説明

半導体装置

【課題】電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い、新たな構造の半導体装置を提供することを目的の一とする。
【解決手段】第1のトランジスタと第2のトランジスタと容量素子とを各々含む複数のメモリセルをマトリクス状に配置し、メモリセルの一と他のメモリセルとを接続する配線(ビット線とも呼ぶ)と、第1のトランジスタにおけるソース電極またはドレイン電極と、が、第2のトランジスタにおけるソース電極またはドレイン電極を介して電気的に接続した構成とした半導体装置を提供する。これにより、第1のトランジスタにおけるソース電極またはドレイン電極と、第2のトランジスタにおけるソース電極またはドレイン電極と、を異なる配線に接続する場合と比較して配線の数を削減することができるため、半導体装置の集積度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する発明は、半導体素子を利用した半導体装置およびその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を利用した記憶装置は、電力の供給がなくなると記憶内容が失われる揮発性記憶装置と、電力の供給がなくなっても記憶内容は保持される不揮発性記憶装置とに大別される。
【0003】
揮発性記憶装置の代表的な例としては、DRAM(Dynamic Random Access Memory)がある。DRAMは、記憶素子を構成するトランジスタを選択してキャパシタに電荷を蓄積することで、情報を記憶する。
【0004】
上述の原理から、DRAMでは、情報を読み出すとキャパシタの電荷は失われるため、情報の読み出しの度に、再度の書き込み動作が必要となる。また、記憶素子を構成するトランジスタにはオフ状態でのソースとドレイン間のリーク電流(オフ電流)等によって、トランジスタが選択されていない状況でも電荷が流出、または流入するため、データの保持期間が短い。このため、所定の周期で再度の書き込み動作(リフレッシュ動作)が必要であり、消費電力を十分に低減することは困難である。また、電力の供給がなくなると記憶内容が失われるため、長期間の記憶の保持には、磁性材料や光学材料を利用した別の記憶装置が必要となる。
【0005】
揮発性記憶装置の別の例としてはSRAM(Static Random Access Memory)がある。SRAMは、フリップフロップなどの回路を用いて記憶内容を保持するため、リフレッシュ動作が不要であり、この点においてはDRAMより有利である。しかし、フリップフロップなどの回路を用いているため、記憶容量あたりの単価が高くなるという問題がある。また、電力の供給がなくなると記憶内容が失われるという点については、DRAMと変わるところはない。
【0006】
不揮発性記憶装置の代表例としては、フラッシュメモリがある。フラッシュメモリは、トランジスタのゲート電極とチャネル形成領域との間にフローティングゲートを有し、当該フローティングゲートに電荷を保持させることで記憶を行うため、データの保持期間は極めて長く(半永久的)、揮発性記憶装置で必要なリフレッシュ動作が不要であるという利点を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかし、書き込みの際に生じるトンネル電流によって記憶素子を構成するゲート絶縁層が劣化するため、書き込みを何度も繰り返すことで、記憶素子が機能しなくなるという問題が生じる。この問題を回避するために、例えば、各記憶素子の書き込み回数を均一化する手法が採られるが、これを実現するためには、複雑な周辺回路が必要になってしまう。そして、このような手法を採用しても、根本的な寿命の問題が解消するわけではない。つまり、フラッシュメモリは、情報の書き換え頻度が高い用途には不向きである。
【0008】
また、フローティングゲートに電荷を注入し、または、その電荷を除去するためには、高い電圧が必要であり、また、そのための回路も必要である。さらに、電荷の注入、または除去のためには比較的長い時間を要し、書き込み、消去の高速化が容易ではないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭57−105889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の問題に鑑み、開示する発明の一態様では、電力が供給されない状況でも記憶内容の保持が可能で、かつ、書き込み回数にも制限が無い、新たな構造の半導体装置を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示する発明では、高純度化された酸化物半導体を用いて半導体装置を構成する。高純度化された酸化物半導体を用いて構成したトランジスタは、リーク電流が極めて小さいため、長期間にわたって情報を保持することが可能である。
【0012】
開示する発明の一態様は、例えば、メモリセルの一と他のメモリセルとを接続する配線(ビット線とも呼ぶ)と、第1のトランジスタにおけるソース電極またはドレイン電極と、が、第2のトランジスタにおけるソース電極またはドレイン電極を介して電気的に接続した構成とする。これにより、第1のトランジスタにおけるソース電極またはドレイン電極と、第2のトランジスタにおけるソース電極またはドレイン電極と、を異なる配線に接続する場合と比較して配線の数を削減することができるため、半導体装置の集積度を向上させることができる。
【0013】
開示する発明の別の一態様は、例えば、メモリセルの一と他のメモリセルとを接続する配線(ソース線とも呼ぶ)の一を、複数のメモリセル(少なくとも異なるビット線に接続されたメモリセルを含む)がそれぞれ有する第1のトランジスタにおけるソース電極またはドレイン電極、の全てに電気的に接続された構成として、ソース線の数をビット線の数より少なくする。これにより、ソース線の数を十分に少なくすることができるため、半導体装置の集積度を向上させることができる。
【0014】
より具体的には、例えば次のような構成を採用することができる。
【0015】
本発明の一態様の半導体装置は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、を含む複数のメモリセルを有し、第1のトランジスタは、第1のチャネル形成領域と、第1のチャネル形成領域上に設けられた第1のゲート絶縁層と、第1のチャネル形成領域と重畳して、第1のゲート絶縁層上に設けられた第1のゲート電極と、第1のチャネル形成領域と電気的に接続する第1のソース電極及び第1のドレイン電極と、を含み、第2のトランジスタは、第2のチャネル形成領域と、第2のチャネル形成領域と電気的に接続する第2のソース電極及び第2のドレイン電極と、第2のチャネル形成領域と重畳して設けられた第2のゲート電極と、第2のチャネル形成領域と第2のゲート電極との間に設けられた第2のゲート絶縁層と、を含み、第1のチャネル形成領域と第2のチャネル形成領域は、異なる半導体材料を含んで構成され、第1のトランジスタと第2のトランジスタとは、少なくとも一部が重畳して設けられ、メモリセルの一と他のメモリセルとを接続する配線と、第1のソース電極または第1のドレイン電極の一方と、が第2のソース電極及び第2のドレイン電極の一方を介して電気的に接続する。
【0016】
また、上記の半導体装置において、第1のソース電極及び第1のドレイン電極の一方と、第2のソース電極及び第2のドレイン電極の一方と、が接する領域は、第2のソース電極及び第2のドレイン電極の一方と、メモリセルの一と他のメモリセルとを接続する配線と、が接する領域と重なっているのが好ましい。
【0017】
または、上記の半導体装置において、第2のソース電極及び第2のドレイン電極の一方と、第1のソース電極または第1のドレイン電極の一方とは、同一物であるのが好ましい。その場合、第2のソース電極及び第2のドレイン電極の一方と、第1のソース電極及び第1のドレイン電極の一方と、が接する領域は、第2のソース電極及び第2のドレイン電極の一方と、メモリセルの一と他のメモリセルとを接続する配線と、が接する領域と重なっているのがより好ましい。
【0018】
また、本発明の別の一態様の半導体装置は、m本(mは2以上の整数)の信号線と、m本のワード線と、n本(nは2以上の整数)のビット線と、k本(kはn未満の自然数)のソース線と、マトリクス状に配置された(m×n)個のメモリセルと、ビット線と電気的に接続された第1の駆動回路と、ソース線と電気的に接続された第2の駆動回路と、信号線と電気的に接続された第3の駆動回路と、ワード線と電気的に接続された第4の駆動回路と、を有し、メモリセルの一は、第1のゲート電極、第1のソース電極、第1のドレイン電極、及び第1のチャネル形成領域を含む第1のトランジスタと、第2のゲート電極、第2のソース電極、第2のドレイン電極、及び第2のチャネル形成領域を含む第2のトランジスタと、容量素子と、を有し、第1のチャネル形成領域と第2のチャネル形成領域は、異なる半導体材料を含んで構成され、第2のソース電極と第2のドレイン電極の一方と、容量素子の電極の一方と、第1のゲート電極と、は電気的に接続され、ソース線の一と、第1のソース電極とは、電気的に接続され、ビット線の一と、第2のソース電極と第2のドレイン電極の他方と、第1のドレイン電極と、は電気的に接続され、ワード線の一と、容量素子の電極の他方と、は電気的に接続され、信号線の一と、第2のゲート電極と、は電気的に接続され、ソース線の一は、メモリセルの一を含むj個(jは(m+1)以上(m×n)以下の整数)のメモリセルがそれぞれ有する第1のソース電極の全てに電気的に接続されている。
【0019】
また、本発明の別の一態様の半導体装置は、m本(mは2以上の整数)の信号線と、m本のワード線と、n本(nは2以上の整数)のビット線と、k本(kはn未満の自然数)のソース線と、マトリクス状に配置された(m×n)個のメモリセルと、ビット線と電気的に接続された第1の駆動回路と、ソース線と電気的に接続された第2の駆動回路と、信号線と電気的に接続された第3の駆動回路と、ワード線と電気的に接続された第4の駆動回路と、を有し、メモリセルの一は、第1のゲート電極、第1のソース電極、第1のドレイン電極、及び第1のチャネル形成領域を含む第1のトランジスタと、第2のゲート電極、第2のソース電極、第2のドレイン電極、及び第2のチャネル形成領域を含む第2のトランジスタと、容量素子と、を有し、第1のチャネル形成領域と第2のチャネル形成領域は、異なる半導体材料を含んで構成され、第2のソース電極と第2のドレイン電極の一方と、容量素子の電極の一方と、第1のゲート電極と、は電気的に接続され、ソース線の一と、第1のソース電極とは、電気的に接続され、ビット線の一と、第2のソース電極と第2のドレイン電極の他方と、第1のドレイン電極と、は電気的に接続され、ワード線の一と、容量素子の電極の他方と、は電気的に接続され、信号線の一と、第2のゲート電極と、は電気的に接続され、ソース線の一は、メモリセルの一を含む(m×n/k)個のメモリセルがそれぞれ有する第1のソース電極の全てに電気的に接続されている。
【0020】
また、上記の半導体装置において、第1のトランジスタは、第1のチャネル形成領域を挟むように設けられた不純物領域を有するのが好ましい。
【0021】
また、上記の半導体装置において、第2のトランジスタの第2のチャネル形成領域は、酸化物半導体を含んで構成されるのが好ましい。
【0022】
なお、上記においては、酸化物半導体材料を用いてトランジスタを構成しているが、開示する発明はこれに限定されない。酸化物半導体材料と同等のオフ電流特性が実現できる材料、例えば、炭化シリコンをはじめとするワイドギャップ材料(より具体的には、例えば、エネルギーギャップEgが3eVより大きい半導体材料)などを適用しても良い。
【0023】
なお、本明細書において「上」や「下」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」または「直下」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁層上のゲート電極」の表現であれば、ゲート絶縁層とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。また、「上」「下」という用語は説明の便宜のために用いる表現に過ぎない。
【0024】
また、本明細書において「電極」や「配線」という用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」という用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0025】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」という用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0026】
なお、本明細書において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【0027】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【発明の効果】
【0028】
酸化物半導体を用いたトランジスタはオフ電流が極めて小さいため、これを用いることにより極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0029】
また、開示する発明に係る半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、浮遊ゲートへの電子の注入や、浮遊ゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため、ゲート絶縁層の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態の切り替えによって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。また、情報を消去するための動作が不要であるというメリットもある。
【0030】
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、酸化物半導体を用いたトランジスタと比較して、さらなる高速動作が可能であるため、これを、酸化物半導体を用いたトランジスタと組み合わせて用いることにより、半導体装置の動作(例えば、情報の読み出し動作)の高速性を十分に確保することができる。また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
【0031】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ(より広義には、十分な高速動作が可能なトランジスタ)と、酸化物半導体を用いたトランジスタ(より広義には、十分にオフ電流が小さいトランジスタ)とを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。
【0032】
さらに、開示する発明の一態様では、配線を共通化することにより、配線数を削減し、集積度を向上させた半導体装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】半導体装置の断面図および平面図。
【図2】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図3】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図4】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図5】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図6】半導体装置の断面図および平面図。
【図7】半導体装置の作製に用いる半導体基板の作製工程に係る断面図。
【図8】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図9】半導体装置の断面図および平面図。
【図10】半導体装置の作製工程に係る断面図。
【図11】半導体装置の回路図。
【図12】半導体装置の回路図。
【図13】半導体装置の平面図。
【図14】タイミングチャート図。
【図15】半導体装置の回路図。
【図16】タイミングチャート図。
【図17】半導体装置を用いた電子機器を説明するための図。
【図18】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す図。
【図19】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性評価用回路図。
【図20】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性評価用タイミングチャート。
【図21】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す図。
【図22】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す図。
【図23】酸化物半導体を用いたトランジスタの特性を示す図。
【図24】メモリウィンドウ幅の調査結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0035】
なお、図面において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0036】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0037】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の構成およびその作製方法について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0038】
〈半導体装置の断面構成および平面構成〉
図1は、半導体装置の構成の一例である。図1(A)には、半導体装置の断面を、図1(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図1(A)は、図1(B)のA1−A2およびB1−B2における断面に相当する。図1(A)および図1(B)に示される半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ160を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有するものである。ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料とは異なる材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、または、ガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いるのが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0039】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、開示する発明の技術的な本質は、情報を保持するために酸化物半導体のようなオフ電流を十分に低減することが可能な半導体材料をトランジスタ162に用いる点にあるから、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0040】
