説明

車載機器制御装置

【課題】 安全性を確保しつつ運転者以外の乗員の利便性を向上させる。
【解決手段】 自車両が走行中(102が肯定)の場合、運転者の顔が車両の前方を向いているか否かの判定結果を表す運転者正面視フラグを取り込むと共に、助手席に着座している乗員の有無を検出した結果を取り込み(104,106)、運転者の顔が車両の前方を向いていない場合(108の判定が肯定)及び運転者の顔は車両の前方を向いているものの助手席に乗員がいない場合(110が肯定)は、ナビゲーション装置に対する乗員の操作を受け付けない操作受付禁止状態へ遷移させ(112)、運転者の顔が車両の前方を向いており助手席に乗員がいる場合(110が否定)は、ナビゲーション装置に対する乗員の操作を受け付ける操作受付状態へ遷移させる(114)ことで、助手席の乗員によるナビゲーション装置の操作を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載機器制御装置に係り、特に、車両に搭載され該車両の運転席から見て前記車両の前方とは異なる方向に配置された表示手段に情報を表示する車載機器を制御する車載機器制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のナビゲーションシステムは、衛星等を利用して自車両の位置を検出すると共に、更に自車両の現在位置から目的地に至る複数の経路を評価して最適な経路を選択し、自車両の現在位置及び選択した経路を地図上で明示する画像をディスプレイに表示させるものであり、この画像を車両の運転者等の乗員が参照することで、自車両の現在位置を把握できると共に、表示された経路に沿って車両を走行させることで自車両を確実に目的地に到達させることができる。
【0003】
ところで、ナビゲーションシステムに対する操作はラジオ等の他の車載機器に対する操作と比較して複雑である(例えば目的地を設定するための操作等)ことから、運転者の注意が散漫となることを防止して安全性を確保するために、車両に搭載されるナビゲーションシステムは、車両が停止しているときにのみ操作を受け付けるように構成されている。しかし、上記構成では運転者以外の乗員であっても車両の走行中にナビゲーションシステムを操作することができないので、利便性が低いという問題がある。
【0004】
上記に関連して特許文献1には、運転席及び助手席から操作可能な位置に存在している操作部へ伸ばされた乗員の手を赤外線カメラによって撮像し、乗員の手に相当する画像領域の重心が運転席側にあるか否かに基づいて操作者が運転者か否かを判定し、操作者が運転者であると判定した場合にはナビゲーションシステムに対する複雑な操作を不許可とする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−67031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、運転者がナビゲーションシステムを操作していることは検出できるものの、例えば運転者がディスプレイに表示されている地図を注視している等のように、運転者が運転操作に専念していない状態であったとしても、これを検出することはできない。そして、特許文献1に記載の技術では、車両走行中であっても運転者以外の乗員がナビゲーションシステムを操作する場合には複雑な操作も許可されるので、例えば運転者以外の乗員が目的地を設定するための操作等の複雑な操作を行っており、当該操作に伴ってディスプレイに表示される情報を運転者が注視している等のように、運転者の注意が散漫となっている状況が許容されてしまうという問題があった。
【0006】
また、上記の問題はナビゲーションシステムに対する操作に限られるものではない。例えばナビゲーションシステムの中には、テレビチューナによって受信したテレビ放送の映像やDVD(Digital Versatile Disk)に記録されている映像をディスプレイに表示する機能を備えたシステムが存在している。この種のシステムにおいても、運転者の注意が散漫となることを防止するために、車両が停止しているときにのみディスプレイに映像を表示させるように構成されており、車両走行中には運転者以外の乗員も映像を視聴できないが、利便性を向上させる目的で車両走行中にも映像を表示させるように構成した場合、特許文献1に記載の技術を適用したとしても、ディスプレイに表示されている映像を運転者が視聴している状況を検知することができないので、運転者の注意が散漫となっている状況が許容されてしまうことになる。
【0007】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、安全性を確保しつつ運転者以外の乗員の利便性を向上させることができる車載機器制御装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車載機器制御装置は、車両の運転席から見て当該車両の前方とは異なる方向に配置された表示手段に情報を表示する車載機器が搭載された前記車両の運転者の顔が、前記車両の前方又は進行方向を向いているか否かを判定する顔向き判定手段と、前記車両が走行中か否かを検出する走行検出手段と、前記走行検出手段によって前記車両が走行中であることが検出されている場合に、前記顔向き判定手段によって前記運転者の顔が前記車両の前方又は進行方向を向いていると判定されている間のみ、前記車両の運転者以外の乗員による前記車載機器に対する操作又は前記車載機器の前記表示手段に表示された情報の視聴が可能となるように前記車載機器を制御する制御手段と、を含んで構成されている。
【0009】
請求項1記載の発明に係る車載機器制御装置は、車両の運転席から見て当該車両の前方とは異なる方向に配置された表示手段に情報を表示する車載機器が搭載された車両に取り付けられる。上記の車載機器としてはナビゲーションシステムが好適であるが、これに代えて、例えばテレビ放送の映像やDVD等の記録媒体に記録された映像を表示手段に表示させる映像表示装置や、指定されたウェブページのデータを携帯電話機等の無線通信装置を介して受信して表示手段に表示させる情報表示装置、或いは上記のシステムや装置の機能を兼ね備えた車載機器を適用してもよい。
【0010】
