説明

半導体装置、及び発振器

【課題】Q値が高く、位相雑音特性が優れる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、能動素子としての集積回路12と、集積回路12に電気的に接続される複数の接続電極(14,15)とを含む半導体基板10と、半導体基板10の接続電極14,15が形成される面に、接続電極14,15を避けて形成される第1の樹脂層70と、半導体基板10と第1の樹脂層70の間に形成され、複数の接続電極のうちの一つに接続される接続配線層25,26と、接続配線層25,26に一端が接続され、第1の樹脂層の表面に形成されるCu配線層からなる渦巻き形状のスパイラルインダクタ40,50と、スパイラルインダクタ40,50の表面を覆う第2の樹脂層75と、複数の接続電極のいくつかと電気的に接続され、第2の樹脂層75から一部が突出してなる外部端子81〜86と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、及び発振器に関し、詳しくは、集積回路を含む半導体基板に樹脂層を形成し、この樹脂層表面にCu配線層からなる受動素子を形成した半導体装置と、半導体装置内に、この受動素子によって形成される発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板と、この半導体基板上に設けられた多層配線層を備えた半導体装置内に形成された電圧制御発振器において、出力端子と、多層配線層に設けられ出力端子に接続されたスパイラルインダクタと、このスパイラルインダクタの直下域を含み、このスパイラルインダクタの中心軸を含まない領域に形成され、このスパイラルインダクタに並列に接続されてこのスパイラルインダクタとともに共振回路を形成する可変キャパシタと、を含んで構成される電圧制御発振器というものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−6153号公報(第5頁、図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1では、半導体基板上に設けられた多層配線層の表面に形成されたスパイラルインダクタと、半導体基板と多層配線層からなる半導体集積回路内に設けられる可変キャパシタによって共振回路が構成されている。一般に、このようなスパイラルインダクタは、Al配線によって形成されるため、例えばCu配線に比べ比抵抗が約30%程度大きく、インダクタのQ値が低いため位相雑音特性を向上させることができないという課題を有している。
【0005】
また、上述の可変キャパシタは、半導体集積回路内に形成されるため、キャパシタを形成する誘電体の使用可能な材料の制約と、対向電極のサイズの制約から、静電容量の大きさや可変範囲に限界があり、低周波領域の周波数の発振器を実現することや、周波数の選択幅を広くできないというような課題がある。
【0006】
本発明の目的は、前述した課題を解決することを要旨とし、Q値が高い受動素子を備え位相雑音特性が優れるとともに周波数の選択幅を広げることが可能な発振器と、この発振器を備え、半導体チップサイズのパッケージを構成できる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体装置は、能動素子としての集積回路と、該集積回路に電気的に接続される複数の接続電極とを含む半導体基板と、前記半導体基板の前記接続電極が形成される面に、前記接続電極を避けて形成される第1の樹脂層と、前記半導体基板と前記第1の樹脂層の間に形成され、前記複数の接続電極のうちの一つに接続される接続配線層と、前記接続配線層に一端が接続され、前記第1の樹脂層の表面に形成されるCu配線層と、前記接続配線層と前記Cu配線層とからなる受動素子と、前記Cu配線層の表面を覆う第2の樹脂層と、前記複数の接続電極のいくつかと電気的に接続され、前記第2の樹脂層から一部が突出してなる外部端子と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、前記半導体基板と前記第1の樹脂層の間に形成され、前記複数の接続電極のうちの一つに接続される接続配線層と、第1の樹脂層の表面に形成されるCu配線層とによって受動素子が構成される。Cuは、従来用いられるAl配線に比べ、比抵抗が約30%程度小さいことから、Cu配線を用いて受動素子を構成する場合において、Q値を高めることが可能で、このことから仮に、発振器等の共振回路に採用する場合には位相雑音特性を向上させることができる。
【0009】
