説明

回転式処理装置、処理システム及び回転式処理方法

【課題】最外周誘導壁によって容器の開口部を開閉することにより、占有面積の小型化、及び処理の短時間化を実現する。
【解決手段】回転式処理装置1に、容器1A、回転保持機構7、処理液吐出アーム30、誘導壁16,17、及びエアシリンダ22,23を設けた。回転保持機構7は、容器1Aの開口部37から搬入された被処理基板3を水平に保持して回転させる。誘導壁16,17は、回転保持機構7の外周側に同心状に配置され、処理液吐出アーム30から吐出された処理液の廃液を分別して排液する。エアシリンダ22,23は、誘導壁16,17のそれぞれを上端部が回転保持機構に保持された被処理基板3よりも上方に位置する回収位置と下方に位置する退避位置との間で昇降させる。誘導壁16,17のうち最外周誘導壁17は、回収位置で開口部37を閉鎖し、退避位置で開口部37を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体基板、液晶ガラス基板、磁気ディスク等の精密基板である被処理基板を1枚ずつ処理するための回転式処理装置、回転式処理装置を備えた処理システム、及び処理システムで実行される回転式処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶ディスプレイ、磁気ディスク等の製造には、
精密基板表面へ膜を被覆する塗布工程、
有機皮膜にパターンを形成する現像工程、
金属、酸化物又は有機物等の皮膜に覆われた被処理基板の皮膜を処理液と化学反応させ除去する工程、
被処理基板の清浄度を向上させるため被処理基板の汚染物を除去する工程など、
材料となる精密基板へ処理液を吐出し、処理を行う工程が多数含まれる。
【0003】
一般的に、フォトリソ工程と呼ばれるレジスト塗布工程や現像工程では、被処理基板を一枚ずつ処理する回転式処理装置が採用されている。
【0004】
また、被処理基板の皮膜を除去する工程や被処理基板の汚染物を除去する工程では、従来は、複数枚の被処理基板を一括して処理するバッチ式処理装置が主流であった。
【0005】
ところが、バッチ式処理装置では、複数枚の被処理基板を収納したカセット内で、処理中に隣接する被処理基板からの再汚染を生じる。
【0006】
このため、近年では、被処理基板を一枚ずつ処理する回転式処理装置が採用されている。回転式処理装置は、被処理基板を水平に保持して回転させる回転保持機構と、回転保持機構に保持された被処理基板の被処理面に向けて処理液を吐出する処理液吐出機構造と、を容器内に備えている。容器には、開口部が形成されている。被処理基板は、開口部を経由して回転保持機構に搬入出される。
【0007】
処理液吐出機構からは、一般に、複数種類の処理液が順次吐出される。処理液吐出機構から吐出された複数種類の処理液の廃液は、環境性を考慮して再利用しようとすると、それぞれ個別に回収する必要がある。
【0008】
そこで、回転式処理装置では、複数種類の処理液の廃液をそれぞれ個別の排液経路に導く複数の誘導壁を、回転保持機構の外周側に同心状に配置したものがある(例えば、特許文献1又は2)。複数の誘導壁のそれぞれを回転保持機構に保持された被処理基板に対して相対的に昇降させ、複数の誘導壁の何れかの開口部を選択的に開放することで、複数種類の処理液の廃液がそれぞれ個別の排液経路を経由して個別に回収される。
【特許文献1】特許第3966848号公報
【特許文献2】特開2004−31400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の回転式処理装置では、処理液及びその雰囲気が開口部から容器外部に漏出することによる外部環境の劣化を防止するために、開口部を開閉するシャッタが装置外部に設けられており、装置の専有面積が大型化する問題があった。
【0010】
また、従来の回転式処理装置では、被処理基板の処理を開始する前にシャッタを閉鎖位置に移動させ、処理済の被処理基板の搬出の開始前にシャッタを開放位置に移動させる必要があり、処理に要する時間とは別にシャッタを開閉する時間が必要となって、被処理基板の処理が長時間化する問題があった。近年、回転式処理装置に対して処理能力の向上だけでなくスループットの向上の要請が強いが、処理能力と処理に要する時間とはトレードオフの関係にあり、処理時間内で処理に要する時間以外の時間の短縮はスループットの向上のために極めて重要な課題である。
【0011】
この発明の目的は、最も外側に位置する最外周誘導壁によって容器の開口部を開閉することにより、占有面積の小型化、及び処理の短時間化を実現できる回転式処理装置、処理システム及び回転式処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の回転式処理装置は、容器、回転保持機構、処理液吐出機構、複数の誘導壁、及び昇降機構を備えている。容器は、被処理基板が搬入出される開口部を備え、回転保持機構、処理液吐出機構及び複数の誘導壁を収納する。回転保持機構は、開口部から搬入された被処理基板を水平に保持して回転させる。処理液吐出機構は、回転保持機構に保持された被処理基板の被処理面に向けて複数の処理液を順次吐出する。複数の誘導壁は、回転保持機構の外周側に同心状に配置され、処理液吐出機構から吐出された複数の処理液のそれぞれの廃液を分別して排液する。昇降機構は、複数の誘導壁のそれぞれを上端部が回転保持機構に保持された被処理基板よりも上方に位置する回収位置と下方に位置する退避位置との間で昇降させる。複数の誘導壁のうち最も外側に位置する最外周誘導壁は、回収位置で開口部を閉鎖し、退避位置で開口部を開放する。
【0013】
この構成により、処理液の廃液を分別して排液する複数の誘導壁のうちで最も外側に位置する最外周誘導壁を回収位置に位置させると開口部が閉鎖され、退避位置に位置させると開口部が開放される。したがって、最外周誘導壁が開口部の開閉部材として機能し、開口部の開閉部材としてのみ機能するシャッタを備える必要がない。
【0014】
この構成において、最外周誘導壁は、回収位置で開口部の上縁部に水平方向に重複する凹凸部を上端に全周にわたって備えることが好ましい。最外周誘導壁を回収位置に位置させると、最外周誘導壁の上端の凹凸部が開口部の上縁部に水平方向に重複し、処理液の飛沫や雰囲気が開口部から外部に漏出することを防止できる。
【0015】