図1におけるトランジスタ160は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板100に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属化合物領域124と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁層108と、ゲート絶縁層108上に設けられたゲート電極110と、を有する。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてトランジスタと呼ぶ場合がある。また、この場合、トランジスタの接続関係を説明するために、ソース領域やドレイン領域を含めてソース電極やドレイン電極と表現することがある。つまり、本明細書において、ソース電極との記載には、ソース領域が含まれうる。また、ドレイン電極との記載には、ドレイン領域が含まれうる。
【0041】
トランジスタ160の金属化合物領域124の一部には、電極126が接続されている。ここで、電極126は、トランジスタ160のソース電極やドレイン電極として機能する。また、基板100上にはトランジスタ160を囲むように素子分離絶縁層106が設けられており、トランジスタ160上に絶縁層128および絶縁層130が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図1に示すようにトランジスタ160がサイドウォール絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方、トランジスタ160の特性を重視する場合には、ゲート電極110の側面にサイドウォール絶縁層を設け、そのサイドウォール絶縁層と重畳する領域に形成された不純物濃度が異なる領域を含めて不純物領域120を設けても良い。
【0042】
図1におけるトランジスタ162は、絶縁層130上に設けられたソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電極142bと、ソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電極142bと電気的に接続されている酸化物半導体層144と、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142b、酸化物半導体層144を覆うゲート絶縁層146と、ゲート絶縁層146上に酸化物半導体層144と重畳するように設けられたゲート電極148aと、ソース電極またはドレイン電極142aと酸化物半導体層144との間の、ゲート電極148aと重畳する領域に設けられた絶縁層143aと、ソース電極またはドレイン電極142bと酸化物半導体層144との間の、ゲート電極148aと重畳する領域に設けられた絶縁層143bと、を有する。なお、ソース電極またはドレイン電極と、ゲート電極との間の容量を低減するためには、絶縁層143aおよび絶縁層143bを設けることが望ましいが、絶縁層143aおよび絶縁層143bを設けない構成とすることも可能である。
【0043】
ここで、酸化物半導体層144は水素などの不純物が十分に除去されることにより、または、十分な酸素が供給されることにより、高純度化されたものであることが望ましい。具体的には、例えば、酸化物半導体層144の水素濃度は5×1019atoms/cm以下、望ましくは5×1018atoms/cm以下、より望ましくは5×1017atoms/cm以下とする。なお、上述の酸化物半導体層144中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で測定されるものである。このように、酸化物半導体層144中の水素濃度が十分に低減されて酸化物半導体層144が高純度化され、十分な酸素の供給により酸素欠乏に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減された酸化物半導体層144では、キャリア濃度が1×1012/cm未満、望ましくは、1×1011/cm未満、より望ましくは1.45×1010/cm未満となる。例えば、室温(25℃)でのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は100zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、望ましくは10zA以下となる。このように、i型化(真性化)または実質的にi型化された酸化物半導体を用いることで、極めて優れたオフ電流特性のトランジスタ162を得ることができる。
【0044】
なお、図1のトランジスタ162では、微細化に起因して素子間に生じるリークを抑制するために、島状に加工された酸化物半導体層144を用いているが、島状に加工されていない構成を採用しても良い。酸化物半導体層を島状に加工しない場合には、加工の際のエッチングによる酸化物半導体層144の汚染を防止できる。
【0045】
図1における容量素子164は、ソース電極またはドレイン電極142a、酸化物半導体層144、ゲート絶縁層146、および電極148bで構成される。すなわち、ソース電極またはドレイン電極142aは、容量素子164の一方の電極として機能し、電極148bは、容量素子164の他方の電極として機能することになる。
【0046】
なお、図1の容量素子164では、酸化物半導体層144とゲート絶縁層146を積層させることにより、ソース電極またはドレイン電極142aと、電極148bとの間の絶縁性を十分に確保することができる。もちろん、十分な容量を確保するために、酸化物半導体層144を有しない構成の容量素子164を採用しても良い。また、絶縁層143aと同様に形成される絶縁層を有する構成の容量素子164を採用しても良い。さらに、容量が不要の場合は、容量素子164を設けない構成とすることも可能である。
【0047】
なお、トランジスタ162および容量素子164において、ソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電極142bの端部は、テーパー形状であることが好ましい。ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bの端部をテーパー形状とすることにより、酸化物半導体層144の被覆性が向上し、段切れを防止することができるためである。ここで、テーパー角は、例えば、30°以上60°以下とする。なお、テーパー角とは、テーパー形状を有する層(例えば、ソース電極またはドレイン電極142a)を、その断面(基板の表面と直交する面)に垂直な方向から観察した際に、当該層の側面と底面がなす傾斜角を示す。
【0048】
本実施の形態では、トランジスタ162および容量素子164が、トランジスタ160と重畳するように設けられている。このような、平面レイアウトを採用することにより、高集積化が可能である。例えば、最小加工寸法をFとして、メモリセルの占める面積を15F〜25Fとすることが可能である。
【0049】
トランジスタ162および容量素子164の上には、絶縁層150が設けられており、絶縁層150上には絶縁層152が設けられている。そして、ゲート絶縁層146、絶縁層150、絶縁層152などに形成された開口には、電極154が設けられ、絶縁層152上には電極154と接続する配線156が形成される。なお、図1では、電極126および電極154を用いて、金属化合物領域124、ソース電極またはドレイン電極142b、および配線156を接続しているが、開示する発明はこれに限定されない。例えば、ソース電極またはドレイン電極142bを直接、金属化合物領域124に接触させても良い。または、配線156を直接、ソース電極またはドレイン電極142bに接触させても良い。
【0050】
なお、図1において、金属化合物領域124とソース電極またはドレイン電極142bを接続する電極126と、ソース電極またはドレイン電極142bと配線156を接続する電極154とは重畳して配置されている。つまり、トランジスタ160のソース電極やドレイン電極として機能する電極126と、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極142bと、が接する領域は、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極142bと、メモリセルの一と他のメモリセルとを接続する配線156と、が接する領域と重なっている。このようなレイアウトを採用することで、高集積化を図ることができる。
【0051】
〈半導体装置の作製方法〉
次に、上記半導体装置の作製方法の一例について説明する。以下では、はじめに下部のトランジスタ160の作製方法について図2および図3を参照して説明し、その後、上部のトランジスタ162および容量素子164の作製方法について図4および図5を参照して説明する。
【0052】
〈下部のトランジスタの作製方法〉
まず、半導体材料を含む基板100を用意する(図2(A)参照)。半導体材料を含む基板100としては、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができる。ここでは、半導体材料を含む基板100として、単結晶シリコン基板を用いる場合の一例について示すものとする。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン層が設けられた構成の基板をいうが、本明細書においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体層が設けられた構成の基板も含むものとする。つまり、「SOI基板」が有する半導体層は、シリコン層に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁層を介して半導体層が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0053】
半導体材料を含む基板100として、特に、シリコンなどの単結晶半導体基板を用いる場合には、半導体装置の読み出し動作を高速化することができるため好適である。
【0054】
基板100上には、素子分離絶縁層を形成するためのマスクとなる保護層102を形成する(図2(A)参照)。保護層102としては、例えば、酸化シリコンや窒化シリコン、酸窒化シリコンなどを材料とする絶縁層を用いることができる。なお、この工程の前後において、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純物元素やp型の導電性を付与する不純物元素を基板100に添加してもよい。半導体がシリコンの場合、n型の導電性を付与する不純物としては、例えば、リンやヒ素などを用いることができる。また、p型の導電性を付与する不純物としては、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどを用いることができる。
【0055】
次に、上記の保護層102をマスクとしてエッチングを行い、保護層102に覆われていない領域(露出している領域)の、基板100の一部を除去する。これにより他の半導体領域と分離された半導体領域104が形成される(図2(B)参照)。当該エッチングには、ドライエッチングを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0056】
次に、半導体領域104を覆うように絶縁層を形成し、半導体領域104に重畳する領域の絶縁層を選択的に除去することで、素子分離絶縁層106を形成する(図2(C)参照)。当該絶縁層は、酸化シリコンや窒化シリコン、酸窒化シリコンなどを用いて形成される。絶縁層の除去方法としては、CMP(化学的機械的研磨)などの研磨処理やエッチング処理などがあるが、そのいずれを用いても良い。なお、半導体領域104の形成後、または、素子分離絶縁層106の形成後には、上記保護層102を除去する。
【0057】
なお、素子分離絶縁層106の形成方法として、絶縁層を選択的に除去する方法の他、酸素を打ち込むことにより絶縁性の領域を形成する方法などを用いることもできる。
【0058】
次に、半導体領域104の表面に絶縁層を形成し、当該絶縁層上に導電材料を含む層を形成する。
【0059】
絶縁層は、後のゲート絶縁層となるものであり、例えば、半導体領域104表面の熱処理(熱酸化処理や熱窒化処理など)によって形成することができる。熱処理に代えて、高密度プラズマ処理を適用しても良い。高密度プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガス、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などのうちいずれかの混合ガスを用いて行うことができる。もちろん、CVD法やスパッタリング法等を用いて絶縁層を形成しても良い。当該絶縁層は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))等を含む単層構造または積層構造とすることが望ましい。また、絶縁層の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。
【0060】
導電材料を含む層は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。なお、本実施の形態では、導電材料を含む層を、金属材料を用いて形成する場合の一例について示すものとする。
【0061】
その後、絶縁層および導電材料を含む層を選択的にエッチングして、ゲート絶縁層108、ゲート電極110を形成する(図2(C)参照)。
【0062】
次に、半導体領域104にリン(P)やヒ素(As)などを添加して、チャネル形成領域116および不純物領域120を形成する(図2(D)参照)。なお、ここでは、n型トランジスタを形成するためにリンやヒ素を添加しているが、p型トランジスタを形成する場合には、ホウ素(B)やアルミニウム(Al)などの不純物元素を添加すればよい。ここで、添加する不純物の濃度は適宜設定することができるが、半導体素子が高度に微細化される場合には、添加する不純物の濃度を高くすることが望ましい。
【0063】
なお、ゲート電極110の周囲にサイドウォール絶縁層を形成して、不純物元素が異なる濃度で添加された不純物領域を形成しても良い。
【0064】
次に、ゲート電極110、不純物領域120等を覆うように金属層122を形成する(図3(A)参照)。当該金属層122は、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いて形成することができる。金属層122は、半導体領域104を構成する半導体材料と反応することによって低抵抗な金属化合物となる金属材料を用いて形成することが望ましい。このような金属材料としては、例えば、チタン、タンタル、タングステン、ニッケル、コバルト、白金等がある。
【0065】
次に、熱処理を施して、上記金属層122と半導体領域104を構成する半導体材料とを反応させる。これにより、不純物領域120に接する金属化合物領域124が形成される(図3(A)参照)。なお、ゲート電極110として多結晶シリコンなどを用いる場合には、ゲート電極110の金属層122と接触する部分にも、金属化合物領域が形成されることになる。
【0066】
上記熱処理としては、例えば、フラッシュランプの照射による熱処理を用いることができる。もちろん、その他の熱処理方法を用いても良いが、金属化合物の形成に係る化学反応の制御性を向上させるためには、ごく短時間の熱処理を実現できる方法を用いることが望ましい。なお、上記の金属化合物領域は、金属材料と半導体材料との反応により形成されるものであり、十分に導電性が高められた領域である。当該金属化合物領域を形成することで、電気抵抗を十分に低減し、素子特性を向上させることができる。なお、金属化合物領域124を形成した後には、金属層122は除去する。
【0067】
次に、金属化合物領域124の一部と接する領域に、電極126を形成する(図3(B)参照)。電極126は、例えば、導電材料を含む層を形成した後に、当該導電材料を含む層を選択的にエッチングすることで形成される。導電材料を含む層は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。
【0068】
なお、電極126は、絶縁層128および絶縁層130を形成した後に、絶縁層128および絶縁層130に金属化合物領域124にまで達する開口を形成し、当該開口を埋め込むように形成することも可能である。
【0069】
この場合、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CVD法により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、被形成面の酸化膜(自然酸化膜など)を還元し、下部電極など(ここでは金属化合物領域124)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、その後に形成される窒化チタン膜は、導電性材料の拡散を抑制するバリア機能を備える。また、チタン膜や窒化チタン膜などによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0070】
次に、上述の工程により形成された各構成を覆うように、絶縁層128、絶縁層130を形成する(図3(C)参照)。絶縁層128や絶縁層130は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。特に、絶縁層128や絶縁層130に誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁層128や絶縁層130には、これらの材料を用いた多孔性の絶縁層を適用しても良い。多孔性の絶縁層では、密度の高い絶縁層と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する容量をさらに低減することが可能である。また、絶縁層128や絶縁層130は、ポリイミド、アクリル等の有機絶縁材料を用いて形成することも可能である。なお、ここでは、絶縁層128と絶縁層130の積層構造としているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。1層としても良いし、2層以上の積層構造としても良い。
【0071】
以上により、半導体材料を含む基板100を用いたトランジスタ160が形成される(図3(C)参照)。このようなトランジスタ160は、高速動作が可能であるという特徴を有する。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。
【0072】
その後、トランジスタ162および容量素子164の形成前の処理として、絶縁層128や絶縁層130にCMP処理を施して、ゲート電極110および電極126の上面を露出させる(図3(D)参照)。ゲート電極110および電極126の上面を露出させる処理としては、CMP処理の他にエッチング処理などを適用することも可能である(エッチング処理などはCMP処理と組み合わせても良い)。なお、トランジスタ162の特性を向上させるために、絶縁層128や絶縁層130の表面は可能な限り平坦にしておくことが望ましい。
【0073】
なお、上記の各工程の前後には、さらに電極や配線、半導体層、絶縁層などを形成する工程を含んでいても良い。例えば、配線の構造として、絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線構造を採用して、高度に集積化した半導体装置を実現することも可能である。
【0074】
〈上部のトランジスタの作製方法〉
次に、ゲート電極110、電極126、絶縁層128、絶縁層130などの上に導電層を形成し、該導電層を選択的にエッチングして、ソース電極またはドレイン電極142aを形成し、ソース電極またはドレイン電極142bは電極126と電気的に接するように形成する(図4(A)参照)。
【0075】
導電層は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。また、導電層の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0076】
