説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】本発明は、ゲート絶縁膜の膜厚が増加することを抑制することができる半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板10上に絶縁膜20を形成するステップと、絶縁膜上に第1の金属膜30を形成するステップと、第1の金属膜の上方に、酸素分子1モルあたりの金属酸化物を生成する際の生成エネルギーが負であって、かつ生成エネルギーの絶対値が第1の金属膜より大きい第2の金属膜50を形成するステップと、第1及び第2の金属膜にパターニングを行うステップと、所定の熱処理を行うステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MISFETの微細化に伴って、ゲート絶縁膜の膜厚が薄くなっているため、ゲートリーク電流が増大するという問題が生じている。そこで、かかるゲートリーク電流を抑制するため、ゲート絶縁膜として、シリコン酸化物(SiO)より比誘電率が高い高誘電率のゲート絶縁膜を適用することが提案されている。この高誘電率のゲート絶縁膜は、例えばハフニウム酸化物(HfO)などからなる。
【0003】
しかし、例えばMISFETの製造工程では、高誘電率のゲート絶縁膜を形成する際、当該高誘電率のゲート絶縁膜とシリコン基板との間に、例えばシリコン酸化物などからなる低誘電率の界面絶縁膜が形成され、この低誘電率の界面絶縁膜が、有効ゲート絶縁膜厚(すなわち電気的換算膜厚(EOT:Effective Oxide Thickness))の薄膜化を制限している。
【0004】
かかる低誘電率の界面絶縁膜を薄膜化する方法として、例えばハフニウム酸化物などからなる高誘電率のゲート絶縁膜上に、酸素を除去するための酸素排出金属膜としてハフニウム膜を形成する方法が提案されている(例えば非特許文献1参照)。
【0005】
具体的には、半導体基板上に、ゲート絶縁膜としてのハフニウム酸化膜、酸素排出金属膜としてのハフニウム膜、ゲート電極としての窒化タンタル(TaN)膜を順次堆積し、パターニングを行ってゲートパターンを形成した後、シンタリング(電極の熱処理)を行うことにより、MIS(metal-insulator-semiconductor)構造を有するMISキャパシタを形成する。
【0006】
MISFETを形成する場合には、さらに不純物のイオン注入を行った後、900℃のRTA(Rapid Thermal Annealing)などの熱処理を行って当該不純物を活性化することにより、ソース/ドレイン領域を形成する。
【0007】
このように、高誘電率のゲート絶縁膜上に酸素排出金属膜を形成すれば、RTAによる熱処理を行う際に、酸素を消費して低誘電率の界面絶縁膜を分解することができ、これにより有効ゲート絶縁膜厚を低減することができる。
【0008】
しかし、かかる場合、酸素排出金属膜としてのハフニウム膜が酸素を消費して酸化されることにより、ハフニウム酸化膜が形成され、その結果、このハフニウム酸化膜は、ゲート絶縁膜として機能する。従って、界面絶縁膜を薄膜化しても、酸素排出金属膜が酸化されることによって形成されたハフニウム酸化膜の膜厚が厚い場合には、かえって有効ゲート絶縁膜厚が増加するという問題があった。
【非特許文献1】Changhwan Choi et al, “Fabrication of TaN-gated Ultra-Thin MOSFETs (EOT<1.0nm) with HfO2 using a Novel Oxygen Scavenging Process for Sub 65nm Applications”, Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers, pp 226-227, 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ゲート絶縁膜の膜厚が増加することを抑制することができる半導体装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による半導体装置の製造方法は、
