説明

記憶回路

【課題】消費電力を抑えることができる記憶回路の提供を目的の一つとする。
【解決手段】記憶回路に電源が供給されない間は、揮発性のメモリに相当する記憶部に記憶されていたデータを、不揮発性のメモリに相当する記憶部に設けられた容量素子によって保持する記憶回路である。不揮発性記憶部では、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタを用いることによって、容量素子に保持された信号は長期間にわたり保持することができる。こうして、記憶回路は電源の供給が停止している間も論理状態(データ信号)を保持することが可能である。また酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタのゲートに印加する電位を、電源電位を供給する配線と前記トランジスタのゲートとの間に設けられた昇圧回路によって高くすることで、1つの電源電位であっても誤動作なくデータ信号の保持を行うことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電源を切っても記憶している論理状態が消えない信号処理装置の記憶回路に関する。
【背景技術】
【0002】
中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)などの信号処理装置は、その用途によって多種多様な構成を有している。信号処理装置は、一般的に、データやプログラムを記憶するためのメインメモリの他に、レジスタ、キャッシュメモリなど、各種の記憶回路が設けられている。レジスタは、演算処理やプログラムの実行状態の保持などのために一時的にデータ信号を保持する役割を担っている。また、キャッシュメモリは、演算装置とメインメモリの間に介在し、低速なメインメモリへのアクセスを減らして演算処理を高速化させることを目的として設けられている。
【0003】
信号処理装置においてレジスタやキャッシュメモリ等の記憶回路は、メインメモリよりも高速でデータ信号の書き込みを行う必要がある。よって、通常は、レジスタとしてフリップフロップが、キャッシュメモリとしてSRAM(Static Random Access Memory)等が用いられる。つまり、これらのレジスタ、キャッシュメモリ等には、電源の供給が途絶えるとデータ信号を消失してしまう揮発性の記憶回路が用いられている。
【0004】
消費電力を抑えるため、データ信号の入出力が行われない期間において信号処理装置への電源の供給を一時的に停止するという方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の方法では、レジスタ、キャッシュメモリ等の揮発性の記憶回路の周辺に不揮発性の記憶回路を配置し、上記データ信号をその不揮発性の記憶回路に一時的に記憶させる。こうして、信号処理装置において電源の供給を停止する間も、レジスタ、キャッシュメモリ等はデータ信号を保持する。
【0005】
また、信号処理装置において長時間の電源の供給停止を行う際には、電源の供給停止の前に、揮発性の記憶回路内のデータ信号をハードディスク、フラッシュメモリ等の外部記憶回路に移すことで、データ信号の消失を防ぐこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−078836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
信号処理装置において電源の供給を停止する間、揮発性の記憶回路の周辺に配置した不揮発性の記憶回路へ揮発性の記憶回路のデータ信号を記憶させる方法では、これらの不揮発性の記憶回路として主に磁気素子や強誘電体が用いられているため、信号処理装置の作製工程が複雑である。
【0008】
また、信号処理装置において電源の供給を停止する間、外部記憶回路に揮発性の記憶回路のデータ信号を記憶させる方法では、外部記憶回路から揮発性の記憶回路にデータ信号を戻すのには時間を要する。よって、外部記憶回路によるデータ信号のバックアップは、消費電力の低減を目的とした短時間の電源停止には適さない。
【0009】
上述の課題に鑑み、本発明の一態様は、複雑な作製工程を必要とせず、消費電力を抑えることができる信号処理装置の提供を目的の一つとする。特に、短時間の電源停止により消費電力を抑えることができる信号処理装置の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、記憶回路に電源が供給されない間は、揮発性のメモリに相当する記憶部に記憶されていたデータ信号を、不揮発性のメモリに相当する記憶部に設けられた容量素子によって保持する記憶回路である。不揮発性記憶部では、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタを用いることによって、容量素子に保持された信号は長期間にわたり保持することができる。こうして、記憶回路は電源の供給が停止した間も論理状態(データ信号)を保持することが可能である。また酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタのゲートに印加する電位を、電源電位を供給する配線と前記トランジスタのゲートとの間に設けられた昇圧回路によって高くすることで、1つの電源電位であっても誤動作なくデータ信号の保持を行うことが可能である。
【0011】
本発明の一態様は、揮発性記憶部と、不揮発性記憶部を有し、不揮発性記憶部は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成される第1のトランジスタと、第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方の電極がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方の電極と、第2のトランジスタのゲートとの間には、揮発性記憶部を非動作とする際に、揮発性記憶部より出力されたデータ信号が保持され、第1のトランジスタのゲートと電源電位を供給する配線との間には、第1のトランジスタのゲートに印加する電圧を高くするための昇圧回路が設けられている信号処理装置の記憶回路である。
【0012】
本発明の一態様は、揮発性記憶部と、不揮発性記憶部を有し、不揮発性記憶部は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成される第1のトランジスタと、第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方の電極がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、第1のトランジスタのソースまたはドレインの他方の電極がソースまたはドレインの一方の電極に電気的に接続され、書き込み制御信号により導通状態または非導通状態が制御される第3のトランジスタと、第1のトランジスタのゲートを電気的に浮遊状態とするための制御をする第4のトランジスタと、を有し、第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方の電極と、第2のトランジスタのゲートとの間には、揮発性記憶部を非動作とする際に、揮発性記憶部より出力されたデータ信号が保持され、第1のトランジスタのゲートと電源電位を供給する配線との間には、第1のトランジスタのゲートに印加する電圧を高くするための昇圧回路が設けられている信号処理装置の記憶回路である。
【0013】
本発明の一態様は、揮発性記憶部と、不揮発性記憶部を有し、不揮発性記憶部は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成される第1のトランジスタと、第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方の電極がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、第1のトランジスタのソースまたはドレインの他方の電極がソースまたはドレインの一方の電極に電気的に接続され、書き込み制御信号により導通状態または非導通状態が制御される第3のトランジスタと、第1のトランジスタのゲートを電気的に浮遊状態とするための制御をする第4のトランジスタと、を有し、第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方と、第2のトランジスタのゲートとの間には、揮発性記憶部を非動作とする際に、揮発性記憶部より出力されたデータ信号が保持され、データ信号の保持は、データ信号の論理を反転する第1の位相反転回路を介して行われ、データ信号の出力は、保持されたデータ信号の論理を反転する第2の位相反転回路を介して行われ、第1のトランジスタのゲートと電源電位を供給する配線との間には、第1のトランジスタのゲートに印加する電圧を高くするための昇圧回路が設けられている信号処理装置の記憶回路である。
【0014】
本発明の一態様において、第1の位相反転回路及び第2の位相反転回路は、pチャネル型トランジスタ及びnチャネル型トランジスタを有する信号処理装置の記憶回路でもよい。
【0015】
本発明の一態様において、第2のトランジスタは、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタである信号処理装置の記憶回路でもよい。
【0016】
本発明の一態様において、第2のトランジスタは、第1のトランジスタと積層して設けられる信号処理装置の記憶回路でもよい。
【0017】
本発明の一態様において、昇圧回路は、ゲートとソース及びドレインの一方とが電気的に接続された昇圧用トランジスタを有し、昇圧用トランジスタと第4のトランジスタとにより第1のトランジスタのゲートを電気的に浮遊状態としてブートストラップ法による昇圧を行う信号処理装置の記憶回路でもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様により、複雑な作製工程を必要とせず、消費電力を抑えることができる信号処理装置の提供をすることができる。特に本発明の一態様により、短時間の電源停止により消費電力を抑えることができる信号処理装置の提供をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】記憶回路の回路図。
【図2】不揮発性記憶部の回路図。
【図3】不揮発性記憶部の回路図。
【図4】記憶回路の動作を示すタイミングチャート。
【図5】不揮発性記憶部の動作を説明する回路図。
【図6】不揮発性記憶部の動作を説明する回路図。
【図7】不揮発性記憶部の動作を説明する回路図。
【図8】不揮発性記憶部の動作を説明する回路図。
【図9】記憶回路の構成を示す図。
【図10】信号処理装置のブロック図。
【図11】記憶回路を用いたCPUのブロック図。
【図12】記憶回路の作製工程を示す図。
【図13】記憶回路の作製工程を示す図。
【図14】記憶回路の作製工程を示す図。
【図15】記憶回路の構成を示す断面図。
【図16】酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタの構成を示す断面図。
【図17】記憶回路の構成を示す断面図。
【図18】記憶回路の構成を示す断面図。
【図19】携帯用の電子機器のブロック図。
【図20】記憶回路のブロック図。
【図21】電子書籍のブロック図。
【図22】酸化物半導体の一例。
【図23】酸化物半導体の一例。
【図24】酸化物半導体の一例。
【図25】ゲート電圧と電界効果移動度の関係。
【図26】ゲート電圧とドレイン電流の関係。
【図27】ゲート電圧とドレイン電流の関係。
【図28】ゲート電圧とドレイン電流の関係。
【図29】トランジスタの特性。
【図30】トランジスタの特性。
【図31】トランジスタの特性。
【図32】トランジスタのオフ電流の温度依存性。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態及び実施例について図面を参照しながら説明する。但し、本発明の構成は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って本実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じ物を指し示す符号は異なる図面間において共通とする。
【0021】
なお、各実施の形態の図面等において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、信号波形、又は領域は、明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0022】
なお、AとBとが接続されている、と明示的に記載する場合は、AとBとが電気的に接続されている場合と、AとBとが機能的に接続されている場合と、AとBとが直接接続されている場合とを含むものとする。
【0023】
なお本明細書にて用いる第1、第2、第3、乃至第N(Nは自然数)という用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0024】
(実施の形態1)
信号処理装置は記憶回路を有する。記憶回路は、単数または複数設けられる記憶回路によって1ビットまたは複数ビットのデータ信号を記憶することができる。本実施の形態では、信号処理装置における記憶回路の構成について説明する。
【0025】
なお、CPU、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSI(Large Scale Integrated Circuit)等が、信号処理装置の範疇に含まれる。
【0026】
図1(A)に記憶回路のブロック図の一例を示す。図1(A)に示す記憶回路100は、大きく分けて、揮発性記憶部101及び不揮発性記憶部102を有する。また揮発性記憶部101における入力端子側には、セレクタ回路103を有する。
【0027】
揮発性記憶部101は、一例として、クロック同期型のリセットフリップフロップ回路を有する。なお、揮発性記憶部101が有するフリップフロップ回路は、他の種類のフリップフロップ回路であってもよい。揮発性記憶部101は、電源が供給されている期間のみ、データ信号を保持する。
【0028】
図1(A)では、揮発性記憶部101に入力される信号を示している。図1(A)では、一例として、主に高電源電位VDDを供給する電源電位Vx、第1のデータ信号D1または第2のデータ信号D2によるデータ信号D、クロック信号CLK、揮発性記憶部101の記憶状態を初期化するためのリセット信号RESETを示している。
【0029】
図1(A)では、揮発性記憶部101から出力される信号を示している。図1(A)では、一例として、出力信号Qを示している。
【0030】
なお図1(A)では、特に図示していないが揮発性記憶部101には、高電源電位VDDを供給する電源電位Vxに対応して、低電源電位VSSとなるグラウンド電位GNDが供給される。
【0031】
不揮発性記憶部102は、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを有する。不揮発性記憶部102は、当該トランジスタを用いて電荷の保持を実現することで、電源の供給がなくてもデータ信号の保持を可能にするものである。従って不揮発性記憶部102は、揮発性記憶部101と異なり、電源の供給がなくてもデータ信号の保持をすることができる。
【0032】
図1(A)では、不揮発性記憶部102に入力される信号を示している。図1(A)では、一例として、主に高電源電位VDDを供給する電源電位Vx、揮発性記憶部101の出力信号Qと同じ信号になる入力信号IN、不揮発性記憶部102内でのデータ信号の転送の制御をする第1の制御信号EN、電源の供給または停止の状態に応じた制御をする第2の制御信号RDを示している。
【0033】
図1(A)では、不揮発性記憶部102から出力される信号を示している。図1(A)では、一例として、出力信号OUTを示している。
【0034】
なお図1(A)では、特に図示していないが不揮発性記憶部102には、高電源電位となる電源電位Vxに対応して、低電源電位VSSとなるグラウンド電位GNDが供給される。
【0035】
セレクタ回路103は、第2の制御信号RDに応じて、第1のデータ信号D1または第2のデータ信号D2を選択し、揮発性記憶部101に供給させるものである。なお第2の制御信号RDは、電源の供給がある際、第1のデータ信号D1を選択して、揮発性記憶部101に供給させる信号である。また第2の制御信号RDは、電源の供給が停止状態から復帰する際、第2のデータ信号D2を選択して、揮発性記憶部101に供給させる信号である。
【0036】
図1(B)に、一例として、不揮発性記憶部102の回路図を示す。不揮発性記憶部102は、記憶回路111、昇圧回路112(ブートストラップ回路ともいう)、第1のスイッチ回路113、第2のスイッチ回路114、第1の位相反転回路115及び第2の位相反転回路116を有する。図2では、図1(B)の各回路について詳述する。
【0037】
図1(B)に示す記憶回路111は、図2における、第1のトランジスタ121、第2のトランジスタ122及び第1の容量素子123と、を有する。第1のトランジスタ121のソース及びドレインの一方の電極は、第2のトランジスタ122のゲートに接続されている。第1のトランジスタ121のソース及びドレインの一方の電極は、第1の容量素子123の一方の電極に接続されている。なお第1のトランジスタ121、第2のトランジスタ122及び第1の容量素子123が接続されたノードは、以下の説明において、図2に示すように「HOLD」と呼ぶ。
【0038】
第1のトランジスタ121は、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。なお図面において、第1のトランジスタ121は酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタであることを示すために、OSの符号を付している。
【0039】
図2に示す第2のトランジスタ122は、スイッチとして機能する素子である。図2では、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタを用いて構成された例を示す。ここでいうスイッチとは、スイッチの一方の端子がトランジスタのソース及びドレインの一方に対応し、スイッチの他方の端子がトランジスタのソース及びドレインの他方に対応する。またスイッチの導通又は非導通は、トランジスタのゲートに印加される制御信号によって選択される。nチャネル型のトランジスタである第2のトランジスタ122がスイッチとして機能する場合、高電源電位(VDD,H信号、Hで表される)によって導通状態、低電源電位(VSS,L信号、Lで表される)によって非導通状態が選択される。なおスイッチは、nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタを組み合わせて用いてもよい。この場合スイッチは、アナログスイッチとすることができる。
【0040】
なお、第1の容量素子123は、第2のトランジスタ122のゲートと第1のトランジスタ121のソース及びドレインの他方の電極とで形成される容量等を積極的に利用することによって、省略することも可能である。
【0041】
図1(B)に示す昇圧回路112は、図2における、第1のトランジスタ121と、ダイオード接続された昇圧用トランジスタ124と、第2の容量素子125と、を有する回路である。昇圧用トランジスタ124のゲート並びにソース及びドレインの一方の電極は、電源電位Vxを供給するための配線に接続されている。また昇圧用トランジスタ124のソース及びドレインの他方の電極は、第2の容量素子125の一方の電極に接続されている。また昇圧用トランジスタ124のソース及びドレインの他方の電極は、第1のトランジスタ121のゲートに接続されている。なお第1のトランジスタ121、昇圧用トランジスタ124及び第2の容量素子125が接続されたノードは、以下の説明において、図2に示すように「SE」と呼ぶ。
【0042】
昇圧用トランジスタ124は、ゲートとドレインとなる電極が短絡させたダイオード接続のトランジスタであればよい。なお本実施の形態で説明するように、昇圧用トランジスタ124がnチャネル型のトランジスタの場合、昇圧用トランジスタ124を介して供給される電位は、昇圧用トランジスタ124の閾値電圧分、小さい電位となる。なお昇圧用トランジスタ124は、ノードSEへの電流供給能力を高めるために、第2のスイッチ回路114が有するトランジスタよりもチャネル幅が大きくなるよう予め設定しておくことが好ましい。
【0043】
なお、第2の容量素子125は、第1のトランジスタ121のゲート容量等を積極的に利用することによって省略することも可能である。
【0044】
なおノードSEは、第1のトランジスタ121のゲートと電源電位Vxを供給するための配線との間に昇圧回路を設けることで、電源電位Vxを供給するための配線より供給される電位を昇圧することができる。具体的にはノードSEを浮遊状態とし、第2の容量素子125の他方の電極の電位を上昇させるブートストラップ法を行う。その結果、第2の容量素子125が容量結合し、ノードSEの電位は昇圧される。
【0045】
図1(B)の構成は、昇圧回路により、不揮発性記憶部102を複数の電位の電源線による動作とすることなく、ノードSEを昇圧できる。そのため第1のトランジスタ121は、線形領域での動作とすることができる。そのため、記憶回路111のノードHOLDで保持する電位は、確実に第2のトランジスタ122の導通または非導通を制御できるだけの、高い電位とすることができる。
【0046】
図1(B)に示す第1のスイッチ回路113は、図2における、第3のトランジスタ126を有する回路である。第3のトランジスタ126のソース及びドレインの一方の電極は、第1のトランジスタ121のソース及びドレインの他方の電極に接続されている。第3のトランジスタ126のゲートは、第1の制御信号ENを供給するための配線に接続されている。
【0047】
図1(B)に示す第2のスイッチ回路114は、図2における、第4のトランジスタ127及び第5のトランジスタ128を有する回路である。第4のトランジスタ127のソース及びドレインの一方の電極は、第5のトランジスタ128のソース及びドレインの一方の電極に接続されている。第4のトランジスタ127のソース及びドレインの他方の電極は、グラウンド電位が供給される配線に接続されている。第4のトランジスタ127のゲートは、入力信号INを供給するための配線に接続されている。第5のトランジスタ128のソース及びドレインの他方の電極は、昇圧用トランジスタ124のソース及びドレインの他方の電極に接続されている。第5のトランジスタ128のゲートは、第1の制御信号ENを供給するための配線に接続されている。
【0048】
図1(B)に示す第1の位相反転回路115は、図2における、第6のトランジスタ129及び第7のトランジスタ130を有する回路である。第6のトランジスタ129のソース及びドレインの一方の電極は、電源電位Vxを供給するための配線に接続されている。第6のトランジスタ129のゲートは、入力信号INを供給するための配線に接続されている。第6のトランジスタ129のソース及びドレインの他方の電極は、第7のトランジスタ130のソース及びドレインの一方の電極に接続されている。また第7のトランジスタ130のゲートは、入力信号INを供給するための配線に接続されている。第7のトランジスタ130のソース及びドレインの他方の電極は、グラウンド電位が供給される配線に接続されている。なお第6のトランジスタ129及び第7のトランジスタ130が接続されたノードは、以下の説明において、図2に示すように「INV」と呼ぶ。