請求項1記載の発明では、上記の車載機器が搭載された車両の運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いているか否かを顔向き判定手段によって判定する。この判定は、例えば運転者の顔の向きを検知し、検知した向きが車両の前方又は進行方向か否かを判定することで実現できる。運転者の顔の向きは、例えば特開2004−259043号公報にも記載されているように、運転者が正面を向いたときの顔をステレオカメラで撮像して初期エッジ画像を作成し、仮想カメラで撮像したときの仮想画像を作成しておき、運転者の顔をステレオカメラで再度撮像して得られたエッジ画像と仮想画像との一致度に基づいて仮想カメラの仮想位置を求め、ステレオカメラの一方のカメラの位置と仮想位置との関係に基づいて検知することができる。また、公知の他の画像処理を組み合わせて行うことも可能である。また、車両の進行方向は、例えば車両の操舵輪の操舵角から判断することができる。
【0011】
また請求項1記載の発明では、車両が走行中か否かが走行検出手段によって検出され、制御手段は、走行検出手段によって車両が走行中であることが検出されている場合に、顔向き判定手段によって運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていると判定されている間のみ、車両の運転者以外の乗員による車載機器に対する操作又は車載機器の表示手段に表示された情報の視聴が可能となるように車載機器を制御する。このように、請求項1記載の発明では、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いているか否かを顔向き判定手段によって判定するので、運転者が運転操作に専念している状況か否かを正確に判定することができる。そして請求項1記載の発明では、車両が走行中であることが検出されている場合に、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていると判定されている間、すなわち運転者が運転操作に専念している状況である間のみ、車両の運転者以外の乗員による車載機器に対する操作又は車載機器の表示手段に表示された情報の視聴が可能となるように車載機器を制御するので、安全性を確保しつつ運転者以外の乗員の利便性を向上させることができる。
【0012】
また、請求項1記載の発明において、例えば請求項2に記載したように、車両の運転者以外の乗員の有無を検出する乗員検出手段を更に設け、制御手段を、乗員検出手段によって運転者以外の乗員の存在が検出されていない場合には、走行検出手段によって車両が走行中であることが検出されている間、顔向き判定手段によって判定された運転者の顔の向きに拘わらず、車載機器に対する操作又は車載機器の表示手段に表示された情報の視聴が不可となるように車載機器を制御することが好ましい。これにより、車両に運転者以外の乗員が存在していない場合、すなわち車両の走行中に車載機器に対する操作又は車載機器の表示手段に表示された情報の視聴を許可すべき乗員が存在していない場合に、運転者が車両走行中に車載機器に対する操作又は車載機器の表示手段に表示された情報の視聴を行うことをより確実に防止することができる。
【0013】
なお、請求項2記載の発明において、上記の乗員検出手段は、車両の運転席以外の各座席に着座している乗員の有無を各々検出するように構成してもよいが、車載機器に対する操作や、表示手段に表示されている情報の視聴が可能な乗員のみを検出対象とすることが望ましく、例えば前席(例えば運転席及び助手席)に着座している乗員のみが車載機器に対する操作や、表示手段に表示されている情報の視聴が可能なように車載機器が構成されている場合、乗員検出手段は、車両の前席のうち運転席以外の座席に着座している乗員の有無のみを検出するように構成することが望ましい。
【0014】
また、請求項1記載の発明において、顔向き判定手段は、例えば請求項3に記載したように、運転者の顔の向きを繰り返し検出し、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いている状態が第1の所定時間以上継続した場合に、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていると判定することが好ましい。これにより、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を瞬間的に向いたのみでは、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いているとは判定されず、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いている状態が第1の所定時間以上継続した場合、すなわち運転者が運転操作に専念していると判断できる状況が検出された場合に、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていると判定され、運転者以外の乗員による車載機器に対する操作又は表示手段に表示されている情報の視聴が可能となるように制御されるので、安全性を向上させることができる。
【0015】
また、請求項1記載の発明において、顔向き判定手段は、例えば請求項4に記載したように、運転者の顔の向きを繰り返し検出し、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていない状態が第2の所定時間以上継続した場合に、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていないと判定することが好ましい。例えばドアミラーによる後方確認等のように、通常の運転操作の範囲内でも運転者の顔が一時的に車両の前方又は進行方向とは異なる方向を向くことがあるが、上記のように、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていない状態が第2の所定時間以上継続した場合に、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていないと判定することにより、通常の運転操作の範囲内で運転者の顔が一時的に車両の前方又は進行方向とは異なる方向を向いたときに、運転者以外の乗員による車載機器に対する操作又は表示手段に表示されている情報の視聴が直ちに不可となることが防止されるので、運転者以外の乗員が車載機器に対する操作又は表示手段に表示されている情報の視聴を行う際の使い勝手を向上させることができる。
