説明

車両及び車両の制御方法

【課題】インバータ回路を三相短絡状態にした場合において、機器類の疲労の蓄積を抑制する。
【解決手段】ハイブリッド自動車20において、相短絡異常が生じたインバータ43を三相短絡状態にしている場合、モータMG3のコイル温度tmに基づいて後車軸69a,69bとモータMG3との共振による振動が発生する共振発生車速領域の下限値である閾値Vref1,上限値である閾値Vref2を設定し、車速センサ88が検出した車速が設定した共振発生車速領域に入るときにはダメージカウンタCに値1を加算する。そして、ダメージカウンタCが閾値Crefより大きいと判定されたときは、モータMG3などのリヤ側機器類がこれ以上振動による疲労を蓄積すべきでない状態であるとみなして、車速Vが閾値Vref1以上にならないよう要求トルクを制限し、制限後の要求トルクで走行するようエンジン22及びモータMG1,MG2を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両及び車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関と蓄電池からの電力を交流に変換するインバータ等によって駆動する発電電動機とを備え、内燃機関及び発電電動機の双方を走行用駆動源として併用するハイブリッド車が提案されている。このようなハイブリッド車において、インバータの一相に短絡故障が発生すると、発電電動機が回転することで発生する逆起電力によって、短絡したインバータ回路に過大な短絡電流が発生する場合がある。この短絡電流は、発電電動機のコイルなどの回路の温度上昇を引き起こすため、インバータ回路を三相とも短絡することで短絡電流を抑制するハイブリッド車が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−331683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、インバータを三相とも短絡すると、電動機の回転数によっては短絡電流による不安定なトルクが発生して車軸と電動機との共振による振動が起きる場合がある。この振動が起きると電動機や電動機に接続されたギヤ機構などの機器類に過大なトルクが入力され、時間の経過とともに機器類の疲労が蓄積してしまう。
【0004】
そこで、本発明の車両及び車両の制御方法は、インバータ回路を三相短絡状態にした場合において、機器類の疲労の蓄積を適切に抑制して機器類を保護しつつ走行することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両及び車両の制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の車両は、
第1の車軸に接続され、該第1の車軸に動力を入出力可能な第1の電動機を備える機器類と、
第2の車軸に接続され、該第2の車軸に動力を出力可能な動力出力装置と、
前記第1の電動機を駆動するためのインバータ回路と、
前記インバータ回路を介して前記第1の電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、
前記インバータ回路の一部の相が短絡する相短絡異常を検出する相短絡異常検出手段と、
前記相短絡異常検出手段が相短絡異常を検出したときには、前記インバータ回路を三相短絡状態にするインバータ制御手段と、
前記インバータ制御手段が前記インバータ回路を三相短絡状態にしている場合において、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振による振動が発生する所定の走行条件が成立した状態での走行時間を積算した総走行時間が所定の時間領域に入るか否かによって前記機器類が所定の疲労状態に達したか否かを判定し、該所定の疲労状態に達したと判定したときには、前記所定の走行条件が成立しない範囲内で走行するよう前記動力出力装置を制御する動力出力装置制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
本発明の車両では、インバータ回路を三相短絡状態にしている場合において、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生する所定の走行条件が成立した状態での走行時間を積算した総走行時間が所定の時間領域に入るか否かによって機器類が所定の疲労状態に達したか否かを判定し、所定の疲労状態に達したと判定したときには、所定の走行条件が成立しない範囲内で走行するよう動力出力装置を制御する。ここで、インバータ回路を三相短絡状態にしている場合において、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生しているか否かは、所定の走行条件が成立しているか否かによって推定することができる。また、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生している時間が長いほど、機器類の疲労は蓄積されていく。そのため、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生する所定の走行条件が成立した状態での走行時間を積算した総走行時間が所定の時間領域に入るか否かによって機器類が所定の疲労状態に達したか否かを判定するようにしている。そして、機器類が所定の疲労状態に達したと判定されたときには、所定の走行条件が成立しない範囲内で走行するため、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生しない状態で走行することができる。これにより、機器類の疲労が蓄積するのを適切に抑制して機器類を保護しつつ走行することができる。
【0008】
なお、機器類とは、第1の電動機だけでなく、例えばデファレンシャルギヤなど、第1の電動機や第1の車軸に接続される機器を含む意である。また、走行時間とは、走行時間そのもののほか、走行時間とみなすことのできる値を含む意である。さらに、総走行時間とは、連続して所定の走行条件が成立した場合における走行時間の積算値だけでなく、間欠的に所定の走行条件が成立したときの走行時間の積算値を含む意である。さらにまた、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動とは、インバータ回路を三相短絡状態にしたことで第1の電動機から発生するトルク脈動により第1の車軸と第1の電動機とが共振し、第1の車軸及び第1の電動機の回転数が振動する現象である。
【0009】
こうした本発明の車両において、車速を検出する車速検出手段を備え、前記動力出力装置制御手段は、前記所定の走行条件が成立した状態での走行か否かを判定するにあたり、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振による振動が発生する所定の車速領域に前記検出された車速が入るか否かを判定する手段であるものとすることもできる。第1の車軸と第1の電動機との共振による振動は、車速が所定の車速領域に含まれる場合に発生することが多い。そのため、車速が所定の車速領域に含まれるか否かを判定することで、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生しているか否かをより適切に推定できる。
【0010】
また、所定の走行条件が成立した状態での走行か否かを判定するにあたり所定の車速領域に検出された車速が入るか否かを判定する態様の本発明の車両において、前記第1の電動機の温度を検出する温度検出手段を備え、前記動力出力装置制御手段は、前記所定の車速領域に前記検出された車速が入るか否かを判定するにあたり、前記検出された温度が低いほど該所定の車速領域の下限が低下する傾向に該所定の車速領域を設定し該設定した所定の車速領域に前記検出された車速が入るか否かを判定する手段であるものとすることもできる。第1の電動機の温度によって短絡電流の大きさは変化するため、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生する車速領域も温度によって変化し、その車速領域の下限は電動機の温度が低いほど低下する。そのため、所定の車速領域の下限を第1の電動機の温度が低いほど低くなる傾向に設定することで、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生しているか否かをより適切に推定できる。
【0011】
さらに、所定の走行条件が成立した状態での走行か否かを判定するにあたり所定の車速領域に検出された車速が入るか否かを判定する態様の本発明の車両において、前記動力出力装置制御手段は、前記所定の走行条件が成立した状態での走行か否かを判定するにあたり、前記車両が加速中か減速中かによって異なる所定の車速領域を設定し、該設定した所定の車速領域に前記検出された車速が入るか否かを判定する手段であるものとしてもよい。第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生する車速領域は、車両が加速中であるときと減速中であるときとで異なる場合が多い。そのため、加速中か減速中かによって異なる所定の車速領域を設定し、設定した所定の車速領域に車速が含まれるか否かを判定することで、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生しているか否かをより適切に推定できる。
【0012】
また、本発明の車両において、前記第1の車軸の回転数を検出する第1回転数検出手段を備え、前記動力出力装置制御手段は、前記所定の走行条件が成立した状態での走行か否かを判定するにあたり、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振による振動が発生したとみなされる所定の振幅領域に前記検出された第1の車軸の回転数の振幅が入るか否かを判定する手段であるものとすることもできる。第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生しているときには、第1の車軸の回転数が振動する。そのため、第1の車軸の回転数の振幅が所定値以上であるか否かに基づくことで、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生しているか否かをより適切に推定できる。
【0013】
