説明

電界効果型トランジスタ

【課題】従来の電界効果型トランジスタでは、ソース領域およびドレイン領域に形成する高濃度不純物のイオン注入工程により半導体基板表面がアモルファス化されるため、低濃度不純物拡散領域と高濃度不純物拡散領域との境界部において、活性化熱処理により結晶欠陥を誘発し、電界効果型トランジスタの信頼性を低下させる問題があった。
【解決手段】本発明の電界効果型トランジスタは、ソース領域およびドレイン領域を構成する部分の上部に高濃度不純物を含有する導電性膜を設ける。高濃度不純物のイオン注入を行う必要がないことから、この領域の半導体基板表面がアモルファス化することがない。これにより、低濃度不純物拡散領域と高濃度不純物拡散領域との境界部において、再結晶化による結晶欠陥の発生を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電界効果型トランジスタの構造に関し、特に、信頼性を向上させる構造を備えた電界効果型トランジスタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体基板上に形成される電界効果型トランジスタは、高速化、高集積化、微細化に伴い、ホットキャリアによる閾値電圧の経時変化や相互コンダクタンスの劣化を防ぐため、ソース領域およびドレイン領域は、同一導電の低濃度不純物拡散層と高濃度不純物拡散層とから構成される。
つまり、ドレイン領域を例にすると、ドレイン領域を構成する高濃度不純物拡散層とチャネル領域との間に、高濃度不純物拡散層と接して低濃度不純物拡散層を設けるのである。
このような高濃度不純物拡散層と低濃度不純物拡散層とでドレイン領域を構成することで、電界効果型トランジスタの動作時に、ドレイン領域のゲート電極近傍において高電界が集中しなくなる。このような構造は、いわゆるLDD(Light doped drain)構造と称している。
【0003】
高濃度不純物拡散層の一方端は低濃度不純物拡散層と接しており、他方端は、素子分離膜の端部と接している。この素子分離膜は、電界効果型トランジスタを構成する能動領域を規定するために設けるものである。
ソース領域およびドレイン領域を構成する高濃度不純物拡散層と低濃度不純物拡散層との境界部分は、ゲート電極の側壁部に設けるゲート電極側壁膜の端部の下部に位置している。つまり、高濃度不純物拡散層と低濃度不純物拡散層との境界部分と、ゲート電極側壁膜の端部と、が平面的に重なっている。なお、このゲート電極側壁膜は、いわゆるサイドウォール膜とも呼ばれるものである。
【0004】
このような構成は、一般的な構成であり、通常よく用いられている。その理由は、電界効果型トランジスタの製造工程において、高濃度不純物拡散層を形成するための高濃度不純物をイオン注入する際に、このゲート電極側壁膜をマスクとして用いると都合がよいためである。
【0005】
例えば、半導体基板に素子分離膜によって能動領域を規定し、所定位置にゲート絶縁膜を形成し、その上部にゲート電極を形成する。このゲート電極をマスクとして、低濃度不純物拡散層を形成するための低濃度不純物を能動領域にイオン注入する。そして、ゲート電極の側壁にゲート電極側壁膜を形成する。その後、このゲート電極側壁膜もマスクとして、高濃度不純物拡散層を形成するための高濃度不純物を能動領域にイオン注入するのである。
低濃度不純物拡散層と高濃度不純物拡散層とは同一導電型であり、その不純物濃度が異なるだけであるから、このような製造方法を用いると、低濃度不純物拡散層と高濃度不純物拡散層との領域を分けてイオン注入する必要がなくなり、少ない手番でLDD構造の電界効果型トランジスタを形成することができる。
【0006】
電界効果型トランジスタの製造方法は、上述の製造工程だけではなく、イオン注入した不純物を半導体基板内に拡散させるための活性化熱処理も必要である。
しかしながら、この活性化熱処理によって、ソース領域やドレイン領域の半導体基板内部に結晶欠陥が発生してしまうことがあった。この結晶欠陥は、ソース領域またはドレイン領域で発生する接合リーク電流の原因となり、電界効果型トランジスタの電気特性を低
下させてしまう。
【0007】
ところで、結晶欠陥の原因としては、ソース領域およびドレイン領域を構成する高濃度不純物拡散層と低濃度不純物拡散層との境界部分で発生する結晶転位と、ゲート電極側壁膜の応力と、が知られている。
【0008】
このような結晶欠陥が発生するメカニズムを説明する。
低濃度不純物拡散層を形成するためにイオン注入するときは、能動領域の半導体基板表面は結晶状態を保つことができる。これは、イオン注入装置が低い加速エネルギーでイオン注入を行うためである。
一方、高濃度不純物拡散層を形成するためにイオン注入するときは、能動領域の半導体基板表面はアモルファス化してしまう。これは、イオン注入装置が高い加速エネルギーでイオン注入を行うためである。
【0009】
イオン注入工程の後、活性化熱処理により、アモルファス化した領域は再結晶化する。低濃度不純物拡散層となる部分は結晶領域であり、高濃度不純物拡散層となる部分はアモルファス領域である。これら境界部分では、低濃度不純物拡散層からの再結晶化は高濃度不純物拡散層に向かって進み、高濃度不純物拡散層からの再結晶化は、半導体基板の表面に向かって進む。
つまり、高濃度不純物拡散層と低濃度不純物拡散層との境界部分は、再結晶化の方向が交差する部分でもある。
このことから、結晶領域とアモルファス領域との境界部分において、結晶化方向が異なるため、結晶転位が発生し、結晶欠陥が発生しやすいのである。
【0010】
また、先の説明のとおり、ソース領域およびドレイン領域を構成する高濃度不純物拡散層と低濃度不純物拡散層との境界部分は、ゲート電極の側壁部に設けるゲート電極側壁膜の端部の下部に位置している。このため、ゲート電極側壁膜の端部に発生した応力がこの境界部分にかかり、結晶欠陥の発生をより大きくしている。
【0011】
