半導体装置の製造方法及び半導体装置
【課題】配線材との密着性が良く、バリア性の高い金属膜をもつ半導体装置、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に絶縁膜、金属からなるバリアメタル膜、及びCu配線金属膜がこの順で積層された積層構造を具備してなり、バリアメタル膜の酸化物のX線回折測定による回折強度が、バリアメタル膜とCu配線金属膜との化合物の回折強度の10倍以下である。
【解決手段】基板上に絶縁膜、金属からなるバリアメタル膜、及びCu配線金属膜がこの順で積層された積層構造を具備してなり、バリアメタル膜の酸化物のX線回折測定による回折強度が、バリアメタル膜とCu配線金属膜との化合物の回折強度の10倍以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の構造及びその製造方法に関わり、特に銅膜のバリアメタルを含む配線構造とその製造方法とに関わる。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(LSI)の多層配線には比抵抗の低い銅(Cu)膜が用いられ、層間絶縁膜に形成した溝やビアホールにCu膜を埋め込むダマシン配線が主流になっている。配線幅はLSIの微細化とともに細くなり、配線間容量の低下を目的として配線厚は薄くなる傾向がある。そのため微細ダマシン配線では、比抵抗の高いバリアメタル膜の配線断面積に占める割合が配線抵抗に大きく影響する。つまり、バリアメタル膜が薄いほどダマシン配線の抵抗は低くなる。しかし、バリアメタル膜には層間絶縁膜へのCu原子の拡散防止、Cu膜との密着性、及び層間絶縁膜との密着性が同時に求められる。
【0003】
特にバリアメタル膜とCu膜との密着性は、配線のエレクトロマイグレーション(EM)耐性やストレスマイグレーション(SM)耐性において非常に重要である。さらにバリアメタル膜は上記要求を満たす最も薄い膜厚で、且つ層間絶縁膜に形成した溝の底面や側面に一様な厚みでコンフォーマルに形成されることが望まれている。
【0004】
次に、薄いバリアメタル膜の形成について、昨今の状況を述べる。一般的な、物理気相成長法(PVD法)は段差被覆性が低い。そのため、層間絶縁膜に形成された溝とビアホールを金属で埋め込んで形成するデュアルダマシン構造では、PVD法によりコンフォーマルなバリアメタル膜を形成することが困難である。そのため、基板バイアスによってメタルイオンを引き込んでボトムカバレッジを改善し、イオンの再スパッタ効果を利用してサイドカバレッジを改善するイオン化PVD法が開発され、バリアメタル膜の形成に用いられてきた。しかし、配線の微細化、高アスペクト化により、配線抵抗、バリア性、及び密着性を保つのに十分なコンフォーマル成膜が今後ますます困難となる。一方、化学気相成長法(CVD法)により、コンフォーマルなバリアメタル膜を形成することが可能であるが、SM不良の問題から、配線工程では高温プロセスが適用できない。そのため、CVD法では配線工程の許容温度で分解する、バリアメタル膜として成膜したい材料の原料ガスが少ない問題がある。また、極薄膜のコンフォーマルな成膜方法として基板表面に原子層を一層ずつ積み上げて薄膜を成長させる原子層成長法(ALD法)が提案されている。ALD法では厚い膜を形成する方法には向かないが、段差被覆性よく極薄膜を形成できる。ALD法もCVD法と同様に配線工程の許容温度内で原料ガスを熱分解させることが難しい問題があり、低温化のために、吸着した原料ガスを分解するステップでプラズマ照射により分解を促進する方法(例えば、特許文献1参照。)やUV光照射により分解を促進する方法(例えば、特許文献2、3参照。)が提案されている。
【0005】
最近の層間絶縁膜は、信号遅延を抑制するために低誘電率絶縁膜が用いられるようになってきている。低誘電率絶縁膜は、有機系絶縁膜だけではなく、無機系絶縁膜であっても炭素(C)を多く含み、空孔が多く、水(H2O)等の酸化種がトラップされている。そのため、CVD法、ALD法においてプラズマ照射を用いて成膜温度を低温化する方法では、原料ガスの分解工程でのプラズマ照射により絶縁膜中の炭素が放出され、絶縁膜がダメージを受ける問題がある。特に、水素(H)や酸素(O)を含むガスを用いたプラズマの場合は、低誘電率絶縁膜のエッチングが起こり、絶縁膜のはがれが生じる場合がある。
【0006】
更に、酸化種を多く含む低誘電率絶縁膜では、プラズマ照射やUV光照射を用いて、補助的に分解温度を低温化するALD法やCVD法を用いてもバリアメタル膜の形成時にバリアメタル膜が酸化される場合がある。酸化したバリアメタル膜は、酸化種の透過を抑制できない。その結果、酸化種によりバリアメタル膜すべてが酸化し、バリアメタル膜とCu膜等の配線材との密着性が低下する問題がある。
【0007】
バリアメタル膜とCu膜との密着性は、材料として決まる密着性と、バリアメタル膜が変質して経時的に変化する密着性がある。特に、経時的な密着性の変化は、製造工程中だけでなく、実使用時にSM、EM不良などを引き起こすため、極めて深刻である。プラズマ照射、電子ビーム照射、紫外線照射を伴う加工工程や絶縁膜キュア工程では、絶縁膜中の炭素を含む分子が放出され、絶縁膜がダメージを受け、脱離した炭素が結合していたサイトには水が吸着しやすい。
【0008】
この製造工程中、或いは実使用中にバリアメタル膜が経時的に変質する原因は、絶縁膜中に含まれる酸化種によりバリアメタル膜が酸化し、Cu膜との密着性が低下することがある。また、絶縁膜中に含まれるCを含む分子により、バリアメタル膜が炭化(カーバイド化)する場合もある。
【0009】
このように、バリアメタル膜の変質を抑制し、密着性を保持することが、今後ますます難しくなる。また、あらかじめ界面に酸化物を形成するプロセス(例えば、特許文献4参照)が提案されているが、酸化物を積極的に形成した場合、価数の大きな密度の低い酸化物を形成されるため、所望の形態は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−297814号公報
【特許文献2】特開2001−220287号公報
【特許文献3】特開2002−170821号公報
【特許文献4】特開2000−269213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、配線材との密着性良く、金属膜を形成する半導体装置の製造方法、及び配線材との密着性が良い金属膜を備えた半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、基板上に絶縁膜、金属からなるバリアメタル膜、及びCu配線金属膜がこの順で積層された積層構造を具備してなり、バリアメタル膜の酸化物のX線回折測定による回折強度が、バリアメタル膜とCu配線金属膜との化合物の回折強度の10倍以下である半導体装置が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、基板上に絶縁膜、金属からなるバリアメタル膜、及びCu配線金属膜がこの順で積層された積層構造を具備してなり、バリアメタル膜の酸化物のX線回折測定による回折強度が、バリアメタル膜とCu配線金属膜との化合物の回折強度の10倍以下である半導体装置の製造方法であって、第1の基板温度で、表面に凹部が形成された絶縁膜中及びその絶縁膜表面の酸化を一部残存するように放出させる工程と、酸化種を放出させる工程と真空連続で、第1の基板温度より低い、絶縁膜中から酸化種が放出されない第2の基板温度で、絶縁膜上に、バリアメタル膜を形成する工程と、バリアメタル膜上にCu配線金属膜を形成する工程と、バリアメタル膜を形成後、絶縁膜中に残存させた酸化種によって、バリアメタル膜の少なくとも一部を酸化させる工程と、バリアメタル膜とCu配線金属膜との界面に、バリアメタル膜とCu配線金属膜との化合物を形成する工程とを含み、バリアメタル膜を酸化させる工程は、バリアメタル膜を第1の基板温度よりも高い温度で加熱する工程を含む半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配線材との密着性が良い配線構造を形成できる半導体装置の製造方法、及び配線材との密着性が良い金属膜を備えた半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その3)。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その4)。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その5)。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その6)。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その7)。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その8)。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その9)。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その10)。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その11)。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その12)。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を行う半導体製造装置の例を示す模式図である。
【図14】従来の半導体装置の製造方法により形成される酸化膜の構造を示す断面構造図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法により形成される酸化膜の構造を示す断面構造図である。
【図16】370℃、60分熱処理後のサンプルをX線回折法により解析した結果であり、図16(a)は従来技術を用いて製造されたサンプルの解析結果を示すグラフ、図16(b)はステージ温度25℃で第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて製造されたサンプルの解析結果を示すグラフ、図16(c)はステージ温度−20℃で第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて製造されたサンプルの解析結果を示すグラフ、図16(d)は解析に使用したサンプルの構造を示す模式図である。
【図17】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法及び関連技術を用いてそれぞれ製造されたチタン酸化膜のEELS分析結果を示すグラフである。
【図18】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて製造される半導体装置の例を示す構造断面図である。
【図19】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて製造された配線の二次イオン質量分析(SIMS)の結果を示す表である。
【図20】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて製造された配線のアニール前の抵抗率に対するアニール後の抵抗率の比を示すグラフである。
【図21】Ti膜及びTiOx膜の分子密度を示すグラフである。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法により形成されたCuシード膜の例を示す構造断面図であり、図22(a)はイオン化スパッタ法によるCuシード膜形成例、図22(b)はCVD法によるCuシード膜形成例(その1)、図22(c)はCVD法によるCuシード膜形成例(その2)である。
【図23】本発明の第3の実施の形態の比較例(その1)に係る半導体装置の製造方法により形成される配線層の構造を示す断面構造図であり、図23(a)は加熱を伴う工程前の断面構造図、図23(b)は加熱を伴う工程後の断面構造図である。
【図24】本発明の第3の実施の形態の比較例(その2)に係る半導体装置の製造方法により形成される配線層の構造を示す他の断面構造図であり、図24(a)は加熱を伴う工程前の断面構造図、図24(b)は加熱を伴う工程後の断面構造図である。
【図25】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法により形成される配線層の構造を示す断面構造図であり、図25(a)は加熱を伴う工程前の断面構造図、図25(b)は加熱を伴う工程後の断面構造図である。
【図26】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的なフロー図である。
【図27】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程フロー図である(その1)。
【図28】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程フロー図である(その2)。
【図29】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程フロー図である(その3)。
【図30】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程フロー図である(その4)。
【図31】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の効果を説明するための模式図である。
【図32】従来の半導体装置の製造方法を示す模式的なフロー図である。
【図33】従来の半導体装置の製造方法により形成される酸化膜の構造を示す断面構造図である。
【図34】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法により形成される酸化膜の構造を示す断面構造図である。
【図35】本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程フロー図である。
【図36】従来の半導体装置の製造方法により形成されるAl酸化膜の構造を示す断面構造図である。
【図37】本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて形成されるAl酸化膜の構造を示す断面構造図である。
【図38】本発明の第6の実施の形態に係る半導体製造装置の構造を示す模式図であり、図38(a)は断面図であり、図38(b)は上面図である。
【図39】本発明の第6の実施の形態に係る半導体製造装置の他の構造を示す模式図である。
【図40】本発明の第6の実施の形態に係る半導体製造装置の更に他の構造を示す模式図であり、図40(a)は断面構造図であり、図40(b)は上面図である。
【図41】本発明の第6の実施の形態に係る半導体製造装置の構造を示す模式図であり、図41(a)はEB照射を行う半導体製造装置の模式図、図41(b)はUV光照射を行う半導体製造装置の模式図である。
【図42】図41に示した半導体製造装置を使用する絶縁膜のキュア工程を説明するための工程フロー図であり、図42(a)はキュア工程を2回に分割する場合の工程フロー図、図42(b)はキュア工程を1回で行う場合の工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して、本発明の第1乃至第6の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0017】
又、以下に示す第1乃至第6の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係わる半導体装置の製造方法は、絶縁膜から放出されるガスを使用して、金属膜と絶縁膜との界面に接する金属膜の表面に酸化物を形成する方法である。
【0019】
図1〜図12を用いて、まず半導体装置の製造工程について説明する。以下では、配線材にCu膜、バリアメタル膜にチタン(Ti)膜、絶縁膜に有機系低誘電率絶縁膜であるポリアリーレンエーテル(以下、PAEと略す)膜及び無機系低誘電率絶縁膜である炭素含有シリコン酸化(以下、SiCOと略す)膜等を使用したデュアルダマシン構造の多層配線を形成する場合を説明する。
【0020】
(イ)図には示していないが、半導体基板10内の半導体素子等に電気的に接続された下層電極が露出する第1のシリコン酸化(SiO2)膜21上に第1のPAE膜22及び第2のSiO2膜23を順次形成し、図1に示す構造断面図を得る。
【0021】
(ロ)次に、図2に示すように、フォトリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)法等を用いて、第1のPAE膜22及び第2のSiO2膜23を選択的にエッチング除去して第1配線溝201を形成する。次いで、第2のSiO2膜23の表面、第1配線溝201の側面部及び底部にバリアメタル膜として第1のTi膜30bを形成する。第1のTi膜30bは、段差被覆性良く形成され、図3に示す構造断面図を得る。
【0022】
(ハ)図4に示すように、真空連続で第1のCuシード膜41を形成する。次いで、めっき装置を用いて第1配線溝201を充填するように第1のCuめっき膜42を形成する(図5)。次に、Cu膜のセルフエージングなどによる膜質の経時変化によるばらつきを防ぐ為に、あらかじめ大粒径化する熱処理工程を行う。その後、化学的機械研磨(CMP)法を用いて第1のCuめっき膜42と第1のTi膜30bの平坦化を行い、図6に示すように第1のTi膜30b及び第1のCuめっき膜42からなる第1配線層40が形成される。
【0023】
(ニ)次に、図7に示すように、炭窒化シリコン(SiCN)膜51、SiCO膜52、第2のPAE膜53、第3のSiO2膜54を順次に形成する。ここで、SiCN膜51はRIE法を用いる工程におけるストッパー膜、及びCuの拡散防止膜として形成される。又、第3のSiO2膜54はCMP法を用いる工程における保護膜として形成される。SiCN膜51、SiCO膜52、第2のPAE膜53、及び第3のSiO2膜54により層間絶縁膜50が形成される。
【0024】
(ホ)次いで、フォトリソグラフィ技術及びRIE法を用いて層間絶縁膜50を選択的にエッチング除去して、第2配線溝202及びビアホール203を形成する。その結果、図8に示すように第1配線層40の表面の一部が露出する。次いで、層間絶縁膜50の表面にバリアメタル膜として第2のTi膜30cを形成する。第2のTi膜30cは段差被覆性良く形成され、図9に示す構造断面図を得る。
【0025】
(ヘ)図10に示すように、真空連続で第2のCuシード膜71を形成する。次いで、めっき装置を用いて第2配線溝202及びビアホール203を充填するように第2のCuめっき膜72を形成する(図11)。次に、Cu膜のセルフエージングなどによる膜質の経時変化によるばらつきを防ぐ為に、あらかじめ大粒径化する熱処理工程を行う。その後、CMP法を用いて第2のCuめっき膜72と第2のTi膜30cの平坦化を行い、図12に示すように第2のTi膜30c及び第2のCuめっき膜72からなる第2配線層70が形成される。更に多層配線を形成するためには、図7〜図12の工程を繰り返せばよい。
【0026】
以下に、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の例を説明する。以下では、図7に示す層間絶縁膜50及び図9に示した第2のTi膜30cを形成する場合を例に説明する。図7の説明で述べたように、第1配線層40上にストッパー膜としてSiCN膜51、層間絶縁膜としてSiCO膜52及び第2のPAE膜53、CMP法を用いる工程における保護膜として第3のSiO2膜54等が適用可能である。又、層間絶縁膜として、SiCO膜52のみ或いは第2のPAE膜53のみを形成してもよい。複数種の絶縁膜からなる層間絶縁膜のうち、少なくとも1つの絶縁膜に吸湿性の高いポーラス膜を使用した場合、絶縁膜から放出される酸化種が多くなる。「ポーラス膜」とは、誘電率を低下させるために空孔を多く含む膜であり、絶縁膜から放出されるガスを使用して金属膜の表面に酸化物を形成するうえで、その膜中に水などの酸化種を含む、特に比誘電率3以下の絶縁膜を用いることは極めて有効である。
【0027】
(イ)図8に示したように、フォトリソグラフィ技術及びRIE法を用いて層間絶縁膜50を選択的にエッチング除去して、第2配線溝202及びビアホール203を形成する。その後、例えば250℃以上300℃以下の温度で、真空中或いはH2ガス等の還元雰囲気中で熱処理を行う。この熱処理により、層間絶縁膜50中に含まれるH2O、或いは第2配線溝202及びビアホール203の形成時に結合が切れて、層間絶縁膜50中に残っている炭素系の残留物等が除去される。このとき、還元雰囲気中で行えば、ビアホール203底部に露出した第1配線層40表面の酸化膜の還元処理も行える。
【0028】
(ロ)次に、真空連続にて、バリアメタル膜を形成する、例えば図13に示すイオン化スパッタリングチャンバー内に、基板10を搬送する。そして、少なくとも層間絶縁膜50の脱ガス処理工程での加熱温度以下、望ましくは室温以下に設定されたサセプタ上に基板10を設置する。基板10はサセプタに吸着され、基板10の温度をサセプタと同等の温度に保つ。
【0029】
(ハ)図9で説明したように、イオン化スパッタリング法等の方法により、第2のTi膜30cを形成する。一般に、通常プラズマを用いて第2のTi膜30c膜を形成する場合、第2のTi膜30c形成中に基板10の温度が上昇する。そのため、第2のTi膜30cの形成前に行われる脱ガス処理或いはH2還元加熱処理における温度を超えないように、第2のTi膜30c形成中は、基板10の温度を制御する。例えば、脱ガス処理或いはH2還元加熱処理を250℃で行っていれば250℃を超えない温度、300℃で行っていれば、300℃を超える温度にならないように基板10の温度を制御する。
【0030】
(ニ)次に、真空連続にて基板10をCu膜形成用のチャンバーに搬送し、基板10を室温以下に冷却し、図10に示すように第2のCuシード膜71を形成する。第2のCuシード膜71は、所望の膜厚、例えば60nm程度の膜厚になるようにPVD法、CVD法、或いはALD法等によって形成すればよい。次いで、基板10を大気中に出し、図11に示したように、めっき法にてビアホール203及び第2配線溝202を第2のCuめっき膜72で埋め込む。そして、第2のCuめっき膜72のセルフエージングなどによる膜質の経時変化によるばらつきを防ぐ為に、あらかじめ大粒径化する熱処理工程(めっき後アニール)を行う。めっき後アニールを、真空、窒素(N2)ガス雰囲気中、或いはN2/H2ガス雰囲気中のいずれかにおいて、温度150℃/時間60分〜温度300℃/時間60分等の条件で行う。このアニール条件は、種々めっきの条件と共に、最適温度や最適時間が変わることは言うまでも無い。最後にCMP法により第2のCuめっき膜72の平坦化を行い、デュアルダマシン構造を形成する。
【0031】
以下に、Ti膜の形成時のTi酸化について説明する。既に述べたように、誘電率を下げるため、低誘電率絶縁膜は空孔が多い。そのため、基板10を加熱した場合、絶縁膜の空孔内に含まれる水や酸素等の酸化種が溝、あるいはビアホールの側面から放出される。図14(a)に示すように、スパッタ粒子であるTi原子が飛来してくる過程において酸化種が放出されると、Ti原子は酸素と結合して酸化チタン(TiOx)を形成する。その場合、Ti原子は他のTi原子と結合していない状態で酸素と結合するため、Ti−O原子間距離が広い。これは、Ti粒子が原子状或いは分子状で飛来し、十分な酸化反応を生じやすい形態で酸化物を生じるため、安定な結合を形成する酸化物で、比較的価数が大きな酸化物が形成されうるためである。このような成膜過程を繰り返して絶縁膜20の表面に形成されるTiOx膜は、Ti−O原子間隔が広く、分子密度が低いTiOx膜となってしまう(図14(b))。さらに図14(c)に示すように、このような分子密度の低いTiOx膜は、絶縁膜20に残留する酸化種のさらなる放出を抑えられず、最終的にはすべてのTi膜は分子密度の低いTiOx膜として形成されてしまう。このようなTiOx膜はCu膜との密着性が低く、溝、あるいはビアホールにCu膜が配線材として埋め込まれた場合、TiOx/Cu界面でCu原子の界面拡散が起こってしまう。つまり、Cu配線のSM耐性が低く、配線中にボイドが発生する。
【0032】
一方、脱ガス処理工程より低い温度でTi膜を形成した場合は、図15(a)のように、絶縁膜20からの酸化種の放出がない。そのため、図15(b)に示すようにTiOx等を含まない純(pure)Ti膜30aがバリアメタル膜として形成される。この後、Ti膜形成後の絶縁膜形成工程やシンタリング工程などにおいて、脱ガス処理工程より高い温度に加熱された場合、絶縁膜20中に残存した酸化種が放出され、絶縁膜20に接するTi膜30aの表面は酸化される。しかし、Ti膜30aのTi−Ti結合が既に形成されている為、Ti膜30aの酸化は、Ti−Ti原子間への拡散と固溶によって進行する。そのため、分子密度が緻密なTiOx膜が形成される(図15(c))。分子密度が高いTiOx膜は、絶縁膜20からの酸化種の放出を抑制する。そのため、Ti膜30aの酸化は、絶縁膜20とTi膜30aとの界面近傍の領域に限られ、界面から離れた領域のTi膜が酸化することを抑制できる。つまり、第1の実施の形態に係る半導体製造方法によれば、配線金属膜と絶縁膜の両方に接する金属膜において、金属膜が配線金属膜に接する部分の金属の原子或いは分子密度と比較して、金属膜が絶縁膜に接する部分の金属の原子或いは分子密度の方が高く、かつ金属の密度が徐々に変化する半導体装置を実現できる。図1〜図12に示した半導体装置でいえば、第2のCuめっき膜72と層間絶縁膜50の両方に接する第2のTi膜30cにおいて、第2のTi膜30cが第2のCuめっき膜72に接する部分のTiの原子或いは分子密度と比較して、第2のTi膜30cが層間絶縁膜50に接する部分のTiの原子或いは分子密度の方が高く、かつ第2のTi膜30cのTiの原子密度が徐々に変化する。