導電層は、単層構造であっても良いし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構造、窒化チタン膜上にチタン膜が積層された2層構造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。なお、導電層を、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造とする場合には、テーパー形状を有するソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電極142bへの加工が容易であるというメリットがある。
【0077】
また、導電層は、導電性の金属酸化物を用いて形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する場合がある)、酸化インジウム酸化亜鉛合金(In―ZnO)、または、これらの金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含有させたものを用いることができる。
【0078】
導電層のエッチングは、形成されるソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電極142bの端部が、テーパー形状となるように行うことが好ましい。ここで、テーパー角は、例えば、30°以上60°以下であることが好ましい。ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bの端部をテーパー形状となるようにエッチングすることにより、後に形成されるゲート絶縁層146の被覆性を向上し、段切れを防止することができる。
【0079】
上部のトランジスタのチャネル長(L)は、ソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電極142bの下端部の間隔によって決定される。なお、チャネル長(L)が25nm未満のトランジスタを形成する場合に用いるマスク形成の露光を行う際には、数nm〜数10nmと波長の短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いるのが望ましい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長(L)を、10nm以上1000nm(1μm)以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高めることが可能である。また、微細化によって、半導体装置の消費電力を低減することも可能である。
【0080】
なお、絶縁層128や絶縁層130の上には、下地として機能する絶縁層を設けても良い。当該絶縁層は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。
【0081】
次に、ソース電極またはドレイン電極142aの上に絶縁層143aを、ソース電極またはドレイン電極142bの上に絶縁層143bを、それぞれ形成する(図4(B)参照)。絶縁層143aおよび絶縁層143bは、ソース電極またはドレイン電極142aや、ソース電極またはドレイン電極142bを覆う絶縁層を形成した後、当該絶縁層を選択的にエッチングすることにより形成できる。また、絶縁層143aおよび絶縁層143bは、後に形成されるゲート電極の一部と重畳するように形成する。このような絶縁層を設けることにより、ゲート電極と、ソース電極またはドレイン電極との間の容量を低減することが可能である。
【0082】
絶縁層143aや絶縁層143bは、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。特に、絶縁層143aや絶縁層143bに誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、ゲート電極と、ソース電極またはドレイン電極との間の容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁層143aや絶縁層143bには、これらの材料を用いた多孔性の絶縁層を適用しても良い。多孔性の絶縁層では、密度の高い絶縁層と比較して誘電率が低下するため、ゲート電極と、ソース電極またはドレイン電極との間の容量をさらに低減することが可能である。
【0083】
なお、ゲート電極と、ソース電極またはドレイン電極との間の容量を低減させるという点では、絶縁層143aおよび絶縁層143bを形成するのが好適であるが、当該絶縁層を設けない構成とすることも可能である。
【0084】
次に、ソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電極142bを覆うように酸化物半導体層を形成した後、当該酸化物半導体層を選択的にエッチングして酸化物半導体層144を形成する(図4(C)参照)。
【0085】
酸化物半導体層144は、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系、In−Sn−Zn−O系、In−Al−Zn−O系、Sn−Ga−Zn−O系、Al−Ga−Zn−O系、Sn−Al−Zn−O系や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系、Sn−Zn−O系、Al−Zn−O系、Zn−Mg−O系、Sn−Mg−O系、In−Mg−O系や、単元系金属酸化物であるIn−O系、Sn−O系、Zn−O系などを用いて形成することができる。
【0086】
中でも、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料は、無電界時の抵抗が十分に高くオフ電流を十分に小さくすることが可能であり、また、電界効果移動度も高いため、半導体装置に用いる半導体材料としては好適である。
【0087】
In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体材料の代表例としては、InGaO(ZnO)(m>0)で表記されるものがある。また、Gaに代えてMを用い、InMO(ZnO)(m>0)のように表記される酸化物半導体材料がある。ここで、Mは、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)などから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。例えば、Mとしては、Ga、GaおよびAl、GaおよびFe、GaおよびNi、GaおよびMn、GaおよびCoなどを適用することができる。なお、上述の組成は、結晶構造から導き出されるものであり、あくまでも一例に過ぎないことを付記する。
【0088】
酸化物半導体層をスパッタ法で作製するためのターゲットとしては、In:Ga:Zn=1:x:y(xは0以上、yは0.5以上5以下)の組成比で表されるものを用いるのが好適である。例えば、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol比](x=1、y=1)の組成比を有するターゲットなどを用いることができる。また、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol比](x=1、y=0.5)の組成比を有するターゲットや、In:Ga:ZnO=1:1:4[mol比](x=1、y=2)の組成比を有するターゲットや、In:Ga:ZnO=1:0:2[mol比](x=0、y=1)の組成比を有するターゲットを用いることもできる。
【0089】
本実施の形態では、酸化物半導体層を、In−Ga−Zn−O系の酸化物半導体成膜用ターゲットを用いるスパッタ法により形成することとする。
【0090】
酸化物半導体成膜用ターゲット中の金属酸化物の相対密度は80%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99.9%以上である。相対密度の高い酸化物半導体成膜用ターゲットを用いることにより、緻密な構造の酸化物半導体層を形成することが可能である。
【0091】
酸化物半導体層の形成雰囲気は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、または、希ガス(代表的にはアルゴン)と酸素との混合雰囲気とするのが好適である。具体的には、例えば、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物の濃度が1ppm以下(望ましくは10ppb以下)にまで除去された高純度ガス雰囲気を用いるのが好適である。
【0092】
酸化物半導体層の形成の際には、例えば、減圧状態に保持された処理室内に被処理物を保持し、被処理物の温度が100℃以上550℃未満、好ましくは200℃以上400℃以下となるように被処理物を熱する。または、酸化物半導体層の形成の際の被処理物の温度は、室温(25℃±10℃)としてもよい。そして、処理室内の水分を除去しつつ、水素や水などが除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体層を形成する。被処理物を熱しながら酸化物半導体層を形成することにより、酸化物半導体層に含まれる不純物を低減することができる。また、スパッタによる酸化物半導体層の損傷を軽減することができる。処理室内の水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプなどを用いることができる。また、ターボポンプにコールドトラップを加えたものを用いてもよい。クライオポンプなどを用いて排気することで、処理室から水素や水などを除去することができるため、酸化物半導体層中の不純物濃度を低減できる。
【0093】
酸化物半導体層の形成条件としては、例えば、被処理物とターゲットとの間との距離が170mm、圧力が0.4Pa、直流(DC)電力が0.5kW、雰囲気が酸素(酸素100%)雰囲気、またはアルゴン(アルゴン100%)雰囲気、または酸素とアルゴンの混合雰囲気、といった条件を適用することができる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パーティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も小さくなるため好ましい。酸化物半導体層の厚さは、1nm以上50nm以下、好ましくは1nm以上30nm以下、より好ましくは1nm以上10nm以下とする。このような厚さの酸化物半導体層を用いることで、微細化に伴う短チャネル効果を抑制することが可能である。ただし、適用する酸化物半導体材料や、半導体装置の用途などにより適切な厚さは異なるから、その厚さは、用いる材料や用途などに応じて選択することもできる。
【0094】
なお、酸化物半導体層をスパッタ法により形成する前には、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、形成表面(例えば絶縁層130の表面)の付着物を除去するのが好適である。ここで、逆スパッタとは、通常のスパッタにおいては、スパッタターゲットにイオンを衝突させるところを、逆に、基板の処理表面にイオンを衝突させることによってその表面を改質する方法のことをいう。処理表面にイオンを衝突させる方法としては、アルゴン雰囲気下で処理表面側に高周波電圧を印加して、被処理物付近にプラズマを生成する方法などがある。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気、酸素雰囲気などによる雰囲気を適用してもよい。
【0095】
その後、酸化物半導体層に対して、熱処理(第1の熱処理)を行うことが望ましい。この第1の熱処理によって酸化物半導体層中の、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去し、酸化物半導体層の構造を整え、エネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができる。第1の熱処理の温度は、例えば、300℃以上550℃未満、または400℃以上500℃以下とする。
【0096】
熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に被処理物を導入し、窒素雰囲気下、450℃、1時間の条件で行うことができる。この間、酸化物半導体層は大気に触れないようにし、水や水素の混入が生じないようにする。
【0097】
熱処理装置は、電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0098】
例えば、第1の熱処理として、熱せられた不活性ガス雰囲気中に被処理物を投入し、数分間熱した後、当該不活性ガス雰囲気から被処理物を取り出すGRTA処理を行ってもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、被処理物の耐熱温度を超える温度条件であっても適用が可能となる。なお、処理中に、不活性ガスを、酸素を含むガスに切り替えても良い。酸素を含む雰囲気において第1の熱処理を行うことで、酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができるためである。
【0099】
なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0100】
いずれにしても、第1の熱処理によって不純物を低減し、i型(真性半導体)またはi型に限りなく近い酸化物半導体層を形成することで、極めて優れた特性のトランジスタを実現することができる。
【0101】
ところで、上述の熱処理(第1の熱処理)には水素や水などを除去する効果があるから、当該熱処理を、脱水化処理や、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。当該脱水化処理や、脱水素化処理は、酸化物半導体層の形成後やゲート絶縁層の形成後、ゲート電極の形成後、などのタイミングにおいて行うことも可能である。また、このような脱水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
【0102】
酸化物半導体層のエッチングは、上記熱処理の前、または上記熱処理の後のいずれにおいて行っても良い。また、素子の微細化という観点からはドライエッチングを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。なお、素子におけるリークなどが問題とならない場合には、酸化物半導体層を島状に加工しないで用いても良い。
【0103】
次に、酸化物半導体層144に接するゲート絶縁層146を形成し、その後、ゲート絶縁層146上において酸化物半導体層144と重畳する領域にゲート電極148aを形成し、ソース電極またはドレイン電極142aと重畳する領域に電極148bを形成する(図4(D)参照)。
【0104】
ゲート絶縁層146は、CVD法やスパッタ法等を用いて形成することができる。また、ゲート絶縁層146は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、などを含むように形成するのが好適である。ゲート絶縁層146は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。また、その厚さは特に限定されないが、半導体装置を微細化する場合には、トランジスタの動作を確保するために薄くするのが望ましい。例えば、酸化シリコンを用いる場合には、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。
【0105】
上述のように、ゲート絶縁層を薄くすると、トンネル効果などに起因するゲートリークが問題となる。ゲートリークの問題を解消するには、ゲート絶縁層146に、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、などの高誘電率(high−k)材料を用いると良い。high−k材料をゲート絶縁層146に用いることで、電気的特性を確保しつつ、ゲートリークを抑制するために膜厚を大きくすることが可能になる。なお、high−k材料を含む膜と、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウムなどのいずれかを含む膜との積層構造としてもよい。
【0106】
ゲート絶縁層146の形成後には、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で第2の熱処理を行うのが望ましい。熱処理の温度は、200℃以上450℃以下、望ましくは250℃以上350℃以下である。例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の熱処理を行えばよい。第2の熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。また、ゲート絶縁層146が酸素を含む場合、酸化物半導体層144に酸素を供給し、該酸化物半導体層144の酸素欠損を補填して、i型(真性半導体)またはi型に限りなく近い酸化物半導体層を形成することもできる。
【0107】
なお、本実施の形態では、ゲート絶縁層146の形成後に第2の熱処理を行っているが、第2の熱処理のタイミングはこれに限定されない。例えば、ゲート電極の形成後に第2の熱処理を行っても良い。また、第1の熱処理に続けて第2の熱処理を行っても良いし、第1の熱処理に第2の熱処理を兼ねさせても良いし、第2の熱処理に第1の熱処理を兼ねさせても良い。
【0108】
上述のように、第1の熱処理と第2の熱処理の少なくとも一方を適用することで、酸化物半導体層144を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することができる。
【0109】
ゲート電極148aおよび電極148bは、ゲート絶縁層146上に導電層を形成した後に、当該導電層を選択的にエッチングすることによって形成することができる。ゲート電極148aおよび電極148bとなる導電層は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。詳細は、ソース電極またはドレイン電極142aなどの場合と同様であり、これらの記載を参酌できる。
【0110】
次に、ゲート絶縁層146、ゲート電極148a、および電極148b上に、絶縁層150および絶縁層152を形成する(図5(A)参照)。絶縁層150および絶縁層152は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0111】
なお、絶縁層150や絶縁層152には、誘電率の低い材料や、誘電率の低い構造(多孔性の構造など)を用いることが望ましい。絶縁層150や絶縁層152の誘電率を低くすることにより、配線や電極などの間に生じる容量を低減し、動作の高速化を図ることができるためである。
【0112】
なお、本実施の形態では、絶縁層150と絶縁層152の積層構造としているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。1層としても良いし、2層以上の積層構造としても良い。また、絶縁層を設けない構成とすることも可能である。
【0113】
なお、上記絶縁層152は、その表面が平坦になるように形成することが望ましい。表面が平坦になるように絶縁層152を形成することで、半導体装置を微細化した場合などにおいても、絶縁層152上に、電極や配線などを好適に形成することができるためである。なお、絶縁層152の平坦化は、CMP(化学的機械的研磨)などの方法を用いて行うことができる。
【0114】
次に、ゲート絶縁層146、絶縁層150、絶縁層152に、ソース電極またはドレイン電極142bにまで達する開口を形成する(図5(B)参照)。当該開口の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。
【0115】