つまり、結晶欠陥は、活性化熱処理に起因するものではあるが、印加される熱のみが原因ではなく、電界効果型トランジスタの構造も影響しているのである。
このような、活性化熱処理による接合リーク電流の発生を防止する技術は、多くの提案を見るものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
特許文献1に示した従来術は、特にゲート電極側壁膜の応力を低減する技術に関するものであって、ゲート電極側壁膜を二重構造としたものである。図9を用いて説明する。
図9において、111は半導体基板、113は素子分離膜、115はゲート電極、117は第1のゲート電極側壁膜、117aは第1のゲート電極側壁膜117の端部、119はゲート絶縁膜、121は第2のゲート電極側壁膜、121aは第2のゲート電極側壁膜121の端部である。
123は低濃度不純物拡散層、125は高濃度不純物拡散層、125aは高濃度不純物拡散層125の半導体基板111の表面部分、127は低濃度不純物拡散層123と高濃度不純物拡散層125との境界部分である。
130はゲート電極115の側壁に設けるゲート電極側壁膜であり、第1のゲート電極側壁膜117と第2のゲート電極側壁膜121とで構成している。
【0013】
半導体基板111上に形成された素子分離膜113で囲まれた能動領域に、ゲート絶縁膜119が形成されている。ゲート絶縁膜119の上部にはゲート電極115が形成されている。ゲート電極115の側壁部には第1のゲート電極側壁膜117と第2のゲート電極側壁膜121とで形成するゲート電極側壁膜130が設けてある。
【0014】
ゲート電極側壁膜117の下部の半導体基板111には、低濃度不純物拡散層123が形成されている。第1のゲート電極側壁117の端部117aと素子分離膜113との間の半導体基板111には、高濃度不純物拡散層125が形成されている。これら低濃度不純物拡散層123と高濃度不純物拡散層125とからなる不純物拡散領域は、ソース領域、ドレイン領域となる。
【0015】
ゲート電極側壁膜130の端部となる第2のゲート電極側壁121の端部121aと、低濃度不純物拡散層123と高濃度不純物拡散層125との境界部分127と、は平面的に重なっておらず、高濃度不純物拡散層125の上部に位置している。
つまり、ゲート絶縁膜119、ゲート電極115を形成した後にこれをマスクにして低濃度不純物拡散層123用のイオン注入を行う。その後に、第1のゲート電極側壁117を形成してこれをマスクとして高濃度不純物拡散層125用のイオン注入を行う。その後に、第2のゲート電極側壁121を形成するのである。
【0016】
特許文献1に示した従来技術は、ゲート電極側壁膜130の端部が高濃度不純物拡散層125と低濃度不純物拡散層123との境界部分127と平面的に重なっていない。このため、ソース領域およびドレイン領域を形成するための活性化熱処理を行っても、高濃度不純物拡散層125と低濃度不純物拡散層123との境界部分127には、ゲート電極側壁膜130の端部の応力が加わらない構成となっている。このため、境界部分127の結晶欠陥の発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第4073171号公報(第4〜5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献1に示した従来技術は、能動領域の半導体基板111の表面全体にゲート絶縁膜119を設けている。このような構成は一般的なものであるが、このゲート絶縁膜119の上部からこれを貫通するように低濃度不純物拡散層123や高濃度不純物拡散層125を形成するためのイオン注入を行っている。
すでに説明したとおり、高濃度不純物拡散層125を形成するためのイオン注入は、高い加速エネルギーでイオン注入を行う。このため、ゲート絶縁膜119をソース領域やドレイン領域となる部分の上部に設けていても、その半導体基板111の表面の表面部分125aはイオン注入によるダメージを受け、アモルファス化してしまう。
【0019】
もちろん、活性化熱処理により、アモルファス化した領域を再結晶化させているが、半導体基板上で完全な結晶となりえない箇所が存在する。これは、活性化熱処理の不均一性と呼ばれ、そのメカニズムの解明には多くの議論があるものの、現象としては広く知られているものである。
このような活性化熱処理の不均一性のため、第2のゲート電極側壁121を設けて、その端部121aが高濃度不純物拡散層125と低濃度不純物拡散層123との境界部分127と重ならないようにすることで、応力がこの境界部分127に加わらないような構成にしても、結晶欠陥の発生は抑制することができない。
【0020】
また、ソース領域やドレイン領域となる部分の再結晶化が不完全な場合、ソース領域またはドレイン領域と電気的に接続する金属配線との接続抵抗が高くなり、電界効果型トランジスタの性能劣化や信頼性を低下させてしまう。
つまり、少なくとも、ソース領域またはドレイン領域と金属配線との接続部分は、アモ
ルファス化していない方がよいのである。
【0021】
さらにまた、ゲート電極側壁膜の膜厚は、製造工程上の制御が難しい。一般にゲート電極側壁膜は、ゲート電極形成後に、その上部に、例えば、シリコンを主成分とする膜を形成し、ドライエッチング装置を用いてエッチバック法により自己制御でゲート電極の側壁部に膜を残す方法で形成される。ドライエッチング装置内で発生するエッチングガスのプラズマ密度は、反応室の形状、エッチングガスの流れ方向などにより、完全に均一状態にはなりえないため、ゲート電極側壁膜の膜厚を均一に制御よく形成することは難しいのである。
【0022】
このことは、第1のゲート電極側壁膜117および第2のゲート電極側壁膜121で二重構造としているゲート電極側壁膜130の膜厚も同様に、それぞれのゲート電極側壁膜の膜厚の制御が安定しない。したがって、その端部121aが常に境界部分127と平面的に重ならないように制御することも難しいのである。