半導体基板上に絶縁膜を形成するステップと、
前記絶縁膜上に第1の金属膜を形成するステップと、
前記第1の金属膜の上方に、酸素分子1モルあたりの金属酸化物を生成する際の生成エネルギーが負であって、かつ前記生成エネルギーの絶対値が前記第1の金属膜より大きい第2の金属膜を形成するステップと、
前記第1及び第2の金属膜にパターニングを行うステップと、
所定の熱処理を行うステップと
を備える。
【0011】
また本発明の一態様による半導体装置は、
半導体基板上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成された第1の金属膜と、
前記第1の金属膜の上方に形成され、酸素分子1モルあたりの金属酸化物を生成する際の生成エネルギーが負であって、かつ前記生成エネルギーの絶対値が前記第1の金属膜より大きい第2の金属膜と
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体装置及びその製造方法によれば、ゲート絶縁膜の膜厚が増加することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(1)第1の実施の形態
図1に、本発明の第1の実施の形態によるMISキャパシタの製造方法を示す。図1に示すように、例えば250℃のオゾン(O)雰囲気中で酸化処理を行うことにより、P型半導体基板10上に、例えばシリコン酸化(SiO)膜からなる界面絶縁膜(図示せず)を0.5nm程度形成する。
【0015】
同一のチャンバ内において、シリコン及びハフニウムにおけるハフニウムの割合が例えば60%であるハフニウムシリケート(HfSiO)膜を2.5nm程度堆積する。続いて、同一のチャンバ内において、250℃のオゾン雰囲気中でアニール(熱処理)を行った後、さらに700℃のアンモニア(NH)雰囲気中でアニールを行って、炭素(C)などの不純物を低減すると共に窒素(N)を添加することにより、ゲート絶縁膜20として、例えば窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)膜を形成する。
【0016】
次に、ゲート電極の仕事関数(電子を外側に取り出すのに必要な最小エネルギー)を制御する仕事関数制御金属膜30として、例えばケイ化タンタル(TaSi)膜(X=2.5)又は窒化チタン(TiN)膜を10nm程度堆積する。なお、ケイ化タンタル膜は、NMISFETに適した仕事関数を有し、窒化チタン膜は、PMISFETに適した仕事関数を有する。
【0017】
仕事関数制御金属膜30上に、ゲート電極の抵抗を低減するための低抵抗化金属膜40として、例えばタングステン(W)膜を50nm程度堆積する。低抵抗化金属膜40上に、仕事関数制御金属膜30及び低抵抗化金属膜40より酸化され易い金属からなる酸素吸収金属膜50として、例えばチタン(Ti)膜を堆積する。
【0018】
酸素吸収金属膜50上に、レジストとの密着性を改善するためのレジスト密着性改善金属膜60として、例えば窒化チタン膜を10nm程度堆積する。その後、フォトリソグラフィ技術を用いて、レジスト密着性改善金属膜60上に所望のレジストパターンを形成し、これをマスクとしてパターニングを行うことにより、ゲート電極を形成する。
【0019】
そして、MISFETのソース/ドレイン領域を形成するための活性化に相当する熱処理として、1000℃又は1050℃の窒素(N)雰囲気中で、保持時間を極力短くした高温のアニールを行う。なお、保持時間は、好ましくは1秒以下である。その後、水素(H)を含む窒素(N)ガス(フォーミングガス)中で、400℃のシンタリング(電極の熱処理)を行うことにより、MISキャパシタ70を形成する。
【0020】
以上の方法によって製造されたMISキャパシタ70は、半導体基板10上に、図示しない界面絶縁膜、ゲート絶縁膜20、仕事関数制御金属膜30、低抵抗化金属膜40、酸素吸収金属膜50及びレジスト密着性改善金属膜60が形成されている。
【0021】