また、半導体基板が、ウエハからスクライブ分離される半導体チップである場合において、この受動素子は、半導体基板上に形成される第1の樹脂層の表面にCu配線層によって形成されることから、半導体チップの平面形状(平面面積)の大部分にわたって形成可能になるため、平面積を大きくできる他、Cu配線幅を大きくすることができ、配線抵抗をより小さくすることが可能となる。
【0010】
さらに、外部端子の一部を除いて最上層のCu配線層を第2の樹脂層で覆う構造であるため、能動素子を含め、受動素子を保護することができる。
【0011】
また、本発明は、前記受動素子が、前記第1の樹脂層の表面に形成されるCu配線層からなるスパイラルインダクタであることを特徴とする。
【0012】
このように、スパイラルインダクタをCu配線層で形成することによって、前述したように、従来のAl配線により形成されるスパイラルインダクタよりも比抵抗を小さくすることができ、また、Cu配線は、電解Cuメッキで形成することができることから、厚みを大きくできるので、さらに配線抵抗を小さくすることができる。周知の通り、Q値は、リアクタンスに比例し、抵抗値に反比例することから、スパイラルインダクタの抵抗値を下げることによりQ値を高めることができる。
【0013】
また、スパイラルインダクタのパターンは半導体基板上に形成される第1の樹脂層の表面にCu配線によって形成されるため、半導体基板との間隔をとることができる。これにより、スパイラルインダクタのパターンと半導体基板との間に生じる寄生容量成分による損失を低減することができ、その結果Q値を高めることができる。
【0014】
また、仮に、上述のスパイラルインダクタを発振器に用いる場合を考える。発振器の位相雑音特性は、Q値の二乗に反比例することが知られており、Q値を大きくすることにより位相雑音(位相ノイズ)を大幅に低減することができる。位相雑音特性を考える際に用いるQ値は負荷Qと呼ばれる発振回路全体の損失を表す値であるが、本発明のスパイラルインダクタを用いたLC共振回路では、スパイラルインダクタ部のQ値が支配的となる。従って、スパイラルインダクタ部のQ値を大きくすることにより、位相雑音を大幅に低減することができる。
【0015】
また、前記受動素子が、前記接続配線層と、前記Cu配線層と、前記接続配線層と前記Cu配線層とが交差する領域に挟まれる第1の樹脂層と、からなるキャパシタであり、前記キャパシタが、前記集積回路に設けられる可変キャパシタと並列に接続されていることを特徴とする。
ここで、キャパシタを構成する第1の樹脂層は、積層型キャパシタにおける誘電体であり、Cu配線層と接続配線層とは誘電体を挟む電極に相当する。
【0016】
このように、集積回路の外部にキャパシタを設けることにより、静電容量を大きくすることが可能となる。静電容量を大きくすると、発振周波数が小さくなることは知られている。このことから低周波数領域の発振器を実現することができる。
【0017】
また、集積回路内部に形成される可変キャパシタは、サイズ、誘電率に制約があり、このことから静電容量にも限界があるが、本発明によるキャパシタを設けることにより周波数の選択幅を広げることが可能になる他、半導体基板の上面に形成されるCu配線層は面積を大きくできるので、静電容量を大きくすることが可能である。
【0018】
さらに、可変キャパシタに加え、Cu配線層からなるキャパシタを並列に備えることによって、キャパシタの静電容量の設定範囲を広げることができることから、共振器に採用する場合において、周波数帯域の幅を広げることができるという効果を奏する。
【0019】
また、前記受動素子が、前記第1の樹脂層の表面に形成される第1のCu配線層からなるスパイラルインダクタと、前記第1の樹脂層の表面に形成される第2のCu配線層と、前記接続配線層と、前記第2のCu配線層と前記接続配線層とが交差する領域に挟まれる第1の樹脂層と、からなるキャパシタと、から構成されていることを特徴とする。
【0020】
このように、Cu配線層によるスパイラルインダクタとキャパシタとを形成することによって、前述したスパイラルインダクタを形成することによる効果と、キャパシタを形成することによる効果を併せ持つことができる。
【0021】
また、スパイラルインダクタを形成する第1のCu配線層と、キャパシタを構成する第2のCu配線層とが、第1の樹脂層のほぼ同一平面上に形成されることから、二つの受動素子を備えながら、これらCu配線層を同一工程で形成することができ、製造効率を高めることができる。
【0022】
さらに、前記半導体装置が、前記第2の樹脂層によって、前記外部端子の一部を除いて封止されていることが好ましい。
【0023】
このような構造によれば、半導体装置が、受動素子を構成するCu配線層を含め、第2の樹脂層で封止されていることから、あらためてパッケージ実装をせずに、第2の樹脂層でパッケージングすることができ、半導体チップサイズにパッケージングされた小型、薄型の半導体装置を提供することができる。
