説明

可動ゲート型電界効果トランジスタ

【課題】可動ゲート電極の変位を制御可能な可動ゲート型電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】ソース電極17とドレイン電極18との上に導電シールド電極20が配置される可動ゲート型電界効果トランジスタ1とした。そして導電シールド電極20の電位を固定することとした。導電シールド電極20が配置されることにより、可動ゲート15とドレイン電極18またはソース電極17との間に発生する静電力を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems:微小電気機械素子)技術を用いて形成される可動ゲート型電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
可動ゲート型電界効果トランジスタが、図を参照しつつ説明される。図13は可動ゲート型電界効果トランジスタの説明図であり、図13(a)は平面図、図13(b)はM−M線断面図、図13(c)はN−N線断面図である。
【0003】
可動ゲート型電界効果トランジスタ500は、半導体基板501、ゲート酸化膜502、ソース電極503、チャネル形成領域504、ドレイン電極505、ソース配線部506、ドレイン配線部507、支持体508,509、可動ゲート電極512、空間部(gategap)513を備える。
【0004】
可動ゲート型電界効果トランジスタ500は、チャネル形成領域504上のゲート酸化膜502と、可動ゲート電極512と、の間に空間部(gategap)513を有している。このため可動ゲート電極512が変位すると、可動ゲート電極512とゲート酸化膜502との間の空間部513の距離も変化する。そして、この空間部513の距離の変化に応じてチャネル504に誘起されるキャリアの密度が変化するため、ドレイン電流も変化する。このような可動ゲート型電界効果トランジスタ500は、例えば、機械スイッチ、共振器、メモリなどの用途で使用される。
【0005】
スイッチ素子に用いる場合、ソース電極503を接地し、ドレイン電極505に一定の正電圧を印加、可動ゲート電極512の電圧を変化させることで、ドレイン電流を変化させ、スイッチ機能を発揮させている。このとき可動ゲート電極512への印加電圧を0Vから増加させて行くと、初めは可動ゲート電極512とドレイン電極505間に発生する静電力は、可動ゲート電極512のバネ復元力より小さいため、可動ゲート電極512は両力が釣り合った中空の位置で安定する。さらに可動ゲート電極512への印加電圧を増加させて行くと、ある電圧で静電力が可動ゲート電極512のバネ復元力より大きくなり、可動ゲート電極512はゲート酸化膜502と接触する。
【0006】
このとき、チャネルポテンシャルは可動ゲート電極512とチャネル形成領域504との距離が縮まることにより急激に変化し、チャネル形成領域504に形成されるチャネルに誘起されるキャリア密度が増加するためドレイン電流が増加する。この可動ゲート電極512とチャネル形成領域504の距離の変化によるドレイン電流の変化を、スイッチとして用いているものである。
【0007】
また、可動ゲート型電界効果トランジスタ500は、加速度センサの用途でも使用される。可動ゲート電極512の質量部分が加速されたとき、梁構造の可動ゲート電極512は力により変位させられる。そして、可動ゲート電極512の変位に応じてドレイン電流が変化する。
【0008】
さらに、このような加速度センサ(つまり可動ゲート型電界効果トランジスタ)が、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平06−204502号公報
【特許文献2】特開2000−108099号公報
【特許文献3】特開平9−18015号公報
【特許文献4】特開平8−335705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術の可動ゲート型電界効果トランジスタ500は、ドレイン電流を大きくしようとすると、大きなドレイン電圧を印加する必要があった。このことにより、ドレイン電極505と可動ゲート電極512との間の電位差が大きくなり、同時に大きな静電力が発生していた。
【0011】
スイッチ素子への応用を考えた場合、大きな静電力が発生すると、スイッチイングさせるために可動ゲート電極512に印加する電圧によらず、可動ゲート電極512がドレイン電極505に引き寄せられトランジスタがオンしてしまう為、スイッチ機能が失われる問題があった。
【0012】
また、加速度センサーなどの変位センサーへの応用を考えた場合、大きな静電力が発生すると可動ゲート電極512がドレイン電極505に引き寄せられ、しいてはドレイン電極505と接触してゲート電極512が変位しなくなる課題があった。
【0013】
そこで、この発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、可動ゲート電極の変位を制御可能な可動ゲート型電界効果トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の特徴をなす可動ゲート型電界効果トランジスタは、以下のようになる。
まず、半導体基板の表面層に形成されたソース電極およびドレイン電極と、
前記半導体基板の表面層であって、前記ドレイン電極とソース電極との間のチャネル形成領域と、
前記ソース電極上、前記ドレイン電極上および前記チャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ソース電極または前記ドレイン電極の少なくとも一方の上方に配置され、前記ゲート絶縁膜内に形成された導電シールド電極と、
前記チャネル形成領域の上方に配置され、前記ゲート絶縁膜に対して空間部を挟んで空中に設けられる梁構造の可動ゲート電極と、
を備える可動ゲート型電界効果トランジスタとする。
【0015】
このような構成とすることにより、導電シールド電極に所定の電位(ドレイン電極に印加される電圧よりも小さい電圧)を印加することにより、可動ゲート電極とドレイン電極(もしくはソース電極)との間の静電力を制御することができる。例えば、導電シールド電極を可動ゲート電極と同電位に保持することで、可動ゲート電極とドレイン電極(もしくはソース電極)との間の静電力を抑制することができる。これにより、これにより、可動ゲート電極は不要な静電力により、ドレイン電極(もしくはソース電極)に引き寄せられ、しいてはドレイン電極(もしくはソース電極)と接触してしまうことが無くなる。
