説明

半導体装置の製造方法

【課題】導電層と絶縁層とが積層された構造に貫通ホールを一括して形成可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、基板上にシリコン酸化物を含む絶縁層17とシリコンを含む導電層WLとの積層体を形成する工程と、絶縁層17及び導電層WLを貫通するホール50を積層体に形成する工程とを備え、ホール50の形成工程は、積層体上にシリコン酸化物を含む第1のマスク層41を形成する工程と、第1のマスク層41をマスクにして導電層WLをエッチングする工程と、第1のマスク層41上に絶縁層17よりもシリコン含有量が多い第2のマスク層42を形成し第2のマスク層42をマスクにして、絶縁層17をエッチングする工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリデバイスにおけるワード電極として機能する導電層と、絶縁層とを交互に複数積層した積層構造に、最上層から最下層まで貫通するホールを形成し、そのホールの内壁に電荷蓄積層を形成した後、ホール内にシリコンを柱状に埋め込むことでメモリセルを3次元配列する技術が、例えば特許文献1に提案されている。
【0003】
複数の導電層と複数の絶縁層との積層構造に貫通ホールを形成するにあたっては、導電層と絶縁層とを交互に加工(エッチング)する必要がある。そのとき、導電層については導電層に対してエッチング選択比を有するマスク層を形成して導電層用の加工装置で加工し、絶縁層については絶縁層に対してエッチング選択比を有するマスク層を形成して絶縁層用の加工装置で加工するという方法が考えられる。しかし、将来的に、導電層と絶縁層との積層数が多層化していくと予想され、その場合に導電層と絶縁層とをそれぞれ別の加工装置を用いて交互に加工することはコスト面で多大な負担になることから、できればホール形成は同一チャンバー内で一括に行いたい。
【0004】
ホールの一括形成を行うにあたって、例えばシリコン酸化物系のマスク層を用いる場合、シリコン系の導電層に対しては十分なエッチング選択比を有するが、同じシリコン酸化物系の絶縁層をエッチングするときにはマスク層も絶縁層と同程度エッチングされてしまう。それをあらかじめ見込んでマスク層を厚く形成することが考えられるが、導電層と絶縁層との積層数がより多層化していった場合には、絶縁層の層数増大にあわせてマスク層のエッチング量も多くなり、その分マスク層を厚くしなければならない。しかし、マスク層の厚さの増大はマスク層に形成するパターン開口の高アスペクト比化をまねき、マスク層自体の加工が困難となることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−266143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、導電層と絶縁層とが積層された構造に貫通ホールを一括して形成可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、基板上にシリコン酸化物を含む絶縁層とシリコンを含む導電層との積層体を形成する工程と、前記絶縁層及び前記導電層を貫通するホールを前記積層体に形成する工程と、を備え、前記ホールの形成工程は、前記積層体上に、シリコン酸化物を含む第1のマスク層を形成する工程と、前記第1のマスク層をマスクにして前記導電層をエッチングする工程と、前記第1のマスク層上に前記絶縁層よりもシリコン含有量が多い第2のマスク層を形成し前記第2のマスク層をマスクにして、前記絶縁層をエッチングする工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導電層と絶縁層とが積層された構造に貫通ホールを一括して形成可能な半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置におけるメモリセルアレイの構成を例示する模式斜視図。
【図2】同メモリセルアレイにおける1本のメモリストリングの模式斜視図。
【図3】図1におけるYZ方向の要部模式断面図。
【図4】図3における要部の拡大断面図。
【図5】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式図。
【図6】図5に続く工程を示す模式図。
【図7】図6に続く工程を示す模式図。
【図8】図7に続く工程を示す模式図。
【図9】図8に続く工程を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る半導体装置は、複数のメモリセルが3次元配列されたメモリセルアレイと、そのメモリセルアレイの周辺に形成された周辺回路とを有する。
【0011】
