排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法
【課題】 低コストでNOxを低減できるようにすること。
【解決手段】 エンジン1の各シリンダのうち所定のシリンダ2FをNOx放出用のシリンダとして使用する。ECU32により、シリンダ2Fの目標空燃比はリッチに設定されるため、未燃焼の燃料成分を含んだ排ガスが排出される。この排ガスは、切替弁11により各吸蔵部12,13のいずれかに選択的に供給される。排ガス中の未燃焼燃料成分により、吸蔵されていたNOxが放出される(S2)。放出されたNOx及び残りの未燃焼燃料成分は、還流通路L4及び吸気通路L1を介して燃焼室5内に還流する(S3)。NOxは、燃焼により一部が還元され、未燃焼燃料成分は燃焼に使用され、エンジン出力の一部となる(S4)。これにより、還元剤を無駄なく使用することができ、低コストでNOx浄化を行うことができる。
【解決手段】 エンジン1の各シリンダのうち所定のシリンダ2FをNOx放出用のシリンダとして使用する。ECU32により、シリンダ2Fの目標空燃比はリッチに設定されるため、未燃焼の燃料成分を含んだ排ガスが排出される。この排ガスは、切替弁11により各吸蔵部12,13のいずれかに選択的に供給される。排ガス中の未燃焼燃料成分により、吸蔵されていたNOxが放出される(S2)。放出されたNOx及び残りの未燃焼燃料成分は、還流通路L4及び吸気通路L1を介して燃焼室5内に還流する(S3)。NOxは、燃焼により一部が還元され、未燃焼燃料成分は燃焼に使用され、エンジン出力の一部となる(S4)。これにより、還元剤を無駄なく使用することができ、低コストでNOx浄化を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ディーゼルエンジン等のエンジンから排出される排ガス中のNOx(窒素化合物)を除去して排ガスを浄化することができる排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等から排出されるNOxを低減する方法としては、例えば、排ガスを再び燃焼室に戻して燃焼させるEGR(排気再循環)、排ガスを吸蔵してから還元させる吸蔵還元触媒法等が知られている。このうち、NOx低減効果が比較的大きい吸蔵還元触媒法がよく使用されている。
【0003】
第1の従来技術としては、空燃比リーン運転時に、NOxを酸化して吸蔵材に貯蔵せしめ、空燃比リッチ運転時に、排ガス中の未燃焼燃料(HC)や一酸化炭素とNOxとを反応させて還元し、浄化させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、第2の従来技術としては、排気通路中に2個の吸蔵還元触媒を設けて交互に切替使用し、一方の吸蔵還元触媒を使用してNOxを吸蔵中に、他方の吸蔵還元触媒に還元剤を供給して還元し、浄化させる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許2600492号公報
【特許文献2】特開昭62−106826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1の従来技術では、空燃比を変化させることにより、NOxの吸蔵と還元を制御するため、高度かつ複雑な空燃比制御を行う必要がある。また、燃焼状態を変化させる時にショックが生じる可能性もある。さらに、吸蔵されたNOxを還元させるために、燃料を過剰にして空燃比をリッチに切り替えると、その分だけ燃費が低下する。第1の従来技術では、排ガス中の未燃焼燃料成分を還元剤として利用するため、還元反応を確実かつ速やかに行わせるために、必要以上の燃料を還元剤として供給する必要がある。しかし、必要以上に供給された還元剤のうち、還元反応に使用されなかった還元剤は、排気として排出されてしまうため、燃料が無駄に使用されて燃費が悪化する。
【0006】
第2の従来技術では、吸蔵材からNOxを放出させ、さらに放出されたNOxを還元させるために、水素等の還元剤を使用しているが、還元剤は、還元反応のためだけに消費されるので、還元剤の分だけコストが増加する。水素に代えて燃料を還元剤に用いる場合は、前記同様に、燃焼に寄与しない還元剤としての燃料の分だけ燃費が低下する。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、還元剤を無駄にせずに効率よくNOxを浄化できる排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法を提供することにある。本発明の他の目的は、後述する実施の形態の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の排ガス浄化装置は、エンジンからの排ガス中のNOxを吸蔵する吸蔵手段と、エンジンの各シリンダのうち少なくとも一つ以上の所定のシリンダを選択し、この選択した所定のシリンダの目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定して燃焼させるエンジン制御手段と、所定のシリンダからのリッチ排気を吸蔵手段に供給することにより、吸蔵手段に吸蔵されたNOxを放出させるリッチ排気供給手段と、吸蔵手段から放出されたNOx及び所定のシリンダから吸蔵手段に供給されたリッチ排気を、エンジンの燃焼室に還流させる還流手段と、を備える。
【0009】
ここで、吸蔵手段としては、例えば、アルカリ金属(カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等)、アルカリ土類(バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)等)、希土類(ランタン(La)、イットリウム(Y)等)の酸化物を用いることができる。あるいは、酸化ジルコニウム(ZrO2)やジルコン酸アルミニウム(ZrO2-Al2O3)系の酸化物を用いることもできる。吸蔵手段は、酸化雰囲気中ではNOxを吸蔵し、還元雰囲気では吸蔵したNOxを放出する。より正確には、吸蔵手段は、還元剤の少ない雰囲気中でNOxを吸蔵し、還元剤の多い雰囲気中ではNOxを放出する。
【0010】
エンジンからの排ガスが吸蔵手段に供給されると、吸蔵手段は排ガス中のNOxを吸蔵する。次に、リッチ排気供給手段が、吸蔵手段にリッチ排気を供給すると、吸蔵手段に吸蔵されていたNOxが放出される。
【0011】
本明細書において、リッチ排気とは、目標空燃比が理論空燃比よりもリッチに設定されたシリンダからの排気を意味し、このリッチ排気には、通常燃焼するシリンダからの排気に比べて、未燃焼の燃料成分や一酸化炭素がより多く含まれている。
【0012】
ここで、留意すべきは、本発明では、リッチ排気中の未燃焼燃料成分を、主としてNOx放出のために用いる点にある。多少の還元反応は生じるにしても、本発明では、リッチ排気中の燃料成分を主として吸蔵手段からのNOx放出のために使用する。
【0013】
吸蔵手段に供給されたリッチ排気中の燃料成分のうち、NOx放出(あるいは放出及び還元)に消費されなかった残余の燃料成分は、還流手段によって、放出されたNOxと共にエンジンの燃焼室に還流される。即ち、本発明では、リッチ排気中の燃料成分の一部をNOxの放出に用い、NOx放出に消費されなかった残余の燃料成分を燃焼室に送り込んで燃料として作用させる。
【0014】
燃焼室に還流されたNOxは、燃焼によって一部が浄化される。一方、リッチ排気中の燃料成分は、燃料としてエンジン出力の一部となる。従って、リッチ排気中の燃料成分が、NOx放出に必要な量よりも多い場合でも、余った燃料成分は燃焼室内で燃料として再利用されるため、燃料を無駄にすることがない。
【0015】
また、還元剤を単独で供給するのではなく、未燃焼の燃料成分を含むリッチ排気を用いるため、還元剤だけを供給する場合に比べて、NOx放出に使用するガス流量を大きくすることができ、吸蔵材から放出されたNOxを速やかに取り除いて燃焼室に還流させることができる。
【0016】
本発明に従う排ガス浄化方法は、エンジンからの排ガスを吸蔵手段に導いて、排ガス中のNOxを吸蔵手段に吸蔵させるステップと、エンジンの各シリンダのうちリッチ燃焼状態に設定される所定のシリンダからのリッチ排気を吸蔵手段に供給することにより、吸蔵手段に吸蔵されたNOxを放出させるステップと、放出されたNOx及び吸蔵手段に供給されたリッチ排気をエンジンの燃焼室に還流させるステップと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1〜図3に基づいて、第1の実施形態を説明する。図1は、例えば、自動車用エンジン装置等に排ガス浄化装置を適用した場合の全体構成図である。
【0019】
エンジン1は、例えば、乗用車等に搭載されるもので、4サイクル式のガソリンエンジンとして構成されている。これに限らず、ディーゼルエンジンや2サイクルエンジン等のような他の形式のエンジンにも本発明は適用できる。
【0020】
エンジン1のシリンダブロックには、例えば、2個、4個、6個等の複数のシリンダ2が形成されており、各シリンダ2内にはピストン3がそれぞれ摺動可能に設けられている(説明の便宜上1つのシリンダのみ図示)。各シリンダ2の開口部は、シリンダヘッド4によって気液密に施蓋されており、ピストン3の上方には燃焼室5が形成されている。燃焼室5と吸気マニホールド8との接続部には吸気弁6が、燃焼室5と排気マニホールド9との接続部には排気弁7が、それぞれ開閉可能に設けられている。
【0021】
吸気マニホールド8には、外気を導入するための吸気通路L1が接続されており、排気マニホールド9には、排ガスを大気に開放するための排気通路L2が接続されている。そして、排気通路L2の途中には、後述の排ガス浄化装置が設けられている。
【0022】
排ガス浄化装置は、それぞれ後述するように、酸化部10、第1切替弁11、第1吸蔵部12、第2吸蔵部13、第2切替弁14、還元剤タンク15及び制御部16を備えて構成されている。
【0023】
酸化部10は、排ガス中の酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に酸化させる酸化触媒(例えば、Pt、Mn2O3等)を有しており、排気通路L2の上流側に設けられている。酸化部10の下流側には、第1切替弁11及び第2切替弁14が排気通路L2の途中に設けられている。
【0024】
第1切替弁11及び第2切替弁14は、それぞれ第1切替手段、第2切替手段として表現可能なものであり、例えば、4ポート2位置の電磁弁として構成されている。各切替弁11,14は、それぞれ2つの切替位置(a),(b)を有しており、制御部16からの制御信号に応じて、互いに同期して位置を切り替えるようになっている。なお、各切替弁11,14は、各ポートがどこにも接続されない過渡位置を備えてもよく、この場合、4ポート3位置の電磁弁となる。また、電磁弁に限らず、空圧弁としてもよいし、あるいは、いわゆるレボルバー式の切替機構に代えてもよい。
【0025】
第1切替弁11と第2切替弁14との間には、第1吸蔵部12及び第2吸蔵部13が並列的に設けられている。第1吸蔵部12は、第1分岐通路L21を介して第1切替弁11及び第2切替弁14に接続されており、第2吸蔵部13は、第2分岐通路L22を介して第1切替弁11及び第2切替弁14に接続されている。各吸蔵部12,13は、それぞれ例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類等の酸化物(具体的には、例えば、酸化バリウム(BaO))から構成されており、酸化雰囲気中ではNOxを吸蔵し、還元雰囲気中ではNOxを放出するようになっている。より正確には、各吸蔵部12,13は、還元剤の少ない雰囲気中でNOxを吸蔵し、還元剤の多い雰囲気中でNOxを放出する。
【0026】
各切替弁11,14がそれぞれ第1位置(a)にある場合、第1吸蔵部12の上流側は第1分岐通路L21を介して酸化部10に接続され、第1吸蔵部12の下流側は大気に開放される。一方、第2吸蔵部13の上流側は、還元剤供給通路L3を介して還元剤タンク15に接続され、第2吸蔵部13の下流側は、還流通路L4を介して吸気通路L1の途中に接続される。なお、本明細書において、上流及び下流とは、それぞれ流体(排ガス、還元剤、外気)の流れ方向の上流及び下流を示す。
【0027】
各切替弁11,14がそれぞれ第1位置(a)にある場合、第1吸蔵部12には、酸化部10から第1分岐通路L21を介して排ガスが供給され、第1吸蔵部12は、排ガス中のNOxを吸蔵する(S1)。第2吸蔵部13には、還元剤供給通路L3を介して気体状の還元剤が供給され、第2吸蔵部13は、吸蔵していたNOxを放出させる(S2)。
【0028】
放出されたNOx及びNOx放出に消費されずに余った還元剤は、還流通路L4を介して負圧状態の吸気通路L1に流れ込み、吸気通路L1を介して燃焼室5内に流入する(S3)。燃焼室5内に流入したNOx及び還元剤は、燃焼室5内で燃焼される(S4)。これにより、NOxは還元され、還元剤は、燃料としてエンジン出力の一部となる。
【0029】
各切替弁11,14がそれぞれ第1位置(a)から第2位置(b)に切り替われると、上記の場合とは逆に、第1吸蔵部12が還元剤タンク15に接続され、第2吸蔵部13が酸化部10に接続される。即ち、各切替弁11,14が第1位置(a)にある場合、第1吸蔵部12はNOx吸蔵モードで使用され、第2吸蔵部13は、NOx放出モードで使用される。そして、各切替弁11,14がそれぞれ第2位置(b)に切り替わると、第1吸蔵部12はNOx吸蔵モードからNOx放出モードに切り替わり、第2吸蔵部13はNOx放出モードからNOx吸蔵モードに切り替わる。
【0030】
図1中の下側に示すタイムチャート16Aのように、各吸蔵部12,13の使用モードを交互に切り替えることにより、一方の吸蔵部でNOxを吸蔵しつつ、他方の吸蔵部からNOxを放出させて再生することができ、排ガス中のNOxを連続的に吸蔵して浄化させることができる。なお、実施例では、2個の吸蔵部12,13を設ける場合を例示しているが、本発明はこれに限らず、3個以上の吸蔵部を切替使用する構成としてもよい。
【0031】
還元剤タンク15は、還元剤を収容しており、還元剤供給通路L3及び第2切替弁14を介して、第1吸蔵部12又は第2吸蔵部13のいずれか一方に還元剤を供給するものである。還元剤としては、例えば、炭化水素、ガソリン、軽油、プロパン、ブタン、プロピレン、水素、一酸化炭素等を用いることができる。なお、吸蔵部を3個以上設ける場合は、放出モードで使用する複数の吸蔵部に還元剤を供給する。
【0032】
