説明

車両用パワートレーン

【課題】少なくとも二つの駆動源4,6とツインクラッチ式自動変速機7とを含む車両用パワートレーンにおいて、ツインクラッチ式自動変速機7に備える二つのクラッチ21,22の掛け替え動作を係合ショック無しに可及的迅速に行えるような構成とする。
【解決手段】必要に応じて奇数段クラッチ21および偶数段クラッチ22が掛け替え制御されることにより、一方の駆動源6の回転動力を奇数段クラッチ22および奇数グループの変速ギヤ列31,33を経て変速機出力軸3に伝達する奇数段用の動力伝達経路と、他方の駆動源4の回転動力を偶数段クラッチ22および偶数グループの変速ギヤ列32,34を経て変速機出力軸3に伝達する偶数段用の動力伝達経路との一方が形成されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも二つの駆動源と、ツインクラッチ式自動変速機とを含む車両用パワートレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単一の駆動源とツインクラッチ式自動変速機とを備えた車両が知られている(例えば特許文献1〜3参照。)。
【0003】
この車両では、単一の駆動源からの回転動力を、ツインクラッチ式自動変速機における二つの入力軸のいずれか一方に選択的に入力させるようになっている。前記の駆動源としては、例えばエンジン、あるいは電動機等が挙げられる。
【0004】
ツインクラッチ式自動変速機は、駆動源とそれぞれ摩擦クラッチ(以下、単にクラッチという)を介して連結可能とされた二本の変速機入力軸と、奇数段用の変速機入力軸に設けられる奇数グループの変速ギヤ列のドライブギヤ群と、偶数段用の変速機入力軸に設けられる偶数グループの変速ギヤ列のドライブギヤ群と、すべての変速ギヤ列のドリブンギヤが設けられる単一の変速機出力軸とを備えた構成である。
【0005】
このようなツインクラッチ式自動変速機を用いる場合の変速動作としては、例えば奇数段用の動力伝達経路で動力伝達を行っているときに、次目標となる偶数グループの変速ギヤ列のドライブギヤを偶数段用の変速機入力軸に回転一体状態にして待機しておき、適宜の変速ポイントで二つのクラッチを掛け替えることにより、奇数段用の動力伝達経路による動力伝達を遮断して、偶数段用の動力伝達経路で動力伝達を行わせるように切り替えるようになっている。
【0006】
このように、ツインクラッチ式自動変速機を用いる場合、いわゆるプリシフト制御を行っておいて二つのクラッチの掛け替えを行うようにしているので、シングルクラッチ式変速機に比べて、素早く変速することが可能になっている。
【0007】
特許文献1の技術では、変速時における二つのクラッチの掛け替え方法について、クラッチ・ツウ・クラッチ変速と呼ばれる制御を行うことにより、変速ショックを少なくするようにしたうえで、変速に要する時間を可及的に短くするようにしている。
【0008】
このクラッチ・ツウ・クラッチ変速とは、特許文献1の段落番号(0049〜0053)に示されているように、簡単に言えば、現在係合している一方のクラッチを解放させ、かつ現在の変速ギヤ列と目標の変速ギヤ列との切り替え用のシンクロメッシュ機構のスリーブを中立位置にした後、現在解放していた他方のクラッチを係合させ、かつ前記シンクロメッシュ機構のスリーブを目標の変速ギヤ列に係合させる、といった一連の処理のことである。
【0009】
特許文献2の技術では、変速時における二つのクラッチの掛け替え方法について、当該特許文献2の段落番号(0024〜0029)に示されているように、両方のクラッチをスリップさせながら係合状態と解放状態との切り替えを行うことにより、変速ショックを少なくするようにしたうえで、ツインクラッチ式自動変速機に対する単一の駆動源からの回転動力を途切れにくくさせるようにしている。
【0010】
特許文献3の技術では、当該特許文献3の要約書ならびに明細書第17頁から第19頁に示されているように、ツインクラッチ式自動変速機の第1動力伝達経路の第1クラッチの下流側と第2動力伝達経路の第2クラッチの下流側との間に電動機を挿入し、変速時に、前記電動機でトルク遷移を行ってから前段ギヤを解放し、当該電動機で回転数を同期化してから前記二つのクラッチをスリップさせることなく掛け替えるようにしている。これにより、特許文献3の技術では、二つのクラッチの摩耗を抑制して、滑らかな変速を行うようにしている。
【特許文献1】特開2006−226380号公報
【特許文献2】特開2007−239909号公報
【特許文献3】WO01/066971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来例は、いずれも、駆動源を単一とした構成であり、この単一の駆動源で発生する回転動力を二つのクラッチを介して奇数グループの変速ギヤ列または偶数グループの変速ギヤ列に選択的に伝達させるように構成している。
【0012】
このような構成であるために、変速時において、ツインクラッチ式自動変速機の二つのクラッチを掛け替えるときに、二つのクラッチの係合ショックを低減するための回転数同期制御を行う必要があり、その関係より、二つのクラッチの係合動作と解放動作とを時間的にずらす必要があるために、変速に要する時間を短縮することに限界がある。ここに改良の余地がある。
【0013】
本発明は、少なくとも第1、第2の駆動源とツインクラッチ式自動変速機とを含む車両用パワートレーンにおいて、前記ツインクラッチ式自動変速機に備える二つのクラッチの掛け替え動作を係合ショック無しに可及的迅速に行えるような構成とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、少なくとも二つの駆動源と、ツインクラッチ式自動変速機とを含む車両用パワートレーンであって、必要に応じて前記ツインクラッチ式自動変速機の奇数段クラッチおよび偶数段クラッチが掛け替え制御されることにより、前記一方の駆動源の回転動力を前記奇数段クラッチおよび奇数グループの変速ギヤ列を経て変速機出力軸に伝達する奇数段用の動力伝達経路と、前記他方の駆動源の回転動力を前記ツインクラッチ式自動変速機の偶数段クラッチおよび偶数グループの変速ギヤ列を経て変速機出力軸に伝達する偶数段用の動力伝達経路との一方が形成される、ことを特徴としている。