さらに、本発明の車両において、前記第1の車軸の回転数を検出する第1回転数検出手段と、前記第2の車軸の回転数を検出する第2回転数検出手段と、を備え、前記動力出力装置制御手段は、前記所定の走行条件が成立した状態での走行か否かを判定するにあたり、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振による振動が発生したとみなされる所定の数値領域に前記検出された第1の車軸の回転数の振幅と前記検出された第2の車軸の回転数の振幅との差が入るか否かを判定する手段であるものとすることもできる。第1の車軸には、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動以外の振動が発生している場合もあるが、共振による振動以外の振動であれば第2の車軸にも同じ振動が発生していることが多い。そのため、第1の車軸の回転数の振幅と第2の車軸の回転数の振幅との差をとることで、第1の車軸と第1の電動機との共振のみによる振幅を推定することができる。したがって、その差が所定値以上であるか否かに基づくことで、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生しているか否かをより適切に推定できる。
【0014】
加えて、本発明の車両において、前記動力出力装置制御手段は、前記走行時間を積算するにあたり、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振の振幅が大きいほど大きな傾向にある重みを前記走行時間に付けて該重みを付けたあとの走行時間を積算する手段であるものとすることもできる。第1の車軸と第1の電動機との共振の振幅が大きいほど、機器類の疲労は早く蓄積される。そのため、共振の振幅が大きいほど大きくなる傾向に重み付けされたあとの走行時間を積算することで、機器類が所定の疲労状態に達したか否かをより適切に判定できる。
【0015】
また、所定の走行条件が成立した状態での走行か否かを判定するにあたり所定の車速領域に検出された車速が入るか否かを判定する態様の本発明の車両において、前記動力出力装置制御手段は、前記走行時間を積算するにあたり、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振の振幅が大きくなる車速で走行しているときほど大きな傾向にある重みを前記走行時間に付けて該重みを付けたあとの走行時間を積算する手段であるものとすることもできる。第1の車軸と第1の電動機との共振の振幅は車速によって異なることが多い。そのため共振の振幅が大きくなるような車速で走行しているときほど大きくなる傾向に重み付けされたあとの走行時間を積算することで、機器類が所定の疲労状態に達したか否かをより適切に判定できる。
【0016】
本発明の車両において、前記動力出力装置は、内燃機関と、前記第2の車軸に動力を入出力可能な第2の電動機と、発電機と、前記内燃機関の出力軸と前記第2の車軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える装置であり、前記蓄電手段は、前記第2の電動機及び前記発電機とも電力のやり取りが可能な手段であるものとすることもできる。
【0017】
本発明の車両の制御方法は、
第1の車軸に接続され、該第1の車軸に動力を入出力可能な第1の電動機を備える機器類と、第2の車軸に接続され、該第2の車軸に動力を出力可能な動力出力装置と、前記第1の電動機を駆動するためのインバータ回路と、前記インバータ回路を介して前記第1の電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、前記インバータ回路の一部の相が短絡する相短絡異常を検出する相短絡異常検出手段と、を備える車両の制御方法であって、
(a)前記相短絡異常検出手段が前記インバータ回路の一部の相が短絡する短絡異常を検出したときには、前記インバータ回路を三相短絡状態にするステップと、
(b)前記ステップ(a)で前記インバータ回路が三相短絡状態である場合に、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振による振動が発生する所定の走行条件が成立した状態での走行時間を積算した総走行時間が所定の時間領域に入るか否かによって前記機器類が所定の疲労状態に達した否かを判定するステップと、
(c)前記ステップ(b)で前記機器類が所定の疲労状態に達したと判定されたときには、前記所定の走行条件が成立しない範囲内で走行するよう前記動力出力装置を制御するステップと、
を含むことを要旨とする。
【0018】
本発明の車両の制御方法では、インバータ回路を三相短絡状態にしている場合において、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生する所定の走行条件が成立した状態での走行時間を積算した総走行時間が所定の時間領域に入るか否かによって機器類が所定の疲労状態に達したか否かを判定し、所定の疲労状態に達したと判定したときには、所定の走行条件が成立しない範囲内で走行するよう動力出力装置を制御する。ここで、インバータ回路を三相短絡状態にしている場合において、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生しているか否かは、所定の走行条件が成立しているか否かによって推定することができる。また、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生している時間が長いほど、機器類の疲労は蓄積されていく。そのため、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生する所定の走行条件が成立した状態での走行時間を積算した総走行時間所定の時間領域に入るか否かによって機器類が所定の疲労状態に達したか否かを判定するようにしている。そして、機器類が所定の疲労状態に達したと判定されたときには、所定の走行条件が成立しない範囲内で走行するため、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生しない状態で走行することができる。これにより、機器類の疲労が蓄積するのを適切に抑制して機器類を保護しつつ走行することができる。なお、この車両の制御方法は、上述したいずれかの車両の機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施例に係るハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30とギヤ機構60及びデファレンシャルギヤ61を介して前輪62a,62bの前車軸63a,63bとに接続された前駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して接続されたモータMG2と、デファレンシャルギヤ67を介して後輪68a,68bの後車軸69a,69bに接続された後駆動軸66にギヤ機構65を介して動力を出力する発電可能なモータMG3と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(以下、ハイブリッドECUという)70と、モータMG1,MG2を駆動制御するフロントモータ用電子制御ユニット(以下、フロントモータECUという)40と、モータMG3を駆動制御するリヤモータ用電子制御ユニット(以下、リヤモータECUという)47とを備える。
【0021】
エンジン22は、ガソリン又は軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。
【0022】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリヤ34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリヤ34とを回転要素として差動作用を行う遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリヤ34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリヤ34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリヤ34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60,デファレンシャルギヤ61及び前車軸63a,63bを介して、最終的には前輪62a,62bに出力される。
【0023】
モータMG1,MG2,MG3は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42,43を介してバッテリ50と電力のやりとりを行う。図2に、インバータ43の構成の概略を示す構成図を示す。なお、インバータ41,42,43は、いずれも同様の構成であるため、インバータ41,42については図示を省略する。インバータ43は、図示するように、6個のスイッチング素子43a〜43f(例えばIGBTなど)から構成される三相ブリッジ回路により直流電流と三相交流電流との変換を行ったり、供給する電力の電圧の変換を行ったりする電力変換器である。このインバータ43は、バッテリ50からの直流電力を三相交流電力に変換してモータMG3に供給可能であり、モータMG3からの三相交流電力を整流してバッテリ50へ供給可能となっている。インバータ41,42,43とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42,43が共用する正極母線及び負極母線として構成されており、モータMG1,MG2,MG3のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2,MG3のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2,MG3により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。
【0024】
モータMG1,MG2は、フロントモータECU40により駆動制御されている。フロントモータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ44,45からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、フロントモータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号などが出力されている。フロントモータECU40は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。なお、フロントモータECU40は回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0025】