【0023】
さらに、ゲート電極側壁膜の端部に発生する応力は、その膜の材料により変化する。例えば、シリコン窒化膜を用いた場合、成膜条件により圧縮応力を持つシリコン窒化膜、引っ張り応力を持つシリコン窒化膜が成膜される。このような膜自体の応力を膜応力と呼び、一般的には、シリコン窒化膜の膜応力は数百MPaである。
また、シリコン酸化膜を用いた場合も、シリコン窒化膜と同様に、成膜条件により、圧縮応力を持つシリコン酸化膜、または引っ張り応力を持つシリコン酸化膜が成膜される。一般的にはシリコン酸化膜の膜応力は数十〜数百MPaである。
【0024】
このように、ゲート電極側壁膜130は、用いる材料と、成膜する工程における成膜条件とにより、膜応力が大きく変化するため、使用する膜の膜応力を考慮した構造設計を行わなければならない。もちろん、成膜条件は使用する装置によっても異なるから、このようなゲート電極側壁膜を二重構造とする電界効果型トランジスタの構造設計は、その最適化も大変難しくなっている。
【0025】
さらに、特許文献1では図示しないが、一般に電界効果トランジスタでは、その上部に層間絶縁膜を設け、層間絶縁膜にソース領域またはドレイン領域と金属配線とを電気的に接続するためのコンタクトホールを形成する。
一般にコンタクトホールの形成は反応性ガスプラズマを利用したドライエッチングによりなされるが、エッチング処理によるプラズマダメージにより、コンタクトホール底部の半導体基板表面の結晶状態が乱れてしまう。結晶状態が乱れると、後に形成する金属配線とソース領域やドレイン領域との接続抵抗(いわゆる、コンタクト抵抗)を十分に下げることができなくなるという問題を生じる。
【0026】
本発明の電界効果型トランジスタは、このような課題を解決するためにある。そしてその目的は、性能劣化がなく、高い信頼性を有する電界効果型トランジスタを提供するというものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記目的を達成するために、本発明の電界効果型トランジスタは、下記記載の構造を採用する。
【0028】
半導体基板の表面に設ける素子分離膜により規定される能動領域にソース領域、ドレイン領域、チャネル領域を有し、チャネル領域の上部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を有し、ゲート電極の側壁にゲート電極側壁膜を設けてなる電界効果型トランジスタであって、
ソース領域とドレイン領域との上部に、素子分離膜と接しないように高濃度不純物を含有する導電性膜を設け、能動領域の上部に層間絶縁膜を設けて、層間絶縁膜を開口するコンタクトホールを設けるとき、コンタクトホールは、導電性膜と平面的に重なる位置に設けると共に導電性膜が露出するように設けることを特徴とする。
【0029】
このような構成にすれば、高濃度不純物をイオン注入する必要がなくなるから、半導体基板の表面にダメージを与えることなく、ソース領域やドレイン領域を構成する高濃度不純物拡散層を形成することができる。また、導電性膜を設けることにより、層間絶縁膜を開口するコンタクトホールの加工をドライエッチングで行っても、ソース領域やドレイン領域の表面にプラズマダメージが発生しないから、アモルファス化せず、結晶欠陥の発生を防止することができる。
【0030】
導電性膜は、少なくとも2つの膜を積層してなる積層膜で構成することもできる。また、積層膜は、導電性膜同士が異なる膜応力としてもよい。
【0031】
このような構成にすれば、2つの膜の材質や膜応力の特性を変えることができ、重なる導電性膜同士が異なる膜応力とすれば、互いの膜応力を打ち消すようにすることもできる。
【0032】
コンタクトホールの底部は、導電性膜の表面より半導体基板方向に掘り下げた位置であるようにしてもよい。
【0033】
このような構成にすれば、コンタクトホールを介して金属配線とソース領域やドレイン領域とを接続するとき、コンタクトホール底部にて導電性膜と金属配線との接触面積が増えるので、より確実にソース領域やドレイン領域と金属配線とを接続することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ソース領域とドレイン領域との上部に、電界効果型トランジスタの領域を規定する素子分離膜と接しないように高濃度不純物を有する導電性膜を設けているため、ソース領域とドレイン領域とを形成するために高濃度不純物をイオン注入する工程が不要となり、半導体基板表面がアモルファス化することを防ぐことができる。このため、ゲート電極側壁膜の端部の位置によらず、活性化熱処理工程を行っても、ソース領域とドレイン領域とで発生する接合リーク電流を発生させない効果を有する。
【0035】
さらに、導電性膜は、その端部を素子分離膜の端部と平面的に重ならないようにして設けることにより、導電性膜と素子分離膜とが接することにより生じる導電性膜からの膜応力と素子分離膜との応力とが素子分離膜端部において集中しないようにしている。
【0036】
