説明

半導体装置、及びその製造方法

【課題】素子パターン寸法が微細化されたときでも、ヒューズ層を適切に、かつ、容易に切断することができ、生産性を向上させることが可能な半導体装置、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁膜2と、絶縁膜2上で所定の間隔をおいて互いに平行に形成されるとともに、レーザー光が照射されることによって切断可能に各々構成された複数のヒューズ層4を備えた半導体集積回路装置(半導体装置)1であって、絶縁膜2において、複数の各ヒューズ層4における、レーザー光が照射される照射部分の少なくとも下方に凹部2bを形成し、この凹部2bを跨ぐように、複数の各ヒューズ層4を形成するとともに、当該凹部2bの上方に、凹部2bの形状に応じた凹み4dを各ヒューズ層4に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冗長回路を備えた半導体集積回路装置などの半導体装置、特にレーザー光で切断されるヒューズ層を上記冗長回路に用いた半導体装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、例えばメモリセルが設けられた半導体集積回路装置では、メモリセルアレイに含まれた1個の欠陥メモリセルによって当該装置全体が使用できなくなるのを救済するために、一般的に冗長メモリセルが設けられている(例えば、下記特許文献1参照。)。また、上記のような欠陥メモリセルから冗長メモリセルへの切り替えは、通常、アドレス切り替え回路(冗長回路)に設けられたヒューズ層にレーザー光を照射して当該ヒューズ層を切断することによって行われている。
【0003】
ここで、図13及び図14を参照して、従来の半導体集積回路装置について具体的に説明する。なお、以下の説明では、DRAM(Dynamic Random Access Memory)を構成した従来の半導体集積回路装置について説明する。
【0004】
図13は従来の半導体集積回路装置の概略構成を説明する図であり、図14は従来の半導体集積回路装置の要部構成を示す断面図である。
【0005】
図13において、従来の半導体集積回路装置は、行方向及び列方向に沿って複数のメモリセルが各々設けられたメモリセルアレイ50を備えている。このメモリセルアレイ50では、m個(mは、2以上の整数)のロウデコーダ54a、54b、…、54mと、n個(nは、2以上の整数)のコラムデコーダ56a、56b、…、56nとが設けられている。ロウデコーダ54a、54b、…、54mには、ワードドライバ55a、55b、…、55mがそれぞれ接続されており、各ロウデコーダ54a、54b、…、54mから対応するワードドライバ55a、55b、…、55mを介在してワード線WLが行方向に延ばされている。一方、各コラムデコーダ56a、56b、…、56nからビット線BLが列方向に延ばされており、ワード線WLとビット線BLとは互いに交差するように配置されている。また、これらワード線WLとビット線BLとの交点には、メモリセルMCが設けられている。また、ワード線WLの外側には、スペアデコーダ52からスペアワードドライバ53を介在させてスペアワード線SWLが行方向に延ばされている。スペアワード線SWLと各ビット線BLとの交点には、スペアメモリセルSMCが設けられている。
【0006】
この従来の半導体集積回路装置では、スペアメモリセルSMC、スペアデコーダ52、及びスペアワードドライバ53が冗長回路を構成している。スペアデコーダ52には、ロウアドレスが入力される不良アドレス比較回路51が接続されており、この不良アドレス比較回路51の内部に上記ヒューズ層が形成されている。そして、この従来の半導体集積回路装置では、ヒューズ層により、上記欠陥メモリセルを冗長メモリセルに切り替えるための冗長回路が制御されるように構成されている。
【0007】
次に、図14を参照して、上記のような構成を有するDRAMのヒューズ層及びその近傍部分の構成について具体的に説明する。
【0008】
図14において、従来の半導体集積回路装置60では、DRAMの回路は半導体基板上に当該回路を構成する各種回路素子及びメモリ素子により構成されており、これらの素子を互いに接続する配線を備えている。この配線には、通常、多層構造配線が用いられており、図14では、最上位の配線層(ヒューズ層を含む。)の下の層間絶縁層(以下、“下地絶縁層”という。)61よりも上層の要部構成を示している。この下地絶縁層61は、下層の配線や各種回路素子及びメモリ素子と電気的な接続をさけるため、シリコン酸化膜などから形成されている。そして、下地絶縁層61の上には、最上位の配線層が形成されている。この最上位の配線層には、通常回路に用いられる配線層62、冗長回路に使用される冗長用のヒューズ層63、さらに図示しない外部接続用のパッドなどが含まれている。
【0009】
配線層62及びヒューズ層63は、互いに同様の加工工程にて形成されており、これらの配線層62及びヒューズ層63の膜構成は、図14に示すように、それぞれ下層より順に設けられた窒化物層62a、63a、導通層62b、63b、窒化物層62c、63cの三層構造からなる。導通層62b、63bは、各回路での実質的な配線の役割を果たしており、窒化物層62a、63aは、導通層62b、63bを流れる電子流、または熱応力による金属断線を防止する役割を果たしている。また、窒化物層62c、63cは、フォトリソグラフィ法により上記導通層62b、63bを加工する際の精度向上(導通層62b、63bの反射防止)の役割を果たしている。
【0010】
また、配線層62及びヒューズ層63は、配線間を完全に充填するような第1の絶縁層64で覆われており、さらに水分、汚染物などから配線層62を保護するため、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜などからなる第2の絶縁層65が設けられている。ここで、ヒューズ層63を切断するには、一般にレーザー光が用いられる。このレーザー光によるヒューズ層63の切断を容易にするため、通常、図14に示すように、ヒューズ層63上の第1の絶縁層64及び第2の絶縁層65は選択的に除去されて、開口部66が形成されており、ヒューズ層63上には薄い第1の絶縁層64が残った構造、または、ヒューズ層63が露出した構造とされる。
