説明

表示装置

【課題】結晶性シリコン薄膜トランジスタのオフ電流を低減させ、表示コントラストを向上させることが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】基板SUB1上に形成されるゲート絶縁膜GIを介してゲート電極GTの上層に形成される第1の半導体層MSFと、第1の半導体層MSFの上面に形成され、凹部が形成される第2の半導体層ASFとからなる活性層と、凹部を挟んで対向配置される一対のコンタクト層CNLと、コンタクト層CNLの一方の上層に形成されるドレイン電極DTと、他方の上層に形成されるソース電極STと、活性層の上面及び前記ドレイン電極DTと前記ソース電極STの上面に連続して形成される保護膜PASiとを有する薄膜トランジスタを備え、凹部が形成されている領域の膜厚は160nm以上である装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に係わり、特に、表示装置の基板上に形成される薄膜半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置のうち、例えば液晶表示装置に形成されている薄膜トランジスタは、工程数が少ない逆スタガ構造のシリコン薄膜トランジスタ(Si−TFT)が一般的となっている。このシリコン薄膜トランジスタとしては、半導体層(活性層)に水素化非晶質シリコン膜(a−Si:H膜)いわゆるアモルファスシリコンを用いた構造が一般的であった。しかしながら、a−Si:H膜を用いた薄膜トランジスタは電界効果移動度が小さく、液晶表示装置の画素部に占めるトランジスタ領域が大きくなってしまうという問題があった。さらには、ゲート線駆動回路や走査線駆動回路等の周辺回路等を画素部と同一基板上に形成することが要望されているが、電界効果移動度が小さいために非常に困難であった。
【0003】
これらの問題を解決する薄膜トランジスタとして、例えば、特許文献1に記載の薄膜トランジスタがある。特許文献1に記載の薄膜トランジスタは、ゲート絶縁膜の上層に10〜40nmの膜厚の多結晶シリコン膜(poly−Si膜)とa−Si:H膜とを順に形成した薄膜層を活性層とした構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−63196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の多結晶シリコン薄膜トランジスタ(多結晶Si−TFT)におけるpoly−Si膜の形成では、ゲート絶縁膜の形成の後に、その上層にa−Si:H膜を形成する。次に、a−Si:H膜へのエキシマレーザの照射によりa−Si:H膜をpoly−Si膜に改質し、この後に、poly−Si膜の上層にa−Si:H膜を形成することにより、活性層を形成する構成となっている。このため、液晶表示装置における画素のスイッチング素子として特許文献1に記載の多結晶Si−TFTを用いた場合には、同一基板内でのしきい値電圧のバラつきが大きくなってしまい、表示むらが生じてしまうという問題がある。
【0006】
この同一基板上に形成する薄膜トランジスタのしきい値電圧のバラつきを抑える方法として、ゲート絶縁膜の上層に、平均粒径が200nm以下の微結晶シリコンからなる微結晶シリコン膜とa−Si:H膜とを順に形成した薄膜層を活性層とする薄膜トランジスタである逆スタガ構造のチャネルエッチ型微結晶シリコン薄膜トランジスタ(微結晶Si−TFT)を用いることが提案されている。この微結晶Si−TFTはa−Si−TFTと多結晶Si−TFTとの中間のトランジスタ特性を有する結晶性シリコン薄膜トランジスタを構成しているので、同一基板内でのしきい値電圧のバラつきを抑えることができる。しかしながら、微結晶Si−TFTはオフ電流が高いために十分なスイッチング特性を得ることができず、液晶表示装置の画素部のスイッチング素子に用いた場合、十分な表示コントラストが得られないという問題がある。