【0033】
第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の、脱ガス処理工程及びバリアメタル成膜工程の温度の上下関係を規定することにより、溝、あるいはビアホールにCu膜が埋め込まれた時点では、Ti/Cu界面でのTi膜は酸化されていない。そして、良好な密着性を確保できたTi/Cu界面を形成した後の工程で、バリアメタルの酸化が、前述のような分子密度の差をもって生じることになる。その結果、Ti/Cu界面は密着性を保つことができ、Cu膜のSM耐性が劣化することはない。又、分子密度が高いTiOx膜は絶縁膜20からの酸化種の放出を抑制することに有効であるだけでなく、Cuの絶縁膜20中への拡散を抑制する効果も合わせもつ。本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、特に比誘電率3以下の絶縁膜20に対して極めて有効である。
【0034】
第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法にて作成したサンプルの解析結果を、図16(a)〜(d)に示す。図16(a)〜(c)は、X線回折法の2θ―θ法で本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造方法を用いて製造したサンプルと、先行技術で製造したサンプルを比較測定した結果である。図16(b)、図16(c)のステージ温度はTi膜の成膜時のステージ保持温度であり、基板の温度ではないことを記しておく。横軸は測定時の2θである。縦軸は強度(Intensity)、単位はcps(count per sec)である。
【0035】
図16(a)〜(c)から、先行技術により形成されたサンプルのTiOx膜のピーク強度は2182cpsである。一方、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造方法により形成されたサンプルのTiOx膜のピーク強度は、ステージ温度25℃では706cps、ステージ温度−20℃では543cpsである。つまり、先行技術により形成されたサンプルのTiOx膜のピーク強度は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造方法により形成されたサンプルのTiOx膜のピーク強度に比べて大きいことがわかる。先行技術においては、Ti膜が成膜時に低誘電率絶縁膜から放出された酸化種で酸化され、シンター工程などの熱処理工程中も酸化種の放出を抑えられず、酸化が進行したと考えられる。一方、第1の実施の形態に係る半導体製造方法においては、Ti膜の成膜中の酸化が抑えられる。そのため、Ti膜の成膜後の加熱工程において分子密度の高いTiOx膜が形成され、それ以上のTi膜の酸化の進行を抑えられたと考えられる。また、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造方法では、Ti膜が酸化されなかったため、Ti膜とCu膜が接する領域でTiCux膜が形成されていることが図16(a)〜図16(c)からわかる。TiCux膜のピーク強度は、ステージ温度25℃では224cps、ステージ温度−20℃では210cpsである。一方、先行技術においては、TiCux膜のピーク強度は108cpsであり、ほぼバックグラウンド強度と同等か、計測できないレベルである。以上の結果から、先行技術ではTiCux膜の形成量は非常に少ないか、或いはTiCux膜は形成されていないと考えられる。
【0036】
更に、本発明者らが多数の実験と鋭意研究を行った結果、2θ―θ法で測定したTiCux膜のピーク強度を1とした場合に、TiOx膜のピーク強度が10を超えるとき、半導体装置の信頼性が劣化することが明らかになった。Ti膜を、TiOx膜ではなく、TiCux膜が多く形成されるように形成比率をコントロールすることにより、TiCux膜が、Cu膜とTi膜との密着層となり、Cu膜のSM耐性、EM耐性を大幅に向上することができる。図16(d)に構成を示したサンプルのCu膜、Ti膜及び低誘電率絶縁膜は、図12の第2のCuめっき膜70、第2のTi膜30c及び層間絶縁膜50に相当する。したがって、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置によれば、基板上に絶縁膜、金属膜、及び配線金属膜がこの順で積層された積層構造を具備してなり、積層構造におけるX線回折測定による金属膜の酸化物の回折強度が、金属膜と配線金属膜との化合物の回折強度に対し、10倍以下である半導体装置を実現できる。例えば、図12に示すように基板10上に層間絶縁膜50、第2のTi膜30c及び第2のCuめっき膜70がこの順に積層された積層構造を具備してなり、積層構造におけるX線回折測定法によるTi酸化物の回折強度が、第2のTi膜30cと第2配線層70との化合物の回折強度に対し、10倍以下である半導体装置を実現できる。
【0037】
図1〜図12に説明した工程を繰り返すことにより多層配線を形成し、その後、電極用のCuパッド或いはAlパッドを形成する。そして、最終工程として多層アニールを行う。なお、真空中、或いはH2等の還元雰囲気中での脱ガス処理工程における処理温度以下の低い温度で、第2のTi膜30cの形成が行われるのであれば、第2のTi膜30cの形成方法には、PVD法以外に、CVD法或いはALD法が採用可能である。
【0038】
通常、低誘電率絶縁膜中に含まれるH2O、OH基、或いは遊離炭素系のガスを短時間で十分に除去するためには、脱ガス処理工程において350℃〜400℃の加熱を必要とする。したがって、上記で説明した方法のように、250℃〜300℃で脱ガス処理或いはH2還元加熱処理を行った場合、層間絶縁膜50中には、サーマルバジェット差分のH2O、OH基、遊離炭素系のガスが残留する。これらの残留酸化種、或いは炭素を含む遊離基による第2のTi膜30cとの固相反応によって、層間絶縁膜50と第2のTi膜30cの界面近傍において、第2のTi膜30cの酸化(以下において、「Ti後酸化」という。)が行われる。
【0039】
Ti後酸化は、上記で説明した脱ガス処理工程での温度の上限である300℃より低い温度でも発生する。層間絶縁膜50中の酸化種成分の濃度勾配によっては、300℃以下でもH2Oの拡散が進行するためである。又、第2のTi膜30cのTi後酸化を積極的に行う熱工程が、多層配線形成後に行われてもよい。或いは、第2のCuめっき膜72の膜質の安定化処理のアニール時に、250℃〜300℃の温度を選択することによってもTi後酸化を行うことが可能である。又、第2のCuめっき膜72を形成する工程の前にTi後酸化を行う熱工程を行うことも有効である。例えば、第2のCuシード膜71を形成するPVD法は、一般的に室温以下で行われる。しかし、第2のCuシード膜71にCVD法或いはALD法を用いた場合には、第2のTi膜30cの形成温度よりも第2のCuシード膜71を形成する温度を高く設定することにより、Ti後酸化を行うことが可能である。
【0040】
Ti膜の固相拡散/固相酸化反応で形成されるTi酸化物は、Ti−O2元相図にあるように、酸素を固溶する濃度が他の金属材料よりも高い。その為、酸素固溶領域では、純Tiの重量原子密度4.507g/cm3よりもTi酸化物の重量分子密度が高い。例えば、酸化チタン(II)(TiO)の重量分子密度は4.93g/cm3、五酸化チタン(Ti3O5)の重量分子密度は4.6g/cm3である。60原子%まで酸素がある場合に形成される酸化チタンTiO2でも、重量分子密度は4.26g/cm3で、Ti原子の重量原子密度の80%以上である。マグネシウム(Mg)もTiと同様の特性で、Mg酸化物の重量分子密度が純Mgの重量原子密度より高い。このように酸素を固溶する形態を持つ材料をバリアメタル膜として用いることは、形成される酸化物の重量分子密度が高いため、絶縁膜から放出される酸化種をブロックするのに有効である。更に、実験の結果、純金属の重量原子密度の80%以上の重量分子密度をもつ金属酸化物であれば、より望ましいことが明らかになった。前述のようにCu膜とバリアメタル膜の密着部が形成された後にバリアメタル膜が酸化されるため、Cu膜との密着性を保つ部分を含む領域の一部にTi膜が残り、Cu膜とTi膜の密着性は劣化しない。又、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、配線金属膜と絶縁膜の両方に接する金属膜において、金属膜が配線金属に接する部分の金属の原子或いは分子密度と、金属膜が絶縁膜と接する部分の金属の原子或いは分子密度に比較して、配線金属膜と絶縁膜の間に挟まれる部分の金属の原子或いは分子密度の方が高い半導体装置を実現できる。図1〜図12に示した半導体装置でいえば、第2のCuめっき膜72と層間絶縁膜50の両方に接する第2のTi膜30cにおいて、第2のTi膜30c中の酸素濃度に膜厚方向に沿った勾配を持たせることで、第2のTi膜30cが第2のCuめっき膜72に接する部分のTiの原子或いは分子密度と、第2のTi膜30cが層間絶縁膜50と接する部分のTiの原子或いは分子密度に比較して、第2のCuめっき膜72と層間絶縁膜50の間に挟まれる部分のTiの原子或いは分子密度の方が高い半導体装置を実現できる。
【0041】
Ti後酸化後に層間絶縁膜とTi膜の界面近傍に形成されるチタン酸化(TiOx)膜、及びCu膜側のTi膜のO/Ti強度比を確認した例を以下に示す。先ず、透過型電子顕微鏡(TEM)解析用サンプルを作成する。そして、解析用サンプルのTEM−電子エネルギー損失分光(EELS)分析を行う。解析用サンプルは、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法及び関連技術によってそれぞれ作成される。このとき、各製造方法で作成される測定サンプルのサンプル厚を同一にする。EELS分析によって、上記の、例えば室温で成膜を行った解析用サンプルのTi強度と酸素強度を取得したところ、溝側壁の観察により、Cu側のO/Ti強度比が絶縁膜側のO/Ti強度比よりも低く、Cu側のO/Ti強度比は0.12未満(約0.11程度)であることが明らかになった。また、Ti膜の体積膨張等はほとんど観察されなかった。以上から、特にCu膜に接するTi膜の状態は、酸素を固溶している状態に近いものと推察される。更に、TEM解析を行った解析サンプルのビアホール側壁のTi膜について、同じくEELS分析によってTi強度と酸素強度の比を評価した結果を図17に示す。図17において、温度T1は第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によってバリアメタル膜を形成した時の基板温度、例えば25℃である。温度T2は、関連技術によってバリアメタル膜を形成した時の基板温度であり、脱ガス工程の基板温度と同程度以上である。図17に示したように、O/Tiの強度比は0.1以下である。
【0042】
上記のように、TiOx膜が除かれたCu膜との界面に接し、Ti膜の膜厚変化がほとんどない場所でのO/Ti強度比は0.12未満である。このことから、Ti膜が酸素を固溶している状態でのO/Ti強度比が0.12未満であることが推察される。この数値は、EELS解析によるO/Ti強度比が原子数比に対応していると仮定すると、図17中で示した解析サンプルの工程最高温度(400℃)での酸素固溶濃度とも一致する。なお酸素の固溶濃度は、420℃であれば、O/Ti原子数比で0.123、450℃であれば、O/Ti原子数比で0.15である。
【0043】
上記のように、Ti膜中に酸素が固溶することによるTiの密度変化はほとんど生じず、タンタル(Ta)膜等の酸化形態の材料と異なり、TiOx膜では粒界による大きな拡散経路の増加が抑制される。以上に説明したように、Ti後酸化工程における、Ti中の酸素の固溶濃度まで層間絶縁膜側からの酸化種による酸素がTiOx膜に含まれているが、Ti後酸化工程においてTi膜とCu膜との界面に化合物が形成されるため、Ti膜とCu膜との密着性は確保される。
【0044】
更に、Ti膜がすべて酸素を含む形態になっても、Ti膜とCu膜の界面反応物が形成された後なので、Ti膜とCu膜の密着性の劣化は生じない。又、Ti膜が一部或いはすべて酸化された後に追加Ti膜を形成する工程を行ってもよい。更に、Ti膜が一部或いはすべて酸化された後に、酸素の固溶度が低いTa等のTiとは異なる金属膜を形成してもよい。密度の高いTi酸化物上に形成されるTa等の金属膜は、Cu膜との密着層として有効に機能する。その場合、Ta膜と絶縁膜の間に存在するTi酸化物が、絶縁膜から放出されるH2O等の酸化種をブロックするため、Ta膜の酸化が抑制される。そのため、Ta膜を単体で使用する場合よりも、バリアメタル膜として安定に使用することができる。図18に、TiOx膜35上にTa膜36を形成した例を示す。酸素を固溶する濃度が高い材料としては、Ti、Mg、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)等が有望である。
【0045】
Ti膜上に形成する膜の材料としては、酸化されにくい、或いは酸化物でもCu膜と密着性のよい材料を選択することももちろん可能であり、例えば、ルテニウム(Ru)、パラヂウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)等が挙げられる。
【0046】
又、上記の説明では、絶縁膜との界面で酸素を固溶しやすい材料(例えばTi)を後酸化することを望ましい形態として示したが、例えば合金のターゲットを用いて混合膜をバリアメタル膜として成膜し、後酸化工程でバリアメタル膜の酸化を行うことももちろん可能である。例えば合金の種類としてはTiRux、TiPdx、TiPt、TiAux等が挙げられる。これらの材料では、特に絶縁膜とバリアメタル膜の界面に接するTiが先に酸化されやすい。そのため、Ti膜のバリアメタル膜を後酸化する場合と同様の効果が得られる。
【0047】
Ti後酸化の熱処理条件として望ましい条件を以下に示す。Tiのバリアメタル膜とCu膜が反応することによる効果は、既に述べたストレスマイグレーション耐性及びエレクトロマイグレーション耐性の向上以外に、以下の効果がある。即ち、Cu膜中、特にCu粒界にTi原子が存在することにより、Cu原子の拡散が抑制される。しかし、Cu原子の拡散を抑制する効果を、現実的な製造工程の時間、例えば30分や1時間で得るためには熱処理温度は150℃では不足で、200℃以上の熱処理工程が必要である。図19に、以下の方法で作成されたサンプルの二次イオン質量分析(SIMS)を行った結果を示す。サンプルの作成方法は、以下のとおりである。イオン化PVD法によってTi膜を10nm形成する。次いで、イオン化PVD法によってCuシード膜を46nm形成する。更に銅配線用めっき(ECP)装置によってCu膜を120nm形成する。そして、Ti後酸化の熱処理工程を模擬して、図19に示した各温度で1時間、H2ガスの還元雰囲気中で熱処理する。図19は、上記サンプルにおいて、Ti/Cu界面から0.2nmまでのCu膜中のTi濃度の最大濃度を示す。図19に示したように、熱処理温度が150℃を超えることが、Cu膜中にTi原子を拡散させてCu原子の拡散を抑制することに効果的である。
【0048】
このように、Ti原子を拡散させてCu膜中に添加するためには、150℃を超える熱処理が望ましいが、一方でTi/Cu界面で十分な化合物を形成してしまうと、形成された化合物中のTi拡散に律速され、所望のCu膜へのTi原子の添加効果が得られない可能性がある。又、はじめから高温の熱処理を行うと、多量のTi原子をCu膜に添加してしまうとともに、Ti/Cu界面に多量のTiとCuの化合物が形成されてしまい、化合物の形成と後酸化のバランスがうまくとれない可能性もある。つまり、化合物の形成により、絶縁膜から放出される酸化種によるTi膜の酸化が影響を受け、所望の特性のTi酸化物が形成されない可能性がある。
【0049】
これらの反応をコントロールする為には、Ti/Cuの化合物によってTi膜からCu膜への拡散を抑制されることのない第1の加熱温度で熱処理を行ってCu膜中にTi原子を添加すると共に、絶縁膜からの酸化種の放出によってTi膜と絶縁膜の界面に界面酸化層を形成する。次に、第1の加熱温度より高い第2の加熱温度で熱処理を行って、Ti膜とCu膜の反応によりTi/Cu化合物を生じさせ、Ti膜とCu膜との密着性を向上させる。つまり、望ましい後酸化のための加熱工程は、第1の加熱温度で熱処理と第2の加熱温度での熱処理を含む。上記の熱処理により、Ti原子のCu膜中への拡散のコントロールとTi/Cu界面の化合物層形成の調整が有効に行えるばかりでなく、絶縁膜とTi膜界面で初期に酸化物層が形成されている。そのため、酸化物層形成後の高温処理時においても、酸化物層によって酸素の供給をコントロールできるという効果もある。
【0050】
ただし、Ti膜の酸化が進行することによって上記に示したTiOx膜の有利な特性が得られる反面、高温で熱処理を行うとTi膜とCu膜の反応が過剰になり、ダマシン配線の抵抗が増大する。図20に、ダマシン配線を模擬したサンプルの、アニール前の抵抗率に対するアニール後の抵抗率の比の例を示す。図20に抵抗率の変動を示したサンプルは、イオン化PVD法によってバリアメタル膜及びCu膜をそれぞれ10nm及び100nm形成した後、水素/アルゴン加熱雰囲気中にてアニールを行った。図20に黒丸で示した抵抗率比は、バリアメタル膜がTiの例である。図20に白丸で示した抵抗率比は、バリアメタル膜がTaの例である。図20に示したように、アニール温度が450℃を上回る場合、アニール後の抵抗率が増大する。そのため、抵抗率を増大させない温度以下でTi後酸化を行って、Ti膜とCu膜の反応、及びCu配線中へのTi原子の拡散を生じさせる。例えば、アニール温度400℃程度までであれば、Cu膜中にTi原子が約1E20原子/cm3程度拡散するが、配線の抵抗は増大しない。上記のようにTi後酸化のアニール温度を適切に選択することにより、Ti膜とCu膜の反応によって種々の効果が得られる。尚、上記のアニール温度は例を示したものであり、Ti後酸化のアニール温度が上記アニール温度に限定されるものではない。
【0051】
配線間のコンタクト抵抗を低減するために、下層配線と接する箇所のバリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度は低いほど望ましい。既に述べたように、層間絶縁膜から放出される酸化種によってバリアメタル膜は酸化される。バリアメタル膜の成膜工程の温度、前処理としての層間絶縁膜からの脱ガス処理を最適化することにより、下層配線と接する箇所でのバリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度を、絶縁膜が接する箇所のバリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度より低くできる。その結果、絶縁膜と接触する箇所のバリア性を低下することなく、配線間のコンタクト抵抗を低減できる。
【0052】
例えば、バリアメタル膜の成膜工程の前(図8参照)に、前処理として200℃〜350℃の真空中で、10〜600秒の熱処理を行う。この熱処理によって層間絶縁膜から放出される酸化種の量を制御することにより、その後のバリアメタル膜の成膜時に下層配線表面に成膜されるバリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度を、絶縁膜に接する部分に成膜されるバリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度より小さくできる。つまり、図12に示した第2のTi膜30cの酸化物の酸素濃度が、層間絶縁膜50に接する箇所より第1配線層40に接する箇所の方で低くなる。
【0053】
図21に、Ti膜及びTiOx膜の分子密度を示す。図21に示すように、Ti3O5膜よりTiOx膜中の酸素含有量が小さい場合に、TiOx膜の分子密度はTi膜の分子密度より大きい。つまり、Tiに対する酸素の原子比が5/3以下のTiOx膜のバリア性はTi膜より高い。そのため、第2のTi膜30cを酸化した酸化膜中のTiに対する酸素の原子比は5/3以下であることが望ましい。
【0054】
第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の説明では、第2のCuシード膜71をPVD法、CVD法或いはALD法のいずれかで行うことを示したが、第2のCuシード膜71をPVD法で形成した後、CVD法或いはALD法でビアホール203及び第2配線溝202の一部又は全部を埋め込むことも可能である。更に、第2のCuシード膜71の形成をCVD法、又はALD法にて第2のTi膜30cの形成後に行っても、或いはそのまま埋め込み工程を行ってもよい。また第2のTi膜30cの形成後に直接めっき法にて埋め込み工程を行うことが可能であることは勿論である。
【0055】
又、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、バリアメタル膜を主に構成するTi膜中に酸素を導入することにより、バリアメタルの膜厚方向で分子密度を変化させている。このような場合、一般的には応力勾配が発生して膜剥がれを起こす場合がある。しかし本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、絶縁膜に近いTi膜ほど分子密度が低く、Cu側に近づくほど分子密度が徐々に高くなるように、脱ガス処理工程の温度とTi形成工程の温度を調整するため、応力勾配は緩和され、絶縁膜やCuからバリアメタルが剥がれる問題がなくなることがわかった。
【0056】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係わる半導体装置の製造方法は、酸素を固溶する特性をもつ金属膜を、絶縁膜から放出されるガス以外で酸化する方法である。以下に、第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の例を説明する。以下では、図8に示した層間絶縁膜50上に金属膜30として第2のTi膜30cを形成する場合を例にして説明する。
【0057】
(イ)第1の実施の形態で説明した工程と同様の工程により、例えば250℃以上300℃以下の温度で、真空中或いはH2ガス等の還元雰囲気中で基板10の脱ガス処理を行う。その結果、層間絶縁膜50中に残っている炭素系の残留物等が除去される。同時にビアホール203底部に露出した第1配線層40表面の酸化膜の還元処理が行われる。
【0058】
(ロ)次に、真空連続にて、基板10上にバリアメタル膜を形成する。例えば図13に示すようなイオン化スパッタリングチャンバー内に搬送する。そして、少なくとも層間絶縁膜50の脱ガス処理工程での加熱温度以下、望ましくは室温以下に設定されたサセプタ上に基板10を搬送し、基板10の温度をサセプタと同等の温度に保つ。次に、図9に示したように、イオン化スパッタリング法により第2のTi膜30cを形成する。
【0059】
(ハ)次に、図13に示すイオン化スパッタリングチャンバー内の圧力が、第2のTi膜30cの形成を行った真空度、例えば0.5×10−5Paよりも高い圧力、例えば1×10−5Paになるように、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N2)ガス、及びO2ガスあるいはH2Oをイオン化スパッタリングチャンバー中に導入して60秒間保持した後、ガスを排気する。その結果、第2のTi膜30cの表面にTi酸化物が形成される。そして、第2のTi膜30cを形成したときと同等の温度まで基板10を冷却し、更に第2のTi膜30cを最終的に所望の膜厚になるように追加堆積する。このとき、Ti酸化物を形成する前に第2のTi膜30cを形成したときの圧力と、イオン化スパッタリングチャンバー内の圧力を同等にすることが好ましい。第2のTi膜30cを酸化する際の圧力が大気圧と同等の場合は、第2のTi膜30cの酸化状態を制御できない。そのため、基板10を大気に出して、再度イオン化スパッタリングチャンバーに戻した場合は、第2のTi膜30cに酸素を固溶した状態を実現できない。
【0060】
上記に説明したように、第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、原子密度の高い第2のTi膜30cを形成する途中に、第2のTi膜30cの表面を酸化することで、さらに分子密度の高いTi酸化物を形成し、層間絶縁膜50から放出されるH2O等の酸化種により、第2のTi膜30c全体が酸化することを防止できる。そのため、Cu膜との界面近傍の第2のTi膜30cとして、Cu膜との密着性がよい純Ti膜を残すことができる。更に、第1の実施の形態で説明したTi後酸化の工程を行うことにより、第2のTi膜30cと層間絶縁膜50との界面近傍でのTi酸化が促進される。その結果、第2のTi膜30c中にTi酸化物が形成され、層間絶縁膜50からCu膜への酸化種の拡散が抑制される。つまり、Cu膜との密着層としてのバリアメタル膜の機能の確保がより有効に行われる。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0061】