【0049】
図2に示す第6のトランジスタ129は、スイッチとして機能する素子である。第6のトランジスタ129は、一例として、一導電型(例えば、pチャネル型)のトランジスタを用いて構成される。また図2に示す第7のトランジスタ130は、スイッチとして機能する素子である。第7のトランジスタ130は、一例として、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタを用いて構成される。なお第6のトランジスタ129及び第7のトランジスタ130は、交互に導通または非導通が制御されるよう、異なる導電型のトランジスタとする。すなわち第1の位相反転回路115は、入力信号INの論理状態を反転してノードINVに出力するための回路となる。
【0050】
図1(B)に示す第2の位相反転回路116は、図2における、第8のトランジスタ131及び第9のトランジスタ132を有する回路である。第8のトランジスタ131のソース及びドレインの一方の電極は、電源電位Vxを供給するための配線に接続されている。第8のトランジスタ131のゲートは、第2の制御信号RDを供給するための配線に接続されている。第8のトランジスタ131のソース及びドレインの他方の電極は、第9のトランジスタ132のソース及びドレインの一方の電極に接続されている。また第9のトランジスタ132のゲートは、第2の制御信号RDを供給するための配線に接続されている。第9のトランジスタ132のソース及びドレインの他方の電極は、第2のトランジスタ122のソース及びドレインの一方の電極に接続されている。なお第2のトランジスタ122のソース及びドレインの他方の電極は、グラウンド電位が供給される配線に接続されている。なお第8のトランジスタ131及び第9のトランジスタ132が接続されたノードからは、不揮発性記憶部102の出力信号OUTが出力される。
【0051】
図2に示す第8のトランジスタ131は、スイッチとして機能する素子である。第8のトランジスタ131は、一例として、一導電型(例えば、pチャネル型)のトランジスタを用いて構成される。また図2に示す第9のトランジスタ132は、スイッチとして機能する素子である。第9のトランジスタ132は、一例として、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタを用いて構成される。なお第8のトランジスタ131及び第9のトランジスタ132は、交互に導通または非導通が制御されるよう、異なる導電型のトランジスタとする。すなわち第2の位相反転回路116は、第2の制御信号RDの論理状態に応じて、ノードHOLDの論理状態を反転して出力信号OUTとして出力するための回路である。具体的には、第2の制御信号RDの論理状態がLのとき、ノードHOLDの論理状態がHまたはLを保持している状態に関わらず、H信号を出力信号OUTとして出力する。また第2の制御信号RDの論理状態がHのとき、ノードHOLDの論理状態がHを保持している場合、L信号を出力信号OUTとして出力する。また第2の制御信号RDの論理状態がLのとき、ノードHOLDの論理状態がLを保持している場合、前の状態を保持することによるH信号を出力信号OUTとして出力する。
【0052】
なお、不揮発性記憶部102は、第1の容量素子123によって保持された信号の電位が、第2のトランジスタ122のゲートに印加される構成としている。そのため第1の容量素子123によって保持された信号は、記憶回路100への電源の供給が再開された後、第9のトランジスタ132の導通状態に変換し、不揮発性記憶部102から読み出すことができる。それ故、第1の容量素子123に保持された信号に対応する電位が多少変動していても、元の信号を正確に読み出すことが可能である。
【0053】
上述の図1(B)に示す第1の位相反転回路115及び第2の位相反転回路116は、電源電位Vxに高電源電位VDDが供給されている期間のみ、入力された信号に対応した位相反転信号を出力することができる。
【0054】
図2において、不揮発性記憶部102に用いられるトランジスタのうち、第1のトランジスタ121以外のトランジスタは、酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。また、不揮発性記憶部102は、第1のトランジスタ121以外にも、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを含んでいてもよく、残りのトランジスタは酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることもできる。
【0055】
酸化物半導体層としては、少なくともIn、Ga、Sn及びZnから選ばれた一種以上の元素を含有する。例えば、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体や、In−Ga−O系の材料、一元系金属の酸化物であるIn−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にInとGaとSnとZn以外の元素、例えばSiOを含ませてもよい。
【0056】
例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物半導体、という意味であり、その組成比は問わない。
【0057】
また、酸化物半導体層は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Zn、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0058】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=1.5:1〜15:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=3:4〜15:2)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0059】
酸化物半導体層内の水素を徹底的に排除することで高純度化された酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタは、そのオフ電流密度を100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下、更に好ましくは1zA/μm以下にすることができる。よって、このオフ電流が、結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。その結果、第1のトランジスタ121がオフ状態である時、ノードHOLDの電位、即ち第2のトランジスタ122のゲートの電位を長期間にわたり保持することができる。
【0060】
なお本明細書で説明するオフ電流とは、薄膜トランジスタがオフ状態(非導通状態ともいう)のときに、ソースとドレインの間に流れる電流をいう。nチャネル型の薄膜トランジスタ(例えば、閾値電圧が0乃至2V程度)では、ゲートとソースとの間に印加される電圧が負の電圧の場合に、ソースとドレインとの間を流れる電流のことをいう。
【0061】
なお、上記において、酸化物半導体材料の代わりに酸化物半導体材料と同等のオフ電流特性が実現できる材料、例えば、炭化シリコンをはじめとするワイドギャップ材料(より具体的には、例えば、エネルギーギャップEgが3eVより大きい半導体材料)などを適用しても良い。
【0062】
なお図2に示す第2のスイッチ回路114を構成する第5のトランジスタ128は、電源電位Vxを供給するための配線とグラウンド電位が供給される配線との間を電流が流れることで増加してしまう消費電力を低減するために設けている。そのため、図2に示す不揮発性記憶部102の回路構成において、第5のトランジスタ128を省略した回路構成とすることも可能である。図3には、第5のトランジスタ128を省略した、不揮発性記憶部102の回路構成を示している。
【0063】
以上が、記憶回路100の構成の説明である。
【0064】
次いで、消費電力の低減を目的として、データ信号の保持時に電源の供給を停止して再び電源を供給する場合の、記憶回路100の駆動方法について説明する。図4にはタイミングチャート図を示し、当該タイミングチャート図を参照して説明する。図4のタイミングチャート図において、Vx、GND、RESET、CLK、D1、IN(Q)、D2(OUT)、EN及びRDは、図1(A)、(B)に示した入出力信号に対応する。また図4に示すタイミングチャート図では、記憶回路100が取り得る複数の状態について説明するため、期間1乃至期間6の複数の期間に分けて示している。図5乃至図8では、図4における期間1乃至期間6での各トランジスタの導通または非導通の状態、及び入出力信号の電位についての模式図を示す。以下では、図4における期間1乃至期間6の説明を、図5乃至図8と併せて説明することにする。
【0065】
なお図5乃至図8では、各トランジスタの非導通の状態を「×」印で、トランジスタの導通に伴う電流の流れを点線矢印で、それぞれ可視化して示している。また図5乃至図8では、上述したノードINV、ノードSE及びノードHOLDの各電位について、図中で示している。
【0066】
なお、以下に示す駆動方法では、各トランジスタの導電型を、図2に示した構成として説明する。なお本発明の駆動方法はこれに限定されず、各トランジスタの導通状態が同じと動作となれば、適宜各トランジスタの導電性及び各制御信号の電位を設定することができる。
【0067】
また各入出力信号は、高電源電位(VDD、H信号、Hで表される)及び低電源電位(VSS、L信号、Lで表される)で表すことができる。VSSは例えばグラウンド電位とすることができる。
【0068】
まず図4中の期間1の動作について説明する。期間1では、VxをH信号とし、Vxからの高電源電位により電源が記憶回路100に供給されている。記憶回路100では、第2の制御信号RDをL信号とすることで、揮発性記憶部101が第1のデータ信号D1の保持をする。図4の期間1では、データ信号としてL信号を保持しており、クロック信号CLKの立ち下がりに同期してdataAの保持に書き換わり、クロック信号CLKの立ち上がりに同期して保持したdataAを出力する様子を表している。なおクロック信号CLKの立ち下がりとは、H信号からL信号に切り替わるタイミングを表す。またクロック信号CLKの立ち上がりとは、L信号からH信号に切り替わるタイミングを表す。なお本実施の形態における説明では、動作の一例を説明するためdataAをL信号として説明する。
【0069】
期間1での不揮発性記憶部102では、VxをH信号とし、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDをL信号とし、L信号であるdataAが入力される。そして不揮発性記憶部102では、図5に示すように、第3のトランジスタ126、第4のトランジスタ127、第5のトランジスタ128、第7のトランジスタ130及び第9のトランジスタ132が非導通状態となる。一方、図5に示すように昇圧用トランジスタ124、第6のトランジスタ129及び第8のトランジスタ131が導通状態となる。昇圧用トランジスタ124が導通状態となることで、ノードSEの電位は上昇する。そしてノードSEの電位は、H信号の電位Hから昇圧用トランジスタ124の閾値電圧分小さい(H−Vth)となる。なおノードSEの電位が(H−Vth)となった後、昇圧用トランジスタ124は非導通状態となる。その結果第1のトランジスタ121は導通状態となる。また、第6のトランジスタ129が導通状態となることでノードINVの電位が上昇し、電位Hとなる。なおノードHOLDには、前の状態によって異なる論理信号が保持されているが本実施の形態の説明ではL信号が保持されるものとして説明し、この場合第2のトランジスタ122は非導通状態となる。また、第8のトランジスタ131が導通状態となることでD2の電位が電位Hとなる。
【0070】
以上説明したように期間1では、記憶回路100における揮発性記憶部101がデータ信号の保持を行い、不揮発性記憶部102は記憶回路100におけるデータ信号の記憶に関与しない期間となる。期間1の動作を通常動作と呼ぶ。
【0071】
次いで図4中の期間2の動作について説明する。期間2では、VxをH信号とし、Vxからの高電源電位により電源が記憶回路100に供給されている。期間2で第2の制御信号RDはL信号とする。図4の期間2では、データ信号としてdataAの次に新たなデータ信号が供給されない様子を表している。なおクロック信号CLKは、新たなデータ信号の保持及び出力を行わないため、H信号に保持している。
【0072】
期間2での不揮発性記憶部102では、VxをH信号とし、第1の制御信号ENをH信号とし、第2の制御信号RDをL信号とし、L信号であるdataAが入力される。そして不揮発性記憶部102では、図6(A)に示すように、昇圧用トランジスタ124、第4のトランジスタ127、第7のトランジスタ130及び第9のトランジスタ132が非導通状態となる。一方、図6(A)に示すように第3のトランジスタ126、第5のトランジスタ128、第6のトランジスタ129及び第8のトランジスタ131が導通状態となる。第3のトランジスタ126が導通状態となることで、ノードINVの電位が第2の容量素子125の他方の電極の電位を上昇させる。なお第2の容量素子125の他方の電極の電位は、第3のトランジスタ126の閾値電圧分だけ、ノードINVの電位より小さくなる。しかし第3のトランジスタ126の閾値電圧は、チャネルが酸化物半導体層に形成される第1のトランジスタ121の閾値電圧よりも小さい。従って第2の容量素子125の他方の電極の電位は、ノードINVの電位と比べてあまり変化がないものとすることができる。
【0073】
第2の容量素子125の他方の電極の電位が上昇するとき、ノードSEでは昇圧用トランジスタ124及び第4のトランジスタ127が非導通状態となることで、浮遊状態(フローティング状態)である。その結果、第2の容量素子125において、昇圧回路におけるブートストラップ法を用いた容量結合によりノードSEの電位(H−Vth)が上昇し、おおよそ(2H−Vth)となる。そのため、第1のトランジスタ121のゲートの電位を高くすることができ、その結果として第1のトランジスタ121の動作を線形領域による動作とすることができる。そして、複数の電位の電源線による動作とすることなく、ノードHOLDで保持する電位を高い電位の状態で保持することができる。
【0074】
チャネルが酸化物半導体層に形成される第1のトランジスタ121の閾値電圧は、例えばチャネルがシリコンに形成される他のトランジスタの閾値電圧と比べて大きい。従って第1のトランジスタ121のゲートに印加される電位が小さい場合、ノードHOLDで保持する電位が閾値電圧分小さくなることによる影響が大きいといえる。そのため第1のトランジスタ121の動作を線形領域による動作とすることは、第2のトランジスタ122のゲートの電位を大きくできるといった効果を、他のトランジスタと比べて大きく見積もることができる。その結果、不揮発性記憶部102で保持するデータ信号の論理状態を、第2のトランジスタ122の導通状態または非導通状態とする際に誤動作のない範囲で確定させることができる。なお図6(A)では、ノードHOLDにH信号が保持され、第2のトランジスタ122は導通状態となる。第8のトランジスタ131は、導通状態となることで、D2の電位が電位Hとなる。
【0075】
なお期間2では昇圧回路におけるブートストラップ法を用いた電源電位の昇圧よりノードSEの電位を上昇させ、ノードHOLDにH信号を保持させる。このとき、ノードSEの浮遊状態を維持するための昇圧用トランジスタ124及び第4のトランジスタ127のオフ電流は、酸化物半導体層を有する第1のトランジスタ121のオフ電流より大きい。そのため、定常状態ではノードSEの電位が低下していき、結果としてノードSEの電位は(H−Vth)となる。そして図6(B)に示すように第1のトランジスタ121が、ノードHOLDにH信号を保持した状態で、非導通状態となる。
【0076】
以上説明したように期間2は、記憶回路100における揮発性記憶部101のデータ信号を、不揮発性記憶部102のノードHOLDに保持させる期間となる。期間2の動作を電源供給停止前の動作と呼ぶ。
【0077】
次いで図4中の期間3の動作について説明する。期間3では、VxをL信号とし、電源が記憶回路100に供給されないようにしている。図4の期間3では、揮発性記憶部101へ電源が供給されず、入力される第1のデータ信号D1、第2のデータ信号D2が消去される(図4中、「X」で表記)。またクロック信号CLKの供給は、L信号に固定することで揮発性記憶部101が動作しないようにしている。
【0078】
期間3での不揮発性記憶部102では、VxをL信号とし、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDをL信号とし、入力信号INであるdataAが消去される。そして不揮発性記憶部102は、図7(A)に示すように、ゲートにH信号を保持する第2のトランジスタ122が導通状態、他のトランジスタが非導通状態となる。記憶回路100への電源の供給が停止した後においても、揮発性記憶部101に保持されていたデータ信号(ここではH信号)がノードHOLDに保持される。ここで、第1のトランジスタ121には、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いている。第1のトランジスタ121はオフ電流が極めて小さいため、第1の容量素子123によって保持された電位(ノードHOLDのH信号)を長期間保つことができる。こうして、記憶回路100は電源の供給が停止した後も、データ信号を保持する。期間3は、記憶回路100への電源の供給が停止している期間に対応する。
【0079】
次いで図4中の期間4の動作について説明する。期間4では、VxをH信号とし、Vxからの高電源電位により電源が記憶回路100に供給されている。期間4で第2の制御信号RDはL信号とする。図4の期間4でクロック信号CLKは、新たなデータ信号の保持及び出力を行わないため、H信号に保持している。従ってデータ信号が供給されても揮発性記憶部101におけるデータ信号の保持及び出力は行われない。
【0080】
期間4での不揮発性記憶部102では、VxをH信号とし、第1の制御信号EN及び第2の制御信号RDをL信号とし、入力端子INよりL信号が入力される。そして不揮発性記憶部102は、図7(B)に示すように、第3のトランジスタ126、第4のトランジスタ127、第5のトランジスタ128、第7のトランジスタ130及び第9のトランジスタ132が非導通状態となる。一方、図7(B)に示すように昇圧用トランジスタ124、第6のトランジスタ129及び第8のトランジスタ131が導通状態となる。昇圧用トランジスタ124が導通状態となることでノードSEの電位は上昇する。ノードSEの電位は、H信号の電位Hから昇圧用トランジスタ124の閾値電圧分小さい(H−Vth)となる。なおノードSEの電位が(H−Vth)となった後、昇圧用トランジスタ124は非導通状態となる。このときノードHOLDで保持するデータ信号がH信号の場合、第1のトランジスタ121は非導通状態となる。また、第6のトランジスタ129が導通状態となることでノードINVの電位は上昇していき、やがて電位Hとなる。なお図7(B)では、ノードHOLDにH信号が保持され、第2のトランジスタ122は導通状態となる。第8のトランジスタ131が導通状態となることで、D2の電位が電位Hとなる。
【0081】
なお期間4では記憶回路100への電源の供給を再開した後においても、揮発性記憶部101に保持されていたデータ信号(ここではH信号)がノードHOLDに保持される。第1のトランジスタ121には、チャネルが酸化物半導体層に形成されるトランジスタを用いている。第1のトランジスタ121はオフ電流が極めて小さいため、第1の容量素子123によって保持された電位(ノードHOLDのH信号)を長期間保つことができる。期間4は、電源電圧のプリチャージ期間に対応する。上記プリチャージ動作を行うことで、一旦電源供給再開後に、揮発性記憶部101が元のデータ信号を保持しなおすまでの時間を短くすることができる。
【0082】
次いで図4中の期間5の動作について説明する。期間5では、VxをH信号とし、Vxからの高電源電位により電源が記憶回路100に供給されている。期間5で第2の制御信号RDはH信号とする。すなわち、揮発性記憶部101で記憶するデータ信号に、不揮発性記憶部102からの出力信号OUTを用いるよう、セレクタ回路103を切り替える動作をするものである。図4の期間5でクロック信号CLKは、新たなデータ信号の保持及び出力を行わないため、H信号に保持している。従ってデータ信号が供給されても揮発性記憶部101におけるデータ信号の保持及び出力は行われない。
【0083】
期間5での不揮発性記憶部102では、VxをH信号とし、第1の制御信号ENをL信号とし、第2の制御信号RDをH信号とし、入力端子INよりL信号が入力されることで、図8(A)に示すように昇圧用トランジスタ124、第3のトランジスタ126、第4のトランジスタ127、第5のトランジスタ128、第7のトランジスタ130、第8のトランジスタ131が非導通状態となる。一方、図8(A)に示すように第6のトランジスタ129及び第9のトランジスタ132が導通状態となる。なお図8(A)では、ノードHOLDにH信号が保持され、第2のトランジスタ122は導通状態となる。そして第9のトランジスタ132と併せて導通状態となることで、D2の電位が期間2で保持したデータ信号の論理状態と同じ電位Lを出力する。
【0084】
以上説明したように期間5では、不揮発性記憶部102のノードHOLDに保持したデータ信号を揮発性記憶部101のデータ信号として揮発性記憶部101にリカバリーさせる期間となる。期間5の動作をデータ信号リカバリーの動作と呼ぶ。
【0085】
次いで図4中の期間6の動作について説明する。期間6では、期間1と同じ通常動作であり、VxをH信号とし、Vxからの高電源電位により電源が記憶回路100に供給されている。記憶回路100では、第2の制御信号RDをL信号とすることで、揮発性記憶部101が第1のデータ信号D1の保持をする。図4の期間6では、データ信号としてL信号を保持しており、クロック信号CLKの立ち下がりに同期してdataAの保持に書き換わり、クロック信号CLKの立ち上がりに同期して保持したdataAを出力する様子を表している。
【0086】
以上説明したように期間6では、期間1と同様に、記憶回路100における揮発性記憶部101がデータ信号の保持を行い、不揮発性記憶部102は記憶回路100におけるデータ信号の記憶に関与しない期間となる。期間6の動作は、期間1と同様に、通常動作と呼ぶ。
【0087】
以上が、記憶回路の駆動方法の説明である。
【0088】
本発明の記憶回路では、記憶回路100に電源が供給されない間は、揮発性のメモリに相当する揮発性記憶部101に記憶されていたデータ信号を、不揮発性記憶部102に設けられた第1の容量素子123によって保持することができる。
【0089】