【0015】
この構成では、二つの動力伝達経路それぞれに駆動源を設けているから、例えば二つの駆動源の各回転数の比と、現在変速段のギヤ比と次目標の変速段のギヤ比との比とが、一致したときに変速することが可能になる。
【0016】
これにより、変速時に一旦二つのクラッチを同時に係合状態にすることが可能になるので、変速に要する時間を従来例に比べて短縮することが可能になり、しかも、前記二つのクラッチを同時に係合状態にしてもイナーシャトルクが発生せずに済むので、係合ショックを無くすことが可能になる。
【0017】
また、本発明は、少なくとも二つの駆動源と、ツインクラッチ式自動変速機とを含む車両用パワートレーンであって、前記ツインクラッチ式自動変速機は、歯数比の異なる複数の変速ギヤ列を有する常時噛み合い式変速機構と、前記一方の駆動源から奇数グループの変速ギヤ列への動力伝達を許容する係合状態または前記動力伝達を遮断する解放状態に切り替えるための奇数段クラッチと、前記他方の駆動源から偶数グループの変速ギヤ列への動力伝達を許容する係合状態または前記動力伝達を遮断する解放状態に切り替えるための偶数段クラッチとを備え、必要に応じて前記奇数段クラッチおよび偶数段クラッチが掛け替え制御されることにより、前記一方の駆動源の回転動力を前記奇数段クラッチおよび前記奇数グループの変速ギヤ列を経て変速機出力軸に伝達する奇数段用の動力伝達経路と、前記他方の駆動源の回転動力を前記偶数段クラッチおよび前記偶数グループの変速ギヤ列を経て変速機出力軸に伝達する偶数段用の動力伝達経路との一方が形成される、ことを特徴としている。
【0018】
この構成では、二つの動力伝達経路それぞれに駆動源を設けているから、例えば二つの駆動源の回転数の比と、現在変速段のギヤ比と次目標の変速段のギヤ比との比とが、一致したときに、変速を行うようにすることが可能になる。
【0019】
これにより、変速時に一旦二つのクラッチを同時に係合状態にすることが可能になるので、変速に要する時間を従来例に比べて短縮することが可能になり、しかも、前記二つのクラッチを同時に係合状態にしてもイナーシャトルクが発生せずに済むので、係合ショックを無くすことが可能になる。
【0020】
好ましくは、上記車両用パワートレーンにおいて、前記奇数グループの各変速ギヤ列は、それぞれ、前記奇数段クラッチの出力側軸部に互いに軸方向隣り合わせとなる状態で相対回転可能に取り付けられるドライブギヤと、前記変速機出力軸に回転一体に設けられるドリブンギヤとを有し、前記偶数グループの各変速ギヤ列は、それぞれ、前記偶数段クラッチの出力側軸部に互いに軸方向隣り合わせとなる状態で相対回転可能に取り付けられるドライブギヤと、前記変速機出力軸に回転一体に設けられるドリブンギヤとを有し、前記常時噛み合い式変速機構は、前記各グループの変速ギヤ列の隣り合う二つのドライブギヤの間に設置されかつ前記いずれか一方のドライブギヤを対応するクラッチの前記出力側軸部に回転一体に連結するための切り替え機構を含む、構成とされる。
【0021】
この構成では、常時噛み合い式変速機構の構成要素を特定して、必要な変速ギヤ列の選択動作を明確にしている。
【0022】
好ましくは、上記車両用パワートレーンは、前記各駆動源により発生する回転動力を独立した経路でかつ必要に応じて同時に前記ツインクラッチ式自動変速機の各クラッチ側へ伝達する状態とするための動力切り替え機構をさらに含む、構成とされる。
【0023】
この構成では、一方の駆動源からツインクラッチ式自動変速機の奇数段クラッチに回転動力を伝達している状態でも、他方の駆動源からツインクラッチ式自動変速機の偶数段クラッチに回転動力を伝達する形態が明確になる。
【0024】
好ましくは、上記車両用パワートレーンにおいて、前記一方の駆動源は、モータ・ジェネレータとされ、前記他方の駆動源は、エンジンおよび前記と別のモータ・ジェネレータの少なくともいずれか一方とされる。
【0025】
この構成では、駆動源の種類を特定している。
【0026】
好ましくは、上記車両用パワートレーンにおいて、前記一方の駆動源は、モータ・ジェネレータとされ、前記他方の駆動源は、エンジンおよび前記と別のモータ・ジェネレータとされ、前記動力切り替え機構は、前記一方の駆動源と前記他方の駆動源との間に介装され、かつサンギヤ、リングギヤ、複数の内径側ピニオンギヤ、複数の外径側ピニオンギヤ、キャリヤを含むダブルピニオン式の遊星歯車機構とされ、前記リングギヤは、前記他方の駆動源としてのエンジンの出力軸に回転一体に連結され、前記サンギヤは、前記一方の駆動源としてのモータ・ジェネレータのロータに回転一体に連結され、前記各内径側ピニオンギヤは、前記サンギヤとリングギヤとの間でサンギヤに噛合するよう配置され、また、前記各外径側ピニオンギヤは、前記サンギヤとリングギヤとの間でリングギヤに噛合するよう配置され、前記各内径側ピニオンギヤが対応する前記各外径側ピニオンギヤに噛合するように配置され、前記キャリヤは、前記各内径側ピニオンギヤと各外径側ピニオンギヤとを円周等間隔にかつ相対位置を保持する状態で自転および公転可能に支持するものとされ、このキャリヤの一端側が前記他方の駆動源としてのモータ・ジェネレータのロータに回転一体に連結され、当該キャリヤの回転支軸が前記一方の駆動源としてのモータ・ジェネレータのロータの内径側に相対回転可能に挿通された状態で前記偶数段クラッチの入力側に連結される。
【0027】
この構成では、駆動源の種類および動力切り替え機構の構成を特定するとともに、各駆動源と動力切り替え機構の各構成要素との連結形態を特定している。
【0028】