又、上記に説明したように、第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、原子密度の高い第2のTi膜30cを形成する途中に、第2のTi膜30cを酸化して、さらに原子密度の高いTi酸化物を形成することを説明したが、図18に示すように第2のTi膜30cを形成した後、酸素の固溶濃度が低いTa膜36のような異種金属を形成し、Cu膜との密着層に使用しても有効である。このとき、下層の原子密度の高いTiOx層がH2Oなどの拡散を抑制することでTa膜36の酸化を防ぎ、Ta膜36を単層で使用するより配線信頼性を改善することができる。更に、この第2のTi膜30c上に積層する膜としては、酸化されにくい、或いは酸化物でもCuと密着性のよい材料が選択される場合も非常に有効であり、例えば、Ru、Pd、Pt、Au等が挙げられる。
【0062】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、第1の基板温度において、表面に溝、及びビアホールなどの凹部が形成された絶縁膜中、および表面の吸着ガスを放出させる工程と、第1の基板温度より低い第2の基板温度で金属膜を形成する工程と、金属膜上に配線金属膜を少なくとも凹部の一部が埋め込まれていない状態で形成する工程と、第2の基板温度より高い第3の基板温度で加熱して絶縁膜中に残存する酸化種によって、金属膜の少なくとも一部を酸化し、同時に金属膜と配線金属膜の界面で反応層を形成する工程とを含む。
【0063】
例えば、図8に示したように、第2配線溝202及びビアホール203を形成する。その後、例えば250℃以上300℃以下の温度で、真空中或いはH2ガス等の還元雰囲気中で熱処理を行う。この熱処理により、層間絶縁膜50中に含まれるH2O等の一部が除去される。このとき、還元雰囲気中で行えば、ビアホール203底部に露出した第1配線層40表面の酸化膜の還元処理も行える。
【0064】
次に、真空連続にて基板10の表面にバリアメタル膜としてTi膜を図13に示したイオン化スパッタリング法や、光照射を用いたALD法を用いて段差被覆性よく形成する。この時、基板温度は少なくとも層間絶縁膜50の脱ガス処理工程の加熱温度以下とする。
【0065】
次に、真空連続にてTi膜上に配線金属膜としてCu膜を形成する。この時、Cu膜はイオン化スパッタリング法やCVD法で形成すれば良いが、少なくとも図22の成膜例に示すように第2配線溝202やビアホール203の一部は第2のCuシード膜71で充填しないように形成する。
【0066】
次に、基板を例えば、250〜380℃の範囲内で加熱し、層間絶縁膜50中に残存するH2O等の酸化種によって層間絶縁膜50と接する第2のTi膜30cを酸化するとともに、第2のCuシード膜71と第2のTi膜30cの界面にCuTi化合物を形成する。この加熱工程は第2のCuシード膜71形成後に真空連続的に行なわれてもよいし、大気開放後に行われてもよい。また、加熱温度は、層間絶縁膜50中に含まれるH2O等の一部を除去する加熱温度や後の工程の加熱温度と同等とした方がよい。
【0067】
次に、先に形成した第2のCuシード膜71をシード膜としためっき等のCu充填方法を用いて、Cu膜で充填されていない第2配線溝202やビアホール203を、図11に示すように完全充填する。次に、第2のCuめっき膜72、第2のCuシード膜71及び第2のTi膜30cをCMP法によって除去して2層配線を完成させる。
【0068】
一般に、Cuめっき膜をCuシード膜上に形成した場合、結晶粒径を大きくするために熱処理を行う場合が多い。しかし、バリアメタル膜とCu膜の密着性が低いと、図23に示すように、加熱工程の後にビアホール203内のCu膜が吸い上げられ、ボイドが発生する。これはビアホール203上の第2配線溝202内に形成されたCu膜の体積が大きいため、ビアホール203内のCu膜を引っ張る応力が発生するためである。又、図24に示すように、Cu膜とバリアメタル膜をCMP法で除去して配線形状を形成した場合も、幅の広い配線に接続されるビアホール203では、層間絶縁膜の形成時の加熱やシンタリング工程での加熱によって、ビアホール203内にボイドが発生する。
【0069】
しかし、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、配線溝やビアホールを完全にめっき充填する前にCuシードのような薄膜状態で基板が加熱されるため、応力によるボイドは発生しない。特にビアホール203がCu膜で充填されている図22(c)の場合でも、ビアホール203上の配線溝202内に充填されるCu膜の体積が小さいため、ビアホール203内のCu膜を引っ張る応力は小さい。したがって、熱処理時にバリアメタル膜であるTi膜とCu膜との反応が起こり、Ti膜とCu膜の界面に化合物層が形成される。この化合物層はTi膜とCu膜の密着層となるため、強い密着力が得られ、後の応力を受ける加熱工程でもボイドを形成しない。また、化合物層が形成されると同時に絶縁膜とTi膜との界面には原子密度の高い酸化膜が形成されるため、さらなる絶縁膜からの酸化種の放出を抑制でき、Ti膜のさらなる酸化を抑えられる。また、第1の実施の形態で説明したように、Cuシードのような薄膜状態での加熱時に、Ti膜と絶縁膜の界面には分子密度の高い酸化膜も同時に形成されるため、後の加熱工程における酸化種の拡散による不良を抑えられるのは勿論である。
【0070】
又、イオン化スパッタリング法を用いて形成した第2のCuシード膜71は、コンフォーマル形状となるようにスパッタ条件を調整することが望ましい。しかし条件によっては、図25(a)に示すように、ビアホール203の開口部や第2配線溝202の開口部にオーバーハング形状の突起が発生する場合がある。このようなオーバーハング状突起は後のめっき工程においてめっき液の進入を阻害し、ひいては第2配線溝202やビアホール203の開口部を塞いでしまい、配線内やビアホール内にボイドを残す問題がある。しかし、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法のように第2のCuシード膜71を形成後に加熱処理をすると、第2のCuシード膜71は表面エネルギーを下げて安定な形状となろうとして、表面積が小さくなるように表面拡散する。つまり、図25(b)に示すように、オーバーハング形状の突起が平坦化され、よりコンフォーマルに近い形状とすることができる。特に、第2のCuシード膜71の形成後、熱処理を真空連続で行うとこの効果が大きい。したがって、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、第2配線溝202やビアホール203へのめっき液の進入を阻害することなく、ボイド発生の問題を解決できる。
【0071】
又、めっき法を用いて溝やビアホールにCu膜を充填する場合、めっき法で形成されたCu膜中にはO2やH2O等のような酸化種が多く含まれる。一方、イオン化スパッタ法で形成したCuシード膜やCVD法で形成されたCuシード膜は残留不純物の少ない減圧下で形成されるため、酸化種が少ない。しかし、酸化種の少ないCuシード膜上にめっき法によりCu膜を形成した場合、めっき工程後の加熱工程でめっき法により形成されたCu膜中の酸化種が薄いシードCu膜を透過し、バリアメタル膜を酸化する場合がある。上述したように、酸化したバリアメタル膜はCu膜との密着性が低下し、信頼性が低下する。この場合、図22(b)に示すようにCVD法を用いてビアホール203側壁の第2のCuシード膜71を厚くする、もしくは図22(c)に示すようにCVD法を用いてビアホール203全体を第2のCuシード膜71で充填すれば、ビアホール203を充填する第2のCuめっき膜72からの酸化種の影響を少なくできる。つまり、ビアホール203での第2のTi膜30cの酸化を抑制することができる。特にCVD法を用いてビアホール203を第2のCuシード膜71で完全に充填する場合の効果は大きい(図22(c))。したがって、ビアホール203でのCu膜とバリアメタル膜との密着性が低下することはなく、後の加熱工程でビアホール203内のCu膜を引っ張るような応力が発生しても、ボイドは発生しない。
【0072】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、第1の基板温度において、表面に溝、およびビアホールなどの凹部が形成された絶縁膜中、および表面の酸化種吸着ガスを放出させる工程と、第1の基板温度より低い第2の基板温度で、原料ガスを凹部表面に付着させる工程と、凹部表面に付着されなかった残余の原料ガスを排気した後、凹部表面に光を照射して凹部表面に付着した原料ガスの分子を分解し、原料ガスの成分に含まれる金属原子からなる金属膜を、凹部表面に形成する工程とを含む。
【0073】
例えば、図26(a)に示すように、圧力や流量を調整して原料ガスとしての四塩化チタン(TiCl4)ガスを、薄膜形成工程を行うチャンバー内に導入すると、絶縁膜20の表面にはTiCl4分子が一様に吸着する。ところで、絶縁膜20として低誘電率の絶縁膜を採用した場合には、誘電率を低下させるために絶縁膜20に空孔が多く含まれる。そして、大気開放時に吸湿された水や酸素といった酸化種が絶縁膜20中に残留している。そのため、絶縁膜20の表面に付着したTiCl4分子を分解するために絶縁膜20を加熱した場合、吸着ガスが凹部200の側面等から放出される。その結果、TiCl4分子を分解して形成される金属膜30であるチタン(Ti)膜と絶縁膜20から放出された酸化種が結合し、Ti膜の特性が劣化する。そのため、金属膜30を形成する前に、絶縁膜20中の酸化種を放出させる工程を行う。更に、金属膜30を形成する工程では、絶縁膜20の温度を、酸化種を放出させる工程での温度より低く保つ必要がある。図26(b)に示すように、照射光111の光エネルギーにより吸着分子の分解を促進する方法によれば、絶縁膜20の温度を低く保てる。
【0074】
図27に、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法に使用可能な半導体製造装置の断面構成を示す。図27に示す半導体製造装置は、チャンバー100と、光源110とを備え、図示を省略するガス供給系及び排気系に接続されている。チャンバー100は基板10が設置されるサセプタ101、光透過窓102、光透過窓102を遮蔽する開閉可能な遮蔽板103、及びチャンバー100内にガスを導入するガス導入部104を備える。光透過窓102を透過した光源110からの照射光111が、基板10に照射される。又、必要に応じて、照射光111は、遮蔽板103により遮蔽される。チャンバー100は基板搬送機構を備えた搬送室(図示略)に接続され、チャンバー100内での成膜工程前、或いは成膜工程後に、搬送室に接続された別のチャンバーにより真空連続的に基板10の別処理が行える。
【0075】
以下に、図27に示した半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法の例を、図27〜図30を用いて説明する。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の半導体装置の製造方法により実現可能であることは勿論である。以下では、絶縁膜20の表面に金属膜30としてTi膜を形成する半導体装置の製造方法を説明する。
【0076】
(イ)搬送室に接続された別チャンバー(図示略)で250℃〜300℃程度の加熱を行って、絶縁膜20に吸着された吸着ガスの脱ガス処理を行う。この時、絶縁膜20の下層にCu配線が配置され、ビアホールの底面にCu配線が露出していれば、H2を導入して脱ガス処理を行うことにより、Cu配線表面のH2還元処理を同時に行うことが可能である。或いは、脱ガス処理の前後でCu配線表面のH2還元処理を行うことが可能である。
【0077】
(ロ)次いで、基板10を図27に示すように真空連続で搬送室からサセプタ101上に搬送する。この時、基板10の温度は、少なくとも脱ガス処理での基板10の温度より低く設定される。例えば、基板10の温度は150〜200℃に設定する。
【0078】
(ハ)次に、図28に示すように、遮蔽板103を閉じた状態で、Ti膜の原料ガスであるTiCl4ガスを、ガス導入部104を介してガス供給系から導入する。TiCl4の沸点は136.4℃のため、TiCl4の沸点以上に基板10の温度を設定すれば、基板10上で凝縮することなくTiCl4分子層として絶縁膜20の表面に吸着する。また、TiCl4は常温で液体であるため、図示を省略する気化器内でTiCl4を気化させ、Arガス、N2ガス、ヘリウム(He)ガス、H2ガス等のキャリアガスを用いてチャンバー100内に導入する。
【0079】
(ニ)チャンバー100内にTiCl4ガスを所定時間導入した後、図29に示すように、遮蔽板103を閉じた状態で、TiCl4ガスの導入を止める。次いで、チャンバー100内に残留しているTiCl4ガスを排気する。
【0080】
(ホ)図30に示すように、遮蔽板103を開き、光源110からの照射光111を光透過窓102を透過させ、基板10に照射する。照射光111のエネルギーにより、絶縁膜20表面に吸着したTiCl4分子が分解され、絶縁膜20上にTiの薄膜層が形成される。この段階でH2ガスのような反応性ガスを導入してもよい。反応性ガスとしてH2ガスを導入した場合、照射光111が照射されたH2ガスは解離して活性な水素ラジカル(H*)になり、TiCl4分子の分解は更に促進される。
【0081】
以上の工程により、Ti原子層が絶縁膜20の表面に形成される。そして、上記の工程を繰り返して、所望の膜厚のTi膜を形成する。低誘電率の絶縁膜20としては、PAE膜、SiCO膜等が適用可能である。
【0082】
又、例えばサセプタ101の位置がチャンバー100内で上下するような機構を備える場合、原料ガスの残留成分を排気する工程で、排気効率が高くなるようにサセプタ101の高さを低く調整してもよい。又、図27〜図30では、一つのガス導入部104から原料ガスを導入する例を示したが、チャンバー100内での原料ガスの均一性をよくするために複数のガス導入部104を備えてもよい。又、ガス導入部104から遮蔽板103の内部に原料ガスを導入し、遮蔽板103の基板10に向いた部分に設けた複数の孔からチャンバー100内に原料ガスを導入してもよい。その結果、原料ガス分子の吸着が絶縁膜20の表面で均一化され、成膜された膜厚の均一性を向上できる。
【0083】
照射光111の波長は、原料ガス分子の光吸収性に合わせて選択すればよい。例えば、エキシマランプを用いる場合は、エキシマランプに用いるガスの種類に応じて、以下のように照射光111の波長を選択する。即ち、Arエキシマ:126nm、クリプトン(Kr)エキシマ:146nm、キセノン(Xe)エキシマ:172nm、塩化クリプトン(KrCl)エキシマ:222nm、塩化キセノン(XeCl)エキシマ:308nm等の単波長のエキシマランプを選択する。水銀ランプを用いる場合は、185nmや254nmの複数の波長を含む光が選択可能である。照射光111の照射エネルギー及び照射時間は、基板10上に形成されたビアホールや配線溝のアスペクト比に応じて調整される。
【0084】
上記の説明で用いたTiCl4分子の標準生成エンタルピーは、以下の式(1)及び式(2)で表される:
TiCl4(気体) → Ti(固体) + 2Cl2(気体) ・・・(1)
標準生成エンタルピーΔHf°=763kJ/mol ・・・(2)
式(1)及び式(2)から、TiCl4の1分子あたりの標準生成エンタルピーは、1.27×10-15Jとなる。TiCl4分子にはTi−Cl結合が4つあるため、1つのTi−Cl結合の結合解離エネルギーは3.17×10-16Jである。Ti−Cl結合の結合解離エネルギーを得るための光の波長は、627nm以下になる。また、TiCl4分子の光吸収波長は、280nmと232nmに極大値を持つ。そのため、627nm以下、且つTiCl4分子の極大吸収波長近傍の波長の光を照射光111として用いれば、TiCl4分子を効率的に分解できる。照射光111をエキシマランプから選択する場合には、Xeエキシマ(波長:172nm)、KrClエキシマ(波長:222nm)、XeClエキシマ(波長:308nm)が選択可能である。又、185nmと254nmの波長の水銀ランプが照射光111として使用可能である。また、狭波長帯の光源の必要はなく、広波長帯の光源を用いてもよい。また、最近の低誘電率絶縁膜は、加熱、電子ビーム照射、UV光照射などによって前駆体をキュア(焼結、重合、あるいは縮合)して形成している。このような低誘電率絶縁膜にさらにUV光を照射した場合、内部の結合しているべき結合手が切れ、場合によっては誘電率の増加を招く場合がある。そのような場合、使用する絶縁膜の性質に合わせて、絶縁膜に影響を及ぼさない波長を選べばよい。特に、UV光照射によるキュア(一般的にはUVキュアと呼ばれる)はエネルギーが一定領域に限られるため、特定、かつ必要な結合手のみの解離を行うことができる。この場合、長時間UV光照射を行なっても、不必要な分解は起こらず、低誘電率絶縁膜の性質は変化しない。従って、第4の実施の形態に用いる光の波長を低誘電率絶縁膜のUVキュアの波長と合わせておけば、絶縁膜にダメージを与えることはない。
【0085】
ところで、図26(a)の凹部200の底部では、他の絶縁膜20表面に比べて照射光111が届きにくいため、TiCl4分子の分解速度は遅い。そのため、照射光111によって絶縁膜20表面上のTiCl4分子の分解に必要な時間が経過した後でも、凹部200の底部ではTiCl4分子の分解が十分に進んでいない場合がある。したがって、照射光111が当りにくいために分解に最も時間がかかる凹部200の底部で分解が終了するように、照射光111の強度及び照射時間を調整する。そして、図26(b)に示すように、絶縁膜20の表面にチタン(Ti)原子が一様に吸着する。図31に、照射時間を凹部200の絶縁膜20の表面に近い領域RでのTiCl4分子の分解に必要な時間に設定した例を示す。図31に示すように、領域Rや絶縁膜20表面上のTiCl4分子が分解した後でも、凹部200の底部ではTiCl4分子の分解が十分に進んでいない。
【0086】
図32(a)〜図32(c)に、原料ガスTiCl4を導入しながら照射光111を照射する光CVD法によりTi膜を形成する例を示す。図32(a)に示すように、原料ガスTiCl4を導入しながら照射光111を照射する光CVD法では、凹部200の間口でのTiCl4の分解速度が速く、底部でのTiCl4の分解速度が遅い。そのため、先ず凹部200の間口でTi膜が厚く形成され、底部に原料ガスTiCl4が入りにくくなる。その結果、図32(b)及び図32(c)に示すようにTi膜の段差被覆性が低く、凹部200の間口では不純物であるCl原子を多く含む膜となる問題がある。又、原料ガスを流しながら照射光111を照射するため、照射光111を透過する光透過窓102のチャンバー100側の表面にTi膜等が付着し、照射光111の強度が徐々に低下してしまう問題がある。
【0087】
一方、図27〜図30を用いて説明したように、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、ALD法を利用して原子層単位でTi膜が形成されるため、光CVD法で問題であった凹部200の間口と底部における原料ガスの分解速度の差に起因する段差被覆性の低さを解決でき、極めてコンフォーマルなTi膜を形成することが可能となる。また、図27〜図30を用いて説明したように、照射光111の照射と原料ガスの導入を別々の工程で行っている。そのため、TiCl4ガスの導入時は遮蔽板103で光透過窓102が覆われ、光透過窓へのTi膜の付着の問題がない。
【0088】
又、上述したように、照射光111の光エネルギーにより吸着分子の分解を促進する方法は、基板10の温度を低く保てる。吸湿性の高い低誘電率の絶縁膜20上にバリアメタル膜としてTi膜を形成するためには、図27の説明で述べたように、基板10の温度を脱ガス処理での基板10の温度より低く設定して、Ti膜を形成することが重要になる。なぜなら、基板10の温度を脱ガス処理温度より高くしてTi膜を形成した場合、絶縁膜20中に吸着され、脱ガス処理工程では放出されなかった酸化種が放出されながらTi膜が形成される。その結果、後述するようにTi膜の酸化等の影響が生じるためである。Ti膜の形成時での絶縁膜20からの酸化種の放出を少なくするためには、Ti膜の形成温度を下げると共に、Ti膜を形成する前に基板10の温度を、Ti膜を形成する温度以上に上げる加熱処理を行うことが有効である。この加熱処理により、Ti膜形成時に絶縁膜20中に含まれる酸化種が除去される。仮に絶縁膜20中に含まれる酸化種を完全には除去できない場合でも、Ti膜の形成時の酸化種の放出量を少なくすることができる。
【0089】
第4の実施の形態を用いたTi膜の形成時のTi酸化について、図33に示す。図33(a)に示すように、TiCl4分子の分解過程において酸化種が放出されると、Ti原子は酸素(O)と結合して酸化チタン(TiOx)が形成される。つまり、第1の実施の形態で図14を用いて説明した同様のメカニズムで分子密度が低いTiOx膜となり(図33(b))、図33(c)に示すように、酸化種がTiOx膜を通過してCu膜に達し、Cu膜が酸化され、Cu配線のSM耐性が劣化する。
一方、脱ガス処理工程より低い温度でTi膜を形成した場合は、図34(b)のように、純Ti膜30aがバリアメタル膜として形成される。つまり、第1の実施の形態で図15を用いて説明したのと同様のメカニズムで、Ti膜30a形成後の絶縁膜形成工程やシンタリング工程などにおいて、分子密度が高いTiOx膜35が形成され(図34(c))、Cu配線のSM耐性が劣化することはない。
【0090】
既に述べたように、低誘電率絶縁膜としては、SiCO等の無機系絶縁膜やPAE等の有機系絶縁膜が適用可能である。又、エッチング工程におけるストッパー材としては、SiCN膜や窒化シリコン(SiN)膜等が適用可能である。絶縁膜の種類によって原料ガスの吸着量が異なる。これは絶縁膜の種類によって最表面原子の終端基が異なるためである。例えば、CH3基で終端されている場合は疎水性を示し、OH基で終端されていれば親水性を示す等の吸着性質の違いが生じる。そのため、複数種類の絶縁膜を積層して1つの層間絶縁膜を形成したデュアルダマシン構造では、種類の異なる絶縁膜上に形成されるバリアメタル膜の膜厚にばらつきが発生する。その場合、予め光照射を行って絶縁膜表面を改質することが有効である。例えば、CH3基を特定の光エネルギーで解離させて除去すれば、終端基がOH基となり複数の種類の絶縁膜表面に金属膜を形成する場合においても、原料ガスの吸着状態を一様にすることが可能となる。吸着しやすい状態にして原料ガスを導入すれば、絶縁膜の種類による金属膜の膜厚のばらつきを抑制することができる。
【0091】
又、層間絶縁膜に凹部200を形成する際、レジスト膜の残渣やエッチング工程において副次的に生成された副生成物が基板10上に残留し、凹部200の底部での導通を妨げる場合がある。このような残留物は炭素(C)やフッ素(F)を含むため、O2、H2、H2O、アンモニア(NH3)等の分解性ガスを流しながら光照射を行い、残留物を除去するステップを入れてもよい。また、O2、H2、H2O、NH3等の分解性ガスを流しながら光照射を行い、レジスト除去を行ってもよい。
【0092】
上記の説明では、Ti膜を形成する例を説明したが、窒化チタン(TiN)膜を形成したい場合は、図30の工程でN2ガスやNH3ガス等の反応性ガスを導入する。NH3ガスを導入した場合、光照射を受けたNH3ガスは解離して活性な窒化水素ラジカル(NH*)となり、TiCl4分子を分解するとともにTiを窒化してTiN膜を形成できる。また、テトラキスジメチルアミノチタン(TDMAT;(Ti[N(CH3)2]4))、テトラキスジエチルアミノチタン(TEMAT;(Ti[N(C2H5CH3)2]4))等の原料ガスを用いてTiN膜を形成することも可能である。又、第4の実施の形態では、無機化合物であるTiCl4を原料ガスに用いる例について説明したが、四臭化チタン(TiBr4)、四ヨウ化チタン(TiI4)或いは有機化合物の原料ガスを用いてもよい。
【0093】
上記の説明ではバリアメタルとしてTi膜を形成する例を説明したが、Ti膜の上に形成するめっき膜のシードとなるCu膜を、同様の成膜方法を用いて形成してもよい。この場合、原料ガスにはヘキサフルオロアセチルアセトン銅(I)トリメチルビニルシランアダクト/トリメチルビニルシラン添加(Cu(hfac)TMVS)などの有機金属ガスを用いればよい。この時、Ti膜を形成するチャンバーとCu膜を形成するチャンバーを分けてもよいし、同一チャンバーで原料ガスを切り替えて形成することも可能である。また、Cuの数原子層を本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法で形成した後、従来のCVD法に切り替えてCu膜を形成することも可能である。CVD法で異種金属上にCu膜を形成する場合、異種金属表面にはCu成長のための核が必要であり、この核密度が低いと均一なCu膜が形成できない問題がある。本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて、Ti上にCu層を数原子層で形成しておけば、成膜速度の速いCVDを用いても均一なCu膜を成長できる。また、初期の光照射によりTi膜とCu膜との結合が促進され、Ti/Cu界面の密着性に優れる。
【0094】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態に係わる半導体装置の製造方法は、第1から第4の実施の形態で示したCu多層配線に用いられるバリアメタルとしてのTi膜の形成ではなく、メモリー素子のキャパシタンスなどに用いられる高誘電体膜である酸化アルミニウム(Al2O3)膜を形成する方法である。以下に、図27に示した半導体製造装置を用いて、基板上にAl2O3膜を形成する方法を説明する。以下では、トリメチルアルミニウム(TMA;(Al(CH3)3))を原料ガスとして用いる場合を説明する。