【0016】
また、請求項1記載の発明において、車両が緊急状態に至る可能性を左右する所定の事象を検出して車両が緊急状態に至る可能性を予測判断し、車両が緊急状態に至る可能性が高いと予測した場合に警報を発すると共に、車両制御装置及び乗員保護装置を作動させるプリクラッシュセーフティ装置が車両に搭載されている場合には、例えば請求項5に記載したように、顔向き判定手段による運転者の顔の向きの判定結果が、所定の事象の1つとしてプリクラッシュセーフティ装置にも入力されるように構成することが好ましい。これにより、本発明に係る車載機器制御装置及び上記のプリクラッシュセーフティ装置に顔向き判定手段を各々設ける必要がなくなり、車載システム全体としての構成が複雑化してコストが嵩むことを回避することができる。
【0017】
更に、請求項2記載の発明において、車両の減速度が閾値以上の場合に、前記車両の複数の座席に対応して各々設けられたエアバッグのうち、乗員が着座している座席に対応するエアバッグを展開させるエアバッグ装置が車両に搭載されている場合には、例えば請求項6に記載したように、乗員検出手段による検出結果がエアバッグ装置にも入力されるように構成することが好ましい。これにより、本発明に係る車載機器制御装置及び上記のエアバッグ装置に乗員検出手段を各々設ける必要がなくなり、車載システム全体としての構成が複雑化してコストが嵩むことを回避することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明は、運転席から見て車両の前方と異なる方向に配置された表示手段に情報を表示する車載機器が搭載された車両の運転者の顔が、車両の前方又は進行方向を向いているか否かを判定する顔向き判定手段を設け、車両が走行中である場合に、顔向き判定手段によって運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていると判定されている間のみ、運転者以外の乗員による車載機器に対する操作又は車載機器の表示手段に表示された情報の視聴が可能となるように制御するようにしたので、安全性を確保しつつ運転者以外の乗員の利便性を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図1には、車両に搭載され、本発明に係る車載制御装置としての機能を兼ね備えた車載システム10が示されている。車載システム10は、互いに異なる制御を行う複数の電子制御ユニット(コンピュータを含んで構成された制御ユニットであり、以下ECUと称する)を備え、これらが第1バス12及び第2バス14を介して互いに接続されて構成されている。
【0020】
車載システム10は本発明に係る車載機器としてのナビゲーション装置16を備えており、ナビゲーション装置16には、LCD(Liquid Crystal Display)等から成り図2に示すように車両のインストルメントパネルの中央部(すなわち運転席から見て車両の前方とは異なる方向)に設けられたディスプレイ18と、ディスプレイ18の表示面上に設けられたタッチパネルやディスプレイ18の近傍に配設された複数のスイッチから成る操作部20が接続されている。ナビゲーション装置16は、衛星からの信号を受信することによって測位した自車両の現在位置をDVD等の記録媒体に記憶された地図情報と照合することで自車両の現在位置を高精度に検出し、ディスプレイ18に表示した地図上に自車両の現在位置を表示したり、自車両の現在位置から乗員(例えば運転者又は助手席に着座した乗員)が設定した目的地へ至る経路を探索してディスプレイ18に表示したり、乗員の指示に応じて自車両の現在位置近辺の情報(例えば各種施設の情報)を記録媒体から取得し、ディスプレイ18に表示する機能を備えている。ナビゲーション装置16は、ナビゲーション装置16の動作を制御するナビECU22を介して第1バス12に接続されている。なお、ナビECU22は本発明に係る制御手段に対応している。
【0021】
また車載システム10は、第2バス14に接続された顔向き検出部24を備えており、顔向き検出部24は2台のCCDカメラ26と画像処理装置28で構成されている。図示は省略するが、2台のCCDカメラ26は、例えばメータフード30(図2参照)の両端部付近等のように車両の左右方向に離間した位置に、運転席に着座した運転者の顔を撮像可能な向きで配置されている。2台のCCDカメラ26が運転者の顔を各々撮像することで得られた画像は画像処理装置28に入力され、画像処理装置28は、2台のCCDカメラ26から各々入力された画像に基づいて運転者の顔の向きθDを一定周期で検出する。
【0022】
なお、画像処理装置28による運転者の顔の向きθDの検出方法としては公知の種々の検知方法を適用可能であり、例えば特開2004−259043号公報にも記載されているように、運転者が正面を向いたときの顔を2台のCCDカメラ26で撮像して初期エッジ画像を作成し、この初期エッジ画像を合成することで、運転者の顔を仮想的な位置に配置したカメラ(仮想カメラ)で撮像することで得られる画像にエッジ処理を施した画像に相当する仮想画像を作成しておき、顔の向きθDの検出のために運転者の顔を2台のCCDカメラ26で撮像して得られたエッジ画像と仮想画像との一致度に基づいて仮想カメラの仮想位置を求め、2台のCCDカメラ26のうちの一方のCCDカメラ26の位置と仮想位置との関係に基づいて運転者の顔の向きθDを検出することができる。
【0023】
また、より簡易な検出方法として、例えばCCDカメラ26によって撮像された画像に対し、運転者の顔の左右方向両端部に相当する位置(例えば運転者の頬に相当するエッジの位置)と運転者の顔の左右方向中央部に相当する位置(例えば運転者の鼻に相当する画像部の位置)を検出し、検出した運転者の顔の左右方向両端部の位置に対する運転者の顔の左右方向中央部に相当する位置の偏りに基づいて運転者の顔の向きθDを検出する等の方法を適用することも可能である。
【0024】