好ましくは、上記車両用パワートレーンは、所定の変速条件が成立したときに前記二つのクラッチを掛け替え制御することにより目標となる動力伝達経路を形成するための制御装置をさらに含む、構成とされる。
【0029】
好ましくは、上記車両用パワートレーンにおいて、前記制御装置は、前記いずれか一方の動力伝達経路での動力伝達中に、残り他方の動力伝達経路における解放状態のクラッチを解放したまま、次目標の変速段となる変速ギヤ列のドライブギヤを対応するクラッチの前記出力側軸部に回転一体に連結するプリシフト制御を行う、ものとされる。
【0030】
この構成では、制御装置により行うプリシフト制御の形態を特定している。
【0031】
好ましくは、上記車両用パワートレーンにおいて、前記制御装置は、いずれかの変速段での動力伝達中において所定の変速条件が成立したときに、係合状態にある一方のクラッチを係合したままで解放状態にある他方のクラッチを係合させてから、前記一方のクラッチを解放させる掛け替え制御を行うものとされ、前記奇数段から偶数段へのシフトアップ条件の成立は、奇数段クラッチへの入力回転数と偶数段クラッチへの入力回転数との比が、現在の奇数変速段のギヤ比と次目標の偶数変速段のギヤ比との比と一致した場合とされ、前記偶数段から奇数段へのシフトアップ条件の成立は、奇数段クラッチへの入力回転数と偶数段クラッチへの入力回転数との比が、次目標の奇数変速段のギヤ比と現在の偶数変速段のギヤ比との比と一致した場合とされる、構成とされる。
【0032】
この構成では、制御装置により行う各クラッチの掛け替え制御におけるシフトアップ条件を特定しており、これにより、変速の際に二つのクラッチを同時係合させる状態にしても、変速機出力軸がロックすることがなくなる。このため、上述したように前記二つのクラッチを同時に係合状態にしてもイナーシャトルクが発生せずに済むことが明確になる。
【0033】
好ましくは、上記車両用パワートレーンにおいて、前記制御装置は、奇数変速段で走行する際、前記奇数段クラッチを係合状態、前記偶数段クラッチを解放状態として奇数段用の動力伝達経路を形成するとともに、前記一方の駆動源としてのモータ・ジェネレータを力行駆動させて前記他方の駆動源としてのモータ・ジェネレータを回生発電させることにより動力伝達を行う一方、偶数変速段で走行する際、前記奇数段クラッチを解放状態、前記偶数段クラッチを係合状態として偶数段用の動力伝達経路を形成するとともに、前記他方の駆動源としてのモータ・ジェネレータを力行駆動させて前記一方の駆動源としてのモータ・ジェネレータを回生発電させることにより動力伝達を行い、前記いずれか一方の動力伝達状態において所定の変速条件が成立するまでの間に、次目標の変速ギヤ列のドライブギヤを対応するクラッチの前記出力側軸部に回転一体に連結するプリシフト制御を行う、構成とされる。
【0034】
この構成では、各駆動源の駆動形態と、プリシフト制御の形態を特定しており、これにより、奇数変速段や偶数変速段での走行時において車両駆動に使用しない方のモータ・ジェネレータで発電して、この発電した電力を車両駆動に使用する方のモータ・ジェネレータの作動電力として利用することが可能になる。そのため、例えばバッテリ等に蓄えてある電力を持ち出さなくて済む。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る車両用パワートレーンは、ツインクラッチ式自動変速機に備える二つのクラッチの掛け替え動作を係合ショック無しに可及的迅速に行えるような構成としている。したがって、本発明に係る車両用パワートレーンによれば、変速レスポンスを向上可能としたうえで、変速ショックの発生を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の最良の実施形態について図面を参照し詳細に説明する。図1から図7に本発明の一実施形態を示している。この実施形態では、本発明に係る車両用パワートレーンとして、ハイブリッド車両のパワートレーンを例に挙げている。
【0037】
図1を参照して、ハイブリッド車両のパワートレーンの概略構成を説明する。図中、1はエンジン、2は変速機入力軸、3は変速機出力軸、4は偶数段用のモータ・ジェネレータ、5は動力切り替え機構、6は奇数段用のモータ・ジェネレータ、7はツインクラッチ式自動変速機である。これらの構成要素は、ケーシング8の内部に収納されている。
【0038】
エンジン1は、例えばガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどが適用可能であり、燃料と空気の混合気を気筒内で燃焼させ、その熱エネルギを回転運動エネルギに変換して出力する。このエンジン1の動作は、ENG−ECU100によって制御される。
【0039】
エンジン1のクランクシャフト(出力軸)11の後端には、フライホイール12が配設されている。このフライホイール12には、ダンパ機構13を介して変速機入力軸2が連結されている。
【0040】
変速機入力軸2は、クランクシャフト11と一直線上つまり同軸上に配置された状態で、下記する偶数段用のモータ・ジェネレータ4のロータ4b内に相対回転可能に挿通されている。
【0041】
変速機出力軸3は、例えば図示していないデファレンシャル等を介して駆動輪に連結される。
【0042】
両モータ・ジェネレータ4,6は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼備した同期電動機が用いられている。
【0043】
両モータ・ジェネレータ4,6は、ステータ4a,6aと、ロータ4b,6bとを含む。ステータ4a,6aは、ケーシング8の内壁に固定されている。
【0044】
両モータ・ジェネレータ4,6は、電力の授受を行うことが可能な蓄電装置9にインバータ10を介して接続されている。蓄電装置9は、二次電池、具体的にはバッテリ(ニッケル水素バッテリやリチウムイオンバッテリ等)、キャパシタなどとされる。
【0045】