ここで図2に、酸素吸収金属膜50を形成するチタン膜の膜厚と、MISキャパシタ70における有効ゲート絶縁膜厚(EOT)との関係の一例を示す。この図2に示すように、例えば仕事関数制御金属膜30としてケイ化タンタル(TaSi)膜を使用したゲート電極において、1000℃又は1050℃のうちいずれのアニールを行っても、低抵抗化金属膜40とレジスト密着性改善金属膜60との間に、酸素吸収金属膜50としてチタン膜を挿入した場合には、当該チタン膜を挿入しない場合(チタン膜厚が0nmである場合)と比較して、有効ゲート絶縁膜厚を低減することができる。なお、仕事関数制御金属膜30として窒化チタン(TiN)膜を使用したゲート電極においても、同様の効果を得ることができる。
【0022】
また、チタン膜の膜厚が5nm又は10nmのいずれの場合であっても、ほぼ同様の有効ゲート絶縁膜厚を得ることができる。従って、チタン膜の膜厚が厚くなっても、有効ゲート絶縁膜厚が増加することはなく、当該有効ゲート絶縁膜厚を低減することができる。
【0023】
さらに図3に、MISキャパシタ70表面からの深さ方向における、酸素(O)及びチタン(Ti)の濃度分布を示す。
【0024】
ここでは、シリコン基板上に、シリコン酸化(SiO)膜、窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)膜(膜厚2.5nm)、ケイ化タンタル(TaSi)膜(膜厚10nm)、タングステン(W)膜(膜厚50nm)及び窒化チタン(TiN)膜(膜厚10nm)を積層し、タングステン膜と窒化チタン膜の間にチタン(Ti)膜を10nm挿入した場合と、挿入しない場合とにおいて、1050℃のアニールを行うことにより得られる、酸素及びチタンの濃度分布を示す。
【0025】
なお、図3において、深さR1の範囲は、窒化チタン膜及びチタン膜が挿入されている場合にはチタン膜が形成されている領域を示し、深さR2の範囲は、タングステン膜が形成されている領域を示し、深さR3の範囲は、ケイ化タンタル膜、窒化ハフニウムシリケート膜及びシリコン酸化膜が形成されている領域を示し、深さR4の範囲は、シリコン基板が形成されている領域を示す。
【0026】
この図3に示すように、チタン膜を挿入した場合には、チタン膜を挿入しない場合と比較して、タングステン膜(深さR2の範囲)における酸素濃度が低下し、またケイ化タンタル膜、窒化ハフニウムシリケート膜及びシリコン酸化膜(深さR3の範囲)における酸素濃度も低下する。なお、チタン膜を挿入した場合には、チタン膜(深さR1の範囲の右側部分)における酸素濃度が高くなり、当該チタン膜が酸素を吸収している。
【0027】
また、タングステン膜(深さR2の範囲)におけるチタン濃度は、検出限界以下であり、チタンは、ゲート絶縁膜20である窒化ハフニウムシリケート膜に到達していない。すなわち、タングステン膜と窒化チタン膜との間にチタン膜を挿入すれば、チタン膜をゲート絶縁膜20である窒化ハフニウムシリケート膜に直接接触させなくても、ゲート電極における酸素濃度を低減することができる。
【0028】
より具体的には、ゲート電極を形成するタングステン膜やケイ化タンタル膜などの中に存在する酸素は、これらタングステン膜やケイ化タンタル膜より酸化され易いチタン膜と優先的に結合することにより、チタン膜と優先的に酸化物を形成し、これによりチタン膜は、タングステン膜やケイ化タンタル膜中の酸素を吸収する。
【0029】
また、チタン膜は、タングステン膜やケイ化タンタル膜より酸化され易いことに加えて、シリコンよりも酸化され易いため、ゲート電極中の酸素は、シリコンと結合するよりも、チタン膜と優先的に結合することにより、チタン酸化物を形成する。
【0030】
これにより、シリコン基板と窒化ハフニウムシリケート膜との界面や、窒化ハフニウムシリケート膜と窒化チタン膜との界面に、絶縁物であるシリコン酸化物や金属酸化物が新たに形成されることがなくなり、従って有効ゲート絶縁膜厚の増加を抑制することができる。
【0031】
因みに、ゲート絶縁膜20に接触しない位置であっても、均一な絶縁膜が形成されると、これは、ゲート絶縁膜20を有するキャパシタに直列にキャパシタを接続することになる。しかし、本実施の形態の場合、チタン膜は、酸素を吸収しても、正規組成のチタン酸化物を生成することはない。このため、当該酸素を吸収したチタン膜は、絶縁膜として機能せず、電流を流すことから、有効ゲート絶縁膜が増加することはない。
