説明

半導体装置および携帯電話機

【課題】アンテナスイッチのコスト削減を図る観点から、特に、アンテナスイッチをシリコン基板上に形成された電界効果トランジスタから構成する場合であっても、アンテナスイッチで発生する高調波歪みをできるだけ低減できる技術を提供する。
【解決手段】RXスルートランジスタ群TH(RX)は、互いに直列に接続されたMISFETQ1〜Q5において、それぞれのMISFETのボディ領域と、隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域とを、それぞれ、ダイオード(整流素子)を介して接続する。そして、特に、nチャネル型MISFETの場合、MISFETのボディ領域から隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う向きが順方向となるようにダイオードを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および携帯電話機に関し、特に、SOI(Silicon On Insulator)基板に形成されたアンテナスイッチを含む半導体装置および携帯電話機に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2009−500868号公報(特許文献1)には、SOI基板に形成されたMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)より構成されるアンテナスイッチに関する技術が記載されており、MISFETの寄生容量の電圧依存性に起因した高調波歪みを低減する技術が記載されている。具体的に、上述した特許文献1では、SOI基板の支持基板としてサファイア基板を使用している。これにより、MISFETのソース領域およびドレイン領域に付随する基板容量が小さくなり、2次高調波歪みを低減できるとしている。さらに、MISFETのボディ領域に、ボディ領域の電位を制御するための電極を設けている。そして、MISFETがnチャネル型MISFETの場合は、この電極に負電位を印加する一方、MISFETがpチャネル型MISFETの場合は、この電極に正電位を印加するとしている。これにより、ソース領域あるいはドレイン領域とボディ領域との間の接合容量の電圧依存性を小さくすることができ、この結果、アンテナスイッチから発生する3次高調波歪みを低減できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−500868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の携帯電話機では音声通話機能だけでなく様々なアプリケーション機能が追加されている。すなわち、携帯電話機を用いた配信音楽の視聴、動画伝送、データ転送などの音声通話機能以外の機能が携帯電話機に追加されている。このような携帯電話機の多機能化に伴い、世界各国での周波数帯(GSM(Global System for Mobile communications)帯、PCS(Personal Communication Services)帯など)や変調方式(GSM、EDGE(Enhanced Data rates for GSM Evolution)、WCDMA(Wideband Code Division Multiplex Access)など)が多数存在することになっている。したがって、携帯電話機では、複数の異なる周波数帯や異なる変調方式に対応した送受信信号に対応する必要がある。このことから、携帯電話機では、これらの送受信信号の送信と受信とを1つのアンテナで共用し、アンテナスイッチによってアンテナとの接続を切り替えることが行なわれている。
【0005】
例えば、携帯電話機においては、送信信号の電力が1Wを超えるなど大電力になることが普通であり、アンテナスイッチには、大電力の送信信号の高品質性を確保し、かつ、他の周波数帯の通信に悪影響を与える妨害波(高次高調波)の発生を低減する性能が要求される。このため、アンテナスイッチを構成するスイッチング素子として電界効果トランジスタを使用する場合、この電界効果トランジスタには、高耐圧性だけでなく、高次高調波歪みを低減できる性能が要求される。
【0006】
このことから、アンテナスイッチを構成する電界効果トランジスタは、低損失や低高調波歪みを実現するため、寄生容量が少なく、線形性に優れたGaAs基板やサファイア基板上に形成される電界効果トランジスタ(例えば、HEMT(High Electron Mobility Transistor))が使用されている。しかし、高周波特性に優れている化合物半導体基板は、高価であり、アンテナスイッチのコスト低下の観点から望ましいとはいえない。アンテナスイッチのコスト低下を実現するには、安価なシリコン基板(SOI(Silicon On Insulator)基板)上に形成された電界効果トランジスタを使用することが効果的である。しかし、安価なSOI基板は、高価な化合物半導体基板に比べて寄生容量が大きく、化合物半導体基板上に形成された電界効果トランジスタよりも高調波歪みが大きくなる問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、アンテナスイッチのコスト削減を図る観点から、特に、アンテナスイッチをSOI基板上に形成された電界効果トランジスタから構成する場合であっても、アンテナスイッチで発生する高調波歪みをできるだけ低減できる技術を提供することにある。
【0008】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
代表的な実施の形態における半導体装置は、第1端子と第2端子とを有し、かつ、前記第1端子と前記第2端子との間の導通・非導通を制御するスイッチを備える。このとき、前記スイッチは、(a)前記第1端子と前記第2端子との間に直列に複数個接続された電界効果トランジスタからなる第1電界効果トランジスタ群を有する。そして、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれるそれぞれの前記電界効果トランジスタは、(a1)チャネルが形成される半導体領域であるボディ領域と、(a2)前記ボディ領域を挟むように形成された一対のソース領域およびドレイン領域と、(a3)前記ボディ領域上に形成されたゲート絶縁膜と、(a4)前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを有する。
【0011】
ここで、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる第1電界効果トランジスタの第1ボディ領域は、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる他の第2電界効果トランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域と、整流素子を介して電気的に接続されている。そして、前記整流素子は、前記第1電界効果トランジスタの前記第1ボディ領域から、前記第2電界効果トランジスタの前記第2ソース領域あるいは前記第2ドレイン領域へ向う方向が、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記電界効果トランジスタがnチャネル型電界効果トランジスタの場合は順方向となるように接続されている。一方、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記電界効果トランジスタがpチャネル型電界効果トランジスタの場合は逆方向となるように接続されている。
【0012】
また、代表的な実施の形態における半導体装置は、送信端子とアンテナ端子と受信端子とを有するアンテナスイッチを備える。このとき、前記アンテナスイッチは、(a)前記アンテナ端子と前記受信端子との間に直列に複数個接続された受信スイッチ用電界効果トランジスタからなる第1電界効果トランジスタ群と、(b)前記アンテナ端子と前記送信端子との間に直列に複数個接続された送信スイッチ用電界効果トランジスタからなる第2電界効果トランジスタ群とを有する。そして、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれるそれぞれの前記受信スイッチ用電界効果トランジスタあるいは前記第2電界効果トランジスタ群に含まれるそれぞれの前記送信スイッチ用電界効果トランジスタは、(ab1)チャネルが形成される半導体領域であるボディ領域と、(ab2)前記ボディ領域を挟むように形成された一対のソース領域およびドレイン領域とを有する。さらに、(ab3)前記ボディ領域上に形成されたゲート絶縁膜と、(ab4)前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを有する。ここで、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる第1受信スイッチ用電界効果トランジスタの第1ボディ領域は、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる他の第2受信スイッチ用電界効果トランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域と、第1整流素子を介して電気的に接続されている。そして、前記第1整流素子は、前記第1受信スイッチ用電界効果トランジスタの第1ボディ領域から、前記第2受信スイッチ用電界効果トランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域へ向う方向が、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記受信スイッチ用電界効果トランジスタがnチャネル型電界効果トランジスタの場合は順方向となるように接続されている。一方、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記受信スイッチ用電界効果トランジスタがpチャネル型電界効果トランジスタの場合は逆方向となるように接続されている。
【0013】
また、代表的な実施の形態における携帯電話機は、送信端子とアンテナ端子と受信端子を有する。そして、携帯電話機は、送信信号を送信する際には前記送信端子と前記アンテナ端子を導通させて前記送信端子から前記アンテナ端子に向って前記送信信号を伝達させる一方、受信信号を受信する際には前記受信端子と前記アンテナ端子とを導通させて前記アンテナ端子から前記受信端子に向って前記受信信号を伝達させるというスイッチング制御を行なうアンテナスイッチを含む。このとき、前記アンテナスイッチは、(a)前記アンテナ端子と前記受信端子との間に直列に複数個接続された受信スイッチ用電界効果トランジスタからなる第1電界効果トランジスタ群と、(b)前記アンテナ端子と前記送信端子との間に直列に複数個接続された送信スイッチ用電界効果トランジスタからなる第2電界効果トランジスタ群とを有する。そして、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれるそれぞれの前記受信スイッチ用電界効果トランジスタあるいは前記第2電界効果トランジスタ群に含まれるそれぞれの前記送信スイッチ用電界効果トランジスタは、(ab1)チャネルが形成される半導体領域であるボディ領域と、(ab2)前記ボディ領域を挟むように形成された一対のソース領域およびドレイン領域とを有する。さらに、(ab3)前記ボディ領域上に形成されたゲート絶縁膜と、(ab4)前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを含む。ここで、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる第1受信スイッチ用電界効果トランジスタの第1ボディ領域は、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる他の第2受信スイッチ用電界効果トランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域と、第1整流素子を介して電気的に接続されている。そして、前記第1整流素子は、前記第1受信スイッチ用電界効果トランジスタの第1ボディ領域から、前記第2受信スイッチ用電界効果トランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域へ向う方向が、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記受信スイッチ用電界効果トランジスタがnチャネル型電界効果トランジスタの場合は順方向となるように接続されている。一方、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記受信スイッチ用電界効果トランジスタがpチャネル型電界効果トランジスタの場合は逆方向となるように接続されている。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0015】
アンテナスイッチで発生する高調波歪みをできるだけ低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】携帯電話機の送受信部の構成を示すブロック図である。
【図2】アンテナスイッチの回路構成を示す図である。
【図3】アンテナスイッチを構成するMISFETの断面を示す断面図である。
【図4】SOI基板上に形成されたMISFETの場合と化合物半導体基板上に形成されたHEMTの場合のそれぞれにおいて、周波数1.9GHzでの入力電力と3次高調波歪みの関係を示すグラフである。
【図5】ソース領域とドレイン領域の間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合のソース・ドレイン間電圧、ボディ・ソース間電圧、ボディ・ドレイン間電圧、ゲート・ボディ間電圧のそれぞれの時間変化を示すグラフである。
【図6】ソース・ドレイン間電圧とボディ・ドレイン間接合容量との関係、および、ソース・ドレイン間電圧とボディ・ソース間接合容量との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態1におけるアンテナスイッチの回路構成を示す図である。
【図8】実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群のスイッチ構成を示す回路図である。
【図9】実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群の構成を示す回路図である。
【図10】MISFETの各ノード間の電圧変化を示すグラフである。
【図11】MISFETの各ノード間の電圧変化を示すグラフである。
【図12】実施の形態1のRXスルートランジスタ群を構成する各MISFETにおいて、ノード間電圧の時間変化を示すグラフである。
【図13】実施の形態1において、ソース・ドレイン間電圧とボディ・ドレイン間接合容量との関係、および、ソース・ドレイン間電圧とボディ・ソース間接合容量との関係を示すグラフである。
【図14】(a)は、従来技術において、RXスルートランジスタ群を構成するMISFETの断面構造を示す図であり、(b)は、エネルギーバンド図である。
【図15】(a)は、実施の形態1において、RXスルートランジスタ群を構成するMISFETの断面構造を示す図であり、(b)は、エネルギーバンド図である。
【図16】(a)は、実施の形態1において、RXスルートランジスタ群を構成するMISFETの断面構造を示す図であり、(b)は、エネルギーバンド図である。
【図17】(a)は、実施の形態1において、RXスルートランジスタ群を構成するMISFETの断面構造を示す図であり、(b)は、エネルギーバンド図である。
【図18】実施の形態1におけるMISFETのレイアウト構成を示す平面図である。
【図19】図18のA−A線で切断した断面図である。
【図20】図18に示すMISFETの平面構造に配線層を加えた平面図である。
【図21】実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群のレイアウト構成を示す図である。
【図22】実施の形態2におけるアンテナスイッチの回路構成を示す図である。
【図23】実施の形態3におけるRXスルートランジスタ群のスイッチ構成を示す回路図である。
【図24】実施の形態4におけるMISFETのレイアウト構成を示す平面図である。
【図25】図24のA−A線で切断した断面図である。
【図26】実施の形態5におけるRXスルートランジスタ群の回路構成を示す図である。
【図27】実施の形態6におけるRXスルートランジスタ群の回路構成を示す図である。
【図28】実施の形態6におけるMISFETおよび整流素子用MISFETのレイアウト構成を示す平面図である。
【図29】図28のA−A線で切断した断面図である。
【図30】図28に示すMISFETの平面構造に配線層を加えた平面図である。
【図31】例えば、デュアルバンドの信号を送受信する携帯電話機の構成を示すブロック図である。
【図32】実施の形態7におけるアンテナスイッチの回路構成を示す図である。
【図33】実施の形態8におけるアンテナスイッチの回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0018】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0019】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0020】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0021】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0022】
(実施の形態1)
<携帯電話機の構成および動作>
図1は、携帯電話機の送受信部の構成を示すブロック図である。図1に示すように、携帯電話機1は、制御部CU、インターフェース部IFU、ベースバンド部BBU、RF集積回路部RFIC、電力増幅器HPA、低雑音増幅器LNA、アンテナスイッチASWおよびアンテナANTを有している。
【0023】
インターフェース部IFUは、ユーザ(通話者)からの音声信号を処理する機能を有している。すなわち、インターフェース部IFUは、ユーザと携帯電話機とのインターフェースをとる機能を有している。そして、ベースバンド部BBUは、中央制御部であるCPUを内蔵し、送信時には、操作部を介したユーザ(通話者)からの音声信号(アナログ信号)をデジタル処理してベースバンド信号を生成できるように構成されている。一方、受信時には、デジタル信号であるベースバンド信号から音声信号を生成できるように構成されている。さらに、制御部CUは、ベースバンド部BBUと接続されており、ベースバンド部BBUにおけるベースバンド信号の信号処理を制御する機能を有している。
【0024】
RF集積回路部RFICは、送信時にはベースバンド信号を変調して無線周波数の信号を生成し、受信時には、受信信号を復調してベースバンド信号を生成することができるように構成されている。このとき、制御部CUは、RF集積回路部RFICとも接続されており、RF集積回路部RFICにおける送信信号の変調や受信信号の復調を制御する機能も有している。
【0025】
電力増幅器HPAは、微弱な入力信号と相似な大電力の信号を電源から供給される電力で新たに生成して出力する回路である。一方、低雑音増幅器LNAは、受信信号に含まれるノイズを増幅することなく、受信信号を増幅するように構成されている。
【0026】
アンテナスイッチASWは、携帯電話機1に入力される受信信号と携帯電話機1から出力される送信信号とを分離するためのものであり、アンテナANTは、電波を送受信するためのものである。アンテナスイッチASWは、例えば、送信端子TXと受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)を有している。この送信端子TXは電力増幅器HPAと接続されており、受信端子RXは低雑音増幅器LNAと接続されている。さらに、アンテナ端子ANT(OUT)はアンテナANTと電気的に接続されている。アンテナスイッチASWは制御部CUと接続されており、アンテナスイッチASWにおけるスイッチの切り替え動作は、制御部CUによって制御されている。
【0027】
携帯電話機1は、上記のように構成されており、以下に、その動作について簡単に説明する。まず、信号を送信する場合について説明する。インターフェース部IFUを介して音声信号などの信号がベースバンド部BBUに入力されると、ベースバンド部BBUは、音声信号などのアナログ信号をデジタル処理する。これにより、生成されたベースバンド信号は、RF集積回路部RFICに入力する。RF集積回路部RFICでは、入力したベースバンド信号を、変調信号源およびミキサによって、無線周波数(RF(Radio Frequency)周波数)の信号に変換する。無線周波数に変換された信号は、RF集積回路部RFICから電力増幅器(RFモジュール)HPAに出力される。電力増幅器HPAに入力した無線周波数の信号は、電力増幅器HPAで増幅された後、アンテナスイッチASWを介してアンテナANTより送信される。具体的に、アンテナスイッチASWでは、電力増幅器HPAと電気的に接続されている送信端子TXをアンテナANTと電気的に接続するようにスイッチの切り替えが行なわれる。これにより、電力増幅器HPAで増幅された無線周波数の信号はアンテナスイッチASWを介してアンテナANTから送信される。
【0028】
次に、信号を受信する場合について説明する。アンテナANTにより受信された無線周波数の信号(受信信号)は、アンテナスイッチASWを介して低雑音増幅器LNAに入力される。具体的に、アンテナスイッチASWでは、アンテナANTと受信端子RXとを電気的に接続するようにスイッチの切り替えが行なわれる。これにより、アンテナANTで受信した受信信号は、アンテナスイッチASWの受信端子RXに伝達される。アンテナスイッチASWの受信端子RXは、低雑音増幅器LNAと接続されているので、受信信号は、アンテナスイッチASWの受信端子RXから低雑音増幅器LNAに入力される。そして、受信信号は低雑音増幅器LNAで増幅された後、RF集積回路部RFICに入力する。RF集積回路部RFICでは、変調信号源およびミキサによって、周波数変換を行なう。そして、周波数変換された信号の検波が行なわれ、ベースバンド信号が抽出される。その後、このベースバンド信号は、RF集積回路部RFICからベースバンド部BBUに出力される。このベースバンド信号がベースバンド部BBUで処理され、インターフェース部IFUを介して携帯電話機1から音声信号が出力される。以上は、シングルバンドの信号を送受信する携帯電話機1の簡単な構成およびその動作である。
【0029】
<アンテナスイッチの回路構成>
次に、アンテナスイッチASWの回路構成について説明する。図2は、アンテナスイッチASWの回路構成を示す図である。図2に示すように、アンテナスイッチASWは、送信端子TXと、受信端子RXと、アンテナ端子ANT(OUT)とを有している。そして、アンテナスイッチASWは、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との間にTXスルートランジスタ群TH(TX)を有し、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)との間にRXスルートランジスタ群TH(RX)を有している。さらに、アンテナスイッチASWは、送信端子TXとGND端子GND1の間にTXシャントトランジスタ群SH(TX)を有し、受信端子RXとGND端子GND2の間にRXシャントトランジスタ群SH(RX)を有している。
【0030】
送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との間に設けられているTXスルートランジスタ群TH(TX)は、例えば、直列に接続された5つのMISFET(Metal Insulator semiconductor Field Effect Transistor)Qから構成されている。このとき、各MISFETQは、ソース領域とドレイン領域とゲート電極とを有している。本明細書では、MISFETQのソース領域とドレイン領域とは対称になっているが、TXスルートランジスタ群TH(TX)を構成するMISFETQにおいては、送信端子TX側の領域をドレイン領域とし、アンテナ端子ANT(OUT)側の領域をソース領域と定義することにする。さらに、MISFETQのゲート電極はゲート抵抗GRを介して制御端子VTXに接続されている。ゲート抵抗GRは、制御端子VTXに高周波信号が漏れ込まないようにするためのアイソレーション抵抗である。言い換えれば、ゲート抵抗GRは高周波信号を減衰させる機能を有している。このように構成されているTXスルートランジスタ群TH(TX)では、制御端子VTXに印加する電圧を制御することより、直列に接続されたMISFETQのオン/オフを制御して、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との間を電気的に接続したり、電気的に遮断するようになっている。つまり、TXスルートランジスタ群TH(TX)は、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との電気的な接続/非接続を切り替えるスイッチとして機能する。
【0031】
続いて、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)との間に設けられているRXスルートランジスタ群TH(RX)も、例えば、TXスルートランジスタ群TH(TX)と同様に、直列に接続された5つのMISFETQから構成されている。このとき、各MISFETQは、ソース領域とドレイン領域とゲート電極とを有している。本明細書では、MISFETQのソース領域とドレイン領域とは対称になっているが、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFETQにおいては、アンテナ端子ANT(OUT)側の領域をドレイン領域とし、受信端子RX側の領域をソース領域と定義することにする。さらに、MISFETQのゲート電極はゲート抵抗GRを介して制御端子VRXに接続されている。ゲート抵抗GRは、制御端子VRXに高周波信号が漏れ込まないようにするためのアイソレーション抵抗である。言い換えれば、ゲート抵抗GRは高周波信号を減衰させる機能を有している。このように構成されているRXスルートランジスタ群TH(RX)では、制御端子VRXに印加する電圧を制御することより、直列に接続されたMISFETQのオン/オフを制御して、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)との間を電気的に接続したり、電気的に遮断するようになっている。つまり、RXスルートランジスタ群TH(RX)は、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)との電気的な接続/非接続を切り替えるスイッチとして機能する。
【0032】