両モータ・ジェネレータ4,6は、MG−ECU101によってインバータ10を制御することにより、力行および回生並びにそれぞれの場合におけるトルクを制御するように構成されている。
【0046】
なお、偶数段用のモータ・ジェネレータ4は、エンジン1から変速機出力軸3への動力伝達方向の上流側に、また、奇数段用のモータ・ジェネレータ6は、前記動力伝達方向の下流側に配置されている。
【0047】
動力切り替え機構5は、エンジン1、両モータ・ジェネレータ4,6の三つの駆動源により発生する回転動力を独立した経路でかつ必要に応じて同時にツインクラッチ式自動変速機7側へ伝達する状態とするためのものである。
【0048】
この動力切り替え機構5は、主として、サンギヤ51、リングギヤ52、複数の内径側ピニオンギヤ53、複数の外径側ピニオンギヤ54、キャリヤ55を含む、ダブルピニオン式の遊星歯車機構とされている。
【0049】
なお、動力切り替え機構5は、軸方向前後に配置される二つのモータ・ジェネレータ4,6の間、つまり、偶数段用のモータ・ジェネレータ4の下流側で奇数段用のモータ・ジェネレータ6の上流側に配置されている。
【0050】
サンギヤ51は、奇数段用のモータ・ジェネレータ6のロータ6bに回転一体に連結されている。
【0051】
リングギヤ52は、サンギヤ51の外径側に同心状に配置されており、変速機入力軸2を介してエンジン1のクランクシャフト11に回転一体に連結されている。
【0052】
複数の内径側ピニオンギヤ53は、サンギヤ51とリングギヤ52との間でサンギヤ51に噛合するよう配置されており、また、複数の外径側ピニオンギヤ54は、サンギヤ51とリングギヤ52との間でリングギヤ52に噛合するよう配置されている。そして、各内径側ピニオンギヤ53が各外径側ピニオンギヤ54に対応して噛合するように配置されている。
【0053】
キャリヤ55は、複数の内径側ピニオンギヤ53と外径側ピニオンギヤ54とを円周等間隔にかつ相対位置を保持する状態で自転および公転可能に支持するものである。このキャリヤ55の回転軸心方向の一端側には、筒軸57を介して偶数段用のモータ・ジェネレータ4のロータ4bに回転一体に連結されている。また、キャリヤ55の回転軸心には、回転支軸58が回転一体に取り付けられている。この回転支軸58は、奇数段用のモータ・ジェネレータ6のロータ6bの内径側に相対回転可能に挿通されている。
【0054】
ツインクラッチ式自動変速機7は、要するに、二つのクラッチ21,22を常時噛み合い式変速機構23に組み合わせた構成である。
【0055】
奇数段クラッチ21は、奇数グループの変速ギヤ列(1速ギヤ列31や3速ギヤ列33)に奇数段用のモータ・ジェネレータ6で発生する回転動力を必要に応じて伝達するものである。
【0056】
偶数段クラッチ22は、偶数グループの変速ギヤ列(2速ギヤ列32や4速ギヤ列34)に偶数段用のモータ・ジェネレータ4またはエンジン1で発生する回転動力を必要に応じて伝達するものである。
【0057】
これらのクラッチ21,22は、共に、外径側摩擦プレート21a,22aと、内径側摩擦プレート21b,22bとを組み合わせた湿式摩擦構造とされている。いずれも、一対のプレート21a,22a,21b,22bを圧接させることにより係合状態とされ、また、離隔させることにより解放状態とされる。
【0058】
奇数段クラッチ21の外径側摩擦プレート21aの回転中心は、奇数段用のモータ・ジェネレータ6のロータ6bの動力伝達方向下流側に回転一体に連結されている。また、奇数段クラッチ21の内径側摩擦プレート21bの回転中心は、奇数グループの変速ギヤ列31,33に回転動力を入力するための奇数段回転軸37に回転一体に取り付けられている。
【0059】
偶数段クラッチ22の外径側摩擦プレート22aの回転中心は、動力切り替え機構5のキャリヤ55の回転支軸58の動力伝達方向下流側に回転一体に連結されている。また、偶数段クラッチ22の内径側摩擦プレート22bの回転中心は、偶数グループの変速ギヤ列32,34に回転動力を入力するための偶数段回転軸38に回転一体に取り付けられている。
【0060】
なお、前記の奇数段回転軸37および偶数段回転軸38が請求項に記載のクラッチの出力側軸部に相当している。
【0061】
常時噛み合い式変速機構23は、この実施形態において説明を簡単にするために、例えば歯数比の異なる複数の変速ギヤ列により前進4速としており、図1から図3に示すように、主として、1速ギヤ列31、2速ギヤ列32、3速ギヤ列33、4速ギヤ列34、1−3速切り替え用のシンクロメッシュ機構35、2−4速切り替え用のシンクロメッシュ機構36とを備えている。
【0062】
1〜4速ギヤ列31〜34は、それぞれドライブギヤ31a〜34aとドリブンギヤ31b〜34bとを外接噛合させるように組み合わせた構成とされている。
【0063】
奇数グループの変速ギヤ列つまり1速ギヤ列31および3速ギヤ列33のドライブギヤ31a,33aは、奇数段回転軸37に転がり軸受(図示省略)等を介して相対回転可能となる状態で軸方向隣り合わせに取り付けられている。
【0064】
偶数グループの変速ギヤ列つまり2速ギヤ列32および4速ギヤ列34のドライブギヤ32a,34aは、偶数段回転軸38に転がり軸受(図示省略)等を介して相対回転可能となる状態で軸方向隣り合わせに取り付けられている。
【0065】
このように、奇数段回転軸37に取り付けられる1速ドライブギヤ31aおよび3速ドライブギヤ33aと、偶数段回転軸38に取り付けられる2速ドライブギヤ32aおよび4速ドライブギヤ34aとを、それぞれの回転軸心を同軸にして軸方向隣り合わせに配置するために、奇数段回転軸37を中空形状とするとともに偶数段回転軸38を中実とし、奇数段回転軸37の内径側に偶数段回転軸38を同心状かつ相対回転可能に挿通するようにしている。
【0066】
一方、すべての変速ギヤ列31〜34のドリブンギヤ31b〜34bは、単一の変速機出力軸3の外径側に軸方向隣り合わせに回転一体に取り付けられている。
【0067】