【0032】
ここで図4に、挿入されるチタン膜の膜厚を0〜10nmの範囲内で変化させた場合における、有効ゲート絶縁膜厚(EOT)とゲートリーク電流密度(Jg)との関係の一例を示す。この図4に示すように、仕事関数制御金属膜30の種類とアニールの温度とが同一であれば、チタン膜の膜厚にかかわらず、有効ゲート絶縁膜厚及びゲートリーク電流密度特性は、ほぼ同様の特性になる。従って、チタン膜を挿入しても、このことがゲートリーク電流に影響を及ぼすことはない。
【0033】
ところで、金属の酸化され易さは、金属が金属酸化物を生成する際の生成エネルギーを比較することにより判断される。ここで図5に、298K及び1気圧の条件下で、種々の金属酸化物を生成する場合における、酸素(O)1molあたりの標準生成エネルギーを示す。なお、標準生成エネルギーは、いずれも負であるため、これら金属酸化物を生成する化学反応は、発熱反応に相当し、当該化学反応は自発的に進行する。
【0034】
この図5に示すように、チタン(Ti)は、その標準生成エネルギーの絶対値が、タングステン(W)、タンタル(Ta)、シリコン(Si)より大きいため、これらより酸化され易い。
【0035】
また、仕事関数制御金属膜30を形成する窒化チタン(TiN)は、チタン酸化物(TiO)を生成する際、チタン(Ti)と窒素(N)の結合を切るエネルギーを余分に必要とするため、チタンより酸化されにくい。
【0036】
また、タンタル及びシリコンのいずれもチタンより酸化されにくいことから、仕事関数制御金属膜30を形成するケイ化タンタル(TaSi)も、窒化チタンと同様に、チタンより酸化されにくい。なお、ケイ化タンタル(TaSi)を酸化することによりタンタル酸化物(Ta)やシリコン酸化物(SiO)を形成する場合には、ケイ化タンタル(TaSi)の結合を切るエネルギーを余分に必要とするため、ケイ化タンタルは、タンタル及びシリコンを直接酸化する場合より酸化されにくい。
【0037】
このように本実施の形態によれば、ゲート電極を透過する酸素の濃度や、ゲート電極に含まれる酸素の濃度を低減することができ、従って高温の熱処理(アニール)を行う際に、ゲート絶縁膜20の膜厚が増加することを抑制することができる。また、薄い酸素吸収金属膜50を挿入するだけで良く、簡易な構成で所望の効果を得ることができる。また、酸素吸収金属膜50がゲート絶縁膜20と接触していないため、酸素吸収金属膜50が酸化されても、ゲート絶縁膜20の膜厚が増加することはない。
【0038】
なお上述の第1の実施の形態は一例であって、本発明を限定するものではない。例えば、酸素吸収金属膜50として、チタン膜ではなく、ハフニウム(Hf)膜やジルコニウム(Zr)膜などを使用しても良い。
【0039】
因みに、酸素吸収金属膜50は、仕事関数制御金属膜30及び低抵抗化金属膜40より酸化され易いだけでなく、これら仕事関数制御金属膜30及び低抵抗化金属膜40より窒化され易い。
【0040】
従って、例えば窒素雰囲気中で高温の熱処理(アニール)を行う場合において、ゲート電極を透過する窒素の濃度を低減することができる。また、例えば窒化チタン膜から拡散される窒素や、窒化ハフニウムシリケート膜においてシリコンやハフニウムなどと十分に結合を形成していない窒素など、ゲート電極に含まれる窒素の濃度を低減することができる。
【0041】
これにより、窒素がシリコンと結合することによって、絶縁膜であるシリコン窒化(SiN)膜が形成され、ゲート絶縁膜20の膜厚が増加することを抑制することができ、またゲート閾値電圧の変動や移動度の劣化を抑制することができる。
【0042】
(2)第2の実施の形態
図6〜図11に、本発明の第2の実施の形態によるNMISFETの製造方法を示す。図6に示すように、N型半導体基板100の表面部分にP型半導体領域110及び素子分離絶縁膜120を形成する。
【0043】
図7に示すように、半導体基板100上にゲート絶縁膜130を形成する。このゲート絶縁膜130としては、例えば、シリコン酸化物(SiO)などからなる膜厚が1nm以下の界面絶縁膜と、ハフニウム酸化物(HfO)などからなる膜厚が3nm以下の高誘電率絶縁膜とを積層した絶縁膜を使用することができる。
