説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】規則的に配列した複数の微細な開口部OPを有するフィルタFLを通過したイオンビーム22をレンズ26で収束して半導体ウエハ1Wに照射することにより、チャネルドープイオン注入を行なう。この際、フィルタFLには、イオンビーム22と同じ極性の電圧を印加する。フィルタFLの開口部OPの中央部に向かって入射した不純物イオンは、そのまま直進して開口部OPを通過することができるが、フィルタFLの開口部OPの中央部以外の領域に向かって入射する不純物イオンは、フィルタFLによる電場によって進行方向が曲げられて、開口部OPを通過することができない。このため、半導体ウエハ1Wに注入された不純物イオンは、規則的な配列を有したものとなり、MISFETのしきい値電圧のばらつきを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、MISFETを有する半導体装置の製造に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MISFETなどの半導体素子を半導体基板に形成し、更に半導体基板上に多層配線構造を形成して半導体素子間を結線することで、半導体装置が製造される。
【0003】
特許文献1〜4および非特許文献1,2には、MISFETのしきい値電圧のばらつきに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−124011号公報
【特許文献2】特開平8−18047号公報
【特許文献3】特開2009−170494号公報
【特許文献4】特開2003−31682号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS,VOL.24,NO.5,OCTOBER1989
【非特許文献2】2008Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers 156
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討によれば、次のことが分かった。
【0007】
MISFETを有する半導体装置は、次のようにして製造することができる。すなわち、半導体基板に素子分離領域を形成し、素子分離領域で規定された活性領域に、MISFETのしきい値を調整するためのチャネルドープイオン注入を行なってから、ゲート絶縁膜およびゲート電極を形成する。それから、ゲート電極をマスクにしてイオン注入によりLDD用のエクステンション領域と、ハロー領域を形成してから、ゲート電極の側壁上に側壁絶縁膜を形成し、ゲート電極および側壁絶縁膜をマスクにしてイオン注入により、エクステンション領域よりも高不純物濃度のソース・ドレイン領域を形成する。その後、ソース・ドレイン領域の上部にサリサイドプロセスにより金属シリサイド層を形成する。
【0008】
半導体基板にチャネルドープイオン注入を行なうことで、MISFETのチャネル領域に不純物が導入される。このチャネル不純物(チャネル領域に導入されている不純物)によって、MISFETのしきい値電圧を制御することができる。半導体基板には複数のMISFETが形成されるが、チャネル領域同士を比べたときの不純物分布や不純物数の違い(あるMISFETのチャネル領域の不純物分布や不純物数と他のMISFETのチャネル領域の不純物分布や不純物数の差)が大きいと、MISFETのしきい値電圧のばらつきが大きくなってしまう。すなわち、同じしきい値電圧を持つべきMISFET同士でチャネル不純物の分布や不純物数が異なってしまうと、しきい値電圧も異なる値になってしまうため、MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態や不純物数)が変動すると、MISFET毎にしきい値電圧が変動してしまう。半導体装置の性能を向上させるためには、MISFET毎のしきい値電圧のばらつきを抑制することが望まれる。
【0009】
本発明の目的は、半導体装置の性能を向上させることができる技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、規則的に配列した複数の開口部を有するフィルタにイオンビームと同じ極性の電圧を印加し、このフィルタを通過したイオンビームを収束して半導体基板に照射することにより、チャネルドープイオン注入を行うものである。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0014】
代表的な実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図2】図1に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図3】図2に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図4】図3に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図5】図4に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図11】図10に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図12】図11に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図14】図13に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図15】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程におけるチャネルドープイオン注入に用いられるイオン注入装置の概略構成を示す説明図である。
【図16】イオンビームがフィルタを通過し、レンズで収束して半導体ウエハに照射される様子を模式的に示す説明図である。
【図17】図16において、イオンビームを照射していない状態を模式的に示す説明図である。
【図18】フィルタの部分拡大断面図である。
【図19】電圧を印加したフィルタの開口部をイオンビームが通過する様子を示す説明図である。
【図20】電圧を印加していない状態のフィルタの開口部をイオンビームが通過する様子を示す説明図である。
【図21】フィルタの部分拡大平面図である。
【図22】フィルタに電圧を印加した状態でチャネルドープイオン注入を行なった場合の、チャネル不純物の配列状態を示す説明図である。
【図23】フィルタを用いることなくチャネルドープイオン注入を行なった場合の、チャネル不純物の配列状態を示す説明図である。
【図24】本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図25】図24に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図26】図25に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図27】図26に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図28】図27に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図29】図28に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図30】図29に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図31】本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図32】図31に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図33】図32に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図34】図33に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図35】図34に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図36】図35に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図37】本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図38】図37に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図39】図38に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図40】図39に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図41】本発明の他の実施の形態である半導体装置の平面図である。
【図42】図41の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図43】図42に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図44】図43に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図45】図44に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図46】図45に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図47】図46に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図48】図47に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【図49】本発明の他の実施の形態である半導体装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0018】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0019】
(実施の形態1)
本実施の形態の半導体装置の製造工程を図面を参照して説明する。図1〜図14は、本発明の一実施の形態である半導体装置、ここではCMISFET(Complementary Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を有する半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0020】
まず、図1に示されるように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)1を準備する。それから、半導体基板1の主面に素子分離領域2を形成する。素子分離領域2は酸化シリコンなどの絶縁体からなり、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法またはLOCOS(Local Oxidization of Silicon)法などにより形成される。例えば、半導体基板1に形成された溝(素子分離溝)に埋め込まれた絶縁膜により、素子分離領域2を形成することができる。素子分離領域2によって、nチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor:MIS型電界効果トランジスタ)Qnが形成される領域(活性領域)であるnMIS形成領域1Aと、pチャネル型MISFETQpが形成される領域(活性領域)であるpMIS形成領域1Bとが規定される。
【0021】
次に、表面の汚染防止のための薄い絶縁膜(スルー膜)3を半導体基板1の表面(主面)に形成してから、図2に示されるように、pMIS形成領域1Bを覆うフォトレジスト膜(フォトレジストパターン)PR1aを、フォトリソグラフィ技術を用いて形成する。nMIS形成領域1Aは、このフォトレジスト膜PR1aでは覆われずに露出される。このフォトレジスト膜PR1aは、pMIS形成領域1Bへのイオン注入阻止マスクとして機能することができる。
【0022】
次に、nMIS形成領域1Aにおいて、半導体基板1の上層部分に、後で形成されるnチャネル型MISFETQnのしきい値調整用のイオン注入(すなわちチャネルドープイオン注入)IM1aを行なう。なお、図2では、チャネルドープイオン注入IM1aを矢印で模式的に示してある。
【0023】
MIFETのしきい値調整用のイオン注入は、チャネルドープイオン注入と呼ぶこともでき、このチャネルドープイオン注入(しきい値調整用のイオン注入)によって、MISFETのチャネル領域に不純物が導入(ドープ)される。すなわち、チャネルドープイオン注入では、MISFETのチャネル領域を含む領域に、不純物(不純物イオン)が導入(ドープ)される。なお、ここでいう「MISFETのチャネル領域」とは、チャネルドープイオン注入の段階ではMISFETは形成されていなくとも、その後MISFETが形成されると、MISFETのチャネル領域となる領域に対応する。このことは、本実施の形態1および以下の実施の形態2〜6で述べるチャネルドープイオン注入(しきい値調整用のイオン注入)に共通である。
【0024】
しきい値調整用のイオン注入IM1a、すなわちチャネルドープイオン注入IM1aでは、nチャネル型MISFETQnのチャネル領域を含む領域に、不純物(不純物イオン)が導入(イオン注入)されて、チャネルドープ層4aが形成される。このチャネルドープ層4aは、後でnチャネル型MISFETQnのチャネル領域となる領域を含んでいる。チャネルドープイオン注入IM1aによってチャネルドープ層4aに導入される不純物は、例えばホウ素(B)などのp型の不純物を用いることができる。このチャネルドープイオン注入IM1aでは、pMIS形成領域1Bを覆うフォトレジスト膜PR1aは、イオン注入阻止マスクとして機能するので、pMIS形成領域1Bの半導体基板1には、イオン注入されない。
【0025】
本実施の形態で行うチャネルドープイオン注入IM1aの手法については、後でより詳細に説明する。
【0026】
次に、nMIS形成領域1Aにおいて、半導体基板1の主面から所定の深さに渡ってp型ウエル(p型半導体領域)PWを形成する。p型ウエルPWは、pMIS形成領域1Bを覆うフォトレジスト膜PR1aをイオン注入阻止マスクとして、nMIS形成領域1Aの半導体基板1に例えばホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどによって形成することができる。なお、チャネルドープ層4aは、半導体基板1の上層部分に浅く形成され、p型ウエルPWは、半導体基板1において、チャネルドープ層4aよりも深くまで形成されている。また、他の形態として、先にp型ウエルPWをイオン注入で形成してから、チャネルドープイオン注入IM1aによってチャネルドープ層4aを形成することもでき、これは以下の実施の形態2〜6でも同様である。
【0027】
次に、図3に示されるように、アッシングなどによりフォトレジスト膜PR1aを除去してから、nMIS形成領域1Aを覆うフォトレジスト膜(フォトレジストパターン)PR1bを、フォトリソグラフィ技術を用いて形成する。pMIS形成領域1Bは、このフォトレジスト膜PR1bでは覆われずに露出される。このフォトレジスト膜PR1bは、nMIS形成領域1Aへのイオン注入阻止マスクとして機能することができる。
【0028】
次に、pMIS形成領域1Bにおいて、半導体基板1の上層部分に、後で形成されるpチャネル型MISFETQpのしきい値調整用のイオン注入(すなわちチャネルドープイオン注入)IM1bを行なう。なお、図3では、チャネルドープイオン注入IM1bを矢印で模式的に示してある。
【0029】
しきい値調整用のイオン注入IM1b、すなわちチャネルドープイオン注入IM1bでは、pチャネル型MISFETQpのチャネル領域を含む領域に、不純物(不純物イオン)が導入(イオン注入)されて、チャネルドープ層4bが形成される。このチャネルドープ層4bは、後でpチャネル型MISFETQpのチャネル領域となる領域を含んでいる。チャネルドープイオン注入によってチャネルドープ層4bに導入される不純物は、例えばリン(P)などのn型の不純物を用いることができる。このチャネルドープイオン注入IM1bでは、nMIS形成領域1Aを覆うフォトレジスト膜PR1bは、イオン注入阻止マスクとして機能するので、nMIS形成領域1Aの半導体基板1には、イオン注入されない。
【0030】
次に、pMIS形成領域1Bにおいて、半導体基板1の主面から所定の深さに渡ってn型ウエル(n型半導体領域)NWを形成する。n型ウエルNWは、nMIS形成領域1Aを覆うフォトレジスト膜PR1bをイオン注入阻止マスクとして、pMIS形成領域1Bの半導体基板1に例えばリン(P)などのn型の不純物をイオン注入することなどによって形成することができる。なお、チャネルドープ層4bは、半導体基板1の上層部分に浅く形成され、n型ウエルNWは、半導体基板1において、チャネルドープ層4bよりも深くまで形成されている。また、他の形態として、先にn型ウエルNWをイオン注入で形成してから、チャネルドープイオン注入IM1bによってチャネルドープ層4bを形成することもでき、これは以下の実施の形態2〜4でも同様である。更に他の形態として、先にpMIS形成領域1Bにチャネルドープ層4bおよびn型ウエルNWを形成した後で、nMIS形成領域1Aにチャネルドープ層4aおよびp型ウエルPWを形成することもでき、これは以下の実施の形態2〜6でも同様である。
【0031】
本実施の形態で行うチャネルドープイオン注入IM1bの手法については、後でより詳細に説明する。
【0032】
次に、図4に示されるように、アッシングなどによりフォトレジスト膜PR1bを除去してから、例えばフッ酸(HF)水溶液を用いたウェットエッチングなどにより上記絶縁膜3を除去して半導体基板1の表面を清浄化(洗浄)した後、nMIS形成領域1AおよびpMIS形成領域1Bの半導体基板1の表面(主面、ここではp型ウエルPWおよびn型ウエルNWの表面)上にゲート絶縁膜用の絶縁膜5を形成する。この絶縁膜5は、後でnチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpのゲート絶縁膜となる。絶縁膜5は、例えば薄い酸化シリコン膜などからなり、例えば熱酸化法などによって形成することができる。