【0007】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、結晶性シリコン薄膜トランジスタのオフ電流を低減させ、表示コントラストを向上させることが可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前記課題を解決すべく、透明基板上に形成されるゲート電極と、ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極の上層に形成される活性層と、前記活性層に形成される凹部を挟んで対向配置される一対のコンタクト層と、前記コンタクト層の一方の上層に形成されるドレイン電極と、前記コンタクト層の他方の上層に形成されるソース電極と、前記活性層の上面及び前記ドレイン電極と前記ソース電極の上面に連続して形成される保護膜とを有する薄膜トランジスタを備える表示装置であって、前記活性層は、前記ゲート絶縁膜の上面に形成される第1の半導体層と、該第1の半導体層の上面に形成され、前記凹部が形成される第2の半導体層とからなり、前記第2の半導体層のうち、前記凹部が形成されている領域の膜厚は160nm以上である表示装置である。
【0009】
(2)前記課題を解決すべく、透明基板上に形成されるゲート電極と、ゲート絶縁膜を挟んで前記ゲート電極の上層に形成される第1の半導体層と、前記第1の半導体層の上面に形成され、前記ゲート電極と重畳する領域に凹部が形成される第2の半導体層と、少なくとも前記第2の半導体層の上面に形成され、前記凹部を介して対向配置される第3の半導体層と第4の半導体層と、前記第3の半導体層の上面に形成されるドレイン電極、及び前記第4の半導体層の上面に形成されるソース電極と、前記第2の半導体層の上面、及び前記ドレイン電極と前記ソース電極の上面に連続して形成される保護膜とを有し、前記第2の半導体層のうち、前記凹部が形成されている領域の膜厚が160nm以上である表示装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、結晶性シリコン薄膜トランジスタのオフ電流を低減させ、表示コントラストを向上させることができる。
【0011】
本発明のその他の効果については、明細書全体の記載から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の表示装置である液晶表示装置の概略構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態の表示装置である液晶表示装置における画素の概略構成を説明するための平面図である。
【図3】本発明の実施形態の表示装置における薄膜トランジスタの構造を説明するための断面図である。
【図4】本発明の表示装置における薄膜トランジスタの製造方法を説明するための図である。
【図5】本発明の表示装置における薄膜トランジスタの製造方法を説明するための図である。
【図6】本発明の表示装置における薄膜トランジスタの製造方法を説明するための図である。
【図7】本発明の表示装置における薄膜トランジスタの製造方法を説明するための図である。
【図8】本発明の実施形態の表示装置における薄膜トランジスタのチャネル部を形成するアモルファスシリコン薄膜の膜厚とオフ電流との関係を説明するための図である。
【図9】微結晶シリコン薄膜トランジスタの保護膜における固定電荷がオフ電流に与える影響を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明は省略する。
【0014】
〈全体構成〉
図1は本発明の実施形態の表示装置である液晶表示装置の概略構成を説明するための図であり、以下、図1に基づいて、本実施形態の表示装置の構成を説明する。
【0015】
図1に示すように、画素電極や薄膜トランジスタ等が形成される第1基板(TFT側基板)SUB1と、該第1基板SUB1に対向して配置され、カラーフィルタ(着色層)及び遮光膜(ブラックマトリクス)等が形成される第2基板(対向基板)SUB2と、該第1基板SUB1と第2基板SUB2とで挟持される後述する液晶層とでパネル部が構成され、このパネル部に光源となる図示しないバックライトユニットとが組み合わされて、本実施形態の液晶表示装置が形成されている。第1基板SUB1と第2基板SUB2との固定(固着)及び2枚の基板SUB1、SUB2で挟持される液晶の封止は、表示領域ARの周辺に形成されるシール材SLで固定され、液晶も封止される構成となっている。
【0016】