還元剤タンク15は、例えば、加圧された気体状の還元剤を供給するように構成されている。これに限らず、液状の還元剤を用いることもできる。液体状の還元剤を用いる場合は、例えば、加熱して気化させた還元剤を吸蔵部に供給したり、あるいは、後述する実施形態のように、排ガスや外気等のガス中に液体状の還元剤を噴霧して吸蔵部に供給すればよい。
【0033】
なお、還元剤として燃料の一部を利用する場合は、還元剤専用のタンク15を設ける必要はなく、還元剤供給通路L3を燃料タンクや燃料配管に接続して燃料を取り込む構成とすればよい。液体状の還元剤を用いる場合は、気化させたり霧化させる機構が必要になるため、気体状の還元剤を用いる方が簡素な構成にできる。しかし、燃料を還元剤として利用する場合は、燃料タンクや燃料配管から燃料の一部を取り出して使用できるので、還元剤タンク15を設けたり、タンク15を交換等する手間を省くことができる。
【0034】
制御部16は、タイムチャート16Aに示すように、各切替弁11,14の作動を制御する。上述の通り、制御部16は、適当な時期に各切替弁11,14に制御信号を出力し、各切替弁11,14の位置を切替させる。制御部16は、マイクロコンピュータシステムとして構成することもできるし、電磁リレー等のハードウェア回路として構成することもできる。また、制御部16は、エンジンコントロールユニット(ECU)の一部として実現させることもできる。
【0035】
次に、図2に基づいて、本実施形態の動作を説明する。
【0036】
図2(a)は、第1吸蔵部12でNOxを吸蔵させ、第2吸蔵部13でNOxを放出させる場合を示す。この場合は、上述の通り、燃焼室5内で発生した排ガスは、酸化部10により酸化された後、第1切替弁11から第1吸蔵部12に導入される。第1吸蔵部12によりNOxが除去された排ガスは、第2切替弁14を介して排気通路L2から大気中に排出される。なお、第2切替弁14の下流側で排気通路L2の途中に三元触媒等をさらに設けてもよい。
【0037】
次に、図2(b)に示すように、各切替弁11,14がそれぞれ切り替わると、還元剤供給通路L3及び第2切替弁14を介して、還元剤タンク15からの還元剤が第1吸蔵部12に流入する。第1吸蔵部12に流入した還元剤の一部は、第1吸蔵部12に吸蔵されているNOxを放出させる。第1吸蔵部12から放出されたNOx及び余った還元剤は、第1分岐通路L21、第1切替弁11、還流通路L4を介して吸気通路L1に流れ込み、吸気通路L1を介して燃焼室5内に還流される。燃焼室5内でNOxの一部は還元され、一方、還元剤は燃料の一部として燃やされる。
【0038】
第2吸蔵部13の動作は、第1吸蔵部12の動作と逆になる。第1吸蔵部12がNOxを吸蔵している間、第2吸蔵部13はNOxを放出し、第1吸蔵部12がNOxを放出している間、第2吸蔵部13はNOxを吸蔵する。
【0039】
次に、各部で生じる化学反応について説明する。まず、酸化部10での酸化反応を下記化1に示す。
【0040】
NO+1/2O2→NO2・・・(化1)
【0041】
次に、吸蔵材がNO2を吸蔵するときの反応式を下記化2に示す(MOは吸蔵材、Mは例えばBa)。
【0042】
NO2+1/2MO+1/4O2→1/2M(NO3)2 ・・・(化2)
【0043】
還元剤を(CH2)nと表現した場合の吸蔵材からのNO2放出反応を化3、化4にそれぞれ示す。化3はNO2として放出される場合を示し、化4はNOとして放出される場合を示す。
【0044】
1/2M(NO3)2+1/6n(CH2)n→NO2+1/2MO+1/6CO2+1/6H2O・・・(化3)
【0045】
1/2M(NO3)2+1/2n(CH2)n→NO+1/2MO+1/2CO2+1/2H2O・・・(化4)
【0046】
以上の反応式をまとめると、NO2として放出される場合は化5に示され、NOとして放出される場合は化6に示される。
【0047】
NO+1/6n(CH2)n+3/4O2→NO2+1/6CO2+1/6H2O・・・(化5)
【0048】
1/2n(CH2)n+3/4O2→1/2CO2+1/2H2O・・・(化6)
【0049】
化5に示すように、1モルのNOを吸蔵放出するのに必要な炭化水素(HC)の量(Cのモル数)は、NO2として放出される場合は1/6モル、NOとして排出される場合は1/2モルとなる。
【0050】
なお、比較のために、放出されたNOxを還元剤によってさらに還元させる場合の化学反応を検討すると、NO2として放出される場合の反応式は化7に示され、NOとして放出される場合の反応式は化8に示される。
【0051】
NO2+2/3n(CH2)n→1/2N2+2/3CO2+2/3H2O・・・(化7)
【0052】
NO+1/3n(CH2)n→1/2N2+1/3CO2+1/3H2O・・・(化8)
【0053】
従って、NO2として放出される場合とNOとして放出される場合のいずれの場合でも、全反応式は化9に示す通りとなり、
【0054】
NO+5/6n(CH2)n+3/4O2→1/2N2+5/6CO2+5/6H2O・・・(化9)
1モルのNOを吸蔵材から放出させてさらに還元させるのに必要な炭化水素(HC)の量は、5/6モルとなる。
【0055】
図3は、本実施形態によるNOx低減効果を示す特性図である。ディーゼル燃焼装置を用いて、燃焼室へ還流するNOx量と燃焼室から排出されるNOx量との関係を調べたものである。燃焼室への燃料の噴射量を60mm3にした場合(四角形)と、燃料噴射量を120mm3にした場合(丸印)とでそれぞれNOx低減効果を測定した。なお、NOx測定には、CLA(化学発光法)を用いた。
【0056】
図3中の点斜線は、NOx低減効果が全く無いとした場合の理論値である。グラフの左端に示すように、NOx還流量が0のときに、約500ppm程度のNOxが発生する。これは、正常な燃焼により生じるNOx量である。本実施形態によるNOx低減効果が全く無いと仮定した場合、NOxは斜め点線に示すように、累積していく。
【0057】
しかし、丸印あるいは四角形印をつなぐ実線は、いずれも斜め点線よりも下がった位置にあり、一定のNOx低減効果がみられる。燃料噴射量が120mm3の場合は、NOx還流量が大きくなるにつれてNOx低減効果が増大している。また、燃料噴射量が60mm3の場合は、NOx還流量が1000ppm程度を越えるあたりから一定量のNOxを低減しており、燃料噴射量120mm3の場合の方がNOx低減効果が大きい。
【0058】
以上詳述した通り、本実施の形態によれば、還元剤を積極的な(あるいは実質的な)還元反応には用いずにNOx放出のために用い、NOx放出に寄与しなかった残余の還元剤をNOxと共に燃焼室5に還流させるため、NOxを燃焼室5内で還元させつつ、還元剤を燃料として燃焼させ、エンジン出力の一部にすることができる。
【0059】
従って、還元剤を専ら還元反応にのみ用いる場合に比較して、還元剤を無駄に消費することがなく、NOx低減コストを下げることができる。また、還元剤として燃料を利用する場合は、燃費を悪化させることもない。
【実施例2】
【0060】
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施の形態の特徴は、酸化機能を備えた吸蔵部を用いた点にある。
【0061】
本実施の形態による排ガス浄化装置は、第1の実施形態と同様に、各切替弁11,14及び各吸蔵部21,22を備え、各吸蔵部21,22を交互に切り替えて使用する。しかし、本実施形態では、独立した酸化部10を廃止し、各吸蔵部21,22にそれぞれ酸化部21A,22Aを備えさせている。即ち、各吸蔵部21,22は、吸蔵材に酸化触媒を担持した構成を有し、酸化部21A,22Aと吸蔵材21B,22Bとを備える。なお、酸化触媒としては、酸素の少ない雰囲気中でも還元反応の生じにくい特性を備えていることが好ましい。
【実施例3】
【0062】
図5は、本発明の第3の実施形態を示す。本実施形態の特徴は、外気と還元剤との混合気体を用いてNOxを放出させる点にある。
【0063】
還元剤供給通路L3の途中には、外気導入通路L5が接続されている。還元剤タンク15から流出する還元剤は、外気導入通路L5から導入される外気に混合されて各吸蔵部12,13のいずれかに供給される。
【0064】
従って、本実施形態によれば、NOx放出に用いる混合気体の量を、還元剤を単独で供給する場合よりも大きくすることができ、吸蔵材から放出されたNOxを速やかに運び去って吸気通路L1に還流させることができる。
【実施例4】
【0065】
図6は、本発明の第4の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、排ガスと還元剤との混合気体を用いてNOxを放出させる点にある。
【0066】
還元剤供給通路L3の途中には、排ガス導入通路L6が接続されており、還元剤タンク15からの還元剤は、排ガス導入通路L6から導入された排ガスに混合して、吸蔵部に供給される。
【0067】
これにより、外気と還元剤を混合する場合と同様に、放出に用いる混合気体量を大きくして、NOxを速やかに運び去ることができる。また、本実施形態によれば、吸蔵時と放出時とで吸蔵部12,13の温度がほぼ変化せず、吸蔵材の温度をほぼ一定に保持することができる。従って、NOx放出時の温度低下を防止して、放出効果を高くすることができ(一般的に、吸蔵材が高温なほどNOx放出効果が大きい)、吸蔵時と放出時との温度差による熱疲労や劣化を防止できる。
【実施例5】
【0068】
図7に基づいて、本発明の第5の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、酸化機能付き吸蔵部に還元剤と外気との混合気体を供給する点にある。
【0069】
本実施の形態による各吸蔵部21,22は、第2の実施形態と同様に、それぞれ酸化部21A,22Aを備えている。そして、還元剤供給通路L3には、第3の実施形態と同様に、外気導入通路L5が接続されている。
【0070】
本実施形態では、外気と還元剤とが混合した多量の気体によって、吸蔵部に吸蔵されているNOxを放出させるため、酸素の少ない還元雰囲気中では放出されたNOxを触媒上で還元するという特徴を有する白金触媒を用いた場合に特に効果がある。つまり、外気と還元剤とを混合させることにより、酸素の多い雰囲気を形成でき、この酸素の多い雰囲気下で還元反応を抑制しつつNOxを放出させ、NOx及び還元剤の残りを燃焼室5に還流させることができる。
【実施例6】
【0071】
図8に基づいて、本発明の第6の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、酸化機能付き吸蔵部に還元剤と排ガスとの混合気体を供給する点にある。
【0072】
本実施の形態による各吸蔵部21,22は、第2の実施形態と同様に、それぞれ酸化部21A,22Aを備えている。また、還元剤供給通路L3には、排気通路L2から分岐する排ガス導入通路L6が接続されている。
【0073】
これにより、放出に使用する混合気体量を大きくして速やかにNOxを運び去ることができ、NOx吸蔵時とNOx放出時の温度差を少なくして、NOx放出効果を高めると共に、熱疲労や劣化等を防止できる。さらに、白金触媒を用いた場合でも、比較的酸素の多い雰囲気中でNOxを放出させるため、放出されたNOxが白金触媒上で還元されるのを防止できる。
【実施例7】
【0074】
図9,図10に基づいて、本発明の第7の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、NOx放出剤として、排気中の未燃焼燃料を利用する点にある。
【0075】
図9は、自動車用エンジンに排ガス浄化装置を適用した場合の全体構成図である。本実施例では、エンジン1は、例えば6つのシリンダ2A〜2Fを備えている。各シリンダ2A〜2Fには、燃焼室5に臨むようにして、電子式燃料噴射装置31がそれぞれ設けられている。
【0076】
これら燃料噴射装置31には、燃料ポンプによって燃料タンクから吸引された燃料が燃料供給配管(いずれも不図示)を介してそれぞれ供給される。各燃料噴射装置31は、ECU32からの制御信号に基づいて開弁し、所定量の燃料を燃焼室5に向けてそれぞれ吐出する。
【0077】
ECU32は、各燃料噴射装置31や点火装置(不図示)等の作動を制御する。ECU32は、例えば、燃料噴射装置31の開弁時期及び開弁時間を制御することにより、燃料噴射量を制御することができる。ここで、一般的に、各シリンダ2A〜2Fの目標空燃比は、14.7程度に設定される。しかし、理論空燃比に限らず、例えば、燃費の向上や排気エミッションの低減を図る場合は、理論空燃比よりも燃料噴射量を減少させて、いわゆるリーン状態で燃焼させる場合もある。または、エンジン出力の向上を図る場合は、理論空燃比よりも燃料噴射量を増加させて、いわゆるリッチ状態で燃焼させる場合もある。
【0078】
ECU32は、例えば、運転状態(定常走行状態、加減速状態等)に応じて、各シリンダ2A〜2Fの目標空燃比を設定し、燃料噴射量を個別に制御可能である。また、ECU32は、排ガス浄化のために、所定のシリンダ2Fの目標空燃比をリッチに設定し、リッチ状態で燃焼させる。リッチ状態で燃焼されるシリンダは、各シリンダ2A〜2Fのいずれでもよいが、本実施形態では、一例として、シリンダ2Fを用いる。なお、他のシリンダ2A〜2Eの目標空燃比は、理論空燃比または理論空燃比よりもリーン状態に設定することができる。
【0079】
所定のシリンダとしてのシリンダ2Fは、その目標空燃比がリッチに設定されるため、シリンダ2Fからの排ガス中には、理論空燃比で燃焼させた場合よりも、未燃焼の燃料成分がより多く含まれている。なお、NOx放出効果を奏する成分として、排ガス中には、未燃焼の燃料成分以外に一酸化炭素も含まれているが、以下の説明では、未燃焼燃料成分を主として説明する。
【0080】
なお、シリンダ2Fは、常時リッチ燃焼状態に置かれている必要は必ずしもなく、少なくとも、吸蔵部12,13のいずれか一方からNOxを放出させる期間に合わせて、シリンダ2Fの目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定すれば足りる。NOx放出期間以外の期間では、シリンダ2Fの目標空燃比を、他のシリンダ2A〜2Eと同様に設定することができる。
【0081】
還元剤供給手段としての機能を実現する所定のシリンダ2Fは、排ガス供給通路L31を介して、第1切替弁11に接続されている。第1切替弁11が切替位置(a)にある場合、所定のシリンダ2Fと第2吸蔵部13とは、排ガス供給通路L31及び第1切替弁11を介して接続され、他のシリンダ2A〜2Eと第1吸蔵部12とは、排気マニホールド9と排気通路L2と第1切替弁11とを介して接続される。