【0095】
先ず、図27〜図30を用いて説明した方法と同様にして、基板10の表面にアルミニウム(Al)膜を形成する。即ち、基板10を搬送室からサセプタ101上に搬送する。次いで、光透過窓102の遮蔽板103を閉じ、TMAガスをチャンバー100内に導入する。TMAは常温で液体であるため、気化させてArガス、Nガス、Heガス、Hガス等のキャリアガスを用いてチャンバー100内に導入する。そして、TMAガスが凝縮しない温度に基板10を調整し、TMA分子を基板10に吸着させる。次に原料ガスの導入を停止してチャンバー100内のTMAガスを排気する。その後、遮蔽板103を開けて基板10に照射光111を照射し、Al薄膜を基板10の表面に形成する。
【0096】
次に、図35に示すように、O2、H2O等の酸化種をチャンバー100内に導入して基板10上に形成されたAl膜を酸化してAl2O3膜を形成する。或いは、図27〜図30で説明した工程を複数回繰り返して所望の膜厚のAl膜を形成した後、図35に示すAl膜の酸化工程を行っても良い。また、酸化工程では酸化種の導入により酸化しても良いし、光照射を行い、酸化種を解離させて酸素ラジカルを形成し、酸素ラジカルによって酸化効率を高めてもよい。また、この酸化工程は別チャンバーに基板10を搬送して行ってもよい。あるいは大気開放して別装置を用いて酸化工程を行ってもよい。
【0097】
Al膜形成後の加熱による酸化によって、Al膜の表面に高密度のAl2O3膜が形成されることが知られている。しかし、Alは低融点金属であるため、非常に薄いAl膜を形成しようとすると、比較的低温でも基板上でAl膜が凝集して島状に分離してしまい、連続したAl薄膜を形成することが困難である。したがって、CVD法やALD法のように原料ガスの分解に基板加熱が必要な成膜方法でAl極薄膜を形成した後、酸化して原子密度の高いAl2O3膜を形成することが困難であった。そのため、酸化種を流しながら吸着ガスを分解するALD法や酸素を含む原料ガスを用いてAl2O3膜を形成するALD法が検討されている。しかし、分解過程においては、Al原子が他のAl原子と結合していない(束縛のない)状態でAl原子と酸素が結合するため、図36(a)及び図36(b)に示すように、Al−O原子間距離が広い。そのため、図36(c)に示すように、分子密度の低いAl2O3膜が形成される。分子密度の低いAl2O3膜はダングリングボンドを多く含み、リーク電流が大きい等の問題がある。「ダングリングボンド」は、結合に関与しない電子で占められている未結合手である。
【0098】
これに対して本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、図37(a)及び図37(b)に示すように、光エネルギーで吸着分子を分解するため、基板10を高温にする必要がなく、Al膜37の凝集を抑えながらAl原子層を形成できる。さらに図37(c)に示すように、Al膜37を形成した後にAl膜37のAl−Al結合による自己応力を受けながらAl膜37の酸化を行うため、分子密度の高い緻密なAl2O3膜を形成することができる。
【0099】
又、ここではAl2O3膜の形成について説明したが、リーク電流をさらに低下するためにハフニウム(Hf)という不純物を添加してもよい。この場合、ハフニウムを含むガスを原料ガスと一緒に導入すればよい。
【0100】
なお、上記の説明ではTMAを用いる例を説明したが、ジメチルアルミニウムハイドライド(DMAH;(Al(CH3)2H))、ジメチルエチルアミンアテン(DMEAA;(AlH3・N(CH3)(C2H5)))等の原料ガスを用いることができる。又、Al以外の他の金属の酸化膜の形成に適用することも可能であり、更には、金属膜を形成後、窒化種を導入して金属膜の窒化を行うことで、金属の窒化膜を形成してもよい。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0101】
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態に係る半導体製造装置を図38(a)及び図38(b)に示す。図38(a)及び図38(b)に示す半導体製造装置は、第1〜4の実施の形態で説明した半導体装置の製造方法に適用可能である。
【0102】
既に述べたように、信号遅延を抑制するために使用される低誘電率絶縁膜は空孔を多く含み、吸湿性が高い。そのため、低誘電率絶縁膜中に含まれるH2O等の酸化種は金属膜形成時の加熱で放出される。金属膜等への放出ガスの影響を少なくするため、金属膜形成前に脱ガス処理を行っているが、絶縁膜の低誘電率化に伴って放出ガス量は増加傾向にあり、脱ガス処理のための加熱時間が長くなってきている。脱ガス処理での加熱温度を高くすれば加熱時間は短縮できる。しかし、バリアメタル膜等の金属膜形成前に基板を高温で加熱をすると、基板上に形成されているCu配線にボイドが生じる問題がある。一方、絶縁膜からの脱ガス処理を低温で行うと時間がかかり、スループットが低下する。
【0103】
すでに第1〜4の実施の形態で示したように、低誘電率絶縁膜からの脱ガスをコントロールすることが重要であり、十分なコントロールを行う為には、スループットを改善するか、脱ガスを高温加熱と同様に高効率化する必要がある。
【0104】
以下に、脱ガス処理においてスループットを改善する例を示す。図38(a)及び図38(b)に示す半導体製造装置により、金属膜形成前に行う脱ガス処理のスループットを上げることができる。
【0105】
図38(a)に示す半導体製造装置は、複数のホットプレート210a〜210jが接続し、上下移動可能な支持体150aと、回転動作が可能なピックアップ機構230を備える。ピックアップ機構230にはリフトピン240が取り付けられている。又、ホットプレート210a〜210jにはリフトピン240が通る穴があけられている。ホットプレート210a〜210j上に、基板10をそれぞれ配置できる。以下に、ホットプレート210a上に基板10を配置する方法を図38(b)を用いて説明する。図38(b)は、半導体製造装置のホットプレート210aの部分の上面図である。
【0106】
(イ)図38(b)に示すように、ピックアップ機構230はホットプレート210aの下の位置Aに移動する。そして、ホットプレート210aに開けられた穴を通してリフトピン240の先端がホットプレート210aの上面から突出するように、支持体150aの上下方向の位置を調整する。
【0107】
(ロ)基板10が、図示を省略する搬送室から搬送ロボットハンド220により搬送される。搬送された基板10は、リフトピン240の先端上に置かれる。
【0108】
(ハ)次に支持体150aが上方に動くことにより、リフトピン240の先端がホットプレート210aの上面より低くなり、基板10がホットプレート210a上に配置される。
【0109】
(ニ)次いで、ピックアップ機構230は回転して位置Bに移動する。
【0110】
その後、支持体150aが上方に移動し、上記で説明した方法と同様にして、ホットプレート210b〜210j上に基板が配置される。又、処理が終了した後は、上記で説明した方法と逆の動作を行って、基板10を搬送室に搬送する。次に処理を行う基板がある場合は、処理が終了して基板が取り出されたホットプレート210a〜210j上に置くことを繰り返せば、必要以上にホットプレート210a〜210jの数を増加させずに済む。図38(a)では、ホットプレートの数が10である例を示したが、ホットプレートの数が10に限定されないのは勿論である。
【0111】
以上に説明した図38(a)に示す半導体製造装置は、クラスターツールに接続された複数のチャンバーの1つとして使用可能である。そして、図38(a)に示す半導体製造装置で行う処理の前、もしくは処理の後に、搬送室に接続された別チャンバーで真空連続的に別処理を行うことが可能である。例えば、図38(a)に示す半導体製造装置で絶縁膜中に含まれる酸化種を除去、低減させた後、搬送室を介して基板を別チャンバーに移動させてCu配線表面の酸化膜の除去処理を行う。次いで別チャンバーでバリアメタル膜を形成し、さらに別チャンバーでCu膜を形成する連続プロセスが可能である。
【0112】
図38(a)に示した半導体製造装置を使用することにより、脱ガス処理のスループットを上げることができる。脱ガス処理に長時間が必要であり、且つ複数枚の基板を単位として工程が進められる半導体装置の製造方法の場合に、クラスターツールの1つのチャンバーで基板を1枚ずつの脱ガス処理しか行えない半導体製造装置では、脱ガス処理の時間が非常に長くなる。例えば、絶縁膜の脱ガス処理に10分間が必要な場合を考える。別チャンバーで処理される工程で、脱ガス処理工程の次に処理時間が長い工程(以下において「第2処理工程」という。)の処理時間が72秒とする。その場合、脱処理工程と第2処理工程の処理時間の差が、別チャンバーで基板が脱ガス処理の完了を待つ時間になる。チャンバー間の搬送にかかる時間が20秒とすると、25枚の基板の脱ガス処理を連続して行うには約4時間36分を必要とする。図38に示す半導体製造装置を使用して、1つのチャンバー内で複数の基板の脱ガス処理を並行して行えば、処理時間を大幅に短縮することができる。又、基板を1枚しか処理できないチャンバーを複数設置するよりも、装置全体の装置スペースを小さく抑えられる。
【0113】
図38に示した半導体製造装置の有するホットプレート210a〜210jの数を必要最小限として装置コストを最小限にすることも工業的に求められる。例えば、ホットプレート210a〜210jの数を、脱ガス処理に要する時間を第2処理工程の処理時間で割り、得られた値の小数点以下を切り上げた数とする。上記の計算で得られた数のホットプレートを用意すれば、脱ガス処理の完了を待って、他の工程がストップする時間を最小限に抑えることができる。つまり、図38に示した半導体製造装置のホットプレートの数は、脱ガス処理の時間をt1、第2処理工程の処理時間をt2とした時、t1÷t2の小数点を切り上げた整数の個数とすればよい。上記の例で計算すると、600秒÷72秒=8.3であるため、ホットプレート数を9枚とすればよい。その場合、25枚の基板を処理単位として脱ガス処理した場合の処理時間は約1時間6分である。
【0114】
ホットプレート210a〜210j上に配置された基板10の昇温速度を上げて脱ガス効率を上げるため、ホットプレート210a〜210jに静電チャック機構を取り付けて温度制御してもよい。又、熱伝導をよくするために、Heガス、H2ガス、Arガス、N2ガス等を導入して基板10の昇温速度や温度均一性を高めてもよい。或いは、ハロゲンランプ照射により基板10を加熱してもよい。
【0115】
又、H2などの還元ガス、もしくは還元ガスをマイクロ波放電などで活性化したラジカルガスを脱ガス処理するチャンバー内に導入することにより、Cu配線表面の酸化膜を還元除去することができる。その結果、別チャンバーで行う還元処理を削減することができる。ただし、長時間の脱ガス処理中には、ホットプレート210a〜210j毎に基板10の搬送が行われるため、搬送室との仕切りバルブの開閉が伴う。したがって、H2などの還元ガスが搬送室に流れ込んで搬送室の真空度が低下したり、搬送室を介して別チャンバーに還元ガスが混入し、別チャンバーを汚染する等の問題が起こる。そのため、還元ガスを導入する場合は、基板の搬送のために仕切りバルブを開ける時には還元ガスの導入を停止すればよい。又、還元ガス等が導入されない場合も、基板から放出されるガスや熱伝導のために導入したガス等により、脱ガス処理用のチャンバーの真空度が低くなる。そのため、仕切りバルブの開閉時に搬送室を介して別チャンバーにガスが混入、汚染する等の問題が起こる。その場合、仕切りバルブ開閉時には別チャンバーとの仕切りバルブを開けないようにクラスターツール全体を制御すればよい。
【0116】
図38では複数のホットプレート210a〜210jを上下に重ねて配置する半導体製造装置について説明した。他に、図39に示す半導体製造装置を、脱ガス処理の工程に適用することができる。図39に示した半導体製造装置は、複数のホットプレート211a〜211fを回転可能な支持体150b上に放射線状に設置した構造である。ホットプレート211a〜211fは、上下移動可能なリフトピン241を有する。ホットプレート211a〜211f上に、基板をそれぞれ配置できる。図39は、ホットプレート211a〜211b上に、基板10a、10bがそれぞれ配置されている例を示す。図39に示した半導体製造装置の動作例として、ホットプレート211に基板10cを配置する場合を以下に説明する。図示を省略した搬送室より搬送用ロボットハンド220aにより搬送された基板10cが、ホットプレート211cの上面から突出しているリフトピン241の先端上に配置される。その後、リフトピン241が下降し、基板10cがホットプレート211c上に配置される。
【0117】
その後、支持体150bを回転させて、順次ホットプレート211d〜211f上に基板を設置する。また、処理が終了した後は、上記に説明した方法と逆の動作を行って基板を搬出する。次に処理する基板がある場合は、基板が搬出されたホットプレート211a〜211f上に基板を配置することを繰り返せば、必要以上にホットプレート211a〜211fの数を増加させずに済む。また、ホットプレート211a〜211fをそれぞれ真空的に仕切る構造にすれば、ホットプレート211a〜211f上に配置されたそれぞれの基板の脱ガス処理中に発生する脱ガスによる、他の基板の汚染を避けることができ、且つ搬送室の脱ガスによる汚染を避けることができる。図39に示すように、スリットバルブ310を開閉することにより、搬送チャンバー300の脱ガスによる汚染を防ぐことができる。スリットバルブ310は、搬送チャンバー300から基板がホットプレート211a〜211fへ搬送される時に開き、脱ガス処理工程時に閉じる。
【0118】
又、ホットプレート211a〜211f間を真空的に仕切れば、一つのホットプレート上の基板に対して行う酸化物の還元処理のためにH2ガス等を導入した場合に、H2ガス等による他のホットプレート上の基板や搬送室の汚染を避けることができる。図39に示した半導体製造装置は、図38(a)に示した半導体製造装置と同様に、クラスターツールに接続された1つのチャンバーとして使用可能である。又、図39では、ホットプレートの数が6である例を示したが、ホットプレートの数が6に限定されないのは勿論である。
【0119】
図38(a)及び図39では、複数のホットプレートを備える半導体製造装置の例を説明した。以下に、複数の基板を1つの加熱機構で加熱処理可能な半導体製造装置の例を説明する。図40(a)に示す半導体製造装置は、チャンバー100cと、複数の基板10をそれぞれ支える複数の石英ボード403が内部に配置された石英管400と、石英管400の周囲をそれぞれ管状に取り囲むヒーター401及び高周波印加用コイル402を備える。複数のホットプレートを用いた場合と異なり、図40(a)に示した半導体製造装置を使用する場合は、1つのヒーター401を用いて複数の基板を一括して脱ガス処理する。ただし、複数の基板を一括して処理する場合でも、複数のホットプレートを用いる場合と同様に、基板毎に搬送を行ってもよい。例えば、図40(b)に示すように、搬送用ロボットハンド220bを使用して、基板10の搬送を行うことができる。ただし、搬送用ロボットハンド220bを使用して基板10を搬送する場合には、図40(b)に示すように、石英管400が開口部を有し、石英管400の一部がヒーター401に囲まれない。このようにヒーター401に囲まれない部分がある場合、石英管400内の均熱性が低下する。そのため、基板10を回転させる等して、基板10の面内温度の均熱性を保つ工夫が必要になる。又、脱ガス処理時のガス圧力を数百Pa以上とするにより、基板10の面内温度の均一性を改善することができる。
【0120】
次に、ホットプレートやヒーターを用いる加熱方法以外の、脱ガス処理方法で、高効率に脱ガス処理を行うことが実行可能な半導体製造装置の例を説明する。以下では、μ波を利用して絶縁膜中に含まれる水分子を効率良く放出させる半導体製造装置を説明する。水分子は酸素原子1個に水素原子2個が結び付いた構造となっている。そして、酸素原子と水素原子が結び付く際に、水素原子中の電子が酸素原子方向に片寄るため、結合部付近の極性は、酸素原子はプラスに、水素原子はマイナスになる。この結果、水素原子側はプラス、酸素原子側はマイナスの極性をもちながら、水分子は全体として中性を保つ。一方、一般に電波はプラス方向とマイナス方向に交互に極性を変えながら(振動しながら)、空間を進んでいく。そのため、μ波が酸素原子と水素原子の結合部に当たるということは、プラス/マイナス両方向の電気的エネルギーが、結合部に交互に加わることを意味する。その時、まずプラス方向のエネルギーが水分子の結合部に加えられたとすると、それまでバラバラな方向で熱運動を行っていた水分子は、マイナスの極性をもった酸素原子がμ波の方向に引き寄せられて、一斉に方向を変える。次に、結合部にマイナス方向のエネルギーが加えられると、今度はプラスの極性をもった水素原子が引き寄せられるため、水分子は再び一斉に方向転換をする。以上に説明した水分子とμ波の特徴を生かして、水分子のみを絶縁膜から放出することができる。つまり、電波発振器から放出されるμ波を絶縁膜に当てると、絶縁膜中に含まれる水分子が、水分子の運動により加熱(誘電加熱)される。その結果、絶縁膜から水分子のみを放出することができる。なお、μ波照射は真空中で行うことが好ましい。更に、アーク放電の可能性を防止するため、金属膜が露出していない状態で行うことが好ましい。使用するμ波のパワー等のパラメータは、使われている絶縁膜に応じて選択される。
【0121】
又、脱ガス処理を行うチャンバーは、脱ガスしたガス成分を含む副生成物がチャンバー内に付着してゴミの原因となったり、加熱処理時の温度コントロールが困難になるという問題がある。脱ガス処理時に絶縁膜から放出されるガスは、H2O等の酸化種に加えて、RIE法を用いた工程で発生するC、F等を含むガスであることが多い。チャンバー内に付着した副生成物を洗浄するために、チャンバーを大気開放してメンテナンスすることは時間がかかり、生産性の低下となる。そのため酸素、水素を含むガスのプラズマ、あるいはラジカルを用いて除去すれば、チャンバーの洗浄を短時間で終了させることが可能である。すなわち、脱ガス処理を行うチャンバーには、クリーニング機構があることが望ましい。例えば、図40(a)に示すように、石英管400の外周に高周波電力を印加できる高周波印加用コイル402を設けてあれば、酸素や水素を導入しながら高周波電力を印加することにより、石英管400内にプラズマを発生させることができる。そのため、大気開放を伴うメンテナンスを行う必要がなくなる。
【0122】
又、吸湿性の高い絶縁膜に対しては、蒸気圧が高い有機性溶液で絶縁膜中の吸着水を置換、乾燥させる方法も有効である。たとえば、メタノールやエタノール等を基板上に滴下して洗浄し、乾燥させることにより絶縁膜中に含まれる水分子が減少する。この後に脱ガス処理を行うことで、脱ガス処理の高効率化を実現できる。
【0123】
以下に、効率的な表面改質方法として、EB照射及びUV光照射を行う方法を説明する。EB照射及びUV光照射を行うチャンバーは、基板搬送機構を備えた搬送室に接続され、EB照射及びUV光照射処理の前、或いは処理の後に、搬送室に接続された別のチャンバー内で真空連続的に別処理を行うことも可能である。例えば、EB照射及びUV光照射を行うチャンバー内で層間絶縁膜に吸着された吸着ガスの除去或いは低減を行った後、搬送室を介して基板を別チャンバー内に移動させて下層のCu配線表面の酸化膜の除去処理を行う。次いで、別チャンバー内でバリアメタル膜を形成し、更に別チャンバー内でCu膜を形成する連続プロセスが可能である。
【0124】
図41(a)は、バリアメタル膜或いはCu膜を形成するチャンバーに真空連続で基板を搬送可能な、EB照射機能を備える半導体製造装置の構造断面を示している。図41(a)に示す半導体製造装置は、基板10が配置されるホットプレート210と、基板10にEBを照射する電子ビーム発生源500を備えるチャンバー100dからなる。
【0125】
図41(b)には、UV光照射が可能な半導体製造装置の例を示す。図41(b)に示す半導体製造装置は、基板10が配置されるホットプレート210を備えるチャンバー100dと、チャンバー100d上面に設けた光透過窓610を通して基板10にUV光を照射するUV光発生源600からなる。
【0126】
第4の実施の形態で説明したように、絶縁膜の種類によって最表面原子の終端基は異なる。例えば、CH3基で終端されている場合は疎水性を示し、OH基で終端されていれば親水性を示す等の吸着性質の違いが生じる。そのため、バリアメタル形成前にEB照射、UV照射した場合、表面のCH3基などの除去が可能となる。これにより、バリアメタルとの結合が容易となり、密着性を改善することができる。また、重合が不完全な絶縁膜では重合を確実にすることができ、膜中より不要なガス成分を除去することができる。
【0127】
図42(a)及び図42(b)は、EB照射、UV光照射等の表面改質処理や脱ガス処理を行った場合の工程フローを示している。EB照射、UV光照射工程は、絶縁膜のキュア工程と同様の工程である。そのため、EB照射、UV光照射工程を複数回行うと必要以上にキュア工程が進み、絶縁膜の誘電率が上がってしまう可能性がある。そのため、図42(a)に示すように、絶縁膜キュアに必要なエネルギーと照射時間を、絶縁膜を形成する工程の後とバリアメタル膜を形成する工程前に分割することが好ましい。或いは、図42(b)に示すように、絶縁膜のキュア工程をバリアメタル膜形成前の脱ガス処理の促進工程と兼ねるようにプロセスフローを変更すればよい。
【0128】
以上に説明したように、本発明の第6の実施の形態に係る半導体製造装置によれば、吸湿性の高い低誘電率絶縁膜の脱ガス処理の工程が長時間となる場合において、スループットの低下を抑制することができ、又、高効率な脱ガス処理を行うことが可能になる。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1乃至第6の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0129】
例えば、既に述べた第1乃至第6の実施の形態の説明においては、TiとTi窒化物、Al及びAl酸化物を形成する場合を例に説明したが、以下の応用も当然可能である。例えば、配線層と絶縁膜の間の金属膜としては、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)等でも可能である。特に、IIa、IIIa、IVa、Va族金属で、Mg、Zr、Vなどが有望であることは実施の形態中でも述べた。
【0130】
更に、第4、第5の実施の形態においては、原料ガスやその他導入ガスを変更すれば、シリコン(Si)、Ta、W、Hf、Zn、ルテニウム(Ru)等、あるいはそれらの酸化物、窒化物の成膜にも応用可能である。
【0131】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0132】
10…基板
20…絶縁膜
30…金属膜
35…チタン酸化膜
36…タンタル膜
50…層間絶縁膜
70…第2配線層
71…第2のCuシード膜
200…凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の構造及びその製造方法に関わり、特に銅膜のバリアメタルを含む配線構造とその製造方法とに関わる。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(LSI)の多層配線には比抵抗の低い銅(Cu)膜が用いられ、層間絶縁膜に形成した溝やビアホールにCu膜を埋め込むダマシン配線が主流になっている。配線幅はLSIの微細化とともに細くなり、配線間容量の低下を目的として配線厚は薄くなる傾向がある。そのため微細ダマシン配線では、比抵抗の高いバリアメタル膜の配線断面積に占める割合が配線抵抗に大きく影響する。つまり、バリアメタル膜が薄いほどダマシン配線の抵抗は低くなる。しかし、バリアメタル膜には層間絶縁膜へのCu原子の拡散防止、Cu膜との密着性、及び層間絶縁膜との密着性が同時に求められる。
【0003】
特にバリアメタル膜とCu膜との密着性は、配線のエレクトロマイグレーション(EM)耐性やストレスマイグレーション(SM)耐性において非常に重要である。さらにバリアメタル膜は上記要求を満たす最も薄い膜厚で、且つ層間絶縁膜に形成した溝の底面や側面に一様な厚みでコンフォーマルに形成されることが望まれている。
【0004】
次に、薄いバリアメタル膜の形成について、昨今の状況を述べる。一般的な、物理気相成長法(PVD法)は段差被覆性が低い。そのため、層間絶縁膜に形成された溝とビアホールを金属で埋め込んで形成するデュアルダマシン構造では、PVD法によりコンフォーマルなバリアメタル膜を形成することが困難である。そのため、基板バイアスによってメタルイオンを引き込んでボトムカバレッジを改善し、イオンの再スパッタ効果を利用してサイドカバレッジを改善するイオン化PVD法が開発され、バリアメタル膜の形成に用いられてきた。しかし、配線の微細化、高アスペクト化により、配線抵抗、バリア性、及び密着性を保つのに十分なコンフォーマル成膜が今後ますます困難となる。一方、化学気相成長法(CVD法)により、コンフォーマルなバリアメタル膜を形成することが可能であるが、SM不良の問題から、配線工程では高温プロセスが適用できない。そのため、CVD法では配線工程の許容温度で分解する、バリアメタル膜として成膜したい材料の原料ガスが少ない問題がある。また、極薄膜のコンフォーマルな成膜方法として基板表面に原子層を一層ずつ積み上げて薄膜を成長させる原子層成長法(ALD法)が提案されている。ALD法では厚い膜を形成する方法には向かないが、段差被覆性よく極薄膜を形成できる。ALD法もCVD法と同様に配線工程の許容温度内で原料ガスを熱分解させることが難しい問題があり、低温化のために、吸着した原料ガスを分解するステップでプラズマ照射により分解を促進する方法(例えば、特許文献1参照。)やUV光照射により分解を促進する方法(例えば、特許文献2、3参照。)が提案されている。