そして、1−3速切り替え用のシンクロメッシュ機構35は、1速ギヤ列31のドライブギヤ31aと3速ギヤ列33のドライブギヤ33aとの間に配置されており、1速側ポジションと3速側ポジションとニュートラルポジション(中立位置)とのいずれか一つを選択するものである。
【0068】
そして、2−4速切り替え用のシンクロメッシュ機構36は、2速ギヤ列32のドライブギヤ32aと4速ギヤ列34のドライブギヤ34aとの間に配置されており、2速側ポジションと4速側ポジションとニュートラルポジション(中立位置)とのいずれか一つを選択するものである。
【0069】
これら二つのシンクロメッシュ機構35,36は、共に同じ構成であって公知の構成とされるので、ここでは図示や説明を簡単にしている。
【0070】
シンクロメッシュ機構35,36は、例えば図4に示すように、主として、シンクロハブ41と、ハブスリーブ42と、第1シンクロナイザーリング43と、第2シンクロナイザーリング44と、第1シンクロナイザーコーン45と、第2シンクロナイザーコーン46とを含む。
【0071】
1−3速切り替え用シンクロメッシュ機構35のシンクロハブ41は、奇数段回転軸37の外径側にスプライン嵌合などにより一体回転可能にかつ軸方向に位置決めされた状態で取り付けられており、また、2−4切り替え用シンクロメッシュ機構36のシンクロハブ41は、偶数段回転軸38の外径側にスプライン嵌合などにより一体回転可能にかつ軸方向に位置決めされた状態で取り付けられている。
【0072】
各ハブスリーブ42の外周溝には、各シフトフォーク47が対応して係合されており、各シフトフォーク47でもって各ハブスリーブ42を個別に軸方向にスライドさせることによって要求される変速段を成立するようになっている。
【0073】
このようなツインクラッチ式自動変速機7において、二つのクラッチ21,22の各係合、解放動作、ならびに二つのシンクロメッシュ機構35,36の各変速動作は、駆動ユニット24を介してMG−ECU101により制御される。
【0074】
駆動ユニット24は、図1に示すように、主として、二つのクラッチ21,22を個別に係合、解放させるためのアクチュエータ61,62と、二つのシンクロメッシュ機構35,36の各シフトフォーク47を個別にスライドさせるためのシフトアクチュエータ63,64と、すべてのアクチュエータ61〜64に対して必要な作動油圧を給排する油圧制御回路65とを備えている。
【0075】
なお、これらのアクチュエータ61〜64は、この実施形態では油圧駆動式とされているが、電動式とすることも可能であり、その場合には、油圧制御回路65を電気回路とする必要がある。
【0076】
油圧制御回路65は、図示していないオイルポンプを駆動源とし、当該オイルポンプからの吐出油に基づいてライン圧に調圧するとともに、その調圧した油圧を前記の各アクチュエータ61〜64に必要な作動油圧にして付与する他、ケーシング8内において潤滑、冷却が必要な箇所へオイルを供給するものである。
【0077】
この油圧制御回路65は、従来の自動変速機等に用いる公知のものと同様であるが、図示せずに簡単に説明すると、複数のソレノイドバルブや切換バルブまたは調圧バルブを含んで構成されており、MG−ECU101によって調圧や油圧の給排動作が制御されるようになっている。前記の調圧バルブは、吐出量を増大させてライン圧を高くし、これとは反対に吐出量を減じてライン圧を低くする二つの状態にライン圧を制御するように構成されている。
【0078】
ENG−ECU100およびMG−ECU101は、いずれも、CPU、ROM、RAMおよびバックアップRAM等を含む、一般的に公知のECU(Electronic Control Unit)とされており、それぞれ互いに必要な情報を双方向で送受可能になっている。
【0079】
例えば、MG−ECU101がハイブリッド車両のパワートレーンを統括的に制御するものとされ、必要に応じてENG−ECU100と協調することにより、エンジン1の起動要求、加速要求、制動要求や、両モータ・ジェネレータ4,6の作動状態、車速、エンジン回転数などの各種情報に基づいて、エンジン1、両モータ・ジェネレータ4,6ならびにツインクラッチ式自動変速機7などを適宜に制御する。
【0080】
特に、ツインクラッチ式自動変速機7の変速制御については、車速や要求駆動力などの走行状態に基づいてMG−ECU101により行われるが、その概要について以下で説明する。
【0081】
MG−ECU101は、図示していないが、車速センサ、アクセル開度センサ、レンジポジションセンサや、その他のセンサ・スイッチからの各種情報を入力し、必要に応じてクラッチ締結指令や、変速段選択指令などを駆動ユニット24の油圧制御回路65に与える。
【0082】
このツインクラッチ式自動変速機7では、二つのクラッチ21,22の掛け替え動作に先立ち、解放状態にあるクラッチ(21,22)に対応する変速ギヤ列(31〜34)の中から次に必要となる変速ギヤ列を推定して、対応するシンクロメッシュ機構(35,36)を作動させることによって前記推定した変速ギヤ列のドライブギヤを、対応する回転軸(37,38)に回転一体に連結させた状態で待機しておく(プリシフト制御)。
【0083】
これにより、次の変速指令を受けてから、前記解放状態にあるクラッチ(21,22)を係合させてから、前記係合状態にあるクラッチ(21,22)を解放させる。このようなクラッチ21,22の掛け替えを行うようにしているから、可及的迅速な変速が可能になるとともに、トルクの伝達の途切れ無いようにすることが可能になる。
【0084】
次に、上述した構成の車両用パワートレーンの動作について、図1から図3、図5から図7を参照して説明する。
【0085】
まず、シフトレバーなどによってニュートラルレンジNやパーキングレンジPが選択されたときには、二つのクラッチ21,22を共に解放状態にしておき、二つのシンクロメッシュ機構35,36の各ハブスリーブ42を共にニュートラルポジションとすることにより、ツインクラッチ式自動変速機7に回転動力を入力させない切断状態とする。