次に、送信端子TXとGND端子GND1との間に設けられているTXシャントトランジスタ群SH(TX)は、例えば、直列に接続された5つのMISFETQから構成されている。この場合、各MISFETQは、ソース領域とドレイン領域とゲート電極とを有している。本明細書では、MISFETQのソース領域とドレイン領域とは対称になっているが、TXシャントトランジスタ群SH(TX)を構成するMISFETQにおいては、送信端子TX側の領域をドレイン領域とし、GND端子GND1側の領域をソース領域と定義することにする。さらに、MISFETQのゲート電極はゲート抵抗GRを介して制御端子VRXに接続されている。ゲート抵抗GRは、制御端子VRXに高周波信号が漏れ込まないようにするためのアイソレーション抵抗である。言い換えれば、ゲート抵抗GRは高周波信号を減衰させる機能を有している。
【0033】
ここで、上述したTXスルートランジスタ群TH(TX)は、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との間で、送信信号を伝達する送信経路の接続/非接続を切り替えるスイッチとして機能することから、アンテナスイッチASWとして必要な構成要素である。これに対し、TXシャントトランジスタ群SH(TX)は送信端子TXとGND端子GND1との間の接続/非接続を切り替えるものであり、送信端子TXとGND端子GND1間の経路は直接送信信号が伝達されないことから、TXシャントトランジスタ群SH(TX)を設ける必要があるのか疑問となる。しかし、TXシャントトランジスタ群SH(TX)は、アンテナで受信信号を受信する際に重要な機能を有しているのである。
【0034】
以下では、TXシャントトランジスタ群SH(TX)の機能について説明する。アンテナから受信信号を受信する場合、アンテナスイッチASWでは、RXスルートランジスタ群TH(RX)をオンしてアンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとを電気的に接続する。これにより、アンテナで受信された受信信号は、アンテナ端子ANT(OUT)から受信端子RXを介して受信回路に伝達される。このとき、送信経路側には受信信号を伝達させない必要があるので、アンテナ端子ANT(OUT)と送信端子TXとの間に設けられているTXスルートランジスタ群TH(TX)はオフされる。これにより、アンテナからアンテナ端子ANT(OUT)に入力された受信信号は、送信端子TX側には伝達されない。TXスルートランジスタ群TH(TX)をオフすることにより、アンテナ端子ANT(OUT)と送信端子TXとの送信経路は電気的に遮断されるので、理想的には受信信号が送信経路に漏れこむことはないと考えられる。しかし、実際には、TXスルートランジスタ群TH(TX)を構成するMISFETQにおいて、TXスルートランジスタ群TH(TX)をオフしているということは、電気的にMISFETQのソース領域とドレイン領域の間にオフ容量が発生しているとみなすことができる。このため、高周波信号である受信信号は、このオフ容量を介して送信端子TX側に漏れるのである。受信信号の電力は小さいので、効率良くアンテナ端子ANT(OUT)から受信端子RX側に伝達させることが望ましい。すなわち、TXスルートランジスタ群TH(TX)のオフ容量を介した受信信号の送信端子TX側への漏れこみを抑制する必要がある。特に、TXスルートランジスタ群TH(TX)を構成する各MISFETQのゲート幅はオン抵抗を低減する観点から大きくなっている。このようにMISFETQのゲート幅が大きくなっていることは、言い換えれば、オフ容量が大きくなるとも言える。いまの場合、TXスルートランジスタ群TH(TX)は5つのMISFETQを直列に接続しているので、TXスルートランジスタ群TH(TX)の合成容量は、1つのMISFETQのオフ容量よりも小さくなるものの、TXスルートランジスタ群TH(TX)のオフ容量は無視できないくらいに大きくなる。TXスルートランジスタ群TH(TX)のオフ容量が大きくなるということは、それだけ、高周波信号である受信信号が漏れこみやすくなることを意味している。したがって、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との間にTXスルートランジスタ群TH(TX)を設ける構成だけでは、受信信号の漏れこみを充分に抑制することができないのである。
【0035】
そこで、送信端子TXとGND端子GND1との間にTXシャントトランジスタ群SH(TX)を設けているのである。つまり、TXスルートランジスタ群TH(TX)をオフしている状態でも受信信号が送信端子TX側に漏れこむが、送信端子TX側に漏れこんだ受信信号を送信端子TXで充分に反射させることができれば、送信端子TX側に漏れこむ受信信号を抑制できるのである。すなわち、送信端子TXとGND端子GND1との間に設けられているTXシャントトランジスタ群SH(TX)は、送信端子TXにおける受信信号の反射を充分に行なう目的で設けられているのである。
【0036】
送信端子TXにおいて高周波信号である受信信号を充分に反射させるには、送信端子TXをGNDに接地することで実現できる。言い換えれば、送信端子TXとGND端子GND1との間をできるだけ低インピーダンス状態にすることができれば、送信端子TXでの受信信号の反射を充分に行なうことができるのである。このため、受信時に送信端子TX側では、TXスルートランジスタ群TH(TX)をオフするとともに、TXシャントトランジスタ群SH(TX)をオンすることにより、送信端子TXとGND端子GND1とを電気的に接続しているのである。これにより、送信端子TX側に受信信号が漏れこんできても送信端子TXで充分に反射させることができるので、送信端子TX側に漏れこむ受信信号を抑制することができる。
【0037】
TXシャントトランジスタ群SH(TX)は、例えば、5つのMISFETQから構成されている。ここで、複数のMISFETQを直列に接続しているのは、送信時に送信端子TXに大電力の送信信号が流れる関係上、送信端子TXとGND端子GND1との間には大きな電圧振幅が印加されるからである。すなわち、複数のMISFETQを直列に接続することにより、送信端子TXとGND端子GND1との間に大きな電圧振幅が印加される場合であっても、各MISFETQに印加される電圧振幅を耐圧以下にすることができるようにしたものである。
【0038】
続いて、受信端子RXとGND端子GND2との間に設けられているRXシャントトランジスタ群SH(RX)も、例えば、5つのMISFETQから構成されている。この場合、MISFETQは、ソース領域とドレイン領域とゲート電極とを有している。本明細書では、MISFETQのソース領域とドレイン領域とは対称になっているが、RXシャントトランジスタ群SH(RX)を構成するMISFETQにおいては、受信端子RX側の領域をドレイン領域とし、GND端子GND2側の領域をソース領域と定義することにする。さらに、MISFETQのゲート電極はゲート抵抗GRを介して制御端子VTXに接続されている。ゲート抵抗GRは、制御端子VTXに高周波信号が漏れ込まないようにするためのアイソレーション抵抗である。言い換えれば、ゲート抵抗GRは高周波信号を減衰させる機能を有している。
【0039】
ここで、送信時においてRXスルートランジスタ群TH(RX)をオフしている状態でも、RXスルートランジスタ群TH(RX)にはオフ容量があることから、送信信号が受信端子RX側に漏れこむが、受信端子RX側に漏れこんだ送信信号を受信端子RXで充分に反射させることができれば、受信端子RX側に漏れこむ送信信号を抑制できるのである。すなわち、受信端子RXとGND端子GND2との間に設けられているRXシャントトランジスタ群SH(RX)は、受信端子RXにおける送信信号の反射を充分に行なう目的で設けられているのである。
【0040】
受信端子RXにおいて高周波信号である送信信号を充分に反射させるには、受信端子RXをGNDに接地することで実現できる。言い換えれば、受信端子RXとGND端子GND2との間をできるだけ低インピーダンス状態にすることができれば、受信端子RXでの送信信号の反射を充分に行なうことができるのである。このため、送信時に受信端子RX側では、RXスルートランジスタ群TH(RX)をオフするとともに、RXシャントトランジスタ群SH(RX)をオンすることにより、受信端子RXとGND端子GND2とを電気的に接続しているのである。これにより、受信端子RX側に送信信号が漏れこんできても受信端子RXで充分に反射させることができるので、受信端子RX側に漏れこむ送信信号を抑制することができる。
【0041】
アンテナスイッチASWは上記のように構成されており、以下にその動作について説明する。まず、送信時の動作について説明する。図2において、送信時には、TXスルートランジスタ群TH(TX)とRXシャントトランジスタ群SH(RX)とをオンし、かつ、TXシャントトランジスタ群SH(TX)とRXスルートランジスタ群TH(RX)とをオフする。これにより、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)が電気的に接続され、かつ、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)が電気的に遮断される。この結果、送信端子TXからアンテナ端子ANT(OUT)に向って送信信号が出力される。このとき、RXスルートランジスタ群TH(RX)はオフしているが、オフ容量が存在するので、高周波信号である送信信号の一部はRXスルートランジスタ群TH(RX)のオフ容量を介して、受信端子RX側に漏れ出る。ところが、受信端子RXとGND端子GND2とはRXシャントトランジスタ群SH(RX)がオンしていることから、電気的に接続され、受信端子RXとGND端子GND2との間のインピーダンスは低インピーダンス状態となる。このため、受信端子RX側に漏れ出た送信信号は受信端子RXで充分に反射される。この結果、受信端子RXに漏れ出る送信信号は抑制されるので、送信端子TXから送信信号が効率良くアンテナ端子ANT(OUT)に伝達される。このようにして、送信信号がアンテナ端子ANT(OUT)から出力される。
【0042】
次に、受信時の動作について説明する。図2において、受信時には、RXスルートランジスタ群TH(RX)とTXシャントトランジスタ群SH(TX)とをオンし、かつ、RXシャントトランジスタ群SH(RX)とTXスルートランジスタ群TH(TX)とをオフする。これにより、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)が電気的に接続され、かつ、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)が電気的に遮断される。この結果、アンテナ端子ANT(OUT)から受信端子RXに向って受信信号が伝達される。このとき、TXスルートランジスタ群TH(TX)はオフしているが、オフ容量が存在するので、高周波信号である受信信号の一部はTXスルートランジスタ群TH(TX)のオフ容量を介して、送信端子TX側に漏れ出る。ところが、送信端子TXとGND端子GND1とはTXシャントトランジスタ群SH(TX)がオンしていることから、電気的に接続され、送信端子TXとGND端子GND1との間のインピーダンスは低インピーダンス状態となる。このため、送信端子TX側に漏れ出た受信信号は送信端子TXで充分に反射される。この結果、送信端子TXに漏れ出る受信信号は抑制されるので、アンテナ端子ANT(OUT)から効率良く受信端子RX側に伝達される。このようにして、受信信号がアンテナ端子ANT(OUT)から受信端子RX側に伝達される。
【0043】
<アンテナスイッチを構成するMISFETの構造>
続いて、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQの断面構造について説明する。図3は、MISFETQの断面を示す断面図である。図3において、半導体基板(支持基板)1S上には、埋め込み絶縁層BOXが形成されており、この埋め込み絶縁層BOX上にシリコン層が形成されている。この半導体基板1Sと埋め込み絶縁層BOXとシリコン層とによりSOI基板が形成されている。そして、このSOI基板上にMISFETQが形成されている。SOI基板のシリコン層には、チャネル領域として機能するボディ領域BDが形成されている。このボディ領域BDは、例えば、p型不純物であるボロンなどを導入したp型半導体領域から形成されている。ボディ領域BD上にはゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極Gが形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されている。一方、ゲート電極Gは、ポリシリコン膜PFとコバルトシリサイド膜CSとの積層膜から形成されている。ゲート電極Gの一部を構成するコバルトシリサイド膜CSは、ゲート電極Gの低抵抗化のために形成されている。なお、コバルトシリサイド膜CSに代えて、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、ニッケルプラチナシリサイド膜、あるいは、チタンシリサイド膜などのシリサイド膜を使用してもよい。
【0044】
続いて、ゲート電極Gの両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されており、このサイドウォールSWの下層にあるシリコン層内には低濃度不純物拡散領域EX1s、EX1dが形成されている。この低濃度不純物拡散領域EX1s、EX1dはゲート電極Gに整合して形成されている。そして、低濃度不純物拡散領域EX1sの外側には、高濃度不純物拡散領域NR1sが形成され、低濃度不純物拡散領域EX1dの外側には、高濃度不純物拡散領域NR1dが形成されている。高濃度不純物拡散領域NR1s、NR1dは、サイドウォールSWに整合して形成されている。さらに、高濃度不純物拡散領域NR1s、NR1dの表面にはコバルトシリサイド膜CSが形成されている。低濃度不純物拡散領域EX1sと高濃度不純物拡散領域NR1sとコバルトシリサイド膜CSによりソース領域Sが形成され、低濃度不純物拡散領域EX1dと高濃度不純物拡散領域NR1dとコバルトシリサイド膜CSによりドレイン領域Dが形成される。
【0045】
低濃度不純物拡散領域EX1s、EX1dおよび高濃度不純物拡散領域NR1s、NR1dは、ともに、例えば、リンや砒素などのn型不純物を導入した半導体領域であり、低濃度不純物拡散領域EX1s、EX1dに導入されている不純物の濃度は、高濃度不純物拡散領域NR1s、NR1dに導入されている不純物の濃度よりも小さくなっている。
【0046】
本実施の形態1におけるMISFETQは上記のように構成されており、以下に、MISFETQ上に形成される配線構造について説明する。図3において、本実施の形態1におけるMISFETQを覆うように窒化シリコン膜SNが形成されており、この窒化シリコン膜SN上にコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。このコンタクト層間絶縁膜CILは、例えば、酸化シリコン膜から形成されている。そして、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNにはソース領域Sに達するコンタクトホールCNTや、ドレイン領域Dに達するコンタクトホールCNTが形成されている。そして、コンタクトホールCNT内にチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜が埋め込まれてプラグPLGが形成されている。プラグPLGを形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上には配線L1が形成されている。例えば、配線L1は、チタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜およびチタン/窒化チタン膜の積層膜から形成される。さらに、この配線L1上に多層配線が形成されるが、図3では省略している。以上のようにして、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQが形成されている。
【0047】
<SOI基板に形成されたMISFETの長所および短所>
例えば、図1に示す携帯電話機1においては、送信信号の電力が1Wを超えるなど大電力になることが普通であり、アンテナスイッチASWには、大電力の送信信号の高品質性を確保し、かつ、他の周波数帯の通信に悪影響を与える妨害波(高次高調波)の発生を低減する性能が要求される。このため、アンテナスイッチASWを構成するスイッチング素子として電界効果トランジスタを使用する場合、この電界効果トランジスタには、高耐圧性だけでなく、高次高調波歪を低減できる性能が要求される。
【0048】
このことから、アンテナスイッチを構成する電界効果トランジスタは、低損失や低高調波歪みを実現するため、寄生容量が少なく、線形性に優れたGaAs基板やサファイア基板上に形成される電界効果トランジスタ(例えば、HEMT)が使用されている。しかし、高周波特性に優れている化合物半導体基板は、高価であり、アンテナスイッチASWのコスト低下の観点から望ましいとはいえない。これに対し、アンテナスイッチASWをSOI基板上に形成したMISFETQから構成する場合、SOI基板は、化合物半導体基板に比べて安価であることから、アンテナスイッチASWのコスト低下を実現することができる利点がある。すなわち、アンテナスイッチASWのコスト削減の観点からは、安価なシリコン基板(SOI(Silicon On Insulator)基板)上に形成されたMISFETQ(電界効果トランジスタ)を使用することが効果的である。
【0049】
しかし、安価なSOI基板は、高価な化合物半導体基板に比べて寄生容量が大きく、化合物半導体基板上に形成された電界効果トランジスタよりも高調波歪みが大きくなる問題点がある。つまり、コスト削減の観点から、アンテナスイッチASWをSOI基板に形成されたMISFETQから構成することが望ましいが、SOI基板に形成したMISFETQでは、高調波歪みが大きくなる問題点が発生する。
【0050】
例えば、図4は、SOI基板上に形成されたMISFETの場合と化合物半導体基板上に形成されたHEMTの場合のそれぞれにおいて、周波数1.9GHzでの入力電力(Pin)と3次高調波歪み(3HD)の関係を示すグラフである。図4において、横軸が入力電力(Pin)の大きさを示しており、縦軸が3次高調波歪み(3HD)の大きさを示している。ここで、図4のうち実線で示されているグラフがSOI基板上に形成されたMISFETに対応し、破線で示されているグラフが化合物半導体基板上に形成されたHEMTに対応している。図4では、3次高調波歪み(3HD)をデシベル(−dBc)で表示しているが、このデシベル表示は、高次高調波の大きさが出力電力(Pout)の電力からどれだけ減衰させているかを示している。すなわち、高次高調波のデシベル表示が小さくなるほど減衰が小さくなり、高次高調波の大きさが増大していることを示していることになる。したがって、図4を見ると、SOI基板に形成されたMISFETの方が、化合物半導体基板に形成されたHEMTよりも3次高調波歪み(3HD)の発生が大きくなっていることがわかる。つまり、SOI基板に形成されたMISFETでは、化合物半導体基板に形成されたHEMTよりも3次高調波歪みの発生が問題となることがわかる。
【0051】
3次高調波歪みの発生原因は、例えば、図3に示すSOI基板上に形成されたMISFETQを例に挙げて説明すると、MISFETQのソース領域Sとドレイン領域Dの間に形成される寄生容量の電圧依存性が主な原因となっている。ソース領域Sとドレイン領域Dとの間に形成される寄生容量は、ソース領域Sとボディ領域BDとの間に形成される寄生容量と、ドレイン領域Dとボディ領域BDとの間に形成される寄生容量に分けることができる。これらの寄生容量は、ソース領域Sとドレイン領域Dとの間に印加される電圧によって、容量絶縁膜として機能する空乏層の幅が変化することから、容量値が変化する。すなわち、ソース領域Sとドレイン領域Dとの間に形成される寄生容量は電圧依存性を有している。そして、この電圧依存性が非線形性を含んでいることから、非線形性に起因した3次高調波歪みが発生するのである。一方、化合物半導体基板に形成されたHEMTは、半絶縁性基板に形成されており、ソース領域とドレイン領域との間に形成される寄生容量の電圧依存性も非常に小さい。このことから、化合物半導体基板に形成されたHEMTでは、3次高調波歪みも小さくなる。
【0052】
高次高調波歪みには、上述した3次高調波歪みだけでなく、2次高調波歪みも存在するが、SOI基板に形成されたMISFETでは、化合物半導体基板に形成されたHEMTよりも2次高調波歪みの発生も大きくなる。
【0053】
以上のように、SOI基板に形成されたMISFETでは、2次高調波歪みや3次高調波歪みなどの高次高調波歪みが、化合物半導体基板に形成されたHEMTに比べて大きくなるため、高次高調波歪みを低減するための対策が必要となる。そこで、本発明では、特に、高次高調波歪みのうち3次高調波歪みに着目して、3次高調波歪みの低減を図ることができる技術的思想を提供するものである。
【0054】
<高周波電圧印加時における寄生容量の電圧依存性>
本発明者は高周波電圧を印加した際におけるソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性を解析したところ、以下に示すような結果が得られたので、この結果について図面を参照しながら説明する。
【0055】
図3に示すMISFETQをオフした状態で、ソース領域Sとドレイン領域Dの間に高周波電圧(AC電圧)を印加する場合を考える。図5は、ソース領域Sとドレイン領域Dの間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合のソース・ドレイン間電圧、ボディ・ソース間電圧、ボディ・ドレイン間電圧、ゲート・ボディ間電圧のそれぞれの時間変化を示すグラフである。ここで、ソース・ドレイン間電圧は、図3に示すソース領域Sとドレイン領域Dとの間に印加される電圧を示しており、特に、ソース領域Sを基準にしたソース領域Sとドレイン領域Dとの間の電圧を示している。また、ボディ・ソース間電圧は、図3に示すソース領域Sとボディ領域BDとの間に印加される電圧を示しており、特に、ソース領域Sを基準にしたボディ領域BDとソース領域Sとの間の電圧を示している。さらに、ボディ・ドレイン間電圧は、図3に示すドレイン領域Dとボディ領域BDとの間に印加される電圧を示しており、特に、ドレイン領域Dを基準としたボディ領域BDとドレイン領域Dとの間の電圧を示している。また、ゲート・ボディ間電圧は、図3に示すゲート電極Gとボディ領域BDとの間に印加される電圧を示しており、特に、ボディ領域BDを基準としたボディ領域BDとゲート電極Gとの間の電圧を示している。図5において、横軸は時間を示しており、縦軸はソース・ドレイン間電圧、ボディ・ソース間電圧、ボディ・ドレイン間電圧、ゲート・ボディ間電圧のいずれかを示している。
【0056】
まず、図5に示すように、オフしているMISFETQのソース領域Sとドレイン領域Dとの間に高周波電圧が印加されると、ソース・ドレイン間電圧は0Vを中心として振幅が2V程度の高周波電圧となる。具体的に、ソース・ドレイン間電圧は、0Vを中心として−2Vと+2Vとの間を振動する電圧となる。そして、ボディ・ソース間電圧は、約−1Vを中心として振幅が1V程度の高周波電圧となる。具体的に、ボディ・ソース間電圧は、ソース・ドレイン間電圧の正方向(+方向)への振幅が最大になったときにほぼ0Vとなり、それ以外のときは負電圧内を振動している。同様に、ボディ・ドレイン間電圧は、約−1Vを中心として振幅が1V程度の高周波電圧となる。具体的に、ボディ・ドレイン間電圧は、ソース・ドレイン間電圧の負方向(−方向)への振幅が最大になったときにほぼ0Vとなり、それ以外のときは負電圧内を振動している。つまり、ボディ・ドレイン間電圧およびボディ・ソース間電圧は正電圧にならないように変化していることがわかる。これは、以下に示す理由による。
【0057】
最初に、ボディ・ドレイン間電圧について説明すると、ボディ・ドレイン間電圧が正電圧になるということは、ドレイン領域Dを基準にしてボディ領域BDが正電圧になることを意味している。これは、ボディ領域BDがp型半導体領域から形成され、ドレイン領域Dがn型半導体領域から形成されていることを考慮すると、ボディ・ドレイン間電圧が正電圧になるということは、ボディ領域BDとドレイン領域Dとの間のpn接合に順バイアスが印加されることを意味している。したがって、ボディ・ドレイン間電圧が正電圧になると、ボディ領域BDとドレイン領域Dの間に順方向電流が流れることになる。しかし、実際には、ボディ領域BDはフローティング状態となっているので、上述した順方向電流は流れない。すなわち、ボディ領域BDがフローティング状態となって順方向電流が流れないことから、ボディ・ドレイン間電圧が正電圧になることはないのである。このような理由からボディ・ドレイン間電圧は0V〜負電圧となるのである。
【0058】
このことは、ボディ・ソース間電圧についても同様である。すなわち、ボディ・ソース間電圧が正電圧になるということは、ソース領域Sを基準にしてボディ領域BDが正電圧になることを意味している。これは、ボディ領域BDがp型半導体領域から形成され、ソース領域Sがn型半導体領域から形成されていることを考慮すると、ボディ・ソース間電圧が正電圧になるということは、ボディ領域BDとソース領域Sとの間のpn接合に順バイアスが印加されることを意味している。したがって、ボディ・ソース間電圧が正電圧になると、ボディ領域BDとソース領域Sの間に順方向電流が流れることになる。しかし、実際には、ボディ領域BDはフローティング状態となっているので、上述した順方向電流は流れない。すなわち、ボディ領域BDがフローティング状態となって順方向電流が流れないことから、ボディ・ソース間電圧が正電圧になることはないのである。このような理由からボディ・ソース間電圧は0V〜負電圧となるのである。
【0059】
一方、図5に示すように、ゲート・ボディ間電圧は時間変化にかかわらず、一定の電位差を維持している。これは以下に示す理由による。すなわち、図3に示すように、ボディ領域BD上にゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極Gが形成されている。したがって、図3に示すMISFETQでは、ボディ領域BDを下部電極、ゲート絶縁膜GOXを容量絶縁膜、ゲート電極Gを上部電極とするゲート容量が形成されている。そして、ゲート絶縁膜GOXは非常に薄い膜から形成されているので、上述したゲート容量の容量値は非常に大きくなる。ここで、オフしているMISFETQのソース領域Sとドレイン領域Dの間に印加された高周波電圧によって、ボディ領域BDには高周波電圧が印加される。そして、ボディ領域BDとゲート電極Gの間は容量値の大きなゲート容量が形成されている。したがって、AC的な高周波電圧は容量値の大きなゲート容量によってボディ領域BDからゲート電極Gへ通過するのである。つまり、容量値の大きなゲート容量を介してボディ領域BDとゲート電極Gが接続されているということは、ボディ領域BDとゲート電極GがAC的にショートされていると考えることができるのである。したがって、ボディ領域BDに印加されるAC的な電圧変化に追随するようにゲート電極Gの電圧は時間変化する。この結果、ボディ領域BDに印加されている電圧とゲート電極Gに印加される電圧において、AC的な電圧変動は、ボディ領域BDとゲート電極G間の電位差に影響を与えることなく、一定のDC電圧(直流電圧)を維持したままとなるのである。以上のことから、ゲート・ボディ間電圧は時間変化にかかわらず、一定の電位差を維持しているのである。