第1基板SUB1及び第2基板SUB2としては、例えば周知のガラス基板に限定されることはなく、石英ガラスやプラスチック(樹脂)のような他の透明な絶縁性基板であってもよい。例えば、石英ガラスを用いれば、プロセス温度を高くできるため、薄膜トランジスタTFTのゲート絶縁膜を緻密化できるので、該薄膜トランジスタTFTの信頼性を向上することができる。また、プラスチック(樹脂)基板を用いれば、軽量で、耐衝撃性に優れた液晶表示装置を形成できる。
【0017】
また、本実施形態の液晶表示装置では、液晶が封入された領域の内で表示画素(以下、画素と略記する)の形成される領域が表示領域ARとなる。従って、液晶が封入されている領域内であっても、画素が形成されておらず表示に係わらない領域は表示領域ARとはならない。さらには、本実施形態の液晶表示装置では、第1基板SUB1上に搭載される駆動回路LDRが映像信号駆動回路と走査信号駆動回路とを有する構成となっており、フレキシブルプリント基板FPCから入力される入力信号に応じた駆動出力を行う。
【0018】
また、図1に示すように本実施形態の液晶表示装置では、第1基板SUB1の液晶側の面であって表示領域AR内には、図中X方向に延在しY方向に並設される走査信号線(ゲート線)GLが形成されている。また、図中Y方向に延在しX方向に並設される映像信号線(ドレイン線)DLが形成されている。ドレイン線DLとゲート線GLとで囲まれる矩形状の領域は画素が形成される領域を構成し、これにより、各画素は表示領域AR内においてマトリックス状に配置される構成となる。また、第2基板SUB2の画素の領域には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれかの図示しないカラーフィルタが形成される構成となっており、このRGBの各画素でカラー表示用の単位画素を形成する構成となっている。
【0019】
また、各画素は例えば図1中丸印aの拡大図a’に示すように、ゲート線GLからの走査信号によってオンされる薄膜トランジスタTFTと、このオンされた薄膜トランジスタTFTを介してドレイン線DLからの映像信号が供給される画素電極PXと、コモン線CLに接続され映像信号の電位に対して基準となる電位を有する基準信号が供給される共通電極CTとを備えている。画素電極PXと共通電極CTとの間には、第1基板SUB1の面に平行な成分を有する電界を生じ、この電界によって液晶層の液晶分子を駆動させるようになっている。このような液晶パネルは、いわゆる広視野角表示ができるものとして知られ、このような液晶への電界の印加の特異性から、IPS方式、あるいは横電界方式と称される。
【0020】
また、各ドレイン線DL及び各ゲート線GLはその端部においてシール材SLを越えてそれぞれ延在され、駆動回路LDRにそれぞれ接続される構成となっている。なお、本実施形態の液晶表示装置では、駆動回路LDRを半導体チップで形成し第1基板SUB1に搭載する構成としているが、後に詳述するように、トランジスタ特性に優れる逆スタガ構造のチャネルエッチ型微結晶シリコン薄膜トランジスタ(微結晶Si−TFT)TFTを用いる構成となっているので、映像信号駆動回路と走査信号駆動回路との何れか一方又はその両方の駆動回路LDRを第1基板SUB1に直接形成する構成であってもよい。さらには、映像信号駆動回路と走査信号駆動回路との何れか一方又はその両方の駆動回路LDRをフレキシブルプリント基板FPCにテープキャリア方式やCOF(Chip On Film)方式で搭載し、第1基板SUB1に接続させる構成であってもよい。
【0021】
〈画素の構成〉
図2は本発明の実施形態の表示装置である液晶表示装置における画素の概略構成を説明するための平面図である。ただし、以下に示す薄膜は公知のフォトリソグラフィ技術により形成可能であるので、形成方法の詳細な説明は省略する。また、説明を簡単にするために、配向膜及び偏光板等は省略している。
【0022】
図2に示すように、第1基板SUB1の液晶側の面には、ゲート線GL及びドレイン線DLが比較的大きな距離を有して平行に形成されている。
【0023】