【0086】
ここで、例えばドライブレンジDが選択されて前進走行する場合、例えば図5に示すように、エンジン1を始動させて、その回転動力で偶数段用のモータ・ジェネレータ4を回生発電させ、この偶数段用のモータ・ジェネレータ4で発生した電力で奇数段用のモータ・ジェネレータ6を正転力行駆動させる。そして、1−3速切り替え用のシンクロメッシュ機構35で1速ドライブギヤ31aを奇数段回転軸37に回転一体に連結してから、奇数段クラッチ21を係合させる。
【0087】
これにより、奇数段用のモータ・ジェネレータ6の回転動力が奇数段クラッチ21→奇数段回転軸37→1速ドライブギヤ31a→1速ドリブンギヤ31b→変速機出力軸3を経て図示していないデファレンシャルに出力される。
【0088】
この1速加速中に、次の変速に対する待機処理、つまりプリシフト制御を行う。つまり、現在解放状態にある偶数段クラッチ22を解放したまま、2−4速切り替え用のシンクロメッシュ機構36で2速ドライブギヤ32aを偶数段回転軸38に回転一体に連結する。この待機状態では、偶数段クラッチ22が解放されている関係より、偶数段用のモータ・ジェネレータ4の回転に伴う動力切り替え機構5のキャリヤ55の回転が偶数段回転軸38に伝達されないので、シンクロメッシュ機構36による切り替え動作が円滑に行えるのである。
【0089】
ここで、所定のシフトアップ条件が成立すると、現在解放状態にある偶数段クラッチ22を係合状態にしてから、現在係合状態にある奇数段クラッチ21を解放状態にする。これにより、偶数段用のモータ・ジェネレータ4の回転動力が偶数段クラッチ22→偶数段回転軸38→2速ドライブギヤ32a→2速ドリブンギヤ32b→変速機出力軸3を経て図示していないデファレンシャルに出力される。
【0090】
前記シフトアップ条件とは、図6に示す奇数段用のモータ・ジェネレータ6の回転数N1と偶数段用のモータ・ジェネレータ4の回転数N2との比と、奇数段クラッチ21への入力回転数N3と偶数段クラッチ22への入力回転数N4との比と、1速ギヤ列31のギヤ比G1と2速ギヤ列32のギヤ比G2の比とが一致することとする。
【0091】
つまり、シフトアップ条件の有無判定は、N1/N2=N3/N4=G1/G2が成立したか否かを調べ、この式が成立したときにシフトアップ条件が成立したと判定するようにしているのである。
【0092】
このシフトアップ条件により、奇数段クラッチ21と偶数段クラッチ22とを同時に係合状態にしても、当該両クラッチ21,22の出力回転数が同期するので、イナーシャトルクが発生せずに済む。したがって、1速から2速への変速ショックが発生せずに済むのである。
【0093】
この2速加速中に、次の変速に対する待機処理、つまりプリシフト制御を行う。つまり、現在解放状態にある奇数段クラッチ21を解放したまま、1−3速切り替え用のシンクロメッシュ機構35で3速ドライブギヤ33aを奇数段回転軸37に回転一体に連結する。この待機状態では、奇数段クラッチ21が解放されている関係より、奇数段用のモータ・ジェネレータ6の回転に伴う動力切り替え機構5のキャリヤ55の回転が奇数段回転軸37に伝達されないので、シンクロメッシュ機構35による切り替え動作が円滑に行えるのである。
【0094】
ここで、所定のシフトアップ条件が成立すると、現在解放状態にある奇数段クラッチ21を係合状態にしてから、現在係合状態にある偶数段クラッチ22を解放状態にする。これにより、奇数段用のモータ・ジェネレータ6の回転動力が奇数段クラッチ21→奇数段回転軸37→3速ドライブギヤ33a→3速ドリブンギヤ33b→変速機出力軸3を経て図示していないデファレンシャルに出力される。
【0095】
前記シフトアップ条件とは、図7に示す奇数段用のモータ・ジェネレータ6の回転数N1と偶数段用のモータ・ジェネレータ4の回転数N2との比と、奇数段クラッチ21に対する入力回転数N3と偶数段クラッチ22に対する入力回転数N4と、3速ギヤ列33のギヤ比G3と2速ギヤ列32のギヤ比G2とがそれぞれ一致することとする。
【0096】
つまり、シフトアップ条件の有無判定は、N1/N2=N3/N4=G3/G2が成立したか否かを調べ、この式が成立したときにシフトアップ条件が成立したと判定するようにしているのである。
【0097】
このシフトアップ条件により、奇数段クラッチ21と偶数段クラッチ22とを同時に係合状態にしても、当該両クラッチ21,22の出力回転数が同期するので、イナーシャトルクが発生せずに済む。したがって、2速から3速への変速ショックが発生せずに済むのである。
【0098】
そして、3速から4速への切り替えについても上記1速から2速への変速動作と基本的に同様とするが、そのときのシフトアップ条件については、奇数段用のモータ・ジェネレータ6の回転数N1と偶数段用のモータ・ジェネレータ4の回転数N2との比と、奇数段クラッチ21への入力回転数N3と偶数段クラッチ22への入力回転数N4との比と、3速ギヤ列33のギヤ比G3と4速ギヤ列34のギヤ比G4の比とが一致することとする。なお、図5から図7の速度線図では、わかり易くするために、エンジン1の回転数を一定にしている。
【0099】
ところで、ダウンシフトの場合においては、上記アップシフトとは逆の制御を行う。例えば4速での走行中に、3速ギヤ列33のドライブギヤ33aを奇数段回転軸37に回転一体に連結するプリシフト制御を行っておき、所定のシフトダウン条件が成立したときに、クラッチ21,22の掛け替え制御を行うことにより、4速から3速へシフトダウンするのである。
【0100】
以上説明したように、本発明の特徴を適用した実施形態では、奇数段用と偶数段用との二つの動力伝達経路それぞれに駆動源としてのモータ・ジェネレータ4,6を設置しているから、例えば二つのクラッチ21,22の各入力回転数の比と、現在変速段のギヤ比と次目標の変速段のギヤ比との比とが、一致したときに変速することが可能になる。
【0101】