モータMG3は、リヤモータECU47により駆動制御されている。リヤモータECU47は、CPU47aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU47aの他に処理プログラムを記憶するROM47bと、データを一時的に記憶するRAM47cと、図示しない入出力ポート及び通信ポートとを備える。リヤモータECU47には、モータMG3を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG3の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ46からの信号やモータMG3のコイル温度tmを検出する温度センサ48や図示しない電流センサにより検出されるモータMG3に印加される相電流などが入力されており、リヤモータECU47からは、インバータ43へのスイッチング制御信号などが出力されている。リヤモータECU47は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号によってモータMG3を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG3の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。なお、リヤモータECU47は回転位置検出センサ46からの信号に基づいてモータMG3の回転数Nm3も演算している。
【0026】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度などが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
【0027】
ハイブリッドECU70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポート及び通信ポートとを備える。ハイブリッドECU70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッドECU70は、前述したように、エンジンECU24やフロントモータECU40,リヤモータECU47,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やフロントモータECU40,リヤモータECU47,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行っている。
【0028】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両から出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とモータMG3とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2とモータMG3との運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2及びモータMG3の一方又は両方とによってトルク変換されて出力されるようモータMG1,MG2,MG3を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部又はその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2及びモータMG3の一方又は両方とによるトルク変換を伴って要求動力が出力されるようモータMG1,MG2,MG3を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2及びモータMG3の一方又は両方から要求動力に見合う動力が出力されるよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0029】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にインバータ43の一部の相が短絡する相短絡異常が生じた際の動作について説明する。図3及び図4はリヤモータECU47によって実行される相短絡異常検出ルーチン及び疲労判定ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図5はハイブリッドECU70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。まず、図3の相短絡異常検出ルーチンを用いてインバータ43の相短絡異常の検出及びインバータ43の三相短絡制御について説明し、次に、図4の疲労判定ルーチンを用いて三相短絡状態におけるモータMG3の疲労の程度の判定について説明し、その後、図5の駆動制御ルーチンを用いて三相短絡状態におけるモータMG3の疲労の程度を考慮して走行する際の制御について説明する。
【0030】
図3の相短絡異常検出ルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。このルーチンが実行されると、リヤモータECU47は、まず、図示しない電流センサが検出するモータMG3に印加される相電流とインバータ43へのスイッチング制御信号とを比較して、相短絡異常が発生しているか否かを判定する(ステップS100)。ここで、相短絡異常とは、インバータ43の一部の相が短絡する異常であり、インバータ43のスイッチング素子43a〜43fの1つ以上がオン固定するような状態である。この相短絡異常が発生しているか否かは、インバータ43へのスイッチング制御信号をオフとしているにも関わらずモータMG3に電流が流れ続けている相があるか否かや、通常より大きい電流が流れている相があるか否かによって判定することができる。そして、ステップS100で相短絡異常が発生していると判定された場合には、スイッチング素子43a〜43cからなる素子群と43d〜43fからなる素子群とのうち、異常があるスイッチング素子が含まれる側のスイッチング素子群を三相ともオンにして(ステップS110)本ルーチンを終了し、相短絡異常が発生していないと判定された場合にはそのまま本ルーチンを終了する。例えば、スイッチング素子43eに相短絡異常が発生していると判定された場合には、スイッチング素子43d〜43fをオンにする。こうしたステップS110の処理によって、インバータ43の回路が三相短絡状態になる。このようにするのは、モータMG3の回転に伴う逆起電力によってインバータ43に生じる相電流を一相短絡状態又は二相短絡状態に比して全体として小さくするためである。
【0031】
次に、図4の疲労判定ルーチンについて説明する。このルーチンは、上述の相短絡異常検出ルーチンで相短絡異常が検出され、インバータ43の回路を三相短絡状態にしているときに、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0032】
図4の疲労判定ルーチンが実行されると、リヤモータECUは、まず、ハイブリッド自動車20の車速V,モータMG3のコイル温度tmを入力する処理を実行する(ステップS200)。ここで、車速Vは、車速センサ88により検出される車速VをハイブリッドECU70を介して通信により入力するものとした。次に、入力したコイル温度tmに基づいて後車軸69a,69bとモータMG3との共振が発生する共振発生車速領域の下限値である閾値Vref1,上限値である閾値Vref2を設定する(ステップS210)。インバータ43を三相短絡状態にしている場合には、モータMG3の回転に応じて生じる逆起電力によりモータMG3の回転軸に作用するトルクである逆起電力作用トルクTbが生じるが、所定の共振発生車速領域においてはこのトルクにより後車軸69a,69bとモータMG3との共振が発生する。また、この共振発生車速領域はモータMG3のコイル温度tmによっても変化し、モータMG3のコイル温度tmが低いほどこの共振発生車速領域の下限値である閾値Vref1は低く、上限値である閾値Vref2は高くなる。そのため、実施例では、コイル温度tmと閾値Vref1,Vref2との関係をあらかじめ定めて共振発生車速領域設定用マップとしてROM47bに記憶しておき、モータMG3のコイル温度tmが与えられると記憶したマップから対応する閾値Vref1,Vref2を導出して設定するものとした。図6に共振発生車速領域設定用マップの一例を示す。
【0033】
ステップS210で閾値Vref1,Vref2を設定すると、車速Vが所定の共振発生車速領域に入るか否か、すなわち、車速Vが閾値Verf1以上且つ閾値Vref2以下であるか否かを判定する(ステップS220)。そして、車速Vが閾値Vref1以上且つ閾値Vref2以下であるときには、後車軸69a,69bとモータMG3との共振が発生しているものとみなしてRAM47cに記憶されたダメージカウンタCに値1を加算する(ステップS230)。ここで、ダメージカウンタCとは、共振によってモータMG3,ギヤ機構65,後駆動軸66,デファレンシャルギヤ67,後車軸69a,69bなどの機器類(以下、リヤ側機器類という)に蓄積される疲労の程度を表す値である。なお、ダメージカウンタCは、一度も疲労判定ルーチンが実行されていないときには初期値として値0が設定されている。
【0034】
そして、ステップS220で車速Vが閾値Vref1未満又は閾値Vref2超過であったときやステップS230でダメージカウンタCに値1を加算したときには、ダメージカウンタCの値が閾値Crefより大きいか否かを判定する(ステップS240)。ここで、閾値Crefは、リヤ側機器類の疲労をこれ以上蓄積すべきでない所定の疲労状態に達したとみなせるダメージカウンタCの値である。また、疲労判定ルーチンは所定の時間毎に実行されるため、ダメージカウンタCの値は共振が発生している状態での走行時間の積算値である総走行時間とみなすこともできる。したがって、閾値Crefは後車軸69a,69bとモータMG3との共振によるリヤ側機器類の疲労の蓄積と総走行時間との関係を実験によって求めることにより定めることができる。
【0035】
ステップS240でダメージカウンタCの値が閾値Cref以下であると判定されたときには、疲労判定フラグFを値0に設定して(ステップS250)、本ルーチンを終了する。一方、ステップS240でダメージカウンタCの値が閾値Crefより大きくなったと判定されたときには、疲労判定フラグFを値1に設定して(ステップS260)、本ルーチンを終了する。すなわち、疲労判定ルーチンの実行が開始されて間もない時など、リヤ側機器類が所定の疲労状態に達していないときには、まだリヤ側機器類の疲労を考慮する必要がないと判断して疲労判定フラグFを値0に設定し、疲労判定ルーチンの実行が開始されてから後車軸69a,69bとモータMG3との共振が発生した状態での走行時間が大きくなり、リヤ側機器類が所定の疲労状態に達したときには、リヤ側機器類の疲労をこれ以上蓄積させるべきではないと判断して疲労判定フラグFを値1に設定するのである。
【0036】