ゲート線GLとドレイン線DLの間の領域には、たとえばITO(Indium−Tin−Oxide)等の透明導電材料からなる共通電極CTが形成されている。該透明電極CTは、そのコモン線CL側の辺部において該コモン線CLに重畳されて形成され、スルーホール(コンタクトホール)TH2を介してコモン線CLと電気的に接続されている。なお、透明導電膜としてITOを用いた場合について説明するが、ITOに限定されることはなく、公知のZnO系透明導電膜を用いてもよい。
【0024】
図2中の上下方向に伸張して形成されるドレイン線DLはその一部において薄膜トランジスタTFT側に延在する図示しない延在部を有し、この延在部は半導体層(活性層)PS上に形成された薄膜トランジスタTFTのドレイン電極に接続されている。また、ドレイン線DLは薄膜トランジスタTFTの近傍の領域において、図示しない絶縁膜(ゲート絶縁膜)及びアモルファスシリコン層を介してゲート線GLと交差する構成となっている。
【0025】
ドレイン線DLおよびドレイン電極の形成の際に同時に形成されるソース電極は、半導体層PS上にてドレイン電極と対向し、かつ、半導体層PS上から画素領域側に若干延在された延在部を有して形成されている。この延在部は後に説明する画素電極PXと接続されるパッド部に至るようにして構成されている。
【0026】
また、本実施形態の薄膜トランジスタTFTは、前述するように、いわゆる逆スタガ構造のチャネルエッチ型微結晶シリコン薄膜トランジスタである。なお、本実施形態の薄膜トランジスタTFTは、そのバイアスの印加によってドレイン電極とソース電極とが入れ替わるように駆動するが、本明細書の説明にあっては、便宜上、ドレイン線DLと接続される側をドレイン電極、画素電極PXと接続される側をソース電極と称するものとする。
【0027】
ドレイン電極及びソース電極の上層すなわち薄膜トランジスタTFTの上層には、当該薄膜トランジスタTFTを覆う無機化合物の絶縁膜からなる図示しない保護膜と、平坦化膜としての機能を有する有機絶縁膜からなる図示しない平坦化膜が形成されている。保護膜は液晶や平坦化膜のアルカリ成分から薄膜トランジスタTFTを保護する役割を持っており、例えば無機質材料である窒化シリコン(SiN)膜等からなり、薄膜トランジスタTFTの上層の全面に当該保護膜が形成されている。平坦化膜は保護膜の上層(基板の液晶側)に公知のスピンコート法等により形成され、例えば感光性のポリイミドやアクリル系樹脂などの有機物材料からなり、薄膜トランジスタTFTをはじめとしたゲート線GL、ドレイン線DL、及びコモン線CL等の形成に伴う第1基板SUB1上面の凹凸を平坦化する。なお、本実施形態の液晶表示装置の第1基板SUB1では保護膜と平坦化膜とで保護膜を構成している。
【0028】
平坦化膜の上層には共通電極CTが形成され、その上層に図示しない容量絶縁膜が形成される構成となっている。この容量絶縁膜、平坦化膜、及び保護膜にはソース電極から延在したパッド部に至るスルーホール(コンタクトホール)TH1が形成されており、容量絶縁膜の上層に形成される画素電極PXとソース電極とが電気的に接続される構成となっている。
【0029】
このように、本実施形態の液晶表示装置では、共通電極CTの上層に形成した容量絶縁膜を介して画素電極PXが配置される構成となっている。このように形成される液晶表示装置(横電界方式の液晶表示装置)では、保持容量を構成するための一対の電極を画素電極PXと共通電極CTとで兼ねる構成とすることが一般的に行われている。すなわち、画素電極PXと共通電極CTとの間に形成する層間絶縁膜として容量絶縁膜を用いることにより、画素電極PXと共通電極CTとの絶縁を実現しつつ画素電極PXと共通電極CTとにより、画素電荷の保持に必要な保持容量を実現する構成となっている。
【0030】
〈薄膜トランジスタの詳細構造〉
図3は本発明の実施形態の表示装置における薄膜トランジスタの構造を説明するための断面図であり、特に、図2のX軸方向の断面図である。ただし、説明を簡単にするために、図3に示す断面図では保護膜PASiの上層に積層される薄膜層は省略する。
【0031】
図3に示すように、本実施形態の薄膜トランジスタでは、第1基板SUB1の表面には、第1基板SUB1から薄膜トランジスタTFTへのNa(ナトリウム)やK(カリウム)などのイオンの混入をブロックするために、下地層となる絶縁膜IN1が形成されている。絶縁膜IN1としては、例えば第1基板SUB1側から順に窒化シリコン(SiN)などからなる層と酸化シリコン(SiO)などからなる層を積層した構造の薄膜を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0032】