これにより、変速時に一旦二つのクラッチ21,22を同時に係合状態にすることが可能になるので、変速に要する時間を従来例に比べて短縮することが可能になり、しかも、前記二つのクラッチ21,22を同時に係合状態にしてもイナーシャトルクが発生しないので、係合ショックを無くすことが可能になる。したがって、本発明に係るパワートレーンによれば、変速レスポンスを可及的に向上したうえで、変速ショックの発生を防止することができる。
【0102】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲で包含されるすべての変形や応用が可能である。以下で例を挙げる。
【0103】
(1)上記実施形態において、二つのクラッチ21,22は、油圧作動式の他に、電磁式クラッチ、噛み合い式クラッチなどを用いることが可能である。
【0104】
(2)上記実施形態では、ツインクラッチ式自動変速機7を説明簡略化のために前進4速タイプとして例示したが、その変速段数については任意である。要するに、奇数番目の変速ギヤ列を奇数グループとし、偶数番目の変速ギヤ列を偶数グループとして振り分けるようにすればよい。
【0105】
(3)上記実施形態では、偶数段用の駆動源をエンジン1およびモータ・ジェネレータ4とし、奇数段用の駆動源を単一のモータ・ジェネレータ6とした例を挙げているが、偶数段用の駆動源をエンジン1または偶数段用のモータ・ジェネレータ4のいずれか一方のみとすることも可能である。
【0106】
(4)上記実施形態では、動力切り替え機構5をダブルピニオン式の遊星歯車機構とした例を挙げているが、それと同様の機能を有する構成であれば、特に限定されるものではない。
【0107】
(5)上記実施形態では、ENG−ECU100とMG−ECU101とを別々に設けているが、それらは単一の総括制御装置として構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係る車両用パワートレーンの一実施形態としてのハイブリッド車両用パワートレーンの概略構成を示すスケルトン図であり、1速ギヤを選択して2速ギヤをプリシフトしている状態を示している。
【図2】図1に示すツインクラッチ式自動変速機のみを拡大した図で、2速ギヤを選択して3速ギヤをプリシフトしている状態を示している。
【図3】図1に示すツインクラッチ式自動変速機のみを拡大した図で、3変ギヤを選択して4速ギヤをプリシフトしている状態を示している。
【図4】図1に示す二つの切り替え用シンクロメッシュ機構の概略構成を示す図である。
【図5】図1に示す動力切り替え機構において1速ギヤによる発進加速時の速度線図である。
【図6】図1に示す動力切り替え機構において1速ギヤから2速ギヤへの変速条件が成立したときの速度線図である。
【図7】図1に示す動力切り替え機構において2速ギヤから3速ギヤへの変速条件が成立したときの速度線図である。
【符号の説明】
【0109】
1 エンジン
2 変速機入力軸
3 変速機出力軸
4 偶数段用のモータ・ジェネレータ
5 動力切り替え機構
6 奇数段用のモータ・ジェネレータ
7 ツインクラッチ式自動変速機
21 奇数段クラッチ
22 偶数段クラッチ
23 常時噛み合い式変速機構
37 奇数段回転軸
38 偶数段回転軸
31 1速ギヤ列
31a 1速ドライブギヤ
31b 1速ドリブンギヤ
32 2速ギヤ列
32a 2速ドライブギヤ
32b 2速ドリブンギヤ
33 3速ギヤ列
33a 3速ドライブギヤ
33b 3速ドリブンギヤ
34 4速ギヤ列
34a 4速ドライブギヤ
34b 4速ドリブンギヤ
35 1−3切り替え用のシンクロメッシュ機構
36 2−4切り替え用のシンクロメッシュ機構
61 奇数段クラッチの作動用アクチュエータ
62 偶数段クラッチの作動用アクチュエータ
63 シフトアクチュエータ
64 シフトアクチュエータ
100 ENG−ECU
101 MG−ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの駆動源と、ツインクラッチ式自動変速機とを含む車両用パワートレーンであって、
必要に応じて前記ツインクラッチ式自動変速機の奇数段クラッチおよび偶数段クラッチが掛け替え制御されることにより、前記一方の駆動源の回転動力を前記奇数段クラッチおよび奇数グループの変速ギヤ列を経て変速機出力軸に伝達する奇数段用の動力伝達経路と、前記他方の駆動源の回転動力を前記ツインクラッチ式自動変速機の偶数段クラッチおよび偶数グループの変速ギヤ列を経て変速機出力軸に伝達する偶数段用の動力伝達経路との一方が形成される、ことを特徴とする車両用パワートレーン。
【請求項2】
少なくとも二つの駆動源と、ツインクラッチ式自動変速機とを含む車両用パワートレーンであって、
前記ツインクラッチ式自動変速機は、歯数比の異なる複数の変速ギヤ列を有する常時噛み合い式変速機構と、前記一方の駆動源から奇数グループの変速ギヤ列への動力伝達を許容する係合状態または前記動力伝達を遮断する解放状態に切り替えるための奇数段クラッチと、前記他方の駆動源から偶数グループの変速ギヤ列への動力伝達を許容する係合状態または前記動力伝達を遮断する解放状態に切り替えるための偶数段クラッチとを備え、
必要に応じて前記奇数段クラッチおよび偶数段クラッチが掛け替え制御されることにより、前記一方の駆動源の回転動力を前記奇数段クラッチおよび前記奇数グループの変速ギヤ列を経て変速機出力軸に伝達する奇数段用の動力伝達経路と、前記他方の駆動源の回転動力を前記偶数段クラッチおよび前記偶数グループの変速ギヤ列を経て変速機出力軸に伝達する偶数段用の動力伝達経路との一方が形成される、ことを特徴とする車両用パワートレーン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用パワートレーンにおいて、
前記奇数グループの各変速ギヤ列は、それぞれ、前記奇数段クラッチの出力側軸部に互いに軸方向隣り合わせとなる状態で相対回転可能に取り付けられるドライブギヤと、前記変速機出力軸に回転一体に設けられるドリブンギヤとを有し、