また、電界効果型トランジスタと接続する金属配線とソース領域およびドレイン領域を構成する高濃度不純物拡散層とを電気的に接続するために形成するコンタクトホールは、その底部にて導電性膜が露出するように設けている。この構成により、高濃度不純物をイオン注入する工程を不要としていることに加え、ソース領域およびドレイン領域を形成する半導体基板表面が、コンタクトホール形成時のプラズマ雰囲気にさらされることはないので、導電性膜と接続する半導体基板表面は当然ながら結晶状態であり、金属配線と高濃度不純物拡散層との電気的な接続抵抗を安定させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態の構造を説明する平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の構造を説明する断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の製造工程を説明する断面図であって、主に低濃度不純物をイオン注入する工程を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の製造工程を説明する断面図であって、主に導電性膜を形成する工程を説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の製造工程を説明する断面図であって、主に活性化熱処理により低濃度不純物拡散層と高濃度不純物拡散層とを形成する工程を説明する図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の製造工程を説明する断面図であって、主にコンタクトホールを形成する工程を説明する図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の製造工程を説明する断面図であって、主に金属配線を形成する工程を説明する図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の構造を説明する断面図である。
【図9】特許文献1に示した従来技術を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を用いて本発明の電界効果型トランジスタを実施するための最良な形態の構造を説明する。以下の説明においては、半導体基板をシリコンとする例で説明する。また、導電性膜は、膜中に高濃度不純物を有する多結晶シリコン膜を用いる例で説明する。
なお、説明に使用する図については、説明に必要な部分のみを模式的に示しており、パシベーション膜など説明に関係しない構成については、省略している。
【実施例1】
【0039】
[第1の発明形態の構成の説明:図1、図2、図6(b)]
まず、第1の実施形態を、図1、図2を主に用いつつ、図6(b)も参照して説明する。
図1に示す構成は、電界効果型トランジスタの平面図である。図2は、図1に示す切断線A−A´での断面の様子を模式的に示す断面図である。
図1、図2において、11は半導体基板、13は素子分離膜、13aは素子分離膜13の端部、14は能動領域、15はゲート電極、17はゲート電極側壁膜、17aはゲート電極側壁膜17の端部、19はゲート絶縁膜、23は低濃度不純物拡散層、25は高濃度不純物拡散層、31は金属配線である。
【0040】
同じく図1、図2において、41は導電性膜、41aは導電性膜41の素子分離膜13側の端部、43は層間絶縁膜、45はコンタクトホール、45aはコンタクトホール45の底部、45bはコンタクトホール45の素子分離膜13側の端部、45cはコンタクトホール45のゲート電極側壁膜17側の端部である。
【0041】
さらに、図1、図2において、29は隙間である。隙間29は、導電性膜41と素子分離膜13との間に生じる隙間であって、導電性膜41の端部41aと素子分離膜13の端部13aとの間を示すものである。図2に示す領域29aは、隙間29の下部の半導体基板11の内部の領域を示している。
【0042】
なお、図1については、図面を見やすくするため、金属配線31および層間絶縁膜43を省略している。
【0043】
半導体基板11の表面には素子分離膜13を設け、この素子分離膜13により規定される能動領域14に電界効果型トランジスタを構成する要素を設けている。素子分離膜13は、図示しない隣接する他の素子を形成する能動領域14と電気的に絶縁分離する役割も持つ。
素子分離膜13は、例えば、シリコン酸化膜を用いることができる。なお、この素子分離膜13はフィールド絶縁膜とも呼ばれる。
【0044】
ゲート絶縁膜19は、素子分離膜13により規定される能動領域14の所定の部分の半導体基板11の表面に形成されている。ゲート絶縁膜19の下部の半導体基板11がチャネル領域となる。
ゲート絶縁膜19は、ゲート電極15と半導体基板11とを電気的に絶縁するため、絶縁性の高い薄膜を用いる。例えば、シリコン酸化膜を用いることができる。
【0045】
ゲート電極15は、能動領域14の所定の位置のゲート絶縁膜19の上部に形成しており、例えば、高濃度不純物を添加した電気的に低抵抗である多結晶シリコンを用いることができる。
【0046】
ゲート電極側壁膜17は、ゲート電極15の側壁に形成されており、すでに説明したように、LDD構造の電界効果トランジスタの半導体基板11に高濃度不純物を導入する際のマスクとして使われる。特に限定しないが、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜などを用いることができる。
【0047】
低濃度不純物拡散層23は、例えば、素子分離膜13とゲート電極15とをマスクとして、イオン注入法により低濃度不純物を、ゲート絶縁膜19を通して半導体基板11表面にイオン注入し、その後に活性化熱処理を施すことにより半導体基板11の表面直下に注入された低濃度不純物が半導体基板11の内部へ拡散することで形成する。
【0048】
イオン注入によって半導体基板11の表面直下に注入された低濃度不純物は、半導体基板11の内部における注入深さを自由に変更することができる。その方法は、後述するイオン注入の条件を変えることでなされるのである。本発明においては、注入深さの数値自体に特に意味を持つものではないから、以下の説明においては、不純物がイオン注入される部分を表面近傍と表現することにする。
【0049】
高濃度不純物拡散層25は、ゲート電極側壁膜17を形成した後、高濃度不純物を有する導電性膜41をソース領域とドレイン領域の上部に形成し、その後に活性化熱処理を施すことにより導電性膜41に含まれる高濃度不純物が半導体基板11の内部へ拡散することで形成する。
【0050】