【0016】
また、上記の可動ゲート型電界効果トランジスタにおいて、前記ソース電極は、直線状の複数のソース歯部と、これらソース歯部が垂直に接続されるソース根元部とからなる櫛歯状の電極を含み、
前記ドレイン電極は、直線状の複数のドレイン歯部と、これらドレイン歯部とそれぞれ垂直に接続されるドレイン根元部とからなる櫛歯状の電極を含み、
前記複数のソース歯部と前記複数のドレイン歯部とが略平行であって交互に配置され、
前記可動ゲート電極は、前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記チャネル形成領域を覆うように配置されるものとする。
【0017】
このような可動ゲート型電界効果トランジスタは、ソース電極とドレイン電極との間に形成されるチャネルも複数となって、可動ゲート電極の長さと比較して、チャネル幅の全長が大幅に長くなり、大きなドレイン電流が取り出せるようになる。
【0018】
また、前記ソース電極に電気的に接続されるソース配線部と、前記ドレイン電極に電気的に接続されるドレイン配線部とを備えるものとする。
また、前記ソース配線部は、直線状の複数のソース配線歯部と、これらソース配線歯部が垂直に接続されるソース配線根元部とからなる櫛歯状の配線部を含み、前記櫛歯状のソース電極に重ねて配置されるように前記ゲート絶縁膜内に前記導電シールド電極と間隔を有して設けられ、前記ドレイン配線部は、直線状の複数のドレイン配線歯部と、これらドレイン配線歯部が垂直に接続されるドレイン配線根元部とからなる櫛歯状の配線部を含み、前記櫛歯状のドレイン電極に重ねて配置されるように前記ゲート絶縁膜内に前記導電シールド電極と間隔を有して設けられるものとする。
【0019】
ここで、櫛歯状のソース配線部がソース電極に接続され、また、櫛歯状のドレイン配線部がドレイン電極に接続される構成を採用したため、ソース電極やドレイン電極への接触面を多くして配線抵抗を低減し、ドレイン電流を効率的に流すことができる。この際、櫛歯状のソース配線部やドレイン配線部の根元部の幅を大きくするとさらに配線抵抗を低減し、ドレイン電流をより効率的に流すことができる。
【0020】
また、上記の可動ゲート型電界効果トランジスタにおいて、前記ソース電極に前記半導体基板表面から形成されたソース溝を備え、前記ソース溝内に前記ソース配線部を配置し、
前記ドレイン電極に前記半導体基板表面から形成されたドレイン溝を備え、前記ドレイン溝内に前記ドレイン配線部を配置するものとする。
【0021】
このような構成とすると、ゲート酸化膜内にソース配線部やドレイン配線部を配置せずに半導体基板内にソース引出配線部やドレイン引出配線部を配置しているため、ゲート酸化膜を薄く形成することができる。
【0022】
また、上記の可動ゲート型電界効果トランジスタにおいて、前記導電シールド電極と前記可動ゲート電極とが電気的に接続されているものとする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、可動ゲート電極の変位を制御可能な可動ゲート型電界効果トランジスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】可動ゲート型電界効果トランジスタの構造図であり、図1(a)は平面図、図1(b)はA−A線断面図、図1(c)はB−B線断面図である。
【図2】可動ゲート型電界効果トランジスタの構造図であり、図2(a)はゲート酸化膜および可動ゲートを取り去った内部構造図、図2(b)はA−A線断面図、図2(c)はB−B線断面図である。
【図3】チャネル幅の説明図である。
【図4】A−A断面から見た可動ゲート型電界効果トランジスタの製造方法の工程図である。
【図5】B−B断面から見た可動ゲート型電界効果トランジスタの製造方法の工程図である。
【図6】可動ゲート型電界効果トランジスタの構造図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は正面図、図6(c)は側面図である。
【図7】可動ゲート型電界効果トランジスタの構造図であり、図7(a)はゲート酸化膜および可動ゲート電極を取り去った内部構造図、図7(b)はC−C線断面図、図7(c)はD−D線断面図である。
【図8】可動ゲート型電界効果トランジスタの構造図であり、図8(a)はゲート酸化膜および可動ゲート電極を取り去った内部構造図、図8(b)はチャネル幅の説明図である。
【図9】可動ゲート型電界効果トランジスタの構造図であり、図9(a)はゲート酸化膜および可動ゲート電極を取り去った内部構造図、図9(b)はE−E線断面図、図9(c)はF−F線断面図である。
【図10】チャネル幅の説明図である。
【図11】可動ゲート型電界効果トランジスタのゲート酸化膜および可動ゲートを取り去った内部構造図であり、図11(a)は平面図であり、図11(b)は、図11(a)のI−I線断面図である。
【図12】可動ゲート型電界効果トランジスタのゲート酸化膜および可動ゲート電極を取り去った内部構造図であり、図12(a)は、平面図であり、図12(b)は、図12(a)のJ−J線断面図である。
【図13】可動ゲート型電界効果トランジスタの説明図であり、図13(a)は平面図、図13(b)はM−M線断面図、図13(c)はN−N線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
続いて、本発明を実施するための形態の可動ゲート型電界効果トランジスタ1について説明する。まず、可動ゲート型電界効果トランジスタ1の構成について図を参照しつつ説明する。図1は可動ゲート型電界効果トランジスタの構造図であり、図1(a)は可動ゲート電極を取り去った平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図、図1(c)は図1(a)のB−B線断面図、図1(d)は図1(a)のC−C線断面図である。図2は可動ゲート型電界効果トランジスタの構造図であり、図2(a)はゲート酸化膜、導電シールド電極および可動ゲート電極を取り去った内部構造図、図2(b)は図2(a)のA−A線断面図である。図3は図1の可動ゲート型電界効果トランジスタ1を加速度センサとして適用した場合の動作説明図である。図4は図1の可動ゲート型電界効果トランジスタ1をスイッチとして適用した場合の動作説明図である。
【0026】