この発明の処理システムは、少なくとも1つの上記の回転式処理装置と、開口部を経由して回転保持機構に被処理基板を搬入出する搬送装置と、を備えている。回転式処理装置で処理を受ける被処理基板を、搬送装置によって開口部を経由して回転保持機構に搬入出することができる。被処理基板の搬入出を行う搬送装置と回転式処理装置内で被処理基板を保持する回転保持機構との距離が短縮され、処理システムの占有面積を小型化できるだけでなく、被処理基板の搬送時間を短縮できる。これによって、スループットをより向上できる。
【0016】
この構成において、被処理基板を収納する少なくとも1つのケースを備えることが好ましい。搬送装置によって、回転式処理装置とケースとの間で被処理基板を搬送することができる。導体製造工場などで使用されているウェハ搬送用ケース(FOUPやSMIF、オープンカセットなど)に収納された精密基板を被処理基板として、量産型の製造工場で汎用の処理システムを構築できる。
【0017】
上記の処理システムで被処理基板を処理するこの発明の回転式処理方法では、搬送装置による回転保持機構への被処理基板の搬入が完了すると、最外周誘導壁を回収位置まで上昇させた後に、回転保持機構によって被処理基板を回転させるとともに処理液吐出機構から処理液を吐出して処理を開始する。また、回転式処理装置における被処理基板の処理が終了した時に、回転保持機構による被処理基板の回転を停止させて複数の誘導壁を退避位置に下降させ、複数の誘導壁が退避位置まで下降したタイミングで搬送装置による回転保持機構からの被処理基板の搬出を開始する。
【0018】
したがって、最外周誘導壁の昇降を含む処理を、搬送装置による回転保持機構への被処理基板の搬入後に直ちに開始できる。また、搬送装置による回転保持機構からの被処理基板の搬出を、処理の終了後に直ちに開始できる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、最外周誘導壁を開口部の開閉部材として機能させることで、開口部の開閉部材としてのみ機能するシャッタを不要にすることができ、占有面積の小型化、及び処理の短時間化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る処理システムの概略の平面図である。図2は、図1のX−X線における側面断面図である。
【0021】
本発明の第1の実施形態に係る処理システム100は、各1台の回転式処理装置1、容器5及び搬送装置2、並びに2つの搬送専用ケース4を備えている。容器5については後述する。搬送装置2は、一例として、直角座標型の搬送ロボット41を備えている。搬送ロボット41は、3本のアームで構成された基板保持部6を備え、垂直軸回りに360°旋回可能にされている。搬送ロボット41は、処理装置1と搬送専用ケース4との間で被処理基板3を平面視において曲線的に搬送する。
【0022】
なお、搬送ロボット41として、円筒座標型の搬送ロボットを用いても良い。この場合、被処理基板3を2つの搬送専用ケース4の各々に搬入出するために、2つの搬送専用ケース4の配置方向に平行なレールを搬送装置2に備える必要がある。
【0023】
基板保持部6は、被処理基板3の表裏を反転させる反転機構を備えることも可能である。また、処理後の被処理基板3を基板保持部6との接触で再汚染させないために、搬送ロボット41は、処理前の被処理基板3と処理後の被処理基板3とを個別に保持する2つ以上の基板保持部6を備えていることが好ましい。
【0024】
2つの搬送専用ケース4は、それぞれ搬送装置2の側面に設けられた2つの載置部48に着脱自在に装着される。各搬送専用ケース4は、複数枚の被処理基板3を上下方向に収納する。処理システム100は、一例として、2つの搬送専用ケース4を装着している。搬送専用ケース4の数は、製造工程や生産状況によって変化するが、処理前の被処理基板3を保管する搬送専用ケース4と処理後の被処理基板を保管する搬送専用ケース4との少なくとも2つを備えることが好ましい。
【0025】
回転式処理装置1は、容器1A内にそれぞれノズル30A,35Aを有する処理液吐出アーム30,35を備えている。処理液吐出アーム30,35は、ノズル30A,35Aのそれぞれから、一例として、処理液、リンス液の2種類の処理液を吐出する。回転式処理装置1は、2種類の処理液を用いて2段階の処理を行う。
【0026】
処理液としては、有機系処理液、アルカリ系処理液、酸系処理液、界面活性剤を添加した処理液、超純水に微量のガスを溶解させた機能水と呼ばれる処理液、オゾン水等を用いることもできる。
【0027】
リンス液としては、超純水やイソプロピルアルコールなどの有機系リンス液などが一般的に用いられる。
【0028】
図3及び図4は、図1のX−X線における本発明の回転式処理装置の要部の側面断面図である。図3は、回転式処理装置1における被処理基板の搬入出時の状態を示している。図4は、回転式処理装置1における被処理基板の処理時の状態を示している。
【0029】
回転式処理装置1は、容器1A内に、回転保持機構7、排液口13及び14、誘導壁16及び17、並びに排気口25及び26を備えている。
【0030】
回転保持機構7は、何れも図示しない支柱、スリーブ、軸受及び回転支持部材を、テーブル10及びモータ11とともに備えている。支柱は、容器1Aの中央部で軸方向を垂直にして固定されている。スリーブは、支柱に軸受を介して回転自在に外嵌している。回転支持部材は、スリーブの上端に固定されている。テーブル10は、回転支持部材の上端に固定されており、上面に設けられた複数の保持具39で被処理基板3を保持する。モータ11は、スリーブに回転を供給する。
【0031】
モータ11を駆動すると、スリーブ、回転支持部材及びテーブル10が支柱を中心に一体的に回転する。モータ11の回転をプーリとベルト又はギア列等の伝達機構を介してテーブル10に伝達することもできる。
【0032】
誘導壁16及び17は、一例として、平面視において円形環状を呈する筒状体であり、テーブル10の外側に同心状に配置されている。誘導壁16及び17は、この順に径を大きくされており、各々の内側に間隙が形成されている。誘導壁16及び17のそれぞれの上端には、内側に向けて鍔部が全周にわたって形成されている。
【0033】
誘導壁16及び17には、駆動軸19及び20の上端部が固定されている。駆動軸19及び20の下端部は、エアシリンダ22及び23に装着されている。駆動軸19及び20及びエアシリンダ22及び23が、この発明の昇降機構に相当する。駆動機構は、モータシリンダ、カム機構、ボールねじナット回転機構等によって構成することもできる。
【0034】