導電性膜41は、高濃度不純物を含有して十分に抵抗の低い材料よりなる必要がある。もちろん、導電性膜41の材質や膜厚、さらには膜中に含まれる不純物濃度は、高濃度不純物拡散層25の拡散深さなどに応じて自由に変更することができるが、例えば、リン(P)を高濃度不純物として有する多結晶シリコン膜を、500Åの膜厚で構成することができる。
【0051】
なお、導電性膜41は、高濃度不純物拡散層25を形成後であっても、除去されずに残っており、ソース領域あるいはドレイン領域と一体となる構成物である。このため、後述するコンタクトホール45の形成にあっては、そのコンタクトホール45は、ソース領域およびドレイン領域の上部の導電性膜41のどこに設けてもよい。
【0052】
本発明の特徴は、まさにこの部分である。従来、高濃度不純物拡散層を形成するときにはイオン注入を用いているが本発明では用いないため、能動領域の半導体基板表面はアモルファス化しないのである。
ソース領域およびドレイン領域である半導体基板表面は、結晶状態が保たれていることにより、その後の製造工程で熱が印加されてもシリコン基板の再結晶化は起こりえない。したがって、ソース領域およびドレイン領域において、ゲート側壁膜端部での結晶欠陥は発生しないのである。
【0053】
図1、図2に示すように、低濃度不純物拡散層23と高濃度不純物拡散層25とでソース領域またはドレイン領域を構成している。この構成は、LDD構造である。つまり、LDD構造でいうライトドープ層が低濃度不純物拡散層23である。
ゲート絶縁膜19の下部の半導体基板11の部分がチャネル領域となり、このチャネル領域と高濃度不純物拡散層25との間に、この高濃度不純物拡散層25と接して低濃度不純物拡散層23を設けている。高濃度不純物拡散層25のチャネル領域と対向しない側は、素子分離膜13の端部13aと接するように設けるか、図2に示すように、素子分離膜13の内部方向に入り込むように設けてもよい。
【0054】
導電性膜41は、高濃度不純物拡散層25の上部の半導体基板11の表面に設けており、ゲート電極側壁膜17の端部17aに接し、素子分離膜13の端部13aとは、わずかに離間して設けている。この部分が隙間29となる。この端部13a側の導電性膜41の端部は、端部41aである。
【0055】
図1に示すように、素子分離膜13は、能動領域14(図1には図示しない)の四方向を囲んでいる。高濃度不純物拡散層25は、三方向を素子分離膜13で囲われているので、導電性膜41もその端部41aは、三方向の素子分離膜13の端部13aと、隙間29を有している。
つまり、導電性膜41は、ソース領域およびドレイン領域よりも内側にその端部41aを位置している。
【0056】
コンタクトホール45は、ソース領域およびドレイン領域、ゲート電極15と図示しない他の回路や配線等とを接続するために層間絶縁膜43に設ける開口部である。コンタクトホール45の素子分離膜13側を端部45b、ゲート電極側壁膜17側を端部45cとしている。層間絶縁膜43は、例えば、シリコン酸化膜を用いることができる。
【0057】
コンタクトホール45は、その底部45aにて導電性膜41の表面が露出している。先の説明のように、導電性膜41は、高濃度不純物拡散層25を形成後にソース領域あるいはドレイン領域の一部となる。もともと導電性膜41は高濃度不純物を含有しているから十分に抵抗が低い。このため、平面的に見て導電性膜41と重なるような位置にコンタクトホール45を設け、コンタクトホール45の底部45aまで金属配線31を設けさえすれば、導電性膜41を介して金属配線31と高濃度不純物拡散層25とを低抵抗で電気的に接続することができる。
【0058】
このように、層間絶縁膜43を開口してコンタクトホール45を形成するとき、その底部45aが導電性膜41を貫通しなければ、ソース領域およびドレイン領域となる半導体基板11の表面がプラズマ雰囲気にさらされることはない。
【0059】
金属配線31は、電気的に抵抗が十分に低い金属として、アルミニウムを用いることができる。また、アルミニウムを主材料とする複数の金属材料からなる金属を用いてもよい。
【0060】
コンタクトホール45は、導電性膜41と平面的に重なるように設けているため、導電性膜41の端部41aは、コンタクトホール45の開口部の端部45bより素子分離膜の端部13a側に位置している。
【0061】
なお、コンタクトホール45の底部45aにおける導電性膜41の表面は、導電性膜41の他の表面と同一平面でなくてもかまわない(図6(b)を参照のこと。)。
すなわち、コンタクトホール45の底部45aに露出する導電性膜41の表面をエッチ
ングにて堀り下げ、その部分の導電性膜41の膜厚を薄くしてもよい。大切なことは、コンタクトホール45の底部45aにて、半導体基板11の表面が露出していなければよいのである。
【0062】
ところで、素子分離膜13の端部13aは、バーズビークとも呼ばれ、素子分離膜13自体の膜応力が集中する部分である。このような部分と、導電性膜41の端部41aとが接していると、導電性膜41自体の膜応力の影響も素子分離膜13の膜応力に加算されてしまうことがある。そうすると、素子分離膜13の端部13aの半導体基板11に不測の応力が加わり、領域29aにおいて結晶欠陥が発生してしまうことがある。
【0063】
しかしながら、本発明の電界効果型トランジスタは、図1、図2に示すように、導電性膜41は、素子分離膜13との間に隙間29を有し、互いが接触しないようになっている。このような構成を有することで、導電性膜41と素子分離膜13との応力が素子分離膜13の端部13aの下部の半導体基板11の内部の領域29aに集中しないため、領域29aで結晶欠陥が発生してしまうことを防止できる。
【0064】
[第1の発明形態の製造方法の説明:図3〜図7]
次に、第1の実施形態の製造方法を簡単に説明する。なお、説明に際しては、図3から図7を用いるが、適宜図1、図2も参照されたい。また図3から図7にあっては、製造方法を説明するために必要な構成のみを図示するものとする。図3から図7は、図2と同様な方向からみた断面図である。また、同一の構成には同一の番号を付与している。