【0024】
また、本発明の発振器は、能動素子としての集積回路と、該集積回路に電気的に接続された複数の接続電極とを含む半導体基板と、前記半導体基板の前記接続電極が形成される面に、前記接続電極を避けて形成される第1の樹脂層と、前記第1の樹脂層の表面に、共振回路を構成する前述のスパイラルインダクタと、前述したキャパシタのどちらか一方、または両方を並列に接続して構成される受動素子と、前記複数の接続電極のいくつかに接続する外部端子と、を備えることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、前述したCu配線から構成される受動素子としてのスパイラルインダクタやキャパシタを集積回路の外部に設けることにより、Q値が高い受動素子を備え位相雑音特性が優れるとともに周波数の選択幅を広げることが可能な発振器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は本発明の実施形態1に係る半導体装置を示し、図4〜図6は、実施形態2に係る半導体装置である。
(実施形態1)
【0027】
図1は、本実施形態1に係る半導体装置の平面図、図2は、図1のA−A切断面を示す断面図である。ここで、図1では、図2に示す第2の樹脂層としてのレジスト層75と被覆膜76を透視した状態を示している。また、図1、図2は、本発明を実施例の1例として電圧制御発振器を例示する。
【0028】
図1、図2において、半導体装置1は、基本構成として、能動素子としての集積回路12と、集積回路12を構成する図示しない回路素子群を接続するAl配線と、このAl配線に接続し表面に露出される複数の接続電極(図2では、接続電極14,15を図示)と、接続電極を開口して集積回路12を覆うパッシベーション膜(SiN)16の上面に形成される受動素子としてのスパイラルインダクタ40,50と、集積回路12またはスパイラルインダクタ40と外部回路とを接続するための外部端子81〜86とから構成されている。
【0029】
なお、この半導体装置1は、図示しないウエハに複数個が配列して形成され、その後、スクライブ分離して一つ一つの半導体チップとなる。ここでは、半導体チップの形での構成を説明している。
【0030】
集積回路12には、図示しないトランジスタ、可変キャパシタ、定電流回路等、半導体装置1を制御するための回路素子群が含まれている。この集積回路12を含んで半導体基板10の表面全体をパッシベーション膜16で覆っているが、集積回路12と前述した外部端子81〜86、及びスパイラルインダクタ40,50とが接続される接続電極(例えばパッド)が開口されている(図2では、接続電極14,15のみを図示し、以降、複数の接続電極のうち、接続電極を代表して説明する)。
パッシベーション膜16は、SiN、SiO2、MgOなどから形成され、接続端子(14,15)は、Alで形成されている。
【0031】
半導体基板10の上面、つまり、パッシベーション膜16の表面には、接続配線層25,26が形成されている。この接続配線層25,26は、パッシベーション層16とCu接続配線層55との密着性を高める機能を有し、例えば、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、バナジウム(Pd)などの単体金属、あるいはこれらを複数用いた合金でスパッタリング形成されている。
【0032】
接続配線層26の上面には、Cu接続配線層55が形成される。Cu接続配線層55は、電解Cuメッキ等の成膜手段で形成され、概ね6μm程度の厚さで形成するのが好ましい。パッシベーション膜16の上面からCu接続配線層55の上面を覆う範囲には、第1の樹脂層70(以降、単に樹脂層70と表すことがある)が形成されている。
【0033】
樹脂層70は、応力緩和機能を有し、好ましくはポリイミド樹脂が用いられるが、他に、シリコン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン変性エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン(BCB)、ポリベンゾオキサゾール(POB)等の樹脂を採用することもできる。
なお、樹脂層70は20um以上の厚さを持つことが好ましい。
【0034】
スパイラルインダクタ40,50は、第1の樹脂層70の表面に図1に示す渦巻き形状を有して形成されており、スパイラルインダクタ40とスパイラルインダクタ50とは、それぞれの間隔の中心線gに対して対称形である。従って、スパイラルインダクタ40を例にあげ説明する。