第2バス14には走行支援ECU32が接続されており、顔向き検出部24による運転者の顔の向きθDの検出結果は走行支援ECU32に入力される。走行支援ECU32は第1バス12にも接続されており、詳細は後述するが、顔向き検出部24から入力された運転者の顔の向きθDの検出結果に基づいて、運転者がよそ見をしているか否かを判定し、運転者がよそ見をしていると判定した場合にプリクラッシュ制御ECU62(後述)へ通知すると共に、運転者の顔が車両の前方を向いているか否か判定し、判定結果をナビECU22へ出力する。なお、走行支援ECU32は顔向き検出部24と共に本発明に係る顔向き判定手段に対応している。
【0025】
また、車載システム10はABS(Anti-lock Brake System) ECU36を備えており、このABS ECU36にはABS ACT(アクチュエータ)38及び車両の各車輪の周速度を検出する車輪速センサ40が接続されている。なお、ABS ACT38は、車両の各車輪に設けられたブレーキ装置のホイールシリンダに対応して各々設けられ、ABS ECU36から入力された駆動信号に応じて、ホイールシリンダをマスタシリンダと連通させると共にリザーバから遮断する通常状態(増圧状態)から、ホイールシリンダをマスタシリンダ及びリザーバと遮断する保持状態又はホイールシリンダをリザーバと連通させマスタシリンダから遮断する減圧状態へ切り替わる電磁バルブ等で構成することができる。また第1バス12には、超音波ドップラ式又は空間フィルタ式で車両の対地車体速度を検出する対地車速センサ42が接続されている。
【0026】
ABS ECU36は、対地車速センサ42によって検出される車体速度と車輪速センサ40によって検出される各車輪の周速度との差が所定値未満となるように、各車輪のホイールシリンダに対応する電磁バルブによってブレーキフルードの油圧を減圧、増圧、保持させることで、各車輪毎に設けられたブレーキ装置のホイールシリンダにより各車輪に加えられる制動トルクを制御する、所謂ABS制御を行う。
【0027】
また、車載システム10は介入ブレーキ制御ECU44を備えており、この介入ブレーキ制御ECU44には介入ブレーキ制御ACT46が接続されている。なお、介入ブレーキ制御ACT46としては、運転者によるブレーキ操作を代替する油圧を発生させる液圧ポンプ等で構成することができる。介入ブレーキ制御ECU44は、後述するプリクラッシュ制御ECU62からプリクラッシュ制御信号が入力され、かつ運転者によるブレーキ操作が行われていない場合に、所定の目標油圧に応じて液圧ポンプを駆動させることで、運転者に代わって自車両を制動・減速させる介入ブレーキ制御を行う。
【0028】
また、車載システム10はウェビング巻取ECU48を備えており、このウェビング巻取ECU48には、個々のウェビング巻取装置に各々設けられウェビングに張力を与えるプリテンショナから成るウェビング巻取ACT50が接続されている。ウェビング巻取ECU48は、後述するプリクラッシュ制御ECU62からプリクラッシュ制御信号が入力されると、ウェビング巻取ACT50としてのプリテンショナを作動させることで、車両の各乗員に巻き掛けられているウェビングの巻き取りを行わせる。
【0029】
更に、車載システム10はエアバッグECU52を備えており、このエアバッグECU52には、車両の運転席の前方にエアバッグと共に設けられた運転席エアバックACT54、車両の助手席の前方にエアバッグと共に設けられた助手席エアバックACT56、運転席に着座している乗員(運転者)の有無を検出する運転席乗員検出センサ58、及び、助手席に着座している乗員の有無を検出する助手席乗員検出センサ60が各々接続されている。乗員検出センサ58,60としては、例えば乗員が座席に着座することで座席に加わる圧力を検出するセンサを用いることができるが、他の原理で乗員を検出するセンサを用いてもよい。なお、上記のエアバッグECU52、運転席エアバックACT54、助手席エアバックACT56、運転席乗員検出センサ58及び助手席乗員検出センサ60はエアバッグ装置を構成しており、助手席乗員検出センサ60は請求項2に記載の乗員検出手段に対応している。
【0030】
第1バス12には、車両の走行によって車体に加わる加速度や衝突等によって車体に加わる加速度を検出するGセンサ70が接続されており、エアバッグECU52はGセンサ70によって検出された加速度が閾値を越えた場合に、エアバックACT54、56のうち、乗員検出センサ58,60によって乗員の着座が検出されている座席の前方に設けられたエアバッグACTを作動させ、対応するエアバッグを展開させる。またエアバッグECU52は、プリクラッシュ制御ECU62からプリクラッシュ制御信号が入力されると、上記の加速度の閾値を変更設定する。
【0031】
また、車載システム10はプリクラッシュ制御ECU62を備えており、このプリクラッシュ制御ECU62にはレーダ装置64が接続されていると共に、画像処理装置66を介して2台のCCDカメラ68が接続されている。なお、プリクラッシュ制御ECU62、レーダ装置64、画像処理装置66及び2台のCCDカメラ68はプリクラッシュ制御装置を構成しており、請求項6に記載のプリクラッシュセーフティ装置の一部を構成している。
【0032】
本実施形態では、レーダ装置64として、ミリ波を探知波とし、連続波(CW)に周波数変調(FM)を施した送信信号を用いるFM−CWレーダ装置を用いている。レーダ装置64は、自車両に搭載され、自車両の前方(例えば車両左右方向の角度範囲が10゜〜20゜、最遠方探知距離が200mの範囲内)に存在する車両や道路標識等の前方存在物を検出し、前方存在物と自車両の相対位置関係及び相対速度を同時に取得可能とされている。レーダ装置64ではアダプディブアレーアンテナフィルタが用いられるとともに、デジタル・ビーム・フォーミング(DBF)技術によるアンテナビームの形成および走査が行われ、前方存在物が点情報として検出される。FM−CWレーダ装置の探知原理,DBF技術等については、本願出願人が以前に出願した特開2003−130945号、特開平8−220220号等に詳しく説明されているため、詳細な説明は省略する。
【0033】
また、レーダ装置64は、マイクロプロセッサ等から成り一定周期(例えば数十msec)で行われる前方存在物の探知結果を処理する処理装置を内蔵しており、前方存在物の探知結果は処理装置に入力される。処理装置は直近の複数回の探知結果を基に、相対位置関係や相対速度の変化等に基づいてノイズやガードレール等の路側物等を監視対象から除外し、先行車両や路上に存在する停止車両等の特定の前方存在物を監視対象物として追従監視する処理を行う。個々の監視対象物との相対位置関係や相対速度等の情報は、画像処理装置66に送られると共に、プリクラッシュ制御ECU62からの要求に応じてプリクラッシュ制御ECU62へ出力される。