【0065】
図3に示すように、半導体基板11の表面に素子分離膜13を知られている選択酸化法などを用いて形成する。半導体基板11の表面は、この素子分離膜13により能動領域14が規定される。この能動領域14の半導体基板11の表面にゲート絶縁膜19を形成する。ゲート絶縁膜19は、例えば、シリコン酸化膜で構成し、その膜厚は、150Åである。その製造方法は、よく知られている酸素ガスと窒素ガスとからなる分圧ガス雰囲気で、1000℃程度の温度による熱酸化法により成膜する。
【0066】
半導体基板11の全面(表面の全て)にゲート電極15を形成するための多結晶シリコン膜を形成する。例えば、モノシランガスを主原料として用い、減圧雰囲気で650℃程度の温度による化学的気相成長法を用いて成膜することができる。
その後、知られているホトリソ技術とエッチング技術とを用いて、所定の部分の多結晶シリコン膜以外をエッチング除去すると、残る多結晶シリコン膜がゲート電極15となる。
【0067】
次に、素子分離膜13とゲート電極15とをマスクにして、半導体基板11上部より低濃度不純物を半導体基板11表面にイオン注入する。低濃度不純物はゲート絶縁膜19を通して、半導体基板11の表面近傍に到達する。半導体基板11に注入された低濃度不純物は、記号233を付与し、図中では〇印として模式的に示す。
低濃度不純物のイオン注入の条件は、ゲート絶縁膜19の材質や膜厚によって決まる場合もあるため、特に限定しないが、例えば、低濃度不純物としてリン(P)を用いた場合、そのイオン注入の条件としては、加速電圧を25KeVで、ドーズ量を5×E13atoms/cm程度である。
【0068】
低濃度不純物をイオン注入する工程では、イオン注入する際の加速エネルギーは低いため、ゲート絶縁膜19の膜厚が薄くても低濃度不純物をイオン注入された半導体基板11の表面はダメージを受けにくく、結晶状態を保つことができる。
【0069】
なお、通常は、イオン注入にあっては、半導体基板の内部に注入される不純物の濃度の
ピークをどの深さにするかを検討した上でイオン注入条件を設定する。例えば、半導体基板の表面直下に不純物濃度のピークがあり、半導体基板の深さ方向に行くにつれて不純物濃度が低くなるようにイオン注入する、などである。つまり、半導体基板の深さ方向に不純物濃度の勾配がある。図3にあっては、説明を簡単にするために不純物濃度の勾配を表現せず、半導体基板11の表面近傍に不純物が並ぶように〇印で模式的に表現している。
【0070】
次に、図4に示すように、ゲート電極15の側壁にゲート電極側壁膜17を形成する。ゲート電極側壁膜17は、化学的気相成長法を用いて半導体基板11表面にシリコン酸化膜を成膜し、ドライエッチング装置を用いて、エッチバック法により自己整合的にゲート電極15の側壁部に膜を残す方法で形成する。
【0071】
ゲート電極側壁膜17にシリコン酸化膜を用いた場合、ゲート絶縁膜19にはシリコン酸化膜を用いているため、上述のエッチバック工程で、ゲート電極15とゲート電極側壁膜17との下部を除くゲート絶縁膜19は除去される。よって、ゲート絶縁膜19は、ゲート電極15の下部とゲート側壁膜17の下部とにのみ残ることになる。
【0072】
次に、原料ガスとして、ホスフィン(PH)とモノシラン(SiH)とを用い、化学的気相成長法により、導電性膜として半導体基板11上に高濃度不純物であるリンを含む多結晶シリコン膜を成膜する。その後、ホトリソ技術とエッチング技術とを用いて多結晶シリコン膜を加工し、導電性膜41をその端部41aと素子分離膜13の端部13aとの間に隙間29を設けるように形成する。この導電性膜41の膜厚は、例えば、500Åである。なお、領域29aは、隙間29の下部の半導体基板11内部の部分である。
導電性膜41に含まれる高濃度不純物は、記号255を付与し、図中では●印として模式的に示す。なお、道電性膜41に含有される高濃度不純物255は、この時点ではまだ半導体基板11には拡散していない。
【0073】
次に、図5に示すように、活性化熱処理により、半導体基板11にイオン注入した低濃度不純物233と導電性膜41中に含まれる高濃度不純物255とを半導体基板11の内部に拡散させて、低濃度不純物拡散層23と高濃度不純物拡散層25とを形成する。
導電性膜41は高濃度不純物拡散層25と同一の不純物を有するシリコン膜であり、活性化熱処理により、低濃度不純物拡散層23と高濃度不純物拡散層25と導電性膜41とにより構成されるソース領域とドレイン領域とが形成されるのである。
活性化熱処理においては、知られているように、同一の温度を印加したとき、不純物濃度が低いとその拡散量が少なく、不純物濃度が高いとその拡散量が大きい。したがって、低濃度不純物拡散層23と高濃度不純物拡散層25とは、図5に示すような形状になる。
【0074】
なお、図5において、27は低濃度不純物拡散層23と高濃度不純物拡散層25と境界部分である。なお、この活性化熱処理の条件は、例えば、窒素雰囲気で、1000℃程度の温度で、1時間程度の熱処理を行う。
【0075】
すでに説明したように、本発明の電界効果トランジスタでは、高濃度不純物拡散層25を形成するためにイオン注入工程は用いておらず、半導体基板11の表面がアモルファス化することはない。活性化熱処理の工程の前に、導電性膜41の端部41aは素子分離膜13の端部13aと離間して隙間29を形成しているが、領域29aもアモルファス化しておらず結晶状態を保っている。また、そもそも低濃度不純物拡散層23と高濃度不純物拡散層25との境界部分27は安定した結晶状態でるから、活性化熱処理工程を行っても、半導体基板11の再結晶化は起こらず、結晶転位は発生しない。当然、境界部分27とゲート電極側壁膜17の端部17aとが平面的に重なっていても、仮に活性化熱処理工程においてゲート電極側壁膜17が応力を生じたとしても、境界領域27では結晶転位が発生することはないのである。