また、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタは、オフ電流が極めて小さい。例えば、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流は、結晶性を有するシリコンにチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。そのため、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタを第1のトランジスタ121として用いることによって、記憶回路100に電源が供給されない間も第1の容量素子123に保持された信号は長期間にわたり保たれる。こうして、記憶回路100は電源の供給が停止した間も記憶内容(データ信号)を保持することが可能である。
【0090】
このような記憶回路100を、信号処理装置が有するレジスタやキャッシュメモリなどの記憶回路に用いることで、電源の供給停止による記憶回路内のデータ信号の消失を防ぐことができる。また、電源の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。よって、信号処理装置全体、もしくは信号処理装置を構成する一または複数の論理回路において、短い時間でも電源停止を行うことができる。そのため、消費電力を抑えることができる信号処理装置、消費電力を抑えることができる当該信号処理装置の駆動方法を提供することができる。
【0091】
特に本実施の形態の構成においては、第1のトランジスタを導通状態とするための電位を、昇圧回路におけるブートストラップ法を用いて、昇圧することができる。そのため複数の電位の電源線による動作とすることなく、第1のトランジスタの動作を線形領域による動作とすることができる。その結果、第1の容量素子123によって保持された信号の電位を高い状態で第1の容量素子123に保持することが可能になる。
【0092】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0093】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した記憶回路を複数用いる構成について説明する。
【0094】
図9(A)に、本実施の形態における記憶回路の構成を一例として示す。図9(A)に示す記憶回路は、高電源電位VDD及び低電源電位VSSが供給される位相反転回路401と、記憶回路402を複数有する記憶回路群403とを有している。具体的に、各記憶回路402には、実施の形態1に記載されている構成を有する記憶回路100を用いることができる。記憶回路群403が有する各記憶回路402には、位相反転回路401を介して、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSが供給されている。さらに、記憶回路群403が有する各記憶回路402には、信号INの電位と、低電源電位VSSが与えられている。
【0095】
図9(A)で位相反転回路401は、制御信号SigAにより高電源電位VDDまたは低電源電位VSSの出力の切り替えが制御される。
【0096】
また、図9(A)では、位相反転回路401により、記憶回路群403が有する各記憶回路402の高電源電位VDD側で、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSの供給が制御されているが、位相反転回路401により、低電源電位VSS側で、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSの供給が制御されていても良い。図9(B)に、記憶回路群403が有する各記憶回路402に、位相反転回路401を介して、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSが供給されている記憶回路の一例を示す。位相反転回路401により、記憶回路群403が有する各記憶回路402の低電源電位VSS側で、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSの供給を制御することができる。
【0097】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0098】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2で示した記憶回路を用いた信号処理装置の構成について説明する。
【0099】
図10に、本発明の一態様に係る信号処理装置の一例を示す。信号処理装置は、一または複数の演算装置と、一または複数の記憶回路とを少なくとも有する。具体的に、図10に示す信号処理装置150は、演算装置151、演算装置152、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155、制御装置156、電源制御回路157を有する。
【0100】
演算装置151、演算装置152は、単純な論理演算を行う論理回路をはじめ、加算器、乗算器、さらには各種演算装置などを含む。そして、記憶回路153は、演算装置151における演算処理の際に、データ信号を一時的に保持するレジスタとして機能する。記憶回路154は、演算装置152における演算処理の際に、データ信号を一時的に保持するレジスタとして機能する。
【0101】
また、記憶回路155はメインメモリとして用いることができ、制御装置156が実行するプログラムをデータ信号として記憶する、或いは演算装置151、演算装置152からのデータ信号を記憶することができる。
【0102】
制御装置156は、信号処理装置150が有する演算装置151、演算装置152、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155の動作を統括的に制御する回路である。なお、図10では、制御装置156が信号処理装置150の一部である構成を示しているが、制御装置156は信号処理装置150の外部に設けられていても良い。
【0103】
実施の形態1または実施の形態2で示した記憶回路を記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155に用いることで、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155への電源の供給を停止しても、データ信号を保持することができる。よって、信号処理装置150全体への電源の供給を停止し、消費電力を抑えることができる。或いは、記憶回路153、記憶回路154、または記憶回路155のいずれか一つまたは複数への電源の供給を停止し、信号処理装置150の消費電力を抑えることができる。また、電源の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。
【0104】
また、記憶回路への電源の供給が停止されるのに合わせて、当該記憶回路とデータ信号のやり取りを行う演算装置または制御回路への、電源の供給を停止するようにしても良い。例えば、演算装置151と記憶回路153において、動作が行われない場合、演算装置151及び記憶回路153への電源の供給を停止するようにしても良い。
【0105】
また、電源制御回路157は、信号処理装置150が有する演算装置151、演算装置152、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155、制御装置156へ供給する電源電圧の大きさを制御する。そして、電源の供給を停止する場合、電源の供給の停止は、電源制御回路157で行われる構成でも良いし、演算装置151、演算装置152、記憶回路153、記憶回路154、記憶回路155、制御装置156のそれぞれで行われる構成でも良い。
【0106】
なお、メインメモリである記憶回路155と、演算装置151、演算装置152、制御装置156の間に、キャッシュメモリとして機能する記憶回路を設けても良い。キャッシュメモリを設けることで、低速なメインメモリへのアクセスを減らして演算処理などの信号処理を高速化させることができる。キャッシュメモリとして機能する記憶回路にも、上述した記憶回路を用いることで、信号処理装置150の消費電力を抑えることができる。また、電源の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。
【0107】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0108】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る信号処理装置の一つである、CPUの構成について説明する。
【0109】
図11に、本実施の形態のCPUの構成を示す。図11に示すCPUは、基板9900上に、ALU9901、ALU・Controller9902、Instruction・Decoder9903、Interrupt・Controller9904、Timing・Controller9905、Register9906、Register・Controller9907、Bus・I/F9908、書き換え可能なROM9909、ROM・I/F9920と、を主に有している。なお、ALUはArithmetic logic unitであり、Bus・I/Fはバスインターフェースであり、ROM・I/FはROMインターフェースである。ROM9909及びROM・I/F9920は、別チップに設けても良い。勿論、図11に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0110】
Bus・I/F9908を介してCPUに入力された命令は、Instruction・Decoder9903に入力され、デコードされた後、ALU・Controller9902、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907、Timing・Controller9905に入力される。
【0111】
ALU・Controller9902、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907、Timing・Controller9905は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALU・Controller9902は、ALU9901の動作を制御するための信号を生成する。また、Interrupt・Controller9904は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。Register・Controller9907は、Register9906のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてRegister9906の読み出しや書き込みを行なう。
【0112】
またTiming・Controller9905は、ALU9901、ALU・Controller9902、Instruction・Decoder9903、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばTiming・Controller9905は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0113】
本実施の形態のCPUでは、Register9906に、上記実施の形態で示した構成を有する記憶回路が設けられている。Register・Controller9907は、ALU9901からの指示に従い、Register9906が有する記憶回路において、揮発性記憶部101によるデータ信号の保持を行うか、不揮発性記憶部102によるデータ信号の保持を行うかを選択する。揮発性記憶部101によるデータ信号の保持が選択されている場合、Register9906内の記憶回路への電源の供給が行われる。不揮発性記憶部102におけるデータ信号の保持が選択されている場合、Register9906内の記憶回路への電源の供給を停止することができる。
【0114】
この様にして、一時的にCPUの動作を停止し、電源の供給を停止した場合においてもデータ信号を保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUを停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0115】
本実施の形態では、CPUを例に挙げて説明したが、本発明の信号処理装置はCPUに限定されず、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP、FPGA等のLSIにも応用可能である。
【0116】
本実施の形態は、上記実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0117】
(実施の形態5)
図2に示した不揮発性記憶部102において、チャネルがシリコンに形成される場合における第2のトランジスタ122と、チャネルが酸化物半導体層に形成される第1のトランジスタ121と、第1の容量素子123とを例に挙げて、記憶回路100の作製方法について説明する。
【0118】
図12(A)に示すように、基板700上に絶縁膜701と、単結晶の半導体基板から分離された半導体膜702とを形成する。
【0119】
基板700として使用することができる素材に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、基板700には、フュージョン法やフロート法で作製されるガラス基板、石英基板、半導体基板、セラミック基板等を用いることができる。ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。
【0120】
また、本実施の形態では、半導体膜702が単結晶のシリコンである場合を例に挙げて、以下、第2のトランジスタ122の作製方法について説明する。なお、具体的な単結晶の半導体膜702の作製方法の一例について、簡単に説明する。まず、単結晶の半導体基板であるボンド基板に、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを注入し、ボンド基板の表面から一定の深さの領域に、結晶構造が乱されることで局所的に脆弱化された脆化層を形成する。脆化層が形成される領域の深さは、イオンビームの加速エネルギーとイオンビームの入射角によって調節することができる。そして、ボンド基板と、絶縁膜701が形成された基板700とを、間に当該絶縁膜701が挟まるように貼り合わせる。貼り合わせは、ボンド基板と基板700とを重ね合わせた後、ボンド基板と基板700の一部に、1N/cm以上500N/cm以下、好ましくは11N/cm以上20N/cm以下程度の圧力を加える。圧力を加えると、その部分からボンド基板と絶縁膜701とが接合を開始し、最終的には密着した面全体に接合がおよぶ。次いで、加熱処理を行うことで、脆化層に存在する微小ボイドどうしが結合して、微小ボイドの体積が増大する。その結果、脆化層においてボンド基板の一部である単結晶半導体膜が、ボンド基板から分離する。上記加熱処理の温度は、基板700の歪み点を越えない温度とする。そして、上記単結晶半導体膜をエッチング等により所望の形状に加工することで、半導体膜702を形成することができる。
【0121】
半導体膜702には、閾値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型の導電性を付与する不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型の導電性を付与する不純物元素を添加しても良い。閾値電圧を制御するための不純物元素の添加は、パターニングする前の半導体膜に対して行っても良いし、パターニング後に形成された半導体膜702に対して行っても良い。また、閾値電圧を制御するための不純物元素の添加を、ボンド基板に対して行っても良い。若しくは、不純物元素の添加を、閾値電圧を大まかに調整するためにボンド基板に対して行った上で、閾値電圧を微調整するために、パターニング前の半導体膜に対して、又はパターニングにより形成された半導体膜702に対しても行っても良い。
【0122】
なお、本実施の形態では、単結晶の半導体膜を用いる例について説明しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、絶縁膜701上に気相成長法を用いて形成された多結晶、微結晶、非晶質の半導体膜を用いても良いし、上記半導体膜を公知の技術により結晶化しても良い。公知の結晶化方法としては、レーザ光を用いたレーザ結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法がある。或いは、触媒元素を用いる結晶化法とレーザ結晶化法とを組み合わせて用いることもできる。また、石英のような耐熱性に優れている基板を用いる場合、電熱炉を使用した熱結晶化方法、赤外光を用いたランプアニール結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法、950℃程度の高温アニール法を組み合わせた結晶化法を用いても良い。
【0123】
次に、図12(B)に示すように、半導体膜702を用いて半導体層704を形成する。そして、半導体層704上にゲート絶縁膜703を形成する。
【0124】
ゲート絶縁膜703は、一例としては、プラズマCVD法又はスパッタリング法などを用い、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム又は酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))等を含む膜を、単層で、又は積層させることで、形成することができる。
【0125】
なお、本明細書において酸化窒化物とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い物質であり、また、窒化酸化物とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い物質を意味する。
【0126】
ゲート絶縁膜703の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。本実施の形態では、プラズマCVD法を用いて、酸化珪素を含む単層の絶縁膜を、ゲート絶縁膜703として用いる。
【0127】
次いで、図12(C)に示すように、ゲート電極707を形成する。
【0128】
ゲート電極707は、導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、形成することができる。上記導電膜の形成にはCVD法、スパッタリング法、蒸着法、スピンコート法等を用いることができる。また、導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いることができる。上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。又は、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多結晶珪素などの半導体を用いて形成しても良い。
【0129】
なお、本実施の形態ではゲート電極707を単層の導電膜で形成しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。ゲート電極707は積層された複数の導電膜で形成されていても良い。
【0130】
2つの導電膜の組み合わせとして、1層目に窒化タンタル又はタンタルを、2層目にタングステンを用いることができる。上記例の他に、窒化タングステンとタングステン、窒化モリブデンとモリブデン、アルミニウムとタンタル、アルミニウムとチタン等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、2層の導電膜を形成した後の工程において、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層の導電膜の組み合わせとして、例えば、n型の導電性を付与する不純物元素がドーピングされた珪素とニッケルシリサイド、n型の導電性を付与する不純物元素がドーピングされた珪素とタングステンシリサイド等も用いることができる。
【0131】
3つ以上の導電膜を積層する積層構造の場合は、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造を採用するとよい。
【0132】
また、ゲート電極707に酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミニウム、酸窒化亜鉛アルミニウム、又は酸化亜鉛ガリウム等の透光性を有する酸化物導電膜を用いることもできる。
【0133】
なお、マスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的にゲート電極707を形成しても良い。液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から吐出又は噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
【0134】
また、ゲート電極707は、導電膜を形成後、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、所望のテーパー形状を有するようにエッチングすることができる。また、テーパー形状は、マスクの形状によっても角度等を制御することができる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素もしくは四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄もしくは弗化窒素などのフッ素系ガス又は酸素を適宜用いることができる。
【0135】
次に、図12(D)に示すように、ゲート電極707をマスクとして一導電性を付与する不純物元素を半導体膜702に添加することで、ゲート電極707と重なるチャネル形成領域710と、チャネル形成領域710を間に挟む一対の不純物領域709とが、半導体膜702に形成される。
【0136】
本実施の形態では、半導体膜702にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を添加する場合を例に挙げる。
【0137】
次いで、図13(A)に示すように、ゲート絶縁膜703、ゲート電極707を覆うように、絶縁膜712、絶縁膜713を形成する。具体的に、絶縁膜712、絶縁膜713は、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの無機の絶縁膜を用いることができる。特に、絶縁膜712、絶縁膜713に誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁膜712、絶縁膜713に、上記材料を用いた多孔性の絶縁膜を適用しても良い。多孔性の絶縁膜では、密度の高い絶縁膜と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する寄生容量を更に低減することが可能である。
【0138】
本実施の形態では、絶縁膜712として酸化窒化珪素、絶縁膜713として窒化酸化珪素を用いる場合を例に挙げる。また、本実施の形態では、ゲート電極707上に絶縁膜712、絶縁膜713を形成している場合を例示しているが、本発明はゲート電極707上に絶縁膜を1層だけ形成していても良いし、3層以上の複数の絶縁膜を積層するように形成していても良い。