次に、上述した図4の疲労判定ルーチンで設定した疲労判定フラグFの値を用いて三相短絡状態におけるモータMG3の疲労の程度を考慮して走行する際の制御について図5の駆動制御ルーチンを用いて説明する。このルーチンは、上述の相短絡異常検出ルーチンで相短絡異常が検出され、インバータ43の回路を三相短絡状態にしているときに、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0037】
図5の駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッドECU70は、まずアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2,MG3の回転数Nm1,Nm2,Nm3,バッテリ50が充放電すべき充放電要求パワーPb*,疲労判定フラグF,閾値Vref1などの制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS300)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ44,45により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをフロントモータECU40から通信により入力するものとした。また、モータMG3の回転数Nm3は、回転位置検出センサ46により検出されるモータMG3の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをリヤモータECU47から通信により入力するものとした。充放電要求パワーPb*は、バッテリ50の残容量(SOC)などに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。なお、充放電要求パワーPb*は、放電要求を正側とし、充電要求を負側とするものとした。疲労判定フラグF及び閾値Vref1は、上述した疲労判定ルーチンで設定された値をリヤモータECU47から通信により入力するものとした。
【0038】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求される仮要求トルクTtmpを設定する(ステップS310)。仮要求トルクTtmpは、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと仮要求トルクTtmpとの関係を予め定めて仮要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する仮要求トルクTtmpを導出して設定するものとした。図7に仮要求トルク設定用マップの一例を示す。
【0039】
続いて、モータMG3の回転に応じて生じる逆起電力によりモータMG3の回転軸に作用する負のトルクとしての逆起電力作用トルクTbを導出する(ステップS320)。ここで、逆起電力作用トルクTbは、実施例では、モータMG3の回転数Nm3と逆起電力作用トルクTbとの関係をあらかじめ実験により求めて逆起電力作用トルク導出用マップとしてROM74に記憶しておき、回転数Nm3が与えられると記憶したマップから対応する逆起電圧作用トルクTbを導出するものとした。図8に逆起電力作用トルク導出用マップの一例を示す。
【0040】
ステップS320で逆起電力作用トルクTbを設定すると、疲労判定フラグFが値1であり、且つ、車速Vが閾値Vref1以上であるか否かを判定する(ステップS330)。そして、疲労判定フラグFが値1であり、且つ、車速Vが閾値Vref1以上である場合には、ステップS310で設定した仮要求トルクTtmpを式(1)で制限した値を要求トルクT*として設定する(ステップS340)。リヤ側機器類が所定の疲労状態に達しており、且つ、車速Vが後車軸69a,69bとモータMG3との共振による振動が発生する共振発生車速領域の下限値である閾値Vre1以上であるときには、これ以上疲労が蓄積するのを避けるため、共振が発生した状態で走行することがないようにする必要がある。そこで、要求トルクT*を値0以下に制限して車速Vが小さくなるようにして、共振が発生する共振発生車速領域を下回る車速Vで走行するようにするのである。
【0041】
T*=min(Ttmp,0) (1)
【0042】
一方、ステップS330で疲労判定フラグFが値0である場合又は車速Vが閾値Vref1未満である場合には、ステップS310で設定した仮要求トルクTtmpをそのまま要求トルクT*として設定する(ステップS350)。リヤ側機器類が所定の疲労状態に達していないときや、車速Vが共振による振動が発生する共振発生車速領域の下限値である閾値Vref1未満であるときには、リヤ側機器類の疲労を考慮する必要がないため、仮要求トルクTtmpをそのまま要求トルクT*として設定するのである。
【0043】
ステップS340又はS350で要求トルクT*を設定すると、ステップS320で導出した逆起電力作用トルクTbとギヤ機構65及びデファレンシャルギヤ67のギヤ比Grとの積を要求トルクT*から減じることにより前車軸63a,63bに出力すべき実行用トルクTf*を設定する(ステップS360)。そして、エンジン22に要求される要求パワーPe*を設定する(ステップS370)。要求パワーPe*は、実行用トルクTf*に前車軸回転数Nfを乗じたものとバッテリ50が充放電すべき充放電要求パワーPb*とロスLossとを用いて式(2)により計算するものとした。なお、前車軸回転数Nfは、回転数Nm2,減速ギヤ35のギヤ比Ga,ギヤ機構60及びデファレンシャルギヤ61のギヤ比Gfを用いて式(3)によって求めることができる。
【0044】
Pe*=Tf*・Nf-Pb*+Loss (2)
Nf=Nm2/Ga/Gf (3)
【0045】
ステップS370でエンジン22の要求パワーPe*を設定すると、要求パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS380)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定することにより行われる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図9に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(=Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0046】
ステップS380で目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると、設定した目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Na(=Nm2/Ga)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいて式(4)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を設定すると共に、設定した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて式(5)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を設定する(ステップS390)。動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図10に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリヤ34の回転数を示し、R軸はリングギヤ32(リングギヤ軸32a)の回転数Naを示す。モータMG1の目標回転数Nm1*を設定する式(4)は、この共線図における回転数の関係を用いることにより容易に導くことができる。したがって、モータMG1が目標回転数Nm1*で回転するようトルク指令Tm1*を設定してモータMG1を駆動制御することによりエンジン22を目標回転数Ne*で回転させることができる。式(5)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(5)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。なお、図10におけるR軸上の上向きの2つの太線矢印は、エンジン22から出力されるトルクTe*がリングギヤ軸32aに直接伝達されるトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2*が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。
【0047】
Nm1*=(Ne*・(1+ρ)−Nm2/Ga)/ρ (4)
Tm1*=-ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*−Nm1)+k2∫(Nm1*−Nm1)dt (5)
【0048】
ステップS390でモータMG1のトルク指令Tm1*を設定すると、式(6)に示すように、実行用トルクTf*をギヤ比Gfで除したものからエンジン22からリングギヤ軸32aに直接伝達されるトルク(=−Tm1*/ρ)を減じこれを更にギヤ比Gaで除することによりモータMG2から出力すべきトルク指令Tm2*を設定する(ステップS400)。
【0049】
Tm2*=(Tf*/Gf+Tm1*/ρ)/Ga (6)
【0050】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはフロントモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS410)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行う。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したフロントモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行う。
【0051】
以上説明したように、第1の実施例のハイブリッド自動車20では、インバータ43に相短絡異常が検出され、インバータ43の回路を三相短絡状態にしたときにおいて、モータMG3のコイル温度tmに基づいて共振発生車速領域の下限値である閾値Vref1及び上限値である閾値Vref2を設定し、設定した共振発生車速領域の中に車速Vが入るときにはダメージカウンタCに値1を加算する。そして、ダメージカウンタCが閾値Crefより大きく、且つ、車速Vが閾値Vref1以上であるときには、要求トルクT*を値0以下に制限し、その制限の範囲内で走行するようモータMG1,MG2,エンジン22を制御する。これにより、リヤ側機器類の疲労が蓄積するのを適切に抑制してリヤ側機器類を保護しつつ走行することができる。また、車速Vが共振発生車速領域に入るか否かに基づいて後車軸69a,69bとモータMG3との共振が発生しているか否かを判定しているため、共振による振動が発生しているか否かを適切に推定できる。さらにまた、モータMG3のコイル温度tmが低いほど共振発生車速領域の下限値である閾値Vref1が低くなるように設定しているため、共振による振動が発生しているか否かをより適切に推定できる。