【0076】
次に、図6(a)に示すように、化学的気相成長法を用いて、半導体基板11上に層間絶縁膜43を成膜する。層間絶縁膜43は、図6(a)に示す例では単層膜として表示しているが、例えば、PSG膜(リンをドーピングしたシリコン酸化膜)とBPSG膜(ボロンおよびリンをドーピングしたシリコン酸化膜)とを積層した2層膜で構成することもできる。
その後、ホトリソ技術とプラズマ雰囲気を用いたドライエッチング技術とを用いて、ゲート電極15の上部と、ドレイン領域およびソース領域となる高濃度不純物拡散層25の上部と、の位置にコンタクトホール45を形成する。ドライエッチング技術によるコンタクトホール45の形成には、例えば、エッチングガスとして、四フッ化炭素(CF)と三フッ化炭化水素(CHF)との混合ガスを用い、圧力300mTorr程度のプラズマ雰囲気を用いる。
コンタクトホール45の開口径は、電界効果型トランジスタのサイズにより選択するものであるが、例えば0.5μm程度である。
【0077】
ゲート電極15の上部の層間絶縁膜43に形成するコンタクトホール45は、その底部においてゲート電極15の表面が露出している。高濃度不純物拡散層25の上部の層間絶縁膜43に形成するコンタクトホール45は、その底部45aにおいて導電性膜41の表面が露出している。
【0078】
なお、コンタクトホール45の底部45aは、導電性膜41の表面と同一平面になくてもかまわない。その様子を示す図が、図6(b)である。図6(b)は、図6(a)のコンタクトホール45の部分を拡大した部分拡大図である。
図6(b)に示すように、ドライエッチング技術によるコンタクトホール45の形成時に、コンタクトホール45の底部45aに露出する導電性膜41の表面をエッチングにて堀り下げている(その部分の導電性膜41の膜厚は薄くなっているが、貫通はしていない。)。
【0079】
一般に、シリコン酸化膜系の層間絶縁膜にドライエッチング技術によりコンタクトホールを形成する場合、層間絶縁膜の構成元素であるSiとエッチングガスの構成元素であるFとの反応性生物であるSiFの発光スペクトルの強度を測定し、層間絶縁膜が完全に除去されたことを検知する。
つまり、層間絶縁膜43のエッチングが進み、層間絶縁膜43とは異なる膜種(ここでは導電性膜41)が露出すると、エッチングガスの構成元素であるFと反応するSiの量が少なくなる、または変化するので、SiFの発光スペクトルの強度に大きな変化が生じ、層間絶縁膜43のエッチングが終了したと判断するのである。
【0080】
しかしながら、ドライエッチング技術によるエッチング工程といえども、エッチング残りが生じてしまうこともある。このため、スペクトル強度の変化によりエッチングの終了を確認した後、オーバーエッチングとして、一定時間の追加のドライエッチングを行うことがある。
なお、オーバーエッチングにおいては、コンタクトホールの底部に露出する膜種により、エッチングガスを変更するなど、コンタクトホールの形成とは異なるエッチング雰囲気を用いる場合もある。
【0081】
図6(b)に示すような構造は、特に限定しないが、上述のオーバーエッチングを用いることで容易に形成することができる。
つまり、SiFの発光スペクトルの強度を測定し、層間絶縁膜43にコンタクトホール45が形成されたあと、さらに所定時間エッチングを行なうのである。もちろん、上述のように、オーバーエッチングをエッチング時間で管理する方法のほか、エッチングガスを
変更する方法などがあるから、これらを適宜用いて形成すればよい。
【0082】
このような構成にすれば、コンタクトホール45を介して、後の工程で形成される金属配線とソース領域やドレイン領域になる高濃度不純物拡散層25とを接続するとき、コンタクトホール45の底部45aにて、導電性膜41と金属配線との接触面積が増え、より確実にソース領域やドレイン領域と金属配線とを接続することができる。
【0083】
図7に示すように、スパッタリング技術により半導体基板11の上部(層間絶縁膜43の上部)に金属膜を形成する。この金属膜は、コンタクトホール45の内部にも入り込む。なお、この金属膜は、例えば、アルミニウムを用いることができる。そして、その膜厚は、0.6μm程度である。
この金属膜は、ホトリソ技術とエッチング技術とを用いて所定の形状に加工して、金属配線31を形成する。
金属配線31は、ゲート電極15と、ドレイン領域およびソース領域であり高濃度不純物拡散層25に接続する導電性膜41と、コンタクトホール45を介して接続される。
【0084】
導電性膜41が多結晶シリコン膜の場合、金属配線31との接続抵抗は、コンタクトホール45の底部45aの部分に露出している導電性膜41の表面の結晶性に依存している。そして、その抵抗値は、露出している導電性膜41の表面と金属配線31とが合金化反応をすることで低くすることができる。
この合金化反応には、シンタリング処理を施すことで行われる。そしてその条件は、例えば、380℃の水素雰囲気において20分程度の処理である。
【0085】
コンタクトホール45の底部45aに露出している導電性膜41の表面がアモルファス化していたとすると、導電性膜41の表面と金属配線31との合金化反応は進まず、導電性膜41と金属配線31との接続抵抗を十分下げることはできないが、本発明では、コンタクトホール45の底部45aに露出している導電性膜41の表面は結晶状態であるため、十分に合金化反応が進み、導電性膜41と金属配線31との接続抵抗を下げることができる。
【実施例2】
【0086】
[第2の発明形態の構成の説明:図8]
次に、第2の実施形態を図8を用いて説明する。
第2の実施形態は、導電性膜41を積層膜で構成した例である。図8は、図2に示す方向と同じ方向から見た断面図である。図8において47は第2の導電性膜、47aは第2の導電性膜47の素子分離膜13側の端部である。なお、すでに説明した同一の構成には同一の番号を付与している。
【0087】