ここで、上記の開口は、電極126と重畳する領域に形成することが望ましい。このような領域に開口を形成することで、電極のコンタクト領域に起因する素子面積の増大を抑制することができる。つまり、半導体装置の集積度を高めることができる。
【0116】
その後、上記開口に電極154を形成し、絶縁層152上に電極154に接する配線156を形成する(図5(C)参照)。
【0117】
電極154は、例えば、開口を含む領域にPVD法やCVD法などを用いて導電層を形成した後、エッチング処理やCMPといった方法を用いて、上記導電層の一部を除去することにより形成することができる。
【0118】
より具体的には、例えば、開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く形成し、CVD法により窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、被形成面の酸化膜(自然酸化膜など)を還元し、下部電極など(ここではソース電極またはドレイン電極142b)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、その後に形成される窒化チタン膜は、導電性材料の拡散を抑制するバリア機能を備える。また、チタン膜や窒化チタン膜などによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0119】
なお、上記導電層の一部を除去して電極154を形成する際には、その表面が平坦になるように加工することが望ましい。例えば、開口を含む領域にチタン膜や窒化チタン膜を薄く形成した後に、開口に埋め込むようにタングステン膜を形成する場合には、その後のCMP処理によって、不要なタングステン膜、チタン膜、窒化チタン膜などを除去すると共に、その表面の平坦性を向上させることができる。このように、電極154を含む表面を平坦化することにより、後の工程において、良好な電極、配線、絶縁層、半導体層などを形成することが可能となる。
【0120】
配線156は、スパッタ法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて導電層を形成した後、当該導電層をパターニングすることによって形成される。また、導電層の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。詳細は、ソース電極またはドレイン電極142aなどと同様である。
【0121】
以上により、高純度化された酸化物半導体層144を用いたトランジスタ162、および容量素子164が完成する(図5(C)参照)。
【0122】
本実施の形態において示すトランジスタ162では、酸化物半導体層144が高純度化されているため、その水素濃度は、5×1019atoms/cm以下、望ましくは5×1018atoms/cm以下、より望ましくは5×1017atoms/cm以下である。また、酸化物半導体層144のキャリア密度は、一般的なシリコンウェハ(リンやボロンなどの不純物元素が微量に添加されたシリコンウェハ)におけるキャリア密度(1×1014/cm程度)と比較して、十分に小さい値(例えば、1×1012/cm未満、より好ましくは、1.45×1010/cm未満)をとる。そして、これにより、オフ電流が十分に小さくなる。例えば、トランジスタ162の室温(25℃)でのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は100zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、望ましくは10zA以下となる。
【0123】
このように高純度化され、真性化された酸化物半導体層144を用いることで、トランジスタのオフ電流を十分に低減することができる。そして、このようなトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能な半導体装置が得られる。
【0124】
また、電極126と電極154とを重畳するように形成することで、電極のコンタクト領域に起因する素子面積の増大を抑制し、より一層の高集積化が実現される。また、本実施の形態において示す半導体装置では、配線を共通化することも可能であり、集積度が十分に高められた半導体装置を実現することができる。
【0125】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0126】
(実施の形態2)
本実施の形態では、開示する発明の別の一態様に係る半導体装置の構成およびその作製方法について、図6乃至図8を参照して説明する。
【0127】
〈半導体装置の断面構成および平面構成〉
図6は、本実施の形態にかかる半導体装置の構成の一例である。図6(A)には、半導体装置の断面を、図6(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図6(A)は、図6(B)のC1−C2およびD1−D2における断面に相当する。図6(A)および図6(B)に示される半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ560を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ562を有するものである。ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料とは異なる材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の材料(シリコンなど)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0128】
なお、上記トランジスタは、いずれもnチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、pチャネル型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。また、開示する発明の技術的な本質は、情報を保持するために酸化物半導体のようなオフ電流を十分に低減することが可能な材料をトランジスタ562に用いる点にあるから、半導体装置に用いられる材料や半導体装置の構造など、半導体装置の具体的な構成をここで示すものに限定する必要はない。
【0129】
図6におけるトランジスタ560は、ベース基板500上の半導体層中に設けられたチャネル形成領域526と、チャネル形成領域526を挟むように設けられた不純物領域528と、チャネル形成領域526上に設けられたゲート絶縁層522aと、ゲート絶縁層522a上に設けられたゲート電極524aと、を有する。つまり、図6におけるトランジスタ560と、図1におけるトランジスタ160との相違の一は、トランジスタのチャネル形成領域がベース基板500上の半導体層中に形成されるか否かにある。半導体基板を用いるか、SOI基板を用いるか、の相違ということもできる。なお、図において、明示的にはソース電極やドレイン電極を有しない場合があるが、便宜上、このような状態を含めてトランジスタと呼ぶ場合がある。
【0130】
トランジスタの不純物領域528の一部には、電極530が接続されている。ここで、電極530は、トランジスタ560のソース電極やドレイン電極として機能する。また、トランジスタ560を覆うように絶縁層532および絶縁層534が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図6に示すようにトランジスタ560がサイドウォール絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方、トランジスタ560の特性を重視する場合には、ゲート電極524aの側面にサイドウォール絶縁層を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域528を設けても良い。
【0131】
図6におけるトランジスタ562は、図1におけるトランジスタ162と同様である。すなわち、図6におけるトランジスタ562は、絶縁層534上に設けられたソース電極またはドレイン電極542a、およびソース電極またはドレイン電極542bと、ソース電極またはドレイン電極542a、およびソース電極またはドレイン電極542bと電気的に接続されている酸化物半導体層544と、ソース電極またはドレイン電極542a、ソース電極またはドレイン電極542b、酸化物半導体層544を覆うゲート絶縁層546と、ゲート絶縁層546上に酸化物半導体層544と重畳するように設けられたゲート電極548aと、ソース電極またはドレイン電極542aと酸化物半導体層544との間の、ゲート電極548aと重畳する領域に設けられた絶縁層543aと、ソース電極またはドレイン電極542bと酸化物半導体層544との間の、ゲート電極548aと重畳する領域に設けられた絶縁層543bと、を有する。なお、ソース電極またはドレイン電極と、ゲート電極との間の容量を低減するためには、絶縁層543aおよび絶縁層543bを設けることが望ましいが、絶縁層543aおよび絶縁層543bを設けない構成とすることも可能である。その他の詳細については、先の実施の形態を参酌できる。
【0132】
また、図6における容量素子564は、図1における容量素子164と同様である。すなわち、図6における容量素子564は、ソース電極またはドレイン電極542a、酸化物半導体層544、ゲート絶縁層546、および電極548b、で構成される。すなわち、ソース電極またはドレイン電極542aは、容量素子564の一方の電極として機能し、電極548bは、容量素子564の他方の電極として機能することになる。その他の詳細については、先の実施の形態を参酌できる。
【0133】
トランジスタ562および容量素子564の上に絶縁層550が設けられ、絶縁層550上には絶縁層552が設けられ、ゲート絶縁層546、絶縁層550、絶縁層552などに形成された開口に電極554が設けられ、絶縁層552上には電極554と接続する配線556が設けられている点についても、図1と同様である。
【0134】
〈SOI基板の作製方法〉
次に、上記半導体装置の作製に用いられるSOI基板の作製方法の一例について、図7を参照して説明する。
【0135】
まず、ベース基板500を準備する(図7(A)参照)。ベース基板500としては、絶縁体でなる基板を用いることができる。具体的には、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われる各種ガラス基板、石英基板、セラミック基板、サファイア基板が挙げられる。また、窒化シリコンと酸化アルミニウムを主成分とした熱膨張係数がシリコンに近いセラミック基板を用いてもよい。
【0136】
また、ベース基板500として単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板などの半導体基板を用いても良い。ベース基板500として半導体基板を用いる場合には、ガラス基板などを用いる場合と比較して熱処理の温度条件が緩和するため、良質なSOI基板を得ることが容易になる。ここで、半導体基板としては、太陽電池級シリコン(SOG−Si:Solar Grade Silicon)基板などを用いても良い。また、多結晶半導体基板を用いても良い。太陽電池級シリコンや、多結晶半導体基板などを用いる場合には、単結晶シリコン基板などを用いる場合と比較して、製造コストを抑制することができる。
【0137】
本実施の形態では、ベース基板500としてガラス基板を用いる場合について説明する。ベース基板500として大面積化が可能で安価なガラス基板を用いることにより、低コスト化を図ることができる。
【0138】
上記ベース基板500に関しては、その表面をあらかじめ洗浄しておくことが好ましい。具体的には、ベース基板500に対して、塩酸過酸化水素水混合溶液(HPM)、硫酸過酸化水素水混合溶液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合溶液(APM)、希フッ酸(DHF)、FPM(フッ酸、過酸化水素水、純水の混合液)等を用いて超音波洗浄を行う。このような洗浄処理を行うことによって、ベース基板500表面の平坦性向上や、ベース基板500表面に残存する研磨粒子の除去などが実現される。
【0139】
次に、ベース基板500の表面に、窒素含有層502(例えば、窒化シリコン膜(SiN)や窒化酸化シリコン膜(SiN)(x>y)等の窒素を含有する絶縁膜を含む層)を形成する(図7(B)参照)。窒素含有層502は、CVD法、スパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0140】
本実施の形態において形成される窒素含有層502は、後に単結晶半導体層を貼り合わせるための層(接合層)となる。また、窒素含有層502は、ベース基板に含まれるナトリウム(Na)等の不純物が単結晶半導体層に拡散することを防ぐためのバリア層としても機能する。
【0141】
上述のように、本実施の形態では窒素含有層502を接合層として用いるため、その表面が所定の平坦性を有するように窒素含有層502を形成することが好ましい。具体的には、表面の平均面粗さ(Ra、算術平均粗さともいう)が0.5nm以下、自乗平均粗さ(Rms)が0.60nm以下、より好ましくは、平均面粗さが0.35nm以下、自乗平均粗さが0.45nm以下となるように窒素含有層502を形成する。なお、上述の平均面粗さや自乗平均粗さには、例えば、10μm×10μmの領域において測定した値を用いることができる。膜厚は、10nm以上200nm以下、好ましくは50nm以上100nm以下の範囲とする。このように、表面の平坦性を高めておくことで、単結晶半導体層の接合不良を防止することができる。
【0142】
次に、ボンド基板を準備する。ここでは、ボンド基板として単結晶半導体基板510を用いる(図7(C)参照)。なお、ここでは、ボンド基板として単結晶のものを用いるが、ボンド基板の結晶性を単結晶に限る必要はない。
【0143】
単結晶半導体基板510としては、例えば、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。また、ガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体基板を用いることもできる。市販のシリコン基板としては、直径5インチ(約125mm)、直径6インチ(約150mm)、直径8インチ(約200mm)、直径12インチ(約300mm)、直径16インチ(約400mm)サイズの円形のものが代表的である。なお、単結晶半導体基板510の形状は円形に限らず、例えば、矩形等に加工したものであっても良い。また、単結晶半導体基板510は、CZ(チョクラルスキー)法やFZ(フローティングゾーン)法を用いて作製することができる。
【0144】
単結晶半導体基板510の表面には酸化膜512を形成する(図7(D)参照)。なお、汚染物除去の観点から、酸化膜512の形成前に、塩酸過酸化水素水混合溶液(HPM)、硫酸過酸化水素水混合溶液(SPM)、アンモニア過酸化水素水混合溶液(APM)、希フッ酸(DHF)、FPM(フッ酸、過酸化水素水、純水の混合液)等を用いて単結晶半導体基板510の表面を洗浄しておくことが好ましい。希フッ酸とオゾン水を交互に吐出して洗浄してもよい。
【0145】
酸化膜512は、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を単層で、または積層させて形成することができる。上記酸化膜512の作製方法としては、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法などがある。また、CVD法を用いて酸化膜512を形成する場合、良好な貼り合わせを実現するためには、テトラエトキシシラン(略称;TEOS:化学式Si(OC)等の有機シランを用いて酸化シリコン膜を形成することが好ましい。
【0146】
本実施の形態では、単結晶半導体基板510に熱酸化処理を行うことにより酸化膜512(ここでは、SiO膜)を形成する。熱酸化処理は、酸化性雰囲気中にハロゲンを添加して行うことが好ましい。
【0147】
例えば、塩素(Cl)が添加された酸化性雰囲気中で単結晶半導体基板510に熱酸化処理を行うことにより、塩素酸化された酸化膜512を形成することができる。この場合、酸化膜512は、塩素原子を含有する膜となる。このような塩素酸化により、外因性の不純物である重金属(例えば、Fe、Cr、Ni、Mo等)を捕集して金属の塩化物を形成し、これを外方に除去して単結晶半導体基板510の汚染を低減させることができる。また、ベース基板500と貼り合わせた後に、ベース基板からのNa等の不純物を固定して、単結晶半導体基板510の汚染を防止できる。
【0148】
なお、酸化膜512に含有させるハロゲン原子は塩素原子に限られない。酸化膜512にはフッ素原子を含有させてもよい。単結晶半導体基板510表面をフッ素酸化する方法としては、HF溶液に浸漬させた後に酸化性雰囲気中で熱酸化処理を行う方法や、NFを酸化性雰囲気に添加して熱酸化処理を行う方法などがある。
【0149】
次に、イオンを電界で加速して単結晶半導体基板510に照射し、添加することで、単結晶半導体基板510の所定の深さに結晶構造が損傷した脆化領域514を形成する(図7(E)参照)。
【0150】
脆化領域514が形成される領域の深さは、イオンの運動エネルギー、質量と電荷、イオンの入射角などによって調節することができる。また、脆化領域514は、イオンの平均侵入深さとほぼ同じ深さの領域に形成される。このため、イオンを添加する深さで、単結晶半導体基板510から分離される単結晶半導体層の厚さを調節することができる。例えば、単結晶半導体層の厚さが、10nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下程度となるように平均侵入深さを調節すれば良い。
【0151】
当該イオンの照射処理は、イオンドーピング装置やイオン注入装置を用いて行うことができる。イオンドーピング装置の代表例としては、プロセスガスをプラズマ励起して生成された全てのイオン種を被処理体に照射する非質量分離型の装置がある。当該装置では、プラズマ中のイオン種を質量分離しないで被処理体に照射することになる。これに対して、イオン注入装置は質量分離型の装置である。イオン注入装置では、プラズマ中のイオン種を質量分離し、ある特定の質量のイオン種を被処理体に照射する。
【0152】
本実施の形態では、イオンドーピング装置を用いて、水素を単結晶半導体基板510に添加する例について説明する。ソースガスとしては水素を含むガスを用いる。照射するイオンについては、Hの比率を高くすると良い。具体的には、H、H、Hの総量に対してHの割合が50%以上(より好ましくは80%以上)となるようにする。Hの割合を高めることで、イオン照射の効率を向上させることができる。
【0153】
なお、添加するイオンは水素に限定されない。ヘリウムなどのイオンを添加しても良い。また、添加するイオンは一種類に限定されず、複数種類のイオンを添加しても良い。例えば、イオンドーピング装置を用いて水素とヘリウムとを同時に照射する場合には、異なる工程で照射する場合と比較して工程数を低減することができると共に、後の単結晶半導体層の表面荒れをおさえることが可能である。
【0154】
なお、イオンドーピング装置を用いて脆化領域514を形成する場合には、重金属も同時に添加されるおそれがあるが、ハロゲン原子を含有する酸化膜512を介してイオンの照射を行うことによって、これら重金属による単結晶半導体基板510の汚染を防ぐことができる。
【0155】
次に、ベース基板500と、単結晶半導体基板510とを対向させ、窒素含有層502の表面と酸化膜512とを密着させる。これにより、ベース基板500と、単結晶半導体基板510とが貼り合わされる(図7(F)参照)。
【0156】
貼り合わせの際には、ベース基板500または単結晶半導体基板510の一箇所に、0.001N/cm以上100N/cm以下、例えば、1N/cm以上20N/cm以下の圧力を加えることが望ましい。圧力を加えて、貼り合わせ面を接近、密着させると、密着させた部分において窒素含有層502と酸化膜512の接合が生じ、当該部分を始点として自発的な接合がほぼ全面におよぶ。この接合には、ファンデルワールス力や水素結合が作用しており、常温で行うことができる。