【0139】
次いで、図13(B)に示すように、絶縁膜713にCMP(化学的機械研磨)処理やエッチング処理を行うことにより、絶縁膜713の露出した上面を平坦化させる。なお、後に形成される第1のトランジスタ121の特性を向上させるために、絶縁膜712、絶縁膜713の表面は可能な限り平坦にしておくことが好ましい。
【0140】
以上の工程により、第2のトランジスタ122を形成することができる。
【0141】
次いで、第1のトランジスタ121の作製方法について説明する。まず、図13(C)に示すように、絶縁膜713上に酸化物半導体層716を形成する。
【0142】
酸化物半導体層716は、絶縁膜713上に形成した酸化物半導体膜を所望の形状に加工することで、形成することができる。上記酸化物半導体膜の膜厚は、2nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下、更に好ましくは3nm以上20nm以下とする。酸化物半導体膜は、酸化物半導体をターゲットとして用い、スパッタ法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(例えばアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(例えばアルゴン)及び酸素混合雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。
【0143】
なお、酸化物半導体膜をスパッタ法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、絶縁膜713の表面に付着している塵埃を除去することが好ましい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウムなどを用いてもよい。また、アルゴン雰囲気に酸素、亜酸化窒素などを加えた雰囲気で行ってもよい。また、アルゴン雰囲気に塩素、四フッ化炭素などを加えた雰囲気で行ってもよい。
【0144】
酸化物半導体膜には、上述したような、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体、In−Ga−O系酸化物半導体や、In−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。
【0145】
本実施の形態では、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、及びZn(亜鉛)を含むターゲットを用いたスパッタ法により得られる膜厚30nmのIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体の薄膜を、酸化物半導体膜として用いる。上記ターゲットとして、例えば、各金属の組成比がIn:Ga:Zn=1:1:0.5、In:Ga:Zn=1:1:1、又はIn:Ga:Zn=1:1:2であるターゲットを用いることができる。また、In、Ga、及びZnを含むターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上100%未満である。充填率の高いターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0146】
本実施の形態では、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体膜を成膜する。成膜時に、基板温度を100℃以上600℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下としても良い。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて処理室を排気すると、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0147】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源電力0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する塵埃が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0148】
また、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における酸化物半導体膜への、アルカリ金属、水素化物等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として上述した吸着型の真空ポンプを用いることで、排気系からのアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0149】
また、ターゲットの純度を、99.99%以上とすることで、酸化物半導体膜に混入するアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等を低減することができる。また、当該ターゲットを用いることで、酸化物半導体膜において、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の濃度を低減することができる。
【0150】
なお、酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で絶縁膜712及び絶縁膜713までが形成された基板700を予備加熱し、基板700に吸着した水分又は水素などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱の温度は、100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下である。また、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。また、この予備加熱は、後に行われるゲート絶縁膜721の成膜前に、導電膜719、導電膜720まで形成した基板700にも同様に行ってもよい。
【0151】
なお、酸化物半導体層716を形成するためのエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、三塩化硼素(BCl)、四塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0152】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0153】
ウェットエッチングに用いるエッチング液として、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、クエン酸やシュウ酸などの有機酸を用いることができる。本実施の形態では、ITO−07N(関東化学社製)を用いる。
【0154】
酸化物半導体層716を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0155】
なお、次工程の導電膜を形成する前に逆スパッタを行い、酸化物半導体層716及び絶縁膜712及び絶縁膜713の表面に付着しているレジスト残渣などを除去することが好ましい。
【0156】
なお、スパッタ等で成膜された酸化物半導体膜中には、不純物としての水分又は水素(水酸基を含む)が多量に含まれていることがある。水分又は水素はドナー準位を形成しやすいため、酸化物半導体にとっては不純物である。そこで、本発明の一態様では、酸化物半導体膜中の水分又は水素などの不純物を低減(脱水化または脱水素化)するために、酸化物半導体層716に対して、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で、酸化物半導体層716に加熱処理を施す。
【0157】
酸化物半導体層716に加熱処理を施すことで、酸化物半導体層716中の水分又は水素を脱離させることができる。具体的には、250℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満の温度で加熱処理を行えば良い。例えば、500℃、3分間以上6分間以下程度で行えばよい。加熱処理にRTA法を用いれば、短時間に脱水化又は脱水素化が行えるため、ガラス基板の歪点を超える温度でも処理することができる。
【0158】
本実施の形態では、加熱処理装置の一つである電気炉を用いる。
【0159】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、又は窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0160】
加熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水分又は水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0161】
なお、酸化物半導体は不純物に対して鈍感であり、膜中にはかなりの金属不純物が含まれていても問題がなく、ナトリウムのようなアルカリ金属が多量に含まれる廉価なソーダ石灰ガラスも使えると指摘されている(神谷、野村、細野、「アモルファス酸化物半導体の物性とデバイス開発の現状」、固体物理、2009年9月号、Vol.44、pp.621−633.)。しかし、このような指摘は適切でない。アルカリ金属は酸化物半導体を構成する元素ではないため、不純物である。アルカリ土類金属も、酸化物半導体を構成する元素ではない場合において、不純物となる。特に、アルカリ金属のうちNaは、酸化物半導体層に接する絶縁膜が酸化物である場合、当該絶縁膜中に拡散してNaとなる。また、Naは、酸化物半導体層内において、酸化物半導体を構成する金属と酸素の結合を分断する、或いは、その結合中に割り込む。その結果、例えば、閾値電圧がマイナス方向にシフトすることによるノーマリオン化、移動度の低下等の、トランジスタの特性の劣化が起こり、加えて、特性のばらつきも生じる。この不純物によりもたらされるトランジスタの特性の劣化と、特性のばらつきは、酸化物半導体層中の水素濃度が十分に低い場合において顕著に現れる。従って、酸化物半導体層中の水素濃度が1×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1017atoms/cm以下である場合には、上記不純物の濃度を低減することが望ましい。具体的に、二次イオン質量分析法によるNa濃度の測定値は、5×1016atoms/cm以下、好ましくは1×1016atoms/cm以下、更に好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。同様に、Li濃度の測定値は、5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。同様に、K濃度の測定値は、5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。
【0162】
以上の工程により、酸化物半導体層716中の水素の濃度を低減し、高純度化することができる。それにより酸化物半導体層の安定化を図ることができる。また、ガラス転移温度以下の加熱処理で、キャリア密度が極端に少なく、バンドギャップの広い酸化物半導体層を形成することができる。このため、大面積基板を用いてトランジスタを作製することができ、量産性を高めることができる。また、当該水素濃度が低減され高純度化された酸化物半導体層を用いることで、耐圧性が高く、オフ電流の著しく低いトランジスタを作製することができる。上記加熱処理は、酸化物半導体層の成膜以降であれば、いつでも行うことができる。
【0163】
なお、酸化物半導体層は非晶質であっても良いが、結晶性を有していても良い。結晶性を有する酸化物半導体層としては、c軸配向を有した結晶性酸化物半導体(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor:CAAC−OSとも呼ぶ)であっても、トランジスタの信頼性を高めるという効果を得ることができるので、好ましい。
【0164】
具体的に、CAAC−OSは、非単結晶であって、そのab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形、または正六角形の原子配列を有する。なおかつ、CAAC−OSは、c軸方向に金属原子が層状に配列した相、または、金属原子と酸素原子が層状に配列した相を、含む。
【0165】
CAAC−OSは、非晶質の酸化物半導体と比較して、金属と酸素の結合が秩序化している。すなわち、酸化物半導体が非晶質の場合は、個々の金属原子によって配位数が異なることも有り得るが、CAAC−OSでは金属原子の配位数はほぼ一定となる。そのため、微視的な酸素の欠損が減少し、水素原子(水素イオンを含む)やアルカリ金属原子の脱着による電荷の移動や不安定性を減少させる効果がある。
【0166】
従って、CAAC−OSで構成された酸化物半導体膜を用いてトランジスタを作製することで、トランジスタへの光照射またはバイアス−熱ストレス(BT)の付加を行った後に生じる、トランジスタの閾値電圧の変化量を、低減することができる。よって、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0167】
CAAC−OSで構成された酸化物半導体膜は、スパッタ法によっても作製することができる。スパッタ法によってCAAC−OSを得るには酸化物半導体膜の堆積初期段階において六方晶の結晶が形成されるようにすることと、当該結晶を種として結晶が成長されるようにすることが肝要である。そのためには、ターゲットと基板の距離を広くとり(例えば、150mm〜200mm程度)、基板加熱温度を100℃〜500℃、好適には200℃〜400℃、更に好適には250℃〜300℃にすると好ましい。
【0168】
また、CAAC−OSで構成された酸化物半導体膜をスパッタ法を用いて成膜する場合には、雰囲気中の酸素ガス比が高い方が好ましい。例えば、アルゴン及び酸素の混合ガス雰囲気中でスパッタ法を行う場合には、酸素ガス比を30%以上とすることが好ましく、40%以上とすることがより好ましい。雰囲気中からの酸素の補充によって、CAAC−OSの結晶化が促進されるからである。
【0169】
また、スパッタ法を用いてCAAC−OSで構成された酸化物半導体膜を成膜する場合には、CAAC−OSで構成された酸化物半導体膜が成膜される基板を150℃以上に加熱しておくことが好ましく、170℃以上に加熱しておくことがより好ましい。基板温度の上昇に伴って、CAAC−OSの結晶化が促進されるからである。
【0170】
また、CAAC−OSで構成された酸化物半導体膜に対して、窒素雰囲気中又は真空中において熱処理を行った後には、酸素雰囲気中又は酸素と他のガスとの混合雰囲気中において熱処理を行うことが好ましい。先の熱処理で生じる酸素欠損を後の熱処理における雰囲気中からの酸素供給によって復元することができるからである。
【0171】
また、CAAC−OSで構成された酸化物半導体膜が成膜される膜表面(被成膜面)は平坦であることが好ましい。CAAC−OSで構成された酸化物半導体膜は、当該被成膜面に概略垂直となるc軸を有するため、当該被成膜面に存在する凹凸は、CAAC−OSで構成された酸化物半導体膜における結晶粒界の発生を誘発することになるからである。よって、CAAC−OSで構成された酸化物半導体膜が成膜される前に当該被成膜表面に対して化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)などの平坦化処理を行うことが好ましい。また、当該被成膜面の平均ラフネスは、0.5nm以下であることが好ましく、0.3nm以下であることがより好ましい。
【0172】
次いで、図14(A)に示すように、ゲート電極707と接し、なおかつ酸化物半導体層716とも接する導電膜719と、酸化物半導体層716とも接する導電膜720とを形成する。導電膜719及び導電膜720は、ソース電極又はドレイン電極として機能する。
【0173】
具体的に、導電膜719及び導電膜720は、ゲート電極707及び絶縁膜713上を覆うようにスパッタ法や真空蒸着法で導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、形成することができる。
【0174】
導電膜719及び導電膜720となる導電膜は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンからから選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、アルミニウム、銅などの金属膜の下側もしくは上側にクロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属膜を積層させた構成としても良い。また、アルミニウム又は銅は、耐熱性や腐食性の問題を回避するために、高融点金属材料と組み合わせて用いると良い。高融点金属材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、ネオジム、スカンジウム、イットリウム等を用いることができる。
【0175】
また、導電膜719及び導電膜720となる導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、更にその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Cu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、Mo、は、酸化膜との密着性が高い。よって、下層にCu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、或いはMoで構成される導電膜、上層にCuで構成される導電膜を積層し、上記積層された導電膜を導電膜719及び導電膜720に用いることで、酸化膜である絶縁膜と、導電膜719及び導電膜720との密着性を高めることができる。
【0176】
また、導電膜719及び導電膜720となる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛又は前記金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0177】
導電膜形成後に加熱処理を行う場合には、この加熱処理に耐える耐熱性を導電膜に持たせることが好ましい。
【0178】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層716がなるべく除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。エッチング条件によっては、酸化物半導体層716の露出した部分が一部エッチングされることで、溝部(凹部)が形成されることもある。
【0179】
本実施の形態では、導電膜にチタン膜を用いる。そのため、アンモニアと過酸化水素水を含む溶液(アンモニア過水)を用いて、選択的に導電膜をウェットエッチングすることができる。具体的には、31重量%の過酸化水素水と、28重量%のアンモニア水と水とを、体積比5:2:2で混合したアンモニア過水を用いる。或いは、塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)などを含むガスを用いて、導電膜をドライエッチングしても良い。
【0180】
なお、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光に多段階の強度をもたせる多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことで更に形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0181】
また、酸化物半導体層716と、ソース電極又はドレイン電極として機能する導電膜719及び導電膜720との間に、ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けるようにしても良い。酸化物導電膜の材料としては、酸化亜鉛を成分として含むものが好ましく、酸化インジウムを含まないものであることが好ましい。そのような酸化物導電膜として、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミニウム、酸窒化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛ガリウムなどを適用することができる。
【0182】
例えば、酸化物導電膜を形成する場合、酸化物導電膜を形成するためのパターニングと、導電膜719及び導電膜720を形成するためのパターニングとを一括で行うようにしても良い。
【0183】
ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けることで、酸化物半導体層716と導電膜719及び導電膜720の間の抵抗を下げることができるので、トランジスタの高速動作を実現させることができる。また、ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けることで、トランジスタの耐圧を高めることができる。
【0184】
次いで、NO、N、又はArなどのガスを用いたプラズマ処理を行うようにしても良い。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した水などを除去する。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0185】
なお、プラズマ処理を行った後、図14(B)に示すように、導電膜719及び導電膜720と、酸化物半導体層716とを覆うように、ゲート絶縁膜721を形成する。そして、ゲート絶縁膜721上において、酸化物半導体層716と重なる位置にゲート電極722を形成し、導電膜719と重なる位置に導電膜723を形成する。
【0186】
ゲート絶縁膜721は、ゲート絶縁膜703と同様の材料、同様の積層構造を用いて形成することが可能である。なお、ゲート絶縁膜721は、水分や、水素などの不純物を極力含まないことが望ましく、単層の絶縁膜であっても良いし、積層された複数の絶縁膜で構成されていても良い。ゲート絶縁膜721に水素が含まれると、その水素が酸化物半導体層716へ侵入し、又は水素が酸化物半導体層716中の酸素を引き抜き、酸化物半導体層716が低抵抗化(n型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、ゲート絶縁膜721はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。上記ゲート絶縁膜721には、バリア性の高い材料を用いるのが望ましい。例えば、バリア性の高い絶縁膜として、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などを用いることができる。複数の積層された絶縁膜を用いる場合、窒素の含有比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を、上記バリア性の高い絶縁膜よりも、酸化物半導体層716に近い側に形成する。そして、窒素の含有比率が低い絶縁膜を間に挟んで、導電膜719及び導電膜720及び酸化物半導体層716と重なるように、バリア性の高い絶縁膜を形成する。バリア性の高い絶縁膜を用いることで、酸化物半導体層716内、ゲート絶縁膜721内、或いは、酸化物半導体層716と他の絶縁膜の界面とその近傍に、水分又は水素などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。また、酸化物半導体層716に接するように窒素の比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を形成することで、バリア性の高い材料を用いた絶縁膜が直接酸化物半導体層716に接するのを防ぐことができる。