第2の実施形態では、導電性膜41の上部に平面的に重なるように第2の導電性膜47を設けている。導電性膜41の端部41aと第2の導電性膜47の端部47aとは、ほぼ一致している。導電性膜41と第2の導電性膜47とに含まれる高濃度不純物の濃度は同等とする。
【0088】
第2の導電性膜47は、導電性膜41に対してその膜応力が異なる膜で構成してもよい。例えば、第2の導電性膜47と導電性膜41とを同じ材質の導電性膜で構成したとしても、例えば、成膜条件により第2の導電性膜47を圧縮応力を持つ導電性膜、導電性膜41を引っ張り応力を持つ導電性膜としてもよいのである。
このような膜は、特に限定しないが、例えば、第2の導電性膜47をアモルファスシリコン膜とし、導電性膜41を多結晶シリコン膜とする。このような構成にすることで、第2の導電性膜47と導電性膜41との間でその膜応力が相殺され、積層膜全体の膜応力を
低減することができる。したがって、半導体基板11の内部に及ぼす応力の影響をさらに小さくすることができる。
【0089】
第2の実施形態では、導電性膜41および第2の導電性膜47の膜厚を自由に決めることができる。すでに説明した第1の実施形態では、導電性膜41の膜厚を500Åとする例を示した。第2の実施形態では、導電性膜41の膜厚を250Åとし、第2の導電性膜47の膜厚も250Åとし、総膜厚を同じにしてもよい。このようにすれば、高濃度不純物拡散層25の形成において、不純物の濃度を第1の実施形態と同一にすることができる。
【0090】
もちろん、導電性膜41と第2の導電性膜47とを異なる材質の膜で構成してもよい。例えば、導電性膜41を多結晶シリコン膜、第2の導電性膜47をチタン膜としてもよい。
そのような場合においても、成膜条件により多結晶シリコン膜の膜応力を引っ張り応力、チタン膜の膜応力を圧縮応力としておけば、上述の例と同じく、積層膜全体の膜応力を低減することができる。この場合、導電性膜41に含まれる高濃度不純物の濃度を調整することで、高濃度不純物拡散層25の形成において、不純物の濃度を第1の実施形態と同一にすることができる。
【0091】
なお、第2の実施形態の製造方法については、すでに説明した第1の実施形態の製造方法を応用したものである。すなわち、2つの導電性膜を形成するという点が異なるのみである。このことから、製造方法に関する詳細な説明は省略する。
【0092】
また、第2の実施形態に第1の実施形態で説明した構成を組み合わせてもかまわない。すなわち、層間絶縁膜43にコンタクトホール45を開口するとき、コンタクトホール45の底部45aを第2の導電性膜47の表面と同一平面とするのではなく、例えば、導電性膜41の表面まで掘り下げる加工をしてもかまわない。
そうすれば、図6(b)を用いて説明した効果と同様に、2つの導電性膜と金属配線31との接触面積が増え、より確実にソース領域やドレイン領域と金属配線31とを接続することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の電界効果型トランジスタは、高濃度不純物拡散層と低濃度不純物拡散層との境界部分で発生する結晶転位による結晶欠陥の発生を無くすことができる。このことから、高い信頼性が得られる電界効果型トランジスタを提供することができる。
【符号の説明】
【0094】
11 半導体基板
13 素子分離膜
13a 素子分離膜の端部
15 ゲート電極
17 ゲート電極側壁膜
17a ゲート電極側壁膜の端部
19 ゲート絶縁膜
23 低濃度不純物拡散層
25 高濃度不純物拡散層
27 境界部分
29 隙間
29a 隙間29の下部の領域
31 金属配線
41 導電性膜
41a 導電性膜の端部
43 層間絶縁膜
45 コンタクトホール
45a コンタクトホール45の底部
45b コンタクトホール45の端部
47 第2の導電性膜
47a 第2の導電性膜の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に設ける素子分離膜により規定される能動領域にソース領域、ドレイン領域、チャネル領域を有し、該チャネル領域の上部にゲート絶縁膜を介してゲート電極を有し、該ゲート電極の側壁にゲート電極側壁膜を設けてなる電界効果型トランジスタであって、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との上部に、前記素子分離膜と接しないように高濃度不純物を含有する導電性膜を設け、
前記能動領域の上部に層間絶縁膜を設けて、該層間絶縁膜を開口するコンタクトホールを設けるとき、該コンタクトホールは、前記導電性膜と平面的に重なる位置に設けると共に前記導電性膜が露出するように設けることを特徴とする電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
前記導電性膜は、少なくとも2つの膜を積層してなる積層膜で構成することを特徴とする請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
前記積層膜は、前記導電性膜同士が異なる膜応力となることを特徴とする請求項2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
前記コンタクトホールの底部は、前記導電性膜の表面より前記半導体基板方向に掘り下げた位置であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の電界効果型トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−171565(P2011−171565A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34803(P2010−34803)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】