【0060】
次に、ソース領域Sとドレイン領域Dの間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合のソース・ドレイン間電圧、ボディ・ソース間電圧、ボディ・ドレイン間電圧のそれぞれの時間変化に基づいて、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性について説明する。
【0061】
図6は、ソース・ドレイン間電圧(Vds)とボディ・ドレイン間接合容量との関係、および、ソース・ドレイン間電圧(Vds)とボディ・ソース間接合容量との関係を示すグラフである。図6において、横軸はソース・ドレイン間電圧(Vds)を示しており、縦軸はボディ・ドレイン間接合容量とボディ・ソース間接合容量を示している。
【0062】
まず、ソース・ドレイン間電圧(Vds)が0Vの場合を考える。図5に示すように、ソース・ドレイン間電圧が0Vのとき、ボディ・ドレイン間電圧とボディ・ソース間電圧は、ともに、約−1Vとなっている。したがって、ボディ領域BDとドレイン領域Dの間のpn接合に逆バイアスが印加されているとともに、ボディ領域BDとソース領域Sの間のpn接合にも逆バイアスが印加されている。このときのボディ・ドレイン間接合容量とボディ・ソース間接合容量を、図6に示すように、CAとする。
【0063】
続いて、ソース・ドレイン間電圧がAC的に変化して正電圧方向に最も大きな電圧となる場合を考える。つまり、図6に示すように、ソース・ドレイン間電圧が+2Vとなる場合を考える。この場合、図6からわかるように、ボディ・ソース間電圧はほぼ0Vとなる。このことから、ボディ領域BDとソース領域Sの間のpn接合には逆バイアスは印加されないため、空乏層の幅は後退し、ボディ・ソース間接合容量の値は大きくなる。したがって、ボディ・ソース間接合容量は、図6に示すように、例えば、CA´(CA´>CA)となる。一方、図5からわかるように、ボディ・ドレイン間電圧はほぼ−2Vとなる。このことから、ボディ領域BDとドレイン領域Dの間のpn接合には深い逆バイアスが印加されるため、空乏層は、ソース・ドレイン間電圧が0Vの場合よりもさらに延びる。この結果、ボディ・ドレイン間接合容量の値はさらに小さくなる。したがって、ボディ・ドレイン間接合容量は、図6に示すように、例えば、CA´´(CA´´<CA)となる。
【0064】
また、ソース・ドレイン間電圧がAC的に変化して負電圧方向に最も大きな電圧(絶対値)となる場合も同様に考えることができる。具体的には、図5に示すように、ソース・ドレイン間電圧が−2Vとなる場合を考える。この場合、図5からわかるように、ボディ・ドレイン間電圧はほぼ0Vとなる。このことから、ボディ領域BDとドレイン領域Dの間のpn接合には逆バイアスは印加されないため、空乏層の幅は後退し、ボディ・ドレイン間接合容量の値は大きくなる。そして、ボディ・ドレイン間電圧が0Vである場合のボディ・ドレイン間接合容量は、ボディ・ソース間電圧が0Vである場合のボディ・ソース間接合容量と同様になる。したがって、ボディ・ドレイン間接合容量は、図6に示すように、例えば、CA´(CA´>CA)となる。一方、図5からわかるように、ボディ・ソース間電圧はほぼ−2Vとなる。このことから、ボディ領域BDとソース領域Sの間のpn接合には深い逆バイアスが印加されるため、空乏層は、ソース・ドレイン間電圧が0Vの場合よりもさらに延びる。この結果、ボディ・ソース間接合容量の値はさらに小さくなる。そして、ボディ・ソース間電圧が−2Vである場合のボディ・ソース間接合容量は、ボディ・ドレイン間電圧が−2Vである場合のボディ・ドレイン間接合容量と同様になる。したがって、ボディ・ソース間接合容量は、図6に示すように、例えば、CA´´(CA´´<CA)となる。
【0065】
以上のことから、ソース領域Sとドレイン領域Dの間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合において、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量は、図6に示すような電圧依存性を示すことになる。すなわち、ボディ・ドレイン間容量およびボディ・ソース間容量は、それぞれ、ソース・ドレイン間電圧の電圧振幅が最大となる±2V近傍で電圧依存性が大きくなっている。MISFETQのソース・ドレイン間容量の主要部は、ボディ・ドレイン間接合容量とボディ・ソース間接合容量との直列和である。このため、MISFETQのソース・ドレイン間容量の電圧依存性も、ソース・ドレイン間電圧の電圧振幅が最大となる±2V近傍で大きくなり、この電圧依存性が3次高調波歪みの主な発生原因となっている。
【0066】
したがって、MISFETQのソース・ドレイン間容量の電圧依存性をできるだけ小さくすることができれば、3次高調波歪みの発生を抑制できることがわかる。そこで、本願発明では、MISFETQのソース・ドレイン間容量の電圧依存性をできるだけ小さくする工夫を施している。以下に、この工夫を施した本願発明の技術的思想について具体的に説明する。
【0067】
<本実施の形態1におけるアンテナスイッチの構成>
図7は、本実施の形態1におけるアンテナスイッチASWの回路構成を示す図である。図7に示すように、アンテナスイッチASWは、送信端子TXと、受信端子RXと、アンテナ端子ANT(OUT)とを有している。そして、アンテナスイッチASWは、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との間にTXスルートランジスタ群TH(TX)を有し、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)との間にRXスルートランジスタ群TH(RX)を有している。さらに、アンテナスイッチASWは、送信端子TXとGND端子GND1の間にTXシャントトランジスタ群SH(TX)を有し、受信端子RXとGND端子GND2の間にRXシャントトランジスタ群SH(RX)を有している。
【0068】
本実施の形態1では、このように構成されているアンテナスイッチASWにおいて、RXスルートランジスタ群TH(RX)(図7の斜線領域で示されている)に、3次高調波歪みを低減できる技術的思想を適用する。この理由は次のようなものである。すなわち、アンテナスイッチASWでは、送信信号を送信する場合と受信信号を受信する場合があるが、送信信号は大電力の信号であるのに対し、受信信号は微弱な信号である。したがって、大電力な信号である送信信号を送信する際に発生する3次高調波歪みも大きくなる。このことから、アンテナスイッチASWから送信信号を送信する際に発生する3次高調波歪みを低減することが必要であると考えられる。
【0069】
アンテナスイッチASWから送信信号を送信する場合、図7に示すTXスルートランジスタ群TH(TX)とRXシャントトランジスタ群SH(RX)をオンし、かつ、RXスルートランジスタ群TH(RX)とTXシャントトランジスタ群SH(TX)をオフする。3次高調波歪みはオフしているトランジスタから主に発生する。そこで、本実施の形態1では、アンテナスイッチASWから送信信号を送信する際にオフしているRXスルートランジスタ群TH(RX)に本願発明における工夫を施しているのである。
【0070】
なお、アンテナスイッチASWから送信信号を送信する際にオフしているトランジスタ群は、RXスルートランジスタ群TH(RX)だけでなく、TXシャントトランジスタ群SH(TX)も存在するが、TXシャントトランジスタ群SH(TX)ではなく、RXスルートランジスタ群TH(RX)に、本願発明における工夫を施す理由は次のとおりである。
【0071】
つまり、RXスルートランジスタ群TH(RX)は受信信号が直接伝達される経路に設けられていることから、オン抵抗を小さくする必要性が高い。したがって、RXスルートランジスタ群TH(RX)のゲート幅は大きくなっており、それに伴って、RXスルートランジスタ群TH(RX)のサイズも大きくなっている。一方、TXシャントトランジスタ群SH(TX)は、信号が直接伝達される経路に設けられているわけではないので、RXスルートランジスタ群TH(RX)よりもオン抵抗を低減する必要性は低くなる。それよりも、TXシャントトランジスタ群SH(TX)ではオフ容量を介した送信信号の漏れをできるだけ小さくする必要があり、これにより、TXシャントトランジスタ群SH(TX)のゲート幅は、RXスルートランジスタ群TH(RX)のゲート幅よりも小さくなっている。このことは、TXシャントトランジスタ群SH(TX)のサイズは、RXスルートランジスタ群TH(RX)のサイズに比べて小さくなっていることを意味している。つまり、RXスルートランジスタ群TH(RX)のゲート幅は、TXシャントトランジスタ群SH(TX)のゲート幅に比べて大きくなっている。この結果、送信時にオフしているRXスルートランジスタ群TH(RX)とTXシャントトランジスタ群SH(TX)のうち、ゲート幅の大きな(したがって、オフ容量の大きい)RXスルートランジスタ群TH(RX)が3次高調波歪みの主な発生源となるのである。このような理由から、本実施の形態1では、RXスルートランジスタ群TH(RX)のスイッチ構成に工夫を施して、3次高調波歪みの発生を抑制しているのである。
【0072】
以下に、具体的なRXスルートランジスタ群TH(RX)のスイッチ構成について図8を参照しながら説明する。図8は、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)のスイッチ構成を示す回路図である。図8に示すように、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)は、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に設けられている。具体的に、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)は、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間に直列に接続されたMISFETQ1〜Q5を有している。これらのMISFETQ1〜Q5は、例えば、nチャネル型MISFETから構成されている。そして、MISFETQ1〜Q5のそれぞれのゲート電極には、ゲート抵抗GRが接続されており、MISFETQ1〜Q5のゲート電極は、ゲート抵抗GRを介して束ねられており、1つの制御端子VRXに接続されている。
【0073】
さらに、MISFETQ1のボディ領域は、隣接するMISFETQ2のソース領域とダイオード(整流素子)DI1を介して接続されており、MISFETQ2のボディ領域は、隣接するMISFETQ1のドレイン領域とダイオードDI2を介して接続されている。同様に、MISFETQ3のボディ領域は、隣接するMISFETQ2のドレイン領域とダイオードDI3を介して接続されており、MISFETQ4のボディ領域は、隣接するMISFETQ3のドレイン領域とダイオードDI4を介して接続されている。また、MISFETQ5のボディ領域は、隣接するMISFETQ4のドレイン領域とダイオードDI5を介して接続されている。
【0074】
ここで、ダイオードDI1〜DI5は整流素子の一例であり、例えば、pn接合ダイオードから形成されている。このとき、ダイオードDI1は、MISFETQ1のボディ領域からMISFETQ2のソース領域へ向う向きが順方向(電流が流れる方向)となるように接続されている。そして、ダイオードDI2は、MISFETQ2のボディ領域からMISFETQ1のドレイン領域へ向う向きが順方向となるように接続され、ダイオードDI3は、MISFETQ3のボディ領域からMISFETQ2のドレイン領域へ向う向きが順方向となるように接続されている。同様に、ダイオードDI4は、MISFETQ4のボディ領域からMISFETQ3のドレイン領域へ向う向きが順方向になるように接続され、ダイオードDI5は、MISFETQ5のボディ領域からMISFETQ4のドレイン領域へ向う向きが順方向になるように接続されている。
【0075】
いまの場合、MISFETQ1〜Q5はnチャネル型MISFETから構成され、かつ、ダイオードDI1〜DI5はpn接合ダイオードから形成されている。したがって、MISFETQ1〜Q5のボディ領域はp型半導体領域から形成されていることから、例えば、MISFETQ1のボディ領域(p型半導体領域)とダイオードDI1のアノード(p型半導体領域)が接続され、MISFETQ2のソース領域(n型半導体領域)とダイオードDI1のカソード(n型半導体領域)が接続されていることになる。同様に、MISFETQ2のボディ領域(p型半導体領域)とダイオードDI2のアノード(p型半導体領域)が接続され、MISFETQ1のドレイン領域(n型半導体領域)とダイオードDI2のカソード(n型半導体領域)が接続されている。そして、MISFETQ3のボディ領域(p型半導体領域)とダイオードDI3のアノード(p型半導体領域)が接続され、MISFETQ2のドレイン領域(n型半導体領域)とダイオードDI3のカソード(n型半導体領域)が接続されている。同様に、MISFETQ4のボディ領域(p型半導体領域)とダイオードDI4のアノード(p型半導体領域)が接続され、MISFETQ3のドレイン領域(n型半導体領域)とダイオードDI3のカソード(n型半導体領域)が接続されている。また、MISFETQ5のボディ領域(p型半導体領域)とダイオードDI5のアノード(p型半導体領域)が接続され、MISFETQ4のドレイン領域(n型半導体領域)とダイオードDI5のカソード(n型半導体領域)が接続されている。
【0076】
このように構成された本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)の特徴は、互いに直列に接続されたMISFETQ1〜Q5において、それぞれのMISFETのボディ領域と、隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域とを、それぞれ、ダイオード(整流素子)を介して接続する点にある。そして、特に、nチャネル型MISFETの場合、MISFETのボディ領域から隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う向きが順方向となるようにダイオードを接続する点にある。これにより、オフしているRXスルートランジスタ群TH(RX)から発生する3次高調波歪みを低減することができる。以下に、上述した本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)の構成によって3次高調波歪みを低減できるメカニズムについて電気的な観点から説明する。
【0077】
<電気的観点からの3次高調波歪みを低減できるメカニズム>
図9は、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)の構成を示す回路図であり、図8とほぼ同様である。図8と相違する点は、着目するノードに符号を記載している点にある(ノードA〜ノードJ)。図9において、ノードAは、MISFETQ4のドレイン領域に対応し、ノードBは、MISFETQ5のドレイン領域に対応している。ノードCは、MISFETQ5のソース領域に対応し、ノードDは、MISFETQ5のゲート電極に対応している。ノードEは、MISFETQ5のボディ領域に対応している。同様に、ノードFは、MISFETQ2のソース領域に対応し、ノードGは、MISFETQ1のドレイン領域に対応している。ノードHは、MISFETQ1のソース領域に対応し、ノードIは、MISFETQ1のゲート電極に対応している。また、ノードJは、MISFETQ1のボディ領域に対応している。
【0078】
次に、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)をオフさせ、かつ、受信端子RXを接地した状態で、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)に高周波電圧(AC電圧)を印加する場合を考える。まず、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFETQ5に着目して、MISFETQ5の各ノード(ノードA〜ノードE)間の電圧変化について説明する。
【0079】
図10は、MISFETQ5の各ノード間の電圧変化を示すグラフである。図10において、横軸は時間(nsec)を示しており、縦軸はノード間電圧を示している。具体的に、CB間電圧は、ノードCとノードBとの間の電圧を示しており、言い換えれば、MISFETQ5のソース領域とドレイン領域との間に印加される電圧を示している。特に、CB間電圧は、ソース領域を基準にしたソース領域とドレイン領域の間に印加される電圧を示している。
【0080】
EC間電圧は、ノードEとノードCとの間の電圧を示しており、言い換えれば、MISFETQ5のソース領域とボディ領域との間に印加される電圧を示している。特に、EC間電圧は、MISFETQ5のソース領域を基準にしたボディ領域とソース領域の間の電圧を示している。
【0081】
EB間電圧は、ノードEとノードBとの間の電圧を示しており、言い換えれば、MISFETQ5のドレイン領域とボディ領域との間に印加される電圧を示している。特に、EB間電圧は、MISFETQ5のドレイン領域を基準にしたボディ領域とドレイン領域の間の電圧を示している。
【0082】
DE間電圧は、ノードDとノードEとの間の電圧を示しており、言い換えれば、MISFETQ5のゲート電極とボディ領域との間に印加される電圧を示している。特に、DE間電圧は、MISFETQ5のボディ領域を基準にしたボディ領域とゲート電極との間の電圧を示している。
【0083】
EA間電圧は、ノードEとノードAとの間の電圧を示しており、言い換えれば、MISFETQ4のドレイン領域と、MISFETQ5のボディ領域との間に印加される電圧を示している。特に、EA間電圧は、MISFETQ4のドレイン領域を基準としたMISFETQ4のドレイン領域とMISFETQ5のボディ領域との間の電圧を示している。
【0084】
図10に示すように、オフさせたRXスルートランジスタ群TH(RX)の各MISFETQ1〜Q5のソース領域とドレイン領域の間に振幅が2V程度の高周波電圧を印加すると、CB間電圧は、0Vを中心として、−2Vと+2Vとの間を振動する電圧変化を示す。このとき、EB間電圧は、約−3Vを中心として振幅が1V程度の高周波電圧となる。そして、最も高いEB間電圧は、CB間電圧の負方向への振幅が最大になったときに、ほぼ−2Vとなる。同様に、EC間電圧は、約−3Vを中心として振幅が1V程度の高周波電圧となる。そして、最も高いEC間電圧は、CB間電圧の正方向への振幅が最大になったときに、ほぼ−2Vとなる。
【0085】
一方、EA間電圧は、約−3Vを中心として、振幅が3V程度の高周波電圧となっている。このEA間電圧は、CB間電圧の負方向への振幅が最大になったときに、ほぼ0Vとなり、それ以外の場合は負電圧内を振動していることがわかる。
【0086】
また、DE間電圧は、約0.5Vで一定となっている。これは、以下に示す理由による。図3に示すように、ボディ領域BD上にゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極Gが形成されている。したがって、図3に示すMISFETQでは、ボディ領域BDを下部電極、ゲート絶縁膜GOXを容量絶縁膜、ゲート電極Gを上部電極とするゲート容量が形成されている。そして、ゲート絶縁膜GOXは非常に薄い膜から形成されているので、上述したゲート容量の容量値は非常に大きくなる。ここで、オフしているMISFETQのソース領域Sとドレイン領域Dの間に印加された高周波電圧によって、ボディ領域BDには高周波電圧が印加される。そして、ボディ領域BDとゲート電極Gの間は容量値の大きなゲート容量が形成されている。したがって、AC的な高周波電圧は容量値の大きなゲート容量によってボディ領域BDからゲート電極Gへ通過するのである。つまり、容量値の大きなゲート容量を介してボディ領域BDとゲート電極Gが接続されているということは、ボディ領域BDとゲート電極GがAC的にショートされていると考えることができるのである。したがって、ボディ領域BDに印加されるAC的な電圧変化に追随するようにゲート電極Gの電圧は時間変化する。この結果、ボディ領域BDに印加されている電圧とゲート電極Gに印加される電圧において、AC的な電圧変動は、ボディ領域BDとゲート電極G間の電位差に影響を与えることなく、一定のDC電圧(直流電圧)を維持したままとなるのである。以上のことから、ゲート・ボディ間電圧(DE間電圧)は時間変化にかかわらず、一定の電位差を維持しているのである。
【0087】
続いて、EA間電圧が正電圧にならないように変化している理由について説明する。最初に、EA間電圧は、MISFETQ4のドレイン領域と、MISFETQ5のボディ領域との間の電圧であることから、EA間電圧は、(1つのMISFETQ4のソース領域とドレイン領域との間に印加される電圧)+(MISFETQ5のドレイン領域とボディ領域との間に印加される電圧)と考えることができる。したがって、EA間電圧は、1つのMISFETQ5のソース領域とドレイン領域との間に印加される電圧(CB間電圧)よりも振幅が大きくなると考えられる。実際、図10を見てわかるように、CB間電圧の振幅は約2Vであるのに対し、EA間電圧の振幅は約3Vとなっており、EA間電圧がCB間電圧よりも大きくなっていることがわかる。
【0088】
ここで、CB間電圧の中心が0Vであるのに対し、EA間電圧の中心が−3Vである点が本実施の形態1におけるポイントである。つまり、通常のアンテナスイッチのように、RXスルートランジスタ群TH(RX)を、例えば、直列接続した5つのMISFETQ1〜Q5だけで構成する場合、CB間電圧の中心と同様にEA間電圧の中心もほぼ0V付近にあると考えられる。ところが、本実施の形態1では、互いに直列に接続されたMISFETQ1〜Q5において、それぞれのMISFETのボディ領域と、隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域とを、それぞれ、ダイオード(整流素子)を介して接続する。そして、特に、nチャネル型MISFETの場合、MISFETのボディ領域から隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う向きが順方向となるようにダイオードを接続するという特徴的構成をとっている。この特徴的構成をとる結果、EA間電圧が正電圧にならないように、EA間電圧の中心が負方向へシフトするのである。以下に、この理由について説明する。
【0089】
EA間電圧が正電圧になるということは、MISFETQ4のドレイン領域を基準にして、MISFETQ5のボディ領域が正電圧になることを意味している。これは、MISFETQ5のボディ領域がp型半導体領域から形成され、MISFETQ4のドレイン領域がn型半導体領域から形成されていることを考慮すると、EA間電圧が正電圧になるということは、MISFETQ5のボディ領域とMISFETQ4のドレイン領域との間のダイオード(図9のダイオードDI5)に順バイアスが印加されることを意味している。つまり、MISFETQ4のドレイン領域とMISFETQ5のボディ領域の間には、MISFETQ5のボディ領域からMISFETQ4のドレイン領域へ向う向きが順方向となるようなダイオードが接続されている。
【0090】
したがって、EA間電圧が正電圧になると、MISFETQ5のボディ領域とMISFETQ4のドレイン領域の間に順方向電流が流れることになる。しかし、実際には、MISFETQ5のボディ領域はフローティング状態となっているので、上述した順方向電流は流れない。すなわち、MISFETQ5のボディ領域がフローティング状態となって順方向電流が流れないことから、EA間電圧が正電圧になることはないのである。このような理由からEA間電圧は0V〜負電圧となり、振幅が約3Vであることから、EA間電圧の中心は−3V付近へシフトするのである。
【0091】
このようなことから、EA間電圧の中心は、−3V付近にシフトし、これに伴って、EC間電圧の中心およびEB間電圧の中心も−3V付近にシフトする。すなわち、本実施の形態1の特徴は、上述した特徴的構成をとることにより、EA間電圧が正電圧にならないように、EA間電圧の中心を負方向へシフトさせ、このシフトに伴って、EA間電圧の中心と同じEC間電圧の中心およびEB間電圧の中心も負方向にシフトさせる点にある。これにより、EC間電圧は、−3Vを中心として、振幅が1V程度の高周波電圧となり、EB間電圧も、−3Vを中心として、振幅が1V程度の高周波電圧となる。つまり、本実施の形態1において、EC間電圧およびEB間電圧は、−2Vと−4Vとの間を振動する高周波電圧となるのである。
【0092】
以上は、MISFETQ5について考察した結果であるが、その他のMISFETQ1〜Q4についても同様のことが言える。例えば、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFETQ1に着目して、MISFETQ1の各ノード(ノードF〜ノードJ)間の電圧変化について説明すると以下のようになる。
【0093】
図11は、MISFETQ1の各ノード間の電圧変化を示すグラフである。図11において、横軸は時間(nsec)を示しており、縦軸はノード間電圧を示している。具体的に、HG間電圧は、ノードHとノードGとの間の電圧を示しており、言い換えれば、MISFETQ1のソース領域とドレイン領域との間に印加される電圧を示している。特に、HG間電圧は、ソース領域を基準にしたソース領域とドレイン領域の間に印加される電圧を示している。
【0094】
JH間電圧は、ノードJとノードHとの間の電圧を示しており、言い換えれば、MISFETQ1のソース領域とボディ領域との間に印加される電圧を示している。特に、JH間電圧は、MISFETQ1のソース領域を基準にしたボディ領域とソース領域の間の電圧を示している。
【0095】
JG間電圧は、ノードJとノードGとの間の電圧を示しており、言い換えれば、MISFETQ1のドレイン領域とボディ領域との間に印加される電圧を示している。特に、JG間電圧は、MISFETQ1のドレイン領域を基準にしたボディ領域とドレイン領域の間の電圧を示している。
【0096】
IJ間電圧は、ノードIとノードJとの間の電圧を示しており、言い換えれば、MISFETQ1のゲート電極とボディ領域との間に印加される電圧を示している。特に、IJ間電圧は、MISFETQ1のボディ領域を基準にしたボディ領域とゲート電極との間の電圧を示している。
【0097】
JF間電圧は、ノードJとノードFとの間の電圧を示しており、言い換えれば、MISFETQ2のソース領域と、MISFETQ1のボディ領域との間に印加される電圧を示している。特に、JF間電圧は、MISFETQ2のソース領域を基準としたMISFETQ2のソース領域とMISFETQ1のボディ領域との間の電圧を示している。
【0098】
図11に示すように、オフさせたRXスルートランジスタ群TH(RX)の各MISFETQ1〜Q5のソース領域とドレイン領域の間に振幅が2V程度の高周波電圧を印加すると、HG間電圧は、0Vを中心として、−2Vと+2Vとの間を振動する電圧変化を示す。このとき、JH間電圧は、約−3Vを中心として振幅が1V程度の高周波電圧となる。そして、最も高いJH間電圧は、HG間電圧の正方向への振幅が最大になったときに、ほぼ−2Vとなる。同様に、JG間電圧は、約−3Vを中心として振幅が1V程度の高周波電圧となる。そして、最も高いJG間電圧は、HG間電圧の負方向への振幅が最大になったときに、ほぼ−2Vとなる。