【0187】
本実施の形態では、スパッタ法で形成された膜厚200nmの酸化珪素膜上に、スパッタ法で形成された膜厚100nmの窒化珪素膜を積層させた構造を有する、ゲート絶縁膜721を形成する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。
【0188】
なお、ゲート絶縁膜721を形成した後に、加熱処理を施しても良い。加熱処理は、窒素、超乾燥空気、又は希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下において、好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下で行う。上記ガスは、水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下であることが望ましい。本実施の形態では、例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。或いは、導電膜719及び導電膜720を形成する前に、水分又は水素を低減させるための酸化物半導体層に対して行った先の加熱処理と同様に、高温短時間のRTA処理を行っても良い。酸素を含むゲート絶縁膜721が設けられた後に、加熱処理が施されることによって、酸化物半導体層716に対して行った先の加熱処理により、酸化物半導体層716に酸素欠損が発生していたとしても、ゲート絶縁膜721から酸化物半導体層716に酸素が供与される。そして、酸化物半導体層716に酸素が供与されることで、酸化物半導体層716において、ドナーとなる酸素欠損を低減し、化学量論的組成比を満たすことが可能である。その結果、酸化物半導体層716をi型に近づけることができ、酸素欠損によるトランジスタの電気特性のばらつきを軽減し、電気特性の向上を実現することができる。この加熱処理を行うタイミングは、ゲート絶縁膜721の形成後であれば特に限定されず、他の工程、例えば樹脂膜形成時の加熱処理や、透明導電膜を低抵抗化させるための加熱処理と兼ねることで、工程数を増やすことなく、酸化物半導体層716をi型に近づけることができる。
【0189】
また、酸素雰囲気下で酸化物半導体層716に加熱処理を施すことで、酸化物半導体に酸素を添加し、酸化物半導体層716中においてドナーとなる酸素欠損を低減させても良い。加熱処理の温度は、例えば100℃以上350℃未満、好ましくは150℃以上250℃未満で行う。上記酸素雰囲気下の加熱処理に用いられる酸素ガスには、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する酸素ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち酸素中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0190】
或いは、イオン注入法又はイオンドーピング法などを用いて、酸化物半導体層716に酸素を添加することで、ドナーとなる酸素欠損を低減させても良い。例えば、2.45GHzのマイクロ波でプラズマ化した酸素を酸化物半導体層716に添加すれば良い。
【0191】
また、ゲート電極722及び導電膜723は、ゲート絶縁膜721上に導電膜を形成した後、該導電膜をパターニングすることで形成することができる。ゲート電極722及び導電膜723は、ゲート電極707、或いは導電膜719及び導電膜720と同様の材料を用いて形成することが可能である。
【0192】
ゲート電極722及び導電膜723の膜厚は、10nm〜400nm、好ましくは100nm〜200nmとする。本実施の形態では、タングステンターゲットを用いたスパッタ法により150nmのゲート電極用の導電膜を形成した後、該導電膜をエッチングにより所望の形状に加工(パターニング)することで、ゲート電極722及び導電膜723を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0193】
以上の工程により、第1のトランジスタ121が形成される。
【0194】
なお、ゲート絶縁膜721を間に挟んで導電膜719と導電膜723とが重なる部分が、第1の容量素子123に相当する。
【0195】
また、第1のトランジスタ121はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、必要に応じて、電気的に接続された複数のゲート電極を有することで、チャネル形成領域を複数有する、マルチゲート構造のトランジスタも形成することができる。
【0196】
なお、酸化物半導体層716に接する絶縁膜(本実施の形態においては、ゲート絶縁膜721が該当する。)は、第13族元素及び酸素を含む絶縁材料を用いるようにしても良い。酸化物半導体材料には第13族元素を含むものが多く、第13族元素を含む絶縁材料は酸化物半導体との相性が良く、これを酸化物半導体層に接する絶縁膜に用いることで、酸化物半導体層との界面の状態を良好に保つことができる。
【0197】
第13族元素を含む絶縁材料とは、絶縁材料に一又は複数の第13族元素を含むことを意味する。第13族元素を含む絶縁材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどがある。ここで、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子%)が多いものを示し、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上のものを示す。
【0198】
例えば、ガリウムを含有する酸化物半導体層に接して絶縁膜を形成する場合に、絶縁膜に酸化ガリウムを含む材料を用いることで酸化物半導体層と絶縁膜の界面特性を良好に保つことができる。例えば、酸化物半導体層と酸化ガリウムを含む絶縁膜とを接して設けることにより、酸化物半導体層と絶縁膜の界面における水素のパイルアップを低減することができる。なお、絶縁膜に酸化物半導体の成分元素と同じ族の元素を用いる場合には、同様の効果を得ることが可能である。例えば、酸化アルミニウムを含む材料を用いて絶縁膜を形成することも有効である。なお、酸化アルミニウムは、水を透過させにくいという特性を有しているため、当該材料を用いることは、酸化物半導体層への水の侵入防止という点においても好ましい。
【0199】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜は、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープなどにより、絶縁材料を化学量論的組成比より酸素が多い状態とすることが好ましい。酸素ドープとは、酸素をバルクに添加することをいう。なお、当該バルクの用語は、酸素を薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、酸素ドープには、プラズマ化した酸素をバルクに添加する酸素プラズマドープが含まれる。また、酸素ドープは、イオン注入法又はイオンドーピング法を用いて行ってもよい。
【0200】
例えば、酸化物半導体層716に接する絶縁膜として酸化ガリウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムの組成をGa(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0201】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜として酸化アルミニウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化アルミニウムの組成をAl(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0202】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜として酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)の組成をGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)とすることができる。
【0203】
酸素ドープ処理を行うことにより、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を形成することができる。このような領域を備える絶縁膜と酸化物半導体層が接することにより、絶縁膜中の過剰な酸素が酸化物半導体層に供給され、酸化物半導体層中、又は酸化物半導体層と絶縁膜の界面における酸素欠陥を低減し、酸化物半導体層をi型化又はi型に限りなく近くすることができる。
【0204】
なお、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜は、酸化物半導体層716に接する絶縁膜のうち、上層に位置する絶縁膜又は下層に位置する絶縁膜のうち、どちらか一方のみに用いても良いが、両方の絶縁膜に用いる方が好ましい。化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を、酸化物半導体層716に接する絶縁膜の、上層及び下層に位置する絶縁膜に用い、酸化物半導体層716を挟む構成とすることで、上記効果をより高めることができる。
【0205】
また、酸化物半導体層716の上層又は下層に用いる絶縁膜は、上層と下層で同じ構成元素を有する絶縁膜としても良いし、異なる構成元素を有する絶縁膜としても良い。例えば、上層と下層とも、組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとしても良いし、上層と下層の一方を組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとし、他方を組成がAl(X=3+α、0<α<1)の酸化アルミニウムとしても良い。
【0206】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜は、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。例えば、酸化物半導体層716の上層に組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムを形成し、その上に組成がGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)の酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を形成してもよい。なお、酸化物半導体層716の下層を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良いし、酸化物半導体層716の上層及び下層の両方を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。
【0207】
次に、図14(C)に示すように、ゲート絶縁膜721、ゲート電極722を覆うように、絶縁膜724を形成する。絶縁膜724は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。なお、絶縁膜724には、誘電率の低い材料や、誘電率の低い構造(多孔性の構造など)を用いることが望ましい。絶縁膜724の誘電率を低くすることにより、配線や電極などの間に生じる寄生容量を低減し、動作の高速化を図ることができるためである。なお、本実施の形態では、絶縁膜724を単層構造としているが、本発明の一態様はこれに限定されず、2層以上の積層構造としても良い。
【0208】
次に、ゲート絶縁膜721、絶縁膜724に開口部725を形成し、導電膜720の一部を露出させる。その後、絶縁膜724上に、上記開口部725において導電膜720と接する配線726を形成する。
【0209】
配線726は、PVD法や、CVD法を用いて導電膜を形成した後、当該導電膜をパターニングすることによって形成される。また、導電膜の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、又はこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0210】
より具体的には、例えば、絶縁膜724の開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く(5nm程度)形成した後に、開口部725に埋め込むようにアルミニウム膜を形成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、被形成面の酸化膜(自然酸化膜など)を還元し、下部電極など(ここでは導電膜720)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、アルミニウム膜のヒロックを防止することができる。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0211】
ここで、導電膜720と配線726とを接触させる場合について説明する。この場合、導電膜720を形成した後、ゲート絶縁膜721及び絶縁膜724において開口部を形成し、配線726を形成することになる。
【0212】
次に、配線726を覆うように絶縁膜727を形成する。上述した一連の工程により、記憶回路を作製することができる。
【0213】
なお、上記作製方法では、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜719及び導電膜720が、酸化物半導体層716の後に形成されている。よって、図14(B)に示すように、上記作製方法によって得られる第1のトランジスタ121は、導電膜719及び導電膜720が、酸化物半導体層716の上に形成されている。しかし、第1のトランジスタ121は、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜が、酸化物半導体層716の下、すなわち、酸化物半導体層716と絶縁膜712及び絶縁膜713の間に設けられていても良い。
【0214】
図15に、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜719及び導電膜720が、酸化物半導体層716と絶縁膜712及び絶縁膜713の間に設けられている場合の、第1のトランジスタ121の断面図を示す。図15に示す第1のトランジスタ121は、絶縁膜713を形成した後に導電膜719及び導電膜720の形成を行い、次いで酸化物半導体層716の形成を行うことで、得ることができる。
【0215】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0216】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態5とは異なる構造を有した、酸化物半導体層を用いたトランジスタについて説明する。
【0217】
図16(A)に示すトランジスタ901は、絶縁膜902上に形成された、活性層として機能する酸化物半導体層903と、酸化物半導体層903上に形成されたソース電極904及びドレイン電極905と、酸化物半導体層903、ソース電極904及びドレイン電極905上のゲート絶縁膜906と、ゲート絶縁膜906上において酸化物半導体層903と重なる位置に設けられたゲート電極907とを有する。
【0218】
図16(A)に示すトランジスタ901は、ゲート電極907が酸化物半導体層903の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極904及びドレイン電極905が酸化物半導体層903の上に形成されているトップコンタクト型である。そして、トランジスタ901は、ソース電極904及びドレイン電極905と、ゲート電極907とが重なっていない。すなわち、ソース電極904及びドレイン電極905とゲート電極907との間には、ゲート絶縁膜906の膜厚よりも大きい間隔が設けられている。よって、トランジスタ901は、ソース電極904及びドレイン電極905とゲート電極907との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができるので、高速動作を実現することができる。
【0219】
また、酸化物半導体層903は、ゲート電極907が形成された後に酸化物半導体層903にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域908を有する。また、酸化物半導体層903のうち、ゲート絶縁膜906を間に挟んでゲート電極907と重なる領域がチャネル形成領域909である。酸化物半導体層903では、一対の高濃度領域908の間にチャネル形成領域909が設けられている。高濃度領域908を形成するためのドーパントの添加は、イオン注入法を用いることができる。ドーパントは、例えばヘリウム、アルゴン、キセノンなどの希ガスや、窒素、リン、ヒ素、アンチモンなどの15族原子などを用いることができる。
【0220】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域908中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。
【0221】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域908は、酸化物半導体層903中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域908を酸化物半導体層903に設けることで、ソース電極904とドレイン電極905の間の抵抗を下げることができる。
【0222】
また、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体を酸化物半導体層903に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下で1時間程度加熱処理を施すことにより、高濃度領域908中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。高濃度領域908中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域908の導電性を高め、ソース電極904とドレイン電極905の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極904とドレイン電極905の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域908中の窒素原子の濃度を、1×1020/cm以上7atoms%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0223】
また、酸化物半導体層903は、CAAC−OSで構成されていても良い。酸化物半導体層903がCAAC−OSで構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体層903の導電率を高めることができるので、ソース電極904とドレイン電極905の間の抵抗を下げることができる。
【0224】
そして、ソース電極904とドレイン電極905の間の抵抗を下げることで、トランジスタ901の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ901の微細化により、当該トランジスタを用いた記憶回路の占める面積を縮小化し、単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0225】
図16(B)に示すトランジスタ911は、絶縁膜912上に形成されたソース電極914及びドレイン電極915と、ソース電極914及びドレイン電極915上に形成された活性層として機能する酸化物半導体層913と、酸化物半導体層913、ソース電極914及びドレイン電極915上のゲート絶縁膜916と、ゲート絶縁膜916上において酸化物半導体層913と重なる位置に設けられたゲート電極917とを有する。
【0226】
図16(B)に示すトランジスタ911は、ゲート電極917が酸化物半導体層913の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極914及びドレイン電極915が酸化物半導体層913の下に形成されているボトムコンタクト型である。そして、トランジスタ911は、トランジスタ901と同様に、ソース電極914及びドレイン電極915と、ゲート電極917とが重なっていないので、ソース電極914及びドレイン電極915とゲート電極917との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができ、高速動作を実現することができる。
【0227】
また、酸化物半導体層913は、ゲート電極917が形成された後に酸化物半導体層913にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域918を有する。また、酸化物半導体層913のうち、ゲート絶縁膜916を間に挟んでゲート電極917と重なる領域がチャネル形成領域919である。酸化物半導体層913では、一対の高濃度領域918の間にチャネル形成領域919が設けられている。
【0228】
高濃度領域918は、上述した、トランジスタ901が有する高濃度領域908の場合と同様に、イオン注入法を用いて形成することができる。そして、高濃度領域918を形成するためのドーパントの種類については、高濃度領域908の場合を参照することができる。
【0229】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域918中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。
【0230】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域918は、酸化物半導体層913中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域918を酸化物半導体層913に設けることで、ソース電極914とドレイン電極915の間の抵抗を下げることができる。
【0231】