【0082】
そして、第2切替弁14が切替位置(a)にある場合、第2吸蔵部13は、第2切替弁14及び還流通路L4を介して吸気通路L1に接続され、第1吸蔵部12は、第2切替弁14及び排気通路L2を介して大気に開放される。第1切替弁11及び第2切替弁14がそれぞれ切替位置(b)にある場合、上述とは逆に、シリンダ2Fの排ガスは第1吸蔵部12等を介して吸気通路L1に還流し、他のシリンダ2A〜2Eの排ガスは第2吸蔵部13等を介して大気中に放出される。
【0083】
図10(a)に示すように、第1切替弁11及び第2切替弁14がそれぞれ切替位置(a)にある場合、シリンダ2Fからの排ガスは、第2吸蔵部13に導かれる。この排ガス中に含まれる未燃焼燃料成分によって、第2吸蔵部13に吸蔵されていたNOxが放出される。放出されたNOxは、シリンダ2Fからの排ガスと共に、還流通路L4及び吸気通路L1等を介して、各シリンダ2A〜2Fの燃焼室5内にそれぞれ流入する。これにより、NOx放出に寄与しなかった残りの燃料成分は、燃料として再利用される。一方、通常燃焼状態におかれる他のシリンダ2A〜2Eからの排ガスは、第1吸蔵部12に導かれてNOxを除去され、大気中に放出される。
【0084】
図10(b)に示すように、第1切替弁11及び第2切替弁14がそれぞれ切替位置(b)に切り替わると、シリンダ2Fからの排ガスは第1吸蔵部12に導かれ、他のシリンダ2A〜2Eからの排ガスは第2吸蔵部13に導かれる。そして、第1吸蔵部12に吸蔵されていたNOxが放出され、未燃焼の燃料成分と共に、各シリンダ2A〜2Fの燃焼室5に還流する。一方、第2吸蔵部13は、シリンダ2A〜2Eからの排ガス中からNOxを除去し、正常な排ガスを大気中に排出させる。
【0085】
このように、本実施形態では、エンジン1の各シリンダ2A〜2Fのうち所定のシリンダ2Fの目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定して燃焼させ、所定のシリンダ2Fからの排気を各吸蔵部12,13に交替で供給することにより、各吸蔵部12,13に吸蔵されたNOxを放出させて、各シリンダ2A〜2Fの燃焼室5にそれぞれ還流させる構成とした。従って、所定のシリンダ2Fからの排ガス中に含まれる未燃焼の燃料成分を吸蔵部12,13のNOx放出に利用することができ、NOx放出に寄与しなかった残りの燃料成分を燃料として利用できる。これにより、NOx浄化コストを低減し、燃費の悪化を防止できる。
【0086】
これに加えて、本実施の形態では、還元剤タンクを用いず、既存のエンジン構造をほぼそのまま利用可能であり、所定のシリンダ2Fの目標空燃比をリッチに設定するだけで、NOx放出に用いる燃料成分を容易に得ることができる。また、所定のシリンダ2Fの目標空燃比を調節するだけで、NOx放出に使用する未燃焼燃料成分の量を制御することができる。さらに、所定のシリンダ2Fのリッチ燃焼は、NOx放出剤としてのリッチ雰囲気の排ガスを発生させるだけでなく、エンジン1の出力の一部を構成するため、シリンダ2Fの燃焼を有効に利用することができる。
【0087】
また、エンジン1が建設機械用エンジンである場合、建設機械用エンジンは、その使用目的に応じて、例えば、重負荷モード、軽負荷モード、軽微負荷モード等のように、複数の出力モードで使用される。そこで、例えば、軽負荷モード及び重負荷モードの場合は、全てのシリンダ2A〜2Fを通常燃焼させ、軽微負荷モードの場合は、一つまたは複数のシリンダを選択してリッチ燃焼させることもできる。このように、エンジンの使用目的に応じて、NOxの放出及び吸蔵を制御することもできる。
【実施例8】
【0088】
図11に基づいて、本発明の第8の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、リッチ燃焼させるシリンダとして、複数のシリンダ2E,2Fを用いる点にある。
【0089】
図11は、本実施形態の全体構成図である。図11に示すように、本実施形態では、隣接する2個のシリンダ2Fとシリンダ2Eとが、NOx放出用の専用シリンダとして選択されており、これら各シリンダ2E,2Fの目標空燃比は、それぞれ理論空燃比よりもリッチに設定されている。NOx放出用のシリンダ2E,2Fは、必ずしも隣接している必要はないが、隣接している方が配管の取付や引き回しが容易であり、機械構造の点からは有利である。
【0090】
本実施形態の排ガス供給通路は、一方のシリンダ2Eに接続される第1の分岐通路L31Aと、他方のシリンダ2Fに接続される第2の分岐通路L31Bと、これら各分岐通とL31A,L31Bが合流する合流通路L31Cとから構成される。各シリンダ2E,2Fからの排ガスは、合流通路L31Cを介して第1切替弁11に流入し、第1切替弁11から各吸蔵部12,13のいずれか一方に選択的に供給される。
【0091】
本実施形態はこのように構成されるので、上述した第7の実施形態と同様の作用効果を奏する。これに加えて、本実施形態では、複数のシリンダ2E,2FをNOx放出専用のシリンダとして使用し、各シリンダ2E,2FからそれぞれNOx放出用の排ガスを得る構成を採用した。従って、単一のシリンダ2FをNOx放出用シリンダとして用いる前記実施形態に比べて、NOx放出に必要な未燃焼の燃料成分を複数のシリンダ2E,2Fでそれぞれ分担して生成すればよく、各シリンダ2E,2Fの目標空燃比を、より理論空燃比側に近づけることができる。
【実施例9】
【0092】
図12〜図15に基づいて、本発明の第9の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、3個の吸蔵部43〜45を順番に切り替えながら使用する点にある。
【0093】
図12は、本実施形態の全体構成を示す説明図である。上記各実施形態では、2個の吸蔵部を切り替えて使用する場合を例示したが、本実施形態のように、3個以上の吸蔵部43〜45を使用してもよい。なお、吸蔵部を3個設ける場合を例に挙げて説明するが、後述する他の実施形態からも明らかなように、吸蔵部を4個以上設けることもできる。
【0094】
前記第7実施形態と同様に、所定のシリンダ2Fは、NOx放出用の専用シリンダとして使用され、その目標空燃比が理論空燃比よりもリッチに設定されている。他のシリンダ2A〜2Eは、エンジン出力を発生させる通常のシリンダとして使用され、その目標空燃比は、理論空燃比近傍または理論空燃比よりもリーンとなるように設定可能である。なお、NOx放出用のシリンダは2Fに限らず、各シリンダ2A〜2Fのうち、いずれか一つまたは複数のシリンダを使用することができる。
【0095】
各吸蔵部43〜45の上流側(ガスの流入側)には、第1切替弁41が設けられ、各吸蔵部43〜45の下流側(ガスの流出側)には、第2切替弁42が設けられている。これら各切替弁41,42は、例えば、6ポート3位置の電磁弁または空圧弁等として、それぞれ構成することができる。
【0096】
各切替弁41,42は、それぞれ3つの切替位置(a),(b)及び(c)を備えており、制御部16からの制御信号に応じて切り替わるようになっている。第1切替弁41には、NOx放出用シリンダ2Fからの排ガスと、他の通常のシリンダ2A〜2Eからの排ガスとがそれぞれ入力される。他のシリンダ2A〜2Eからの排ガスは、2つの流入口からそれぞれ入力される。3個の吸蔵部43〜45のうち、いずれか1個の吸蔵部をNOx放出モードで使用し、他の2個の吸蔵部をNOx吸蔵モードで使用するためである。第1切替弁41の各流出口には、分岐通路L21,L22,L23を介して、各吸蔵部45,44,43の流入口がそれぞれ接続されている。
【0097】
第2切替弁42の各流入口は、分岐通路L21,L22,L23を介して、各吸蔵部45,44,43の流出口にそれぞれ接続されている。また、第2切替弁42の各流出口のうち、1個の流出口は、還流通路L4を介して吸気通路L1に接続され、残りの2個の流出口は排気通路L2を介して大気に開放されている。
【0098】
図13に示すように、各切替弁41,42がそれぞれ切替位置(a)にある場合、第1吸蔵部43及び第2吸蔵部44には、通常燃焼状態のシリンダ2A〜2Eからの排ガスが供給される。各吸蔵部43,44は、排ガス中のNOxを吸蔵して除去し、清浄な排ガスを大気中に排出する。
【0099】
第3吸蔵部45には、NOx放出用のシリンダ2Fからの排ガスが供給される。第3吸蔵部45は、この未燃焼の燃料成分を含む排ガスを利用して、吸蔵していたNOxを放出する。放出されたNOxは、NOx放出に使用されなかった他の燃料成分と一緒に、還流通路L4,吸気通路L1を介して、燃焼室5に還流する。
【0100】
図14に示すように、各切替弁41,42がそれぞれ切替位置(b)にある場合、第1吸蔵部43及び第3吸蔵部45に、通常燃焼状態のシリンダ2A〜2Eからの排ガスがそれぞれ供給される。第1吸蔵部43及び第3吸蔵部45は、排ガス中のNOxを吸蔵し、排ガスを清浄化する。一方、シリンダ2Fからの未燃焼燃料成分を含む排ガスは、第2吸蔵部44にのみ供給される。第2吸蔵部44は、吸蔵していたNOxを放出し、この放出されたNOxは、残った燃料成分と共に燃焼室5に還流する。
【0101】
図15に示すように、各切替弁41,42がそれぞれ切替位置(c)にある場合、第2吸蔵部44及び第3吸蔵部45には、通常燃焼状態のシリンダ2A〜2Eからの排ガスがそれぞれ供給される。シリンダ2Fからの排ガスは、第1吸蔵部43にのみ供給される。これにより、第2,第3吸蔵部44,45は、排ガス中のNOxを吸蔵し、第1吸蔵部43は、吸蔵していたNOxを放出させる。なお、弁の切替位置と各吸蔵部の動作モードとの対応関係は、上述の例に限らない。
【0102】
このように、3個以上の吸蔵部43〜45を設け、所定の順番で切り替えながら交替で使用することができる。これにより、2個の吸蔵部によってNOxをそれぞれ分担して吸蔵できる。なお、3個の吸蔵部43〜45のうち、いずれか1個をNOx吸蔵モードで使用し、他の2個をNOx放出モードで使用することも可能である。さらに、例えば、4個以上の吸蔵部を設ける場合、いずれか2個の吸蔵部をNOx吸蔵モードで使用し、残り2個の吸蔵部をNOx放出モードで使用することもできる。
【実施例10】
【0103】
図16〜図18に基づいて、本発明の第10の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、各シリンダ2A〜2Fをそれぞれ同数ずつの2つのグループに分けて、いずれか一方のグループのシリンダを交替でリッチ燃焼させることにより、NOx放出用のガスを得る点にある。
【0104】
図16は、全体構成を示す説明図である。本実施形態の各シリンダ2A〜2Fは、第1シリンダ群2A〜2Cと第2シリンダ群2D〜2Fとにグループ化されている。第1シリンダ群2A〜2Cは、第1排気マニホールド9Aを介して、第1吸蔵部12に接続されている。第2シリンダ群2D〜2Fは、第2排気マニホールド9Bを介して、第2吸蔵部13に接続されている。各排気マニホールド9A,9Bは、それぞれが接続されるシリンダ群の目標空燃比がリッチに設定される期間中、リッチ排気供給手段の一例である排気供給通路として機能する。それ以外の期間中、通常の排気マニホールドとして機能する。
【0105】
本実施形態では、各吸蔵部12,13の上流側に位置する第1切替弁が廃止され、第2切替弁14のみが設けられている点に留意しなければならない。即ち、各吸蔵部12,13は、各シリンダ群に直接的に接続されている。本実施形態では、6個のシリンダ2A〜2Fを2つのシリンダ群にグループ化し、各シリンダ群をそれぞれ各吸蔵部12,13に直結させる。そして、ECU32は、各シリンダ群のうち、いずれか一方のシリンダ群の目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定し、他方のシリンダ群を通常燃焼させる。即ち、本実施形態では、各シリンダ群の目標空燃比を交替で切り替えることにより、第1切替弁を不要としている。
【0106】
なお、各シリンダ群と各吸蔵部12,13とが直接的に接続されるとは、切替弁11が不要であることを意味し、各シリンダ群と各吸蔵部12,13との間に、いかなる機器も介在しないという意味ではない。各シリンダ群と各吸蔵部12,13との間には、必要に応じて、例えば、酸化部や逆止弁等を設けることができる。
【0107】
図16には、第1シリンダ群2A〜2Cが通常燃焼状態におかれ、第2シリンダ群2D〜2Fがリッチ燃焼状態におかれている場合が示されている。これにより、第1シリンダ群2A〜2Cからの通常の排ガスは、第1排気マニホールド9Aを介して、第1吸蔵部12に供給され、第1吸蔵部12によりNOxが除去された後、排気通路L2を介して大気中に排出される。一方、第2シリンダ群2D〜2Fからの未燃焼燃料成分を含む排ガスは、第2排気マニホールド9Bを介して、第2吸蔵部13に供給され、第2吸蔵部13に吸蔵されていたNOx放出に使用される。放出されたNOx及びNOx放出に使用されなかった未燃焼の燃料成分は、還流通路L4及び吸気通路L1を介して、各シリンダ2A〜2Fの燃焼室5にそれぞれ還流される。
【0108】
図17は、図16に示す場合とは逆に、第1シリンダ群2A〜2Cをリッチ燃焼させ、第2シリンダ群2D〜2Fを通常燃焼させる場合を示す。これにより、第1吸蔵部12には、未燃焼の燃料成分を含む排ガスが供給され、第1吸蔵部12に吸蔵されていたNOxが放出される。一方、第2吸蔵部13には、第2シリンダ群2D〜2Fから通常の排ガスが供給され、第2吸蔵部13は、排ガスからNOxを除去して清浄化する。
【0109】
図18は、本実施形態による制御の概要を示すフローチャートである。まず、ある時点において、第1シリンダ群2A〜2Cがリッチ燃焼状態、第2シリンダ群2D〜2Fが通常燃焼状態で運用されていると仮定する(S11,S12)。この場合は、図17に示すように、第1吸蔵部12はNOx放出モードで使用されることになり(S13)、第2吸蔵部13はNOx吸蔵モードで使用されることになる(S14)。
【0110】
ECU32は、目標空燃比の設定切替時期が到来したか否かを監視しており(S15)、所定の時期が到来したと判定した場合は(S15:YES)、切替指示を制御部16に送信する(S16)。ここで、所定の時期としては、例えば、一定時間の経過を挙げることができる。予め設定された固定のまたは可変の所定時間が経過した場合に、目標空燃比の設定切替時期が到来したものと判定することができる。また、例えば、定常走行時にNOx放出を行わせる等のように、エンジンの現在または過去の運転状態に基づいて、切替判定を行うこともできる。あるいは、NOx吸蔵量を監視するセンサを設け、このセンサからの出力信号を考慮して、切替時期か否かを判定することもできる。