【0011】
以下、レーザー光によってヒューズ層63が切断される原理について説明する。レーザー光がヒューズ層63に照射されることにより、レーザー光がヒューズ層63に吸収されるとともに、ヒューズ層63は加熱される。その結果、ヒューズ層63は溶解、切断され、ヒューズ層63上に位置する第1の絶縁層64が吹き飛ばされる。このように、ヒューズ層63が切断されることにより、上記アドレス切り替え回路が欠陥を生じたメモリセルMC(不良ビット)とスペアメモリセルSMCを切り替え、不良メモリチップが正常動作可能なメモリチップとされて、当該DRAMは救済される。
【0012】
また、このレーザー光を用いたヒューズ層63の切断作業の際、適切なレーザー光の照射条件の設定が必要となる。すなわち、レーザー光のエネルギーが小さい、またはビーム径が小さい場合、正常にヒューズ層63の切断ができず、回路がつながったまま(つまり、ショート)の状態となり、スペアメモリセルSMCへ切り替えができない。逆に、レーザー光のエネルギーが大きい、またはビーム径が大きい場合、救済を行うヒューズ層63のみでなく、隣り合うヒューズ層63にダメージ(当該隣り合うヒューズ層63の切断、または、溶解による高抵抗化)を与え、このようなダメージによって正常なアドレス切り替えを行うことができずに、不良な半導体チップとなる。さらに、レーザー光の照射条件は、ヒューズ層63上に保護膜として形成されている第1の絶縁層64の膜厚にも大きく依存する。このため、ヒューズ層63を安定に切断するためにはレーザー光のエネルギー、ビーム径、ヒューズ層63上の第1の絶縁層64の膜厚のバラツキが重要なパラメータとなっている。そこで、従来の半導体集積回路装置では、ヒューズ層63を安定して切断するために様々な提案がなされている。
【0013】
例えば下記特許文献2では、配線幅方向で複数列に設けられたヒューズ層を直列接続した構造とする。これにより、レーザー光のエネルギー、ビーム径のバラツキ、レーザー光のアライメントずれなどが生じた場合でも、ヒューズ層を確実に切断できるとされていた。
【0014】
また、下記特許文献3では、複数並列に密集して形成されたヒューズ層において、ヒューズ層の周辺に複数の島状の領域(ヒューズ層と同じ材質で構成したもの)を形成した構造とする。これにより、レーザー光の照射時にヒューズ層周辺の島状領域の飛び散った痕跡をモニターし、レーザー光照射装置を安定稼動させて、バラツキを低減できるとされていた。
【0015】
また、下記特許文献4では、従来直方体状に形成されていたヒューズ層において、その本体形状を配線方向に交差する方向の両端部の位置が高く、中央に向かって低くなるような表面構造とする。これにより、レーザー光の照射時に当該ヒューズ層上面の湾曲形状により、冗長(救済)用のヒューズ層のエネルギー吸収率を増加させるとともに、エネルギー分散を抑え、隣り合うヒューズ層へのダメージを抑制可能とされていた。
【0016】
また、特許文献1では、複数並列に密集して形成されたヒューズ層において、両端のヒューズ層の外側にダミーヒューズ層を形成することにより、ヒューズ層の配線パターン転写時に配線密度が粗い面に生じる配線パターンの断面形状の変形を防ぐ構造とする。これにより、レーザー光の照射時、全てのヒューズ層の切断を安定して行えるとされていた。
【0017】
また、下記特許文献5では、ヒューズ層の中間部分に下地絶縁層に段差(凸)を設け、そのエッジ部のヒューズ層の膜厚を局所的に薄くする。その結果、レーザー光の照射時、上記薄膜部にエネルギーが集中し、確実に切断可能とされていた。
【特許文献1】特開2000−12691号公報
【特許文献2】特開平4−363049号公報
【特許文献3】特開平2−302059号公報
【特許文献4】特開2000−340663号公報
【特許文献5】特開平5−21604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、上記のような従来の半導体装置(半導体集積回路装置)では、各種回路素子やメモリ素子などの高集積化、または冗長回路の大規模化などにより、ヒューズ層は複数密集して形成されることが多くなっている。つまり、従来の半導体装置では、上記回路素子などの素子パターン寸法の微細化に応じて、複数のヒューズ層においても微細な所定の間隔で配列されるようになってきており、上記のような従来例では、ヒューズ層の適切な切断を容易に行えないことがあった。
【0019】
ここで、図15〜図19を参照して、上記のような従来例での上記ヒューズ層の切断に関する問題点について具体的に説明する。
【0020】
図15は従来例でのヒューズ層の切断に関する問題点を説明する図であり、図16は図15のA−A’線断面図である。図17は従来例でのヒューズ層の切断に関する別の問題点を説明する図であり、図18は図17のB−B’線断面図である。図19は従来例でのヒューズ層の切断条件範囲を説明する図であり、図19(a)及び図19(b)はそれぞれヒューズ層上の絶縁膜の厚さが薄い場合及び厚い場合での図である。
【0021】
図15及び図16に示すように、3つのヒューズ層63のうち、冗長救済対象の中央のヒューズ層63を切断する際、当該ヒューズ層63にレーザー光Rを照射すると、レーザー光Rはヒューズ層63に吸収され、このヒューズ層63は加熱されて溶解し、上記第1の絶縁層64を押し上げ、吹き飛ばす。その結果、図15及び図16に示すヒューズ痕67が形成される。また、このヒューズ痕67の内部では、冗長救済対象のヒューズ層63は完全に蒸発し、当該ヒューズ層63は切断される。また、この時、レーザー光Rより発せられた熱エネルギー68、冗長救済対象のヒューズ層63だけではなく、そのヒューズ層63の周辺部分にも拡がる。そのため、冗長救済対象のヒューズ層63の図の右側及び左側で各々隣り合うヒューズ層63へも熱エネルギー68が伝えられ、これら隣り合う各ヒューズ層63で加熱、溶解が起きて、ダメージ69を引き起こすことが多いという問題点があった。