排液口13及び14は、それぞれ誘導壁16及び17のそれぞれの隙間の下部に連続しており、排液流路及び排気流路を構成している。排液口13及び14には、誘導壁16及び17から、一例として、それぞれ処理液、リンス液が導かれ、それぞれを個別に排液する。
【0035】
エアシリンダ22及び23に対する圧気の流入出を制御することにより、駆動軸19及び20を介して誘導壁16及び17が上方の回収位置と下方の退避位置の間に昇降する。誘導壁16及び17を適宜昇降させることで、排液口13及び14の何れかに至る排液流路及び排気流路を選択的に開放し、複数の処理廃液のそれぞれを所定の排液口13及び14を経由して排液する。配置すべき誘導壁の数は製造工程や生産性を考慮して使用する処理液の種類に応じて適宜変更できる。
【0036】
一例として、図4は、誘導壁16及び17のうちで最も外側に位置する最外周誘導壁17と誘導壁16との間の間隙が構成する排液流路が開放され、その他の排液流路は閉塞された状態を示している。
【0037】
各駆動軸19及び20の周囲には、例えば、ベローズで連結された固定フランジ及び可動フランジが配置されおり、各駆動軸19及び20は処理液の廃液や排気雰囲気と遮断されている。これにより、駆動部への漏液や腐食を防止でき、回転式処理装置1の信頼性、耐久性を向上できる。
【0038】
排気口25及び26は、それぞれ誘導壁16及び17のそれぞれの隙間の下部で、排液口13及び14よりも高い位置に配置されている。排気口25及び26は、各処理液の雰囲気のみを容器1A外へ排気する。
【0039】
なお、誘導壁16及び17の何れかによって開放されているものに対応する排気口25及び26のみを選択的に開放するように、排気口25及び26を開閉する手段を配置することが好ましい。
【0040】
また、容器1A内の圧力が一定となるように開度が自動で調製可能なオートダンパを配置することが、より好ましい。一般的に、容器1A内の圧力は、外部に対して負圧に制御される。
【0041】
排気流路には、排気口25及び26と排気流路への排液混入防止のための傘状の蓋が配置されており、容器1A内の雰囲気は、排気口25及び26と傘状の蓋との隙間から排気される。
【0042】
なお、排液路には、排液トラップを配置することが好ましく、また万一外気が混入した際にも効率的に排気、排液が可能なように滞留部を削減することが好ましい。
【0043】
また、廃液の分別回収及び再利用を行わない場合、それぞれの排液流路をひとつに集約させることもできる。これによって、部品点数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0044】
最外周誘導壁17には、上端に凸部28が配置されている。最外周誘導壁17が回収位置に位置している状態で、凸部28が開口部37の上縁部に形成された凹部37Aに水平方向に重複する状態で係合する。これによって、開口部37は、回収位置に位置する最外周誘導壁17で閉鎖される。
【0045】
最外周誘導壁17が退避位置に位置している状態では、開口部37は開放している。したがって、最外周誘導壁17は、処理廃液の排液経路を構成するとともに、開口部37を開閉する機能を備えている。
【0046】
凸部28及び凹部37Aは、互いに水平方向に重複する状態で係合する形状であれば、凹凸を互いに逆の形状とすることもでき、凸部と凹部とをそれぞれを凹凸形状とすることもできる。
【0047】
最外周誘導壁17に開口部37を開閉させる機能を備えることで、開口部37を開閉するためのみのシャッタが不要になり、回転式処理装置1の占有面積を小型化できる。
【0048】
また、誘導壁16及び17は、耐処理液性の観点から樹脂(特にフッ素樹脂)材料を素材とされるが、一般的に樹脂材料は撥水作用が大きく、処理液が誘導壁16及び17に飛散した場合に液滴となる。
【0049】
この液滴に向けてさらに処理液が飛散すると、液滴同士の衝突によって液滴が被処理基板3に飛散し、再付着した汚染物やウォータマークと呼ばれる水滴の跡が処理後の被処理基板3表面に残渣物として残り、歩留まりに大きく影響を及ぼす。
【0050】
このため、誘導壁16及び17の表面に親水性処理を施すことが有効である。親水性処理の方法については、樹脂表面粗度の制御、紫外線やアルカリ性薬液による樹脂表面の化学変化など、いずれも方法でも良い。誘導壁16及び17の表面に親水性処理を施すことにより、処理液が誘導壁16及び17に飛散した場合も液滴とならずに排液されるため、液滴同士の衝突による汚染物の再付着やウォータマークの発生を防止できる。
【0051】
容器1A内には、図示しない第1、第2の処理液供給管が配置されている。第1、第2の処理液供給管は、それぞれ処理液吐出アーム30及び35に接続されている。一例として、処理液吐出アーム30について、回転支持部29の下部には、駆動モータ31が配置されている。駆動モータ31を駆動すると、回転支持部29を中心に処理液吐出アーム30が被処理基板3の上部を円弧動作する。回転支持部29には、ノズル30Aが誘導壁16及び17と干渉しない高さの上側位置とノズル30Aが被処理基板3の表面にできるだけ近接する下側位置との間で昇降できるように、上下駆動機構32が備えられている。
【0052】
第1の処理液供給管から供給された処理液は、処理液吐出アーム30の先端のノズル30Aから被処理基板3の処理表面に吐出される。処理液吐出アーム35は、処理液吐出アーム30と同様に構成されている。
【0053】
テーブル10には、下部ノズル34が備えられている。被処理基板3の裏面も表面と同時に処理を行う場合には、処理液供給管から供給された処理液が下部ノズル34から被処理基板3の裏面に吐出される。処理液吐出アーム30は、液溜り防止のため、傾斜を与えることが好ましい。
【0054】
処理液供給管、回転支持部29、処理液吐出アーム30及び35及び駆動モータ31、上下駆動機構32は、本発明の処理液吐出機構に相当する。
【0055】
なお、処理液吐出機構は、少なくとも1つの処理液吐出アームを備え、複数の処理液を順次吐出するものであればよく、必ずしも複数の処理液吐出アームを備える必要はない。例えば、1つの処理液吐出アームに複数の処理液供給管を配置することで、3系統以上の処理液供給が可能であり、上述の誘導壁数と同様に、使用する処理液吐出アーム数や処理液種数についても製造工程や生産性に対応した処理液種数にすることができる。下部ノズル34についても同様である。
【0056】
上述の例では、被処理基板の表面/裏面が同時に処理できる処理装置を示しているが、裏面を処理しない製造工程においては、裏面処理用の下部ノズル34を取り外し、表面のみの処理を行う処理装置でも良い。
【0057】