【0099】
一方、JF間電圧は、約−3Vを中心として、振幅が3V程度の高周波電圧となっている。このJF間電圧は、HG間電圧の正方向への振幅が最大になったときに、ほぼ0Vとなり、それ以外の場合は負電圧内を振動していることがわかる。また、IJ間電圧は、約0.5Vで一定となっている。
【0100】
JF間電圧が正電圧にならないように変化している理由について説明する。最初に、JF間電圧は、MISFETQ2のソース領域と、MISFETQ1のボディ領域との間の電圧であることから、JF間電圧は、(1つのMISFETQ2のソース領域とドレイン領域との間に印加される電圧)+(MISFETQ1のソース領域とボディ領域との間に印加される電圧)と考えることができる。したがって、JF間電圧は、1つのMISFETQ1のソース領域とドレイン領域との間に印加される電圧(HG間電圧)よりも振幅が大きくなると考えられる。実際、図11を見てわかるように、HG間電圧の振幅は約2Vであるのに対し、JF間電圧の振幅は約3Vとなっており、JF間電圧がHG間電圧よりも大きくなっていることがわかる。
【0101】
ここで、HG間電圧の中心が0Vであるのに対し、JF間電圧の中心が−3Vである点が本実施の形態1におけるポイントである。つまり、通常のアンテナスイッチのように、RXスルートランジスタ群TH(RX)を、例えば、直列接続した5つのMISFETQ1〜Q5だけで構成する場合、HG間電圧の中心と同様にJF間電圧の中心もほぼ0V付近になると考えられる。ところが、本実施の形態1では、互いに直列に接続されたMISFETQ1〜Q5において、それぞれのMISFETのボディ領域と、隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域とを、それぞれ、ダイオード(整流素子)を介して接続する。そして、特に、nチャネル型MISFETの場合、MISFETのボディ領域から隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う向きが順方向となるようにダイオードを接続するという特徴的構成をとっている。この特徴的構成をとる結果、JF間電圧が正電圧にならないように、JF間電圧の中心が負方向へシフトするのである。以下に、この理由について説明する。
【0102】
JF間電圧が正電圧になるということは、MISFETQ2のソース領域を基準にして、MISFETQ1のボディ領域が正電圧になることを意味している。これは、MISFETQ1のボディ領域がp型半導体領域から形成され、MISFETQ2のソース領域がn型半導体領域から形成されていることを考慮すると、JF間電圧が正電圧になるということは、MISFETQ1のボディ領域とMISFETQ2のソース領域との間のダイオード(図9のダイオードDI1)に順バイアスが印加されることを意味している。つまり、MISFETQ2のソース領域とMISFETQ1のボディ領域の間には、MISFETQ1のボディ領域からMISFETQ2のソース領域へ向う向きが順方向となるようなダイオードが接続されている。
【0103】
したがって、JF間電圧が正電圧になると、MISFETQ1のボディ領域とMISFETQ2のソース領域の間に順方向電流が流れることになる。しかし、実際には、MISFETQ1のボディ領域はフローティング状態となっているので、上述した順方向電流は流れない。すなわち、MISFETQ1のボディ領域がフローティング状態となって順方向電流が流れないことから、JF間電圧が正電圧になることはないのである。このような理由からJF間電圧は0V〜負電圧となり、振幅が約3Vであることから、JF間電圧の中心は−3V付近へシフトするのである。
【0104】
このようなことから、JF間電圧の中心は、−3V付近にシフトし、これに伴って、JH間電圧の中心およびJG間電圧の中心も−3V付近にシフトする。すなわち、本実施の形態1の特徴は、上述した特徴的構成をとることにより、JF間電圧が正電圧にならないように、JF間電圧の中心を負方向へシフトさせ、このシフトに伴って、JF間電圧の中心と同じJH間電圧の中心およびJG間電圧の中心も負方向にシフトさせる点にある。これにより、JH間電圧は、−3Vを中心として、振幅が1V程度の高周波電圧となり、JG間電圧も、−3Vを中心として、振幅が1V程度の高周波電圧となる。つまり、本実施の形態1において、JH間電圧およびJG間電圧は、−2Vと−4Vとの間を振動する高周波電圧となるのである。
【0105】
MISFETQ1やMISFETQ5を例に挙げて説明したが、上述した記載から、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成する各MISFETQ1〜Q5について同様のことが言える。したがって、本実施の形態1においては、各MISFETQ1〜Q5のゲート・ボディ間電圧、ソース・ドレイン間電圧、ボディ・ソース間電圧、および、ボディ・ドレイン間電圧は、図12のようになる。
【0106】
図12は、本実施の形態1のRXスルートランジスタ群TH(RX)を構成する各MISFETQ1〜Q5において、ノード間電圧の時間変化を示すグラフである。図12において、横軸は時間(nsec)を示しており、縦軸はノード間電圧を示している。具体的に、ノード間電圧は、ゲート・ボディ間電圧、ソース・ドレイン間電圧、ボディ・ソース間電圧、ボディ・ドレイン間電圧のいずれかを示している。
【0107】
図12で特徴的なことは、ボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧の両方とも、−3Vを中心とした振幅が1Vの高周波電圧となっている点である。この点に関し、図5に示す従来技術と比較すると、図5に示す従来技術において、ボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧は、−1Vを中心とした振幅が1Vの高周波電圧となっているのに対し、図12に示す本実施の形態1において、ボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧の両方とも、−3Vを中心とした振幅が1Vの高周波電圧となっている点が顕著に相違する。つまり、従来技術において、ボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧は、−2Vと0Vとの間を振動する高周波電圧になっているのに対し、本実施の形態1において、ボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧は、−4Vと−2Vとの間を振動する高周波電圧となっている点で相違する。
【0108】
このように本実施の形態1では、ボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧の振動を、従来技術よりも深い負方向へシフトさせている点に特徴があり、この特徴点により、ソース領域とドレイン領域の間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合のボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性を小さくできるのである。そして、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性を小さくできる結果、オフしているRXスルートランジスタ群TH(RX)から発生する3次高調波歪みを低減することができるのである。
【0109】
以下に、ボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧の振動を、従来技術よりも深い負方向へシフトさせることにより、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性を小さくできることについて、図13を参照しながら説明する。
【0110】
図13は、本実施の形態1において、ソース・ドレイン間電圧(Vds)とボディ・ドレイン間接合容量との関係、および、ソース・ドレイン間電圧(Vds)とボディ・ソース間接合容量との関係を示すグラフである。図13において、横軸はソース・ドレイン間電圧(Vds)を示しており、縦軸はボディ・ドレイン間接合容量とボディ・ソース間接合容量を示している。
【0111】
まず、ソース・ドレイン間電圧(Vds)が0Vの場合を考える。図12に示すように、ソース・ドレイン間電圧が0Vのとき、ボディ・ドレイン間電圧とボディ・ソース間電圧は、ともに、約−3Vとなっている。したがって、ボディ領域とドレイン領域の間のpn接合に逆バイアスが印加されているとともに、ボディ領域とソース領域の間のpn接合にも逆バイアスが印加されている。このときのボディ・ドレイン間接合容量とボディ・ソース間接合容量を、図13に示すように、CBとする。
【0112】
続いて、ソース・ドレイン間電圧がAC的に変化して正電圧方向に最も大きな電圧となる場合を考える。つまり、図12に示すように、ソース・ドレイン間電圧が+2Vとなる場合を考える。この場合、図12からわかるように、ボディ・ソース間電圧はほぼ−2Vとなる。このことから、ボディ領域とソース領域の間のpn接合にかかる逆バイアスが−3Vから−2Vへ減少するため、空乏層の幅は減少し、ボディ・ソース間接合容量の値は大きくなる。したがって、ボディ・ソース間接合容量は、図13に示すように、例えば、CB´(CB´>CB)となる。しかし、本実施の形態1の場合、ボディ領域とソース領域の間のpn接合にかかる逆バイアスは、−2Vよりも浅くならないので、逆バイアスがなくなる従来技術(図5および図6参照)と比較すると、ボディ・ソース間接合容量の電圧依存性は大幅に小さくなる。一方、図12からわかるように、ボディ・ドレイン間電圧はほぼ−4Vとなる。このことから、ボディ領域とドレイン領域の間のpn接合には深い逆バイアスが印加されるため、空乏層は、ソース・ドレイン間電圧が0Vの場合よりもさらに延びる。この結果、ボディ・ドレイン間接合容量の値はさらに小さくなる。したがって、ボディ・ドレイン間接合容量は、図13に示すように、例えば、CB´´(CB´´<CB)となる。
【0113】
また、ソース・ドレイン間電圧がAC的に変化して負電圧方向に最も大きな電圧(絶対値)となる場合も同様に考えることができる。具体的には、図12に示すように、ソース・ドレイン間電圧が−2Vとなる場合を考える。この場合、図12からわかるように、ボディ・ドレイン間電圧はほぼ−2Vとなる。このことから、ボディ領域とドレイン領域の間のpn接合にかかる逆バイアスが−3Vから−2Vへ減少するため、空乏層の幅は減少し、ボディ・ドレイン間接合容量の値は大きくなる。そして、ボディ・ドレイン間電圧が−2Vである場合のボディ・ドレイン間接合容量は、ボディ・ソース間電圧が−2Vである場合のボディ・ソース間接合容量と同様になる。したがって、ボディ・ドレイン間接合容量は、図13に示すように、例えば、CB´(CB´>CB)となる。しかし、本実施の形態1の場合、ボディ領域とドレイン領域の間のpn接合にかかる逆バイアスは、−2Vよりも浅くならないので、逆バイアスがなくなる従来技術(図5および図6参照)と比較すると、ボディ・ドレイン間接合容量の電圧依存性は大幅に小さくなる。一方、図12からわかるように、ボディ・ソース間電圧はほぼ−4Vとなる。このことから、ボディ領域とソース領域の間のpn接合には深い逆バイアスが印加されるため、空乏層は、ソース・ドレイン間電圧が0Vの場合よりもさらに延びる。この結果、ボディ・ソース間接合容量の値はさらに小さくなる。そして、ボディ・ソース間電圧が−4Vである場合のボディ・ソース間接合容量は、ボディ・ドレイン間電圧が−4Vである場合のボディ・ドレイン間接合容量と同様になる。したがって、ボディ・ソース間接合容量は、図13に示すように、例えば、CB´´(CB´´<CB)となる。
【0114】
以上のことから、ソース領域とドレイン領域の間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合において、本実施の形態1のボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量は、図13に示すような電圧依存性を示すことになる。すなわち、ボディ・ドレイン間容量およびボディ・ソース間容量は、それぞれ、ソース・ドレイン間電圧の電圧振幅が最大となる±2V近傍で電圧依存性が大きくなっている。しかし、図6に示した従来技術の場合と比較すると、その電圧依存性は大幅に小さくなっていることがわかる。これは、ボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧が従来技術と比較すると、逆バイアスが大きくなる方向へシフトし、ボディ・ソース間接合容量およびボディ・ドレイン間接合容量が大きくなる0V付近から遠ざかっていることによる。
【0115】
すなわち、本実施の形態1では、図12に示すように、ソース・ドレイン間電圧が−2Vと+2Vの間を変化する場合、ボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧は、−2Vと−4Vとの間を変化する。したがって、ボディ領域に印加される逆バイアスは−2Vよりも浅くならないので、ボディ・ソース間接合容量およびボディ・ドレイン間接合容量の容量変化は、図13に示すように比較的小さくなり、CB´´−CB´となる。
【0116】
これに対し、従来技術では、図5に示すように、ソース・ドレイン間電圧が−2Vと+2Vの間を変化する場合、ボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧は、−2Vと0Vとの間を変化する。したがって、ボディ領域に印加される逆バイアスは−2Vよりも浅くなり、容量が急激に大きくなる逆バイアスが印加されない状態(0V)まで達する。この結果、ボディ・ソース間接合容量およびボディ・ドレイン間接合容量の容量変化は、図6に示すように比較的大きくなり、(CA´´−CA´)>(CB´´−CB´)となる。
【0117】
このことから、図13と図5を比較すると、本実施の形態1によれば、従来技術に比べて、ソース・ドレイン電圧が−2Vと+2Vの間を変化する場合におけるボディ・ソース間接合容量およびボディ・ドレイン間接合容量の容量変化を小さくすることができることがわかる。このことは、本実施の形態1によれば、ボディ・ソース間接合容量およびボディ・ドレイン間接合容量の電圧依存性を小さくできることを意味している。そして、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成する各MISFETQ1〜Q5のソース・ドレイン間容量の主要部は、ボディ・ドレイン間接合容量とボディ・ソース間接合容量との直列和である。このため、MISFETQ1〜Q5のソース・ドレイン間容量の電圧依存性も、本実施の形態1によれば、従来技術に比べて、大幅に小さくすることができる。この結果、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)によれば、MISFETQ1〜Q5のソース・ドレイン間容量の電圧依存性に起因する3次高調波歪みの発生を大幅に低減することができるのである。
【0118】
<デバイス観点からの3次高調波歪みを低減できるメカニズム>
続いて、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)によって、3次高調波歪みの発生を抑制できるメカニズムをさらなるデバイスの観点から説明する。
【0119】
まず、図14(a)は、従来技術において、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFETの断面構造を示す図であり、(b)は、エネルギーバンド図である。図14(a)において、支持基板1S上に埋め込み絶縁層BOXが形成されており、この埋め込み絶縁層BOX上に活性層が形成されている。そして、活性層には、p型半導体領域から形成されるボディ領域BDが形成されており、このボディ領域BDを挟むようにn型半導体領域から形成されるソース領域Sとドレイン領域Dが形成されている。ボディ領域BD上には、ゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極Gが形成されている。このとき、ソース領域Sにはソース電圧Vsが印加されるようになっており、ドレイン領域Dにはドレイン電圧Vdが印加されるようになっている。同様に、ゲート電極Gにはゲート電圧Vgが印加されるようになっている。
【0120】
図14(a)において、MISFETのソース領域Sとドレイン領域Dとの間には、例えば、図5に示すように、0Vを中心として振幅が2Vのソース・ドレイン間電圧が印加されている。ここで、図14(a)は、ソース・ドレイン間電圧が0Vとなった瞬間の様子を示している。ソース・ドレイン間電圧が0Vとなったとき、図5からボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧は約−1Vとなっているので、ソース電位あるいはドレイン電位を基準にしたボディ領域BDの電位は約−1Vとなる。したがって、ボディ領域BDとソース領域Sの間およびボディ領域BDとドレイン領域Dの間には、逆バイアスが印加されていることになる。このため、図14(a)に示すように、ボディ領域BDとソース領域Sの境界、および、ボディ領域BDとドレイン領域Dの境界に空乏層DPLが形成されている。そして、MISFETはオフしていることから、ゲート電極Gのゲート電圧Vgは負電位(−3V)となっており、かつ、ボディ領域BDの電位が−1Vであることから、ボディ領域BDを基準にしたゲート電極Gの電位は−2Vとなっている。したがって、p型半導体領域であるボディ領域BD内の正孔がゲート電極Gの負電位(−2V)に引き付けられて、ボディ領域BDとゲート絶縁膜GOXの界面近傍に正孔による蓄積層ALが形成されている。
【0121】
図14(b)は、この状態を示すエネルギーバンド図である。ボディ領域BDの電位は−1Vであり、ゲート電極Gの電位は−3Vであることから、電子のエネルギー的に考えると、ボディ領域BDのエネルギーはゲート電極Gのエネルギーよりも低くなるため、図14(b)に示すようなバンド図となる。そして、図14(b)に示すように、ボディ領域BDとゲート絶縁膜GOXの界面近傍でバンドが曲がっており、この領域に正孔による蓄積層ALが形成されていることがわかる。
【0122】
次に、図15(a)は、本実施の形態1において、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFETの断面構造を示す図であり、(b)は、エネルギーバンド図である。図15(a)と図14(a)の相違点は、図15(a)では、ボディ領域BDがダイオードDIを介して他のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域と電気的に接続されている点である。このため、本実施の形態1のMISFETでは、例えば、図10に示すように、ソース・ドレイン間電圧(図10のCB間電圧)が0Vとなったとき、図10からボディ・ソース間電圧(EC間電圧)およびボディ・ドレイン間電圧(EB間電圧)は約−3Vとなっているので、ソース電位あるいはドレイン電位を基準にしたボディ領域BDの電位は約−3Vとなる。したがって、ボディ領域BDとソース領域Sの間およびボディ領域BDとドレイン領域Dの間には、逆バイアスが印加されていることになる。このため、図15(a)に示すように、ボディ領域BDとソース領域Sの境界、および、ボディ領域BDとドレイン領域Dの境界に空乏層DPLが形成されている。
【0123】
ここで、図15(a)と図14(a)を比較すると、まず、図14(a)に示す従来技術では、ソース・ドレイン間電圧が0Vとなったとき、図5からボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧は約−1Vとなっている。これに対し、図15(a)に示す本実施の形態1では、ソース・ドレイン間電圧(図10のCB間電圧)が0Vとなったとき、図10からボディ・ソース間電圧(EC間電圧)およびボディ・ドレイン間電圧(EB間電圧)は約−3Vとなっている。このことから、本実施の形態1に示す技術的思想では、ボディ領域BDの電位は従来技術より負電圧の絶対値が大きくなる。このことは、本実施の形態1によれば、従来技術に比べて、ボディ領域BDとソース領域S、あるいは、ボディ領域BDとドレイン領域Dの間に、より深い逆バイアスが印加されることを意味する。この結果、本実施の形態1によれば、従来技術に比べて、ボディ領域BDとソース領域Sの境界領域、あるいは、ボディ領域BDとドレイン領域Dの境界領域から延びる空乏層の幅を大きくできることがわかる。このため、本実施の形態1における技術的思想によれば、ボディ・ソース間接合容量およびボディ・ドレイン間接合容量の絶対値を小さくすることができ、その結果、ボディ・ソース間接合容量およびボディ・ドレイン間接合容量の電圧依存性を小さくできる。このことから、本実施の形態1における技術的思想によれば、3次高調波歪みを低減できることがわかる。
【0124】
さらに、図15(a)では、ボディ領域BDの電位が−3Vに低下することから、ボディ領域BDを基準としたゲート電極Gの電位は正方向にシフトする。具体的に、ボディ領域BDに約−3Vが印加され、かつ、ゲート電極Gにも−3Vが印加されていることから、ボディ領域BDを基準にしたゲート電極Gの電位は、例えば、約0Vとなる。この結果、p型半導体領域であるボディ領域BD内の正孔がゲート電極Gに引き付けられることはなく、ボディ領域BDとゲート絶縁膜GOXの界面近傍には蓄積層ALが形成されない。
【0125】
図15(b)は、この状態を示すエネルギーバンド図である。ボディ領域BDの電位は−3Vであり、ゲート電極Gの電位は−3Vであることから、電子のエネルギー的に考えると、ボディ領域BDのエネルギーとゲート電極Gのエネルギーはほぼ等しくなるため、図15(b)に示すようなバンド図となる。そして、図15(b)に示すように、ボディ領域BDとゲート絶縁膜GOXの界面近傍でのバンドの曲がりが消滅しており、この領域に正孔による蓄積層ALが形成されていないことがわかる。
【0126】
続いて、本実施の形態1において、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFETに印加される高周波電圧が図15(a)に示す場合よりも大きくなる場合を考える。このことは、図10を参照すると、ソース・ドレイン間電圧(CB間電圧)やEA間電圧の振幅がさらに大きくなることを意味している。したがって、EA間電圧に着目し、図10から、EA間電圧の振幅が大きくなるとともに、EA間電圧が正電圧にならないことを考慮すると、EA間電圧の中心がさらに負方向にシフトすると考えられる。このことは、ボディ・ソース間電圧(EC間電圧)やボディ・ドレイン間電圧(EB間電圧)の中心も負方向へシフトすることを意味し、ソース領域Sやドレイン領域Dを基準としたボディ領域BDの電位がさらに深く負電圧方向へシフトすることを意味している。
【0127】
このことを前提として図16(a)を参照する。図16(a)は、本実施の形態1において、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFETの断面構造を示す図であり、(b)は、エネルギーバンド図である。図16(a)と図15(a)の相違点は、以下に示す点である。すなわち、図15(a)では、例えば、図10に示すように、ソース・ドレイン間電圧(図10のCB間電圧)が0Vとなったとき、図10からボディ・ソース間電圧(EC間電圧)およびボディ・ドレイン間電圧(EB間電圧)は約−3Vとなっているので、ソース電位あるいはドレイン電位を基準にしたボディ領域BDの電位は約−3Vとなる。これに対し、図16(a)では、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFETに印加される高周波電圧が図15(a)に示す場合よりも大きくなっているので、ソース領域Sやドレイン領域Dを基準としたボディ領域BDの電位が約−3Vよりもさらに深く負電圧方向へシフトしている。
【0128】
したがって、図16(a)において、ボディ領域BDとソース領域Sの間およびボディ領域BDとドレイン領域Dの間には、図15(a)の場合よりもさらに深い逆バイアスが印加されていることになる。このため、図16(a)に示すように、ボディ領域BDとソース領域Sの境界、および、ボディ領域BDとドレイン領域Dの境界に空乏層DPLが形成されるとともに、この空乏層DPLがさらに延びてゲート絶縁膜GOXの直下領域まで延びることになる。このことから、図16(a)の場合では、図15(a)の場合に比べて、ボディ・ソース間接合容量およびボディ・ドレイン間接合容量の絶対値を、さらに小さくすることができ、その結果、ボディ・ソース間接合容量およびボディ・ドレイン間接合容量の電圧依存性を小さくできる。このことから、図16(a)の場合は、図15(a)の場合に比べて、3次高調波歪みを低減できることがわかる。
【0129】
図16(b)は、この状態を示すエネルギーバンド図である。ボディ領域BDの電位は−3Vよりも負電圧方向に大きくなっており、ゲート電極Gの電位は−3Vであることから、電子のエネルギー的に考えると、ボディ領域BDのエネルギーは、ゲート電極Gのエネルギーよりも大きくなる。このことから、図16(b)に示すようなバンド図となる。そして、図16(b)に示すように、ボディ領域BDとゲート絶縁膜GOXの界面近傍でのバンドの曲がりが形成されており、この領域に空乏層DPLが形成されていることがわかる。
【0130】
さらに、本実施の形態1において、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFETに印加される高周波電圧が図16(a)に示す場合よりも大きくなる場合を考える。図17(a)は、本実施の形態1において、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFETの断面構造を示す図であり、(b)は、エネルギーバンド図である。図17(a)と図16(a)の相違点は、以下に示す点である。すなわち、図16(a)では、例えば、ソース・ドレイン間電圧(図10のCB間電圧)が0Vとなったとき、ボディ・ソース間電圧(EC間電圧)およびボディ・ドレイン間電圧(EB間電圧)は約−3Vよりも大きくなっているので、ソース電位あるいはドレイン電位を基準にしたボディ領域BDの電位は約−3Vよりも大きくなるとなる。これに対し、図17(a)では、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFETに印加される高周波電圧が図16(a)に示す場合よりも大きくなっているので、ソース領域Sやドレイン領域Dを基準としたボディ領域BDの電位が図16(a)に示す場合よりもさらに深く負電圧方向へシフトしている状況になっている。
【0131】