【0033】
また、上記チャネルドープイオン注入IM1a,IM1b、p型ウエルPWを形成するためのイオン注入、およびn型ウエルNWを形成するためのイオン注入は、絶縁膜5を形成する前に行うため、これらのイオン注入で絶縁膜5がダメージを受けるのを防止することができる。
【0034】
次に、半導体基板1の主面全面上(すなわちnMIS形成領域1AおよびpMIS形成領域1Bの絶縁膜5上を含む)に、ゲート電極形成用の導電体膜として、多結晶シリコン膜のようなシリコン膜6を形成する。シリコン膜6のうちのnMIS形成領域1A(後述するゲート電極GE1となる領域)は、フォトレジスト膜(図示せず)をマスクとして用いてリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のn型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされている。また、シリコン膜6のうちのpMIS形成領域1B(後述するゲート電極GE2となる領域)は、他のフォトレジスト膜(図示せず)をマスクとして用いてホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗のp型半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とされている。また、シリコン膜6は、成膜時にはアモルファスシリコン膜であったものを、成膜後(イオン注入後)の熱処理により多結晶シリコン膜に変えることもできる。
【0035】
次に、図5に示されるように、シリコン膜6をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いてパターニングすることにより、ゲート電極GE1,GE2を形成する。
【0036】
nチャネル型MISFETQnのゲート電極となるゲート電極GE1は、n型の不純物を導入した多結晶シリコン(n型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、nMIS形成領域1Aのp型ウエルPW(の上部のチャネルドープ層4a)上に絶縁膜5を介して形成される。ゲート電極GE1の下に残存する絶縁膜5が、nチャネル型MISFETQnのゲート絶縁膜5aとなる。すなわち、ゲート電極GE1は、nMIS形成領域1Aの絶縁膜5(すなわちゲート絶縁膜5a)上に形成される。また、pチャネル型MISFETQpのゲート電極となるゲート電極GE2は、p型の不純物を導入した多結晶シリコン(p型半導体膜、ドープトポリシリコン膜)からなり、pMIS形成領域1Bのn型ウエルNW(の上部のチャネルドープ層4b)上に絶縁膜5を介して形成される。ゲート電極GE2の下に残存する絶縁膜5が、pチャネル型MISFETQpのゲート絶縁膜5bとなる。すなわち、ゲート電極GE2は、pMIS形成領域1Bの絶縁膜5(すなわちゲート絶縁膜5b)上に形成される。
【0037】
次に、図6に示されるように、pMIS形成領域1Bを覆うフォトレジスト膜(フォトレジストパターン)PR2aを、フォトリソグラフィ技術を用いて形成する。nMIS形成領域1Aは、このフォトレジスト膜PR2aでは覆われずに露出される。このフォトレジスト膜PR2aは、pMIS形成領域1Bへのイオン注入阻止マスクとして機能することができる。このため、後述するイオン注入IM2a,IM3aでは、フォトレジスト膜PR2aがイオン注入阻止マスクとして機能し、pMIS形成領域1Bの半導体基板1にはイオン注入されない。
【0038】
次に、nMIS形成領域1Aの半導体基板1(p型ウエルPW)のゲート電極GE1の両側の領域に、リン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することにより、(一対の)エクステンション領域(第1半導体領域、ソース・ドレインエクステンション領域、n型半導体領域)EX1を形成する。
【0039】
エクステンション領域EX1はn型の半導体領域であり、後で形成するn型半導体領域SD1よりも不純物濃度が低い。なお、図6では、エクステンション領域EX1を形成するためのイオン注入IM2aを矢印で模式的に示してある。このイオン注入IM2aの際、ゲート電極GE1もマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができるので、エクステンション領域EX1は、ゲート電極GE1(の側壁)に整合して形成され、ゲート電極GE1の直下には、不純物は導入(イオン注入)されない。エクステンション領域EX1の深さ(接合深さ)は、後で形成されるn型半導体領域SD1の深さ(接合深さ)よりも浅い。また、エクステンション領域EX1形成のためのイオン注入IM2aは、斜めイオン注入ではなく、半導体基板1の主面に対して垂直な方向にイオン注入することが好ましい。
【0040】
次に、図7に示されるように、nMIS形成領域1Aの半導体基板1(p型ウエルPW)にp型不純物のイオン注入(ハローイオン注入)IM3aを行ってハロー領域(p型半導体領域)HA1を形成する。なお、図7では、ハロー領域HA1を形成するためのイオン注入(ハローイオン注入)IM3aを矢印で模式的に示してある。
【0041】
ハロー領域HA1は、エクステンション領域EX1とは逆の導電型で、かつp型ウエルPWとは同じ導電型であり、ここではp型(p型の半導体領域)である。ハロー領域HA1は、短チャネル特性(パンチスルー)抑制のために形成される。ハロー領域HA1を形成するためのイオン注入IM3aの際、ゲート電極GE1もマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができる。ハロー領域HA1は、エクステンション領域EX1を包み込む(覆う)ように形成され、p型ウエルPWよりも不純物濃度(p型不純物濃度)が高い。ハロー領域HA1を形成するためのイオン注入IM3aは、斜めイオン注入(傾斜イオン注入)とすることがより好ましく、これにより、エクステンション領域EX1を包み込む(覆う)ようにハロー領域HA1を的確に形成することができる。なお、一般のイオン注入では、半導体基板1の主面に対して垂直な方向に不純物イオンを加速して打ち込むが、斜めイオン注入では、半導体基板1の主面に対して垂直な方向から所定の角度(傾斜角)傾斜した方向に不純物イオンを加速して打ち込む。
【0042】
次に、図8に示されるように、アッシングなどによりフォトレジスト膜PR2aを除去してから、nMIS形成領域1Aを覆うフォトレジスト膜(フォトレジストパターン)PR2bを、フォトリソグラフィ技術を用いて形成する。pMIS形成領域1Bは、このフォトレジスト膜PR2bでは覆われずに露出される。このフォトレジスト膜PR2bは、nMIS形成領域1Aへのイオン注入阻止マスクとして機能することができる。このため、後述するイオン注入IM2b,IM3bでは、フォトレジスト膜PR2bがイオン注入阻止マスクとして機能し、nMIS形成領域1Aの半導体基板1にはイオン注入されない。
【0043】
次に、pMIS形成領域1Bの半導体基板1(n型ウエルNW)のゲート電極GE2の両側の領域に、ホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより、(一対の)エクステンション領域(第1半導体領域、ソース・ドレインエクステンション領域、p型半導体領域)EX2を形成する。エクステンション領域EX2はp型の半導体領域であり、後で形成するp型半導体領域SD2よりも不純物濃度が低い。なお、エクステンション領域EX2を形成するためのイオン注入IM2bと、後述するハロー領域HA2を形成するためのイオン注入IM3bとは、それぞれ別々のイオン注入工程として行なわれるが、図8では、まとめて矢印で模式的に示してある。
【0044】
エクステンション領域EX2を形成するためのイオン注入IM2bでは、ゲート電極GE2もマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができるので、エクステンション領域EX2は、ゲート電極GE2(の側壁)に整合して形成され、ゲート電極GE2の直下には、不純物は導入(イオン注入)されない。エクステンション領域EX2の深さ(接合深さ)は、後で形成されるp型半導体領域SD2の深さ(接合深さ)よりも浅い。また、エクステンション領域EX2形成のためのイオン注入IM2bは、斜めイオン注入ではなく、半導体基板1の主面に対して垂直な方向にイオン注入することが好ましい。
【0045】
次に、pMIS形成領域1Bの半導体基板1(n型ウエルNW)にn型不純物のイオン注入(ハローイオン注入)IM3bを行ってハロー領域(n型半導体領域)HA2を形成する。ハロー領域HA2は、エクステンション領域EX2とは逆の導電型で、かつn型ウエルNWとは同じ導電型であり、ここではn型(n型の半導体領域)である。ハロー領域HA2は、短チャネル特性(パンチスルー)抑制のために形成される。ハロー領域HA2を形成するためのイオン注入IM3bの際、ゲート電極GE2もマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができる。ハロー領域HA2は、エクステンション領域EX2を包み込む(覆う)ように形成され、n型ウエルNWよりも不純物濃度(n型不純物濃度)が高い。ハロー領域HA2を形成するためのイオン注入IM3bは、斜めイオン注入(傾斜イオン注入)とすることがより好ましく、これにより、エクステンション領域EX2を包み込む(覆う)ようにハロー領域HA2を的確に形成することができる。
【0046】
また、他の形態として、先にpMIS形成領域1Bにエクステンション領域EX2およびハロー領域HA2を形成してから、nMIS形成領域1Aにエクステンション領域EX1およびハロー領域HA1を形成することもでき、これは以下の実施の形態2〜6でも同様である。
【0047】
また、ハロー領域HA1,HA2は、短チャネル特性抑制のために形成することが好ましいが、不要であればその形成を省略することもでき、これは以下の実施の形態2〜6でも同様である。
【0048】
また、エクステンション領域EX1およびハロー領域HA1は、必ずしもこの順序で形成しなくともよいが、エクステンション領域EX1およびハロー領域HA1を形成する各イオン注入IM2a,IM3aは、少なくとも、ゲート電極GE1形成後で、かつ、ゲート電極GE1の側壁上に後述のサイドウォールSWを形成する前に行う必要がある。同様に、エクステンション領域EX2およびハロー領域HA2は、必ずしもこの順序で形成しなくともよいが、エクステンション領域EX2およびハロー領域HA2を形成する各イオン注入IM2b,IM3bは、少なくとも、ゲート電極GE2形成後で、かつ、ゲート電極GE2の側壁上に後述のサイドウォールSWを形成する前に行う必要がある。
【0049】
次に、図9に示されるように、アッシングなどによりフォトレジスト膜PR2bを除去してから、ゲート電極GE1,GE2の側壁上に、絶縁膜(側壁絶縁膜)として、例えば酸化シリコンまたは窒化シリコンあるいはそれら絶縁膜の積層膜などからなる側壁スペーサまたはサイドウォール(側壁絶縁膜、サイドウォールスペーサ)SWを形成する。サイドウォールSWは、例えば、半導体基板1(の主面全面)上に酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜を堆積し、この酸化シリコン膜または窒化シリコン膜あるいはそれらの積層膜をRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)法などにより異方性エッチングすることによって形成することができる。
【0050】
次に、図10に示されるように、pMIS形成領域1Bを覆うフォトレジスト膜(フォトレジストパターン)PR3aを、フォトリソグラフィ技術を用いて形成する。nMIS形成領域1Aは、このフォトレジスト膜PR3aでは覆われずに露出される。このフォトレジスト膜PR3aは、pMIS形成領域1Bへのイオン注入阻止マスクとして機能することができる。このため、後述するイオン注入IM4aでは、フォトレジスト膜PR3aがイオン注入阻止マスクとして機能し、pMIS形成領域1Bの半導体基板1にはイオン注入されない。
【0051】
次に、nMIS形成領域1Aの半導体基板1(p型ウエルPW)のゲート電極GE1およびサイドウォールSWの両側の領域に、リン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物をイオン注入することにより、(一対の)n型半導体領域SD1(ソース、ドレイン)を形成する。なお、図10では、n型半導体領域SD1を形成するためのイオン注入IM4aを矢印で模式的に示してある。このイオン注入IM4aの際、ゲート電極GE1およびその側壁上のサイドウォールSWもマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができるので、n型半導体領域SD1は、ゲート電極GE1の側壁上のサイドウォールSW(の側壁)に整合して形成され、ゲート電極GE1およびサイドウォールSWの直下には、不純物は導入(イオン注入)されない。n型半導体領域SD1の深さ(接合深さ)は、エクステンション領域EX1の深さ(接合深さ)よりも深い。
【0052】
型半導体領域(第2半導体領域)SD1とエクステンション領域(第1半導体領域)EX1とは同じ導電型であるが、n型半導体領域SD1は、エクステンション領域EX1よりも、不純物濃度(n型不純物濃度)が高い。これにより、nチャネル型MISFETQnのソースまたはドレインとして機能するn型の半導体領域(不純物拡散層)が、n型半導体領域(不純物拡散層)SD1およびエクステンション領域(n型半導体領域)EX1により形成される。換言すれば、エクステンション領域EX1と、それよりも高不純物濃度のn型半導体領域SD1とは、nチャネル型MISFETQnのソースまたはドレイン用の半導体領域として機能する。従って、nチャネル型MISFETQnのソース・ドレイン領域は、LDD(Lightly doped Drain)構造を有している。上述のように、エクステンション領域EX1は、ゲート電極GE1に対して自己整合的に形成され、n型半導体領域SD1は、ゲート電極GE1の側壁上に形成されたサイドウォールSWに対して自己整合的に形成される。
【0053】
次に、図11に示されるように、アッシングなどによりフォトレジスト膜PR3aを除去してから、nMIS形成領域1Aを覆うフォトレジスト膜(フォトレジストパターン)PR3bを、フォトリソグラフィ技術を用いて形成する。pMIS形成領域1Bは、このフォトレジスト膜PR3bでは覆われずに露出される。このフォトレジスト膜PR3bは、nMIS形成領域1Aへのイオン注入阻止マスクとして機能することができる。このため、後述するイオン注入IM4bでは、フォトレジスト膜PR3bがイオン注入阻止マスクとして機能し、nMIS形成領域1Aの半導体基板1にはイオン注入されない。
【0054】
次に、pMIS形成領域1Bの半導体基板1(n型ウエルNW)のゲート電極GE2およびサイドウォールSWの両側の領域に、ホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより、(一対の)p型半導体領域SD2(ソース、ドレイン)を形成する。なお、図11では、p型半導体領域SD2を形成するためのイオン注入IM4bを矢印で模式的に示してある。このイオン注入IM4bの際、ゲート電極GE2およびその側壁上のサイドウォールSWもマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができるので、p型半導体領域SD2は、ゲート電極GE2の側壁上のサイドウォールSW(の側壁)に整合して形成され、ゲート電極GE2およびサイドウォールSWの直下には、不純物は導入(イオン注入)されない。p型半導体領域SD2の深さ(接合深さ)は、エクステンション領域EX2の深さ(接合深さ)よりも深い。
【0055】
型半導体領域(第2半導体領域)SD2とエクステンション領域(第1半導体領域)EX2とは同じ導電型であるが、p型半導体領域SD2は、エクステンション領域EX2よりも、不純物濃度(p型不純物濃度)が高い。これにより、pチャネル型MISFETQpのソースまたはドレインとして機能するp型の半導体領域(不純物拡散層)が、p型半導体領域(不純物拡散層)SD2およびエクステンション領域(p型半導体領域)EX2により形成される。換言すれば、エクステンション領域EX2と、それよりも高不純物濃度のp型半導体領域SD2とは、pチャネル型MISFETQpのソースまたはドレイン用の半導体領域として機能する。従って、pチャネル型MISFETQpのソース・ドレイン領域は、LDD構造を有している。上述のように、エクステンション領域EX2は、ゲート電極GE2に対して自己整合的に形成され、p型半導体領域SD2は、ゲート電極GE2の側壁上に形成されたサイドウォールSWに対して自己整合的に形成される。
【0056】
また、他の形態として、先にpMIS形成領域1Bにp型半導体領域SD2を形成してから、nMIS形成領域1Aにn型半導体領域SD1を形成することもでき、これは以下の実施の形態2〜6でも同様である。
【0057】
次に、アッシングなどによりフォトレジスト膜PR3bを除去する。それから、これまでのイオン注入で導入した不純物の活性化のためのアニール処理(熱処理)を行う。このアニール処理は、例えば1050℃程度のフラッシュランプアニール処理にて行うことができる。
【0058】
このようにして、nMIS形成領域1A(のp型ウエルPW)に、電界効果トランジスタとしてnチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)Qnが形成される。また、pMIS形成領域1B(のn型ウエルNW)に、電界効果トランジスタとしてpチャネル型MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)Qpが形成される。これにより、図12の構造が得られる。nチャネル型MISFETQnは、nチャネル型の電界効果トランジスタとみなすことができ、pチャネル型MISFETQpは、pチャネル型の電界効果トランジスタとみなすことができる。
【0059】