【0034】
また、2台のCCDカメラ68は一対のドアミラー、フロントグリルの両端部等、車幅方向に離間した位置に、各々自車両の前方を撮像可能に配置されており、画像処理装置66には、2台のCCDカメラ68が自車両の前方を撮像することで得られた画像が各々入力される。画像処理装置66は、レーダ装置64から入力された個々の監視対象物との相対位置関係等の情報に基づいて、CCDカメラ68から入力された画像のうち個々の監視対象物に相当する画像部を認識する。そして、認識した画像部の前記画像上での全体位置及び車両左右方向に沿った端部の位置に基づき、三角測量の原理により個々の監視対象物の中心位置及び幅寸法を検出する。画像処理装置66は上記処理を一定周期(例えば数十msec)で繰り返すことで、レーダ装置64と同様に特定の前方存在物を追従監視すると共に、個々の監視対象物の中心位置及び幅寸法の検出結果を、プリクラッシュ制御ECU62の要求に応じてプリクラッシュ制御ECU62へ出力する。
【0035】
なお、2台のCCDカメラ68は何れもカラー画像を撮像可能なカメラであり、画像処理装置66は監視対象物又はその一部分の色彩等を認識することも可能とされ、例えば監視対象物が車両である場合、当該車両のブレーキランプやハザードランプ、方向指示ランプ等の表示灯の点灯状態を認識可能とされている。本実施形態では、画像処理装置66は監視対象物が自車両の前方を同方向へ走行している先行車両である場合に、当該先行車両のブレーキランプの点灯を検知すると、ブレーキランプが点灯したことを表す情報もプリクラッシュ制御ECU62へ送信する。
【0036】
一方、プリクラッシュ制御ECU62は、レーダ装置64から入力される個々の監視対象物との相対位置関係や相対速度等、画像処理装置66から入力される個々の監視対象物の中心位置及び幅寸法等の情報に基づき、自車両の前方に存在する前方存在物と自車両との相対位置関係等を把握しつつ、前方存在物までの到達距離や到達時間を演算して衝突等の緊急状態に至る可能性を予測判断し、車両が緊急状態に至る可能性が高いことが予測される場合には、介入ブレーキ制御ECU44、ウェビング巻取ECU48及びエアバッグECU52へプリクラッシュ制御信号を出力すると共に、例えばインストルメントパネルに設けられたワーニングランプを点灯或いは点滅させたり、ブザーの鳴動や案内メッセージを音声で発する等により、車両が緊急状態に至る可能性が高いことを運転者に警告するプリクラッシュ制御処理を行う。なお、本実施形態に係るプリクラッシュ制御ECU62は、運転者がよそ見をしていることが走行支援ECU32から通知されたか否かも考慮して、上記の緊急状態に至る可能性の予測判断を行う。
【0037】
プリクラッシュ制御ECU62からプリクラッシュ制御信号が入力された場合、介入ブレーキ制御ECU44は運転者によるブレーキ操作が行われていなければ介入ブレーキ制御ACT46を制御して車両を制動・減速させ、ウェビング巻取ECU48はウェビング巻取ACT50を制御してウェビングを巻き取ることで乗員保護力を強化し、エアバッグECU52はエアバッグの展開の可否を規定する閾値をより小さい値へ変更することで、車両が緊急状態に至ったときのエアバッグの展開タイミングを早くさせる。上記のプリクラッシュ制御により、車両が衝突などの緊急状態に至ったときに、より確実に乗員を保護することができる。なお、上記のように介入ブレーキ制御ECU44及び介入ブレーキ制御ACT46は請求項5に記載の車両制御装置に、ウェビング巻取ECU48、ウェビング巻取ACT50、エアバッグECU52を含むエアバッグ装置は請求項5に記載の乗員保護装置に対応している。
【0038】
次に本実施形態の作用として、まず走行支援ECU32によって一定時間周期で繰り返し実行される顔向き判定処理について、図3を参照して説明する。なお、顔向き判定処理では、後述のように運転者の顔の向きθDに応じて運転者正面視フラグに0又は1を代入するが、この運転者正面視フラグは初期値が0とされており、例えば車両のイグニッションスイッチがオンされた等のタイミングで、初期値としての0が代入される。ステップ80では、顔向き検出部24で検出された運転者の顔の向きθDを出力するよう顔向き検出部24へ要請し、顔向き検出部24から出力された運転者の顔の向きθDを第2バス14を介して取得する。次のステップ82では、ステップ80で顔向き検出部24から取得した運転者の顔の向きθDが、顔向き検出部24で正常に検出された値か否か判定する。
【0039】
CCDカメラ26による運転者の顔の撮像における照明条件は車両の走行に伴って時々刻々変化するため、顔向き検出部24による運転者の顔の向きθDの検出においても、例えば運転者の顔の外縁に相当するエッジが抽出できない等のように、運転者の顔の向きθDを正しく検出できない状態が一時的に生ずることがある。顔向き検出部24は、検出した運転者の顔の向きθDの精度が低いと推定される場合、検出した運転者の顔の向きθDと共に、正しく検出できていない可能性があることを表す所定情報を出力する。ステップ82の判定は、運転者の顔の向きθDと共に上記所定情報を顔向き検出部24から受信したか否かを判断することで行っており、顔向き検出部24から上記の所定情報を受信した場合にはステップ82の判定が否定されてステップ96へ移行し、運転者正面視フラグに0を代入する。また、顔向き検出処理では顔向き検出部24から取得した運転者の顔の向きθDを所定時間(詳しくは後述する時間t1,t2,t3のうちの最大値)に亘ってメモリに記憶しているが、次のステップ98では、メモリに記憶している運転者の顔の向きθDを全てクリアし、顔向き判定処理を終了する。
【0040】