また、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体を酸化物半導体層913に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下程度で加熱処理を施すことにより、高濃度領域918中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。高濃度領域918中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域918の導電性を高め、ソース電極914とドレイン電極915の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極914とドレイン電極915の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域918中の窒素原子の濃度を、1×1020/cm以上7atoms%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0232】
また、酸化物半導体層913は、CAAC−OSで構成されていても良い。酸化物半導体層913がCAAC−OSで構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体層913の導電率を高めることができるので、ソース電極914とドレイン電極915の間の抵抗を下げることができる。
【0233】
そして、ソース電極914とドレイン電極915の間の抵抗を下げることで、トランジスタ911の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ911の微細化により、当該トランジスタを用いた記憶回路の占める面積を縮小化し、単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0234】
図16(C)に示すトランジスタ921は、絶縁膜922上に形成された、活性層として機能する酸化物半導体層923と、酸化物半導体層923上に形成されたソース電極924及びドレイン電極925と、酸化物半導体層923、ソース電極924及びドレイン電極925上のゲート絶縁膜926と、ゲート絶縁膜926上において酸化物半導体層923と重なる位置に設けられたゲート電極927とを有する。さらに、トランジスタ921は、ゲート電極927の側部に設けられた、絶縁膜で形成されたサイドウォール930を有する。
【0235】
図16(C)に示すトランジスタ921は、ゲート電極927が酸化物半導体層923の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極924及びドレイン電極925が酸化物半導体層923の上に形成されているトップコンタクト型である。そして、トランジスタ921は、トランジスタ901と同様に、ソース電極924及びドレイン電極925と、ゲート電極927とが重なっていないので、ソース電極924及びドレイン電極925とゲート電極927との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができ、高速動作を実現することができる。
【0236】
また、酸化物半導体層923は、ゲート電極927が形成された後に酸化物半導体層923にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域928と、一対の低濃度領域929とを有する。また、酸化物半導体層923のうち、ゲート絶縁膜926を間に挟んでゲート電極927と重なる領域がチャネル形成領域931である。酸化物半導体層923では、一対の高濃度領域928の間に一対の低濃度領域929が設けられ、一対の低濃度領域929の間にチャネル形成領域931が設けられている。そして、一対の低濃度領域929は、酸化物半導体層923中の、ゲート絶縁膜926を間に挟んでサイドウォール930と重なる領域に設けられている。
【0237】
高濃度領域928及び低濃度領域929は、上述した、トランジスタ901が有する高濃度領域908の場合と同様に、イオン注入法を用いて形成することができる。そして、高濃度領域928を形成するためのドーパントの種類については、高濃度領域908の場合を参照することができる。
【0238】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域928中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。また、例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、低濃度領域929中の窒素原子の濃度は、5×1018/cm以上5×1019/cm未満であることが望ましい。
【0239】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域928は、酸化物半導体層923中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域928を酸化物半導体層923に設けることで、ソース電極924とドレイン電極925の間の抵抗を下げることができる。また、低濃度領域929をチャネル形成領域931と高濃度領域928の間に設けることで、短チャネル効果による閾値電圧のマイナスシフトを軽減することができる。
【0240】
また、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体を酸化物半導体層923に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下程度で加熱処理を施すことにより、高濃度領域928中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。またさらに、低濃度領域929も、窒素の濃度によっては、上記加熱処理によりウルツ鉱型の結晶構造を有する場合もある。高濃度領域928中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域928の導電性を高め、ソース電極924とドレイン電極925の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極924とドレイン電極925の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域928中の窒素原子の濃度を、1×1020/cm以上7atoms%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0241】
また、酸化物半導体層923は、CAAC−OSで構成されていても良い。酸化物半導体層923がCAAC−OSで構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体層923の導電率を高めることができるので、ソース電極924とドレイン電極925の間の抵抗を下げることができる。
【0242】
そして、ソース電極924とドレイン電極925の間の抵抗を下げることで、トランジスタ921の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ921の微細化により、当該トランジスタを用いた記憶回路の占める面積を縮小化し、単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0243】
図16(D)に示すトランジスタ941は、絶縁膜942上に形成されたソース電極944及びドレイン電極945と、ソース電極944及びドレイン電極945上に形成された活性層として機能する酸化物半導体層943と、酸化物半導体層943、ソース電極944及びドレイン電極945上のゲート絶縁膜946と、ゲート絶縁膜946上において酸化物半導体層943と重なる位置に設けられたゲート電極947とを有する。さらに、トランジスタ941は、ゲート電極947の側部に設けられた、絶縁膜で形成されたサイドウォール950を有する。
【0244】
図16(D)に示すトランジスタ941は、ゲート電極947が酸化物半導体層943の上に形成されているトップゲート型であり、なおかつ、ソース電極944及びドレイン電極945が酸化物半導体層943の下に形成されているボトムコンタクト型である。そして、トランジスタ941は、トランジスタ901と同様に、ソース電極944及びドレイン電極945と、ゲート電極947とが重なっていないので、ソース電極944及びドレイン電極945とゲート電極947との間に形成される寄生容量を小さく抑えることができ、高速動作を実現することができる。
【0245】
また、酸化物半導体層943は、ゲート電極947が形成された後に酸化物半導体層943にn型の導電性を付与するドーパントを添加することで得られる、一対の高濃度領域948と、一対の低濃度領域949とを有する。また、酸化物半導体層943のうち、ゲート絶縁膜946を間に挟んでゲート電極947と重なる領域がチャネル形成領域951である。酸化物半導体層943では、一対の高濃度領域948の間に一対の低濃度領域949が設けられ、一対の低濃度領域949の間にチャネル形成領域951が設けられている。そして、一対の低濃度領域949は、酸化物半導体層943中の、ゲート絶縁膜946を間に挟んでサイドウォール950と重なる領域に設けられている。
【0246】
高濃度領域948及び低濃度領域949は、上述した、トランジスタ901が有する高濃度領域908の場合と同様に、イオン注入法を用いて形成することができる。そして、高濃度領域948を形成するためのドーパントの種類については、高濃度領域908の場合を参照することができる。
【0247】
例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域948中の窒素原子の濃度は、5×1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。また、例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、低濃度領域949中の窒素原子の濃度は、5×1018/cm以上5×1019/cm未満であることが望ましい。
【0248】
n型の導電性を付与するドーパントが添加されている高濃度領域948は、酸化物半導体層943中の他の領域に比べて導電性が高くなる。よって、高濃度領域948を酸化物半導体層943に設けることで、ソース電極944とドレイン電極945の間の抵抗を下げることができる。また、低濃度領域949をチャネル形成領域951と高濃度領域948の間に設けることで、短チャネル効果による閾値電圧のマイナスシフトを軽減することができる。
【0249】
また、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体を酸化物半導体層943に用いた場合、窒素を添加した後、300℃以上600℃以下程度で加熱処理を施すことにより、高濃度領域948中の酸化物半導体はウルツ鉱型の結晶構造を有するようになる。またさらに、低濃度領域949も、窒素の濃度によっては、上記加熱処理によりウルツ鉱型の結晶構造を有する場合もある。高濃度領域948中の酸化物半導体がウルツ鉱型の結晶構造を有することで、さらに高濃度領域948の導電性を高め、ソース電極944とドレイン電極945の間の抵抗を下げることができる。なお、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体を形成して、ソース電極944とドレイン電極945の間の抵抗を効果的に下げるためには、窒素をドーパントとして用いた場合、高濃度領域948中の窒素原子の濃度を、1×1020/cm以上7atoms%以下とすることが望ましい。しかし、窒素原子が上記範囲よりも低い濃度であっても、ウルツ鉱型の結晶構造を有する酸化物半導体が得られる場合もある。
【0250】
また、酸化物半導体層943は、CAAC−OSで構成されていても良い。酸化物半導体層943がCAAC−OSで構成されている場合、非晶質の場合に比べて酸化物半導体層943の導電率を高めることができるので、ソース電極944とドレイン電極945の間の抵抗を下げることができる。
【0251】
そして、ソース電極944とドレイン電極945の間の抵抗を下げることで、トランジスタ941の微細化を進めても、高いオン電流と、高速動作を確保することができる。また、トランジスタ941の微細化により、当該トランジスタを用いた記憶回路の占める面積を縮小化し、単位面積あたりの記憶容量を高めることができる。
【0252】
なお、酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、ソース領域またはドレイン領域として機能する高濃度領域をセルフアラインプロセスにて作製する方法の一つとして、酸化物半導体層の表面を露出させて、アルゴンプラズマ処理をおこない、酸化物半導体層のプラズマにさらされた領域の抵抗率を低下させる方法が開示されている(S. Jeon et al. ”180nm Gate Length Amorphous InGaZnO Thin Film Transistor for High Density Image Sensor Applications”, IEDM Tech. Dig., p.504−507, 2010.)。
【0253】
しかしながら、上記作製方法では、ゲート絶縁膜を形成した後に、ソース領域またはドレイン領域となるべき部分を露出するべく、ゲート絶縁膜を部分的に除去する必要がある。よって、ゲート絶縁膜が除去される際に、下層の酸化物半導体層も部分的にオーバーエッチングされ、ソース領域またはドレイン領域となるべき部分の膜厚が小さくなってしまう。その結果、ソース領域またはドレイン領域の抵抗が増加し、また、オーバーエッチングによるトランジスタの特性不良が起こりやすくなる。
【0254】
トランジスタの微細化を進めるには、加工精度の高いドライエッチング法を採用する必要がある。しかし、上記オーバーエッチングは、酸化物半導体層とゲート絶縁膜の選択比が十分に確保できないドライエッチング法を採用する場合に、顕著に起こりやすい。
【0255】
例えば、酸化物半導体層が十分な厚さであればオーバーエッチングも問題にはならないが、チャネル長を200nm以下とする場合には、短チャネル効果を防止する上で、チャネル形成領域となる部分の酸化物半導体層の厚さは20nm以下、好ましくは10nm以下であることが求められる。そのような薄い酸化物半導体層を扱う場合には、酸化物半導体層のオーバーエッチングは、上述したような、ソース領域またはドレイン領域の抵抗が増加、トランジスタの特性不良を生じさせるため、好ましくない。
【0256】
しかし、本発明の一態様のように、酸化物半導体層へのドーパントの添加を、酸化物半導体層を露出させず、ゲート絶縁膜を残したまま行うことで、酸化物半導体層のオーバーエッチングを防ぎ、酸化物半導体層への過剰なダメージを軽減することができる。また、加えて、酸化物半導体層とゲート絶縁膜の界面も清浄に保たれる。従って、トランジスタの特性及び信頼性を高めることができる。
【0257】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0258】
(実施の形態7)
酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)とを含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。
【0259】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、又はランタノイドのから選ばれた一種又は複数種を有することが好ましい。
【0260】
ランタノイドとして、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)がある。
【0261】
例えば、一元系金属の酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛等を用いることができる。
【0262】
また、例えば、二元系金属の酸化物半導体として、In−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物等を用いることができる。
【0263】
また、例えば、三元系金属の酸化物半導体として、In−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物等を用いることができる。
【0264】
また、例えば、四元系金属の酸化物半導体として、In−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物等を用いることができる。
【0265】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素を含有させても良い。
【0266】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。
【0267】
あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いても良い。
【0268】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0269】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。
【0270】
非単結晶の場合、非晶質でも、多結晶でもよい。また、非晶質中に結晶性を有する部分を含む構造でもよい。なお、アモルファスは欠陥が多いため、非アモルファスが好ましい。
【0271】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0272】
(実施の形態8)
結晶性部分と非結晶性部分とを有し、結晶性部分の配向がc軸配向に揃っている酸化物半導体であるCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)について説明する。
【0273】
CAAC−OSは新規な酸化物半導体である。
【0274】
CAAC−OSは、c軸配向し、かつab面、表面または界面の方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有する。
【0275】
そして、CAAC−OSは、c軸においては金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。
【0276】
さらに、CAAC−OSは、異なる結晶性部分の間で、それぞれa軸またはb軸の向きが異なっていてもよい。
【0277】
CAAC−OSとは、広義には、非単結晶である。
【0278】
そして、CAAC−OSは、ab面に垂直な方向から見て、三角形、六角形、正三角形または正六角形の原子配列を有する。
【0279】
さらに、CAAC−OSは、c軸方向に垂直な方向から見て、金属原子が層状、または金属原子と酸素原子が層状に配列した酸化物である。
【0280】
CAAC−OSは単結晶ではないが、非晶質のみから形成されているものでもない。
【0281】
また、CAAC−OSは結晶化した部分(結晶部分)を含むが、1つの結晶部分と他の結晶部分の境界を明確に判別できないこともある。
【0282】
CAAC−OSを構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。
【0283】
また、CAAC−OSを構成する個々の結晶部分のc軸は一定の方向(例えば、CAAC−OSを支持する基板面、CAAC−OSの表面などに垂直な方向)に揃っていてもよい。
【0284】
若しくは、CAAC−OSを構成する個々の結晶部分のab面の法線は一定の方向(例えば、CAAC−OSを支持する基板面、CAAC−OSの表面などに垂直な方向)を向いていてもよい。
【0285】
CAAC−OSは、その組成などに応じて、導体であったり、半導体であったり、絶縁体であったりする。また、その組成などに応じて、可視光に対して透明であったり不透明であったりする。
【0286】
例えば、膜状に形成されたCAAC−OSを、膜表面または支持する基板面に垂直な方向から電子顕微鏡で観察すると三角形または六角形の原子配列が認められる。
【0287】
さらに、電子顕微鏡で膜断面を観察すると金属原子または金属原子および酸素原子(または窒素原子)の層状配列が認められる。
【0288】
図22乃至図24を用いて、CAAC−OSに含まれる結晶構造の一例について説明する。
【0289】
なお、図22乃至図24において、上方向がc軸方向であり、c軸方向と直交する面がab面である。
【0290】
本実施の形態において、上半分、下半分とは、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。
【0291】
図22(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造Aを示す。
【0292】
ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。
【0293】
構造Aは、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。
【0294】
なお、構造Aは上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。構造Aに示す小グループは電荷が0である。
【0295】
図22(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、近接の2個の4配位のOと、を有する構造Bを示す。
【0296】
3配位のOは、いずれもab面に存在する。構造Bの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。
【0297】
また、Inも5配位をとるため、構造Bをとりうる。構造Bの小グループは電荷が0である。
【0298】
図22(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造Cを示す。
【0299】
構造Cの上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。構造Cの小グループは電荷が0である。
【0300】
図22(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造Dを示す。
【0301】
構造Dの上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。
【0302】
構造Dの小グループは電荷が+1となる。
【0303】
図22(E)に、2個のZnを有する構造Eを示す。
【0304】
構造Eの上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。構造Eの小グループは電荷が−1となる。
【0305】
本実施の形態では複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0306】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。
【0307】
Inの上半分の3個のOは下方向に3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは上方向に3個の近接Inを有する。
【0308】
Gaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。
【0309】
Znの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは上方向に3個の近接Znを有する。