したがって、図17(a)において、ボディ領域BDとソース領域Sの間およびボディ領域BDとドレイン領域Dの間には、図16(a)の場合よりもさらに深い逆バイアスが印加されていることになる。このため、図17(a)に示すように、ボディ領域BDとソース領域Sの境界、および、ボディ領域BDとドレイン領域Dの境界に空乏層DPLが形成されるとともに、この空乏層DPLがさらに延びてボディ領域BD全体にまで達する(ボディ領域BDの完全空乏化)。このことから、図17(a)の場合では、図16(a)の場合に比べて、ボディ・ソース間接合容量およびボディ・ドレイン間接合容量の絶対値を、さらに小さくすることができ、その結果、ボディ・ソース間接合容量およびボディ・ドレイン間接合容量の電圧依存性を小さくできる。このことから、図17(a)の場合は、図16(a)の場合に比べて、さらに、3次高調波歪みを低減できることがわかる。
【0132】
図17(b)は、この状態を示すエネルギーバンド図である。ボディ領域BDの電位は図16(a)に示す場合よりもさらに負電圧方向に大きくなっており、ゲート電極Gの電位は−3Vであることから、電子に対するポテンシャルエネルギーは、ボディ領域BDの方が、ゲート電極Gよりも高くなる。このことから、図17(b)に示すようなバンド図となる。そして、図17(b)に示すように、ボディ領域BDの全体にわたってバンドが曲がっており、ボディ領域BD全体に空乏層DPLが形成されていることがわかる(完全空乏化)。
【0133】
上述したデバイス観点からの考察により、以下に示す知見が得られる。すなわち、本実施の形態1では、互いに直列に接続されたMISFETにおいて、それぞれのMISFETのボディ領域と、隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域とを、それぞれ、ダイオード(整流素子)を介して接続する。そして、特に、nチャネル型MISFETの場合、MISFETのボディ領域から隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う向きが順方向となるようにダイオードを接続するという特徴的構成をとる。
【0134】
この特徴的構成を取ることにより、ボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧の振動を、従来技術よりも深い負方向へシフトさせることができる。この観点をデバイス観点から見ると、ソース領域とドレイン領域の間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合、ボディ領域とソース領域の境界領域、あるいは、ボディ領域とドレイン領域の境界領域に形成される空乏層を延ばすことができることを意味し、この結果、本実施の形態1によれば、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性を小さくできることがわかる。そして、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性を小さくできる結果、オフしているRXスルートランジスタ群TH(RX)から発生する3次高調波歪みを低減することができる。
【0135】
さらに、上述した図14〜図17によるデバイス観点の考察から、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するそれぞれのMISFETに印加される高周波電圧が大きくなればなるほど、本実施の形態1による特徴的構成によれば、3次高調波歪みをより低減できるという知見が得られる。つまり、従来技術を示す図14の場合よりも、本実施の形態1の構成を示す図15の場合のほうが、ボディ領域を深く負電圧にすることができて、空乏層の幅を大きくできる結果、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性を小さくできる。そして、さらに、本実施の形態1における特徴的構成によれば、図15〜図17に示したように、それぞれのMISFETに印加される高周波電圧が大きくなるにしたがって、ボディ領域に印加される負電圧を深くすることができることがわかる。このため、MISFETに印加される高周波電圧が大きくなればなるほど、ボディ領域の空乏層が増大し、最後には、ボディ領域が完全空乏化するまで、空乏層を増大させることができる。このことは、本実施の形態1における特徴的構成によれば、それぞれのMISFETに印加される高周波電圧が大きくなればなるほど、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性を小さくできることを意味し、最終的に、3次高調波歪みの発生を低減できることを意味している。
【0136】
例えば、アンテナスイッチから発生する3次高調波歪みは、大電力の送信信号を送信する場合ほど大きくなる。つまり、大電力の送信信号を送信する際、如何に、アンテナスイッチのオフしているRXスルートランジスタ群TH(RX)から発生する3次高調波歪みを低減できるかが重要な課題となる。この点に関し、上述したデバイス観点からの考察によれば、本実施の形態1における技術的思想は、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するそれぞれのMISFETに大きな高周波電圧が印加されればされるほど、3次高調波歪みの発生を低減できることがわかる。したがって、本実施の形態1における技術的思想は、大電力の送信信号を送信する際の3次高調波歪みを効果的に低減できる点で優れた発明であることがわかる。
【0137】
<本実施の形態1におけるMISFETのレイアウト構成>
次に、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFET(nチャネル型MISFET)のレイアウト構成について説明する。図18は、本実施の形態1におけるMISFETのレイアウト構成を示す平面図である。図18では、MISFETの構成をわかりやすくするため、MISFETの上層にある配線層は省略している。
【0138】
図18において、本実施の形態1におけるMISFETは、矩形形状の活性領域を有し、この活性領域にn型半導体領域NR1が形成されている。このn型半導体領域NR1は、MISFETのソース領域あるいはドレイン領域となる領域である。そして、このn型半導体領域NR1で挟まれる複数の領域にゲート電極Gが形成されている。具体的に、図18に示すように、複数のゲート電極Gは、n型半導体領域NR1が形成されている活性領域上をX方向に所定間隔だけ離れて並ぶように配置されており、それぞれのゲート電極はY方向へ延在するように形成されている。図18では隠れて見えないが、このゲート電極Gの直下領域にp型半導体領域よりなるボディ領域が形成されており、このボディ領域を挟むように、n型半導体領域NR1からなるソース領域とドレイン領域が形成されている。
【0139】
X方向に並んで配置されている複数のゲート電極Gは一端部でゲート引き出し電極GLに接続されている。すなわち、複数のゲート電極Gは、ゲート引き出し電極GLに束ねられている。このゲート引き出し配線は、X方向に延在するように配置されている。一方、複数のゲート電極Gの直下に形成されている複数のボディ領域も、ゲート引き出し電極GLの直下に形成されているp型半導体領域PR1に接続されている。そして、このp型半導体領域PR1は、n型半導体領域NR3と接続されている。したがって、p型半導体領域PR1とn型半導体領域NR3の境界領域にはpn接合が形成されており、pn接合ダイオードが形成されていることになる。つまり、p型半導体領域PR1は、pn接合ダイオードのアノードとして機能し、かつ、n型半導体領域NR3は、pn接合ダイオードのカソードとして機能する。
【0140】
以上より、MISFETのボディ領域は、ゲート引き出し電極GLの直下に形成されているp型半導体領域PR1と接続されており、かつ、このp型半導体領域PR1とn型半導体領域NR3によりpn接合ダイオードが形成されている。そして、pn接合ダイオードのn型半導体領域NR3は、図示しない他のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域と電気的に接続されている。したがって、MISFETのボディ領域は、pn接合ダイオードを介して、その他のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域と電気的に接続されていることになり、本実施の形態1における特徴的構成がレイアウト上で実現されることがわかる。このとき、MISFETのボディ領域から隣接するその他のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う向きが順方向となるようにpn接合ダイオードが接続されている。つまり、MISFETのボディ領域とpn接合ダイオードのアノードが接続され、かつ、隣接するその他のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域とpn接合ダイオードのカソードが接続されている。このように本実施の形態1では、MISFETのボディ領域とpn接合ダイオードのアノードが共通化(一体化)されているので、本実施の形態1におけるデバイス構造の占有面積を小さくできる効果が得られる。
【0141】
続いて、図19は、図18のA−A線で切断した断面図である。なお、図19では、図18で省略しているMISFET上の配線層も記載している。図19に示すように、SOI基板上にデバイス構造が形成されている。具体的に、支持基板1S上に埋め込み絶縁層BOXが形成されており、この埋め込み絶縁層BOX上に素子分離領域STIで区画された活性領域が形成されている。本実施の形態1では、この区画された1つの活性領域にMISFETとpn接合ダイオードが形成されている。
【0142】
まず、活性領域には、n型半導体領域NR1が形成されており、このn型半導体領域NR1の左側に隣接するようにn型半導体領域NR2が形成されている。そして、n型半導体領域NR2の左側に隣接するようにp型半導体領域PR1が形成されており、このp型半導体領域PR1の左側に隣接するようにn型半導体領域NR3が形成されている。
【0143】
p型半導体領域PR1上には、ゲート絶縁膜GOXを介してゲート引き出し電極GLが形成されており、このゲート引き出し電極GLの両側の側壁にサイドウォールSWが形成されている。そして、ゲート引き出し電極GL上を含む活性領域および素子分離領域STIを覆うように窒化シリコン膜SNが形成され、この窒化シリコン膜SN上に、例えば、酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。
【0144】
さらに、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNを貫通してn型半導体領域NR1に達するコンタクトホールCNTが形成されており、このコンタクトホールCNT内に、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、タングステン膜が順次埋め込まれてプラグPLGが形成されている。n型半導体領域NR1と接続するプラグPLGは、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されたソース配線SWLと接続されている。このソース配線SWLは、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成されるが、これに限らず、例えば、ダマシン法で形成された銅配線から構成してもよい。
【0145】
また、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNを貫通してゲート引き出し電極GLに達するコンタクトホールCNTが形成されており、このコンタクトホールCNT内に、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、タングステン膜が順次埋め込まれてプラグPLGが形成されている。ゲート引き出し電極GLと接続するプラグPLGは、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されたゲート配線GWLと接続されている。このゲート配線GWLも、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成されるが、これに限らず、例えば、ダマシン法で形成された銅配線から構成してもよい。
【0146】
また、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNを貫通してn型半導体領域NR3に達するコンタクトホールCNTが形成されており、このコンタクトホールCNT内に、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、タングステン膜が順次埋め込まれてプラグPLGが形成されている。n型半導体領域NR3と接続するプラグPLGは、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されたダイオード配線DIWLと接続されている。このダイオード配線DIWLも、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成されるが、これに限らず、例えば、ダマシン法で形成された銅配線から構成してもよい。
【0147】
次に、図20は、図18に示すMISFETの平面構造に配線層を加えた平面図である。図20に示すように、X方向に並んで配置されているゲート電極Gは、それぞれのゲート電極Gの一端部でゲート引き出し電極GLと接続されており、このゲート引き出し電極GL上にゲート配線GWLが配置されている。このゲート引き出し電極GLとゲート配線GWLは電気的に接続されており、両方とも、X方向へ延在している。
【0148】
そして、ゲート配線GWLと並ぶようにダイオード配線DIWLが配置されており、このダイオード配線DIWLもX方向へ延在している。ダイオード配線DIWLは、図18に示すn型半導体領域NR3と電気的に接続されている。
【0149】
さらに、図18に示すn型半導体領域NR1から構成されるソース領域は、X方向へ延在するソース配線SWLと電気的に接続されており、図18に示すn型半導体領域NR1から構成されるドレイン領域は、X方向へ延在するドレイン配線DWLと電気的に接続されている。
【0150】
<本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)のレイアウト構成>
本実施の形態1におけるMISFETは上記のようにレイアウト構成されており、以下に、このように構成されている複数のMISFETを直列接続したRXスルートランジスタ群TH(RX)のレイアウト構成について説明する。
【0151】
図21は、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)のレイアウト構成を示す図である。図21に示すように、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)は、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間に設けられており、MISFETQ1〜Q5を有している。
【0152】
MISFETQ1のゲート電極と接続されているゲート引き出し電極GL1、MISFETQ2のゲート電極と接続されているゲート引き出し電極GL2、MISFETQ3のゲート電極と接続されているゲート引き出し電極GL3、MISFETQ4のゲート電極と接続されているゲート引き出し電極GL4およびMISFETQ5のゲート電極と接続されているゲート引き出し電極GL5は、それぞれ、Y方向に延在している。そして、これらのゲート引き出し電極GL1〜GL5は、それぞれ、ゲート抵抗GRを介して束ねられて制御端子VRXに接続されている。
【0153】
ゲート引き出し電極GL1と並行するようにダイオード配線DIWL1がY方向に延在しており、このダイオード配線DIWL1は、Y方向に延在するドレイン配線DWL3(ソース配線SWL2)と電気的に接続されている。そして、ダイオード配線DIWL1と並行するようにドレイン配線DWL1がY方向に延在しており、このドレイン配線DWL1は、ゲート引き出し配線GL2と並行するダイオード配線DIWL2と接続されている。さらに、ドレイン配線DWL1は、アンテナ端子ANT(OUT)とも接続されている。さらに、ドレイン配線DWL2(ソース配線SWL1)は、ダイオード配線DIWL3と接続されており、ドレイン配線DWL3(ソース配線SWL2)は、ダイオード配線DIWL4と接続されている。また、ドレイン配線DWL4(ソース配線SWL3)は、ダイオード配線DIWL5と接続されており、このダイオード配線DIWL5と並行するようにドレイン配線DWL5(ソース配線SWL4)がY方向に延在している。そして、ソース配線SWL5は、受信端子RXと接続されている。
【0154】
以上のようにして、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)がレイアウト構成されている。
【0155】
<本実施の形態1における効果>
本実施の形態1における半導体装置は上記のように構成されており、本実施の形態1における技術的思想によれば、以下に示すような効果が得られる。すなわち、本実施の形態1では、互いに直列に接続されたMISFETにおいて、それぞれのMISFETのボディ領域と、隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域とを、それぞれ、ダイオード(整流素子)を介して接続する。そして、特に、nチャネル型MISFETの場合、MISFETのボディ領域から隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う向きが順方向となるようにダイオードを接続するという特徴的構成をとる。
【0156】
これにより、ボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧の振動を、従来技術よりも深い負方向へシフトさせることができる。したがって、ソース領域とドレイン領域の間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合、ボディ領域とソース領域の境界領域、あるいは、ボディ領域とドレイン領域の境界領域に形成される空乏層を延ばすことができ、この結果、本実施の形態1によれば、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性を小さくできることがわかる。そして、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性を小さくできる結果、例えば、オフしているRXスルートランジスタ群から発生する3次高調波歪みを低減することができる。
【0157】
具体的に、本実施の形態1によれば、通常のアンテナスイッチと比較して、2次高調波歪み、損失、アイソレーションといった3次高調波歪み以外の特性にほとんど影響を与えることなく、3次高調波歪みを約15dB低減することができる。
【0158】
特に、本実施の形態1による特徴的構成によれば、RXスルートランジスタ群を構成するそれぞれのMISFETに印加される高周波電圧が大きくなるに連れて、ボディ領域に印加される負電圧を深くすることができる。このため、MISFETに印加される高周波電圧が大きくなればなるほど、ボディ領域の空乏層が増大し、最後には、ボディ領域が完全空乏化するまで、空乏層を増大させることができる。このことから、本実施の形態1における特徴的構成によれば、それぞれのMISFETに印加される高周波電圧が大きくなればなるほど、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性を小さくでき、この結果、3次高調波歪みの発生を低減できる。
【0159】
本実施の形態1における技術的思想の基本概念は、オフしているMISFETのボディ領域により深い負電圧を印加させることにある。この基本概念を具現化する手段として、互いに直列に接続されたMISFETにおいて、それぞれのMISFETのボディ領域と、隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域とを、それぞれ、ダイオード(整流素子)を介して接続する。そして、特に、nチャネル型MISFETの場合、MISFETのボディ領域から隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う向きが順方向となるようにダイオードを接続するという特徴的構成をとる点に、本実施の形態1における技術的思想の利点がある。
【0160】
例えば、基本概念は、オフしているMISFETのボディ領域により深い負電圧を印加させることにあるが、この基本概念を具現化する手段として、MISFETのボディ領域に負電圧供給回路を直接接続することにより、ボディ領域の電位をより深い負電圧にすることが考えられる。しかし、通常、MISFETのボディ領域とソース領域の間、あるいは、ボディ領域とドレイン領域の間には、リーク電流が存在する。したがって、ボディ領域に直接、負電圧供給回路を接続すると、負電圧供給回路からリーク電流に対応した電流が流れることになる。負電圧供給回路は、通常、チャージポンプ回路により、電荷を容量素子(コンデンサ)に蓄積させることにより負電圧を発生させているので、負電圧供給回路から電流が流出するということは、電荷を蓄積している容量素子から電荷が放出されることを意味する。このため、容量素子に蓄積されている電荷量が変動し、負電圧供給回路から供給される負電圧に変動が生じる可能性がある。このことから、ボディ領域に直接、負電圧供給回路を接続する構成では、リーク電流に起因する電圧変動の影響を小さくするため、電荷を蓄積する容量素子の容量を大きくする必要がある。この結果、負電圧供給回路の占有面積が大きくなってしまう問題点が存在する。
【0161】
また、MISFETをオフする際、ゲート電極には負電圧を印加するので、ゲート電極には、負電圧供給回路が接続される。このため、ゲート電極に接続されている負電圧供給回路を、ボディ領域に負電圧を供給する供給源として使用することも考えられる。具体的には、負電圧供給回路と接続されるゲート電極とボディ領域とを電気的に接続することが考えられる。しかし、この場合も、MISFETのボディ領域とソース領域の間、あるいは、ボディ領域とドレイン領域の間に存在するリーク電流が負電圧供給回路に悪影響を及ぼすことには変わりがない。
【0162】
これに対し、本実施の形態1では、上述した基本概念を具現化する手段として、新たな負電圧供給回路を使用せずに、ボディ領域により深い負電圧を印加できるように構成している点に斬新さがある。つまり、本実施の形態1では、互いに直列に接続されたMISFETにおいて、それぞれのMISFETのボディ領域と、隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域とを、それぞれ、ダイオード(整流素子)を介して接続する。そして、特に、nチャネル型MISFETの場合、MISFETのボディ領域から隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う向きが順方向となるようにダイオードを接続するという特徴的構成を取っている。
【0163】
これにより、本実施の形態1によれば、ボディ領域により深い負電圧を印加するために、新たな負電圧供給回路を設ける必要がない利点が得られる。この結果、新たな負電圧供給回路を設ける必要がないので、半導体装置全体の占める占有面積を低減できる効果が得られる。このように本実施の形態1の技術的思想は、基本概念を具現化する手段として、新たな負電圧供給回路を使用せずに、ボディ領域により深い負電圧を印加できるように、上述した特徴的構成をとる点に工夫点があり、この工夫点により、半導体装置の占有面積を大きくせずに、3次高調波歪みの低減を図ることができるという顕著な効果を得ることができるのである。
【0164】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、アンテナスイッチを構成するRXスルートランジスタ群TH(RX)に本発明の技術的思想を適用する例について説明した。本実施の形態2では、アンテナスイッチを構成するRXスルートランジスタ群TH(RX)だけでなく、TXシャントトランジスタ群SH(TX)やRXシャントトランジスタ群SH(RX)にも本発明の技術的思想を適用する例について説明する。
【0165】
図22は、本実施の形態2におけるアンテナスイッチASWの回路構成を示す図である。図22に示すように、本実施の形態2におけるアンテナスイッチASWでは、RXスルートランジスタ群TH(RX)だけでなく、TXシャントトランジスタ群SH(TX)やRXシャントトランジスタ群SH(RX)も、本発明の特徴的構成が採用されている。
【0166】
ここで、前記実施の形態1でも述べたように、オン抵抗を低減する観点から、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFETのゲート幅は、TXシャントトランジスタ群SH(TX)やRXシャントトランジスタ群SH(RX)を構成するMISFETのゲート幅よりも大きくなっている。このため、RXスルートランジスタ群TH(RX)のオフ容量は、TXシャントトランジスタ群SH(TX)やRXシャントトランジスタ群SH(RX)のオフ容量よりも大きくなる。この結果、オフ容量の大きなRXスルートランジスタ群TH(RX)で、オフ容量の電圧依存性が大きくなる。つまり、RXスルートランジスタ群TH(RX)では、オフ容量の電圧依存性が大きくなることから、オフ容量の電圧依存性に起因する3次高調波歪みの主要な発生源となる。したがって、前記実施の形態1で説明したように、3次高調波歪みの主要な発生源であるRXスルートランジスタ群TH(RX)に本発明の特徴的構成を適用して、アンテナスイッチASWから発生する3次高調波歪みを低減している。
【0167】
一方、TXシャントトランジスタ群SH(TX)やRXシャントトランジスタ群SH(RX)では、MISFETのゲート幅が小さく、オフ容量が小さいので、オフ容量の電圧依存性は、RXスルートランジスタ群TH(RX)に比べて小さくなる。このため、TXシャントトランジスタ群SH(TX)やRXシャントトランジスタ群SH(RX)は、3次高調波歪みの主要な発生源とはならないことから、前記実施の形態1では、TXシャントトランジスタ群SH(TX)やRXシャントトランジスタ群SH(RX)に本発明の特徴的構成を適用していなかった。
【0168】
しかし、本実施の形態2では、アンテナスイッチASWを構成するTXシャントトランジスタ群SH(TX)やRXシャントトランジスタ群SH(RX)にも本発明の特徴的構成を適用している。この理由について説明する。
【0169】
本発明の特徴的構成を取ることにより、MISFETのボディ領域には深い負電圧が印加されることになる。このようにMISFETのボディ領域に深い負電圧が印加されると、MISFETのソース領域とドレイン領域との間の耐圧が向上するのである。
【0170】