また、顔向き検出部24から運転者の顔の向きθDのみを受信した場合(上記の所定情報を受信しなかった場合)には、ステップ82の判定が肯定されてステップ84へ移行し、まず受信した運転者の顔の向きθDをメモリに記憶させた後に、時間t3前から現在迄にメモリに記憶している運転者の顔の向きθDの絶対値が何れも閾値thB以上か否かを判断することで、|θD|≧thBの状態(運転者の顔が車両の前方を向いていない状態)が時間t3以上継続しているか否か判定する。ステップ84の判定が否定された場合は何ら処理を行うことなくステップ88へ移行するが、ステップ84の判定が肯定された場合は運転者がよそ見をしている状態が時間t3以上継続していると判断できるので、次のステップ86において、運転者がよそ見している状態が継続していることを第1バス12を介してプリクラッシュ制御ECU62へ通知する。
【0041】
運転者がよそ見している状態が継続しているか否かは、車両が緊急状態に至る可能性に影響を与える事象であり、運転者がよそ見している状態が継続していることが走行支援ECU32から通知された場合、プリクラッシュ制御ECU62は、ワーニングランプを点灯或いは点滅させたり、ブザーを鳴動させたり、案内メッセージを音声で発する等によって運転者へ警告を発すると共に、車両が緊急状態に至る可能性が高いことが予測される場合に、プリクラッシュ制御信号を、通常時(運転者がよそ見している状態が継続していることが通知されていない場合)よりも早いタイミングで介入ブレーキ制御ECU44、ウェビング巻取ECU48及びエアバッグECU52へ出力する。
【0042】
このように、運転者がよそ見している状態が継続しているか否かに応じてプリクラッシュ制御信号を出力するタイミングを切り替えることで、運転者がよそ見している状態が継続している場合には、運転者によるブレーキ操作が行われていない場合の介入ブレーキ制御ECU22による介入ブレーキ制御ACT24経由での車両の制動・減速、ウェビング巻取ECU26によるウェビング巻取ACT28経由でのウェビングの巻き取り、エアバッグECU52によるエアバッグの展開の可否を規定する閾値の変更がより早期に行われることになるので、車両が衝突などの緊急状態に至ったときに、より確実に乗員を保護することができる。
【0043】
一方、顔向き判定処理では、次のステップ88において、時間t1前から現在迄にメモリに記憶している運転者の顔の向きθDの絶対値が何れも閾値thA未満か否かを判断することで、|θD|<thAの状態(運転者の顔が車両の前方を向いている状態)が時間t1以上継続しているか否か判定する。ステップ88の判定が肯定された場合はステップ92へ移行し、運転者正面視フラグに1を代入して顔向き判定処理を終了する。なお、運転者正面視フラグに1を代入することは運転者の顔が車両の前方を向いていると判定することに相当しており、上記のステップ88,92は請求項3に記載の顔向き判定手段に対応している。
【0044】
また、ステップ88の判定が否定された場合はステップ90へ移行し、時間t2前から現在迄にメモリに記憶している運転者の顔の向きθDの絶対値が何れも閾値thA以上か否かを判断することで、|θD|≧thAの状態(運転者の顔が車両の前方を向いていない状態)が時間t2以上継続しているか否か判定する。ステップ90の判定が肯定された場合はステップ94へ移行し、運転者正面視フラグに0を代入して顔向き判定処理を終了する。なお、運転者正面視フラグに0を代入することは運転者の顔が車両の前方を向いていると判定することに相当しており、上記のステップ90,94は請求項4に記載の顔向き判定手段に対応している。
【0045】
また、ステップ90の判定が否定された場合は何ら処理を行うことなく顔向き判定処理を終了する。この場合、運転者正面視フラグは値が変更されることなくそれ迄の値に維持される。なお、上述したステップ88,90では同一の閾値thAを用いて判定を行っているが、これに代えて閾値thAの値を相違させてもよい。また時間t1,t2として同一の値を用いて判定を行ってもよい。
【0046】
続いて、ナビECU22によって一定時間周期で繰り返し実行されるナビゲーション装置制御処理について、図4を参照して説明する。ステップ100では、対地車速センサ42によって検出される自車両の車速Vを第1バス12を介して取り込む。次のステップ102では、自車両の車速Vが0km/hよりも大きいか否か、すなわち自車両が走行中か否か判定する。この判定が否定された場合は自車両が停車しているので、ステップ114へ移行し、自車両の乗員が操作部20を介してナビゲーション装置16を操作することを受け付ける操作受付状態へ遷移するようナビゲーション装置16へ指示し、ナビゲーション装置制御処理を終了する。この操作受付状態において、ナビゲーション装置16は操作部20を介して何らかの操作が行われる毎に、操作部20を介して行われた操作に応じた処理を行い、処理結果に応じてディスプレイ18に表示している画像等の情報を切り替える。この場合、操作者が運転者か運転者以外の乗員かに拘わらずナビゲーション装置16に対する操作が可能となり、例えばナビゲーション装置16に目的地を設定する等の複雑な操作を運転者が行うことも可能となる。
【0047】
一方、車両が走行中の場合はステップ102の判定が肯定されてステップ104へ移行し、走行支援ECU32で設定される運転者正面視フラグの現在の値を送信するよう走行支援ECU32へ要請し、走行支援ECU32から送信された運転者正面視フラグの現在の値を第1バス12を介して受信する。またステップ106では、エアバッグECU52に接続された助手席乗員検出センサ60による助手席乗員の検出結果を送信するようエアバッグECU52へ要請する。これにより、エアバッグECU52は助手席乗員検出センサ60から助手席乗員の検出結果を取り込んでナビECU22へ送信し、ナビECU22はエアバッグECU52から送信された助手席乗員の検出結果を第1バス12を介して受信する。
【0048】
ステップ108では、先のステップ104で走行支援ECU32から受信した運転者正面視フラグの値が1以外(すなわち0)か否か判定する。運転者正面視フラグの値が0の場合、現在は運転者の顔が車両の前方を向いていない状態であり、運転者がナビゲーション装置16を操作しようとしている可能性があり、ナビゲーション装置16を操作している途中で運転者の注意が散漫となってしまう恐れがあるので、ナビゲーション装置16に対する乗員の操作を受け付けてしまうことは車両の安全確保上望ましくない。このため、ステップ108の判定が肯定された場合はステップ112へ移行し、自車両の乗員が操作部20を介してナビゲーション装置16を操作しようとしてもこれを受け付けない操作受付禁止状態へ遷移するようナビゲーション装置16へ指示し、ナビゲーション装置制御処理を終了する。