可動ゲート型電界効果トランジスタ1は、半導体基板11、ゲート酸化膜12、ソース側接続部13、ドレイン側接続部14、可動ゲート電極15、空間部(gategap)16、ソース電極17、ドレイン電極18、チャネル形成領域19、導電シールド電極20を備える。
【0027】
半導体基板11は、平面度が高い表面を有するp型のシリコン基板である。
ゲート酸化膜12は、半導体基板11の表面を覆うシリコン酸化膜であり、導電シールド電極20の下に形成されるシリコン酸化膜12aと導電シールド電極20の上に形成されるシリコン酸化膜12bからなる。
【0028】
ソース側接続部13は、一端が外界に露出しており、また、他端がゲート酸化膜12内でソース電極17と電気的に接続されている。
ドレイン側接続部14は、一端が外界に露出しており、また、他端がゲート酸化膜12内でドレイン電極18と電気的に接続されている。
【0029】
このソース側接続部13とドレイン側接続部14には、可動ゲート型電界効果トランジスタ1に電源を供給する回路や出力信号を処理する回路などの制御回路との接続するための各種の配線が接続されることとなる。制御回路を半導体基板11内に集積して形成する場合は、必ずしもソース側接続部13またはドレイン側接続部14の一端が外界に露出する必要はない。
【0030】
可動ゲート電極15は、ポリシリコンにより形成されており、空間部16を隔ててチャネル形成領域19の上側に配置される矩形状の部材である。可動ゲート電極15は、2個の支持部15aにより矩形状部材の両方の短辺側で支持され、残る長辺側では自由端であって開放部15bが形成される。このような支持部15aに支持される可動ゲート電極15は、梁構造体となっており、図1(d)で示す矢印α方向(ゲート酸化膜12の表面に対して垂直方向)に可動ゲート電極15の中央部が移動する。なお、支持部15aはシリコン酸化膜を加工して形成される。
【0031】
空間部16は、ゲート酸化膜12と可動ゲート電極15との間に挟まれる空間である。
ソース電極17は、p型シリコン基板である半導体基板11上に形成された不純物拡散層(n+注入層)である櫛歯状の電極である。複数のソース歯部17aが平行に配置されてソース根元部17bと接続され、ソース根元部17bにソース引出電極17cが接続され、ソース引出電極17cは可動ゲート電極15の開放部15bから引き出されているものとした。
【0032】
ドレイン電極18は、p型シリコン基板である半導体基板11上に形成された不純物拡散層(n+注入層)である櫛歯状の電極である。複数のドレイン歯部18aが平行に配置されてドレイン根元部18bと接続され、ドレイン根元部18bにドレイン引出電極18cが接続され、ドレイン引出電極18cは可動ゲート電極15の開放部15bから引き出されているものとした。
【0033】
ソース電極17は、ソース歯部17aの幅(図2(a)中の左右方向の幅)に対してソース根元部17bの幅(図2(a)中の上下方向の幅)が大きく構成され、ソース電極17の配線抵抗を低減している。
【0034】
ドレイン電極18は、ドレイン歯部18aの幅(図2(a)中の左右方向の幅)に対してドレイン根元部18bの幅(図2(a)中の上下方向の幅)が大きく構成され、ドレイン電極18の配線抵抗を低減している。
【0035】
チャネル形成領域19は、半導体基板11のうちソース電極17とドレイン電極18との間の領域である。このようにチャネル形成領域19において単位ゲート面積あたりの実効チャネル幅を増加させることで、ドレイン・ソース間電流を増加させている。
【0036】
導電シールド電極20は、ゲート酸化膜12の中に形成され、ソース電極17およびドレイン電極18を覆うように配置する。しかし、ソース電極17とドレイン電極18との間(チャネル形成領域19)を全て覆わないように配置する。可動ゲート電極の下方に位置するソース電極17およびドレイン電極18を全て覆うように配置することが望ましい。導電シールド電極20は、引出部20a、20bが配置され、引出部20a,20bは、所定の電位を印加するための配線が接続される。導電シールド電極20をチャネル形成領域19上に張り出して形成する場合は、導電シールド電極20に電圧が印加された状態で、導電シールド電極20の下のチャネル形成領域19にチャネルが形成されるような電圧を印加することが望ましい。
【0037】
可動ゲート型電界効果トランジスタ1の構成はこのようなものである。
続いて可動ゲート型電界効果トランジスタ1の機能について説明する。
このような可動ゲート型電界効果トランジスタ1は、チャネル形成領域19上のゲート酸化膜12と、可動ゲート電極15と、の間に空間部(gategap)16を有している。可動ゲート電極15が変位すると、可動ゲート電極15とゲート酸化膜12との間の空間部16の距離も変化する。そして、この空間部16の距離の変化に応じて空間部16の電界が変化し、チャネル形成領域19に誘起されるキャリアの密度が変化してドレイン電流も変化する。また、ドレイン電極18とソース電極17上にゲート酸化膜12を介して導電シールド電極20を設けている。この導電シールド電極20を可動ゲート電極15と同電位に保持することで、導電シールド電極20がある領域では、可動ゲート電極15とドレイン電極18またはソース電極17との間の電界が遮蔽され、静電力が働かない。このとき、チャネル形成領域19では可動ゲート電極15との間で静電力が発生するが、可動ゲート電極15全体では従来例に比べ導電シールド電極20で被われた面積分だけ、静電力が発生する領域が少なくなっており、可動ゲート電極15全体での静電力は小さくなる。
【0038】
以上のように、導電シールド電極20を設け導電シールド電極20をドレイン電圧と同電位に保持することで、静電力を低減することが出来る。
加速度センサーとして用いた場合は、ダイナミックレンジ拡大の効果がある。以下、加速度検知動作を説明する。
【0039】
加速度センサーとして用いた場合について説明する。
可動ゲート型電界効果トランジスタでの加速度センサーの測定原理は、加速度印加による可動ゲート電極15の上下変位、すなわち空間部16の変化に伴う、ドレイン電流の変化を利用して加速度を測定するものである。図3に示すように、ドレイン電流は空間部16の変位によって変化する。図3の縦軸は、ソースドレイン間に流れる電流(ドレイン電流)であり、横軸は、可動ゲート電極とゲート酸化膜12の距離(図1(d)において空間部16のα方向の幅)である。また、半導体基板11とソース電極17および可動ゲート電極に印加する電圧を0Vとし、ドレイン電極に印加する電圧を4Vとした。例えば、空間部16が縮まる方向に加速度が印加されると、ドレイン電流は増加する。しかし、従来例ではある閾値Aより大きな加速度が印加されると、ゲートギャップが小さくなりなりすぎ、静電力が可動ゲート電極15のバネ復元力を上回る状態になる。すると静電力により、可動ゲート電極15がゲート酸化膜12へ接着(スティクション)してしまい、出力電流としてギャップ(可動ゲート電極とゲート酸化膜12の距離)が0(ゼロ)の時と同じ一定の値しか示さず、この閾値加速度より大きな加速度は測定できなかった。しかし、本形態では、静電力が低減されているため、従来例の閾値Aより大きな加速度を印加しても、静電力がゲート電極のバネ復元力を上回る状態にはならず、加速度測定のダイナミックを拡大することができる。