【0035】
スパイラルインダクタ40の外側の端部41は、樹脂層70に覆われる範囲にあって下層のCu配線層30を介して接続電極14に接続され、渦巻き形状の内側に向かって立ち上げ部を有し、樹脂層70の表面に延在される。そして、樹脂層70の表面において渦巻き形状のスパイラルインダクタ40が形成されている。
このスパイラルインダクタ40の内側の端部42は、Cu接続配線層55からの立ち上げ部に接続されている。
【0036】
一方、Cu接続配線層55の一方の端部は二股に分岐されて、スパイラルインダクタ40及びスパイラルインダクタ50それぞれの内側の端部42,52と接続し(図1、参照)、他方の端部は、樹脂層70の表面に延在されて外部端子81との接続部61を形成する。スパイラルインダクタ50の外側の端部51は、半導体基板10に形成されるもう一つの接続電極(14)に接続されている。
【0037】
樹脂層70の表面には、スパイラルインダクタ40,50を覆う第2の樹脂層としてのレジスト層75が形成される。レジスト層75は、ソルダレジスト層であって、外部端子81が形成される領域のみが開口し、他の領域は封止している。レジスト層75を設けることで、スパイラルインダクタ40,50及び接続部61を含むCu配線層の腐食を防止し、電気的不良を防止する。
【0038】
半導体装置1には、複数の外部端子が設けられ、本実施形態では、6個の外部端子81〜86が設けられている(図1、参照)。外部端子81〜86は、半導体基板10に設けられる複数の接続電極のうちのそれぞれに対応する接続電極に接続され、外部端子81はVdd端子、外部端子82は出力端子OUT2、外部端子83はGND端子、外部端子84はVc端子、外部端子85はGND端子、外部端子86は出力端子OUT1である(図3も参照する)。
【0039】
外部端子81〜86及び周縁の基本構造はそれぞれ同じであるため、外部端子81を例示して説明する。レジスト層75には、外部端子81を形成するための開口部が設けられており、この開口部において露出される接続部61がランド62である。このランド62内に外部端子81が形成される。
【0040】
外部端子81は、導電性を有する金属であって、溶融させて電気的な接続を図るためのもの、例えば、半田である。半田以外に軟ろう(Soft solder)または硬ろう(hard solder)のいずれでも形成することが可能である。本実施形態では、外部端子81は、球状をしており、半田ボールを採用している。
【0041】
レジスト層75の表面には被覆膜76が形成される。被覆膜76は、外部端子81〜86の根本部(図2中、外部端子の下部)も覆っている。被覆膜76は、レジスト層75の表面に形成される部分と、ここから立ち上がって外部端子81〜86の根本部を覆う部分とを有し、外部端子81〜86を補強する。さらに、半導体装置1が回路基板等に実装された後に、被覆膜76によって外部端子への応力の集中を分散させることができる。
【0042】
本実施形態に係る半導体装置1は、上述したように構成されており、以下にその製造方法を図2を参照して簡単に説明する。なお、前述した各構成部位については、図示されたものを代表して説明する。
まず、パッシベーション膜16と接続電極14,15が形成された半導体基板10の表面に接続配線層25,26をスパッタリングにより形成する。接続電極14,15と接続配線層25,26とは電気的に接続された状態である。この際、接続配線層25,26は連続した全面に形成される。
【0043】
続いて、接続配線層25,26の表面にCuメッキレジストを塗布し、下層のCu配線層41,55の所定の形状に露光処理によってパターニングし、電解Cuメッキにより下層のCu配線層41,55を形成する。そしてCuメッキレジストを除去し、Cu配線層41,55と同じ平面形状の接続配線層25,26の不要部分を除去し、Cu配線層41,55と同じ平面形状の接続配線層25,26を形成する。
続いて、第1の樹脂層70(ポリイミド樹脂)を全面に塗布する。
【0044】
ここで、第1の樹脂層70は、スパイラルインダクタ40のうちの端部41及びCu接続配線層55の表面までの厚さに一旦形成される(この樹脂層を第1層と呼ぶ)。続いて、第1の樹脂層70をこの端部41とCu接続配線層55の立ち上げ部がない部分の形状に露光処理等により開口する。そして、この開口された部分と第1層の最上層全面に接続配線層25,26をスパッタリングにて形成し、その上面にメッキレジストを塗布した後パターニングし、接続配線層25,26の表面に、電解CuメッキでCu配線層のうち端部41とCu接続配線層55の立ち上げ部がない部分を形成する。そして、これらのCu配線層、Cu接続配線層55の上面を含んで第1の樹脂層70のうちの残り厚みとなる第2層を全面に塗布する。この工程を経て第1の樹脂層70の総厚みが形成される。