【0052】
第1の実施例のハイブリッド自動車20では、ダメージカウンタCの値は値1ずつ加算されていくが、後車軸69a,69bとモータMG3との共振の振幅が大きくなるほど大きな傾向にある重みを付けた値を加算するものとしてもよい。後車軸69a,69bとモータMG3との共振の振幅が大きいほど、リヤ側機器類への疲労の蓄積が大きくなるため、このようにすることでリヤ側機器類が所定の疲労状態に達したか否かをより適切に判定できる。例えば、図11に示すように、車速Vが閾値Vref1以上且つ値V1未満のときには車速Vが大きいほど大きな重みとなるようにし、車速Vが値V1以上且つ値V2未満のときには車速Vによらず一定の重みとなるようにし、車速Vが値V2以上且つ閾値Vref2以下のときには車速Vが大きいほど小さな重みとなるように、車速Vと重みとの関係を定めてROM47bに重み設定用マップとして記憶しておき、車速Vが与えられると記憶したマップから対応する重みを導出し、ダメージカウンタCに本来加算する値である値1に導出した重みを乗じて重み付け後の値とし、この重み付け後の値をダメージカウンタCに加算するものとしてもよい。なお、図11の重み設定用マップは、車速Vと共振の振幅との関係を実験により求めることで求めることができる。また、この場合において、閾値Vref1,Vref2や値V1,V2をモータMG3のコイル温度tmに応じて設定するものとしてもよい。
【0053】
第1の実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG3のコイル温度tmに基づいて共振発生車速領域の下限値である閾値Vref1,上限値である閾値Vref2を設定しているが、閾値Vref1のみコイル温度tmに基づいて設定するものとしてもよいし、閾値Vref1,Vref2ともにコイル温度tmによらず一定であるものとしてもよい。また、車両が加速中か減速中かによって異なる共振発生車速領域を設定してもよい。例えば、図4の疲労判定ルーチンにおいて、前回入力した車速Vと今回入力した車速Vとを比較することで加速中か減速中かを判定し、加速中であれば共振発生車速領域の下限値を閾値Vref1,上限値を閾値Vref2とし、減速中であれば共振発生車速領域の下限値を閾値Vref3,上限値を閾値Vref4としてもよい。また、閾値Vref1〜4はコイル温度tmによって異なる値を設定するものとしてもよい。例えば、図12に示すように、閾値Vref1,3はコイル温度tmが低いほど小さくなる値であり、閾値Vref2,4はコイル温度tmが低いほど大きくなる値としてもよい。
【0054】
第1の実施例のハイブリッド自動車20では、図5の駆動制御ルーチンのステップS330において疲労判定フラグFが値0である場合又は車速Vが閾値Vref1未満である場合のみステップS350に進んで仮要求トルクTtmpをそのまま要求トルクT*として設定するものとしているが、車速Vが閾値Vref2より大きい場合にもステップS350の処理を実行するものとしてもよい。車速Vが閾値Vref2より大きい場合も、車速Vは共振が発生する共振発生車速領域に入っていないため、リヤ側機器類の疲労を蓄積させることがない。したがって、このようにすることで車速Vが閾値Vref2より大きい場合にもそのままの状態で走行を続けることができる。
【実施例2】
【0055】
次に、本発明の第2の実施例に係るハイブリッド自動車20Bについて説明する。なお、ハイブリッド自動車20Bは、図1及び図2に例示した第1実施例のハイブリッド自動車20と同一のハード構成をしている。したがって、第2の実施例のハイブリッド自動車20Bと第1の実施例のハイブリッド自動車20とで共通する要素については、重複した説明を回避するために第1実施例と同一の符号を用いるものとし、詳細な説明を省略する。
【0056】
第2の実施例のハイブリッド自動車20Bでは、図4の疲労判定ルーチンに代えて図13の疲労判定ルーチンがリヤモータECU47によって実行され、図5の駆動制御ルーチンに代えて図14の駆動制御ルーチンがハイブリッドECU70によって実行される。なお、第2の実施例では、リヤモータECU47によって上述した図3の相短絡異常検出ルーチンが第1の実施例と同様に所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行され、インバータ43の相短絡異常が検出されるとインバータ43の回路が三相短絡状態にされる。
【0057】
まず、図13の疲労判定ルーチンについて説明する。このルーチンは、図4の疲労判定ルーチンと同様に、上述した図3の相短絡異常検出ルーチンで相短絡異常が検出され、インバータ43の回路を三相短絡状態にしているときに、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0058】
図13の疲労判定ルーチンが実行されると、リヤモータECU47は、まず、モータMG2,MG3の回転数Nm2,Nm3などの制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS500)。ここで、モータMG2の回転数Nm2は、回転位置検出センサ45により検出されるモータMG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをフロントモータECU40から通信により入力するものとした。
【0059】
ステップS500でデータの入力を実行すると、入力した回転数Nm2,Nm3に基づいて前車軸63a,63bの回転数である前車軸回転数Nf及び後車軸69a,69bの回転数である後車軸回転数Nrを導出してRAM47cに記憶する(ステップS505)。ここで、前車軸回転数Nfは、上述した式(3)により求めることができる。後車軸回転数Nrは、回転数Nm3,ギヤ機構65及びデファレンシャルギヤ67のギヤ比Grを用いて式(7)により求めることができる。また、RAM47cは、疲労判定ルーチンのステップS505が実行される毎に導出される回転数Nr,Nfの値を新しい方から20個ずつ前車軸回転数Nf1〜Nf20,後車軸回転数Nr1〜Nr20として記憶できるようになっている。なお、RAM47cに記憶される回転数Nf1〜Nf20,Nr1〜Nr20の値は、初期値がNULL値に設定されており、三相短絡状態が解除された場合にも全て初期化されてNULL値に設定される。今回発生した相短絡異常による三相短絡状態中に導出された回転数Nf,Nrのみを記憶するのである。
【0060】
Nr=Nm3/Gr (7)
【0061】
ステップS505で導出した回転数Nf,Nrを記憶すると、RAM47cに記憶されている回転数Nf1〜Nf20,Nr1〜Nr20の値に基づいて前車軸回転数Nfの振幅Af及び後車軸回転数Nrの振幅Arを導出する(ステップS510)。前車軸回転数Nfの振幅Af及び後車軸回転数Nrの振幅Arは、回転数Nf1〜Nf20,Nr1〜Nr20の最大値と最小値との差に基づいて、それぞれ式(8),(9)を用いて求めることができる。各振幅Af,Arの導出方法は同様であるため、例として振幅Arの導出について図15を用いて説明する。図15は、時間と共に変化する後車軸回転数Nrの様子を示す説明図である。時刻t1にインバータ43が三相短絡状態になったとすると、時刻t1から疲労判定ルーチンが実行される度にステップS505で導出される後車軸回転数NrがRAM47cに記憶されていく。そして、時刻t20で疲労判定ルーチンのステップS505が実行されたときには、RAM47cには後車軸回転数Nr1〜Nr20として値N1〜N20が記憶されている。このとき実行されるステップS510では、RAM47cに記憶されている後車軸回転数Nr1〜Nr20の値N1〜N20から式(9)を用いて振幅Arが導出される。この場合、値N1〜N20の最大値である値N5と最小値である値N13との差を2で割った値が振幅Arとなる。このように、時間と共に変動する後車軸回転数Nrの値を記憶しておくことで、後車軸回転数Nrの振幅Arを導出することができる。なお、疲労判定ルーチンが20回を超えて実行されると、RAM47cには最新の20回分の後車軸回転数Nrの値のみが記憶され、それ以前の値は保持しない。例えば、時刻t21で実行される疲労判定ルーチンのステップS505においては、図5の後車軸回転数の値N2〜N21が新たな後車軸回転数Nr1〜Nr20としてRAM47cに記憶され、その新たな後車軸回転数Nr1〜Nr20について式(9)を用いて振幅Arが導出される。また、疲労判定ルーチンが20回以上実行されておらずNr1〜Nr20の一部が初期値であるNULL値のままである場合には、その値は無視し、実行した回数分の値のみに基づいて式(9)と同様に振幅Arを導出する。例えば、図5の時刻t3で実行される疲労判定ルーチンのステップS510においては、値N1〜N3の3つの値しか得られていないため、この3つの値のうちの最大値と最小値の差を2で割ったものを振幅Arとする。
【0062】
Af=(max(Nf1,Nf2,・・・,Nf20)-min(Nf1,Nf2,・・・Nf20))/2 (8)
Ar=(max(Nr1,Nr2,・・・,Nr20)-min(Nr1,Nr2,・・・Nr20))/2 (9)
【0063】
ステップS510で振幅Af,Arを導出すると、振幅Arと振幅Afの差である振幅差ΔAを導出し(ステップS515)、振幅差ΔAが閾値Arefより大きいか否かを判定する(ステップS220a)。インバータ43が三相短絡状態である場合において、後車軸69a,69bとモータMG3との共振による振動が発生している場合は、振幅Arの値が大きくなるが、共振による振動以外の振動によって振幅Arが大きくなっている場合もある。後車軸69a,69bとモータMG3との共振による振動以外の振動であれば前車軸63a,63bにも同じ振動が発生していると考えられるため、後車軸回転数Nrの振幅Arと前車軸回転数Nfの振幅Afとの差である振幅差ΔAを導出することで、共振による振幅のみを推定するのである。そして、振幅差ΔAを閾値Arefと比較することで、共振による振動が発生しているか否かを判定するのである。ここで、閾値Arefは、後車軸69a,69bとモータMG3との共振が発生したときの振幅差ΔAをあらかじめ実験により求めておくことで定めることができる。
【0064】