図1は、そのメモリセルアレイの構成を例示する模式斜視図である。
図2は、複数のメモリセルが、ワード電極層として機能する複数の導電層の積層方向に直列接続されて構成される1本(1列)のメモリストリングの模式斜視図である。
図3は、図1におけるYZ方向の要部模式断面図である。
なお、図1及び図2においては、図を見易くするために、導電部分のみを示し、絶縁部分は図示を省略している。
【0012】
また、本明細書においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を導入する。この座標系においては、基板の主面に対して平行な方向であって相互に直交する2方向をX方向及びY方向とし、これらX方向及びY方向の双方に対して直交する方向、すなわち導電層WLの積層方向をZ方向とする。
【0013】
図3に示すように、基板(例えばシリコン基板)11上にセルソース12が設けられている。セルソース12は不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。セルソース12の上には絶縁層13を介して下部選択ゲートLSGが設けられ、下部選択ゲートLSGの上には絶縁層14が設けられている。絶縁層13、14はシリコン酸化物やシリコン窒化物を含む層であり、下部選択ゲートLSGは不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。
【0014】
絶縁層14の上には、複数の絶縁層17と複数の導電層WLとが交互に積層された積層体が設けられている。導電層WLの層数は任意であるが、本実施形態においては例えば4層の場合を例示する。絶縁層17はシリコン酸化物を含み、例えばTEOS(tetraethoxysilane)(Si(OC)を含む。導電層WLは不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。
【0015】
最上層の導電層WL上にはバリア層(例えばSiN層)24が設けられ、バリア層24上には絶縁層25を介して上部選択ゲートUSGが設けられ、上部選択ゲートUSGの上には絶縁層27が設けられている。絶縁層25、27はシリコン酸化物やシリコン窒化物を含む層であり、上部選択ゲートUSGは不純物が添加され導電性を有するシリコン層である。
【0016】
図1に示すように、導電層WL、下部選択ゲートLSGおよびセルソース12は、XY平面に対して平行な板状に形成されている。上部選択ゲートUSGは、X方向に延びる複数本の配線状の導電部材となっている。なお、下部選択ゲートLSGは上部選択ゲートUSGと同様に複数に分断された構成であってもよい。
【0017】
前述した基板11上の積層体には、Z方向に延びる複数本のホールが形成されている。それらホールは、例えばX方向及びY方向に沿ってマトリクス状に配列されている。
【0018】
各ホールの内部には、柱状の半導体層として、下層側から順にシリコンピラー15、19、32が埋め込まれている。シリコンピラー15は下部選択ゲートLSGを貫通し、シリコンピラー19は複数の導電層WLを貫通し、シリコンピラー32は上部選択ゲートUSGを貫通している。シリコンピラー15、19、32は、多結晶シリコン又は非晶質シリコンによって形成されている。シリコンピラー15、19、32の形状は、Z方向に延びる柱状であり、例えば円柱形である。シリコンピラー15の下端はセルソース12に接続されている。シリコンピラー19の下端はシリコンピラー15に接続され、上端はシリコンピラー32に接続されている。
【0019】
上部選択ゲートUSG上の絶縁層27の上には図3に示すように絶縁層29が設けられ、その絶縁層29上にはY方向に延びる複数本のビット線BLが設けられている。各ビット線BLは、Y方向に沿って配列された各列のシリコンピラー32の直上域を通過するように配列されており、絶縁層29を貫通して設けられた導電性接続部30を介して、シリコンピラー32の上端に接続されている。
【0020】
図1に示すように、上部選択ゲートUSGは導電性接続部65を介して上部選択ゲート配線USLと接続されている。セルソース12、下部選択ゲートLSGおよび複数の導電層WLが積層された積層体の端部は階段状に加工され、その部分で、セルソース12は導電性接続部61を介してセルソース配線CSLに接続され、下部選択ゲートLSGは導電性接続部62を介して下部選択ゲート配線LSLに接続され、各導電層WLは導電性接続部63を介してワード線WLLに接続されている。
【0021】
図3に示すように、導電層WLと絶縁層17との積層体に形成されたホールの内周壁には、例えばシリコン酸化膜でシリコン窒化膜を挟んだONO(Oxide-Nitride-Oxide)構造の絶縁膜20が形成されている。図4に、その部分の拡大断面を示す。