【0040】
以下、スイッチとして用いた場合の動作について説明する。
可動ゲート型電界効果トランジスタをスイッチとして用いる場合の特性図を図4に示す。図4において縦軸は、可動ゲート電極とゲート酸化膜12の距離(図1(d)において空間部16のα方向の幅(gategap))であり、横軸は、ゲートソース間電圧である。また、半導体基板とソース電極に印加する電圧を0Vとし、ドレイン電極に印加する電圧を4Vとした。図4に示すように、ゲートソース間電圧を変化させた時にある閾値C電圧を越えると急激に空間部16が縮まりスティクションする特性を活かしている。この閾値電圧Cより低い電圧では、可動ゲート電極15のスティクションは発生せず、チャネル形成領域19においてチャネルは形成されずドレイン電流は流れない。すなわちスイッチオフ状態である。一方、閾値電圧Cより大きな電圧では、可動ゲート電極15のスティクションが起こり、それに伴いチャネル形成領域19にチャネル(反転層)が形成されドレイン電流が流れ始める。すなわちスイッチONする。
【0041】
このとき、この導電シールド電極20の電位を可変することで、可動ゲート電極15の静電力を可変し、しいてはスティクションするゲートソース間電圧(スティクション電圧)を可変することができる。例えば、導電シールド電極20の電位を可動ゲート電極15と同じすれば、静電力を小さくすることができ、スティクション電圧を大きく、すなわちスイッチONの電圧を高くすることができる。また、導電シールド電極20の電圧を可動ゲート電極15に印加する電圧と大きく異なる電圧とすれば、静電力は大きくなり、スティクション電圧を小さく、すなわちスイッチONの電圧を低くすることができる。
【0042】
以上のように導電シールド電極20の電位を可変することで、スイッチのON/OFF電圧を可変することができる。
本形態では、導電シールド電極20の電圧をドレイン電圧と同電圧としたが、それに限らない。ドレイン電圧とゲート電圧の間の電圧に保持しても、静電力低減の効果は得ることができる。
【0043】
さらに、導電シールド電極20と可動ゲート電極15との間の電圧をドレインゲート間電圧より大きくなるように保持することで、意図的にスティクションするゲート電圧をより低くすることや、可変することができ、加速度センサーのダイナミックレンジ調整などに有効である。
【0044】
また、本形態では導電シールド電極20をドレイン電極18とソース電極17両方に設置したが、どちらか一方であっても効果は得られ、必要な特性に応じて選択して形成すればよい。例えば、上記で示した例の場合は、ドレイン電極18の上のみに導電シールド電極20を形成することでも静電力低減の効果を得ることができる。また、可動ゲート電極15の電圧をドレイン電圧と同電位とする場合は、ソース電極18の上のみに導電シールド電極20を形成することでも静電力低減の効果を得ることができる。
【0045】
また、本形態では、可動ゲート電極15としてポリシリコンを用いたが、これはアルミニウムなどの導電性材料でもよい。
可動ゲート型電界効果トランジスタ1の機能はこのようなものである。
【0046】
続いて、このような可動ゲート型電界効果トランジスタ1の製造方法について図を参照しつつ説明する。図5はA−A断面(図1(a)参照)から見た可動ゲート型電界効果トランジスタの製造方法の工程図である。図6はC−C断面(図1(d)参照)から見た可動ゲート型電界効果トランジスタの製造方法の工程図である。
【0047】
可動ゲート型電界効果トランジスタ1の製造方法では、犠牲層を用いて可動ゲート電極を形成する犠牲層プロセスを用いる。
図5(a),図6(a)は、ソース電極17とドレイン電極18形成前状態の説明図である。これまでの工程について概略説明する。Si(シリコン)製の半導体基板11の表面に、熱酸化膜を形成する(熱酸化膜形成工程)。そして、熱酸化膜にレジストを形成してエッチング加工して中央にくぼみを形成してからレジストを剥離除去し、図6(a)で示す熱酸化膜22を形成する(支持部形成工程)。熱酸化膜22は可動ゲート電極の支持部15aとなる。
【0048】
そして、図5(b),図6(b)に示すように、熱酸化により半導体基板11にシリコン酸化膜12aを形成する(ゲート酸化膜形成工程)。シリコン酸化膜12aは熱酸化膜22の下側にも形成される。
【0049】
そして、図5(c),図6(c)に示すように、マスク24が熱酸化膜22やシリコン酸化膜12aの上面に形成される(マスク形成工程)。詳しくは、フォトレジストが、シリコン酸化膜12aの上面に塗布される。そしてフォトレジストが感光されてパターニングが行われる。パターニングは、通常の等倍紫外線露光や縮小紫外線露光などにより行われる。等倍紫外線露光か縮小紫外線露光かは、必要な線幅に応じて決定される。このようにして、ソース電極17とドレイン電極18を形成するためのマスク24が形成される。
【0050】
そして、図5(d),図6(d)に示すように、イオン注入および熱処理による拡散で不純物拡散層とした複数のソース電極17および複数のドレイン電極18を形成する(ソース電極・ドレイン電極形成工程)。
【0051】
そして、図5(e),図6(e)に示すように、マスク24を除去する(マスク除去工程)。フォトレジストであるマスクは、プラズマアッシング装置によりアッシング除去される。
【0052】
そして、図5(f),図6(f)に示すように、アルミニウムをスパッタにより形成し、パターニングして導電シールド電極20を形成する(導電シールド電極形成工程)。具体的にはスパッタにより形成したアルミニウム上にフォトレジスト(図示せず)を形成し、フォトレジストのパターニングにより櫛歯状の導電シールド電極形成箇所をマスクするマスクの形成工程、エッチングによるパターニング工程、フォトレジストのアッシング除去工程、が行われる。
【0053】