【0005】
最近の層間絶縁膜は、信号遅延を抑制するために低誘電率絶縁膜が用いられるようになってきている。低誘電率絶縁膜は、有機系絶縁膜だけではなく、無機系絶縁膜であっても炭素(C)を多く含み、空孔が多く、水(H2O)等の酸化種がトラップされている。そのため、CVD法、ALD法においてプラズマ照射を用いて成膜温度を低温化する方法では、原料ガスの分解工程でのプラズマ照射により絶縁膜中の炭素が放出され、絶縁膜がダメージを受ける問題がある。特に、水素(H)や酸素(O)を含むガスを用いたプラズマの場合は、低誘電率絶縁膜のエッチングが起こり、絶縁膜のはがれが生じる場合がある。
【0006】
更に、酸化種を多く含む低誘電率絶縁膜では、プラズマ照射やUV光照射を用いて、補助的に分解温度を低温化するALD法やCVD法を用いてもバリアメタル膜の形成時にバリアメタル膜が酸化される場合がある。酸化したバリアメタル膜は、酸化種の透過を抑制できない。その結果、酸化種によりバリアメタル膜すべてが酸化し、バリアメタル膜とCu膜等の配線材との密着性が低下する問題がある。
【0007】
バリアメタル膜とCu膜との密着性は、材料として決まる密着性と、バリアメタル膜が変質して経時的に変化する密着性がある。特に、経時的な密着性の変化は、製造工程中だけでなく、実使用時にSM、EM不良などを引き起こすため、極めて深刻である。プラズマ照射、電子ビーム照射、紫外線照射を伴う加工工程や絶縁膜キュア工程では、絶縁膜中の炭素を含む分子が放出され、絶縁膜がダメージを受け、脱離した炭素が結合していたサイトには水が吸着しやすい。
【0008】
この製造工程中、或いは実使用中にバリアメタル膜が経時的に変質する原因は、絶縁膜中に含まれる酸化種によりバリアメタル膜が酸化し、Cu膜との密着性が低下することがある。また、絶縁膜中に含まれるCを含む分子により、バリアメタル膜が炭化(カーバイド化)する場合もある。
【0009】
このように、バリアメタル膜の変質を抑制し、密着性を保持することが、今後ますます難しくなる。また、あらかじめ界面に酸化物を形成するプロセス(例えば、特許文献4参照)が提案されているが、酸化物を積極的に形成した場合、価数の大きな密度の低い酸化物を形成されるため、所望の形態は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−297814号公報
【特許文献2】特開2001−220287号公報
【特許文献3】特開2002−170821号公報
【特許文献4】特開2000−269213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、配線材との密着性良く、金属膜を形成する半導体装置の製造方法、及び配線材との密着性が良い金属膜を備えた半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、基板上に絶縁膜、金属からなるバリアメタル膜、及びCu配線金属膜がこの順で積層された積層構造を具備してなり、バリアメタル膜の酸化物のX線回折測定による回折強度が、バリアメタル膜とCu配線金属膜との化合物の回折強度の10倍以下である半導体装置が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、基板上に絶縁膜、金属からなるバリアメタル膜、及びCu配線金属膜がこの順で積層された積層構造を具備してなり、バリアメタル膜の酸化物のX線回折測定による回折強度が、バリアメタル膜とCu配線金属膜との化合物の回折強度の10倍以下である半導体装置の製造方法であって、第1の基板温度で、表面に凹部が形成された絶縁膜中及びその絶縁膜表面の酸化を一部残存するように放出させる工程と、酸化種を放出させる工程と真空連続で、第1の基板温度より低い、絶縁膜中から酸化種が放出されない第2の基板温度で、絶縁膜上に、バリアメタル膜を形成する工程と、バリアメタル膜上にCu配線金属膜を形成する工程と、バリアメタル膜を形成後、絶縁膜中に残存させた酸化種によって、バリアメタル膜の少なくとも一部を酸化させる工程と、バリアメタル膜とCu配線金属膜との界面に、バリアメタル膜とCu配線金属膜との化合物を形成する工程とを含み、バリアメタル膜を酸化させる工程は、バリアメタル膜を第1の基板温度よりも高い温度で加熱する工程を含む半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配線材との密着性が良い配線構造を形成できる半導体装置の製造方法、及び配線材との密着性が良い金属膜を備えた半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その3)。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その4)。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その5)。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その6)。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その7)。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その8)。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その9)。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その10)。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その11)。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その12)。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を行う半導体製造装置の例を示す模式図である。
【図14】従来の半導体装置の製造方法により形成される酸化膜の構造を示す断面構造図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法により形成される酸化膜の構造を示す断面構造図である。
【図16】370℃、60分熱処理後のサンプルをX線回折法により解析した結果であり、図16(a)は従来技術を用いて製造されたサンプルの解析結果を示すグラフ、図16(b)はステージ温度25℃で第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて製造されたサンプルの解析結果を示すグラフ、図16(c)はステージ温度−20℃で第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて製造されたサンプルの解析結果を示すグラフ、図16(d)は解析に使用したサンプルの構造を示す模式図である。
【図17】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法及び関連技術を用いてそれぞれ製造されたチタン酸化膜のEELS分析結果を示すグラフである。
【図18】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて製造される半導体装置の例を示す構造断面図である。
【図19】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて製造された配線の二次イオン質量分析(SIMS)の結果を示す表である。
【図20】第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて製造された配線のアニール前の抵抗率に対するアニール後の抵抗率の比を示すグラフである。
【図21】Ti膜及びTiOx膜の分子密度を示すグラフである。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法により形成されたCuシード膜の例を示す構造断面図であり、図22(a)はイオン化スパッタ法によるCuシード膜形成例、図22(b)はCVD法によるCuシード膜形成例(その1)、図22(c)はCVD法によるCuシード膜形成例(その2)である。
【図23】本発明の第3の実施の形態の比較例(その1)に係る半導体装置の製造方法により形成される配線層の構造を示す断面構造図であり、図23(a)は加熱を伴う工程前の断面構造図、図23(b)は加熱を伴う工程後の断面構造図である。
【図24】本発明の第3の実施の形態の比較例(その2)に係る半導体装置の製造方法により形成される配線層の構造を示す他の断面構造図であり、図24(a)は加熱を伴う工程前の断面構造図、図24(b)は加熱を伴う工程後の断面構造図である。
【図25】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法により形成される配線層の構造を示す断面構造図であり、図25(a)は加熱を伴う工程前の断面構造図、図25(b)は加熱を伴う工程後の断面構造図である。
【図26】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的なフロー図である。
【図27】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程フロー図である(その1)。
【図28】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程フロー図である(その2)。
【図29】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程フロー図である(その3)。
【図30】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程フロー図である(その4)。
【図31】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の効果を説明するための模式図である。
【図32】従来の半導体装置の製造方法を示す模式的なフロー図である。
【図33】従来の半導体装置の製造方法により形成される酸化膜の構造を示す断面構造図である。
【図34】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法により形成される酸化膜の構造を示す断面構造図である。
【図35】本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する工程フロー図である。
【図36】従来の半導体装置の製造方法により形成されるAl酸化膜の構造を示す断面構造図である。
【図37】本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて形成されるAl酸化膜の構造を示す断面構造図である。
【図38】本発明の第6の実施の形態に係る半導体製造装置の構造を示す模式図であり、図38(a)は断面図であり、図38(b)は上面図である。
【図39】本発明の第6の実施の形態に係る半導体製造装置の他の構造を示す模式図である。
【図40】本発明の第6の実施の形態に係る半導体製造装置の更に他の構造を示す模式図であり、図40(a)は断面構造図であり、図40(b)は上面図である。
【図41】本発明の第6の実施の形態に係る半導体製造装置の構造を示す模式図であり、図41(a)はEB照射を行う半導体製造装置の模式図、図41(b)はUV光照射を行う半導体製造装置の模式図である。
【図42】図41に示した半導体製造装置を使用する絶縁膜のキュア工程を説明するための工程フロー図であり、図42(a)はキュア工程を2回に分割する場合の工程フロー図、図42(b)はキュア工程を1回で行う場合の工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して、本発明の第1乃至第6の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0017】
又、以下に示す第1乃至第6の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係わる半導体装置の製造方法は、絶縁膜から放出されるガスを使用して、金属膜と絶縁膜との界面に接する金属膜の表面に酸化物を形成する方法である。
【0019】
図1〜図12を用いて、まず半導体装置の製造工程について説明する。以下では、配線材にCu膜、バリアメタル膜にチタン(Ti)膜、絶縁膜に有機系低誘電率絶縁膜であるポリアリーレンエーテル(以下、PAEと略す)膜及び無機系低誘電率絶縁膜である炭素含有シリコン酸化(以下、SiCOと略す)膜等を使用したデュアルダマシン構造の多層配線を形成する場合を説明する。
【0020】
(イ)図には示していないが、半導体基板10内の半導体素子等に電気的に接続された下層電極が露出する第1のシリコン酸化(SiO2)膜21上に第1のPAE膜22及び第2のSiO2膜23を順次形成し、図1に示す構造断面図を得る。
【0021】
(ロ)次に、図2に示すように、フォトリソグラフィ技術及び反応性イオンエッチング(RIE)法等を用いて、第1のPAE膜22及び第2のSiO2膜23を選択的にエッチング除去して第1配線溝201を形成する。次いで、第2のSiO2膜23の表面、第1配線溝201の側面部及び底部にバリアメタル膜として第1のTi膜30bを形成する。第1のTi膜30bは、段差被覆性良く形成され、図3に示す構造断面図を得る。
【0022】
(ハ)図4に示すように、真空連続で第1のCuシード膜41を形成する。次いで、めっき装置を用いて第1配線溝201を充填するように第1のCuめっき膜42を形成する(図5)。次に、Cu膜のセルフエージングなどによる膜質の経時変化によるばらつきを防ぐ為に、あらかじめ大粒径化する熱処理工程を行う。その後、化学的機械研磨(CMP)法を用いて第1のCuめっき膜42と第1のTi膜30bの平坦化を行い、図6に示すように第1のTi膜30b及び第1のCuめっき膜42からなる第1配線層40が形成される。
【0023】
(ニ)次に、図7に示すように、炭窒化シリコン(SiCN)膜51、SiCO膜52、第2のPAE膜53、第3のSiO2膜54を順次に形成する。ここで、SiCN膜51はRIE法を用いる工程におけるストッパー膜、及びCuの拡散防止膜として形成される。又、第3のSiO2膜54はCMP法を用いる工程における保護膜として形成される。SiCN膜51、SiCO膜52、第2のPAE膜53、及び第3のSiO2膜54により層間絶縁膜50が形成される。
【0024】
(ホ)次いで、フォトリソグラフィ技術及びRIE法を用いて層間絶縁膜50を選択的にエッチング除去して、第2配線溝202及びビアホール203を形成する。その結果、図8に示すように第1配線層40の表面の一部が露出する。次いで、層間絶縁膜50の表面にバリアメタル膜として第2のTi膜30cを形成する。第2のTi膜30cは段差被覆性良く形成され、図9に示す構造断面図を得る。
【0025】
(ヘ)図10に示すように、真空連続で第2のCuシード膜71を形成する。次いで、めっき装置を用いて第2配線溝202及びビアホール203を充填するように第2のCuめっき膜72を形成する(図11)。次に、Cu膜のセルフエージングなどによる膜質の経時変化によるばらつきを防ぐ為に、あらかじめ大粒径化する熱処理工程を行う。その後、CMP法を用いて第2のCuめっき膜72と第2のTi膜30cの平坦化を行い、図12に示すように第2のTi膜30c及び第2のCuめっき膜72からなる第2配線層70が形成される。更に多層配線を形成するためには、図7〜図12の工程を繰り返せばよい。
【0026】
以下に、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の例を説明する。以下では、図7に示す層間絶縁膜50及び図9に示した第2のTi膜30cを形成する場合を例に説明する。図7の説明で述べたように、第1配線層40上にストッパー膜としてSiCN膜51、層間絶縁膜としてSiCO膜52及び第2のPAE膜53、CMP法を用いる工程における保護膜として第3のSiO2膜54等が適用可能である。又、層間絶縁膜として、SiCO膜52のみ或いは第2のPAE膜53のみを形成してもよい。複数種の絶縁膜からなる層間絶縁膜のうち、少なくとも1つの絶縁膜に吸湿性の高いポーラス膜を使用した場合、絶縁膜から放出される酸化種が多くなる。「ポーラス膜」とは、誘電率を低下させるために空孔を多く含む膜であり、絶縁膜から放出されるガスを使用して金属膜の表面に酸化物を形成するうえで、その膜中に水などの酸化種を含む、特に比誘電率3以下の絶縁膜を用いることは極めて有効である。
【0027】
(イ)図8に示したように、フォトリソグラフィ技術及びRIE法を用いて層間絶縁膜50を選択的にエッチング除去して、第2配線溝202及びビアホール203を形成する。その後、例えば250℃以上300℃以下の温度で、真空中或いはH2ガス等の還元雰囲気中で熱処理を行う。この熱処理により、層間絶縁膜50中に含まれるH2O、或いは第2配線溝202及びビアホール203の形成時に結合が切れて、層間絶縁膜50中に残っている炭素系の残留物等が除去される。このとき、還元雰囲気中で行えば、ビアホール203底部に露出した第1配線層40表面の酸化膜の還元処理も行える。
【0028】
(ロ)次に、真空連続にて、バリアメタル膜を形成する、例えば図13に示すイオン化スパッタリングチャンバー内に、基板10を搬送する。そして、少なくとも層間絶縁膜50の脱ガス処理工程での加熱温度以下、望ましくは室温以下に設定されたサセプタ上に基板10を設置する。基板10はサセプタに吸着され、基板10の温度をサセプタと同等の温度に保つ。
【0029】
(ハ)図9で説明したように、イオン化スパッタリング法等の方法により、第2のTi膜30cを形成する。一般に、通常プラズマを用いて第2のTi膜30c膜を形成する場合、第2のTi膜30c形成中に基板10の温度が上昇する。そのため、第2のTi膜30cの形成前に行われる脱ガス処理或いはH2還元加熱処理における温度を超えないように、第2のTi膜30c形成中は、基板10の温度を制御する。例えば、脱ガス処理或いはH2還元加熱処理を250℃で行っていれば250℃を超えない温度、300℃で行っていれば、300℃を超える温度にならないように基板10の温度を制御する。
【0030】
(ニ)次に、真空連続にて基板10をCu膜形成用のチャンバーに搬送し、基板10を室温以下に冷却し、図10に示すように第2のCuシード膜71を形成する。第2のCuシード膜71は、所望の膜厚、例えば60nm程度の膜厚になるようにPVD法、CVD法、或いはALD法等によって形成すればよい。次いで、基板10を大気中に出し、図11に示したように、めっき法にてビアホール203及び第2配線溝202を第2のCuめっき膜72で埋め込む。そして、第2のCuめっき膜72のセルフエージングなどによる膜質の経時変化によるばらつきを防ぐ為に、あらかじめ大粒径化する熱処理工程(めっき後アニール)を行う。めっき後アニールを、真空、窒素(N2)ガス雰囲気中、或いはN2/H2ガス雰囲気中のいずれかにおいて、温度150℃/時間60分〜温度300℃/時間60分等の条件で行う。このアニール条件は、種々めっきの条件と共に、最適温度や最適時間が変わることは言うまでも無い。最後にCMP法により第2のCuめっき膜72の平坦化を行い、デュアルダマシン構造を形成する。
【0031】
以下に、Ti膜の形成時のTi酸化について説明する。既に述べたように、誘電率を下げるため、低誘電率絶縁膜は空孔が多い。そのため、基板10を加熱した場合、絶縁膜の空孔内に含まれる水や酸素等の酸化種が溝、あるいはビアホールの側面から放出される。図14(a)に示すように、スパッタ粒子であるTi原子が飛来してくる過程において酸化種が放出されると、Ti原子は酸素と結合して酸化チタン(TiOx)を形成する。その場合、Ti原子は他のTi原子と結合していない状態で酸素と結合するため、Ti−O原子間距離が広い。これは、Ti粒子が原子状或いは分子状で飛来し、十分な酸化反応を生じやすい形態で酸化物を生じるため、安定な結合を形成する酸化物で、比較的価数が大きな酸化物が形成されうるためである。このような成膜過程を繰り返して絶縁膜20の表面に形成されるTiOx膜は、Ti−O原子間隔が広く、分子密度が低いTiOx膜となってしまう(図14(b))。さらに図14(c)に示すように、このような分子密度の低いTiOx膜は、絶縁膜20に残留する酸化種のさらなる放出を抑えられず、最終的にはすべてのTi膜は分子密度の低いTiOx膜として形成されてしまう。このようなTiOx膜はCu膜との密着性が低く、溝、あるいはビアホールにCu膜が配線材として埋め込まれた場合、TiOx/Cu界面でCu原子の界面拡散が起こってしまう。つまり、Cu配線のSM耐性が低く、配線中にボイドが発生する。
【0032】
一方、脱ガス処理工程より低い温度でTi膜を形成した場合は、図15(a)のように、絶縁膜20からの酸化種の放出がない。そのため、図15(b)に示すようにTiOx等を含まない純(pure)Ti膜30aがバリアメタル膜として形成される。この後、Ti膜形成後の絶縁膜形成工程やシンタリング工程などにおいて、脱ガス処理工程より高い温度に加熱された場合、絶縁膜20中に残存した酸化種が放出され、絶縁膜20に接するTi膜30aの表面は酸化される。しかし、Ti膜30aのTi−Ti結合が既に形成されている為、Ti膜30aの酸化は、Ti−Ti原子間への拡散と固溶によって進行する。そのため、分子密度が緻密なTiOx膜が形成される(図15(c))。分子密度が高いTiOx膜は、絶縁膜20からの酸化種の放出を抑制する。そのため、Ti膜30aの酸化は、絶縁膜20とTi膜30aとの界面近傍の領域に限られ、界面から離れた領域のTi膜が酸化することを抑制できる。つまり、第1の実施の形態に係る半導体製造方法によれば、配線金属膜と絶縁膜の両方に接する金属膜において、金属膜が配線金属膜に接する部分の金属の原子或いは分子密度と比較して、金属膜が絶縁膜に接する部分の金属の原子或いは分子密度の方が高く、かつ金属の密度が徐々に変化する半導体装置を実現できる。図1〜図12に示した半導体装置でいえば、第2のCuめっき膜72と層間絶縁膜50の両方に接する第2のTi膜30cにおいて、第2のTi膜30cが第2のCuめっき膜72に接する部分のTiの原子或いは分子密度と比較して、第2のTi膜30cが層間絶縁膜50に接する部分のTiの原子或いは分子密度の方が高く、かつ第2のTi膜30cのTiの原子密度が徐々に変化する。
【0033】
第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の、脱ガス処理工程及びバリアメタル成膜工程の温度の上下関係を規定することにより、溝、あるいはビアホールにCu膜が埋め込まれた時点では、Ti/Cu界面でのTi膜は酸化されていない。そして、良好な密着性を確保できたTi/Cu界面を形成した後の工程で、バリアメタルの酸化が、前述のような分子密度の差をもって生じることになる。その結果、Ti/Cu界面は密着性を保つことができ、Cu膜のSM耐性が劣化することはない。又、分子密度が高いTiOx膜は絶縁膜20からの酸化種の放出を抑制することに有効であるだけでなく、Cuの絶縁膜20中への拡散を抑制する効果も合わせもつ。本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、特に比誘電率3以下の絶縁膜20に対して極めて有効である。
【0034】
第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法にて作成したサンプルの解析結果を、図16(a)〜(d)に示す。図16(a)〜(c)は、X線回折法の2θ―θ法で本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造方法を用いて製造したサンプルと、先行技術で製造したサンプルを比較測定した結果である。図16(b)、図16(c)のステージ温度はTi膜の成膜時のステージ保持温度であり、基板の温度ではないことを記しておく。横軸は測定時の2θである。縦軸は強度(Intensity)、単位はcps(count per sec)である。
【0035】
図16(a)〜(c)から、先行技術により形成されたサンプルのTiOx膜のピーク強度は2182cpsである。一方、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造方法により形成されたサンプルのTiOx膜のピーク強度は、ステージ温度25℃では706cps、ステージ温度−20℃では543cpsである。つまり、先行技術により形成されたサンプルのTiOx膜のピーク強度は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造方法により形成されたサンプルのTiOx膜のピーク強度に比べて大きいことがわかる。先行技術においては、Ti膜が成膜時に低誘電率絶縁膜から放出された酸化種で酸化され、シンター工程などの熱処理工程中も酸化種の放出を抑えられず、酸化が進行したと考えられる。一方、第1の実施の形態に係る半導体製造方法においては、Ti膜の成膜中の酸化が抑えられる。そのため、Ti膜の成膜後の加熱工程において分子密度の高いTiOx膜が形成され、それ以上のTi膜の酸化の進行を抑えられたと考えられる。また、本発明の第1の実施の形態に係る半導体製造方法では、Ti膜が酸化されなかったため、Ti膜とCu膜が接する領域でTiCux膜が形成されていることが図16(a)〜図16(c)からわかる。TiCux膜のピーク強度は、ステージ温度25℃では224cps、ステージ温度−20℃では210cpsである。一方、先行技術においては、TiCux膜のピーク強度は108cpsであり、ほぼバックグラウンド強度と同等か、計測できないレベルである。以上の結果から、先行技術ではTiCux膜の形成量は非常に少ないか、或いはTiCux膜は形成されていないと考えられる。