【0310】
この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。
【0311】
Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。
【0312】
従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。
【0313】
その理由を以下に示す。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が上半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)の上半分の4配位のO、5配位の金属原子(GaまたはIn)の下半分の4配位のOまたは4配位の金属原子(Zn)の上半分の4配位のOのいずれかと結合することになる。
【0314】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。
【0315】
また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0316】
図23(A)に、In−Sn−Zn系の層構造を構成する中グループAのモデル図を示す。
【0317】
図23(B)に、3つの中グループで構成される大グループBを示す。
【0318】
なお、図23(C)は、図23(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0319】
中グループAでは、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみである。
【0320】
例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。
【0321】
同様に、中グループAにおいて、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。
【0322】
また、中グループAにおいて、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0323】
中グループAにおいて、In−Sn−Zn系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合する。
【0324】
そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合する。
【0325】
そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合する。
【0326】
そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合する。
【0327】
この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。
【0328】
この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0329】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。
【0330】
例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。
【0331】
そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。
【0332】
電荷−1をとる構造として、構造Eに示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。
【0333】
例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0334】
具体的には、大グループBが繰り返されることで、In−Sn−Zn系の結晶(InSnZn)を得ることができる。
【0335】
得られるIn−Sn−Zn系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0336】
In−Sn−Zn系の結晶は、mの数が大きいと結晶性が向上するため、好ましい。
【0337】
In−Sn−Zn系以外の酸化物半導体を用いた場合も同様である。
【0338】
例えば、図24(A)に、In−Ga−Zn系の層構造を構成する中グループLのモデル図を示す。
【0339】
中グループLにおいて、In−Ga−Zn系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合する。
【0340】
そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合する。
【0341】
そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合する。
【0342】
この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0343】
図24(B)に3つの中グループで構成される大グループMを示す。
【0344】
なお、図24(C)は、図24(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0345】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。
【0346】
そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0347】
また、In−Ga−Zn系の層構造を構成する中グループは、中グループLに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0348】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0349】
(実施の形態9)
酸化物半導体に限らず、実際に測定される絶縁ゲート型トランジスタの電界効果移動度は、さまざまな理由によって本来の移動度よりも低くなる。
【0350】
移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面の欠陥があるが、Levinsonモデルを用いると、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出せる。
【0351】
半導体本来の移動度をμ、測定される電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界等)が存在すると仮定すると、式(1)で表される。
【0352】
【数1】

【0353】
Eはポテンシャル障壁の高さであり、kがボルツマン定数、Tは絶対温度である。
【0354】
また、ポテンシャル障壁が欠陥に由来すると仮定すると、Levinsonモデルでは、式(2)で表される。
【0355】
【数2】

【0356】
eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積当たりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nは単位面積当たりのチャネルに含まれるキャリア数、Coxは単位面積当たりの容量、Vはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。
【0357】
なお、厚さ30nm以下の半導体層であれば、チャネルの厚さは半導体層の厚さと同一として差し支えない。
【0358】
線形領域におけるドレイン電流Iは、式(3)で表される。
【0359】
【数3】

【0360】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、L=W=10μmである。
【0361】
また、Vはドレイン電圧である。
【0362】
式(3)の両辺をVgで割り、更に両辺の対数を取ると、式(4)で表される。
【0363】
【数4】

【0364】
式(3)の右辺はVの関数である。
【0365】
上式からわかるように、縦軸をln(Id/Vg)、横軸を1/Vgとする直線の傾きから平均欠陥密度Nが求められる。
【0366】
すなわち、トランジスタのI―V特性から、平均欠陥密度を評価できる。
【0367】
酸化物半導体としては、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)の比率が、In:Sn:Zn=1:1:1のものでは欠陥密度Nは1×1012/cm程度である。
【0368】
このようにして求めた平均欠陥密度等をもとにμ=120cm/Vsが導出される。
【0369】
欠陥のあるIn−Sn−Zn酸化物で測定される移動度は35cm/Vs程度である。
【0370】
しかし、半導体内部および半導体と絶縁膜との界面の欠陥が無い酸化物半導体の移動度μは120cm/Vsとなると予想できる。
【0371】
ただし、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁膜との界面での散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。すなわち、ゲート絶縁膜界面からxだけ離れた場所における移動度μは、式(5)で表される。
【0372】
【数5】

【0373】
Dはゲート方向の電界、B、Gは定数である。BおよびGは、実際の測定結果より求めることができ、上記の測定結果からは、B=4.75×10cm/s、G=10nm(界面散乱が及ぶ深さ)である。
【0374】
Dが増加する(すなわち、ゲート電圧が高くなる)と式(5)の第2項が増加するため、移動度μは低下することがわかる。
【0375】
半導体内部の欠陥が無い理想的な酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタの移動度μの計算結果Eを図25に示す。
【0376】
なお、計算にはシノプシス社製のソフトであるSentaurus Deviceを使用した。
【0377】
計算において、酸化物半導体のバンドギャップ、電子親和力、比誘電率、厚さをそれぞれ、2.8電子ボルト、4.7電子ボルト、15、15nmとした。
【0378】
これらの値は、スパッタリング法により形成された薄膜を測定して得られたものである。
【0379】
さらに、ゲート、ソース、ドレインの仕事関数をそれぞれ、5.5電子ボルト、4.6電子ボルト、4.6電子ボルトとした。
【0380】
また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘電率は4.1とした。チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、ドレイン電圧Vは0.1Vである。
【0381】
計算結果Eで示されるように、ゲート電圧1V強で移動度100cm/Vs以上のピークをつけるが、ゲート電圧がさらに高くなると、界面散乱が大きくなり、移動度が低下する。
【0382】
なお、界面散乱を低減するためには、半導体層表面を原子レベルで平坦にすること(Atomic Layer Flatness)が望ましい。
【0383】
このような移動度を有する酸化物半導体を用いて微細なトランジスタを作製した場合の特性を計算した。
【0384】
なお、計算に用いたトランジスタは酸化物半導体層に一対のn型半導体領域にチャネル形成領域が挟まれたものを用いた。
【0385】
一対のn型半導体領域の抵抗率は2×10−3Ωcmとして計算した。
【0386】
また、チャネル長を33nm、チャネル幅を40nmとして計算した。
【0387】
また、ゲート電極の側壁にサイドウォールを有する。
【0388】
サイドウォールと重なる半導体領域をオフセット領域として計算した。
【0389】
計算にはシノプシス社製のソフト、Sentaurus Deviceを使用した。
【0390】
図26は、トランジスタのドレイン電流(Id、実線)および移動度(μ、点線)のゲート電圧(Vg、ゲートとソースの電位差)依存性の計算結果である。
【0391】
ドレイン電流Idは、ドレイン電圧(ドレインとソースの電位差)を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0392】
図26(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとして計算したものである。
【0393】
図26(B)はゲート絶縁膜の厚さを10nmと計算したものである。
【0394】
図26(C)はゲート絶縁膜の厚さを5nmと計算したものである。
【0395】
ゲート絶縁膜が薄くなるほど、特にオフ状態でのドレイン電流Id(オフ電流)が顕著に低下する。
【0396】
一方、移動度μのピーク値やオン状態でのドレイン電流Id(オン電流)には目立った変化が無い。
【0397】
図27は、オフセット長(サイドウォール長)Loffを5nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧Vg依存性を示す。
【0398】
ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0399】
図27(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとして計算したものである。
【0400】
図27(B)はゲート絶縁膜の厚さを10nmと計算したものである。
【0401】
図27(C)はゲート絶縁膜の厚さを5nmと計算したものである。
【0402】
図28は、オフセット長(サイドウォール長)Loffを15nmとしたもののドレイン電流Id(実線)および移動度μ(点線)のゲート電圧依存性を示す。
【0403】
ドレイン電流Idは、ドレイン電圧を+1Vとし、移動度μはドレイン電圧を+0.1Vとして計算したものである。
【0404】
図28(A)はゲート絶縁膜の厚さを15nmとして計算したものである。
【0405】
図28(B)はゲート絶縁膜の厚さを10nmと計算したものである。
【0406】
図28(C)はゲート絶縁膜の厚さを5nmと計算したものである。
【0407】
いずれもゲート絶縁膜が薄くなるほど、オフ電流が顕著に低下する一方、移動度μのピーク値やオン電流には目立った変化が無い。
【0408】
なお、移動度μのピークは、図26では80cm/Vs程度であるが、図27では60cm/Vs程度、図28では40cm/Vsと、オフセット長Loffが増加するほど低下する。
【0409】
また、オフ電流も同様な傾向がある。
【0410】
一方、オン電流にはオフセット長Loffの増加にともなって減少するが、オフ電流の低下に比べるとはるかに緩やかである。
【0411】
また、いずれもゲート電圧1V前後で、ドレイン電流はメモリ素子等で必要とされる10μAを超えることが示された。
【0412】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0413】
(実施の形態10)
In、Sn、Znを含有する酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体を形成する際に基板を加熱して成膜すること、或いは酸化物半導体膜を形成した後に熱処理を行うことで良好な特性を得ることができる。
【0414】
なお、In、Sn、Znは組成比でそれぞれ5atomic%以上含まれていると好ましい。
【0415】
In、Sn、Znを含有する酸化物半導体膜の成膜後に基板を意図的に加熱することで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることが可能となる。
【0416】
また、nチャネル型のトランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせることができる。
【0417】
nチャネル型のトランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせることにより、nチャネル型のトランジスタのオフ状態を維持するための電圧の絶対値を低くすることができ、低消費電力化が可能となる。
【0418】
さらに、nチャネル型のトランジスタのしきい値電圧をプラスシフトさせて、しきい値電圧を0V以上にすれば、ノーマリーオフ型のトランジスタを形成することが可能となる。
【0419】
以下In、Sn、Znを含有する酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す。
【0420】
(サンプルA〜C共通条件)
組成比としてIn:Sn:Zn=1:1:1のターゲットを用いて、ガス流量比をAr/O2=6/9sccm、成膜圧力を0.4Pa、成膜電力100Wとして、15nmの厚さとなるように基板上に酸化物半導体層を成膜した。
【0421】
次に、酸化物半導体層を島状になるようにエッチング加工した。
【0422】
そして、酸化物半導体層上に50nmの厚さとなるようにタングステン層を成膜し、これをエッチング加工してソース電極及びドレイン電極を形成した。
【0423】
次に、プラズマCVD法を用いて、シランガス(SiH)と一酸化二窒素(NO)を用いて100nmの厚さとなるように酸化窒化珪素膜(SiON)を形成してゲート絶縁膜とした。
【0424】
次に、15nmの厚さとなるように窒化タンタルを形成し、135nmの厚さとなるようにタングステンを形成し、これらをエッチング加工してゲート電極を形成した。
【0425】
さらに、プラズマCVD法を用いて、300nmの厚さとなるように酸化窒化珪素膜(SiON)を形成し、1.5μmの厚さとなるようにポリイミド膜を形成し層間絶縁膜とした。
【0426】
次に、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成し、50nmの厚さとなるように第1のチタン膜を形成し、100nmの厚さとなるようにアルミニウム膜を形成し、50nmの厚さとなるように第2のチタン膜を形成し、これらをエッチング加工して測定用のパッドを形成した。
【0427】
以上のようにしてトランジスタを有する半導体装置を形成した。
【0428】
(サンプルA)
サンプルAは酸化物半導体層の成膜中に基板に意図的な加熱を施さなかった。
【0429】
また、サンプルAは酸化物半導体層の成膜後であって、酸化物半導体層のエッチング加工前に加熱処理を施さなかった。
【0430】
(サンプルB)
サンプルBは基板を200℃になるように加熱した状態で酸化物半導体層の成膜を行った。
【0431】
また、サンプルBは酸化物半導体層の成膜後であって、酸化物半導体層のエッチング加工前に加熱処理を施さなかった。
【0432】
基板を加熱した状態で成膜を行った理由は、酸化物半導体層中でドナーとなる水素を追い出すためである。
【0433】
(サンプルC)
サンプルCは基板を200℃になるように加熱した状態で酸化物半導体層の成膜を行った。
【0434】
さらに、サンプルCは酸化物半導体層の成膜後であって、酸化物半導体層のエッチング加工前に窒素雰囲気で650℃1時間の加熱処理を施した後、酸素雰囲気で650℃1時間の加熱処理を施した。
【0435】
窒素雰囲気で650℃1時間の加熱処理を施した理由は、酸化物半導体層中でドナーとなる水素を追い出すためである。
【0436】
ここで、酸化物半導体層中でドナーとなる水素を追い出すための加熱処理で酸素も離脱し、酸化物半導体層中でキャリアとなる酸素欠損も生じてしまう。
【0437】
そこで、酸素雰囲気で650℃1時間の加熱処理を施すことにより、酸素欠損を低減する効果を狙った。
【0438】
(サンプルA〜Cのトランジスタの特性)
図29(A)にサンプルAのトランジスタの初期特性を示す。
【0439】
図29(B)にサンプルBのトランジスタの初期特性を示す。
【0440】
図29(C)にサンプルCのトランジスタの初期特性を示す。
【0441】
サンプルAのトランジスタの電界効果移動度は18.8cm/Vsecであった。
【0442】
サンプルBのトランジスタの電界効果移動度は32.2cm/Vsecであった。
【0443】
サンプルCのトランジスタの電界効果移動度は34.5cm/Vsecであった。
【0444】
ここで、サンプルA〜Cと同様の成膜方法で形成した酸化物半導体層の断面を透過型顕微鏡(TEM)で観察したところ、成膜時に基板加熱を行ったサンプルB及びサンプルCと同様の成膜方法で形成したサンプルには結晶性が確認された。
【0445】
そして、驚くべきことに、成膜時に基板加熱を行ったサンプルは、結晶性部分と非結晶性部分とを有し、結晶性部分の配向がc軸配向に揃っている結晶性であった。
【0446】
通常の多結晶では結晶性部分の配向が揃っておらず、ばらばらの方向を向いているため、成膜時に基板加熱を行ったサンプルは新しい構造を有している。
【0447】
また、図29(A)〜(C)を比較すると、成膜時に基板加熱を行うこと、又は、成膜後に加熱処理を行うことにより、ドナーとなる水素元素を追い出すことができるため、nチャネル型トランジスタのしきい値電圧をプラスシフトできることが理解できる。
【0448】
即ち、成膜時に基板加熱を行ったサンプルBのしきい値電圧は、成膜時に基板加熱を行っていないサンプルAのしきい値電圧よりもプラスシフトしている。
【0449】
また、成膜時に基板加熱を行ったサンプルB及びサンプルCを比較した場合、成膜後に加熱処理を行ったサンプルCの方が、成膜後に加熱処理を行っていないサンプルBよりもプラスシフトしていることがわかる。
【0450】
また、水素のような軽元素は加熱処理の温度が高いほど離脱しやすいため、加熱処理の温度が高いほど水素が離脱しやすい。
【0451】
よって、成膜時又は成膜後の加熱処理の温度を更に高めればよりプラスシフトが可能であると考察した。
【0452】
(サンプルBとサンプルCのゲートBTストレス試験結果)
サンプルB(成膜後加熱処理なし)及びサンプルC(成膜後加熱処理あり)とに対してゲートBTストレス試験を行った。
【0453】
まず、基板温度を25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids特性の測定を行い、加熱及びプラスの高電圧印加を行う前のトランジスタの特性を測定した。
【0454】
次に、基板温度を150℃とし、Vdsを0.1Vとした。
【0455】
次に、ゲート絶縁膜に印加されるVgsに20Vを印加し、そのまま1時間保持した。
【0456】
次に、Vgsを0Vとした。
【0457】
次に、基板温度25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids測定を行い、加熱及びプラスの高電圧印加を行った後のトランジスタの特性を測定した。
【0458】
以上のようにして、加熱及びプラスの高電圧印加を行う前後のトランジスタの特性を比較することをプラスBT試験と呼ぶ。
【0459】
一方、まず基板温度を25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids特性の測定を行い、加熱及びマイナスの高電圧印加を行う前のトランジスタの特性を測定した。
【0460】
次に、基板温度を150℃とし、Vdsを0.1Vとした。
【0461】
次に、ゲート絶縁膜にVgsに−20Vを印加し、そのまま1時間保持した。
【0462】
次に、Vgsを0Vとした。
【0463】