【0022】
以上のようにヒューズ層63は、半導体装置での素子パターン寸法の微細化が進むにつれて、並列された複数のヒューズ層63の間隔も小さくなり、隣り合うヒューズ層3へのダメージ69を与え易くなるという不具合が発生することがあった。
【0023】
一方、隣り合うヒューズ層3へのダメージ69を防ぐために、レーザー光Rのエネルギーを小さくしたり、そのビーム径を小さくしたりすると、図17及び図18に示すように、冗長救済対象のヒューズ層63の溶解、蒸発が正常に行われず、そのヒューズ層63の一部である、金属残り70が発生して、ヒューズ層63の切断を適切に行えなくなるという不具合が発生することがあった。上記の相反する不具合によって、従来の半導体装置では、ヒューズ層63を適切に切断可能な切断条件範囲は縮小される。また、レーザー光Rの照射時のアライメントずれ、レーザー光Rのエネルギーやビーム径の精度誤差などにより、上記切断条件範囲はさらに縮小される。この結果、従来の半導体装置では、ヒューズ層63を適切に切断することが難しくなり、欠陥を生じたメモリセル(不良ビット)の冗長回路への置換が正常に行うことができずに、半導体装置の歩留りの低下を招くことがあった。
【0024】
具体的にいえば、従来の半導体装置において、例えばヒューズ層63の膜構造に、TiN膜、AlCu膜、TiN膜、及びTi膜の積層構造を用いるとともに、これらの膜厚をそれぞれ35nm、600nm、23nm、及び40nmとし、各膜の線幅を500nmとする。さらに、ヒューズ層63上の第1の絶縁層64として、HDP−NSG(High Density Plasma-Non Doped Silicon Glass)を用いた構造での上記切断条件範囲を、図19(a)及び図19(b)に示す。また、これらの図19では、縦軸及び横軸にレーザー光Rのエネルギー及びビーム径をそれぞれ示しており、図19(a)及び図19(b)では、ヒューズ層63上での第1の絶縁膜64の膜厚がそれぞれ50nm及び400nmである場合を示している。
【0025】
図19に示すようにレーザー光Rのエネルギー及びビーム径の少なくとも一方を小さくすると、ヒューズ層63の切断不良が発生し、またレーザー光Rのエネルギー及びビーム径の少なくとも一方を大きくすると、隣接するヒューズ層63へのダメージ69が発生する。このように従来の半導体装置では、冗長救済対象のヒューズ層63を正常に切断し、隣り合うヒューズ層63へダメージ69を与えない、切断条件範囲は狭いものであった。特に、図19(b)のように、ヒューズ層63上での第1の絶縁層64の膜厚が400nm以上の厚い場合、上記切断条件範囲は非常に狭かった。また、ヒューズ層63上の第1の絶縁層64の膜厚がバラツキにより厚くなった場合、レーザー光Rの照射によりヒューズ層63を溶解して当該第1の絶縁層64を吹き飛ばすのに必要なエネルギーが、膜厚が薄い場合に比べ大きくなるため、その分切断条件範囲はさらに小さくなった。この結果、従来の半導体装置では、その製造歩留りが低下して、生産性を向上させることが困難であった。
【0026】
上記の課題に鑑み、本発明は、素子パターン寸法が微細化されたときでも、ヒューズ層を適切に、かつ、容易に切断することができ、生産性を向上させることが可能な半導体装置、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる半導体装置は、絶縁膜と、前記絶縁膜上で所定の間隔をおいて互いに平行に形成されるとともに、レーザー光が照射されることによって切断可能に各々構成された複数のヒューズ層を備えた半導体装置であって、
前記絶縁膜には、前記複数の各ヒューズ層における、前記レーザー光が照射される照射部分の少なくとも下方に凹部が形成され、
前記各ヒューズ層は、前記絶縁膜の凹部を跨ぐように形成され、
前記各ヒューズ層には、前記絶縁膜の凹部の形状に応じた凹みが当該凹部の上方に形成されていることを特徴とするものである。
【0028】
上記のように構成された半導体装置では、複数の各ヒューズ層に、上記絶縁膜に形成された凹部の形状に応じた凹みが形成されているので、上記レーザー光が照射されたときに、そのレーザー光のヒューズ層外側へのエネルギー分散を抑制して、当該ヒューズ層に対するエネルギー吸収を増加させることができる。これにより、上記従来例と異なり、素子パターン寸法が微細化されたときでも、ヒューズ層を適切に、かつ、容易に切断することができ、生産性を向上させることが可能となる。
【0029】
また、上記半導体装置において、前記絶縁膜の凹部は、前記複数のいずれかのヒューズ層に対して照射されたレーザー光が当該ヒューズ層の凹みの表面で反射して前記凹みの底面に再入射するように、形成されていることが好ましい。
【0030】
この場合、ヒューズ層に対するレーザー光のエネルギー吸収を容易に増加させることができ、ヒューズ層をより適切に、かつ、より容易に切断することができる。
【0031】
また、上記半導体装置において、前記絶縁膜の凹部には、底面と、前記底面に対して所定の角度で傾斜されたテーパー面とが設けられ、かつ、
前記絶縁膜の凹部では、前記複数のいずれかのヒューズ層に対して照射されたレーザー光が当該ヒューズ層の凹みの、前記テーパー面に応じた表面で反射して前記凹みの底面に再入射するように、前記底面と前記テーパー面とがなす角度が設定されてもよい。
【0032】
この場合、ヒューズ層に対するレーザー光のエネルギー吸収を容易に、かつ、確実に増加させることができる。また、上記角度を変更することにより、切断し易いヒューズ層を容易に構成したり、ヒューズ層を切断するときでのレーザー光の出力、ビーム径などの調整を簡単に行えたりすることが可能となる。
【0033】