【0111】
制御部16は、ECU32からの切替指示を受信すると、切替弁14に制御信号を出力し、切替弁14の位置を切り替える(S17)。ECU32は、第1シリンダ群2A〜2Cの目標空燃比をリッチ状態から理論空燃比近傍に変化させ(S18)、第2シリンダ群2D〜2Fの目標空燃比を理論空燃比近傍からリッチ状態に変化させる(S19)。
【0112】
切替弁14の位置が切り替わり、また、各シリンダ群の目標空燃比がそれぞれ設定変更されることにより、図16に示すように、第1シリンダ群2A〜2Cから排出される通常の排ガスは、第1吸蔵部12によってNOxを除去された後、排気通路L2から大気中に排出される(S20)。一方、第2シリンダ群2D〜2Fから排出される未燃焼の燃料成分を含む排ガスは、第2吸蔵部13に吸蔵されたNOx放出に使用され、放出されたNOxと共に燃焼室5に還流する(S21)。なお、作動モードの切替によって、NOxが除去されていない排ガスが大気中に放出されないように、各シリンダ群の目標空燃比の設定変更時期と切替弁14の切替時期とを適宜調節する。
【0113】
そして、再びECU32は、切替時期が到来したか否かを判定し(S22)、切替時期が到来した場合は、制御部16に切替指示を出力する(S23)。制御部16は、この切替指示に応じて、切替弁14の位置を切り替える(S24)。また、ECU32は、第1シリンダ群2A〜2Cの目標空燃比をリッチに、第2シリンダ群2D〜2Fの目標空燃比を理論空燃比近傍に、それぞれ設定変更する(S25,S26)。これにより、図17に示すように、第1吸蔵部12はNOx放出モードで使用され(S27)、第2吸蔵部13はNOx吸蔵モードで使用される(S28)。
【0114】
本実施形態は、このように構成されるので、前記第7の実施形態と同様の作用効果を発揮する。これに加えて、本実施形態では、エンジン1の各シリンダ2A〜2Fを第1シリンダ群2A〜2Cと第2シリンダ群2D〜2Fとにグループ化し、第1シリンダ群2A〜2Cに第1吸蔵部12を直接的に接続し、第2シリンダ群2D〜2Fに第2吸蔵部13を直接的に接続し、各吸蔵部12,13の下流側には各吸蔵部12,13の流出口を大気中または燃焼室5のいずれかに接続する切替弁14を設け、各シリンダ群の目標空燃比を交互にリッチに設定する構成としたので、各吸蔵部12,13と各シリンダ群との間に切替弁11を設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。
【実施例11】
【0115】
図19〜図22に基づいて、本発明の第11の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、各シリンダ2A〜2Fにそれぞれ吸蔵部61〜66を直接的に接続し、各シリンダ2A〜2Fを順番に切替ながらリッチ燃焼させる点にある。
【0116】
図19の全体構成図に示すように、本実施形態のエンジン1の各シリンダ2A〜2Fは、それぞれ排ガス供給通路L31A〜L31Fを介して、各吸蔵部61〜66にそれぞれ接続されている。即ち、各シリンダ2A〜2Fには、それぞれ専用の吸蔵部61〜66が直接的に接続されている。
【0117】
各吸蔵部61〜66の下流側には、各吸蔵部61〜66の流出口をそれぞれ燃焼室5または大気中のいずれかに接続させるための切替弁70が設けられている。この切替弁70は、例えば、シリンダ数に応じた数だけ2方切替弁71〜76を設けることにより、実現することができる。
【0118】
各2方切替弁71〜76の流入口は、各吸蔵部61〜66にそれぞれ接続されており、各2方切替弁71〜76の一方の流出口は還流通路L4にそれぞれ接続され、各2方切替弁71〜76の他方の流出口は排気通路L2にそれぞれ接続されている。従って、各2方切替弁71〜76の弁位置を切り替えることにより、各2方切替弁71〜76を燃焼室5または大気中のいずれかに個別に接続することができる。
【0119】
図19では、シリンダ2Fのみがリッチ燃焼され、他のシリンダ2A〜2Eがそれぞれ通常燃焼の場合を示している。この場合、シリンダ2Fに接続される第6吸蔵部66のみがNOx放出モードで使用され、他の吸蔵部61〜65はそれぞれNOx吸蔵モードで使用される。そして、第6吸蔵部66に接続された切替弁76により、第6吸蔵部66は還流通路L4から吸気通路L1を介して、各シリンダ2A〜2Fの燃焼室5にそれぞれ接続される。これにより、第6吸蔵部66から放出されたNOx及び残りの未燃焼燃料成分は、各燃焼室5にそれぞれ還流する。他の吸蔵部61〜65は、各シリンダ2A〜2Eからの排ガスからNOxをそれぞれ除去する。NOxが除去されて清浄化された排ガスは、切替弁71〜75から排気通路L2を介して、大気中に排出される。
【0120】
図20は、シリンダ2Eのみをリッチ燃焼させた場合の様子を示す。この場合、シリンダ2Eに接続される第5吸蔵部65のみがNOx放出モードで使用され、他の吸蔵部61〜64及び66は、それぞれNOx吸蔵モードで使用される。
【0121】
同様に、図21は、シリンダ2Aのみをリッチ燃焼させた場合を示す。シリンダ2Aに接続される第1吸蔵部61のみがNOx放出モードで使用され、他の吸蔵部62〜66はそれぞれNOx吸蔵モードで使用される。
【0122】
図22は、ECU32及び制御部16の動作概略を示すフローチャートである。まず、ECU32は、シリンダ2A〜2Fのうちいずれか一つのシリンダを選択するためのシリンダ番号CNに初期値としての「1」をセットする(S31)。同様に、制御部16は、吸蔵部61〜66のうちいずれか一つの吸蔵部を選択するための吸蔵部番号ANに初期値としての「1」をセットする(S32)。
【0123】
ECU32は、シリンダ番号CNで指定されたシリンダの目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定する(S33)。制御部16は、切替弁70に制御信号を出力することにより、吸蔵部番号ANで指定された吸蔵部を還流通路L4に接続させる(S34)。
【0124】
また、ECU32は、他のシリンダの目標空燃比を理論空燃比近傍に設定し(S35)、制御部16は、他の吸蔵部をそれぞれ排気通路L2に接続させる(S36)。これにより、いずれか一つの吸蔵部をNOx放出モードで使用し、他の吸蔵部をNOx吸蔵モードで使用することができる。
【0125】
そして、ECU32は、切替時期が到来したか否かを判定する(S37)。切替時期が到来したか否かの判定は、前記実施形態で述べたように、時間経過やエンジン運転状態等に基づいて行うことができる。
【0126】
ECU32は、切替時期が到来したと判定した場合(S37:YES)、制御部16に切替指示を出力する(S38)。制御部16は、切替指示を受信すると、吸蔵部選択番号ANを1つだけインクリメントさせる(S39)。ECU32も、シリンダ選択番号CNを1つだけインクリメントさせる(S40)。
【0127】
ここで、ECU32は、シリンダ選択番号CNが上限値CNmaxを超えたか否かを判定する(S41)。本実施例では6気筒エンジンを例示するので、上限値CNmaxは、シリンダ数の「6」である。S40でシリンダ選択番号CNを1だけインクリメントさせた結果、シリンダ選択番号CNの値が上限値CNmaxを超えた場合(S41:YES つまり、CN=7)、シリンダ選択番号CNを初期値である「1」に戻す(S42)。シリンダ選択番号CNの値が上限値CNmaxを超えない場合(S41:NO)、S33に戻る。このようにして、CNが所定数に達する毎にカウンタをリセットすることにより、各シリンダを順番に繰り返して、周期的に選択する。
【0128】
同様に、制御部16も、吸蔵部選択番号ANを1だけインクリメントさせた後(S39)、吸蔵部選択番号ANの値が上限値ANmaxを超えたか否かを判定する(S43)。本実施例では、各シリンダ毎にそれぞれ専用の吸蔵部を設け、各シリンダと各吸蔵部とが一対一で対応しているため、吸蔵部選択番号ANの上限値ANmaxは、CNmaxと同一の値、即ち「6」となっている。吸蔵部選択番号ANの値が上限値ANmaxを超えない場合(S43:NO)、S34に戻る。これに対し、吸蔵部選択番号ANの値が上限値ANmaxを超えた場合(S43:YES つまり、AN=7)、制御部16は、吸蔵部選択番号ANを初期値である「1」にセットする(S44)。
【0129】
以上のように、リッチ燃焼させるシリンダの制御と吸蔵部のモード制御(切替弁制御)とは、同期させることができる。これにより、所定の順番に従って所定のシリンダがリッチ燃焼状態におかれ、このシリンダに接続された吸蔵部のみがNOx放出モードで使用される。なお、いずれか一つの吸蔵部のみをNOx放出モードで使用する場合を説明したが、これに限らず、複数の吸蔵部をそれぞれNOx放出モードで使用してもよい。
【0130】
このように、本実施形態では、各シリンダ2A〜2F毎にそれぞれ専用の吸蔵部61〜66を直接的に接続し、各吸蔵部61〜66の下流側には、各吸蔵部61〜66を燃焼室5または大気中のいずれかに個別に接続可能な切替弁70を設け、各シリンダ2A〜2Fのうちいずれか一つまたは複数のシリンダを順番にリッチ燃焼させる構成とした。従って、いずれの吸蔵部をNOx放出モードで使用し、いずれの吸蔵部をNOx吸蔵モードで使用するかを柔軟に設定することができる。
【0131】
なお、当業者であれば、各実施の形態に記載された本発明の要旨の範囲内で種々の追加や変更等が可能である。例えば、当業者は、前記各実施の形態を適宜組み合わせることができる。
【0132】
例えば、本発明の排ガス浄化装置に、従来の還元触媒や三元触媒等をさらに追加する構成も可能である。
【0133】
また、乗用車用エンジンに限らず、例えば、建設機械用エンジン、船舶用エンジン、農業機械用エンジン、発電用エンジン等の種々のエンジンに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図2】各吸蔵部の切替動作を示す説明図であって、(a)は第1吸蔵部でNOxを吸蔵し第2吸蔵部でNOxを放出する状態を、(b)は第1吸蔵部でNOxを放出し第2吸蔵部でNOxを吸蔵する状態を、それぞれ示す。
【図3】本実施形態によるNOx低減効果を示す特性図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図8】本発明の第6の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図9】本発明の第7の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図10】各吸蔵部の切替動作を示す説明図であって、(a)は第1吸蔵部でNOxを吸蔵し第2吸蔵部でNOxを放出する状態を、(b)は第1吸蔵部でNOxを放出し第2吸蔵部でNOxを吸蔵する状態を、それぞれ示す。
【図11】本発明の第8の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図12】本発明の第9の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図13】第1及び第2吸蔵部がNOxを吸蔵し、第3吸蔵部がNOxを放出する様子を示す説明図である。
【図14】第1及び第3吸蔵部がNOxを吸蔵し、第2吸蔵部がNOxを放出する様子を示す説明図である。
【図15】第2及び第3吸蔵部がNOxを吸蔵し、第1吸蔵部がNOxを放出する様子を示す説明図である。
【図16】本発明の第10の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図17】リッチ燃焼させるシリンダ群を交替させた場合の説明図である。
【図18】目標空燃比制御と切替弁の切替制御との関係を示すフローチャートである。
【図19】本発明の第11の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図20】第5吸蔵部でNOxを放出し、他の吸蔵部でNOxを吸蔵する場合の説明図である。
【図21】第1吸蔵部でNOxを放出し、他の吸蔵部でNOxを吸蔵する場合の説明図である。
【図22】目標空燃比制御と切替弁の切替制御との関係を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0135】
1…エンジン、2…シリンダ、5…燃焼室、8…吸気マニホールド、9…排気マニホールド、10…酸化部、11…第1切替弁、12…第1吸蔵部、13…第2吸蔵部、14…第2切替弁、15…還元剤タンク、16…制御部、L1…吸気通路、L2…排気通路、L3…還元剤供給通路、L4…還流通路、21…第1吸蔵部、21A…酸化部、21B…吸蔵材、22…第2吸蔵部、22A…酸化部、22B…吸蔵材、L5…外気導入通路、L6…排ガス導入通路、2A〜2F…シリンダ、31…燃料噴射装置、32…エンジンコントロールユニット、L31…排ガス供給通路、41…第1切替弁、42…第2切替弁、43…第1吸蔵部、44…第2吸蔵部、45…第3吸蔵部、61〜66…吸蔵部、71〜76…2方切替弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ディーゼルエンジン等のエンジンから排出される排ガス中のNOx(窒素化合物)を除去して排ガスを浄化することができる排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等から排出されるNOxを低減する方法としては、例えば、排ガスを再び燃焼室に戻して燃焼させるEGR(排気再循環)、排ガスを吸蔵してから還元させる吸蔵還元触媒法等が知られている。このうち、NOx低減効果が比較的大きい吸蔵還元触媒法がよく使用されている。
【0003】
第1の従来技術としては、空燃比リーン運転時に、NOxを酸化して吸蔵材に貯蔵せしめ、空燃比リッチ運転時に、排ガス中の未燃焼燃料(HC)や一酸化炭素とNOxとを反応させて還元し、浄化させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、第2の従来技術としては、排気通路中に2個の吸蔵還元触媒を設けて交互に切替使用し、一方の吸蔵還元触媒を使用してNOxを吸蔵中に、他方の吸蔵還元触媒に還元剤を供給して還元し、浄化させる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許2600492号公報