また、上述の例では、被処理基板の表面及び裏面を同時に処理するため、テーブル10の上面に設けられた複数の保持具39で被処理基板3を保持しているが、裏面を処理しない場合は、被処理基板3の裏面をテーブル10の上面に吸引保持させることもできる。
【0058】
また、回転式処理装置1の内部雰囲気の清浄度を維持するため、回転式処理装置1の上板、側板、下板などの外側面を構成する部材の固定は、Oリング、樹脂パッキン又はメタルCリングなど各種封止具を介して行うことが好ましい。
【0059】
また、処理液供給配管は滞留部を少なくすることが好ましく、処理液の秤量や供給を行う処理液供給システム、及び脱気やガス添加を行う部品については回転式処理装置1の内部又は外部直近に配置することが好ましい。
【0060】
本実施例の回転式処理装置1の上部には、清浄な空気を処理装置内に供給するためのファンとフィルタとから構成されるファンフィルタユニット38が配置されている。
【0061】
ファンフィルタユニット38は、図示しないファンの回転数(例えば、インバータ)又は出力電圧を調整することにより、回転式処理装置1のサイズ等の構成に応じて、例えば、毎分2〜10m程度の範囲でガス供給量を制御する。
【0062】
装置や工場の定期メンテナンス時、又は装置の故障による緊急停止時には、生産工場の排気量が変動するため、所定の範囲内でファンの回転数等を制御することが好ましい。
【0063】
以下に、1枚の被処理基板3を処理する際の動作について詳細に説明する。
【0064】
搬送装置2の搬送ロボット41は、搬送専用ケース4から処理前の被処理基板3を搬出する。その後、搬送ロボット41は、回転式処理装置1の開口部37に向けて旋回し、基板保持部6を回転式処理装置1の方向へ移動させ、被処理基板3を回転式処理装置1内へ搬入する。
【0065】
回転式処理装置1は、処理前の被処理基板3が搬入された後、保持部駆動機構40を駆動して保持部39を動作させ、処理前の被処理基板3を保持部39によって水平状態で保持する。
【0066】
次いで、誘導壁16、17を上下駆動機構22、23により上昇させ、回転式処理装置1の内部雰囲気と搬送装置の内部雰囲気とを遮断する。
【0067】
この後、被処理基板3を回転保持機構7によって回転させながら、ノズル30Aが被処理基板3の中心部の上方に達するまで第1の回転支持部29を中心に処理液吐出アーム30を旋回させる。さらに、上下駆動機構32によって処理液吐出アーム30を下降させ、ノズル30Aが被処理基板3の表面近傍に達するとノズル30Aから処理液を吐出させる。
【0068】
次に、回転保持機構7による被処理基板3の回転を継続しつつ、処理液吐出アーム30による処理液の吐出を停止し、誘導壁16を下降させ、処理液吐出アーム30を原点に戻す。さらに、処理液吐出アーム35をノズル35Aが被処理基板3の中心部の上方に達するまで旋回させた後、処理液吐出アーム35を下降させ、ノズル35Aが被処理基板3の表面近傍に達するとノズル35Aから処理液(例えば、超純水)を吐出させる。これによって、被処理基板3の最終処理を行う。
【0069】
最後に、被処理基板3の最終乾燥を行うため、処理液吐出アーム35による処理液の吐出を停止し、処理液吐出アーム35を原点に戻し、被処理基板3を高速回転させて表面に残っている液を振り切る。乾燥終了後、最外周誘導壁17を下降させ、処理を終了する。最外周誘導壁17が下降した状態で、処理後の被処理基板3を搬出準備状態となる。
【0070】
被処理基板3の処理終了後、搬送ロボット41は基板保持部6を回転式処理装置1の方向へ移動させ、処理前被処理基板3を搬送装置2へ搬出する。その後、搬送ロボット41は、処理後の被処理基板3を保管する搬送用ケース4の方向へ中心軸5廻りに旋回する。
【0071】
搬送ロボット41は、基板保持部6を搬送用ケース4の方向へ移動させ、処理済の被処理基板3を搬送用ケース4へ搬入し、処理が終了する。
【0072】
最終乾燥時において、振切り乾燥(スピン乾燥)と呼ばれる乾燥方法を用いた工程を示したが、被処理基板3の状態、製造工程、生産性などを考慮して、スピン乾燥以外の種々の乾燥方法を用いることができる。
【0073】
回転式処理装置1は、容器1Aの外部にシャッタを設ける必要がないため、搬送装置2と回転式処理装置1内の被処理基板3との距離を短くでき、処理システムの省占有面積化だけでなく、処理のスループットの向上を実現できる。
【0074】
また、レジスト塗布工程、現像工程では、被処理基板の処理前後で、被処理基板の温度制御管理が必要となる。本発明の回転式処理装置を上記の工程に採用する際には、処理前後の被処理基板3の温度制御管理のために、図1に示すように温度の精密制御が可能な容器5を備えることが好ましく、必要に応じて搬送ロボット41によって処理前後に被処理基板3を容器5に搬入出し、温度制御を行う。
【0075】
また、被処理基板3の皮膜を除去する工程、被処理基板3の汚染物を除去する工程に本処理システムを採用する場合において、被処理基板3の温度制御管理が必要ない場合には、温度制御を行う容器5を省くか、又はこれに代えて回転式処理装置1を備えることができる。容器5を省くことで本処理システムを小型化できる。また、容器5に代えて回転式処理装置1を備えることで生産性の向上を図ることができる。
【0076】
図5は、この発明の第2の実施形態に係る処理システムの概略の平面図である。図6は図5のX−X線における側面断面図である。第2の実施形態に係る処理システム200は、2つの搬送装置2,42、3つの回転式処理装置1、1つの温度制御容器5、2つの搬送用ケース4、1つの基板受渡部43を備えている。
【0077】
搬送装置2は、一例として直角座標型の搬送ロボット41を備えている。搬送ロボット41は、中心軸5を中心に360°旋回可能であり、基板保持部6を備え、3つの回転式処装置1、1つの容器8のそれぞれと基板受渡部43との間で被処理基板3を搬送する。容器8については後述する。
【0078】
搬送装置42は、一例として円筒座標型の搬送ロボット46を備えている。搬送ロボット46は、中心軸44に対し360°旋回可能であり、基板保持部45を備え、図示しないレールによって矢印B方向に沿って移動自在にされている。搬送ロボット46は、搬送用ケース4と基板受渡部43との間に被処理基板3を搬送する。基板保持部6、45は、反転機構を備えていることが好ましい。
【0079】
基板受渡部43は、被処理基板3が載置されるステージ47を備え、搬送装置2と搬送装置42との間で被処理基板3の受け渡しを行う。基板受渡部43は、処理前の被処理基板3用と処理済の被処理基板3用との2つのステージ47とを備えていることが好ましい。