次に、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2の表面を露出させ、例えばコバルト(Co)膜またはニッケル(Ni)のような金属膜を堆積して熱処理することによって、図13に示されるように、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2の表面に、それぞれ金属シリサイド層11を形成する。これにより、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2の拡散抵抗やコンタクト抵抗などを低抵抗化することができる。その後、未反応の金属膜は除去する。
【0060】
次に、半導体基板1の主面上に絶縁膜(層間絶縁膜)12を形成する。すなわち、ゲート電極GE1,GE2およびサイドウォールSWを覆うように、金属シリサイド層11上を含む半導体基板1上に絶縁膜12を形成する。絶縁膜12は、例えば、酸化シリコン膜の単体膜や、あるいは、窒化シリコン膜とそれよりも厚い酸化シリコン膜との積層膜などからなる。その後、絶縁膜12の表面(上面)をCMP(CMP:Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)法により研磨するなどして、絶縁膜12の上面を平坦化する。下地段差に起因して絶縁膜12の表面に凹凸形状が形成されていても、絶縁膜12の表面をCMP法により研磨することにより、その表面が平坦化された層間絶縁膜を得ることができる。
【0061】
次に、絶縁膜12上に形成したフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして用いて、絶縁膜12をドライエッチングすることにより、絶縁膜12にコンタクトホール(貫通孔、孔)13を形成する。コンタクトホール13の底部では、半導体基板1の主面の一部、例えばn型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2の表面上の金属シリサイド層11の一部や、ゲート電極GE1,GE2の表面上の金属シリサイド層11の一部などが露出される。
【0062】
次に、コンタクトホール13内に、タングステン(W)などからなる導電性のプラグ(接続用導体部)14を形成する。プラグ14を形成するには、例えば、コンタクトホール13の内部(底部および側壁上)を含む絶縁膜12上に、プラズマCVD法によりバリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)を形成する。それから、タングステン膜などからなる主導体膜をCVD法などによってバリア導体膜上にコンタクトホール13を埋めるように形成し、絶縁膜12上の不要な主導体膜およびバリア導体膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、プラグ14を形成することができる。図面の簡略化のために、プラグ14は、主導体膜とバリア導体膜を一体化して示してある。プラグ14は、その底部で、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域SD1またはp型半導体領域SD2の表面上の金属シリサイド層11と接して、電気的に接続される。
【0063】
次に、図14に示されるように、プラグ14が埋め込まれた絶縁膜12上に、絶縁膜15を形成する。絶縁膜15は、複数の絶縁膜の積層膜で形成することもできる。
【0064】
次に、シングルダマシン法により第1層目の配線である配線M1を形成する。具体的には、次のようにして配線M1を形成することができる。まず、フォトレジストパターン(図示せず)をマスクとしたドライエッチングによって絶縁膜15の所定の領域に配線溝を形成した後、配線溝の底部および側壁上を含む絶縁膜15上にバリア導体膜(例えば窒化チタン膜、タンタル膜または窒化タンタル膜など)を形成する。続いて、CVD法またはスパッタリング法などによりバリア導体膜上に銅のシード層を形成し、さらに電解めっき法などを用いてシード層上に銅めっき膜を形成して、銅めっき膜により配線溝の内部を埋め込む。それから、配線溝以外の領域の主導体膜(銅めっき膜およびシード層)とバリアメタル膜をCMP法により除去して、配線溝に埋め込まれ銅を主導電材料とする第1層目の配線M1を形成する。図面の簡略化のために、配線M1は、バリア導体膜、シード層および銅めっき膜を一体化して示してある。
【0065】
配線M1は、プラグ14を介してnチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpのソースまたはドレイン用のn型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2やゲート電極GE1,GE2などと電気的に接続されている。その後、デュアルダマシン法により2層目の配線を形成するが、ここでは図示およびその説明は省略する。
【0066】
以上のようにして、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0067】
次に、本実施の形態におけるチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bについて、より詳細に説明する。
【0068】
本実施の形態では、チャネルドープイオン注入IM1a,IM1bを行ったときに、半導体基板1において、イオン注入した不純物を規則的な配列で分布させることを主要な特徴の一つとしている。これを実現するために、以下に説明するようなイオン注入法を用いる。なお、以下で「実施の形態1のイオン注入法」と呼ぶ場合は、ここで説明するイオン注入法(電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入法)を指すものとする。
【0069】
図15は、本実施の形態のチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bに用いられるイオン注入装置(半導体製造装置)21の概略構成を示す説明図である。
【0070】
図15に示されるように、イオン注入装置21は、イオンを発生するイオンソース(イオン源)23と、イオンソース23で発生したイオンを加速してイオンビーム22を生成する加速管(加速器)24と、イオンビーム22の進行方向を曲げることができる質量分析マグネット25と、イオンビーム22を収束(集束)させることができるレンズ26と、半導体ウエハ1Wにイオン注入を行なう処理室(注入室)27とを有している。半導体ウエハ1Wは、上記半導体基板1に対応しており、レンズ26で収束されたイオンビーム22は、エンドステーションの処理室27内に配置されている半導体ウエハ1Wに照射される。レンズ26は、電磁レンズであり、電場によりイオンビーム22を収束させることができる。質量分析マグネット25は、イオンを選別する機能も有している。
【0071】
イオン注入装置21を用いてイオン注入を行う際には、イオン注入処理を行うべき半導体ウエハ1Wを、処理室27内に配置する。そして、イオンソース23で発生させたイオンを加速管24で加速させてイオンビーム22を生成し、このイオンビーム22の進行方向を質量分析マグネット25で曲げ、質量分析マグネット25を通過したイオンビーム22をレンズ26で収束させて、処理室27内の半導体ウエハ1Wに照射する。これにより、半導体ウエハ1Wに、イオンビーム22を構成する不純物イオンが注入(導入)される。所定のイオン注入処理が終了した半導体ウエハ1Wは、処理室27からウエハ交換室28に移動(搬送)され、次の半導体ウエハ1W(イオン注入処理を行うべき半導体ウエハ1W)が処理室27内に移動(搬送)され、この処理室27内の半導体ウエハ1Wに対して、イオン注入処理が行われる。
【0072】
本実施の形態のチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bは、図15に示されるように、レンズ26の手前にフィルタFLを配置し、このフィルタFLを通過したイオンビーム22をレンズ26で収束して半導体ウエハ1Wに照射することを、主要な特徴の一つとしている。従って、イオン注入装置21は、レンズ26の手前(図15の場合は質量分析マグネット25とレンズ26との間)に配置されたフィルタFLを更に有している。
【0073】
図16は、イオンビーム22がフィルタFLを通過し、レンズ26で収束して半導体ウエハ1Wに照射される様子を模式的に示す説明図である。図17は、図16において、イオンビーム22を照射していない状態を模式的に示す説明図である。従って、図16からイオンビーム22の図示を省略した図が、図17に対応する。図18は、フィルタFLの部分拡大断面図(要部断面図)であり、フィルタFLの厚み方向に平行な断面が示されている。
【0074】
図16および図17に示されるように、フィルタFLは、レンズ26の手前でかつイオンビーム22の通過位置に配置されている。フィルタFLは、導電体で形成されており、好ましくは金属材料により形成されている。例えばタングステン(W)、タンタル(Ta)または白金(Pt)などによりフィルタFLを形成することができる。
【0075】
また、図16〜図18に示されるように、フィルタFLは、規則正しく配列した複数の開口部(孔、貫通孔)OPを有している。各開口部OPの大きさおよび形状は、開口部OP同士で同じとされている。開口部OPの平面形状は、好ましくは四角形であるが、正方形であれば、より好ましい。フィルタFLにおいて、複数の開口部OPは規則的に配列しているが、好ましくは格子(アレイ)状に配列している。従って、フィルタFLは、好ましくは、正方形の開口部OPが格子状に配列したグリッド状フィルタである。
【0076】
開口部OPの寸法(辺の長さ)Wは、例えば、5〜20μm程度とすることができ、また、隣り合う開口部OPの間の間隔Wは、例えば、5〜20μm程度とすることができ、また、フィルタFLの厚みWは、例えば、10〜50μm程度とすることができるが、これらの寸法(W,W,W)は、必要に応じて変更可能である(W,W,Wは図18に示されている)。
【0077】
フィルタFLは、平板状の外形を有しており、互いに平行でかつ反対側に位置する2つの主面(表面および裏面)を有するが、イオンビーム22が入射する側の主面をフィルタ22の表面と呼び、それとは反対側の主面をフィルタFLの裏面と呼ぶこととする。開口部OPは、フィルタFLを貫通する貫通孔であり、フィルタFLの表面から裏面まで到達しており、開口部OPの側壁(内壁)は、フィルタFLの表面および裏面に対して垂直である。フィルタFLは、イオンビーム22がフィルタFLの表面に対して垂直に入射するように配置される。ここで、フィルタFLに到達する前のイオンビーム22をイオンビーム22aと称し、フィルタFLの開口部OPを通過したイオンビーム22をイオンビーム22bと称し、フィルタFLの開口部OPを通過した後にレンズ26で収束されて半導体ウエハ1Wに入射するイオンビーム22をイオンビーム22cと称することとする。半導体ウエハ1Wには、このイオンビーム22cが照射される。
【0078】
本実施の形態のチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bを行う際には、フィルタFLに電圧を印加した状態とし、電圧が印加されたフィルタFLの開口部OPを通過したイオンビーム22(すなわちイオンビーム22b)をレンズ26で収束させ、収束したイオンビーム22(すなわちイオンビーム22c)を半導体ウエハ1Wに照射する。
【0079】
フィルタFLに印加する電圧の極性は、イオン注入する不純物イオンの極性(すなわちイオンビーム22の極性)と同じである。具体的には、イオンビーム22(22a)を構成する不純物イオン(この不純物イオンが半導体ウエハ1Wに注入される)が正イオンの場合には、フィルタFLには正電圧を印加し、一方、イオンビーム22(22a)を構成する不純物イオン(この不純物イオンが半導体ウエハ1Wに注入される)が負イオンの場合には、フィルタFLには負電圧を印加する。つまり、イオンビーム22(22a)が正イオンビームのときは、フィルタFLには正電圧を印加し、イオンビーム22(22a)が負イオンビームのときは、フィルタFLには負電圧を印加する。フィルタFLに印加する電圧は、イオンビーム22の加速エネルギーやフィルタFLの開口部OPの寸法などにもよるが、例えば絶対値が0〜100V程度の正または負の連続電圧、あるいはパルス状の電圧とすることができる。
【0080】
図19は、電圧(イオンビーム22と同じ極性の電圧)を印加したフィルタFLの開口部OPをイオンビーム22が通過する様子を示す説明図であり、図18に対応する断面が示されている。図20は、本実施の形態とは異なり、フィルタFLに電圧を印加せず、電圧を印加していない状態のフィルタFLの開口部OPをイオンビーム22が通過する様子を示す説明図である。なお、図19および図20では、イオンビーム22を構成する個々の不純物イオンの軌跡を矢印で模式的に示してある。
【0081】
チャネルドープイオン注入IM1a,IM1bを行う際に、イオンビーム22aは、フィルタFLの表面に対して垂直に入射しようとする。この際、イオンビーム22aを構成する不純物イオンのうち、フィルタFLの非開口部分(フィルタFLを構成する金属材料からなる部分)に向かって進行していた不純物イオンは、フィルタFLに電圧を印加しているかどうかに関わらず、図19および図20に示されるように、その非開口部分で遮蔽されることにより、開口部OPを通過する(通り抜ける)ことはできない。
【0082】
また、本実施の形態とは異なり、フィルタFLに電圧を印加していない場合には、図20に示されるように、イオンビーム22aを構成する不純物イオンのうち、フィルタFLの開口部OPに向かって進行していた不純物イオンは、遮蔽物が無いため、全てが開口部OPを通過することができる。このため、フィルタFLに電圧を印加していない場合には、各開口部OPにおいて、開口部OPの平面積に応じた量の不純物イオンが開口部OP全体を通り抜けることになる。
【0083】
それに対して、本実施の形態では、イオンビーム22aを構成する不純物イオンのうち、フィルタFLの開口部OPの中央(中心)に向かって進行していた不純物イオン(図19で符号22dを付して示す不純物イオン)は、図19に示されるように、開口部OPの中央(中心)を通過する(通り抜ける)ことができる。これは、フィルタFLに電圧(イオンビーム22と同じ極性の電圧)を印加していても、開口部OPの中央(中心)は電場が丁度つりあった(バランスが取れた)状態にあるため、開口部OPの中央(中心)に向かって入射する不純物イオン22dは、フィルタFLが生じる電場(電界)によって曲げられずに、そのまま直進して、開口部OPの中央(中心)を通過する(通り抜ける)ことができるからである。
【0084】
しかしながら、本実施の形態では、イオンビーム22aを構成する不純物イオンのうち、フィルタFLの開口部OPの中央(中心)からずれた位置に向かって進行していた不純物イオン(図19において不純物イオン22d以外の矢印で示される不純物イオンがこれに対応)は、図19に示されるように、開口部OPを通過する(通り抜ける)ことはできない。これは、フィルタFLに電圧(イオンビーム22と同じ極性の電圧)を印加しているため、開口部OPの中央(中心)からずれた位置に向かって入射する不純物イオンは、フィルタFLが生じる電場(電界)によって進行方向が曲げられてしまい、開口部OPを直線的に通過する(通り抜ける)ことができないからである。
【0085】
図21は、フィルタFLの部分拡大平面図(要部平面図)である。図21は、平面図であるが、理解を簡単にするために、フィルタFLにハッチングを付してある。図21には、開口部OPが1つ示されているが、実際のフィルタFLには、多数の開口部OPが格子状に配列している。
【0086】
本実施の形態とは異なり、フィルタFLに電圧を印加していない場合には、上記図20を参照して説明したように、イオンビーム22aを構成する不純物イオンは、図21に示される開口部OP全体を直進して通過する(通り抜ける)。それに対して、本実施の形態では、フィルタFLに電圧を印加しているため、図21に示される開口部OPの中央部(中心部)CTに向かって入射した不純物イオン(図19の不純物イオン22dに対応)は、そのまま直進して開口部OPを通過することができるが、中央部CT以外の領域に向かって入射する不純物イオンは、フィルタFLによる電場(電界)によって進行方向を曲げられ(散乱され)、開口部OPを通過することができない。すなわち、本実施の形態では、イオンビーム22aを構成する不純物イオンのうち、開口部OPの中央(中央部CT)に入射した不純物イオンが開口部OPを通過して半導体ウエハ1W(半導体基板1)に注入され、開口部OPの周辺部(中心部CT以外の領域)に入射した不純物イオンは、フィルタFLによる電場で散乱され、半導体ウエハ1W(半導体基板1)に注入されないのである。
【0087】
つまり、フィルタFLに電圧を印加しない場合には、開口部OP全体が不純物イオン(イオンビーム)を通過させる開口として機能するが、本実施の形態のようにフィルタFLに電圧を印加することで、開口部OPの中央部CTのみが不純物イオンを通過させる実効的な開口として機能し、開口部OPであっても、中央部CT以外の領域(周辺領域)は、不純物イオンを通過させない(遮蔽する)実効的なマスク領域として機能し得る。なお、図21において中央部CTを示す線は、不純物イオンが通過できる領域を示す仮想線であり、特に物体が存在するわけではない。このようにフィルタFLに電圧を印加することで、フィルタFLの実効的な開口(不純物イオンが通過可能な中央部CT)の寸法を、開口部OPの寸法Wよりも十分に小さくすることができ、開口部OPの微細化の加工限界を超えた微小寸法とすることができる。フィルタFLの実効的な開口(不純物イオンが通過可能な中央部CT)の寸法は、イオンビーム22のエネルギー(加速エネルギー)や開口部の寸法Wなどに応じてフィルタFLに印加する電圧を調整することにより、制御することができる。
【0088】