絶縁膜IN1の上層には、ゲート電極GTが形成され、その上層にゲート電極GTを被うようにしてゲート絶縁膜GIが形成されている。図3に示すように、薄膜トランジスタTFTの形成領域においては、ゲート絶縁膜GIは当該薄膜トランジスタTFTのゲート絶縁膜として機能する。
【0033】
該ゲート絶縁膜GIの上面であって、ゲート電極GTと重畳する個所において、アモルファスシリコン薄膜ASFと結晶性シリコン薄膜の一つである微結晶シリコン薄膜MSFとにより、薄膜トランジスタTFTの半導体層が形成されている。結晶性シリコン薄膜MSFは、例えば、その膜厚が50nmであり、X軸方向の平均粒径が200nm以下の結晶性シリコンである微結晶シリコンで形成されている。アモルファスシリコン薄膜ASFは、アモルファスシリコンで形成され、本実施形態においては、堆積時の膜厚が200nmである。アモルファスシリコン薄膜ASFには、膜厚が他の領域より小さい凹部(エッチング領域)が形成されている。該凹部の膜厚すなわちエッチング領域の膜厚tは160nmとなるように形成されている。ただし、後に詳述するように、アモルファスシリコン薄膜ASFのエッチング領域の膜厚tは160nm以上ならばよい。また、本実施形態においては、微結晶シリコン薄膜MSFの形成はアモルファスシリコン薄膜を生成した後に、該アモルファスシリコン薄膜をレーザ等で結晶化することによって可能である。さらには、微結晶シリコンを直接成膜することによって、微結晶シリコン薄膜MSFを形成することも可能である。
【0034】
微結晶シリコン薄膜MSFとアモルファスシリコン薄膜ASFとからなる半導体層の少なくとも上面及び側面には、コンタクト層CNLを有している。該コンタクト層CNLは、高濃度のn型不純物がドープされた高濃度不純物層(n層)である。コンタクト層CNLは、ソース電極STあるいはドレイン電極DTとチャネル領域との接続抵抗を下げる効果を有する。
【0035】
このコンタクト層CNLの上面には、アルミニウム等やその合金等からなる導電性の金属薄膜で形成されるドレイン線DLに接続されるドレイン電極DTと、画素電極PXに接続されるソース電極STとが凹部(エッチング領域)を挟んで対向配置されている。このとき、本実施形態においては、ゲート電極GTと重畳する領域である半導体層と重畳する領域以外においても、ドレイン電極DT及びソース電極STの下層にコンタクト層CNLが形成されている。
【0036】
ドレイン電極DT、ソース電極ST、及びアモルファスシリコン薄膜ASFの上層を含む第1基板SUB1の上面である薄膜トランジスタTFTの上層の全面には薄膜トランジスタTFTを保護するために、無機質材料である窒化シリコン(SiN)膜等からなる保護膜PASiが形成されている。
【0037】
なお、本実施形態においては、半導体層の上面及び側面にコンタクト層CNLを形成する構成としたが、これに限定されることはなく、半導体層の上面のみにコンタクト層CNLを形成する構成でもよい。
【0038】
〈薄膜トランジスタの製造方法〉
次に、図4〜図7に本発明の表示装置における薄膜トランジスタの製造方法を説明するための図を示し、以下、図4〜図7に基づいて製造方法を説明する。
【0039】
第1基板SUB1の上面側の全面に、CVD(化学気相成長法)等で窒化シリコン(SiN)薄膜あるいは酸化シリコン(SiO)薄膜又はSiN薄膜とSiO薄膜とを成膜し、50〜150nmの絶縁膜IN1を形成する。この後に、絶縁膜IN1の上層にゲート電極GT及びゲート線GLとなる金属膜、例えば、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、又はTa(タンタル)等の高融点金属やその合金を50〜150nmに成膜する。次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、金属膜をエッチングによりパターニングすることにより、図4に示すように、ゲート電極GT及び図示しないゲート線を形成する。
【0040】