【0045】
次に、この第1の樹脂層70(第2層に相当する)を、スパイラルインダクタ40の立ち上げ部、及びCu接続配線層55の立ち上げ部を開口し、第1の樹脂層70の最上層に再び配線層をスパッタ後、メッキレジストを塗布し、スパイラルインダクタ40の渦巻き形状(立ち上げ部含む)と、Cu接続配線層55の立ち上げ部及び接続部61の形状にパターニングし、電解Cuメッキにてスパイラルインダクタ40及び接続部61を形成する。そして、メッキレジストとスパッタ配線層の不要部分を除去する。
【0046】
続いて、第1の樹脂層70の表面に、スパイラルインダクタ40及び接続部61の表面を含んでレジスト(ソルダレジスト)を塗布し、レジスト層75を形成する。レジスト層75には、ランド62が開口されている。このランド62に半田ボールからなる外部端子81が形成された後、レジスト層75の表面に根本補強層としての被覆膜76が形成される。被覆膜76はポリイミド樹脂で形成されることが望ましい。
【0047】
続いて、上述した構造、方法で製造された半導体装置1の回路構成について図3を参照して説明する。本実施形態において説明した半導体装置1は、Cu配線層でスパイラルインダクタ40,50を形成しているところに特徴を有しており、様々な回路に応用できるが、このスパイラルインダクタ40,50を用いる電圧制御発振器に好適であるため、電圧制御発振器を代表例として例示して説明する。
【0048】
図3は、実施形態1に係る半導体装置1に形成される電圧制御発振器90の基本回路構成を示す回路図である。図3において、この電圧制御発振器90は、前述したように集積回路12内のモノシリック構成回路領域92と、集積回路12の上面に積層形成されるスパイラルインダクタ40,50が形成される一対のCu配線層領域91(受動素子領域)とから構成されている。
【0049】
この電圧制御発振器90は、電源電位端子Vdd(以降、Vdd端子と表す)、可変電位端子Vc(以降、Vc端子と表す)及び接地電位端子GND(以降、単にGND端子と表す)に接続されている。電圧制御発振器90には、Vdd端子からGND端子に向かって、スパイラルインダクタ40,50と、二つの可変キャパシタ96と、負性抵抗部としてのNチャンネルトランジスタ93,94と、電流調整部95とが、この順で接続されている。
【0050】
スパイラルインダクタ40,50の一端は、Vdd端子に接続し、他端は、それぞれ可変キャパシタ96の一端に接続されている。
負性抵抗部は、Nチャンネルトランジスタ93のドレインが出力端子OUT1に接続され、ゲートは出力端子OUT2に接続されている。また、Nチャンネルトランジスタ94のドレインは出力端子OUT2に接続され、ゲートは出力端子OUT1に接続されている。また、出力端子OUT1、OUT2の直前には出力信号を増幅するバッファアンプ97、98を備えている。
【0051】
上述したような回路構成の電圧制御発振器90は、Vdd端子及びGND端子に接続されることにより、スパイラルインダクタ40,50及び二つの可変キャパシタ96からなるLC共振回路に電圧が印加されると、LC共振回路が相補の共振信号を出力端子OUT1及び出力端子OUT2から発振する。しかし、この状態のままでは発振は減衰していく。
【0052】
そのために、Vc端子に正の可変電位を印加し、GND端子に接地電位を印加して電流を供給すると共に、負性抵抗部を設けることにより、LC共振回路に恒久的に共振信号を発振させることができる。
【0053】
従って、前述した実施形態1によれば、半導体基板10に形成される第1の樹脂層70の表面に、Cu配線層によって受動素子としてのスパイラルインダクタ40,50が構成される。Cu配線層は、従来用いられるAl配線層に比べ、比抵抗が約30%程度小さく、また、このCu配線層は電解Cuメッキで形成されることから厚くすることができることから、Cu配線層の配線抵抗をより小さく抑えることができる。
【0054】
また、半導体基板10が、ウエハからスクライブ分離された半導体チップである場合において、このスパイラルインダクタ40,50は、半導体基板10上に形成される第1の樹脂層70の表面にCu配線層によって構成されることから、半導体チップの平面形状(平面面積)の大部分にわたって形成可能になるため、スパイラルインダクタ40,50を構成するCu配線層の幅を大きくすることができ、配線抵抗をより小さくすることが可能となる。
【0055】
周知の通り、Q値は、リアクタンスに比例し、抵抗値に反比例することから、スパイラルインダクタ40,50の配線抵抗を下げることによりQ値を高めることができる。