【0022】
絶縁膜20は、第1の絶縁膜21と第2の絶縁膜23との間に電荷蓄積層22を挟んだ構造を有する。第2の絶縁膜23の内側にシリコンピラー19が設けられ、第2の絶縁膜23はシリコンピラー19に接している。第1の絶縁膜21は導電層WLに接して設けられ、第1の絶縁膜21と第2の絶縁膜23との間に電荷蓄積層22が設けられている。
【0023】
導電層WLと絶縁層17との積層体に設けられたシリコンピラー19はチャネルとして機能し、導電層WLはコントロールゲートとして機能し、電荷蓄積層22はシリコンピラー19から注入される電荷を蓄積するデータ記憶層として機能する。すなわち、シリコンピラー19と各導電層WLとの交差部分に、チャネルの周囲をゲート電極が囲んだ構造のメモリセルが形成されている。
【0024】
このメモリセルはチャージトラップ構造のメモリセルであり、電荷蓄積層22は、電荷(電子)を閉じこめるトラップを多数有し、例えばシリコン窒化膜からなる。第2の絶縁膜23は、例えばシリコン酸化膜からなり、電荷蓄積層22にシリコンピラー19から電荷が注入される際、または電荷蓄積層22に蓄積された電荷がシリコンピラー19へ拡散する際に電位障壁となる。第1の絶縁膜21は、例えばシリコン酸化膜からなり、電荷蓄積層22に蓄積された電荷が、導電層WLへ拡散するのを防止する。
【0025】
図2に示すように、1本のシリコンピラー19の周囲には、導電層WLの層数と同数のメモリセルMCがZ方向に直列接続され、1本のメモリストリングMSが構成される。このようなメモリストリングMSがX方向及びY方向にマトリクス状に配列されていることにより、複数のメモリセルMCが、X方向、Y方向、Z方向に3次元的に配列されている。
【0026】
再び図3を参照すると、下部選択ゲートLSG及びその上下の絶縁層13、14からなる積層体に形成されたホールの内周壁には、ゲート絶縁膜16が筒状に形成され、この内側にシリコンピラー15が埋め込まれている。これにより、その積層体内には、シリコンピラー15をチャネルとし、その周囲の下部選択ゲートLSGをゲート電極とした下部選択トランジスタLSTが設けられている。
【0027】
また、上部選択ゲートUSG及びその上下の絶縁層25、27からなる積層体に形成されたホールの内周壁には、ゲート絶縁膜33が筒状に形成され、この内側にシリコンピラー32が埋め込まれている。これにより、その積層体内には、シリコンピラー32をチャネルとし、その周囲の上部選択ゲートUSGをゲート電極とした上部選択トランジスタUSTが設けられている。
【0028】
以上説明したメモリセルアレイの周辺には図示しない周辺回路が、同じ基板11上に形成されている。周辺回路は、ビット線BLを介してシリコンピラー32の上端部に電位を与えるドライバ回路、セルソース配線CSL及びセルソース12を介してシリコンピラー15の下端部に電位を与えるドライバ回路、上部選択ゲート配線USLを介して上部選択ゲートUSGに電位を与えるドライバ回路、下部選択ゲート配線LSLを介して下部選択ゲートLSGに電位を与えるドライバ回路、ワード線WLLを介して各電極層WLに電位を与えるドライバ回路などを含む。
【0029】
本実施形態に係る半導体装置は、データの消去・書き込みを電気的に自由に行うことができ、電源を切っても記憶内容を保持することができる不揮発性半導体記憶装置である。
【0030】
ビット線BLを選択することによりメモリセルのX座標を選択し、上部選択ゲートUSGを選択して上部選択トランジスタUSTを導通状態又は非導通状態とすることにより、メモリセルのY座標を選択し、ワード線WLLすなわち導電層WLを選択することによりメモリセルのZ座標を選択する。そして、選択されたメモリセルの電荷蓄積層22に電子を注入することによりデータを記憶する。また、そのメモリセルを通過するシリコンピラー19にセンス電流を流すことにより、そのメモリセルに記憶されたデータを読み出す。
【0031】
次に、図5〜図9を参照して、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0032】
まず、図5(a)に示すように、基板11上にセルソース12を形成した後、そのセルソース12上に絶縁層13を介して下部選択ゲートLSGとなるシリコン層を形成し、さらにその上に絶縁層14を形成する。このようにして得られた積層体にセルソース12まで到達する貫通ホールをRIE(Reactive Ion Etching)で形成した後、その貫通ホールの側壁にゲート絶縁膜16を形成し、さらにその後シリコンピラー15を埋め込む。これにより、下部選択トランジスタLSTが形成される。
【0033】