次に、ゲート電極GTの上層を含む第1基板SUB1の全面に、SiN薄膜あるいはSiO薄膜又はSiN薄膜とSiO薄膜との積層膜を成膜し、膜厚が100〜350nmのゲート絶縁膜GIを形成する。この後に、ゲート絶縁膜GIの上層に、例えば、膜厚が50nmのアモルファスシリコン薄膜を形成し、レーザ照射での加熱によりアモルファスシリコン薄膜を結晶化させ、平均粒径が200nmの結晶性シリコン薄膜MSFである、いわゆる微結晶シリコン薄膜を形成する。次に、この結晶性シリコン薄膜MSFの上層に、例えば、膜厚が200nmのアモルファスシリコン薄膜ASFを形成する。次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、結晶性シリコン薄膜MSFとアモルファスシリコン薄膜ASFとをエッチングにより島状にパターニングすることにより、図5に示すように、ゲート電極GTの上層にゲート絶縁膜GIを介して形成され、結晶性シリコン薄膜MSFとアモルファスシリコン薄膜ASFとが積層されてなる半導体層を形成する。
【0041】
なお、本実施形態においては、アモルファスシリコン薄膜ASFの膜厚を200nmとしたが、これに限定されることはなく160nm以上であればよい。ただし、アモルファスシリコン薄膜ASFの膜厚を厚くした場合には、アモルファスシリコン薄膜ASF自身が薄膜トランジスタTFTの直列抵抗となり、薄膜トランジスタTFTのON電流が低下してしまうことが懸念される。また、アモルファスシリコン薄膜ASFの膜厚を厚く形成するためには、長い堆積時間(形成時間)を要することとなり、製造コストが上昇してしまうことが懸念されるので、膜厚は200nm程度が好適と考えられる。さらには、後述するアモルファスシリコン薄膜ASFへのエッチング精度すなわちコンタクト層CNLを分離するためにアモルファスシリコン薄膜ASFの一部をエッチングする量の精度を勘案して、アモルファスシリコン薄膜ASFの膜厚を決定してもよい。
【0042】
次に、コンタクト層CNLとなる、例えば、高濃度のn型不純物としてP(リン)がドーピングされ膜厚が10〜50nmのn型アモルファスシリコン薄膜を、半導体層とゲート絶縁膜GIの上層との全面に形成する。次に、ドレイン電極DT、ドレイン線DL、及びソース電極STとなる金属膜をスパッタリングにより300〜500nm程度の膜厚で形成することによって、図6に示すように、n型アモルファスシリコン薄膜の上層すなわち第1基板SUB1の全面が金属層に覆われた状態となる。ただし、本実施形態では、ドレイン電極DT、ドレイン線DL、及びソース電極STとして、例えば、AL(アルミニウム)やその合金からなる金属薄膜の上層及び下層を、TiやMoからなる金属薄膜(バリアメタル層、キャップメタル層)で覆う三層構造としている。従って、本工程における金属膜の形成では、TiやMoからなる金属薄膜の形成、AL(アルミニウム)やその合金からなる金属薄膜の形成、及びTiやMoからなる金属薄膜の形成を順次に行う。この構成により、ALの拡散防止とコンタクト抵抗の低減とを達成している。なお、バリアメタル層及びキャップメタル層の厚さは、30〜100nm程度でよい。
【0043】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、金属膜の上層の全面にドレイン電極DT、ドレイン線DL、及びソース電極STに対応したレジスト膜REGを形成し、このレジスト膜をマスクとして、金属膜及びn型アモルファスシリコン薄膜並びに半導体層のアモルファスシリコン薄膜ASFの一部(凹部に相当する部分)をエッチングする。このエッチングにより、ドレイン電極DTとソース電極STとを形成すると共に、表示領域におけるドレイン線DLを形成する。さらには、チャネル部CHNにおける半導体層のアモルファスシリコン薄膜ASFの膜厚tが160nm以上となるように当該アモルファスシリコン薄膜ASFをエッチングすることにより、コンタクト層CNLの分離を確実なものとしている。このように、本実施形態では、半導体層を形成するアモルファスシリコン薄膜ASFにおけるエッチング量を調整して、アモルファスシリコン薄膜ASFのチャネル部CHNである凹部の膜厚tを160nmとすることにより、図7に示すように、ドレイン電極DTとソース電極STとを形成している。