そして、図5(g),図6(g)に示すように、導電シールド電極20を覆うようにシリコン酸化膜12bを堆積する(堆積工程)。シリコン酸化膜12bは、化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により堆積される。
【0054】
そして、図5(h),図6(h)に示すように、犠牲層27を形成する(犠牲層形成工程)。例えば、フォトレジストと同様の取り扱いができる感光性ポリイミドが塗布され、パターニングをする。このような感光性ポリイミドが感光されてパターニングが行われる。パターニングは、通常の等倍紫外線露光や縮小紫外線露光などにより行われる。また、パターニング後に熱処理され、犠牲層27が形成される。
【0055】
そして、図5(i),図6(i)に示すように、可動ゲート電極15を形成する(可動ゲート電極形成工程)。ポリシリコン層が、犠牲層、ゲート酸化膜および酸化膜を覆うようにスパッタ法や蒸着法などを用いて堆積される。そしてこのポリシリコン層の上面にマスクが形成される。詳しくは、フォトレジストが、ポリシリコン層の上面に塗布される。そしてフォトレジストが感光されてパターニングが行われる。パターニングは、通常の等倍紫外線露光や縮小紫外線露光などにより行われる。このようにして、可動ゲート電極用のマスクが形成される。そしてマスクで覆われている箇所を除いて、エッチングにより除去されて、可動ゲート電極15の形状に加工される。そして、このマスクは、プラズマアッシング装置によりアッシング除去され、可動ゲート電極15が形成される。
【0056】
そして、図5(j),図6(j)に示すように、犠牲層27が除去される(犠牲層除去工程図)である。有機材料の犠牲層は、プラズマエッチングにより短時間に除去される。本形態では、ガスとしてOとHOガスとを適用した表面弾性波プラズマエッチングを適用した。なお、通常のOガスを用いたプラズマエッチング、CFやSF等のフッ素系ガス単体を用いたプラズマエッチング、または、フッ素系ガスにOを混合した混合ガスを用いたプラズマエッチングも適用できる。さらに、ケミカルドライエッチング(CDE)などの手法も適用可能である。これらの手法は、エッチング速度、他材質とのエッチング選択比を考慮して選択すれば良い。
【0057】
その後水素アニール工程で歪みの影響除去等を行い、可動ゲート型電界効果トランジスタ1とする。
以上、本発明の可動ゲート型電界効果トランジスタ1についての説明がなされた。
【0058】
特に図2からも明らかなように、複数(本形態で2本)のソース歯部17aと複数(本形態で2本)のドレイン歯部18aを形成することで、可動ゲート電極15の電極幅以上のチャネル幅を実現している。このため、可動ゲート電極15のα方向(図1(d)参照)の変位に対して、従来技術と比較しても大きなドレイン電流を得ることができる。
【0059】
また、櫛歯状のドレイン電極18のドレイン根元部18bやソース電極17のソース根元部17bの幅を広くすることで、抵抗の低減を実現している。この点でも可動ゲート電極15の変位に対して、従来技術と比較して、大きなドレイン電流を得ることができる。
【0060】
本形態ではこれら効果が相乗的に相俟って大きな電流変化を実現する可動ゲート型電界効果トランジスタ1とすることができる。
続いて、先に説明した可動ゲート型電界効果トランジスタ1を改良した形態について説明する。まず、可動ゲート型電界効果トランジスタ2の構成について図を参照しつつ説明する。図7は可動ゲート型電界効果トランジスタの構造図であり、図7(a)は可動ゲート電極を取り去った平面図、図5(b)はD−D線断面図、図7(c)はE−E線断面図である。
【0061】
可動ゲート型電界効果トランジスタ2は、半導体基板11、ゲート酸化膜12、ソース側接続部13、ドレイン側接続部14、可動ゲート電極15、空間部(gategap)16、ソース電極17、ドレイン電極18、チャネル形成領域19を備える。
【0062】
先に図1〜図3を用いて説明した可動ゲート型電界効果トランジスタ1と比較すると、先の形態では図1で示すように導電シールド電極20がソース電極17とドレイン電極18の上にそれぞれ形成されていたのに対し、本形態では図7で示すように導電シールド電極20がソース電極17およびドレイン電極18とその周囲を囲むように一体に形成されている点が相違する。
【0063】
また、先の形態では図2(a)で示すように導電シールド電極20の引出部20a、20bがソース側接続部13およびドレイン側接続部14の近くから引き出されていたのに対し、本形態では図7(a)で示すようにソース側接続部13およびドレイン側接続部14から離れた位置で引き出されている点が相違する。もちろん、図1で示した形態と同様に引出部20a,20bを配置してもよい。
【0064】
なお、他の構成は先の説明と同じであり、同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。また、製造方法も、図5,図6を用いて説明した製造方法に対し、導電シールド電極20を形成するマスク形状を変更するのみであって他は同じであるため、重複する説明を省略する。
【0065】
以上、本発明の可動ゲート型電界効果トランジスタ2についての説明がなされた。
可動ゲート型電界効果トランジスタ2は、図1〜図3に示した可動ゲート型電界効果トランジスタ1と同様の効果を得ることができる。また、導電シールド電極20をチャネル形成領域19以外の領域を大きくカバーするように形成しているため、可動ゲート型電界効果トランジスタ1に比べ寄生容量を介した静電力を低減することができる。また、導電シールド電極20が簡単な形状になることによって、エッチング異常などの加工不具合の発生確率を低減させることができ、高歩留まりで製造することができる。
【0066】
続いて、他の形態の可動ゲート型電界効果トランジスタ3について図を参照しつつ説明する。まず、可動ゲート型電界効果トランジスタ3の構成について図を参照しつつ説明する。
【0067】
図8は可動ゲート型電界効果トランジスタの構造図であり、図8(a)は可動ゲート電極を取り去った平面図、図8(b)は図8(a)のF−F線断面図、図8(c)は図8(a)のG−G線断面図である。図9は可動ゲート型電界効果トランジスタの構造図であり、図9(a)はゲート酸化膜、導電シールド電極および可動ゲート電極を取り去った内部構造図、図9(b)は図9(a)のF−F線断面図である。
【0068】