【0080】
基板保持部6及び45は、被処理基板3の搬送時間を短縮するため、複数枚の被処理基板3を保持する保持部機構を備えたものであってもよい。この場合、基板受渡部43には、複数枚の被処理基板3を載置できるようにする必要がある。
【0081】
2つの搬送用ケース4は、それぞれ搬送装置42の側部に配置された搭載部48に搭載されている。搬送用ケース4は、2つに限るものではなく、製造工程、生産状況によって配置数を変更できる。処理前の被処理基板3及び処理後の被処理基板3を個別に保管する少なくとも2つの搬送用ケース4を配置することが好ましい。
【0082】
以下に、処理システム200で、1枚の被処理基板3を処理する際の動作を説明する。
【0083】
先ず、搬送装置46が、搬送ロボット46を矢印B方向に沿って搬送用ケース4に対向する位置まで移動させ、基板保持部45を搬送用ケース4の方向へ移動させて処理前の被処理基板3を搬送用ケース4から搬出する。
【0084】
次に、搬送装置46が、搬送ロボット46を矢印B方向に沿って基板受渡部43に対向する位置まで移動させた後に旋回させ、基板保持部45をステージ47の方向へ移動させて処理前の被処理基板3をステージ47上に載置する。
【0085】
この後、搬送装置2が、ステージ47に載置された被処理基板3を搬送ロボット41の基板保持部6に保持させ、基板保持部6が3つの回転式処理装置1のうち処理を行うべき回転式処理装置1に対向するように搬送ロボット41を旋回させる。
【0086】
処理すべき回転式処理装置1は、最外周誘導壁17を下降させて搬入出口37が開放した搬入準備状態にしている。搬送装置2は、基板保持部6を回転式処理装置1に向けて移動させ、処理前の被処理基板3を回転式処理装置1へ搬入する。
【0087】
回転式処理装置1は、第1の実施形態と同様にして、被処理基板3の処理を行う。処理が終了すると、回転式処理装置1は、最外周誘導壁17を下降させて搬入出口37を開放し、処理済の被処理基板3の搬出準備状態にする。
【0088】
搬送装置2は、基板保持部6を回転式処理装置1の内部に対して往復移動させ、処理済の被処理基板3を搬出する。
【0089】
その後、搬送装置2は、基板保持部6が基板受渡部43のステージ47に対向するように搬送ロボット41を旋回させ、基板保持部6を介して処理済の被処理基板3をステージ47上に載置する。
【0090】
搬送装置42は、ステージ47に載置された被処理基板3を基板保持部45に保持させた後、搬送ロボット46を矢印B方向に沿って移動させるとともに旋回させる。さらに、基板保持部45を搬送用ケース4に向けて移動させ、処理済の被処理基板3を搬送用ケース4へ搬入して処理を終了する。
【0091】
搬送装置2及び42は、搬送ロボット41及び46の複数の軸を同時に駆動するものであってもよい。
【0092】
搬送ロボット41及び46のそれぞれは、処理前後の被処理基板3を個別に保持する2つずつの基板保持部6、45を備えることが好ましい。
【0093】
処理システム200は、レジスト塗布工程や現像工程に使用される場合、容器8に温度制御を行う機構を備え、処理前後における被処理基板3の温度制御管理の必要に応じて、搬送ロボット41によって被処理基板3を容器8に搬入出して温度制御を行う。
【0094】
また、処理システム200は、被処理基板の皮膜を除去する工程や被処理基板の汚染物を除去する工程に使用される場合に、被処理基板3の温度制御管理の必要がない時には、容器8を省略するか、又はこれに代えて回転式処理装置1を備えることができる。容器8を省略することで、処理システム200を小型化できる。また、容器8に代えて回転処理装置1を備えることで、生産性を向上できる。
【0095】
生産工場で使用される搬送専用カセット4(例えばFOUPやSMIFなど)には、複数枚(例えば25枚)の被処理基板3を保管できる。そこで、3つの回転式処理装置1のそれぞれに被処理基板3を順次搬入し、処理済の被処理基板3を3つの回転式処理装置1から順次搬出することで、生産性の向上を図ることができる。
【0096】
3つの回転式処理装置1のそれぞれは、外部にシャッタを設ける必要がないため、搬送装置2と回転式処理装置1内の被処理基板3との距離を短くでき、処理システム200の省占有面積化だけでなく、処理のスループットの向上を実現できる。
【0097】
処理システム200に備える回転式処理装置1の台数は、生産性や製造工程により適宜変更することができる。複数の回転式処理装置1は水平方向に配置することに限らず、垂直方向に配置しても良い。複数の回転式処理装置1を垂直方向に配置する場合、搬送ロボット46を各段に配置することが好ましい。
【0098】
一つの回転式処理装置1で複数枚の被処理基板3の処理を同時に行うより、複数台の回転式処理装置1のそれぞれで1枚ずつの処理を連続して行うほうが生産性や歩留まりが向上する場合がある。処理システム200では、各回転式処理装置1に配置された誘導壁17により、搬送装置2と3つの回転式処理装置1とを隔離しているため、連続処理を行う製造工程に対応できる。
【0099】
なお、処理システム200においても、第1の実施形態と同様に、回転式処理装置1に配置された下部ノズル34を介して、表面と同時に裏面の処理を行っても良い。
【0100】
また、搬送装置2、42によって被処理基板3を回転式処理装置1内に搬出入する際に、各々の基板保持部6、45に配置した反転機構により、被処理基板3を反転させても良い。
【0101】
図7は、この発明の第3の実施形態に係る処理システムの概略の平面図である。第3の実施形態に係る処理システム300は、搬送装置2、搬送装置42、回転式処理装置1、2つの搬送用ケース4に加えて、他の基板処理装置として、2つのCMP装置49、スクラブ装置50を備えている。
【0102】
CMP装置49は、被処理基板3の表面の平坦性を向上させるために、研磨剤を用いて被処理基板3の表面を研磨する。
【0103】
スクラブ装置50は、ローラ51によって被処理基板3を回転させながら、CMP装置40における研磨で被処理基板3の表面に付着した研磨粒子をロールブラシ52で被処理基板3の表面から除去する前処理を行う。
【0104】
搬送装置2は、一例として直角座標型の搬送ロボット41を備えている。搬送ロボット41は、360°旋回可能であり、基板保持部6を備え、回転式処理装置1、基板受渡部43、2つのCMP49装置、スクラブ装置50に対する被処理基板3の搬入出を行う。
【0105】