ステップS220aで振幅差ΔAが閾値Arefより大きいと判定されたときには、ダメージカウンタCに値1を加算する(ステップS230)。これは、図4の疲労判定ルーチンのステップS230の処理と同様である。そして、ステップS220aで振幅差ΔAが閾値Aref以下であったときや図13の疲労判定ルーチンのステップS230でダメージカウンタCに値1を加算したときには、ダメージカウンタCの値が閾値Cref2より大きいか否かを判定する(ステップS240a)。ここで、閾値Cref2は、第1の実施例における閾値Crefと同様に後車軸69a,69bとモータMG3との共振によるリヤ側機器類の疲労の蓄積と総走行時間との関係を実験によって求めることにより定めることができるが、閾値Crefと同じ値としてもよいし、異なる値としてもよい。
【0065】
ステップS240aの処理を実行すると、図4のステップS250,S260と同様の処理を実行する。すなわち、ステップS240aでダメージカウンタCの値が閾値Cref2以下であると判定されたときには、疲労判定フラグFを値0に設定して(ステップS250)、本ルーチンを終了する。一方、ステップS240aでダメージカウンタCの値が閾値Cref2より大きくなったと判定されたときには、疲労判定フラグFを値1に設定して(ステップS260)、本ルーチンを終了する。
【0066】
次に、上述した図13の疲労判定ルーチンで設定した疲労判定フラグFの値を用いて三相短絡状態におけるモータMG3の疲労の程度を考慮して走行する際の制御について図14の駆動制御ルーチンを用いて説明する。このルーチンは、上述の相短絡異常検出ルーチンで相短絡異常が検出され、インバータ43の回路を三相短絡状態にしているときに、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0067】
図14の駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッドECU70は、まずアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2,MG3の回転数Nm1,Nm2,Nm3,バッテリ50が充放電すべき充放電要求パワーPb*,疲労判定フラグF,振幅差ΔAなどの制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS300a)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2、モータMG3の回転数Nm3、充放電要求パワーPb*の入力については、上述した図5の駆動制御ルーチンのステップS300の処理と同様である。また、疲労判定フラグF及び振幅差ΔAは、上述した図13の疲労判定ルーチンで設定された値をリヤモータECU47から通信により入力するものとした。
【0068】
ステップS300aの処理を実行すると、ハイブリッドECU70は、ステップS310,S320の処理を実行して仮要求トルクTtmpの設定及び逆起電力作用トルクTbの導出を行う。この処理は上述した図5の駆動制御ルーチンのステップS310,S320の処理と同様であるので説明を省略する。そして、ステップS320の処理を実行すると、疲労判定フラグFが値1であり、且つ、振幅差ΔAが閾値Arefより大きいか否かを判定する(ステップS330a)。そして、疲労判定フラグFが値1であり、且つ、振幅差ΔAが閾値Arefより大きい場合には、ステップS310で設定した仮要求トルクTtmpを上述した式(1)で制限した値を要求トルクT*として設定する(ステップS340)。これは、上述した図5の駆動制御ルーチンのステップS340の処理と同様である。リヤ側機器類が所定の疲労状態に達しており、且つ、共振による振動が発生しているときには、これ以上疲労が蓄積するのを避けるため、共振が発生した状態で走行することがないようにする必要がある。そこで、要求トルクT*を値0以下に制限して車速Vが小さくなる、すなわち後車軸回転数Nrが小さくなるようにするのである。これは、後車軸回転数Nrが小さくなると振幅差ΔAが小さくなりリヤ側機器類に疲労が蓄積するような共振が発生しないことによる。
【0069】
一方、ステップS330aで疲労判定フラグFが値0である場合又は振幅差ΔAが閾値Aref以下である場合には、ステップS310で設定した仮要求トルクTtmpをそのまま要求トルクT*として設定する(ステップS350)。これは、上述した図5の駆動制御ルーチンのステップS350の処理と同様である。リヤ側機器類が所定の疲労状態に達していないときや、共振による振動が発生していないときには、リヤ側機器類の疲労を考慮する必要がないため、仮要求トルクTtmpをそのまま要求トルクT*として設定するのである。
【0070】
そして、ステップS340又はS350で要求トルクT*を設定すると、上述した図5の駆動制御ルーチンのステップS360〜S410と同様の処理を行い、駆動制御ルーチンを終了する。これにより、エンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*,モータMG1のトルク指令Tm1*,モータMG2のトルク指令Tm2*が設定されて、ハイブリッド自動車20Bは設定された要求トルクT*で走行する。
【0071】
以上説明したように、第2の実施例のハイブリッド自動車20Bでは、インバータ43に相短絡異常が検出され、インバータ43の回路を三相短絡状態にしたときにおいて、後車軸回転数Nrの振幅Arと前車軸回転数Nfの振幅Afとの差である振幅差ΔAが閾値Arefより大きいときにはダメージカウンタCに値1を加算する。そして、ダメージカウンタCが閾値Cref2より大きいときには要求トルクT*を値0以下に制限し、その制限の範囲内で走行するようモータMG1,MG2,エンジン22を制御する。これにより、リヤ側機器類の疲労が蓄積するのを適切に抑制してリヤ側機器類を保護しつつ走行することができる。また、後車軸回転数Nrの振幅Arと前車軸回転数Nfの振幅Afとの差である振幅差ΔAに基づいて共振による振動が発生しているか否かを判定しているため、後車軸69a,69bとモータMG3との共振のみによる振幅を推定することができ、共振による振動が発生しているか否かをより適切に推定できる。
【0072】
第2の実施例のハイブリッド自動車20Bでは、後車軸回転数Nrの振幅Arと前車軸回転数Nfの振幅Afの振幅差ΔAを閾値Arefと比較して後車軸69a,69bとモータMG3との共振が発生しているか否かを判定しているが、後車軸回転数Nrの振幅Arに基づいて共振が発生しているか否かを判定してもよい。例えば、図13のステップS220aに代えて振幅Arが閾値Aref2より大きいか否かを判定する処理を実行し、振幅Arが閾値Aref2より大きいと判定されたときには図13のステップS230に進んでダメージカウンタCに値1を加算し、振幅Arが閾値Aref2より小さいと判定されたときには図13のステップS240aに進む処理を実行してもよい。なお、閾値Aref2は、後車軸69a,69bとモータMG3との共振が発生したときの振幅Arをあらかじめ実験により求めておくことで定めることができる。また、モータMG3の回転数Nm3に基づいて共振が発生しているか否かを判定してもよい。例えば、式(8),(9)と同様にして回転数Nm3の振幅Amを導出し、図13のステップS220aに代えて振幅Amが閾値Aref3より大きいか否かを判定する処理を実行してもよい。閾値Aref3は、後車軸69a,69bとモータMG3との共振が発生したときの振幅Amをあらかじめ実験により求めておくことで定めることができる。
【0073】
第2の実施例のハイブリッド自動車20では、ダメージカウンタCの値は値1ずつ加算されていくが、後車軸69a,69bとモータMG3との共振の振幅が大きくなるほど大きな傾向にある重みを付けた値を加算するものとしてもよい。後車軸69a,69bとモータMG3との共振の振幅が大きいほど、リヤ側機器類への疲労の蓄積が大きくなるため、このようにすることでリヤ側機器類が所定の疲労状態に達したか否かをより適切に判定できる。例えば、図16に示すように、振幅差ΔAが大きいほど大きな重みとなるように、振幅差ΔAと重みとの関係を定めてROM47bに重み設定用マップとして記憶しておき、振幅差ΔAが与えられると記憶したマップから対応する重みを導出し、ダメージカウンタCに本来加算する値である値1に導出した重みを乗じて重み付け後の値とし、この重み付け後の値をダメージカウンタCに加算するものとしてもよい。なお、図16の重み設定用マップは、振幅差ΔAと共振によるリヤ側機器類の疲労の蓄積との関係を実験により求めることで求めることができる。
【0074】
第1の実施例や第2の実施例のハイブリッド自動車20,20Bでは、モータMG2の回転数Nm2から前車軸回転数Nfを導出しており、第2の実施例のハイブリッド自動車20Bでは、モータMG3の回転数Nm3から後車軸回転数Nrを導出しているが、前車軸回転数Nf及び後車軸回転数Nrを回転位置検出センサによって直接検出するものとしてもよい。
【0075】
第1の実施例や第2の実施例のハイブリッド自動車20,20Bでは、モータMG2の動力を駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図17の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2を備えない構成としてもよい。
【0076】
第1の実施例や第2の実施例では、エンジン22とモータMG1とモータMG2とを備えるハイブリッド自動車20,20Bとして説明したが、エンジン22とモータMG1とを備えずモータMG2からの動力のみを前車軸63a、63bに出力し、モータMG3の動力を後車軸69a,69bに出力する電気自動車としてもよい。
【0077】
第1の実施例や第2の実施例では、ハイブリッド自動車20,20Bとして説明したが、自動車以外の車両の形態としても構わないし、車両の制御方法の形態としてもよい。
【0078】