【特許文献2】特開昭62−106826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1の従来技術では、空燃比を変化させることにより、NOxの吸蔵と還元を制御するため、高度かつ複雑な空燃比制御を行う必要がある。また、燃焼状態を変化させる時にショックが生じる可能性もある。さらに、吸蔵されたNOxを還元させるために、燃料を過剰にして空燃比をリッチに切り替えると、その分だけ燃費が低下する。第1の従来技術では、排ガス中の未燃焼燃料成分を還元剤として利用するため、還元反応を確実かつ速やかに行わせるために、必要以上の燃料を還元剤として供給する必要がある。しかし、必要以上に供給された還元剤のうち、還元反応に使用されなかった還元剤は、排気として排出されてしまうため、燃料が無駄に使用されて燃費が悪化する。
【0006】
第2の従来技術では、吸蔵材からNOxを放出させ、さらに放出されたNOxを還元させるために、水素等の還元剤を使用しているが、還元剤は、還元反応のためだけに消費されるので、還元剤の分だけコストが増加する。水素に代えて燃料を還元剤に用いる場合は、前記同様に、燃焼に寄与しない還元剤としての燃料の分だけ燃費が低下する。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、還元剤を無駄にせずに効率よくNOxを浄化できる排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法を提供することにある。本発明の他の目的は、後述する実施の形態の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の排ガス浄化装置は、エンジンからの排ガス中のNOxを吸蔵する吸蔵手段と、エンジンの各シリンダのうち少なくとも一つ以上の所定のシリンダを選択し、この選択した所定のシリンダの目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定して燃焼させるエンジン制御手段と、所定のシリンダからのリッチ排気を吸蔵手段に供給することにより、吸蔵手段に吸蔵されたNOxを放出させるリッチ排気供給手段と、吸蔵手段から放出されたNOx及び所定のシリンダから吸蔵手段に供給されたリッチ排気を、エンジンの燃焼室に還流させる還流手段と、を備える。
【0009】
ここで、吸蔵手段としては、例えば、アルカリ金属(カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等)、アルカリ土類(バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)等)、希土類(ランタン(La)、イットリウム(Y)等)の酸化物を用いることができる。あるいは、酸化ジルコニウム(ZrO2)やジルコン酸アルミニウム(ZrO2-Al2O3)系の酸化物を用いることもできる。吸蔵手段は、酸化雰囲気中ではNOxを吸蔵し、還元雰囲気では吸蔵したNOxを放出する。より正確には、吸蔵手段は、還元剤の少ない雰囲気中でNOxを吸蔵し、還元剤の多い雰囲気中ではNOxを放出する。
【0010】
エンジンからの排ガスが吸蔵手段に供給されると、吸蔵手段は排ガス中のNOxを吸蔵する。次に、リッチ排気供給手段が、吸蔵手段にリッチ排気を供給すると、吸蔵手段に吸蔵されていたNOxが放出される。
【0011】
本明細書において、リッチ排気とは、目標空燃比が理論空燃比よりもリッチに設定されたシリンダからの排気を意味し、このリッチ排気には、通常燃焼するシリンダからの排気に比べて、未燃焼の燃料成分や一酸化炭素がより多く含まれている。
【0012】
ここで、留意すべきは、本発明では、リッチ排気中の未燃焼燃料成分を、主としてNOx放出のために用いる点にある。多少の還元反応は生じるにしても、本発明では、リッチ排気中の燃料成分を主として吸蔵手段からのNOx放出のために使用する。
【0013】
吸蔵手段に供給されたリッチ排気中の燃料成分のうち、NOx放出(あるいは放出及び還元)に消費されなかった残余の燃料成分は、還流手段によって、放出されたNOxと共にエンジンの燃焼室に還流される。即ち、本発明では、リッチ排気中の燃料成分の一部をNOxの放出に用い、NOx放出に消費されなかった残余の燃料成分を燃焼室に送り込んで燃料として作用させる。
【0014】
燃焼室に還流されたNOxは、燃焼によって一部が浄化される。一方、リッチ排気中の燃料成分は、燃料としてエンジン出力の一部となる。従って、リッチ排気中の燃料成分が、NOx放出に必要な量よりも多い場合でも、余った燃料成分は燃焼室内で燃料として再利用されるため、燃料を無駄にすることがない。
【0015】
また、還元剤を単独で供給するのではなく、未燃焼の燃料成分を含むリッチ排気を用いるため、還元剤だけを供給する場合に比べて、NOx放出に使用するガス流量を大きくすることができ、吸蔵材から放出されたNOxを速やかに取り除いて燃焼室に還流させることができる。
【0016】
本発明に従う排ガス浄化方法は、エンジンからの排ガスを吸蔵手段に導いて、排ガス中のNOxを吸蔵手段に吸蔵させるステップと、エンジンの各シリンダのうちリッチ燃焼状態に設定される所定のシリンダからのリッチ排気を吸蔵手段に供給することにより、吸蔵手段に吸蔵されたNOxを放出させるステップと、放出されたNOx及び吸蔵手段に供給されたリッチ排気をエンジンの燃焼室に還流させるステップと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1〜図3に基づいて、第1の実施形態を説明する。図1は、例えば、自動車用エンジン装置等に排ガス浄化装置を適用した場合の全体構成図である。
【0019】
エンジン1は、例えば、乗用車等に搭載されるもので、4サイクル式のガソリンエンジンとして構成されている。これに限らず、ディーゼルエンジンや2サイクルエンジン等のような他の形式のエンジンにも本発明は適用できる。
【0020】
エンジン1のシリンダブロックには、例えば、2個、4個、6個等の複数のシリンダ2が形成されており、各シリンダ2内にはピストン3がそれぞれ摺動可能に設けられている(説明の便宜上1つのシリンダのみ図示)。各シリンダ2の開口部は、シリンダヘッド4によって気液密に施蓋されており、ピストン3の上方には燃焼室5が形成されている。燃焼室5と吸気マニホールド8との接続部には吸気弁6が、燃焼室5と排気マニホールド9との接続部には排気弁7が、それぞれ開閉可能に設けられている。
【0021】
吸気マニホールド8には、外気を導入するための吸気通路L1が接続されており、排気マニホールド9には、排ガスを大気に開放するための排気通路L2が接続されている。そして、排気通路L2の途中には、後述の排ガス浄化装置が設けられている。
【0022】
排ガス浄化装置は、それぞれ後述するように、酸化部10、第1切替弁11、第1吸蔵部12、第2吸蔵部13、第2切替弁14、還元剤タンク15及び制御部16を備えて構成されている。
【0023】
酸化部10は、排ガス中の酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に酸化させる酸化触媒(例えば、Pt、Mn2O3等)を有しており、排気通路L2の上流側に設けられている。酸化部10の下流側には、第1切替弁11及び第2切替弁14が排気通路L2の途中に設けられている。
【0024】
第1切替弁11及び第2切替弁14は、それぞれ第1切替手段、第2切替手段として表現可能なものであり、例えば、4ポート2位置の電磁弁として構成されている。各切替弁11,14は、それぞれ2つの切替位置(a),(b)を有しており、制御部16からの制御信号に応じて、互いに同期して位置を切り替えるようになっている。なお、各切替弁11,14は、各ポートがどこにも接続されない過渡位置を備えてもよく、この場合、4ポート3位置の電磁弁となる。また、電磁弁に限らず、空圧弁としてもよいし、あるいは、いわゆるレボルバー式の切替機構に代えてもよい。
【0025】
第1切替弁11と第2切替弁14との間には、第1吸蔵部12及び第2吸蔵部13が並列的に設けられている。第1吸蔵部12は、第1分岐通路L21を介して第1切替弁11及び第2切替弁14に接続されており、第2吸蔵部13は、第2分岐通路L22を介して第1切替弁11及び第2切替弁14に接続されている。各吸蔵部12,13は、それぞれ例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類等の酸化物(具体的には、例えば、酸化バリウム(BaO))から構成されており、酸化雰囲気中ではNOxを吸蔵し、還元雰囲気中ではNOxを放出するようになっている。より正確には、各吸蔵部12,13は、還元剤の少ない雰囲気中でNOxを吸蔵し、還元剤の多い雰囲気中でNOxを放出する。
【0026】
各切替弁11,14がそれぞれ第1位置(a)にある場合、第1吸蔵部12の上流側は第1分岐通路L21を介して酸化部10に接続され、第1吸蔵部12の下流側は大気に開放される。一方、第2吸蔵部13の上流側は、還元剤供給通路L3を介して還元剤タンク15に接続され、第2吸蔵部13の下流側は、還流通路L4を介して吸気通路L1の途中に接続される。なお、本明細書において、上流及び下流とは、それぞれ流体(排ガス、還元剤、外気)の流れ方向の上流及び下流を示す。
【0027】
各切替弁11,14がそれぞれ第1位置(a)にある場合、第1吸蔵部12には、酸化部10から第1分岐通路L21を介して排ガスが供給され、第1吸蔵部12は、排ガス中のNOxを吸蔵する(S1)。第2吸蔵部13には、還元剤供給通路L3を介して気体状の還元剤が供給され、第2吸蔵部13は、吸蔵していたNOxを放出させる(S2)。
【0028】
放出されたNOx及びNOx放出に消費されずに余った還元剤は、還流通路L4を介して負圧状態の吸気通路L1に流れ込み、吸気通路L1を介して燃焼室5内に流入する(S3)。燃焼室5内に流入したNOx及び還元剤は、燃焼室5内で燃焼される(S4)。これにより、NOxは還元され、還元剤は、燃料としてエンジン出力の一部となる。
【0029】
各切替弁11,14がそれぞれ第1位置(a)から第2位置(b)に切り替われると、上記の場合とは逆に、第1吸蔵部12が還元剤タンク15に接続され、第2吸蔵部13が酸化部10に接続される。即ち、各切替弁11,14が第1位置(a)にある場合、第1吸蔵部12はNOx吸蔵モードで使用され、第2吸蔵部13は、NOx放出モードで使用される。そして、各切替弁11,14がそれぞれ第2位置(b)に切り替わると、第1吸蔵部12はNOx吸蔵モードからNOx放出モードに切り替わり、第2吸蔵部13はNOx放出モードからNOx吸蔵モードに切り替わる。
【0030】
図1中の下側に示すタイムチャート16Aのように、各吸蔵部12,13の使用モードを交互に切り替えることにより、一方の吸蔵部でNOxを吸蔵しつつ、他方の吸蔵部からNOxを放出させて再生することができ、排ガス中のNOxを連続的に吸蔵して浄化させることができる。なお、実施例では、2個の吸蔵部12,13を設ける場合を例示しているが、本発明はこれに限らず、3個以上の吸蔵部を切替使用する構成としてもよい。
【0031】
還元剤タンク15は、還元剤を収容しており、還元剤供給通路L3及び第2切替弁14を介して、第1吸蔵部12又は第2吸蔵部13のいずれか一方に還元剤を供給するものである。還元剤としては、例えば、炭化水素、ガソリン、軽油、プロパン、ブタン、プロピレン、水素、一酸化炭素等を用いることができる。なお、吸蔵部を3個以上設ける場合は、放出モードで使用する複数の吸蔵部に還元剤を供給する。
【0032】
還元剤タンク15は、例えば、加圧された気体状の還元剤を供給するように構成されている。これに限らず、液状の還元剤を用いることもできる。液体状の還元剤を用いる場合は、例えば、加熱して気化させた還元剤を吸蔵部に供給したり、あるいは、後述する実施形態のように、排ガスや外気等のガス中に液体状の還元剤を噴霧して吸蔵部に供給すればよい。
【0033】
なお、還元剤として燃料の一部を利用する場合は、還元剤専用のタンク15を設ける必要はなく、還元剤供給通路L3を燃料タンクや燃料配管に接続して燃料を取り込む構成とすればよい。液体状の還元剤を用いる場合は、気化させたり霧化させる機構が必要になるため、気体状の還元剤を用いる方が簡素な構成にできる。しかし、燃料を還元剤として利用する場合は、燃料タンクや燃料配管から燃料の一部を取り出して使用できるので、還元剤タンク15を設けたり、タンク15を交換等する手間を省くことができる。
【0034】
制御部16は、タイムチャート16Aに示すように、各切替弁11,14の作動を制御する。上述の通り、制御部16は、適当な時期に各切替弁11,14に制御信号を出力し、各切替弁11,14の位置を切替させる。制御部16は、マイクロコンピュータシステムとして構成することもできるし、電磁リレー等のハードウェア回路として構成することもできる。また、制御部16は、エンジンコントロールユニット(ECU)の一部として実現させることもできる。
【0035】
次に、図2に基づいて、本実施形態の動作を説明する。
【0036】
図2(a)は、第1吸蔵部12でNOxを吸蔵させ、第2吸蔵部13でNOxを放出させる場合を示す。この場合は、上述の通り、燃焼室5内で発生した排ガスは、酸化部10により酸化された後、第1切替弁11から第1吸蔵部12に導入される。第1吸蔵部12によりNOxが除去された排ガスは、第2切替弁14を介して排気通路L2から大気中に排出される。なお、第2切替弁14の下流側で排気通路L2の途中に三元触媒等をさらに設けてもよい。
【0037】
次に、図2(b)に示すように、各切替弁11,14がそれぞれ切り替わると、還元剤供給通路L3及び第2切替弁14を介して、還元剤タンク15からの還元剤が第1吸蔵部12に流入する。第1吸蔵部12に流入した還元剤の一部は、第1吸蔵部12に吸蔵されているNOxを放出させる。第1吸蔵部12から放出されたNOx及び余った還元剤は、第1分岐通路L21、第1切替弁11、還流通路L4を介して吸気通路L1に流れ込み、吸気通路L1を介して燃焼室5内に還流される。燃焼室5内でNOxの一部は還元され、一方、還元剤は燃料の一部として燃やされる。
【0038】
第2吸蔵部13の動作は、第1吸蔵部12の動作と逆になる。第1吸蔵部12がNOxを吸蔵している間、第2吸蔵部13はNOxを放出し、第1吸蔵部12がNOxを放出している間、第2吸蔵部13はNOxを吸蔵する。
【0039】
次に、各部で生じる化学反応について説明する。まず、酸化部10での酸化反応を下記化1に示す。
【0040】
NO+1/2O2→NO2・・・(化1)
【0041】
次に、吸蔵材がNO2を吸蔵するときの反応式を下記化2に示す(MOは吸蔵材、Mは例えばBa)。
【0042】
NO2+1/2MO+1/4O2→1/2M(NO3)2 ・・・(化2)
【0043】