例えば、MISFETのソース領域とドレイン領域との間に印加する電圧を大きくする場合を考える。この場合、MISFETのドレイン領域側に正電圧を印加するとする。いま、nチャネル型MISFETを前提とすると、MISFETのドレイン領域はn型半導体領域から構成され、MISFETのボディ領域はp型半導体領域から構成されることになる。したがって、MISFETのドレイン領域に正電圧を印加するということは、ドレイン領域とボディ領域との間の境界領域に形成されているpn接合に逆バイアスが印加されることを意味する。このため、pn接合から空乏層が延びることになる。そして、ドレイン領域に印加する正電圧が大きくなると、pn接合から延びる空乏層の幅も大きくなる。この結果、ドレイン領域とボディ領域の境界領域からボディ領域へ空乏層が延び、さらに、ソース領域側にまで空乏層が延びる。このとき、ボディ領域とソース領域との間に電位障壁が存在するが、この電位障壁に空乏層が達すると、ドレイン領域に印加された正電圧によって、その電位障壁が引っ張られて、電位障壁が低くなってしまう。この結果、電子がソース領域から低くなった電位障壁を飛び越えてボディ領域に流れ込み、さらにはドレイン領域へ流入する。これにより、ソース領域とドレイン領域の間には、ゲート電極では制御できない電流が流れることになる。この現象はパンチスルーと呼ばれる現象である。つまり、パンチスルーが発生する電圧によってMISFETの耐圧が決定されることになる。
【0171】
ここで、MISFETのボディ領域に負電圧が印加されている場合を考える。ボディ領域に負電圧が印加されているということは、ボディ領域の電子に対するポテンシャルエネルギーが高い状態になることを意味している。つまり、ボディ領域に負電圧を印加すると、ソース領域とボディ領域の間に存在する電位障壁が高くなり、ドレイン領域のポテンシャルエネルギーが印加された正電圧によって下方に引っ張られても、電位障壁が低くなりにくくなるのである。このことは、パンチスルーが起こりにくくなることを意味し、この結果、MISFETの耐圧が向上するのである。以上のことから、本発明の特徴的構成を取ることにより、MISFETのボディ領域には深い負電圧が印加されて、パンチスルーが起こりにくくなる結果、MISFETの耐圧が向上するのである。したがって、アンテナスイッチASWを構成するTXスルートランジスタ群TH(TX)、RXスルートランジスタ群TH(RX)、TXシャントトランジスタ群SH(TX)およびRXシャントトランジスタ群SH(RX)に本発明の特徴的構成を適用することにより、アンテナスイッチASWの耐圧を向上することができる。このため、例えば、アンテナスイッチASWからアンテナに出力できる高周波信号の電力を約1dB向上することができる。
【0172】
(実施の形態3)
前記実施の形態1では、例えば、図8に示すように、MISFETQ5のボディ領域が、ダイオードDI5を介して隣接するMISFETQ4のドレイン領域と接続されている例について説明した。これに対し、本実施の形態3では、例えば、図23に示すように、MISFETQ5のボディ領域が、ダイオードDI5を介してMISFETQ3のドレイン領域と接続される例について説明する。
【0173】
以下に、本実施の形態3におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)のスイッチ構成について図23を参照しながら説明する。図23は、本実施の形態3におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)のスイッチ構成を示す回路図である。図23に示すように、本実施の形態3におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)は、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に設けられている。具体的に、本実施の形態3におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)は、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間に直列に接続されたMISFETQ1〜Q5を有している。これらのMISFETQ1〜Q5は、例えば、nチャネル型MISFETから構成されている。そして、MISFETQ1〜Q5のそれぞれのゲート電極には、ゲート抵抗GRが接続されており、MISFETQ1〜Q5のゲート電極は、ゲート抵抗GRを介して束ねられており、1つの制御端子VRXに接続されている。
【0174】
さらに、MISFETQ1のボディ領域は、MISFETQ3のソース領域とダイオード(整流素子)DI1を介して接続されており、MISFETQ2のボディ領域は、MISFETQ4のソース領域とダイオードDI2を介して接続されている。同様に、MISFETQ3のボディ領域は、MISFETQ1のドレイン領域とダイオードDI3を介して接続されており、MISFETQ4のボディ領域は、MISFETQ2のドレイン領域とダイオードDI4を介して接続されている。また、MISFETQ5のボディ領域は、MISFETQ3のドレイン領域とダイオードDI5を介して接続されている。
【0175】
ここで、ダイオードDI1〜DI5は整流素子の一例であり、例えば、pn接合ダイオードから形成されている。このとき、ダイオードDI1は、MISFETQ1のボディ領域からMISFETQ3のソース領域へ向う向きが順方向(電流が流れる方向)となるように接続されている。そして、ダイオードDI2は、MISFETQ2のボディ領域からMISFETQ4のソース領域へ向う向きが順方向となるように接続され、ダイオードDI3は、MISFETQ3のボディ領域からMISFETQ1のドレイン領域へ向う向きが順方向となるように接続されている。同様に、ダイオードDI4は、MISFETQ4のボディ領域からMISFETQ2のドレイン領域へ向う向きが順方向になるように接続され、ダイオードDI5は、MISFETQ5のボディ領域からMISFETQ3のドレイン領域へ向う向きが順方向になるように接続されている。
【0176】
このように構成された本実施の形態3におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)の特徴は、互いに直列に接続されたMISFETQ1〜Q5において、それぞれのMISFETのボディ領域と、隣接するMISFETのさらに隣りにあるMISFETのソース領域あるいはドレイン領域とを、それぞれ、ダイオード(整流素子)を介して接続する点にある。そして、特に、nチャネル型MISFETの場合、MISFETのボディ領域から、隣接するMISFETのさらに隣にあるMISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う向きが順方向となるようにダイオードを接続する点にある。これにより、前記実施の形態1と同様に、オフしているRXスルートランジスタ群TH(RX)から発生する3次高調波歪みを低減することができる。
【0177】
なお、本実施の形態3では、第1MISFETのボディ領域と、別の第2MISFETのソース領域あるいはドレイン領域とを、それぞれ、ダイオード(整流素子)を介して接続する際、上述した第1MISFETと、別の第2MISFETの間に、1つのさらに別のMISFETを介在している例について説明したが、本発明の技術的思想は、これに限らない。例えば、上述した第1MISFETと、別の第2MISFETの間には、複数個のさらに別のMISFETが介在していてもよい。
【0178】
さらに、本実施の形態3の利点について説明する。まず、例えば、図23において、MISFETQ5に着目する。本実施の形態3では、MISFETQ5のボディ領域は、ダイオードDI5を介してMISFETQ3のドレイン領域と接続されている。これに対し、前記実施の形態1では、図8に示すように、MISFETQ5のボディ領域は、ダイオードDI5を介してMISFETQ4のドレイン領域と接続されている。
【0179】
ここで、本実施の形態3において、MISFETQ3のドレイン領域と、MISFETQ5のボディ領域との間の電圧(第1高周波電圧という)は、(1つのMISFETQ3のソース領域とドレイン領域との間に印加される電圧)+(1つのMISFETQ4のソース領域とドレイン領域との間に印加される電圧)+(MISFETQ5のドレイン領域とボディ領域との間に印加される電圧)と考えることができる。本実施の形態3では、この第1高周波電圧がすべて負電圧内で振動するように第1高周波電圧の中心が負電圧方向へシフトする。
【0180】
一方、前記実施の形態1において、MISFETQ4のドレイン領域と、MISFETQ5のボディ領域との間の電圧(第2高周波電圧という)は、(1つのMISFETQ4のソース領域とドレイン領域との間に印加される電圧)+(MISFETQ5のドレイン領域とボディ領域との間に印加される電圧)と考えることができる。前記実施の形態1では、この第2高周波電圧がすべて負電圧内で振動するように第2高周波電圧の中心が負電圧方向へシフトする。
【0181】
このとき、上述した記載から、本実施の形態3における第1高周波電圧の振幅は、前記実施の形態1における第2高周波電圧の振幅よりも大きくなることがわかる。このことから、本実施の形態3における第1高周波電圧の中心は、前記実施の形態1における第2高周波電圧の中心よりも負電圧方向に深い位置にあることになる。そして、本実施の形態3におけるMISFETQ5のボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧の中心は、第1高周波電圧の中心と同じになり、かつ、前記実施の形態1におけるMISFETQ5のボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧は、第2高周波電圧の中心と同じになる。したがって、本実施の形態3におけるMISFETQ5のボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧は、前記実施の形態1におけるMISFETQ5のボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧よりも負電圧の大きさが大きい位置で振動することになる。これは、本実施の形態3におけるMISFETQ5のボディ・ソース間電圧およびボディ・ドレイン間電圧が、前記実施の形態1と比較すると、逆バイアスが大きくなる方向へシフトし、MISFETQ5のボディ・ソース間接合容量およびボディ・ドレイン間接合容量が大きくなる0V付近から遠ざかることを意味する。したがって、本実施の形態3によれば、MISFETQ5のソース・ドレイン間容量の電圧依存性を、前記実施の形態1に比べて、さらに小さくすることができる。以上は、MISFETQ5について説明したが、その他のMISFETQ1〜Q4についても同様に考えることができる。この結果、本実施の形態3におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)によれば、MISFETQ1〜Q5のソース・ドレイン間容量の電圧依存性に起因する3次高調波歪みの発生を大幅に低減することができる。
【0182】
次に、上述した本実施の形態3の利点を別の観点から説明する。本発明では、MISFETのボディ領域がダイオードを介して別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域に接続されている構成をしている。このとき、本発明では、MISFETのボディ領域と別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域との間に印加される高周波電圧、すなわち、ダイオードのアノードとカソードとの間に印加される高周波電圧が、正電圧になることができないことを利用している。つまり、このMISFETのボディ領域に、別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域を基準にして正電圧がかかるということは、上述したダイオードに順バイアスが印加されることを意味しており、ダイオードに順バイアスが印加されると電流が流れるが、MISFETのボディ領域がフローティング状態となっているため、実際には電流が流れ得ない。このため、ダイオードに順バイアスが印加される状態となることはなく、したがって、MISFETのボディ領域に、別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域を基準にして正電圧がかかるということはない。このことから、MISFETのボディ領域と別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域との間に印加される高周波電圧(ダイオードのアノードとカソードとの間に印加される高周波電圧)が負電圧内を振動するように高周波電圧の中心がシフトする。本発明では、このメカニズムを利用して、3次高調波歪みを改善しているのである。
【0183】
ところが、実際のダイオードでは、所定値(VF)以下の順バイアスが印加された場合では電流が流れず、所定値(VF)よりも大きな順バイアスが印加されて初めて電流が流れるのである。したがって、MISFETのボディ領域と別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域との間に印加される高周波電圧の振幅、すなわち、ダイオードのアノードとカソードとの間に印加される高周波電圧の振幅が所定値(VF)以下の場合、MISFETのボディ領域に、別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域を基準にして所定値(VF)以下の正電圧がかかっても、そもそも、ダイオードには電流が流れないため、高周波電圧の中心がシフトする現象が生じない。このことは、MISFETのボディ領域と別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域との間に印加される高周波電圧の振幅、すなわち、ダイオードのアノードとカソードとの間に印加される高周波電圧の振幅が所定値(VF)以下の場合においては、上述したメカニズムが発現せず、3次高調波歪みを低減することができないことを意味する。つまり、本発明の3次高調波歪みを低減できるという効果は、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するそれぞれのMISFETQ1〜Q5に印加される高周波電圧が一定以上にならないと発現しないのである。
【0184】
この点に関し、本実施の形態3によれば、図23に示すように、MISFETのボディ領域がダイオードを介して隣接するMISFETのさらに隣りにある別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域に接続されている。したがって、本実施の形態3によれば、MISFETのボディ領域がダイオードを介して隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域と接続される構成(図8に示す前記実施の形態1の構成)よりも、1つのMISFETのソース領域とドレイン領域との間に印加される電圧分だけ、ダイオードのアノードとカソードとの間に印加される高周波電圧の大きさを大きくすることができる。このことから、本実施の形態3によれば、前記実施の形態1では本発明のメカニズムが発現しないような場合であっても、ダイオードのアノードとカソードとの間に印加される高周波電圧の振幅を所定値(VF)以上にすることができることになる。この結果、本実施の形態3によれば、前記実施の形態1よりも低い高周波電圧でも3次高調波歪みを低減できる効果が得られる。
【0185】
(実施の形態4)
本実施の形態4では、MISFETのボディ領域と、別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域との間に接続されているpn接合ダイオードの寄生容量を低減することにより、3次高調波歪みの発生を低減できる技術的思想について説明する。
【0186】
本実施の形態4におけるアンテナスイッチASWおよびRXスルートランジスタ群TH(RX)の回路構成は、図7および図8に示す前記実施の形態1におけるアンテナスイッチASWとRXスルートランジスタ群TH(RX)の回路構成と同様である。本実施の形態4において、前記実施の形態1と異なる点は、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFET(ダイオードも含む)のレイアウト構成である。
【0187】
以下に、本実施の形態4におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFET(nチャネル型MISFET)のレイアウト構成について説明する。図24は、本実施の形態4におけるMISFETのレイアウト構成を示す平面図である。図24では、MISFETの構成をわかりやすくするため、MISFETの上層にある配線層は省略している。
【0188】
図24において、本実施の形態4におけるMISFETは、矩形形状の活性領域を有し、この活性領域にn型半導体領域NR1が形成されている。このn型半導体領域NR1は、MISFETのソース領域あるいはドレイン領域となる領域である。そして、このn型半導体領域NR1で挟まれる複数の領域にゲート電極Gが形成されている。具体的に、図24に示すように、複数のゲート電極Gは、n型半導体領域NR1が形成されている活性領域上をX方向に所定間隔だけ離れて並ぶように配置されており、それぞれのゲート電極はY方向へ延在するように形成されている。図24では隠れて見えないが、このゲート電極Gの直下領域にp型半導体領域よりなるボディ領域が形成されており、このボディ領域を挟むように、n型半導体領域NR1からなるソース領域とドレイン領域が形成されている。
【0189】
X方向に並んで配置されている複数のゲート電極Gは一端部でゲート引き出し電極GLに接続されている。すなわち、複数のゲート電極Gは、ゲート引き出し電極GLに束ねられている。このゲート引き出し配線は、X方向に延在するように配置されている。一方、複数のゲート電極Gの直下に形成されている複数のボディ領域も、ゲート引き出し電極GLの直下に形成されているp型半導体領域PR2に接続されている。そして、このp型半導体領域PR2は、p型半導体領域PR3と接続されており、p型半導体領域PR3は、n型半導体領域NR3と接続されている。したがって、p型半導体領域PR3とn型半導体領域NR3の境界領域にはpn接合が形成されており、pn接合ダイオードが形成されていることになる。つまり、p型半導体領域PR3は、pn接合ダイオードのアノードとして機能し、かつ、n型半導体領域NR3は、pn接合ダイオードのカソードとして機能する。
【0190】
以上より、MISFETのボディ領域は、ゲート引き出し電極GLの直下に形成されているp型半導体領域PR2と接続されており、かつ、このp型半導体領域PR2は、p型半導体領域PR3と接続されている。そして、このp型半導体領域PR3とn型半導体領域NR3によりpn接合ダイオードが形成されている。そして、pn接合ダイオードのn型半導体領域NR3は、図示しない他のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域と電気的に接続されている。したがって、MISFETのボディ領域は、pn接合ダイオードを介して、その他のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域と電気的に接続されていることになり、本実施の形態4における特徴的構成がレイアウト上で実現されることがわかる。このとき、MISFETのボディ領域から隣接するその他のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う向きが順方向となるようにpn接合ダイオードが接続されている。つまり、MISFETのボディ領域とpn接合ダイオードのアノードが接続され、かつ、隣接するその他のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域とpn接合ダイオードのカソードが接続されている。このように本実施の形態4では、MISFETのボディ領域とpn接合ダイオードのアノードが共通化(一体化)されているので、本実施の形態4におけるデバイス構造の占有面積を小さくできる効果が得られる。
【0191】
ここで、本実施の形態4における特徴は、pn接合ダイオードを構成しているp型半導体領域PR3とn型半導体領域NR3の接合面積が小さくなっている点である。つまり、ゲート電極Gの直下に形成されているボディ領域と接続されるp型半導体領域PR2のX方向の幅は、矩形形状の活性領域のX方向の幅と同じになっている。ところが、本実施の形態4では、このp型半導体領域PR2と接続するp型半導体領域PR3のX方向の幅が、p型半導体領域PR2のX方向の幅に比べて充分に小さくなっている。そして、p型半導体領域PR3と接続するn型半導体領域NR3のX方向の幅も、p型半導体領域PR3のX方向の幅と同じになっている。したがって、本実施の形態4によれば、p型半導体領域PR3とn型半導体領域NR3から構成するpn接合ダイオードのpn接合面の面積を小さくすることができる。この結果、pn接合に起因した寄生容量を小さくすることができ、pn接合ダイオードが接続されたMISFETのソース領域あるいはドレイン領域の電位に与える影響を小さくできる。このため、本実施の形態4によれば、pn接合ダイオードの寄生容量(pn接合容量)に起因した高次高調波歪みの発生を抑制できる効果が得られる。なお、pn接合ダイオードと接続するp型半導体領域PR2(高濃度領域)を設けた理由は、抵抗を低減して信号遅延を抑制するためである。
【0192】
続いて、図25は、図24のA−A線で切断した断面図である。なお、図25では、図24で省略しているMISFET上の配線層も記載している。図25に示すように、SOI基板上にデバイス構造が形成されている。具体的に、支持基板1S上に埋め込み絶縁層BOXが形成されており、この埋め込み絶縁層BOX上に素子分離領域STIで区画された活性領域が形成されている。本実施の形態4では、この区画された1つの活性領域にMISFETとpn接合ダイオードが形成されている。
【0193】
まず、活性領域には、n型半導体領域NR1が形成されており、このn型半導体領域NR1の左側に隣接するようにn型半導体領域NR2が形成されている。そして、n型半導体領域NR2の左側に隣接するようにp型半導体領域PR1が形成されており、このp型半導体領域PR1の左側に隣接するようにp型半導体領域PR2が形成されている。さらに、p型半導体領域PR2の左側に隣接するようにp型半導体領域PR3が形成されており、このp型半導体領域PR3の左側に隣接するようにn型半導体領域NR3が形成されている。
【0194】
p型半導体領域PR1上には、ゲート絶縁膜GOXを介してゲート引き出し電極GLが形成されており、このゲート引き出し電極GLの両側の側壁にサイドウォールSWが形成されている。そして、ゲート引き出し電極GL上を含む活性領域および素子分離領域STIを覆うように窒化シリコン膜SNが形成され、この窒化シリコン膜SN上に、例えば、酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。
【0195】
さらに、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNを貫通してn型半導体領域NR1に達するコンタクトホールCNTが形成されており、このコンタクトホールCNT内に、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、タングステン膜が順次埋め込まれてプラグPLGが形成されている。n型半導体領域NR1と接続するプラグPLGは、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されたソース配線SWLと接続されている。このソース配線SWLは、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成されるが、これに限らず、例えば、ダマシン法で形成された銅配線から構成してもよい。
【0196】
また、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNを貫通してゲート引き出し電極GLに達するコンタクトホールCNTが形成されており、このコンタクトホールCNT内に、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、タングステン膜が順次埋め込まれてプラグPLGが形成されている。ゲート引き出し電極GLと接続するプラグPLGは、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されたゲート配線GWLと接続されている。このゲート配線GWLも、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成されるが、これに限らず、例えば、ダマシン法で形成された銅配線から構成してもよい。
【0197】
また、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNを貫通してn型半導体領域NR3に達するコンタクトホールCNTが形成されており、このコンタクトホールCNT内に、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、タングステン膜が順次埋め込まれてプラグPLGが形成されている。n型半導体領域NR3と接続するプラグPLGは、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されたダイオード配線DIWLと接続されている。このダイオード配線DIWLも、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成されるが、これに限らず、例えば、ダマシン法で形成された銅配線から構成してもよい。
【0198】
(実施の形態5)
前記実施の形態1では、MISFETのボディ領域が1つのダイオードを介して別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域に接続されている構成例について説明したが、本実施の形態5では、MISFETのボディ領域が、直列接続された2つのダイオードを介して、別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域に接続されている構成例について説明する。
【0199】
図26は、本実施の形態5におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)の回路構成を示す図である。図26において、本実施の形態5におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)は、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に設けられている。具体的に、本実施の形態5におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)は、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間に直列に接続されたMISFETQ1〜Q5を有している。これらのMISFETQ1〜Q5は、例えば、nチャネル型MISFETから構成されている。そして、MISFETQ1〜Q5のそれぞれのゲート電極には、ゲート抵抗GRが接続されており、MISFETQ1〜Q5のゲート電極は、ゲート抵抗GRを介して束ねられており、1つの制御端子VRXに接続されている。
【0200】