【0157】
なお、単結晶半導体基板510とベース基板500とを貼り合わせる前には、貼り合わせに係る表面につき、表面処理を行うことが好ましい。表面処理を行うことで、単結晶半導体基板510とベース基板500との界面での接合強度を向上させることができる。
【0158】
表面処理としては、ウェット処理、ドライ処理、またはウェット処理とドライ処理の組み合わせ、を用いることができる。また、異なるウェット処理どうしを組み合わせて用いても良いし、異なるドライ処理どうしを組み合わせて用いても良い。
【0159】
なお、貼り合わせの後には、接合強度を増加させるための熱処理を行ってもよい。この熱処理の温度は、脆化領域514における分離が生じない温度(例えば、室温以上400℃未満)とする。また、この温度範囲で加熱しながら、窒素含有層502と酸化膜512とを接合させてもよい。上記熱処理には、拡散炉、抵抗加熱炉などの加熱炉、RTA(瞬間熱アニール、Rapid Thermal Anneal)装置、マイクロ波加熱装置などを用いることができる。なお、上記温度条件はあくまで一例に過ぎず、開示する発明の一態様がこれに限定して解釈されるものではない。
【0160】
次に、熱処理を行うことにより、単結晶半導体基板510を脆化領域において分離して、ベース基板500上に、窒素含有層502および酸化膜512を介して単結晶半導体層516を形成する(図7(G)参照)。
【0161】
なお、上記分離の際の熱処理温度は、できる限り低いものであることが望ましい。分離の際の温度が低いほど、単結晶半導体層516の表面荒れを抑制できるためである。具体的には、例えば、上記分離の際の熱処理御温度は、300℃以上600℃以下とすればよく、400℃以上500℃以下とすると、より効果的である。
【0162】
なお、単結晶半導体基板510を分離した後には、単結晶半導体層516に対して、500℃以上の温度で熱処理を行い、単結晶半導体層516中に残存する水素の濃度を低減させてもよい。
【0163】
次に、単結晶半導体層516の表面にレーザー光を照射することによって、表面の平坦性を向上させ、かつ、欠陥を低減させた単結晶半導体層518を形成する(図7(H)参照)。なお、レーザー光の照射処理に代えて、熱処理を行っても良い。
【0164】
なお、本実施の形態においては、単結晶半導体層516の分離に係る熱処理の直後に、レーザー光の照射処理を行っているが、開示する発明の一態様はこれに限定して解釈されない。単結晶半導体層516の分離に係る熱処理の後にエッチング処理を施して、単結晶半導体層516表面の欠陥が多い領域を除去してから、レーザー光の照射処理を行っても良いし、単結晶半導体層516表面の平坦性を向上させてからレーザー光の照射処理を行ってもよい。なお、上記、エッチング処理としては、ウェットエッチング、ドライエッチングのいずれを用いてもよい。また、本実施の形態においては、上述のようにレーザー光を照射した後、単結晶半導体層516の膜厚を小さくする薄膜化工程を行ってもよい。単結晶半導体層516の薄膜化には、ドライエッチングまたはウェットエッチングの一方、または双方を用いればよい。
【0165】
以上の工程により、良好な特性の単結晶半導体層518を有するSOI基板を得ることができる(図7(H)参照)。
【0166】
〈半導体装置の作製方法〉
次に、上記のSOI基板を用いた半導体装置の作製方法、特に、トランジスタ560の作製方法について、図8を参照して説明する。なお、図8は、図7に示す方法で作成したSOI基板の一部を用いた半導体装置の作成方法である。
【0167】
まず、単結晶半導体層518を島状に加工して、半導体層520を形成する(図8(A)参照)。なお、この工程の前後において、トランジスタのしきい値電圧を制御するために、n型の導電性を付与する不純物元素や、p型の導電性を付与する不純物元素を半導体層に添加してもよい。半導体がシリコンの場合、n型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、リンやヒ素などを用いることができる。また、p型の導電性を付与する不純物元素としては、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウムなどを用いることができる。
【0168】
次に、半導体層520を覆うように絶縁層522を形成し、絶縁層522上の少なくとも半導体層520と重畳する領域に導電層524を形成する(図8(B)参照)。
【0169】
絶縁層522は、後にゲート絶縁層となるものである。絶縁層522は、例えば、半導体層520表面の熱処理(熱酸化処理や熱窒化処理など)によって形成することができる。熱処理に代えて、高密度プラズマ処理を適用しても良い。高密度プラズマ処理は、例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガス、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などのうちいずかの混合ガスを用いて行うことができる。もちろん、CVD法やスパッタリング法等を用いて絶縁層を形成しても良い。当該絶縁層は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))等を含む単層構造または積層構造とすることが望ましい。また、絶縁層の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。ここでは、プラズマCVD法を用いて、酸化シリコンを含む絶縁層を単層で形成することとする。
【0170】
導電層524は、後にゲート電極となるものである。導電層524は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。なお、本実施の形態では、導電材料を含む層を、金属材料を用いて形成する場合の一例について示すものとする。
【0171】
次に、絶縁層522および導電層524を選択的にエッチングして、半導体層520の上方に、ゲート絶縁層522aおよびゲート電極524aを形成する(図8(C)参照)。当該エッチングには、ドライエッチングを用いるのが好適であるが、ウェットエッチングを用いても良い。エッチングガスやエッチング液については被エッチング材料に応じて適宜選択することができる。
【0172】
次に、ゲート電極524aをマスクとして、一導電型を付与する不純物元素を半導体層520に添加して、チャネル形成領域526および不純物領域528を形成する(図8(D)参照)。なお、ここでは、n型トランジスタを形成するために、リン(P)やヒ素(As)を添加するが、p型トランジスタを形成する場合には、ホウ素(B)やアルミニウム(Al)などの不純物元素を添加すればよい。ここで、添加される不純物の濃度は適宜設定することができる。また、不純物元素を添加した後には、活性化のための熱処理を行う。
【0173】
なお、半導体層520がシリコンを含む材料でなる場合には、ソース領域およびドレイン領域をさらに低抵抗化するために、半導体層520の一部をシリサイド化したシリサイド領域を形成してもよい。シリサイド領域の形成は、半導体層に金属を接触させ、加熱処理(例えば、GRTA法、LRTA法、レーザー光の照射等)により、半導体層中のシリコンと金属とを反応させて行う。シリサイドとしては、例えば、コバルトシリサイドやニッケルシリサイドを形成すれば良い。半導体層520が薄い場合には、半導体層520の底部までシリサイド反応を進めても良い。シリサイド化に用いることができる金属材料としては、コバルトやニッケルの他、チタン、タングステン、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、バナジウム、ネオジム、クロム、白金、パラジウム等を挙げることができる。
【0174】
次に、不純物領域528の一部と接する領域に、電極530を形成し、その後、形成された各構成を覆うように、絶縁層532、絶縁層534を形成する(図8(E)参照)。
【0175】
電極530は、例えば、導電材料を含む層を形成した後に、当該層を選択的にエッチングすることで形成される。導電材料を含む層は、アルミニウムや銅、チタン、タンタル、タングステン等の金属材料を用いて形成することができる。また、多結晶シリコンなどの半導体材料を用いて、導電材料を含む層を形成しても良い。形成方法も特に限定されず、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、スピンコート法などの各種成膜方法を用いることができる。
【0176】
なお、電極530は、絶縁層532および絶縁層534を形成した後に、絶縁層532および絶縁層534に不純物領域528にまで達する開口を形成し、当該開口を埋め込むように形成することも可能である。
【0177】
絶縁層532や絶縁層534は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。特に、絶縁層532や絶縁層534に誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁層532や絶縁層534には、これらの材料を用いた多孔性の絶縁層を適用しても良い。多孔性の絶縁層では、密度の高い絶縁層と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する容量をさらに低減することが可能である。また、絶縁層532や絶縁層534は、ポリイミド、アクリル等の有機絶縁材料を用いて形成することも可能である。なお、ここでは、絶縁層532と絶縁層534の積層構造としているが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。1層としても良いし、2層以上の積層構造としても良い。
【0178】
以上により、SOI基板を用いたトランジスタ560が形成される(図8(E)参照)。酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタ560は、高速動作が可能であるから、当該トランジスタを読み出しトランジスタとして用いることにより、読み出し動作を高速化することができる。また、トランジスタ560を用いて、他の論理回路(演算回路ともいう)などを構成することもできる。
【0179】
その後、絶縁層532や絶縁層534にCMP処理を施して、ゲート電極524aおよび電極530の上面を露出させる(図示しない)。ゲート電極524aおよび電極530の上面を露出させる処理としては、CMP処理の他にエッチング処理などを適用することも可能である(エッチング処理などはCMP処理と組み合わせても良い)。なお、後に形成されるトランジスタ562の特性を向上させるために、絶縁層532や絶縁層534の表面は可能な限り平坦にしておくことが望ましい。
【0180】
なお、上記の各工程の前後には、さらに電極や配線、半導体層、絶縁層などを形成する工程を含んでいても良い。例えば、配線の構造として、絶縁層および導電層の積層構造でなる多層配線構造を採用して、高度に集積化した半導体装置を実現することも可能である。
【0181】
その後、トランジスタ560と電気的に接続するトランジスタ562および容量素子564を形成する(図6(A)参照)。トランジスタ562および容量素子564の作製方法は、トランジスタ162および容量素子164の場合と同様であるから、ここでは省略する。作製方法の詳細については、先の実施の形態を参酌できる。
【0182】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0183】
(実施の形態3)
本実施の形態では、開示する発明の別の一態様に係る半導体装置の構成およびその作製方法について、図9および図10を参照して説明する。
【0184】
〈半導体装置の断面構成および平面構成〉
図9は、本実施の形態にかかる半導体装置の構成の一例である。図9(A)には、半導体装置の断面を、図9(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図9(A)は、図9(B)のE1−E2およびF1−F2における断面に相当する。図9(A)および図9(B)に示される半導体装置は、図6で示した半導体装置と同様に、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ560を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ562を有するものである。ここで、第1の半導体材料と第2の半導体材料とは異なる材料とすることが望ましい。例えば、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の材料(シリコンなど)とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とすることができる。酸化物半導体以外の半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0185】
図9における半導体装置と、図6における半導体装置の相違の一は、トランジスタ560とトランジスタ562の接続方法である。図6における半導体装置は、不純物領域528の一部と接する領域に、電極530を形成し、該電極530を介して下部のトランジスタ560の不純物領域528と、上部のトランジスタ562のソース電極またはドレイン電極542b、とが電気的に接続しているが、図9における半導体装置は、上部のトランジスタ562のソース電極またはドレイン電極542bを直接、下部のトランジスタ560の不純物領域528に接触させている。
【0186】
また、図9における半導体装置と、図6における半導体装置の相違の別の一は、トランジスタ562と上部の配線556との接続方法である。図6における半導体装置は、ソース電極またはドレイン電極542bと接する電極554を形成し、該電極554を介してトランジスタ562のソース電極またはドレイン電極542bと、配線556とが電気的に接続しているが、図9における半導体装置は、配線556を直接、トランジスタ562のソース電極またはドレイン電極542bに接触させている。図6におけるトランジスタ562のソース電極またはドレイン電極542bと、トランジスタ560のソース電極やドレイン電極として機能する電極530とが、同一物である構成と言い換えることもできる。
【0187】
なお、図9において、ソース電極またはドレイン電極542bと、トランジスタ560のソース領域及びドレイン領域の一方と、が接する領域は、ソース電極またはドレイン電極542bと、メモリセルの一と他のメモリセルとを接続する配線556と、が接する領域と重なっている。このようなレイアウトを採用することで、高集積化を図ることができる。
【0188】
なお、図9におけるトランジスタ560は、図6におけるトランジスタ560と同様であり、図9におけるトランジスタ562は、図6におけるトランジスタ562と同様である。また、図9における容量素子564は、図6における容量素子564と同様である。詳細については、先の実施の形態を参酌できる。
【0189】
(半導体装置の作製方法)
図9に示す半導体装置の作製方法、特に上部のトランジスタ562のソース電極またはドレイン電極の作製方法について図10を参照して説明する。なお、図10は、図7に示す方法で作成したSOI基板の一部を用いた半導体装置の作成方法である。
【0190】
はじめに、図8(A)乃至図8(D)で示した工程と同様に、SOI基板上に、チャネル形成領域526および不純物領域528を有する半導体層、ゲート絶縁層522a及びゲート電極524aを形成する。その後、形成された各構成を覆うように、絶縁層532、絶縁層534を成膜して、トランジスタ560を形成する。
【0191】
次いで、絶縁層532や絶縁層534にCMP処理を施して、ゲート電極524aの上面を露出させる(図示しない)。ゲート電極524aの上面を露出させる処理としては、CMP処理の他にエッチング処理などを適用することも可能である(エッチング処理などはCMP処理と組み合わせても良い)。なお、後に形成されるトランジスタ562の特性を向上させるために、絶縁層532や絶縁層534の表面は可能な限り平坦にしておくことが望ましい。
【0192】
次に、絶縁層532、絶縁層534に、トランジスタ560の不純物領域528にまで達する開口を形成する。当該開口の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。
【0193】
その後、開口を含む領域にPVD法やCVD法などを用いて導電層を形成した後、エッチング処理やCMPといった方法を用いて、上記導電層の一部を選択的に除去することにより、ソース電極またはドレイン電極542a、ソース電極またはドレイン電極542bを形成する(図10(A)参照)。開口を埋め込むように導電層を形成することで、不純物領域528とソース電極またはドレイン電極542bとが直接接することができる。
【0194】
次いで、実施の形態1で図4(B)乃至図5(A)で示した工程と同様に、ソース電極またはドレイン電極542aの上に絶縁層543aを、ソース電極またはドレイン電極542bの上に絶縁層543bを、それぞれ形成した後、ソース電極またはドレイン電極542a及びソース電極またはドレイン電極542b上に設けられた酸化物半導体層544と、酸化物半導体層544に接するゲート絶縁層546と、ゲート絶縁層546上に設けられたゲート電極548a及び電極548bと、ゲート電極548a及び電極548b上に設けられた絶縁層550と、をそれぞれ形成する(図10(B)参照)。
【0195】
その後、絶縁層550上に絶縁層552を形成する。絶縁層552は、実施の形態1の絶縁層152と同様の材料及び成膜方法を用いて形成することができる。絶縁層552を成膜後、該絶縁層552、絶縁層550及びゲート絶縁層546に、ソース電極またはドレイン電極542bまで達する開口を形成する。当該開口の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。
【0196】
その後、開口を含む領域にPVD法やCVD法などを用いて導電層を形成した後、エッチング処理はCMPといった方法を用いて、上記導電層の一部を選択的に除去することにより、配線556を形成する。
【0197】
以上の工程によって、本実施の形態で示す半導体装置を形成することができる。本実施の形態で示す半導体装置は、下部のトランジスタ560と上部のトランジスタ562との接続、及び、上部のトランジスタ562と配線556との接続を、それぞれ電極を形成することなく上部のトランジスタ562のソース電極またはドレイン電極542bを用いて直接的に行っているため、電極の形成工程を省略することが可能である。したがって、本実施の形態で示す半導体装置は、低コストで作製することが可能である。
【0198】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0199】
(実施の形態4)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の回路構成およびその動作について、図11を参照して説明する。なお、回路図においては、酸化物半導体を用いたトランジスタであることを示すために、OSの符号を併せて付す場合がある。
【0200】
図11(A)に示す半導体装置において、第1の配線(1st Line)とトランジスタ160(またはトランジスタ560)のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line)とトランジスタ160(またはトランジスタ560)のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line)とトランジスタ162(またはトランジスタ562)のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line)と、トランジスタ162(またはトランジスタ562)のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極と、トランジスタ162(またはトランジスタ562)のソース電極またはドレイン電極の一方は、容量素子164(または容量素子564)の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線(5th Line)と、容量素子164(または容量素子564)の電極の他方は電気的に接続されている。