【0036】
更に、本発明者らが多数の実験と鋭意研究を行った結果、2θ―θ法で測定したTiCux膜のピーク強度を1とした場合に、TiOx膜のピーク強度が10を超えるとき、半導体装置の信頼性が劣化することが明らかになった。Ti膜を、TiOx膜ではなく、TiCux膜が多く形成されるように形成比率をコントロールすることにより、TiCux膜が、Cu膜とTi膜との密着層となり、Cu膜のSM耐性、EM耐性を大幅に向上することができる。図16(d)に構成を示したサンプルのCu膜、Ti膜及び低誘電率絶縁膜は、図12の第2のCuめっき膜70、第2のTi膜30c及び層間絶縁膜50に相当する。したがって、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置によれば、基板上に絶縁膜、金属膜、及び配線金属膜がこの順で積層された積層構造を具備してなり、積層構造におけるX線回折測定による金属膜の酸化物の回折強度が、金属膜と配線金属膜との化合物の回折強度に対し、10倍以下である半導体装置を実現できる。例えば、図12に示すように基板10上に層間絶縁膜50、第2のTi膜30c及び第2のCuめっき膜70がこの順に積層された積層構造を具備してなり、積層構造におけるX線回折測定法によるTi酸化物の回折強度が、第2のTi膜30cと第2配線層70との化合物の回折強度に対し、10倍以下である半導体装置を実現できる。
【0037】
図1〜図12に説明した工程を繰り返すことにより多層配線を形成し、その後、電極用のCuパッド或いはAlパッドを形成する。そして、最終工程として多層アニールを行う。なお、真空中、或いはH2等の還元雰囲気中での脱ガス処理工程における処理温度以下の低い温度で、第2のTi膜30cの形成が行われるのであれば、第2のTi膜30cの形成方法には、PVD法以外に、CVD法或いはALD法が採用可能である。
【0038】
通常、低誘電率絶縁膜中に含まれるH2O、OH基、或いは遊離炭素系のガスを短時間で十分に除去するためには、脱ガス処理工程において350℃〜400℃の加熱を必要とする。したがって、上記で説明した方法のように、250℃〜300℃で脱ガス処理或いはH2還元加熱処理を行った場合、層間絶縁膜50中には、サーマルバジェット差分のH2O、OH基、遊離炭素系のガスが残留する。これらの残留酸化種、或いは炭素を含む遊離基による第2のTi膜30cとの固相反応によって、層間絶縁膜50と第2のTi膜30cの界面近傍において、第2のTi膜30cの酸化(以下において、「Ti後酸化」という。)が行われる。
【0039】
Ti後酸化は、上記で説明した脱ガス処理工程での温度の上限である300℃より低い温度でも発生する。層間絶縁膜50中の酸化種成分の濃度勾配によっては、300℃以下でもH2Oの拡散が進行するためである。又、第2のTi膜30cのTi後酸化を積極的に行う熱工程が、多層配線形成後に行われてもよい。或いは、第2のCuめっき膜72の膜質の安定化処理のアニール時に、250℃〜300℃の温度を選択することによってもTi後酸化を行うことが可能である。又、第2のCuめっき膜72を形成する工程の前にTi後酸化を行う熱工程を行うことも有効である。例えば、第2のCuシード膜71を形成するPVD法は、一般的に室温以下で行われる。しかし、第2のCuシード膜71にCVD法或いはALD法を用いた場合には、第2のTi膜30cの形成温度よりも第2のCuシード膜71を形成する温度を高く設定することにより、Ti後酸化を行うことが可能である。
【0040】
Ti膜の固相拡散/固相酸化反応で形成されるTi酸化物は、Ti−O2元相図にあるように、酸素を固溶する濃度が他の金属材料よりも高い。その為、酸素固溶領域では、純Tiの重量原子密度4.507g/cm3よりもTi酸化物の重量分子密度が高い。例えば、酸化チタン(II)(TiO)の重量分子密度は4.93g/cm3、五酸化チタン(Ti3O5)の重量分子密度は4.6g/cm3である。60原子%まで酸素がある場合に形成される酸化チタンTiO2でも、重量分子密度は4.26g/cm3で、Ti原子の重量原子密度の80%以上である。マグネシウム(Mg)もTiと同様の特性で、Mg酸化物の重量分子密度が純Mgの重量原子密度より高い。このように酸素を固溶する形態を持つ材料をバリアメタル膜として用いることは、形成される酸化物の重量分子密度が高いため、絶縁膜から放出される酸化種をブロックするのに有効である。更に、実験の結果、純金属の重量原子密度の80%以上の重量分子密度をもつ金属酸化物であれば、より望ましいことが明らかになった。前述のようにCu膜とバリアメタル膜の密着部が形成された後にバリアメタル膜が酸化されるため、Cu膜との密着性を保つ部分を含む領域の一部にTi膜が残り、Cu膜とTi膜の密着性は劣化しない。又、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、配線金属膜と絶縁膜の両方に接する金属膜において、金属膜が配線金属に接する部分の金属の原子或いは分子密度と、金属膜が絶縁膜と接する部分の金属の原子或いは分子密度に比較して、配線金属膜と絶縁膜の間に挟まれる部分の金属の原子或いは分子密度の方が高い半導体装置を実現できる。図1〜図12に示した半導体装置でいえば、第2のCuめっき膜72と層間絶縁膜50の両方に接する第2のTi膜30cにおいて、第2のTi膜30c中の酸素濃度に膜厚方向に沿った勾配を持たせることで、第2のTi膜30cが第2のCuめっき膜72に接する部分のTiの原子或いは分子密度と、第2のTi膜30cが層間絶縁膜50と接する部分のTiの原子或いは分子密度に比較して、第2のCuめっき膜72と層間絶縁膜50の間に挟まれる部分のTiの原子或いは分子密度の方が高い半導体装置を実現できる。
【0041】
Ti後酸化後に層間絶縁膜とTi膜の界面近傍に形成されるチタン酸化(TiOx)膜、及びCu膜側のTi膜のO/Ti強度比を確認した例を以下に示す。先ず、透過型電子顕微鏡(TEM)解析用サンプルを作成する。そして、解析用サンプルのTEM−電子エネルギー損失分光(EELS)分析を行う。解析用サンプルは、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法及び関連技術によってそれぞれ作成される。このとき、各製造方法で作成される測定サンプルのサンプル厚を同一にする。EELS分析によって、上記の、例えば室温で成膜を行った解析用サンプルのTi強度と酸素強度を取得したところ、溝側壁の観察により、Cu側のO/Ti強度比が絶縁膜側のO/Ti強度比よりも低く、Cu側のO/Ti強度比は0.12未満(約0.11程度)であることが明らかになった。また、Ti膜の体積膨張等はほとんど観察されなかった。以上から、特にCu膜に接するTi膜の状態は、酸素を固溶している状態に近いものと推察される。更に、TEM解析を行った解析サンプルのビアホール側壁のTi膜について、同じくEELS分析によってTi強度と酸素強度の比を評価した結果を図17に示す。図17において、温度T1は第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によってバリアメタル膜を形成した時の基板温度、例えば25℃である。温度T2は、関連技術によってバリアメタル膜を形成した時の基板温度であり、脱ガス工程の基板温度と同程度以上である。図17に示したように、O/Tiの強度比は0.1以下である。
【0042】
上記のように、TiOx膜が除かれたCu膜との界面に接し、Ti膜の膜厚変化がほとんどない場所でのO/Ti強度比は0.12未満である。このことから、Ti膜が酸素を固溶している状態でのO/Ti強度比が0.12未満であることが推察される。この数値は、EELS解析によるO/Ti強度比が原子数比に対応していると仮定すると、図17中で示した解析サンプルの工程最高温度(400℃)での酸素固溶濃度とも一致する。なお酸素の固溶濃度は、420℃であれば、O/Ti原子数比で0.123、450℃であれば、O/Ti原子数比で0.15である。
【0043】
上記のように、Ti膜中に酸素が固溶することによるTiの密度変化はほとんど生じず、タンタル(Ta)膜等の酸化形態の材料と異なり、TiOx膜では粒界による大きな拡散経路の増加が抑制される。以上に説明したように、Ti後酸化工程における、Ti中の酸素の固溶濃度まで層間絶縁膜側からの酸化種による酸素がTiOx膜に含まれているが、Ti後酸化工程においてTi膜とCu膜との界面に化合物が形成されるため、Ti膜とCu膜との密着性は確保される。
【0044】
更に、Ti膜がすべて酸素を含む形態になっても、Ti膜とCu膜の界面反応物が形成された後なので、Ti膜とCu膜の密着性の劣化は生じない。又、Ti膜が一部或いはすべて酸化された後に追加Ti膜を形成する工程を行ってもよい。更に、Ti膜が一部或いはすべて酸化された後に、酸素の固溶度が低いTa等のTiとは異なる金属膜を形成してもよい。密度の高いTi酸化物上に形成されるTa等の金属膜は、Cu膜との密着層として有効に機能する。その場合、Ta膜と絶縁膜の間に存在するTi酸化物が、絶縁膜から放出されるH2O等の酸化種をブロックするため、Ta膜の酸化が抑制される。そのため、Ta膜を単体で使用する場合よりも、バリアメタル膜として安定に使用することができる。図18に、TiOx膜35上にTa膜36を形成した例を示す。酸素を固溶する濃度が高い材料としては、Ti、Mg、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)等が有望である。
【0045】
Ti膜上に形成する膜の材料としては、酸化されにくい、或いは酸化物でもCu膜と密着性のよい材料を選択することももちろん可能であり、例えば、ルテニウム(Ru)、パラヂウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)等が挙げられる。
【0046】
又、上記の説明では、絶縁膜との界面で酸素を固溶しやすい材料(例えばTi)を後酸化することを望ましい形態として示したが、例えば合金のターゲットを用いて混合膜をバリアメタル膜として成膜し、後酸化工程でバリアメタル膜の酸化を行うことももちろん可能である。例えば合金の種類としてはTiRux、TiPdx、TiPt、TiAux等が挙げられる。これらの材料では、特に絶縁膜とバリアメタル膜の界面に接するTiが先に酸化されやすい。そのため、Ti膜のバリアメタル膜を後酸化する場合と同様の効果が得られる。
【0047】
Ti後酸化の熱処理条件として望ましい条件を以下に示す。Tiのバリアメタル膜とCu膜が反応することによる効果は、既に述べたストレスマイグレーション耐性及びエレクトロマイグレーション耐性の向上以外に、以下の効果がある。即ち、Cu膜中、特にCu粒界にTi原子が存在することにより、Cu原子の拡散が抑制される。しかし、Cu原子の拡散を抑制する効果を、現実的な製造工程の時間、例えば30分や1時間で得るためには熱処理温度は150℃では不足で、200℃以上の熱処理工程が必要である。図19に、以下の方法で作成されたサンプルの二次イオン質量分析(SIMS)を行った結果を示す。サンプルの作成方法は、以下のとおりである。イオン化PVD法によってTi膜を10nm形成する。次いで、イオン化PVD法によってCuシード膜を46nm形成する。更に銅配線用めっき(ECP)装置によってCu膜を120nm形成する。そして、Ti後酸化の熱処理工程を模擬して、図19に示した各温度で1時間、H2ガスの還元雰囲気中で熱処理する。図19は、上記サンプルにおいて、Ti/Cu界面から0.2nmまでのCu膜中のTi濃度の最大濃度を示す。図19に示したように、熱処理温度が150℃を超えることが、Cu膜中にTi原子を拡散させてCu原子の拡散を抑制することに効果的である。
【0048】
このように、Ti原子を拡散させてCu膜中に添加するためには、150℃を超える熱処理が望ましいが、一方でTi/Cu界面で十分な化合物を形成してしまうと、形成された化合物中のTi拡散に律速され、所望のCu膜へのTi原子の添加効果が得られない可能性がある。又、はじめから高温の熱処理を行うと、多量のTi原子をCu膜に添加してしまうとともに、Ti/Cu界面に多量のTiとCuの化合物が形成されてしまい、化合物の形成と後酸化のバランスがうまくとれない可能性もある。つまり、化合物の形成により、絶縁膜から放出される酸化種によるTi膜の酸化が影響を受け、所望の特性のTi酸化物が形成されない可能性がある。
【0049】
これらの反応をコントロールする為には、Ti/Cuの化合物によってTi膜からCu膜への拡散を抑制されることのない第1の加熱温度で熱処理を行ってCu膜中にTi原子を添加すると共に、絶縁膜からの酸化種の放出によってTi膜と絶縁膜の界面に界面酸化層を形成する。次に、第1の加熱温度より高い第2の加熱温度で熱処理を行って、Ti膜とCu膜の反応によりTi/Cu化合物を生じさせ、Ti膜とCu膜との密着性を向上させる。つまり、望ましい後酸化のための加熱工程は、第1の加熱温度で熱処理と第2の加熱温度での熱処理を含む。上記の熱処理により、Ti原子のCu膜中への拡散のコントロールとTi/Cu界面の化合物層形成の調整が有効に行えるばかりでなく、絶縁膜とTi膜界面で初期に酸化物層が形成されている。そのため、酸化物層形成後の高温処理時においても、酸化物層によって酸素の供給をコントロールできるという効果もある。
【0050】
ただし、Ti膜の酸化が進行することによって上記に示したTiOx膜の有利な特性が得られる反面、高温で熱処理を行うとTi膜とCu膜の反応が過剰になり、ダマシン配線の抵抗が増大する。図20に、ダマシン配線を模擬したサンプルの、アニール前の抵抗率に対するアニール後の抵抗率の比の例を示す。図20に抵抗率の変動を示したサンプルは、イオン化PVD法によってバリアメタル膜及びCu膜をそれぞれ10nm及び100nm形成した後、水素/アルゴン加熱雰囲気中にてアニールを行った。図20に黒丸で示した抵抗率比は、バリアメタル膜がTiの例である。図20に白丸で示した抵抗率比は、バリアメタル膜がTaの例である。図20に示したように、アニール温度が450℃を上回る場合、アニール後の抵抗率が増大する。そのため、抵抗率を増大させない温度以下でTi後酸化を行って、Ti膜とCu膜の反応、及びCu配線中へのTi原子の拡散を生じさせる。例えば、アニール温度400℃程度までであれば、Cu膜中にTi原子が約1E20原子/cm3程度拡散するが、配線の抵抗は増大しない。上記のようにTi後酸化のアニール温度を適切に選択することにより、Ti膜とCu膜の反応によって種々の効果が得られる。尚、上記のアニール温度は例を示したものであり、Ti後酸化のアニール温度が上記アニール温度に限定されるものではない。
【0051】
配線間のコンタクト抵抗を低減するために、下層配線と接する箇所のバリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度は低いほど望ましい。既に述べたように、層間絶縁膜から放出される酸化種によってバリアメタル膜は酸化される。バリアメタル膜の成膜工程の温度、前処理としての層間絶縁膜からの脱ガス処理を最適化することにより、下層配線と接する箇所でのバリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度を、絶縁膜が接する箇所のバリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度より低くできる。その結果、絶縁膜と接触する箇所のバリア性を低下することなく、配線間のコンタクト抵抗を低減できる。
【0052】
例えば、バリアメタル膜の成膜工程の前(図8参照)に、前処理として200℃〜350℃の真空中で、10〜600秒の熱処理を行う。この熱処理によって層間絶縁膜から放出される酸化種の量を制御することにより、その後のバリアメタル膜の成膜時に下層配線表面に成膜されるバリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度を、絶縁膜に接する部分に成膜されるバリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度より小さくできる。つまり、図12に示した第2のTi膜30cの酸化物の酸素濃度が、層間絶縁膜50に接する箇所より第1配線層40に接する箇所の方で低くなる。
【0053】
図21に、Ti膜及びTiOx膜の分子密度を示す。図21に示すように、Ti3O5膜よりTiOx膜中の酸素含有量が小さい場合に、TiOx膜の分子密度はTi膜の分子密度より大きい。つまり、Tiに対する酸素の原子比が5/3以下のTiOx膜のバリア性はTi膜より高い。そのため、第2のTi膜30cを酸化した酸化膜中のTiに対する酸素の原子比は5/3以下であることが望ましい。
【0054】
第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の説明では、第2のCuシード膜71をPVD法、CVD法或いはALD法のいずれかで行うことを示したが、第2のCuシード膜71をPVD法で形成した後、CVD法或いはALD法でビアホール203及び第2配線溝202の一部又は全部を埋め込むことも可能である。更に、第2のCuシード膜71の形成をCVD法、又はALD法にて第2のTi膜30cの形成後に行っても、或いはそのまま埋め込み工程を行ってもよい。また第2のTi膜30cの形成後に直接めっき法にて埋め込み工程を行うことが可能であることは勿論である。
【0055】
又、第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、バリアメタル膜を主に構成するTi膜中に酸素を導入することにより、バリアメタルの膜厚方向で分子密度を変化させている。このような場合、一般的には応力勾配が発生して膜剥がれを起こす場合がある。しかし本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、絶縁膜に近いTi膜ほど分子密度が低く、Cu側に近づくほど分子密度が徐々に高くなるように、脱ガス処理工程の温度とTi形成工程の温度を調整するため、応力勾配は緩和され、絶縁膜やCuからバリアメタルが剥がれる問題がなくなることがわかった。
【0056】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係わる半導体装置の製造方法は、酸素を固溶する特性をもつ金属膜を、絶縁膜から放出されるガス以外で酸化する方法である。以下に、第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法の例を説明する。以下では、図8に示した層間絶縁膜50上に金属膜30として第2のTi膜30cを形成する場合を例にして説明する。
【0057】
(イ)第1の実施の形態で説明した工程と同様の工程により、例えば250℃以上300℃以下の温度で、真空中或いはH2ガス等の還元雰囲気中で基板10の脱ガス処理を行う。その結果、層間絶縁膜50中に残っている炭素系の残留物等が除去される。同時にビアホール203底部に露出した第1配線層40表面の酸化膜の還元処理が行われる。
【0058】
(ロ)次に、真空連続にて、基板10上にバリアメタル膜を形成する。例えば図13に示すようなイオン化スパッタリングチャンバー内に搬送する。そして、少なくとも層間絶縁膜50の脱ガス処理工程での加熱温度以下、望ましくは室温以下に設定されたサセプタ上に基板10を搬送し、基板10の温度をサセプタと同等の温度に保つ。次に、図9に示したように、イオン化スパッタリング法により第2のTi膜30cを形成する。
【0059】
(ハ)次に、図13に示すイオン化スパッタリングチャンバー内の圧力が、第2のTi膜30cの形成を行った真空度、例えば0.5×10−5Paよりも高い圧力、例えば1×10−5Paになるように、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N2)ガス、及びO2ガスあるいはH2Oをイオン化スパッタリングチャンバー中に導入して60秒間保持した後、ガスを排気する。その結果、第2のTi膜30cの表面にTi酸化物が形成される。そして、第2のTi膜30cを形成したときと同等の温度まで基板10を冷却し、更に第2のTi膜30cを最終的に所望の膜厚になるように追加堆積する。このとき、Ti酸化物を形成する前に第2のTi膜30cを形成したときの圧力と、イオン化スパッタリングチャンバー内の圧力を同等にすることが好ましい。第2のTi膜30cを酸化する際の圧力が大気圧と同等の場合は、第2のTi膜30cの酸化状態を制御できない。そのため、基板10を大気に出して、再度イオン化スパッタリングチャンバーに戻した場合は、第2のTi膜30cに酸素を固溶した状態を実現できない。
【0060】
上記に説明したように、第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、原子密度の高い第2のTi膜30cを形成する途中に、第2のTi膜30cの表面を酸化することで、さらに分子密度の高いTi酸化物を形成し、層間絶縁膜50から放出されるH2O等の酸化種により、第2のTi膜30c全体が酸化することを防止できる。そのため、Cu膜との界面近傍の第2のTi膜30cとして、Cu膜との密着性がよい純Ti膜を残すことができる。更に、第1の実施の形態で説明したTi後酸化の工程を行うことにより、第2のTi膜30cと層間絶縁膜50との界面近傍でのTi酸化が促進される。その結果、第2のTi膜30c中にTi酸化物が形成され、層間絶縁膜50からCu膜への酸化種の拡散が抑制される。つまり、Cu膜との密着層としてのバリアメタル膜の機能の確保がより有効に行われる。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0061】
又、上記に説明したように、第2の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、原子密度の高い第2のTi膜30cを形成する途中に、第2のTi膜30cを酸化して、さらに原子密度の高いTi酸化物を形成することを説明したが、図18に示すように第2のTi膜30cを形成した後、酸素の固溶濃度が低いTa膜36のような異種金属を形成し、Cu膜との密着層に使用しても有効である。このとき、下層の原子密度の高いTiOx層がH2Oなどの拡散を抑制することでTa膜36の酸化を防ぎ、Ta膜36を単層で使用するより配線信頼性を改善することができる。更に、この第2のTi膜30c上に積層する膜としては、酸化されにくい、或いは酸化物でもCuと密着性のよい材料が選択される場合も非常に有効であり、例えば、Ru、Pd、Pt、Au等が挙げられる。
【0062】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、第1の基板温度において、表面に溝、及びビアホールなどの凹部が形成された絶縁膜中、および表面の吸着ガスを放出させる工程と、第1の基板温度より低い第2の基板温度で金属膜を形成する工程と、金属膜上に配線金属膜を少なくとも凹部の一部が埋め込まれていない状態で形成する工程と、第2の基板温度より高い第3の基板温度で加熱して絶縁膜中に残存する酸化種によって、金属膜の少なくとも一部を酸化し、同時に金属膜と配線金属膜の界面で反応層を形成する工程とを含む。
【0063】
例えば、図8に示したように、第2配線溝202及びビアホール203を形成する。その後、例えば250℃以上300℃以下の温度で、真空中或いはH2ガス等の還元雰囲気中で熱処理を行う。この熱処理により、層間絶縁膜50中に含まれるH2O等の一部が除去される。このとき、還元雰囲気中で行えば、ビアホール203底部に露出した第1配線層40表面の酸化膜の還元処理も行える。
【0064】
次に、真空連続にて基板10の表面にバリアメタル膜としてTi膜を図13に示したイオン化スパッタリング法や、光照射を用いたALD法を用いて段差被覆性よく形成する。この時、基板温度は少なくとも層間絶縁膜50の脱ガス処理工程の加熱温度以下とする。
【0065】
次に、真空連続にてTi膜上に配線金属膜としてCu膜を形成する。この時、Cu膜はイオン化スパッタリング法やCVD法で形成すれば良いが、少なくとも図22の成膜例に示すように第2配線溝202やビアホール203の一部は第2のCuシード膜71で充填しないように形成する。
【0066】
次に、基板を例えば、250〜380℃の範囲内で加熱し、層間絶縁膜50中に残存するH2O等の酸化種によって層間絶縁膜50と接する第2のTi膜30cを酸化するとともに、第2のCuシード膜71と第2のTi膜30cの界面にCuTi化合物を形成する。この加熱工程は第2のCuシード膜71形成後に真空連続的に行なわれてもよいし、大気開放後に行われてもよい。また、加熱温度は、層間絶縁膜50中に含まれるH2O等の一部を除去する加熱温度や後の工程の加熱温度と同等とした方がよい。
【0067】