次に、絶縁層14上に絶縁層17と導電層WLとを交互に複数積層し、さらに最上層にバリア層24を形成する。次に、それら積層体上に、図5(b)に示すように第1のマスク層41を形成する。
【0034】
第1のマスク層41は、バリア層24上に形成される第1のシリコン酸化物層41aと、この第1のシリコン酸化物層41a上に形成される第2のシリコン酸化物層41bとを有する。例えば、第1のシリコン酸化物層41aは、TEOS(tetraethoxysilane)(Si(OC)を含む層であり、第2のシリコン酸化物層41bは、ボロン(B)を含むSiOであるBSG(Boron-Silicate Glass)を含む層である。
【0035】
第1のマスク層41及びバリア層24は、図6(a)に示すようにパターニングされる。すなわち、第1のマスク層41及びバリア層24には、図示しないレジストマスクを用いてRIEが行われ、複数のホール50が形成される。複数のホール50の平面レイアウトはメモリストリングの平面レイアウトに対応しており、例えばマトリクス状である。
【0036】
以下、本明細書において、n(nは自然数)層目の導電層WLとは、複数の導電層WLのうちで上から数えてn層目のものを表す。n層目の絶縁層17についても同様に、複数の絶縁層17のうちで上から数えてn層目のものを表す。
【0037】
ホール50の形成により、ホール50の底部には1層目の導電層WLの表面が露出する。その状態で1層目の導電層WLのRIEを行い、図6(b)に示すように、1層目の導電層WLに、上方のホール50につながると共に膜厚方向を貫通し下層の1層目の絶縁層17に達するホールを形成する。
【0038】
具体的には、前述した積層体が形成されたウェーハがチャンバー内のウェーハ保持部に例えば静電チャックされて保持され、そのチャンバー内を所望のガスの所望の減圧雰囲気にした状態で、チャンバー内のガスを励起してプラズマを発生させる。例えば、本実施形態では、チャンバー外に設けられたTCP(Transformer Coupled Plasma)電極に高周波電力を与えることによって電磁波を発生させ、その電磁波をチャンバー内に導入することでチャンバー内のガスを励起してプラズマ化させる。
【0039】
例えば、チャンバー内に、SiClガスを10(sccm)、HBrガスを150(sccm)、Oガスを10(sccm)、CFガスを10(sccm)の流量で導入し、それらガスによるチャンバー内圧力を30(mTorr)に維持する。TCP電極には480(W)の高周波電力を印加する。また、ウェーハ保持部も電極として機能し、このウェーハ保持部には600(W)の高周波電力を印加する。さらに、ウェーハは、ウェーハ保持部に設けられたヒータ等の温度制御機構により60℃に温度制御される。
【0040】
以上のような条件で、第1のマスク層41をマスクにして1層目の導電層WLに対してRIEが行われる。このとき、シリコン層である導電層WLは、シリコン酸化物系の第1のマスク層41に対して十分なエッチング選択比を有するため、第1のマスク層41のエッチング量を抑えることができる。第1のマスク層41に対する導電層WLのエッチング選択比がXである場合、第1のマスク層41のエッチング量は導電層WLの1/Xで済む。
【0041】
次に、図7(a)に示すように、第1のマスク層41上に第2のマスク層42を形成する。これは例えばプラズマ化学気相成長(CVD:chemical vapor deposition)法で、第1のマスク層41の表面上に第2のマスク層42を堆積させる。
【0042】
第2のマスク層42の形成は、上記導電層WLのエッチング時と同じチャンバー内にて、導入するガス種、電極に印加する電力などの条件を変えて続けて行われる。具体的には、チャンバー内に、SiClガスを20(sccm)、Hガスを20(sccm)の流量で導入し、それらガスによるチャンバー内圧力を10(mTorr)に維持する。TCP電極には750(W)の高周波電力を印加する。ウェーハ保持部には高周波電力を印加しない。また、ウェーハは60℃に温度制御される。このような条件で5秒間成膜が行われると、堆積物はホール50の底部には殆ど供給されることなく、専ら第1のマスク層41の表面上に第2のマスク層42が形成される。
【0043】
次に、第2のマスク層42をマスクにして、1層目の絶縁層17をエッチングする。この絶縁層17のエッチングも、上記同じチャンバー内にて、導入するガス種、電極に印加する電力などの条件を変えて続けて行われる。
【0044】
例えば、チャンバー内に、CHFガスを100(sccm)、Heガスを200(sccm)の流量で導入し、それらガスによるチャンバー内圧力を8(mTorr)に維持する。TCP電極には600(W)の高周波電力を印加する。ウェーハ保持部には300(W)の高周波電力を印加する。ウェーハは60℃に温度制御される。