還元剤を(CH2)nと表現した場合の吸蔵材からのNO2放出反応を化3、化4にそれぞれ示す。化3はNO2として放出される場合を示し、化4はNOとして放出される場合を示す。
【0044】
1/2M(NO3)2+1/6n(CH2)n→NO2+1/2MO+1/6CO2+1/6H2O・・・(化3)
【0045】
1/2M(NO3)2+1/2n(CH2)n→NO+1/2MO+1/2CO2+1/2H2O・・・(化4)
【0046】
以上の反応式をまとめると、NO2として放出される場合は化5に示され、NOとして放出される場合は化6に示される。
【0047】
NO+1/6n(CH2)n+3/4O2→NO2+1/6CO2+1/6H2O・・・(化5)
【0048】
1/2n(CH2)n+3/4O2→1/2CO2+1/2H2O・・・(化6)
【0049】
化5に示すように、1モルのNOを吸蔵放出するのに必要な炭化水素(HC)の量(Cのモル数)は、NO2として放出される場合は1/6モル、NOとして排出される場合は1/2モルとなる。
【0050】
なお、比較のために、放出されたNOxを還元剤によってさらに還元させる場合の化学反応を検討すると、NO2として放出される場合の反応式は化7に示され、NOとして放出される場合の反応式は化8に示される。
【0051】
NO2+2/3n(CH2)n→1/2N2+2/3CO2+2/3H2O・・・(化7)
【0052】
NO+1/3n(CH2)n→1/2N2+1/3CO2+1/3H2O・・・(化8)
【0053】
従って、NO2として放出される場合とNOとして放出される場合のいずれの場合でも、全反応式は化9に示す通りとなり、
【0054】
NO+5/6n(CH2)n+3/4O2→1/2N2+5/6CO2+5/6H2O・・・(化9)
1モルのNOを吸蔵材から放出させてさらに還元させるのに必要な炭化水素(HC)の量は、5/6モルとなる。
【0055】
図3は、本実施形態によるNOx低減効果を示す特性図である。ディーゼル燃焼装置を用いて、燃焼室へ還流するNOx量と燃焼室から排出されるNOx量との関係を調べたものである。燃焼室への燃料の噴射量を60mm3にした場合(四角形)と、燃料噴射量を120mm3にした場合(丸印)とでそれぞれNOx低減効果を測定した。なお、NOx測定には、CLA(化学発光法)を用いた。
【0056】
図3中の点斜線は、NOx低減効果が全く無いとした場合の理論値である。グラフの左端に示すように、NOx還流量が0のときに、約500ppm程度のNOxが発生する。これは、正常な燃焼により生じるNOx量である。本実施形態によるNOx低減効果が全く無いと仮定した場合、NOxは斜め点線に示すように、累積していく。
【0057】
しかし、丸印あるいは四角形印をつなぐ実線は、いずれも斜め点線よりも下がった位置にあり、一定のNOx低減効果がみられる。燃料噴射量が120mm3の場合は、NOx還流量が大きくなるにつれてNOx低減効果が増大している。また、燃料噴射量が60mm3の場合は、NOx還流量が1000ppm程度を越えるあたりから一定量のNOxを低減しており、燃料噴射量120mm3の場合の方がNOx低減効果が大きい。
【0058】
以上詳述した通り、本実施の形態によれば、還元剤を積極的な(あるいは実質的な)還元反応には用いずにNOx放出のために用い、NOx放出に寄与しなかった残余の還元剤をNOxと共に燃焼室5に還流させるため、NOxを燃焼室5内で還元させつつ、還元剤を燃料として燃焼させ、エンジン出力の一部にすることができる。
【0059】
従って、還元剤を専ら還元反応にのみ用いる場合に比較して、還元剤を無駄に消費することがなく、NOx低減コストを下げることができる。また、還元剤として燃料を利用する場合は、燃費を悪化させることもない。
【実施例2】
【0060】
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施の形態の特徴は、酸化機能を備えた吸蔵部を用いた点にある。
【0061】
本実施の形態による排ガス浄化装置は、第1の実施形態と同様に、各切替弁11,14及び各吸蔵部21,22を備え、各吸蔵部21,22を交互に切り替えて使用する。しかし、本実施形態では、独立した酸化部10を廃止し、各吸蔵部21,22にそれぞれ酸化部21A,22Aを備えさせている。即ち、各吸蔵部21,22は、吸蔵材に酸化触媒を担持した構成を有し、酸化部21A,22Aと吸蔵材21B,22Bとを備える。なお、酸化触媒としては、酸素の少ない雰囲気中でも還元反応の生じにくい特性を備えていることが好ましい。
【実施例3】
【0062】
図5は、本発明の第3の実施形態を示す。本実施形態の特徴は、外気と還元剤との混合気体を用いてNOxを放出させる点にある。
【0063】
還元剤供給通路L3の途中には、外気導入通路L5が接続されている。還元剤タンク15から流出する還元剤は、外気導入通路L5から導入される外気に混合されて各吸蔵部12,13のいずれかに供給される。
【0064】
従って、本実施形態によれば、NOx放出に用いる混合気体の量を、還元剤を単独で供給する場合よりも大きくすることができ、吸蔵材から放出されたNOxを速やかに運び去って吸気通路L1に還流させることができる。
【実施例4】
【0065】
図6は、本発明の第4の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、排ガスと還元剤との混合気体を用いてNOxを放出させる点にある。
【0066】
還元剤供給通路L3の途中には、排ガス導入通路L6が接続されており、還元剤タンク15からの還元剤は、排ガス導入通路L6から導入された排ガスに混合して、吸蔵部に供給される。
【0067】
これにより、外気と還元剤を混合する場合と同様に、放出に用いる混合気体量を大きくして、NOxを速やかに運び去ることができる。また、本実施形態によれば、吸蔵時と放出時とで吸蔵部12,13の温度がほぼ変化せず、吸蔵材の温度をほぼ一定に保持することができる。従って、NOx放出時の温度低下を防止して、放出効果を高くすることができ(一般的に、吸蔵材が高温なほどNOx放出効果が大きい)、吸蔵時と放出時との温度差による熱疲労や劣化を防止できる。
【実施例5】
【0068】
図7に基づいて、本発明の第5の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、酸化機能付き吸蔵部に還元剤と外気との混合気体を供給する点にある。
【0069】
本実施の形態による各吸蔵部21,22は、第2の実施形態と同様に、それぞれ酸化部21A,22Aを備えている。そして、還元剤供給通路L3には、第3の実施形態と同様に、外気導入通路L5が接続されている。
【0070】
本実施形態では、外気と還元剤とが混合した多量の気体によって、吸蔵部に吸蔵されているNOxを放出させるため、酸素の少ない還元雰囲気中では放出されたNOxを触媒上で還元するという特徴を有する白金触媒を用いた場合に特に効果がある。つまり、外気と還元剤とを混合させることにより、酸素の多い雰囲気を形成でき、この酸素の多い雰囲気下で還元反応を抑制しつつNOxを放出させ、NOx及び還元剤の残りを燃焼室5に還流させることができる。
【実施例6】
【0071】
図8に基づいて、本発明の第6の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、酸化機能付き吸蔵部に還元剤と排ガスとの混合気体を供給する点にある。
【0072】
本実施の形態による各吸蔵部21,22は、第2の実施形態と同様に、それぞれ酸化部21A,22Aを備えている。また、還元剤供給通路L3には、排気通路L2から分岐する排ガス導入通路L6が接続されている。
【0073】
これにより、放出に使用する混合気体量を大きくして速やかにNOxを運び去ることができ、NOx吸蔵時とNOx放出時の温度差を少なくして、NOx放出効果を高めると共に、熱疲労や劣化等を防止できる。さらに、白金触媒を用いた場合でも、比較的酸素の多い雰囲気中でNOxを放出させるため、放出されたNOxが白金触媒上で還元されるのを防止できる。
【実施例7】
【0074】
図9,図10に基づいて、本発明の第7の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、NOx放出剤として、排気中の未燃焼燃料を利用する点にある。
【0075】
図9は、自動車用エンジンに排ガス浄化装置を適用した場合の全体構成図である。本実施例では、エンジン1は、例えば6つのシリンダ2A〜2Fを備えている。各シリンダ2A〜2Fには、燃焼室5に臨むようにして、電子式燃料噴射装置31がそれぞれ設けられている。
【0076】
これら燃料噴射装置31には、燃料ポンプによって燃料タンクから吸引された燃料が燃料供給配管(いずれも不図示)を介してそれぞれ供給される。各燃料噴射装置31は、ECU32からの制御信号に基づいて開弁し、所定量の燃料を燃焼室5に向けてそれぞれ吐出する。
【0077】
ECU32は、各燃料噴射装置31や点火装置(不図示)等の作動を制御する。ECU32は、例えば、燃料噴射装置31の開弁時期及び開弁時間を制御することにより、燃料噴射量を制御することができる。ここで、一般的に、各シリンダ2A〜2Fの目標空燃比は、14.7程度に設定される。しかし、理論空燃比に限らず、例えば、燃費の向上や排気エミッションの低減を図る場合は、理論空燃比よりも燃料噴射量を減少させて、いわゆるリーン状態で燃焼させる場合もある。または、エンジン出力の向上を図る場合は、理論空燃比よりも燃料噴射量を増加させて、いわゆるリッチ状態で燃焼させる場合もある。
【0078】
ECU32は、例えば、運転状態(定常走行状態、加減速状態等)に応じて、各シリンダ2A〜2Fの目標空燃比を設定し、燃料噴射量を個別に制御可能である。また、ECU32は、排ガス浄化のために、所定のシリンダ2Fの目標空燃比をリッチに設定し、リッチ状態で燃焼させる。リッチ状態で燃焼されるシリンダは、各シリンダ2A〜2Fのいずれでもよいが、本実施形態では、一例として、シリンダ2Fを用いる。なお、他のシリンダ2A〜2Eの目標空燃比は、理論空燃比または理論空燃比よりもリーン状態に設定することができる。
【0079】
所定のシリンダとしてのシリンダ2Fは、その目標空燃比がリッチに設定されるため、シリンダ2Fからの排ガス中には、理論空燃比で燃焼させた場合よりも、未燃焼の燃料成分がより多く含まれている。なお、NOx放出効果を奏する成分として、排ガス中には、未燃焼の燃料成分以外に一酸化炭素も含まれているが、以下の説明では、未燃焼燃料成分を主として説明する。
【0080】
なお、シリンダ2Fは、常時リッチ燃焼状態に置かれている必要は必ずしもなく、少なくとも、吸蔵部12,13のいずれか一方からNOxを放出させる期間に合わせて、シリンダ2Fの目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定すれば足りる。NOx放出期間以外の期間では、シリンダ2Fの目標空燃比を、他のシリンダ2A〜2Eと同様に設定することができる。
【0081】
還元剤供給手段としての機能を実現する所定のシリンダ2Fは、排ガス供給通路L31を介して、第1切替弁11に接続されている。第1切替弁11が切替位置(a)にある場合、所定のシリンダ2Fと第2吸蔵部13とは、排ガス供給通路L31及び第1切替弁11を介して接続され、他のシリンダ2A〜2Eと第1吸蔵部12とは、排気マニホールド9と排気通路L2と第1切替弁11とを介して接続される。
【0082】
そして、第2切替弁14が切替位置(a)にある場合、第2吸蔵部13は、第2切替弁14及び還流通路L4を介して吸気通路L1に接続され、第1吸蔵部12は、第2切替弁14及び排気通路L2を介して大気に開放される。第1切替弁11及び第2切替弁14がそれぞれ切替位置(b)にある場合、上述とは逆に、シリンダ2Fの排ガスは第1吸蔵部12等を介して吸気通路L1に還流し、他のシリンダ2A〜2Eの排ガスは第2吸蔵部13等を介して大気中に放出される。
【0083】
図10(a)に示すように、第1切替弁11及び第2切替弁14がそれぞれ切替位置(a)にある場合、シリンダ2Fからの排ガスは、第2吸蔵部13に導かれる。この排ガス中に含まれる未燃焼燃料成分によって、第2吸蔵部13に吸蔵されていたNOxが放出される。放出されたNOxは、シリンダ2Fからの排ガスと共に、還流通路L4及び吸気通路L1等を介して、各シリンダ2A〜2Fの燃焼室5内にそれぞれ流入する。これにより、NOx放出に寄与しなかった残りの燃料成分は、燃料として再利用される。一方、通常燃焼状態におかれる他のシリンダ2A〜2Eからの排ガスは、第1吸蔵部12に導かれてNOxを除去され、大気中に放出される。
【0084】
図10(b)に示すように、第1切替弁11及び第2切替弁14がそれぞれ切替位置(b)に切り替わると、シリンダ2Fからの排ガスは第1吸蔵部12に導かれ、他のシリンダ2A〜2Eからの排ガスは第2吸蔵部13に導かれる。そして、第1吸蔵部12に吸蔵されていたNOxが放出され、未燃焼の燃料成分と共に、各シリンダ2A〜2Fの燃焼室5に還流する。一方、第2吸蔵部13は、シリンダ2A〜2Eからの排ガス中からNOxを除去し、正常な排ガスを大気中に排出させる。
【0085】
このように、本実施形態では、エンジン1の各シリンダ2A〜2Fのうち所定のシリンダ2Fの目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定して燃焼させ、所定のシリンダ2Fからの排気を各吸蔵部12,13に交替で供給することにより、各吸蔵部12,13に吸蔵されたNOxを放出させて、各シリンダ2A〜2Fの燃焼室5にそれぞれ還流させる構成とした。従って、所定のシリンダ2Fからの排ガス中に含まれる未燃焼の燃料成分を吸蔵部12,13のNOx放出に利用することができ、NOx放出に寄与しなかった残りの燃料成分を燃料として利用できる。これにより、NOx浄化コストを低減し、燃費の悪化を防止できる。
【0086】
これに加えて、本実施の形態では、還元剤タンクを用いず、既存のエンジン構造をほぼそのまま利用可能であり、所定のシリンダ2Fの目標空燃比をリッチに設定するだけで、NOx放出に用いる燃料成分を容易に得ることができる。また、所定のシリンダ2Fの目標空燃比を調節するだけで、NOx放出に使用する未燃焼燃料成分の量を制御することができる。さらに、所定のシリンダ2Fのリッチ燃焼は、NOx放出剤としてのリッチ雰囲気の排ガスを発生させるだけでなく、エンジン1の出力の一部を構成するため、シリンダ2Fの燃焼を有効に利用することができる。
【0087】