本実施の形態において、フィルタFLの各開口部OPの中央部CTを通過した不純物イオン22dが、イオンビーム22bを構成する。このため、イオンビーム22bは、イオンビーム22aに比べて、不純物イオンの密度がかなり小さい。フィルタFLの各開口部OPの中央部CTを通過した不純物イオン22d同士は、フィルタFLにおける開口部OPの配列を反映した配列を有したものとなるが、フィルタFLにおいて開口部OPは規則的に配列しているため、フィルタFLの各開口部OPの中央部CTを通過した不純物イオン22d同士は、フィルタFLにおける開口部OPの配列を反映した規則的な配列を有したものとなる。このため、フィルタFLを通過した規則的な配列の不純物イオン22dにより、イオンビーム22bが構成されることになる。イオンビーム22bはレンズ26で収束され、収束したイオンビーム22cが半導体ウエハ1Wに照射されることで、不純物イオンが半導体ウエハ1W(すなわち半導体基板1)に注入される。フィルタFLの各開口部OPの中央部CTを通過した不純物イオン22d同士が規則的な配列を有していたため、半導体ウエハ1W(すなわち半導体基板1)に注入された不純物イオン同士も規則的な配列を有したものとなる。
【0089】
図22は、フィルタFLに電圧(イオンビーム22と同じ極性の電圧)を印加した状態でチャネルドープイオン注入(IM1a,IM1b)を行なった場合の、チャネル不純物30の配列状態を示す説明図(斜視図)である。ここで、チャネル不純物30は、チャネルドープイオン注入(IM1a,IM1b)によってチャネル領域に導入された不純物に対応している。図23は、本実施の形態とは異なり、フィルタFLを用いることなくチャネルドープイオン注入を行なった場合の、チャネル不純物30の配列状態を示す説明図(斜視図)である。なお、図22および図23では、チャネル領域におけるチャネル不純物30の配列状態を見やすくするために、ゲート絶縁膜5a,5b、ゲート電極GE1,GE2およびサイドウォールSWを上に持ち上げて(移動させて)示してある。
【0090】
イオンビーム22においては、不純物イオンは完全に規則的には配列していない。このため、本実施の形態とは異なり、フィルタFLを用いることなくチャネルドープイオン注入を行なった場合、図23に示されるように、チャネル不純物30は、規則正しくは配列しない。
【0091】
それに対して、本実施の形態では、フィルタFLに電圧(イオンビーム22と同じ極性の電圧)を印加した状態でチャネルドープイオン注入(IM1a,IM1b)を行なっている。上述のように、フィルタFLの各開口部OPの中央部CTのみを通過した不純物イオン22dで構成されたイオンビーム22bをレンズ26で収束して半導体ウエハ1W(半導体基板1)に照射しており、フィルタFLにおいて開口部OPが規則的に配列していることにより、半導体ウエハ1W(すなわち半導体基板1)に注入された不純物イオン同士も規則的な配列を有したものとなる。このため、図22に示されるように、チャネル不純物30は規則的に配列した状態とすることができる。すなわち、フィルタFLに入射する前のイオンビーム22aにおいて不純物イオンが規則的に配列していなかったとしても、半導体ウエハ1W(半導体基板1)に照射されるイオンビーム22cでは不純物イオンが規則的に配列しているため、図22に示されるように、チャネル領域において、チャネル不純物30が規則的に配列した状態を実現できる。
【0092】
図22において、チャネル不純物30の配列間隔(平面方向に隣接するチャネル不純物30の間隔)Wは、フィルタFLにおける開口部OPの配列ピッチP(配列ピッチPは上記図18に示されており、P=W+Wと表すことができる)と、レンズ26による収束率により、制御することができる。例えば、半導体ウエハ1Wに照射されるイオンビーム22cの面積(イオンビーム22cが半導体ウエハ1Wの表面に達したときの面積)が、レンズ26で収束される前のイオンビーム22bの面積の1/n倍となるように、レンズ26でイオンビーム22bを収束させた場合には、チャネル不純物30の配列間隔Wは、ほぼW=P/nとなる。すなわち、フィルタFLにおいて、開口部OPが配列ピッチPで規則的に配列していたことを反映して、チャネル不純物30は、ほぼ配列間隔W(=P/n)で規則的に配列した状態となる。ここで、nをレンズ26による収束率と呼ぶこととする。
【0093】
本実施の形態のチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bでは、開口部OPの配列ピッチPにもよるが、フィルタFLを用いないイオン注入に比べて、レンズ26による収束率nを大きくする必要がある。開口部OPの配列ピッチPをできるだけ小さくし、更にレンズ26による収束率nを大きくすれば、チャネル不純物30の配列間隔Wを小さくすることができる。このチャネル不純物30により、MISFETのしきい値電圧を制御することができる。
【0094】
また、フィルタFLの加工限界にもよるが、開口部OPの寸法Wおよび配列ピッチPはできるだけ小さくした方が、レンズ26の収束率nを大きくしなくともすむようになるので、より好ましい。このため、開口部OPの寸法Wおよび配列ピッチPはフィルタFLの加工限界に近い微小寸法とすることが、より好ましい。この観点から、開口部OPの寸法Wは20μm以下とし、配列ピッチPは20μm以下とすることが好ましい。
【0095】
また、本実施の形態とは異なり、フィルタFLに電圧を印加しなかった場合には、上記図20に示されるように、各開口部OPは、全体が不純物イオンを通過させてしまうため、開口部OPを通過したイオンビームが半導体ウエハ1Wに照射されると、不純物が高濃度に導入された領域が斑模様の如く形成されることになる。このため、フィルタFLに電圧を印加しなかった場合には、チャネル不純物30の規則的な配列状態を得ることはできない。
【0096】
チャネル不純物30の規則的な配列状態を得るためには、フィルタFLに多数の微細な開口部OPを規則的な配列で設け、このフィルタFLに電圧(イオンビーム22と同じ極性の電圧)を印加することが重要である。これにより、微細な開口部OPの更に中央部CTのみしか不純物イオンが通過することができなくなるため、開口部OPを通過したイオンビーム22bがレンズ26で収束されて半導体ウエハ1Wに照射されると、半導体ウエハ1W(半導体基板1)において、不純物イオン同士は平面的に固まって存在することなく、イオンビーム22cが照射された領域全体に散らばって規則的に配列することになる。このため、半導体ウエハ1W(半導体基板1)において、不純物が高濃度に導入された領域が斑模様の如く形成されることがない。
【0097】
また、チャネルドープイオン注入IM1a,IM1bでは、半導体ウエハ1Wにイオンビーム22を連続的に照射しながらイオンビーム22の照射位置を走査するのではなく、半導体ウエハ1Wの主面を複数のショット領域に分け、各ショット領域毎に(照射領域を固定して)イオンビーム22cを照射することが好ましい。これにより、チャネル不純物30の規則的な配列状態を得やすくなる。上記図16で半導体ウエハ1Wの主面を点線の仮想線で分けているが、分けられた各領域がこのショット領域に対応する。各ショット領域の面積は、半導体ウエハ1Wに照射されるイオンビーム22cの面積(イオンビーム22cが半導体ウエハ1Wの表面に達したときの面積)と同じにしておく。そして、半導体ウエハ1Wのあるショット領域にイオンビーム22cを照射することで、そのショット領域へのイオン注入を行なってから、イオンビーム22の照射を一旦停止し、それから次のショット領域にイオンビーム22cを照射することで、そのショット領域へのイオン注入を行ない、これを繰り返すことで、半導体ウエハ1W全体(全ショット領域)に対するイオン注入を完了する。ショット領域から次のショット領域への移動は、レンズ26にイオンビーム22を走査する機能を設けるなどして、半導体ウエハ1Wを固定してイオンビーム22cの照射位置を移動させる場合と、半導体ウエハ1Wを配置しているステージ29を、半導体ウエハ1WをXY方向に移動可能なXYステージとすることで、イオンビーム22cの照射位置を固定して半導体ウエハ1Wを移動させる場合と、両者の組み合わせの場合とがあり得る。各ショット領域の半導体ウエハ1W(半導体基板1)に注入される不純物イオンのドーズ量は、同じショット領域に対して照射されたイオンビーム22の照射時間によって制御することもできる。また、各ショット領域において、イオンビーム22をパルス状に発生してイオンビーム22cを照射することもでき、この場合、各ショット領域の半導体ウエハ1W(半導体基板1)に注入される不純物イオンのドーズ量は、同じショット領域に対して照射するイオンビーム22のパルス数によって制御することもできる。
【0098】
また、1つの半導体チップに対して、一部の領域(後述の実施の形態5,6の場合はメモリ領域MRY)にのみ、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)を適用する場合には、半導体ウエハ1Wにおける各チップ領域(そこから1つの半導体チップが得られる領域)において、対象となる領域にのみ、イオンビーム22cを照射すればよい。この場合、半導体ウエハ1Wの各チップ領域において、MISFETのしきい値電圧の変動を特に抑制したい領域にのみ、上述したような実施の形態1のイオン注入法を用いたチャネルドープイオン注入を行い、他の領域は、フィルタFLを使用しない一般的なイオン注入によりチャネルドープイオン注入を行うことができる。これにより、MISFETのしきい値電圧の変動を特に抑制したい領域において、しきい値電圧の変動を的確に抑制または防止できるとともに、半導体装置の製造時間が長くなるのを抑制することができる。
【0099】
本実施の形態では、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)によりチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bを行うことで、チャネル領域において、チャネル不純物30を規則的に配列させることができる。チャネル不純物30を規則的に配列させるのは、以下のような理由による。
【0100】
半導体基板にチャネルドープイオン注入を行なうことで、MISFETのチャネル領域に不純物が導入される。このチャネル不純物(チャネル領域に導入されている不純物)によって、MISFETのしきい値電圧を制御することができる。半導体基板には複数のMISFETが形成されるが、チャネル領域同士を比べたときの不純物分布や不純物数の違い(あるMISFETのチャネル領域の不純物分布や不純物数と他のMISFETのチャネル領域の不純物分布や不純物数の差)が大きいと、MISFETのしきい値電圧のばらつきが大きくなってしまう。すなわち、同じしきい値電圧を持つべきMISFET同士でチャネル不純物の分布や不純物数が異なってしまうと、しきい値電圧も異なる値になってしまうため、MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態や不純物数)が変動すると、MISFET毎にしきい値電圧が変動してしまうのである。半導体装置の性能を向上させるためには、MISFET毎のしきい値電圧のばらつき(変動)を抑制することが望まれ、そのためには、同じしきい値電圧を持つべきMISFET同士でチャネル不純物の分布を同じにすることが望まれる。
【0101】
そこで、本実施の形態では、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)によりチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bを行うことで、チャネル領域において、チャネル不純物30を規則的に配列させることができる。これにより、MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態や不純物数)が変動するのを抑制または防止できるため、MISFET毎にしきい値電圧が変動してしまうのを抑制または防止することができる。すなわち、チャネル不純物を規則的に配列させることにより、同じしきい値電圧を持つべきMISFET同士でチャネル不純物の分布や不純物数が相違するのを抑制または防止することができ、各MISFETのしきい値電圧を所望の値にばらつきなく制御することができる。従って、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0102】
また、本実施の形態では、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入法)によりチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bを行うが、チャネルドープイオン注入以外のイオン注入は、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)は適用せず、フィルタFLを使用せずにイオン注入を行なう。例えば、p型ウエルPWおよびn型ウエルNWを形成するための各イオン注入、エクステンション領域EX1,EX2を形成するための各イオン注入IM2a,IM2b、ハロー領域HA1,HA2を形成するための各イオン注入IM3a,IM3b、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2を形成するための各イオン注入IM4a,IM4bは、フィルタFLを使用せずにイオン注入を行なう。これは次のような理由である。
【0103】
上述したような実施の形態1のイオン注入法(電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)では、イオンビーム22aを構成する不純物イオンのうち、ほとんどの不純物イオンは電圧を印加したフィルタFLによって遮蔽されてしまう。そして、開口部OPの中央部CTに入射(フィルタFLの表面に対して垂直な方向から入射)した不純物イオン22d(イオンビーム22a全体から見たらごく一部の不純物イオン)のみが、フィルタFLの開口部OPを直線的に通過してイオンビーム22bとなる。このため、上述したような実施の形態1のイオン注入法(電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)では、半導体基板1に導入された不純物イオンが規則的に配列させることはできるが、ドーズ量を多くするには不利である。ドーズ量を多くすると、イオン注入工程に要する時間が長くなってしまい、半導体装置のスループットが低下してしまう。
【0104】
しかしながら、上述したような実施の形態1のイオン注入法(電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)を適用するのは、チャネルドープイオン注入(IM1a,IM1b)である。チャネルドープイオン注入は、それ以外のイオン注入工程に比べて不純物のドーズ量が少ないため、上述したような実施の形態1のイオン注入法を用いたことによる不利益(イオン注入工程に要する時間が長くなってしまい、半導体装置のスループットが低下してしまうこと)を抑制できる。しかも、チャネルドープイオン注入でチャネル領域に導入されたチャネル不純物の配列状態が、MISFETのしきい値電圧のばらつき(変動)に大きく影響する。このため、チャネルドープイオン注入(IM1a,IM1b)に上述したような実施の形態1のイオン注入法を適用したことで、チャネル不純物を規則的に配列させることができるため、MISFETのしきい値電圧のばらつき(変動)を抑制できるという顕著な効果を得ることができる。
【0105】
一方、チャネルドープイオン注入以外のイオン注入工程は、チャネルドープイオン注入に比べて不純物のドーズ量が多い。ここで、チャネルドープイオン注入以外のイオン注入工程には、ウエル領域(p型ウエルPW、n型ウエルNW)を形成するための各イオン注入工程、エクステンション領域(EX1,EX2)を形成するための各イオン注入工程、ハロー領域(HA1,HA2)を形成するための各イオン注入工程、ソース・ドレイン領域(SD1,SD2)を形成するための各イオン注入工程がある。チャネルドープイオン注入以外のイオン注入工程は、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)は適用せず、フィルタFLを使用せずにイオン注入を行なうことで、ドーズ量が多くとも、イオン注入工程に要する時間を短縮することができ、半導体装置のスループットを向上することができる。しかも、チャネルドープイオン注入以外のイオン注入工程で導入された不純物の配列状態は、チャネルドープイオン注入でチャネル領域に導入されたチャネル不純物の配列状態に比べて、MISFETのしきい値電圧のばらつき(変動)に与える影響が小さい。このため、チャネルドープイオン注入以外のイオン注入工程に上述したような実施の形態1のイオン注入法を適用せず、導入された不純物イオンの配列の規則性が乱れていたとしても、MISFETのしきい値電圧のばらつき(変動)にはほとんど影響を与えない。
【0106】
従って、上述したような実施の形態1のイオン注入法によりチャネルドープイオン注入(IM1a,IM1b)を行い、チャネルドープイオン注入以外のイオン注入工程は、上述したような実施の形態1のイオン注入法は適用せず、フィルタFLを使用せずにイオン注入を行なうことで、MISFETのしきい値電圧のばらつきを抑制できると共に、半導体装置の製造時間を短縮して、半導体装置のスループットを向上することができる。
【0107】
また、本実施の形態で使用するフィルタFLは、イオンビームを成形するためのアパーチャとは、本質的に相違している。フィルタFLは、多数の(少なくとも10000個以上の)微細な(20μm以下の)開口部OPが規則的に(好ましくは格子状に)配列して設けられている。しかも、イオン注入時にフィルタFLに電圧(イオンビームと同じ極性の電圧)を印加することで、開口部OPの中央部CTに入射する不純物イオン(イオンビーム全体から見たらごく一部の不純物イオン)のみが、フィルタFLの開口部OPを直線的に通過して、半導体ウエハ照射用のイオンビーム(22b)となる。開口部OPの中央部CT以外の領域(開口部OPの周辺部を含む)に入射する不純物イオン(イオンビーム全体から見たらほとんどの不純物イオン)は、フィルタFLによって遮蔽または散乱され、開口部OPを直線的に通過できないため、イオンビーム22bとはならない。このように、フィルタFLは、イオンビームを成形するためのアパーチャとは、全く相違する技術的思想により、使用するものである。
【0108】
(実施の形態2)
本実施の形態2の半導体装置の製造工程を図面を参照して説明する。図24〜図30は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0109】