また、上記半導体装置において、前記ヒューズ層には、高融点金属の窒化物を用いた窒化物層と、金属を用いた導通層とが含まれていることが好ましい。
【0034】
この場合、上記窒化物層によって熱応力による導通層の断線を容易に防ぐことができる。
【0035】
また、上記半導体装置において、前記ヒューズ層は、TiNを上層、Tiを下層とする積層膜を下層とし、TiNを上層、アルミ合金を下層とする積層膜を上層とする積層構造であってもよい。
【0036】
この場合、TiNを上層、Tiを下層とする積層膜と、TiNとによって、熱応力によるアルミ合金の断線を容易に防ぐことができる。
【0037】
また、上記半導体装置において、前記ヒューズ層は、スパッタリング蒸着法を用いて形成されていることが好ましい。
【0038】
この場合、絶縁膜の凹部の形状に応じたヒューズ層の凹みを簡単に形成することが可能となる。
【0039】
また、上記半導体装置において、前記絶縁膜の凹部では、その上部が広く、かつ、下部が狭くなるように構成されてもよい。
【0040】
この場合、適切に、かつ、容易に切断可能なヒューズ層を簡単に構成することができる。
【0041】
また、上記半導体装置において、前記絶縁膜の凹部では、その深さが前記ヒューズ層の膜厚より浅くなるように構成されてもよい。
【0042】
この場合、レーザー光の照射作業が容易なヒューズ層を構成することができる。
【0043】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、絶縁膜と、前記絶縁膜上で所定の間隔をおいて互いに平行に形成されるとともに、レーザー光が照射されることによって切断可能に各々構成された複数のヒューズ層を備えた半導体装置の製造方法であって、
前記絶縁膜において、前記複数の各ヒューズ層における、前記レーザー光が照射される照射部分の少なくとも下方に凹部を形成する工程、及び
前記工程で形成した前記絶縁膜の凹部を跨ぐように、かつ、前記凹部の形状に応じた凹みが当該凹部の上方に形成されるように、前記複数の各ヒューズ層を形成する工程を備えていることを特徴とするものである。
【0044】
上記のように構成された半導体装置の製造方法では、上記絶縁膜に形成された凹部の形状に応じた凹みを、複数の各ヒューズ層に形成することができるので、上記レーザー光が照射されたときに、そのレーザー光のヒューズ層外側へのエネルギー分散を抑制して、当該ヒューズ層に対するエネルギー吸収を増加可能な半導体装置を製造することができる。これにより、上記従来例と異なり、素子パターン寸法が微細化されたときでも、ヒューズ層を適切に、かつ、容易に切断することができ、生産性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、素子パターン寸法が微細化されたときでも、ヒューズ層を適切に、かつ、容易に切断することができ、生産性を向上させることが可能な半導体装置、及びその製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の半導体装置、及びその製造方法の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、従来例との対比を容易なものとするために、DRAMを構成する半導体集積回路装置に本発明を適用した場合を例示して説明する。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0047】
図1は、本発明の一実施形態にかかる半導体集積回路装置の要部構成を示す斜視図である。図1において、本実施形態の半導体集積回路装置1は、シリコン酸化膜などを用いた層間絶縁層としての下地絶縁層2を備えており、半導体集積回路装置1では、同図の一点鎖線の左側及び右側にそれぞれ通常回路及び冗長回路が設けられている。また、この半導体集積回路装置1では、下地絶縁層2上に当該半導体集積回路装置1での最上位の配線層が形成されている。すなわち、この最上位の配線層には、通常回路に用いられる配線層3、冗長回路に使用されるとともに、レーザー光が照射されることによって切断可能に各々構成された複数の冗長用のヒューズ層4、さらに図示しない外部接続用のパッドなどが含まれている。なお、下地絶縁層2の下層には、他の配線層やトランジスタなどの回路素子、またはメモリ素子等が公知の製造方法により形成されており、当該下地絶縁層2によって上記最上位の配線層との間で電気的な接続が生じるのを防がれている。
【0048】
配線層3及びヒューズ層4は、同じ材料及び互いに同様の加工工程にて形成されており、これら配線層3及びヒューズ層4の膜構成は、図1に示すように、それぞれ下層より順に設けられた窒化物層3a、4a、導通層3b、4b、窒化物層3c、4cの三層構造からなる。窒化物層3a、4aには、例えばTiNとTiの積層構造が用いられている。また、導通層3b、4bには、例えばAlCuが用いられている。また、窒化物層3c、4cには、例えばTiNが用いられている。
【0049】
また、導通層3b、4bは、各回路での実質的な配線の役割を果たしており、窒化物層3a、4aは、導通層3b、4bを流れる電子流、または熱応力による金属断線を防止する役割を果たしている。また、窒化物層3c、4cは、フォトリソグラフィ法により上記導通層3b、4bを加工する際の精度向上(導通層3b、4bの反射防止)の役割を果たしている。
【0050】
また、本実施形態の半導体集積回路装置1では、図1に示すように、配線層3は平坦な下地絶縁層2上に形成されている。一方、図1に例示するように、3つのヒューズ層4が下地絶縁膜2上で所定の間隔をおいて互いに平行に形成されている。また、これらの各ヒューズ層4は、下地絶縁層2に形成された凹部2b上に凹み4dを有するように形成されており、レーザー光を照射することによってヒューズ層4を切断する際に、当該ヒューズ層4の切断を適切に、かつ、容易に行えるようになっている(詳細は後述。)。
【0051】