可動ゲート型電界効果トランジスタ3は、半導体基板11、ゲート酸化膜12、ソース側接続部13、ドレイン側接続部14、可動ゲート電極15、空間部(gategap)16、ソース電極17、ドレイン電極18、チャネル形成領域19、導電シールド電極20を備える。先に図1〜図3を用いて説明した可動ゲート型電界効果トランジスタ1と比較すると、先の形態では図2(a)で示すように複数のソース電極17や複数のドレイン電極18を平行に、かつ交互に配置した構成であるのに対し、本形態では図8,図9で示すように、半導体基板11上において、ソース電極17とドレイン電極18を一本の細長形状の電極から構成する点が相違する。
【0069】
そして、本形態でも図9(a)で示すように導電シールド電極20の引出部20a,20bが可動ゲート電極15の開放部15bから引き出されている。
なお、他の構成は先の説明と同じであり、同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。また、製造方法も、図5,図6を用いて説明した製造方法に対し、ソース電極17,ドレイン電極18,導電シールド電極20などを形成するマスク形状を変更するのみであって他は同じであるため、重複する説明を省略する。
【0070】
以上、本発明の可動ゲート型電界効果トランジスタ3についての説明がなされた。
可動ゲート型電界効果トランジスタ3は、ているため、可動ゲート型電界効果トランジスタ1と同様に導電シールド電極20を設けることによる効果を得ることができる。
【0071】
続いて、他の形態の可動ゲート型電界効果トランジスタ4について説明する。まず、可動ゲート型電界効果トランジスタ4の構成について図を参照しつつ説明する。図10は可動ゲート型電界効果トランジスタの構造図であり、図10(a)はゲート酸化膜および可動ゲートを取り去った内部構造図、図10(b)はH−H線断面図であり、図10(c)はソース側接続部およびドレイン側接続部に接続されるソース配線部およびドレイン配線部がソース電極およびドレイン電極上に配置された場合のH−H線断面図である。
【0072】
図10(b)で示す可動ゲート型電界効果トランジスタ4は、半導体基板11、ゲート酸化膜12、ソース側接続部13、ドレイン側接続部14、可動ゲート電極15、空間部(gategap)16、チャネル形成領域19を備える。先に図1を用いて説明した可動ゲート型電界効果トランジスタ1と比較すると、ソース電極17がソース溝41を備え、このソース溝41内にソース配線部42を配置している点、ドレイン電極18がドレイン溝43を備え、このドレイン溝43内にドレイン配線部44が延在している点が相違する。
【0073】
ソース配線部42は、複数のソース配線歯部42aとこれらソース配線歯部42aと垂直に接続されるソース配線根元部42bとからなる櫛歯状の配線部を含んでいる。
ドレイン配線部44は、複数のドレイン配線歯部44aとこれらドレイン配線歯部44aと垂直に接続されるドレイン配線根元部44bとからなる櫛歯状の配線部を含んでいる。
【0074】
ソース配線部42やドレイン配線部44は不純物がドープされたポリシリコンやタングステンを材料としている。このような構成によれば、ゲート酸化膜12内に配線部がないため、空間部16を拡げている。これによって可動幅が制限されていた可動ゲート電極15の上下可動範囲が拡大される。
【0075】
そして、本形態でも図10(a)で示すようにソース配線部42やドレイン配線部44が可動ゲート電極15の開放部15bから引き出されている。
なお、他の構成は先の説明と同じであり、同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0076】
続いて製造方法について説明する。
まず、周知技術のnチャネルMOSFETの製造工程を用いて、フィールド酸化膜形成、ゲート酸化膜形成を行う。
【0077】
続いてフォトリソグラフィ技術を用いて、レジストマスク形成後、ゲート酸化膜をCF系ガスで異方性エッチングする。続いて、シリコン製の半導体基板11をCF系またはHBr系ガスにより異方性ドライエッチングし、深さ0.5umのソース溝41,ドレイン溝43を形成する。
【0078】
続いて表面において1×1019〜1×1020〔atoms/cm〕程度のドープ濃度となるようにリンイオンを注入し、ソース溝41,ドレイン溝43内にドレイン/ソース領域に用いるn注入層を形成し、ソース電極17、ドレイン電極18を形成する。
【0079】
続いて、全面にノンドープのポリシリコン層を付着し、ボロンを高濃度に注入・拡散して高導電率化を図る。このとき、ドーピング源として、POCl3を用いて、ポリシリコン内にリンをドープし、上記ドーピングの後、熱処理により活性化してn型の高濃度ドープポリシリコンを形成する。このとき、熱処理を行う場合のアニール条件を調整して、熱拡散によるリンの拡散する領域を制御し、ソース溝41,ドレイン溝43の底に近い領域まで形成することが好ましい。また、このとき周知の方法でドープされたポリシリコン層を付着させてもよい。
【0080】
続いて、全面に付着したポリシリコン層をマスクなしでCF系またはHBr系ガスでドライエッチすることで、ソース溝41,ドレイン溝43に埋設されたソース配線部42およびドレイン配線部44を形成する。
【0081】
続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、感光性ポリイミドをパターニングした後、350℃の熱処理を実施することで、犠牲層形成を行った。感光性ポリイミドの熱処理後の膜厚は500nmになるよう塗布条件を調整した。
【0082】
続いて、可動ゲートを形成するための材料を成膜する。今回の例では、ポリシリコンを膜厚1μmで形成した。なお、可動ゲートの材質としては、導電性を有する材料であれば適用でき、単一金属ではMOS−FET工程との整合をとる場合にはAlを用いることができ、また、Alの他にAu、Ni、Cu、W、Ti、Poly−Siなども適用できる。さらにまた、金属シリサイドなどの合金も適用可能である。また、SiO、SiNなどの無機絶縁材料なども適用できるが、絶縁材料の場合はゲート電極として機能させるために、なんらかの方法で導電性を付与する必要がある。
【0083】
次に、可動ゲートおよび配線を形成するために、フォトレジストをパターニングする。なお、図示は省略するが、配線は、前述したソース、ドレイン上に形成したコンタクトホール上まで形成される。
【0084】