まず、上記実施の形態1と同様にして上記図1の構造を得た後、本実施の形態では、図24に示されるように、半導体基板1に対して第1元素のイオン注入IM5を行って、第1元素が導入された半導体層(半導体領域、拡散防止領域)17を形成する。なお、図24では、イオン注入IM5を矢印で模式的に示してある。半導体層17は、半導体基板1の上層部分に、半導体基板1の表面から所定の深さにわたって形成される。半導体層17を形成するためのイオン注入IM5で半導体基板1に注入される第1元素は、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上からなる。従って、半導体層17は、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入された半導体領域であり、半導体基板1が単結晶シリコンの場合は、半導体層17は、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入(ドープ)された単結晶シリコン(Si)で構成される。半導体層17における第1元素の濃度は、例えば1×1018〜1×1020/cm程度とすることができる。半導体層17は、後で形成されるチャネルドープ層4a,4bが半導体層17内に含まれ得るような厚さで形成される。なお、半導体基板1に形成された半導体層17のうち、nMIS形成領域1Aに形成された半導体層17を半導体層(半導体領域、拡散防止領域)17aと称し、pMIS形成領域1Bに形成された半導体層17を半導体層(半導体領域、拡散防止領域)17bと称することとする。
【0110】
なお、イオン注入IM5には、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)は適用せず、上記フィルタFLを用いずにイオン注入IM5を行う。
【0111】
他の形態として、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入された半導体層17を、半導体基板1上にエピタキシャル成長させることで形成することもできる。半導体層17をイオン注入で形成した場合に比べて、半導体層17をエピタキシャル成長で形成した場合には、半導体層17の厚みが厚くなりやすいため、半導体層17の厚さは、後で形成されるp型ウエルPWおよびn型ウエルNWが半導体層17内に含まれ得るような厚さとすることもできる。イオン注入およびエピタキシャル成長のいずれで半導体層17を形成する場合にも、半導体層17の厚さは、後で形成されるチャネルドープ層4a,4bが半導体層17内に含まれ得るような厚さとされる。
【0112】
ここまでの工程により、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上(すなわち第1元素)が導入された半導体層17(17a,17b)を上部に有する半導体基板1が準備されることになる。
【0113】
次に、図25に示されるように、上記実施の形態1と同様のフォトレジスト膜PR1a(pMIS形成領域1Bを覆いかつnMIS形成領域1Aを露出するフォトレジスト膜PR1a)を形成する。それから、nMIS形成領域1Aにおいて、上記実施の形態1のチャネルドープイオン注入IM1aと同様のチャネルドープイオン注入(後で形成されるnチャネル型MISFETQnのしきい値調整用のイオン注入)IM1aを行なって、半導体基板1の上層部分にチャネルドープ層4aを形成する。それから、nMIS形成領域1Aにおいて、半導体基板1にp型ウエルPWをイオン注入によって形成する。
【0114】
本実施の形態では、半導体基板1に形成されたチャネルドープ層4aは、半導体層17(具体的には半導体層17a)内に含まれるように形成される。すなわち、チャネルドープ層4aが半導体層17に内包されるように、イオン注入IM5で半導体層17を形成しておくのである。
【0115】
次に、図26に示されるように、フォトレジスト膜PR1aを除去してから、上記実施の形態1と同様のフォトレジスト膜PR1b(nMIS形成領域1Aを覆いかつpMIS形成領域1Bを露出するフォトレジスト膜PR1b)を形成する。それから、pMIS形成領域1Bにおいて、上記実施の形態1のチャネルドープイオン注入IM1bと同様のチャネルドープイオン注入(後で形成されるpチャネル型MISFETQpのしきい値調整用のイオン注入)IM1bを行なって、半導体基板1の上層部分にチャネルドープ層4bを形成する。それから、pMIS形成領域1Bにおいて、半導体基板1にn型ウエルNWをイオン注入によって形成する。
【0116】
本実施の形態では、半導体基板1に形成されたチャネルドープ層4a,4bは、半導体層17内に含まれるように形成される。すなわち、チャネルドープ層4aは半導体層17a内に含まれ、チャネルドープ層4bは半導体層17b内に含まれるように形成される。つまり、チャネルドープ層4a,4bが半導体層17(半導体層17a,17b)に内包されるように、イオン注入IM5で半導体層17(半導体層17a,17b)を形成しておくのである。
【0117】
上記実施の形態1では、半導体基板1にチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bを行なってチャネルドープ層4a,4bを形成していた。それに対して、本実施の形態では、半導体基板1の半導体層17にチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bを行なってチャネルドープ層4a,4bを形成しているが、それ以外は、本実施の形態でのチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bおよびチャネルドープ層4a,4bの構成については、上記実施の形態1と同様である。従って、本実施の形態においても、チャネルドープイオン注入IM1a,IM1bは、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)で行われる。
【0118】
また、本実施の形態では、図24に示されるように、nMIS形成領域1AおよびpMIS形成領域1Bを含む半導体基板1の主面全体に対してイオン注入IM5を行って、半導体層17を一括して形成していた。すなわち、nMIS形成領域1Aの半導体層17aとpMIS形成領域1Bの半導体層17bとを、同じイオン注入IM5で形成していた。他の形態として、nMIS形成領域1Aの半導体層17aとpMIS形成領域1Bの半導体層17bとを、別々のイオン注入により形成することもでき、この場合、フォトレジスト膜PR1aを形成した状態で上記第1元素のイオン注入を行ってnMIS形成領域1Aの半導体層17aを形成し、上記フォトレジスト膜PR1bを形成した状態で第1元素のイオン注入を行ってpMIS形成領域1Bの半導体層17bを形成すればよい。この場合、チャネルドープ層4aを形成する前に半導体層17aを形成し、チャネルドープ層4bを形成する前に半導体層17bを形成することが好ましい。
【0119】
以降の工程は、上記実施の形態1と同様である。
【0120】
すなわち、図27に示されるように、フォトレジスト膜PR1bを除去してから、上記絶縁膜3を除去して半導体基板1の表面を清浄化した後、nMIS形成領域1AおよびpMIS形成領域1Bの半導体基板1の表面(p型ウエルPWおよびn型ウエルNWの表面)上にゲート絶縁膜用の絶縁膜5を形成し、絶縁膜5上にゲート電極GE1,GE2を形成する。それから、図28に示されるように、nMIS形成領域1Aの半導体基板1(p型ウエルPW)に、エクステンション領域EX1およびハロー領域HA1を形成し、また、pMIS形成領域1Bの半導体基板1(n型ウエルNW)に、エクステンション領域EX2およびハロー領域HA2を形成する。本実施の形態での絶縁膜5、ゲート電極GE1,GE2、エクステンション領域EX1,EX2およびハロー領域HA1,HA2の形成法と構成については、上記実施の形態1と同様である。
【0121】
次に、図29に示されるように、ゲート電極GE1,GE2の側壁上にサイドウォール(側壁絶縁膜)SWを形成してから、nMIS形成領域1Aの半導体基板1(p型ウエルPW)にn型半導体領域SD1を形成し、また、pMIS形成領域1Bの半導体基板1(n型ウエルNW)にp型半導体領域SD2を形成する。本実施の形態でのサイドウォールSW、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2の形成法と構成については、上記実施の形態1と同様である。
【0122】
次に、上記実施の形態1と同様に、これまでのイオン注入で導入した不純物の活性化のためのアニール処理(熱処理)を行う。
【0123】
その後、図30に示されるように、上記実施の形態1と同様に、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2の表面にそれぞれ金属シリサイド層11を形成し、半導体基板1の主面上にゲート電極GE1,GE2およびサイドウォールSWを覆うように絶縁膜12を形成し、絶縁膜12にコンタクトホール13を形成し、コンタクトホール13内にプラグ14を形成する。それから、上記実施の形態1と同様に、プラグ14が埋め込まれた絶縁膜12上に、絶縁膜15を形成し、絶縁膜15にダマシン法で配線M1を形成する。
【0124】
本実施の形態では、上記実施の形態1で得られる効果に加えて、以下のような効果も得ることができる。
【0125】
本実施の形態においても、チャネルドープイオン注入(IM1a,IM1b)は、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)で行われるため、チャネル領域に注入された不純物イオンは、注入直後の段階では、規則的に配列した状態となっている。しかしながら、その後の種々の加熱工程でチャネル不純物が拡散(移動)すると、注入直後に比べて、チャネル不純物の配列状態の規則性が低下してしまう可能性がある。このため、チャネルドープイオン注入(IM1a,IM1b)で半導体基板1に注入したチャネル不純物の規則的な配列状態を、半導体装置の製造後の段階まで維持できるような工夫を施せば、MISFETのしきい値電圧のばらつき(変動)を更に防止することができ、それによって、半導体装置の性能を更に向上させることができる。
【0126】
また、半導体基板1にイオン注入を行なうと、半導体基板1の不純物イオンがドープされた領域に点欠陥も生成されてしまうが、点欠陥は拡散しやすい。このため、エクステンション領域EX1,EX2、ハロー領域HA1,HA2、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2を形成する際の各イオン注入で生成された点欠陥が、その後の種々の加熱工程でMISFETのチャネル領域(ゲート電極GE1,GE2の直下の領域)にまで拡散してしまう可能性がある。特に、エクステンション領域EX1,EX2およびハロー領域HA1,HA2は、チャネル領域(ゲート電極GE1,GE2の直下の領域)に近いため、イオン注入でエクステンション領域EX1,EX2およびハロー領域HA1,HA2に生成された点欠陥が、チャネル領域にまで拡散しやすい。点欠陥がチャネル領域に拡散すると、チャネル領域における点欠陥の密度が大きくなるが、点欠陥の密度が大きいほど、チャネルドープイオン注入でチャネル領域に導入された不純物が移動(拡散)しやすくなる。これは、点欠陥が多いと、点欠陥を介して不純物が移動(拡散)しやすくなるためである。
【0127】
このため、チャネルドープイオン注入IM1a,IM1bで注入したチャネル不純物の規則的な配列状態を、半導体装置の製造後の段階まで維持するには、エクステンション領域EX1,EX2、ハロー領域HA1,HA2、n型半導体領域SD1及びp型半導体領域SD2を形成する各イオン注入で生成された点欠陥がチャネル領域にまで拡散してしまうのを防止し、チャネル領域における点欠陥の密度を抑制することが有効である。
【0128】
本発明者の検討によれば、単結晶シリコンからなる基板領域(半導体基板1)に炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入された領域(本実施の形態の半導体層17a,17bおよび後述の実施の形態3の拡散防止領域18a,18bに対応)は、点欠陥が拡散(移動)しにくく、点欠陥の拡散(移動)を防止する機能を有していることが分かった。
【0129】
そこで、本実施の形態では、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入された半導体層17(17a,17b)を上部に有する半導体基板1を準備し、この半導体層17にnチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpのチャネルドープ層4a,4bを形成している。すなわち、本実施の形態では、nチャネル型MISFETQnのチャネルドープ層4aは、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入された半導体層17aに形成され、pチャネル型MISFETQpのチャネルドープ層4bは、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入された半導体層17bに形成されている。
【0130】
このため、本実施の形態では、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入された半導体層17a,17b全体に渡って、点欠陥が拡散(移動)しにくい。従って、エクステンション領域EX1,EX2、ハロー領域HA1,HA2、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2を形成する際の各イオン注入で生成された点欠陥が、nチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpのチャネル領域(ゲート電極GE1,GE2の直下の領域)にまで拡散するのを防止でき、チャネル領域における点欠陥の密度を抑制することできる。これにより、チャネルドープイオン注入(IM1a,IM1b)でチャネル領域に導入された不純物が、その後の加熱工程の際に再配置(拡散)されるのを抑制または防止することができるので、注入直後のチャネル不純物の規則的な配列を維持することができる。従って、MISFET毎のしきい値電圧のばらつきを更に的確に抑制することができ、半導体装置の性能を更に向上させることができる。
【0131】
また、半導体層17には、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入されているが、炭素(C)、窒素(N)およびフッ素(F)のうち、点欠陥の拡散防止に最も有効なのは炭素(C)である。このため、半導体層17には、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうち少なくとも炭素(C)を導入していればより好ましい。
【0132】
また、本実施の形態では、半導体層17a内にチャネルドープ層4aが形成され、半導体層17b内にチャネルドープ層4bが形成されている。他の形態として、半導体層17a,17bの厚みを厚くして、エクステンション領域EX1、ハロー領域HA1およびn型半導体領域SD1を半導体層17a内に形成することもでき、また、エクステンション領域EX2、ハロー領域HA2およびp型半導体領域SD2を半導体層17b内に形成することもできる。
【0133】
(実施の形態3)
本実施の形態3の半導体装置の製造工程を図面を参照して説明する。図31〜図36は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0134】
まず、上記実施の形態1と同様にして上記図5の構造を得た後、図31に示されるように、上記実施の形態1と同様のフォトレジスト膜PR2a(pMIS形成領域1Bを覆いかつnMIS形成領域1Aを露出するフォトレジスト膜PR2a)を形成する。それから、本実施の形態では、nMIS形成領域1Aの半導体基板1(p型ウエルPW)に第1元素のイオン注入IM6aを行って拡散防止領域18aを形成する。なお、図31では、拡散防止領域18aを形成するためのイオン注入IM6aを矢印で模式的に示してある。このイオン注入IM6aの際、ゲート電極GE1もマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができる。拡散防止領域18aは、第1元素が導入(ドープ)された領域(半導体領域)である。拡散防止領域18aを形成するためのイオン注入IM6aで半導体基板1に注入される第1元素は、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上からなる。
【0135】
なお、拡散防止領域18aを形成するためのイオン注入IM6aおよび後述の拡散防止領域18bを形成するための後述のイオン注入IM6bには、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)は適用せず、上記フィルタFLを用いずにイオン注入IM6a,IM6bを行う。
【0136】
次に、図32に示されるように、nMIS形成領域1Aの半導体基板1(p型ウエルPW)に、イオン注入IM2aによりエクステンション領域EX1を形成し、また、イオン注入IM3aによりハロー領域HA1を形成する。
【0137】
エクステンション領域EX1およびハロー領域HA1の形成法(イオン注入IM2a,IM3a)は、上記実施の形態1と同様であるが、本実施の形態では、エクステンション領域EX1およびハロー領域HA1は、拡散防止領域18a内に形成される。すなわち、上記イオン注入IM6aによって第1元素が導入(ドープ)された領域(ここでは拡散防止領域18a)内に、エクステンション領域EX1およびハロー領域HA1が形成される。なお、エクステンション領域EX1とハロー領域HA1との関係については、上記実施の形態1で説明したので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0138】
拡散防止領域18aは、エクステンション領域EX1、ハロー領域HA1およびn型半導体領域SD1を形成する際の各イオン注入で生成された点欠陥が、nチャネル型MISFETQnのチャネル領域に拡散するのを防止する機能を有している。このため、拡散防止領域18aは、その少なくとも一部が、エクステンション領域EX1、ハロー領域HA1およびn型半導体領域SD1と、nチャネル型MISFETQnのチャネル領域との間に位置する必要がある。従って、拡散防止領域18a、エクステンション領域EX1およびハロー領域HA1が形成された段階で、拡散防止領域18aがハロー領域HA1を包み込む(覆う)ような状態になっていることが好ましい。