さらに、本実施形態の半導体集積回路装置1では、後に詳述するように、配線層3及びヒューズ層4上に絶縁層5が設けられており、これらの配線層3及びヒューズ層4を保護するようになっている。但し、ヒューズ層4の上方の絶縁層5は、レーザー光によるヒューズ層4の切断を容易にするために、絶縁層5の一部が選択的に除去されて、後述の開口部が形成されている。
【0052】
以下、図2〜図7を参照して、本実施形態の半導体集積回路装置1の製造方法について具体的に説明する。尚、以下の説明では、ヒューズ層4の製造工程について主に説明する。
【0053】
図2(a)は上記半導体集積回路装置の製造工程を説明する平面図であり、図2(b)は図2(a)のIIb−IIb線断面図である。図3(a)は上記半導体集積回路装置の製造工程を説明する平面図であり、図3(b)は図3(a)のIIIb−IIIb線断面図である。図4(a)は上記半導体集積回路装置の製造工程を説明する平面図であり、図4(b)は図4(a)のIVb−IVb線断面図である。図5(a)は上記半導体集積回路装置の製造工程を説明する平面図であり、図5(b)は図5(a)のVb−Vb線断面図である。図6(a)は上記半導体集積回路装置の製造工程を説明する平面図であり、図6(b)は図6(a)のVIb−VIb線断面図である。図7(a)は上記半導体集積回路装置の製造工程を説明する平面図であり、図7(b)は図7(a)のVIIb−VIIb線断面図である。
【0054】
本実施形態の半導体集積回路装置1では、まず、図2において、下地絶縁膜2のヒューズ層3が形成される表面2a上にフォトリソグラフィ法によりレジストパターン(図示せず)を形成した後、当該レジストパターンをエッチングマスクとして下地絶縁層2に対してエッチングを行う。これにより、下地絶縁層2の上記表面2a側には、平坦面2a1、テーパー面2a2、底面2a3、テーパー面2a4、及び平坦面2a5が連続的に形成され、さらにはテーパー面2a2、底面2a3、及びテーパー面2a4にて囲まれた断面台形状の凹部2bが設けられる。また、底面2a3と、テーパー面2a2、2a4との各なす角度は、同じ角度とされており、後に詳述するように、ヒューズ層4に対するレーザー光のエネルギー吸収を容易に、かつ、確実に増加させることができるよう構成されている。
【0055】
また、図2に示した製造工程での下地絶縁層2をエッチングする範囲、すなわち凹部2bの形成範囲は、複数の各ヒューズ層4における、レーザー光が照射される照射部分に対応している。具体的には、凹部2bでは、そのヒューズ層4の長さ方向(図2(a)の上下方向)の寸法は、ヒューズ層4の配線長に比べて、十分短い寸法とされている。また、この凹部2bのヒューズ層4の長さ方向の寸法は、レーザー光のビーム径の幅と同じ程度、例えば2.0〜5.0μmとされている。
【0056】
また、凹部2bでは、その上部が広く、かつ、下部が狭くなるように構成されており、適切に、かつ、容易に切断可能なヒューズ層4を簡単に構成することができる。また、凹部2bでは、その深さ(底面2a3と平坦面2a1、2a5との間の寸法)がヒューズ層4の膜厚より浅くなるように構成されており、レーザー光の照射作業が容易なヒューズ層4を構成可能とされている。具体的には、凹部の深さは、500nmである。また、凹部2bの形成方法には、ウェットエッチングによる等方エッチング法やドライエッチングが用いられている。
【0057】
次に、図3に示すように、下地絶縁層2の表面2a上に、ヒューズ層4を形成する。尚、図3(a)では、図面の簡略化のために、底面2a3だけを点線にて図示している(後掲の図4(a)〜図8(a)においても、同様。)。
【0058】
具体的には、表面2a上に対して、TiNを上層、Tiを下層とする積層膜を下層として形成する。これらのTiN及びTiは窒化物層4aを構成しており、それらTiN及びTiの膜厚は例えば23nm及び40nmにそれぞれ設定されている。次に、この窒化物4a上に対して、TiNを上層、AlCuを下層とする積層膜を形成する。これらTiN及びAlCuのうち、窒化物層4a上に順次積層されるAlCuが導通層4bを構成し、TiNが窒化物層4cを構成している。また、AlCu及びTiNの膜厚は例えば600nm及び35nmにそれぞれ設定されている。このように、本実施形態のヒューズ層4には、高融点金属であるTiの窒化物を用いた窒化物層4a、4cと、AlCuを用いた導通層4bが含まれており、窒化物層4a、4cにより導通層4bの断線を容易に防止できるように構成されている。さらに、ヒューズ層4の窒化物層4a、4c及び導通層4bは、スパッタリング蒸着法を用いて形成されており、絶縁膜2の凹部2bの形状に応じたヒューズ層4の凹み4dを簡単に形成することができるよう構成されている。
【0059】
尚、上記の説明では、窒化物層4a、4cにTiNを用いた場合について説明したが、本実施形態の窒化物層4a、4cはこれに限定されるものではなく、高融点金属であるTa、Nbなどの窒化物であるTaN、NbNなどの金属を使用することができる。また、上記の説明では、導通層4bにAlCuを用いた場合について説明したが、Cu、Poly−Siなどの他の金属や半導体材料を使用することもできる。
【0060】
続いて、図4において、ヒューズ層4上に、フォトリソグラフィ法によりレジストパターン(図示せず)を形成する。このレジストパターンをエッチングマスクとして、ヒューズ層4に含まれた窒化物層4a、導通層4b、窒化物層4cの不要部のエッチングを行い、例えば図4に例示するように、7つのヒューズ層4を下地絶縁層2上に形成する。なお、この各ヒューズ層4の形成工程と同時に、通常回路における最上位の上記配線層3についても、レジストパターンを用いたエッチングによって形成される。また、ヒューズ層4の配線幅寸法(図4(a)の左右方向の寸法)は、例えば0.5μmであり、隣り合う2つのヒューズ層4の間隔寸法は、例えば6.0μmである。
【0061】