搬送装置42は、一例として円筒座標型の搬送ロボット46を備えている。搬送ロボット46は、基板保持部45を備え、360°旋回可能、かつ矢印B方向に沿って移動自在にされている。搬送ロボット46は、搬送用ケース4と基板受渡部43との間に被処理基板3を搬送する。
【0106】
搬送装置2と搬送装置42のそれぞれは、処理前の被処理基板と処理済の被処理基板3を個別に保持する上下2つの基板保持部6、45を備え、上側の基板保持部6、45は被処理基板3の反転が可能な反転機構を備えていることが好ましい。
【0107】
2つの搬送用ケース4は、それぞれ搬送装置42の側部に配置された搭載部48に搭載されている。搬送用ケース4は、2つに限るものではなく、製造工程、生産状況によって配置数を変更できる。処理前の被処理基板3及び処理後の被処理基板3を個別に保管する少なくとも2つの搬送用ケース4を配置することが好ましい。
【0108】
以下に、1枚の被処理基板3を処理する際の処理システム300における動作を説明する。
【0109】
先ず、搬送装置42が、搬送ロボット46を矢印B方向に沿って搬送用ケース4に対向する位置まで移動させ、基板保持部45を搬送用ケース4の方向へ移動させて処理前の被処理基板3を搬送用ケース4から搬出する。
【0110】
次に、搬送装置46が、搬送ロボット46を矢印B方向に沿って基板受渡部43に対向する位置まで移動させた後に旋回させ、基板保持部45をステージ47の方向へ移動させて処理前の被処理基板3をステージ47上に載置する。
【0111】
この後、搬送装置2が、ステージ47に載置された被処理基板3を搬送ロボット41の基板保持部6に保持させ、基板保持部6が2つのCMP装置49のうち研磨を行うべきCMP装置49に対向するように搬送ロボット41を旋回させる。搬送装置2は、基板保持部6をCMP装置49の内部に対して往復移動させ、被処理基板3をCMP装置49へ搬入する。CMP装置49は、搬入された被処理基板3の表面に対して研磨を行う。
【0112】
CMP装置49による被処理基板3の研磨が終了すると、搬送装置2は、搬送ロボット41の基板保持部6を介して被処理基板3をCMP装置49から搬出する。さらに、搬送装置2は、基板保持部6に保持された被処理基板3がスクラブ装置50に接近するように搬送ロボット41を旋回させ、基板保持部6に保持された被処理基板3をスクラブ装置50内へ搬入する。スクラブ装置50は、搬入された被処理基板3に前処理を行う。
【0113】
スクラブ装置50における前処理が終了すると、搬送装置2は、基板保持部6を介して前処理済の被処理基板3をスクラブ装置50から搬出し、基板保持部6に保持された被処理基板3が回転式処理装置1に近接するように搬送ロボット41を旋回させる。
【0114】
回転式処理装置1は、最外周誘導壁17を下降させて搬入出口37が開放した搬入準備状態にしている。搬送装置2は、基板保持部6を回転式処理装置1に向けて移動させ、処理前の被処理基板3を回転式処理装置1へ搬入する。
【0115】
回転式処理装置1は、第1の実施形態と同様にして、被処理基板3の処理を行う。処理に用いる処理液は任意に選択できる。処理が終了すると、回転式処理装置1は、最外周誘導壁17を下降させて搬入出口37を開放し、処理済の被処理基板3の搬出準備状態にする。
【0116】
搬送装置2は、基板保持部6を処理装置1の内部に対して往復移動させ、処理済の被処理基板3を搬出する。
【0117】
その後、搬送装置2は、基板保持部6が基板受渡部43のステージ47に対向するように搬送ロボット41を旋回させ、基板保持部6を介して処理済の被処理基板3をステージ47上に載置する。
【0118】
搬送装置42は、ステージ47に載置された被処理基板3を基板保持部45に保持させた後、搬送ロボット46を矢印B方向に沿って移動させるとともに旋回させる。さらに、基板保持部45を搬送用ケース4に向けて移動させ、処理済の被処理基板3を搬送用ケース4へ搬入して処理を終了する。
【0119】
処理システム300は、2つのCMP装置49と1つのスクラブ装置50とを備えている。2つのCMP装置49のそれぞれに1枚の被処理基板3の研磨に要する時間よりも短い時間差を与えて被処理基板3を搬入し、研磨を終了した被処理基板2を順次スクラブ装置50に搬入することで、処理全体に要する時間を短縮できる。
【0120】
また、スクラブ装置50による前処理を終了した1枚目の被処理基板3に対して回転式処理装置1で処理している間に、前処理を終了した2枚目の被処理基板3を回転式処理装置1の近傍まで搬送しておくことで、生産性をより向上できる。
【0121】
回転式処理装置1に配置された下部ノズル34により、表面と同時に裏面の処理を行うこともできる。搬送装置2、42による回転式処理装置1への被処理基板3の搬入出時に基板保持部6、45に配置した反転機構により、被処理基板3を反転させることもできる。
【0122】
処理システム300では、被処理基板3の研磨及び処理を連続して行うことができるため、占有面積化を小型化できるだけでなく、生産性の向上及び歩留まりの向上を実現できる。
【0123】
また、図7に示す処理システム300では、2つのCMP装置49、1つのスクラブ装置50及び1つの回転式処理装置1を配置しているが、システムのレイアウト及び装置数については、生産性や歩留まりの向上を考慮して適宜変更できる。
【0124】
なお、処理システム300では、他の基板処理装置としてCMP装置49及びスクラブ装置50を配置しているが、生産性や歩留まりの向上に配慮して、被処理基板3に回転式処理装置1における処理とは異なる処理を施す他の基板処理装置を配置することもできる。
【0125】
但し、最外周誘導壁17による回転式処理装置1内の雰囲気と搬送装置2、42が配置されている雰囲気との間のシール性(気密性)は完全ではない。このため、他の基板処理装置は、薬液や超純水などを使用したウェット系の基板処理装置であることが好ましい。回転式処理装置1は、開口部37に配置された誘導壁17によって搬送装置2と隔離できるため、このようなウェット系の基板処理を連続して行う製造工程にも対応できる。
【0126】
特に、研磨済の被処理基板3を一旦搬送ケースに保管して乾燥させることとすると、乾燥後の研磨粒子を被処理基板3の表面から除去することが困難になる。この点で、処理システム300では、研磨後の被処理基板3を搬送ケースに保管することなくスクラブ装置50に搬送するようにしている。このため、研磨後の被処理基板3はウェット状態のまま前処理され、研磨粒子を被処理基板3の表面から容易に除去できる。