また、エンジン1が建設機械用エンジンである場合、建設機械用エンジンは、その使用目的に応じて、例えば、重負荷モード、軽負荷モード、軽微負荷モード等のように、複数の出力モードで使用される。そこで、例えば、軽負荷モード及び重負荷モードの場合は、全てのシリンダ2A〜2Fを通常燃焼させ、軽微負荷モードの場合は、一つまたは複数のシリンダを選択してリッチ燃焼させることもできる。このように、エンジンの使用目的に応じて、NOxの放出及び吸蔵を制御することもできる。
【実施例8】
【0088】
図11に基づいて、本発明の第8の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、リッチ燃焼させるシリンダとして、複数のシリンダ2E,2Fを用いる点にある。
【0089】
図11は、本実施形態の全体構成図である。図11に示すように、本実施形態では、隣接する2個のシリンダ2Fとシリンダ2Eとが、NOx放出用の専用シリンダとして選択されており、これら各シリンダ2E,2Fの目標空燃比は、それぞれ理論空燃比よりもリッチに設定されている。NOx放出用のシリンダ2E,2Fは、必ずしも隣接している必要はないが、隣接している方が配管の取付や引き回しが容易であり、機械構造の点からは有利である。
【0090】
本実施形態の排ガス供給通路は、一方のシリンダ2Eに接続される第1の分岐通路L31Aと、他方のシリンダ2Fに接続される第2の分岐通路L31Bと、これら各分岐通とL31A,L31Bが合流する合流通路L31Cとから構成される。各シリンダ2E,2Fからの排ガスは、合流通路L31Cを介して第1切替弁11に流入し、第1切替弁11から各吸蔵部12,13のいずれか一方に選択的に供給される。
【0091】
本実施形態はこのように構成されるので、上述した第7の実施形態と同様の作用効果を奏する。これに加えて、本実施形態では、複数のシリンダ2E,2FをNOx放出専用のシリンダとして使用し、各シリンダ2E,2FからそれぞれNOx放出用の排ガスを得る構成を採用した。従って、単一のシリンダ2FをNOx放出用シリンダとして用いる前記実施形態に比べて、NOx放出に必要な未燃焼の燃料成分を複数のシリンダ2E,2Fでそれぞれ分担して生成すればよく、各シリンダ2E,2Fの目標空燃比を、より理論空燃比側に近づけることができる。
【実施例9】
【0092】
図12〜図15に基づいて、本発明の第9の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、3個の吸蔵部43〜45を順番に切り替えながら使用する点にある。
【0093】
図12は、本実施形態の全体構成を示す説明図である。上記各実施形態では、2個の吸蔵部を切り替えて使用する場合を例示したが、本実施形態のように、3個以上の吸蔵部43〜45を使用してもよい。なお、吸蔵部を3個設ける場合を例に挙げて説明するが、後述する他の実施形態からも明らかなように、吸蔵部を4個以上設けることもできる。
【0094】
前記第7実施形態と同様に、所定のシリンダ2Fは、NOx放出用の専用シリンダとして使用され、その目標空燃比が理論空燃比よりもリッチに設定されている。他のシリンダ2A〜2Eは、エンジン出力を発生させる通常のシリンダとして使用され、その目標空燃比は、理論空燃比近傍または理論空燃比よりもリーンとなるように設定可能である。なお、NOx放出用のシリンダは2Fに限らず、各シリンダ2A〜2Fのうち、いずれか一つまたは複数のシリンダを使用することができる。
【0095】
各吸蔵部43〜45の上流側(ガスの流入側)には、第1切替弁41が設けられ、各吸蔵部43〜45の下流側(ガスの流出側)には、第2切替弁42が設けられている。これら各切替弁41,42は、例えば、6ポート3位置の電磁弁または空圧弁等として、それぞれ構成することができる。
【0096】
各切替弁41,42は、それぞれ3つの切替位置(a),(b)及び(c)を備えており、制御部16からの制御信号に応じて切り替わるようになっている。第1切替弁41には、NOx放出用シリンダ2Fからの排ガスと、他の通常のシリンダ2A〜2Eからの排ガスとがそれぞれ入力される。他のシリンダ2A〜2Eからの排ガスは、2つの流入口からそれぞれ入力される。3個の吸蔵部43〜45のうち、いずれか1個の吸蔵部をNOx放出モードで使用し、他の2個の吸蔵部をNOx吸蔵モードで使用するためである。第1切替弁41の各流出口には、分岐通路L21,L22,L23を介して、各吸蔵部45,44,43の流入口がそれぞれ接続されている。
【0097】
第2切替弁42の各流入口は、分岐通路L21,L22,L23を介して、各吸蔵部45,44,43の流出口にそれぞれ接続されている。また、第2切替弁42の各流出口のうち、1個の流出口は、還流通路L4を介して吸気通路L1に接続され、残りの2個の流出口は排気通路L2を介して大気に開放されている。
【0098】
図13に示すように、各切替弁41,42がそれぞれ切替位置(a)にある場合、第1吸蔵部43及び第2吸蔵部44には、通常燃焼状態のシリンダ2A〜2Eからの排ガスが供給される。各吸蔵部43,44は、排ガス中のNOxを吸蔵して除去し、清浄な排ガスを大気中に排出する。
【0099】
第3吸蔵部45には、NOx放出用のシリンダ2Fからの排ガスが供給される。第3吸蔵部45は、この未燃焼の燃料成分を含む排ガスを利用して、吸蔵していたNOxを放出する。放出されたNOxは、NOx放出に使用されなかった他の燃料成分と一緒に、還流通路L4,吸気通路L1を介して、燃焼室5に還流する。
【0100】
図14に示すように、各切替弁41,42がそれぞれ切替位置(b)にある場合、第1吸蔵部43及び第3吸蔵部45に、通常燃焼状態のシリンダ2A〜2Eからの排ガスがそれぞれ供給される。第1吸蔵部43及び第3吸蔵部45は、排ガス中のNOxを吸蔵し、排ガスを清浄化する。一方、シリンダ2Fからの未燃焼燃料成分を含む排ガスは、第2吸蔵部44にのみ供給される。第2吸蔵部44は、吸蔵していたNOxを放出し、この放出されたNOxは、残った燃料成分と共に燃焼室5に還流する。
【0101】
図15に示すように、各切替弁41,42がそれぞれ切替位置(c)にある場合、第2吸蔵部44及び第3吸蔵部45には、通常燃焼状態のシリンダ2A〜2Eからの排ガスがそれぞれ供給される。シリンダ2Fからの排ガスは、第1吸蔵部43にのみ供給される。これにより、第2,第3吸蔵部44,45は、排ガス中のNOxを吸蔵し、第1吸蔵部43は、吸蔵していたNOxを放出させる。なお、弁の切替位置と各吸蔵部の動作モードとの対応関係は、上述の例に限らない。
【0102】
このように、3個以上の吸蔵部43〜45を設け、所定の順番で切り替えながら交替で使用することができる。これにより、2個の吸蔵部によってNOxをそれぞれ分担して吸蔵できる。なお、3個の吸蔵部43〜45のうち、いずれか1個をNOx吸蔵モードで使用し、他の2個をNOx放出モードで使用することも可能である。さらに、例えば、4個以上の吸蔵部を設ける場合、いずれか2個の吸蔵部をNOx吸蔵モードで使用し、残り2個の吸蔵部をNOx放出モードで使用することもできる。
【実施例10】
【0103】
図16〜図18に基づいて、本発明の第10の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、各シリンダ2A〜2Fをそれぞれ同数ずつの2つのグループに分けて、いずれか一方のグループのシリンダを交替でリッチ燃焼させることにより、NOx放出用のガスを得る点にある。
【0104】
図16は、全体構成を示す説明図である。本実施形態の各シリンダ2A〜2Fは、第1シリンダ群2A〜2Cと第2シリンダ群2D〜2Fとにグループ化されている。第1シリンダ群2A〜2Cは、第1排気マニホールド9Aを介して、第1吸蔵部12に接続されている。第2シリンダ群2D〜2Fは、第2排気マニホールド9Bを介して、第2吸蔵部13に接続されている。各排気マニホールド9A,9Bは、それぞれが接続されるシリンダ群の目標空燃比がリッチに設定される期間中、リッチ排気供給手段の一例である排気供給通路として機能する。それ以外の期間中、通常の排気マニホールドとして機能する。
【0105】
本実施形態では、各吸蔵部12,13の上流側に位置する第1切替弁が廃止され、第2切替弁14のみが設けられている点に留意しなければならない。即ち、各吸蔵部12,13は、各シリンダ群に直接的に接続されている。本実施形態では、6個のシリンダ2A〜2Fを2つのシリンダ群にグループ化し、各シリンダ群をそれぞれ各吸蔵部12,13に直結させる。そして、ECU32は、各シリンダ群のうち、いずれか一方のシリンダ群の目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定し、他方のシリンダ群を通常燃焼させる。即ち、本実施形態では、各シリンダ群の目標空燃比を交替で切り替えることにより、第1切替弁を不要としている。
【0106】
なお、各シリンダ群と各吸蔵部12,13とが直接的に接続されるとは、切替弁11が不要であることを意味し、各シリンダ群と各吸蔵部12,13との間に、いかなる機器も介在しないという意味ではない。各シリンダ群と各吸蔵部12,13との間には、必要に応じて、例えば、酸化部や逆止弁等を設けることができる。
【0107】
図16には、第1シリンダ群2A〜2Cが通常燃焼状態におかれ、第2シリンダ群2D〜2Fがリッチ燃焼状態におかれている場合が示されている。これにより、第1シリンダ群2A〜2Cからの通常の排ガスは、第1排気マニホールド9Aを介して、第1吸蔵部12に供給され、第1吸蔵部12によりNOxが除去された後、排気通路L2を介して大気中に排出される。一方、第2シリンダ群2D〜2Fからの未燃焼燃料成分を含む排ガスは、第2排気マニホールド9Bを介して、第2吸蔵部13に供給され、第2吸蔵部13に吸蔵されていたNOx放出に使用される。放出されたNOx及びNOx放出に使用されなかった未燃焼の燃料成分は、還流通路L4及び吸気通路L1を介して、各シリンダ2A〜2Fの燃焼室5にそれぞれ還流される。
【0108】
図17は、図16に示す場合とは逆に、第1シリンダ群2A〜2Cをリッチ燃焼させ、第2シリンダ群2D〜2Fを通常燃焼させる場合を示す。これにより、第1吸蔵部12には、未燃焼の燃料成分を含む排ガスが供給され、第1吸蔵部12に吸蔵されていたNOxが放出される。一方、第2吸蔵部13には、第2シリンダ群2D〜2Fから通常の排ガスが供給され、第2吸蔵部13は、排ガスからNOxを除去して清浄化する。
【0109】
図18は、本実施形態による制御の概要を示すフローチャートである。まず、ある時点において、第1シリンダ群2A〜2Cがリッチ燃焼状態、第2シリンダ群2D〜2Fが通常燃焼状態で運用されていると仮定する(S11,S12)。この場合は、図17に示すように、第1吸蔵部12はNOx放出モードで使用されることになり(S13)、第2吸蔵部13はNOx吸蔵モードで使用されることになる(S14)。
【0110】
ECU32は、目標空燃比の設定切替時期が到来したか否かを監視しており(S15)、所定の時期が到来したと判定した場合は(S15:YES)、切替指示を制御部16に送信する(S16)。ここで、所定の時期としては、例えば、一定時間の経過を挙げることができる。予め設定された固定のまたは可変の所定時間が経過した場合に、目標空燃比の設定切替時期が到来したものと判定することができる。また、例えば、定常走行時にNOx放出を行わせる等のように、エンジンの現在または過去の運転状態に基づいて、切替判定を行うこともできる。あるいは、NOx吸蔵量を監視するセンサを設け、このセンサからの出力信号を考慮して、切替時期か否かを判定することもできる。
【0111】
制御部16は、ECU32からの切替指示を受信すると、切替弁14に制御信号を出力し、切替弁14の位置を切り替える(S17)。ECU32は、第1シリンダ群2A〜2Cの目標空燃比をリッチ状態から理論空燃比近傍に変化させ(S18)、第2シリンダ群2D〜2Fの目標空燃比を理論空燃比近傍からリッチ状態に変化させる(S19)。
【0112】
切替弁14の位置が切り替わり、また、各シリンダ群の目標空燃比がそれぞれ設定変更されることにより、図16に示すように、第1シリンダ群2A〜2Cから排出される通常の排ガスは、第1吸蔵部12によってNOxを除去された後、排気通路L2から大気中に排出される(S20)。一方、第2シリンダ群2D〜2Fから排出される未燃焼の燃料成分を含む排ガスは、第2吸蔵部13に吸蔵されたNOx放出に使用され、放出されたNOxと共に燃焼室5に還流する(S21)。なお、作動モードの切替によって、NOxが除去されていない排ガスが大気中に放出されないように、各シリンダ群の目標空燃比の設定変更時期と切替弁14の切替時期とを適宜調節する。
【0113】
そして、再びECU32は、切替時期が到来したか否かを判定し(S22)、切替時期が到来した場合は、制御部16に切替指示を出力する(S23)。制御部16は、この切替指示に応じて、切替弁14の位置を切り替える(S24)。また、ECU32は、第1シリンダ群2A〜2Cの目標空燃比をリッチに、第2シリンダ群2D〜2Fの目標空燃比を理論空燃比近傍に、それぞれ設定変更する(S25,S26)。これにより、図17に示すように、第1吸蔵部12はNOx放出モードで使用され(S27)、第2吸蔵部13はNOx吸蔵モードで使用される(S28)。
【0114】
本実施形態は、このように構成されるので、前記第7の実施形態と同様の作用効果を発揮する。これに加えて、本実施形態では、エンジン1の各シリンダ2A〜2Fを第1シリンダ群2A〜2Cと第2シリンダ群2D〜2Fとにグループ化し、第1シリンダ群2A〜2Cに第1吸蔵部12を直接的に接続し、第2シリンダ群2D〜2Fに第2吸蔵部13を直接的に接続し、各吸蔵部12,13の下流側には各吸蔵部12,13の流出口を大気中または燃焼室5のいずれかに接続する切替弁14を設け、各シリンダ群の目標空燃比を交互にリッチに設定する構成としたので、各吸蔵部12,13と各シリンダ群との間に切替弁11を設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。
【実施例11】
【0115】
図19〜図22に基づいて、本発明の第11の実施形態を説明する。本実施形態の特徴は、各シリンダ2A〜2Fにそれぞれ吸蔵部61〜66を直接的に接続し、各シリンダ2A〜2Fを順番に切替ながらリッチ燃焼させる点にある。
【0116】
図19の全体構成図に示すように、本実施形態のエンジン1の各シリンダ2A〜2Fは、それぞれ排ガス供給通路L31A〜L31Fを介して、各吸蔵部61〜66にそれぞれ接続されている。即ち、各シリンダ2A〜2Fには、それぞれ専用の吸蔵部61〜66が直接的に接続されている。
【0117】
各吸蔵部61〜66の下流側には、各吸蔵部61〜66の流出口をそれぞれ燃焼室5または大気中のいずれかに接続させるための切替弁70が設けられている。この切替弁70は、例えば、シリンダ数に応じた数だけ2方切替弁71〜76を設けることにより、実現することができる。