また、本実施形態の電圧制御発振器90の共振回路における位相雑音特性は、Q値の二乗に反比例することが知られている。ただし、発振回路の位相雑音特性で用いられるQ値は、負荷Qと呼ばれる回路全体の損失を表す値であるが、本実施例の場合ではスパイラルインダクタ部の寄与がもっとも大きいためスパイラルインダクタのQ値で議論しても良い。従って、スパイラルインダクタ部のQ値を大きくすることにより位相雑音特性(位相ノイズ)を低減することができる。
【0056】
また、このような構造によれば、半導体装置1が、さらに外部端子81〜86の一部を除いてスパイラルインダクタ40,50がレジスト層75で封止されていることから、あらためてパッケージ実装をせずに、パッケージング実装と同等な封止特性が得られ、内部の配線層の腐食等を防止することができ、さらに、半導体チップサイズの樹脂封止された小型半導体装置を提供することができる。
【0057】
さらに、レジスト層75の表面には、被覆膜76が形成されるため、なお一層良好な封止特性が得られる他、外部端子81〜86の根本補強をすることができ、外部端子81〜86の固定強度(接続強度)を高めるとともに、回路基板への実装の際に、接続応力を分散させることができる。
(実施形態2)
【0058】
続いて、本発明の実施形態2に係る半導体装置について図面を参照して説明する。実施形態2は、上述した実施形態1に比べ、Cu配線層を用いて、受動素子としてのスパイラルインダクタの他に、キャパシタを備えるところに特徴を有しており、各Cu配線層の形成構造及び形成方法は、実施形態1(図1,2参照)と同じか応用の範囲であり、詳しい説明を省略し、同じ構成の部位については、同じ符号を附している。
【0059】
図4、図5は、実施形態2に係る半導体装置100が示され、図4はその平面図、図5は、図4に表されるB−B切断面を示す断面図である。図4,5において、半導体基板10の最上層には、パッシベーション膜16と、接続電極17とが形成されており、この上面には、接続配線層125,126が形成され、さらに、その上面には下層のCu配線層141,156が形成されている。
【0060】
接続配線層126の上面には、CuメッキからなるCu接続配線層155に連続するキャパシタC1,C2の下部電極部156が形成されている。Cu接続配線層155は、図4に示すように、下部電極部156の延在途中から二股に分岐され、一方の端部がスパイラルインダクタ140の端部142と接続される。また、他方の端部は、スパイラルインダクタ150の端部152と接続される。
【0061】
スパイラルインダクタ140,150のそれぞれのもう一方の端部141,151は、前述した実施形態1(図2、参照)によるスパイラルインダクタ40の端部41と接続電極14の接続構造と同じ構造でGND端子に接続されている(図6も参照する)。
パッシベーション膜16の上面には、第1の樹脂層70が形成され、この最上層には第1のCu配線層からなるスパイラルインダクタ140,150と、第2のCu配線層からなるキャパシタC1,C2を構成する上部電極部165が形成される。
【0062】
スパイラルインダクタ140,150の平面構成は実施形態1(図1、参照)と同じである。キャパシタC1,C2を構成する上部電極部165は、Cu配線層164が延在されて形成されている。なお、キャパシタC1,C2は本実施形態では、同じサイズで形成されている。
【0063】
ここで、キャパシタC1,C2の構成を説明する。キャパシタC1,C2は同じ構成であるためキャパシタC1を例示して説明する。下層のCu接続配線層155の一部と上層のCu配線層164の一部とが平面方向において交差するように形成されている。この交差部において、上層はキャパシタの上部電極部165であり、下層は下部電極部156であり、この上部電極部165と下部電極部156とによって挟まれた領域の第1の樹脂層70がキャパシタにおける誘電体に相当し、キャパシタC1,C2が形成される。
【0064】
上述したスパイラルインダクタ140,150及び上部電極部165の上面は、第2の樹脂層(レジスト層)75によって覆われる。そして、外部端子83と被覆膜76とが形成されている。外部端子81〜86は、図示する外部端子83や、前述した実施形態1(図2、参照)の外部端子81と同様な構造で形成される。
【0065】
次に、上述した実施形態2による構造の半導体装置100の回路構成について図6を参照して説明する。本実施形態において説明した半導体装置100は、Cu配線層を用いてスパイラルインダクタ140,150とキャパシタC1,C2を形成しているところに特徴を有しており、実施形態1(図3、参照)と同様に電圧制御発振器を例示して説明する。