【0127】
図8は、この発明の第4の実施形態に係る処理システムの概略の平面図である。第4の実施形態に係る処理システム400は、搬送装置2、搬送装置42、3つの回転式処理装置1、2つの搬送用ケース4に加えて、保管装置53を備えている。搬送装置2と搬送装置42との間には、基板受渡部43が配置されている。
【0128】
搬送装置2は、一例として直角座標型の搬送ロボット41を備えている。搬送ロボット41は、360°旋回可能であり、基板保持部6を備え、回転式処理装置1、基板受渡部43、2つのCMP49装置、スクラブ装置50に対する被処理基板3の搬入出を行う。
【0129】
搬送装置42は、一例として円筒座標型の搬送ロボット46を備えている。搬送ロボット46は、基板保持部45を備え、360°旋回可能、かつ矢印B方向に沿って移動自在にされている。搬送ロボット46は、搬送用ケース4と基板受渡部43との間に被処理基板3を搬送する。
【0130】
搬送装置2と搬送装置42のそれぞれは、処理前の被処理基板と処理済の被処理基板3を個別に保持する上下2つの基板保持部6、45を備え、上側の基板保持部6、45は被処理基板3の反転が可能な反転機構を備えていることが好ましい。
【0131】
2つの搬送用ケース4は、それぞれ搬送装置42の側部に配置された搭載部48に搭載されている。搬送用ケース4は、2つに限るものではなく、製造工程、生産状況によって配置数を変更できる。処理前の被処理基板3及び処理後の被処理基板3を個別に保管する少なくとも2つの搬送用ケース4を配置することが好ましい。
【0132】
図8では、搬送用ケースを2つ設けた場合を示しているが、製造工程、生産状況によって搭載部数は変化するが、処理前の被処理基板3を保管する搬送用ケース4と処理後の被処理基板3を保管する搬送用ケース4との少なくとも2つの搭載部48を備えることが好ましい。
【0133】
保管装置53は、ガス供給手段71及びガス排気手段72を備えており、内部雰囲気のガス圧力及びガス濃度等の制御が可能である。
【0134】
ガス供給手段71は、減圧弁55、フィルタ56、マスフローコントローラ57、及びバルブ58を含むガス流量制御系で構成されており、保管装置53内部に不活性ガスを供給する。不活性ガスとしては窒素やアルゴンなどが好ましいが、被処理基板3の種類や処理目的に応じてガス種は任意に選択可能である。また、単一ガスではなく混合ガスとしてもよい。
【0135】
なお、ガス流量制御系を構築する部材については上記の組合せに限定されるものではないが、供給配管はガス滞留部が生じないように構成することが好ましい。また、ガス供給手段71は、圧力制御による流量制御を行う構成であってもよい。さらに、ガス供給口の配置位置は、保管装置53の側面に限定されるものではない。
【0136】
ガス排気手段72は、バルブ59及び真空ポンプ60を備え、真空排気を行う。ガス排気手段72は、バルブ61を介して工場の排気設備に接続されている。バルブ59とバルブ61により排気系を切り換えることができる。
【0137】
ガス排気手段72及び排気配管は、効率的なガス置換を行うため、ガス滞留部が生じないように構成すべきである。また、排気口は、流体の均一な流れを作り出すために同心状に配置することが好ましく、真空排気と一般排気の排気口を分けて配置してもよい。
【0138】
保管装置53は、遮蔽板54を備えており、回転式処理装置1内の雰囲気及び搬送装置2の雰囲気から隔離されている。このため、ガス供給手段71、ガス排気手段72によって保管容器53の雰囲気を瞬時に置換することができる。
【0139】
被処理基板3を材料とする電子デバイスの微細化、高集積化の進展により、配線パターンサイズはナノオーダである。このため、被処理基板3の汚染物として一般的に知られている金属やパーティクル以外に、大気中からの分子レベルの有機物や分子レベルの自然酸化膜が、電子デバイスの信頼性や歩留まりに大きな影響を与える。
【0140】
一般に、被処理基板3の自然酸化膜の形成には、酸化種である酸素と大気中に含まれる水分が相互に作用することが知られており、被処理基板3を処理後に大気雰囲気に暴露しないで保管容器53内で保管することにより、自然酸化膜の形成を抑制できる。
【0141】
処理システム400内に保管容器53を配置することにより、処理直後の被処理基板3を雰囲気が制御された保管容器53内で保管することができ、電子デバイスの信頼性、歩留まりに大きく影響を与える自然酸化膜の形成や有機物による汚染を抑制することができる。
【0142】
以下に、1枚の被処理基板3を処理する際の処理システム400における動作を説明する。
【0143】
先ず、搬送装置46が、搬送ロボット46を矢印B方向に沿って搬送用ケース4に対向する位置まで移動させ、基板保持部45を搬送用ケース4の方向へ移動させて処理前の被処理基板3を搬送用ケース4から搬出する。
【0144】
次に、搬送装置46が、搬送ロボット46を矢印B方向に沿って基板受渡部43に対向する位置まで移動させた後に旋回させ、基板保持部45をステージ47の方向へ移動させて処理前の被処理基板3をステージ47上に載置する。
【0145】
この後、搬送装置2が、ステージ47に載置された被処理基板3を搬送ロボット41の基板保持部6に保持させ、基板保持部6が4つの回転式処理装置1のうち処理を行うべき回転式処理装置1に対向するように搬送ロボット41を旋回させる。
【0146】
処理すべき回転式処理装置1は、最外周誘導壁17を下降させて搬入出口37が開放した搬入準備状態にしている。搬送装置2は、基板保持部6を回転式処理装置1に向けて移動させ、処理前の被処理基板3を回転式処理装置1へ搬入する。
【0147】
回転式処理装置1は、第1の実施形態と同様にして、被処理基板3の処理を行う。処理が終了すると、回転式処理装置1は、最外周誘導壁17を下降させて搬入出口37を開放し、処理済の被処理基板3の搬出準備状態にする。
【0148】
搬送装置2は、基板保持部6を処理装置1の内部に対して往復移動させ、処理済の被処理基板3を搬出する。さらに、搬送装置2は、基板保持部6に保持された被処理基板3が保管装置53に接近するように搬送ロボット6を旋回させる。
【0149】
保管装置53は、内部雰囲気と搬送装置2内の雰囲気とを遮断する遮蔽板54を開き、搬入準備状態にする。搬送装置2は、基板保持部6を保管装置53内部に向けて移動させ、被処理基板3を保管装置53内に搬入する。
【0150】
保管装置53は、被処理基板3が搬入された後、遮蔽板54を閉じて保管装置53内を密閉状態とし、搬送装置2内の雰囲気と隔離する。