【0044】
次に、レジスト膜REGを除去し、その後に、例えば、SiNをCVDにより第1基板SUB1の全面に保護膜PASiを形成することにより、図3に示す薄膜トランジスタTFTが形成される。
【0045】
〈発明の原理と効果〉
本願発明の発明者は、逆スタガ構造のチャネルエッチ型微結晶シリコン薄膜トランジスタにおいては、アモルファスシリコン薄膜ASFの凹部における膜厚に応じて、オフ電流が変化することを見出した。これは、図9に示すように、アモルファスシリコン薄膜ASFの凹部に形成される保護膜PASiに生ずる固定電荷ECが、オフ電流を増加させる要因の一つであると考えられる。
【0046】
従って、アモルファスシリコン薄膜ASFに形成される凹部のエッチング量、すなわち凹部の膜厚を厚くし、ゲート電極GTと保護膜PASiとの距離を大きくすることによって、保護膜PASiの固定電荷ECの影響を低減させることが可能となる。
【0047】
図8は本発明の実施形態の表示装置における薄膜トランジスタのチャネル部を形成するアモルファスシリコン薄膜の膜厚とオフ電流との関係を説明するための図である。ただし、図8は、結晶性シリコン薄膜である微結晶シリコン薄膜MSFの膜厚が50nm、粒径が200nmであり、半導体領域におけるW/LがW/L=100μm/10μmで形成した薄膜トランジスタの計測結果である。また、ドレイン電圧Vdとして、Vd=10V時におけるVg−Ig特性の計測時におけるIdの最小値(min値)を縦軸とし、アモルファスシリコン薄膜ASFのチャネル部における膜厚tを横軸としたものである。さらには、縦軸のオフ電流値は、Vg−Ig特性の計測時におけるIdの最小値(min値)を1μm当たりの電流量に換算した値を用いるものである。
【0048】
図8から明らかなように、本実施形態の薄膜トランジスタにおけるオフ電流は膜厚が160nm程度の場合において、1.2pA程度となる。この結果から、微結晶シリコン薄膜MSFの上面に形成するアモルファスシリコン薄膜ASFの厚さは160nm以上であればよいこととなるが、n型アモルファスシリコン薄膜のエッチングを完全なものとするために、n型アモルファスシリコン薄膜と共にアモルファスシリコン薄膜ASFもエッチングする必要がある。このために、アモルファスシリコン薄膜ASFの厚さは、n型アモルファスシリコン薄膜のエッチングを確実なものとするためのエッチング量に、エッチング精度を加算し、そのエッチング後における凹部の膜厚tが160nm以上となるようなアモルファスシリコン薄膜ASFを微結晶シリコン薄膜MSFの上面に形成する必要がある。
【0049】
さらには、前述するように、アモルファスシリコン薄膜ASFの膜厚を厚くした場合、アモルファスシリコン薄膜ASF自身が薄膜トランジスタTFTの直列抵抗となり、ON電流が低下してしまうことが懸念される。また、アモルファスシリコン薄膜ASFの膜厚を厚く形成するためには、長い堆積時間(形成時間)を要することとなり、製造コストが上昇してしまうことが懸念されるので、本実施形態では膜厚は200nm程度が好適であると考えられる。
【0050】
従って、本発明の実施形態の表示装置における薄膜トランジスタでは、アモルファスシリコン薄膜ASFの凹部における厚さtをt=160nmとしているので、薄膜トランジスタのオフ電流を大幅に低減することが可能となる。その結果、本発明の薄膜トランジスタを用いた実施形態の表示装置では、表示コントラストを向上させることができる。
【0051】
なお、本実施形態では本発明を液晶表示装置に適用した場合について説明したが、これに限定されることはなく、例えば、有機EL表示装置や無機EL表示装置等の他の表示装置にも適用可能である。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記発明の実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記発明の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
AR……表示領域、SUB1……第1基板、SUB2……第2基板、DL……ドレイン線
GL……ゲート線、CL……コモン線、GI……ゲート絶縁膜、GT……ゲート電極