次に、先に形成した第2のCuシード膜71をシード膜としためっき等のCu充填方法を用いて、Cu膜で充填されていない第2配線溝202やビアホール203を、図11に示すように完全充填する。次に、第2のCuめっき膜72、第2のCuシード膜71及び第2のTi膜30cをCMP法によって除去して2層配線を完成させる。
【0068】
一般に、Cuめっき膜をCuシード膜上に形成した場合、結晶粒径を大きくするために熱処理を行う場合が多い。しかし、バリアメタル膜とCu膜の密着性が低いと、図23に示すように、加熱工程の後にビアホール203内のCu膜が吸い上げられ、ボイドが発生する。これはビアホール203上の第2配線溝202内に形成されたCu膜の体積が大きいため、ビアホール203内のCu膜を引っ張る応力が発生するためである。又、図24に示すように、Cu膜とバリアメタル膜をCMP法で除去して配線形状を形成した場合も、幅の広い配線に接続されるビアホール203では、層間絶縁膜の形成時の加熱やシンタリング工程での加熱によって、ビアホール203内にボイドが発生する。
【0069】
しかし、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、配線溝やビアホールを完全にめっき充填する前にCuシードのような薄膜状態で基板が加熱されるため、応力によるボイドは発生しない。特にビアホール203がCu膜で充填されている図22(c)の場合でも、ビアホール203上の配線溝202内に充填されるCu膜の体積が小さいため、ビアホール203内のCu膜を引っ張る応力は小さい。したがって、熱処理時にバリアメタル膜であるTi膜とCu膜との反応が起こり、Ti膜とCu膜の界面に化合物層が形成される。この化合物層はTi膜とCu膜の密着層となるため、強い密着力が得られ、後の応力を受ける加熱工程でもボイドを形成しない。また、化合物層が形成されると同時に絶縁膜とTi膜との界面には原子密度の高い酸化膜が形成されるため、さらなる絶縁膜からの酸化種の放出を抑制でき、Ti膜のさらなる酸化を抑えられる。また、第1の実施の形態で説明したように、Cuシードのような薄膜状態での加熱時に、Ti膜と絶縁膜の界面には分子密度の高い酸化膜も同時に形成されるため、後の加熱工程における酸化種の拡散による不良を抑えられるのは勿論である。
【0070】
又、イオン化スパッタリング法を用いて形成した第2のCuシード膜71は、コンフォーマル形状となるようにスパッタ条件を調整することが望ましい。しかし条件によっては、図25(a)に示すように、ビアホール203の開口部や第2配線溝202の開口部にオーバーハング形状の突起が発生する場合がある。このようなオーバーハング状突起は後のめっき工程においてめっき液の進入を阻害し、ひいては第2配線溝202やビアホール203の開口部を塞いでしまい、配線内やビアホール内にボイドを残す問題がある。しかし、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法のように第2のCuシード膜71を形成後に加熱処理をすると、第2のCuシード膜71は表面エネルギーを下げて安定な形状となろうとして、表面積が小さくなるように表面拡散する。つまり、図25(b)に示すように、オーバーハング形状の突起が平坦化され、よりコンフォーマルに近い形状とすることができる。特に、第2のCuシード膜71の形成後、熱処理を真空連続で行うとこの効果が大きい。したがって、本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、第2配線溝202やビアホール203へのめっき液の進入を阻害することなく、ボイド発生の問題を解決できる。
【0071】
又、めっき法を用いて溝やビアホールにCu膜を充填する場合、めっき法で形成されたCu膜中にはO2やH2O等のような酸化種が多く含まれる。一方、イオン化スパッタ法で形成したCuシード膜やCVD法で形成されたCuシード膜は残留不純物の少ない減圧下で形成されるため、酸化種が少ない。しかし、酸化種の少ないCuシード膜上にめっき法によりCu膜を形成した場合、めっき工程後の加熱工程でめっき法により形成されたCu膜中の酸化種が薄いシードCu膜を透過し、バリアメタル膜を酸化する場合がある。上述したように、酸化したバリアメタル膜はCu膜との密着性が低下し、信頼性が低下する。この場合、図22(b)に示すようにCVD法を用いてビアホール203側壁の第2のCuシード膜71を厚くする、もしくは図22(c)に示すようにCVD法を用いてビアホール203全体を第2のCuシード膜71で充填すれば、ビアホール203を充填する第2のCuめっき膜72からの酸化種の影響を少なくできる。つまり、ビアホール203での第2のTi膜30cの酸化を抑制することができる。特にCVD法を用いてビアホール203を第2のCuシード膜71で完全に充填する場合の効果は大きい(図22(c))。したがって、ビアホール203でのCu膜とバリアメタル膜との密着性が低下することはなく、後の加熱工程でビアホール203内のCu膜を引っ張るような応力が発生しても、ボイドは発生しない。
【0072】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、第1の基板温度において、表面に溝、およびビアホールなどの凹部が形成された絶縁膜中、および表面の酸化種吸着ガスを放出させる工程と、第1の基板温度より低い第2の基板温度で、原料ガスを凹部表面に付着させる工程と、凹部表面に付着されなかった残余の原料ガスを排気した後、凹部表面に光を照射して凹部表面に付着した原料ガスの分子を分解し、原料ガスの成分に含まれる金属原子からなる金属膜を、凹部表面に形成する工程とを含む。
【0073】
例えば、図26(a)に示すように、圧力や流量を調整して原料ガスとしての四塩化チタン(TiCl4)ガスを、薄膜形成工程を行うチャンバー内に導入すると、絶縁膜20の表面にはTiCl4分子が一様に吸着する。ところで、絶縁膜20として低誘電率の絶縁膜を採用した場合には、誘電率を低下させるために絶縁膜20に空孔が多く含まれる。そして、大気開放時に吸湿された水や酸素といった酸化種が絶縁膜20中に残留している。そのため、絶縁膜20の表面に付着したTiCl4分子を分解するために絶縁膜20を加熱した場合、吸着ガスが凹部200の側面等から放出される。その結果、TiCl4分子を分解して形成される金属膜30であるチタン(Ti)膜と絶縁膜20から放出された酸化種が結合し、Ti膜の特性が劣化する。そのため、金属膜30を形成する前に、絶縁膜20中の酸化種を放出させる工程を行う。更に、金属膜30を形成する工程では、絶縁膜20の温度を、酸化種を放出させる工程での温度より低く保つ必要がある。図26(b)に示すように、照射光111の光エネルギーにより吸着分子の分解を促進する方法によれば、絶縁膜20の温度を低く保てる。
【0074】
図27に、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法に使用可能な半導体製造装置の断面構成を示す。図27に示す半導体製造装置は、チャンバー100と、光源110とを備え、図示を省略するガス供給系及び排気系に接続されている。チャンバー100は基板10が設置されるサセプタ101、光透過窓102、光透過窓102を遮蔽する開閉可能な遮蔽板103、及びチャンバー100内にガスを導入するガス導入部104を備える。光透過窓102を透過した光源110からの照射光111が、基板10に照射される。又、必要に応じて、照射光111は、遮蔽板103により遮蔽される。チャンバー100は基板搬送機構を備えた搬送室(図示略)に接続され、チャンバー100内での成膜工程前、或いは成膜工程後に、搬送室に接続された別のチャンバーにより真空連続的に基板10の別処理が行える。
【0075】
以下に、図27に示した半導体製造装置を用いた半導体装置の製造方法の例を、図27〜図30を用いて説明する。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の半導体装置の製造方法により実現可能であることは勿論である。以下では、絶縁膜20の表面に金属膜30としてTi膜を形成する半導体装置の製造方法を説明する。
【0076】
(イ)搬送室に接続された別チャンバー(図示略)で250℃〜300℃程度の加熱を行って、絶縁膜20に吸着された吸着ガスの脱ガス処理を行う。この時、絶縁膜20の下層にCu配線が配置され、ビアホールの底面にCu配線が露出していれば、H2を導入して脱ガス処理を行うことにより、Cu配線表面のH2還元処理を同時に行うことが可能である。或いは、脱ガス処理の前後でCu配線表面のH2還元処理を行うことが可能である。
【0077】
(ロ)次いで、基板10を図27に示すように真空連続で搬送室からサセプタ101上に搬送する。この時、基板10の温度は、少なくとも脱ガス処理での基板10の温度より低く設定される。例えば、基板10の温度は150〜200℃に設定する。
【0078】
(ハ)次に、図28に示すように、遮蔽板103を閉じた状態で、Ti膜の原料ガスであるTiCl4ガスを、ガス導入部104を介してガス供給系から導入する。TiCl4の沸点は136.4℃のため、TiCl4の沸点以上に基板10の温度を設定すれば、基板10上で凝縮することなくTiCl4分子層として絶縁膜20の表面に吸着する。また、TiCl4は常温で液体であるため、図示を省略する気化器内でTiCl4を気化させ、Arガス、N2ガス、ヘリウム(He)ガス、H2ガス等のキャリアガスを用いてチャンバー100内に導入する。
【0079】
(ニ)チャンバー100内にTiCl4ガスを所定時間導入した後、図29に示すように、遮蔽板103を閉じた状態で、TiCl4ガスの導入を止める。次いで、チャンバー100内に残留しているTiCl4ガスを排気する。
【0080】
(ホ)図30に示すように、遮蔽板103を開き、光源110からの照射光111を光透過窓102を透過させ、基板10に照射する。照射光111のエネルギーにより、絶縁膜20表面に吸着したTiCl4分子が分解され、絶縁膜20上にTiの薄膜層が形成される。この段階でH2ガスのような反応性ガスを導入してもよい。反応性ガスとしてH2ガスを導入した場合、照射光111が照射されたH2ガスは解離して活性な水素ラジカル(H*)になり、TiCl4分子の分解は更に促進される。
【0081】
以上の工程により、Ti原子層が絶縁膜20の表面に形成される。そして、上記の工程を繰り返して、所望の膜厚のTi膜を形成する。低誘電率の絶縁膜20としては、PAE膜、SiCO膜等が適用可能である。
【0082】
又、例えばサセプタ101の位置がチャンバー100内で上下するような機構を備える場合、原料ガスの残留成分を排気する工程で、排気効率が高くなるようにサセプタ101の高さを低く調整してもよい。又、図27〜図30では、一つのガス導入部104から原料ガスを導入する例を示したが、チャンバー100内での原料ガスの均一性をよくするために複数のガス導入部104を備えてもよい。又、ガス導入部104から遮蔽板103の内部に原料ガスを導入し、遮蔽板103の基板10に向いた部分に設けた複数の孔からチャンバー100内に原料ガスを導入してもよい。その結果、原料ガス分子の吸着が絶縁膜20の表面で均一化され、成膜された膜厚の均一性を向上できる。
【0083】
照射光111の波長は、原料ガス分子の光吸収性に合わせて選択すればよい。例えば、エキシマランプを用いる場合は、エキシマランプに用いるガスの種類に応じて、以下のように照射光111の波長を選択する。即ち、Arエキシマ:126nm、クリプトン(Kr)エキシマ:146nm、キセノン(Xe)エキシマ:172nm、塩化クリプトン(KrCl)エキシマ:222nm、塩化キセノン(XeCl)エキシマ:308nm等の単波長のエキシマランプを選択する。水銀ランプを用いる場合は、185nmや254nmの複数の波長を含む光が選択可能である。照射光111の照射エネルギー及び照射時間は、基板10上に形成されたビアホールや配線溝のアスペクト比に応じて調整される。
【0084】
上記の説明で用いたTiCl4分子の標準生成エンタルピーは、以下の式(1)及び式(2)で表される:
TiCl4(気体) → Ti(固体) + 2Cl2(気体) ・・・(1)
標準生成エンタルピーΔHf°=763kJ/mol ・・・(2)
式(1)及び式(2)から、TiCl4の1分子あたりの標準生成エンタルピーは、1.27×10-15Jとなる。TiCl4分子にはTi−Cl結合が4つあるため、1つのTi−Cl結合の結合解離エネルギーは3.17×10-16Jである。Ti−Cl結合の結合解離エネルギーを得るための光の波長は、627nm以下になる。また、TiCl4分子の光吸収波長は、280nmと232nmに極大値を持つ。そのため、627nm以下、且つTiCl4分子の極大吸収波長近傍の波長の光を照射光111として用いれば、TiCl4分子を効率的に分解できる。照射光111をエキシマランプから選択する場合には、Xeエキシマ(波長:172nm)、KrClエキシマ(波長:222nm)、XeClエキシマ(波長:308nm)が選択可能である。又、185nmと254nmの波長の水銀ランプが照射光111として使用可能である。また、狭波長帯の光源の必要はなく、広波長帯の光源を用いてもよい。また、最近の低誘電率絶縁膜は、加熱、電子ビーム照射、UV光照射などによって前駆体をキュア(焼結、重合、あるいは縮合)して形成している。このような低誘電率絶縁膜にさらにUV光を照射した場合、内部の結合しているべき結合手が切れ、場合によっては誘電率の増加を招く場合がある。そのような場合、使用する絶縁膜の性質に合わせて、絶縁膜に影響を及ぼさない波長を選べばよい。特に、UV光照射によるキュア(一般的にはUVキュアと呼ばれる)はエネルギーが一定領域に限られるため、特定、かつ必要な結合手のみの解離を行うことができる。この場合、長時間UV光照射を行なっても、不必要な分解は起こらず、低誘電率絶縁膜の性質は変化しない。従って、第4の実施の形態に用いる光の波長を低誘電率絶縁膜のUVキュアの波長と合わせておけば、絶縁膜にダメージを与えることはない。
【0085】
ところで、図26(a)の凹部200の底部では、他の絶縁膜20表面に比べて照射光111が届きにくいため、TiCl4分子の分解速度は遅い。そのため、照射光111によって絶縁膜20表面上のTiCl4分子の分解に必要な時間が経過した後でも、凹部200の底部ではTiCl4分子の分解が十分に進んでいない場合がある。したがって、照射光111が当りにくいために分解に最も時間がかかる凹部200の底部で分解が終了するように、照射光111の強度及び照射時間を調整する。そして、図26(b)に示すように、絶縁膜20の表面にチタン(Ti)原子が一様に吸着する。図31に、照射時間を凹部200の絶縁膜20の表面に近い領域RでのTiCl4分子の分解に必要な時間に設定した例を示す。図31に示すように、領域Rや絶縁膜20表面上のTiCl4分子が分解した後でも、凹部200の底部ではTiCl4分子の分解が十分に進んでいない。
【0086】
図32(a)〜図32(c)に、原料ガスTiCl4を導入しながら照射光111を照射する光CVD法によりTi膜を形成する例を示す。図32(a)に示すように、原料ガスTiCl4を導入しながら照射光111を照射する光CVD法では、凹部200の間口でのTiCl4の分解速度が速く、底部でのTiCl4の分解速度が遅い。そのため、先ず凹部200の間口でTi膜が厚く形成され、底部に原料ガスTiCl4が入りにくくなる。その結果、図32(b)及び図32(c)に示すようにTi膜の段差被覆性が低く、凹部200の間口では不純物であるCl原子を多く含む膜となる問題がある。又、原料ガスを流しながら照射光111を照射するため、照射光111を透過する光透過窓102のチャンバー100側の表面にTi膜等が付着し、照射光111の強度が徐々に低下してしまう問題がある。
【0087】
一方、図27〜図30を用いて説明したように、本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、ALD法を利用して原子層単位でTi膜が形成されるため、光CVD法で問題であった凹部200の間口と底部における原料ガスの分解速度の差に起因する段差被覆性の低さを解決でき、極めてコンフォーマルなTi膜を形成することが可能となる。また、図27〜図30を用いて説明したように、照射光111の照射と原料ガスの導入を別々の工程で行っている。そのため、TiCl4ガスの導入時は遮蔽板103で光透過窓102が覆われ、光透過窓へのTi膜の付着の問題がない。
【0088】
又、上述したように、照射光111の光エネルギーにより吸着分子の分解を促進する方法は、基板10の温度を低く保てる。吸湿性の高い低誘電率の絶縁膜20上にバリアメタル膜としてTi膜を形成するためには、図27の説明で述べたように、基板10の温度を脱ガス処理での基板10の温度より低く設定して、Ti膜を形成することが重要になる。なぜなら、基板10の温度を脱ガス処理温度より高くしてTi膜を形成した場合、絶縁膜20中に吸着され、脱ガス処理工程では放出されなかった酸化種が放出されながらTi膜が形成される。その結果、後述するようにTi膜の酸化等の影響が生じるためである。Ti膜の形成時での絶縁膜20からの酸化種の放出を少なくするためには、Ti膜の形成温度を下げると共に、Ti膜を形成する前に基板10の温度を、Ti膜を形成する温度以上に上げる加熱処理を行うことが有効である。この加熱処理により、Ti膜形成時に絶縁膜20中に含まれる酸化種が除去される。仮に絶縁膜20中に含まれる酸化種を完全には除去できない場合でも、Ti膜の形成時の酸化種の放出量を少なくすることができる。
【0089】
第4の実施の形態を用いたTi膜の形成時のTi酸化について、図33に示す。図33(a)に示すように、TiCl4分子の分解過程において酸化種が放出されると、Ti原子は酸素(O)と結合して酸化チタン(TiOx)が形成される。つまり、第1の実施の形態で図14を用いて説明した同様のメカニズムで分子密度が低いTiOx膜となり(図33(b))、図33(c)に示すように、酸化種がTiOx膜を通過してCu膜に達し、Cu膜が酸化され、Cu配線のSM耐性が劣化する。
一方、脱ガス処理工程より低い温度でTi膜を形成した場合は、図34(b)のように、純Ti膜30aがバリアメタル膜として形成される。つまり、第1の実施の形態で図15を用いて説明したのと同様のメカニズムで、Ti膜30a形成後の絶縁膜形成工程やシンタリング工程などにおいて、分子密度が高いTiOx膜35が形成され(図34(c))、Cu配線のSM耐性が劣化することはない。
【0090】
既に述べたように、低誘電率絶縁膜としては、SiCO等の無機系絶縁膜やPAE等の有機系絶縁膜が適用可能である。又、エッチング工程におけるストッパー材としては、SiCN膜や窒化シリコン(SiN)膜等が適用可能である。絶縁膜の種類によって原料ガスの吸着量が異なる。これは絶縁膜の種類によって最表面原子の終端基が異なるためである。例えば、CH3基で終端されている場合は疎水性を示し、OH基で終端されていれば親水性を示す等の吸着性質の違いが生じる。そのため、複数種類の絶縁膜を積層して1つの層間絶縁膜を形成したデュアルダマシン構造では、種類の異なる絶縁膜上に形成されるバリアメタル膜の膜厚にばらつきが発生する。その場合、予め光照射を行って絶縁膜表面を改質することが有効である。例えば、CH3基を特定の光エネルギーで解離させて除去すれば、終端基がOH基となり複数の種類の絶縁膜表面に金属膜を形成する場合においても、原料ガスの吸着状態を一様にすることが可能となる。吸着しやすい状態にして原料ガスを導入すれば、絶縁膜の種類による金属膜の膜厚のばらつきを抑制することができる。
【0091】
又、層間絶縁膜に凹部200を形成する際、レジスト膜の残渣やエッチング工程において副次的に生成された副生成物が基板10上に残留し、凹部200の底部での導通を妨げる場合がある。このような残留物は炭素(C)やフッ素(F)を含むため、O2、H2、H2O、アンモニア(NH3)等の分解性ガスを流しながら光照射を行い、残留物を除去するステップを入れてもよい。また、O2、H2、H2O、NH3等の分解性ガスを流しながら光照射を行い、レジスト除去を行ってもよい。
【0092】
上記の説明では、Ti膜を形成する例を説明したが、窒化チタン(TiN)膜を形成したい場合は、図30の工程でN2ガスやNH3ガス等の反応性ガスを導入する。NH3ガスを導入した場合、光照射を受けたNH3ガスは解離して活性な窒化水素ラジカル(NH*)となり、TiCl4分子を分解するとともにTiを窒化してTiN膜を形成できる。また、テトラキスジメチルアミノチタン(TDMAT;(Ti[N(CH3)2]4))、テトラキスジエチルアミノチタン(TEMAT;(Ti[N(C2H5CH3)2]4))等の原料ガスを用いてTiN膜を形成することも可能である。又、第4の実施の形態では、無機化合物であるTiCl4を原料ガスに用いる例について説明したが、四臭化チタン(TiBr4)、四ヨウ化チタン(TiI4)或いは有機化合物の原料ガスを用いてもよい。
【0093】
上記の説明ではバリアメタルとしてTi膜を形成する例を説明したが、Ti膜の上に形成するめっき膜のシードとなるCu膜を、同様の成膜方法を用いて形成してもよい。この場合、原料ガスにはヘキサフルオロアセチルアセトン銅(I)トリメチルビニルシランアダクト/トリメチルビニルシラン添加(Cu(hfac)TMVS)などの有機金属ガスを用いればよい。この時、Ti膜を形成するチャンバーとCu膜を形成するチャンバーを分けてもよいし、同一チャンバーで原料ガスを切り替えて形成することも可能である。また、Cuの数原子層を本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法で形成した後、従来のCVD法に切り替えてCu膜を形成することも可能である。CVD法で異種金属上にCu膜を形成する場合、異種金属表面にはCu成長のための核が必要であり、この核密度が低いと均一なCu膜が形成できない問題がある。本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を用いて、Ti上にCu層を数原子層で形成しておけば、成膜速度の速いCVDを用いても均一なCu膜を成長できる。また、初期の光照射によりTi膜とCu膜との結合が促進され、Ti/Cu界面の密着性に優れる。
【0094】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態に係わる半導体装置の製造方法は、第1から第4の実施の形態で示したCu多層配線に用いられるバリアメタルとしてのTi膜の形成ではなく、メモリー素子のキャパシタンスなどに用いられる高誘電体膜である酸化アルミニウム(Al2O3)膜を形成する方法である。以下に、図27に示した半導体製造装置を用いて、基板上にAl2O3膜を形成する方法を説明する。以下では、トリメチルアルミニウム(TMA;(Al(CH3)3))を原料ガスとして用いる場合を説明する。
【0095】
先ず、図27〜図30を用いて説明した方法と同様にして、基板10の表面にアルミニウム(Al)膜を形成する。即ち、基板10を搬送室からサセプタ101上に搬送する。次いで、光透過窓102の遮蔽板103を閉じ、TMAガスをチャンバー100内に導入する。TMAは常温で液体であるため、気化させてArガス、Nガス、Heガス、Hガス等のキャリアガスを用いてチャンバー100内に導入する。そして、TMAガスが凝縮しない温度に基板10を調整し、TMA分子を基板10に吸着させる。次に原料ガスの導入を停止してチャンバー100内のTMAガスを排気する。その後、遮蔽板103を開けて基板10に照射光111を照射し、Al薄膜を基板10の表面に形成する。
【0096】
次に、図35に示すように、O2、H2O等の酸化種をチャンバー100内に導入して基板10上に形成されたAl膜を酸化してAl2O3膜を形成する。或いは、図27〜図30で説明した工程を複数回繰り返して所望の膜厚のAl膜を形成した後、図35に示すAl膜の酸化工程を行っても良い。また、酸化工程では酸化種の導入により酸化しても良いし、光照射を行い、酸化種を解離させて酸素ラジカルを形成し、酸素ラジカルによって酸化効率を高めてもよい。また、この酸化工程は別チャンバーに基板10を搬送して行ってもよい。あるいは大気開放して別装置を用いて酸化工程を行ってもよい。
【0097】
Al膜形成後の加熱による酸化によって、Al膜の表面に高密度のAl2O3膜が形成されることが知られている。しかし、Alは低融点金属であるため、非常に薄いAl膜を形成しようとすると、比較的低温でも基板上でAl膜が凝集して島状に分離してしまい、連続したAl薄膜を形成することが困難である。したがって、CVD法やALD法のように原料ガスの分解に基板加熱が必要な成膜方法でAl極薄膜を形成した後、酸化して原子密度の高いAl2O3膜を形成することが困難であった。そのため、酸化種を流しながら吸着ガスを分解するALD法や酸素を含む原料ガスを用いてAl2O3膜を形成するALD法が検討されている。しかし、分解過程においては、Al原子が他のAl原子と結合していない(束縛のない)状態でAl原子と酸素が結合するため、図36(a)及び図36(b)に示すように、Al−O原子間距離が広い。そのため、図36(c)に示すように、分子密度の低いAl2O3膜が形成される。分子密度の低いAl2O3膜はダングリングボンドを多く含み、リーク電流が大きい等の問題がある。「ダングリングボンド」は、結合に関与しない電子で占められている未結合手である。
【0098】
これに対して本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、図37(a)及び図37(b)に示すように、光エネルギーで吸着分子を分解するため、基板10を高温にする必要がなく、Al膜37の凝集を抑えながらAl原子層を形成できる。さらに図37(c)に示すように、Al膜37を形成した後にAl膜37のAl−Al結合による自己応力を受けながらAl膜37の酸化を行うため、分子密度の高い緻密なAl2O3膜を形成することができる。