【0201】
ここで、トランジスタ162(またはトランジスタ562)には、例えば、上述の酸化物半導体を用いたトランジスタが適用される。酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している。このため、トランジスタ162(またはトランジスタ562)をオフ状態とすることで、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子164(または容量素子564)を有することにより、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極に与えられた電荷の保持が容易になり、また、保持された情報の読み出しが容易になる。
【0202】
なお、トランジスタ160(またはトランジスタ560)については特に限定されない。情報の読み出し速度を向上させるという観点からは、例えば、単結晶シリコンを用いたトランジスタなど、スイッチング速度の高いトランジスタを適用するのが好適である。
【0203】
また、図11(B)に示すように、容量素子164(または容量素子564)を設けない構成とすることも可能である。
【0204】
図11(A)に示す半導体装置では、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。
【0205】
はじめに、情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162(またはトランジスタ562)がオン状態となる電位にして、トランジスタ162(またはトランジスタ562)をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極、および容量素子164(または容量素子564)に与えられる。すなわち、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極には、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位を与える電荷(以下、低電位を与える電荷を電荷Q、高電位を与える電荷を電荷Qという)のいずれかが与えられるものとする。なお、異なる三つまたはそれ以上の電位を与える電荷を適用して、記憶容量を向上させても良い。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162(またはトランジスタ562)がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162(またはトランジスタ562)をオフ状態とすることにより、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0206】
トランジスタ162(またはトランジスタ562)のオフ電流は極めて小さいから、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0207】
次に、情報の読み出しについて説明する。第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線は異なる電位をとる。一般に、トランジスタ160(またはトランジスタ560)をnチャネル型とすると、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極にQが与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Hは、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極にQが与えられている場合の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは、トランジスタ160(またはトランジスタ560)を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの中間の電位Vとすることにより、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極に与えられた電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Qが与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ160(またはトランジスタ560)は「オン状態」となる。Qが与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ160(またはトランジスタ560)は「オフ状態」のままである。このため、第2の配線の電位を見ることで、保持されている情報を読み出すことができる。
【0208】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合には、所望のメモリセルの情報のみを読み出せることが必要になる。このように、所定のメモリセルの情報を読み出し、それ以外のメモリセルの情報を読み出さないようにするには、各メモリセル間でトランジスタ160(またはトランジスタ560)がそれぞれ並列に接続されている場合には、読み出しの対象ではないメモリセルの第5の配線に対して、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160(またはトランジスタ560)が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_Hより小さい電位を与えればよい。また、各メモリセル間でトランジスタ160(またはトランジスタ560)がそれぞれ直列に接続されている場合には、読み出しの対象ではないメモリセルの第5の配線に対して、ゲート電極の状態にかかわらずトランジスタ160(またはトランジスタ560)が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_Lより大きい電位を第5の配線に与えればよい。
【0209】
次に、情報の書き換えについて説明する。情報の書き換えは、上記情報の書き込みおよび保持と同様に行われる。つまり、第4の配線の電位を、トランジスタ162(またはトランジスタ562)がオン状態となる電位にして、トランジスタ162(またはトランジスタ562)をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位(新たな情報に係る電位)が、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極および容量素子164(または容量素子564)に与えられる。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162(またはトランジスタ562)がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162(またはトランジスタ562)をオフ状態とすることにより、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極は、新たな情報に係る電荷が与えられた状態となる。
【0210】
このように、開示する発明に係る半導体装置は、再度の情報の書き込みによって直接的に情報を書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされる高電圧を用いてのフローティングゲートからの電荷の引き抜きが不要であり、消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができる。つまり、半導体装置の高速動作が実現される。
【0211】
なお、トランジスタ162(またはトランジスタ562)のソース電極またはドレイン電極は、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極と電気的に接続されることにより、不揮発性メモリ素子として用いられるフローティングゲート型トランジスタのフローティングゲートと同等の作用を奏する。このため、図中、トランジスタ162(またはトランジスタ562)のソース電極またはドレイン電極とトランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート電極が電気的に接続される部位をフローティングゲート部FGと呼ぶ場合がある。トランジスタ162(またはトランジスタ562)がオフの場合、当該フローティングゲート部FGは絶縁体中に埋設されたと見ることができ、フローティングゲート部FGには電荷が保持される。酸化物半導体を用いたトランジスタ162(またはトランジスタ562)のオフ電流は、シリコンなどで形成されるトランジスタの10万分の1以下であるため、トランジスタ162(またはトランジスタ562)のリークによる、フローティングゲート部FGに蓄積される電荷の消失を無視することが可能である。つまり、酸化物半導体を用いたトランジスタ162(またはトランジスタ562)により、電力の供給が無くても情報の保持が可能な不揮発性の記憶装置を実現することが可能である。
【0212】
例えば、トランジスタ162(またはトランジスタ562)の室温(25℃)でのオフ電流が10zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下であり、容量素子164(または容量素子564)の容量値が10fF程度である場合には、少なくとも10秒以上のデータ保持が可能である。なお、当該保持時間が、トランジスタ特性や容量値によって変動することはいうまでもない。
【0213】
また、この場合、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて指摘されているゲート絶縁膜(トンネル絶縁膜)の劣化という問題が存在しない。つまり、従来問題とされていた、電子をフローティングゲートに注入する際のゲート絶縁膜の劣化を解消することができる。これは、原理的な書き込み回数の制限が存在しないことを意味するものである。また、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて書き込みや消去の際に必要であった高電圧も不要である。
【0214】
図11(A)に示す半導体装置は、当該半導体装置を構成するトランジスタなどの要素が抵抗および容量を含むものとして、図11(C)のように考えることが可能である。つまり、図11(C)では、トランジスタ160(またはトランジスタ560)および容量素子164(または容量素子564)が、それぞれ、抵抗および容量を含んで構成されると考えていることになる。R1およびC1は、それぞれ、容量素子164(または容量素子564)の抵抗値および容量値であり、抵抗値R1は、容量素子164(または容量素子564)を構成する絶縁層による抵抗値に相当する。また、R2およびC2は、それぞれ、トランジスタ160(またはトランジスタ560)の抵抗値および容量値であり、抵抗値R2はトランジスタ160(またはトランジスタ560)がオン状態の時のゲート絶縁層による抵抗値に相当し、容量値C2はいわゆるゲート容量(ゲート電極と、ソース電極またはドレイン電極との間に形成される容量、及び、ゲート電極とチャネル形成領域との間に形成される容量)の容量値に相当する。
【0215】
トランジスタ162(またはトランジスタ562)がオフ状態にある場合のソース電極とドレイン電極の間の抵抗値(実効抵抗とも呼ぶ)をROSとすると、トランジスタ162(またはトランジスタ562)のゲートリークが十分に小さい条件において、R1およびR2が、R1≧ROS、R2≧ROSを満たす場合には、電荷の保持期間(情報の保持期間ということもできる)は、主としてトランジスタ162(またはトランジスタ562)のオフ電流によって決定されることになる。
【0216】
逆に、当該条件を満たさない場合には、トランジスタ162(またはトランジスタ562)のオフ電流が十分に小さくとも、保持期間を十分に確保することが困難になる。トランジスタ162(またはトランジスタ562)のオフ電流以外のリーク電流(例えば、ソース電極とゲート電極の間において生じるリーク電流等)が大きいためである。このことから、本実施の形態において開示する半導体装置は、上述の関係を満たすものであることが望ましいといえる。
【0217】
一方、C1とC2は、C1≧C2の関係を満たすことが望ましい。C1を大きくすることで、第5の配線によってフローティングゲート部FGの電位を制御する際に、第5の配線の電位を効率よくフローティングゲート部FGに与えることができるようになり、第5の配線に与える電位間(例えば、読み出しの電位と、非読み出しの電位)の電位差を低く抑えることができるためである。
【0218】
上述の関係を満たすことで、より好適な半導体装置を実現することが可能である。なお、R1およびR2は、トランジスタ160(またはトランジスタ560)のゲート絶縁層や容量素子164(または容量素子564)の絶縁層によって制御される。C1およびC2についても同様である。よって、ゲート絶縁層の材料や厚さなどを適宜設定し、上述の関係を満たすようにすることが望ましい。
【0219】
本実施の形態で示す半導体装置においては、フローティングゲート部FGが、フラッシュメモリ等のフローティングゲート型トランジスタのフローティングゲートと同等の作用をするが、本実施の形態のフローティングゲート部FGは、フラッシュメモリ等のフローティングゲートと本質的に異なる特徴を有する。フラッシュメモリでは、コントロールゲートに印加される電圧が高いため、その電位の影響が、隣接するセルのフローティングゲートにおよぶことを防ぐために、セルとセルとの間隔をある程度保つ必要が生じる。このことは、半導体装置の高集積化を阻害する要因の一つである。そして、当該要因は、高電界をかけてトンネル電流を発生させるというフラッシュメモリの根本的な原理に起因するものである。
【0220】
一方、本実施の形態に係る半導体装置は、酸化物半導体を用いたトランジスタのスイッチングによって動作し、上述のようなトンネル電流による電荷注入の原理を用いない。すなわち、フラッシュメモリのような、電荷を注入するための高電界が不要である。これにより、隣接セルに対する、コントロールゲートによる高電界の影響を考慮する必要がないため、高集積化が容易になる。
【0221】
また、高電界が不要であり、大型の周辺回路(昇圧回路など)が不要である点も、フラッシュメモリに対するアドバンテージである。例えば、本実施の形態に係るメモリセルに印加される電圧(メモリセルの各端子に同時に印加される電位の最大のものと最小のものの差)の最大値は、2段階(1ビット)の情報を書き込む場合、一つのメモリセルにおいて、5V以下、好ましくは3V以下とすることができる。
【0222】
容量素子164(または容量素子564)を構成する絶縁層の比誘電率εr1と、トランジスタ160(またはトランジスタ560)を構成する絶縁層の比誘電率εr2とを異ならせる場合には、容量素子164(または容量素子564)を構成する絶縁層の面積S1と、トランジスタ160(またはトランジスタ560)においてゲート容量を構成する絶縁層の面積S2とが、2・S2≧S1(望ましくはS2≧S1)を満たしつつ、C1≧C2を実現することが容易である。すなわち、容量素子164(または容量素子564)を構成する絶縁層の面積を小さくしつつ、C1≧C2を実現することが容易である。具体的には、例えば、容量素子164(または容量素子564)を構成する絶縁層においては、酸化ハフニウムなどのhigh−k材料でなる膜、または酸化ハフニウムなどのhigh−k材料でなる膜と酸化物半導体でなる膜との積層構造を採用してεr1を10以上、好ましくは15以上とし、ゲート容量を構成する絶縁層においては、酸化シリコンを採用して、εr2=3〜4とすることができる。
【0223】
このような構成を併せて用いることで、開示する発明に係る半導体装置の、より一層の高集積化が可能である。
【0224】
なお、半導体装置の記憶容量を大きくするためには、高集積化以外に、多値化の手法を採ることもできる。例えば、メモリセルの一に3段階以上の情報を書き込む構成とすることで、2段階の情報を書き込む場合と比較して記憶容量を増大させることができる。例えば、上述のような、低電位を与える電荷Q、高電位を与える電荷Qに加え、他の電位を与える電荷Qを第1のトランジスタのゲート電極に与えることで、多値化を実現することができる。この場合、Fが十分に小さくならない回路構成を採用しても十分な記憶容量を確保することができる。
【0225】
なお、上記説明は、電子を多数キャリアとするn型トランジスタ(nチャネル型トランジスタ)を用いる場合についてのものであるが、n型トランジスタに代えて、正孔を多数キャリアとするp型トランジスタを用いることができるのはいうまでもない。
【0226】
以上のように、本実施の形態に係る半導体装置は高集積化に向いているが、開示する発明の一態様に係る配線の共通化、コンタクト領域の縮小などにより、さらに集積度を高めた半導体装置を提供することが可能である。
【0227】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0228】
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態において説明した半導体装置の応用例の一について説明する。具体的には、先の実施の形態において説明した半導体装置をマトリクス状に配列した半導体装置の一例について説明する。
【0229】
図12に(m×n)ビットの記憶容量を有する半導体装置の回路図の一例を示す。
【0230】
本発明の一態様に係る半導体装置は、m本(mは2以上の整数)の信号線Sと、m本のワード線WLと、n本(nは2以上の整数)のビット線BLと、k本(kはn未満の自然数)のソース線SLと、メモリセル1100が縦m個(行)×横n個(列)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイと、第1の駆動回路1111、第2の駆動回路1112、第3の駆動回路1113、第4の駆動回路1114といった周辺回路によって構成されている。ここで、メモリセル1100としては、先の実施の形態において説明した構成(図11(A)に示される構成)が適用される。
【0231】
各メモリセル1100は、第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、容量素子をそれぞれ有している。各メモリセル1100において、第1のトランジスタのゲート電極と、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子の電極の一方とは、電気的に接続され、ソース線SLと、第1のトランジスタのソース電極(ソース領域)とは、電気的に接続されている。さらに、ビット線BLと、第2のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方と、第1のトランジスタのドレイン電極とは電気的に接続され、ワード線WLと、容量素子の電極の他方と、は電気的に接続され、信号線Sと、第2のトランジスタのゲート電極とは電気的に接続されている。つまり、ソース線SLが、図11(A)に示される構成における第1の配線(1st Line)に、ビット線BLが第2の配線(2nd Line)及び第3の配線(3rd Line)に、信号線Sが第4の配線(4th Line)に、ワード線WLが第5の配線(5th Line)に相当する。