さらに、MISFETQ1のボディ領域は、MISFETQ2のソース領域と2つのダイオード(整流素子)DI1A、DI1Bを介して接続されており、MISFETQ2のボディ領域は、MISFETQ1のドレイン領域と2つのダイオードDI2A、DI2Bを介して接続されている。同様に、MISFETQ3のボディ領域は、MISFETQ2のドレイン領域と2つのダイオードDI3A、DI3Bを介して接続されており、MISFETQ4のボディ領域は、MISFETQ3のドレイン領域と2つのダイオードDI4A、DI4Bを介して接続されている。また、MISFETQ5のボディ領域は、MISFETQ4のドレイン領域と2つのダイオードDI5A、DI5Bを介して接続されている。
【0201】
ここで、ダイオードDI1A〜DI5Bは整流素子の一例であり、例えば、pn接合ダイオードから形成されている。このとき、ダイオードDI1A、DI1Bは、MISFETQ1のボディ領域からMISFETQ2のソース領域へ向う向きが順方向(電流が流れる方向)となるように直列接続されている。そして、ダイオードDI2A、DI2Bは、MISFETQ2のボディ領域からMISFETQ1のドレイン領域へ向う向きが順方向となるように直列接続され、ダイオードDI3A、DI3Bは、MISFETQ3のボディ領域からMISFETQ2のドレイン領域へ向う向きが順方向となるように直列接続されている。同様に、ダイオードDI4A、DI4Bは、MISFETQ4のボディ領域からMISFETQ3のドレイン領域へ向う向きが順方向になるように直列接続され、ダイオードDI5A、DI5Bは、MISFETQ5のボディ領域からMISFETQ4のドレイン領域へ向う向きが順方向になるように直列接続されている。
【0202】
本実施の形態5におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)は上記のように構成されており、以下に、その利点について説明する。まず、前記実施の形態1で説明したように、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するそれぞれのMISFETQ1〜Q5に印加される高周波電圧が大きくなるに連れて、ボディ領域に印加される負電圧を深くすることができる。このため、MISFETQ1〜Q5に印加される高周波電圧が大きくなればなるほど、ボディ領域の空乏層が増大し、最後には、ボディ領域が完全空乏化するまで、空乏層を増大させることができる。このことから、前記実施の形態1における特徴的構成によれば、それぞれのMISFETQ1〜Q5に印加される高周波電圧が大きくなればなるほど、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性を小さくでき、この結果、3次高調波歪みの発生を低減できる。
【0203】
ここで、前記実施の形態1で問題となるのが、ダイオードの耐圧である。RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するそれぞれのMISFETQ1〜Q5に印加される高周波電圧が大きくなるに連れて、ボディ領域に印加される負電圧は深くなる。このとき、ボディ領域に印加される負電圧が深くなるということは、ダイオードに印加される逆バイアス(逆方向電圧)が大きくなることを意味している。したがって、MISFETQ1〜Q5に印加される高周波電圧があまりに大きくなると、ダイオードに印加される逆バイアスがダイオードの破壊耐圧を超えてしまうことになる。このため、前記実施の形態1で説明したように、オフしているRXスルートランジスタ群TH(RX)から発生する3次高調波歪みを低減する観点からは、MISFETQ1〜Q5に印加する高周波電圧の大きさを大きくすることが望ましいが、MISFETQ1〜Q5に印加する高周波電圧の大きさを大きくしすぎると、上述したように、ダイオードが破壊されてしまう。したがって、前記実施の形態1では、ダイオードの破壊耐圧を超えない観点から、MISFETQ1〜Q5に印加する高周波電圧の大きさが制限される。
【0204】
そこで、本実施の形態5では、MISFETのボディ領域が、直列接続された2つのダイオードを介して別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域に接続されている構成を採用している。これにより、例えば、図26に示すMISFETQ5に着目すると、MISFETQ5のボディ領域とMISFETQ4のドレイン領域との間に大きな高周波電圧が印加されても、この大きな高周波電圧は、直列接続しているダイオードDI5AおよびダイオードDI5Bに分圧されて、それぞれのダイオードDI5AおよびダイオードDI5Bに印加されることになる。このため、例えば、MISFETQ5のボディ領域とMISFETQ4のドレイン領域との間に、1つのダイオードの破壊耐圧を超える高周波電圧が印加されても、本実施の形態5によれば、この高周波電圧が、ダイオードDI5AとダイオードDI5Bに分圧されて印加されるので、ダイオードDI5AおよびダイオードDI5Bが破壊されることを防止できる。つまり、本実施の形態5によるRXスルートランジスタ群TH(RX)によれば、ダイオードを破壊することなく、MISFETのボディ領域と別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域との間に、1つのダイオードの破壊耐圧を超える程度の高周波電圧までも印加することができる。この結果、本実施の形態5では、3次高調波歪みを充分に低減することができる。
【0205】
(実施の形態6)
前記実施の形態1〜5では、整流素子として、pn接合ダイオードを使用する例について説明したが、本実施の形態6では、整流素子として、ゲート電極をソース領域に直結したMISFETを使用する例について説明する。
【0206】
図27は、本実施の形態6におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)の回路構成を示す図である。図27において、本実施の形態6におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)は、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に設けられている。具体的に、本実施の形態6におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)は、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間に直列に接続されたMISFETQ1〜Q5を有している。これらのMISFETQ1〜Q5は、例えば、nチャネル型MISFETから構成されている。そして、MISFETQ1〜Q5のそれぞれのゲート電極には、ゲート抵抗GRが接続されており、MISFETQ1〜Q5のゲート電極は、ゲート抵抗GRを介して束ねられており、1つの制御端子VRXに接続されている。
【0207】
さらに、MISFETQ1のボディ領域は、MISFETQ2のソース領域と整流素子用MISFETQD1を介して接続されており、MISFETQ2のボディ領域は、MISFETQ1のドレイン領域と整流素子用MISFETQD2を介して接続されている。同様に、MISFETQ3のボディ領域は、MISFETQ2のドレイン領域と整流素子用MISFETQD3を介して接続されており、MISFETQ4のボディ領域は、MISFETQ3のドレイン領域と整流素子QD4を介して接続されている。また、MISFETQ5のボディ領域は、MISFETQ4のドレイン領域と整流素子用MISFETQD5を介して接続されている。
【0208】
ここで、整流素子用MISFETQD1〜QD5は整流素子としての機能を有している。具体的に、整流素子用MISFETQD5に着目する。このとき、整流素子用MISFETQD5において、MISFETQ5のボディ領域と接続されている領域を整流素子用MISFETQD5のソース領域と定義し、MISFETQ4のドレイン領域と接続されている領域を整流素子用MISFETQD5のドレイン領域と定義する。すると、整流素子用MISFETQD5は、ソース領域とゲート電極が直結している構成をしていることになる。
【0209】
このように構成されている整流素子用MISFETQD5において、ソース領域に正電圧を印加し、ドレイン領域に負電圧を印加すると、ソース領域とゲート電極が電気的に接続されていることから、ゲート電極にも正電圧が印加されることになる。この結果、整流素子用MISFETQD5はオンして、ソース領域からドレイン領域に向って電流が流れることになる。一方、ソース領域に負電圧を印加し、ドレイン領域に正電圧を印加すると、ソース領域とゲート電極が電気的に接続されていることから、ゲート電極にも負電圧が印加されることになる。この結果、整流素子用MISFETQD5はオフして、ソース領域とドレイン領域との間に電流は流れない。ここでは、整流素子用MISFETQD5について説明したが、その他の整流素子用MISFETQD1〜QD4についても同様である。したがって、整流素子用MISFETQD1〜QD5は、ダイオードと同様に整流機能を有していることがわかり、ダイオードに代えて、整流素子用MISFETQD1〜QD5を使用できることがわかる。
【0210】
整流素子用MISFETQD1は、MISFETQ1のボディ領域からMISFETQ2のソース領域へ向う向きが順方向(電流が流れる方向)となるように直列接続されている。そして、整流素子用MISFETQD2は、MISFETQ2のボディ領域からMISFETQ1のドレイン領域へ向う向きが順方向となるように直列接続され、整流素子用MISFETQD3は、MISFETQ3のボディ領域からMISFETQ2のドレイン領域へ向う向きが順方向となるように直列接続されている。同様に、整流素子用MISFETQD4は、MISFETQ4のボディ領域からMISFETQ3のドレイン領域へ向う向きが順方向になるように直列接続され、整流素子用MISFETQD5は、MISFETQ5のボディ領域からMISFETQ4のドレイン領域へ向う向きが順方向になるように直列接続されている。
【0211】
次に、本実施の形態6におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するMISFET(nチャネル型MISFET)および整流素子用MISFETのレイアウト構成について説明する。図28は、本実施の形態6におけるMISFETおよび整流素子用MISFETのレイアウト構成を示す平面図である。図28では、MISFETおよび整流素子用MISFETの構成をわかりやすくするため、MISFETおよび整流素子用MISFETの上層にある配線層は省略している。
【0212】
図28において、本実施の形態6におけるMISFETは、矩形形状の活性領域を有し、この活性領域にn型半導体領域NR1が形成されている。このn型半導体領域NR1は、MISFETのソース領域あるいはドレイン領域となる領域である。そして、このn型半導体領域NR1で挟まれる複数の領域にゲート電極Gが形成されている。具体的に、図28に示すように、複数のゲート電極Gは、n型半導体領域NR1が形成されている活性領域上をX方向に所定間隔だけ離れて並ぶように配置されており、それぞれのゲート電極はY方向へ延在するように形成されている。図28では隠れて見えないが、このゲート電極Gの直下領域にp型半導体領域よりなるボディ領域が形成されており、このボディ領域を挟むように、n型半導体領域NR1からなるソース領域とドレイン領域が形成されている。
【0213】
X方向に並んで配置されている複数のゲート電極Gは一端部でゲート引き出し電極GLに接続されている。すなわち、複数のゲート電極Gは、ゲート引き出し電極GLに束ねられている。このゲート引き出し配線は、X方向に延在するように配置されている。一方、複数のゲート電極Gの直下に形成されている複数のボディ領域も、ゲート引き出し電極GLの直下に形成されているp型半導体領域PR2に接続されている。そして、このp型半導体領域PR2は、整流素子用MISFETと接続されている。
【0214】
以下に、整流素子用MISFETのレイアウト構成について説明する。まず、p+型半導体領域PR2と接続するようにn型半導体領域NR3が形成されている。このn型半導体領域NR3は、整流素子用MISFETのソース領域となる領域である。そして、n型半導体領域NR3と離間してn型半導体領域NR6が設けられている。このn型半導体領域NR6は、整流素子用MISFETのドレイン領域となる領域である。そして、n型半導体領域NR3とn型半導体領域NR6との間に図示しないチャネル領域が形成されており、このチャネル領域上に整流素子用MISFETのゲート電極GEが形成されている。このゲート電極GEは、X方向へ延在している。
【0215】
続いて、図29は、図28のA−A線で切断した断面図である。なお、図29では、図28で省略しているMISFET上および整流素子用MISFET上の配線層も記載している。図29に示すように、SOI基板上にデバイス構造が形成されている。具体的に、支持基板1S上に埋め込み絶縁層BOXが形成されており、この埋め込み絶縁層BOX上に素子分離領域STIで区画された活性領域が形成されている。本実施の形態6では、この区画された1つの活性領域にMISFETと整流素子用MISFETが形成されている。
【0216】
まず、活性領域には、n型半導体領域NR1が形成されており、このn型半導体領域NR1の左側に隣接するようにn型半導体領域NR2が形成されている。そして、n型半導体領域NR2の左側に隣接するようにp型半導体領域PR1が形成されており、このp型半導体領域PR1の左側に隣接するようにp型半導体領域PR2が形成されている。さらに、p型半導体領域PR2の左側に隣接するようにn型半導体領域NR3が形成されており、このn型半導体領域NR3の左側に隣接するようにn型半導体領域NR4が形成されている。続いて、n型半導体領域NR4の左側に隣接するようにp型半導体領域PR3が形成されており、このp型半導体領域PR3の左側に隣接するようにn型半導体領域NR5が形成されている。そして、n型半導体領域NR5の左側に隣接するようにn型半導体領域NR6が形成されている。
【0217】
p型半導体領域PR1上には、ゲート絶縁膜GOX1を介してゲート引き出し電極GLが形成されており、このゲート引き出し電極GLの両側の側壁にサイドウォールSWが形成されている。一方、p型半導体領域PR3上には、ゲート絶縁膜GOX2を介してゲート電極GEが形成されており、このゲート電極GEの両側の側壁にサイドウォールSWが形成されている。そして、ゲート引き出し電極GL上およびゲート電極GE上を含む活性領域および素子分離領域STIを覆うように窒化シリコン膜SNが形成され、この窒化シリコン膜SN上に、例えば、酸化シリコン膜からなるコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。
【0218】
さらに、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNを貫通してn型半導体領域NR1に達するコンタクトホールCNTが形成されており、このコンタクトホールCNT内に、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、タングステン膜が順次埋め込まれてプラグPLGが形成されている。n型半導体領域NR1と接続するプラグPLGは、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されたソース配線SWLと接続されている。このソース配線SWLは、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成されるが、これに限らず、例えば、ダマシン法で形成された銅配線から構成してもよい。
【0219】
また、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNを貫通してゲート引き出し電極GLに達するコンタクトホールCNTが形成されており、このコンタクトホールCNT内に、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、タングステン膜が順次埋め込まれてプラグPLGが形成されている。ゲート引き出し電極GLと接続するプラグPLGは、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されたゲート配線GWLと接続されている。このゲート配線GWLも、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成されるが、これに限らず、例えば、ダマシン法で形成された銅配線から構成してもよい。
【0220】
そして、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNを貫通してp型半導体領域PR2やn型半導体領域NR3に達するコンタクトホールCNTが形成されており、このコンタクトホールCNT内に、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、タングステン膜が順次埋め込まれてプラグPLGが形成されている。さらに、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNを貫通してゲート電極GEに達するコンタクトホールCNTが形成されており、このコンタクトホールCNT内に、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、タングステン膜が順次埋め込まれてプラグPLGが形成されている。これらのプラグPLGを接続するように配線L1が形成されている。つまり、配線L1により、p型半導体領域PR2とn型半導体領域NR3とゲート電極GEが電気的に接続される。したがって、配線L1により、MISFETのボディ領域(p型半導体領域PR2)と整流素子用MISFETが接続され、かつ、整流素子用MISFETのソース領域(n型半導体領域NR3)と整流素子用MISFETのゲート電極GEが接続される。この配線L1も、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成されるが、これに限らず、例えば、ダマシン法で形成された銅配線から構成してもよい。
【0221】
また、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNを貫通してn型半導体領域NR6に達するコンタクトホールCNTが形成されており、このコンタクトホールCNT内に、例えば、チタン/窒化チタン膜からなるバリア導体膜と、タングステン膜が順次埋め込まれてプラグPLGが形成されている。n型半導体領域NR6と接続するプラグPLGは、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されたダイオード配線DIWLと接続されている。このダイオード配線DIWLも、例えば、窒化チタン膜とアルミニウム膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成されるが、これに限らず、例えば、ダマシン法で形成された銅配線から構成してもよい。
【0222】
次に、図30は、図28に示すMISFETの平面構造に配線層を加えた平面図である。図30に示すように、X方向に並んで配置されているゲート電極Gは、それぞれのゲート電極Gの一端部でゲート引き出し電極GLと接続されており、このゲート引き出し電極GL上にゲート配線GWLが配置されている。このゲート引き出し電極GLとゲート配線GWLは電気的に接続されており、両方とも、X方向へ延在している。
【0223】
そして、ゲート配線GWLと並ぶように配線L1が形成されており、この配線L1はX方向へ延在している。配線L1は、図28に示すp型半導体領域PR2とn型半導体領域NR3およびゲート電極GEと電気的に接続されている。このゲート電極は、配線L1と並ぶように配置されており、このゲート電極GEもX方向へ延在している。また、ゲート電極GEと並ぶようにダイオード配線DIWLが配置されており、このダイオード配線DIWLもX方向へ延在している。ダイオード配線DIWLは、図28に示すn型半導体領域NR6と電気的に接続されている。
【0224】
さらに、図28に示すn型半導体領域NR1から構成されるMISFETのソース領域は、X方向へ延在するソース配線SWLと電気的に接続されており、図28に示すn型半導体領域NR1から構成されるMISFETのドレイン領域は、X方向へ延在するドレイン配線DWLと電気的に接続されている。
【0225】
このように構成された本実施の形態6におけるRXスルートランジスタ群TH(RX)の特徴は、互いに直列に接続されたMISFETQ1〜Q5において、それぞれのMISFETのボディ領域と、隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域とを、それぞれ、整流素子用MISFETを介して接続する点にある。そして、特に、nチャネル型MISFETの場合、MISFETのボディ領域から、隣接するMISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う向きが順方向となるように整流素子用MISFETを接続する点にある。これにより、前記実施の形態1〜5と同様に、オフしているRXスルートランジスタ群TH(RX)から発生する3次高調波歪みを低減することができる。
【0226】
さらに、本実施の形態6の利点について説明する。前記実施の形態3で説明したように、実際のダイオードでは、所定値(VF)以下の順バイアスが印加された場合では電流が流れず、所定値(VF)よりも大きな順バイアスが印加されて初めて電流が流れる。したがって、MISFETのボディ領域と別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域との間に印加される高周波電圧の振幅、すなわち、ダイオードのアノードとカソードとの間に印加される高周波電圧の振幅が所定値(VF)以下の場合、MISFETのボディ領域に、別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域を基準にして所定値(VF)以下の正電圧がかかっても、そもそも、ダイオードには電流が流れないため、高周波電圧の中心がシフトする現象が生じない。このことは、MISFETのボディ領域と別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域との間に印加される高周波電圧の振幅、すなわち、ダイオードのアノードとカソードとの間に印加される高周波電圧の振幅が所定値(VF)以下の場合においては、上述したメカニズムが発現せず、3次高調波歪みを低減することができないことを意味する。つまり、本発明の3次高調波歪みを低減できるという効果は、pn接合ダイオードを使用する場合、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するそれぞれのMISFETQ1〜Q5に印加される高周波電圧が一定以上にならないと発現しないのである。
【0227】
これに対し、本実施の形態6では、pn接合ダイオードに代えて整流素子用MISFETを使用している。この整流素子用MISFETは、しきい値電圧を調整することにより、オン/オフを制御することができる。例えば、整流素子用MISFETのチャネル領域の濃度を調整することにより、整流素子用MISFETのしきい値電圧を0Vに調整することができる。このことは、整流素子用MISFETをダイオードとして見た場合、整流素子用MISFETが、所定値(VF)が0Vの理想的なダイオードとなることを意味する。つまり、本実施の形態6のように、pn接合ダイオードではなく、整流素子用MISFETを使用する場合、整流素子用MISFETによって、わずかな順バイアスが印加される場合であっても電流が流れる特性を有する整流素子を実現することができるのである。したがって、MISFETのボディ領域と別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域との間に印加される高周波電圧がわずかでも正電圧になれば、高周波電圧の中心が負電圧側にシフトする現象が生じる。この結果、本発明のメカニズムが発現し、3次高調波歪みを低減することができるのである。すなわち、本実施の形態6のように、pn接合ダイオードの代わりに整流素子用MISFETを使用することにより、RXスルートランジスタ群TH(RX)を構成するそれぞれのMISFETQ1〜Q5に印加される高周波電圧は低くても3次高調波歪みを低減できる効果が得られる。
【0228】
なお、本実施の形態6でも、前記実施の形態5と同様の思想を適用して、MISFETのボディ領域を、直列接続された2つの整流素子用MISFETを介して、別のMISFETのソース領域あるいはドレイン領域に接続するように構成してもよい。
【0229】
(実施の形態7)
前記実施の形態1では、1つの送信経路と1つの受信経路を有するSPDT(Single Pole Double Throw)型のアンテナスイッチASWに本願発明の技術的思想を適用する例について説明したが、本実施の形態7では、2つの送信経路と3つの受信経路を有するSP5T(Single Pole 5 Throw)型のアンテナスイッチに本願発明を適用する例について説明する。なお、本実施の形態7では、SP5T型のアンテナスイッチを例に挙げて説明するが、本願発明の技術的思想は、これに限らず、SPnT型のアンテナスイッチに幅広く適用することができる。
【0230】
近年、携帯電話機では音声通話機能だけでなく様々なアプリケーション機能が追加されている。すなわち、携帯電話機を用いた配信音楽の視聴、動画伝送、データ転送などの音声通話機能以外の機能が携帯電話機に追加されている。このような携帯電話機の多機能化に伴い、世界各国での周波数帯や変調方式が多数存在することになっている。したがって、携帯電話機では、複数の異なる周波数帯や異なる変調方式に対応した送受信信号に対応するものが存在する。
【0231】
図31は、例えば、デュアルバンドの信号を送受信する携帯電話機1の構成を示すブロック図である。図31に示す携帯電話機1の構成は、図1に示す携帯電話機1の基本構成とほぼ同様である。異なる点は、複数の異なる周波数帯の信号を送受信するために、それぞれの周波数帯の信号に対応し電力増幅器と低雑音増幅器が設けられている点である。例えば、複数の異なる周波数帯の信号として第1周波数帯の信号と第2周波数帯の信号がある。第1周波数帯の信号としては、GSM(Global System for Mobile Communication)方式を利用した信号が挙げられ、周波数帯としては、GSM低周波帯域の824MHz〜915MHzを使用している信号である。一方、第2周波数帯の信号としては、GSM(Global System for Mobile Communication)方式を利用した信号が挙げられ、周波数帯としては、GSM高周波帯域の1710MHz〜1910MHzを使用している信号である。
【0232】
図31に示す携帯電話機1において、インターフェース部IFU、ベースバンド部BBU、RF集積回路部RFICおよび制御部CUは、第1周波数帯の信号と第2周波数帯の信号とを信号処理できるように構成されている。そして、第1周波数帯の送信信号に対応して電力増幅器HPA1が設けられており、第2周波数帯の送信信号に対応して電力増幅器HPA2が設けられている。さらに、複数の異なる周波数帯の受信信号に対応して、それぞれ低雑音増幅器LNA1〜LNA3が設けられている。すなわち、図31に示すデュアルバンド方式の携帯電話機1では、異なる複数の周波数帯の信号に対応して2つの送信経路と3つの受信経路が存在する。
【0233】