ここで、第1の実施例及び第2の実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、後車軸69a,69bが「第1の車軸」に相当し、モータMG3が「第1の電動機」に相当し、モータMG3とギヤ機構65と後駆動軸66とデファレンシャルギヤ67とが「機器類」に相当し、前車軸63a,63bが「第2の車軸」に相当し、エンジン22とモータMG2とモータMG1と動力分配統合機構30が「動力出力装置」に相当し、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG2が「第2の電動機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、インバータ43が「インバータ回路」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、インバータ43の相短絡異常を検出する図3の相短絡異常検出ルーチンのステップS100の処理を実行するリヤモータECU47が「相短絡異常検出手段」に相当し、相短絡異常が検出されたときにインバータ43の異常があるスイッチング素子が含まれる側のスイッチング素子を三相ともオンにする図3の相短絡異常検出ルーチンのステップS110の処理を実行するリヤモータECU47が「インバータ制御手段」に相当し、モータMG3のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ46と回転位置に基づいてモータMG3の回転数Nm3を演算し回転数Nm3に基づいて後車軸回転数Nrを導出する図13のステップS510の処理を実行するリヤモータECU47とが「第1回転数検出手段」に相当し、モータMG2のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ45と回転位置に基づいてモータMG2の回転数Nm2を演算するフロントモータECU40と回転数Nm2に基づいて前車軸回転数Nfを導出する図13のステップS510の処理を実行するリヤモータECU47とが「第2回転数検出手段」に相当する。そして、第1の実施例においてリヤモータECU47がインバータ43を三相短絡状態にしている場合においてコイル温度tmに基づいて共振発生車速領域の下限値である閾値Vref1及び上限値である閾値Vref2を設定し車速Vが設定した共振発生車速領域に入るときにダメージカウンタCに値1を加算しダメージカウンタCに基づいてリヤ側機器類が所定の疲労状態になったか否かを判定する図4の疲労判定ルーチンのステップS210〜S260の処理を実行するリヤモータECU47とリヤ側機器類が所定の疲労状態になったときには要求トルクT*を値0以下に制限して走行するよう目標回転数Ne*,目標トルクTe*,トルク指令Tm1*,Tm2*を設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS310〜S410の処理を実行するハイブリッドECU70と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24とトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するフロントモータECU40とが「動力出力装置制御手段」に相当する。また、第2の実施例におけるリヤモータECU47がインバータ43を三相短絡状態にしている場合において後車軸回転数Nrの振幅Ar及び前車軸回転数Nfの振幅Afを導出し振幅Ar,Afの振幅差ΔAが閾値Arefより大きいときにダメージカウンタCに値1を加算しダメージカウンタCに基づいてリヤ側機器類が所定の疲労状態になったか否かを判定する図13の疲労判定ルーチンのステップS510,S515,S220a〜S260の処理を実行するリヤモータECU47とリヤ側機器類が所定の疲労状態になったときには要求トルクT*を値0以下に制限して走行するよう目標回転数Ne*,目標トルクTe*,トルク指令Tm1*,Tm2*を設定する図14の駆動制御ルーチンのステップS310〜S410の処理を実行するハイブリッドECU70と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24とトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するフロントモータECU40とも「動力出力装置制御手段」に相当する。
【0079】
ここで、「第1の車軸」としては、後車軸69a,69bに限定されるものではなく、第1の電動機を備える機器類に接続され、機器類からの動力を入出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「第1の電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG3に限定されるものではなく、誘導電動機など、第1の車軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「機器類」としてはモータMG3とギヤ機構65と後駆動軸66とデファレンシャルギヤ67とに限定されるものではなく、第1の電動機を備え第1の車軸に動力を入出力可能であれば如何なるものとしても構わない。「第2の車軸」としては、前車軸63a,63bに限定されるものではなく、動力出力装置に接続され、動力出力装置からの動力を入出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「動力出力装置」としては、エンジン22とモータMG2とモータMG1と動力分配統合機構30に限定されるものではなく、エンジンのみ又はモータのみである場合など、第2の車軸に動力を出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「内燃機関」としては、ガソリン又は軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「第2の電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、第2の車軸に動力を出力可能であれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる作動作用を有するものなど、内燃機関の出力軸と第2の車軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「インバータ回路」としては、インバータ43に限定されるものではなく、第1の電動機を駆動するものであれば如何なるものとしても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、インバータ回路を介して第1の電動機と電力のやり取りが可能であれば如何なるものとしても構わない。「相短絡異常検出手段」としては、インバータ43の相短絡異常を検出する図3の相短絡異常検出ルーチンのステップS100の処理を実行するリヤモータECU47に限定されるものではなく、インバータ回路の一部の相が短絡する相短絡異常を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「インバータ制御手段」としては、相短絡異常が検出されたときにインバータ43の異常があるスイッチング素子が含まれる側のスイッチング素子を三相ともオンにする図3の相短絡異常検出ルーチンのステップS110の処理を実行するリヤモータECU47に限定されるものではなく、相短絡異常検出手段が相短絡異常を検出したときにはインバータ回路を三相短絡状態にするものであれば如何なるものとしても構わない。「第1回転数検出手段」としては、モータMG3のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ46と回転位置に基づいてモータMG3の回転数Nm3を演算し回転数Nm3に基づいて後車軸回転数Nrを導出する図13のステップS510の処理を実行するリヤモータECU47とに限定されるものではなく、直接第1の車軸の回転数を検出するものなど、第1の車軸の回転数を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「第2回転数検出手段」としては、モータMG2のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ45と回転位置に基づいてモータMG2の回転数Nm2を演算するフロントモータECU40と回転数Nm2に基づいて前車軸回転数Nfを導出する図13のステップS510の処理を実行するリヤモータECU47とに限定されるものではなく、直接第2の車軸の回転数を検出するものなど、第2の車軸の回転数を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「動力出力装置制御手段」としては、ハイブリッドECU70とエンジンECU24とフロントモータECU40とリヤモータECU47とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。「動力出力装置制御手段」としては、第1の実施例においてリヤモータECU47がインバータ43を三相短絡状態にしている場合においてコイル温度tmに基づいて共振発生車速領域の下限値である閾値Vref1及び上限値である閾値Vref2を設定し車速Vが設定した共振発生車速領域に入るときにダメージカウンタCに値1を加算しダメージカウンタCに基づいてリヤ側機器類が所定の疲労状態になったか否かを判定する図4の疲労判定ルーチンのステップS210〜S260の処理を実行するリヤモータECU47とリヤ側機器類が所定の疲労状態になったときには要求トルクT*を値0以下に制限して走行するよう目標回転数Ne*,目標トルクTe*,トルク指令Tm1*,Tm2*を設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS310〜S410の処理を実行するハイブリッドECU70と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24とトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するフロントモータECU40とや、第2の実施例におけるリヤモータECU47がインバータ43を三相短絡状態にしている場合において後車軸回転数Nrの振幅Ar及び前車軸回転数Nfの振幅Afを導出し振幅Ar,Afの振幅差ΔAが閾値Arefより大きいときにダメージカウンタCに値1を加算しダメージカウンタCに基づいてリヤ側機器類が所定の疲労状態になったか否かを判定する図13の疲労判定ルーチンのステップS510,S515,S220a〜S260の処理を実行するリヤモータECU47とリヤ側機器類が所定の疲労状態になったときには要求トルクT*を値0以下に制限して走行するよう目標回転数Ne*,目標トルクTe*,トルク指令Tm1*,Tm2*を設定する図14の駆動制御ルーチンのステップS310〜S410の処理を実行するハイブリッドECU70と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24とトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するフロントモータECU40とに限定されるものではなく、インバータ制御手段がインバータ回路を三相短絡状態にしている場合において、第1の車軸と第1の電動機との共振による振動が発生する所定の走行条件が成立した状態での走行時間を積算した総走行時間が所定の時間領域に入るか否かによって機器類が所定の疲労状態に達したか否かを判定し、所定の疲労状態に達したと判定したときには、所定の走行条件が成立しない範囲内で走行するよう動力出力装置を制御するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0080】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行われるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0081】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】ハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】インバータ43の構成の概略を示す構成図である。