【0044】
この場合、界面絶縁膜としては、例えばハフニウムシリケート(HfSiO)のように、上層の高誘電率絶縁膜の構成要素が混在したものでも良く、また窒化シリケート(SiON)のように、窒素が添加されたものでも良い。
【0045】
また、高誘電率膜としては、ハフニウム酸化物(HfO)、ハフニウム酸化物にシリコン又はアルミニウムを添加したハフニウムシリケート(HfSiO)又はハフニウムアルミネート(HfAlO)、ハフニウム酸化物に窒素を添加したハフニウム酸窒化物(HfON)、ハフニウム酸化物にシリコン又はアルミニウムと窒素とを同時に添加した窒化ハフニウムシリケート(HfSiON)又は窒化ハフニウムアルミネート(HfAlON)などを使用することができる。
【0046】
なお、この場合、ハフニウム酸化物ではなく、ジルコニウム酸化物(ZrO)又はジルコニウム酸化物にシリコン、アルミニウム、窒素などを添加したものを使用しても良く、またLaなどのランタノイド又はイットリウム(Y)の酸化物、若しくはこれらの酸化物にシリコン、アルミニウム、窒素などを添加したものを使用しても良い。さらに、高誘電率膜は、シリコン酸化膜又はシリコン酸窒化(SiON)膜の単層であっても良い。
【0047】
図8に示すように、ゲート絶縁膜130上に、ゲート電極の仕事関数を制御する仕事関数制御金属膜140を堆積する。この仕事関数制御金属膜140は、NMISFETを形成する場合には、フェルミレベルの位置がシリコンの禁制帯中央より伝導電子帯に近いものが適しており、例えばTaSi、WSi、TiSi、などの金属ケイ化物、又はTaSi、WSi、TiSiなどの金属ケイ化物に窒素を添加したものを使用することができる。
【0048】
また、光電子放出などによって測定された仕事関数がシリコンの禁制帯中央より荷電子帯よりであっても、NiSi、PtSi、CoSi、などのSiを含む金属ケイ化物は、ゲート絶縁膜130上で、フェルミレベル・ピンニングと呼ばれる現象によって、フェルミレベルが伝導電子帯から0.2eV程度禁制帯中央に寄った位置に固定されるため、NMISFET用の仕事関数制御金属として使用することができる。
【0049】
また、Ta、Nb、VなどのVa属元素も、NMISFETに適したフェルミレベルの位置を示し、これらの材料の仕事関数(真空準位とフェルミレベルのエネルギー差)は、ほぼ4.0〜4.6eVの間に位置する。
【0050】
次に、仕事関数制御金属膜140上に例えばW、Mo、Taなどの低抵抗化金属膜150を堆積した後、低抵抗化金属膜150上に酸素吸収金属膜160を堆積する。酸素吸収金属膜160は、第1の実施の形態と同様に、仕事関数制御金属膜140及び低抵抗化金属膜150の組み合わせに応じて、標準生成エネルギーを比較することにより決定されることができ、例えばTi、Zr、HfなどのIVa金属、又はTaなどのVa金属を使用することができる。
【0051】
酸素吸収金属膜160上に、例えばTiNなどの保護膜170を堆積する。この保護膜170は、後にゲートキャップ膜180を堆積する際に、仕事関数制御金属膜140、低抵抗化金属膜150及び酸素吸収金属膜160を保護するための膜である。
【0052】
保護膜170上に、例えばシリコン窒化(SiN)膜からなるゲートキャップ膜180を堆積する。このゲートキャップ膜180は、後に行われるイオン注入や洗浄工程から保護膜170の上面を保護する役割を果たす。なお、ゲートキャップ膜180としては、例えばシリコン窒化膜のように還元雰囲気中で堆積される絶縁膜、又はプラズマCVD法などによって低温で形成されるシリコン酸化膜、又はこれらの複合膜を使用することができる。
【0053】
図9に示すように、ゲートキャップ膜180上にフォトレジストを塗布し、露光及び現像を行うことにより、ゲートパターンを有するレジストマスク190を形成する。このレジストマスク190をマスクとして、RIEによって、ゲートキャップ膜180、保護膜170、酸素吸収金属膜160、低抵抗化金属膜150、仕事関数制御金属膜140及びゲート絶縁膜130にエッチングを行うことにより、ゲート電極200及びゲート絶縁膜130を形成する。なお、この場合、レジストマスク190をマスクとして、ゲートキャップ膜190のみにパターニングを行い、当該ゲートキャップ膜190をハードマスクとして、パターニングを行っても良い。