【0118】
各2方切替弁71〜76の流入口は、各吸蔵部61〜66にそれぞれ接続されており、各2方切替弁71〜76の一方の流出口は還流通路L4にそれぞれ接続され、各2方切替弁71〜76の他方の流出口は排気通路L2にそれぞれ接続されている。従って、各2方切替弁71〜76の弁位置を切り替えることにより、各2方切替弁71〜76を燃焼室5または大気中のいずれかに個別に接続することができる。
【0119】
図19では、シリンダ2Fのみがリッチ燃焼され、他のシリンダ2A〜2Eがそれぞれ通常燃焼の場合を示している。この場合、シリンダ2Fに接続される第6吸蔵部66のみがNOx放出モードで使用され、他の吸蔵部61〜65はそれぞれNOx吸蔵モードで使用される。そして、第6吸蔵部66に接続された切替弁76により、第6吸蔵部66は還流通路L4から吸気通路L1を介して、各シリンダ2A〜2Fの燃焼室5にそれぞれ接続される。これにより、第6吸蔵部66から放出されたNOx及び残りの未燃焼燃料成分は、各燃焼室5にそれぞれ還流する。他の吸蔵部61〜65は、各シリンダ2A〜2Eからの排ガスからNOxをそれぞれ除去する。NOxが除去されて清浄化された排ガスは、切替弁71〜75から排気通路L2を介して、大気中に排出される。
【0120】
図20は、シリンダ2Eのみをリッチ燃焼させた場合の様子を示す。この場合、シリンダ2Eに接続される第5吸蔵部65のみがNOx放出モードで使用され、他の吸蔵部61〜64及び66は、それぞれNOx吸蔵モードで使用される。
【0121】
同様に、図21は、シリンダ2Aのみをリッチ燃焼させた場合を示す。シリンダ2Aに接続される第1吸蔵部61のみがNOx放出モードで使用され、他の吸蔵部62〜66はそれぞれNOx吸蔵モードで使用される。
【0122】
図22は、ECU32及び制御部16の動作概略を示すフローチャートである。まず、ECU32は、シリンダ2A〜2Fのうちいずれか一つのシリンダを選択するためのシリンダ番号CNに初期値としての「1」をセットする(S31)。同様に、制御部16は、吸蔵部61〜66のうちいずれか一つの吸蔵部を選択するための吸蔵部番号ANに初期値としての「1」をセットする(S32)。
【0123】
ECU32は、シリンダ番号CNで指定されたシリンダの目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定する(S33)。制御部16は、切替弁70に制御信号を出力することにより、吸蔵部番号ANで指定された吸蔵部を還流通路L4に接続させる(S34)。
【0124】
また、ECU32は、他のシリンダの目標空燃比を理論空燃比近傍に設定し(S35)、制御部16は、他の吸蔵部をそれぞれ排気通路L2に接続させる(S36)。これにより、いずれか一つの吸蔵部をNOx放出モードで使用し、他の吸蔵部をNOx吸蔵モードで使用することができる。
【0125】
そして、ECU32は、切替時期が到来したか否かを判定する(S37)。切替時期が到来したか否かの判定は、前記実施形態で述べたように、時間経過やエンジン運転状態等に基づいて行うことができる。
【0126】
ECU32は、切替時期が到来したと判定した場合(S37:YES)、制御部16に切替指示を出力する(S38)。制御部16は、切替指示を受信すると、吸蔵部選択番号ANを1つだけインクリメントさせる(S39)。ECU32も、シリンダ選択番号CNを1つだけインクリメントさせる(S40)。
【0127】
ここで、ECU32は、シリンダ選択番号CNが上限値CNmaxを超えたか否かを判定する(S41)。本実施例では6気筒エンジンを例示するので、上限値CNmaxは、シリンダ数の「6」である。S40でシリンダ選択番号CNを1だけインクリメントさせた結果、シリンダ選択番号CNの値が上限値CNmaxを超えた場合(S41:YES つまり、CN=7)、シリンダ選択番号CNを初期値である「1」に戻す(S42)。シリンダ選択番号CNの値が上限値CNmaxを超えない場合(S41:NO)、S33に戻る。このようにして、CNが所定数に達する毎にカウンタをリセットすることにより、各シリンダを順番に繰り返して、周期的に選択する。
【0128】
同様に、制御部16も、吸蔵部選択番号ANを1だけインクリメントさせた後(S39)、吸蔵部選択番号ANの値が上限値ANmaxを超えたか否かを判定する(S43)。本実施例では、各シリンダ毎にそれぞれ専用の吸蔵部を設け、各シリンダと各吸蔵部とが一対一で対応しているため、吸蔵部選択番号ANの上限値ANmaxは、CNmaxと同一の値、即ち「6」となっている。吸蔵部選択番号ANの値が上限値ANmaxを超えない場合(S43:NO)、S34に戻る。これに対し、吸蔵部選択番号ANの値が上限値ANmaxを超えた場合(S43:YES つまり、AN=7)、制御部16は、吸蔵部選択番号ANを初期値である「1」にセットする(S44)。
【0129】
以上のように、リッチ燃焼させるシリンダの制御と吸蔵部のモード制御(切替弁制御)とは、同期させることができる。これにより、所定の順番に従って所定のシリンダがリッチ燃焼状態におかれ、このシリンダに接続された吸蔵部のみがNOx放出モードで使用される。なお、いずれか一つの吸蔵部のみをNOx放出モードで使用する場合を説明したが、これに限らず、複数の吸蔵部をそれぞれNOx放出モードで使用してもよい。
【0130】
このように、本実施形態では、各シリンダ2A〜2F毎にそれぞれ専用の吸蔵部61〜66を直接的に接続し、各吸蔵部61〜66の下流側には、各吸蔵部61〜66を燃焼室5または大気中のいずれかに個別に接続可能な切替弁70を設け、各シリンダ2A〜2Fのうちいずれか一つまたは複数のシリンダを順番にリッチ燃焼させる構成とした。従って、いずれの吸蔵部をNOx放出モードで使用し、いずれの吸蔵部をNOx吸蔵モードで使用するかを柔軟に設定することができる。
【0131】
なお、当業者であれば、各実施の形態に記載された本発明の要旨の範囲内で種々の追加や変更等が可能である。例えば、当業者は、前記各実施の形態を適宜組み合わせることができる。
【0132】
例えば、本発明の排ガス浄化装置に、従来の還元触媒や三元触媒等をさらに追加する構成も可能である。
【0133】
また、乗用車用エンジンに限らず、例えば、建設機械用エンジン、船舶用エンジン、農業機械用エンジン、発電用エンジン等の種々のエンジンに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図2】各吸蔵部の切替動作を示す説明図であって、(a)は第1吸蔵部でNOxを吸蔵し第2吸蔵部でNOxを放出する状態を、(b)は第1吸蔵部でNOxを放出し第2吸蔵部でNOxを吸蔵する状態を、それぞれ示す。
【図3】本実施形態によるNOx低減効果を示す特性図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図8】本発明の第6の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図9】本発明の第7の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図10】各吸蔵部の切替動作を示す説明図であって、(a)は第1吸蔵部でNOxを吸蔵し第2吸蔵部でNOxを放出する状態を、(b)は第1吸蔵部でNOxを放出し第2吸蔵部でNOxを吸蔵する状態を、それぞれ示す。
【図11】本発明の第8の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図12】本発明の第9の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図13】第1及び第2吸蔵部がNOxを吸蔵し、第3吸蔵部がNOxを放出する様子を示す説明図である。
【図14】第1及び第3吸蔵部がNOxを吸蔵し、第2吸蔵部がNOxを放出する様子を示す説明図である。
【図15】第2及び第3吸蔵部がNOxを吸蔵し、第1吸蔵部がNOxを放出する様子を示す説明図である。
【図16】本発明の第10の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図17】リッチ燃焼させるシリンダ群を交替させた場合の説明図である。
【図18】目標空燃比制御と切替弁の切替制御との関係を示すフローチャートである。
【図19】本発明の第11の実施形態に係る排ガス浄化装置の全体構成図である。
【図20】第5吸蔵部でNOxを放出し、他の吸蔵部でNOxを吸蔵する場合の説明図である。
【図21】第1吸蔵部でNOxを放出し、他の吸蔵部でNOxを吸蔵する場合の説明図である。
【図22】目標空燃比制御と切替弁の切替制御との関係を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0135】
1…エンジン、2…シリンダ、5…燃焼室、8…吸気マニホールド、9…排気マニホールド、10…酸化部、11…第1切替弁、12…第1吸蔵部、13…第2吸蔵部、14…第2切替弁、15…還元剤タンク、16…制御部、L1…吸気通路、L2…排気通路、L3…還元剤供給通路、L4…還流通路、21…第1吸蔵部、21A…酸化部、21B…吸蔵材、22…第2吸蔵部、22A…酸化部、22B…吸蔵材、L5…外気導入通路、L6…排ガス導入通路、2A〜2F…シリンダ、31…燃料噴射装置、32…エンジンコントロールユニット、L31…排ガス供給通路、41…第1切替弁、42…第2切替弁、43…第1吸蔵部、44…第2吸蔵部、45…第3吸蔵部、61〜66…吸蔵部、71〜76…2方切替弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(1)からの排ガス中のNOxを吸蔵する吸蔵手段(12,13)と、
前記エンジン(1)の各シリンダ(2A〜2F)のうち少なくとも一つ以上の所定のシリンダを選択し、この選択した所定のシリンダの目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定して燃焼させるエンジン制御手段(32)と、
前記所定のシリンダからのリッチ排気を前記吸蔵手段(12,13)に供給することにより、前記吸蔵手段に吸蔵されたNOxを放出させるリッチ排気供給手段(L31)と、
前記吸蔵手段(12,13)から放出されたNOx及び前記所定のシリンダから前記吸蔵手段(12,13)に供給された前記リッチ排気を、前記エンジン(1)の燃焼室(5)に還流させる還流手段(L4)と、
を備えたことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記エンジン制御手段(32)は、前記各シリンダ(2A〜2F)のうち、いずれか一つまたは複数のシリンダを所定の順序で切り替えながら選択する請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記エンジン制御手段(32)は、前記各シリンダ(2A〜2F)のうち、一方のシリンダ群(2A〜2C)と他方のシリンダ群(2D〜2F)とのいずれか一方のシリンダ群を切り替えながら選択し、この選択したシリンダ群の目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定して燃焼させる請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
エンジンからの排ガスを吸蔵手段に導いて、前記排ガス中のNOxを前記吸蔵手段に吸蔵させるステップ(S1)と、
前記エンジンの各シリンダのうちリッチ燃焼状態に設定される所定のシリンダからのリッチ排気を前記吸蔵手段に供給することにより、前記吸蔵手段に吸蔵されたNOxを放出させるステップ(S2)と、
前記放出されたNOx及び前記吸蔵手段に供給された前記リッチ排気を前記エンジンの燃焼室に還流させるステップ(S3)と、
を含む排ガス浄化方法。
【請求項1】
エンジン(1)からの排ガス中のNOxを吸蔵する吸蔵手段(12,13)と、
前記エンジン(1)の各シリンダ(2A〜2F)のうち少なくとも一つ以上の所定のシリンダを選択し、この選択した所定のシリンダの目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定して燃焼させるエンジン制御手段(32)と、
前記所定のシリンダからのリッチ排気を前記吸蔵手段(12,13)に供給することにより、前記吸蔵手段に吸蔵されたNOxを放出させるリッチ排気供給手段(L31)と、
前記吸蔵手段(12,13)から放出されたNOx及び前記所定のシリンダから前記吸蔵手段(12,13)に供給された前記リッチ排気を、前記エンジン(1)の燃焼室(5)に還流させる還流手段(L4)と、
を備えたことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記エンジン制御手段(32)は、前記各シリンダ(2A〜2F)のうち、いずれか一つまたは複数のシリンダを所定の順序で切り替えながら選択する請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記エンジン制御手段(32)は、前記各シリンダ(2A〜2F)のうち、一方のシリンダ群(2A〜2C)と他方のシリンダ群(2D〜2F)とのいずれか一方のシリンダ群を切り替えながら選択し、この選択したシリンダ群の目標空燃比を理論空燃比よりもリッチに設定して燃焼させる請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
エンジンからの排ガスを吸蔵手段に導いて、前記排ガス中のNOxを前記吸蔵手段に吸蔵させるステップ(S1)と、
前記エンジンの各シリンダのうちリッチ燃焼状態に設定される所定のシリンダからのリッチ排気を前記吸蔵手段に供給することにより、前記吸蔵手段に吸蔵されたNOxを放出させるステップ(S2)と、
前記放出されたNOx及び前記吸蔵手段に供給された前記リッチ排気を前記エンジンの燃焼室に還流させるステップ(S3)と、
を含む排ガス浄化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2006−37823(P2006−37823A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218089(P2004−218089)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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