【図3】第1の実施例及び第2の実施例のリヤモータECU47により実行される相短絡異常検出ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施例のリヤモータECU47により実行される疲労判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施例のハイブリッドECU70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施例の共振発生車速領域設定用マップの一例を示す説明図である。
【図7】仮要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図8】逆起電力作用トルク導出用マップの一例を示す説明図である。
【図9】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図10】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図11】第1の実施例の変形例におけるダメージカウンタに加算する値の重み設定用マップの一例を示す説明図である。
【図12】第1の実施例の変形例における共振発生車速領域設定用マップの一例を示す説明図である。
【図13】第2の実施例のリヤモータECU47により実行される疲労判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図14】第2の実施例のハイブリッドECU70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図15】第2の実施例における時間と共に変化する後車軸回転数Nrの様子を示す説明図である。
【図16】第2の実施例におけるダメージカウンタに加算する値の重み設定用マップの一例を示す説明図である。
【図17】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0084】
20,20B,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリヤ、35 減速ギヤ、40 フロントモータ用電子制御ユニット(フロントモータECU)、41,42,43 インバータ、43a〜43f スイッチング素子、44,45,46 回転位置検出センサ、47 リヤモータECU、47a CPU、47b ROM、47c RAM、48 温度センサ、50 バッテリ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、61 デファレンシャルギヤ、62a,62b 前輪、63a,63b 前車軸、65 ギヤ機構、66 後駆動軸、67 デファレンシャルギヤ、68a,68b 後輪、69a,69b 後車軸、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(ハイブリッドECU)、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、MG1,MG2,MG3 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車軸に接続され、該第1の車軸に動力を入出力可能な第1の電動機を備える機器類と、
第2の車軸に接続され、該第2の車軸に動力を出力可能な動力出力装置と、
前記第1の電動機を駆動するためのインバータ回路と、
前記インバータ回路を介して前記第1の電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、
前記インバータ回路の一部の相が短絡する相短絡異常を検出する相短絡異常検出手段と、
前記相短絡異常検出手段が相短絡異常を検出したときには、前記インバータ回路を三相短絡状態にするインバータ制御手段と、
前記インバータ制御手段が前記インバータ回路を三相短絡状態にしている場合において、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振による振動が発生する所定の走行条件が成立した状態での走行時間を積算した総走行時間が所定の時間領域に入るか否かによって前記機器類が所定の疲労状態に達したか否かを判定し、該所定の疲労状態に達したと判定したときには、前記所定の走行条件が成立しない範囲内で走行するよう前記動力出力装置を制御する動力出力装置制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
車速を検出する車速検出手段
を備え、
前記動力出力装置制御手段は、前記所定の走行条件が成立した状態での走行か否かを判定するにあたり、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振による振動が発生する所定の車速領域に前記検出された車速が入るか否かを判定する手段である、
車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両であって、
前記第1の電動機の温度を検出する温度検出手段
を備え、
前記動力出力装置制御手段は、前記所定の車速領域に前記検出された車速が入るか否かを判定するにあたり、前記検出された温度が低いほど該所定の車速領域の下限が低下する傾向に該所定の車速領域を設定し、該設定した所定の車速領域に前記検出された車速が入るか否かを判定する手段である、
車両。
【請求項4】
前記動力出力装置制御手段は、前記所定の走行条件が成立した状態での走行か否かを判定するにあたり、前記車両が加速中か減速中かによって異なる所定の車速領域を設定し、該設定した所定の車速領域に前記検出された車速が入るか否かを判定する手段である、
請求項2又は3に記載の車両。
【請求項5】
請求項1に記載の車両であって、
前記第1の車軸の回転数を検出する第1回転数検出手段
を備え、
前記動力出力装置制御手段は、前記所定の走行条件が成立した状態での走行か否かを判定するにあたり、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振による振動が発生したとみなされる所定の振幅領域に前記検出された第1の車軸の回転数の振幅が入るか否かを判定する手段である、
車両。
【請求項6】
請求項1に記載の車両であって、
前記第1の車軸の回転数を検出する第1回転数検出手段と、
前記第2の車軸の回転数を検出する第2回転数検出手段と、
を備え、
前記動力出力装置制御手段は、前記所定の走行条件が成立した状態での走行か否かを判定するにあたり、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振による振動が発生したとみなされる所定の数値領域に前記検出された第1の車軸の回転数の振幅と前記検出された第2の車軸の回転数の振幅との差が入るか否かを判定する手段である、
車両。
【請求項7】
前記動力出力装置制御手段は、前記走行時間を積算するにあたり、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振の振幅が大きいほど大きな傾向にある重みを前記走行時間に付けて該重みを付けたあとの走行時間を積算する手段である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両。
【請求項8】
前記動力出力装置制御手段は、前記走行時間を積算するにあたり、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振の振幅が大きくなる車速で走行しているときほど大きな傾向にある重みを前記走行時間に付けて該重みを付けたあとの走行時間を積算する手段である、
請求項2〜4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項9】
前記動力出力装置は、内燃機関と、前記第2の車軸に動力を入出力可能な第2の電動機と、発電機と、前記内燃機関の出力軸と前記第2の車軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える装置であり、
前記蓄電手段は、前記第2の電動機及び前記発電機とも電力のやり取りが可能な手段である、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両。
【請求項10】
第1の車軸に接続され、該第1の車軸に動力を入出力可能な第1の電動機を備える機器類と、第2の車軸に接続され、該第2の車軸に動力を出力可能な動力出力装置と、前記第1の電動機を駆動するためのインバータ回路と、前記インバータ回路を介して前記第1の電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、前記インバータ回路の一部の相が短絡する相短絡異常を検出する相短絡異常検出手段と、を備える車両の制御方法であって、
(a)前記相短絡異常検出手段が前記インバータ回路の一部の相が短絡する短絡異常を検出したときには、前記インバータ回路を三相短絡状態にするステップと、
(b)前記ステップ(a)で前記インバータ回路が三相短絡状態である場合に、前記第1の車軸と前記第1の電動機との共振による振動が発生する所定の走行条件が成立した状態での走行時間を積算した総走行時間が所定の時間領域に入るか否かによって前記機器類が所定の疲労状態に達したか否かを判定するステップと、
(c)前記ステップ(b)で前記機器類が所定の疲労状態に達したと判定されたときには、前記所定の走行条件が成立しない範囲内で走行するよう前記動力出力装置を制御するステップと、
を含む車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−292369(P2009−292369A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149227(P2008−149227)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】