【0151】
保管装置53は、被処理基板3の搬出時には、遮蔽板54を開き、搬出順次微状態にする。搬送装置2は、基板保持部6が保管装置53に均整するように搬送ロボット41を旋回させ、基板保持部6を保管装置53内に向けて移動させ、被処理基板3を保管装置53から搬出する。保管装置53は、被処理基板3が搬出された後に遮蔽板54を閉じる。
【0152】
この後、搬送装置2は、基板保持部6に保持された被処理基板3が基板受渡部43に近接するように搬送ロボット41を旋回させた後、基板保持部6を基板受渡部43に向けて移動させて処理済の被処理基板3を基板受渡部43に載置する。
【0153】
搬送装置42は、処理済の被処理基板3を搬送ロボット46の基板保持部45によって受け取り、搬送用ケース4に近接するように搬送ロボット46を矢印B方向に沿って移動させる。次いで、搬送装置42は、基板保持部35に保持された被処理基板3が搬送用ケース4に接近するように搬送ロボット46を旋回させる。
【0154】
搬送装置42は、基板保持部45を搬送用ケース4の方向へ移動させ、処理済の被処理基板3を搬送用ケース4へ搬入し、処理が終了する。
【0155】
図8には、保管装置53に保管された被処理基板3に対して次の処理を行う装置は示していない。保管装置53における遮蔽板54と対向する側面に遮蔽板62を開閉自在に配置し、保管装置53との間に遮蔽板62を挟む位置に搬送装置を配置する。搬送装置及びドライ系装置を配置する。これによって、回転式処理装置1に代表されるウェット系装置とドライ系装置との組み合わせが可能となり、被処理基板3に対する成膜作業や配線パターンのドライエッチング作業を処理に連続して行うことができる。
【0156】
被処理基板3の成膜前に処理を行い、酸化や有機物汚染を抑制することで電子デバイスの特性が向上する。また、エッチング後に残渣として残った化学物質が大気雰囲気に曝される前に被処理基板3の処理を行い、エッチング残渣を除去することで電子デバイスの特性が向上する。したがって、処理システム400により、電子デバイスの特性が向上し、生産性や歩留まりの向上を実現できる。
【0157】
なお、ドライ系装置は、拡散装置、CVD装置、エッチング装置に限らず、製造工程に応じて種々の装置を備えることができる。また、ドライ系装置に搬入する被処理基板3は、処理前であるか処理後であるかを問わない。
【0158】
処理システム400では、分子レベルの汚染を抑制した状態でウェット系処理とドライ系処理との連続処理が可能となり、電子デバイスの特性向上、生産性の向上、歩留まりの向上に貢献できるだけでなく、ドライ系装置を組み合わせた処理システムの省占有面積化が可能となる。
【0159】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る処理システムの概略の平面図である。
【図2】図1のX−X線における側面断面図である。
【図3】図1のX−X線における本発明の回転式処理装置の要部の側面断面図である。
【図4】同側面断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る処理システムの概略の平面図である。
【図6】図5のX−X線における側面断面図である。
【図7】この発明の第3の実施形態に係る処理システムの概略の平面図である。
【図8】この発明の第4の実施形態に係る処理システムの概略の平面図である。
【符号の説明】
【0161】
1 回転式処理装置
2 搬送装置
3 被処理基板
4 搬送専用カセット
7 回転保持機構
10 テーブル
13,14 排液口
16 誘導壁
17 最外周誘導壁
22,23 エアシリンダ
30 処理液吐出アーム
33 ノズル
34 下部ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板が搬入出される開口部を備えた容器と、
前記容器内で前記開口部から搬入された被処理基板を水平に保持して回転させる回転保持機構と、
前記回転保持機構に保持された被処理基板の被処理面に向けて複数の処理液を順次吐出する処理液吐出機構と、
前記容器内における前記回転保持機構の外周側に同心状に配置され、前記処理液吐出機構から吐出された複数の処理液のそれぞれの廃液を分別して排液する複数の誘導壁と、
前記複数の誘導壁のそれぞれを上端部が前記回転保持機構に保持された被処理基板よりも上方に位置する回収位置と下方に位置する退避位置との間で昇降させる昇降機構と、
を備え、
前記複数の誘導壁のうち最も外側に位置する最外周誘導壁は、前記回収位置で前記開口部を閉鎖し、前記退避位置で前記開口部を開放する回転式処理装置。
【請求項2】
前記最外周誘導壁は、前記回収位置で前記開口部の上縁部に水平方向に重複する凹凸部を上端に全周にわたって備えた請求項1に記載の回転式処理装置。
【請求項3】
少なくとも1つの請求項1又は2に記載の回転式処理装置と、
前記開口部を経由して前記回転保持機構に被処理基板を搬入出する搬送装置と、を備えた処理システム。
【請求項4】
被処理基板を収納する少なくとも1つのケースを備え、
前記搬送装置は、前記回転式処理装置と前記ケースとの間に被処理基板を搬送する請求項3に記載の処理システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の処理システムで被処理基板を処理する回転式処理方法であって、
前記搬送装置による前記回転保持機構への被処理基板の搬入が完了すると、前記最外周誘導壁を回収位置まで上昇させた後に、前記回転保持機構によって被処理基板を回転させるとともに前記処理液吐出機構から処理液を吐出して処理を開始し、
前記回転式処理装置における被処理基板の処理が終了した時に、前記回転保持機構による被処理基板の回転を停止させて前記複数の誘導壁を前記退避位置に下降させ、前記複数の誘導壁が前記退避位置まで下降したタイミングで前記搬送装置による前記回転保持機構からの被処理基板の搬出を開始する回転式処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−80840(P2010−80840A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249988(P2008−249988)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000108753)タツモ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】