【0049】
この操作受付禁止状態において、ナビゲーション装置16は操作部20を介して何らかの操作が行われても、当該操作を無視し(当該操作に応じた処理を行わず)、ディスプレイ18に表示している画像等の情報の切り替えも行わない。なお、操作受付禁止状態であることを、ディスプレイ18に表示したメッセージ又は音声によって通知するようにしてもよい。この場合、操作者が運転者か運転者以外の乗員かに拘わらずナビゲーション装置16に対する操作は受け付けされないことになるが、運転者がナビゲーション装置16を操作しようとして運転者の注意が散漫となってしまうことは防止することができ、自車両の安全を確保することができる。
【0050】
また、運転者正面視フラグの値が1の場合はステップ108の判定が否定されてステップ110へ移行し、先のステップ106でエアバッグECU52から受信した助手席乗員の検出結果に基づいて自車両の助手席に乗員が存在していないか否か判定する。ステップ110の判定が肯定された場合、運転者正面視フラグの値は1であるので、現在は運転者の顔が車両の前方を向いている状態であると判断できるものの、車両走行中に車両の安全性に悪影響を与えることなくナビゲーション装置16を操作できる乗員(助手席に着座している乗員)が存在していないので、安全性の確保を最優先するためにステップ112へ移行し、操作受付禁止状態へ遷移するようナビゲーション装置16へ指示する。これにより、自車両の安全を確保することができる。なお、ステップ110の判定及び当該判定が肯定された場合の処理は請求項2に記載の制御手段に対応している。
【0051】
またステップ110の判定が否定された場合、運転者の顔が車両の前方を向いている状態であるので、運転者がナビゲーション装置16の操作を行う可能性はないと判断できる一方で、車両走行中に車両の安全性に悪影響を与えることなくナビゲーション装置16を操作できる乗員(助手席に着座している乗員)が存在しているので、助手席に着座している乗員がナビゲーション装置16を操作することを可能とするために、ステップ114へ移行して操作受付状態へ遷移するようナビゲーション装置16へ指示する。これにより、助手席に着座している乗員がナビゲーション装置16を操作することが可能となり、助手席に着座している乗員の利便性を向上させることができる。
【0052】
また、車両が走行中の場合、ナビゲーション装置16は運転者正面視フラグが1のとき(ステップ108の判定が否定されたとき)にのみ操作受付状態へ遷移するが、前述のように運転者正面視フラグは、運転者の顔が車両の前方を向いている状態が時間t1以上継続した場合に1に設定されるので、運転者の顔が一時的に車両の前方を向いたとしても運転者正面視フラグに1が設定されることはなく、運転者正面視フラグが1の場合には運転者が車両の運転に確実に専念していると判断することができる。従って、助手席に着座している乗員が存在している場合(ステップ110の判定が否定された場合)にナビゲーション装置16を操作受付状態へ遷移させても車両の安全性は確保される。
【0053】
更に、走行支援ECU32では前述した顔向き判定処理(図3)を一定時間周期で繰り返し実行しており、運転者の顔が車両の前方を向いていない状態が時間t2以上継続すると運転者正面視フラグに0が設定されると共に、ナビECU22も上述したナビゲーション装置制御処理(図4)を一定時間周期で繰り返し実行しており、車両走行中に運転者正面視フラグが0になると直ちにナビゲーション装置16を操作受付禁止状態へ遷移させるので、車両走行中に運転者がナビゲーション装置16を操作することを確実に防止することができる。また、例えばドアミラーによる後方確認等のように、通常の運転操作の範囲内でも運転者の顔が一時的に車両の前方とは異なる方向を向くことがあるが、運転者正面視フラグは、運転者の顔が車両の前方を向いていない状態が時間t2以上継続すると0が設定されるので、操作受付状態のナビゲーション装置16を助手席に着座している乗員が操作している状況で、運転者が上記の後方確認等を行ったのみでナビゲーション装置16が操作受付禁止状態へ遷移することはなく、助手席に着座している乗員がナビゲーション装置16を円滑に操作することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る車載システム10では、顔向き検出部24によって検出された運転者の顔の向きθDに基づき、走行支援ECU32によって運転者がよそ見をしている状態が継続しているか否かも判定され、判定結果がプリクラッシュ制御ECU62に通知されてプリクラッシュ制御に用いられると共に、乗員検出手段としての助手席乗員検出センサ60による助手席乗員の検出結果はエアバッグECU52による制御にも用いられる構成であり、顔向き検出部24や助手席乗員検出センサ60等を複数設ける必要がないので、車載システム10全体としての構成を簡単にすることができ、車載システム10のコストを低減することができる。なお、上記事項は請求項5及び請求項6記載の発明に対応している。
【0055】
なお、上記では運転者の顔が車両の前方を向いているか否かを判定して運転者正面視フラグを設定する態様を説明したが、車両旋回時には運転者の顔が車両の旋回方向(進行方向)を向くのが自然な運転操作であることを考慮すると、車両の操舵輪の操舵角を検出して車両の進行方向を判断し、助手席に乗員が着座している場合、運転者の顔が車両の進行方向を向いている間はナビゲーション装置16を操作受付状態にするようにしてもよい。また、運転者の顔が、運転席から見てディスプレイ18が存在している方向と逆方向を向いている場合には、運転者によってナビゲーション装置16が操作される可能性はないと判断できるので、運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていない場合に、その方向が運転席から見てディスプレイ18が存在している方向か逆方向かを判定し、判定結果に応じてナビゲーション装置16の状態(操作受付状態/操作受付禁止状態)を切り替えるようにしてもよい。
【0056】