【0045】
このRIEにより、図7(b)に示すように、1層目の絶縁層17を貫通するホールが形成される。第2のマスク層42は、シリコン酸化物系の絶縁層17よりもシリコン含有量が多くシリコンリッチな層であり、絶縁層17は第2のマスク層42に対して十分なエッチング選択比を有するため、第2のマスク層42のエッチング量を抑えることができ、結果としてその下の第1のマスク層41のエッチング量も抑えることができる。
【0046】
続いて、同じチャンバー内で2層目の導電層WLのRIEが行われる。このときの条件は1層目の導電層WLのRIEと同様であり、チャンバー内に、SiClガスを10(sccm)、HBrガスを150(sccm)、Oガスを10(sccm)、CFガスを10(sccm)の流量で導入し、それらガスによるチャンバー内圧力を30(mTorr)に維持する。TCP電極には480(W)の高周波電力を印加する。ウェーハ保持部には600(W)の高周波電力を印加する。ウェーハは60℃に温度制御される。このRIEにより、図8(a)に示すように、2層目の導電層WLを貫通するホールが形成される。
【0047】
このとき、第2のマスク層42と導電層WLとは同じシリコン系の材料であり、第2のマスク層42も導電層WLと同程度エッチングされる。第2のマスク層42は、導電層WL一層分の厚さ以下の厚さで形成され、したがって導電層WLのRIE時に第2のマスク層42はすべてあるいは大部分が除去されてしまう。しかし、導電層WLは第1のマスク層41に対しては十分なエッチング選択比を有するため、その第1のマスク層41をマスクにして2層目の導電層WLを貫通するホールの形成を行うことができる。そして、このとき、第1のマスク層41のエッチング量は抑えることができる。すなわち、一度形成した第1のマスク層41は、各導電層WLをRIEするときのマスク層として共通して利用することができる。
【0048】
次の2層目の絶縁層17のRIEを行うにあたっては、前工程で形成した第2のマスク層42は上記2層目の導電層WLのRIEによりすべてあるいは大部分が除去されてしまっているので、再度、図8(b)に示すように、第1のマスク層41上に第2のマスク層42を形成する。
【0049】
これは、前述した第2のマスク層42の形成と同様な条件でのプラズマCVD法で成膜される。また、2層目の導電層WLのRIEの後、続けて同じチャンバー内で第2のマスク層42の形成が行われる。
【0050】
例えば、チャンバー内に、SiClガスを20(sccm)、Hガスを20(sccm)の流量で導入し、それらガスによるチャンバー内圧力を10(mTorr)に維持する。TCP電極には750(W)の高周波電力を印加する。ウェーハ保持部には高周波電力を印加しない。また、ウェーハは60℃に温度制御される。
【0051】
このように第1のマスク層41上に再び第2のマスク層42を形成してから、それをマスクにして、図9(a)に示すように、2層目の絶縁層17をエッチングする。この絶縁層17のエッチングも、上記同じチャンバー内にて、導入するガス種、電極に印加する電力などの条件を変えて続けて行われる。
【0052】
例えば、チャンバー内に、CHFガスを100(sccm)、Heガスを200(sccm)の流量で導入し、それらガスによるチャンバー内圧力を8(mTorr)に維持する。TCP電極には600(W)の高周波電力を印加する。ウェーハ保持部には300(W)の高周波電力を印加する。ウェーハは60℃に温度制御される。
【0053】
このRIEにより、2層目の絶縁層17を貫通するホールが形成される。このときも、第2のマスク層42は、シリコン酸化物系の絶縁層17よりもシリコン含有量が多くシリコンリッチな層であり、絶縁層17は第2のマスク層42に対して十分なエッチング選択比を有するため、第2のマスク層42のエッチング量を抑えることができ、結果としてその下の第1のマスク層41のエッチング量も抑えることができる。
【0054】
前述した導電層WLのRIEと、第2のマスク層42を形成してからの絶縁層17のRIEを3層目以降についても交互に繰り返すことで、図9(b)に示すように、複数の導電層WL及び複数の絶縁層17を貫通するメモリホール51が形成される。
【0055】
各導電層WLのRIE、第2のマスク層42の形成、各絶縁層17のRIEを繰り返す一連の工程は、各工程ごとに導入するガス種や電極に印加する電力等の処理条件を切り替えつつ、同一チャンバー内で一括して行われる。したがって、各工程ごとにウェーハのチャンバー間移動をさせる必要がなく、効率的な処理が行える。
【0056】
そして、本実施形態では、各導電層WLは第1のマスク層41をマスクにしてRIEされ、シリコン層である導電層WLはシリコン酸化物系の第1のマスク層41に対して十分なエッチング選択比を有するため、第1のマスク層41のエッチング量を抑えることができる。