【0054】
図10に示すように、シリコン窒化膜などを例えば10nm以下の膜厚で等方的に堆積した後、RIEによって、当該シリコン窒化膜にエッチングを行うことにより、オフセットスペーサ210を形成する。続いて、ヒ素(As)などのイオン注入を行って、ソース/ドレインエクステンション領域220を形成した後、ボロン(B)などのイオン注入を行って、HALO領域(ポケット領域)230を形成する。
【0055】
図11に示すように、シリコン窒化膜などを例えば100nm以下の膜厚で等方的に堆積した後、RIEによって、当該シリコン窒化膜にエッチングを行うことにより、側壁スペーサ240を形成する。なお、この側壁スペーサ240は、シリコン窒化膜の単層でも良く、又はシリコン窒化膜とシリコン酸化膜などとの複合膜であっても良い。
【0056】
続いて、ヒ素(As)などのイオン注入を行った後、例えば1000℃乃至1050℃の温度で1秒以下のRTAなどのアニールを行って当該イオン注入したヒ素を活性化させることにより、ソース/ドレイン領域250を形成する。
【0057】
なお、この場合、アニールとしては、キセノン(Xe)フラッシュランプを用いたアニール(FLA)、レーザ光を用いたアニール、500℃かつ数十分程度のアニールを用いたSPER(solid phase epitaxial regrowth)などを使用すれば良い。
【0058】
その後、必要に応じて、ソース/ドレイン領域250の表面部分にシリサイド(図示せず)を形成した後、層間絶縁膜及び配線(図示せず)を順次形成することにより、NMISFET260を形成する。
【0059】
以上の方法によって製造されたNMISFET260は、図11に示すように、N型半導体基板100の表面部分に素子分離絶縁膜120が形成され、当該素子分離絶縁膜120によって分離されたP型半導体領域110の中央部分には、ゲート絶縁膜130を介して、仕事関数制御金属膜140、低抵抗化金属膜150、酸素吸収金属膜160、保護膜170及びゲートキャップ膜180からなるゲート電極200が形成されている。
【0060】
ゲート電極200の側面には、オフセットスペーサ210を介して側壁スペーサ240が形成され、またゲート電極200の下方に位置し、かつP型半導体領域110の表面付近には、チャネル領域270が形成されている。
【0061】
このチャネル領域270の両端には、ソース/ドレインエクステンション領域220が形成され、ソース/ドレインエクステンション領域220の下方には、HALO領域(ポケット領域)230が形成され、さらにソース/ドレインエクステンション領域220と素子分離絶縁膜120との間には、ソース/ドレイン領域250が形成されている。
【0062】
このように本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができ、さらに、高温の熱処理(アニール)を行う際に、ゲート絶縁膜130の膜厚が増加することを抑制することができることから、駆動能力の高いトランジスタを安定して製造することができる。
【0063】
なお上述の第2の実施の形態は一例であって、本発明を限定するものではない。例えば、NMISFETではなく、PMISFETを形成しても良く、またフォトリソグラフィ技術を用いてレジストマスクを形成し、別種のイオン注入を行うことにより、CMISFETを形成しても良い。
【0064】
かかる場合、PMISFETにおいて使用される仕事関数制御金属膜としては、フェルミレベルの位置がシリコンの禁制帯中央より荷電子帯に近いものが適しており、例えばTiN、ZrN、HfN、VN、NbN、TaN、CrN、MoN、TiN、WNなどの金属窒化物、又はCr、Mo、WなどのVIa属金属、又はCo、Ni、Pt、Pd、Ru、IrなどのVIII属金属、ReなどのVIIa属金属、又はこれらの化合物を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるMISキャパシタの製造方法における工程別素子の断面構造を示す縦断面図である。