また、上記では本発明に係る車載機器としてナビゲーション装置16を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、テレビ放送の映像やDVD等の記録媒体に記録された映像をディスプレイに表示させる映像表示装置、指定されたウェブページのデータを携帯電話機等の無線通信装置を介して受信してディスプレイに表示させる情報表示装置、或いはナビゲーション装置や上記装置の機能を兼ね備えた車載機器を適用することも可能である。ディスプレイに映像を表示させる場合、表示させた映像を運転者が注視するのみでも運転者の注意が散漫となる可能性があるので、車両走行中に運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていない場合には、ディスプレイに表示させていた映像を消去させる、或いは映像(動画像)に代えて静止画像をディスプレイに表示させる等により、ディスプレイに表示した映像を運転者が注視することを阻止すると共に、車両走行中には運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていると判定されている間のみディスプレイに映像を表示することで、運転者以外の乗員が車両走行中に映像を視聴することを可能としてもよい。
【0057】
また、上記では運転者以外の乗員として助手席に着座している乗員を検出する態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものでもなく、例えばリモートコントーラ、或いは後席に別途設けられた操作部を介して後席に着座している乗員が車載機器を操作することが可能である場合や、前席用のディスプレイと同一の情報を表示する後席専用のディスプレイ18が別途設けられている場合には、後席に着座している乗員の有無も検出し、車両走行中で運転者の顔が車両の前方又は進行方向を向いていると判定されている間、後席に着座している乗員が存在している場合にも、当該乗員が車載機器を操作したりディスプレイに表示された情報を視聴可能としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態に係る車両制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】車両のインストルメントパネル周辺の斜視図である。
【図3】走行支援ECUによって実行される顔向き判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図4】ナビECUによって実行されるナビゲーション装置制御処理の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
10 車載システム
16 ナビゲーション装置
18 ディスプレイ
20 操作部
22 ナビECU
24 顔向き検出部
26 CCDカメラ
28 画像処理装置
32 走行支援ECU
42 対地車速センサ
52 エアバッグECU
60 助手席乗員検出センサ
62 プリクラッシュ制御ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転席から見て当該車両の前方とは異なる方向に配置された表示手段に情報を表示する車載機器が搭載された前記車両の運転者の顔が、前記車両の前方又は進行方向を向いているか否かを判定する顔向き判定手段と、
前記車両が走行中か否かを検出する走行検出手段と、
前記走行検出手段によって前記車両が走行中であることが検出されている場合に、前記顔向き判定手段によって前記運転者の顔が前記車両の前方又は進行方向を向いていると判定されている間のみ、前記車両の運転者以外の乗員による前記車載機器に対する操作又は前記車載機器の前記表示手段に表示された情報の視聴が可能となるように前記車載機器を制御する制御手段と、
を含む車載機器制御装置。
【請求項2】
前記車両の前記運転者以外の乗員の有無を検出する乗員検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記乗員検出手段によって前記運転者以外の乗員の存在が検出されていない場合には、前記走行検出手段によって前記車両が走行中であることが検出されている間、前記顔向き判定手段によって判定された前記運転者の顔の向きに拘わらず、前記車載機器に対する操作又は前記車載機器の前記表示手段に表示された情報の視聴が不可となるように前記車載機器を制御することを特徴とする請求項1記載の車載機器制御装置。
【請求項3】
前記顔向き判定手段は、前記運転者の顔の向きを繰り返し検出し、前記運転者の顔が前記車両の前方又は進行方向を向いている状態が第1の所定時間以上継続した場合に、前記運転者の顔が前記車両の前方又は進行方向を向いていると判定することを特徴とする請求項1記載の車載機器制御装置。
【請求項4】
前記顔向き判定手段は、前記運転者の顔の向きを繰り返し検出し、前記運転者の顔が前記車両の前方又は進行方向を向いていない状態が第2の所定時間以上継続した場合に、前記運転者の顔が前記車両の前方又は進行方向を向いていないと判定することを特徴とする請求項1記載の車載機器制御装置。
【請求項5】
前記車両には、車両が緊急状態に至る可能性を左右する所定の事象を検出して車両が緊急状態に至る可能性を予測判断し、車両が緊急状態に至る可能性が高いと予測した場合に警報を発すると共に、車両制御装置及び乗員保護装置を作動させるプリクラッシュセーフティ装置が搭載されており、前記顔向き判定手段による前記運転者の顔の向きの判定結果は、前記所定の事象の1つとして前記プリクラッシュセーフティ装置にも入力されることを特徴とする請求項1記載の車載機器制御装置。
【請求項6】
前記車両には、車両の減速度が閾値以上の場合に、前記車両の複数の座席に対応して各々設けられたエアバッグのうち、乗員が着座している座席に対応するエアバッグを展開させるエアバッグ装置が搭載されており、前記乗員検出手段による検出結果は前記エアバッグ装置にも入力されることを特徴とする請求項2記載の車載制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−62503(P2007−62503A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249590(P2005−249590)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】