次に、図5に示すように、ヒューズ層4を覆うように第1の絶縁層5aを形成する。第1の絶縁層5aは、平坦性がよく、少なくとも最上位のヒューズ層4の間(及び複数の配線層3の各間)を隙間なく完全に充填するのに十分な厚さに形成されている。具体的にいえば、第1の絶縁層5aは、高密度プラズマを用いた化学気相成長法(CVD法)を用いて形成されるHDP−NSG(High Density Plasma-Non Doped Silicon Glass)膜であり、膜厚は1000nmである。このようなプロセスは、高アスペクト比ギャップを充填できる優れたギャップ充填性を有し、表面がかなり平坦化されるので後続の層を平滑に堆積することができる。なお、第1の絶縁層5aは、プラズマを用いたCVD法によって堆積されたシリコン窒化膜であってもよい。
【0062】
続いて、図6に示すように、第1の絶縁層5aの上に、当該第1の絶縁層5aよりも高い気密性を有し、優れた耐湿性を有する第2の絶縁層5bを形成する。これらの第1及び第2の絶縁層5a、5bによって、図1に示した絶縁層5が構成されている。また、第2の絶縁層5bは、保護膜として外部からの水分、または不純物などの浸透に対して耐性がある必要がある。具体的にいえば、第2の絶縁層5bは、プラズマを用いたCVD法によって堆積されたシリコン窒化膜であり、その膜厚は、例えば600nmである。なお、シリコン酸化膜を第2の絶縁層5bに用いることもできる。
【0063】
次に、図7に示すように、ヒューズ層4上の第1及び第2の絶縁層5a、5bに、第2の絶縁層5bの表面から所定深さでこれらの絶縁層5a、5bを除去することで開口部7を形成する。この開口部7の形成には、公知のエッチング技術が使用されている。具体的には、第2の絶縁層5b上の開口部7の形成予定位置に開口を有するレジストパターンを形成し、それをマスクとして第1及び第2の絶縁層5a、5bに応じたエッチングガス(例えば、CF4やハロゲン)を用い、第2の絶縁層5b、第1の絶縁層5aを順にドライエッチングする。このようにしてヒューズ層4の表面を露出させるか、またはヒューズ層4上の第1の絶縁層5aを完全には除去せず、当該第1の絶縁層5aの一部を被覆膜として残すようにする。なお、この場合、ヒューズ層4上の被覆膜(第1の絶縁層5a)の膜厚は150nm程度である。
【0064】
以上のように、ヒューズ層4が完成されるが、ヒューズ層4上の第1の絶縁層5aの膜厚を薄くすることにより、レーザー光照射の際のヒューズ層4の溶解、さらには第1の絶縁層5aの押し上げを容易にすることができる。また、開口部7の領域は、ヒューズ層4の凹み4dの範囲と等しく形成するか、または大きく形成し、ヒューズ層4の配線長方向においてはその長さより短く形成されている。なお、ヒューズ層4上で開口部7が形成された後、半導体集積回路装置1の外部に電気的に接続するために、上記パッド上の第1及び第2の絶縁層5a、5bに開口が形成されて(図示せず)、当該半導体集積回路装置1は完成される。その後、パッドを介して半導体集積回路装置1の電気特性の検査が行われ、その検査結果に基づいてヒューズ層4の切断の要、不要が判定される。
【0065】
続いて、図8〜図10を参照して、本実施形態でのレーザー光の照射によるヒューズ層4の切断工程を具体的に説明する。
【0066】
図8(a)は上記半導体集積回路装置でのレーザー光照射によるヒューズ層の切断工程を説明する平面図であり、図8(b)は図8(a)のVIIIb−VIIIb線断面図である。図9は、図8に示したヒューズ層の切断部を示す拡大断面図であり、図10(a)及び図10(b)は凹部が設けられた基板に対してのスパッタリング蒸着法を用いた金属膜の成膜工程を説明する図である。
【0067】
図8において、3つのヒューズ層のうち、中央のヒューズ層4が切断される場合、当該ヒューズ層4に対して、レーザー光Rが真上から垂直に照射される。そして、ヒューズ層4が切断されると、楕円状のヒューズ痕8が形成される。また、本実施形態では、ヒューズ層4の切断の際に、レーザー光Rのエネルギーやビーム径が従来と同条件であったとしても、ヒューズ層4では上面に凹み4dが形成されて、湾曲状に構成されている。このため、本実施形態では、レーザー光Rのエネルギーは凹み4dの中央に集中し、ヒューズ層4の切断の際でのエネルギー吸収率が増加する。
【0068】
詳細にいえば、図9に示すように、ヒューズ層4にレーザー光Raが照射されて、ヒューズ層4に達すると、レーザー光Raのエネルギーは矢印Rbに示すようにヒューズ層4に吸収される。しかしながら、レーザー光Raの一部は、ヒューズ層4の凹み4d内の表面層で反射して、反射光Rcとなる。ここで、ヒューズ層4の表面が平坦、つまり凹む4dが形成されていなければ、反射光Rcはレーザー光Raに対し180度反転して進行する。ところが、ヒューズ層4の表面では、凹み4dにより湾曲しているので、反射光Rcは入射光である、レーザー光Raに対し角度を変えて進行する。それ故、レーザー光Raの経路によっては、反射光Rcは再度ヒューズ層4の凹み4d内部側の表面に達し、ヒューズ層4に再入射して、熱エネルギーRdとなってヒューズ層4に吸収される。この結果、ヒューズ層4に凹み4dを有する構造では、ヒューズ層4が平坦な時に比べ、レーザー光Rの吸収エネルギーを総和的に大きくさせることができ、ヒューズ層4の溶解、切断を容易に行わせることができる。
【0069】
さらに、本実施形態の絶縁膜2の凹部2bでは、底面2a3と、テーパー面2a2、2a4との各なす角度は、ヒューズ層4に対して照射されたレーザー光Rが当該ヒューズ層4の凹み4dの、テーパー面2a2、2a4に応じた表面で反射して、凹み4dの底面に再入射するように、設定されている。これにより、本実施形態では、ヒューズ層4に対するレーザー光Rのエネルギー吸収を容易に、かつ、確実に増加させることができる。また、上記角度を変更することにより、切断し易いヒューズ層4を容易に構成したり、ヒューズ層4を切断するときでのレーザー光Rの出力、ビーム径などの調整を簡単に行えたりすることが可能となっている。
【0070】
また、凹み4dを有する構造は、ヒューズ層4に含まれた窒化物層4a、導通層4b、窒化物層4cをスパッタリング蒸着法により形成した場合に、凹み4dの形状でヒューズ層4の膜厚が局所的に薄く形成される箇所が発生する。