【0139】
このため、拡散防止領域18a形成のためのイオン注入IM6aでは、ハロー領域HA1よりも深い位置にまで上記第1元素をイオン注入することが好ましい。また、拡散防止領域18a形成のためのイオン注入IM6aは、斜めイオン注入(傾斜イオン注入)とすることが好ましい。これにより、ハロー領域HA1とnチャネル型MISFETQnのチャネル領域との間に拡散防止領域18aを的確に位置させることができるようになる。
【0140】
また、拡散防止領域18aを形成するためのイオン注入IM6aの傾斜角を、ハロー領域HA1を形成するためのイオン注入IM3aの傾斜角よりも大きくすれば、更に好ましい。これにより、ハロー領域HA1とnチャネル型MISFETQnのチャネル領域との間に拡散防止領域18aを更に的確に位置させることができるようになる。ここで、イオン注入の傾斜角とは、イオン注入方向の半導体基板1の主面に垂直な方向からの傾斜角に対応し、半導体基板1の主面に垂直な方向に不純物イオンを打ち込む場合は、傾斜角は0°である。
【0141】
次に、図33に示されるように、アッシングなどによりフォトレジスト膜PR2aを除去してから、上記実施の形態1と同様のフォトレジスト膜PR2b(nMIS形成領域1Aを覆いかつpMIS形成領域1Bを露出するフォトレジスト膜PR2b)を形成する。それから、本実施の形態では、pMIS形成領域1Bの半導体基板1(n型ウエルNW)に第1元素のイオン注入IM6bを行って拡散防止領域18bを形成する。なお、図33では、拡散防止領域18bを形成するためのイオン注入IM6aを矢印で模式的に示してある。このイオン注入IM6bの際、ゲート電極GE2もマスク(イオン注入阻止マスク)として機能することができる。拡散防止領域18bは、第1元素が導入(ドープ)された領域(半導体領域)である。拡散防止領域18bを形成するためのイオン注入IM6bで半導体基板1に注入される第1元素は、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上からなる。
【0142】
次に、図34に示されるように、pMIS形成領域1Bの半導体基板1(n型ウエルNW)に、イオン注入IM2bによりエクステンション領域EX2を形成し、また、イオン注入IM3bによりハロー領域HA2を形成する。
【0143】
エクステンション領域EX2およびハロー領域HA2の形成法(イオン注入IM2b,IM3b)は、上記実施の形態1と同様であるが、本実施の形態では、エクステンション領域EX2およびハロー領域HA2は、拡散防止領域18b内に形成される。すなわち、上記イオン注入IM6bによって第1元素が導入(ドープ)された領域(ここでは拡散防止領域18b)内に、エクステンション領域EX2およびハロー領域HA2が形成される。なお、エクステンション領域EX2とハロー領域HA2との関係については、上記実施の形態1で説明したので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0144】
拡散防止領域18bは、エクステンション領域EX2、ハロー領域HA2およびp型半導体領域SD2を形成する際の各イオン注入で生成された点欠陥が、pチャネル型MISFETQpのチャネル領域に拡散するのを防止する機能を有している。このため、拡散防止領域18bは、その少なくとも一部が、エクステンション領域EX2、ハロー領域HA2およびp型半導体領域SD2と、pチャネル型MISFETQpのチャネル領域との間に位置する必要がある。従って、拡散防止領域18b、エクステンション領域EX2およびハロー領域HA2が形成された段階で、拡散防止領域18bがハロー領域HA2を包み込む(覆う)ような状態になっていることが好ましい。
【0145】
このため、拡散防止領域18b形成のためのイオン注入IM6bでは、ハロー領域HA2よりも深い位置にまで上記第1元素をイオン注入することが好ましい。また、拡散防止領域18b形成のためのイオン注入IM6bは、斜めイオン注入(傾斜イオン注入)とすることが好ましい。これにより、ハロー領域HA2とpチャネル型MISFETQpのチャネル領域との間に拡散防止領域18bを的確に位置させることができるようになる。
【0146】
また、拡散防止領域18bを形成するためのイオン注入IM6bの傾斜角を、ハロー領域HA2を形成するためのイオン注入IM3bの傾斜角よりも大きくすれば、更に好ましい。これにより、ハロー領域HA2とpチャネル型MISFETQpのチャネル領域との間に拡散防止領域18bを更に的確に位置させることができるようになる。ここで、イオン注入の傾斜角とは、イオン注入方向の半導体基板1の主面に垂直な方向からの傾斜角に対応し、半導体基板1の主面に垂直な方向に不純物イオンを打ち込む場合は、傾斜角は0°である。
【0147】
イオン注入IM6a,IM2a,IM3a(図31および図32)では、フォトレジスト膜PR2aがイオン注入阻止マスクとして機能し、pMIS形成領域1Bの半導体基板1にはイオン注入されない。また、イオン注入IM6b,IM2b,IM3b(図33および図34)では、フォトレジスト膜PR2bがイオン注入阻止マスクとして機能し、nMIS形成領域1Aの半導体基板1にはイオン注入されない。
【0148】
また、拡散防止領域18a、エクステンション領域EX1およびハロー領域HA1は、必ずしもこの順序で形成しなくともよいが、拡散防止領域18a、エクステンション領域EX1およびハロー領域HA1を形成する各イオン注入IM6a,IM2a,IM3aは、少なくとも、ゲート電極GE1形成後で、かつ、ゲート電極GE1の側壁上にサイドウォールSWを形成する前に行う必要がある。同様に、拡散防止領域18b、エクステンション領域EX2およびハロー領域HA2は、必ずしもこの順序で形成しなくともよいが、拡散防止領域18b、エクステンション領域EX2およびハロー領域HA2を形成する各イオン注入IM6b,IM2b,IM3bは、少なくとも、ゲート電極GE2形成後で、かつ、ゲート電極GE2の側壁上にサイドウォールSWを形成する前に行う必要がある。
【0149】
以降の工程は、上記実施の形態1と同様である。
【0150】
すなわち、図35に示されるように、フォトレジスト膜PR2bを除去してから、ゲート電極GE1,GE2の側壁上にサイドウォール(側壁絶縁膜)SWを形成する。それから、nMIS形成領域1Aの半導体基板1(p型ウエルPW)にn型半導体領域SD1を形成し、また、pMIS形成領域1Bの半導体基板1(n型ウエルNW)にp型半導体領域SD2を形成する。本実施の形態でのサイドウォールSW、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2の形成法と構成については、上記実施の形態1と同様である。
【0151】
次に、上記実施の形態1と同様に、これまでのイオン注入で導入した不純物の活性化のためのアニール処理(熱処理)を行う。
【0152】
その後、図36に示されるように、上記実施の形態1と同様に、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2の表面にそれぞれ金属シリサイド層11を形成し、半導体基板1の主面上にゲート電極GE1,GE2およびサイドウォールSWを覆うように絶縁膜12を形成し、絶縁膜12にコンタクトホール13を形成し、コンタクトホール13内にプラグ14を形成する。それから、上記実施の形態1と同様に、プラグ14が埋め込まれた絶縁膜12上に、絶縁膜15を形成し、絶縁膜15にダマシン法で配線M1を形成する。
【0153】
本実施の形態では、上記実施の形態1で得られる効果に加えて、以下のような効果も得ることができる。
【0154】
上述のように、単結晶シリコンからなる基板領域(半導体基板1)に炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入された領域(本実施の形態の拡散防止領域18a,18bに対応)は、点欠陥が拡散(移動)しにくく、点欠陥の拡散(移動)を防止する機能を有している。
【0155】
そこで、本実施の形態では、上述のように、nMIS形成領域1Aの半導体基板1(p型ウエルPW)に、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上(すなわち第1元素)をイオン注入して拡散防止領域18aを形成し、また、pMIS形成領域1Bの半導体基板1(n型ウエルNW)に、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上(第1元素)をイオン注入して拡散防止領域18bを形成している。
【0156】
炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入された領域である拡散防止領域18aは、エクステンション領域EX1、ハロー領域HA1、およびn型半導体領域SD1を形成する際の各イオン注入で生成された点欠陥が、nチャネル型MISFETQnのチャネル領域(ゲート電極GE1の直下の領域)にまで拡散するのを防止する機能を有している。また、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入された領域である拡散防止領域18bは、エクステンション領域EX2、ハロー領域HA2、およびp型半導体領域SD2を形成する際の各イオン注入で生成された点欠陥が、pチャネル型MISFETQpのチャネル領域(ゲート電極GE2の直下の領域)にまでに拡散するのを防止する機能を有している。
【0157】
上述の機能を拡散防止領域18aが有するためには、拡散防止領域18aの少なくとも一部が、エクステンション領域EX1、ハロー領域HA1およびn型半導体領域SD1と、nチャネル型MISFETQnのチャネル領域(ゲート電極GE1の直下の領域)との間に位置する必要がある。エクステンション領域EX1、ハロー領域HA1およびn型半導体領域SD1のうち、ハロー領域HA1が最もnチャネル型MISFETQnのチャネル領域に近いため、ハロー領域HA1を形成した場合は、拡散防止領域18aの少なくとも一部が、ハロー領域HA1とnチャネル型MISFETQnのチャネル領域との間に位置すればよい。このようにするためには、ハロー領域HA1を包み込む(覆う)ように拡散防止領域18aを形成することが好ましい。ハロー領域HA1の形成を省略した場合は、エクステンション領域EX1がチャネル領域に近いので、拡散防止領域18aの少なくとも一部が、エクステンション領域EX1とnチャネル型MISFETQnのチャネル領域との間に位置すればよく、このようにするためには、エクステンション領域EX1を包み込む(覆う)ように拡散防止領域18aを形成することが好ましい。
【0158】
なお、拡散防止領域18aの少なくとも一部が、ハロー領域HAとnチャネル型MISFETQnのチャネル領域との間に位置する場合には、必然的に、エクステンション領域EX1とnチャネル型MISFETQnのチャネル領域との間に拡散防止領域18aの少なくとも一部が位置することになる。このため、ハロー領域HA1を形成するか否かにかかわらず、エクステンション領域EX1とnチャネル型MISFETQnのチャネル領域との間に拡散防止領域18aの少なくとも一部を位置させ、ハロー領域HA1を形成した場合には、ハロー領域HA1とnチャネル型MISFETQnのチャネル領域との間に拡散防止領域18aの少なくとも一部が位置するようにすればよい。
【0159】
また、上述の機能を拡散防止領域18bが有するためには、拡散防止領域18bの少なくとも一部が、エクステンション領域EX2、ハロー領域HA2およびp型半導体領域SD2と、pチャネル型MISFETQpのチャネル領域(ゲート電極GE2の直下の領域)との間に位置する必要がある。エクステンション領域EX2、ハロー領域HA2およびp型半導体領域SD2のうち、ハロー領域HA2が最もpチャネル型MISFETQpのチャネル領域に近いため、ハロー領域HA2を形成した場合は、拡散防止領域18bの少なくとも一部が、ハロー領域HA2とpチャネル型MISFETQpのチャネル領域との間に位置すればよい。このようにするためには、ハロー領域HA2を包み込む(覆う)ように拡散防止領域18bを形成することが好ましい。ハロー領域HA2の形成を省略した場合は、エクステンション領域EX2がチャネル領域に近いので、拡散防止領域18bの少なくとも一部が、エクステンション領域EX2とpチャネル型MISFETQpのチャネル領域との間に位置すればよく、このようにするためには、エクステンション領域EX2を包み込む(覆う)ように拡散防止領域18bを形成することが好ましい。
【0160】
なお、拡散防止領域18bの少なくとも一部が、ハロー領域HA2とpチャネル型MISFETQpのチャネル領域との間に位置する場合には、必然的に、エクステンション領域EX2とpチャネル型MISFETQpのチャネル領域との間に拡散防止領域18bの少なくとも一部が位置することになる。このため、ハロー領域HA2を形成するか否かにかかわらず、エクステンション領域EX2とpチャネル型MISFETQpのチャネル領域との間に拡散防止領域18bの少なくとも一部を位置させ、ハロー領域HA2を形成した場合には、ハロー領域HA2とpチャネル型MISFETQpのチャネル領域との間に拡散防止領域18bの少なくとも一部が位置するようにすればよい。
【0161】
本実施の形態では、拡散防止領域18a,18bを形成したことで、エクステンション領域EX1,EX2、ハロー領域HA1,HA2、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2を形成する際の各イオン注入で生成された点欠陥が、nチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpのチャネル領域に拡散するのを防止でき、チャネル領域における点欠陥の密度を抑制することできる。これにより、チャネルドープイオン注入(IM1a,IM1b)でチャネル領域に導入された不純物が、その後の加熱工程の際に再配置(拡散)されるのを抑制または防止することができるので、注入直後のチャネル不純物の規則的な配列を維持することができる。従って、MISFET毎のしきい値電圧のばらつきを更に的確に抑制することができ、半導体装置の性能を更に向上させることができる。
【0162】
また、拡散防止領域18a,18bには、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上が導入されているが、炭素(C)、窒素(N)およびフッ素(F)のうち、点欠陥の拡散防止に最も有効なのは炭素(C)である。このため、拡散防止領域18a,18bには、炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうち少なくとも炭素(C)を導入していればより好ましい。これにより、拡散防止領域18a,18bを設けたことによる上述の効果を、より的確に得ることができる。
【0163】
また、本実施の形態では、半導体基板において、必要な領域のみに炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上をイオン注入して拡散防止領域18a,18bを形成することができる。このため、不要な領域に炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)が導入されることを防止でき、不要な領域に炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)が導入されることによる悪影響を排除できる。
【0164】
また、チャネルドープイオン注入で導入した不純物の再配置(拡散)に起因したMISFET毎のしきい値電圧のばらつきは、pチャネル型MISFETに比べて、nチャネル型MISFETの方が大きい。これは、一般に、nチャネル型MISFETには、チャネルドープイオン注入でp型不純物を注入し、pチャネル型MISFETには、チャネルドープイオン注入でn型不純物を注入するが、リン(P)などのn型不純物に比べて、ホウ素(B)などのp型不純物の方が、熱拡散しやすいためである。このため、本実施の形態(拡散防止領域18a,18bに相当するものを形成すること)は、CMISFETを有する半導体装置だけでなく、pチャネル型MISFETまたはnチャネル型MISFETの一方だけを有する半導体装置に対しても適用できるが、少なくともnチャネル型MISFETを有する半導体装置に適用すれば、効果が大きい。
【0165】
(実施の形態4)
本実施の形態4の半導体装置の製造工程を図面を参照して説明する。図37〜図40は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。本実施の形態は、上記実施の形態2と上記実施の形態3とを組み合わせたものに対応している。
【0166】
まず、上記実施の形態2と同様にして上記図27の構造を得る。従って、本実施の形態においても、上記実施の形態2と同様に、nMIS形成領域1Aの半導体基板1に半導体層17a、チャネルドープ層4aおよびp型ウエルPWが形成され、pMIS形成領域1Bの半導体基板1に半導体層17b、チャネルドープ層4bおよびn型ウエルNWが形成されている。
【0167】
それから、図37に示されるように、上記実施の形態3と同様のフォトレジスト膜PR2a(pMIS形成領域1Bを覆いかつnMIS形成領域1Aを露出するフォトレジスト膜PR2a)を形成してから、上記実施の形態3と同様にして、拡散防止領域18a、エクステンション領域EX1およびハロー領域HA1を形成する。なお、拡散防止領域18aを形成するためのイオン注入IM6aとエクステンション領域EX1を形成するためのイオン注入IM2aと、ハロー領域HA1を形成するためのイオン注入IM3aとは、それぞれ別々のイオン注入工程として行なわれるが、図37では、まとめて矢印で模式的に示してある。また、拡散防止領域18aとエクステンション領域EX1とハロー領域HA1との関係については、上記実施の形態3で説明したので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0168】