次にドライエッチング技術を用いてポリシリコンを所望の形状に加工し、可動ゲートと配線を形成する。加工方法としては、リアクティブ・イオン・エッチング(RIE)が望ましいが、イオンビームエッチングなどの手法や形状精度によっては湿式エッチングも適用可能である。また、他の材料を可動ゲートに適用した場合には、それぞれの材質によって加工方法を選択する必要がある。そのとき、他材質との選択性や加工精度、加工速度などを考慮して選択すれば良い。
【0085】
次にフォトレジストをプラズマアッシングで除去することで所望の形状が得られる。
次に、ポリイミドで形成された犠牲層を除去する。
除去方法として、ガスとしてOとHOガスを適用した表面弾性波プラズマエッチングを用いた。除去方法としては、通常のOガスを用いたプラズマエッチングやCFやSFなどのフッ素系ガス単体や、フッ素系ガスにOを混合した混合ガスを用いたプラズマエッチングも適用できる。また、ケミカルドライエッチング(CDE)などの手法も適用可能である。これらの手法は、エッチング速度、他材質との選択比を考慮して選択すれば良い。
【0086】
以上、図10(b)に示したソース溝41およびドレイン溝43を形成する場合について説明したが、ソース溝41およびドレイン溝43を形成しない場合を図10(c)に示している。図10(c)では、ソース側接続部13に接続されるソース配線部42が、ソース電極17上に、ソース電極17と同様に櫛歯状の平面形状で配置されている。ソース配線部42はシリコン酸化膜12aの開口部を介してソース電極17と接続されている。
【0087】
ドレイン配線部44も同様に、ドレイン電極18上に、ドレイン電極18と同様に櫛歯状の平面形状で配置されている。ドレイン配線部44は、シリコン酸化膜12aの開口部を介してドレイン電極18と接続されている。図10(c)では、ソース配線部42およびドレイン配線部44は、不純物がドープされたポリシリコンやタングステンなどの導電性材料で形成される。
【0088】
以上、本発明の可動ゲート型電界効果トランジスタ4についての説明がなされた。
特に図10からも明らかなように、ソース配線部42が配置され、また、ドレイン配線部44が配置される構成を採用したため、ソース電極17やドレイン電極18への接触面を多くして配線抵抗を少なくし、ドレイン電流を効率的に流すことができる。そして、図10(b)では、ソース配線部42がソース溝41内に配置され、また、ドレイン配線部44がドレイン溝43内に配置される構成を採用したため、ゲート酸化膜12内にソース配線部やドレイン配線部を配置しないため、ゲート酸化膜12を薄く形成することができる。
【0089】
続いて、先に説明した可動ゲート型電界効果トランジスタ4を変形した形態について説明する。まず、可動ゲート型電界効果トランジスタ4’の構成について図を参照しつつ説明する。図11は可動ゲート型電界効果トランジスタのゲート酸化膜および可動ゲートを取り去った内部構造図であり、図11(a)は平面図であり、図11(b)は、図11(a)のI−I線断面図である。
【0090】
先に図10を用いて説明した可動ゲート型電界効果トランジスタ4では、可動ゲート電極15の長手方向(β方向)とソース歯部17aの長手方向(β方向)とが平行に配置され、かつ、可動ゲート電極15の長手方向(β方向)とドレイン歯部18aの長手方向(β方向)とが平行に配置されるものであった。しかしながら、このような形態に限定されるものではなく、図11で示すように、可動ゲート電極15の長手方向(β方向)とソース歯部17aの長手方向(γ方向)とが直交するように配置され、かつ、可動ゲート電極15の長手方向(β方向)とドレイン歯部18aの長手方向(γ方向)とが直交するように配置されるようにした。
【0091】
このように、可動ゲート電極15の長手方向に対し、ソース歯部17aの長手方向およびドレイン歯部18aの長手方向が平行に配置されるときに加え、ソース歯部17aの長手方向とドレイン歯部18aの長手方向とが垂直に配置されるときも、ソース電極17とドレイン電極18とが多く配置され、チャネル幅を長くすることができる。
【0092】
なお、他の構成は先の説明と同じであり、同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。また、製造方法も、可動ゲート型電界効果トランジスタ4で説明した製造方法に対し、ソース溝41,ドレイン溝43、ソース電極17,ドレイン電極18,ソース配線部42,ドレイン配線部44を形成するマスク形状を変更するのみであって他は同じであるため、重複する説明を省略する。
【0093】
また、本形態では、ソース溝41,ドレイン溝43,ソース配線部42,ドレイン配線部44を備えるものであるが、図1、図7および図10(c)の構成においても、可動ゲート電極15の長手方向(β方向)とソース歯部17aの長手方向(γ方向)とが直交するように配置され、かつ、可動ゲート電極15の長手方向(β方向)とドレイン歯部18aの長手方向(γ方向)とが直交するように配置されるようにすることができる。
【0094】
以上、本発明の可動ゲート型電界効果トランジスタ4’についての説明がなされた。
続いて、他の形態の可動ゲート型電界効果トランジスタ5について説明する。まず、可動ゲート型電界効果トランジスタ5の構成について図を参照しつつ説明する。図12は可動ゲート型電界効果トランジスタのゲート酸化膜および可動ゲート電極を取り去った内部構造図であり、図12(a)は、平面図であり、図12(b)は、図12(a)のJ−J線断面図である。
【0095】
可動ゲート型電界効果トランジスタ5は、図11で示すように、半導体基板11、ゲート酸化膜12、ソース側接続部13、ドレイン側接続部14、可動ゲート電極15、空間部(gategap)16、ソース電極17、ドレイン電極18、ソース配線部42、ドレイン配線部44、チャネル形成領域19を備える。
【0096】
先に図11を用いて説明した可動ゲート型電界効果トランジスタ4’と比較すると、先の形態では図11(a)で示すように、半導体基板11上において、ソース電極17とドレイン電極18が櫛歯状の電極を含むように構成するのに対し、本形態では図12で示すように、半導体基板11上において、ソース電極17とドレイン電極18が複数並行に形成されたストライプ状の電極からなるように構成する点が相違する。
【0097】
なお、他の構成は先の説明と同じであり、同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。また、製造方法も、先に可動ゲート型電界効果トランジスタ4で説明した製造方法に対し、ソース電極17,ドレイン電極18,ソース配線部42,ドレイン配線部44,ソース溝41,ドレイン溝43を形成するマスク形状を変更するのみであって他は同じであるため、重複する説明を省略する。