【0066】
図6は、実施形態2に係る半導体装置100における電圧制御発振器190の基本回路構成を示す回路図である。図4も参照する。図4、図6において、この電圧制御発振器190は、前述したように集積回路12内のモノシリック構成回路領域(能動素子領域)92と、集積回路12の上面に積層形成されるスパイラルインダクタ140,150及びキャパシタC1,C2が形成されるCu配線層領域(受動素子領域)91とから構成されている。
【0067】
この電圧制御発振器190は、電源電位端子Vdd(以降、Vdd端子と表す)、可変電位端子Vc(以降、Vc端子と表す)及び接地電位端子GND1(以降、単にGND1端子と表す)に接続されている。電圧制御発振器190には、Vdd端子からGND1端子に向かって、スパイラルインダクタ140,150と、キャパシタC1,C2と、2個の可変キャパシタ96と、負性抵抗部としてのNチャンネルトランジスタ93,94と、電流調整部95とが、この順で接続されている。
【0068】
スパイラルインダクタ140,150の一端は、Vdd端子に接続し、他端は、それぞれキャパシタC1,C2の一方の端部に接続し、キャパシタC1,C2の一方の端部はGND2端子に接続され、他端は可変キャパシタ96の一端に接続されている。従って、キャパシタC1,C2と可変キャパシタ96とは、電気的に並列接続である。
【0069】
負性抵抗部は、Nチャンネルトランジスタ93のドレインは出力端子OUT1に接続され、ゲートは出力端子OUT2に接続されている。また、Nチャンネルトランジスタ94のドレインは出力端子OUT2に接続され、ゲートは出力端子OUT1に接続されている。
【0070】
この電圧制御発振器190の作用は、前述した実施形態1と基本的に同じであるが、実施形態1とは、キャパシタC1,C2が追加されているところが異なり、LC共振回路において、付加容量が形成されたことになる。
【0071】
従って、前述した実施形態2によれば、集積回路12の外部に可変キャパシタ96に並列にキャパシタC1,C2を設けることにより、静電容量を大きくすることが可能となる。静電容量を大きくすると、発振周波数が小さくなることは知られている。このことから低周波数領域の発振器を実現することができる。
【0072】
また、集積回路12内部に形成される可変キャパシタ96は、サイズ、誘電率に制約があり、静電容量にも限界があるが、本実施形態によるキャパシタC1,C2を設けることにより周波数の選択幅を広げることが可能になる他、半導体基板10に形成される上部電極165、下部電極部156は面積を大きくし易いことから、キャパシタC1,C2の静電容量を大きくすることが可能となる。
【0073】
また、可変キャパシタ96に加え、キャパシタC1,C2を加えることによって、キャパシタの静電容量の設定範囲を広げることができることから、電圧制御発振器190の周波数帯域を広げることができる。
【0074】
また、このような構造によれば、実施形態1と同様に、あらためてパッケージング実装をせずに、パッケージング実装と同等な封止特性が得られ、内部の配線層の腐食等を防止することができ、さらに、半導体チップサイズの樹脂封止された小型半導体装置を提供することができる。
【0075】
さらに、スパイラルインダクタ140,150とキャパシタC1,C2の上部電極部165とは、第1の樹脂層70の同一表面に形成しているので、上層のCu配線層形成時に同じ工程で形成することができる。従って、二つの受動素子を形成しても製造工程を増加することなく製造できる。
【0076】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明しているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲に逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、材質、それらの組み合わせ、及びその他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0077】
従って、上記に開示した形状、材質、工程順などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものでないから、それらの形状、材質、及び組み合わせ、工程順などの限定の一部もしくは全部の限定をはずした部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0078】
例えば、前述した実施形態2では、第1の樹脂層70の表面にスパイラルインダクタ140,150とキャパシタC1,C2を配設しているが、キャパシタC1,C2だけを配設する構成とすることができる。