次に、図38に示されるように、フォトレジスト膜PR2aを除去してから、上記実施の形態3と同様のフォトレジスト膜PR2b(nMIS形成領域1Aを覆いかつpMIS形成領域1Bを露出するフォトレジスト膜PR2b)を形成してから、上記実施の形態3と同様にして、拡散防止領域18b、エクステンション領域EX2およびハロー領域HA2を形成する。なお、拡散防止領域18bを形成するためのイオン注入IM6bとエクステンション領域EX2を形成するためのイオン注入IM2bと、ハロー領域HA2を形成するためのイオン注入IM3bとは、それぞれ別々のイオン注入工程として行なわれるが、図38では、まとめて矢印で模式的に示してある。また、拡散防止領域18bとエクステンション領域EX2とハロー領域HA2との関係については、上記実施の形態3で説明したので、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0169】
以降の工程は、上記実施の形態1〜3と同様である。
【0170】
すなわち、図39に示されるように、フォトレジスト膜PR2bを除去してから、ゲート電極GE1,GE2の側壁上にサイドウォール(側壁絶縁膜)SWを形成する。それから、nMIS形成領域1Aの半導体基板1(p型ウエルPW)にn型半導体領域SD1を形成し、また、pMIS形成領域1Bの半導体基板1(n型ウエルNW)にp型半導体領域SD2を形成する。本実施の形態でのサイドウォールSW、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2の形成法と構成については、上記実施の形態1と同様である。
【0171】
次に、上記実施の形態1と同様に、これまでのイオン注入で導入した不純物の活性化のためのアニール処理(熱処理)を行う。
【0172】
その後、図40に示されるように、上記実施の形態1と同様に、ゲート電極GE1,GE2、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2の表面にそれぞれ金属シリサイド層11を形成し、半導体基板1の主面上にゲート電極GE1,GE2およびサイドウォールSWを覆うように絶縁膜12を形成し、絶縁膜12にコンタクトホール13を形成し、コンタクトホール13内にプラグ14を形成する。それから、上記実施の形態1と同様に、プラグ14が埋め込まれた絶縁膜12上に、絶縁膜15を形成し、絶縁膜15にダマシン法で配線M1を形成する。
【0173】
本実施の形態では、半導体層17a,17bおよび拡散防止領域18a,18bを形成したことで、エクステンション領域EX1,EX2、ハロー領域HA1,HA2、n型半導体領域SD1及びp型半導体領域SD2を形成する際の各イオン注入で生成された点欠陥が、nチャネル型MISFETQn及びpチャネル型MISFETQpのチャネル領域に拡散するのを防止する効果を、上記実施の形態2,3よりも高めることができる。これにより、チャネル領域における点欠陥の密度を、上記実施の形態2,3よりも更に抑制することできる。このため、チャネルドープイオン注入(IM1a,IM1b)でチャネル領域に導入された不純物が、その後の加熱工程の際に再配置(拡散)されるのをより的確に抑制または防止することができるので、注入直後のチャネル不純物の規則的な配列をより的確に維持することができる。従って、MISFETのしきい値電圧のばらつきの抑制効果を更に高めることができ、半導体装置の性能を更に的確に向上させることができる。
【0174】
(実施の形態5)
図41は、上記実施の形態1〜4の製造工程により製造された半導体装置(半導体チップ)CP1の一例を示す平面図である。
【0175】
図41に示される本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)CP1は、SRAM(Static Random Access Memory)などのメモリセルアレイが形成されたメモリ領域(メモリ回路領域、メモリセルアレイ領域、SRAM領域)MRYと、メモリ以外の回路(周辺回路)が形成された周辺回路領域PCRとを有している。周辺回路領域PCRは、例えば、アナログ回路が形成されたアナログ回路領域や、制御回路(論理回路)が形成されたCPU領域などを含んでいる。メモリ領域MRYと周辺回路領域PCRとの間や、周辺回路領域PCR同士の間は、半導体装置CP1の内部配線層を介して必要に応じて電気的に接続されている。また、半導体装置CP1の主面(表面)の周辺部には、半導体装置CP1の主面の四辺に沿って複数のパッド電極PDが形成されている。各パッド電極PDは、半導体装置CP1の内部配線層を介してメモリ領域MRYや周辺回路領域PCRなどに電気的に接続されている。
【0176】
本実施の形態では、半導体装置CP1を製造するにあたって、上記実施の形態1〜4の製造技術を適用することができるが、半導体装置CP1における全ての領域(メモリ領域MRYおよび周辺回路領域PCRの全て)に対して適用するのではなく、メモリ領域MRYについて適用するが、周辺回路領域PCRについては適用しない。すなわち、半導体装置CP1を製造するにあたって、メモリ領域MRYでは、チャネルドープイオン注入に上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)を用い、一方、周辺回路領域PCRでは、チャネルドープイオン注入に上述したような実施の形態1のイオン注入法を用いずに、フィルタFLを使用しない一般的なチャネルドープイオン注入を行なう。なお、図41は、平面図であるが、理解を簡単にするために、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)でチャネルドープイオン注入を行なう領域にハッチングを付して示してある。
【0177】
半導体装置CP1の製造工程について、以下で図42〜図48を参照して具体的に説明する。図42〜図48は、本実施の形態の半導体装置CP1の製造工程中の要部断面図である。
【0178】
本実施の形態では、上記実施の形態1と同様に、まず、半導体基板(半導体ウエハ)1を準備する。図42には、半導体基板1のうち、メモリ領域MRYの一部と周辺回路領域PCRの一部とが示されている。
【0179】
メモリ領域MRYのうち、図42には、メモリ(メモリセル)を構成するnチャネル型MISFETが形成される領域であるメモリnMIS形成領域1Cと、メモリ(メモリセル)を構成するpチャネル型MISFETが形成される領域であるメモリpMIS形成領域1Dとが示されている。
【0180】
また、周辺回路領域PCRには、耐圧が異なるMISFETが形成される。このため、図42には、周辺回路領域PCRにおいて低耐圧のnチャネル型MISFETが形成される領域である低耐圧nMIS形成領域1Lと、周辺回路領域PCRにおいて高耐圧のnチャネル型MISFETが形成される領域である高耐圧nMIS形成領域1Hとが示されている。
【0181】
それから、半導体基板1の主面に素子分離領域2を形成する。
【0182】
次に、上記実施の形態1と同様の絶縁膜3を半導体基板1の表面に形成してから、図43に示されるように、メモリnMIS形成領域1Cにp型ウエルPW1を、メモリpMIS形成領域1Dにn型ウエルNW1を、低耐圧nMIS形成領域1Lにp型ウエルPW2を、高耐圧nMIS形成領域1Hにp型ウエルPW3を、それぞれ形成する。p型ウエルPW1,PW2,PW3およびn型ウエルNW1は、それぞれフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いたイオン注入によって形成することができる。p型ウエルPW1を形成するためのイオン注入とp型ウエルPW2を形成するためのイオン注入とp型ウエルPW3を形成するためのイオン注入とは、同じイオン注入工程で行なえば工程数を低減できるが、異なるイオン注入工程として行なってもよい。
【0183】
次に、メモリnMIS形成領域1C、メモリpMIS形成領域1D、低耐圧nMIS形成領域1Lおよび高耐圧nMIS形成領域1Hに、それぞれチャネルドープイオン注入(そこに形成されるMISFETのしきい値調整用のイオン注入)IM1c,IM1d,IM1e,IM1fを行う。なお、図43では、チャネルドープイオン注入IM1c,IM1d,IM1e,IM1fを矢印で模式的に示してある。
【0184】
チャネルドープイオン注入IM1cによって、メモリnMIS形成領域1Cの半導体基板1(p型ウエルPW1)の上層部分にチャネルドープ層4cが形成される。また、チャネルドープイオン注入IM1dによって、メモリpMIS形成領域1Dの半導体基板1(n型ウエルNW1)の上層部分にチャネルドープ層4dが形成される。また、チャネルドープイオン注入IM1eによって、低耐圧nMIS形成領域1Lの半導体基板1(p型ウエルPW2)の上層部分にチャネルドープ層4eが形成される。また、チャネルドープイオン注入IM1fによって、高耐圧nMIS形成領域1Hの半導体基板1(p型ウエルPW3)の上層部分にチャネルドープ層4fが形成される。チャネルドープ層4c,4d,4e,4fは、メモリnMIS形成領域1C、メモリpMIS形成領域1D、低耐圧nMIS形成領域1Lおよび高耐圧nMIS形成領域1Hに形成される各MISFETのチャネル領域となる領域を含んでいる。
【0185】
本実施の形態では、メモリnMIS形成領域1Cへのチャネルドープイオン注入IM1cは、上記実施の形態1においてnMIS形成領域1Aに対して行ったチャネルドープイオン注入IM1aと同様の手法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)でイオン注入を行う。また、メモリpMIS形成領域1Dへのチャネルドープイオン注入IM1dは、上記実施の形態1においてpMIS形成領域1Bに対して行ったチャネルドープイオン注入IM1bと同様の手法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)でイオン注入を行う。一方、低耐圧nMIS形成領域1Lへのチャネルドープイオン注入IM1eおよび高耐圧nMIS形成領域1Hへのチャネルドープイオン注入IM1fは、上記実施の形態1のチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bで用いた実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)は適用せず、一般的なイオン注入法(すなわちフィルタFLを使用しないイオン注入)を用いる。
【0186】
なお、メモリnMIS形成領域1Cへのチャネルドープイオン注入IM1cを行なう際には、メモリpMIS形成領域1D、低耐圧nMIS形成領域1Lおよび高耐圧nMIS形成領域1Hを覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いればよい。また、メモリpMIS形成領域1Dへのチャネルドープイオン注入IM1dを行なう際には、メモリnMIS形成領域1C、低耐圧nMIS形成領域1Lおよび高耐圧nMIS形成領域1Hを覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いればよい。また、低耐圧nMIS形成領域1Lへのチャネルドープイオン注入IM1eを行う際には、メモリnMIS形成領域1C、メモリpMIS形成領域1Dおよび高耐圧nMIS形成領域1Hを覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いればよい。また、高耐圧nMIS形成領域1Hへのチャネルドープイオン注入IM1fを行う際には、メモリnMIS形成領域1C、メモリpMIS形成領域1Dおよび低耐圧nMIS形成領域1Lを覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いればよい。
【0187】
また、低耐圧nMIS形成領域1Lにおけるチャネルドープイオン注入IM1eのドープ量(ドーズ量)と高耐圧nMIS形成領域1Hにおけるチャネルドープイオン注入IM1fのドープ量(ドーズ量)が同じでよい場合は、低耐圧nMIS形成領域1Lのチャネルドープイオン注入IM1eと高耐圧nMIS形成領域1Hのチャネルドープイオン注入IM1fとを、同じイオン注入工程で行なうこともできる。
【0188】
次に、絶縁膜3を除去して半導体基板1の表面を清浄化した後、図44に示されるように、メモリnMIS形成領域1CおよびメモリpMIS形成領域1Dの半導体基板1上にメモリ用のゲート絶縁膜5cを、低耐圧nMIS形成領域1Lの半導体基板1上に低耐圧用のゲート絶縁膜5dを、高耐圧nMIS形成領域1Hの半導体基板1上に高耐圧用のゲート絶縁膜5eを、それぞれ形成する。高耐圧用のゲート絶縁膜5eは、メモリ用のゲート絶縁膜5cおよび低耐圧用のゲート絶縁膜5dよりも厚く、耐圧が高い。
【0189】
膜厚の異なるゲート絶縁膜5c,5d,5eは、例えば次のようにして形成することができる。
【0190】
すなわち、半導体基板1の主面全体にゲート絶縁膜5e用の絶縁膜を熱酸化およびCVDなどで形成してから、エッチングによりメモリnMIS形成領域1C、メモリpMIS形成領域1Dおよび低耐圧nMIS形成領域1Lで、この絶縁膜を除去し、高耐圧nMIS形成領域1Hにこの絶縁膜を残す。それから、熱酸化により半導体基板の主面に酸化シリコン膜を形成する。これにより、メモリnMIS形成領域1C、メモリpMIS形成領域1Dおよび低耐圧nMIS形成領域1Lの半導体基板1上に薄い酸化シリコン膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜5c,5dが形成されるとともに、高耐圧nMIS形成領域1Hでゲート絶縁膜5e用の絶縁膜の厚みが厚くなって、厚いゲート絶縁膜5eとなる。ゲート絶縁膜5cをゲート絶縁膜5dよりも薄くする必要がある場合は、メモリnMIS形成領域1CおよびメモリpMIS形成領域1Dの半導体基板1の表面の酸化シリコン膜をエッチングにより除去してから、再度熱酸化により半導体基板の主面に酸化シリコン膜を形成すればよい。
【0191】
高耐圧用のゲート絶縁膜5eは、メモリ用のゲート絶縁膜5cおよび低耐圧用のゲート絶縁膜5dよりも厚いので、高耐圧nMIS形成領域1Hに形成されるMISFETの耐圧は、メモリnMIS形成領域1C、メモリpMIS形成領域1Dおよび低耐圧nMIS形成領域1Lに形成されるMISFETの耐圧よりも高くなる。
【0192】
次に、半導体基板1の主面全面上に、ゲート電極形成用の導電体膜として、多結晶シリコン膜のようなシリコン膜を形成し、このシリコン膜をフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いてパターニングすることにより、図45に示されるように、ゲート電極GE3,GE4,GE5,GE6を形成する。ゲート電極GE3,GE4,GE5,GE6は、パターニングされたシリコン膜により形成される。なお、図45および後述の図46〜図48においては、図面を見やすくするために、チャネルドープ層4c,4d,4e,4fの図示を省略している。
【0193】
ゲート電極GE3は、メモリnMIS形成領域1Cにおいて、p型ウエルPW1上にゲート絶縁膜5cを介して形成される。また、ゲート電極GE4は、メモリpMIS形成領域1Dにおいて、n型ウエルNW1上にゲート絶縁膜5cを介して形成される。また、ゲート電極GE5は、低耐圧nMIS形成領域1Lにおいて、p型ウエルPW2上にゲート絶縁膜5dを介して形成される。また、ゲート電極GE6は、高耐圧nMIS形成領域1Hにおいて、p型ウエルPW3上にゲート絶縁膜5eを介して形成される。
【0194】
次に、図46に示されるように、メモリnMIS形成領域1Cおよび低耐圧nMIS形成領域1Lの半導体基板1(p型ウエルPW1,PW2)に、上記実施の形態1と同様に、イオン注入によりエクステンション領域EX1およびハロー領域HA1を形成する。また、メモリpMIS形成領域1Dの半導体基板1(n型ウエルNW1)に、上記実施の形態1と同様に、イオン注入によりエクステンション領域EX2およびハロー領域HA2を形成する。なお、図面の簡略化のために、図46においては、ハロー領域HA1,HA2の図示を省略している。
【0195】
本実施の形態では、上記ゲート電極GE1がゲート電極GE3,GE5となり、上記p型ウエルPWがp型ウエルPW1,PW2となっていること以外は、メモリnMIS形成領域1Cおよび低耐圧nMIS形成領域1Lにおけるエクステンション領域EX1およびハロー領域HA1の形成法と構成については、上記実施の形態1と同様であるので、ここではその説明は省略する。また、本実施の形態では、上記ゲート電極GE2がゲート電極GE4となり、上記n型ウエルNWがn型ウエルNW1となっていること以外は、メモリpMIS形成領域1Dにおけるエクステンション領域EX2およびハロー領域HA2の形成法と構成については、上記実施の形態1と同様であるので、ここではその説明は省略する。
【0196】
なお、メモリnMIS形成領域1Cおよび低耐圧nMIS形成領域1Lにエクステンション領域EX1およびハロー領域HA1を形成する際には、メモリpMIS形成領域1Dおよび高耐圧nMIS形成領域1Hを覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いればよい。また、メモリpMIS形成領域1Dにエクステンション領域EX2およびハロー領域HA2を形成する際には、メモリnMIS形成領域1C、低耐圧nMIS形成領域1Lおよび高耐圧nMIS形成領域1Hを覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いればよい。
【0197】
また、高耐圧nMIS形成領域1Hには、メモリnMIS形成領域1C、メモリpMIS形成領域1Dおよび低耐圧nMIS形成領域1LのMISFETに比べて高耐圧のMISFETを形成するため、高耐圧nMIS形成領域1HのMISFETにはエクステンション領域およびハロー領域を形成しないが、必要ならエクステンション領域およびハロー領域を形成することもできる。
【0198】
次に、図47に示されるように、上記実施の形態1と同様に、ゲート電極GE3,GE4,GE5,GE6の側壁上にサイドウォール(側壁絶縁膜)SWを形成する。
【0199】
次に、メモリnMIS形成領域1C、低耐圧nMIS形成領域1Lおよび高耐圧nMIS形成領域1Hの半導体基板1(p型ウエルPW1,PW2,PW3)に、上記実施の形態1と同様にイオン注入によりn型半導体領域SD1(ソース、ドレイン)を形成する。また、メモリpMIS形成領域1Dの半導体基板1(n型ウエルNW1)に、上記実施の形態1と同様にイオン注入によりp型半導体領域SD2(ソース、ドレイン)を形成する。本実施の形態でのn型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2の形成法と構成については、上記実施の形態1と同様である。