DT……ドレイン電極、ST……ソース電極、TFT……薄膜トランジスタ
PX……画素電極、CT……共通電極、TH1,TH2……スルーホール
IN1……絶縁膜、LDR……駆動回路、SL……シール材、PASi……保護膜
PS……半導体層(活性層)、ASF……非晶質シリコン薄膜、EC……電荷
MSF……微結晶シリコン薄膜、CNL……コンタクト層、REG……レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に形成されるゲート電極と、ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極の上層に形成される活性層と、前記活性層に形成される凹部を挟んで対向配置される一対のコンタクト層と、前記コンタクト層の一方の上層に形成されるドレイン電極と、前記コンタクト層の他方の上層に形成されるソース電極と、前記活性層の上面及び前記ドレイン電極と前記ソース電極の上面に連続して形成される保護膜とを有する薄膜トランジスタを備える表示装置であって、
前記活性層は、前記ゲート絶縁膜の上面に形成される第1の半導体層と、該第1の半導体層の上面に形成され、前記凹部が形成される第2の半導体層とからなり、
前記第2の半導体層のうち、前記凹部が形成されている領域の膜厚は160nm以上であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記第1の半導体は結晶性シリコンで形成され、前記第2の半導体層は非晶質シリコンで形成されることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置であって、
前記結晶性シリコンは、微結晶シリコンで形成されることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の内の何れかに記載の表示装置において、
前記第2の半導体層は前記凹部を除く領域の膜厚が200nm以上であることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
透明基板上に形成されるゲート電極と、
ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極の上層に形成される第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の上面に形成され、前記ゲート電極と重畳する領域に凹部が形成される第2の半導体層と、
少なくとも前記第2の半導体層の上面に、前記凹部を挟んで対向配置される第3の半導体層と第4の半導体層と、
前記第3の半導体層の上面に形成されるドレイン電極、及び前記第4の半導体層の上面に形成されるソース電極と、
前記第2の半導体層の上面、及び前記ドレイン電極と前記ソース電極の上面に連続して形成される保護膜とを有し、
前記第2の半導体層のうち、前記凹部が形成されている領域の膜厚が160nm以上であることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置であって、
前記第1の半導体は結晶性シリコンで形成され、前記第2の半導体層は非晶質シリコンで形成され、前記第3の半導体層及び第4の半導体層は非晶質シリコンに不純物が添加されて形成されることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の表示装置であって、
前記結晶性シリコンは、微結晶シリコンで形成されることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項5乃至7の内の何れかに記載の表示装置において、
前記第2の半導体層は前記凹部を除く領域の膜厚が200nm以上であることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−108706(P2011−108706A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259529(P2009−259529)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】