【0071】
以下、基材10に対して、スパッタリング蒸着法を用いて、例えばアルミニウム11を成膜する場合を例示して説明する。また、基材10では、その成膜面10aに、下地絶縁層2と同様に、連続的に形成された平坦面10a1、テーパー面10a2、底面10a3、テーパー面10a4、及び平坦面10a5が設けられ、かつ、断面台形状の凹部10bが形成されている。図10(a)に示すように、スパッタリング蒸着法を開始した後の初期段階では、成膜面10aの平坦面10a1、10a5、テーパー面10a2、10a4、及び底面10a3上に、ほぼ同じ厚さでアルミニウム11が蒸着される。その後、処理時間が経過するにつれて、図10(b)に示すように、底面10a3と各テーパー面10a2、10a4との境界部分上へのアルミニウム11の堆積が他の部分に比べて、著しく少なくなる。これは、各テーパー面10a2、10a4上に堆積されたアルミニウム11が庇状となり、その下方の上述の各境界部分上へのアルミニウム11の堆積を阻害するためであるからである。これにより、基材10の成膜面10aにおいて、アルミニウム11の局所的な薄膜化を確実に行わせることができる。これと同様に、下地絶縁層2では、底面2a3と各テーパー面2a2、2a4との境界部分上において、ヒューズ層4を局所的に薄膜化して、ヒューズ層4の溶解、切断を容易に行わせることができる。
【0072】
以上のように構成された本実施形態では、複数の各ヒューズ層4に、絶縁膜2に形成された凹部2bの形状に応じた凹み4dが形成されているので、レーザー光Rが照射されたときに、そのレーザー光Rのヒューズ層4の外側へのエネルギー分散を抑制して、当該ヒューズ層4に対するエネルギー吸収を増加させることができる。これにより、上記従来例と異なり、素子パターン寸法が微細化されたときでも、ヒューズ層4を適切に、かつ、容易に切断することができ、生産性を向上させることが可能となる。
【0073】
また、以上のように、本実施形態では、ヒューズ層4の適切な切断を容易に行えるため、従来例に比べて、ヒューズ層へのレーザー光のエネルギーやビーム径をより小さくしても、完全に、かつ、再現性よく、安定した状態で切断することが可能となる。その結果、隣り合うヒューズ層4へのダメージが防止でき、ヒューズ層4間の間隔を現状より縮小することができ、冗長回路の面積縮小や微細化も可能となる。
【0074】
ここで、本実施形態でのヒューズ層4の切断条件範囲を図11に示す。図11では、縦軸及び横軸にレーザー光Rのエネルギー及びビーム径をそれぞれ示しており、図11(a)及び図11(b)では、ヒューズ層4上での第1の絶縁膜5aの膜厚がそれぞれ50nm及び400nmである場合を示している。
【0075】
図11(a)及び図11(b)に示すように、図19(a)及び図19(b)に示した従来例に比べて、正常なヒューズ層4の切断を行える条件範囲が大きく広げられている。また、図11(b)で示すように、第1の絶縁層5aの膜厚が厚い場合でも、同条件の図19(b)に比べて、レーザー光Rのエネルギーやビーム径が小さい領域まで切断可能な範囲が拡大されている。具体的には、本実施形態では、レーザー光Rのエネルギーとして、例えばエネルギー密度0.03〜0.07μJ/μm2、ビーム径としては、2.0〜5.0μmという切断条件を使用することができる。
【0076】
尚、上記の説明では、絶縁膜2に底面2a3及びテーパー面2a2、2a4を設けて、断面台形状の凹部2bを構成した場合について説明したが、本実施形態の絶縁膜の凹部は、ヒューズ層に対して照射されたレーザー光が当該ヒューズ層の凹みの表面で反射して凹みの底面に再入射するように、形成されているものであればよい。
【0077】
具体的には、例えば図12(a)に示すように、下地絶縁層12の表面12aに、平坦面12a1、湾曲面12a2、及び平坦面12a3を形成し、かつ、断面半楕円状の凹部12bを設けたものでもよい。また、図12(b)に例示するように、下地絶縁層22の表面22aに、互いに直交するように連続的に設けられた平坦面22a1、側面22a2、底面22a3、側面22a4、及び平坦面22a5を形成し、かつ、断面矩形状の凹部22bを設けたものでもよい。
【0078】
尚、上記の実施形態はすべて例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって規定され、そこに記載された構成と均等の範囲内のすべての変更も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0079】
例えば、上記の説明では、DRAMを構成する半導体集積回路装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は複数のヒューズ層が形成される絶縁膜において、各ヒューズ層における、レーザー光が照射される照射部分の少なくとも下方に凹部を形成し、この凹部を跨ぐように、各ヒューズ層を形成するとともに、当該凹部の上方に、凹部の形状に応じた凹みを各ヒューズ層に形成するものであれば何等限定されない。
【0080】
具体的には、SRAM(Static Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の半導体集積回路装置や単機能のディスクリート部品などの各種半導体装置に適用することができる。また、上記の説明以外に、ヒューズ層毎に、凹部を形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、素子パターン寸法が微細化されたときでも、ヒューズ層を適切に、かつ、容易に切断することができ、生産性を向上させることが可能な半導体装置、及びその製造方法に対して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態にかかる半導体集積回路装置の要部構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は上記半導体集積回路装置の製造工程を説明する平面図であり、(b)は(a)のIIb−IIb線断面図である。