【0200】
なお、メモリnMIS形成領域1C、低耐圧nMIS形成領域1Lおよび高耐圧nMIS形成領域1Hにn型半導体領域SD1を形成する際には、メモリpMIS形成領域1Dを覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いればよい。また、メモリpMIS形成領域1Dにp型半導体領域SD2を形成する際には、メモリnMIS形成領域1C、低耐圧nMIS形成領域1Lおよび高耐圧nMIS形成領域1Hを覆うフォトレジスト膜(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いればよい。
【0201】
次に、上記実施の形態1と同様に、これまでのイオン注入で導入した不純物の活性化のためのアニール処理(熱処理)を行う。
【0202】
以降の工程は、上記実施の形態1とほぼ同様である。すなわち、図48に示されるように、上記実施の形態1と同様に、ゲート電極GE3〜GE6、n型半導体領域SD1およびp型半導体領域SD2の表面にそれぞれ金属シリサイド層11を形成し、半導体基板1の主面上にゲート電極GE3〜GE6およびサイドウォールSWを覆うように絶縁膜12を形成し、絶縁膜12にコンタクトホール13を形成し、コンタクトホール13内にプラグ14を形成する。それから、上記実施の形態1と同様に、プラグ14が埋め込まれた絶縁膜12上に、絶縁膜15を形成し、絶縁膜15にダマシン法で配線M1を形成する。
【0203】
また、上記実施の形態2,3,4を本実施の形態に適用することもできる。上記実施の形態2,4を本実施の形態に適用する場合には、メモリ領域MRY(メモリnMIS形成領域1CおよびメモリpMIS形成領域1D)に上記半導体層17(17a,17b)を形成し、一方、周辺回路領域PCR(低耐圧nMIS形成領域1Lおよび高耐圧nMIS形成領域1H)には、上記半導体層17(17a,17b)は形成しない。また、上記実施の形態3,4を本実施の形態に適用する場合には、メモリ領域MRY(メモリnMIS形成領域1CおよびメモリpMIS形成領域1D)に上記拡散防止領域18a,18bを形成し、一方、周辺回路領域PCR(低耐圧nMIS形成領域1Lおよび高耐圧nMIS形成領域1H)には、上記拡散防止領域18a,18bは形成しない。
【0204】
炭素(C)、窒素(N)またはフッ素(F)のうちの1種以上がイオン注入された基板領域に比べて、炭素(C)、窒素(N)およびフッ素(F)が導入されていない基板領域の方が、n型不純物(例えばリンなど)またはp型不純物(例えばホウ素など)の活性化率を高めることができる。このため、本実施の形態では、上記実施の形態2,3,4を本実施の形態に適用する場合に、周辺回路領域PCRにおいては、上記半導体層17a,17bや上記拡散防止領域18a,18bを形成しないことにより、周辺回路領域PCRに導入したn型不純物(例えばリンなど)またはp型不純物(例えばホウ素など)の活性化率を高めることができ、MISFETの抵抗成分を下げやすい。これにより、メモリ領域MRYにおいて、MISFET毎のしきい値電圧のばらつきを抑制することができるとともに、周辺回路領域PCRにおいては、イオン注入した不純物の活性化率を高めることができる。
【0205】
本実施の形態では、上記実施の形態1のチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bと同様の手法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)を、メモリ領域MRYのMISFETに対するチャネルドープイオン注入に適用し、一方、周辺回路領域PCRのMISFETに対するチャネルドープイオン注入には適用しない。これにより、以下のような効果を得ることができる。
【0206】
メモリ領域MRYは、MISFET毎にしきい値電圧が変動してしまうと、メモリの正確な動作が行えなくなるため、しきい値電圧の変動を可能な限り抑制することが望まれる。また、メモリセルを構成するMISFET(特にSRAMを構成するMISFET)は、メモリ以外の回路を構成するMISFETに比べて微細化されている。MISFET毎にチャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態や不純物数)が変動した場合、微細化されているMISFET(ゲート面積の小さなMISFET)ほど、しきい値電圧の変動が大きくなる。このため、メモリ領域MRYのMISFETは、周辺回路領域PCRのMISFETに比べて、チャネル領域における不純物の配置状態や不純物数の変動に起因したしきい値電圧の変動が発生しやすい。
【0207】
それに対して、本実施の形態では、メモリ領域MRYのMISFETに対するチャネルドープイオン注入には、上記実施の形態1のチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bと同様の手法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)を適用する。これにより、メモリ領域MRYのMISFETのチャネル領域では、不純物(チャネル不純物)が規則的に配列した状態となるため、メモリ領域MRYのMISFETのしきい値電圧の変動(ばらつき)を防止できる。メモリ領域MRYのMISFETのしきい値電圧の変動(ばらつき)を防止できることで、メモリ領域MRYに形成されているメモリの信頼性や性能を向上させることができるとともに、メモリ領域MRYに形成されているメモリセルの書き込みや読み出しのマージンが設計基準よりも良くなり、製品不良の発生率を大幅に低減することができる。
【0208】
また、メモリ領域MRYには、SRAM以外にも、フラッシュメモリなど、他の種類のメモリセルアレイを形成することもできる。但し、SRAMの場合は、特に素子が微細化され、しきい値電圧の変動の許容量も少ないため、メモリ領域MRYに形成されるメモリがSRAMの場合は、特に効果が大きい。
【0209】
上述のように、メモリ領域MRYのMISFETは、チャネル領域における不純物の配置状態や不純物数の変動に起因したしきい値電圧の変動(ばらつき)が発生しやすい素子であり、また、しきい値電圧の変動を可能な限り抑制することが望まれる素子である。一方、メモリ領域MRYに比べて、周辺回路領域PCRは、MISFETのしきい値電圧の変動(ばらつき)を許容できる。また、メモリ領域MRYのMISFETの方が、周辺回路領域PCRのMISFETよりも微細化されているため、メモリ領域MRYに比べて、周辺回路領域PCRの方が、チャネル領域の状態(チャネル領域における不純物の配置状態や不純物数)の変動に起因したしきい値電圧の変動が生じにくい。
【0210】
このため、本実施の形態では、周辺回路領域PCRのMISFETに対するチャネルドープイオン注入には、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)は適用せず、フィルタFLを使用しない一般的なチャネルドープイオン注入を行う。上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)は、フィルタFLを使用しない一般的なイオン注入に比べて、イオン注入工程に要する時間が長くなる。本実施の形態では、周辺回路領域PCRのMISFETに対するチャネルドープイオン注入には、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)は適用しないことで、半導体装置の製造時間を短縮することができ、スループットを向上することができる。また、周辺回路領域PCRでは、メモリ領域MRYのようなチャネル不純物の規則的な配列は得られないが、周辺回路領域PCRは、メモリ領域MRYに比べて、MISFETのしきい値電圧の変動が生じにくいか、あるいはしきい値電圧の変動を許容できるため、周辺回路領域PCRの性能が低下するのを抑制または防止できる。
【0211】
従って、本実施の形態では、メモリ領域MRYおよび周辺回路領域PCRを有する半導体装置CP1の性能を向上させることができるとともに、半導体装置の製造時間を短縮できる。このため、スループットを向上し、半導体装置の製造コストを低減できる。
【0212】
(実施の形態6)
図49は、上記実施の形態1〜4の製造工程により製造された半導体装置(半導体チップ)CP2の一例を示す平面図である。
【0213】
図49に示される本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)CP2は、SRAMなどのメモリセルアレイが形成されたメモリ領域MRYと、メモリ以外の回路(周辺回路)が形成された周辺回路領域PCRとを有している。半導体装置(半導体チップ)CP2には、メモリ領域MRYが主として形成されており、半導体装置CP2は、いわゆるメモリチップであり、上記実施の形態5の半導体装置CP1のようにアナログ回路領域やCPU領域は有していない。メモリ領域MRYと周辺回路領域PCRとの間は、半導体装置CP2の内部配線層を介して必要に応じて電気的に接続されている。また、半導体装置CP2の主面(表面)の周辺部には、半導体装置CP2の主面の二辺に沿って複数のパッド電極PDが形成されている。各パッド電極PDは、半導体装置CP2の内部配線層を介してメモリ領域MRYや周辺回路領域PCRなどに電気的に接続されている。
【0214】
上記実施の形態5と同様に、本実施の形態でも、半導体装置CP2を製造するにあたって、上記実施の形態1〜4の製造技術を適用することができるが、半導体装置CP2における全ての領域(メモリ領域MRYおよび周辺回路領域PCRの全て)に対して適用するのではなく、メモリ領域MRYについて適用するが、周辺回路領域PCRについては適用しない。すなわち、半導体装置CP2を製造するにあたって、メモリ領域MRYでは、チャネルドープイオン注入に上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)を用いる。一方、周辺回路領域PCRでは、チャネルドープイオン注入に上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)を用いず、フィルタFLを使用しない一般的なチャネルドープイオン注入を行なう。なお、図49は、平面図であるが、理解を簡単にするために、上述したような実施の形態1のイオン注入法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)でチャネルドープイオン注入を行なう領域にハッチングを付して示してある。
【0215】
半導体装置CP2の製造工程は、上記実施の形態5で上記図42〜図48を参照して説明した工程とほぼ同様であるため、ここではその繰り返しの説明は省略する。
【0216】
本実施の形態においても、上記実施の形態5と同様に、上記実施の形態1のチャネルドープイオン注入IM1a,IM1bと同様の手法(すなわち電圧を印加したフィルタFLを用いたイオン注入)を、メモリ領域MRYのMISFETに対するチャネルドープイオン注入に適用し、一方、周辺回路領域PCRのMISFETに対するチャネルドープイオン注入には適用しないことにより、上記実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
【0217】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0219】
1 半導体基板
1A nMIS形成領域
1B pMIS形成領域
1C メモリnMIS形成領域
1D メモリpMIS形成領域
1H 高耐圧nMIS形成領域
1L 低耐圧nMIS形成領域
1W 半導体ウエハ
2 素子分離領域
3 絶縁膜
4a,4b,4c,4d,4e,4f チャネルドープ層
5 絶縁膜
5a,5b,5c,5d,5e ゲート絶縁膜
6 シリコン膜
11 金属シリサイド層
12 絶縁膜
13 コンタクトホール
14 プラグ
15 絶縁膜
17,17a,17b 半導体層
18a,18b 拡散防止領域
21 イオン注入装置
22,22a,22b,22c イオンビーム
22d 不純物イオン
23 イオンソース
24 加速管
25 質量分析マグネット
26 レンズ
27 処理室
28 ウエハ交換室
29 ステージ
30 チャネル不純物
CP1,CP2 半導体装置
CT 中央部
EX1,EX2 エクステンション領域
FL フィルタ
GE1,GE2,GE3,GE4,GE5,GE6 ゲート電極
HA1,HA2 ハロー領域
IM1a,IM1b,IM1c,IM1d,IM1e,IM1f チャネルドープイオン注入(しきい値調整用のイオン注入)
IM2a,IM2b,IM3a,IM3b,IM4a,IM4b,IM5,IM6a,IM6b イオン注入
M1 配線
MRY メモリ領域
NW,NW1 n型ウエル
OP 開口部
配列ピッチ
PCR 周辺回路領域
PD パッド電極
PR1a,PR1b,PR2a,PR2b,PR3a,PR3b フォトレジストパターン
PW,PW1,PW2,PW3 p型ウエル
Qn nチャネル型MISFET
Qp pチャネル型MISFET
SD1 n型半導体領域
SD2 p型半導体領域
SW サイドウォール
寸法
間隔
厚み
配列間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MISFETを有する半導体装置の製造方法であって、
(a)半導体基板を準備する工程、
(b)前記半導体基板に、前記MISFETのしきい値調整用のイオン注入を行なう工程、
(c)前記(b)工程の後に、前記半導体基板の主面に前記MISFETのゲート絶縁膜用の絶縁膜を形成する工程、
(d)前記(c)工程の後に、前記絶縁膜上に前記MISFETのゲート電極を形成する工程、
を有し、
前記(b)工程では、
規則的に配列した複数の開口部を有するフィルタを通過したイオンビームを収束して前記半導体基板に照射することにより、前記イオン注入が行われ、
前記フィルタには、前記イオン注入で前記半導体基板に注入される不純物イオンと同じ極性の電圧が印加されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程では、前記MISFETのチャネル領域に不純物が導入されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置の製造方法において、
前記フィルタは導電性材料により形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程では、
前記イオンビームを構成する不純物イオンのうち、前記開口部の中央に入射した不純物イオンが前記開口部を通過して前記半導体基板に注入され、
前記開口部の周辺部に入射した不純物イオンは、前記半導体基板に注入されないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置の製造方法において、
前記フィルタでは、前記複数の開口部が格子状に配列していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程の後に、
(e)前記ゲート電極をマスクとして前記半導体基板にイオン注入を行ない、前記半導体基板に第1導電型の第1半導体領域を形成する工程、
(f)前記(e)工程の後に、前記ゲート電極の側壁上に側壁絶縁膜を形成する工程、
(g)前記(f)工程の後に、前記ゲート電極および前記側壁絶縁膜をマスクとして前記半導体基板にイオン注入を行ない、前記半導体基板に前記第1半導体領域よりも不純物濃度が高い第1導電型の第2半導体領域を形成する工程、
を更に有し、
前記第1および第2半導体領域は、前記MISFETのソースまたはドレイン用の半導体領域として機能する半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程および前記(g)工程では、イオン注入の際に前記フィルタは使用しないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程では、炭素、窒素またはフッ素のうちの1種以上が導入された半導体層を上部に有する前記半導体基板が準備され、
前記(b)工程では、前記半導体層に、前記MISFETのしきい値調整用のイオン注入を行なうことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程の後で前記(f)工程の前に、
(e1)前記半導体基板に第1元素のイオン注入を行なう工程、
を更に有し、
前記(e1)工程でイオン注入する前記第1元素は、炭素、窒素またはフッ素のうちの1種以上からなり、
前記(e1)工程で前記第1元素が導入された領域の少なくとも一部は、前記MISFETのチャネル領域と前記第1半導体領域との間に位置することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e1)工程では、
斜めイオン注入により、前記半導体基板に前記第1元素を導入することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体装置の製造方法は、メモリが形成されたメモリ領域と、メモリ以外の回路が形成された周辺回路領域とを有する半導体装置の製造方法であって、
前記メモリ領域で前記(b)工程を行う際には、前記電圧を印加した前記フィルタを通過したイオンビームを収束して前記半導体基板に照射することにより、前記(b)工程のイオン注入を行い、
前記周辺回路領域で前記(b)工程を行う際には、前記フィルタを使用せずに前記(b)工程のイオン注入を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
MISFETを有する半導体装置の製造方法であって、
規則的に配列した複数の開口部を有するフィルタにイオンビームと同じ極性の電圧を印加し、前記電圧が印加された前記フィルタを通過した前記イオンビームを収束して半導体基板に照射することにより、チャネルドープイオン注入を行う工程、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【公開番号】特開2012−4397(P2012−4397A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138857(P2010−138857)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】