【図2】酸素吸収金属膜を形成するチタン膜の膜厚と、MISキャパシタにおける有効ゲート絶縁膜厚(EOT)との関係を示す説明図である。
【図3】MISキャパシタ表面からの深さ方向における、酸素(O)及びチタン(Ti)の濃度分布を示す説明図である。
【図4】挿入されるチタン膜の膜厚を変化させた場合における、有効ゲート絶縁膜厚(EOT)とゲートリーク電流密度(Jg)との関係を示す説明図である。
【図5】各種金属酸化物を生成する場合における、酸素(O)1molあたりの標準生成エネルギーを示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態によるNMISFETの製造方法における工程別素子の断面構造を示す縦断面図である。
【図7】同NMISFETの製造方法における工程別素子の断面構造を示す縦断面図である。
【図8】同NMISFETの製造方法における工程別素子の断面構造を示す縦断面図である。
【図9】同NMISFETの製造方法における工程別素子の断面構造を示す縦断面図である。
【図10】同NMISFETの製造方法における工程別素子の断面構造を示す縦断面図である。
【図11】同NMISFETの製造方法における工程別素子の断面構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10、100 半導体基板
20、130 ゲート絶縁膜
30、140 仕事関数制御金属膜
40、150 低抵抗化金属膜
50、160 酸素吸収金属膜
60 レジスト密着性改善金属膜
70 MISキャパシタ
170 保護膜
180 ゲートキャップ膜
200 ゲート電極
250 ソース/ドレイン領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に絶縁膜を形成するステップと、
前記絶縁膜上に第1の金属膜を形成するステップと、
前記第1の金属膜の上方に、酸素分子1モルあたりの金属酸化物を生成する際の生成エネルギーが負であって、かつ前記生成エネルギーの絶対値が前記第1の金属膜より大きい第2の金属膜を形成するステップと、
前記第1及び第2の金属膜にパターニングを行うステップと、
所定の熱処理を行うステップと
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の金属膜を形成するステップでは、
前記第1の金属膜の上方に、酸素分子1モルあたりの金属酸化物を生成する際の生成エネルギーが負であって、かつ前記生成エネルギーの絶対値が前記第1の金属膜及びシリコン酸化物より大きい第2の金属膜を形成することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
半導体基板上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成された第1の金属膜と、
前記第1の金属膜の上方に形成され、酸素分子1モルあたりの金属酸化物を生成する際の生成エネルギーが負であって、かつ前記生成エネルギーの絶対値が前記第1の金属膜より大きい第2の金属膜と
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記第2の金属膜は、
前記第1の金属膜の上方に形成され、酸素分子1モルあたりの金属酸化物を生成する際の生成エネルギーが負であって、かつ前記生成エネルギーの絶対値が前記第1の金属膜及びシリコン酸化物より大きいことを特徴とする請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の金属膜は、
チタン、ジルコニウム又はハフニウムのいずれかであることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−266230(P2007−266230A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88137(P2006−88137)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】