【0098】
以上、本発明の可動ゲート型電界効果トランジスタ5についての説明がなされた。
また、本形態では、ソース溝41,ドレイン溝43を備えるものであるが、図10(c)のようにソース溝41,ドレイン溝43を備えない構成においても、可動ゲート電極15の長手方向(β方向)とソース歯部17aの長手方向(γ方向)とが直交するように配置され、かつ、可動ゲート電極15の長手方向(β方向)とドレイン歯部18aの長手方向(γ方向)とが直交するように配置し、さらに、ソース電極17およびドレイン電極18を複数平行に配置されるようにすることができる。
【0099】
以上の形態では、導電シールド電極20の電圧をドレインゲート間電圧と同電圧としたが、それに限らない。ドレイン電圧とゲート電圧の間の電圧に保持しても、静電力低減の効果は得ることができる。
【0100】
さらに、導電シールド電極20と可動ゲート電極15との間の電圧をドレインゲート間電圧またはソースゲート間電圧より大きくなるように保持することで、意図的にスティクションするゲート電圧をより低くすることや、可変することができ、加速度センサーのダイナミックレンジ調整などに有効である。
【0101】
また、以上の形態では導電シールド電極20をドレイン電極18とソース電極17両方に設置したが、どちらか一方であっても効果は得られ、必要な特性に応じて選択してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は可動ゲート型電界効果トランジスタに適用される。さらに可動ゲート型電界効果トランジスタを含む半導体加速度センサなど、幅広い分野に適用される。
【符号の説明】
【0103】
1,2,3,4,5:可動ゲート型電界効果トランジスタ
11:半導体基板
12:ゲート酸化膜
12a,12b:シリコン酸化膜
13:ソース側接続部
14:ドレイン側接続部
15:可動ゲート電極
15a:支持部
15b:開放部
16:空間部(gategap)
17:ソース電極
17a:ソース歯部
17b:ソース根元部
17c:ソース引出電極
18:ドレイン電極
18a:ドレイン歯部
18b:ドレイン根元部
18c:ドレイン引出電極
19:チャネル形成領域
20:導電シールド電極
20a,20b:引出部
22:熱酸化膜
24:マスク
27:犠牲層
41:ソース溝
42:ソース配線部
42a:ソース配線歯部
42b:ソース配線根元部
43:ドレイン溝
44:ドレイン配線部
44a:ドレイン配線歯部
44b:ドレイン配線根元部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面層に形成されたソース電極およびドレイン電極と、
前記半導体基板の表面層であって、前記ドレイン電極とソース電極との間のチャネル形成領域と、
前記ソース電極上、前記ドレイン電極上および前記チャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ソース電極または前記ドレイン電極の少なくとも一方の上方に配置され、前記ゲート絶縁膜内に形成された導電シールド電極と、
前記チャネル形成領域の上方に配置され、前記ゲート絶縁膜に対して空間部を挟んで空中に設けられる梁構造の可動ゲート電極と、
を備える可動ゲート型電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記ソース電極は、直線状の複数のソース歯部と、これらソース歯部が垂直に接続されるソース根元部とからなる櫛歯状の電極を含み、
前記ドレイン電極は、直線状の複数のドレイン歯部と、これらドレイン歯部とそれぞれ垂直に接続されるドレイン根元部とからなる櫛歯状の電極を含み、
前記複数のソース歯部と前記複数のドレイン歯部とが略平行であって交互に配置され、
前記可動ゲート電極は、前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記チャネル形成領域を覆うように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の可動ゲート型電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記ソース電極に電気的に接続されるソース配線部と、前記ドレイン電極に電気的に接続されるドレイン配線部とを備えることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の可動ゲート型電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記ソース配線部は、直線状の複数のソース配線歯部と、これらソース配線歯部が垂直に接続されるソース配線根元部とからなる櫛歯状の配線部を含み、前記櫛歯状のソース電極に重ねて配置されるように前記ゲート絶縁膜内に前記導電シールド電極と間隔を有して設けられ、
前記ドレイン配線部は、直線状の複数のドレイン配線歯部と、これらドレイン配線歯部が垂直に接続されるドレイン配線根元部とからなる櫛歯状の配線部を含み、前記櫛歯状のドレイン電極に重ねて配置されるように前記ゲート絶縁膜内に前記導電シールド電極と間隔を有して設けられていることを特徴とする請求項3に記載の可動ゲート型電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記ソース電極に前記半導体基板表面から形成されたソース溝を備え、前記ソース溝内に前記ソース配線部を配置し、
前記ドレイン電極に前記半導体基板表面から形成されたドレイン溝を備え、前記ドレイン溝内に前記ドレイン配線部を配置することを特徴とする請求項3または4に記載の可動ゲート型電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記導電シールド電極と前記可動ゲート電極とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の可動ゲート型電界効果型トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−198916(P2011−198916A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62410(P2010−62410)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】