【0232】
また、図12に示すメモリセルアレイにおいて、ビット線BL、ソース線SL、ワード線WL、及び信号線Sはマトリクスを構成する。ビット線BLの一には、同じ列に配置されたm個のメモリセル1100が接続されている。また、ワード線WLの一、及び、信号線Sの一には、それぞれ同じ行に配置されたn個のメモリセル1100が接続されている。また、ソース線SLの本数は、ビット線BLの本数よりも少ないため、ソース線SLの一は、少なくとも異なるビット線BLに接続されたメモリセル1100を含む複数のメモリセルと接続する必要がある。すなわち、ソース線SLの一には、j個(jは(m+1)以上(m×n)以下の整数)のメモリセル1100が接続されている。なお、ソース線SLの一に接続された複数のメモリセル1100が有する第1のトランジスタのソース領域は共通している。なお、ソース線SLは、複数のビット線BLに対して一本の割合で配置されている(すなわち、(n/k)が整数である)のが好ましく、この場合、各ソース線SLに接続されるメモリセル1100の数が等しいとすれば、ソース線SLの一には、(m×n/k)個のメモリセル1100が接続される。具体的には、例えば、図13に示すような平面レイアウトを採用することができる。なお、ソース線SLは、図13において、領域180に対応する領域に設けられ、コンタクト領域182において金属化合物領域124と電気的に接続されている。
【0233】
図12や図13に示すメモリセルアレイのように、メモリセル1100の一と他のメモリセルとを接続するソース線SLの一を、少なくとも異なるビット線BLに接続されたメモリセルを含む複数のメモリセル1100と接続する構成として、ソース線SLの本数をビット線BLの本数より少なくすることで、ソース線の数を十分に少なくすることができるため、半導体装置の集積度を向上させることができる。
【0234】
ビット線BLは、第1の駆動回路1111と電気的に接続されており、ソース線SLは、第2の駆動回路1112と電気的に接続されており、信号線Sは、第3の駆動回路1113と電気的に接続されており、ワード線WLは、第4の駆動回路1114と電気的に接続されている。なお、ここでは、第1の駆動回路1111、第2の駆動回路1112、第3の駆動回路1113、第4の駆動回路1114は、それぞれ独立に設けているが、開示する発明はこれに限定されない。いずれか一、または複数の機能を有する駆動回路を用いても良い。
【0235】
次に、書き込み動作および読み出し動作について説明する。図14は、図12に示す半導体装置の書き込み動作および読出し動作のタイミングチャートの一例である。
【0236】
なお、ここでは、簡単のため、2行×2列のメモリセルアレイで構成される半導体装置の動作について説明するが、開示する発明はこれに限定されない。
【0237】
第1行目のメモリセル1100(1,1)、およびメモリセル1100(1,2)への書き込みを行う場合と、第1行目のメモリセル1100(1,1)、およびメモリセル1100(1,2)からの読み出しを行う場合について説明する。なお、以下では、メモリセル(1,1)へ書き込むデータを”1”とし、メモリセル(1,2)へ書き込むデータを”0”とする場合について説明する。
【0238】
はじめに、書き込みについて説明する。まず、第1行目の信号線S(1)に電位V1を与え、1行目の第2のトランジスタをオン状態とする。また、第2行目の信号線S(2)に電位0Vを与え、2行目の第2のトランジスタをオフ状態とする。
【0239】
また、第1列目のビット線BL(1)に電位V2を与え、2列目のビット線BL(2)には電位0Vを与える。
【0240】
その結果、メモリセル(1,1)のフローティングゲート部FGには電位V2が、メモリセル(1,2)のフローティングゲート部FGには電位0Vが与えられる。ここでは、電位V2は第1のトランジスタのしきい値より高い電位とする。そして、第1行目の信号線S(1)の電位を0Vとして、1行目の第2のトランジスタをオフ状態とすることで、書き込みを終了する。なお、電位V2は、電位V1と同程度または電位V1以下とするのが好ましい。
【0241】
なお、書き込み動作の間、第1行目のワード線WL(1)及び第2行目のワード線WL(2)は電位0Vとしておく。また、書き込み終了時には、第1列目のビット線BL(1)の電位を変化させる前に第1行目の信号線S(1)を電位0Vとする。書き込み後において、メモリセルのしきい値は、データ”0”の場合にはVw0、データ”1”の場合にはVw1となる。ここで、メモリセルのしきい値とは、第1のトランジスタのソース電極とドレイン電極の間の抵抗が変化する、ワード線WLに接続される端子の電圧をいうものとする。なお、ここでは、Vw0>0>Vw1とする。
【0242】
次に、読み出しについて説明する。ここで、ビット線BLには、図15に示す読み出し回路が電気的に接続されているとする。
【0243】
まず、第1行目のワード線WL(1)に電位0Vを与え、第2行目のワード線WL(2)には電位VLを与える。電位VLはしきい値Vw1より低い電位とする。WL(1)を電位0Vとすると、第1行目において、データ”0”が保持されているメモリセルの第1のトランジスタはオフ状態、データ”1”が保持されているメモリセルの第1のトランジスタはオン状態となる。ワード線WL(2)を電位VLとすると、第2行目において、データ”0”、”1”のいずれが保持されているメモリセルであっても、第1のトランジスタはオフ状態となる。
【0244】
その結果、ビット線BL(1)−ソース線SL間は、メモリセル(1,1)の第1のトランジスタがオン状態であるため低抵抗となり、ビット線BL(2)−ソース線SL(1)間は、メモリセル(1,2)の第1のトランジスタがオフ状態であるため、高抵抗となる。ビット線BL(1)、ビット線BL(2)に接続される読み出し回路は、ビット線の抵抗の違いから、データを読み出すことができる。
【0245】
なお、読み出し動作の間、信号線S(1)には電位0Vを、信号線S(2)には電位VLを与え、第2のトランジスタを全てオフ状態としておく。第1行目のフローティングゲート部FGの電位は0VまたはV2であるから、信号線S(1)を電位0Vとすることで第2のトランジスタを全てオフ状態とすることができる。一方、2行目のフローティングゲート部FGの電位は、ワード線WL(2)に電位VLが与えられると、書き込み直後の電位より低い電位となってしまう。これにより、第2のトランジスタがオン状態となることを防止するために、信号線S(2)をワード線WL(2)と同じ低電位(電位VL)とする。つまり、読み出しを行わない行では、信号線Sとワード線WLとを同じ低電位(電位VL)とする。以上により、第2のトランジスタを全てオフ状態とすることができる。
【0246】
読み出し回路として、図15に示す回路を用いる場合の出力電位について説明する。図15に示す読出し回路では、ビット線BLは、リードイネーブル信号(RE信号)によって制御されるスイッチを介して、クロックドインバータ、および、電位V1を与えられた配線にダイオード接続されたトランジスタに接続される。また、ソース線SLには定電位(例えば0V)を与えておく。ビット線BL(1)−ソース線SL間は低抵抗であるため、クロックドインバータには低電位が入力され、出力D(1)はHighとなる。ビット線BL(2)−ソース線SL間は高抵抗であるため、クロックドインバータには高電位が入力され、出力D(2)はLowとなる。
【0247】
動作電位は、例えば、V1=2V、V2=1.5V、VH=2V、VL=−2Vとすることができる。
【0248】
次に、上述の書き込み動作とは異なる書き込み動作について説明する。書き込むデータは上述の書き込み動作と同じとする。図16は、当該書き込み動作および読出し動作のタイミングチャートの一例である。
【0249】
図14に示すタイミングチャートを用いた書き込み(1行目の書き込み)では、書き込み時のワード線WL(2)の電位を電位0Vとしているため、例えばメモリセル(2,1)またはメモリセル(2,2)に書き込まれているデータがデータ”1”である場合には、ビット線BL(1)とビット線BL(2)間に定常電流が流れることになる。第1行目の書き込み時には、第2行目のメモリセルが有する第1のトランジスタがオン状態となり、ビット線BL(1)とビット線BL(2)が、ソース線を介して低抵抗で接続されるためである。図16に示す書き込み動作は、このような定常電流の発生を防止する方法である。
【0250】
まず、第1行目の信号線S(1)に電位V1を与え、1行目の第2のトランジスタをオン状態とする。また、第2行目の信号線S(2)に電位0Vを与え、2行目の第2のトランジスタをオフ状態とする。
【0251】
また、第1列目のビット線BL(1)に電位V2を与え、2列目のビット線BL(2)には電位0Vを与える。
【0252】
その結果、メモリセル(1,1)のフローティングゲート部FGには電位V2が、メモリセル(1,2)のフローティングゲート部FGには電位0Vが与えられる。ここでは、電位V2は第1のトランジスタのしきい値より高い電位とする。そして、第1行目の信号線S(1)の電位を0Vとして、1行目の第2のトランジスタをオフ状態とすることで、書き込みを終了する。
【0253】
なお、書き込み動作の間、第1行目のワード線WL(1)の電位は電位0Vに、第2行目のワード線WL(2)の電位は電位VLとしておく。第2行目のワード線WL(2)を電位VLとすることで、第2行目において、データ”0”、”1”のいずれが保持されているメモリセルであっても、第1のトランジスタはオフ状態となる。また、書き込み動作の間、ソース線SLには電位V2を与える。書き込みデータが全て”0”の場合には、ソース線には電位0Vを与えても構わない。
【0254】
また、書き込み終了時には、第1列目のビット線BL(1)の電位を変化させる前に第1行目の信号線S(1)を電位0Vとする。書き込み後において、メモリセルのしきい値は、データ”0”の場合にはVw0、データ”1”の場合にはVw1となる。ここでは、Vw0>0>Vw1とする。
【0255】
当該書き込み動作において、書き込みを行わない行(この場合には第2行目)のメモリセルの第1のトランジスタはオフ状態であるから、ビット線とソース線の間の定常電流が問題になるのは、書き込みを行う行のメモリセルのみである。書き込みを行う行のメモリセルにデータ”0”を書き込む場合には、該メモリセルが有する第1のトランジスタはオフ状態となるため、定常電流の問題は生じない。一方、書き込みを行う行のメモリセルにデータ”1”を書き込む場合には、該メモリセルが有する第1のトランジスタはオン状態となるため、ソース線SLとビット線BL(この場合にはビット線BL(1))との間に電位差が存在する場合には、定常電流が発生する。そこで、ソース線SLの電位を、ビット線BL(1)の電位V2と同じとすることで、ビット線とソース線の間の定常電流を防止できる。
【0256】
以上のように、当該書き込み動作によって、書き込み時の定常電流の発生を防止できることがわかる。つまり、当該書き込み動作では、書き込み動作時の消費電力を十分に抑制することができる。
【0257】
なお、読み出し動作については、上述の読み出し動作と同様である。
【0258】
図12に示す半導体装置に、オフ電流が極めて小さい酸化物半導体を含む半導体装置を用いることにより、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0259】
また、図12に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、素子の劣化の問題もない。そのため、図12に示す半導体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態の切り換えによって、情報の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。また、情報を消去するための動作が不要であるというメリットもある。
【0260】
また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタは、酸化物半導体を用いたトランジスタと比較して、さらなる高速動作が可能であるため、これを、酸化物半導体を用いたトランジスタと組み合わせて用いることにより、半導体装置の動作(例えば、情報の読み出し動作)の高速性を十分に確保することができる。また、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタにより、高速動作が要求される各種回路(論理回路、駆動回路など)を好適に実現することが可能である。
【0261】
このように、酸化物半導体以外の材料を用いたトランジスタと、酸化物半導体を用いたトランジスタとを一体に備えることで、これまでにない特徴を有する半導体装置を実現することができる。
【0262】
さらに、図12に示す半導体装置では、メモリセル一個あたりの配線数を削減することができる。これにより、メモリセルの占有面積を低減し、半導体装置の単位面積あたりの記憶容量を増大することができる。
【0263】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0264】
(実施の形態6)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した半導体装置を電子機器に適用する場合について、図17を用いて説明する。本実施の形態では、コンピュータ、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯情報端末(携帯型ゲーム機、音響再生装置なども含む)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子ペーパー、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)などの電子機器に、上述の半導体装置を適用する場合について説明する。
【0265】
図17(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、筐体701、筐体702、表示部703、キーボード704などによって構成されている。筐体701と筐体702の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたノート型のパーソナルコンピュータが実現される。
【0266】
図17(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体711には、表示部713と、外部インターフェイス715と、操作ボタン714等が設けられている。また、携帯情報端末を操作するスタイラス712などを備えている。本体711内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された携帯情報端末が実現される。
【0267】
図17(C)は、電子ペーパーを実装した電子書籍720であり、筐体721と筐体723の2つの筐体で構成されている。筐体721および筐体723には、それぞれ表示部725および表示部727が設けられている。筐体721と筐体723は、軸部737により接続されており、該軸部737を軸として開閉動作を行うことができる。また、筐体721は、電源731、操作キー733、スピーカー735などを備えている。筐体721、筐体723の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された電子書籍が実現される。
【0268】
図17(D)は、携帯電話機であり、筐体740と筐体741の2つの筐体で構成されている。さらに、筐体740と筐体741は、スライドし、図17(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。また、筐体741は、表示パネル742、スピーカー743、マイクロフォン744、操作キー745、ポインティングデバイス746、カメラ用レンズ747、外部接続端子748などを備えている。また、筐体740は、携帯電話機の充電を行う太陽電池セル749、外部メモリスロット750などを備えている。また、アンテナは、筐体741に内蔵されている。筐体740と筐体741の少なくとも一には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減された携帯電話機が実現される。
【0269】
図17(E)は、デジタルカメラであり、本体761、表示部767、接眼部763、操作スイッチ764、表示部765、バッテリー766などによって構成されている。本体761内には、先の実施の形態に示す半導体装置が設けられている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたデジタルカメラが実現される。
【0270】
図17(F)は、テレビジョン装置770であり、筐体771、表示部773、スタンド775などで構成されている。テレビジョン装置770の操作は、筐体771が備えるスイッチや、リモコン操作機780により行うことができる。筐体771およびリモコン操作機780には、先の実施の形態に示す半導体装置が搭載されている。そのため、情報の書き込みおよび読み出しが高速で、長期間の記憶保持が可能で、且つ消費電力が十分に低減されたテレビジョン装置が実現される。
【0271】
以上のように、本実施の形態に示す電子機器には、先の実施の形態に係る半導体装置が搭載されている。このため、消費電力を低減した電子機器が実現される。
【実施例1】
【0272】
本実施例では、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流を求めた結果について説明する。
【0273】
まず、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流が十分に小さいことを考慮して、チャネル幅Wが1mと十分に大きいトランジスタを用意してオフ電流の測定を行った。チャネル幅Wが1mのトランジスタのオフ電流を測定した結果を図18に示す。図18において、横軸はゲート電圧VG、縦軸はドレイン電流IDである。ドレイン電圧VDが+1Vまたは+10Vの場合、ゲート電圧VGが−5Vから−20Vの範囲では、トランジスタのオフ電流は、検出限界である1×10−12A以下であることがわかった。また、トランジスタのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は1aA/μm(1×10−18A/μm)以下となることがわかった。
【0274】
次に、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流をさらに正確に求めた結果について説明する。上述したように、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流は、測定器の検出限界である1×10−12A以下であることがわかった。そこで、特性評価用素子を作製し、より正確なオフ電流の値(上記測定における測定器の検出限界以下の値)を求めた結果について説明する。
【0275】
はじめに、電流測定方法に用いた特性評価用素子について、図19を参照して説明する。
【0276】
図19に示す特性評価用素子は、測定系800が3つ並列に接続されている。測定系800は、容量素子802、トランジスタ804、トランジスタ805、トランジスタ806、トランジスタ808を有する。トランジスタ804、トランジスタ805、トランジスタ806には、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタを適用した。
【0277】