【0099】
又、ここではAl2O3膜の形成について説明したが、リーク電流をさらに低下するためにハフニウム(Hf)という不純物を添加してもよい。この場合、ハフニウムを含むガスを原料ガスと一緒に導入すればよい。
【0100】
なお、上記の説明ではTMAを用いる例を説明したが、ジメチルアルミニウムハイドライド(DMAH;(Al(CH3)2H))、ジメチルエチルアミンアテン(DMEAA;(AlH3・N(CH3)(C2H5)))等の原料ガスを用いることができる。又、Al以外の他の金属の酸化膜の形成に適用することも可能であり、更には、金属膜を形成後、窒化種を導入して金属膜の窒化を行うことで、金属の窒化膜を形成してもよい。他は、第1の実施の形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0101】
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態に係る半導体製造装置を図38(a)及び図38(b)に示す。図38(a)及び図38(b)に示す半導体製造装置は、第1〜4の実施の形態で説明した半導体装置の製造方法に適用可能である。
【0102】
既に述べたように、信号遅延を抑制するために使用される低誘電率絶縁膜は空孔を多く含み、吸湿性が高い。そのため、低誘電率絶縁膜中に含まれるH2O等の酸化種は金属膜形成時の加熱で放出される。金属膜等への放出ガスの影響を少なくするため、金属膜形成前に脱ガス処理を行っているが、絶縁膜の低誘電率化に伴って放出ガス量は増加傾向にあり、脱ガス処理のための加熱時間が長くなってきている。脱ガス処理での加熱温度を高くすれば加熱時間は短縮できる。しかし、バリアメタル膜等の金属膜形成前に基板を高温で加熱をすると、基板上に形成されているCu配線にボイドが生じる問題がある。一方、絶縁膜からの脱ガス処理を低温で行うと時間がかかり、スループットが低下する。
【0103】
すでに第1〜4の実施の形態で示したように、低誘電率絶縁膜からの脱ガスをコントロールすることが重要であり、十分なコントロールを行う為には、スループットを改善するか、脱ガスを高温加熱と同様に高効率化する必要がある。
【0104】
以下に、脱ガス処理においてスループットを改善する例を示す。図38(a)及び図38(b)に示す半導体製造装置により、金属膜形成前に行う脱ガス処理のスループットを上げることができる。
【0105】
図38(a)に示す半導体製造装置は、複数のホットプレート210a〜210jが接続し、上下移動可能な支持体150aと、回転動作が可能なピックアップ機構230を備える。ピックアップ機構230にはリフトピン240が取り付けられている。又、ホットプレート210a〜210jにはリフトピン240が通る穴があけられている。ホットプレート210a〜210j上に、基板10をそれぞれ配置できる。以下に、ホットプレート210a上に基板10を配置する方法を図38(b)を用いて説明する。図38(b)は、半導体製造装置のホットプレート210aの部分の上面図である。
【0106】
(イ)図38(b)に示すように、ピックアップ機構230はホットプレート210aの下の位置Aに移動する。そして、ホットプレート210aに開けられた穴を通してリフトピン240の先端がホットプレート210aの上面から突出するように、支持体150aの上下方向の位置を調整する。
【0107】
(ロ)基板10が、図示を省略する搬送室から搬送ロボットハンド220により搬送される。搬送された基板10は、リフトピン240の先端上に置かれる。
【0108】
(ハ)次に支持体150aが上方に動くことにより、リフトピン240の先端がホットプレート210aの上面より低くなり、基板10がホットプレート210a上に配置される。
【0109】
(ニ)次いで、ピックアップ機構230は回転して位置Bに移動する。
【0110】
その後、支持体150aが上方に移動し、上記で説明した方法と同様にして、ホットプレート210b〜210j上に基板が配置される。又、処理が終了した後は、上記で説明した方法と逆の動作を行って、基板10を搬送室に搬送する。次に処理を行う基板がある場合は、処理が終了して基板が取り出されたホットプレート210a〜210j上に置くことを繰り返せば、必要以上にホットプレート210a〜210jの数を増加させずに済む。図38(a)では、ホットプレートの数が10である例を示したが、ホットプレートの数が10に限定されないのは勿論である。
【0111】
以上に説明した図38(a)に示す半導体製造装置は、クラスターツールに接続された複数のチャンバーの1つとして使用可能である。そして、図38(a)に示す半導体製造装置で行う処理の前、もしくは処理の後に、搬送室に接続された別チャンバーで真空連続的に別処理を行うことが可能である。例えば、図38(a)に示す半導体製造装置で絶縁膜中に含まれる酸化種を除去、低減させた後、搬送室を介して基板を別チャンバーに移動させてCu配線表面の酸化膜の除去処理を行う。次いで別チャンバーでバリアメタル膜を形成し、さらに別チャンバーでCu膜を形成する連続プロセスが可能である。
【0112】
図38(a)に示した半導体製造装置を使用することにより、脱ガス処理のスループットを上げることができる。脱ガス処理に長時間が必要であり、且つ複数枚の基板を単位として工程が進められる半導体装置の製造方法の場合に、クラスターツールの1つのチャンバーで基板を1枚ずつの脱ガス処理しか行えない半導体製造装置では、脱ガス処理の時間が非常に長くなる。例えば、絶縁膜の脱ガス処理に10分間が必要な場合を考える。別チャンバーで処理される工程で、脱ガス処理工程の次に処理時間が長い工程(以下において「第2処理工程」という。)の処理時間が72秒とする。その場合、脱処理工程と第2処理工程の処理時間の差が、別チャンバーで基板が脱ガス処理の完了を待つ時間になる。チャンバー間の搬送にかかる時間が20秒とすると、25枚の基板の脱ガス処理を連続して行うには約4時間36分を必要とする。図38に示す半導体製造装置を使用して、1つのチャンバー内で複数の基板の脱ガス処理を並行して行えば、処理時間を大幅に短縮することができる。又、基板を1枚しか処理できないチャンバーを複数設置するよりも、装置全体の装置スペースを小さく抑えられる。
【0113】
図38に示した半導体製造装置の有するホットプレート210a〜210jの数を必要最小限として装置コストを最小限にすることも工業的に求められる。例えば、ホットプレート210a〜210jの数を、脱ガス処理に要する時間を第2処理工程の処理時間で割り、得られた値の小数点以下を切り上げた数とする。上記の計算で得られた数のホットプレートを用意すれば、脱ガス処理の完了を待って、他の工程がストップする時間を最小限に抑えることができる。つまり、図38に示した半導体製造装置のホットプレートの数は、脱ガス処理の時間をt1、第2処理工程の処理時間をt2とした時、t1÷t2の小数点を切り上げた整数の個数とすればよい。上記の例で計算すると、600秒÷72秒=8.3であるため、ホットプレート数を9枚とすればよい。その場合、25枚の基板を処理単位として脱ガス処理した場合の処理時間は約1時間6分である。
【0114】
ホットプレート210a〜210j上に配置された基板10の昇温速度を上げて脱ガス効率を上げるため、ホットプレート210a〜210jに静電チャック機構を取り付けて温度制御してもよい。又、熱伝導をよくするために、Heガス、H2ガス、Arガス、N2ガス等を導入して基板10の昇温速度や温度均一性を高めてもよい。或いは、ハロゲンランプ照射により基板10を加熱してもよい。
【0115】
又、H2などの還元ガス、もしくは還元ガスをマイクロ波放電などで活性化したラジカルガスを脱ガス処理するチャンバー内に導入することにより、Cu配線表面の酸化膜を還元除去することができる。その結果、別チャンバーで行う還元処理を削減することができる。ただし、長時間の脱ガス処理中には、ホットプレート210a〜210j毎に基板10の搬送が行われるため、搬送室との仕切りバルブの開閉が伴う。したがって、H2などの還元ガスが搬送室に流れ込んで搬送室の真空度が低下したり、搬送室を介して別チャンバーに還元ガスが混入し、別チャンバーを汚染する等の問題が起こる。そのため、還元ガスを導入する場合は、基板の搬送のために仕切りバルブを開ける時には還元ガスの導入を停止すればよい。又、還元ガス等が導入されない場合も、基板から放出されるガスや熱伝導のために導入したガス等により、脱ガス処理用のチャンバーの真空度が低くなる。そのため、仕切りバルブの開閉時に搬送室を介して別チャンバーにガスが混入、汚染する等の問題が起こる。その場合、仕切りバルブ開閉時には別チャンバーとの仕切りバルブを開けないようにクラスターツール全体を制御すればよい。
【0116】
図38では複数のホットプレート210a〜210jを上下に重ねて配置する半導体製造装置について説明した。他に、図39に示す半導体製造装置を、脱ガス処理の工程に適用することができる。図39に示した半導体製造装置は、複数のホットプレート211a〜211fを回転可能な支持体150b上に放射線状に設置した構造である。ホットプレート211a〜211fは、上下移動可能なリフトピン241を有する。ホットプレート211a〜211f上に、基板をそれぞれ配置できる。図39は、ホットプレート211a〜211b上に、基板10a、10bがそれぞれ配置されている例を示す。図39に示した半導体製造装置の動作例として、ホットプレート211に基板10cを配置する場合を以下に説明する。図示を省略した搬送室より搬送用ロボットハンド220aにより搬送された基板10cが、ホットプレート211cの上面から突出しているリフトピン241の先端上に配置される。その後、リフトピン241が下降し、基板10cがホットプレート211c上に配置される。
【0117】
その後、支持体150bを回転させて、順次ホットプレート211d〜211f上に基板を設置する。また、処理が終了した後は、上記に説明した方法と逆の動作を行って基板を搬出する。次に処理する基板がある場合は、基板が搬出されたホットプレート211a〜211f上に基板を配置することを繰り返せば、必要以上にホットプレート211a〜211fの数を増加させずに済む。また、ホットプレート211a〜211fをそれぞれ真空的に仕切る構造にすれば、ホットプレート211a〜211f上に配置されたそれぞれの基板の脱ガス処理中に発生する脱ガスによる、他の基板の汚染を避けることができ、且つ搬送室の脱ガスによる汚染を避けることができる。図39に示すように、スリットバルブ310を開閉することにより、搬送チャンバー300の脱ガスによる汚染を防ぐことができる。スリットバルブ310は、搬送チャンバー300から基板がホットプレート211a〜211fへ搬送される時に開き、脱ガス処理工程時に閉じる。
【0118】
又、ホットプレート211a〜211f間を真空的に仕切れば、一つのホットプレート上の基板に対して行う酸化物の還元処理のためにH2ガス等を導入した場合に、H2ガス等による他のホットプレート上の基板や搬送室の汚染を避けることができる。図39に示した半導体製造装置は、図38(a)に示した半導体製造装置と同様に、クラスターツールに接続された1つのチャンバーとして使用可能である。又、図39では、ホットプレートの数が6である例を示したが、ホットプレートの数が6に限定されないのは勿論である。
【0119】
図38(a)及び図39では、複数のホットプレートを備える半導体製造装置の例を説明した。以下に、複数の基板を1つの加熱機構で加熱処理可能な半導体製造装置の例を説明する。図40(a)に示す半導体製造装置は、チャンバー100cと、複数の基板10をそれぞれ支える複数の石英ボード403が内部に配置された石英管400と、石英管400の周囲をそれぞれ管状に取り囲むヒーター401及び高周波印加用コイル402を備える。複数のホットプレートを用いた場合と異なり、図40(a)に示した半導体製造装置を使用する場合は、1つのヒーター401を用いて複数の基板を一括して脱ガス処理する。ただし、複数の基板を一括して処理する場合でも、複数のホットプレートを用いる場合と同様に、基板毎に搬送を行ってもよい。例えば、図40(b)に示すように、搬送用ロボットハンド220bを使用して、基板10の搬送を行うことができる。ただし、搬送用ロボットハンド220bを使用して基板10を搬送する場合には、図40(b)に示すように、石英管400が開口部を有し、石英管400の一部がヒーター401に囲まれない。このようにヒーター401に囲まれない部分がある場合、石英管400内の均熱性が低下する。そのため、基板10を回転させる等して、基板10の面内温度の均熱性を保つ工夫が必要になる。又、脱ガス処理時のガス圧力を数百Pa以上とするにより、基板10の面内温度の均一性を改善することができる。
【0120】
次に、ホットプレートやヒーターを用いる加熱方法以外の、脱ガス処理方法で、高効率に脱ガス処理を行うことが実行可能な半導体製造装置の例を説明する。以下では、μ波を利用して絶縁膜中に含まれる水分子を効率良く放出させる半導体製造装置を説明する。水分子は酸素原子1個に水素原子2個が結び付いた構造となっている。そして、酸素原子と水素原子が結び付く際に、水素原子中の電子が酸素原子方向に片寄るため、結合部付近の極性は、酸素原子はプラスに、水素原子はマイナスになる。この結果、水素原子側はプラス、酸素原子側はマイナスの極性をもちながら、水分子は全体として中性を保つ。一方、一般に電波はプラス方向とマイナス方向に交互に極性を変えながら(振動しながら)、空間を進んでいく。そのため、μ波が酸素原子と水素原子の結合部に当たるということは、プラス/マイナス両方向の電気的エネルギーが、結合部に交互に加わることを意味する。その時、まずプラス方向のエネルギーが水分子の結合部に加えられたとすると、それまでバラバラな方向で熱運動を行っていた水分子は、マイナスの極性をもった酸素原子がμ波の方向に引き寄せられて、一斉に方向を変える。次に、結合部にマイナス方向のエネルギーが加えられると、今度はプラスの極性をもった水素原子が引き寄せられるため、水分子は再び一斉に方向転換をする。以上に説明した水分子とμ波の特徴を生かして、水分子のみを絶縁膜から放出することができる。つまり、電波発振器から放出されるμ波を絶縁膜に当てると、絶縁膜中に含まれる水分子が、水分子の運動により加熱(誘電加熱)される。その結果、絶縁膜から水分子のみを放出することができる。なお、μ波照射は真空中で行うことが好ましい。更に、アーク放電の可能性を防止するため、金属膜が露出していない状態で行うことが好ましい。使用するμ波のパワー等のパラメータは、使われている絶縁膜に応じて選択される。
【0121】
又、脱ガス処理を行うチャンバーは、脱ガスしたガス成分を含む副生成物がチャンバー内に付着してゴミの原因となったり、加熱処理時の温度コントロールが困難になるという問題がある。脱ガス処理時に絶縁膜から放出されるガスは、H2O等の酸化種に加えて、RIE法を用いた工程で発生するC、F等を含むガスであることが多い。チャンバー内に付着した副生成物を洗浄するために、チャンバーを大気開放してメンテナンスすることは時間がかかり、生産性の低下となる。そのため酸素、水素を含むガスのプラズマ、あるいはラジカルを用いて除去すれば、チャンバーの洗浄を短時間で終了させることが可能である。すなわち、脱ガス処理を行うチャンバーには、クリーニング機構があることが望ましい。例えば、図40(a)に示すように、石英管400の外周に高周波電力を印加できる高周波印加用コイル402を設けてあれば、酸素や水素を導入しながら高周波電力を印加することにより、石英管400内にプラズマを発生させることができる。そのため、大気開放を伴うメンテナンスを行う必要がなくなる。
【0122】
又、吸湿性の高い絶縁膜に対しては、蒸気圧が高い有機性溶液で絶縁膜中の吸着水を置換、乾燥させる方法も有効である。たとえば、メタノールやエタノール等を基板上に滴下して洗浄し、乾燥させることにより絶縁膜中に含まれる水分子が減少する。この後に脱ガス処理を行うことで、脱ガス処理の高効率化を実現できる。
【0123】
以下に、効率的な表面改質方法として、EB照射及びUV光照射を行う方法を説明する。EB照射及びUV光照射を行うチャンバーは、基板搬送機構を備えた搬送室に接続され、EB照射及びUV光照射処理の前、或いは処理の後に、搬送室に接続された別のチャンバー内で真空連続的に別処理を行うことも可能である。例えば、EB照射及びUV光照射を行うチャンバー内で層間絶縁膜に吸着された吸着ガスの除去或いは低減を行った後、搬送室を介して基板を別チャンバー内に移動させて下層のCu配線表面の酸化膜の除去処理を行う。次いで、別チャンバー内でバリアメタル膜を形成し、更に別チャンバー内でCu膜を形成する連続プロセスが可能である。
【0124】
図41(a)は、バリアメタル膜或いはCu膜を形成するチャンバーに真空連続で基板を搬送可能な、EB照射機能を備える半導体製造装置の構造断面を示している。図41(a)に示す半導体製造装置は、基板10が配置されるホットプレート210と、基板10にEBを照射する電子ビーム発生源500を備えるチャンバー100dからなる。
【0125】
図41(b)には、UV光照射が可能な半導体製造装置の例を示す。図41(b)に示す半導体製造装置は、基板10が配置されるホットプレート210を備えるチャンバー100dと、チャンバー100d上面に設けた光透過窓610を通して基板10にUV光を照射するUV光発生源600からなる。
【0126】
第4の実施の形態で説明したように、絶縁膜の種類によって最表面原子の終端基は異なる。例えば、CH3基で終端されている場合は疎水性を示し、OH基で終端されていれば親水性を示す等の吸着性質の違いが生じる。そのため、バリアメタル形成前にEB照射、UV照射した場合、表面のCH3基などの除去が可能となる。これにより、バリアメタルとの結合が容易となり、密着性を改善することができる。また、重合が不完全な絶縁膜では重合を確実にすることができ、膜中より不要なガス成分を除去することができる。
【0127】
図42(a)及び図42(b)は、EB照射、UV光照射等の表面改質処理や脱ガス処理を行った場合の工程フローを示している。EB照射、UV光照射工程は、絶縁膜のキュア工程と同様の工程である。そのため、EB照射、UV光照射工程を複数回行うと必要以上にキュア工程が進み、絶縁膜の誘電率が上がってしまう可能性がある。そのため、図42(a)に示すように、絶縁膜キュアに必要なエネルギーと照射時間を、絶縁膜を形成する工程の後とバリアメタル膜を形成する工程前に分割することが好ましい。或いは、図42(b)に示すように、絶縁膜のキュア工程をバリアメタル膜形成前の脱ガス処理の促進工程と兼ねるようにプロセスフローを変更すればよい。
【0128】
以上に説明したように、本発明の第6の実施の形態に係る半導体製造装置によれば、吸湿性の高い低誘電率絶縁膜の脱ガス処理の工程が長時間となる場合において、スループットの低下を抑制することができ、又、高効率な脱ガス処理を行うことが可能になる。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1乃至第6の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0129】
例えば、既に述べた第1乃至第6の実施の形態の説明においては、TiとTi窒化物、Al及びAl酸化物を形成する場合を例に説明したが、以下の応用も当然可能である。例えば、配線層と絶縁膜の間の金属膜としては、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)等でも可能である。特に、IIa、IIIa、IVa、Va族金属で、Mg、Zr、Vなどが有望であることは実施の形態中でも述べた。
【0130】
更に、第4、第5の実施の形態においては、原料ガスやその他導入ガスを変更すれば、シリコン(Si)、Ta、W、Hf、Zn、ルテニウム(Ru)等、あるいはそれらの酸化物、窒化物の成膜にも応用可能である。
【0131】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0132】
10…基板
20…絶縁膜
30…金属膜
35…チタン酸化膜
36…タンタル膜
50…層間絶縁膜
70…第2配線層
71…第2のCuシード膜
200…凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に絶縁膜、金属からなるバリアメタル膜、及びCu配線金属膜がこの順で積層された積層構造を具備してなり、
前記バリアメタル膜の酸化物のX線回折測定による回折強度が、前記バリアメタル膜と前記Cu配線金属膜との化合物の回折強度の10倍以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記基板と前記絶縁膜の間に配置され、前記絶縁膜に形成されたホール下で前記バリアメタル膜と接続する下層配線層を更に備え、前記下層配線層と接する箇所での前記バリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度が、前記絶縁膜と接する箇所の前記バリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度より低いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記バリアメタル膜は、Tiからなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記バリアメタル膜と前記絶縁膜との界面近傍に、Tiに対する酸素の原子比が5/3以下である前記バリアメタル膜の酸化物が形成されたことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置を製造する方法であって、
第1の基板温度で、表面に凹部が形成された前記絶縁膜中及び該絶縁膜表面の酸化を一部残存するように放出させる工程と、
前記酸化種を放出させる工程と真空連続で、前記第1の基板温度より低い、前記絶縁膜中から酸化種が放出されない第2の基板温度で、前記絶縁膜上に、前記バリアメタル膜を形成する工程と、
前記バリアメタル膜上に前記Cu配線金属膜を形成する工程と、
前記バリアメタル膜を形成後、前記絶縁膜中に残存させた酸化種によって、前記バリアメタル膜の少なくとも一部を酸化させる工程と、
前記バリアメタル膜と前記Cu配線金属膜との界面に、前記バリアメタル膜と前記Cu配線金属膜との化合物を形成する工程とを含み、
前記バリアメタル膜を酸化させる工程は、前記バリアメタル膜を前記第1の基板温度よりも高い温度で加熱する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板上に絶縁膜、金属からなるバリアメタル膜、及びCu配線金属膜がこの順で積層された積層構造を具備してなり、
前記バリアメタル膜の酸化物のX線回折測定による回折強度が、前記バリアメタル膜と前記Cu配線金属膜との化合物の回折強度の10倍以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記基板と前記絶縁膜の間に配置され、前記絶縁膜に形成されたホール下で前記バリアメタル膜と接続する下層配線層を更に備え、前記下層配線層と接する箇所での前記バリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度が、前記絶縁膜と接する箇所の前記バリアメタル膜の酸化物中の酸素濃度より低いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記バリアメタル膜は、Tiからなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記バリアメタル膜と前記絶縁膜との界面近傍に、Tiに対する酸素の原子比が5/3以下である前記バリアメタル膜の酸化物が形成されたことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置を製造する方法であって、
第1の基板温度で、表面に凹部が形成された前記絶縁膜中及び該絶縁膜表面の酸化を一部残存するように放出させる工程と、
前記酸化種を放出させる工程と真空連続で、前記第1の基板温度より低い、前記絶縁膜中から酸化種が放出されない第2の基板温度で、前記絶縁膜上に、前記バリアメタル膜を形成する工程と、
前記バリアメタル膜上に前記Cu配線金属膜を形成する工程と、
前記バリアメタル膜を形成後、前記絶縁膜中に残存させた酸化種によって、前記バリアメタル膜の少なくとも一部を酸化させる工程と、
前記バリアメタル膜と前記Cu配線金属膜との界面に、前記バリアメタル膜と前記Cu配線金属膜との化合物を形成する工程とを含み、
前記バリアメタル膜を酸化させる工程は、前記バリアメタル膜を前記第1の基板温度よりも高い温度で加熱する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【公開番号】特開2010−10700(P2010−10700A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212140(P2009−212140)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2006−9978(P2006−9978)の分割
【原出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2006−9978(P2006−9978)の分割
【原出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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