【図3】(a)は上記半導体集積回路装置の製造工程を説明する平面図であり、(b)は(a)のIIIb−IIIb線断面図である。
【図4】(a)は上記半導体集積回路装置の製造工程を説明する平面図であり、(b)は(a)のIVb−IVb線断面図である。
【図5】(a)は上記半導体集積回路装置の製造工程を説明する平面図であり、(b)は(a)のVb−Vb線断面図である。
【図6】(a)は上記半導体集積回路装置の製造工程を説明する平面図であり、(b)は(a)のVIb−VIb線断面図である。
【図7】(a)は上記半導体集積回路装置の製造工程を説明する平面図であり、(b)は(a)のVIIb−VIIb線断面図である。
【図8】(a)は上記半導体集積回路装置でのレーザー光照射によるヒューズ層の切断工程を説明する平面図であり、(b)は(a)のVIIIb−VIIIb線断面図である。
【図9】図8に示したヒューズ層の切断部を示す拡大断面図である。
【図10】(a)及び(b)は凹部が設けられた基板に対してのスパッタリング蒸着法を用いた金属膜の成膜工程を説明する図である。
【図11】上記半導体集積回路装置でのヒューズ層の切断条件範囲を説明する図であり、(a)及び(b)はそれぞれヒューズ層上の絶縁膜の厚さが薄い場合及び厚い場合での図である。
【図12】(a)及び(b)はそれぞれ図1に示した凹部の変形例1及び変形例2を説明する図である。
【図13】従来の半導体集積回路装置の概略構成を説明する図である。
【図14】従来の半導体集積回路装置の要部構成を示す断面図である。
【図15】従来例でのヒューズ層の切断に関する問題点を説明する図である。
【図16】図15のA−A’線断面図である。
【図17】従来例でのヒューズ層の切断に関する別の問題点を説明する図である。
【図18】図17のB−B’線断面図である。
【図19】従来例でのヒューズ層の切断条件範囲を説明する図であり、(a)及び(b)はそれぞれヒューズ層上の絶縁膜の厚さが薄い場合及び厚い場合での図である。
【符号の説明】
【0083】
1 半導体集積回路装置(半導体装置)
2、12、22 下地絶縁層(絶縁層)
2a2、2a4 テーパー面
2a3 底面
4 ヒューズ層
4a 窒化物層
4b 配線層
4c 窒化物層
4d 凹み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜と、前記絶縁膜上で所定の間隔をおいて互いに平行に形成されるとともに、レーザー光が照射されることによって切断可能に各々構成された複数のヒューズ層を備えた半導体装置であって、
前記絶縁膜には、前記複数の各ヒューズ層における、前記レーザー光が照射される照射部分の少なくとも下方に凹部が形成され、
前記各ヒューズ層は、前記絶縁膜の凹部を跨ぐように形成され、
前記各ヒューズ層には、前記絶縁膜の凹部の形状に応じた凹みが当該凹部の上方に形成されている、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁膜の凹部は、前記複数のいずれかのヒューズ層に対して照射されたレーザー光が当該ヒューズ層の凹みの表面で反射して前記凹みの底面に再入射するように、形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁膜の凹部には、底面と、前記底面に対して所定の角度で傾斜されたテーパー面とが設けられ、かつ、
前記絶縁膜の凹部では、前記複数のいずれかのヒューズ層に対して照射されたレーザー光が当該ヒューズ層の凹みの、前記テーパー面に応じた表面で反射して前記凹みの底面に再入射するように、前記底面と前記テーパー面とがなす角度が設定されている請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ヒューズ層には、高融点金属の窒化物を用いた窒化物層と、金属を用いた導通層とが含まれている請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ヒューズ層は、TiNを上層、Tiを下層とする積層膜を下層とし、TiNを上層、アルミ合金を下層とする積層膜を上層とする積層構造である請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ヒューズ層は、スパッタリング蒸着法を用いて形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁膜の凹部では、その上部が広く、かつ、下部が狭くなるように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記絶縁膜の凹部では、その深さが前記ヒューズ層の膜厚より浅くなるように構成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
絶縁膜と、前記絶縁膜上で所定の間隔をおいて互いに平行に形成されるとともに、レーザー光が照射されることによって切断可能に各々構成された複数のヒューズ層を備えた半導体装置の製造方法であって、
前記絶縁膜において、前記複数の各ヒューズ層における、前記レーザー光が照射される照射部分の少なくとも下方に凹部を形成する工程、及び
前記工程で形成した前記絶縁膜の凹部を跨ぐように、かつ、前記凹部の形状に応じた凹みが当該凹部の上方に形成されるように、前記複数の各ヒューズ層を形成する工程
を備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−44079(P2009−44079A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209858(P2007−209858)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】