次に、基板温度25℃とし、Vdsを10Vとし、トランジスタのVgs−Ids測定を行い、加熱及びマイナスの高電圧印加を行った後のトランジスタの特性を測定した。
【0464】
以上のようにして、加熱及びマイナスの高電圧印加を行う前後のトランジスタの特性を比較することをマイナスBT試験と呼ぶ。
【0465】
図30(A)はサンプルBのプラスBT試験結果であり、図30(B)はサンプルBのマイナスBT試験結果である。
【0466】
図31(A)はサンプルCのプラスBT試験結果であり、図31(B)はサンプルCのマイナスBT試験結果である。
【0467】
プラスBT試験及びマイナスBT試験はトランジスタの劣化具合を判別する試験であるが、図30(A)及び図31(A)を参照すると少なくともプラスBT試験の処理を行うことにより、しきい値電圧をプラスシフトさせることができることがわかった。
【0468】
特に、図30(A)ではプラスBT試験の処理を行うことにより、トランジスタがノーマリーオフ型になったことがわかる。
【0469】
よって、トランジスタの作製時の加熱処理に加えて、プラスBT試験の処理を行うことにより、しきい値電圧のプラスシフト化を促進でき、ノーマリーオフ型のトランジスタを形成することができることがわかった。
【0470】
図32はサンプルAのトランジスタのオフ電流と測定時の基板温度(絶対温度)の逆数との関係を示す。
【0471】
ここでは、測定時の基板温度の逆数に1000を掛けた数値(1000/T)を横軸としている。
【0472】
なお、図32ではチャネル幅1μmの場合における電流量を図示している。
【0473】
基板温度が125℃(1000/Tが約2.51)のとき1×10−19A以下となっていた。
【0474】
基板温度が85℃(1000/Tが約2.79)のとき1×10−20A以下となっていた。
【0475】
つまり、シリコン半導体を用いたトランジスタと比較して極めて低いオフ電流であることがわかった。
【0476】
なお、温度が低いほどオフ電流が低下するため、常温であればより低いオフ電流であることは明らかである。
【0477】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0478】
(実施の形態11)
本実施の形態では、記憶回路の構造の一形態について説明する。
【0479】
図17及び図18は、記憶回路の断面図である。図17及び図18に示す記憶回路は上部に、多層に形成された複数の記憶素子を有し、下部に論理回路3004を有する。複数の記憶素子のうち、記憶素子3170aと、記憶素子3170bを代表で示す。記憶素子3170a及び記憶素子3170bとしては、例えば、上記に実施の形態において説明した揮発性記憶部101または不揮発性記憶部102と同様の構成とすることもできる。
【0480】
なお、記憶素子3170aに含まれるトランジスタ3171aを代表で示す。記憶素子3170bに含まれるトランジスタ3171bを代表で示す。トランジスタ3171a及びトランジスタ3171bは、酸化物半導体層にチャネル形成領域を有する。酸化物半導体層にチャネル形成領域が形成されるトランジスタの構成については、その他の実施の形態において説明した構成と同様であるため、説明は省略する。
【0481】
トランジスタ3171aのソース電極及びドレイン電極と同じ層に形成された電極3501aは、電極3502aによって、電極3003aと電気的に接続されている。トランジスタ3171bのソース電極及びドレイン電極と同じ層に形成された電極3501cは、電極3502cによって、電極3003cと電気的に接続されている。
【0482】
また、論理回路3004は、酸化物半導体以外の半導体材料をチャネル形成領域として用いたトランジスタ3001を有する。トランジスタ3001は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板3000に素子分離絶縁膜3106を設け、素子分離絶縁膜3106に囲まれた領域にチャネル形成領域となる領域を形成することによって得られるトランジスタとすることができる。なお、トランジスタ3001は、絶縁表面上に形成されたシリコン膜等の半導体膜や、SOI基板のシリコン膜にチャネル形成領域が形成されるトランジスタであってもよい。トランジスタ3001の構成については、公知の構成を用いることが可能であるため、説明は省略する。
【0483】
トランジスタ3171aが形成された層と、トランジスタ3001が形成された層との間には、配線3100a及び配線3100bが形成されている。配線3100aとトランジスタ3001が形成された層との間には、絶縁膜3140aが設けられ、配線3100aと配線3100bとの間には、絶縁膜3141aが設けられ、配線3100bとトランジスタ3171aが形成された層との間には、絶縁膜3142aが設けられている。
【0484】
同様に、トランジスタ3171bが形成された層と、トランジスタ3171aが形成された層との間には、配線3100c及び配線3100dが形成されている。配線3100cとトランジスタ3171aが形成された層との間には、絶縁膜3140bが設けられ、配線3100cと配線3100dとの間には、絶縁膜3141bが設けられ、配線3100dとトランジスタ3171bが形成された層との間には、絶縁膜3142bが設けられている。
【0485】
絶縁膜3140a、絶縁膜3141a、絶縁膜3142a、絶縁膜3140b、絶縁膜3141b、絶縁膜3142bは、層間絶縁膜として機能し、その表面は平坦化された構成とすることができる。
【0486】
配線3100a、配線3100b、配線3100c、配線3100dによって、記憶素子間の電気的接続や、論理回路3004と記憶素子との電気的接続等を行うことができる。
【0487】
論理回路3004に含まれる電極3303は、上部に設けられた回路と電気的に接続することができる。
【0488】
例えば、図17に示すように、電極3505によって電極3303は配線3100aと電気的に接続することができる。配線3100aは、電極3503aによって電極3501bと電気的に接続することができる。こうして、配線3100a及び電極3303を、トランジスタ3171aのソースまたはドレインと電気的に接続することができる。また、電極3501bは、電極3502bによって、電極3003bと電気的に接続することができる。電極3003bは、電極3503bによって配線3100cと電気的に接続することができる。
【0489】
図17では、電極3303とトランジスタ3171aとの電気的接続は、配線3100aを介して行われる例を示したがこれに限定されない。電極3303とトランジスタ3171aとの電気的接続は、配線3100bを介して行われてもよいし、配線3100aと配線3100bの両方を介して行われてもよい。また、図18に示すように、電極3303とトランジスタ3171aとの電気的接続は、配線3100aも配線3100bも介さず行われてもよい。図18では、電極3303は、電極3503によって、電極3003bと電気的に接続されている。電極3003bは、トランジスタ3171aのソースまたはドレインと電気的に接続される。こうして、電極3303とトランジスタ3171aとの電気的接続をとることができる。
【0490】
なお、図17及び図18では、2つの記憶素子(記憶素子3170aと、記憶素子3170b)が積層された構成を例として示したが、積層する記憶素子の数はこれに限定されない。
【0491】
また、図17及び図18では、トランジスタ3171aが形成された層と、トランジスタ3001が形成された層との間には、配線3100aが形成された配線層と、配線3100bが形成された配線層との、2つの配線層が設けられた構成を示したがこれに限定されない。トランジスタ3171aが形成された層と、トランジスタ3001が形成された層との間に、1つの配線層が設けられていてもよいし、3つ以上の配線層が設けられていてもよい。
【0492】
また、図17及び図18では、トランジスタ3171bが形成された層と、トランジスタ3171aが形成された層との間には、配線3100cが形成された配線層と、配線3100dが形成された配線層との、2つの配線層が設けられた構成を示したがこれに限定されない。トランジスタ3171bが形成された層と、トランジスタ3171aが形成された層との間に、1つの配線層が設けられていてもよいし、3つ以上の配線層が設けられていてもよい。
【0493】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0494】
本発明の一態様に係る信号処理装置を用いることで、消費電力の低い電子機器を提供することが可能である。特に電力の供給を常時受けることが困難な携帯用の電子機器の場合、本発明の一態様に係る消費電力の低い信号処理装置をその構成要素に追加することにより、連続使用時間が長くなるといったメリットが得られる。また、オフ電流が低いトランジスタを用いることで、オフ電流の高さをカバーするための冗長な回路設計が不要となるため、信号処理装置の集積度を高めることができ、信号処理装置を高機能化させることができる。
【0495】
本発明の一態様に係る信号処理装置は、表示装置、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る信号処理装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。
【0496】
本発明の一態様に係る信号処理装置を、携帯電話、スマートフォン、電子書籍などの携帯用の電子機器に応用した場合について説明する。
【0497】
図19は、携帯用の電子機器のブロック図である。図19に示す携帯用の電子機器はRF回路421、アナログベースバンド回路422、デジタルベースバンド回路423、バッテリー424、電源回路425、アプリケーションプロセッサ426、フラッシュメモリ430、ディスプレイコントローラ431、記憶回路432、ディスプレイ433、タッチセンサ439、音声回路437、キーボード438などより構成されている。ディスプレイ433は表示部434、ソースドライバ435、ゲートドライバ436によって構成されている。アプリケーションプロセッサ426はCPU427、DSP428、インターフェース429を有している。CPU427に上記実施の形態で示した信号処理装置を採用することによって、消費電力を低減することができる。また、一般的に記憶回路432はSRAMまたはDRAMで構成されているが、記憶回路432に上記実施の形態で示した記憶回路を採用することによって、消費電力を低減することが可能になる。
【0498】
図20に、記憶回路432の構成をブロック図で示す。記憶回路432は、記憶回路442、記憶回路443、スイッチ444、スイッチ445、及びメモリコントローラ441を有している。
【0499】
まず、ある画像データが、携帯用の電子機器において受信されるか、またはアプリケーションプロセッサ426によって形成される。この画像データは、スイッチ444を介して記憶回路442に記憶される。そして、スイッチ445を介して出力された画像データは、ディスプレイコントローラ431を介してディスプレイ433に送られる。ディスプレイ433が、画像データを用いて画像の表示を行う。
【0500】
静止画のように、表示される画像に変更がなければ、通常30Hz〜60Hz程度の周期で、記憶回路442から読み出された画像データが、スイッチ445を介して、ディスプレイコントローラ431に送られ続ける。ユーザーが画面に表示されている画像を書き換える操作を行ったとき、アプリケーションプロセッサ426は、新たな画像データを形成し、その画像データはスイッチ444を介して記憶回路443に記憶される。この新たな画像データの記憶回路443への記憶が行われている間にも、記憶回路442からスイッチ445を介して定期的に画像データが読み出される。
【0501】
記憶回路443への新たな画像データの記憶が完了すると、次のフレーム期間より、記憶回路443に記憶された新しい画像データが読み出され、スイッチ445、ディスプレイコントローラ431を介して、ディスプレイ433に上記画像データが送られる。ディスプレイ433では、送られてきた新しい画像データを用いて、画像の表示を行う。
【0502】
この画像データの読み出しは、さらに次の新しい画像データが記憶回路442に記憶されるまで、継続される。このように、記憶回路442、記憶回路443が交互に画像データの書き込みと読み出しを行い、ディスプレイ433は画像の表示を行う。
【0503】
記憶回路442、記憶回路443はそれぞれ別の記憶回路には限定されず、1つの記憶回路が有するメモリ領域を、分割して使用してもよい。これらの記憶回路に上記実施の形態で示した記憶回路を採用することによって、消費電力を低減することが可能になる。
【0504】
図21は電子書籍のブロック図である。電子書籍はバッテリー451、電源回路452、マイクロプロセッサ453、フラッシュメモリ454、音声回路455、キーボード456、記憶回路457、タッチパネル458、ディスプレイ459、ディスプレイコントローラ460によって構成される。上記実施の形態で示した信号処理装置をマイクロプロセッサ453に採用することで、消費電力を低減することが可能になる。また、上記実施の形態で示した記憶回路を記憶回路457に採用することで、消費電力を低減することが可能になる。
【0505】
例えば、ユーザーが、書籍データ中の特定の箇所において、表示の色を変える、アンダーラインを引く、文字を太くする、文字の書体を変えるなどにより、当該箇所とそれ以外の箇所との違いを明確にするハイライト機能を利用する場合、書籍データのうちユーザーが指定した箇所の書籍データを記憶する必要がある。記憶回路457は、上記書籍データを一時的に記憶する機能を持つ。なお、上記データを長期に渡って保存する場合には、フラッシュメモリ454に上記書籍データをコピーしておいても良い。
【0506】
本実施例は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0507】
100 記憶回路
101 揮発性記憶部
102 不揮発性記憶部
103 セレクタ回路
111 記憶回路
112 昇圧回路
113 スイッチ回路
114 スイッチ回路
115 第1の位相反転回路
116 第2の位相反転回路
121 第1のトランジスタ
122 第2のトランジスタ
123 第1の容量素子
124 昇圧用トランジスタ
125 第2の容量素子
126 第3のトランジスタ
127 第4のトランジスタ
128 第5のトランジスタ
129 第6のトランジスタ
130 第7のトランジスタ
131 第8のトランジスタ
132 第9のトランジスタ
150 信号処理装置
151 演算装置
152 演算装置
153 記憶回路
154 記憶回路
155 記憶回路
156 制御装置
157 電源制御回路
401 位相反転回路
402 記憶回路
403 記憶回路群
421 RF回路
422 アナログベースバンド回路
423 デジタルベースバンド回路
424 バッテリー
425 電源回路
426 アプリケーションプロセッサ
427 CPU
428 DSP
429 インターフェース
430 フラッシュメモリ
431 ディスプレイコントローラ
432 記憶回路
433 ディスプレイ
434 表示部
435 ソースドライバ
436 ゲートドライバ
437 音声回路
438 キーボード
439 タッチセンサ
441 メモリコントローラ
442 記憶回路
443 記憶回路
444 スイッチ
445 スイッチ
451 バッテリー
452 電源回路
453 マイクロプロセッサ
454 フラッシュメモリ
455 音声回路
456 キーボード
457 記憶回路
458 タッチパネル
459 ディスプレイ
460 ディスプレイコントローラ
700 基板
701 絶縁膜
702 半導体膜
703 ゲート絶縁膜
704 半導体層
707 ゲート電極
709 不純物領域
710 チャネル形成領域
712 絶縁膜
713 絶縁膜
716 酸化物半導体層
719 導電膜
720 導電膜
721 ゲート絶縁膜
722 ゲート電極
723 導電膜
724 絶縁膜
725 開口部
726 配線
727 絶縁膜
901 トランジスタ
902 絶縁膜
903 酸化物半導体層
904 ソース電極
905 ドレイン電極
906 ゲート絶縁膜
907 ゲート電極
908 高濃度領域
909 チャネル形成領域
911 トランジスタ
912 絶縁膜
913 酸化物半導体層
914 ソース電極
915 ドレイン電極
916 ゲート絶縁膜
917 ゲート電極
918 高濃度領域
919 チャネル形成領域
921 トランジスタ
922 絶縁膜
923 酸化物半導体層
924 ソース電極
925 ドレイン電極
926 ゲート絶縁膜
927 ゲート電極
928 高濃度領域
929 低濃度領域
930 サイドウォール
931 チャネル形成領域
941 トランジスタ
942 絶縁膜
943 酸化物半導体層
944 ソース電極
945 ドレイン電極
946 ゲート絶縁膜
947 ゲート電極
948 高濃度領域
949 低濃度領域
950 サイドウォール
951 チャネル形成領域
3000 基板
3001 トランジスタ
3004 論理回路
3106 素子分離絶縁膜
3303 電極
3503 電極
3505 電極
3003a 電極
3003b 電極
3003c 電極
3100a 配線
3100b 配線
3100c 配線
3100d 配線
3140a 絶縁膜
3140b 絶縁膜
3141a 絶縁膜
3141b 絶縁膜
3142a 絶縁膜
3142b 絶縁膜
3170a 記憶素子
3170b 記憶素子
3171a トランジスタ
3171b トランジスタ
3501a 電極
3501b 電極
3501c 電極
3502a 電極
3502b 電極
3502c 電極
3503a 電極
3503b 電極
9900 基板
9901 ALU
9902 ALU・Controller
9903 Instruction・Decoder
9904 Interrupt・Controller
9905 Timing・Controller
9906 Register
9907 Register・Controller
9908 Bus・I/F
9909 ROM
9920 ROM・I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性記憶部と、不揮発性記憶部を有し、
前記不揮発性記憶部は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成される第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方の電極がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方と、前記第2のトランジスタのゲートとの間には、前記揮発性記憶部を非動作とする際に、前記揮発性記憶部より出力されたデータ信号が保持され、
前記第1のトランジスタのゲートと電源電位を供給する配線との間には、前記第1のトランジスタのゲートに印加する電圧を高くするための昇圧回路が設けられている信号処理装置の記憶回路。
【請求項2】
揮発性記憶部と、不揮発性記憶部を有し、
前記不揮発性記憶部は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成される第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方の電極がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの他方の電極がソースまたはドレインの一方の電極に電気的に接続され、書き込み制御信号により導通状態または非導通状態が制御される第3のトランジスタと、前記第1のトランジスタのゲートを電気的に浮遊状態とするための制御をする第4のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方と、前記第2のトランジスタのゲートとの間には、前記揮発性記憶部を非動作とする際に、前記揮発性記憶部より出力されたデータ信号が保持され、
前記第1のトランジスタのゲートと電源電位を供給する配線との間には、前記第1のトランジスタのゲートに印加する電圧を高くするための昇圧回路が設けられている信号処理装置の記憶回路。
【請求項3】
揮発性記憶部と、不揮発性記憶部を有し、
前記不揮発性記憶部は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成される第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方の電極がゲートに電気的に接続された第2のトランジスタと、前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの他方の電極がソースまたはドレインの一方の電極に電気的に接続され、書き込み制御信号により導通状態または非導通状態が制御される第3のトランジスタと、前記第1のトランジスタのゲートを電気的に浮遊状態とするための制御をする第4のトランジスタと、を有し、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方と、前記第2のトランジスタのゲートとの間には、前記揮発性記憶部を非動作とする際に、前記揮発性回路より出力されたデータ信号が保持され、
前記データ信号の保持は、前記データ信号の論理を反転する第1の位相反転回路を介して行われ、前記データ信号の出力は、前記保持されたデータ信号の論理を反転する第2の位相反転回路を介して行われ、
前記第1のトランジスタのゲートと電源電位を供給する配線との間には、前記第1のトランジスタのゲートに印加する電圧を高くするための昇圧回路が設けられている信号処理装置の記憶回路。
【請求項4】
請求項3において、前記第1の位相反転回路及び前記第2の位相反転回路は、pチャネル型トランジスタ及びnチャネル型トランジスタを有する信号処理装置の記憶回路。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、前記第2のトランジスタは、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタである信号処理装置の記憶回路。
【請求項6】
請求項5において、前記第2のトランジスタは、前記第1のトランジスタと積層して設けられる信号処理装置の記憶回路。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか一において、前記昇圧回路は、ゲートとソース及びドレインの一方とが電気的に接続された昇圧用トランジスタを有し、前記昇圧用トランジスタと前記第4のトランジスタとにより前記第1のトランジスタのゲートを電気的に浮遊状態としてブートストラップ法による昇圧を行う信号処理装置の記憶回路。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の前記記憶装置と、前記記憶装置とデータのやり取りを行う演算装置とを有する信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−257192(P2012−257192A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−11623(P2012−11623)
【出願日】平成24年1月24日(2012.1.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】