【0079】
また、前述の実施形態1,2では、スパイラルインダクタ40,50及び140,150は、LC共振器のインダクタとして用いる例をあげているが、このような渦巻き形状の平面アンテナとして用い、通信用の半導体装置として応用することも可能である。
【0080】
さらに、前述したスパイラルインダクタ、キャパシタの他に、Cu配線層からなる他の受動素子を形成することや、これらと接続する回路素子を組み合わせることも可能である。
【0081】
従って、前述した実施形態1及び実施形態2によれば、Q値が高い受動素子を備え位相雑音特性が優れるとともに周波数の選択幅を広げることが可能な発振器と、この発振器を備え、半導体チップサイズのパッケージを構成できる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態1に係る半導体装置の平面図。
【図2】本発明の実施形態1に係る半導体装置の断面図。
【図3】本発明の実施形態1に係る半導体装置における電圧制御発振器の基本回路構成を示す回路図。
【図4】本発明の実施形態2に係る半導体装置の平面図。
【図5】本発明の実施形態2に係る半導体装置の断面図。
【図6】本発明の実施形態2に係る半導体装置における電圧制御発振器の基本回路構成を示す回路図。
【符号の説明】
【0083】
1…半導体装置、10…半導体基板、12…集積回路、14,15…接続電極、25,26…接続配線層、40,50…受動素子としてのスパイラルインダクタ、70…第1の樹脂層、75…第2の樹脂層、81〜86…外部端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動素子としての集積回路と、該集積回路に電気的に接続される複数の接続電極とを含む半導体基板と、
前記半導体基板の前記接続電極が形成される面に、前記接続電極を避けて形成される第1の樹脂層と、
前記半導体基板と前記第1の樹脂層の間に形成され、前記複数の接続電極のうちの一つに接続される接続配線層と、
前記接続配線層に一端が接続され、前記第1の樹脂層の表面に形成されるCu配線層と、
前記接続配線層と前記Cu配線層とからなる受動素子と、
前記Cu配線層の表面を覆う第2の樹脂層と、
前記複数の接続電極のいくつかと電気的に接続され、前記第2の樹脂層から一部が突出してなる外部端子と、を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記受動素子が、前記第1の樹脂層の表面に形成されるCu配線層からなるスパイラルインダクタであることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記受動素子が、前記接続配線層と、前記Cu配線層と、前記接続配線層と前記Cu配線層とが交差する領域に挟まれる第1の樹脂層と、からなるキャパシタであり、
前記キャパシタが、前記集積回路に設けられる可変キャパシタと並列に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記受動素子が、前記第1の樹脂層の表面に形成される第1のCu配線層からなるスパイラルインダクタと、
前記第1の樹脂層の表面に形成される第2のCu配線層と、前記接続配線層と、前記第2のCu配線層と前記接続配線層とが交差する領域に挟まれる第1の樹脂層と、からなるキャパシタと、から構成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記半導体装置が、前記第2の樹脂層によって、前記外部端子の一部を除いて封止されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
能動素子としての集積回路と、該集積回路に電気的に接続された複数の接続電極とを含む半導体基板と、
前記半導体基板の前記接続電極が形成される面に、前記接続電極を避けて形成される第1の樹脂層と、
前記第1の樹脂層の表面に、共振回路を構成する前記請求項2に記載のスパイラルインダクタと、前記請求項3に記載のキャパシタのどちらか一方、または両方を並列に接続して構成される受動素子と、
前記複数の接続電極のいくつかに接続する外部端子と、を備えることを特徴とする発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−59878(P2007−59878A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176274(P2006−176274)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】