【0057】
一方、各絶縁層17は、そのRIEの前に第1のマスク層41上に形成される第2のマスク層42をマスクにしてRIEされ、シリコン酸化物系の絶縁層17はこれよりもシリコンリッチな第2のマスク層42に対して十分なエッチング選択比を有するため、第2のマスク層42のエッチング量を抑えることができ、結果としてその下の第1のマスク層41のエッチング量を抑えることができる。
【0058】
第1のマスク層41は、前述の一連の工程を通じて共通のマスク層として機能し、各導電層WLのRIE時にも、各絶縁層17のRIE時にも、第1のマスク層41のエッチング量を抑えることができるので、それほど厚く形成しなくてよい。この結果、特に導電層WLと絶縁層17との積層数が多層化した場合においても、第1のマスク層41をそれほど厚くせずに済み、その第1のマスク層41にパターンとして形成すべきホール50のアスペクト比の増大を抑えて、第1のマスク層41に精度良いパターニングを行える。
【0059】
第1のマスク層41は、一度形成した後は、上記メモリホール51の形成が終了するまで残され、各層のRIE時に少しずつエッチングされて薄くなっていく。第1のマスク層41に対する導電層WLのエッチング選択比がXである場合、各導電層WLのRIE時に第1のマスク層41も導電層WLのエッチング量の(1/X)の量エッチングされて薄くなる。したがって、最下層の導電層WLのRIE時にも第1のマスク層41が残っているように、且つその最下層の導電層WLのRIE中に第1のマスク層41がなくなってしまわないように、第1のマスク層41は比較的厚めに形成しておく。
【0060】
これに対して、絶縁層17のRIE前にその都度形成する第2のマスク層42は各回ごとの成膜時間短縮の観点から第1のマスク層41よりは薄く形成する。第2のマスク層42に対する絶縁層17のエッチング選択比がYである場合、各絶縁層17のRIE時に第2のマスク層42も絶縁層17のエッチング量の(1/Y)の量エッチングされ薄くなる。また、各絶縁層17のRIE中に第2のマスク層42がなくなってしまった場合、第1のマスク層41が露出し、絶縁層17と同じシリコン酸化物系であるので、第1のマスク層41は絶縁層17と同程度のレートでエッチングされていく。しかし、絶縁層17は、すでに第2のマスク層42が存在したときからエッチングされており、残りのエッチング量はわずかであると想定されるので、絶縁層17のRIE時における第1のマスク層41のエッチング量も少なく抑えることができる。
【0061】
したがって、本実施形態では、導電層WL及び絶縁層17の積層数が多層化した場合でもマスク層のアスペクト比の増大を抑えつつ、互いに材質の異なる導電層WLと絶縁層17とが交互に積層された積層体に一括して貫通ホール(メモリホール51)を形成することが可能になる。
【0062】
本実施形態において、第2のマスク層42の形成にあたっては、SiClガスに対する添加ガスとしてフルオロカーボン系のガスやNガスを導入してもよく、この場合SiC系、あるいはSiN系の層が成膜されることとなり、例えば以下の条件で形成することができる。
【0063】
チャンバー内に、SiClガスを5(sccm)、HBrガスを150(sccm)、Oガスを10(sccm)、CFガスを5(sccm)の流量で導入し、それらガスによるチャンバー内圧力を30(mTorr)に維持する。TCP電極には480(W)の高周波電力を印加し、ウェーハ保持部には高周波電力を印加しない。ウェーハは60℃に温度制御する。このような条件で25秒間成膜を行い、第2のマスク層42を形成する。
【0064】
第2のマスク層42は、TEOSやBSG等のシリコン酸化物系の層よりもシリコンリッチな層であり、その成膜時における原料ガスはシリコン(Si)を含む。このシリコンを含む原料ガスとしてSiClガスを使ったところ、前述したメモリホール51の一括形成を良好に行えた。
【0065】
ただし、SiClガスを使った場合、プラズマ化により生成したClラジカルによって特に上層側の導電層WLがサイドエッチングされる傾向があり、メモリホールの上層側の径が大きくなりがちである。メモリホールにおける上層側と下層側で径が大きく異なると、上層側のメモリセルと下層側のメモリセルとで特性のばらつきが生じることが懸念される。
【0066】
そこで、第2のマスク層42の形成時における原料ガスとしてSiClガスを使った場合には、さらに水素(H)を含むガス(例えばHガス、HBrガス)も用いることが望ましい。すなわち、HがClと結合することでClラジカルの存在量を低減させて、第2のマスク層42形成時における導電層WLのエッチングを抑えることができる。
【0067】