測定系800において、トランジスタ804のソース端子およびドレイン端子の一方と、容量素子802の端子の一方と、トランジスタ805のソース端子およびドレイン端子の一方は、電源(V2を与える電源)に接続されている。また、トランジスタ804のソース端子およびドレイン端子の他方と、トランジスタ808のソース端子およびドレイン端子の一方と、容量素子802の端子の他方と、トランジスタ805のゲート端子とは、接続されている。また、トランジスタ808のソース端子およびドレイン端子の他方と、トランジスタ806のソース端子およびドレイン端子の一方と、トランジスタ806のゲート端子は、電源(V1を与える電源)に接続されている。また、トランジスタ805のソース端子およびドレイン端子の他方と、トランジスタ806のソース端子およびドレイン端子の他方とは、接続され、出力端子Voutとなっている。
【0278】
なお、トランジスタ804のゲート端子には、トランジスタ804のオン状態と、オフ状態を制御する電位Vext_b2が供給され、トランジスタ808のゲート端子には、トランジスタ808のオン状態と、オフ状態を制御する電位Vext_b1が供給される。また、出力端子からは電位Voutが出力される。
【0279】
次に、上記の特性評価用素子を用いた電流測定方法について説明する。
【0280】
まず、オフ電流を測定するために電位差を付与する初期化期間の概略について説明する。初期化期間においては、トランジスタ808のゲート端子に、トランジスタ808をオン状態とする電位Vext_b1を入力して、トランジスタ804のソース端子またはドレイン端子の他方と接続されるノード(つまり、トランジスタ808のソース端子およびドレイン端子の一方、容量素子802の端子の他方、およびトランジスタ805のゲート端子に接続されるノード)であるノードAに電位V1を与える。ここで、電位V1は、例えば高電位とする。また、トランジスタ804はオフ状態としておく。
【0281】
その後、トランジスタ808のゲート端子に、トランジスタ808をオフ状態とする電位Vext_b1を入力して、トランジスタ808をオフ状態とする。トランジスタ808をオフ状態とした後に、電位V1を低電位とする。ここでも、トランジスタ804はオフ状態としておく。また、電位V2は電位V1と同じ電位とする。以上により、初期化期間が終了する。初期化期間が終了した状態では、ノードAとトランジスタ804のソース電極及びドレイン電極の一方との間に電位差が生じ、また、ノードAとトランジスタ808のソース電極及びドレイン電極の他方との間に電位差が生じることになるため、トランジスタ804およびトランジスタ808には僅かに電荷が流れる。つまり、オフ電流が発生する。
【0282】
次に、オフ電流の測定期間の概略について説明する。測定期間においては、トランジスタ804のソース端子またはドレイン端子の一方の端子の電位(つまりV2)、および、トランジスタ808のソース端子またはドレイン端子の他方の端子の電位(つまりV1)は低電位に固定しておく。一方、測定期間中は、上記ノードAの電位は固定しない(フローティング状態とする)。これにより、トランジスタ804に電荷が流れ、時間の経過と共にノードAに保持される電荷量が変動する。そして、ノードAに保持される電荷量の変動に伴って、ノードAの電位が変動する。つまり、出力端子の出力電位Voutも変動する。
【0283】
上記電位差を付与する初期化期間、および、その後の測定期間における各電位の関係の詳細(タイミングチャート)を図20に示す。
【0284】
初期化期間において、まず、電位Vext_b2を、トランジスタ804がオン状態となるような電位(高電位)とする。これによって、ノードAの電位はV2すなわち低電位(VSS)となる。その後、電位Vext_b2を、トランジスタ804がオフ状態となるような電位(低電位)として、トランジスタ804をオフ状態とする。そして、次に、電位Vext_b1を、トランジスタ808がオン状態となるような電位(高電位)とする。これによって、ノードAの電位はV1、すなわち高電位(VDD)となる。その後、Vext_b1を、トランジスタ808がオフ状態となるような電位とする。これによって、ノードAがフローティング状態となり、初期化期間が終了する。
【0285】
その後の測定期間においては、電位V1および電位V2を、ノードAに電荷が流れ込み、またはノードAから電荷が流れ出すような電位とする。ここでは、電位V1および電位V2を低電位(VSS)とする。ただし、出力電位Voutを測定するタイミングにおいては、出力回路を動作させる必要が生じるため、一時的にV1を高電位(VDD)とすることがある。なお、V1を高電位(VDD)とする期間は、測定に影響を与えない程度の短期間とする。
【0286】
上述のようにして電位差を与え、測定期間が開始されると、時間の経過と共にノードAに保持される電荷量が変動し、これに従ってノードAの電位が変動する。これは、トランジスタ805のゲート端子の電位が変動することを意味するから、時間の経過と共に、出力端子の出力電位Voutの電位も変化することとなる。
【0287】
得られた出力電位Voutから、オフ電流を算出する方法について、以下に説明する。
【0288】
オフ電流の算出に先だって、ノードAの電位Vと、出力電位Voutとの関係を求めておく。これにより、出力電位VoutからノードAの電位Vを求めることができる。上述の関係から、ノードAの電位Vは、出力電位Voutの関数として次式のように表すことができる。
【0289】
【数1】

【0290】
また、ノードAの電荷Qは、ノードAの電位V、ノードAに接続される容量C、定数(const)を用いて、次式のように表される。ここで、ノードAに接続される容量Cは、容量素子802の容量と他の容量の和である。
【0291】
【数2】

【0292】
ノードAの電流Iは、ノードAに流れ込む電荷(またはノードAから流れ出る電荷)の時間微分であるから、ノードAの電流Iは次式のように表される。
【0293】
【数3】

【0294】
このように、ノードAに接続される容量Cと、出力端子の出力電位Voutから、ノードAの電流Iを求めることができる。
【0295】
以上に示す方法により、オフ状態においてトランジスタのソースとドレイン間を流れるリーク電流(オフ電流)を測定することができる。
【0296】
本実施例では、チャネル長L=10μm、チャネル幅W=50μmの、高純度化した酸化物半導体を用いてトランジスタ804、トランジスタ805、トランジスタ806、トランジスタ808を作製した。また、並列された各測定系800において、容量素子802の各容量値を、100fF、1pF、3pFとした。
【0297】
なお、本実施例に係る測定では、VDD=5V、VSS=0Vとした。また、測定期間においては、電位V1を原則としてVSSとし、10〜300secごとに、100msecの期間だけVDDとしてVoutを測定した。また、素子に流れる電流Iの算出に用いられるΔtは、約30000secとした。
【0298】
図21に、上記電流測定に係る経過時間Timeと、出力電位Voutとの関係を示す。図21より、時間の経過にしたがって、電位が変化している様子が確認できる。
【0299】
図22には、上記電流測定によって算出された室温(25℃)におけるオフ電流を示す。なお、図22は、ソース−ドレイン電圧Vと、オフ電流Iとの関係を表すものである。図22から、ソース−ドレイン電圧が4Vの条件において、オフ電流は約40zA/μmであることが分かった。また、ソース−ドレイン電圧が3.1Vの条件において、オフ電流は10zA/μm以下であることが分かった。なお、1zAは10−21Aを表す。
【0300】
さらに、上記電流測定によって算出された85℃の温度環境下におけるオフ電流について図23に示す。図23は、85℃の温度環境下におけるソース−ドレイン電圧Vと、オフ電流Iとの関係を表すものである。図23から、ソース−ドレイン電圧が3.1Vの条件において、オフ電流は100zA/μm以下であることが分かった。
【0301】
以上、本実施例により、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタでは、オフ電流が十分に小さくなることが確認された。
【実施例2】
【0302】
開示する発明の一態様にかかる半導体装置の書き換え可能回数につき調査した。本実施例では、当該調査結果につき、図24を参照して説明する。
【0303】
調査に用いた半導体装置は、図11(A)に示す回路構成の半導体装置である。ここで、トランジスタ162に相当するトランジスタには酸化物半導体を用い、容量素子164に相当する容量素子としては、0.33pFの容量値のものを用いた。
【0304】
調査は、初期のメモリウィンドウ幅と、情報の保持および情報の書き込みを所定回数繰り返した後のメモリウィンドウ幅とを比較することにより行った。情報の保持および情報の書き込みは、図11(A)における第3の配線に相当する配線に0V、または5Vのいずれかを与え、第4の配線に相当する配線に、0V、または5Vのいずれかを与えることにより行った。第4の配線に相当する配線の電位が0Vの場合には、トランジスタ162に相当するトランジスタ(書き込み用トランジスタ)はオフ状態であるから、フローティングゲート部FGに与えられた電位が保持される。第4の配線に相当する配線の電位が5Vの場合には、トランジスタ162に相当するトランジスタはオン状態であるから、第3の配線に相当する配線の電位がフローティングゲート部FGに与えられる。
【0305】
メモリウィンドウ幅とは記憶装置の特性を示す指標の一つである。ここでは、異なる記憶状態の間での、第5の配線に相当する配線の電位Vcgと、トランジスタ160に相当するトランジスタ(読み出し用トランジスタ)のドレイン電流Idとの関係を示す曲線(Vcg−Id曲線)の、シフト量ΔVcgをいうものとする。異なる記憶状態とは、フローティングゲート部FGに0Vが与えられた状態(以下、Low状態という)と、フローティングゲート部FGに5Vが与えられた状態(以下、High状態という)をいう。つまり、メモリウィンドウ幅は、Low状態とHigh状態において、電位Vcgの掃引を行うことで確認できる。ここで、Low状態では−2V以上5V以下の範囲で電位Vcgの掃引を行い、High状態では−7V以上0V以下の範囲で電位Vcgの掃引を行った。また、いずれの場合も、ソース電位を基準としたドレイン電位との電位差Vds=1Vとした。
【0306】
図24に、初期状態のメモリウィンドウ幅と、1×10回の書き込みを行った後のメモリウィンドウ幅の調査結果を示す。なお、図24において、横軸はVcg(V)を示し、縦軸はId(A)を示す。また、実線は1回目の書き込みにおける特性曲線を示し、破線は1×10回目の書き込みにおける特性曲線を示す。また、実線と破線双方において、左側の曲線はHigh状態における特性曲線を示し、右側の曲線はLow状態における特性曲線を示す。図24から、1×10回の書き込み前後においてメモリウィンドウ幅が変化していないことが確認できる。1×10回の書き込み前後においてメモリウィンドウ幅が変化しないということは、少なくともこの間は、半導体装置の特性が変化しないことを示すものである。
【0307】
上述のように、開示する発明の一態様に係る半導体装置は、保持および書き込みを1×10回もの多数回繰り返しても特性が変化せず、書き換え耐性が極めて高い。つまり、開示する発明の一態様によって、極めて信頼性の高い半導体装置が実現されるといえる。
【符号の説明】
【0308】
100 基板
102 保護層
104 半導体領域
106 素子分離絶縁層
108 ゲート絶縁層
110 ゲート電極
116 チャネル形成領域
120 不純物領域
122 金属層
124 金属化合物領域
126 電極
128 絶縁層
130 絶縁層
142a ソース電極またはドレイン電極
142b ソース電極またはドレイン電極
143a 絶縁層
143b 絶縁層
144 酸化物半導体層
146 ゲート絶縁層
148a ゲート電極
148b 電極
150 絶縁層
152 絶縁層
154 電極
156 配線
160 トランジスタ
162 トランジスタ
164 容量素子
180 領域
182 コンタクト領域
500 ベース基板
502 窒素含有層
510 単結晶半導体基板
512 酸化膜
514 脆化領域
516 単結晶半導体層
518 単結晶半導体層
520 半導体層
522 絶縁層
522a ゲート絶縁層
524 導電層
524a ゲート電極
526 チャネル形成領域
528 不純物領域
530 電極
532 絶縁層
534 絶縁層
542a ソース電極またはドレイン電極
542b ソース電極またはドレイン電極
543a 絶縁層
543b 絶縁層
544 酸化物半導体層
546 ゲート絶縁層
548a ゲート電極
548b 電極
550 絶縁層
552 絶縁層
554 電極
556 配線
560 トランジスタ
562 トランジスタ
564 容量素子
701 筐体
702 筐体
703 表示部
704 キーボード
711 本体
712 スタイラス
713 表示部
714 操作ボタン
715 外部インターフェイス
720 電子書籍
721 筐体
723 筐体
725 表示部
727 表示部
731 電源
733 操作キー
735 スピーカー
737 軸部
740 筐体
741 筐体
742 表示パネル
743 スピーカー
744 マイクロフォン
745 操作キー
746 ポインティングデバイス
747 カメラ用レンズ
748 外部接続端子
749 太陽電池セル
750 外部メモリスロット
761 本体
763 接眼部
764 操作スイッチ
765 表示部
766 バッテリー
767 表示部
770 テレビジョン装置
771 筐体
773 表示部
775 スタンド
780 リモコン操作機
800 測定系
802 容量素子
804 トランジスタ
805 トランジスタ
806 トランジスタ
808 トランジスタ
1100 メモリセル
1111 第1の駆動回路
1112 第2の駆動回路
1113 第3の駆動回路
1114 第4の駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、を含む複数のメモリセルを有し、
前記第1のトランジスタは、
第1のチャネル形成領域と、
前記第1のチャネル形成領域上に設けられた第1のゲート絶縁層と、
前記第1のチャネル形成領域と重畳して、前記第1のゲート絶縁層上に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のチャネル形成領域と電気的に接続する第1のソース電極及び第1のドレイン電極と、を含み、
前記第2のトランジスタは、
第2のチャネル形成領域と、
前記第2のチャネル形成領域と電気的に接続する第2のソース電極及び第2のドレイン電極と、
前記第2のチャネル形成領域と重畳して設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のチャネル形成領域と前記第2のゲート電極との間に設けられた第2のゲート絶縁層と、を含み、
前記第1のチャネル形成領域と前記第2のチャネル形成領域は、異なる半導体材料を含んで構成され、
前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとは、少なくとも一部が重畳して設けられ、
前記メモリセルの一と他のメモリセルとを接続する配線と、前記第1のソース電極または前記第1のドレイン電極の一方と、が前記第2のソース電極及び前記第2のドレイン電極の一方を介して電気的に接続する半導体装置。
【請求項2】
前記第1のソース電極及び前記第1のドレイン電極の一方と、前記第2のソース電極及び前記第2のドレイン電極の一方と、が接する領域は、前記第2のソース電極及び前記第2のドレイン電極の一方と、前記メモリセルの一と他のメモリセルとを接続する配線と、が接する領域と重なっている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2のソース電極及び前記第2のドレイン電極の一方と、前記第1のソース電極または前記第1のドレイン電極の一方とは、同一物である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2のソース電極及び前記第2のドレイン電極の一方と、前記第1のソース電極及び第1のドレイン電極の一方と、が接する領域は、前記第2のソース電極及び前記第2のドレイン電極の一方と、前記メモリセルの一と他のメモリセルとを接続する配線と、が接する領域と重なっている請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
m本(mは2以上の整数)の信号線と、
m本のワード線と、
n本(nは2以上の整数)のビット線と、
k本(kはn未満の自然数)のソース線と、
マトリクス状に配置された(m×n)個のメモリセルと、
前記ビット線と電気的に接続された第1の駆動回路と、
前記ソース線と電気的に接続された第2の駆動回路と、
前記信号線と電気的に接続された第3の駆動回路と、
前記ワード線と電気的に接続された第4の駆動回路と、を有し、
前記メモリセルの一は、
第1のゲート電極、第1のソース電極、第1のドレイン電極、及び第1のチャネル形成領域を含む第1のトランジスタと、
第2のゲート電極、第2のソース電極、第2のドレイン電極、及び第2のチャネル形成領域を含む第2のトランジスタと、
容量素子と、を有し、
前記第1のチャネル形成領域と前記第2のチャネル形成領域は、異なる半導体材料を含んで構成され、
前記第2のソース電極と前記第2のドレイン電極の一方と、前記容量素子の電極の一方と、前記第1のゲート電極と、は電気的に接続され、
前記ソース線の一と、前記第1のソース電極とは、電気的に接続され、
前記ビット線の一と、前記第2のソース電極と前記第2のドレイン電極の他方と、前記第1のドレイン電極と、は電気的に接続され、
前記ワード線の一と、前記容量素子の電極の他方と、は電気的に接続され、
前記信号線の一と、前記第2のゲート電極と、は電気的に接続され、
前記ソース線の一は、前記メモリセルの一を含むj個(jは(m+1)以上(m×n)以下の整数)のメモリセルがそれぞれ有する第1のソース電極の全てに電気的に接続された半導体装置。
【請求項6】
m本(mは2以上の整数)の信号線と、
m本のワード線と、
n本(nは2以上の整数)のビット線と、
k本(kはn未満の自然数)のソース線と、
マトリクス状に配置された(m×n)個のメモリセルと、
前記ビット線と電気的に接続された第1の駆動回路と、
前記ソース線と電気的に接続された第2の駆動回路と、
前記信号線と電気的に接続された第3の駆動回路と、
前記ワード線と電気的に接続された第4の駆動回路と、を有し、
前記メモリセルの一は、
第1のゲート電極、第1のソース電極、第1のドレイン電極、及び第1のチャネル形成領域を含む第1のトランジスタと、
第2のゲート電極、第2のソース電極、第2のドレイン電極、及び第2のチャネル形成領域を含む第2のトランジスタと、
容量素子と、を有し、
前記第1のチャネル形成領域と前記第2のチャネル形成領域は、異なる半導体材料を含んで構成され、
前記第2のソース電極と前記第2のドレイン電極の一方と、前記容量素子の電極の一方と、前記第1のゲート電極と、は電気的に接続され、
前記ソース線の一と、前記第1のソース電極とは、電気的に接続され、
前記ビット線の一と、前記第2のソース電極と前記第2のドレイン電極の他方と、前記第1のドレイン電極と、は電気的に接続され、
前記ワード線の一と、前記容量素子の電極の他方と、は電気的に接続され、
前記信号線の一と、前記第2のゲート電極と、は電気的に接続され、
前記ソース線の一は、前記メモリセルの一を含む(m×n/k)個のメモリセルがそれぞれ有する第1のソース電極の全てに電気的に接続された半導体装置。
【請求項7】
前記第1のトランジスタは、前記第1のチャネル形成領域を挟むように設けられた不純物領域を有する請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2のトランジスタの前記第2のチャネル形成領域は、酸化物半導体を含んで構成される請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−181908(P2011−181908A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17923(P2011−17923)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】