極
848 高濃度領域
849 低濃度領域
850 サイドウォール
851 チャネル形成領域
901 RF回路
902 アナログベースバンド回路
903 デジタルベースバンド回路
904 バッテリー
905 電源回路
906 アプリケーションプロセッサ
907 CPU
908 DSP
909 インターフェース(IF)
910 フラッシュメモリ
911 ディスプレイコントローラ
912 メモリ回路
913 ディスプレイ
914 表示部
915 ソースドライバ
916 ゲートドライバ
917 音声回路
918 キーボード
919 タッチセンサ
1001 バッテリー
1002 電源回路
1003 マイクロプロセッサ
1004 フラッシュメモリ
1005 音声回路
1006 キーボード
1007 メモリ回路
1008 タッチパネル
1009 ディスプレイ
1010 ディスプレイコントローラ
1011 CPU
1012 DSP
1013 インターフェース
9900 基板
9901 ALU
9902 ALU・Controller
9903 Instruction・Decoder
9904 Interrupt・Controller
9905 Timing・Controller
9906 Register
9907 Register・Controller
9908 Bus・I/F
9909 ROM
9920 ROM・I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の記憶回路と、第2の記憶回路と、第1のスイッチと、第2のスイッチと、位相反転回路と、を有し、
前記第1の記憶回路は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、容量素子と、を有し、
前記第1のトランジスタは、酸化物半導体膜により形成され、
前記第1のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方は、第1の制御信号が与えられる第1の信号線に接続され、前記第1のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方は、前記容量素子の電極の一方、及び前記第2のトランジスタのゲート電極と接続され、
前記容量素子の電極の他方は、接地され、
前記第1のトランジスタのゲート電極は、第2の制御信号が与えられる第2の信号線に接続され、
前記位相反転回路の入力端子は、前記第2の信号線に接続され、前記位相反転回路の出力端子は、前記第1のスイッチの入力端子と接続され、前記位相反転回路の第1端子は、電源電圧が与えられる電源線と接続され、前記位相反転回路の第2端子は、接地され、
前記第1のスイッチの第1端子は、前記電源線と接続され、前記第1のスイッチの第2端子は、前記第2のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方に接続され、前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、接地され、
前記第3のトランジスタのゲート電極は、前記第2のトランジスタのゲート電極と接続され、前記第3のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方は、前記電源線と接続され、前記第3のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方は、前記第1のスイッチの出力端子と接続され、
前記第2のスイッチの第1端子は、前記位相反転回路の出力端子と接続され、前記第2のスイッチの第2端子は、前記第2の信号線に接続され、
前記第1のスイッチの出力端子は、前記第2のスイッチを介して前記第2の記憶回路と接続されることを特徴とする記憶回路。
【請求項2】
第1の記憶回路と、第2の記憶回路と、第1のスイッチと、第2のスイッチと、位相反転回路と、を有し、
前記第1の記憶回路は、第1のトランジスタと、容量素子と、第2のトランジスタと、第3のトランジスタと、を有し、
前記第1のスイッチは、第4のトランジスタと、第5のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタは、酸化物半導体膜により形成され、
前記第1のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方は、第1の制御信号が与えられる第1の信号線に接続され、前記第1のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方は、前記容量素子の電極の一方、及び前記第2のトランジスタのゲート電極と接続され、
前記容量素子の電極の他方は、接地され、
前記第1のトランジスタのゲート電極は、第2の制御信号が与えられる第2の信号線に接続され、
前記位相反転回路の入力端子は、前記第2の信号線に接続され、前記位相反転回路の出力端子は、前記第4のトランジスタのゲート電極と、前記第5のトランジスタのゲート電極と接続され、前記位相反転回路の第1端子は、電源電圧が与えられる電源線と接続され、前記位相反転回路の第2端子は、接地され、
前記第4のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方は、前記電源線と接続され、
前記第4のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方は、前記第5のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方に接続され、
前記第5のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方は、前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方に接続され、
前記第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、接地され、
前記第3のトランジスタのゲート電極は、前記第2のトランジスタのゲート電極と接続され、前記第3のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方は、前記電源線と接続され、前記第3のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方は、前記第4のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方、及び前記第5のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方と接続され、
前記第2のスイッチの第1端子は、前記位相反転回路の出力端子と接続され、前記第2のスイッチの第2端子は、前記第2の信号線に接続され、
前記第4のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の他方、及び前記第5のトランジスタのソース電極、またはドレイン電極の一方は、前記第2のスイッチを介して前記第2の記憶回路と接続されることを特徴とする記憶回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1のトランジスタは、In、Ga及びZnを含んでなる酸化物半導体材料により形成された記憶回路。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記第1のトランジスタは、In、Sn及びZnを含んでなる酸化物半導体材料により形成された記憶回路。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の記憶回路を用いた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−257213(P2012−257213A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108349(P2012−108349)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】