したがって、アンテナスイッチASW2では切り替え端子が5つ存在することになる。つまり、第1周波数帯の送信信号に対応して送信端子TX1が設けられており、第2周波数帯の送信信号に対応して送信端子TX2が設けられている。そして、複数の異なる周波数帯の受信信号に対応して受信端子RX1〜RX3が設けられている。このようにアンテナスイッチASW2には5つの切り替え端子が存在するが、これらの端子の切り替えは制御部CUによって制御される。
【0234】
例えば、図1に示すSPDT型のアンテナスイッチASWは、1つの送信経路と1つの受信経路と有しているが、このSPDT型のアンテナスイッチASWにおいて送信信号を送信する場合、送信経路に設けられているTXスルートランジスタTH(TX)をオンするとともに、受信経路に設けられているRXスルートランジスタTH(RX)をオフする。すなわち、送信信号を送信する場合、送信経路を導通させるとともに、受信経路を非導通とする。このとき、3次高調波歪みはオフしているトランジスタが主要な発生源となるので、非導通となっている受信経路のRXスルートランジスタTH(RX)から主に3次高調波歪みが発生する。
【0235】
一方、図31に示すSP5T型のアンテナスイッチASW2は、2つの送信経路と3つの受信経路を有している。このため、1つの送信経路から送信信号を送信する場合、もう1つの送信経路と3つの受信経路が非導通となる。つまり、SP5T型のアンテナスイッチASW2では、1つの送信経路から送信信号を送信する際、他の4つの経路(もう1つの送信経路と3つの受信経路)に設けられているトランジスタはオフしていることになる。このことは、SPDT型のアンテナスイッチASWでは非導通の経路が1つであるのに対し、SP5T型のアンテナスイッチASW2では、非導通の経路が4つ存在することを意味する。したがって、SPDT型のアンテナスイッチASWでは、3次高調波歪みの主要な発生源が1つの非導通経路に設けられているオフ状態のトランジスタであるのに対し、SP5T型のアンテナスイッチASW2では、3次高調波歪みの主要な発生源が4つの非導通経路に設けられているオフ状態のトランジスタとなる。このため、SP5T型のアンテナスイッチASW2では、SPDT型のアンテナスイッチASWよりもより多くの3次高調波歪みが発生すると考えられる。以上のことから、SP5T型のアンテナスイッチASW2では、3次高調波歪みを低減する必要性が高く、本願発明の技術的思想をSP5T型のアンテナスイッチASW2に適用することが有用であると考えられる。
【0236】
以下に、本願発明における技術的思想をSP5T型のアンテナスイッチASW2に適用する例について説明する。図32は、本実施の形態7におけるアンテナスイッチASW2の回路構成を示す図である。図32に示すように、本実施の形態7におけるアンテナスイッチASW2は、アンテナ端子ANT(OUT)と、2つの送信端子TX1、TX2と、3つの受信端子RX1〜RX3を有している。
【0237】
まず、アンテナ端子ANT(OUT)と送信端子TX1の間にTXスルートランジスタ群TH(TX1)が設けられ、送信端子TX1とGND端子GND1との間にTXシャントトランジスタ群SH(TX1)が設けられている。また、アンテナ端子ANT(OUT)と送信端子TX2の間にTXスルートランジスタ群TH(TX2)が設けられ、送信端子TX2とGND端子GND2との間にTXシャントトランジスタ群SH(TX2)が設けられている。
【0238】
一方、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RX1の間にRXスルートランジスタ群TH(RX1)が設けられ、受信端子RX1とGND端子GND3との間にRXシャントトランジスタ群SH(RX1)が設けられている。同様に、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RX2の間にRXスルートランジスタ群TH(RX2)が設けられ、受信端子RX2とGND端子GND4との間にRXシャントトランジスタ群SH(RX2)が設けられている。また、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RX3の間にRXスルートランジスタ群TH(RX3)が設けられ、受信端子RX3とGND端子GND5との間にRXシャントトランジスタ群SH(RX3)が設けられている。
【0239】
そして、図32の斜線領域で示すTXスルートランジスタ群TH(TX1)、TH(TX2)、および、RXスルートランジスタ群TH(RX1)〜TH(RX3)は、例えば、前記実施の形態1〜6で説明した特徴的構成が採られている。したがって、送信端子TX1から第1送信信号を送信する場合と、送信端子TX2から第2送信信号を送信する場合のいずれにおいても、オフしているスルートランジスタから発生する3次高調波歪みを低減することができる。
【0240】
(実施の形態8)
本実施の形態8では、2つの送信経路と3つの受信経路を有するSP5T(Single Pole 5 Throw)型のアンテナスイッチにおいて、スルートランジスタ群だけでなく、シャントトランジスタ群にも本発明の技術的思想を適用する例について説明する。
【0241】
図33は、本実施の形態8におけるアンテナスイッチASW2の回路構成を示す図である。図33に示すように、本実施の形態8におけるアンテナスイッチASW2は、アンテナ端子ANT(OUT)と、2つの送信端子TX1、TX2と、3つの受信端子RX1〜RX3を有している。
【0242】
まず、アンテナ端子ANT(OUT)と送信端子TX1の間にTXスルートランジスタ群TH(TX1)が設けられ、送信端子TX1とGND端子GND1との間にTXシャントトランジスタ群SH(TX1)が設けられている。また、アンテナ端子ANT(OUT)と送信端子TX2の間にTXスルートランジスタ群TH(TX2)が設けられ、送信端子TX2とGND端子GND2との間にTXシャントトランジスタ群SH(TX2)が設けられている。
【0243】
一方、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RX1の間にRXスルートランジスタ群TH(RX1)が設けられ、受信端子RX1とGND端子GND3との間にRXシャントトランジスタ群SH(RX1)が設けられている。同様に、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RX2の間にRXスルートランジスタ群TH(RX2)が設けられ、受信端子RX2とGND端子GND4との間にRXシャントトランジスタ群SH(RX2)が設けられている。また、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RX3の間にRXスルートランジスタ群TH(RX3)が設けられ、受信端子RX3とGND端子GND5との間にRXシャントトランジスタ群SH(RX3)が設けられている。
【0244】
そして、図33の斜線領域で示すように、TXスルートランジスタ群TH(TX1)、TH(TX2)、RXスルートランジスタ群TH(RX1)〜TH(RX3)、TXシャントトランジスタ群SH(TX1)、SH(TX2)およびRXシャントトランジスタ群SH(RX1)〜SH(RX3)は、例えば、前記実施の形態1〜6で説明した特徴的構成が採られている。したがって、送信端子TX1から第1送信信号を送信する場合と、送信端子TX2から第2送信信号を送信する場合のいずれにおいても、オフしているスルートランジスタから発生する3次高調波歪みを低減することができる。さらに、本実施の形態8では、アンテナスイッチASW2を構成するすべての構成要素に本発明の特徴的構成が採用されているため、アンテナスイッチASW2の耐圧を向上させることもできる。この結果、アンテナスイッチASW2から送信する電力を大きくすることができる効果も得られる。
【0245】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0246】
前記実施の形態では、アンテナスイッチを構成するMISFETとして、nチャネル型MISFETを使用する例について説明したが、本発明の技術的思想の適用範囲はこれに限らず、例えば、アンテナスイッチを構成するMISFETがpチャネル型MISFETの場合にも適用することができる。この場合、pチャネル型MISFETのボディ領域と、別のpチャネル型MISFETのソース領域あるいはドレイン領域との間に介在するダイオードは、pチャネル型MISFETのボディ領域から別のpチャネル型MISFETのソース領域あるいはドレイン領域へ向う方向が逆方向となるように接続する。これにより、アンテナスイッチを複数のpチャネル型MISFETから構成する場合も、3次高調波歪みを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0248】
1 携帯電話機
1S 支持基板
AL 蓄積層
ANT アンテナ
ANT(OUT)アンテナ端子
ASW アンテナスイッチ
ASW2 アンテナスイッチ
BBU ベースバンド部
BD ボディ領域
BOX 埋め込み絶縁層
CIL コンタクト層間絶縁膜
CNT コンタクトホール
CS コバルトシリサイド膜
CU 制御部
D ドレイン領域
DI1 ダイオード
DI1A ダイオード
DI1B ダイオード
DI2 ダイオード
DI2A ダイオード
DI2B ダイオード
DI3 ダイオード
DI3A ダイオード
DI3B ダイオード
DI4 ダイオード
DI4A ダイオード
DI4B ダイオード
DI5 ダイオード
DI5A ダイオード
DI5B ダイオード
DIWL ダイオード配線
DIWL1 ダイオード配線
DIWL2 ダイオード配線
DIWL3 ダイオード配線
DIWL4 ダイオード配線
DIWL5 ダイオード配線
DPL 空乏層
DWL ドレイン配線
DWL1 ドレイン配線
DWL2 ドレイン配線
DWL3 ドレイン配線
DWL4 ドレイン配線
DWL5 ドレイン配線
EX1d 低濃度不純物拡散領域
EX1s 低濃度不純物拡散領域
G ゲート電極
GE ゲート電極
GL ゲート引き出し電極
GL1 ゲート引き出し電極
GL2 ゲート引き出し電極
GL3 ゲート引き出し電極
GL4 ゲート引き出し電極
GL5 ゲート引き出し電極
GND1 GND端子
GND2 GND端子
GND3 GND端子
GND4 GND端子
GND5 GND端子
GOX ゲート絶縁膜
GOX1 ゲート絶縁膜
GOX2 ゲート絶縁膜
GR ゲート抵抗
GWL ゲート配線
HPA 電力増幅器
HPA1 電力増幅器
HPA2 電力増幅器
IFU インターフェース部
LNA 低雑音増幅器
LNA1 低雑音増幅器
LNA2 低雑音増幅器
LNA3 低雑音増幅器
L1 配線
NR1 n型半導体領域
NR1d 高濃度不純物拡散領域
NR1s 高濃度不純物拡散領域
NR2 n型半導体領域
NR3 n型半導体領域
NR4 n型半導体領域
NR5 n型半導体領域
NR6 n型半導体領域
PF ポリシリコン膜
PLG プラグ
PR1 p型半導体領域
PR2 p型半導体領域
PR3 p型半導体領域
QD1 整流素子用MISFET
QD2 整流素子用MISFET
QD3 整流素子用MISFET
QD4 整流素子用MISFET
QD5 整流素子用MISFET
MISFET
Q1 MISFET
Q2 MISFET
Q3 MISFET
Q4 MISFET
Q5 MISFET
RFIC RF集積回路部
RX 受信端子
RX1 受信端子
RX2 受信端子
RX3 受信端子
S ソース領域
SH(RX) RXシャントトランジスタ群
SH(RX1) RXシャントトランジスタ群
SH(RX2) RXシャントトランジスタ群
SH(RX3) RXシャントトランジスタ群
SH(TX) TXシャントトランジスタ群
SH(TX1) TXシャントトランジスタ群
SH(TX2) TXシャントトランジスタ群
SN 窒化シリコン膜
STI 素子分離領域
SW サイドウォール
SWL ソース配線
SWL1 ソース配線
SWL2 ソース配線
SWL3 ソース配線
SWL4 ソース配線
SWL5 ソース配線
TH(RX) RXスルートランジスタ群
TH(RX1) RXスルートランジスタ群
TH(RX2) RXスルートランジスタ群
TH(RX3) RXスルートランジスタ群
TH(TX) TXスルートランジスタ群
TH(TX1) TXスルートランジスタ群
TH(TX2) TXスルートランジスタ群
TX 送信端子
TX1 送信端子
TX2 送信端子
Vd ドレイン電圧
Vg ゲート電圧
RX 制御端子
Vs ソース電圧
TX 制御端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と第2端子とを有し、かつ、前記第1端子と前記第2端子との間の導通・非導通を制御するスイッチを備え、
前記スイッチは、
(a)前記第1端子と前記第2端子との間に直列に複数個接続された電界効果トランジスタからなる第1電界効果トランジスタ群を有し、
前記第1電界効果トランジスタ群に含まれるそれぞれの前記電界効果トランジスタは、
(a1)チャネルが形成される半導体領域であるボディ領域と、
(a2)前記ボディ領域を挟むように形成された一対のソース領域およびドレイン領域と、
(a3)前記ボディ領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
(a4)前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを有する半導体装置であって、
前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる第1電界効果トランジスタの第1ボディ領域は、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる他の第2電界効果トランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域と、整流素子を介して電気的に接続されており、
前記整流素子は、前記第1電界効果トランジスタの前記第1ボディ領域から、前記第2電界効果トランジスタの前記第2ソース領域あるいは前記第2ドレイン領域へ向う方向が、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記電界効果トランジスタがnチャネル型電界効果トランジスタの場合は順方向となるように接続され、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記電界効果トランジスタがpチャネル型電界効果トランジスタの場合は逆方向となるように接続されている半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記第1電界効果トランジスタと前記第2電界効果トランジスタは、互いに隣接しており、前記第1ボディ領域と前記整流素子を介して電気的に接続された前記第2ソース領域あるいは前記第2ドレイン領域が、前記第1電界効果トランジスタの第1ソース領域および第1ドレイン領域と直接接続されていない半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記第1電界効果トランジスタと前記第2電界効果トランジスタの間には、1個以上の前記電界効果トランジスタが介在している半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記整流素子は、pn接合ダイオードである半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記整流素子は、直列に複数個接続したpn接合ダイオードから構成されている半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記整流素子は、前記第1電界効果トランジスタ群には含まれない別の整流素子用電界効果トランジスタから構成されており、
前記整流素子用電界効果トランジスタは、ソース領域とゲート電極とを電気的に接続した構成をしている半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記整流素子は、前記第1電界効果トランジスタ群には含まれない別の整流素子用電界効果トランジスタを直列に複数個接続した構成をしており、
それぞれの前記整流素子用電界効果トランジスタは、ソース領域とゲート電極とを電気的に接続した構成をしている半導体装置。
【請求項8】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記第1電界効果トランジスタ群および前記整流素子は、支持基板と、前記支持基板上に形成された埋め込み絶縁層と、前記埋め込み絶縁層上に形成された活性領域であるシリコン層からなるSOI基板に形成されている半導体装置。
【請求項9】
請求項8記載の半導体装置であって、
前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる前記第1電界効果トランジスタと前記整流素子とは、同一の前記活性領域内に形成されている半導体装置。
【請求項10】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記整流素子はpn接合ダイオードであり、
前記第1電界効果トランジスタの前記第1ボディ領域と、前記pn接合ダイオードを構成する一対の半導体領域のうち、前記第1ボディ領域と同じ導電型の半導体領域とは、一体的に形成されている半導体装置。
【請求項11】
送信端子とアンテナ端子と受信端子とを有するアンテナスイッチを備え、
前記アンテナスイッチは、
(a)前記アンテナ端子と前記受信端子との間に直列に複数個接続された受信スイッチ用電界効果トランジスタからなる第1電界効果トランジスタ群と、
(b)前記アンテナ端子と前記送信端子との間に直列に複数個接続された送信スイッチ用電界効果トランジスタからなる第2電界効果トランジスタ群とを有し、
前記第1電界効果トランジスタ群に含まれるそれぞれの前記受信スイッチ用電界効果トランジスタあるいは前記第2電界効果トランジスタ群に含まれるそれぞれの前記送信スイッチ用電界効果トランジスタは、
(ab1)チャネルが形成される半導体領域であるボディ領域と、
(ab2)前記ボディ領域を挟むように形成された一対のソース領域およびドレイン領域と、
(ab3)前記ボディ領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
(ab4)前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを有する半導体装置であって、
前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる第1受信スイッチ用電界効果トランジスタの第1ボディ領域は、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる他の第2受信スイッチ用電界効果トランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域と、第1整流素子を介して電気的に接続されており、
前記第1整流素子は、前記第1受信スイッチ用電界効果トランジスタの第1ボディ領域から、前記第2受信スイッチ用電界効果トランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域へ向う方向が、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記受信スイッチ用電界効果トランジスタがnチャネル型電界効果トランジスタの場合は順方向となるように接続され、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記受信スイッチ用電界効果トランジスタがpチャネル型電界効果トランジスタの場合は逆方向となるように接続されている半導体装置。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置であって、
前記第2電界効果トランジスタ群に含まれる第1送信スイッチ用電界効果トランジスタの第1ボディ領域は、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる他の第2送信スイッチ用電界効果トランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域と、第2整流素子を介して電気的に接続されており、
前記第2整流素子は、前記第1送信スイッチ用電界効果トランジスタの前記第1ボディ領域から、前記第2送信スイッチ用電界効果トランジスタの前記第2ソース領域あるいは前記第2ドレイン領域へ向う方向が、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記送信スイッチ用電界効果トランジスタがnチャネル型電界効果トランジスタの場合は順方向となるように接続され、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記送信スイッチ用電界効果トランジスタがpチャネル型電界効果トランジスタの場合は逆方向となるように接続されている半導体装置。
【請求項13】
請求項11記載の半導体装置であって、
さらに、前記アンテナスイッチは、
(c)前記受信端子とグランド端子との間に直列に複数個接続された受信用シャントトランジスタからなる第3電界効果トランジスタ群とを有し、
前記第3電界効果トランジスタ群に含まれるそれぞれの前記受信用シャントトランジスタは、
(c1)チャネルが形成される半導体領域であるボディ領域と、
(c2)前記ボディ領域を挟むように形成された一対のソース領域およびドレイン領域と、
(c3)前記ボディ領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
(c4)前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを含み、
前記第3電界効果トランジスタ群に含まれる第1受信用シャントトランジスタの第1ボディ領域は、前記第3電界効果トランジスタ群に含まれる他の第2受信用シャントトランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域と、第3整流素子を介して電気的に接続されており、
前記第3整流素子は、前記第1受信用シャントトランジスタの前記第1ボディ領域から、前記第2受信用シャントトランジスタの前記第2ソース領域あるいは前記第2ドレイン領域へ向う方向が、前記第3電界効果トランジスタ群を構成する前記受信用シャントトランジスタがnチャネル型電界効果トランジスタの場合は順方向となるように接続され、前記第3電界効果トランジスタ群を構成する前記受信用シャントトランジスタがpチャネル型電界効果トランジスタの場合は逆方向となるように接続されている半導体装置。
【請求項14】
請求項11記載の半導体装置であって、
さらに、前記アンテナスイッチは、
(d)前記送信端子とグランド端子との間に直列に複数個接続された送信用シャントトランジスタからなる第4電界効果トランジスタ群とを有し、
前記第4電界効果トランジスタ群に含まれるそれぞれの前記送信用シャントトランジスタは、
(d1)チャネルが形成される半導体領域であるボディ領域と、
(d2)前記ボディ領域を挟むように形成された一対のソース領域およびドレイン領域と、
(d3)前記ボディ領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
(d4)前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを含み、
前記第4電界効果トランジスタ群に含まれる第1送信用シャントトランジスタの第1ボディ領域は、前記第4電界効果トランジスタ群に含まれる他の第2送信用シャントトランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域と、第4整流素子を介して電気的に接続されており、
前記第4整流素子は、前記第1送信用シャントトランジスタの前記第1ボディ領域から、前記第2送信用シャントトランジスタの前記第2ソース領域あるいは前記第2ドレイン領域へ向う方向が、前記第4電界効果トランジスタ群を構成する前記送信用シャントトランジスタがnチャネル型電界効果トランジスタの場合は順方向となるように接続され、前記第4電界効果トランジスタ群を構成する前記送信用シャントトランジスタがpチャネル型電界効果トランジスタの場合は逆方向となるように接続されている半導体装置。
【請求項15】
送信端子とアンテナ端子と受信端子を有し、送信信号を送信する際には前記送信端子と前記アンテナ端子を導通させて前記送信端子から前記アンテナ端子に向って前記送信信号を伝達させる一方、受信信号を受信する際には前記受信端子と前記アンテナ端子とを導通させて前記アンテナ端子から前記受信端子に向って前記受信信号を伝達させるというスイッチング制御を行なうアンテナスイッチを含む携帯電話機であって、
前記アンテナスイッチは、
(a)前記アンテナ端子と前記受信端子との間に直列に複数個接続された受信スイッチ用電界効果トランジスタからなる第1電界効果トランジスタ群と、
(b)前記アンテナ端子と前記送信端子との間に直列に複数個接続された送信スイッチ用電界効果トランジスタからなる第2電界効果トランジスタ群とを有し、
前記第1電界効果トランジスタ群に含まれるそれぞれの前記受信スイッチ用電界効果トランジスタあるいは前記第2電界効果トランジスタ群に含まれるそれぞれの前記送信スイッチ用電界効果トランジスタは、
(ab1)チャネルが形成される半導体領域であるボディ領域と、
(ab2)前記ボディ領域を挟むように形成された一対のソース領域およびドレイン領域と、
(ab3)前記ボディ領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
(ab4)前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを含み、
前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる第1受信スイッチ用電界効果トランジスタの第1ボディ領域は、前記第1電界効果トランジスタ群に含まれる他の第2受信スイッチ用電界効果トランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域と、第1整流素子を介して電気的に接続されており、
前記第1整流素子は、前記第1受信スイッチ用電界効果トランジスタの第1ボディ領域から、前記第2受信スイッチ用電界効果トランジスタの第2ソース領域あるいは第2ドレイン領域へ向う方向が、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記受信スイッチ用電界効果トランジスタがnチャネル型電界効果トランジスタの場合は順方向となるように接続され、前記第1電界効果トランジスタ群を構成する前記受信スイッチ用電界効果トランジスタがpチャネル型電界効果トランジスタの場合は逆方向となるように接続されている携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−80247(P2012−80247A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222296(P2010−222296)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】