また、第2のマスク層42の形成時には、ウェーハ保持部は接地させて電力を印加しないことが望ましい。これは、ウェーハ保持部に高周波電力を印加することでウェーハとプラズマとの間にバイアス電界が生じ、その電界によってイオン等がウェーハに向けて加速されて導電層WLや絶縁層17を不所望にエッチングしてしまうおそれがあるためである。
【0068】
以上説明したメモリホール51は、下層の下部選択トランジスタLSTのシリコンピラー15直上に、そのシリコンピラー15にまで達して形成される。
【0069】
そして、第1のマスク層41及び残っている場合には第2のマスク層42を除去した後、メモリホール51の側壁に、前述した電荷蓄積層22を含む絶縁膜20を形成し、さらにその後シリコンピラー19を埋め込むことで、図3に示す構造が得られる。すなわち、シリコンピラー19と各導電層WLとの交差部分にメモリセルが形成される。
【0070】
次に、バリア層24上に、絶縁層25、上部選択ゲートUSGとなるシリコン層、絶縁層27を順に形成した後、それらの積層体に、下層のメモリセルのシリコンピラー19の上端にまで到達する貫通ホールをRIEで形成し、その貫通ホールの側壁にゲート絶縁膜33を形成し、さらに貫通ホール内にシリコンピラー32を埋め込む。これにより、上部選択トランジスタUSTが形成される。さらに、その後ビット線BLなどの配線形成工程が続けられ、図1に示すような半導体記憶装置が得られる。
【0071】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0072】
シリコンピラーは円柱状に限らず角柱状であってもよい。あるいは、貫通ホール内のすべてを柱状のシリコンで埋め込むことに限らず、電荷蓄積層を含む絶縁膜に接する部分にだけシリコン膜を筒状に形成し、その内側には絶縁体を埋め込んだ構造であってもよい。また、導電層とシリコンピラーとの間の絶縁膜構造はONO(Oxide-Nitride-Oxide)構造に限らず、例えば電荷蓄積層とゲート絶縁膜との2層構造であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
11…基板、15,19,32…シリコンピラー、17…絶縁層、22…電荷蓄積層、41…第1のマスク層、41a…第1のシリコン酸化物層、41b…第2のシリコン酸化物層、42…第2のマスク層、51…メモリホール、WL…導電層、LSG…下部選択ゲート、LST…下部選択トランジスタ、USG…上部選択ゲート、UST…上部選択トランジスタ、BL…ビット線、MC…メモリセル、MS…メモリストリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にシリコン酸化物を含む絶縁層とシリコンを含む導電層との積層体を形成する工程と、前記絶縁層及び前記導電層を貫通するホールを前記積層体に形成する工程と、を備え、
前記ホールの形成工程は、
前記積層体上に、シリコン酸化物を含む第1のマスク層を形成する工程と、
前記第1のマスク層をマスクにして前記導電層をエッチングする工程と、
前記第1のマスク層上に前記絶縁層よりもシリコン含有量が多い第2のマスク層を形成し前記第2のマスク層をマスクにして、前記絶縁層をエッチングする工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁層と前記導電層とを交互に複数積層することで前記積層体を形成し、
前記絶縁層及び前記導電層のエッチング前に前記積層体上に形成した前記第1のマスク層を共通に用いて各々の前記導電層をエッチングする工程と、前記第1のマスク層上に前記第2のマスク層を形成してから各々の前記絶縁層をエッチングする工程とを交互に繰り返すことで、前記積層体に前記ホールを形成することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1のマスク層を前記第2のマスク層よりも厚くすることを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2のマスク層を、SiClを含む原料ガスを用いた化学気相成長法で形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記原料ガスは、さらに水素(H)を含むことを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−177652(P2010−177652A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21960(P2009−21960)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】