前記偶数グループの各変速ギヤ列は、それぞれ、前記偶数段クラッチの出力側軸部に互いに軸方向隣り合わせとなる状態で相対回転可能に取り付けられるドライブギヤと、前記変速機出力軸に回転一体に設けられるドリブンギヤとを有し、
前記常時噛み合い式変速機構は、前記各グループの変速ギヤ列の隣り合う二つのドライブギヤの間に設置されかつ前記いずれか一方のドライブギヤを対応するクラッチの前記出力側軸部に回転一体に連結するための切り替え機構を含む、ことを特徴とする車両用パワートレーン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両用パワートレーンにおいて、
前記各駆動源により発生する回転動力を独立した経路でかつ必要に応じて同時に前記ツインクラッチ式自動変速機の各クラッチ側へ伝達する状態とするための動力切り替え機構をさらに含む、ことを特徴とする車両用パワートレーン。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の車両用パワートレーンにおいて、
前記一方の駆動源は、モータ・ジェネレータとされ、前記他方の駆動源は、エンジンおよび前記と別のモータ・ジェネレータの少なくともいずれか一方とされる、ことを特徴とする車両用パワートレーン。
【請求項6】
請求項4に記載の車両用パワートレーンにおいて、
前記一方の駆動源は、モータ・ジェネレータとされ、前記他方の駆動源は、エンジンおよび前記と別のモータ・ジェネレータとされ、
前記動力切り替え機構は、前記一方の駆動源と前記他方の駆動源との間に介装され、かつサンギヤ、リングギヤ、複数の内径側ピニオンギヤ、複数の外径側ピニオンギヤ、キャリヤを含むダブルピニオン式の遊星歯車機構とされ、
前記リングギヤは、前記他方の駆動源としてのエンジンの出力軸に回転一体に連結され、前記サンギヤは、前記一方の駆動源としてのモータ・ジェネレータのロータに回転一体に連結され、
前記各内径側ピニオンギヤは、前記サンギヤとリングギヤとの間でサンギヤに噛合するよう配置され、また、前記各外径側ピニオンギヤは、前記サンギヤとリングギヤとの間でリングギヤに噛合するよう配置され、前記各内径側ピニオンギヤが対応する前記各外径側ピニオンギヤに噛合するように配置され、
前記キャリヤは、前記各内径側ピニオンギヤと各外径側ピニオンギヤとを円周等間隔にかつ相対位置を保持する状態で自転および公転可能に支持するものとされ、このキャリヤの一端側が前記他方の駆動源としてのモータ・ジェネレータのロータに回転一体に連結され、当該キャリヤの回転支軸が前記一方の駆動源としてのモータ・ジェネレータのロータの内径側に相対回転可能に挿通された状態で前記偶数段クラッチの入力側に連結される、ことを特徴とする車両用パワートレーン。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の車両用パワートレーンにおいて、
所定の変速条件が成立したときに前記二つのクラッチを掛け替え制御することにより目標となる動力伝達経路を形成するための制御装置をさらに含む、ことを特徴とする車両用パワートレーン。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用パワートレーンにおいて、
前記制御装置は、前記いずれか一方の動力伝達経路での動力伝達中に、残り他方の動力伝達経路における解放状態のクラッチを解放したまま、次目標の変速段となる変速ギヤ列のドライブギヤを対応するクラッチの前記出力側軸部に回転一体に連結するプリシフト制御を行う、ことを特徴とする車両用パワートレーン。
【請求項9】
請求項7または8に記載の車両用パワートレーンにおいて、
前記制御装置は、いずれかの変速段での動力伝達中において所定の変速条件が成立したときに、係合状態にある一方のクラッチを係合したままで解放状態にある他方のクラッチを係合させてから、前記一方のクラッチを解放させる掛け替え制御を行うものとされ、
前記奇数段から偶数段へのシフトアップ条件の成立は、奇数段クラッチへの入力回転数と偶数段クラッチへの入力回転数との比が、現在の奇数変速段のギヤ比と次目標の偶数変速段のギヤ比との比と一致した場合とされ、
前記偶数段から奇数段へのシフトアップ条件の成立は、奇数段クラッチへの入力回転数と偶数段クラッチへの入力回転数との比が、次目標の奇数変速段のギヤ比と現在の偶数変速段のギヤ比との比と一致した場合とされる、ことを特徴とする車両用パワートレーン。
【請求項10】
請求項6に記載の車両用パワートレーンにおいて、
前記制御装置は、奇数変速段で走行する際、前記奇数段クラッチを係合状態、前記偶数段クラッチを解放状態として奇数段用の動力伝達経路を形成するとともに、前記一方の駆動源としてのモータ・ジェネレータを力行駆動させて前記他方の駆動源としてのモータ・ジェネレータを回生発電させることにより動力伝達を行う一方、
偶数変速段で走行する際、前記奇数段クラッチを解放状態、前記偶数段クラッチを係合状態として偶数段用の動力伝達経路を形成するとともに、前記他方の駆動源としてのモータ・ジェネレータを力行駆動させて前記一方の駆動源としてのモータ・ジェネレータを回生発電させることにより動力伝達を行い、
前記いずれか一方の動力伝達状態において所定の変速条件が成立するまでの間に、次目標の変速ギヤ列のドライブギヤを対応するクラッチの前記出力側軸部に回転一体に連結するプリシフト制御を行う、ことを特徴とする車両用パワートレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−184433(P2009−184433A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24193(P2008−24193)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】